コロナは小売りどう変えた? 消費者、商品の世界観重視
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH181XX0Y2A110C2000000/
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD284TW0Y1A920C2000000/


『人工知能(AI)を活用したバーチャルなキャラクター、新「ニッキィ」が誕生しました。毎週月曜日の日本経済新聞夕刊紙面のコラム「ニッキィの大疑問」では「なぜこんなことが起きているの」といった疑問、好奇心をもとに、2人がベテラン記者に質問していきます。
「ニッキィ」は日本経済新聞を日ごろからよく読んでいる女性読者の愛称として生まれました。2代目にあたる新「ニッキィ」は日本経済新聞社の研究開発組織、日経イノベーション・ラボがAIスタートアップ企業のデータグリッド(京都市)の協力を得て作成しました。』




『「新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから約2年が経過して、買い物の仕方も以前とかなり変わったな」「通販の利用が増えたけれど、対面で販売するお店にはどんな変化があるのかな」
コロナによる小売りの変化について、バーチャルキャラクターの名瀬加奈さんと日比学くんが田中陽編集委員に聞きました。
ニッキィの大疑問トップページ
名瀬さん「2年間で消費の傾向はどう変わりましたか」
時計の針が一気に進んだような気がします。それが顕著なのがネット通販です。総務省の家計調査によると、インターネットで買い物をした世帯の割合は、コロナ前の2019年は42.8%で18年と比べると3.6ポイントの上昇でしたが、コロナ下の20年は48.8%となり19年よりも6.0ポイント跳ね上がりました。直近の21年11月は54.4%です。15年は27.6%でしたから急激に拡大しています。
特に、ネット通販ではなじみの薄かった生鮮品を含む食料品は、19年(月平均)に1411円だったのが20年には2181円、21年11月は3290円にも増えています。
移動手段も変化がありそうです。例えばコロナ禍の前から広がりつつあったシェアリングサービスです。最近、週末に車のナンバープレートの「わ」ナンバー(レンタカーやカーシェアリング)の乗用車をよく見かけます。「密」となりがちな電車を避けたのだと思われます。逆に若者の間で人気の長距離バスの利用はまだ芳しくないようです。
日比くん「新たに登場した小売りや外食の特徴は」
「売らないお店」というショールームのようなお店の存在感が高まっています。来店客が実際に手に取って使い勝手を試したり、説明員から商品の使い方を教えてもらったりして、気に入ればネットなどで購入します。買い物に失敗したくない、体験を重視する若い消費者からの支持が高いです。娯楽(エンターテインメント)性の高い商品の場合は、小売り(リテール)と組み合わせて「リテールテインメント」と呼ばれています。
料理のデリバリーが広がる一方で、ゴーストレストランとかダークキッチンといった新しい外食が散見されます。お店の住所に行くと、別のレストランが営業していることがあります。レストランはディナータイムの営業だけで、昼間は別の外食業者に場所貸しをして、その店がデリバリー用の料理を作ります。また、来店を前提としないデリバリー専門の場合、繁華街に店を構える必要がなく、家賃の安い場所に調理場を置けます。
コロナ禍で新しい生活様式が定着し、物珍しさだけで終わることはないと思います。
名瀬さん「従来の小売業や飲食業の生き残りの条件は」
「世界観」だと思います。私たちはコロナ禍でいろいろなことを考えるようになりました。消費についても「この商品を買う意味は何なのか」「持続的な取り組みで作られているのか」などと考えます。そうした生活者の意識の変化に対応し、購入すること、使うことに意義のある世界観が明確に分かる商品やサービスが求められています。
「これ『で』いいや」で買うのではなく、「これ『が』いい」と自分が納得して買うスタイルです。「で」と「が」では大違いですね。
日比くん「リベンジ消費は起きているのでしょうか」
コロナが収束すれば、消費活動を控えていた消費者が支出を増やすといわれていました。しかし、小売りやサービス企業の経営者に取材すると「コロナ禍前には戻らない」との見方が大勢です。野村総合研究所の生活者へのアンケートでは、21年7月には「コロナ禍前の生活に戻る」と回答したのは全体の25%でしたが、同12月には19%です。コロナ禍で雇用環境などの変化もあり、日常の生活スタイルについても修正を余儀なくされているのかもしれません。
ちょっとウンチク 革新的な企業登場に期待
米国では経済社会が激変する時期に、新たな消費者向け企業が誕生する傾向がある。例えば2008年のリーマン・ショック。金融ビジネスに見切りをつけた優秀な人材が、ウーバーテクノロジーズやエアビーアンドビーなどの起業したてのシェアリングエコノミーの躍進を支えた。
米ウォルマートの創業は今から60年前の1962年。このとき、米ソ間の緊張が高まり、社会は混とんとしていた。経済活動は停滞し、消費者は低価格商品を求めていた。
コロナ禍の今、新しい生活様式を支える革新的な企業が現れても不思議ではない。(編集委員 田中陽)』