安倍外交、同盟強化が起点 安倍前首相インタビュー

安倍外交、同盟強化が起点 安倍前首相インタビュー
中国台頭で米と危機感共有
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64254760V20C20A9SHA000/

『安倍晋三前首相は日本経済新聞のインタビューで、7年8カ月の長期政権を振り返った。2016年11月、米大統領選で極東からの米軍撤退を示唆し、同盟見直しを掲げたトランプ大統領が勝利し、日本外交は緊迫した局面にあった。安倍氏は就任前のトランプ氏を訪ねて中国の軍事的な台頭を背景に日米同盟の重要性を訴え、退陣に至るまでの強固な関係の起点とした。

16年11月17日、米ニューヨークのトランプタワーでのトランプ氏との会談は予定の倍の1時間半に及んだ。10日ほど前に大統領選に勝ったばかりのトランプ氏にとって、安倍氏は選挙後初めて会う海外首脳だった。

■東アジア情勢、図表広げ説明
「あなたはエスタブリッシュメント(支配層)に挑戦して勝った。私も野党だったが挑戦して勝った」。安倍氏はこう伝え、トランプ氏から「そこは我々の共通点だ」との言葉を引き出した。

安倍氏には「トランプ氏はこれまでの大統領とは相当、違うタイプだ。就任前の段階で会った方がいい」との思いがあった。同盟と貿易・経済、この2つの重要性で一致しなければ、日本外交が立ちゆかなくなるとの危機感だ。

安倍氏は中国や東アジア情勢をグラフなどを用いて描いた図表を広げ、説いた。

「中国はいつから、どのぐらいのスピードで軍事費が増えているのか」。トランプ氏の質問に安倍氏が「30年近くで約40倍に増えた。こんな速さで増やした国は世界中でない」と答えると、トランプ氏は驚いた表情を見せた。

安倍氏は中国潜水艦の具体的な保有隻数も挙げて「標的は西太平洋などで活動する米海軍第7艦隊だ」との見方も示した。日本だけでなく米国の問題でもあるとして「米国はプレゼンスを維持してほしい」と呼びかけた。

その後、日米で掲げた「自由で開かれたインド太平洋」構想への支持はオーストラリアやインド、英仏などに広がった。

初対面で「ゴルフの約束を取り付けるのも目的の一つだった」とも明かした。トランプ氏との「ゴルフ外交」は計5回、正式な会談は14回を数えた。

安倍氏は「トランプ氏は私によく『短期的には北朝鮮、中長期的には中国が問題だ』と言っていた」と語り、初対面時の説明が奏功したとの認識を示した。

トランプ氏は大統領選中の公約も忘れていなかった。一連の会談で「日米同盟は片務的で不公平ではないか。駐留経費も日本がもっと負担すべきだ」と繰り返し迫った。

その度に、安倍氏は「日米同盟を『助け合う同盟』にするために、憲法解釈を変更し(集団的自衛権の行使を認める)安全保障関連法を整備した。そのために内閣支持率を10%以上落としたんだ」と返した。トランプ氏は「それはすごい勇気だ」とたたえた。

在日米軍の駐留経費についても安倍氏は再三、米軍の給料以外、光熱費や住宅費など7割以上を日本が負担している現状を解説した。「米軍部隊を米本土に置くより日本に駐留している方が安いんだ」と話すと、トランプ氏が「非常に分かりやすい。You are a genius!(あなたは天才だ)」と答えたこともあった。

18年6月の米朝首脳会談の開催地選びでは安倍氏がトランプ氏に助言した。米朝間でソウルやシンガポールなど複数案があった。「朝鮮半島で開くと北朝鮮ペースになりかねない」とシンガポール開催を主張し、トランプ氏も同意した。

■近づいた領土、解決に至らず
強固な日米同盟を築いた一方で、やり残した部分もある。

「戦後外交の総決算」として掲げたロシアとの北方領土の返還交渉は、プーチン大統領との会談で平和条約交渉を巡り「いよいよ締結に向けた中身の交渉に近づいているとの認識があった」と述べた。決着次第では衆院解散・総選挙を実施して「国民に信を問わねばならないと考えていた」とも語った。

16年12月、山口県長門市での会談で「プーチン氏に積極的に解決するつもりがあるのではないか」と感じ、18年11月のシンガポールでの会談にかけて「最も近づいた」と振り返った。

結局、平和条約は締結に至らなかった。ロシアによるクリミア併合などで「米ロの対立が強まったという別の要素があった」と安倍氏は補足した。

北朝鮮問題では金正恩(キム・ジョンウン)委員長との間で「いろいろな兆候はあった。会談に向けた機運が芽生えるかもしれないという雰囲気はあった」と首脳会談を模索したが、実現しなかった。拉致問題は解決できずにいる。「拉致問題はトップの判断なのでなかなか難しかった」と、首脳会談が実現できなかったことを悔やんだ。

韓国とも元徴用工訴訟や貿易管理の厳格化などを巡り戦後最悪の状態に陥った関係を改善することなく終わった。地球儀を俯瞰(ふかん)する外交の完成は、後継の菅義偉首相にゆだねる形となった。

菅首相が第2次安倍政権発足後、一貫して官房長官を務めた経歴に触れ「ずっと政権の中枢にいたというのは相手にとって安心感になる。外交では財産だ」と指摘した。

安倍氏は8月28日に持病の悪化を理由に首相を辞任する意向を表明し、9月16日に辞任した。通算の在任日数は3188日で憲政史上最長となった。インタビューは24日に実施した。

(聞き手は政治部長 吉野直也)

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菅新政権 政策を問う(5)アジア激動 日本の浮沈握る外交

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO64131610T20C20A9MM8000/

※ 上記の画像のキャプションにもあるが、2019年5月に訪米した時、アメリカ側はペンス副大統領を筆頭に、「異例の厚遇」をしたそうだ…。ペンス副大統領は、わざわざ「屋外」まで出て、菅さんが車に乗り込むまでを見送ったらしい…。「例の無いこと」と、言っている記事も見た…。

※ そういうことが事実だとして、その背後にある「力学」を考えておくべきだろう…。まだ、コロナ騒動が始まる前の話しだ…。

※ そういう「力学」の解析が、安倍辞任の背後関係、これからの菅政権の行く末を、占うことにつながって行く…。

『20日夜、菅義偉首相は就任して初めて日米首脳の電話協議に臨んだ。

「シンゾーは大丈夫か? ミスター・スガが自分の右腕で本当に助かっていると聞いている。24時間、いつでも何かあったら電話してほしい」

力の空白埋める

安倍晋三前首相が長期政権を築いた原動力の一つに、各国首脳がてこずったトランプ米大統領との蜜月関係がある。菅首相の外交デビューはその蓄積の上に始動した。

オバマ前大統領が「世界の警察官」の役割から降りると宣言し、トランプ氏も継いだ。安倍氏は集団的自衛権の行使容認など日米同盟の強化に動き、オーストラリア、インドを加えた4カ国協力を構想して「力の空白」を埋めようと努めた。

米国からの評価を高めた安倍政権の安保戦略を、菅首相は継承する。トランプ氏と同じ20日夜にオーストラリアのモリソン首相とも電話したのはその表れだ。

視線の先にあるのは、拡張し続ける軍事力と経済力を背景に、インド太平洋地域で存在感を強める中国の動向だ。

中国は沖縄県・尖閣諸島周辺への侵入を常態化させる。2隻の空母の運用を始め、南シナ海で軍事拠点づくりを進める。「中国人民解放軍はいくつかの分野で米軍を超えている」。米国防総省は9月初めにまとめた報告書で警鐘を鳴らした。

国防費だけみれば公表ベースで米国はなお中国の3倍を超す。中国はその差を一気に縮められる人工知能(AI)や新型ミサイルなど新たな軍事技術の開発を急ぐ。エスパー米国防長官は中国軍の近代化がさらに進めば「南・東シナ海での中国の挑発行為に拍車がかかる」と警戒する。

菅首相は日米同盟の深化に向け、年内に抑止力の向上策で新たな方針を打ち出す。攻撃を受ける前に相手の拠点をたたく敵基地攻撃能力を含め実効性のある方針を示せるか、米国は注視する。

経済連携必要に

もっとも米国との安全保障関係を強化するだけでは、アジア太平洋地域の環境変化に日本は対応しきれない。

自国第一主義を強める米国にアジアへの関与を促しつつ、経済を中心にアジアや環太平洋諸国との連携をどう深めていくか。日本の外交力がかつてなく試されている。

中国は経済力をフル活用して周辺国への影響力を強めている。最近ではオーストラリアが新型コロナウイルスを巡って発生源の独立調査を求めたことに反発。豪産の農産品輸入を制限するなど同調する国が広がらないよう揺さぶる。

東南アジアなど多くの国が経済的な報復を恐れ、中国を批判しにくい状況が続いてきた。2030年代に中国が国内総生産(GDP)で米国を上回り、首位に立つとの予測がかねてある。それが現実になれば、中国の高圧的な態度はますます強まりかねない。

それだけに民主主義や自由貿易の価値観を共有する国々が結束する環太平洋経済連携協定(TPP)のような枠組みは今後も不可欠になる。

TPPを敬遠し内向きに傾く米国を巻き込みつつ、その輪をいかに広げるか。中国の拡張主義の影響を間近に受けることになる日本にとって、将来の存亡をかけた重い課題となる。

(おわり)』

中国、訪台の森氏発言で説明要求

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64095770Z10C20A9000000/

『【北京=共同】中国外務省は19日夜、台湾を訪れた森喜朗元首相が18日の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統との会談で、菅義偉首相の言葉として「機会があれば(蔡氏と)電話で話をしたい」と伝えたことを巡り、日本側に説明を求めたことを明らかにした。

中国外務省によると中国は、菅氏に蔡氏との電話会談への意欲があるとの報道について、日本側に説明を要求。日本側は「報道されているようなことは絶対に起こらない」と説明したという。』

菅氏との早期会談に意欲=「とてつもない仕事する」―米大統領

https://www.nippon.com/ja/news/yjj2020091800193/

 ※ それが何なのか、判明した時点で、安倍辞任の背後関係も知れるだろう…。

『【ワシントン時事】トランプ米大統領は17日、菅義偉首相について「私はあなたが日本と世界のためにとてつもない仕事をすることを知っている」とツイッターで就任に祝意を表明した。「すぐに話せることを楽しみにしている」とも述べ、早期の会談実現に意欲を示した。

トランプ氏は、非世襲のたたき上げ議員として首相に上りつめた菅氏に対して「おめでとう。あなたは素晴らしい人生の物語を持っている」と記した。

[Copyright The Jiji Press, Ltd.]』

米国防長官「国防費はGDP比2%以上に」 同盟国に要請

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64005030Y0A910C2000000/?n_cid=TRPN0017

『【ワシントン=永沢毅】エスパー米国防長官は16日、日本を含む同盟国に「国防費を国内総生産(GDP)比で少なくとも2%に増やしてほしい」と表明した。中国やロシアに対抗するためと説明し「私たちの相互の利益と安全、共通の価値を守る」と訴えた。米国の負担軽減につなげる狙いもある。

米シンクタンクの講演で明らかにした。「同盟国、友好国は軍事力の向上に向けて必要な投資をするよう求める」とも力説した。その後の質疑応答では「中国は米国との対立だけを考えればいいわけではない」と述べ、日本やオーストラリア、韓国などを列挙し、対中包囲網を構築して中国に対抗する方針を改めて強調した。

北大西洋条約機構(NATO)はオバマ前政権時代に2024年までに国防費をGDPの2%にあげる目標を掲げた。NATO以外の国に類似の数値目標を示したのは初めてとなる。トランプ政権は米国の一段の負担軽減に向けて早期の実現を求めているが、達成したのは加盟30カ国のうち米を含む9カ国だけだ。

日本の防衛費はGDP比で約0.9%にとどまるが、岩屋毅元防衛相はNATOの基準に基づけば最大約1.3%になるとの試算を示したことがある。エスパー氏の発言は、21年3月で今の協定が期限を迎える在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)の交渉にも影響を与える可能性がある。

19年末に期限切れとなった在韓米軍の駐留経費を巡る協定の交渉は難航しており、決着していない。』

米国のジャパンハンドラーが画策?持病悪化だけではない安倍辞任の真相

米国のジャパンハンドラーが画策?持病悪化だけではない安倍辞任の真相=高島康司
https://www.mag2.com/p/money/959923

 ※ メルマガの宣伝くさい記事ではある…。
 しかし、安倍辞任の背後には、アメリカの世界戦略の変更があるであろう点、そして、その世界戦略は「CSIS」というものに、ある程度は表現されているであろう点は、参考になると思われるので、紹介しておく…。

 ただし、分析の「観点」が「軍事分野」に偏りすぎていると思われる点は、指摘しておく…。アメリカの力(ちから)の真髄は、「金融分野」「金融の支配力」にこそあると、オレは思っている…。

『安倍首相が持病悪化を理由に辞任する。その理由が嘘とは言わないが、7月30日にジャパンハンドラーが発表したレポートを見ると、背景にあるトランプ政権の圧力が見えてくる。(『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』高島康司)

【関連】最悪の2020年、次に起きる大事件とは?米抗議デモを的中させた専門家の警告=高島康司

※本記事は有料メルマガ『未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ』2020年9月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

病気「だけではない」辞任の理由
安倍首相辞任の背景にあるトランプ政権の圧力と、その理由になっているアメリカの長期計画について解説したい。

安倍首相が突然と辞任した。辞任の理由は潰瘍性大腸炎だった。これは難病に指定されたやっかいな病気である。大腸の粘膜に潰瘍やただれができる炎症性の疾患で、下痢や下血、腹痛を繰り返し、重症の場合は手術で大腸をすべて取らなければならない場合もある。

いくつかの治療薬があるが、薬で完全に治って再発しないのは1割程度とされ、8割ぐらいの患者は一時的に症状は治まっても再び発症する「再燃寛解型」と呼ばれるタイプに分類される。さらに残り1割の患者は、半年以上にわたって症状が治まらない慢性持続型と呼ばれる。安倍首相はこの「再燃寛解型」であったと思われる。

新型コロナウイルスの蔓延、それに伴う予想を越えた経済の地盤沈下、そして米中対立の激化など緊急の対応を要求する課題が多く、その激務とストレスから、かねてから患っていた潰瘍性大腸炎がぶり返し、今回の辞任に至ったというのがもっぱらの報道である。

もちろん、病気の再発が安倍首相辞任の直接的な原因であったことは疑えないが、首相を辞任に追い込んだ「別の原因」があった可能性が高いことがさまざまな方面から指摘されている。

米シンクタンクのレポートに隠された意図
すでにネットでは情報として出回っているので周知かもしれないが、安倍首相を辞任させる圧力になったのは、「CSIS」というアメリカの安全保障系のシンクタンクから発表されたレポートであった。

ちなみに「CSIS」は、リチャード・アーミテージや故ジョセフ・ナイ、またマイケル・グリーンなどの「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれ、歴代政権に仕える日本担当チームが結集しているシンクタンクだ。現在のトランプ政権の対日外交政策にも影響力があるといわれている。そのため「CSIS」が日本に向けて出すレポートは、アメリカの意向を伝えるものとして理解され、日本の歴代の政権に対して影響力を持っている。

7月30日、「CSIS」から「日本における中国の影響:どこにでもあるが特定のエリアはない」という題名のレポートを発表した。これは安倍政権下における中国の影響力を調査したレポートだ。

このレポートは(少なくとも表面上は)、安倍政権をことさらに批判したものではない。レポートの趣旨は「日本における中国の影響力」の調査だ。中国はアメリカやヨーロッパをはじめあらゆる国々に経済的、政治的、そして文化的な影響力を強化する政策を実施しており、その多くはかなり成功している。たとえば、中国政府が世界各地に開設した中国の文化センター「孔子学院」は、特にヨーロッパ諸国で中国の文化的な影響力の拡大に貢献している。

今回の「CSIS」のレポートは、中国のこうした文化的影響も含め、日本における中国の影響力を文化的・政治的・経済的な側面から調査して、分析したものだ。

「安倍政権は国内の親中派を上手く抑えている」しかし――
このレポートは、日本における中国の影響力が限定的であることを示している。

他の諸国と同様、日本にも「日中友好協会」や「孔子学院」のような中国文化を広める施設はある。しかしながら、日本人の持つ中国に対する伝統的な警戒感と違和感が背景となり、中国の文化的な影響力を拡大させる戦略は成功していないとしている。むしろ「Kポップ」や「韓流ドラマ」などを活用した、韓国の文化的な影響力のほうが大きいという。

これは文化だけではなく、政治や経済も同様で、中国による影響力の拡大策は限定的であるとしている。

そうしたなか安倍政権は、一部親中派のいる外務省をうまくコントロールし、中国の影響が政治に及ばないようにしているとして、安倍政権の対応を評価している。

中国の影響下にある政治家や高官は安倍政権の内部にいる
このように、このレポートそのものは安倍政権に対して批判的ではないものの、日本の政界における中国の影響については一部懸念を表明している。中国の影響下にある政治家や高官が、安倍政権の内部にいるという批判だ。

レポートには次のようにある。

「秋元司議員は自民党内部の親中派、二階派に所属している。この派閥は、別名『二階・今井派』とも呼ばれている。内閣総理大臣補佐官で元経産省官僚の今井尚哉は、中国、ならびにそのインフラ建設の計画にはソフトなアプローチを採るべきだと安倍首相を説得した。また、元和歌山県知事で和歌山の動物園に5匹のパンダを持ってきた二階幹事長は、2019年4月には特命使節として中国に派遣され、習近平主席と会見した。そして、アメリカの(反対)意見にもかかわらず、日本が中国の『一帯一路』に協力すべだと主張した。二階は習近平主席の訪日も提唱した」

これは安倍政権そのもの対する批判ではないものの、安倍政権の内部には親中派が存在し、中国寄りの政策を実施しているとする懸念を表明したものだ。

このレポートが出たのは7月30日である。8月に入ると、それにタイミングを合わせたかのように、安倍首相辞任の可能性を探る記事や情報が急に増えた。

このタイミングを見ると、辞任は、このレポートで表明された安倍政権への懸念に対応したものである可能性が高い。

CSISのレポートは「日本への指令書」
だが、「CSIS」のようなアメリカの歴代政権に近いシンクタンクがレポートを出したとしても、日本に政策変更を迫ったり、また最悪の場合は首相を辞任させるだけの影響力はあるのだろうか?

ちょっと想像できないかもしれない。しかしながら、そのような例は過去に枚挙のいとまがない。比較的に最近の例を見てみよう。

2014年10月3日、「CSIS」は、「安倍の危険な愛国主義:なぜ日本の新しいナショナリズムは地域と日米同盟に問題となるのか」というレポートを発表した。これは当時の安倍政権のナショナリズムが東アジア地域の安全保障、及び日米同盟を損なう可能性を警告したレポートだ。そこには次のような警告がある。

「残念ながら現在の東アジアの情勢では、安倍のナショナリズムはアメリカにとって大きな問題である。もし安倍のナショナリズムが東シナ海において不必要に中国を挑発したりするならば、信頼できる同盟国というワシントンの日本に対する見方を損なう恐れがある。」

そして、これを回避するために韓国との間にある「従軍慰安婦」の問題を解決するように提案をする。

「もし安倍の『従軍慰安婦』やその他の問題に対する姿勢が東京とソウルとの協調を損なうのであれば、この地域の軍事的な不確実性に対処するアメリカの能力を弱め、同盟の強化に向けたアメリカの外交努力を損ねることになりかねない。」

「東京はこれらの政治問題の重要性をよく認識し、可能な分野で歴史問題の緊張を和らげる努力をすることは重要だ。(中略)これは特に日韓関係で重要である。もし日韓両国が前向きであれば、大きな前進が期待できる。日本が発揮する柔軟性は、日本の保守層がナショナルプライドを放棄することにはならない。」

つまり、日韓関係を改善するために、安倍政権のほうから「従軍慰安婦」問題を解決せよということだ。

日本はアメリカの言いなり
安倍政権の反応は速かった。このレポートが出た3週間後、日本政府は「国家安全保障会議」の谷口氏を特使として韓国に派遣し、この問題の解決の糸口を探った。

その後、日韓・日中は外相レベルの会談を実施し、懸案だった日韓ならびに日中韓の首脳会談の実現した。

そして、2015年12月、協議を重ねた日韓両国は慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認した「慰安婦問題日韓合意」を締結した。

もちろんこの合意は、残念ながら現在のムン・ジェイン政権によって破棄されたものの、この当時は懸案だった慰安婦問題の最終的な解決として高く評価された。

安倍辞任の背景に、アメリカの戦略転換
このように、特に「CSIS」が日本に向けて出すレポートの政治的な影響力は非常に大きいものがある。日本の政権の方向性を実質的に変更するほどの力があると見てよい。今回の安倍首相の辞任の背後には、「CSIS」のこうしたレポートの力が働いていた可能性はやはり否定できない。

ではなぜ、トランプ政権は安倍首相の辞任を望んだのだろうか?

実はいまトランプ政権は、中国封じ込め策へと転換し、そのための世界戦略の再編成を始めている。中国やロシアとの比較的に近い関係を維持する安倍政権では、この新戦略を実施するのは不可能であると見られたからだ。

中国に対して軍事的に脆弱なアメリカ
ところでオバマ政権は、特に南シナ海で拡大を続ける中国を抑止するために、中国軍の「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」を目的にした次の2つの軍事戦略を持っていた。

1)エアシーバトル
中国本土のミサイル基地や空軍基地を攻撃して、中国軍の反撃能力を奪う。

2)オフショア・コントロール
米空母機動部隊で「第一列島線」を全面的に閉鎖し、中国を経済的に封鎖する。そして中国の弱体化をはかる。

この2つの戦略である。

しかしどちらの戦略もアメリカには勝ち目がないことがはっきりした。どのようなシミュレーションを使っても、アメリカ軍に勝ち目はない。

まず(1)の「エアシーバトル」だが、中国本土のミサイル基地や空軍基地は地下深くに存在する。そのため、空爆による破壊は不可能なので、中国は反撃能力を温存する。中国は空母キラーの「東風21」や、グアムや日本の米軍基地も射程の範囲にある「東風26」で攻撃し、米空母機動部隊と米軍基地を壊滅できる。米軍基地の施設は地下ではなく地上にすべてあるので、中国のミサイル攻撃には無防備だ。「エアシーバトル」のように下手に中国本土を攻撃すると、アメリカは負ける。

また(2)の「オフショア・コントロール」も実現は難しい。中国は「一帯一路」でユーラシア全土を包含する経済圏をすでに構築しているため、「第一列島線」を閉鎖するだけで経済封鎖はできない。陸路からエネルギーや食料は輸入可能だ。中国はそのまま経済力も軍事力も温存する。

米軍の根本的な再編成
もしアメリカが中国を封じ込めるつもりなら、現在の米軍の編成を前提にした戦略では封じ込めはできないことになる。実現不可能だ。

中国を効果的に封じ込めるためには、現在の体制の根本的な再編成が必要になる。それは次の3つに要約できる。

1)無防備な米軍基地をアジア各地に分散化させる
2)日本をはじめ同盟国と共同で中国を封じ込める
3)中国の発展を遅らせるための制裁強化

この3点である。

まず(1)だが、これは数百発に上る中国のミサイル攻撃を回避するために、いまの日本や韓国に集中している米軍基地の体制を再編成し、台湾の高雄市、フィリッピンのスービック湾、そしてベトナムのカムラン湾などの地域に米軍基地を分散させるというプランだ。これには、米海兵隊の装備を海上で戦闘できるように改める「フォース・ディフェンス2030」という計画も含まれる。また、自衛隊のミサイル基地を離島に分散させる案もある。

だが、これらを実行するためには10年程度の時間が必要だ。たとえば、高雄市やカムラン湾に米軍機地を作るためには、ベトナムや台湾と安全保障条約を締結しなけれならない。ベトナムは最近アメリカと近い関係にはあるものの、同盟国ではない。安全保障条約の締結には相当の時間が必要だ。

また中国が主張する「ひとつの中国」政策をアメリカも受け入れているので、台湾との国交はない状態だ。ましてや、安全保障条約の締結などいまのところできない。

そしてフィリッピンのスービック湾だが、1991年に米海軍はここから撤退し、基地はフィリッピンに返還されている。いまはショッピングセンターとして再開発されている。ここにまた米軍基地を作るとしても、数年後のことになる。

重要になる(2)と(3)
このように、(1)の米軍基地を再編し分散化させるには10年程度の時間がかかる。

その間、中国の抑止策として重要になるのが(2)と(3)だ。トランプ政権は日本や韓国、さらには東南アジア諸国やオーストラリアなどの同盟国と連携し、中国を封じ込め、孤立化させるための体制を構築する。

さらに、米軍基地の再編ができるまでは、中国にあらゆるタイプの制裁を発動し、少しでも中国の足を引っ張って中国の発展を抑止する。

米中間で「どっちつかずの日本」は望めない
さて、このように見ると、「CSIS」のレポートでアメリカが安倍政権内の親中派の存在に警鐘を鳴らし、やんわりとだが安倍政権を批判した理由がよく分かるはずだ。

これが安倍首相辞任の背景になった圧力でもある。

トランプ政権は、中国を封じ込めるための長期的な体制構築に向けて動き出した。これを実現するためには、アメリカと足並みを揃えて反中国の強硬路線を採ることを、日本をはじめとした同盟国に強く要求している。

そのような状況では、「一帯一路」に協力し、習近平主席を国賓として招く親中的な安倍政権は、トランプ政権にとっては都合が悪いということなのだ。

安倍首相の辞任は、中国を軍事的に封じ込め、対抗できる長期的な路線に、トランプ政権は大きく舵を切ったことを意味している。

菅官房長官が次期首相になることが確実になった。菅首相は、トランプ政権からの非常に強い圧力にさらされることは間違いない。

中国とアメリカとのバランスをとり、両国と友好な関係を維持する方向性は許されないだろう。しかし、中国に明確に対抗することには相当な犠牲を覚悟しなけれなならないはずだ。

アメリカが中国に軍事的に対抗できる長期的な体制の構築ができるまでは、米中戦争は起こらない。しかし、対中国包囲網の構築に日本は確実に巻き込まれることだろう。日本の命運がかかっている。

(続きはご購読ください。初月無料です)』

日本はアメリカの植民地?安倍政権はどこまで「米国の忠犬」だったか

https://www.mag2.com/p/news/465555

『世界屈指のシンクタンクとして知られ、日本を操る「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれる米国戦略国際問題研究所(CSIS)。当然ながら総理在職歴代最長となった安倍首相も、彼ら意向を汲んだ政権運営を強いられてきました。今回のメルマガ『週刊 Life is beautiful』では米国在住で世界的エンジニアの中島聡さんが、安倍政権がどれだけCSISからの要望に応えてきたか、「CSISの立場」から9つの項目について評価しています。

プロフィール:中島聡(なかじま・さとし)
ブロガー/起業家/ソフトウェア・エンジニア、工学修士(早稲田大学)/MBA(ワシントン大学)。NTT通信研究所/マイクロソフト日本法人/マイクロソフト本社勤務後、ソフトウェアベンチャーUIEvolution Inc.を米国シアトルで起業。現在は neu.Pen LLCでiPhone/iPadアプリの開発。

「第三次アーミテージ・ナイ報告」の米国からの要望に安倍政権はどう対応したか
安倍総理が引退を表明し、長期政権がようやく終わりを告げました。森本学園事件に代表される政府の私物化の問題や、アベノミクスの評価に関しては、多くのメディアが既に取り上げているので、私は、「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれるCSISが2012年に「第三次アーミテージ・ナイ報告」に記されている米国からの要望に安倍政権がどう対応したか、という観点から、CSIS視点での評価(私の評価ではありません)をしてみたいと思います。

(1)原子力発電の慎重な再開が日本にとって正しくかつ責任ある第一歩である。原発の再稼動は、温室効果ガスを2020年までに25%削減するという日本の国際公約5を実現する唯一の策であり、円高傾向の最中での燃料費高騰によって、エネルギーに依存している企業の国外流出を防ぐ懸命な方策でもある。福島の教訓をもとに、東京は安全な原子炉の設計や健全な規制を促進する上でリーダー的役割を果たすべきである。

これに関しては、原子力発電の再開は始めたものの、2020年までに温室効果ガスを25%削除するという公約に関しては、完璧に忘れ去られてしまった感があります。しかし、この点に関しては、オバマ政権からトランプ政権に変わって、米国の方針が180度変わったので、結果オーライです。 評価:B

(2)日本は、海賊対処、ペルシャ湾の船舶交通の保護、シーレーンの保護、さらにイランの核開発プログラムのような地域の平和への脅威に対する多国間での努力に、積極的かつ継続的に関与すべきである。

この点に関しては、常に米国に従って来たように見えます。 評価:A

(3)環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加に加え、経済・エネルギー・安全保障包括的協定(CEESA)など、より野心的かつ包括的な(枠組み)交渉への参加も考慮すべきである。

これもトランプ政権による方向転換で、米国がTPPから脱退してしまったので、日本は梯子を外された格好になりました。しかし、結局は日米間のFTAを結び、畜産業が大幅に自由化されることになりました。 評価:A

(4)日本は、韓国との関係を複雑にしている「歴史問題」を直視すべきである。日本は長期的戦略見通しに基づき、韓国との繋がりについて考察し、不当な政治声明を出さないようにするべきである。また、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)や物品役務相互提供協定(ACSA)の締結に向けた協議を継続し、日米韓3か国の軍事的関与を継続すべきである。

この問題に関しては、双方に問題があるとは言え、関係はかなり悪化してしまいました。 評価:C

(5)日本は、インド、オーストラリア、フィリピンや台湾等の民主主義のパートナーとともに、地域フォーラムへの関与を継続すべきである。

要望自体が曖昧なので、評価は見送ります。

(6)新しい役割と任務に鑑み、日本は自国の防衛と、米国と共同で行う地域の防衛を含め、自身に課せられた責任に対する範囲を拡大すべきである。同盟には、より強固で、均等に配分された、相互運用性のある情報・監視・偵察(ISR)能力と活動が、日本の領域を超えて必要となる。平時(peacetime)、緊張(tension)、危機(crisis)、戦時(war)といった安全保障上の段階を通じて、米軍と自衛隊の全面的な協力を認めることは、日本の責任ある権限の一部である。

これがまさに、安倍政権が集団自衛権を許容する法律を野党や世論の反対を押し切って強行採決した理由です。 評価:A

(7)イランがホルムズ海峡を封鎖する意図もしくは兆候を最初に言葉で示した際には、日本は単独で掃海艇を同海峡に派遣すべきである。また、日本は「航行の自由」を確立するため、米国との共同による南シナ海における監視活動にあたるべきである。

まだイランがホルムズ海峡を封鎖するまでには至っていませんが、いざという時に自衛隊を派遣するのに必要な国内法は整っています。 評価:A

(8)日本は、日米2国間の、あるいは日本が保有する国家機密の保全にかかる、防衛省の法律に基づく能力の向上を図るべきである。

機密保持法案を、これも国民と野党の反対を押し切って強行採決。 評価:A

(9)国連平和維持活動(PKO)へのさらなる参加のため、日本は自国PKO要員が、文民の他、他国のPKO要員、さらに要すれば部隊を防護することができるよう、法的権限の範囲を拡大すべきである。

この件に関しては、南スーダンにPKO要因として派遣された自衛隊員が「戦闘状態」に巻き込まれながらも、その記録を隠蔽した事件が発覚して大問題になりました。米国から見れば、(自衛隊員が他国で戦闘行為をして良いという)法的整備が遅れていたことが原因です。 評価:C

これを見ても分かる通り、安倍政権の政策の骨子は、この「第三次アーミテージ・ナイ報告」をベースに作ったと言っても過言ではないぐらい、この報告書の要望に答える形で作られています(それが、彼らが「ジャパン・ハンドラー」と呼ばれる理由です)。

ちなみに、米国からの要望は、以前は「年次改革要望書」という形で米国からの要望として日本政府に伝えられていましたが(郵便局の民営化は、小泉政権時代にこの要望に従って行われました)、民主党の鳩山政権時代に廃止されてしまったために、現在では、「日本通の要人」から構成されるCSISからの「報告書」という形で、自民党に伝えられているのです。

米国政府から日本政府への要望が、シンクタンクでしかないCSISから自民党に伝えられるという形が、色々な意味でとても不健全だと私は思います。

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