インターンで青田買い? 学生の8割が就活制度に不満

インターンで青田買い? 学生の8割が就活制度に不満
就活探偵団
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ158E80V10C21A2000000/

『「企業はウソをつく」「部活が忙しくて就活できない」――。就活探偵団が実施したアンケート調査で、学生の8割が今の就職活動の制度になんらかの不満を抱いていることが分かった。学生たちが社会への第一歩となる就活でつまずくことは、企業や社会の損失にもつながりかねない。具体的に何が問題なのか。取材と調査結果を基に学生の悲痛な叫びを紹介する。

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調査は1月下旬、日経電子版の会員と公式ツイッターで学生を対象にインタ…

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調査は1月下旬、日経電子版の会員と公式ツイッターで学生を対象にインターネットで実施した。有効回答数は289人。

まず、今の就職活動の制度・慣習に不満はあるか尋ねたところ、「ある」との回答は76%に達した。具体的に何に不満を感じているのか、複数の選択肢を用意し1つ挙げてもらった。最も多かったのは「選考状況が不透明」(18%)。次いで「インターンシップ(就業体験)が青田買いの場になっている」(17%)、「服装などの独特な就活ルール」「学業への支障」(ともに14%)だった。

実際に学生に聞いてみた。

「インターンが選考と関係ないというのはウソ。就活情報サイトで調べればすぐに分かる」。早稲田大3年の男子学生は不満げに語る。6社のインターンに参加し、その内5社はインターン後に接触があったという。

ある企業の採用ページには「インターンと本選考は関係ない」と書いてあったが、実際は既に3回の「面談」をしており「選考に関係ないわけがない」と笑う。「企業が言っていることを信じている学生はチャンスを失うことになる。企業の話は本当なのか疑いながら聞くようになった」

企業側の本音と建前が生まれるのは、政府が企業の採用活動に直結するインターンは認めないとの姿勢を示しているため。しかし、一度接点を持った有望学生をつなぎ留めたいのは企業のサガだろう。

部活で忙しく……
「『エントリー締め切り』の文字にがくぜんとした」。立命館大3年の男子学生は昨夏、日用品メーカーのサイトを見て肩を落とした。体育会系の部活に所属。部活と就活を両立しようとしていた。もちろん夏インターンがあることは知っていたが、部活の試合や練習の忙しさにかまけて、リサーチや自己分析が間に合わずエントリーができなかった。

夏や冬のインターンに本選考と企業によって採用活動が分散していてわかりにくい。「どこかの期間に一本化してほしい」と訴える。

就活スケジュールに不満を抱く学生も多い。特定の時期に卒業予定の学生を集中して選考し、在学中に内定を出す新卒一括採用。現在の政府が定めたルールは3月の説明会解禁、6月の選考解禁が軸だ。

しかし実態は3年生の夏インターンの選考が事実上の就活のスタートになっている。部活動や研究などに取り組んでいる学生にとって、就活に大学生活の多くの時間を奪われるのは痛手だ。

調査では就活で不安なことについても聞いた(複数回答)。最多は「個人面接」で構成比は16%、次いで「エントリーシート」(15%)、「集団面接」(14%)と続いた。ただでさえ、学生にとって大人と接する面接は緊張するものだ。それが従来の対面からオンラインになり、どう扱ったらよいのか戸惑っている人が多いようだ。

一方で「交通費・宿泊費」を挙げた人は3%にとどまった。例年はお金に関する悩みが出てくるが、オンライン化で金銭的な負担は限定的になったようだ。

コロナ禍で大学のキャンパス入構には制限があったり、飲み会がなかったりして、就活の情報を集めるのに苦労している人も多いだろう。就活の情報源は何なのか、複数回答で尋ねたところ、意外にも最も多かったのは「マイナビなどの就活サイト」で構成比は21%だった。次いで「企業のホームページ」(20%)、「友人」(13%)、「ツイッターなどのSNS」(11%)と続いた。

採用の透明化を

コロナ禍ではOB・OG訪問の機会が少なく、自分の足で情報をつかむのが難しいようだ。こんな声もあった。

関東地方の大学に通う3年の男子学生は「福利厚生や給与については会社からの説明が足りない」と語る。例えば社宅に入るにはどのような条件があるのか、入る場合に住宅手当は出るのか。入社から5年後にはどのような役職に就いていて、どのくらいの給与が見込めるのか。「学生から福利や給与について質問するのは気が引ける。だからこそ企業には情報を提供してほしい」

大学名で説明会の参加を制限したり、面接で不合格にしたりするような「学歴フィルター」がしばしば話題になる。実際学生は学歴フィルターを感じたことはあるのか聞いたところ、「はい」は49%、「いいえ」は51%と拮抗した。

「はい」と答えた人に具体的にどんな場面で感じたか聞くと、「会社の働いている人の学歴を知って」が36%と最多。以降、「書類選考」(28%)、「エントリー」(27%)と続いた。

自由回答では「参加したインターンシップでMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政の各大学)、関関同立(関西学院、関西、同志社、立命館の各大学)より(偏差値で)下の大学の学生を見たことない」(関西学院大22年卒)、「選考を突破した人しか参加できないインターンなどでグループディスカッションで一緒になったのは有名大学の学生ばかりだった」(法政大22年卒)などの声が聞かれた。

就活

これまで経団連や政府などが音頭を取って就活ルールを定めてきた。しかし、優秀な学生を確保したいと一部の企業が青田買いを進めてきた。これに拍車をかけたのが2010年代に本格化したインターンだ。表向きは選考の機会ではないと強調するが、実態は選考の一部になっている例が多数ある。

ならば、「インターンは選考の一部にしてもよい」とルールを改めてはどうか。そのためには各社に「うちのインターンは選考直結」「うちは選考しない」などを明言させるなどの決まりがあってもよいだろう。

スケジュールも再考の余地がありそうだ。インターンが始まる3年生の夏は海外留学したり、ボランティアなど課外活動に精を出したりと、短い学生生活を満喫しているまっただ中だ。それをインターンが妨げてしまっているのが実情だ。

もちろん、夏休みというまとまった時期に職業体験ができるのは有意義だと考える学生もいるだろう。ならば、選考やインターンの時期を複数回用意して、様々な事情を抱える学生にもチャンスを与えてはどうか。もちろんそのためには、「この時期に○○人採用する」「昨年○○大学からは○人採用した」などの情報を開示して透明性を図る。そうすれば、疑心暗鬼になる学生は減るのではないかと考える。

経済のグローバル化が進み、かつて戦後の高度経済成長を支えた日本独特の採用慣行は曲がり角に来ている。様々な経験を積んだ学生に平等に選考の機会を与えることが、企業の活力にもなるはずだ。コロナ禍が図らずも選考のオンライン化を後押しし、わずか1年で就活の風景は様変わりした。今度は制度の根本部分にメスを入れるときだと言えそうだ。

(企業報道部 鈴木洋介、赤堀弘樹)

※アンケート調査のより詳細な内容を28日(日)に日経電子版で公開します。

リモートが揺さぶる長期雇用 消える3つの「無限定」

リモートが揺さぶる長期雇用 消える3つの「無限定」
編集委員 水野裕司
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH099390Z00C21A2000000/

『長期の雇用保障と引き換えに、転勤命令に従い長時間の残業も受け入れる。そうした日本の正社員の雇用慣行に、新型コロナウイルス禍で広がるリモートワークが風穴を開け始めた。たとえば遠く離れた地域の仕事もネットを介してこなせば、転勤は不要になる。気になるのは会社命令に従う代わりに正社員が享受してきた雇用保障の行方だ。

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日本の雇用システムは職務を定…

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日本の雇用システムは職務を定めない雇用契約を土台に形づくられている。雇用契約は会社という組織の一員になる資格を得る意味があり、そのため日本型雇用はメンバーシップ(資格)型と呼ばれる。

職務が限定されず、受け持つ仕事の範囲が不明確なことは、さらに2つの正社員の特徴を生んだ。ひとつは仕事量が増えがちで、慢性的な長時間労働に陥りやすいこと。働く時間も限定されないわけだ。

もう一つは配置転換に柔軟に従う必要があり、本意でない転勤命令にも応じなければならないことだ。つまり働く場所も限定されず、どこに赴任することになるか分からない。日本の正社員の雇用はこうした3つの「無限定」の慣行から成ってきた。

リモートワークで急速に崩れるとみられるのがまず、勤務地が会社都合で決まり、本人の自由度が乏しい慣行だ。

富士通は本人が望まない単身赴任を解消する制度を始めた。社員に「遠隔勤務」を認め、親の介護など家族の事情で居住地を変えるのが難しい場合、転居せずに遠方からのリモートワークで業務をこなせるようにした。奈良県や福岡県に住みながら東京の本社の仕事をする社員もいる。地理的な距離を取り払うネットの力のおかげだ。

離れた2つのオフィス空間をつなぎ、双方の社員が協力して仕事を進められるようにして、転勤を不要にするリモート技術も登場した。内装会社のフロンティアコンサルティング(東京・中央)は、東京本社と大阪支店を常時接続し、互いに相手方の等身大の映像を映し出すシステムを導入した。会議や打ち合わせに活用している。

tonariが開発したシステムで大阪支店とやり取りするフロンティアコンサルティングの東京本社(東京都中央区)

ベンチャー企業のtonari(東京・渋谷)が開発したシステムで、画面の中央に高解像度の微少なカメラを埋め込んで自然と目線が合うようにし、相手が隣にいるような感覚で臨場感のあるコミュニケーションがとれる。「分散する事業拠点を、あたかもひとつの空間のように運営できる」とフロンティアコンサルティングの稲田晋司執行役員は話す。技術の進歩が在宅勤務に限らない「リモートワーク」を広げている。

転勤をめぐっては東亜ペイント(現トウペ)訴訟で1986年に最高裁が出した判決が知られる。転勤を拒否して解雇された元社員がその無効と損害賠償を求めた。単身赴任を強いられるこのケースで最高裁は、家庭生活への影響は「通常甘受すべき程度のもの」とみなし、転勤命令が会社の権利乱用には当たらないとした。

雇用保障があるのだから単身赴任は我慢すべきだという考え方だ。この判決は会社の転勤命令は原則拒否できないという暗黙のルールのよりどころとなった。だがリモートワークの普及で転勤自体が不要になっていけば、判決の重要性は薄れる。

正社員の働き方の根っこにある「職務が無限定」の慣行も、リモートワークが見直しを迫る。離れた場所で働く社員を的確に評価するには、受け持ってもらう仕事の内容を明確にし、可視化することが第一歩になるからだ。

経団連が1月に発表した人事・労務分野の調査によると、テレワークが広がるなかでは職務の明確化が求められると考える会員企業が目立った。「従業員個人の職務内容・範囲の明確化」を実施済み、実施予定の企業は合わせて30.3%。検討中とした企業も33.6%あった。

人材の活性化策として、ポジションごとに使命、役割や具体的な仕事内容を明確にする「ジョブ型」人事制度も産業界に広がり始めている。テレワークとの親和性が高いとする経営者が多い。職務を曖昧にし、正社員を便利な労働力と位置づけてきた日本的慣行は確実に崩れる方向にある。

「職務が無限定」の見直しが進めば長時間労働もおのずと是正に向かう。

政府の働き方改革では時間外労働への罰則付き上限規制が設けられた。長時間労働の是正に一定の成果を上げているが、職務が不明確という根っこの原因が除かれる効果は大きい。

「無限定」な働き方が見直されれば、その見返りに正社員が得てきた長期的な雇用保障は緩み始めておかしくない。現に、職務を曖昧にする慣行が崩れていけば様々な変化が起きると指摘されている。

「社員が携わる業務の可視化が進めば、正社員にまかせず外部委託で足りる仕事があることも見えてくる。リモートワークは正社員の人数を絞るきっかけになるのではないか」。経済学者の間にはそんな見方がある。

経団連は2021年春季労使交渉の企業向け指針である「経営労働政策特別委員会報告」で、ジョブ型雇用が企業に浸透すれば転職の橋渡しをする外部(企業外)労働市場の発達が期待できるとした。プロジェクトごとに専門性を備えた人材を期限付きで雇用するなど、人材の流動化が今後の方向性との認識だ。

労働組合の中央組織である連合はジョブ型について、「人工知能(AI)分野など高度専門人材の採用ではあり得る」としながらも、「技能育成を誰が担うのかなど、職場における課題の深掘りも必要」としている。テレワークの急速な広がりを背景に経団連が普及に積極的なジョブ型に対し、警戒感は強い。それだけ長期雇用の慣行への逆風を感じ取っているのではないか。

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20万人に職業訓練、月収上限12万円に 求職支援拡充

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF120L40S1A210C2000000/

『政府は生活費を受給しながらIT(情報技術)などの職業訓練が受けられる求職者支援制度を拡充する。無料の職業訓練と月10万円の手当が得られる要件を月収12万円以下にする。受講者数を現状より7.5万人増やし、計20万人の受講を目指す。失業者や休業者の再就職を支援する。

政府は12日夕にも雇用対策のパッケージを表明する。雇用調整助成金による休業支援を拡充するだけでなく、再雇用対策やITなど需要のある分野へ…

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雇用調整助成金による休業支援を拡充するだけでなく、再雇用対策やITなど需要のある分野への労働移動を促す政策にも力を入れ始める。

求職者支援制度で月10万円の手当を受け取るための月収8万円以下という要件を緩和する。厳しい要件が課されている職業訓練の出席率でも、出勤日は「やむを得ない欠席」と認め、シフト制などで働いている非正規労働者が受けやすいように変更する。

同制度には国が認定する民間教育機関での「求職者支援訓練」と自治体などが運営する「公共職業訓練」がある。プログラミングの習得やシステムエンジニアを養成するメニューもある。

受講しやすい環境を作るため、現状は月100時間の受講が求められている要件も月60時間以上に見直す。オンラインで受けられるメニューも拡充する。

雇用調整助成金の特例は6月末まで維持

雇用環境が悪化した20年は正社員は増えた一方、非正規社員は75万人減った。新型コロナウイルスに関連した非正規の解雇・雇い止めの人数は見込みも含めて4万人を超える。非正規の再就職を支援する政策は今後も強化していく必要がある。

対策パッケージには雇調金や休業手当をもらえない大企業シフト労働者らへの休業支援金の拡充も盛り込む。経営難の企業と感染拡大地域の外食業などを対象に雇調金の特例水準は6月末まで維持する。大企業向け休業支援金は昨年春の休業分も遡って適用し、賃金の6割を支給する。

このままでは勝てない パナソニック、持ち株会社化へ

このままでは勝てない パナソニック、持ち株会社化へ
苦闘パナソニック(1)
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 ※ 『コロナによる出張抑制など経費削減の効果は想定以上に出た。津賀は「普段の無駄が多いからだ」と憤る。事業部は34。自分たちが収益悪化しても他がカバーしてくれる。緊張感が欠如する事業部を、支出を気にしない高所得者層の家庭になぞらえ、「家計簿をつけていない」と役員会などで繰り返し注意を促した。』

 ※ 『持ち株会社化の推進に心変わりした背景には19年5月に公表した経営方針への社外の失望もあった。「本当に成長できるのか」。空調や照明などを組み合わせ、快適な空間を提案する事業などを基幹事業に据える方針には厳しい声が相次いだ。方針策定の中心となったアナリスト出身で最高戦略責任者の片山栄一とともに批判にこたえる解を模索した。たどり着いたのが不採算事業を「見える化」し撤退と攻めを明確に判断できる持ち株会社化だった。』

 ※ 『グループ幹部が議論を戦わせることから「G戦」と呼ばれるグループ戦略会議で、20年春から持ち株会社化を議題とした。「コロナで大変な時期にやることか」。担当事業を守りたい幹部間でも意見は割れた。業を煮やした津賀と片山は利害関係のない社外人材が約半分を占める取締役会に議論の場を移し退路を断った。これが津賀の後任人事とリンクする。』

 ※ これも、「コロナ禍」の波及効果の一形態と見ることも、できるだろう…。

 ※ 『業を煮やした津賀と片山は利害関係のない社外人材が約半分を占める取締役会に議論の場を移し退路を断った。』という部分からは、「社外取締役」制度の一定の効用も、見て取れるな…。

『「これが駄目なら次の事業、それも駄目ならその次では勝負にならない」。2020年11月27日、パナソニック社長の津賀一宏は東京ミッドタウン日比谷(東京・千代田)で組合幹部と向き合っていた。2週間前に社長交代と22年4月の持ち株会社化を発表したばかり。厳しい言葉で変革に向けた覚悟を求めた。

「まさか生煮えで発表するとは……」。傘下に車載電池など8つの事業会社をぶらさげる持ち株会社化の発表に、その議論の過程を知る中…

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傘下に車載電池など8つの事業会社をぶらさげる持ち株会社化の発表に、その議論の過程を知る中堅社員は驚いた。詳細を細部まで決めてから発表するのが同社の流儀だからだ。非中核とされた事業の扱いや賃金制度など具体的な肉付けはこれから。「どう変わるんや」。取引先の不安を代弁し、関西地盤の国会議員からも問い合わせが舞い込んだ。

「製造業でうまくいった会社はほとんどない」。津賀は持ち株会社化には懐疑的だった。だが新型コロナウイルス禍で米テスラと共同運営する米国の車載電池工場やマレーシアの主力家電工場が相次ぎ休止……。在宅勤務中に入る報告は深刻なものばかり。「うちは固定費が大きい。売り上げ減は利益を直撃する」。赤字転落も覚悟した。

コロナによる出張抑制など経費削減の効果は想定以上に出た。津賀は「普段の無駄が多いからだ」と憤る。事業部は34。自分たちが収益悪化しても他がカバーしてくれる。緊張感が欠如する事業部を、支出を気にしない高所得者層の家庭になぞらえ、「家計簿をつけていない」と役員会などで繰り返し注意を促した。

持ち株会社化の推進に心変わりした背景には19年5月に公表した経営方針への社外の失望もあった。「本当に成長できるのか」。空調や照明などを組み合わせ、快適な空間を提案する事業などを基幹事業に据える方針には厳しい声が相次いだ。方針策定の中心となったアナリスト出身で最高戦略責任者の片山栄一とともに批判にこたえる解を模索した。たどり着いたのが不採算事業を「見える化」し撤退と攻めを明確に判断できる持ち株会社化だった。

グループ幹部が議論を戦わせることから「G戦」と呼ばれるグループ戦略会議で、20年春から持ち株会社化を議題とした。「コロナで大変な時期にやることか」。担当事業を守りたい幹部間でも意見は割れた。業を煮やした津賀と片山は利害関係のない社外人材が約半分を占める取締役会に議論の場を移し退路を断った。これが津賀の後任人事とリンクする。

発表2週間前の10月30日夕、津賀は社内に悟られないようにウェブ会議システム「チームズ」で横浜市の事業所にいる楠見雄規を呼び出し、社長交代を告げた。「持ち株会社なら私はふさわしくない」と楠見は一瞬たじろいだ。現場にこだわるタイプだからだ。「今と同じスタンスでいい」。研究所の後輩でもある楠見に受諾を促した。以前から津賀の意中の人物とされる。「怖い」という社内評も「人に嫌われる決断ができる」と映る。

津賀はプラズマテレビなど不採算事業を整理する一方、日本マイクロソフト元社長の樋口泰行ら外部人材を登用し改革を進めた。だが投資を重ねた車載電池などは見合った利益を上げていない。時価総額はソニーの4分の1以下。交代会見では「収益を伴った成長は難しかった」と振り返った。

パナソニックは通例2月に次期社長を発表する。前年11月という異例の発表となった裏には津賀のじくじたる思いがある。「役員人事は事前に決まり、やるべき政策さえも同じだ」。12年、社長就任時に感じたのはやりにくさだった。前任者が敷いたレールの軌道修正に時間を割かれたが「今はそんな余裕はない」。現在、次期社長の楠見主導で事業会社のトップを含む人選が進む。

津賀は18年にも交代を模索していた。創業100周年を迎え、前任の大坪文雄、その前の中村邦夫も退いた在任6年に並んだ。18年3月期に久々の増収増益となり、周囲に退任意向を示したが慰留された。この後に業績は失速。好業績を花道にできなかった。「会社を変える」と公言してきた津賀は志を遂げる道半ばで退場する。

9年続いた「津賀改革」でも成長できなかったパナソニック。苦闘が続く姿に迫る。(敬称略)

ジョブ型を甘くみるな 人事・組織、根本から見直しを

ジョブ型を甘くみるな 人事・組織、根本から見直しを
編集委員 水野裕司
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『経団連は19日に公表した春季労使交渉の企業向け指針で、「ジョブ型」雇用制度の積極的な導入を呼びかけた。職務ごとに最適な人材を充てるこの制度は企業の競争力強化策として関心が高まってきたが、従来の人事や組織を根本から見直す必要があり、安易な導入は禁物だ。どうすればジョブ型雇用をうまく実践できるのだろうか。

Nikkei Views
編集委員が日々のニュースを取り上げ、独自の切り口で分析します。
ジョブ型制度は社内各ポストの職務内…

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ジョブ型制度は社内各ポストの職務内容を明確にし、その能力を持った人材を起用する。入社年次にとらわれず、有能な社員ほど難易度が高く待遇も良いポストに就くことができる。年功賃金や順送り人事を否定する人事処遇制度だ。

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肝は、社員間の競争を活発にする点にある。専門的な知識や技能が必要で報酬も高い職務に就くには、自らの能力を向上させなければならない。ポスト獲得競争を通じて個々人のレベルを引き上げ、企業の成長力を高めることがジョブ型制度の眼目だ。

高い賃金に見合った成果が出せていない中高年社員の人件費抑制策――ジョブ型雇用をそうとらえるだけでは、本質を見誤る。組織・人事コンサルティング大手マーサージャパンの白井正人取締役は、企業に求められるのは「社員個人の自律的なキャリア形成を促すこと」だと話す。

社員が就きたいポストに立候補できる仕組みがなければ、自らの能力を伸ばそうという意欲も高まりにくい。自分のキャリアを自分で切り開けるようにする手立てのひとつは、ポストの公募制だ。

2020年10月、全管理職約5千人にジョブ型の人事制度を導入した三菱ケミカルは、まず約200のポストの人事を社内公募で決めることにした。今後、公募対象のポストを広げる。3カ月ごとに公募を実施するという。

デジタル化とグローバル化が進み、経営環境の変化は激しさを増している。コロナ禍の収束が見通せず、世界経済の先行きは混沌としてきた。企業は環境変化に合わせて経営戦略や事業モデルを柔軟に変えていく必要がある。管理職も専門性やマネジメント能力を高め続けなければならず、公募制はそれを後押しする。

公募制は会社主導の人事異動の軌道修正を迫る。社員が雇用保障と引き換えに異動や転勤の命令に従ってきた日本型雇用の転機ともいえる。会社と社員の関係にもジョブ型雇用は変化をもたらしそうだ。

他部署の仕事を経験できる「社内副業」も、社員のキャリア形成を支援する仕掛けになる。

ジョブ型人事制度を21年から本格導入するKDDIは、社内公募制に加え就業時間の約2割を目安に所属部署以外の業務ができる社内副業制度を設けた。持ち場以外の仕事を実際に経験することは、キャリア形成上、いい刺激になる。

経団連は新卒入社者もジョブ型制度の対象とするよう求めている。KDDIはまだ少ない例のひとつだ。21年4月に入社する新卒者約270人の約4割は「ジョブ型採用」1期生。データサイエンス、法務、会計など、配属する業務を約束して採用した。

「若い社員ほど新たな挑戦がしやすく、異なる分野へ仕事の幅を広げやすい。ジョブ型は若手を対象にしてこそ意味がある」(白井氏)。日本企業のジョブ型導入は現在、管理職が中心。幅広い年齢層への展開が課題だ。

権限移譲もジョブ型雇用では求められる。ジョブ型が定着した欧米企業では、各部署のリーダーの重要な役割は組織の力を最大化できる「ベストチーム」をつくることだ。トップの方針に沿って組織の目標を立て、その達成に貢献できる人材を集める。人材の採用権限は各組織にある。

ジョブ型制度を管理職から拡大する計画の富士通は、採用権限を順次、各事業部門に移していく考えだ。事業戦略をもとに、新卒・中途とも通年で各部門が採用する。人事部が一括して調達し、社内に割り振ってきた日本企業の採用は、ジョブ型の浸透とともに変わらざるを得ない。

ジョブ型雇用は本来、社外からも多様な経験を持った人材を集め、環境変化への対応力を高めるための制度だ。日立製作所が全社的なジョブ型制度の導入を急ぐのも、デジタル化が急速ななかで企業が成長するには人材の流動性の向上が不可欠と判断したからだ。技術革新やグローバル競争の最前線にいる企業ほど、ジョブ型雇用は適している。

改革が社内で実力主義を徹底するといった狙いからなら、あえて労力のかかるジョブ型を導入しなくても道はある。「目標管理制度をしっかり機能させ、仕事内容と賃金をきっちり連動させれば、課題を解決できる企業が多いのではないか」とリクルートワークス研究所の中村天江主任研究員は指摘する。どんな雇用制度を採るべきかは目的によって異なってくる。何のための雇用制度改革か、明確にすることが先決だ。

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野崎浩成
東洋大学 国際学部教授
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別の視点 現在多くの日本企業が抱える問題の本質は、雇用形態の問題ではなく、人事制度の根幹の問題ではないでしょうか。

昇格はさておき、昇進と人事評価を結びつけることが年次管理であったり、マネジメント能力の欠如する上席者を作ってしまいます。

管理能力と仕事の評価を分けて、前者とポスト、後者と報酬を結び付ければ、よりシンプルにインセンティブ設計ができると思います。
2021年1月20日 14:01いいね
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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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別の視点 ジョブ型の雇用が定着することになれば、大学などのキャリア前の教育の在り方も変わっていく。学生はより即戦力としての能力をつけられるような学部や大学院に集中し、教養的な学問は敬遠される可能性はある。若手のうちにジョブ型のキャリアを積んでいくとなると、将来管理職の地位に上がっていくにつれ、そうした教養や視野の広さが必要になった時に、そうしたバックグラウンドがないまま狭隘な実学的世界でしかものを見られない人材になってしまう。その意味でも大学教育では視野を広げるような学問をしっかりと教え、新卒学生だけでなく、管理職になっていく人たちのための学問も考えていかなければならないかもしれない。
2021年1月20日 13:54いいね
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石塚由紀夫
日本経済新聞社 編集委員
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ひとこと解説 ジョブ型雇用は企業の競争力を削ぐ――本場欧米では、こんな見方も広がっています。
生産性向上には新技術導入や業務プロセス合理化などが必須です。ただジョブ型雇用だと、こうした生産性向上策は自分の仕事の削減・消滅につながるため、当事者は技術革新に消極的な行動を取りがちだという指摘です。
日本型のメンバーシップ型雇用であれば、目先の仕事がなくなっても社内でジョブチェンジできます。そのため雇用者も経営効率化を最優先し、最善の生産性向上策を導入できました。
いずれにせよジョブ型雇用の課題は出口戦略。辞めてもらうか、ほかのジョブに就け替えるか。今、安易にジョブ型雇用を導入しても将来に禍根を残します。
2021年1月20日 12:39いいね
32

山本康正のアバター
山本康正
DNX Ventures インダストリーパートナー
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別の視点 サッカーなどのスポーツの強豪で、年次でチームメンバーを決めることはあるでしょうか。まずないと思います。攻めのプロは攻めのプロ、守りは守りのプロがいると思います。これまでの考え方はゴールキーパーをさせて、フォワードをさせてと主要なポジションを経験させてから社長というキャリアパスだったと思いますが、今の時代は違うと思います。更に言うと、データの活用によってビジネスモデル自体が変動しているため、サッカーから突然ラグビーにスポーツのルールが突然変わっている様な状態です。チームメンバーを社内補充だけではまず負ける可能性が高いです。同窓会組織の活用など、あの手この手で外の知見も取り込まなければなりません。
2021年1月20日 11:38 (2021年1月20日 11:40更新)
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電通、本社ビル売却検討 国内最大級の3000億円規模

電通、本社ビル売却検討 国内最大級の3000億円規模
コロナ禍でオフィス改革広がる
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD184X60Y1A110C2000000

『電通グループが東京都港区の本社ビルを売却する検討に入った。売却額は国内の不動産取引として過去最大級の3000億円規模になるとみられる。新型コロナウイルスの感染拡大でリモートワークが主体となるなか、オフィス環境を変え、売却資金を事業構造改革や成長投資に充てる。コロナ禍を受け、企業の不動産戦略の見直しが広がってきた。

【関連記事】

電通が6000人弱削減 海外事業の12.5%
エイベックス、本社ビル売却へ 700億円でファンドに
売却を検討するのは「電通本社ビル」(東京・港)。地上48階建て、高さ約210メートルの超高層ビル…

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・地上48階建て、高さ約210メートルの超高層ビルで、低層部には商業施設「カレッタ汐留」がある。旧国鉄・汐留貨物駅跡地の再開発により2002年に完成した。1月中にも優先交渉先を選び、本格交渉に入るもよう。

・ビル売却後も大部分をグループで賃借し、本社は移転しない方針。現在、ビルの約7割を利用している国内事業会社、電通のオフィス利用面積は半分程度に圧縮されるもようだ。電通グループはコロナ拡大後の20年2月以降、同ビルのグループ社員約9000人超がリモートワークを実施する。出社率は足元で最大2割程度にとどまり、余剰スペースが生まれている。リモートワーク推進に向けサテライトオフィス設置も進めている。資産を効率化する狙いもある。

・金融機関や不動産会社、投資ファンドなどが買い手候補に挙がっている。同ビルは当面安定した賃料収入が見込めるほか、東京都心の好立地にあり、今後電通がオフィス面積を減らしたとしても一定の入居ニーズがあるとみているようだ。

・不動産サービス大手JLLによると、国内のこれまでのビル取引額は2006年に国内不動産ファンドのダヴィンチ・アドバイザーズが香港の複合企業パシフィックセンチュリーグループから取得した大型オフィスビル「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」(東京・千代田)の約2000億円が最大だった。今回の取引がこれを超える公算が大きい。複数物件の一括取引を含めても、過去最大だった20年の米投資ファンド、ブラックストーン・グループによる全国賃貸マンション約220棟購入の約3000億円と並ぶ水準になる可能性がある。

・企業が不動産を売却する動きは広がっている。エイベックスは20年末、本社が入る「エイベックスビル」(東京・港)を売却すると発表した。買い手はカナダ拠点の不動産ファンド、ベントール・グリーンオークで、金額は約720億円とみられる。コロナ禍でイベントが開けないなど収益が悪化しており、資産を現金化して財務を強化する。リモートワークが定着し、都心に大型オフィスを構える必要が薄れたことも売却につながった。ここ数年の不動産相場の上昇を受け、売却益を計上しやすくなっていることも大きい。

・企業統治改革を受け、本業と関係の薄い資産の見直しが進んでいることも大きい。日本たばこ産業(JT)は20年に東京・虎ノ門の「JTビル」(東京・港)を住友不動産に売却した。本社を近隣の「神谷町トラストタワー」(同)に移転するのに伴い、19年から売却手続きを進めていた。

・企業が売却する不動産の受け皿となっているのが、主に外資系ファンドなどの機関投資家だ。低金利による運用難で、相対的に高い利回りが見込める不動産に投資マネーが流れ込んでいる。コロナ禍を受けた金融緩和で低金利が長期化する見込みとなり、機関投資家による不動産買いは今後、一段と活発になる可能性がある。

テレワークで勤務多様に 富士通は遠隔地の居住解禁

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ241XG0U0A221C2000000

『新型コロナウイルス感染拡大で、テレワークを前提とした多様な働き方が広がっている。富士通は配属地以外での遠隔勤務を認め、単身赴任の解消につなげる。ソフトウエアのテストを手掛けるSHIFTは在宅専門のエンジニア採用を始めた。休暇先で業務を行うワーケーション制度を導入する企業も増えている。テレワーク助成なども広がり、暮らし方や場所の制限を受けない全員参加型の働き方が可能になってきた。

内閣府が2020年12月…

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内閣府が2020年12月に全国約1万人を対象に実施した調査では国内のテレワーク実施率は21.5%と19年12月調査(10.3%)の2倍。東京23区内の実施率も同2.4倍の42.8%と、テレワーク普及が進む。

【関連記事】
通信費、半額非課税に 社員のテレワーク補助で政府指針
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富士通はこのほど、遠隔勤務を認めた。親の介護や配偶者の事情で遠隔地に移住せざるを得ず退社するケースがあった。人材を引き留めるためにも部署やポストも変わらず、テレワークで仕事を継続できるようにした。東京都内の本社に所属しながら奈良県や福岡県から働く社員もいる。

約4千人いる単身赴任者も本人が希望すれば家族がいる場所に戻り、遠隔勤務に切り替えられるようにもする。富士通はオフィス出社は最大25%に抑えている。国内グループ会社を含めたオフィス面積を約3年で半減する作業も進めている。

日本でも共働きの一般化で配偶者の転勤に伴う帯同は難しくなっている。夫婦がそれぞれのキャリアを継続するため片方が単身赴任を選ぶケースは多い。

水処理大手のメタウォーターも20年夏、テレワークを活用することで単身赴任を解除する仕組みを導入。すでに約10人が単身赴任を外れ、帰任した。カルビーも所属部門が認めた場合の単身赴任の解消を決めた。

テレワークは欧米に比べて遅れていた「ワーケーション」の普及も後押ししそうだ。日本航空(JAL)は20年4~12月に延べ688人が利用した。働く動機を高める効果を期待して、顧客情報管理の米セールスフォース・ドットコムの日本法人は和歌山県白浜町にある施設でワーケーションを認めている。

テレワークは企業の拠点が少ない地方に住む人々の働く機会の拡大にもつながる。SHIFTは居住地を問わないテレワーク専門職の採用を始めている。SHIFTがオフィスを持たない広島県で業務に従事している社員がいるという。

テレワークで副業の機会を得る人も多い。地方企業に対してネット経由で副業人材を仲介するJOINS(東京・千代田)では、20年12月末時点で専用サイトに登録する副業希望者は約5千人となり、同1月比で4倍に増えた。中小企業のホームページ制作を支援するITエンジニアなどの登録が増えており、「在宅勤務の浸透で、本業との両立が可能になったことが大きい」(同社)。

クリックするとビジュアルデータへ https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-workstyle/

少子高齢化の加速で国内の労働力人口は減少が続く。パーソル総合研究所(東京・千代田)と中央大学は、30年時点で労働需要が労働供給を644万人上回ると予測する。場所を選ばないテレワークが普及すれば、女性や高齢者などの労働参加も高め、中長期的な日本の労働力不足を緩和する効果も期待できる。

通信費、半額非課税に 社員のテレワーク補助で政府指針

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF145610U1A110C2000000

『新型コロナウイルスの感染拡大を機に企業が在宅勤務といった新しい働き方に対応したルールの整備を進めている。キリンホールディングスなどは従業員に手当を支給し在宅勤務への移行を促す。政府もこうした働き方の定着をにらみ税制面の対応を急ぐ。通信費の半額はテレワークに使用したとして所得税の課税対象にしないなど課税基準を明確にする。

新型コロナの感染拡大で2020年春に在宅勤務が広がり始めて以降、企業では在宅にともなう社員の負担を軽…

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・新型コロナの感染拡大で2020年春に在宅勤務が広がり始めて以降、企業では在宅にともなう社員の負担を軽減する動きが広がっている。社員向けのルールの変更で目立つのは手当の見直しだ。

・キリンホールディングスは工場勤務以外で週3日以上、在宅で勤務する社員約4000人を対象に月3000円の手当の支給を始めた。事後精算で定期代を支払う仕組みをやめ、出社時などの交通費を実費精算する形に変えた。同様の制度は富士通やソフトバンクなども導入している。

・中小企業でも動きが出ている。プログラミング教育のキラメックス(東京・渋谷)はパソコンを在宅勤務で利用する場合の通信費を会社で負担する。

・従来にない手当の支給では企業にとって税務処理が複雑になりかねない問題がある。特にテレワークの補助に関する税制は、どこまでが課税対象になるかが曖昧だった。財務省と国税庁は在宅勤務の普及の流れを維持するため対応が必要と判断。15日に国税庁が新たな指針を公表する。

・企業が従業員向けにスマートフォンやWi-Fiなどの通信費を補助する場合、実際に使う分の実費相当以外は給与とみなされ、所得税の課税対象になる。明細がある通話料と異なり、通信費は家庭用と仕事用の区別が難しい。企業からは源泉徴収の事務負担が増える懸念があり、目安を示してほしいとの要望が多かった。

・国税庁の指針では、在宅勤務をした日数分の通信費のうち、2分の1は仕事で使ったものと認める。残りは私用などとみなす。月30日のうち半分の15日を在宅で勤務すれば、通信費全体の4分の1が非課税となる。電気料金も目安を示し、業務で使った自宅の部屋の床面積などで水準が決まる仕組みにする。

・今年1月分の税額の計算から適用できる見通しで、企業の担当者は交通費などの補助と同様に税務処理を進めやすくなる。国が明確な目安を示すことで、より多くの企業が補助の導入に動く効果も期待できる。

・政府はこれまで11都府県に緊急事態宣言を発令した。感染防止で人の接触を減らすには夜の飲食の制限とともに会社員の出勤を減らすことがカギを握る。政府は出勤者数の7割削減を目標として在宅勤務を広げるよう企業に求めている。

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自宅をオフィスにして籠城 在宅勤務の費用は誰が?
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来年度予算案決定、最大の106.6兆円 コロナ予備費5兆円

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF187LH0Y0A211C2000000

『政府は21日の閣議で一般会計総額106兆6097億円の2021年度予算案を決定した。当初予算としては20年度より3.8%増え、3年連続で100兆円を突破した。新型コロナウイルス対策の予備費を5兆円積んだほか、社会保障や防衛の費用は過去最大を更新する。税収見積もりは11年ぶりに減少し、歳入の4割を借金に依存する財政構造になる。

15日に決定した20年度第3次補正予算案と一体で編成し「15カ月予算」と位置づけた。21年1月召集の通常国会に関連法案とともに提出する。当初予算の歳出総額は9年連続で過去最大を更新した。

予備費はコロナ対策で5兆円を災害などに備える通常分5000億円とは別に積む。感染防止に向け保健所や国立感染症研究所の体制を強化する。菅義偉政権の看板政策では21年9月にデジタル庁を設置し、官民の高度専門人材500人規模の体制をつくる。

総額の3割超を占める社会保障費は20年度当初に比べ0.3%増の35兆8421億円に達する。医療や介護などの高齢化に伴う自然増は4800億円と見込む。薬価改定で1000億円抑制し、実質的な伸びは3500億円にとどめた。介護報酬の改定率を0.7%増とするほか、待機児童の解消に向け保育の受け皿を整備する。

公共事業費は6兆695億円。20年度当初に消費増税対策の「臨時・特別の措置」として7900億円ほどを計上した反動で見かけ上は減る。今後5年間で事業規模15兆円の「国土強靱(きょうじん)化」計画として20年度第3次補正に1.6兆円を計上し、大部分を21年度に繰り越す。実質的な規模はほぼ同じ水準を維持する。

米軍再編関係などを含む防衛費は0.5%増の5兆3422億円で、7年連続で過去最高を更新した。中国や北朝鮮の軍事力向上に対処するため新型ミサイルの開発を強化する。文教・科学振興費は2%減の5兆3969億円になる。小学校で35人以下学級の導入を始める。

地方交付税交付金などの一般会計からの支出は15兆9489億円。特別会計からの拠出金を含めた配分ベースの交付税は17.4兆円と5%ほど増やし、地方税収が減る自治体に配慮する。

歳入については、税収が当初比で9.5%減の57兆4480億円を見積もる。企業業績の低迷で法人税などが落ち込む。20年度は当初の63.5兆円から第3次補正後に55.1兆円まで下方修正している。新規国債の発行額は当初ベースで11年ぶりに増え43兆5970億円に上る。赤字国債が37兆2560億円を占める。税外収入は15.5%減の5兆5647億円になる。

借金に頼らずにどれだけ政策経費を賄えるかを示す国の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は20兆3617億円の赤字で、20年度当初の2.1倍に膨らむ。21年度末に普通国債残高は990兆円になる見込みで過去最大になる。』

「だから私はテレワークしない」 普及を阻む3大理由

「だから私はテレワークしない」 普及を阻む3大理由
テレワーク成功の勘所(24)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFK141JS0U0A211C2000000

『2020年は「テレワーク元年」ともいえる年だった。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的で多くの企業が在宅勤務の活用に乗り出した。一方でいまだテレワークを拒む人もいる。その理由を独自調査で探ってみると、在宅勤務の普及を阻む要素がみえてきた。

【前回記事】

テレワーク効率低い40~50代 若手は冷ややかな目
調査は日経BP総合研究所イノベーションICTラボが日経BPのデジタルメディアの読者・会員を対象にウェブサイトを通じて20年10月に実施した。「直近1カ月において、あなたはテレワークを利用して職場(派遣・常駐先を含む)以外でどの程度働きましたか」と聞き、テレワークをしていないと答えた人にその理由を尋ねた(複数回答可)。

IT整備はそれなりに進んだが、制度の整備が遅れている

「直近1カ月において、あなたはテレワークを利用して職場(派遣・常駐先を含む)以外でどの程度働きましたか」との質問に「利用していないが、今後利用する予定」もしくは「テレワーク可能な仕事であるが、テレワークを利用していないし、今後も利用する予定はない」と答えた人の回答を集計した(出所:日経BP総合研究所イノベーションICTラボ)
利用しない理由の首位は「勤務先(または派遣・常駐先)がテレワーク制度を導入していないから」で37.3%の人が挙げた。ノートパソコンやウェブ会議ツールなどIT(情報技術)インフラの導入に比べて、制度面での対応が後手に回る企業が少なくないようだ。

自由意見には次のような声があった。「会社として形だけのテレワークに終始しているように思う。会社の就業規則や業務のシステム化などに課題がある」(製造、係長・主任クラス)

2位は「出社することでON/OFFを区分し、心身を仕事モードに切り替えたいから」で32.2%だった。3位は「同僚(上司や部下を含む)や取引先、顧客と直接対話したいから」で25.4%の人が選んだ。

4月比で増えた「心身を切り替えたい」
ここで日経BP総研が書籍「テレワーク大全」の発行に向けて4月に実施したテレワークの調査結果と比べてみたい。緊急事態宣言直後に実施した4月調査でも同じ設問を聞いているので、回答別の割合をグラフにまとめた。

テレワークしない理由についての回答で、4月調査と比べて最も増えたのは「出社することでON/OFFを区分し、心身を仕事モードに切り替えたいから」だった。同回答を選んだ人の割合は23.5ポイントも増加した。2位は「同僚(上司や部下を含む)や取引先、顧客と直接対話したいから」(17.5ポイント増)だった。

4月に緊急事態宣言が出されてから半年以上、テレワークを継続してみた本音として、気持ちの切り替えや同僚とのコミュニケーションに課題を感じる人はいるだろう。

自由意見でも「テレワークは移動時間が減るなど効率的な面があるが、仕事とそれ以外の時間の切り替えが難しく、微妙なコミュニケーションが取りづらいために仲間意識が育ちにくい」(IT・通信、専門職)、「テレワーク勤務によるコミュニケーションの希薄化が懸念される」(コンサルティング・調査、課長クラス)などの書き込みがあった。

4月比で選んだ人の割合が増えた回答の3位は「テレワークに適した環境が自宅にないから」で11.7ポイント増だった。4位の「テレワークを利用すると生産性が下がる・下がりそうだから」(10.9ポイント増)までが、4月比で10ポイント以上増えた。

テレワークをしてみたけれど成果が上がらなかったのでオフィスに回帰する、という人も少なからずいるだろう。直近1カ月はテレワークを利用していないと回答した、建設業の役員は「コロナ影響の低下がうかがえるので」と自由意見を述べた。

IT環境は半年で改善
この半年強で改善が進んだ要素もある。4月調査に比べて「利用しない理由」に選んだ人の割合が下がった要素の首位は「勤務先(または派遣・常駐先)がテレワークに必要なITシステム・インフラを整えていないから」だった。23.8ポイントも減った。

2位は「職場(または派遣・常駐先)で扱う帳票や文書の電子化が進んでいないから」(4月比12.4ポイント減)、3位は「情報セキュリティーの確保に不安があるから」(同4.9ポイント減)だった。日本企業におけるIT面でのテレワーク対応はそれなりに進んだようだ。

一方で専用機器などを使う仕事などは、テレワークを活用するのは難しい。「CAD(コンピューターによる設計)システムなどの導入が難しい」(コンサルティング、部長クラス)というコメントは、その通りだろう。

「テレワークに適さない業務を担当している」と答えた人に具体的な業務を回答してもらった。列挙してみると次の通りである。

建設などの現場作業、現場監督/管理、営業、システムなどの運用、現場検査/検査関連、発送業務、病院勤務、経営企画、人事総務、人工衛星の運用業務、自営業、農業――。

20年の時点では「確かにテレワークは難しそうだ」と感じる仕事が並んでいる。だが今後デジタル技術の進化により、これらの業務をこなす人でも遠隔勤務がしやすくなる時代が到来する可能性は十分にある。

「100年後には『昔は電車に乗って、オフィスという共有スペースに人が集まって仕事をしていたんですよ』と言っている気がします」(IT・通信、派遣・契約社員)。調査にはこんな自由意見も寄せられた。

新型コロナの問題も残念ながら収束にはもう少し時間がかかりそうだ。21年もテレワークを活用するシーンは少なくないだろう。この状況を好機ととらえ、新しい働き方を追究し、確立できる企業だけがニューノーマル(新常態)の時代を勝ち抜ける。

(日経BP総合研究所イノベーションICTラボ上席研究員 大和田尚孝)

【テレワーク成功の勘所 記事一覧】
・ハンコは命より大切か テレワークで「長期戦」に備え https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59521250V20C20A5000000/?n_cid=DSREA001
・生産性「下がった」6割超 間違いだらけのウェブ会議 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59586800W0A520C2000000/?n_cid=DSREA001
・テレワーク成功に導く就業規則見直し 3つのポイント https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59811700R00C20A6000000/?n_cid=DSREA001
・経営者がテレワーク阻害 「日立ショック」で変わるか https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59980920U0A600C2000000/?n_cid=DSREA001
・派遣社員にも臨時手当 IT企業が異色のテレワーク https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60243070R10C20A6000000/?n_cid=DSREA001
・「在宅勤務率」の落とし穴 社員に不便を強いるだけ? https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60484140Y0A610C2000000/?n_cid=DSREA001
・テレワークで銀行システム統合 「3密」開発変わるか https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60680570T20C20A6000000/?n_cid=DSREA001
・コロナ死ゼロ「ベトナムの奇跡」支えたデジタル活用 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61118730T00C20A7000000/?n_cid=DSREA001
・富士通が目指すDX伝道師 テレワーク起点に全社改革 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61282670Y0A700C2000000/?n_cid=DSREA001
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・ウェブ会議の表示が遅れる 犯人は誰だ https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61845310S0A720C2000000/?n_cid=DSREA001
・ウェブ会議「私だけ遅い」 社内の怪奇現象の正体 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62034030Z20C20A7000000/?n_cid=DSREA001
・テレワークを阻む自宅ネット回線 いま見直すポイント https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62364920W0A800C2000000/?n_cid=DSREA001
・効率悪い日本のテレワーク IT投資とリテラシー不足 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62966690U0A820C2000000/?n_cid=DSREA001
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・ソフトバンクG急回復 孫氏、Zoom越しの目利き力 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66043310Q0A111C2000000/?n_cid=DSREA001
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