「2つのインド」と日本 グローバルサウス両雄の打算

「2つのインド」と日本 グローバルサウス両雄の打算
風見鶏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM024RT0S3A600C2000000/

『先の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)はアジアの新興・途上国で「両雄」と目されるインドとインドネシアの首脳も参加した。中国という共通の脅威をにらんで協調する両国は同じ地域大国として緊張もはらむ。そこには日本の役割を見いだす余地がある。

5月下旬、インドがパキスタンと領有権を争うカシミール地方で開いた20カ国・地域(G20)観光作業部会は象徴的な会議だった。

G20メンバーでありながらサウジア…

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『G20メンバーでありながらサウジアラビアやトルコは政府代表を派遣しなかった。理由は「同じイスラム教国のパキスタンに配慮したから」だとされる。

世界最大のムスリム人口を誇るインドネシアが代表を派遣したのはなぜか。「インドには恩がある」。インドネシアの外交当局者は理由をこう説明する。

インドネシアが議長を務めた22年のG20サミットはウクライナ侵攻を巡る対立で合意形成が困難を極めた。閣僚級の会議でまとめられなかった共同文書を首脳間で採択できたのはインドの協力のおかげだった。

シンガポールのシンクタンク、ISEASユソフ・イシャク研究所が2月に発表した東南アジア諸国連合(ASEAN)各国への世論調査はインドとインドネシアの接近を裏付けた。

「米中対立下で第三のパートナーに選ぶべき国・地域はどこか」との問いにインドネシアは9.9%がインドと答えた。6つの選択肢のなかで22年の最下位から3位へ順位を上げた。

両国の交流は古い。インドネシアは「インドの島々」を意味する。有史以来、インド由来のヒンズー教の王国が興亡を繰り返した。ともに植民地支配を経て、独立後は米ソ冷戦下で「非同盟運動」を主導した。

21世紀の国際政治にインドとインドネシアが与える影響はより大きい。アジアの民主主義国で人口は1、2位につけ、米金融大手ゴールドマン・サックスは国内総生産(GDP)でも50年に中国、米国に次ぎ3位、4位になると予測する。

両国が近づく背景には中国をにらんだ打算がある。ともに中国が最大の輸入相手国でありながら、国境紛争や海洋資源を巡る対立も抱える。中国との経済関係を考慮すると米国へ傾斜するのは得策ではない。同じような立場からお互いをパートナーとみなす。

この関係は将来も続くのか。アジアの国際政治に詳しい大庭三枝神奈川大教授は「似た志向を持つ地域大国は競合関係を内包している」と指摘する。両国は南半球を中心とする新興・途上国の総称「グローバルサウス」の代表格だ。ともにリーダーを狙えば、両雄並び立たずの状態に陥る。

橋渡し役に浮上するのは日本だ。経済協力開発機構(OECD)によると直近の両国への政府開発援助(ODA)拠出額は2位のドイツを抑えてトップ。外務省の世論調査で両国とも9割以上が「日本は信頼できる」と答えており、米欧より近い関係にある。

日本が中国抑止を念頭に提唱した「自由で開かれたインド太平洋」の概念を両国とも受け入れている。インドとは米国、オーストラリアとともに「クアッド」の枠組みでも協力する。

自衛隊と海上保安庁は東シナ海で衝突を避けながら中国と対峙してきた経験がある。大庭氏は「対中国の海洋安全保障で両国が協力を強めるときに日本が果たせる役割がある」とみる。

「2つのインド」の緊密さは日本が双方と関与を深めるうえでも好機だ。旧宗主国への複雑な感情が交じるアジアは米欧が入り込みにくい。そこで新たな3カ国の枠組みを主導して地域の安定に貢献するのは日本の責務であり、日本にしかできないことでもある。(ジャカルタ=地曳航也)』

入管法案、参院法務委員会で可決 9日にも成立、立民など抵抗

入管法案、参院法務委員会で可決 9日にも成立、立民など抵抗
https://nordot.app/1039356598855827580?c=302675738515047521

『外国人の収容・送還のルールを見直す入管難民法改正案が8日、参院法務委員会で、与党などの賛成多数で可決された。与党は9日の参院本会議で改正案を成立させたい考え。

難民の保護を目的とした対案を提出している立憲民主党や共産党は、審議が不十分だなどとして採決に反対したが、杉久武委員長(公明党)が職権で8日の採決を決めた。

 改正案は、不法滞在などで強制退去を命じられても送還を拒む外国人の退去を進め、入管施設への長期収容を解消するのが狙い。

入管当局は、送還を逃れる意図で難民申請を繰り返すケースが多いとみており、3回目の申請以降は「難民認定すべき相当の理由」を示さなければ送還するとした。本国で迫害を受ける恐れがある人を帰してしまうとの懸念が根強い。

 このほか、認定基準に満たなくても、紛争地域の住民らを難民に準じる「補完的保護対象者」として在留を許可。収容長期化を防ぐため「監理措置」を新設し、支援者ら監理人の下で社会での生活を認める。収容中も3カ月ごとに必要性を見直す。

© 一般社団法人共同通信社』

日本の研究者、中国で基礎科学 大学でポスト・資金充実

日本の研究者、中国で基礎科学 大学でポスト・資金充実
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC29BB70Z20C23A5000000/

『中国の大学や研究機関でポストを得る日本人研究者が増えている。これまで中国は日本企業の技術者を招請していたが、天文学など基礎科学の研究者も迎え入れ始めた。大学の予算減で研究者の就職が厳しい日本とは対照に、この20年で予算を大幅に増やし、論文の量や質で米国と競うほど研究レベルが上がっている。

「研究者として早く独立したかった」。東北大学の助教だった亀岡啓さんは2022年9月、上海市にある中国科学院分…

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『東北大学の助教だった亀岡啓さんは2022年9月、上海市にある中国科学院分子植物科学卓越創新センターのグループリーダーになった。植物研究で世界的に著名な英ジョンイネスセンターと中国科学院が共同運営する組織の中で、自身の研究グループを立ち上げた。

亀岡さんは東京大学大学院修了後、大阪府立大学(現・大阪公立大学)などを経て、20年に東北大で任期付きの助教になったばかりだった。だが早く独立して研究室を主宰したかった。研究者にとって「PI(主任研究者)」と呼ばれる研究室の主宰者になることは大きな目標だ。

研究費9千万円
海外のポストに応募するための書類を作る機会だと考えて応募し「1発目で運良く通った」。オンラインと英国での対面の計2回の面接を突破し、採用が決まった。

亀岡さんの研究テーマは土の中にすんでいる菌と植物の共生関係だ。「アーバスキュラー菌根菌(AM菌)」というカビの仲間は土の中のリンや窒素を集めて植物に与え、成長を助ける。環境負荷の小さい「微生物肥料」として農業に役立つ可能性がある。

亀岡さんはAM菌だけを培養して増やすことに世界で初めて成功した。中国では学生や研究員と従来の研究テーマを深掘りしながら、新しいテーマにも挑戦する考えだ。

研究所には腰を据えて研究に取り組める環境がある。「中国の中でも恵まれているほうだ」。研究室を立ち上げる初期費用と5年間の研究費として計約9000万円が用意された。質量分析計や共焦点顕微鏡などの高額な実験機器を共同利用できる施設が充実し、機器メンテナンスなどを担う技術スタッフもいる。

50〜60人規模の植物研究者が集まる研究所は世界的にも珍しいという。仲間意識も強く、実験機器をシェアするなど「すごくいい雰囲気だ」。亀岡さんの任期は5年で、審査に通ればさらに5年延長される。「5年より長く腰を据えたい」と意欲を燃やす。

中国に渡る日本人研究者の全体像を示すデータはあまりないが、現地の日本人研究者らは増えてきていると口をそろえる。背景の一つに中国の研究レベル上昇で好条件のポストが増え、研究環境の魅力が向上していることがある。

上海にある復旦大学の服部素之教授は中国に渡ろうと考える日本人研究者からの相談をよく受ける。服部教授は「レベルの高さとポストの行きやすさは別の話だ」と強調する。レベルが高くても大量採用していれば行きやすい。「中国には圧倒的にポストがあり、日本は圧倒的に少ない」

特に中国に渡る研究者が多いといわれる分野がバイオ・生命科学系と天文学や基礎物理学だ。基礎科学の代表格である天文学は世界的に研究者のポストが不足している。一方で中国は近年、応用科学だけでなく基礎科学の強化も打ち出し、学科や研究所の新設が活発だ。

上海交通大学の李政道研究所は天文物理学分野で世界トップレベルを目指す研究機関だ。ノーベル物理学賞を受賞した中国系米国人の李政道氏が提唱し、16年に設立された。天文学と量子力学、素粒子物理学を柱としている。

スパコンすぐ利用
ブラックホールの天文学を研究する水野陽介さんは20年から同研究所の准教授を務める。ブラックホールの撮影に成功した国際プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」の参加メンバーの1人でもある。

京都大学大学院を修了後、米国で米航空宇宙局(NASA)や大学の研究員のポストを得た。その後、台湾の大学やドイツ・フランクフルトのゲーテ大学に勤めた。EHTに参加しながら日本を含めポスト探しも続けた。子供の教育も考えて日本人学校がある地域を探し、採用されたのが上海の研究所だった。

水野さんは数値シミュレーションの研究が専門だ。スーパーコンピューターによる計算結果やEHTの観測画像を組み合わせ、ブラックホールに物体が落ちる仕組みなど理論の検証に取り組んでいる。

上海交通大学の李政道研究所は天文物理学分野で世界トップレベルを目指す(同所の計算機センター)
日本や米国では研究プロジェクトが採用されればスパコンを無料で利用できるが、中国はお金さえ払えばスパコンを使える独特な運用だ。研究所では初期資金として約1500万円が提供され、研究をすぐに始めることができた。

中国の大学では天文学科の設立が相次ぎ、天文学者の研究ポストも増えている。欧米の研究者にとっては中国との生活文化の違いが大きく、中国に渡るのはハードルが高い。水野さんは「日本人にはチャンスがある」とみる。

日本人研究者が中国に渡る背景には研究力が低迷する日本の環境が厳しく、若手研究者が独立できる機会が少ないことも大きい。日中の研究格差が一段と広がる可能性がある。

研究者数、中国が世界一
中国が日本人研究者を引き寄せる原動力は、世界一の研究者数と、年々伸び続けて米国に迫る世界2位の研究開発費だ。豊富な資金が設備やポストの充実、研究室の開設などに向けた手厚い支援体制を生み、研究に打ち込みやすい環境ができている。

「中国の研究レベルがここまで高くなるとは予想しなかった」。こう振り返るのは山東大学威海校の研究員、野和田基晴さんだ。

野和田さんは2023年3月、3年ぶりに中国に戻った。新型コロナウイルスの流行で大学から帰国を勧められ、20年2月から日本からオンラインで研究を続けてきた。専門はオーロラなどの宇宙プラズマ物理学だ。太陽から太陽風として飛んでくるプラズマ粒子が地球の大気とぶつかるとオーロラができる。

中国の研究者はフランクな関係だという(山東大学・野和田研究員のグループの議論)
オーロラのでき方は地球の磁気圏と太陽風の相互作用に影響される。強いエネルギーの太陽風によって磁気圏がかき乱されると、地球を周回する人工衛星の故障などにつながる。太陽風や磁気圏の予測は「宇宙天気」と呼ばれる。野和田さんはオーロラの形に注目して分析に取り組む。

東海大学の大学院修了後、台湾の大学などを経て10年に北京大学の研究員になった。きっかけは北京大教授の論文だ。次のポストが見つからずに苦労していたところ、面白い論文だと目に留まった。「一緒に研究したい」と直談判のメールを送り、少ない給料だったが採用してもらえた。

5年の任期が終わって帰国してからの就活も難航した。日本や欧米の大学からは不採用の連続だったが、中国での人脈が今につながった。北京大の教授に相談のメールを送ると、教え子が山東大で研究者を探しているという。北京大研究員のときに面識があった関係で採用が決まった。

野和田さんは中国の研究の雰囲気やスタイルが「自分に合っている」と話す。実力主義が強く、30〜40代の教授も多い。研究者や学生が自由に意見や助言を出し合う風通しのいい環境だという。

米中の対立、研究に影
メールより「微信(ウィーチャット)」などの対話アプリのやりとりが一般的だ。自由闊達な環境が研究者を育て、中国の研究力を高めていると野和田さんは考える。

中国は00年代に入り、研究開発の国際舞台で急速に存在感を高めてきた。文部科学省の科学技術・学術政策研究所によると、研究論文で分野ごとの引用数が上位10%に入る「注目論文」の数で、中国は00年(99〜01年の3カ年平均)に初めて世界10位に入った後、08年からは米国に次ぐ2番目が定位置となった。18年には世界一になった。

基礎科学で世界トップレベルの研究水準を目指す中国だが、足元で課題もみえる。米中対立の深刻化で米国との共同研究は難しくなった。軍事技術に直結しない基礎科学の研究でも国際情勢が影を落とし始めているという。

日本は論文ランク低下
台頭する中国に対し、00年代から低迷の道をたどっているのが日本だ。注目論文の数で06年に中国に抜かれて5位に転落し、その後は低落の一途をたどる。今や韓国やインドに抜かれ、12位に落ちた。

「中国の躍進からは、日本が学ぶ教訓もある」と話すのは、岡山大学の河野洋治教授だ。奈良先端科学技術大学院大学から15年に中国へ渡り、中国科学院で19年まで勤務した。中国の特徴に、若手の自由な発想に基づく研究活動の広がりや基礎研究を含む広範な分野への予算配分を挙げる。「『選択と集中』では、日本の研究力を取り戻すことはできない」と強調する。

日本は04年に国立大学が法人化され、国からの運営費交付金が年々削減されるようになった。人件費や管理費の削減で教員ポストは減り、増え続ける業務に忙殺されながら十分なサポートも受けられず、「研究時間が減って研究力は低下し、さらに交付金が削減される負の悪循環に陥っている」と河野氏は指摘する。

巻き返しに向け、日本政府は10兆円の「大学ファンド」を創設した。年3000億円と見込む運用益を使い、選抜した数校を「国際卓越研究大学」と認定し支援する。支援対象の公募には東京大、京都大などが応募した。だが、大学ファンドは新たな「選択と集中」になりかねないリスクもはらむ。

河野教授は中国では「若い世代の教授が爆発的に増え、競争も激しい。今後20年ほどで優れた成果が出るのではないか」とみる。日本が20年後を見据えて再び研究分野で国際的な地位を取り戻す策を打つために、残された時間は長くない。

(越川智瑛、松添亮甫)

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小玉祥司
日本経済新聞社 編集委員
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別の視点 研究者がよりよい研究環境を求めるのは当然で、特に資金やポストに恵まれない日本の若手研究者が中国だけでなく海外に研究場所を求めるのは当然でしょう。若手だけでなく日本の大学や研究機関で定年を迎えた高名な研究者も、定年後は日本ではよい研究環境を得られないため中国などに拠点を移す例をよく耳にします。若手のチャンスを広げるとともに、実績のある研究者が研究に専念できる体制作りも重要です。資金の充実はもちろんですが、人材活用のあり方も見直す必要があるのではないでしょうか。
2023年6月7日 11:47 』

「釣魚島が全てではない」 中国、搦め手の対日軍事外交

「釣魚島が全てではない」 中国、搦め手の対日軍事外交
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFE041E40U3A600C2000000/

『対外的な説明の少なさから強硬とみられがちな中国の「軍事外交」が、対日関係の文脈でにわかに注目されている。目をひくのは、沖縄県の尖閣諸島について、中国が自らの主張をする際の呼び名である釣魚島に関わる発言だ。

「釣魚島問題は、中国と日本の関係の全てではありません。双方が長期的、大局的な視点からこの問題をとらえるべきです」

中国の国務委員兼国防相の李尚福が、シンガポールで初めて対面で会談した防衛相の浜…

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『中国の国務委員兼国防相の李尚福が、シンガポールで初めて対面で会談した防衛相の浜田靖一に述べた冒頭の言葉である。長く日中両国のやりとりを観察していれば、違和感があるはずだ。何かが違うと。話し手は、硬直的な強硬さが目立っていた中国軍事外交の担い手。しかも、これは日本など多くの海外メディアも前にした公開発言だ。

確かにこの発言の前後には「台湾問題に手を出さないように」「日本側が中国に歩み寄り、摩擦や衝突を避けるよう希望する」という強い言葉がある。日本にクギを刺し、けん制しているのは変わらない。

中国外務省を飛び越えた伝達

ただし、尖閣問題が両国関係の全てではないのだと明言したうえで、双方が長期的な視点からこの問題をとらえるべきだと続けたのは、これまでより、相当程度、踏み込んでいる。見逃すべきではない。

もちろん、日本政府の立場は「日中間に領土問題は一切、存在しない」というものだ。この視点からみると、李尚福の言葉は、正面攻撃ではなく、裏の搦め手(からめて)から攻める奇手にもみえる。領土問題の存在と、尖閣の日本領海に中国公船が常時侵入している現状を暗に認めさせ、それを台湾問題にまで結びつける巧妙な手法だ。

本来、中国で対日外交を専管的に担うのは、中国外務省である。それにもかかわらず、軍事外交だけを担う閣僚が、その領域を飛び越えるかのように、あえてこういう発言をするのは異例だ。当然、それなりの意味と背景がある。

そもそも、中国側でかつて「尖閣問題は対日関係の全てではない」と強調していたのは、どういう勢力なのか。それを考えるには、11年前、在中国の日本企業も破壊対象になってしまった激しい反日デモ前後数年の日中関係の歴史を振り返る必要がある。

「日本を中国の一つの省(地方)として領土化せよ」という過激なスローガンまで掲げられた中国の反日デモ(2012年9月、北京で)

2012年9月、突然、反日デモが勃発する前のことだ。「中国の改革・開放政策を進めるためには、安定した国際環境の維持が必要条件で、これが中国外交に課された責務である」――。そう考える中国外交の主流派が、焦点になってきた尖閣問題について「これは対日関係の全てではない」と唱えていたのである。

鄧小平時代からの外交路線を重視する勢力は、中国外務省傘下のシンクタンクなどでも主流を占めていた。ただ、中国経済の驚くべき急成長に伴い自信がついたことで、「中国は『軟弱外交』を排して、対外交渉にもっと(軍事的な)力量を使うべきだ」という勢力も台頭してきていた。

軍絡む強硬派が尖閣を主テーマに

中国の軍、安全保障を担当する部門の対日強硬派が、東シナ海や尖閣諸島を巡る問題を対日関係のメインテーマであるかのように押し上げていく発端は、遡れば08年にある。

当時の中国国家主席、胡錦濤(フー・ジンタオ)と、首相だった福田康夫が主導した東シナ海の日中ガス田合意。尖閣と同じ東シナ海に関わる合意が、軍を含む対日強硬派の圧力を受けて潰れ、実行されなかったのである。

「もし、この合意が履行されていれば、中日関係はここまで悪化しなかっただろう」。これは、かつて中国側の内部事情を知る関係者が漏らした意味ある一言である。

そこから事態は悪化の一途をたどる。10年の尖閣での漁船衝突事件、12年の日本政府による「尖閣国有化」に端を発する大規模反日デモにつながっていく。これ以降、尖閣問題が日中間の外交・安全保障のメインテーマ、しかも、その全てであるかのように動いてきたのは、まさに中国側である。これが、日本側が抱く率直な感覚だ。

かつて、中国で外交的な穏健派が唱えていた「尖閣問題は対日関係の全てではない」という、まともにみえる主張を、今回、軍が公開の席でするに至ったのは、なぜなのか。

まず、制服軍人から抜てきされた李尚福が、中国軍の最高意思決定機関である中央軍事委員会の7人しかいないメンバーのひとりである点を考える必要がある。その中央軍事委のトップは、中国共産党総書記兼国家主席の習近平(シー・ジンピン)だ。

習近平が、中央軍事委主席に就いて以来、尖閣での動きは加速する。中国公船を指揮する海上法執行機関、中国海警局は18年、中央軍事委の指揮下にある人民武装警察部隊(武警)に編入された。

21年には武器使用を認める海警法を施行。海警トップには、海軍出身者が就いている。そして、尖閣周辺の日本領海への中国公船の侵入は、既に常態化してしまった。その公船を操っているのは、まぎれもなく中央軍事委=軍なのである。

中国を巡る国際情勢の悪化と関係

つまり、新任の軍事外交の担い手、李尚福は、暗に中央軍事委から発言権を付与されているとみてよい。そうであれば、中国外務省が発している「対日強硬」ばかりにじむ画一的なメッセージより、軍当局からの直接の声の方が、実態をよく表しており、はるかに重要という理屈になる。習指導部は特に軍重視、国家安全重視を宣言しているのだから。

3日、シンガポールで会談前に中国の李尚福国務委員兼国防相(左)と握手する浜田防衛相=共同

一連の動きは、シンガポールで中国が味わっていた孤独感と関係する。盟友、ロシアの国防相はいない。李尚福は、米国防長官のオースティンと現場で握手だけはしたが、会談は敢然と拒否した。個人への米国の制裁が解除されないことが理由だ。中国が自任する大国としての体面を優先したのである。

とはいえ、李尚福は、日韓両国の防衛、国防担当閣僚とは会談した。中国は、一段のウクライナ支援に踏み出した日韓の動きに気をもんでいたのである。原因はもうひとつあった。悪化していた日韓関係が一気に雪解けに進んだのも大いに気になっていた。

中国が日韓との会談まで避ければ孤立感が一層強まる。それを巧みに回避したのである。中国は、日本との間で不測の事態を回避する「海空連絡メカニズム」が始動し、李尚福自身が浜田とホットラインで通話もしていた。ここは大きな変化である。

一方、李尚福は最後にウクライナ国防相のレズニコフと会談した。ただし、ウクライナ側は「まずはロシアが軍を撤退させなければならない」とクギを刺した。ロシアとの仲介に意欲を示す中国に、いますぐの交渉は必要ないとの意志を明確に伝えたのだ。

中国の対米強硬の裏側

シンガポールで目立った米中の対峙だが、そこには隠れた裏もある。米中国防相の直接会談はなかったが、その下のレベルでの意思疎通を含めて全くなかったわけではない。「(衝突回避に向けて)現地で一定の接触はあったと考えてよい」。これが米中関係筋の見方である。続いて5日には、北京でも米中高官の会談があった。

会談を避けた李尚福国務委員兼国防相(左)と、オースティン米国防長官=AP

台湾を巡って中国は決して譲歩はできない。だが、米日韓とこれ以上、摩擦が強まれば、中国が置かれている総合的な安全保障環境が悪化し、軍事外交の余地も狭まる。これは、最終的に中国の「安全」を左右する中国経済にまで響いてくる。

中国は今、軍事外交という手段も駆使しながら、安保環境のこれ以上の悪化を防ごうとしている。中国にとって最大の問題は、もちろん米国だが、その範囲のなかに日本も入っていることを忘れてはならない。

日本にとっても「防衛外交」は思った以上に重みがある。ただ、中国の「軍事外交」に微妙な変化があるからといって、尖閣周辺で、中央軍事委が究極的な指揮権を握る中国公船の挑戦的な行動が根本的に改まるはずもない。今後も中国の動きを注意深く観察していくしかない。(敬称略)

中沢克二(なかざわ・かつじ)
1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。

【関連記事】

・尖閣諸島周辺、101日連続で中国当局船
・中国、地図に「釣魚島」明示を義務化
・習近平氏、権力固めに尖閣諸島利用 現状変更重ねた10年 』

防衛装備の生産・輸出費助成、新法成立 企業の撤退防ぐ

防衛装備の生産・輸出費助成、新法成立 企業の撤退防ぐ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA06ABB0W3A600C2000000/

『防衛装備の生産や輸出を後押しするための法案が7日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。製造の効率化や供給網の拡充に必要な経費を補助し、輸出用に仕様を変える費用を助成する基金も設ける。利益率の改善を促して事業撤退を抑制し、防衛産業の維持・育成につなげる。

10月1日に施行する。施行後5年をめどに運用状況を点検し、法改正など必要な措置を検討する。

政府は自衛隊の任務に不可欠な装備をつくる企業のサイバー防御対策の拡充や事業承継の費用を支える。日本政策金融公庫は装備の生産や輸出の促進を目的とする資金の貸し付けに配慮すると法律に記した。

国が一連の支援策を講じても経営難からの脱却が難しい場合に限り、国が製造施設を保有し別の企業に運営を委託する。

経済安全保障の視点も反映した。防衛省は他国に意図せず機微な情報が流出するリスクなど供給網の安全性を調べる。企業は調査に回答する努力義務を負う。

情報管理も強める。自衛隊が使う装備に関する秘密を漏洩・盗用した場合、2年以下の拘禁や100万円以下の罰金といった刑事罰の対象となる可能性がある。いまは契約上の守秘義務にとどまり、違反しても受ける代償が比較的軽いとの指摘がある。

政治・外交 最新情報はこちら』

米国、ウクライナ向け155mm砲弾製造に必要な火薬を日本から調達か

米国、ウクライナ向け155mm砲弾製造に必要な火薬を日本から調達か
https://grandfleet.info/japan-related/u-s-procures-explosives-from-japan-to-manufacture-155mm-ammunition-for-ukraine/

『ロイターは2日「米国は155mm砲弾用のTNTを日本で調達しようとしている」と報じており、この件に詳しい関係者は「155mm砲弾を製造するサプライチェーンに日本企業を組み込みたいと米国は考えている」と述べている。

参考:US seeking explosives in Japan for Ukraine artillery shells

工作機械が直ぐに手に入らない米国、155mm砲弾に必要な火薬を日本から調達か

ウクライナとロシアの戦いは互いの防空システムが機能しているため「航空機の接近拒否」が成立、そのため戦場が要求する火力の大部分は砲兵戦力が提供しており、ウクライナのレズニコフ国防相は「戦闘任務を成功させるのに最低でも月36.6万発の砲弾を必要としている」と訴えてEUに月25万発の155mm砲弾を供給するよう要求、米国も備蓄分の取り崩しだけでは到底足りないため155mm砲弾の増産(2025年までに月9万発)に向けて準備を進めているものの、問題は増産に必要な工作機械の入手に時間が掛かる点だ。

出典:Сухопутні війська ЗС України

米陸軍で調達や兵站を担当するブッシュ次官補は3月「155mm砲弾の製造に必要な原材料は大量の備蓄があり、鋼材も十分過ぎるほどの供給量があるので原材料不足が今直ぐ問題になることはないが、工作機械だけは直ぐ手に入らないので砲弾増産は長い道のりになる」と述べており、どれだけ原材料があっても工作機械が手に入らない限り増産は出来ない。
月25万発の155mm砲弾を要求されているEUも直ぐに増産体制を整えるのが難しいため、砲弾製造に必要な部品(砲弾本体や炸薬など)の「域外調達」を承認したが、ロイターは複数の関係者からの話として「米国は155mm砲弾用のTNTを日本で調達しようとしている。日本側も工業用TNTの販売を許可すると米国に通知している」と報じており、この件に詳しい関係者は「155mm砲弾を製造するサプライチェーンに日本企業を組み込みたいと米国は考えている」と付け加えている。

出典:U.S. Army Photo by Dori Whipple, Joint Munitions Command

因みにロイターは「火薬を製造する日本企業の中で『工業用TNTを製造している』と回答したのは広島にある中国化薬だけだ」と報じており、遂に155mm砲弾問題の話題に日本の名前が登場した。

関連記事:砲弾の増産に必要な原材料は十分過ぎるほどある、問題は工作機械の入手性
関連記事:EUがウクライナ向け砲弾の共同購入で合意、払い戻し対象は欧州製砲弾のみ

※アイキャッチ画像の出典:U.S. Army photo by Sgt. Victor Everhart, Jr.
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投稿者: 航空万能論GF管理人 日本関連 コメント: 55 』

国連安保理、北朝鮮衛星めぐり緊急会合 結論出せず

国連安保理、北朝鮮衛星めぐり緊急会合 結論出せず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN02EDO0S3A600C2000000/

『【ニューヨーク=佐藤璃子】国連の安全保障理事会は2日、北朝鮮による「軍事偵察衛星」の発射を受けて緊急会合を開いた。各国から北朝鮮を非難する発言が相次いだが、今回も一致した対応を取れなかった。中国やロシアが依然として北朝鮮への非難に反対の立場を示している。

会合は日本や米国、英国など7カ国の要請で開催された。米国のロバート・ウッド代理大使は「北朝鮮の衛星打ち上げを、最も強い言葉で非難する。今後さらに違法な兵器や弾道ミサイルの開発計画が進む可能性があるため、安保理は打ち上げの失敗を無視することはできない」と指摘した。

マルタの代表は「大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射に対し、安保理が対応できていないことは遺憾だ。北朝鮮による違法行為が当たり前になり、世界中の核拡散の危機に対し我々が無力であると受け入れていることを意味するだろう」と語った。

北朝鮮はすでに「速やかに2回目の発射を断行する」と主張している。国連のディカルロ事務次長は、弾道ミサイル技術を使用した発射は安保理決議に違反しているとした。

一方、ロシアのエフスティグニエワ国連次席大使は「きょうの会合で米国や韓国、日本が軍事活動を強化し、地域で悪影響を及ぼしていることについて誰も語らなかった。偏った発言ばかりで、極めて非生産的だ」と強調した。』

米国、ウクライナ砲弾用に日本でTNTを求めている

米国、ウクライナ砲弾用に日本でTNTを求めている:報告書
https://www.aljazeera.com/news/2023/6/2/us-seeking-tnt-in-japan-for-ukraine-artillery-shells-report

 (※ 翻訳は、Google翻訳。)

『輸出規則では日本企業が海外に凶器を販売することを禁じているため、調達をめぐっては論争が起きる可能性がある。

ウクライナ軍の砲撃がバフムト近郊の前線に向けて発砲。 銃は迷彩の下に隠されています。 煙とオレンジ色の炎が出ています。
TNT は砲弾に使用される [ファイル: Kai Pfaffenbach/Reuters]
2023 年 6 月 2 日発行2023 年 6 月 2 日

米国政府がロシア軍に対する計画的な反撃のためにウクライナに武器と弾薬を急ぐ中、米国は日本での155mm砲弾用TNTの供給を確保しようとしている。

平和主義者の日本にとって、ウクライナが南東部を占領するロシア部隊に毎日発砲する榴弾砲のような致死性の物品を輸出規則で日本企業が海外に販売することは禁止されているため、いかなる調達も論争を引き起こす可能性がある。

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それにもかかわらず、同盟国は世界的な弾薬不足の中でTNT販売を可能にする回避策を見つけたようだと、この問題に詳しい関係者2人がロイター通信に語った。

この問題に関する日本での議論に詳しい関係者の1人は、この問題のデリケートさを理由に匿名を条件にロイターに対し、「米国が日本から爆発物を購入する方法がある」と語った。

商業的に販売される軍民両用製品または機器の輸出制限は、純粋に軍事目的の品目ほど厳しくありません。

ロイド・オースティン米国防長官を今週接待した東京は、爆発物は軍事用途のみの製品ではないため、工業用TNTの販売を許可すると米国政府に伝えたと、別の関係筋が伝えた。

米国は、155mm薬莢に爆発物を詰めて米軍所有の軍需工場に爆発物を納入するために、TNTのサプライチェーンに日本企業を加えたいと考えている、とその関係者は付け加えた。

日本の通産経済省は、日本企業がTNTの輸出について打診したかどうかについては明らかにしなかった。同省は電子メールで、軍事制限の対象外の品目は、その使用が国際安全保障を妨げるかどうかなど、買い手の意図を考慮した通常の輸出規則に基づいて評価されると付け加えた。

日本の防衛省防衛装備庁はコメントを控えた。

米国務省は、米国が日本でTNTを購入する計画があるかどうかに関するロイターの質問には直接答えなかったが、米国は同盟国やパートナーと協力してウクライナを守るために「必要な支援をウクライナに提供する」と述べた。
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さらに、日本は「ウクライナの防衛支援においてリーダーシップを発揮してきた」と付け加えた。

喜んでお手伝いします

日本はすでにロシアのウクライナへの本格的侵攻をめぐり制裁を発動しており、防弾チョッキや食糧など非致死的援助の形で支援を提供している。

先月広島で開催されたG7首脳会議中にウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領が日本を訪問したことを受け、日本の岸田文雄首相はジープとトラックの寄贈に同意した。

岸田氏がウクライナ支援を望んでいるのは、ロシアの勝利が中国の自治島台湾攻撃を勇気づけ、同国を地域戦争に巻き込むことを政権が懸念しているためだ。

昨年、彼はウクライナが「明日は東アジア」になると警告し、彼の政権は日本の第二次世界大戦以来最大の軍事増強を発表した。

笹川平和財団の渡辺恒夫上級研究員は、ウクライナへの軍事援助の提供については日本でも受け入れが広がっているようだが、致死性の程度については議論があると述べた。

「日本がウクライナにトラックを供与することを決定したという事実は、状況が変わりつつあることを示している。しかし、致死性の救援物資を送る問題に関しては、まだ政治的合意が得られていないようだ」と彼は述べた。

日本は、軍事サプライチェーンの逼迫に苦しむウクライナに対し、米国政府が武器供与への支援を求めている数十の同盟国の一つだ。

韓国も155mm砲弾を使用しており、米国が接近している国の一つだ。韓国国防当局者はロイターに対し、キエフへの致死的支援の提供に対する韓国の立場は変わっていないと語った。

オースティン氏は今週東京で、致死的支援に関する日本の政策変更の可能性について質問され、記者会見で、いかなる変更も日本の問題だが、ウクライナへの「いかなる支援」も「いつでも歓迎」だと述べた。

ロイターの取材に応じた関係者らは、米国政府に爆発物を供給する日本企業の特定を避け、ワシントン政府がTNTをどれだけ購入したいかについても言及しなかった。

ロイターは日本火薬類工業協会のウェブサイトに掲載されている火薬メーカー22社に問い合わせた。工業用TNTを製造していると述べたのは、広島に本拠を置き、日本の軍需品を供給している中国化薬社だけである。

同社は電子メールで「米国政府や米軍から直接の問い合わせは受けていない」と述べた。

産業用TNT製品をウェブサイトに掲載している同社は、仲介業者を通じたTNT販売について協議しているのかとの質問に対し、顧客や潜在的な買い手の身元は明らかにしていないと答えた。
出典:アルジャジーラ、ロイター

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国際海事機関が北朝鮮非難 「航行の安全に脅威」

国際海事機関が北朝鮮非難 「航行の安全に脅威」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR020J20S3A600C2000000/

『【ロンドン=共同】北朝鮮が5月31日に行い失敗した「軍事偵察衛星」の打ち上げについて、国際海事機関(IMO)は同日、本部があるロンドンで安全保障委員会を開き、国際的な航行や船員の安全に深刻な脅威を与えているとして非難決議を採択した。ロイター通信が報じた。

決議案は米国や日本、韓国、ウクライナなど13カ国が共同で提出した。北朝鮮はこれを拒否し「国家の安全を守るための自衛措置だ」と反発。「正確な科学的計算と、落下点や船舶のルートを考慮した」と主張した。

IMOは船舶の安全確保や海洋汚染防止を目的とした国連の専門機関で、北朝鮮を含む175カ国が加盟している。北朝鮮は5月30日、IMOに対し、衛星を発射すると通告していた。』

米インドネシア演習に陸自水陸機動団 離島防衛を前面に

米インドネシア演習に陸自水陸機動団 離島防衛を前面に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM295810Z20C23A5000000/

『【ジャカルタ=地曳航也】米国とインドネシアの両陸軍は毎年実施する合同演習「ガルーダ・シールド」の2023年の概要を固めた。欧州や東南アジアなど20カ国を招待し、日本の陸上自衛隊の水陸機動団も初めて参加する方針だ。水陸両用の作戦の訓練を強化し、南シナ海の離島防衛という想定を前面に打ち出す。

8月末から9月中旬にかけ、インドネシア東ジャワ州の海岸にある同国海兵隊の訓練場など3カ所で実施する。イギリス…

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『イギリスやフランス、ドイツ、インド、韓国などを招待した。インドネシア国軍によると、一部はオブザーバー参加の見通しで、日本とオーストラリア、シンガポールは部隊の派遣を決めた。

海からの上陸など水陸両用作戦のほか、空挺(くうてい)、実弾使用の訓練を予定する。インドネシアは南シナ海の自国領ナトゥナ諸島の周辺の排他的経済水域(EEZ)で中国と資源をめぐって対立する。演習への参加が見込まれるフィリピンやブルネイは中国と南シナ海の領有権を争っている。

07年に始まったガルーダ・シールドは、中国の海洋進出をにらみ、参加国数や訓練の内容を年々拡大させてきた。日本や豪州を含め過去最大規模の10カ国以上が加わった22年は「スーパー・ガルーダ・シールド」と称した。23年も名称を維持し、拡大版を定着させる。
目玉の一つは、離島防衛を専門とする日本の水陸機動団の参加だ。18年の創設以降、フィリピンなど外国での訓練実績を増やしてきた。22年のガルーダ・シールドでは、初参加となった陸自が第1空挺団を派遣した。米グアム島からインドネシアのスマトラ島まで輸送機で移動し、パラシュートで着陸する練度の高い訓練を実施した。

インドネシアはグローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)の一角で、日米欧にも中国・ロシアなど権威主義諸国にもつかない独自のバランス外交を展開する。西側諸国にとってグローバルサウスの国々をいかに自陣営に引きつけるかは外交・安全保障の課題になっている。

インドネシアにとって、南シナ海での中国への対処は安保上の最大の懸案といえる。23年のガルーダ・シールドの招待国には日本や欧州など米国の同盟国が多く含まれ、西側諸国としてインドネシアを引きつけたい思惑も透ける。』

日米フィリピン、初の合同演習 海洋警備の結束強調

日米フィリピン、初の合同演習 海洋警備の結束強調
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM314JD0R30C23A5000000/

『【マニラ=志賀優一】フィリピン沿岸警備隊(PCG)は1日、海上保安庁と米沿岸警備隊との合同海洋演習を始めた。3カ国による海洋演習は今回が初めて。領有権を巡って対立する中国が南シナ海で海洋進出を続けており、海洋警備での結束を強調して連携を深めている。

マニラ湾には同日、海保の巡視船「あきつしま」と米沿岸警備隊の「USCGCストラットン」が到着した。PCGのロランド・リゾー・プンザラン中将は到着式典…

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『PCGのロランド・リゾー・プンザラン中将は到着式典で「3カ国の沿岸警備隊で海洋協力を向上させ理解を深めることが今回の目的だ」と語った。

海洋演習は同日から7日まで、南シナ海を臨むフィリピン北部ルソン島のバターン州で実施する。日米の船のほかPCGの巡視船「メルチョラ・アキノ」も活用する。演習では操縦や海上での法執行、捜索・救難などの訓練を通じて相互運用性を強化する。

1日、マニラ湾に到着した海上保安庁の巡視船「あきつしま」

在フィリピン日本大使館の松田賢一臨時代理大使は「日本の海洋安全を守る活動はフィリピン・米国と歩調を合わせる」と語った。PCGは「3カ国による演習は連携と相互運用性を高めることを目指したマルコス大統領のビジョンだ」と説明した。南シナ海で海洋進出を続ける中国を念頭に、3カ国の結束の強さを強調した。

南シナ海では、フィリピン船が再三にわたり中国船から妨害を受けている。2月にはPCGの巡視船が中国海警局の艦船からレーザー照射を受け、乗組員が一時視力を失った。マルコス氏が駐比中国大使に直接抗議する異例の事態に至った。

これまでも海保や国際協力機構(JICA)、米沿岸警備隊はPCGの海洋警備能力を向上させるため、巡視船の整備能力を高める訓練や船をけん引するえい航訓練を支援してきた。PCGは「米国とフィリピン、他の国の沿岸警備隊の間で定例の演習が実施できることを望む」とし、海洋演習の継続に期待を込めた。』

インド「グローバル・サウス」戦略と日本の対応

インド「グローバル・サウス」戦略と日本の対応:急ごしらえの政策にG7議長国として寄り添う
https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00911/

『政治・外交 2023.05.31

溜 和敏 【Profile】
インドが提唱し、広島での先進7カ国(G7)サミットを通じ急速に認知された「グローバル・サウス」という概念。その背景と現実、日本外交の対応ぶりについて専門家が解説する。

2023年5月19日から21日まで広島で開催されたG7サミットにおいて、インドは招待国ながらも存在感を示した 。20カ国・地域(G20)議長国としてインドが主張してきたグローバル・サウスの観点は、G7議長国・日本の支持を受けてG7会合に取り入れられた。またインドのナレーンドラ・モーディー首相がウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と初めて対面で行った会談も関心を集めた(ただし本稿では扱わない)。

本稿ではインドがグローバル・サウスを掲げた背景(※1)と、日本政府が行った対応について要点を示す。

グローバル・サウス関連年表

2022年12月 インド、G20議長国に就任してグローバル・サウスを掲げる
2023年1月 日本、G7議長国に就任
同 インドによる「グローバル・サウスの声サミット2023」開催
3月 デリーでG20外相会合
同 岸田首相インド訪問、ポーランド経由でウクライナ訪問
4月 軽井沢でG7外相会合
5月 広島でG7サミット開催
9月 デリーでG20サミット開催(予定)

(筆者作成)

インドのグローバル・サウス戦略

2022年12月、G20議長国への就任に際して、その方針をモーディー首相が声明として発表した中で、G20諸国だけでなく広くグローバル・サウスの国々との協議を通じて問題に取り組むことを表明した(※2)。近年急速に外交分野で人口に膾炙したグローバル・サウスであるが、インド政府がグローバル・サウスという用語を本格的に用いたのはこのときが初めてであった。翌月には「グローバル・サウスの声サミット2023」と称するオンライン国際会議を開催し、G20に含まれない124カ国(インドを除く)を集め、G20に向けた意見交換を行った。その冒頭、モーディー首相はこのように述べた(※3)。

われわれは、戦争・紛争・テロリズム・地政学的緊張、食料・肥料・燃料価格の高騰、気候変動がもたらす自然災害、そしてCOVIDのパンデミックによる長引く経済的影響という困難な1年間を経験してきた。世界が危機的状況にあることは明白である。この不安定な状態がどれだけ続くのかは予測困難である。

われわれ、グローバル・サウスは、将来に対して最大の利害を有している。世界人口の4分の3がグローバル・サウス諸国に暮らしている。われわれはしかるべき発言力も有するべきだ。したがって、80年間に及ぶグローバル・ガバナンスの古いモデルが緩やかに変化する今、われわれは新たな秩序を作り出す努力をしなければならない。

このようにインド政府は、戦争や資源価格の高騰、自然災害、新型コロナウイルスなどによる危機の時代にあって、その影響をより強く受けているのが世界人口の多くを占めるグローバル・サウスであり、その発言力を高めるために既存の世界秩序を改める必要があると訴えた。このような主張は新しいものではなく、途上国側の立場を主張する既存のスタンスにグローバル・サウスという新たな看板をかけかえたものとみることができよう。ただし「声」サミットでは参加国の意見交換だけでなく、科学技術、災害対応、教育などの分野での協力についても話し合われていた。

グローバル・サウスは出てきたばかりの言説であり、あたかもひとまとまりのグループとして捉えるのは適切でない。ましてやインドがグローバル・サウスなる集団の指導的立場にあるなどと考えることには無理がある。

インドがG20議長への就任というタイミングでグローバル・サウスを採用した狙いは、下記の3点に整理できよう。

第1に、ロシア・ウクライナ戦争が始まってから苦しい弁明を強いられていた自国の外交言説の立て直しである。G7などの西側諸国との関係を深め、とくに米国や日本とは安全保障分野でも緊密な関係を構築しつつあるインドであるが、長年の信頼と協力関係を有するロシアへの制裁には加わっていない。インドの国際・国内情勢を踏まえれば対ロ関係の維持は必然の選択ではあるが、同調を求める西側からの圧力にさらされていた。あけすけに国益の観点から自国の対応を正当化するインド外交の言説は、エゴが過ぎるとの批判も招いていた。しかし大国間対立の犠牲になっているグローバル・サウスの側に自国を位置付けることにより、インドは対ロ関係の維持という方針を正当化するための建前を手にできるのである。

第2に、グローバル外交の立て直しとしての側面がある。国連などを舞台とした世界規模の外交舞台において、かつてのインドは非同盟を掲げ、中国とともに第三世界の連帯を主導した。冷戦が終結して第三世界が意味を失い、21世紀に入るとインドは途上国ではなくBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)やIBSA(インド、ブラジル、南アフリカ)などの新興国の枠組みに立脚して、欧米先進国が主導する既存の国際秩序を改めるべきという主張を展開した。

しかし、次第に国境問題(特に2020年の国境での衝突)などをめぐって中国との関係が悪化し、利害の一致するイシューでの限定的な共闘すらも印中間では難しくなった。さらに決定打となったのはロシアによるウクライナへの侵略である。ロシアとの二国間での協力こそ維持するとは言え、すっかり世界の嫌われ者となったロシアにグローバル外交のパートナーとしての役割を期待できなくなった。つまりインドは、BRICSなどの新興国連携によるグローバル外交を立て直す必要性に直面していた。そこで、グローバル・サウスという新たな名前を冠したかつての途上国連帯へと回帰したのである。

第3に、国内向けのアピールという側面がある。G20の議長国は輪番制であるが、モーディー政権は議長への就任を大々的に国内世論にアピールしている。24年の総選挙に向けて、モーディー首相がグローバル・サウスの代表として外交の舞台で指導力を発揮したと印象付けることを目指しているのである。

日本政府の対応と今後の課題

インドのグローバル・サウス戦略に対して、日本政府はどのような対応を行ったのか。

G7広島サミットでは、「パートナーとの関与の強化(グローバル・サウス、G20)」というセッションが行われ、G20サミットに向けてインドを支援することなどで合意した(※4)。ただしG7首脳コミュニケならびに首脳声明にグローバル・サウスの文言は盛り込まれなかった(※5)。つまり、G7サミットはグローバル・サウスを取り上げるに至ったものの、G20に向けて支援することを合意したのみで、G7としてグローバル・サウスに関する何らかの合意を行ったものではない。

日印政府間では、2023年3月にインドを訪れた岸田首相が(※6)、G7サミットへの招待を伝え、G7においてもグローバル・サウスの観点に取り組むことで合意していた(※7)。

22年9月の第2回日印外務・防衛閣僚会合(いわゆる「2+2」)ではG7議長とG20議長の協力について協議していたものの、グローバル・サウスの文言は見られず、その時点では議論されていなかったと考えられる。

つまりインドによる急造の政策に日本も付き合ったというのが、グローバル・サウスをめぐる日本の対応であろう。G7議長国の日本にとって、グローバル・サウスという観点を用いることによって失うものはないが、採用することによってインドとの協力を強化できる。

前述のように2010年代中頃までのインドは新興国連携をグローバル外交の基軸としており、日印ではインド太平洋地域や二国間での協力はあれどもグローバルのレベルでは国連安保理改革のG4(日本、インド、ドイツ、ブラジル)などでの協力に限られていた。G7議長とG20議長としての協力を通じて、日印関係はグローバル外交分野での協力を一歩拡大させたのである。

しかし世界秩序の変革を訴えるインドのグローバル外交と、日本の立場には根本的な相違点も多い。

たしかにインドが重視している国連改革では、安保理の常任理事国入りという目標を共有して協力している。だがインドが目指す経済分野の国際機関の変革に、日本は同調しないだろう。

また、グローバル・サウス側では欧米先進国の価値観を押しつけられることへの抵抗が根強い。世界最古かつ最大の民主主義国を自称するインドではあるが、他国の国内問題への介入には慎重であり、自国の問題に意見されることにも強烈な反発を示す。

内政不干渉に固執する点においてインドをはじめとするグローバル・サウスとされる国々の立場は、欧米先進国との間に隔たりがあり、むしろロシアや中国に近い。現状の日印関係では、利害の一致するイシューで協力を行い、相違点には目をつむる傾向がある。今後の日本とインドが真の信頼関係を構築するには、人権や国家主権といった立場の違う問題でも話し合えるようになることが必要なのかもしれない。

バナー写真:インドのモディ首相(左)と会談に臨む岸田首相=2023年5月20日、広島市、代表撮影(共同)

(※1) ^ インドはG20の議長国として招待された形となっているが、2019年以来5年連続で招待されており、招待国の常連となっている。ただし2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により中止され、2021年はオンラインでの参加であった。

(※2) ^ Website of Narendra Modi (December 1, 2022).

(※3) ^ Website of Prime Minister of India (January 12, 2023).

(※4) ^ 外務省「G7広島サミット(セッション4「パートナーとの関与の強化(グローバル・サウス、G20)」概要)(2023年5月20日)なお、外務省ウェブサイトの英語版ではこの第4セッションのタイトルは付けられておらず、首相官邸ウェブサイトでは「パートナーとの関与の強化(Strengthening Engagement with Partners)」となっている。

(※5) ^ 外務省「G7広島サミット(令和5年5月19日~21日)」(2023年5月22日)

(※6) ^ なお岸田首相はこのインド訪問からポーランド経由でウクライナを訪問し、ゼレンスキー大統領のG7へのオンライン参加を要請していた。秘密裏でのウクライナ訪問はインド政府側の理解なくしては実現不可能であり、ロシアとウクライナの関係をめぐりインドがロシア寄り一辺倒ではないことがこのことからも伺える。

(※7) ^ 外務省「岸田総理大臣のインド訪問(令和5年3月19日~21日)」(2023年3月20日)また、直前の林外相の訪印時にもグローバル・サウスとG7の連携について議論している。外務省「林外務大臣臨時会見記録(令和5年3月3日(金曜日)14時17分 於:ニューデリー)」(2023年3月3日)

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インド G20 G7

溜 和敏 TAMARI Kazutoshi経歴・執筆一覧を見る

中京大学総合政策学部准教授。専門は国際関係論、南アジア国際政治。中央大学大学院法学研究科博士後期課程修了。ジャワーハルラール・ネルー大学(インド)大学院M.Phil.課程修了。 博士(政治学)。高知県立大学文化学部講師、准教授を経て2020年4月から現職。』

北朝鮮 “軍事偵察衛星 打ち上げ失敗 速やかに2回目打ち上げ”

北朝鮮 “軍事偵察衛星 打ち上げ失敗 速やかに2回目打ち上げ”
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230531/k10014083931000.html

『2023年5月31日 13時37分

北朝鮮は、国営の朝鮮中央通信を通じて軍事偵察衛星の打ち上げに失敗したと明らかにしました。
原因を調査したうえで、速やかに2回目の打ち上げを行うとしています。
発表された内容は次の通りです。

(以下全文)
朝鮮民主主義人民共和国国家宇宙開発局は2023年5月31日6時27分、ピョンアン(平安)北道チョルサン(鉄山)郡ソヘ(西海)衛星発射場で予定されていた軍事偵察衛星「マルリギョン(万里鏡)1号」を新型衛星運搬ロケット「チョルリマ(千里馬)1型」に搭載して打ち上げた。

打ち上げられた新型衛星運搬ロケット「チョルリマ1型」は正常飛行中、1段目の分離後、2段目エンジンの始動不正常によって推力を失い、朝鮮西海(黄海)に墜落した。

国家宇宙開発局の報道官は、衛星運搬ロケット「チョルリマ1型」に導入された新型エンジンシステムの信頼性と安定性が落ち、使われた燃料の特性が不安定であることに事故の原因があると見て、当該の科学者、技術者、専門家が具体的な原因の解明に着手すると明らかにした。

国家宇宙開発局は、衛星の打ち上げにおいて現れた重大な欠陥を具体的に調査、解明し、それを克服するための科学技術上の対策を早急に立てるとともに、さまざまな部分試験を経て可及的速やかな期間内に2回目の打ち上げを断行すると明らかにした。』

危機の二十年

危機の二十年
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%B1%E6%A9%9F%E3%81%AE%E4%BA%8C%E5%8D%81%E5%B9%B4

 ※ 『なお訳書は、旧版訳書は、多数の誤訳や不適切な訳文が指摘され(山田侑平「岩波文庫あの名著は誤訳だらけ: 大学生必読『国際政治学の古典』は全く意味不明」。「文藝春秋」2002年4月号)、以後は「在庫なし」の状況となり、入手は困難だったが、2011年11月に新訳出版された。』…。

 ※ 「翻訳本」は、こういう問題もあるからな…。

 ※ 何事においても、「信者になるな!」「権威を疑え!」だ…。

 ※ 「自分の頭で、考えろ!」…。

 ※ まあ、そういうことができる「頭の持ち主」じゃないと、「話しにならない。」…。

 ※ 「信者に、なってる人」「権威に、盲従している人」のすぐ後ろには、AIが迫っている…。

 ※ 既に、「追い抜かれている人」も多いのか…。

 ※ 『この理想主義は、世界政府や自由民主主義などの政治理念を生み出すとともに、1919年のパリ講和会議の国際連盟設置などを契機に現実の政治に具体化されていった。』…。

 ※ おそらく、「日本国憲法」も、この延長線上にある…。

 ※ 『1939年の第二次世界大戦が発生した時には権力を排除した理想主義の政治理論は現実に適応できなくなっていた。』という「世界情勢」だったにも、拘わらずだ…。

 ※ 70年以上も経って、ウクライナ事態や、隣国の軍事力の増大により、「グルっと周って」、「我が身に火の粉が降りかかって来た」のは、皮肉な話しだ…。

『出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

『危機の二十年』(ききのにじゅうねん、英語:The Twenty Years’ Crisis 1919-1939)とは政治学者、歴史家であり外交官でもあったE・H・カーによる国際政治学の著作である。

この著作は、ヨーロッパで第二次大戦が勃発する直前の1930年代に執筆され、第1版が戦争勃発の直後である1939年9月に刊行され、1945年に第2版を刊行された(日本語訳は第2版から)。

なお第2版ではヒトラーに対する宥和政策に好意的な箇所が削除されている。

概要

国際政治学の歴史を概観すれば、そこには理想主義と現実主義の交代が認められる。

元来、伝統的な政治学はイデアや徳などの理想的な理念で政治秩序を論じていた。

近代において功利主義の道徳哲学や利益調和の政治経済学の思想的な展開に伴って、現実政治にも理想主義の政治学原理が適用されるようになった。

この理想主義は、世界政府や自由民主主義などの政治理念を生み出すとともに、1919年のパリ講和会議の国際連盟設置などを契機に現実の政治に具体化されていった。

しかし第一次大戦後の理想主義的な国際政治学は次第に衰退していくことになる。

理想主義者は国際政治から権力を除外すべきであると考えていたが、1939年の第二次世界大戦が発生した時には権力を排除した理想主義の政治理論は現実に適応できなくなっていた。

現実主義は理想主義に対する批判を強めるとともに、理想主義が掲げる政治秩序を現実政治の観点から解体した。

軍事力、経済力、また世論を支配する能力は、政治秩序の実際のあり方を左右することを論じた。

結果として理想主義は破綻を余儀なくされ、全体主義の台頭とともに、国際的な利益調和の喪失が生じた。

本書の問題意識は破綻した国際政治を再び秩序化するために、どのような基盤が求められるのかを考察することである。

カーは国際政治の新しい秩序を構想するために、権力と道義の二つの原理から考えを展開する。

権力がもたらす政治闘争の現実という課題と、道義がもたらす政治統合の理想という願望を考えれば、まずは世界経済再建が非常に有望な提案と考えられる。

なぜならば権力が国際政治を支配する限りでは危機が深刻化するものの、権力闘争が解決されれば道義の役割が回復されて秩序が安定するためである。

たしかに経済的な利益は道徳的な正義と等しくない。ただ経済的利益を独占しようとする傾向を諸国家から軽減すれば、各国の外交政策を協調へと方向付けることが可能となるのである。

カーへの応答

『危機の二十年』は、出版後、国際関係研究において不可欠の著作となった。

学部教育課程で依然として広く講読されており、伝統的現実主義の基本テキストの一つと考えられている[1]。

『危機の二十年』が数多くの研究に刺激を与えた。

国際関係論の学説の盛衰を概観した『危機の八十年』の序論で、編者の3人(マイケル・コックス、ティム・ダン、ケン・ブース)は、「カーの『危機の二十年』における議論とジレンマの多くが今日の国際関係の理論と実践に関連している」と指摘する[2]。

しかし、カーへの応答は決して肯定的なものばかりではない。

en:Caitlin Blaxtonは、『危機の二十年』におけるカーの道徳的立場を批判した[3]。

カーがいわゆる現実主義と理想主義の抗争を提示したことについて批判する研究者もいる。

ピーター・ウィルソンによれば、「カーのユートピア概念は科学的概念として十分に練られたものではなく、きわめて便利なレトリック上の仕掛けである」[4]。

『危機の二十年』のもつ複雑な性格について、近年、ジョナサン・ハスラム(訳書は下記)、マイケル・コックス[5]、チャールズ・ジョーンズ[6]らの研究を含んだカーに関する数多くの文献によって理解が深まっている[7]。

書誌情報

The twenty years' crisis, 1919-1939: an introduction to the study of international relations, London: Macmillan, 1939.
The twenty years' crisis, 1919-1939: an introduction to the study of international relations, 2nd ed., London: Macmillan, 1946.
The twenty years' crisis, 1919-1939: an introduction to the study of international relations, reissued with a new introduction and additional material by Michael Cox, Basingstoke: Palgrave, 2001.

日本語訳[8]

E.H.カー『危機の二十年 ― 國際關係研究序説』、井上茂譯(岩波書店「岩波現代叢書」、1952年、新版1992年ほか)
    E.H.カー『危機の二十年 ― 1919-1939』、井上茂訳(岩波文庫、1996年)
    E.H.カー『危機の二十年 ― 理想と現実』、原彬久訳(岩波文庫、2011年)

関連文献

ジョナサン・ハスラム『誠実という悪徳―E・H・カー 1892-1982』角田史幸、川口良、中島理暁訳(現代思潮新社、2007年)
デーヴィッド・ロング/ピーター・ウィルソン編著『危機の20年と思想家たち―戦間期理想主義の再評価』

    宮本盛太郎、関静雄監訳(ミネルヴァ書房「人文・社会科学叢書」、2002年)

出典

^ [1]
^ Tim Dunne, Michael Cox and Ken Booth. "Introduction the Eighty Years Crisis". The Eighty Years' Crisis. Cambridge: Cambridge University Press, 1998. p. xiii
^ Wilson, Peter. "The Myth of the 'First Great Debate'". The Eighty Years' Crisis. Cambridge: Cambridge University Press, 1998. p. 3
^ Ibid., p. 11
^ Michael Cox ed., E. H. Carr: A Critical Appraisal, (Palgrave, 2000).
^ Charles Jones, E. H. Carr and international relations: a duty to lie, Cambridge: Cambridge University Press, 1998.

^ 日本でもカーの再評価が進んでいる。2009年1月発行の『外交フォーラム22(2) 特集「 E・H・カー―現代への地平」』(第247号)の他に、遠藤誠治「『危機の20年』から国際秩序の再建へ―E.H.カーの国際政治理論の再検討」「思想」945、2003年、西村邦行「E・H・カーにおけるヨーロッパ的なものの擁護―理論、歴史、ロシア」「法学論叢」166(5)、2010年、西村邦行「知識人としてのE・H・カー─初期伝記群と『危機の二〇年』の連続性」「国際政治」160、2010年、山中仁美「国際政治をめぐる「理論」と「歴史」―E・H・カーを手がかりとして」「国際法外交雑誌」108(1)、2009年、山中仁美「新しいヨーロッパ」の歴史的地平―E・H・カーの戦後構想の再検討」「国際政治」148、2007年、山中仁美「「E.H.カー研究」の現今の状況をめぐって」「国際関係学研究」29、2003年、山中仁美「E.H.カーと第二次世界大戦―国際関係観の推移をめぐる一考察」「国際関係学研究」28、2001年、角田和広「戦間期におけるE・H・カーの国益認識―独伊政策を焦点として」「政治学研究論集」28、2008年、角田和広「E・H・カーの『国際秩序』構想―平和的変革構想とその失敗」戦略研究学会編『戦略研究』第7号、2009年、清水耕介「世界大戦とナショナリズム―E・H・カーとアレントの見た一九世紀欧州」「アソシエ」16、2005年、細谷雄一「大英帝国の外交官たち(4)「新しい社会」という誘惑―E.H.カー」「外交フォーラム」16(5)、2003年。

^ なお訳書は、旧版訳書は、多数の誤訳や不適切な訳文が指摘され(山田侑平「岩波文庫あの名著は誤訳だらけ: 大学生必読『国際政治学の古典』は全く意味不明」。「文藝春秋」2002年4月号)、以後は「在庫なし」の状況となり、入手は困難だったが、2011年11月に新訳出版された。

北朝鮮「衛星発射で事故発生」 失敗認める

北朝鮮「衛星発射で事故発生」 失敗認める
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM310YB0R30C23A5000000/

『【ソウル=甲原潤之介】北朝鮮の朝鮮中央通信は31日、国家宇宙開発局が午前6時27分ごろに軍事偵察衛星を打ち上げたが、「事故が発生し黄海上に墜落した」と報じた。同局は対策を早急に講じ「できるだけ早い期間内に2次打ち上げに踏み切る」と発表したという。ロケットの1段目を分離した後、2段目の異常により推進力を失ったと説明した。

【関連記事】

・北朝鮮ミサイル発射か、日本へ飛来せず 避難を解除
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・北朝鮮、通告の「偵察衛星」発射か 自衛隊の態勢は 』

北朝鮮ミサイル発射か、日本へ飛来せず 避難を解除

北朝鮮ミサイル発射か、日本へ飛来せず 避難を解除
韓国軍「北朝鮮が宇宙発射体」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA19A930Z10C23A4000000/

『政府は31日午前6時半、北朝鮮がミサイルを発射したもようだと全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令し、沖縄県に避難を呼びかけた。北朝鮮が31日〜6月11日に発射すると予告した軍事偵察衛星1号機を発射した可能性がある。

政府は午前7時すぎに日本には飛来しないとみられると発表し、避難の呼びかけを解除した。海上保安庁は防衛省からの情報として「弾道ミサイルの可能性があるものはすでに落下したとみられる」と公表した。

韓国軍合同参謀本部によると北朝鮮は午前6時29分ごろ、北朝鮮北西部の平安北道・東倉里(トンチャンリ)一帯から南方向に宇宙発射体を1発打ち上げた。

南北境界に近い韓国・白翎島の西側の上空を通過したと説明した。北朝鮮が衛星と主張する発射体を打ち上げたとすれば2016年以来、7年ぶりになる。

岸田文雄首相は関係省庁に①情報収集・分析に全力を挙げ国民に迅速・的確な情報提供②航空機や船舶などの安全確認の徹底③不測の事態に備え万全の態勢をとる――の3点を指示した。

7時半すぎに首相官邸で「現在のところ被害は報告されていない。詳細は分析中だ」と記者団に語った。

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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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ひとこと解説

北朝鮮が軍事偵察衛星を打ち上げたとすれば米軍に対する強い危機感の裏返しです。最も恐れているのが、米空母から発着するF35などの最新鋭ステルス戦闘機などによる空からの攻撃であり、軍事偵察衛星の運用は国防五カ年計画の目標に掲げた悲願です。対空装備の大半が旧システムで空からの攻撃への備えが決定的に脆弱なためで、それを補う「目」の役割を果たす衛星を今後も2号機、3号機と打ち上げる可能性があります。
一方で韓国の聯合ニュースは午前8時前に韓国軍の情報として、北朝鮮の発射体が落下予告地点に到達できずレーダーから消失したと報じました。韓国軍は空中爆発や海上への墜落などの可能性を分析しているといいます。
2023年5月31日 7:54 (2023年5月31日 8:24更新)』

『ニッケイ・アジア』紙の報道によると、エマニュエルは、米海軍の艦艇を、日本国内の民間の造船所で修船できるようにしたいとも考えている。

『ニッケイ・アジア』紙の報道によると、エマニュエルは、米海軍の艦艇を、日本国内の民間の造船所で修船できるようにしたいとも考えている。
https://st2019.site/?p=21174

『『The Maritime Executive』の2023-5-25記事「Report: U.S. Navy Might Use Japanese Repair Yards for U.S. Warships」。

   駐日米国大使のエマニュエル氏は、化石燃料に対する民主党の一般的態度とは一線を画し、アラスカのLNGプラント事業を前進させてそれを日本の発電所が利用できるようにしてくれた。

 『ニッケイ・アジア』紙の報道によると、エマニュエルは、米海軍の艦艇を、日本国内の民間の造船所で修船できるようにしたいとも考えている。
 背景事情。米本土の修船ドックが施設の老朽化+人手不足で、米海軍が必要とする工事作業が遅れに遅れてしまっている。それは慢性的傾向で、このままではもっと悪くなる。とても、中共からの挑戦をいつでもうけて立てる「レディネス(備え万全)」だとは言い難い。それを解消したい。

 しかしこの構想を推し進めると米本土では政治的な大論争になるにちがいない。米国造船所はこれまで排他独占的に米海軍からのメンテナンス工事を受注できる慣行の上に胡坐をかいていたのだ。

 周知の事実だが、第七艦隊はこれまでも横須賀の日本の造船所と日本人工員から修理の支援をいろいろと得ている。
 だがエマニュエル構想はそんな限定的なものじゃない。

 日経の「もりやす・けん」記者によれば、エマニュエルは、米海軍は韓国やシンガポールやフィリピンのドックももっと利用できるようになるべきだと思っている。そうすることによりメンテナンスのボトルネックが解消される。』

北朝鮮が「人工衛星」打ち上げ通告 31日から6月11日に

北朝鮮が「人工衛星」打ち上げ通告 31日から6月11日に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2903O0Z20C23A5000000/

『政府は29日午前、北朝鮮が「人工衛星」を打ち上げると表明したと明らかにした。海上保安庁によると、北朝鮮が打ち上げを通告したのは31日午前0時から6月11日午前0時の間で黄海、東シナ海、ルソン島の東を指定した。

岸田文雄首相は関係省庁で情報収集・分析に万全を期して国民に適切な情報提供をするよう指示した。米国や韓国など関係国と連携し、北朝鮮が発射しないように自制を求めることや、不測の事態に備えて万全の態勢をとることも言明した。

北朝鮮は過去、人工衛星と称する弾道ミサイルを発射してきた経緯がある。政府は4月、弾道ミサイルなどを迎撃するための「破壊措置準備命令」を自衛隊に出していた。領域内への落下といった事態に備え沖縄県に地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)などの部隊を展開する。

北朝鮮は4月、軍事偵察衛星のロケットへの搭載準備が完了したと表明し、近く発射するとみられている。金正恩(キム・ジョンウン)総書記が施設を視察し、衛星打ち上げに向けた行動計画を承認した。偵察衛星は一般に他国の兵器の位置情報や基地の状況を把握するために用いられる。

【関連記事】北朝鮮、6月上旬に党重要会議招集 「衛星」報告も 』