【CRI時評】米台は結託して「防疫を口実に独立を企てる」危険な行動をやめよ

【CRI時評】米台は結託して「防疫を口実に独立を企てる」危険な行動をやめよ
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2021-06/14/content_77566877.htm

『米議会上院議員3人が軍用輸送機で台湾を訪問し、新型コロナウイルスワクチンを提供すると発表したのに続き、上院議員のエドワード・マーキー氏とミット・ロムニー氏もこのほど声明を発表し、近々公聴会を開催して「米台関係強化」について討議し、台湾からの追加の要請に応じて「台湾軍」が使用する用量のワクチンを割り当てることを呼び掛けた。これは、米台が結託して「防疫を口実に独立を企てる」もう一つのやり口だ。

 米国は最近、ワクチン援助を次々と約束しているが、その意図は、不十分なコロナ対策で非難を浴びた台湾当局に助け舟を出すことで屈服させ、米国が実施する新たな中国封じ込めのために火中の栗を拾わせようとするものだ。米国が約束した75万回分のワクチンはまだ「口約束」段階にとどまっており、しかもその数量は人口2300万人の台湾にとって焼け石に水だ。しかし民進党当局は近きを捨てて遠きにつき、台湾同胞へのワクチン提供を申し出た大陸の善意を悪意を持ってそしり、米国が描いた大きな餅に感激して涙にむせび、台湾の人々の命を救う機を何度も逸している。

 台湾問題は中国の核心的利益に関わるものであり、中米関係において最も重要で最も敏感な問題でもある。中国は、いかなる者、いかなる勢力であろうと、「一つの中国」原則のレッドライン(越えてはならない一線)に衝撃を与えることを許さない。米国は、台湾とのいかなる形式の公的往来と軍事面での連絡も直ちに停止し、「台湾独立」分裂勢力に誤ったシグナルを送らないようにすべきだ。冒険的な行動を取り続けて台湾を中国から分裂させようとたくらむ人に対しては、中国は一切の代償を惜しまず断固として真っ向から痛撃を加えるだろう。(CRI論説員)

 「中国国際放送局日本語版」2021年6月14日 』

米国は中国に濡れ衣を着せるべきでない

米国は中国に濡れ衣を着せるべきでない
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2021-06/14/content_77565793.htm

『ウイルスの発生源は厳粛な科学問題だというのは、理性的な人が持つ考え方である。実際、世界保健機関(WHO)と全世界の良識ある科学者は、世紀の感染症流行の諸悪の根源を共同で探っている。

 最新の情報によると、イタリア・ミラノの国立腫瘍研究所は6月5日、WHOからイタリアの2019年の血液サンプルの再検査を要請されたことを認めた。この行動は、昨年11月、イタリアの国立腫瘍研究所の科学研究員が2019年9月に採取した住民の血液サンプルから新型コロナウイルスの抗体を発見したという文章を発表したことが背景となっている。

 疑わしい点があれば検査し、さらに研究し、結論を出す。これは非難することではない。

 新型コロナウイルスの流行後、WHOの専門家は二度にわたり調査のため中国を訪れ、3月30日にジュネーブで「中国―WHO新型コロナウイルス発生源調査共同研究報告」を発表した。報告は、新型コロナウイルスが実験室で人に伝染した可能性は「極めて低い」とした。

 近頃、イタリアもWHOの要請に応じ、血液サンプルを自主的に送り、科学と責任ある姿勢を示している。

 しかし、「世界の頂点」に立つ世界唯一の超大国である米国は、ウイルス発生源問題に関して何度も世間を驚かせている。

 昨年11月30日、米国疾病管理予防センター(CDC)が雑誌『Clinical Infectious Diseases (CID)』で発表した研究結果によると、米9州の住民の献血サンプルを検査したところ、新型コロナウイルスは早くて2019年12月中旬に米国に出現し、中国の正式確認より数週早いことがわかった。

そのほか、米国で2019年秋に流行したインフルエンザと新型コロナウイルスの関係性はまだ結論が出ていない。また、米国メディアが米国政府の「最も暗黒な実験センター」と称するフォート・デトリック生物実験室はさらに疑わしい。

 自身の多くの疑問点に対し、米国は何をしたか。WHOの調査の結論を無視し、しかもWHOに非協力的で、「実験室流出説」を唱え矛先を中国に向け、根拠なく言いがかりをつけてぬれぎぬを着せている。

 ウイルス発生源問題はあからさまに政治化されている。米国は情報機関に新型コロナウイルスの発生源を調査させ、その政治目的と責任転嫁の意図は誰の目にも明らかである。
 かつて、米国のパウエル元国務長官は国連会議に出席した際、「謎の白い粉」を持ってイラクは「大規模な殺傷性兵器」を保有していると非難し、イラク戦争を発動する口実にした。これは米国の典型的なやり方で、「洗剤」を使って濡れ衣を着せたと言われ、米国の外交史上もっとも恥ずべき事件の1つとなった。米国は、中国はイラクではないと知るべきである。米国は大国として最もすべきことは、中国に濡れ衣を着せることではなく、WHOの調査に協力し、ウイルス発生源を見つけ出し、感染症に打ち勝つために力を尽くすことである。

 「中国網日本語版(チャイナネット)」2021年6月14日 』

G7声明が中国を名指しで非難 中国側が反論

G7声明が中国を名指しで非難 中国側が反論
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2021-06/15/content_77569574.htm

『「今回のサミットが世間に見せたのは狭い範囲、集団政治、強権政治で、人為的に対立と分裂を作り出した」。中国在イギリス大使館の報道官は14日に声明を発表し、前日に閉幕した主要7カ国首脳会議(G7サミット)が共同声明の中で新疆、香港、台湾などの問題について「事実を湾曲し、是非を転倒した表現」をしたことに反撃した。バイデン米大統領は今回の欧州訪問で盟友との「繋がりの深さ」を何度も見せ、「米国は帰ってきた」と強調し、盟友を引き込む面でトランプ前大統領よりかなり卓越している。しかし、米欧は肝心な問題においては意見が大きく食い違っている。フランスのマクロン大統領は「G7は中国を敵対視するクラブではない」と述べた。ドイツのメルケル首相は、「中国との協力がなければ、気候変動などの分野は永遠に打開策を見つけられない」と述べた。また、国際世論はG7が打ち出した世界の防疫、インフラ再建、気候変動などの共同解決に向けた「壮大な目標」が本当に実行されるのかを疑っている。14日、バイデン氏のもう1つの重要な日程であるNATO首脳会議がブリュッセルで開かれた。会議後の声明は、「中国が公開した野心と強硬な行為は規則に基づく国際秩序と連盟の安全に関する分野にシステム的な試練を形成した」とした。EUのサイトは14日、米国はNATOの声明でより強硬的な表現を使用したいと考えていたが、EU諸国は「脅威」ではなく「試練」と表現することを望んだと伝えた。

「中国の協力がなければ、永遠に打開策を見つけられない」

 G7サミットの声明が中国を名指ししたことに対し、中国在イギリス大使館の報道官は14日に1つ1つ反論した。報道官は、「G7サミットの声明は新疆、香港地区、台湾地区などの関連問題について事実を湾曲し、是非を転倒した表現をした。中国を中傷し、中国の内政に干渉することは国際関係の基本準則に反する行為であり、米国などの少数の国の悪巧みを露呈させた」と指摘し、強い不満を示し断固反対するとした。

 ドイツのビルト紙は、米国、カナダ、イギリスは「より強硬的」な対中行動を呼びかけているが、EUの一部の国の指導者は「ブレーキを踏んでいる」と論じた。中国との関係について、ドイツのメルケル首相は、「中国はシステム的競争相手と経済上の競争者だが、協力パートナーでもある。中国の協力がなければ、気候変動などの分野は永遠に打開策を見つけられない」と述べた。

 フランスのマクロン大統領は13日のG7サミット後の記者会見で、「G7は中国を敵対視するクラブではない。気候変動対策や貿易などの問題において、G7メンバーは中国と引き続き協力する必要がある」と話した。また、中国が数億人の貧困脱却を果たした点に注目し、「現在、西側と中国の関係の発展には誠意と尊重が必要で、G7は相違に目を向けるべきだが、この相違を誇張してはならない」と述べた。

 ニューヨーク・タイムズ紙は、バイデン氏は欧州の盟友に中国対抗を促すが、ドイツやイタリアなどは新たな冷戦を加速させ、中国とEUの巨額貿易が危険な状況になることを懸念している。記事によると、中国はドイツ自動車産業の最大の市場であり、ドイツは中国との協力を重要視し、新たな冷戦を防ぎ止めている。フランスも中国からの投資を歓迎し、華為の通信網建設への参与を禁止していない。中国がコロナで困っているイタリアにマスクと呼吸器を送った際、イタリアの官僚は「イタリアは誰が友であるかを覚えている」と発言した。

 「さようなら、G7。あなたはかつて世界を主導していたが、現在は世界の小さな一部になっている。自身の地位の後退を受け入れられず、中国を責めているが、失敗は自分のせいだ」。イギリス・ケンブリッジ大学学者のマーティン・ジャック氏はSNSにこのように投稿し、G7の「中国対抗」は意味がないと風刺した。

 「中国網日本語版(チャイナネット)」 2021年6月15日 』

米空母打撃群、定期任務で南シナ海入り=海軍

米空母打撃群、定期任務で南シナ海入り=海軍
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%e7%b1%b3%e7%a9%ba%e6%af%8d%e6%89%93%e6%92%83%e7%be%a4-%e5%ae%9a%e6%9c%9f%e4%bb%bb%e5%8b%99%e3%81%a7%e5%8d%97%e3%82%b7%e3%83%8a%e6%b5%b7%e5%85%a5%e3%82%8a-%e6%b5%b7%e8%bb%8d/ar-AAL36oC

『[台北 15日 ロイター] – 米海軍は15日、原子力空母ロナルド・レーガンが率いる米空母打撃群が、定期的な任務の一環として南シナ海に入ったと発表した。

同海域の大部分で領有権を主張する中国と米国の間では緊張が高まっている。

中国は、南シナ海での米軍の任務が平和と安定の促進に寄与しないとして、たびたび反発。14日にはさまざまな問題を巡り、主要7カ国首脳会議(G7サミット)の共同声明が中国の内政に甚だしく干渉していると非難した。

米海軍は「南シナ海で、(空母)打撃群は固定・回転翼航空機による飛行活動、海上打撃演習、水上部隊と航空部隊間の調整された戦術訓練を含む海上警備活動を行っている」と説明。「南シナ海での空母の運用は、インド太平洋における米海軍の定期的なプレゼンスを示す任務の一環だ」とした。

空母には、誘導ミサイル巡洋艦シャイローと誘導ミサイル駆逐艦ハルゼーが同行しているという。

中国は近年、人工島や空軍基地の建設などを通じ、南シナ海での軍事的プレゼンスを拡大している。』

中国、台湾防空圏に28機 G7共同宣言に反発か

中国、台湾防空圏に28機 G7共同宣言に反発か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM15BSA0V10C21A6000000/

『【台北=中村裕】台湾の国防部(国防省)は15日、中国軍の戦闘機など、過去最多となる計28機が同日、台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入したと発表した。主要7カ国首脳会議(G7サミット)の共同宣言で「台湾海峡」に言及したことに強く反発したとみられる。中国大陸と台湾の緊張が再び高まってきた。』

『米海軍は15日、原子力空母「ロナルド・レーガン」が南シナ海に入ったと発表した。「通常の定期的な任務の一環」としている。南シナ海で広く領有権を主張する中国は、こうした米国の行動にも強い反発姿勢をみせたかったものとみられる。』

中国「NATOは二重基準」と批判

中国「NATOは二重基準」と批判
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM159HT0V10C21A6000000/

『中国は、米国が欧州との通商関係などの強化を優先する一方で、アジア太平洋地域への関与は後回しになると読んでいた。しかし、米国は日本やオーストラリアなどと連携して経済面でも中国包囲網の形成を急ぐ。

中国共産党関係者は「米国などの対中姿勢は想定外だった面もある」と認める。その上で、中央アジアや中東欧など、中国の経済圏構想「一帯一路」に参加する国々との関係強化が目先の優先事項だとの見解を示した。』

「中国は体制上の挑戦」 NATO首脳会議が声明

「中国は体制上の挑戦」 NATO首脳会議が声明
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN14D6I0U1A610C2000000/

『【ブリュッセル=永沢毅】北大西洋条約機構(NATO)は14日に開いた首脳会議で、強権路線に傾く中国を「体制上の挑戦」とみなす共同声明をまとめた。中国の脅威に対処するため、2030年に向けた改革指針「NATO2030」を承認した。主要任務を定めた「戦略概念」の抜本的な見直しに乗り出し、22年夏の首脳会議で採択をめざす。

ブリュッセルの本部で開いた首脳会議にはバイデン米大統領が初参加した。バイデン氏は記者会見で北大西洋条約5条に基づく集団的自衛権の行使を「神聖な義務」と明言し、加盟国の防衛を確約した。「中国やロシアは大西洋をまたぐ結束にくさびを打ちこもうとしているが、私たちの同盟は集団防衛と繁栄の土台であり続ける」と述べ、トランプ前政権できしんだ米欧同盟の結束に自信を示した。

共同声明には「中国の野心的で強引な振る舞いはルールに基づく国際秩序と米欧の安保にとって体制上の挑戦」と明記した。宇宙での加盟国の衛星などへの攻撃をNATOの集団的自衛権の行使を定めた北大西洋条約5条の発動対象になり得ると指摘した。中国は軍事作戦のカギを握る米国の衛星への攻撃能力を備えつつあり、米軍の脅威になっている。』

『NATOはすでに加盟国へのサイバー攻撃が集団防衛の対象になる方針を掲げている。今回はランサムウエア(身代金要求型ウイルス)などを使った攻撃への備えを強化するサイバー防衛対策でも合意した。

9月までの米軍撤収を決めているアフガニスタンに関しては「撤収がアフガンとの関係の終わりを意味しない」と記し、アフガン国軍の訓練や資金支援を通じて関与を続けると訴えた。バイデン氏は「首脳たちの完全な意見の一致をみた」と撤収の正当性を強調した。

22年夏を目標にしている戦略概念の見直しは10年以来、12年ぶり。前回の戦略概念は中国について触れず、ロシアとミサイル防衛などでの協力をうたっていた。安保環境の激変を受け、対中政策を初めて盛り込むことになる。』

NATO、自衛権を宇宙にも拡大
集団防衛対象と中国やロシア警告
https://nordot.app/777448563160891392?c=39546741839462401

『【ブリュッセル共同】北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は14日採択した首脳声明で、加盟国の人工衛星など宇宙空間を舞台にした攻撃はNATO条約第5条に基づく集団的自衛権行使の対象になり得るとし、宇宙軍拡を進める中国やロシアに強い警告を発した。

 宇宙空間が軍事、民生両面で重要性を増す中、中ロは衛星攻撃兵器(ASAT)の実験を成功させるなど宇宙戦略を積極的に推進。首脳声明はNATOの宇宙への姿勢が「国際法に完全に沿い続ける」とし、中ロによる宇宙の軍事化をけん制した。

 条約第5条は加盟国が攻撃を受けた場合、全加盟国への攻撃と見なし必要な行動を取ると規定する。』

中国、NATO声明に反発 「脅威論あおるな」
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/210615/mcb2106151242016-n1.htm

『中国の欧州連合(EU)代表部は15日、報道官談話を発表し、北大西洋条約機構(NATO)が中国を安全保障上の脅威と位置付ける首脳声明を採択したことに対し「中国脅威論をあおるのを停止するよう忠告する」と反発した。中国に挑戦すれば「座視しない」として強くけん制した。

中国国旗と天安門(Getty Images)

 談話は、中国の行動を「国際秩序への挑戦」と指摘したNATOの首脳声明について「中国の平和的な発展に対する中傷であり、国際情勢と自身の役割を見誤っている」と批判した。

 その上で中国の主権を「断固として守る」と強調。中国の権益を脅かさないよう求め、米欧の対中戦略に警戒感を示した。(共同)』

NATO首脳声明に中国「冷戦思考とブロック政治心理が災い」
http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2021-06/15/content_77569499.htm

『欧州連合中国政府代表部の報道官は14日、NATO首脳会議共同声明の中国に関する内容について、「NATOが中国をいわゆる『体制上の挑戦』としたのは、『冷戦思考の継続とブロック政治心理が災いしたもの』だ。中国が誰かに対して『体制上の挑戦』となることはありえないが、誰かが中国に対して『体制上の挑戦』をしようとするのなら、中国は無関心ではありえない」と強調した。中国新聞社が伝えた。

報道官は、「2021年の中国の国防費は1兆3500億元(約2090億ドル、1ドルは約110円)、対GDP比は1.3%であり、NATOの『及第ライン』を下回る。一方、2021年のNATO加盟30ヶ国の軍事費は総額1兆1700億ドルにも達する見通しであり、全世界の軍事費総額の半分以上を占め、中国の5.6倍だ。一体誰が世界中に軍事基地を設け、誰の空母が四方で武力を誇示しているのか、全世界の人々ははっきりと目の当たりにしている」と指摘。

さらに、「中国の発展を理性的に受け止め、様々な形の『中国脅威論』を誇張宣伝するのを止めるようNATOに促す。中国の正当な利益や合法的権利を、ブロック政治を弄し、人為的に対立を造り出し、地政学的競争を刺激する口実にしてはならない。より多くの力を対話と協力の推進という正しい道に向け、世界と地域の安全・安定の維持に真に資する事をより多くなすべきだ」とした。(編集NA)

「人民網日本語版」2021年6月15日』

「人権」対「賠償金」トランプの新たな選挙戦略

「人権」対「賠償金」トランプの新たな選挙戦略
海野素央 (明治大学教授 心理学博士)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/23212

『「中国は賠償金を支払え!」

 トランプ前大統領は6月3日、「米国を救え(Save America)」という政治団体を通じて、「中国は米国と世界に自分たちが招いた死と破壊の代償に10兆ドル(約1093兆円)を支払うべきだ!」と、声明を出しました。

 米疾病対策センター(CDC)によれば、米国内の新型コロナウイルスによる死者数は、59万4381人に達しました(21年6月6日現在)。また、世界保健機関(WHO)によれば世界の死者数は371万8683人です(同月6日現在)。厚生労働省の発表によると、日本の死者数は1万3574人です(同月7日現在)。言うまでもありませんが、新型コロナウイルスによって世界経済が大打撃を受けました。

 演説でもトランプ前大統領は新型コロナウイルスが中国の武漢ウイルス研究所から流出したと主張し、「中国は少なくとも10兆ドルの賠償金を払わなければならない」と語気を強めました。10兆ドルは中国が米国と世界にもたらした「死と破壊」を考えれば、決して高額な請求ではないと言うのです。トランプ氏は「10兆ドル以上だ」と強調しました。』
『加えて、中国によって債務漬けなっている国々に対する復興の頭金として、「債務帳消し」を強く求めました。このとき、トランプ氏は会場の支持者から拍手喝さいを浴びました。

 バイデン氏が中国新疆ウイルグ自治区及び香港における「人権」に焦点を当てているのに対して、トランプ氏は対抗軸として「賠償金」を出してきたのです。中国を巡り「人権」対「賠償金」という新たな対立構図を設定し、中間選挙を戦う狙いがあるのでしょう。中国に対してバイデン氏よりも強硬な姿勢で臨み、支持基盤を超えて、新型コロナウイルスの犠牲者の家族や親戚、友人等を幅広く獲得する意図が隠れています。ここは看過できない点です。』

「打倒トランプ」から「打倒中国」へ、バイデンの支持率が安定している本当の理由

「打倒トランプ」から「打倒中国」へ、バイデンの支持率が安定している本当の理由
海野素央 (明治大学教授 心理学博士)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/22765

『今回のテーマは、「政権発足100日、バイデンの支持率が安定している本当の理由」です。バイデン米政権は4月下旬で発足してから100日を迎えます。

 米政治専門サイト「リアル・クリア・ポリティックス」による各種世論調査のバイデン大統領の平均支持率(21年4月8~13日)は54%で、不支持率の41%を13ポイントもリードしています。バイデン氏は1月20日の就任以来、50%台の支持率を維持しています。

 では、その背景には何があるのでしょうか。本稿ではバイデン支持率安定の諸要因を整理します。

(ronniechua/gettyimages)

支持される増税

 一般に日本人にはバイデン大統領といえば、おそらく「増税をする大統領」というイメージが強いでしょう。しかし、バイデン氏は年収が40万ドル(約4400万円)以下の米国民には増税をしないと公約をしています。増税対象になるのは、40万ドル以上の高額所得者のみで、この政策は米国民から支持を得ています。

 世論調査で定評のある米クイニピアック大学(東部コネチカット州)の調査(2021年4月8~12日実施)によれば、年収40万ドル以上の富裕層に対する増税に関して、64%が「支持する」、31%が「支持しない」と回答しました。30ポイント以上も増税を「支持する」が上回っています。党派別にみると、91%の民主党支持者が「支持する」と答え、共和党支持者においても40%が賛成に回っています。

 さらに、バイデン大統領は法人税率を21%から28%に引き上げると発表しました。この政策も米国民から支持されています。同調査では62%が支持、31%が不支持と回答しました。こちらも党派別にみますと、92%の民主党支持者、55%の無党派層、34%の共和党支持者がバイデン氏の法人税増税案を支持しています。

 ジェンダー及び人種別では、法人税増税案に関する支持率が白人女性とヒスパニック系(中南米系)で67%、黒人で74%に上りました。女性と黒人、ヒスパニック系はバイデン氏の支持基盤なので、税制改革案は支持者固めに直結しているといえそうです。

次ページ » 2つの「ビックプラン」』

『2つの「ビックプラン」
 バイデン大統領は1.9兆ドル(約200兆円)規模の追加経済支援法案(通称「米国救済計画」)を米議会で成立させると、即座に2兆ドル(約218兆円)規模のインフラ投資計画(通称「米国雇用計画」)を米議会に提案しました。インフラ投資計画は、橋、道路、空港の整備といった従来型のインフラよりも、高速ブロードバンドの拡大や、50万カ所の電気自動車用充電ステーションの設置など、21世紀型に焦点が当たっています。

 この2つの「ビッグプラン」は米国民から支持を得ています。世論調査で有名な米マンモス大学(東部ニュージャージー州)の調査(21年4月1~5日実施)によれば、63%が「米国救済計画」を支持しました。特に、「強く支持する」は同年3月の35%から43%に8ポイントも上昇しました。

 では、米国民はインフラ投資計画をどのように受け止めているのでしょうか。上で紹介したクイニピアック大学の世論調査では、44%が「支持する」、38%が「支持しない」、19%が「分からない」と回答しました。米国民の約2割が態度を明確にしていないものの、支持が不支持を6ポイントリードしています。

 加えて同調査では、「仮に法人税増税によって財源を確保するとしたら、インフラ投資計画を賛成しますか、それとも反対しますか」という質問に対して、53%が「賛成」、39%が「反対」と答えました。賛成が14ポイントも上回りました。つまり、バイデン氏の法人税増税によるインフラ投資計画の実施が米国民から支持を得ているということです。

「共感・敬意型リーダーシップ」
 クイニピアック大学の調査では、米国民の52%がバイデン大統領のリーダーシップスキルを評価しています。昨年の大統領選挙でもそうでしたが、大統領に就任してからもバイデン氏は、新型コロナウイルスの犠牲者を出した家族の悲しみに寄り添った言動をとっています。例えば、常に上着のポケットに死者数を明記したカードを入れています。これも同氏が米国民から支持を得ている一要因でしょう。

 アフガン戦争に終止符を打つために4月14日(現地時間)、バイデン大統領は同時多発テロ発生から20年を迎える9月11日までに、同国の駐留米軍の完全撤退を完了すると正式に発表しました。その際も、アフガニスタンやイラクで戦死した米兵士と家族に対して共感と敬意を示しました。

 バイデン氏は「2448人の命が奪われ2万722人の負傷者が出た」と述べたとき、神聖な人間の命について「約」という言葉を使用するべきではないと主張しました。死者数の繰り上げ繰り下げに反対して、「約2500人の命」ないし「約2400人の命」という表現を使いませんでした。

 ホワイトハウスでの演説で、バイデン大統領は首都ワシントンにあるアーリントン国立墓地の「セクション60」に埋葬されているアフガニスタンで戦死した米兵士について言及しました。その後、セクション60に向かい献花を行いました。このようなバイデン氏の「共感・敬意型リーダーシップ」が遺族の心を確実につかんでいるでしょう。

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『「打倒トランプ」から「打倒中国」へ
 ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、米中関係について「衝突ではなく競争」と記者団に繰り返し述べています。バイデン氏は前回の大統領選挙で、「打倒トランプ」を合言葉に民主党リベラル派との結束を図り成功を収めました。今度は、民主・共和両党の共通の競争相手ないし敵を中国に設定して、「打倒中国」で団結力を高める意図が透けて見えます。

 その象徴となったのが、半導体に関してバイデン大統領が用いた建国の父ベンジャミン・フランクリンが残した名言でした。バイデン氏はホワイトハウスに超党派の議員を招待し、「1本の釘がなくなり蹄鉄が駄目になった」と述べたのです。「1本の釘がなくなり、蹄鉄が駄目になった。蹄鉄がなくなり、馬がどうしようもなくなった。馬がいなくなり、騎士はどうしようもなくなった。騎士がいなくなり、戦いはどうしようもなくなった」と、フランクリンは語りました。

 ただしバイデン氏の場合、「1本の釘」は半導体で、「馬」は5Gや兵器、「戦い」は中国との戦いを指しています。人権侵害や知的財産権窃盗で反中国感情が高まる米国社会において、「打倒中国」を共通項にして結束を図る戦略がバイデン氏の安定した支持率維持の主因になっています。』

「チャイナカード」を駆使したバイデン政権の景気浮揚戦略

「チャイナカード」を駆使したバイデン政権の景気浮揚戦略
斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/22774

『16日の日米首脳会談では「中国の脅威」を念頭に置いた日米同盟の重要性が強調されたが、バイデン政権は国内向けにも、半世紀ぶりといわれる大規模経済再建策への支持取り付けのため、「チャイナカード」を振りかざし始めている。今のところ、党派を超え国民の支持は広がりつつある。

(AP/AFLO)
 「このプランは、第2次大戦以来の最大規模の雇用投資であり、わが国の世界における競争力を高め、今後何年にもわたる中国とのグローバルな競争で勝ち抜く上でより優位に立たせることになる」

 バイデン大統領が去る3月31日、ピッツバーグに出向いて行った2兆3000億ドル規模におよぶ巨額インフラ投資計画のお披露目演説は、冒頭から中国との競争意識をむき出しにしたものだった。

 「この計画中には、政府主導研究開発予算の記録的増額が含まれており、バッテリー・テクノロジー、バイオテク、コンピューター・チップ、クリーン・エネルギーなどのハイテク分野における中国との競争に勝つことを目的とするものだ」

 「わが敵対国(中国)は、わが国がインフラ再建に取り組むことを非常に心配している。なぜなら、彼らはこれまで競争する必要のなかった分野で新たな競争を強いられることになるからだ」

 「習近平と大統領就任後2時間近く電話で会談したが、その中で彼は『あなたの国を一言で言えば、可能性の国だ』と評した。まさにその可能性こそわが国民の資質だ」

 「中国はわが国を食い物にしているChina is eating our lunch。われわれは何としてもインフラを整備する必要がある」

 「世界には、デモクラシー体制ではコンセンサスが得られないために自分たちの方が勝利できると考える専制国(中国)が存在する。まさにそれこそが、アメリカ対中国の競争の中核をなすものだ」

 さらに、このバイデン演説と同時にホワイトハウスが報道陣向けに配布したインフラ投資関連の「ファクトシート」(28ページ)でも、「中国」を名指しした表現が10数回にも及んだ。

 ワシントンの中国専門家の間では、米大統領およびホワイトハウスが国内政策重要演説で特定の外国の存在についてこれほど執拗に言及したのは、旧ソ連との冷戦に向き合ったアイゼンハワー大統領以来との見方が出ている。今や、ソ連消滅、冷戦終結後後、GDP世界第2位の大国にのし上がってきた中国といかに向き合うかが、アメリカにとっての最大関心事になってきたことの証左にほかならない。

 大統領選演説後、公表された世論調査結果によると、道路、空港、港湾、河川などの基礎インフラやインターネット通信網拡大などの社会インフラ充実を盛り込んだ今回のインフラ投資計画全般について、「支持」73%、「不支持」21%と、52%の圧倒的差で国民が支持していることが明らかになった(InvestNowUSA、4月6日)

 一方、インフラ投資の財源として法人税引上げに関する有権者を対象とした党派別世論調査によると、民主党員の「支持」が85%だったのに対し、共和党員の間では「支持」が42%、「不支持」が47%と分かれた(Morning Consult、4月7日)。共和党員の間では、今回のバイデン・プランについて、「民主党の選挙戦略」と位置付ける冷ややかな見方が依然少なくないことを示している。

 ケブン・マッカーシー共和党下院院内総務は早速、同プランについて「民主党が目指している法人税引上げは共産主義中国を上回る」と批判した。

 しかし、一般国民の間ではトランプ前政権当時から、党派を超え中国との対抗意識、反感が高まりつつあることは確かであり、アメリカの抜本的国力向上を目指した大胆なインフラ投資計画に対し、野党共和党としても徹底抗戦しにくい事情もある。

次ページ » 「チャイナカード」の“有効性”』

『「チャイナカード」の“有効性”
 米議会で先月、新疆ウイグル自治区における人権弾圧を理由として「2022年北京冬季五輪開催地変更」を求める決議案が上下両院に提出されたが、その際、対中強硬派の共和党議員が中心的役割を果たしたのも、対中ライバル意識を反映したものだ。

 バイデン政権にとっての「チャイナカード」の“有効性”については、すでに昨年、バイデン氏側近のタルン・チャーブラTarun Chhabra氏(現ホワイトハウス国家安全保障会議上級局長)らが共同執筆した「Foreign Affairs」誌論文中で詳述されている。チャーブラ氏はオバマ政権下で国家安全保障会議「戦略立案局長」を務めた後、昨年までブルッキングズ研究所「国際秩序・戦略」部長として論陣を張ってきた。

 同誌論文のハイライトは以下の通りだ:

 「中国の貿易慣行はアメリカから何百万人もの仕事を奪い、その経済成長は、アメリカの安全保障と繁栄の基幹をなす国際システムに大きな支障を招来させてきた。米中両国の競争は今や避けがたいものとなっている。中国は台頭するにつれ、各国および国際機関への影響行使を目的とした、貿易からサイバー・秘密工作にいたるあらゆる分野においてアメリカ相手に激烈な競争を挑んできた」

 「米国内の政治的右翼は、トランプ前政権が対中競争の観点から貿易戦争を仕掛け、インド太平洋における脅威に対抗するための国防予算増額に踏み切るなど、中国とのライバル意識を強めつつあった。その一方、左翼は従来から、対外的な過度の競争が排外主義を醸造し、愛国主義を煽ることで戦争を引き起こしかねないとの強い懸念を抱いてきた。そして大国間競争の結果として、産軍複合体を肥大化させ、ひいては国防、情報機関、外交キャリアたちの権力集中を招くことを心配してきた。彼らは、何十年にもわたるアフガン、イラク戦争などの長期化による厭戦気分を募らせ、国内再建への資源投入を強く呼びかけている」

 「しかし、左翼が中国の脅威認識に二の足を踏むことはそれ自体、中国のアジア地域での侵略行為、略奪的国家経済体制、人権抑圧政策を勇気づけることにつながる。彼らが現実直視を回避することは、われわれの機会を失わせる。逆に、中国に断固として対抗することは、アメリカの繁栄維持、安全保障強化、自由主義体制の価値観再生を可能とするのみならず、棄損した国内政治修復にも役立つ。左翼はこの際、かねてから抱いてきた地政学的競争に対する嫌悪感を一掃し、国内における多くの業績が外国からの脅威に対抗した結果であることを認識すべきだ」

 「わがアメリカ国民はこれまで、外国の敵と戦う際には国内的意見対立を克服し、共通の善のために犠牲を払う用意を示してきた。戦争あるいは地政学的競争が激化する際に、連邦政府は増税に踏み切り、経済的規制を強化し、科学、インフラ、社会サービス支出を増額し、取り残された人々、グループのための機会を増やし、富の格差縮小に乗り出した。第二次大戦中には、連邦予算は1938年の68億ドルから1945年には一気に983億ドルに増加、高所得者層を対象とした所得税も94%にまで引き上げられた。この結果、経済格差は米国近代史上最も顕著に是正され、その後の冷戦を通じ、全米ハイウェー網の構築、ソ連との技術競争に対抗するための公共教育、科学・技術支出増額にもつながった」

次ページ » 専制主義的中国国家との競争に打ち勝つ』

『専制主義的中国国家との競争に打ち勝つ
 「そして今や、中国との競争が大規模公共投資を実現させ(左翼が求める)進歩的課題の前進を可能とさせる時代が到来した。この点では、これまで共和党もあらゆる政策分野に対する大型連邦支出に異を唱えてきたが、中国への対抗を目的とした諸計画に関する限りは超党派的アプローチの機会を提供することになる。

 改革を『対中競争』を前提に組み立てることにより、進歩的プロジェクトも穏健派そして保守派に支持を拡大させることが可能となる。例えば2019年、中国産業・貿易政策に対する警戒心の高まりにより、レーガン革命当時のような経済保守主義に対する再考を共和党議員たちにも促しており、そのうちの一人、マルコ・ルビオ上院議員は『もはや市場原理主義では中国との競争に対処できない』として、21世紀型のいわば“共通善資本主義common-good capitalism”ともいうべき産業政策の推進を提唱している」

 「同様に中国との技術競争においても、高等教育予算削減や、わが国人材確保の貴重な資源である移民制限を主張してきた保守派に対し、主張の転換を余儀なくさせている。その他、バイオテク、ITなどの先端分野もしかりだ……わが国は気候変動、伝染病拡散防止などの分野における中国民間レベルとの協力関係を進める一方で、専制主義的中国国家との競争に打ち勝つために、“中国カード”を効果的に駆使していくべきである」

 このように、チャープラ氏らは、内政重視の民主党リベラル派に対しては、「中国との競争」こそが米国内の社会投資増大ひいては米国の国力強化につながることを説明する一方、財源確保のための法人税などの引き上げに根強い反対を唱える共和党タカ派向けには、中国への強硬姿勢をアピールすることで支持取り付けの重要性を訴える、いわば“両面作戦”の切り札としての「チャイナ・カード」の利点を強調したものだ。

 バイデン大統領が今回打ち出した「インフラ投資」大計画は、再びホワイトハウス入り後、実際に戦略立案に携わるチャープラ氏の従来の主張を反映させていることは確かだ。今後、同政権としてはこうした視点に立った上で、中国との対抗意識をできるだけ前面に打ち出し、インフラ整備・新規投資のための大規模予算支出に対する国民の理解を求めていくとみられる。

 ただ、それによって、トランプ前政権時代に増加しつつあった財政赤字のさらなる拡大は避けられず、今年後半にかけ、財源確保のための法人税および高所得者向け所得税引上げ案をめぐり、減税重視の野党共和党との激しい攻防が注目される。』

菅・バイデン共同会見、3つの疑問点

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/22785

『今回のテーマは、「菅・バイデン共同会見、3つの疑問点」です。菅義偉首相は4月16日、ジョー・バイデン米大統領とホワイトハウスでの会談を終了した後、共同会見に臨みました。

 そこで、菅首相は中国、台湾、イノベーション、コロナ対策、気候変動並びにアジア系住民への差別問題などで「一致した」と繰り返しました。合計11回も「一致した」と強調したのです。

 一方、バイデン氏は共同会見で中国の挑戦に対して日米が連携して対抗する重要性について言及しましたが、今夏の東京オリンピック・パラリンピック競技大会及び、日本の中国に対する人権侵害制裁の立場に関して明言を避けています。

 そこで本稿では、共同会見での菅・バイデン両氏のパフォーマンスと内容に関する3つの疑問点を挙げます。

(AP/AFLO)

【疑問点その1】

 なぜバイデン大統領は共同会見でこの夏の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の支持を表明しなかったのか?

 共同会見で菅首相は、「今年の夏、世界の団結の象徴として東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を実現する決意であることをお伝えしました」と語り、「バイデン大統領からこの決意に対する支持を改めて頂きました」と述べました。共同声明には確かに「バイデン大統領はこの夏の安全・安心な東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催するための菅首相の努力を支持する」と明記されました。

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、今回の訪米で菅首相が重視していた議題のひとつであったことは間違いありません。というのは、帰国後菅氏はバイデン大統領から再度支持を得たと主張できるからです。バイデン氏は菅氏に「お土産」を持たせたと解釈できます。

 ただし、バイデン大統領は共同会見で東京オリンピック・パラリンピック競技大会への強い支持を表明しませんでした。

 共同会見の前日15日に行われた政府高官とメディアとの電話会議で、同高官はバイデン大統領が東京オリンピック・パラリンピック競技大会を巡る菅首相の置かれた政治状況に対して非常に神経質になっていることを明かしました。その上で、「大会開催まで数カ月あるので状況を見守ろう」と述べました。バイデン氏は東京オリンピック・パラリンピック競技大会に関する自身の発言が、菅政権の存続に影響を及ぼす可能性があると捉えており、軽々な発言をしないように控えているのです。

 20年米大統領選挙を振り返ってみると、バイデン大統領はドナルド・トランプ前大統領とは異なり、支持者の参加人数を制限した小規模集会を開いて、マスク着用及びソーシャルディスタンスを義務づけていました。さらに新型コロナウイルス感染が拡大すると、ドライブイン形式の集会を開催し、参加者は拍手喝さいの代わりに、車内からクラクションを鳴らして支持表明をしました。選挙期間中、バイデン氏は「コロナ対応型選挙」に徹し、それが有権者から支持を受けました。

 となると、菅氏との会談でバイデン大統領は東京オリンピック・パラリンピック競技大会に関して、かなり高いレベルの安全性の確保ができているのかを確認したとみて間違いありません。共同会見で支持を明言しなかった理由は、バイデン氏は100%確信をもっていないからです。

次ページ » バイデン大統領は菅首相の招待を受け入れたのか?』

『バイデン大統領は菅首相の招待を受け入れたのか?

【疑問点その2】 

 バイデン大統領は菅首相の招待を受け入れたのか?

 菅首相は3月26日の参議院予算委員会で、バイデン大統領を東京オリンピック・パラリンピック競技大会に招待する考えを示しました。この件に関しても、バイデン氏は共同会見で態度を明らかにしませんでした。

 外国人記者が共同会見で菅首相に対して、「公衆衛生の専門家が日本は準備ができていないと指摘しているのに、オリンピックを進めるのは無責任ではありませんか」という厳しい質問をしました。それに対して菅氏は回答をしなかったのです。ホワイトハウスでの共同会見に不慣れな菅氏は、外国人記者はバイデン氏のみに質問をぶつけてくると思い込んでいたフシがあります。

 この場面は今回の共同会見のポイントです。菅首相は明らかに東京オリンピック・パラリンピック競技大会に対する疑問を払拭する機会を逃しました。

 実は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会に関する質問はホワイトハウスでの定例記者会見でも出ています。ある担当記者がジェン・サキ報道官にコロナ禍での東京オリンピック・パラリンピック競技大会へのバイデン氏招待について、「菅首相は大胆な発言(a big statement)をしたと思いませんか」と質問をしました。

 この「大胆な発言」には、「よくもそのような発言をしたものだ」という否定的な意味が含まれています。つまり、コロナ禍でのバイデン招待は、「困難」ないし「失礼」と言いたのです。

 バイデン氏の率直にもの言うパーソナリティを考えると、本当に東京オリンピック・パラリンピック競技大会を支持しているならば、共同会見で「強く支持する」「ヨシからの招待を受ける」と断言したはずです。共同声明の東京オリンピック・パラリンピック競技大会支持は、バイデン政権の対中国戦略においてこれから矢面に立つ菅首相に対する特別な配慮としか思えません。

次ページ » 中国の人権問題 』

『中国の人権問題

【疑問点その3】
 バイデン大統領は日本の中国に対する人権侵害制裁の立場を今後も理解するのか?

 政府高官はメディアとの電話会談で、中国に対して人権侵害制裁を課さない日本に一定の理解を示しました。その理由として日中両国の経済関係の緊密さを挙げました。中国に対する人権侵害制裁に関して、日本に欧米と一緒に制裁を課すように無理に押し付けないというシグナルを発信したのです。

 帝国データバンクによると、中国進出日系企業数は1万3646社(2020年1月時点)です。業種別では、製造業が5559社で全体の約4割を占めています。

 仮に日本が人権制裁法の法整備を行い、欧米と共に中国に制裁を課した場合、同国は報復措置に出る公算が高いことは言うまでもありません。具体的には日本製品の不買運動、日系企業を標的にした法人税増税、入管手続や日本からの輸入品の手続における嫌がらせなど、多岐にわたる報復措置が可能です。

 中国との経済関係を重視している日本は、人権問題で同国を刺激しないように注意を払っています。ただ、同盟国・友好国が束になって、中国に対して人権侵害の制裁を課してもらいたいというのが、バイデン大統領の本音です。人権はバイデン政権において内政と外交の双方の中核に位置づけられているからです。

 今後、人権を最優先しないグローバル企業は消費者及び投資家から見捨てられる可能性があることを、日本企業は理解しなければなりません。世界的に人権重視の風潮が高まる中で、「人権尊重の経営」が日本企業の存続に直結するときが間近まで来ているといっても過言ではないからです。

 米中の対立が先鋭化したとき、果たしてバイデン政権が日本の人権侵害制裁に対する消極的な立場に理解を示すかは予断を許しません。』

中国「一切の必要措置取る」 日米の台湾言及に対抗示唆

https://www.asahi.com/articles/ASP4M6F9PP4MUHBI01V.html

『中国外務省の汪文斌副報道局長は19日の定例会見で、日米首脳会談後の共同声明で「台湾海峡の平和と安定」に言及したことについて、「台湾は不可分の中国の領土だ。中国は一切の必要な措置を取り、国家主権と安全、発展の利益を断固守る」とし、日米が関与を強める場合は対抗措置を取ることを示唆した。

 声明で香港や新疆ウイグル自治区の人権状況に「深刻な懸念」を示したことについては、「人権問題では日米こそ負い目がある」と反論。日本の過去の侵略戦争や米国の21世紀以降の戦争を挙げつつ、「日米がすべきことは、自らの侵略の歴史と他国への人権侵害を反省して是正することであり、人権の看板を掲げて中国内政に干渉することではない」と断じた。

 共同声明全般については「日米は国際社会を代表しておらず、国際秩序を定義する資格も自らの基準を他人に押しつける資格もない」と指摘。「口では『自由で開かれた』と言いながら小グループをつくって対抗をあおることこそ、地域の平和と安定に対する真の脅威だ」などと批判した。

 日本には「周辺国や国際社会の懸念を直視すべきだ」とし、東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出決定を取り消すよう改めて求めた。(北京=冨名腰隆)』

初のインド太平洋戦略 対中念頭、海軍派遣視野―EU

『【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)加盟国は19日、EU初の包括的なインド太平洋戦略をまとめた。中国への懸念を念頭に地域の安全保障や経済への関与を強化。「同じ考えを持った国々」と協力し、人権保護やルールに基づく国際秩序の維持を推進する。加盟国によるインド太平洋海域への海軍派遣の重要性もうたった。
〔写真特集〕世界の航空母艦

 9月までに詳細を取りまとめる。対中強硬姿勢を示しインド太平洋地域を重視するバイデン米政権や、EUが「同じ考え方を持った国」と見なす日本のインド太平洋構想とも重なる動きだ。
 ただ、戦略では中国の名指しは回避。EU加盟国間には対中政策に温度差もあり、足並みをそろえて戦略を実行できるかは不透明だ。』

安保法制「台湾」に対応へ 存立危機事態などに備え

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA183RZ0Y1A410C2000000/

『菅義偉首相とバイデン米大統領は16日(日本時間17日)の会談後に公表した共同声明で、台湾海峡の平和と安定の重要性を訴えた。台湾で軍事的緊張が起こった際、米軍とともに自衛隊も対処するシナリオが現実味を帯びる。日本政府は安全保障関連法に基づく3つの事態への対応について検討を迫られる。

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記者団に「我が国の安全保障はもとより、国際社会にも台湾の安定が重要だ」と語った。
防衛省・自衛隊が想定する最悪のシナリオは台湾周辺での武力衝突だ。中国が台湾を攻撃し、米国が参戦すれば在日米軍が最前線を担う。日米安全保障条約の6条は極東で有事があれば米軍が日本の基地を使用できると規定する。在日米軍基地は台湾への出撃拠点として攻撃対象になりかねない。

こうした局面で日本は要件を満たせば武力を行使できる。

①日本や密接な関係国への武力攻撃
②他に適当な手段がない
③必要最小限度の実力行使――の3要件だ。

安保関連法では外国軍の日本への直接攻撃は「武力攻撃事態」と分類する。閣議で認定し国会が承認する。上陸侵攻、ゲリラ部隊による攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空攻撃を想定する。

首相が防衛出動命令を出せば、自衛隊が対処する。台湾に近い南西諸島に脅威が迫れば上陸阻止や離島の奪還に動く。ミサイルの迎撃もできる。

判断が難しいのは日本が直接攻撃を受けず、米軍が攻撃を受けた時だ。安保関連法は日本と密接な関係にある他国が攻撃され、日本の存立が脅かされる明白な危険がある場合を「存立危機事態」と規定する。集団的自衛権を限定的に行使できる事態だ。

これが台湾にどう適用されるのか、これまで政府は具体的に示していない。2014年には危険地域から邦人を輸送する米艦の防護、15年には中東ホルムズ海峡での機雷掃海、17年には北朝鮮が米国に発射したミサイルの迎撃を具体例に挙げている。

いずれも台湾を念頭においた例示ではない。台湾有事も同様に対処するのか、早急に整理する必要がある。

もう一つの分類は日本の平和と安全に重要な影響を与える時の「重要影響事態」だ。自衛隊は米艦への補給などの後方支援や捜索救助、船舶検査ができる。

他の2つとは違い、日本も米国も武力衝突に突入していない場合が多い。どういう時が「日本の安全に重要な影響がある」のか、判断は難しい。

問題になるのが、軍ではなく武装した民兵や漁船が侵攻するような「グレーゾーン」の状況だ。キヤノングローバル戦略研究所の宮家邦彦研究主幹は「中国によるグレーゾーンの攻撃への備えは重要だ」と語る。

台湾を臨む最西端の碑の前で記者団の質問に答える岸防衛相(17日、沖縄県与那国島)

グレーゾーンは沖縄県尖閣諸島でも懸念材料になる。防衛相経験者は「十分に準備ができていない」と話す。宮家氏は「海上保安庁と自衛隊、米軍が連携し作戦計画を立てておかなければならない」と指摘する。

米国を尖閣の危機に関与させるためにも、日米で台湾を含めたグレーゾーンでの協力体制を検討することが重要になる。

自衛隊も台湾対応が課題になる。拓殖大の佐藤丙午教授は「中国軍の台湾への着上陸の妨害が自衛隊の最大レベルの行動だろう」と話す。自衛隊機で台湾侵攻を水際で防ぐ対処が考えられるという。

高精度のレーダーとミサイル迎撃能力を持つイージス艦の活用も有力な手段になる。佐藤氏は「自衛隊が持つミサイル防衛システムの資産を台湾防衛に活用すべきだ」と話す。

(安全保障エディター 甲原潤之介)

「韓国引き込みクアッド拡大を」 兼原・元官房副長官補 日米共同声明を聞く(1)

「韓国引き込みクアッド拡大を」 兼原・元官房副長官補
日米共同声明を聞く(1)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE193Z80Z10C21A4000000/

『日米首脳の声明で台湾に触れたのは1969年の佐藤栄作首相とニクソン大統領以来となった。中国は当時、ソ連と国境で軍事衝突し、台湾に軍事力を割く余裕はなかった。日米は中国と国交正常化を果たし、中国を脅威と思わなくなった。

台湾有事は2030年ごろが一番危ない。国家は国力の衰退がはじまると軍縮交渉に応えるようになる。ソ連がそうだった。成長途上の中国の国力がピークアウトするのは20年も先であり、それまでは…

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成長途上の中国の国力がピークアウトするのは20年も先であり、それまでは軍拡がやまない。

中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は伝統的なリーダーでない。胡錦濤(フー・ジンタオ)氏や温家宝氏のような文人タイプでなく、若い頃に文化大革命を経験した紅衛兵世代にあたる。共産主義が懐かしいのだろう。

中国はいまだに国民国家を完成させていない。共産主義は心の芯となる国民的アイデンティティーを確立できない。チベットやウイグルにこだわるのも、国がバラバラになるのを恐れるからだ。

習氏は香港への強引な介入を辞さなかった。武力による台湾の併合は絵空事でない。安全保障面で米国の支援を受ける台湾に手を出し始めているのだから相当な事態である。

中国は米国と四つに組む自信を付けつつある。米国が台湾周辺で頼れるのは日本しかない。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は米中双方にいい顔をしている。タイやフィリピンは軍事力が小さい。オーストラリアは頼もしいが遠すぎる。

今回の日米首脳会談は強大になりすぎた中国に対抗する最大のパートナーが日本であると証明した。菅義偉首相とバイデン大統領の関係は順調な滑り出しとなったが、10年、20年先を見据えればまだ1合目にすぎない。

外交の基本的な役割は力関係の維持で、味方を増やして敵を減らすのが鉄則だ。日米にオーストラリアとインドを加えた4カ国(クアッド)の枠組みだけでは足りない。

韓国は文氏の世代に北朝鮮への共感があり、世代交代が進まないと難しい。とはいえ民主主義国であり、60万の兵力を持つ軍事大国である。日本として「クアッド・プラスアルファ」に韓国を引き込まねばならない。

現在の米中対立は米ソ冷戦の類比で理解できない。むしろ第1次世界大戦前の英国とドイツの関係に似ている。英国は工業化の遅れたドイツに多大な投資をしていた。相互依存が進み「戦争は起きない」と言われていたが起きてしまった。

半導体の技術規制は始まったものの、中国に進出する日米欧の民間企業が撤退することはない。成長する中国市場はなかなか捨てがたい。それでも戦争はマーケットと異なる論理で始まる。

日本は中国を抑止するため防衛予算の拡大が必要だ。財政は厳しいが本当に国が危なくなったら出さないといけない。科学技術の進歩が国家安全保障に全く生かされていないのが日本の難点だ。改革が欠かせない。

日米首脳の共同声明について専門家に聞く。

日本、有事へ米と危機感共有 自立した防衛力急務

日本、有事へ米と危機感共有 自立した防衛力急務
新時代の日米㊥
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA16DKD0W1A410C2000000/

『台湾問題などに言及した日米首脳の共同声明を受け、中国外務省の副報道局長は19日の記者会見で「必要な措置をとり国家主権を断固守る」と強調した。示唆した対抗措置がどんなものになるかは見通せない。

沖縄県・尖閣諸島の周辺海域では日本領海の外側の接続水域を19日も中国海警局の船4隻が航行した。機関砲のようなものを搭載した船もあるという。尖閣周辺で中国公船を確認するのは連続65日を超える。

台湾海峡の南西空…

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台湾海峡の南西空域でも、中国の戦闘機や爆撃機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入するのが常態となっている。12日には最多の25機が飛来した。

南シナ海では4月上旬、米中の空母が同時期に展開する事態が起こった。米海軍の空母「セオドア・ルーズベルト」が南から、中国海軍の空母「遼寧」が北からそれぞれ海域に入った。

米国はこうした東アジアの軍事バランスの変化を踏まえ、世界に散らばる米軍の配置を最適化するための検証を始める。バイデン米大統領が日米首脳会談に先立ち、アフガニスタンの駐留米軍の9月までの撤収を表明したのもその一環だ。

中国をにらみ、インド太平洋地域に兵力や予算をシフトしていく。沖縄からフィリピンを結ぶ第1列島線に沿って中距離ミサイル網を築く案も浮上する。

「インド太平洋地域の軍事バランスは米国と同盟国に一層不利になる」。米インド太平洋軍のデービッドソン司令官は制海権を保つには戦力の向上が必須だと訴える。米軍は戦闘機や艦艇、ミサイルの数で米中の差がさらに開くと予測。同盟国に応分の役割を求める機会も増えるとみられる。

米ソ冷戦の最前線が欧州なら、日本を含む東アジアは米中対立のフロントライン。日本の防衛力は同盟国の対中抑止力を左右する。

日本の安全保障体制は自立した防衛力と日米同盟の2本柱だ。日米安保条約第5条は米国による日本防衛の義務を定めるものの、敵からの攻撃の第1波に米軍が間に合う可能性は極めて低い。その間は自衛隊だけで守るのが大前提となるが、持ちこたえられるのか。

尖閣諸島に中国軍が上陸して侵攻しようとした場合、それを阻止する陸上自衛隊の水陸機動団の拠点は長崎県内にある。尖閣諸島までおよそ1000キロで、新型輸送機オスプレイでも2時間かかる。中国の侵攻の意図が分かって部隊を派遣しても手遅れとなる。

現状では日本が相手国のミサイル発射の兆候をつかんでも、それを阻止するために敵のミサイル発射拠点を攻撃できない。政府が「敵基地攻撃能力」の保有を否定しており、ここも米軍に頼らざるを得ない。

仮に中国が台湾を武力で統一しようとすれば、台湾に攻め込む中国軍を止めるのも米軍だ。集団的自衛権を行使して米軍への攻撃に自衛隊が反撃できるようにするには「存立危機事態」に認定する必要がある。台湾有事がそれに当たるかはときの政権の判断となる。

「台湾海峡、また尖閣周辺でも厳しい状況が続いている」。菅義偉首相は日米首脳会談後、記者団に台湾問題と、台湾から170キロと近い尖閣諸島を巡る危機感を並列で語った。

会談から8時間後の17日昼。岸信夫防衛相は日本最西端の沖縄県与那国島を視察した。あいにくの曇天だったが、晴れていれば110キロ先の台湾が見える。台湾有事は対岸の火事で済まない。首脳会談で共有した危機感を防衛力の向上につなげることが急務となる。

(安全保障エディター 甲原潤之介)

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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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分析・考察 尖閣と台湾の有事を想定した備えを急ぐべきなのは記事の通りです。日本は世界5位と同9位といわれる防衛力と防衛費を持つ一方、憲法や財政などの制約があります。有事やグレーゾーン事態にできることとできないことを早急に整理し、米軍と連携した効率的な防衛態勢づくりが必要です。

台湾海峡が有事になればサプライチェーンなど日本経済への影響は米国とは比べものになりません。米国一本足打法ではなく、アジアに関心を強める欧州やASEANにも協調国の裾野を広げるのは中国へのけん制になります。対中外交をはじめ有事を起こさせないための交渉力が「防衛力」強化なのは言うまでもありません。

2021年4月20日 8:12いいね
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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察 台湾有事が他人ごとではないのは、台湾も尖閣諸島も中国が自らの主権を主張しているという点で共通しているから。中国がアメリカの抑止力を認めず、自らの軍事的優位を過信して武力を用いて台湾侵略を行うということは、すなわち尖閣諸島が日米安保条約第五条が適用されたとしても、中国がアメリカの抑止力を認めない以上、台湾と同じことが起きうるということ。そのためにも、台湾有事は起こしてはならないし、もっといえば中国がアメリカの抑止力を認めないという状況を作ってはならない。

2021年4月20日 7:50いいね

日米首脳ハンバーガー会談舞台裏…台湾明記で対中戦略は?バイデン政権内に不満も

https://news.yahoo.co.jp/articles/f09f98776082d87cc9e72e80c0fd3c8d6b1e75f0?page=1

『日米首脳は、ホワイトハウスの一室で、ハンバーガーを前に、マスクを着用したまま見つめ合っていた。

バイデン大統領が、初めての対面形式の会談相手として、菅首相を招いて行った日米首脳会談。共同声明では約半世紀ぶりに「台湾」を明記し、中国を強くけん制した。

「雰囲気はすごく良かった」と出席者が口を揃え、首相自身も「私と似ている」と“ベテラン政治家”同士の相性に手応えを語る一方、ある政府関係者からは「米中の事実上の軍拡競争に日本は巻き込まれている」との声も上がる。

いったい何が起きているのか。舞台裏を探った。(ワシントン支局長・矢岡亮一郎)

■食べない“ハンバーガー会談”

「いろいろ人生経験とかの話をして、ハンバーグ(注:ハンバーガー)も全く手をつけないで終わってしまった。それくらい熱中した」

会談終了後、菅首相は少し頬を緩めながら、バイデン大統領との「テタテ」と呼ばれる1対1の会談を振り返った。時間にしてわずか20分間。「たたき上げの政治家という共通点がある」と親近感を寄せるバイデン大統領とは、部屋に飾られた家族の写真を見ながら、孫などの話題で打ち解けたという。

「私と似ているような感じを受けたが、本人もそう思っているようで…」

とバイデン氏との信頼関係の構築に手応えを語った。しかし、この「食事に手をつけないランチ会」に至るまでには、紆余曲折があった。

■ホワイトハウス「幻の夕食会」

日本代表団ホテルに「坂井副長官のお土産」段ボール…「1ドルチョコ」も

「こんなにバタバタの首脳会談は初めてだ」

首相の訪米を翌々日に控えて、ある日本政府関係者はうめいた。ホワイトハウス側との調整が滞り、スケジュールは直前まで定まらなかった。今回、日本政府がこだわったのが、バイデン大統領、ハリス副大統領との食事会。特にバイデン大統領との「夕食会」開催に向けては最後まで粘り強く交渉を続けたというが、結局実現することはなかった。

バイデン大統領自身、コロナ禍での対面の会談にはかなり慎重だとされる。会談中は「常時マスク着用」、しかも高性能のN95マスクの着用が義務づけられた。

この徹底ぶりはハンバーガーを前にしてなお、マスクを外さない一枚の写真によく表れている。

次ページは:■台湾明記も…バイデン政権内に「落胆」』

『■台湾明記も…バイデン政権内に「落胆」

首脳会談では「N95マスクを常時着用」

首脳会談は、1対1のテタテ、少人数会合、拡大会合と3段階で計2時間半に及んだ。

今回の会談の最大の焦点は、共同声明に「台湾」の問題を明記するかどうかだった。そもそも日米首脳の共同文書に「台湾」が明記されれば、1969年の佐藤栄作首相とニクソン大統領以来、半世紀ぶりとなる。「台湾」の文言を盛り込みたいアメリカ側と、慎重な日本側との間で、事前調整はかなり難航したという。この対立構図を英紙フィナンシャル・タイムズが報じ、日本側が米側のリークを疑う場面もあった。

結局、共同声明には「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記された。日本政府の要請で後半に加えられたという「両岸問題の平和的解決を促す」という文言は、台湾問題に触れる場合の日本政府の定型見解で、外務省幹部は「この表現を後ろに付けることで、これまでの日本政府の姿勢と変わっていないというメッセージになる」と解説した。

一方で、あるアメリカ政府関係者は、「日本には共同声明でもっと強い表現に賛同して欲しかった」「落胆している」と不満を口にしている。

■日本「台湾明記」もなお米政府内に不満

「台湾の明記」を「内政干渉だ」とする中国は、共同声明に対し「強烈な不満と断固反対を表明する」と猛反発した。一方、アメリカ政府内には「台湾」を明記してなお、日本への不満が燻る。「日本は台湾有事への危機感が低い」との見方や、別のアメリカ政府関係者からは「日本は経済分野で中国と良い関係を保っていて、少しずるい」との声まで聞かれる。

アメリカが中国と貿易戦争をやって、経済面でも身を切る覚悟で向き合う中で、日本が尖閣など安全保障面で守ってもらおうというのは「不平等」との不満もあるようだ。

■菅首相「一番乗り」のワケ

菅首相訪米も「対中国のメッセージ」に

今回の菅首相の「一番乗り」は、日本重視と言えるのだろうか。ある日米外交筋はこう話す。
「バイデン大統領が菅首相を最初の会談相手に選んだのは、『日本』だからではない。対中国の最大の同盟国だからだ」

菅首相の訪米は、あくまでアメリカの対中国戦略の一環、一つのパーツとの位置づけだ。現にバイデン大統領は、同じタイミングで気候変動問題担当のケリー特使を中国に、台湾にも非公式の代表団を派遣して、台湾トップ蔡英文総統と会談させた。日米首脳会談に同席したブリンケン国務長官とオースティン国防長官は直前まで、欧州を歴訪していた。

バイデン政権は「同盟」を重視しながら、複合的かつ戦略的な外交を展開している。その中の一番重要なパーツとして、日本のトップを米国に招き、首脳会談を通じて「強固な同盟」、台湾などをめぐる厳しい姿勢を中国に見せつけた。

ある日本政府関係者は「ホワイトハウスは今回、バイデン大統領と菅首相が2人で並んでの会見にこだわった。発信したかったのだろう」と打ち明ける。

■日米今後は?「総論はいいが、各論に入ると…」

「ジョー」「ヨシ」が描く対中国戦略は

ある日本政府関係者は「日米は総論はいいが、各論に入ると立場の違いが露呈してくる」と交渉の難しさを語っている。今回の台湾をめぐる文言の調整は「各論の立場の違い」の一つのケースになった。

別の日本政府関係者は「日本はすでに米中の事実上の軍拡競争に巻き込まれている」と語った。今後も中国をめぐる情勢が厳しさを増す中で、アメリカに立場の違いでどう理解を得ていくのか。日本外交の力が試される。』

ミャンマー政変なぜ起きた? やさしい3分解説

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM094UN0Z00C21A4000000/

『東南アジアのミャンマーで国軍によるクーデター発生からもうすぐ3カ月となります。国軍は反発する国民に容赦なく銃口を向ける一方、自制を求める周辺各国の思惑が入り乱れ、混乱に拍車がかかっています。日本企業の主戦場であるアジアの政治情勢への理解はビジネスに欠かせません。ゆっくりながらも着実に民主化の道を歩んでいたと思われていたミャンマーで何が起きているのか。やさしく解説します。

Q:ミャンマーってどんな国?

インドシナ半島西部に位置します。面積は日本の約1.8倍にあたる68万平方キロメートルほどで、推計約5600万人の人口を抱えています。「建国の父」として今も国民の尊敬を集める故アウン・サン将軍(1947年に暗殺)の指導のもと、48年に英国の植民地から独立しました。当初は民主制を採用しましたが、62年に国軍がクーデターで政権を掌握し、89年には国名をビルマからミャンマーに変更しました。

ミン・アウン・フライン総司令官率いるミャンマー国軍はクーデターに抗議する民衆に銃口を向ける(3月27日、ネピドー)=ロイター

軍事政権下で経済成長が遅れ、民主化後は「アジア最後のフロンティア」として外国の投資を集めています。繊維産業などが育っていますが、日用品やガソリンなど多くの物資を輸入に依存しています。仏教徒が9割近くを占める一方、多民族国家でイスラム教徒の少数民族ロヒンギャへの迫害が国際問題になっています。

Q:なぜまたクーデターが起こったの?

民主化の流れが強まり国軍が影響力の低下に危機感を持ったからとみられています。軍事政権は民主化を求める国内外の声に押され、2010年に20年ぶりの総選挙を実施しました。当初、民主化運動の指導者、アウン・サン・スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)は国軍が主導した選挙をボイコットしましたが、15年総選挙に参加して圧勝、政権を獲得しました。20年11月の総選挙で、NLDはさらに議席を伸ばし、国軍系政党の不人気を浮き彫りにしました。焦った国軍は「選挙の不正」を理由にクーデターに打って出ました。

Q:アウン・サン・スー・チーさんはどんな人?

アウン・サン将軍の娘で、当初は英国で研究生活を送り、英国人男性と結婚して家庭を築くなど政治の表舞台からは離れて暮らしていました。軍事政権下、1988年に学生を中心に民主化運動に火がつくと、帰国していたスー・チー氏が先頭に立ち、NLDを結成しました。90年の総選挙でNLDは圧勝しましたが、軍は政権移譲を拒否し、民主化運動を弾圧し続けました。

スー・チー氏は89年から計3度、15年間自宅軟禁されました。その間、91年にノーベル平和賞を受賞しました。2015年の総選挙後、NLDは政権を握り、軟禁を解かれていたスー・チー氏は外相兼国家顧問として事実上、国のトップに就きました。軍事政権が08年に制定した憲法の規定で、英国籍の息子がいるスー・チー氏は大統領になれません。

抗議デモに参加する民衆と治安当局の衝突で煙が上がるミャンマー北部のタゼ。国軍のデモ弾圧でこれまでに全土で700人以上が死亡した(4月7日、タゼ)=ロイター

Q:日本を含む国際社会とのかかわりは?

映画「ビルマの竪琴」が描いたように、旧日本軍は第2次世界大戦中、当時のビルマを占領していた時期があります。戦後、日本は政府開発援助(ODA)を通じて積極的に国家建設を支援し関係を強めました。スー・チー氏も1980年代に京都大で研究経験があります。
97年、ミャンマーは東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟を果たしました。近年では中国が広域経済圏構想「一帯一路」の一環のインフラ支援などを通じて急速に影響力を強めています。中国とインド洋をつなぐ安全保障上の要衝だからです。

Q:弾圧は止められないの?これからの展望は?

国軍はクーデターに抗議する国民に武力による弾圧を続けています。死者は700人以上に達したとされ、事態は悪化の一途をたどっています。ASEANは盟主を自任するインドネシアが主導して対話による解決をめざしていますが、ASEAN内でも軍事政権の流れを組むタイや共産党独裁のベトナムなどは、内政不干渉の原則を持ち出して、静観を続け、一枚岩ではありません。国連は安全保障理事国内で米英仏と中ロの対立を抱え十分機能していないうえ、東南アジアへの影響力を確保しようとする大国の利害が絡み、ミャンマーの民主主義の回復への道筋は描けていません。=おわり

(ジャカルタ=地曳航也)』

日米首脳会談で菅首相が踏んだ踏み絵の意味

日米首脳会談で菅首相が踏んだ踏み絵の意味
米議会は超党派で「戦略競争法案」提出、後戻りできない日本
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64976?utm_source=editor&utm_medium=mail&utm_campaign=link&utm_content=top

高濱 賛のプロフィール
Tato Takahama 米国在住のジャーナリスト

1941年生まれ、65年米カリフォルニア大学バークレー校卒業(国際関係論、ジャーナリズム専攻)。67年読売新聞入社。ワシントン特派員、総理官邸キャップ、政治部デスクを経て、同社シンクタンク・調査研究本部主任研究員。1995年からカリフォルニア大学ジャーナリズム大学院客員教授、1997年同上級研究員。1998年パシフィック・リサーチ・インスティテュート上級研究員、1999年同所長。

『出されたのはハンバーグ・ランチのみ

 菅義偉総理大臣とジョー・バイデン米大統領による初めての日米首脳会談が行われた。
 異例だらけの日米首脳会談で両首脳は何を話し、どんな約束をしたのか。菅氏は記者会見では「やり取りの詳細については外交上、明かさない」と突っぱねた。

 表に出ては国民向けにも中国向けにも支障が出るような発言や密約があるのだろうか。機密文書は30年経たねば解禁されない。ということは30年間国民は知らされないことになる。

 新型コロナウイルス感染症のパンデミックス禍で公式の昼食会も晩餐会もなし。ジル・バイデン夫人も顔を見せなかった。

 両首脳は2人だけでハンバーグ・ランチを食べた。

 異例と言えば、菅氏は大統領に会う前にカマラ・ハリス副大統領をホワイトハウスに隣接するアイゼンハワー行政府ビルの副大統領室に表敬訪問したことだ。

 何やら外国訪問など外交面でのハリス氏の今後の積極的な活動を暗示している。

 首脳だけのテタテ(1対1)会談、外務閣僚らを入れた少人数会議、拡大会合を合わせると2時間50分。

 会談後に発表された共同声明(U.S-Japan Joint Leaders’ Statement:”U.S.-Japan Global Partnership for a New Era”)は英文で2500字の長文。実務事項びっしりの外交文書だ。

 共同声明は共同宣言に次ぐ国家間の最重要文書だ。

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/statements-releases/2021/04/16/u-s-japan-joint-leaders-statement-u-s-japan-global-partnership-for-a-new-era/

 これだけ詳細な実務事項を盛り込むには、事前に閣僚、事務レベルでの綿密なすり合わせがあったといっていい。

 内容は台湾海峡に始まり新疆ウイグル自治区…』

『内容は台湾海峡に始まり新疆ウイグル自治区、香港、尖閣諸島、半導体サプライチェーン、気候変動、東京五輪、普天間米空軍基地の辺野古移転まで、今後5年、10年の日米間の約束事を網羅している。

 首脳会談直前まで日本メディアの外交通と称する連中はこう見ていた。

「ウイグルや台湾、ミャンマーといった厄介な問題に深入りするのを避けて、半導体サプライチェーンや気候変動問題などで日米同盟が強固なことを世界(中国)にアピールすることでお茶を濁せるだろう」

 ところがどっこい。舞台裏では、米側は日本側に「中国の脅威」に対する危機感を大いに煽った。危機感は生半可なものではなかった。

 中国の脅威、特に台湾海峡周辺で中国が繰り広げている軍事威嚇行動に米国は神経をとがらせてきた。一触即発の危険性すらあるとみている。

 今回の共同声明では「台湾」は対中戦略の主軸となる最重要なパーツ(部品)だった。

 バイデン政権の外交当局者とは密接な関係にある主要シンクタンクの研究員、T氏は筆者にこう指摘している。

「バイデン氏が『台湾明記』に自信を深めたのは3月中旬だった。対中スタンスでは慎重な日本も乗って来ると確信したのは、3月16日の2プラス2(日米安全保障協議委員会)での日本の外務・防衛閣僚の対応だった」

「『台湾海峡の平和と安定の重要性についての認識を共有する』ことに合意したからだ。閣僚レベルでの合意事項が首脳同士で覆されることはあるまい、というわけだ」

「共同声明に『(台湾海峡)両岸問題の平和的解決を促す』という文言を入れるよう要求したのは日本側だが、これに米国が異議を申し立てる正当な理由はなかった」

「挑発しているのは中国なのだから、中国が矛を収めればこれに越したことはない」

人権、対中制裁は煙幕…』

『人権、対中制裁は煙幕
 もう一つは、菅氏を迎え入れたバイデン氏のきめ細かい受け入れ態勢だった。

 バイデン政権の最優先議題になっている人権問題をめぐっては米メディアは菅政権の対応に厳しい目を向けてきた。

 バイデン政権は、新疆ウイグル自治区での中国のウイグル族抑圧を「ジェノサイド」だとまで言い切り、制裁措置に踏み切っていた。欧州共同体(EU)はじめG7加盟国は日本以外全員が制裁に同調した。

 こうした中で、バイデン政権は政府高官による記者向けの事前説明などで日本には対中経済依存度などデリケートな理由があることを指摘するなど異例の根回し工作までしていた。

https://www.whitehouse.gov/briefing-room/press-briefings/2021/04/15/background-press-call-by-a-senior-administration-official-on-the-official-working-visit-of-japan/

 首脳会談後の記者会見も極端に記者の人数を制限するなど、通常の米国式記者会見とは趣を異にしていた。米記者団からは人権に対する質問は一切なかった。

 なぜ、そこまでバイデン氏は気を使ったのか。

 それよりも何よりもバイデン氏が菅氏をホワイトハウスに招き入れる最初の外国首脳に選んだ理由は何だったのか。

 ブルッキングス研究所東アジア政策研究センター所長のミレヤ・ソリス博士はこう指摘している。

「バイデン政権としては、日本が地域的、世界的なチャレンジに立ち向かう不可欠な同盟国としての地位を確固たるものにし、インド太平洋戦略が日本にとって最優先議題であることを再確認させようとした」

「日米は同盟関係を深化させており、責任分担する準備も整ってきた。中国のチャレンジを戦略的に抑え込むことでも両国は収斂している」

 先の2プラス2で日本が中国の独断的行動が国際秩序を不安定化させているという米国に同調、特に台湾海峡の安定の重要性を強調したことは多くの人々を驚かした」

https://www.brookings.edu/blog/order-from-chaos/2021/04/13/suga-biden-summit-to-rekindle-can-do-spirit-of-the-us-japan-alliance/

 外交専門家の間には、これまで国際政治を動…』

『外交専門家の間には、これまで国際政治を動かしてきた米国と中国を指す「G2」(Group of Two)という表現はいよいよ米国と日本に当てはまると主張する者も現れている。

https://www.japantimes.co.jp/opinion/2021/04/15/commentary/japan-commentary/china-u-s-quad-indo-pacific-development-aid/

 佐藤(栄作)・(リチャード・)ニクソン時代から日米首脳外交をフォローしてきた在米日系ジャーナリストG氏はこう見ている。

「日本人が日本重視を買いかぶりと失笑するかどうか。かつて日本は自分のことをを米国の『サイレント・パートナー』(日本語英語で何も言わずに黙ってついていくパートナーという意味)などと自虐的に言っていた時期がある」

「だが今や日本は米国の『ポジティブ・パートナー』(積極的に参画するパートナー)になった。今回の首脳会談はそれを再確認するターニング・ポイントになった」

「『台湾明記』はただ中国を激怒させただけでなく、米国、そして世界に日本の存在の大きさを見せつけたと言っていいかもしれない」

 バイデン政権が欲しかったのは、新疆ウイグル自治区でのウイグル族や香港の人権問題でも、そのための対中制裁措置でもなかった。

 どうしても日本に台湾問題について米国の危機感を共有してもらいたかったのだ。その「証文」が欲しかった。

 日本はその「証文」に判を押した。

香港は台湾併合シナリオのタイムライン… 』

『香港は台湾併合シナリオのタイムライン
 米国がいかに台湾海峡情勢に危機感を抱いているか。その好例が米議会の超党派の対中スタンスだ。

 上院外交委員会は中国に対応するための包括法案を4月24日に採択し、直ちに本会議に上程、可決・成立させる。

「米議会の認識」(Sense of Congress)を示すという位置づけで、法的拘束力はないが、バイデン政権の対中政策に少なからぬ影響を及ぼすことは間違いない。

 法案名は「2021年戦略的競争法案」(Strategic Competetion Act of 2021)。

 ボブ・メネンデス外交委員長(民主、ニュージャージー州選出)とジェームズ・リッシュ筆頭委員(共和、アイダホ州選出)が共同提案した民主、共和両党が超党派で提出する初の本格的な対中政策法案だ。

https://www.foreign.senate.gov/imo/media/doc/DAV21598%20-%20Strategic%20Competition%20Act%20of%202021.pdf

 同法案は台湾については、こう指摘している。

「中国の香港での人権弾圧は、台湾併合に向けたシナリオのタイムラインを実践している。台湾防衛は今やより緊急を有する優先事項だ」

「台湾防衛は、①台湾の人々を守り②中国軍を対米防衛線である第1列島線内に抑止し③日本の領土保全を防衛④中国軍の広範囲にわたる軍事的野望を阻止し⑤台湾の自由市場体制と民主的価値観を守る擁護者としての米国に対するクレディビリティ(信頼性)を堅持する――といった目的にとって死活的に重要である」

 本法案には何と「台湾」が47回も出てくる。

民間の軍事技術開発を促進、日米基金構想… 』

『民間の軍事技術開発を促進、日米基金構想
 2プラス2を受けて首脳会談で合意した「台湾海峡の平和と安定の重要性」について認識を共有したバイデン大統領と菅首相。

 台湾情勢が緊迫し、在日米軍が出動すれば、日本は何をするのか。日本も安全保障関連法に基づき、米軍の後方支援を行うことになる。

 日本が米軍に補給できる「重要影響事態」の要件は、日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす状況だ。

 前述の「2021年戦略的競争法案」には、日本に何を期待するかについての記述がある。バイデン政権が今後、具体的にどのような対日要求をしてくるか、を示唆している。

一、インド太平洋戦略での米国のパートナーシップを強化するステップとして、日本が以下の分野での自主開発を促進させることをサポートする。

①長距離精密火力(LRPF)

②弾薬

③対空、対ミサイル防衛能力

④全領域での米軍とのインターオペラビリティ

⑤インテリジェンス・偵察・索敵能力

二、日米安全保障目的のために資する民間セクターによる新技術開発を促進させる「日米技術刷新基金」の創設。

 菅バイデン首脳会談で署名された共同声明の文言の行間には、「40年来の米国の曖昧な対中戦略に終止符を打ち、中国に力で対抗すべきだ」(リチャード・ハース外交問題評議会会長)とする米国の意気込みがにじみ出ているとみるべきだろう。

https://www.foreignaffairs.com/articles/united-states/american-support-taiwan-must-be-unambiguous)』

「すべて米国同調ではない」日本、対中国「距離感」に腐心 日米首脳会談

https://mainichi.jp/articles/20210417/k00/00m/010/284000c

『菅義偉首相とバイデン米大統領による初の日米首脳会談で、両国は緊張が高まる台湾情勢を明記した共同声明をまとめた。安全保障から経済分野まで台頭する中国に対する警戒感がにじむ。

 バイデン氏は会談後の共同記者会見で「日米は中国からの挑戦に力を合わせて立ち向かう」と述べ、「日米はこの地域の強い民主主義国だ」と強調した。首相も「世界の平和と繁栄に対して中国が及ぼす影響について真剣に議論を行った」と歩調を合わせた。

 共同声明では「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促す」と明記した。3月の外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同文書に盛り込まれた「台湾海峡の平和と安定の重要性」を踏襲した。

 米国は香港の統制強化を着々と進めた中国が台湾周辺で軍事的行動を強めたことで危機感を強めている。急速に軍事力を拡大する中国に対し、民主主義国との連携で対抗する姿勢を打ち出した。日米同盟をその中心に据えた形で、声明で台湾に言及することで、日本と一体で台湾情勢に関与する姿勢を鮮明にした。

 日本にとっても、沖縄県・尖閣諸島周辺への進出を強める中国への警戒感は強く、米国との同盟強化は喫緊の課題だった。声明で明記した日米安全保障条約第5条(米国の日本防衛義務)の尖閣への適用は日本の要望によるものだ。その一方で米側が強く求める台湾情勢への関与は応じざるを得なかったのが実情だ。

 だが、日本にとって隣国・中国とは経済面を中心につながりが深まっている。中国が「核心的利益」と位置づける台湾情勢に米国と足並みをそろえて関与を強めれば、中国を強く刺激し大きな影響を受けかねない。政府高官は「米国より中国に距離が近く、経済的な影響も大きい。日本がすべてで米国に同調できるわけではない」と漏らした。

 声明で盛り込まれた「両岸問題の平和的解決を促す」の文言は、05年と11年の2プラス2の「対話を通じた(台湾問題の)平和的解決を促す」の文言がベースだ。過去…

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