菅・バイデン共同会見、3つの疑問点

https://wedge.ismedia.jp/articles/-/22785

『今回のテーマは、「菅・バイデン共同会見、3つの疑問点」です。菅義偉首相は4月16日、ジョー・バイデン米大統領とホワイトハウスでの会談を終了した後、共同会見に臨みました。

 そこで、菅首相は中国、台湾、イノベーション、コロナ対策、気候変動並びにアジア系住民への差別問題などで「一致した」と繰り返しました。合計11回も「一致した」と強調したのです。

 一方、バイデン氏は共同会見で中国の挑戦に対して日米が連携して対抗する重要性について言及しましたが、今夏の東京オリンピック・パラリンピック競技大会及び、日本の中国に対する人権侵害制裁の立場に関して明言を避けています。

 そこで本稿では、共同会見での菅・バイデン両氏のパフォーマンスと内容に関する3つの疑問点を挙げます。

(AP/AFLO)

【疑問点その1】

 なぜバイデン大統領は共同会見でこの夏の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の支持を表明しなかったのか?

 共同会見で菅首相は、「今年の夏、世界の団結の象徴として東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を実現する決意であることをお伝えしました」と語り、「バイデン大統領からこの決意に対する支持を改めて頂きました」と述べました。共同声明には確かに「バイデン大統領はこの夏の安全・安心な東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催するための菅首相の努力を支持する」と明記されました。

 東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、今回の訪米で菅首相が重視していた議題のひとつであったことは間違いありません。というのは、帰国後菅氏はバイデン大統領から再度支持を得たと主張できるからです。バイデン氏は菅氏に「お土産」を持たせたと解釈できます。

 ただし、バイデン大統領は共同会見で東京オリンピック・パラリンピック競技大会への強い支持を表明しませんでした。

 共同会見の前日15日に行われた政府高官とメディアとの電話会議で、同高官はバイデン大統領が東京オリンピック・パラリンピック競技大会を巡る菅首相の置かれた政治状況に対して非常に神経質になっていることを明かしました。その上で、「大会開催まで数カ月あるので状況を見守ろう」と述べました。バイデン氏は東京オリンピック・パラリンピック競技大会に関する自身の発言が、菅政権の存続に影響を及ぼす可能性があると捉えており、軽々な発言をしないように控えているのです。

 20年米大統領選挙を振り返ってみると、バイデン大統領はドナルド・トランプ前大統領とは異なり、支持者の参加人数を制限した小規模集会を開いて、マスク着用及びソーシャルディスタンスを義務づけていました。さらに新型コロナウイルス感染が拡大すると、ドライブイン形式の集会を開催し、参加者は拍手喝さいの代わりに、車内からクラクションを鳴らして支持表明をしました。選挙期間中、バイデン氏は「コロナ対応型選挙」に徹し、それが有権者から支持を受けました。

 となると、菅氏との会談でバイデン大統領は東京オリンピック・パラリンピック競技大会に関して、かなり高いレベルの安全性の確保ができているのかを確認したとみて間違いありません。共同会見で支持を明言しなかった理由は、バイデン氏は100%確信をもっていないからです。

次ページ » バイデン大統領は菅首相の招待を受け入れたのか?』

『バイデン大統領は菅首相の招待を受け入れたのか?

【疑問点その2】 

 バイデン大統領は菅首相の招待を受け入れたのか?

 菅首相は3月26日の参議院予算委員会で、バイデン大統領を東京オリンピック・パラリンピック競技大会に招待する考えを示しました。この件に関しても、バイデン氏は共同会見で態度を明らかにしませんでした。

 外国人記者が共同会見で菅首相に対して、「公衆衛生の専門家が日本は準備ができていないと指摘しているのに、オリンピックを進めるのは無責任ではありませんか」という厳しい質問をしました。それに対して菅氏は回答をしなかったのです。ホワイトハウスでの共同会見に不慣れな菅氏は、外国人記者はバイデン氏のみに質問をぶつけてくると思い込んでいたフシがあります。

 この場面は今回の共同会見のポイントです。菅首相は明らかに東京オリンピック・パラリンピック競技大会に対する疑問を払拭する機会を逃しました。

 実は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会に関する質問はホワイトハウスでの定例記者会見でも出ています。ある担当記者がジェン・サキ報道官にコロナ禍での東京オリンピック・パラリンピック競技大会へのバイデン氏招待について、「菅首相は大胆な発言(a big statement)をしたと思いませんか」と質問をしました。

 この「大胆な発言」には、「よくもそのような発言をしたものだ」という否定的な意味が含まれています。つまり、コロナ禍でのバイデン招待は、「困難」ないし「失礼」と言いたのです。

 バイデン氏の率直にもの言うパーソナリティを考えると、本当に東京オリンピック・パラリンピック競技大会を支持しているならば、共同会見で「強く支持する」「ヨシからの招待を受ける」と断言したはずです。共同声明の東京オリンピック・パラリンピック競技大会支持は、バイデン政権の対中国戦略においてこれから矢面に立つ菅首相に対する特別な配慮としか思えません。

次ページ » 中国の人権問題 』

『中国の人権問題

【疑問点その3】
 バイデン大統領は日本の中国に対する人権侵害制裁の立場を今後も理解するのか?

 政府高官はメディアとの電話会談で、中国に対して人権侵害制裁を課さない日本に一定の理解を示しました。その理由として日中両国の経済関係の緊密さを挙げました。中国に対する人権侵害制裁に関して、日本に欧米と一緒に制裁を課すように無理に押し付けないというシグナルを発信したのです。

 帝国データバンクによると、中国進出日系企業数は1万3646社(2020年1月時点)です。業種別では、製造業が5559社で全体の約4割を占めています。

 仮に日本が人権制裁法の法整備を行い、欧米と共に中国に制裁を課した場合、同国は報復措置に出る公算が高いことは言うまでもありません。具体的には日本製品の不買運動、日系企業を標的にした法人税増税、入管手続や日本からの輸入品の手続における嫌がらせなど、多岐にわたる報復措置が可能です。

 中国との経済関係を重視している日本は、人権問題で同国を刺激しないように注意を払っています。ただ、同盟国・友好国が束になって、中国に対して人権侵害の制裁を課してもらいたいというのが、バイデン大統領の本音です。人権はバイデン政権において内政と外交の双方の中核に位置づけられているからです。

 今後、人権を最優先しないグローバル企業は消費者及び投資家から見捨てられる可能性があることを、日本企業は理解しなければなりません。世界的に人権重視の風潮が高まる中で、「人権尊重の経営」が日本企業の存続に直結するときが間近まで来ているといっても過言ではないからです。

 米中の対立が先鋭化したとき、果たしてバイデン政権が日本の人権侵害制裁に対する消極的な立場に理解を示すかは予断を許しません。』

日本、有事へ米と危機感共有 自立した防衛力急務

日本、有事へ米と危機感共有 自立した防衛力急務
新時代の日米㊥
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA16DKD0W1A410C2000000/

『台湾問題などに言及した日米首脳の共同声明を受け、中国外務省の副報道局長は19日の記者会見で「必要な措置をとり国家主権を断固守る」と強調した。示唆した対抗措置がどんなものになるかは見通せない。

沖縄県・尖閣諸島の周辺海域では日本領海の外側の接続水域を19日も中国海警局の船4隻が航行した。機関砲のようなものを搭載した船もあるという。尖閣周辺で中国公船を確認するのは連続65日を超える。

台湾海峡の南西空…

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台湾海峡の南西空域でも、中国の戦闘機や爆撃機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入するのが常態となっている。12日には最多の25機が飛来した。

南シナ海では4月上旬、米中の空母が同時期に展開する事態が起こった。米海軍の空母「セオドア・ルーズベルト」が南から、中国海軍の空母「遼寧」が北からそれぞれ海域に入った。

米国はこうした東アジアの軍事バランスの変化を踏まえ、世界に散らばる米軍の配置を最適化するための検証を始める。バイデン米大統領が日米首脳会談に先立ち、アフガニスタンの駐留米軍の9月までの撤収を表明したのもその一環だ。

中国をにらみ、インド太平洋地域に兵力や予算をシフトしていく。沖縄からフィリピンを結ぶ第1列島線に沿って中距離ミサイル網を築く案も浮上する。

「インド太平洋地域の軍事バランスは米国と同盟国に一層不利になる」。米インド太平洋軍のデービッドソン司令官は制海権を保つには戦力の向上が必須だと訴える。米軍は戦闘機や艦艇、ミサイルの数で米中の差がさらに開くと予測。同盟国に応分の役割を求める機会も増えるとみられる。

米ソ冷戦の最前線が欧州なら、日本を含む東アジアは米中対立のフロントライン。日本の防衛力は同盟国の対中抑止力を左右する。

日本の安全保障体制は自立した防衛力と日米同盟の2本柱だ。日米安保条約第5条は米国による日本防衛の義務を定めるものの、敵からの攻撃の第1波に米軍が間に合う可能性は極めて低い。その間は自衛隊だけで守るのが大前提となるが、持ちこたえられるのか。

尖閣諸島に中国軍が上陸して侵攻しようとした場合、それを阻止する陸上自衛隊の水陸機動団の拠点は長崎県内にある。尖閣諸島までおよそ1000キロで、新型輸送機オスプレイでも2時間かかる。中国の侵攻の意図が分かって部隊を派遣しても手遅れとなる。

現状では日本が相手国のミサイル発射の兆候をつかんでも、それを阻止するために敵のミサイル発射拠点を攻撃できない。政府が「敵基地攻撃能力」の保有を否定しており、ここも米軍に頼らざるを得ない。

仮に中国が台湾を武力で統一しようとすれば、台湾に攻め込む中国軍を止めるのも米軍だ。集団的自衛権を行使して米軍への攻撃に自衛隊が反撃できるようにするには「存立危機事態」に認定する必要がある。台湾有事がそれに当たるかはときの政権の判断となる。

「台湾海峡、また尖閣周辺でも厳しい状況が続いている」。菅義偉首相は日米首脳会談後、記者団に台湾問題と、台湾から170キロと近い尖閣諸島を巡る危機感を並列で語った。

会談から8時間後の17日昼。岸信夫防衛相は日本最西端の沖縄県与那国島を視察した。あいにくの曇天だったが、晴れていれば110キロ先の台湾が見える。台湾有事は対岸の火事で済まない。首脳会談で共有した危機感を防衛力の向上につなげることが急務となる。

(安全保障エディター 甲原潤之介)

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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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分析・考察 尖閣と台湾の有事を想定した備えを急ぐべきなのは記事の通りです。日本は世界5位と同9位といわれる防衛力と防衛費を持つ一方、憲法や財政などの制約があります。有事やグレーゾーン事態にできることとできないことを早急に整理し、米軍と連携した効率的な防衛態勢づくりが必要です。

台湾海峡が有事になればサプライチェーンなど日本経済への影響は米国とは比べものになりません。米国一本足打法ではなく、アジアに関心を強める欧州やASEANにも協調国の裾野を広げるのは中国へのけん制になります。対中外交をはじめ有事を起こさせないための交渉力が「防衛力」強化なのは言うまでもありません。

2021年4月20日 8:12いいね
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鈴木一人のアバター
鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察 台湾有事が他人ごとではないのは、台湾も尖閣諸島も中国が自らの主権を主張しているという点で共通しているから。中国がアメリカの抑止力を認めず、自らの軍事的優位を過信して武力を用いて台湾侵略を行うということは、すなわち尖閣諸島が日米安保条約第五条が適用されたとしても、中国がアメリカの抑止力を認めない以上、台湾と同じことが起きうるということ。そのためにも、台湾有事は起こしてはならないし、もっといえば中国がアメリカの抑止力を認めないという状況を作ってはならない。

2021年4月20日 7:50いいね

ミャンマー政変なぜ起きた? やさしい3分解説

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM094UN0Z00C21A4000000/

『東南アジアのミャンマーで国軍によるクーデター発生からもうすぐ3カ月となります。国軍は反発する国民に容赦なく銃口を向ける一方、自制を求める周辺各国の思惑が入り乱れ、混乱に拍車がかかっています。日本企業の主戦場であるアジアの政治情勢への理解はビジネスに欠かせません。ゆっくりながらも着実に民主化の道を歩んでいたと思われていたミャンマーで何が起きているのか。やさしく解説します。

Q:ミャンマーってどんな国?

インドシナ半島西部に位置します。面積は日本の約1.8倍にあたる68万平方キロメートルほどで、推計約5600万人の人口を抱えています。「建国の父」として今も国民の尊敬を集める故アウン・サン将軍(1947年に暗殺)の指導のもと、48年に英国の植民地から独立しました。当初は民主制を採用しましたが、62年に国軍がクーデターで政権を掌握し、89年には国名をビルマからミャンマーに変更しました。

ミン・アウン・フライン総司令官率いるミャンマー国軍はクーデターに抗議する民衆に銃口を向ける(3月27日、ネピドー)=ロイター

軍事政権下で経済成長が遅れ、民主化後は「アジア最後のフロンティア」として外国の投資を集めています。繊維産業などが育っていますが、日用品やガソリンなど多くの物資を輸入に依存しています。仏教徒が9割近くを占める一方、多民族国家でイスラム教徒の少数民族ロヒンギャへの迫害が国際問題になっています。

Q:なぜまたクーデターが起こったの?

民主化の流れが強まり国軍が影響力の低下に危機感を持ったからとみられています。軍事政権は民主化を求める国内外の声に押され、2010年に20年ぶりの総選挙を実施しました。当初、民主化運動の指導者、アウン・サン・スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)は国軍が主導した選挙をボイコットしましたが、15年総選挙に参加して圧勝、政権を獲得しました。20年11月の総選挙で、NLDはさらに議席を伸ばし、国軍系政党の不人気を浮き彫りにしました。焦った国軍は「選挙の不正」を理由にクーデターに打って出ました。

Q:アウン・サン・スー・チーさんはどんな人?

アウン・サン将軍の娘で、当初は英国で研究生活を送り、英国人男性と結婚して家庭を築くなど政治の表舞台からは離れて暮らしていました。軍事政権下、1988年に学生を中心に民主化運動に火がつくと、帰国していたスー・チー氏が先頭に立ち、NLDを結成しました。90年の総選挙でNLDは圧勝しましたが、軍は政権移譲を拒否し、民主化運動を弾圧し続けました。

スー・チー氏は89年から計3度、15年間自宅軟禁されました。その間、91年にノーベル平和賞を受賞しました。2015年の総選挙後、NLDは政権を握り、軟禁を解かれていたスー・チー氏は外相兼国家顧問として事実上、国のトップに就きました。軍事政権が08年に制定した憲法の規定で、英国籍の息子がいるスー・チー氏は大統領になれません。

抗議デモに参加する民衆と治安当局の衝突で煙が上がるミャンマー北部のタゼ。国軍のデモ弾圧でこれまでに全土で700人以上が死亡した(4月7日、タゼ)=ロイター

Q:日本を含む国際社会とのかかわりは?

映画「ビルマの竪琴」が描いたように、旧日本軍は第2次世界大戦中、当時のビルマを占領していた時期があります。戦後、日本は政府開発援助(ODA)を通じて積極的に国家建設を支援し関係を強めました。スー・チー氏も1980年代に京都大で研究経験があります。
97年、ミャンマーは東南アジア諸国連合(ASEAN)に加盟を果たしました。近年では中国が広域経済圏構想「一帯一路」の一環のインフラ支援などを通じて急速に影響力を強めています。中国とインド洋をつなぐ安全保障上の要衝だからです。

Q:弾圧は止められないの?これからの展望は?

国軍はクーデターに抗議する国民に武力による弾圧を続けています。死者は700人以上に達したとされ、事態は悪化の一途をたどっています。ASEANは盟主を自任するインドネシアが主導して対話による解決をめざしていますが、ASEAN内でも軍事政権の流れを組むタイや共産党独裁のベトナムなどは、内政不干渉の原則を持ち出して、静観を続け、一枚岩ではありません。国連は安全保障理事国内で米英仏と中ロの対立を抱え十分機能していないうえ、東南アジアへの影響力を確保しようとする大国の利害が絡み、ミャンマーの民主主義の回復への道筋は描けていません。=おわり

(ジャカルタ=地曳航也)』

ミャンマー国軍「友人」は8カ国 ロシアが兵器で急接近

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB151V70V10C21A4000000/

『【バンコク=ドミニク・フォルダー、ヤンゴン=新田裕一】ミャンマー国軍記念日の3月27日、首都ネピドーで開かれた式典に参加したのはロシア、中国、インド、バングラデシュ、ラオス、パキスタン、タイ、ベトナムの8カ国だけだった。それまでに国軍のソー・ウィン副司令官が国連のブルゲナー事務総長特使(ミャンマー担当)に述べた言葉の通りになった。欧米の非難を受けるなかで国軍は「わずかな友好国と歩むことを学ばなくて…

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欧米の非難を受けるなかで国軍は「わずかな友好国と歩むことを学ばなくてはならない」。

目立ったのは唯一、本国からの参加者としてフォミン国防次官を派遣したロシアだった。ミン・アウン・フライン国軍総司令官は式典での演説でロシアを「遠く離れているが、国軍への支援は多大だ」とたたえた。ロシアはミャンマーと地理上の距離があるからこそ、国軍には脅威を与えていない。

ロシアのショイグ国防相は2月1日のクーデターの約1週間前、ミャンマーへの兵器輸出契約に署名するためネピドーに滞在していた。ロシアはクーデター後、ミャンマーに経済制裁を発動しても市民が困るだけだと主張している。

クーデター後に配備された装甲戦闘車の多くはロシア製だ。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、ミャンマーは2019年までに8億700万ドル(約880億円)のロシア製兵器を購入したと推定できる。ジェット戦闘機、戦闘ヘリ、地対空ミサイルシステムなどだ。

ロシアで科学や工学の学位を得た国軍将校は6000人を超える。ミャンマーはロシア製兵器への依存を強めており、中国の存在感は相対的に低下している。国軍は、中国がカチン族やワ族など一部の少数民族の武装組織に手を貸していると疑っている。

東部のシャン州復興評議会(RCSS)はクーデターを非難。タイ国境付近のカレン民族同盟(KNU)は3月27日の軍事パレードのさなかに国軍の拠点を襲撃し、兵士10人を殺害したもようだ。国軍は同日夜、KNUの支配地域を空爆し、数千人の住民が避難を余儀なくされた。KNUはクーデターに抗議する市民デモを支持し、参加者を保護している。

中国国境沿いのカチン独立軍(KIA)も3月下旬、中国国境近くの国軍の拠点を襲撃した。米国平和研究所(USIP)のジェイソン・タワー氏は、別の少数民族も加わり、国軍との武力衝突はさらに拡大するとみている。

ミン・アウン・フライン氏は全権掌握後、隣国タイのプラユット首相に書簡を送ってクーデターへの理解を求めた。プラユット氏は9日、日本経済新聞に「かねてミャンマーに人道支援を提供しており、今回もすでに実施した」と説明した。

ミン・アウン・フライン氏が政変後に表立って接触した外国首脳はプラユット氏だけだ。

ミャンマー情勢に詳しいタイの元外交官は「国軍は中国への全面的な依存を望まず、ロシアは遠い。(軍事政権の流れをくむプラユット政権の)タイを勝手口として維持する必要がある」と指摘した。

プラユット氏は19年、軍政下で制定された憲法に基づく総選挙を経て正式な首相に就任した。その前に、ミン・アウン・フライン氏はネピドーでタイ軍代表団の訪問を受けた。当時、事実上の政府トップだった民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏との関係は冷え込んでいた。

タイ将校からクーデターを起こす可能性を聞かれたミン・アウン・フライン氏は「実行するなら、タイはプラユット首相でないと」と答えた。

プラユット氏は3月下旬、タイ国境付近のミャンマー国軍部隊にコメ700袋を供給したとの報道を強く否定した。コメは地域の住民向けで、従来の支援の一環だと主張した。タイの元外交官は「(ミャンマー国軍にとって)タイは重要だが、問題はタイが(ミャンマーに対して何らかの)行動を起こしたいと考えるかどうかだ」と話した。
この記事の英文をNikkei Asiaで読む https://asia.nikkei.com/Spotlight/The-Big-Story/Failed-state-Myanmar-collapses-into-chaos

“さらばミャンマー、日本企業はどうする?

“さらばミャンマー、日本企業はどうする?:世界を読み解くニュース・サロン(1/4 ページ)”
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2104/15/news023.html

『ミャンマーでクーデターが起きてから、早くも2カ月半になる。

 2月1日にクーデターが発生した朝から、筆者は現地の知り合いたちに取材を続けてきた。今振り返ると、当初はまだ、まさか10年前まで続いていた暗黒の軍事政権時代に逆戻りするとは現地の人たちも思っていなかったようだ。しかし、国軍側からの取り締まりが暴力的になり、徐々に死者数が増えるにつれ、「戦意喪失」といった感じになってきている。

 メディアで先日、ミャンマーでは死者数が合計700人を超えたと報じられた。悪化の一途をたどるミャンマー情勢のなかで、実は日本企業も対処に苦慮している。本連載でミャンマーを取り上げた際にも触れたが、2020年末の段階でミャンマー日本商工会議所に加入している日系企業は433社に上るという(関連記事)。ただこうした企業も、国軍の締め付けが強まり、欧米諸国から非難の声が高まっていることで、難しいポジションに置かれているのだ。

ミャンマー日本商工会議所の理事一同声明文(出典:ミャンマー日本商工会議所)
 そもそも、なぜ国軍がクーデターをしなければならなかったのか。また、ミャンマーに進出している日本企業は、どんな状況に置かれているのかなどについて見ていきたい。

なぜこのタイミングで 』

『なぜこのタイミングで
 今回のクーデターでいまだに疑問なのは、なぜ国軍がこのタイミングでクーデターをしなければならなかったのか、だ。表向きは20年11月に実施された総選挙で、民主活動家でもあるアウンサン・スーチー国家顧問が率いる与党が圧勝したが、国軍はそれが不正選挙だったと主張してクーデターを行なったというものだ。だが、現地で暮らす知人らに聞いたところ、話はそれほど単純ではなさそうだ。

 メディアでよく言われているのが、民主活動家だったスーチー国家顧問の政治的な影響力が強くなりすぎたために潰そうとした、というものだ。だがそれなら16年に行われた前回の選挙でも、スーチー側が圧勝していることを考えると、それが理由だと結論付けるには違和感がある。

ミャンマー最大の都市ヤンゴン(写真提供:ゲッティイメージズ)
 またスーチー国家顧問の経済のかじ取りがダメすぎたので、国軍が権利を奪い、ミャンマー経済を握ったという説も聞かれる。だが国軍がクーデターのようなことを行えば、国際社会から非難され、経済制裁が課されるのは明らかで、国軍が国内経済を向上できる可能性は限りなく低い。それは独裁政権時代のミャンマー経済のひどさを見れば容易に想像できるし、そもそも主要産業は国軍の影響力が残ったままになっている。

 では、なぜクーデターが行われたのか。現地の元国軍関係者などに見解を求めたところ、理由はいくつもあるだろうが、次の要因が大きのではないかという。

 国軍のトップであるミン・アウン・フライン司令官の保身である。フライン司令官は今年7月に65歳で定年を迎える予定になっていたが、トップから離れたくないというのがクーデターを引き起こした理由の一つだという。彼は16年に本来の定年である60歳を迎えているが、5年間延長をしている。これは、軍事独裁政権でミャンマーを率いていた悪名高い独裁者のタン・シュエもやらなかったことだ(彼は終身国家元首になったが、司令官の職は辞して、権力を手放している)。

 しかしフライン司令官が任期を延ばした5年間、特に国際社会からミャンマーへの批判が一気に高まった。同国で迫害されているイスラム教徒のロヒンギャ族をめぐる問題が、国際司法裁判所(ICJ)や国際刑事裁判所(ICC)などで国軍の犯罪行為が協議されることになった。さらにジュネーブに本部を置くミャンマーの重大犯罪を調査する国連の「ミャンマーに関する独立調査メカニズム(IIMM)」でも、フライン司令官をはじめとする軍幹部らは、「ジェノサイド(大量虐殺)」の罪で起訴されるべきだとも指摘している。

一方的に不透明な理由を公表』

『一方的に不透明な理由を公表
 こうした罪の責任者は、フライン司令官にほかならない。彼は現在、国軍トップであるため国際機関などの手は届かないが、定年を迎えて軍トップの地位から離れ、国内でスーチー率いる民主化勢力が影響力を高めていくと、フライン氏が戦争犯罪で逮捕され、裁かれてしまう可能性もある。

 それを避けるために、クーデターを行なったというのである。この元軍関係者によれば、「そういった思惑の可能性は高く、軍の内部でも密かに同様の認識が広がっている」という。現状、国際社会がフライン氏に手出しすることは不可能になった。

国軍は経済的な既得権益を守るために、クーデターを行ったという説も
 とにかく、一方的に不透明な理由を公表して、権力を再び奪い返した国軍は、国際社会から強い批判を浴びている。特に国軍との親密な関係や、国軍に利益をもたらしているような外国企業は、国際的に厳しい批判にさらされている。大手ビールメーカーのキリンは、クーデターを受けて国軍と関係のある地元複合企業との連携を解消した。

 ロイター通信は3月25日に、「ヤンゴン市内都市開発(Yコンプレックス)」と呼ばれる事業が、ミャンマー国防省の利益につながっていたとして、批判されたと報じている。国軍につながりのある企業は国際的な非難を受けるため、この事業もやり玉に上がっている。そして同事業には「日本政府が95%を出資する海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)」や日本の民間企業なども参画していたが、国軍の人権蹂躙を理由に、つい最近、一時中止に追い込まれたという。

 またAFP通信は3月1日に、北東部シャン州で水力発電用ダム建設事業を進めていた国際企業連合が、国軍によるクーデター発生を受け、プロジェクトを一時中止したと報じた。理由は、国軍と関わるプロジェクトだからだ。同記事によれば、このダム建設事業には、日本の丸紅も参加していた。そんなことから、丸紅も批判の対象になった。

ミャンマー市場と距離を 』

『ミャンマー市場と距離を
 米国のアントニー・ブリンケン国務長官は、国軍を支援する事業や外国企業に、事業などへの関与を「見直すべきだ」と発言しているため、欧米諸国はこの流れには逆らえないかもしれない。

 英監視団体の「ビルマリポート」は、国軍と関係している企業を名指しで公開しており、日本企業も数多く登場する。そこにはここまでに触れた、キリンや丸紅、さらに中小企業も批判の対象になっている。

 もちろん、11年の民政移管の際に開かれた市場として、世界からの期待は大きく、これまで日本企業が進出してきたことは批判されるべきことではない。しかもミャンマー国内で大きな事業をするとなれば、国軍の存在は無視できないため、軍との関係が避けられない場合もあったはずだ。

 だが、クーデターで状況は一変した。そして、クーデター前のような状況に戻る可能性は当面ないだろう。ミャンマーでビジネスを展開すれば、国際社会からの批判がついて回る。またこれから、米バンデン政権や欧州各国が、対中政策などで人権問題を取り上げる場合が増える。そうなれば、ミャンマー国内の人権問題も俎上(そじょう)にのせるだろう。

 日本企業は、残念ながらミャンマー市場と距離を置いていくしかないだろう。国軍が引き起こしたクーデターによる混乱はあまりに大きいということだ。』

〔ミャンマー情勢の混沌…。〕

ミャンマー  市民と少数民族の共闘の可能性 「どんな道を選んでも待つのは血まみれの未来だ」 – 孤帆の遠影碧空に尽き
https://blog.goo.ne.jp/azianokaze/e/43dd7fd1dec9367b56a519833e85552d

『【雑草を除去しなければならない 迫撃砲などの重火器を使用 見たものすべてに発砲】

ミャンマー情勢の混迷は報道のとおり。

****ミャンマー治安部隊が迫撃砲で攻撃、包囲された抗議デモの82人死亡****
ミャンマーの地元メディア「ミャンマー・ナウ」は10日、中部バゴーで9日に治安部隊が抗議デモ参加者らを銃撃などで鎮圧し、市民の少なくとも82人が死亡したと報じた。
3月27日に全土で市民100人以上が殺害されるなど、デモ鎮圧の犠牲者が増加する中、単独の地域での1日の犠牲としては最悪の規模とみられる。

 報道によると、鎮圧は9日早朝に始まった。治安部隊は地域を包囲し、迫撃砲などの重火器を使用して攻撃した。爆発音を聞いた住民もいたという。

目撃者によると、近くの学校やパゴダ(仏塔)に遺体や負傷者が集められた。僧侶らが治療を申し出たが、治安部隊は許可しなかったという。行方不明となっている人もいるといい、死者数はさらに増える可能性がある。

 クーデターを強行した国軍は、国際社会からの非難も顧みずに弾圧を続けている。国内の人権団体「政治犯支援協会」は、デモ鎮圧などによる死者は、9日時点で618人としていた。

国軍の報道官は9日の記者会見で、「木が育つためには、雑草を除去しなければならない」と述べ、市民への武力行使をためらわない姿勢を鮮明にしていた。【4月11日 読売】

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迫撃砲というのは下のような武器です。常識的には抵抗市民に使用するような武器には思えませんが・・・。

(ウィキペディア)

国軍報道官は、「雑草を除去しなければならない」とか、害虫を駆除するには殺虫剤をまく必要があるとか・・・。

同じ国民を「雑草」「害虫」と表現する発想には驚きを禁じえません。

市民の抵抗を抑えるというより、敵を殲滅する内戦の発想のようにも。

軍は抑制的に対応しているとも主張していますが、下記のような報道を見ると、「(治安部隊は)見たものすべてに発砲・・・」とか、あまり抑制的でもなさそうです。

****「見たもの全てに発砲」ミャンマー市民の死者700人超****

クーデターで国軍が権力を握ったミャンマーで、市民の犠牲が700人を超えた。国軍側は9日に中部バゴーで80人以上を殺害。その方法は残虐さを増している。国軍への反発は少数民族武装組織にも広がり、10日には複数の地域で国軍との戦闘が起きた。

 現地の人権団体「政治犯支援協会」によると、2月1日のクーデター以降、4月11日までに706人の市民が犠牲になった。「国軍記念日」の3月27日には、全土で100人以上が殺害された。4月9日にはバゴーで82人が殺害され、一地域での1日あたりの犠牲としては最悪とみられている。

 地元メディアによると治安部隊は9日、バゴーの四つの地域を襲撃。弾着後に炸裂(さくれつ)する小銃てき弾などの重火器が使われたという。

住民の一人は「(治安部隊は)見たものすべてに発砲し、抗議を取り締まる行動ではなかった。ジェノサイド(集団殺害)を犯していた」と語った。

積み上がる遺体、うめき声…住民は治療もできず

地域の仏塔(パゴダ)の入り口付近には遺体が積み上げられ、中には負傷者も交じり、うめき声が聞こえていたという。住民らは負傷者の治療も遺体の引き取りもできなかった。
治安部隊はまた、地域を捜索して市民らを連行。翌日に遺体で見つかるケースもあった。11日夜の時点で、多くの住民が地域から逃げ出しているという。

 国軍の報道官は9日の会見で「機関銃や自動小銃を使えば、数時間で500人を殺せるが、実際には(500人が犠牲になるのに)何日もかかっている」と話し、国軍側は対応を自重していると強調。武力による弾圧を正当化しており、今後、さらに対応が激化する恐れがある。それでも市民らは、各地でデモを続けている。

 一方、地元メディアによると、10日午前に北東部シャン州で少数民族武装組織が警察署を襲撃し、警官ら14人が死亡した。西部ラカイン州を拠点とするアラカン軍などによる攻撃とみられている。アラカン軍は3月30日、他の二つの武装組織と声明を発表し、市民への弾圧をやめるよう国軍に求めていた。

 10日午後にはインド国境にある北西部タムで、別の少数民族武装組織の攻撃で少なくとも治安部隊18人が死亡した。軍車両に手投げ弾が投げ込まれたという。治安部隊が市民を殺害したことへの報復とみられる。

 東部カレン州の「カレン民族同盟」(KNU)や、北部カチン州の「カチン独立軍」(KIA)も国軍と戦闘を続けている。国軍側は空爆などで反撃し、多くの住民が家を焼け出される事態となっている。ミャンマーは独立以来、内戦が続いているが、クーデターを機に混迷がさらに深まる可能性が指摘されている。【4月12日 朝日】

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「機関銃や自動小銃を使えば・・・・」

実際に“1988年の民主化運動のはじまりから鎮圧に至る過程で軍は学生・仏僧を含む数千人の市民を殺害したといわれる(軍事政権は、犠牲者数は20~30人にすぎないと主張している)。”【ウィキペディア】という過去がありますので、国軍の大量犠牲者を厭わない対応が懸念されます。

その他にも

“襲撃後に銃強奪とミャンマー国軍 市民19人死刑判決”【4月10日 共同】

“死刑判決、さらに7人=反国軍勢力への弾圧強化―ミャンマー”【4月14日 時事】

と、一切の歩み寄りを拒否し、武力で封じ込める姿勢が強まっています。

【抵抗市民勢力と少数民族武装勢力の共闘の可能性 弾圧されて知る差別されるものの痛み】

そうしたなかで、現実味を増してきているのが、4月1日ブログ“ミャンマー 少数民族武装勢力と国軍の衝突・対立、抵抗市民勢力との共闘で内戦の危険性も”でも取り上げた、抵抗勢力と少数民族武装勢力の共闘による内戦の可能性。

中国・ロシアの消極姿勢もあって、国際的圧力による解決が期待できない以上、徹底武力鎮圧に進む国軍に対抗するには、そうした方向しかない・・・という考えも。

ただ、抵抗市民勢力とはいっても、その多くはこれまで少数民族を差別して側。その両者が連携できるのか?

あるいは、少数民族側からすれば、そういう抵抗市民を信用できるのか?

仮に国軍を取り除けたとして、その後にどういう政治体制を想定しているのか?

等々の疑問も。

そうした疑問に答える活動家や少数民族幹部へのインタビュー記事が。

長い記事ですが、非常に興味深い点が含まれていますので全文を引用します。

****ミャンマー市民が頼るのは、迫害してきたはずの少数民族 「内戦勃発」が最後の希望****

<国際社会に幻滅した市民らが一縷の望みを託す「少数民族連合軍vs国軍」の構図。当事者たちが語るその可能性>

国軍による弾圧が激しさを増すミャンマー(ビルマ)で抵抗手段を奪われた国民たちは今、少数民族の軍隊と国軍との全面戦争を求め始めている。

かつては敵視すらしていた少数民族を救世主扱いするほど期待は高いが、どれくらい現実味がある戦略なのか。

ミャンマーのエリート軍家系出身で民主活動家のモンザルニ、

少数民族であるカチン民族機構(KNO)ロンドン本部のクントイラヤン事務局長、

在日ビルマ・ロヒンギャ協会のゾーミントゥット副代表の3人に、本誌・前川祐補が聞いた。

――少数民族軍連合vs国軍という対立構図が浮上した経緯を教えてほしい。

モンザルニ デモを行っていた市民らは当初、諸外国からの外圧を期待していた。軍事的圧力でなくとも、国軍が弾圧から手を引くような効果的な懲罰を求めていた。

だが(アメリカなどが部分的に制裁を発動したものの)ミャンマー国民を満足させるような動きは起きていない。国軍への制裁を決議できなかった国連安全保障理事会も含めて国民は外圧に幻滅し、よりどころを少数民族の軍隊にシフトさせた。国民の中には少数民族軍を救世主と呼ぶ者もいる。

クントイラヤン われわれカチン族は都市部でのデモ弾圧とは別に国軍から攻撃を受け、彼らを返り討ちにした「実績」もあった。

――少数民族軍の連合はどのように形成されるのか。

モンザルニ 1つは、「統一政府」の樹立を目指す民主派議員らで構成する連邦議会代表委員会(CRPH)が、少数民族の軍隊を「連邦軍」として取りまとめる方法だ。

だが、少数民族側はCRPHの中心にアウンサンスーチーや彼女が率いる国民民主連盟(NLD)を据えることに対して非常に否定的だ。彼らはクーデターを防ぐこともできず、その後の対応でも失敗したからだ。

CRPHは国民の支持を得ているが、将来的な政府組織においてスーチーとNLDの影響力をどれだけ排除できるかがカギになる。

クントイラヤン 少数民族の間では、CRPH憲章は現在の憲法から国軍の議会枠(国会議員定数の4分の1は軍人)を定めた条項を取り除いただけ(つまりNLDの影響力が色濃く残る)との批判が多い。

私たちはこれまで少数民族に差別的だった「ビルマ人愛国主義者」たちへの警戒を解いておらず、NLDに対する不信感も根強い。

――統一政府の将来像は時間のかかりそうな議論だ。CRPHと少数民族の交渉がまとまらなければ全面戦争のシナリオは消える?

モンザルニ そうでもない。既にCRPHを抜きにした少数民族による「連合軍」構想が持ち上がっている。実際、シャン州軍の創設者であるヨートスックが、ワ州連合軍などと共に独自の連合軍の立ち上げを呼び掛けている。

クントイラヤン CRPHが少数民族の要求を断ったところで軍事的には空っぽの政府組織が生まれるだけだ。連邦軍は構想段階だが、カチン族だけでなくカレン族の居住地域を含めて局地的には既に戦いが始まっている。

ゾーミントゥット 国民は、これまでさげすんできたアラカン・ロヒンギャ救世軍ですら歓迎している。CRPHがどう判断するかは分からないが、何らかの形で内戦が始まるのは不可避だと思う。

――「連邦軍」であれ「連合軍」であれ、国軍と対峙する軍事力はあるのか?

モンザルニ 少数民族の武装勢力は最大で14ほどが参加し得るが、それでも「通常の戦闘」を想定するなら国軍を打ち破ることは難しいだろう。兵力の差は数字以上に大きい。

だが少数民族軍の戦略はいわゆるpositional war(陣地戦)ではなく都市型ゲリラ戦だ。例えばヤンゴンには軍事訓練を受けた「見た目は普通の人」が数千人もいるとされる。彼らは特定の日時に集まり、標的とする軍事施設に攻撃を加える準備ができている。

連合軍の戦いは内戦と言うよりは革命抗争だ。革命軍はたいてい武器に乏しく兵士の数も少ない。キューバ革命の時、フィデル・カストロはわずか82人の同志を率いて革命抗争を始めた。数の比較で戦闘を考えると展望を見誤る。

クントイラヤン ミャンマーの内戦にアメリカが軍隊を派遣することはないだろうが、資金提供やロジスティクスなどの側面支援は交渉可能なはずだ。それができれば、カチンやカレンの軍隊は地上戦で国軍をしのぐことができる。

「統一政府」の議論がまとまらないにせよ、国軍による虐殺を止めるためにCRPHの国連大使に選ばれたササは早急に欧米諸国へ支援要請をするべきだ。

――少数民族はこれまで差別や迫害を受けてきた。少数民族の軍隊に期待する国民は今だけ軍事力にすがり、後で裏切るという懸念はないのか?

ゾーミントゥット 今回のクーデターに対して抵抗を続ける中心はZ世代と呼ばれる若者世代だ。彼らは1988年のクーデターを戦った当時の若者世代とは違い、教育水準も高く多様性に対して寛容だ。

実際、クーデターが勃発してからこんなことがあった。ある商業系と医科系の大学の学生自治会が、過去のロヒンギャ弾圧に対して公に謝罪声明を発表したのだ。虐殺を知りながら声を上げなかったことへの謝罪だ。

自らも軍の弾圧の犠牲者となって初めてロヒンギャの置かれた状況を知ったからなのかどうか経緯は分からないが、彼らの謝罪は誠実なものと受け止めている。

(編集部注:CRPHで広報担当も務めるササはCRPHの国家構想でロヒンギャを国民として認めると4月9日の記者会見で断言した)

クントイラヤン 同じ思いだ。繰り返すが、われわれ少数民族はこの状況下でも愛国主義的ビルマ人への警戒心は強い。それでもZ世代への期待は大きい。

弾圧を受け行き場を失った若者世代は今、少数民族軍を支持するだけでなく自ら参加しようとしている。実際、カチン軍は彼らに対する軍事訓練を行っており、(カチン)軍幹部の話によれば訓練し切れないほどの若者たちが集まっている。

――周辺国は内戦に対してどう反応するだろうか?

モンザルニ 中国、インド、タイがその中心だが、彼らは基本的にミャンマー国軍を支持しているので懸念するだろう。

だが彼らはあくまで勝ち馬に乗るはずだ。今のところ国軍に賭けているが、「革命抗争」で少数民族軍連合やCRPHが優位な立場になれば、考えを変える可能性はある。周辺国とミャンマー国軍の関係に定まった「方程式」は存在せず、流動的だ。

クントイラヤン カチン族の主な居住地域は中国と国境を接しているが、今回の騒乱はカチン族が引き起こしたのではない。中国がミャンマーで安定した経済活動を行いたいのなら、彼らが国軍を支援し続けるのは得策でないはずだ。

モンザルニ CRPHは「連邦軍」構想を進めると同時に、国軍に影響を及ぼす中国に対して立場を表明するべきだ。つまり、CRPHは中国を重要な国家として認めると。

その上で、現在の国軍に対する無条件の支援をやめるよう求めるのだ。中国が応じなければ、世論の圧倒的支持を受けるCRPHが実質的な政権を取ったときに、ミャンマーはアメリカや日米豪印らで構成するクアッドに強く傾倒し、中国がこれまでミャンマーで進めていた石油のパイプライン事業をはじめとする経済活動が思うようにいかなくなるという「警告」も忘れずにだ。

――内戦や革命抗争はミャンマーにとって本当に望ましいシナリオなのだろうか?

モンザルニ 望ましいシナリオでもなければ、最も前向きな目標でもない。

だが今のミャンマーには連邦軍(やその他の連合軍)構想以外にいいシナリオがない。国民はデモに参加しようが家でおとなしくしていようが殺されている。5400万人の国民が人質になっているというのが現実で、「向こう側」を殺すしかないという機運が高まっている。

クントイラヤン 今の状況を変えるためには、国民は国軍に対して強いメッセージを出す必要がある。軍幹部らに対して弾圧から手を引くことを促すような、強固な心理戦を展開する必要がある。

少数民族連合軍による「宣戦布告」はその意味で強いメッセージになる。軍幹部が動じずとも、兵士らを可能な限り多く投降させることができれば弾圧を弱める効果は期待できる。
モンザルニ 投降した兵士らを受け入れる新しい軍組織がなければ、ミャンマーはサダム・フセイン亡き後のイラクになり、兵士らは過激派イスラム組織「イスラム国」(IS)のようになってしまう。その意味でも連邦軍は必要だ。

ゾーミントゥット 革命抗争は起きた後の状況が懸念されるが、不可避だと思う。そのなかで望むとすれば、CRPHはできるだけ構成民族に共通認識を持たせてほしい。

――非常に複雑な思いだ。

モンザルニ それは私たちも同じだ。残念ながら、どんな道を選んでもミャンマーを待つのは血まみれの未来だ。【4月13日 Newsweek】

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両者の共同戦線の実現の可能性は別にしても、

“大学の学生自治会が、過去のロヒンギャ弾圧に対して公に謝罪声明を発表”

“CRPHで広報担当も務めるササはCRPHの国家構想でロヒンギャを国民として認めると4月9日の記者会見で断言”

というのは、これまでのロヒンギャに対するミャンマー国内の冷淡な対応を考えると驚くべき変化です。

弾圧されて、始めて知る差別されるものの痛みでしょうか。

ロヒンギャ対応を含めて、少数民族との和解が国民一般にどこまで共有されるのかについては、まだ疑問もありますが。

中国などが“勝ち馬に乗る”というのは、そのとおりでしょう。もともと国軍には中国への警戒感が強く、中国はどんな政権にしても、自分たちの権益が保護されればいいという考えでしょうから。

それにしても、“どんな道を選んでもミャンマーを待つのは血まみれの未来だ”というのは重苦しい結論です。』

ミャンマー混迷、国内に2つの「政府」 政変3カ月

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB142Q20U1A410C2000000/

『【バンコク=ドミニク・フォルダー、ヤンゴン=新田裕一】ミャンマーはクーデターから3カ月目を迎えた。全権掌握を主張する国軍と警察は市民の抗議デモを重火器も使って弾圧。死者は計700人を超えた。一方、民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏の政権を支持する勢力は「臨時政府」をつくり、国軍と対峙する。難民が周辺国に逃れ、混乱は地域に広がる。混迷するミャンマーを追う。

砲撃は夜10時ごろまで続いた。中部の古都バゴーで9日、国軍側がデモ参加者を攻撃し、少なくとも80人以上が死亡した。ミャンマーで尊敬される仏教の僧侶が負傷者の介抱を申し出たが、拒否されたという。

軍事法廷は8日、最大都市ヤンゴンで国軍兵士を殺害したとして19人に死刑判決を下した。

バチェレ国連人権高等弁務官は13日の声明でミャンマー情勢について「2011年にシリア内戦が始まった当時の状況を思わせる」と指摘。今後、シリアのような状態に陥る可能性があると示唆する。

ブリュッセルに本部を置くシンクタンク、国際危機グループ(ICG)の上級顧問リチャード・ホーセイ氏は9日、国連安全保障理事会で「ミャンマーは破綻国家への瀬戸際だ」と報告した。

5年間のスー・チー氏の政権は、2月1日の政変で終わった。15年の総選挙でスー・チー氏の政党、国民民主連盟(NLD)が圧勝。同氏は16年、国家顧問兼外相に就き、事実上の政府トップになった。20年の総選挙で連邦議会の議席数を伸ばしたNLDを警戒した国軍のクーデターは経済発展も台無しにしようとしている。

クーデター直後にスー・チー氏の政権の正統性を主張する15人の連邦議会議員が設けた連邦議会代表委員会(CRPH)は「臨時政府」の装いだ。外相を含む多くの閣僚ポストで大臣代行を任命し、軍政下で制定された現行憲法の廃止を宣言した。国軍が設立した最高意思決定機関、国家統治評議会を「テロ組織」と非難する。

国軍はクーデター当日、スー・チー政権の閣僚を解任し、新たな大臣を任命した。クーデターは「憲法に則した正当な措置」と言い張り、4月上旬の記者会見では「2年以内の総選挙実施」を表明したが、デモに加わる市民の多くは懐疑的だ。

ミャンマー国内は2つの「政府」が並立する分裂状態だ。

国軍は欧米諸国の強い非難を受けるが、国際社会での孤立を意に介さない。人口の7割を占めるビルマ族による支配を固めることが責務だと考えている。

国際軍事情報大手IHSジェーンズの軍事アナリスト、アンソニー・デービス氏はバンコクで記者団に「ミャンマー国軍の兵士は残忍」と指摘する一方、国軍がまとめないとミャンマーもアフガニスタンと同じような混乱した国家になりかねないと主張した。

ヤンゴンの民間団体「責任あるビジネスのためのミャンマー・センター(MCRB)」は「事態への懸念を強めている」という内容の共同声明を作成し、外国の68社と国内の164社が署名した。人権の尊重と民主主義への回帰、法の支配を求めた。

仏エネルギー大手トタルは、CRPHの要請に従わず、ミャンマー沖で天然ガスの産出を続け、納税している。ガスの輸出はミャンマーにとって重要な外貨獲得源だ。ガス全体の輸出額は20年が33億ドル(約3600億円)で、ミャンマーの総輸出額の2割を占めた。輸出先はいずれもミャンマーと国境を接するタイと中国だ。

非政府組織(NGO)「国際法律家委員会」のサム・ザリフィ事務局長は「市民殺害のペースは、シリアのアサド政権よりも速い」と指摘した。シリア難民は世界最悪の水準だ。ロヒンギャなど少数民族が多いミャンマー難民の総数は減る傾向だったが、国内の混乱を受け、タイとの国境地帯などで再び目立ってきた。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む https://asia.nikkei.com/Spotlight/The-Big-Story/Failed-state-Myanmar-collapses-into-chaos

国軍の独善、ミャンマー混迷 樋口建史前大使に聞く

国軍の独善、ミャンマー混迷 樋口建史前大使に聞く
日本政府は最悪見据え、企業と情報共有を
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD058I30V00C21A4000000/

『国軍によるクーデターから2カ月あまり。ミャンマーでは市民らの抗議活動が続き、すでに500人を超える市民が殺害されるなど混迷が深まっている。ミャンマー情勢はどう推移していくのか。日本はどう向き合えばいいのか。前駐ミャンマー大使(元警視総監)の樋口建史氏に話を聞いた。(聞き手は編集委員 坂口祐一)

国民民主連盟(NLD)を率いるアウン・サン・スー・チー氏と、国軍のミン・アウン・フライン総司令官。大使在…

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大使在任中に2人の「当事者」と何度も会談するなど、双方の事情に通じた樋口氏が発したのは「事態は悪化の一途をたどっており、好転する展望は持てない。それを前提にした決断が必要になる」という厳しい言葉だった。

――市民に対する残虐な行為が、なぜここまでエスカレートしているのか?

「国軍は本気で自分たちが正義だと思い込んでいる。武器で鎮圧する以外の術(すべ)も知らない。2014年にタイで起きたクーデター後の対応処理をモデルにした甘い見込みが外れ、先鋭化しているように見える。1988年の民主化運動を軍が鎮圧したときでさえ外国人には手を出さなかったが、今回はNLD政権に協力したオーストラリア人が拘束され、アメリカンセンターに銃弾が撃ち込まれるなど、一線を越えている」

「ミン・アウン・フライン総司令官とは大使在任中、個別の会談を含め20回近く会った。政治的野心は感じたが、ロヒンギャ迫害問題で話した際には現場の写真を示しながら国軍の立場を丹念に説明するなど、良識のある信用できる人物だと思っていた。だが今回の事態を見れば、国軍にも彼自身にも国を率いる資格がまったくないことは明らかだ。見抜けなかった不明を恥じている」

――この先の展開をどう見ているか?

「残念ながら、明るい展望は描けない。想定される事態の一つは、国軍が弾圧と殺りく、大量の身柄拘束で抵抗する民衆に恐怖を植え付け、ねじ伏せてしまうというものだ。そのうえで経済対策と次の総選挙の日程を打ち出すつもりだろう」

「総選挙を経て国軍と一体の政権をつくってしまえば、欧米や日本も『民主政権』としてある程度認めざるを得なくなる――そう読んでいると思う。もちろん選挙で勝つためには、スー・チー氏を排除しNLDを非合法化するといった手段をとるはずだ。それまでは国際社会からいくら非難されようと断固譲らず、隣国や東南アジア諸国連合(ASEAN)を融和的な姿勢に引き込みながら、耐えしのごうと考えているのだろう」

駐ミャンマー大使当時の樋口氏(右端)とアウン・サン・スー・チー氏(左から2人目、2018年3月、ネピドーの外務省)=一部画像処理しています

――総選挙を実施すると表明したところで、事態が収まるとは思えないが?

「総選挙を経て国際社会に認められるというのは、『予測される事態』というより、国軍がその可能性にすがりついているシナリオ。そこでもう一つのあり得る予測は、国家統治が機能しない混迷状態。市民の抵抗がさらに拡大すると40万人の国軍と7万人の警察では制御し切れなくなる。10年間も民主社会の空気を吸ってきた国民は、何をされようと軍政を受け入れないのではないか。加えて国境地域の少数民族武装勢力も反国軍の姿勢を取り始めており、今後、戦闘が頻発する可能性がある」

「こうして国軍が完全に手詰まりとなり、総司令官の求心力が低下していけば、軌道修正を図るか、退役するか、軍内部でクーデターが起きるか。最悪のケースとして、かつての軍政時代のような鎖国状態に向かうこともあり得る」

――日本はどう対応していけばいいのか?

「甘い見通しや客観性を欠いた思い込みを捨てるのが大前提。一般論ではなく、国軍の偏狭な本質や現地の情勢をよく見て事態の推移を冷静に見通す必要がある。その分析のうえに立って、対応を判断しなければならない」

「対処にあたって日本が大事にすべきなのは、もちろんミャンマーの人たちの人権であり、命。ミャンマー国民は日本に圧倒的な信頼を寄せている。政府はミャンマー国民の命をどうやったら救えるか、そのために何ができるかを最優先で考える。そのうえで、日本の国益を守るための対応が求められる」

ミン・アウン・フライン国軍総司令官と会談する当時の樋口大使(2017年10月、ネピドーの国軍迎賓館)

――日本の国益とは、具体的には?

「『アジア最後のフロンティア』といわれたミャンマーには400社を超える日本企業が進出している。日本政府もそれを後押ししてきた。そのことは私自身責任を感じている。今回のことで、ミャンマーはいつでもクーデターが起き得る、カントリーリスクの高い国になってしまった。まずは、いま困難に直面している企業をどう守れるか、だ」

「現状は、すでに健全なビジネスができる状況にない。もちろん判断するのはそれぞれの企業だが、撤退まで視野に入れ決断を迫られている企業の相談に対しては、政府も大使館もできる限りの対応をしてもらいたい。最悪を見据えた掛け値のない情勢認識が共有されるべきだと思う」

「政府開発援助(ODA)の見直しも避けられない。2011年以降、積み上がった円借款は1兆円規模に達している。新規案件は凍結するとして、進行中の案件をどうするか、またどうやって資金を回収するか。いずれも難しい問題だが、支援する前提条件が覆った今、抜本的な見直しが迫られる。国軍との防衛交流なども再検討せざるを得ないだろう。現地に残っている邦人約1600人の安全も、帰国を含めて見極めを急がなければならない」

――日本政府は国軍にも独自のパイプがあるので、それを生かして調停すべきだ、といった指摘もあるが?

「現状では、日本は国軍の存続計画から外れているのだと思う。仮に会談を申し入れたとしても、宣伝に利用されるだけで聞き入れるとは考えにくい。逆にいきり立たせることになりかねない。だが国の運営が破綻し国軍が追い詰められる事態になれば、接触し、プランを示すことができるのではないか。そのためにも米国と認識を共有し、制裁面でも足並みをそろえておく必要がある」

――厳しい態度で臨むと、国軍を中国側に追いやる結果になる、と懸念する声もあるが?
「それほど単純な構図ではない。中国にとって内政不干渉は絶対譲れない一線だが、今回のクーデターは中国にとってはむしろ迷惑で、苦々しく思っているはず。国軍の背後に中国がいると信じるミャンマー国民は多い。このため反中感情が高まり、石油、ガスのパイプラインなどミャンマー国内の中国の権益が危うくなっている。中国にとっては自国の権益を確保することがすべて。そのためには手段を問わないが、目的に照らして合理的な行動をとるはずだ」

「中国の動きをあえて読めば、国際的な非難が集中する市民の殺害をやめさせ、国軍がもくろむ次の総選挙を国際社会が受け入れざるを得ない環境を整えようとするだろう。そのためには内政不干渉になじみのあるASEANを取り込み、中国に歩調を合わさせようとするのではないか。少数民族武装勢力への影響力の行使も考えられる」

「ただ忘れてならないのは、国軍自身が、中国以外の選択肢がない状況に戻りたいとは考えてはいないということだ。日本も国際社会も、この点を念頭において行動すべきであろう」

樋口 建史(ひぐち・たてし)
1953年生まれ。愛媛県出身。78年東大法卒、警察庁入庁。北海道警本部長、警察庁生活安全局長、警視総監などを歴任。DNA型データベースや携帯電話の本人確認、防犯カメラを使った捜査などの仕組みを導入した。2014年~18年、駐ミャンマー大使を務める。現在、カジノ管理委員会委員。

対ミャンマーODA全面停止に慎重 政府、中国を警戒

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF026NJ0S1A400C2000000/

『日本政府はミャンマーへの政府開発援助(ODA)の全面的な停止に慎重な立場だ。茂木敏充外相は2日の記者会見でミャンマーの国連大使が日本に投資中断を求めたことについて「事態の推移や関係国を注視しながら、どういった対応が効果的かよく考えていきたい」と述べるにとどめた。

日本によるミャンマーへのODAは2019年度で1893億円にのぼる。支援額を明らかにしていない中国を除けば、最大の支援国とされる。政府は新規案件は当面、見合わせる方針で、国軍に事態の改善を促す。全面停止すれば中国によるミャンマーへの影響力が強まると警戒する。

加藤勝信官房長官は記者会見で経済協力について「事態の沈静化や民主的な体制の回復に向けてどのような対応が効果的か具体的に検討していく」と語った。日本は国軍との対話も維持しており、欧米が実施する国軍関係者への制裁はしていない。』

軍の空爆にミャンマー国内の武装勢力も対決姿勢、市民も参加

北の国から猫と二人で想う事 livedoor版:軍の空爆にミャンマー国内の武装勢力も対決姿勢、市民も参加
http://blog.livedoor.jp/nappi11/archives/5250149.html

『現在軍に拘束されているアウン・サン・スー・チーAung San Suu Kyi氏が率いる与党NLD=国民民主連盟等の議員らで組織する「連邦議会代表委員会」は、国内の少数民族の武装勢力にデモ隊の側に立ってともに戦うよう呼びかけた。
Map-of-the-Karen-State-それに応じた武装勢力が市民に加勢する動きが出て、タイ国境に近い東部カイン州 (Kayin State、カレン州Karen Stateは旧称)で2021年3月27日午前、カレン民族同盟(KNU)の傘下組織が国軍拠点を制圧したのに対し、国営テレビは3月28日夜「停戦協定に署名している勢力の一部が協定に違反して軍の拠点を攻撃した(反政府組織カレン民族同盟(KNU:Karen National Union)と政府は2012年1月12日停戦合意)」と伝え、軍が南東部カレン州の武装勢力から27日に攻撃を受けたことを認めた。

FireShot Webpage Screenshot #311 – ‘Thousands flees3.reutersmedia.net

即座に軍は27日夜、20年ぶりとなる同州への報復空爆を実施し、空爆は27日に続き28、29日も続いた。KNUによると、27日夜に空爆を受けたのはKNU第5旅団の支配地域にある7つの村で、3人が死亡した。
空爆を避け、約1万人の住民が避難を強いられ、このうち約3000人がタイに越境し、ミャンマー情勢は緊迫の度合いが増している。タイのプラユット首相兼国防相は29日、ミャンマーからの避難民の流入拡大に備えていると明かした。記者団に「避難民流入は好ましくないが、人権の観点から状況を注視している」と述べた。写真は3月28日、ミャンマー南東部カイン州で空爆から非難した少数民族カレン族の住民。参照記事

FireShot Webpage Screenshot #310 – ‘ミャンマー軍の空爆逃れ3000人カレン族の団体は声明を出し、ミャンマー軍による空爆を受けて住民3000人以上が隣国のタイに向けて避難を始めたと訴えている。ミャンマー東部の川を挟んだ国境付近では、非難する住民がタイ側へ小舟などで越境したが、タイ軍は負傷者以外をミャンマー側へ送り返している。デモの行き詰まりから、武装勢力に参加する市民も出始めていると言う。写真右、ミャンマー東部カイン州で空爆を受け、サルウィン川を越えタイのメホンソンMae Hong Son(メーホンソン)に避難した少数民族カレンら。

kokang2FireShot Webpage Screenshot #315 – ‘【解説】同国に多数存在する少数民族系武装勢力のうち、タアン民族解放軍(TNLA)、ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)、アラカン軍(AA)の3勢力も30日、報復を警告する共同声明を発表。「もし(国軍が弾圧を)やめずに市民の殺害を続けるならば、われわれは抗議デモ参加者らと協力し反撃する」と表明した。国際人権連盟(FIDH)Screen-Shot-2018-05-04-at-2.25.01-PM-900×401は、もしこうした武装勢力が武器を取れば、事態は悪化し内戦に陥る恐れがあると懸念を示している。 参照記事 参照記事
ミャンマーの人権監視団体「政治囚支援協会(AAPP:Assistance Association for Political Prisoners )」は3月30日、同国で続く国軍の弾圧により死亡したデモTNLA-on-parade-e1494579713291参加者が510人に上ったと発表した。ただし実際の死者数は、これよりも大幅に多い可能性があるという。過去ブログ:2021年3月ミャンマー軍がデモ隊に向けロケット弾RPGを発射か?映像 2月ミャンマー国軍がクーデター 指導者、大統領拘束と経緯 2019年12月ミャンマー復興の日本の支援歓迎される 2011年10月「中国の勝手は許さない!」とミャンマー国民が中国に反発 2010年11月中国の影がちらつくミャンマー情勢とカレン族

FireShot Webpage Screenshot #313 – ‘解任されたミャンマー国連大使2021年4月2日:政情混乱が続くミャンマーで、紛争が激化するリスクが高まっている。民主派は国軍に対抗するため、国内の少数民族武装勢力に接近している。ミャンマーのチョー・モー・トゥン(Kyaw Moe Tun)国連大使:右 は4月1日、日本経済新聞のインタビューで、武器を持たない市民が犠牲になっていると指摘した。民主派が少数民族武装勢力とともに、将来的に国軍に代わる「連邦軍」の創設をめざす考えを明らかにした。だが国軍の兵力40万人に対し、最大勢力のワ州連合軍でも2万人にとどまる。内戦は主に山間部でのゲリラ戦で、少数民族武装勢力に国軍の本拠地を制圧する能力はない。

ミャンマー軍事政府は4月2日、国連の警告に答え、停戦を表明したと報道されたが、詳細は不明 英文記事
https _cdn.cnn.com_cnnnext_dam_assアウンサンスーチー(Aung San Suu Kyi)

国家顧問が率いる国民民主連盟(NLD)による文民政府を代表するミャンマーのチョー・モー・トゥン国連大使は2021年2月26日、国連でクーデターを非難し、ミャンマーの国営放送は翌27日、同国外務省がチョーモートゥン国連大使を解任したと報じた。この後国連で、ミャンマー政府を代表する国連大使が誰かをめぐる対立が起き、2人が正統な「大使」と主張する事態になっている。1人は国連総会でミャンマー国軍のクーデターに抗議し、国連大使を解任されたチョー・モー・トゥン氏。もう1人は、解任後に代理大使に任命されたティン・マウン・ナイン国連次席大使だ。 参照記事 参照記事 参照記事

2021年4月3日:軍は、デモ隊に協力して基地を攻撃した少数民族の武装勢力に対し、4月1日から1か月間の停戦を呼びかけていたが、1日、みずから停戦を無視して南東部のカレン州で空爆を行った。軍はさらに地上部隊も派遣して砲撃を行い、カレン族の武装勢力が、これに反撃を開始して戦闘になっているもよう。現地の人権団体によると治安部隊による発砲などでこれまでに550人が死亡した。参照記事』

中国、ASEANとミャンマー情勢協議

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0141N0R00C21A4000000/

『中国がミャンマー情勢を巡り、東南アジア諸国連合(ASEAN)との連携強化に動いている。王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は2日までの日程で、ASEAN4カ国の外相を招いて会談している。米国や欧州各国によるミャンマーへの干渉をけん制し、中国の影響力を確保する狙いだ。米国も取り込みに動いており、米中による引き抜き合戦の様相もみせる。

中国・福建省を訪問しているのは、シンガポール、インドネシア、マレーシア、フィリピン4カ国の外相。訪問に先立ち、中国外務省の華春瑩報道局長は3月30日の記者会見で「中国とASEAN関連国との関係を新たな高みに押し上げ、地域の平和と安定をよりよく維持したい」と話した。

王氏は31日にシンガポールのバラクリシュナン外相と会談。「ASEANが内政干渉しない原則を堅持し、ASEANのやり方でミャンマー情勢の安定を促進することを支持する」と伝えた。

今回訪問した4カ国は、ミャンマー国軍によるクーデターで米欧が制裁に動いていることを懸念している。制裁でミャンマーがさらに混乱すれば、ASEAN全体に影響が及びかねないためだ。

ASEANは自らが仲介する形での問題解決を目指しており、3月上旬にインドネシアが主導して非公式の外相会議を開いた。

ミャンマー国軍がデモの弾圧を強めたことで、米欧は制裁を強化したが、状況は悪化している。王氏の発言はASEANが解決を探る姿勢を容認するとともに、欧米をけん制した格好だ。

タイのドーン外相は3月30日、インドネシアのジョコ大統領が開催を提唱する首脳会議が4月に実現するとの見通しを示した。4カ国の外相にとっては首脳会議を前にミャンマーに影響力を持つ中国の支持を取り付ける狙いがあるとみられる。

中国にとっても、3月中旬の米中外交トップによる協議が物別れに終わり、米欧が対中制裁を発動した後にASEAN4カ国の外相を訪中させた意味は大きい。

中国と米欧の溝が広がる中で東南アへの影響力を誇示できるためだ。ASEANと連携して中国大陸からインド洋に陸路で抜けられる交通の要衝に位置するミャンマーの情勢を巡り主導権を握り続ける戦略だ。

バイデン米政権も手をこまねいていない。マレーシアのヒシャムディン外相は3月31日、自身のフェイスブックで、ブリンケン米国務長官から電話があったと明かした。ミャンマーと南シナ海の情勢を巡り意見を交換したという。

ロイター通信によると、米国務省のプライス報道官は31日に「中国はその影響力を利用して、ミャンマーでの軍事クーデターの責任者に責任を取らせるべきだ」と批判した。

(北京=羽田野主、ジャカルタ=地曳航也、シンガポール=中野貴司)

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国連安保理、ミャンマー国軍を「強く非難」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN020CI0S1A400C2000000/

『【ニューヨーク=吉田圭織】国連の安全保障理事会は1日、前日に見送ったミャンマー情勢を巡る報道発表を出した。「(ミャンマー国軍による)平和的なデモ参加者に対する暴力行使や、女性と子供を含む数百人もの市民の殺害を強く非難する」と強調した。

「報道発表」は理事国15カ国の全会一致が必要だが、公式文書として出される報道声明より影響力は小さい。

安保理はデモ参加者による死者数が増加していることを受け、「急激に悪化している状況を深く懸念している」とし、国軍に対して最大限の抑制を求めた。国連のブルゲナー事務総長特使(ミャンマー担当)による東南アジア訪問も歓迎し、「特使の一刻も早いミャンマー訪問を願う」とした。

安保理は3月31日に非公開の緊急会合を開き、制裁の可能性や報道発表について協議した。安保理外交筋によると、中国がさらなる時間を要請したため発表が遅れた。

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安保理、ミャンマー情勢で緊急会合 欧米は制裁に言及

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN31EG20R30C21A3000000/

『【ニューヨーク=吉田圭織】国連の安全保障理事会は31日、国軍によるデモ弾圧で悪化するミャンマー情勢を巡り、英国の要請で非公開の緊急会合を開いた。安保理外交筋によると、欧米の理事国は制裁の可能性について言及したが、中国とロシアが反対した。会合後に報道発表を出す準備も進めていたが、中国がさらなる時間を求めた。

会合終了後に英国のウッドワード国連大使は記者団に対し、ミャンマー国軍が27日に一日に100人以上を殺害したことを受け、「国軍による市民の殺害を最も強い言葉で非難する」と批判した。市民の弾圧が続くなか、「安保理が取れる次のステップについて協議を続ける」と述べた。

日本経済新聞が入手した国連のブルゲナー事務総長特使(ミャンマー担当)の演説内容によると、安保理に対して同氏は「民政への復帰を支援するのは我々の義務だ」と強調し、「手元にある全ての手段を検討し、団結して行動をとるよう呼びかける」と訴えた。

ブルゲナー氏は「2月上旬のクーデター以来、520人以上の人々が殺害された」とも述べ、「大量殺りくがいまにも起こりそうだ」と警鐘を鳴らした。同時に国民への弾圧を続ける国軍と少数民族武装勢力の緊張が高まっており、内戦につながる可能性も上昇していると警告した。

だが、国連の要求に安保理が応えるのは困難な情勢だ。中国やロシアなどミャンマーの内政問題だとする国々と欧米の理事国の意見の隔たりは続いている。中国の張軍国連大使は「一方的な圧力や制裁などの強制的な措置は緊張と対立をさらに高め、状況をさらに複雑にするだけだ」と述べた。

ロシアのポリャンスキー国連次席大使は記者会見で30日、「国軍に対して最終通告をしたい気持ちは分かるが、暴力行為を扇動することになる」と指摘し、「安保理は状況をさらに悪化させてはいけない」との見解を示した。

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米国、ミャンマー国軍へ制裁強化 一般国民にも影響

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM3044D0Q1A330C2000000/

『【ヤンゴン=新田裕一、バンコク=村松洋兵】米国がミャンマー国軍への制裁を強めた。29日には投資・貿易の2国間協定の協議停止を発表し、優遇関税の見直しにも言及した。デモ隊らへの弾圧をエスカレートさせる国軍に圧力をかけるため、一般の国民にも影響がおよぶ制裁をせざるを得なくなってきた。

ミャンマー国軍や警察はデモ隊だけでなく、民家内の市民や子供にも無差別に発砲している。民間団体の政治犯支援協会によると、…

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民間団体の政治犯支援協会によると、市民弾圧による死者数は29日時点で510人となった。

米国は国軍への圧力を強めた。米通商代表部(USTR)の声明によると、2013年に署名した「貿易・投資枠組み協定」に関わる取り組みを、民主的に選ばれた政府が戻るまで停止する。協定は政府間協議の開催などを定めている。

USTRはミャンマーからの輸入品を対象にした特恵関税制度の見直しも表明した。約5000品目の関税を免除し、柱となる縫製産業などの成長を後押ししてきた。20年12月末に一旦失効したため米議会で継続させる制度を議論しているが、ミャンマーは対象外になる可能性が出てきた。

米国は段階的に制裁を科してきたが、当初は国軍に的を絞った。2月中旬、まずミン・アウン・フライン国軍総司令官ら軍関係者10人と現地企業3社を制裁対象リスト(SDNリスト)に加えた。米国内の資産を凍結し、米国企業との取引を禁止した。その後も他の国軍関係者や家族らを対象に加えたが、彼らが米国内に持つ資産はほとんどないとみられ、実効性は疑問視された。

3月下旬には、2つの国軍系企業、ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)とミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)を制裁対象に加えた。両社は金融や携帯通信、港湾などの事業を展開し、国連調査団が19年にまとめた報告書によると約150社の関連企業を抱える。国軍の資金源を断つ狙いだった。

それでも国軍の弾圧は止まらないため、今回は貿易・投資分野も制裁対象に加えた。2国間協定や特恵関税のほかに、ミャンマーの主要な輸出品目である天然ガス産業も候補に挙がる。同国の人権状況を調査している国連のアンドリュース特別報告者(米元下院議員)は、ミャンマー石油ガス公社(MOGE)を制裁対象に加えるべきだと提言している。

かつての軍事政権時代は、国軍に近い大手財閥も制裁対象だった。最終的には米国企業によるミャンマーへの新規投資や金融取引、貿易の禁止まで踏み込んだ。

ミャンマーは半世紀に及ぶ軍政期を経て、2011年に民政移管した。民主化と並行して、金融制度やビジネス法制の整備など、近代的な資本主義経済の基盤づくりを急いで進めた。日米欧など各国の政府・企業は、新投資法や新会社法の制定、資本市場の育成、労働・環境基準の整備などを競って支援した。そうした経済の近代化も大きく逆行しかねない。

米欧の制裁強化は、ミャンマーで事業展開する外資企業にも大きな影響を及ぼす。英フィナンシャル・タイムズは23日、国際的な人権・環境保護団体が米シェブロンやトタルに対し、MOGEにロイヤルティー(使用料)などの支払いを停止するように求めたと報じた。

日本勢ではキリンホールディングスがMEHLとの合弁でビール生産を手掛ける。MEHL側の持ち分比率が49%のため米国の制裁対象外だが、現地では激しい不買運動が行われ、スーパーの商品棚から姿を消した。25日をめどに稼働再開を予定していた工場の状況は「保安上の理由からコメントは控えたい」(キリン広報)としている。

人権侵害に制裁法「いかがなものか」 公明代表

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE3033W0Q1A330C2000000/

『公明党の山口那津男代表は30日の記者会見で、人権侵害に関与した外国の当局者へ制裁を科す法整備について「いかがなものか」と慎重な考えを示した。法整備をめぐって与野党の有志議員が超党派の議員連盟を近く発足させる予定だが、現状で公明党の参加者はいない。

人権侵害を理由として外国当局者に制裁を科す法律は海外で「マグニツキー法」と呼ばれる。既に法整備している米欧の主要国は中国のウイグル族への人権問題を巡り、対中制裁に踏み切った。与野党では人権保護を重視する米欧との連携を促す動きがある。

ウイグルの人権問題を巡り「経済や人事交流の極めて厚い中国との関係も十分に配慮し、摩擦や衝突をどう回避するかも重要な考慮事項だ。慎重に対応する必要がある」と主張した。

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香港選挙変更「看過せず」 外務省報道官

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE30CXS0Q1A330C2000000/

『外務省の吉田朋之外務報道官は30日、中国の全国人民代表大会が香港の選挙制度見直し案を可決したことに関し「重大な懸念を強めている。高度の自治を大きく後退させるものであり、看過できない」との談話を発表した。

談話で制度見直しが香港基本法の趣旨に「逆行している」と批判。日本政府として香港の選挙が公正な形で実施されるよう中国に求めた。

〔共同〕

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米、ミャンマーに追加制裁 国軍系企業2社

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN25CE60V20C21A3000000/

『【ワシントン=中村亮】米財務省は25日、ミャンマーでクーデターを起こした国軍が深く関与する2企業に制裁を科したと発表した。国軍の資金源に打撃を与えて、クーデターに抗議するデモ参加者への弾圧を停止するよう迫る狙いがある。

制裁対象に指定したのは、国軍系のミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)とミャンマー・エコノミック・コーポレーション(MEC)。2社は米企業との取引が禁じられ、米国にある資産が凍結される。バイデン政権は2社に対する事実上の禁輸措置をすでに発動しており、国軍の資金源への締め付けを強めたことになる。

【関連記事】
ミャンマーで「沈黙のスト」、市民が出勤や外出を停止
米欧、ミャンマー制裁も協調 クーデター巡り

米財務省は、2社について貿易や資源、酒類、たばこ、消費財などの分野で強い影響力を持つと指摘した。2社はインフラや金融、通信といった幅広い分野の事業会社も抱えており、制裁の影響が一般市民の生活に及ぶ可能性がある。制裁を受け、米国以外の企業も2社との取引を控える動きが加速すればミャンマー経済に痛手となる。

ブリンケン国務長官は25日の声明で、2社への制裁について「国軍が平和的なデモ参加者に対して引き続き暴力行為を行っていることを踏まえ、これまでで最も重大な措置をとった」と強調した。国軍に対して全ての暴力行為の停止や全ての拘束者の解放を要求した。

バイデン政権は外交政策で人権を重視しており、ミャンマーのクーデターに強い懸念を示してきた。欧州やアジア各国と協調し、国軍に対する包囲網づくりを進めている。ミャンマーを国際社会から再び孤立させるほど、中国が経済支援などを通じてミャンマーに接近するリスクもある。

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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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分析・考察 トランプ政権時代に止まっていた米国の「人権」「民主主義」の針が、バイデン政権下で猛烈な勢いで回転しています。先週、韓国の文在寅政権が避け続けてきた北朝鮮体制による人権侵害を容赦なく突きつけたときにも実感しました。記事にあるミャンマーのほか、新疆ウイグル自治区の人権問題でも国際社会に対中制裁への協調を呼びかけるなど動きを活発にしています。制裁のあり方では米国と立場にズレがある日本は世界各地の人権問題の情報収集の強化と対処方針の整理・検討を急ぐ必要があると思います。
2021年3月26日 13:03いいね
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NYタイムズが「アップル・ニュース」から撤退( 2020/07/10 11:00 )

https://www.yomiuri.co.jp/world/nieman/20200708-OYT8T50023/

『ケン・ドクター(米ジャーナリスト)
激震か微動か
 ニューヨーク・タイムズ紙(以下タイムズ)が、アップル社のニュースフィード「アップル・ニュース」からの撤退を決めた。

 これだけだと、主要メディアと巨大プラットフォーム(サービス基盤)の間で、また何か駆け引きがあったようにしか見えないだろう。だが、これは何か大きな動きが起きる前触れなのかもしれない。今年中にもプラットフォームのニュースに対する力関係に地殻変動が起きるのか、それとも微動で終わるのかという話だ。

 (米国での人種差別抗議運動を発端に広がった)グローバル企業によるフェイスブック社への広告掲出ボイコットの動きも、この振動がより大きな揺さぶりにつながる可能性をうかがわせる。全米各州や連邦の司法当局が進める、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンのプラットフォーム4社)を念頭に置く反トラスト法(日本の独占禁止法に相当)違反追及の動きにしてもそうだ。

 「巨大プラットフォームとの関係を見直す時が来た」とタイムズの最高執行責任者(COO)メレディス・ルビーン氏は語り、三つの軸で再検討を進めていると明かす。

(1)その企業が、タイムズの記事に閲覧者を招き入れるのにどのような役割を果たしているか。

(2)タイムズの主目的は読者との直接的な関係を拡大し、(記事への)接触を習慣づけ、最終的に購読してもらうことだが、その企業はどのような役割を果たしているか。

(3)その企業が、タイムズがジャーナリズムのために行った投資から相当な利益を得ていることがわかっていても、なお割に合う関係なのか。

 ルビーン氏は3年前にCOOとなり、マーク・トンプソン最高経営責任者(CEO)の後継候補に広く目されている。その人物が「この時点でアップル・ニュースに参入し続ける意味はもう見いだせない」と言うのだ。

 タイムズがプラットフォームとの関係修正に乗り出すのは、これが最後でもないだろう。ルビーン氏は「過去18か月、我々はプラットフォームとの関係について真剣に考えてきた。生態系の中での現実に合わせ、自分たちをどこまで刈り込むかという計測を周到に進めた。我々は少しずつ、年々、改善してきたからこそ、このような変化を今、行えるようになった」と述べる。要するに、タイムズは2025年に購読者を1000万人まで増やすという目標を「独力で」達成できることが実証されつつあるというのだ。

コロナも転機に
 「新型コロナウイルスの危機的状況がピークだったころ、タイムズのニュース利用者は2億5000万~3億人に達した。3月には米国で、成人10人のうち6人がタイムズを利用していた。読者との関係を築く上で、これほど大きな機会はかつてなかった」とルビーン氏は指摘。さらに、「我々の最終目標は、より多くの人々の暮らしに、より大きな役割を果たすことだ。我々は年々、その目標に向け、自力でできることが増えている。だからと言って配給パートナーがいらないというわけではない。ただ、そうした企業を評価する方程式に変化が生じた」と今回の決断を巡る状況について説明した。

 つまり、タイムズはプラットフォームとの関係をすべて断つわけではないが、これが微震にとどまるような話でもないということだ。

危険なダンスは続く
 例えば、タイムズは、アップルとこれからもポッドキャストでは緊密に協力していくだろう。主力アプリ「ザ・デイリー」はその価値を増している。アップストアを通じて販売されるタイムズのアプリは、購読者との接触時間を固める鍵になっている。

 トンプソンCEOは、メディア発行人として巨大プラットフォームとの危険なダンス(駆け引き)は続けざるを得ないと率直に認める。トンプソン氏はわずか1年前、なぜタイムズがワシントン・ポスト紙のように雑誌読み放題アプリ「アップル・ニュース+」の立ち上げに加わらないかについて、「いろんなニュースを寄せ集めて、うわべだけ魅力的な混ぜ物を作ろうとしているからだ」と酷評していた。

 ニュースをどこから得ているかと問われて、「携帯電話から」と答える人は多いだろう。だがタイムズは、他の新聞社同様、購読料金の獲得を唯一の進むべき道とみており、ニュースを提供しているのは自分たちだと読者に認知してほしいのだ。タイムズは、読者と直接的な接触を持ち、可能ならば購読契約につなげたいと考えている。

 もちろん、ニュースを発行する側と集積する側との緊張関係は、インターネットの初期時代からあった。ヤフーニュースを巡っては20年以上、メディア各社の中で、加わるべきか、仮に加わるならどのような形で、という議論が続いてきた。

 タイムズは長年、アップル・ニュースに配信する記事を限定してきた。配信の見返りにタイムズが得たのは、ニュースレターや購読を募る広告などの呼びかけを行う場だった。アップル・ニュースでのニュース視聴回数はデジタル市場分析大手のコムスコア社によるインターネット視聴率測定に反映されるメリットもあった。ただ、これらは主にブランドイメージと到達率であり、直接の利益につながるルートではなかった。

アップルは静観
入り口に大きなロゴを掲げたニューヨーク5番街のアップルストア(2019年9月、ロイター)
 アップル・ニュースが実際は何であるのかを誤解している人は、ユーザーの中にもいる。多くの人にとって、それは「携帯に出てくるニュース」で、意図的にせよ、偶然にせよ、画面を操作することで特定のお知らせや記事のまとめが見られる。アップル・ニュースのユーザー数は今年4月現在で1億2500万人。ほんの3か月前の1億人から増えている。

 アップル・ニュースによれば、撤退したメディアはタイムズのほかにはほとんどない。アップルの広報担当は、「ニューヨーク・タイムズはアップル・ニュースに毎日数本しか記事を提供してこなかった」とする声明を発表。「我々は1億2500万のユーザーに最も信頼できる情報を届けるよう努めている。今後もウォール・ストリート・ジャーナルやワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズ、ヒューストン・クロニクル、マイアミ・ヘラルド、サンフランシスコ・クロニクルを含むメディア数千社と協力し、さらに多くのすばらしいメディアを加えていくことで読者への務めを果たす」と続けた。

 声明はさらに「我々は広告料や購読料などでの定評あるビジネスモデルを通じ、質の高いジャーナリズムを支えることにも尽くす」とした。

撤退への二つの計算
 タイムズによる撤退決断の背景にはもっぱら、ニュースを直接発行する者の力、すなわちジャーナリストと読者の関係があった。この関係こそが購読料収入を得るための核心であり、購読料獲得こそが今のメディア企業が前進する唯一の道なのだ。

 ただタイムズの行動は同社ならではのもので、大転換の先駆けになるかどうかは微妙だ。何しろタイムズは計600万人の読者を擁し、その数は紙の新聞がピークだった頃の3倍以上だ。

 より多くの読者と購読契約者がいればデータが集積され、どういった読者に何が有効かの分析もできる。その分析の結果が、タイムズにとってアップル・ニュースはプラスにはならないというものだった。

 二つの計算があった。第一は、タイムズが、今現在ニュースを見ている人たちをどうすれば購読契約者にできるかだ。

 ルビーン氏は「我々は、自社のプラットフォームを使って読者との関係を築き、拡大することに自信を深めている」と話す。その上で、「配給パートナーが何をもたらしてくれるか。その製品は主として、あるいは純粋に、タイムズのニュースに読者を引きつけるためのものであるのか」を問い続けているのだという。

 第二は、アップル・ニュース(あるいはタイムズのコンテンツを扱いたい他のプラットフォーム)が、忙しい読者にとって新聞の代替物になり得るかというものだ。

 ルビーン氏は「部分的にせよ、新聞の代替物になる製品があるのか、真剣に考えてきた。仮にそうならば、我々は(ニュースを提供することに対し)どのような対価を得られるのか。それはお金なのか、我々の方に視聴者が誘導されるのか、あるいは我々が読者と直接の関係を築くことを容易にするものなのか。こういったことを計算した」と話す。

ニュースがすべての基盤
 タイムズの撤退は、主要メディアとGAFAとの関係により広範な変化をもたらすのだろうか。

 グーグルとフェイスブックは最近、メディア支援に力を入れている。支援は実質を伴い、訓練や資金面での援助に加え、極めて選別的ではあるが、いくつかの社にはニュース素材への代価が支払われている。現時点では、地方紙の発行者からは「コンテンツに直接料金が支払われたことはない」との声が寄せられるが、それも変わるかもしれない。

 こうしたメディア支援プログラムの拡充は、少なくとも三つの大陸で同時に巨大プラットフォームへの圧力が強まっていることと無関係ではない。オーストラリア、カナダ、そして欧州ではプラットフォーム批判が強まり、規制が強化され、プラットフォーム側からすると、脅威は新局面に入りつつある。

 メディア側から聞こえる呪文は、「我々に金を払え」というものだ。

 プラットフォームに対し世界規模で高まる懸念やポピュリスト的反動、情報技術(IT)企業への反発を背景に、グーグル、フェイスブック両社のみならず、アップル、アマゾン両社に加えツイッター社も、少しは譲らなければならないことがわかってきた。

 だからプラットフォーム各社は、知的利益の最大化に企業としてできる貢献を行う。規制や反トラスト、課税を通じた情け容赦ない締め付けが強化されないよう、「自主的に」、何を差し出せるか計算しているのだ。

 ルビーン氏に、アップル・ニュースからの離脱はタイムズでなければできなかったかどうかを聞いてみた。同氏の答えは、「他社に成り代わって話すことはできないが、どの新聞社にも自社やフリーのジャーナリストの仕事を支えられるような財政基盤があるべきだ」というものだった。

 「我々がジャーナリズムに対して行っている投資は、増え続ける一方だ。(コロナ禍の)今年でさえ増え続けている。技術者とデータ分析者、製品管理とデザインの専門家も少なからず増やした。広告部門は今年、ますます厳しい状況にある。我々のしようとすることには常に投資が必要だ。好況の時も不況の時も、ニューヨーク・タイムズの投資はまずジャーナリズムのために行われる」

 デジタル・ニュースのビジネス上の成果を測る指標がいくつあっても、一番の基盤は元のニュースと解説の質だ。報道機関がいったい何人のジャーナリストや関連分野の技能を持つ人材を支えていけるのか。そしてプラットフォームとの個別の取引がその助けになるのか、ならないのか。それこそが、すべての鍵となる指標なのだ。

(6月29日配信、原文は こちら )』

米欧、ミャンマー制裁も協調 クーデター巡り

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR22BUG0S1A320C2000000/

『【ブリュッセル=竹内康雄、ワシントン=中村亮】欧州連合(EU)は22日開いた外相理事会で、ミャンマーで2月に起きた国軍によるクーデターに関連して、国軍のミン・アウン・フライン総司令官ら11人への制裁を承認した。バイデン米政権も同日、ミャンマーの2個人・2団体に制裁を発動。対中国制裁と並んでミャンマー問題でも米欧が足並みをそろえた。

EUによる制裁は即日発動し、EUへの渡航が禁止されたほか、EU域内の資産が凍結された。クーデターに加え、その後の市民によるデモへの弾圧を問題視した。ミャンマー政府や軍事政権と関連がある機関への資金援助を停止したほか、軍関係の企業や組織への追加制裁を今後検討する。

会合後に記者会見したEUのボレル外交安全保障上級代表(外相に相当)は「我々のメッセージは(国軍が)暴力をやめ、拘束された者を解放し、対話に関与することだ」と訴えた。

EUでは、ミャンマーに適用する途上国向けの特恵関税制度の停止も検討したが、声明は「一般市民へのマイナスの影響を与えない措置をとる」として見送った。特恵関税を停止すれば、EU向けの主力輸出品である繊維産業に従事する労働者の生活に悪影響を与えかねないと判断した。

米財務省は、22日に制裁を科した個人や団体についていずれもデモ参加者の弾圧に関与したと指摘した。ブリンケン国務長官は同日の声明で、EUによる対ミャンマー制裁に触れて「これらの行動は国際社会による(ミャンマーの)統治体制に対する非難やミャンマー国民に対する責務を示している」と強調。ミャンマー国軍への国際包囲網づくりを進める考えを示した。

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ミャンマー貫く〝援習ルート〟 クーデター後の対中関係の行方

ミャンマー貫く〝援習ルート〟 クーデター後の対中関係の行方
「一帯一路」大解剖 知れば知るほど日本はチャンス
石田正美 (日本大学生物資源科学部国際地域開発学科教授)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/22484

『アウン・サン・スー・チー国家顧問など国民民主連盟(NLD)幹部を拘束した2月1日の政変から2カ月近くが過ぎた。収まることのない連日のデモに国軍や警察が発砲し、3月21日時点で250人以上の死者が出た。米バイデン政権は制裁の度合いを強め、欧州連合(EU)も国軍のミン・アウン・フライン総司令官ら11人への渡航禁止と資産凍結といった制裁を承認した。国連安全保障理事会は「平和的なデモ隊に対する暴力を強く非難する」とした議長声明を全会一致で採択し、軍への自制を求めた。

 しかしながら、ミャンマーの孤立は中国への接近をより一層強めかねない。というのも、ミャンマーは中国にとっての地政学的な要衝であり、約3年余りにわたり、習近平政権は中国ミャンマー経済回廊(CMEC)実現のため、スー・チー政権に、再三のラブコールを送ってきたのである。

インド洋から中国までを貫く
「援〝習〟ルート」
 CMECは、中国南部・雲南省の昆明とミャンマー最大の経済都市ヤンゴン、そして西部のラカイン州チャオピューを高速鉄道と高速道路で結ぶ構想である。これは17年12月に、スー・チー国家顧問の北京訪問の折、習近平国家主席との間で合意された。

(出所)筆者資料を基にウェッジ作成 写真を拡大

 まず、昆明からミャンマー第2の都市マンダレーを経てヤンゴンを結ぶルートは、中国ミャンマー貿易の最重要ルートである。ミャンマーにとって中国は輸出入とも最大の貿易相手国であるが、同ルートを用いた輸出と輸入はミャンマー全体の約2~3割と約1割をそれぞれ占める。10年まで続いたスー・チー氏軟禁などを理由とした経済制裁下で、欧米諸国との貿易が閉ざされる中、この国境貿易ルートが、タイとの国境貿易とともに、ミャンマー経済の屋台骨を支えてきたといっても過言ではない。歴史を紐解けば、元々このルートは、当時ミャンマーを植民地支配していた英国が、日中戦争下で重慶に拠点を置く蒋介石率いる中国国民党政府を支援するために建設された〝援蒋ルート〟であった。

 そして特に重要なのが、もう一方の沿海都市チャオピューから延びるルートだ。チャオピューには、インド洋と中国とを結ぶ天然ガスと原油パイプラインの起点がある。前者はチャオピュー沖のシュエ・ガス田産出の天然ガスを、マンダレー、昆明を経て広西チワン族自治区の貴港まで運ぶ(ミャンマー国内793㌔メートル、中国国内1727㌔メートル)。「一帯一路」構想提唱以前の10年に建設が始まり、14年から輸送開始、18年の実績ベースでミャンマーからの輸入は、中国の天然ガス総輸入の3%を占める。

 後者は中東産原油を、チャオピューで荷揚げした後に同じくマンダレー、昆明を経て重慶まで運ぶ(同771㌔メートル、同1632㌔メートル)。こちらも10年に建設が始まり15年に完成した。だが、脱中国依存の姿勢を示したテイン・セイン政権下で棚上げとなった。輸送が開始されたのは、スー・チー政権発足後の17年で、輸送能力は日量44万バレルで、フル稼働を前提とすると18年の中国の原油総輸入の日量924万バレルの4・8%を占める。ちなみに、同年の中東産原油は中国の原油輸入の約4割を占める。

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〝マラッカ・ジレンマ〟を回避し
港湾でインドを包囲
 では、ヤンゴンと比べれば無名に等しい沿岸都市チャオピューを、なぜ中国はパイプラインの起点として選んだのであろうか。

 理由はインド洋と太平洋を結ぶマラッカ海峡にあると考えられる。同海峡は1日平均で200隻以上の船舶が通過する要衝である。このマラッカ海峡が、仮に米軍に海上封鎖された場合、中東産原油の輸入がストップするという〝マラッカ・ジレンマ〟を中国は警戒する。

 このマラッカ・ジレンマ解消の一助となり、沖合で天然ガスが産出されることでチャオピューが選ばれたのであろう。中国は、このほかにパキスタンのグワダル港から新疆ウイグル自治区までを結ぶ中国パキスタン経済回廊(CPEC)を開発しているほか、既にロシアや中央アジアからの天然ガスをパイプラインで輸入している。

 ただ、チャオピューからのパイプラインは敷設済みであるのに、なぜCMECとしてインフラを新たに建設する必要があるのか、疑問は残る。この点は筆者の推測の域を出ないが、鉄道や道路を通じて追加的な原油と天然ガスの輸送が可能であること、さらには鉄道建設後に仮に運行にも関わることができれば、パイプラインのリスク管理や拡張がしやすくなることなどが考えられる。

 加えて、パキスタンのグワダル港、スリランカのハンバントタ港、チャオピュー港を、インド洋における中国船舶の補給基地などとして活用することもできる。インドを囲む〝真珠の首飾り〟であるチャオピュー港などの港湾が、軍事転用される可能性もあり、CMECは対インド有事の際の重要な補給路となり得る。ただ、一方のインドも、チャオピューの沖合800㌔メートルほどに位置し、マラッカ海峡にも睨みを利かせるアンダマン・ニコバル諸島で軍事拠点化を進めており、今後は中印双方の陣取り合戦の様相を呈する可能性も否めない。

 習近平氏は、20年1月に2日間にわたりミャンマーを訪問、スー・チー氏との間でCMECを含む33の覚書を締結している。この動静からも、昆明からチャオピューを結ぶルートは、現代版〝援習ルート〟と位置付けられよう。

CMECの裏に
改革開放にさかのぼる文脈

 CMECのミャンマー側は、パイプラインを除けば構想の域を出るわけではない。一方中国側は、険しい山々を切り開き、具体的にインフラが整いつつある。

 まず昆明からミャンマーとの国境がある瑞麗まで、1996年から20年弱の歳月をかけ、2015年末に全長702㌔メートルの高速道路を完成させた。昆明と瑞麗の間は1000㍍以上の高低差に加え、メコン川など大河もあり、難工事を経た上での完成である。また、18年に昆明・大理間292㌔メートルを5年の歳月をかけて建設した高速鉄道のその先の瑞麗までの区間も、数々の難工事に直面しながらも、その建設を進めている。

 重要なのは、チャオピューからのパイプラインと同様に、この高速道路もCMECに合わせて建設が始まった訳ではないことだ。元々は中国全土を南北方向に5本、東西方向に7本の高速道路網を張り巡らす「五縦七横」構想の一つである、上海と瑞麗を結ぶ上瑞高速道路の一部である。この五縦七横は1992年の国務院の決定に基づくもので、2007年までの15年間にその大部分を占める3万5000㌔メートルが開通している。特に、アジア通貨危機による影響緩和の景気刺激策として、1998年に高速道路建設は加速された。

 その後の2007年までの期間は、経済発展が遅れた西部12省・市・自治区の経済発展を促す「西部大開発」が進められた時期と一致する。当然ながら、雲南省はその対象地域であり、とりわけ国境地域の経済発展が隣国との貿易関係を通じて強化されていた。筆者も06年に雲南省を含むメコン川流域諸国の国境経済圏の研究に取り組み始め、昆明・瑞麗間を往復したが、ミャンマーに続く一般国道の整備状況が、未舗装道路など悪路の多かったラオスやベトナムへの道路と比べても、特に良好であったことが印象に残る。

 一帯一路の中のCMECは、1990年代からのインフラ建設やミャンマーとの関係構築といった蓄積の上にあり、今や中国のエネルギー安全保障にとって欠かせないルートとなっている。2006年当時から「南進する」中国と言われてはいたものの、国境経済圏開発の延長線上に、マラッカ海峡を通らずに済むインド洋への海洋進出があるとは思いもよらなかった。

 しかし、尖閣諸島や南沙諸島などを自国の領土と定めた中国の「領海法」の制定、五縦七横の政策実施、さらには当時の最高指導者鄧小平氏が中国南部を巡り改革加速を呼び掛けた「南巡講話」を行った年は、いずれも1992年である。このことを考えると、CMECが鄧小平の時代から周到に準備されたレールの延長線上にあるのではと勘繰りたくもなる。

 こうした中国の思惑に対して、ミャンマーは従順にもみえるが、実はそうでもない。そこには、中国とインドという大国の狭間で、時として双方を天秤にかけながら、したたかに対応してきた歴史がある。

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対中依存を避けたいミャンマー
国軍を取り込もうとする中国
 90年代からの欧米諸国の経済制裁下で孤立していたミャンマーの軍事政権に援助の手を差し伸べてきたのが中国である。しかしながら、11年に軍事政権の流れを組む連邦団結発展党(USDP)の代表として政権を担ったテイン・セイン大統領は、ミャンマー北部カチン州で中国が進めていたミッソン・ダムの建設を、地元住民の反対の声に配慮して凍結している。

 このダムが建設されれば、中国の三峡ダムに匹敵する発電が行われ、その9割が中国に輸出されることになっていた。これがミャンマーのためになったかというと首をかしげたくもなるが、テイン・セイン政権にとりミッソン・ダムの建設凍結が欧米諸国から歓迎され、経済制裁解除の1つのきっかけになったとも考えられる。

 スー・チー氏率いるNLD政権も、中国への債務依存が強まり、インフラの管理権が中国に渡る「債務の罠」への懸念が根強い。一例として、中国の国営企業である中国中信集団(CITIC)を中心とするコンソーシアムが予定していたチャオピュー経済特区では、大型船が着岸し積荷の積み降ろしが可能な深海港のバースの数を10から2まで削減し、総工費を73億㌦から13億㌦まで交渉により縮小させている。

 実際、国内総生産(GDP)に占める対中債務の割合は、減少傾向を示している(2月7日付日本経済新聞)。また、中国とインドが新型コロナウイルス感染症のワクチン外交を展開する中、同政権はインドからも中国からも供給を受ける約束を取り付けており、ロヒンギャ問題で国際的に孤立する中でも極端な対中依存は避けていた。

 こうした中、習近平政権は、CMECを実現すべく、クーデターにより孤立したミャンマーをどうやって手繰り寄せようとするのであろうか。政権の先行きが不透明な中で、中国側から軍事政権に一方的に肩入れすることはないだろう。それでも、ミャンマーの国軍が何を望んでいるのかは慎重に検討していることであろう。懸念されるのは、連日のデモに対し国軍がさらなる強硬策に出てもデモが鎮まらない事態が起きたときのことである。国軍が中国側に、香港やウイグルの反政府デモの鎮圧方法、さらには監視カメラによる行動統制の導入を求めたとすれば、恐ろしい話となる。

クーデターでスー・チー氏が拘束されたことにより、中国ミャンマー関係は一層先行き不透明になった (POOL/REUTERS/AFLO)
 日本政府としては、欧米諸国と同様に国軍の姿勢を非難しつつも、NLDと国軍双方の対話の窓口を閉ざさないことが求められる。

 他方、ミャンマー向け援助については、現時点で新規援助は行わない方向性が示されている。しかし、状況の進展如何によって、援助のさらなる自粛措置が採られる可能性も否定できない。日本政府が官民で取り組んできたティラワ経済特区もさることながら、改修中のヤンゴン・マンダレー間鉄道が仮に停止となった場合、中国が高速鉄道建設を掲げて割り込んでくる可能性も否定できない。

Wedge4月号( http://wedge.ismedia.jp/ud/wedge/release/20210320 )では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。

■「一帯一路」大解剖 知れば知るほど日本はチャンス
PART 1 いずれ色褪せる一帯一路 中国共産党〝宣伝戦略〟の本質
PART 2 中国特有の「課題」を抱える 対外援助の実態
PART 3 不採算確実な中国ラオス鉄道 それでも敷設を進める事情
PART 4  「援〝習〟ルート」貫くも対中避けるミャンマーのしたたかさ
PART 5 経済か安全保障か 狭間で揺れるスリランカの活路
PART 6 「中欧班列」による繁栄の陰で中国進出への恐れが増すカザフ
COLUMN コロナ特需 とともに終わる? 中欧班列が夢から覚める日
PART 7 一帯一路の旗艦〝中パ経済回廊〟
PART 8 重み増すアフリカの対中債務
PART 9 変わるEUの中国観
PART10 中国への対抗心にとらわれず「日本型援助」の強みを見出せ 』

ウェッジ (出版社)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%B8_(%E5%87%BA%E7%89%88%E7%A4%BE)

『株式会社ウェッジ(英: Wedge Inc.)は、JR東海グループの出版社。
目次
1 出版物
1.1 雑誌
1.2 書籍
2 その他の事業
3 脚注
4 外部リンク

出版物
雑誌

Wedge - 1989年4月創刊
ひととき - 2001年8月創刊[2]

書籍

ウェッジ選書 - 1999年4月創刊
ウェッジ文庫 - 2007年10月創刊、2010年2月休刊。現在では忘れられた名エッセイ等を発掘・再刊した。』