民主主義、世界人口の3割未満に 新興国が離反
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16DIW0W2A910C2000000/
※ まあ、「この状況」で、曲がりなりにも「民主的な社会・政治体制」を保持して、機能させている国は、よほど「恵まれている」か、「余力を蓄えていた」、ということだろう…。
※ そういう意味じゃ、「民主主義」というものは、極めて「贅沢な」しろものだ…、ということもできるな…。
※ 昔から、「恒産無ければ恒心無し」とか、「貧すれば鈍する」とかよく言った…。
※ ある程度の「貯え」が無ければ、「危機を乗り切ること」もできない…。


『【ニューヨーク=吉田圭織】米ニューヨークで開催中の国連総会は3年ぶりの対面開催となったが、国連改革など具体的な成果は見えないままだ。混迷の背景には強権国家の攻勢に加え、民主主義の劣化とそれに失望した新興国の離反がある。
世界の10人に7人が強権国家に住み、民主主義はいまや3人未満――。英オックスフォード大の研究者らが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」の調査でこんな傾向がわかった。
権威主義の台頭で、民主主義国家に住む人口はこの10年間で2割以上も減った。いまでは全体の29.3%と、強権派の70.7%の半分に満たない少数派に転じた。
スウェーデンの民主主義・選挙支援国際研究所(IDEA)によると、16年以降、ジンバブエやベネズエラなど20カ国が権威主義に変わった。民主化した国の3倍のペースで増え続けており「こうした傾向は(冷戦全盛期の)1975年以来だ」という。
9月の国連総会の一般討論演説では、欧米首脳から民主主義の「退潮」に懸念が相次いだ。
「欧州連合(EU)の仲間に、今後は中南米やアフリカに積極的に関わるよう呼びかけた」。EUの外相にあたるボレル外交安全保障上級代表は9月24日、危機感をあらわにした。「我々はナラティブ(物語)の戦いに挑まなければいけない」
歴史的、文化的な背景からいかに自陣営が正しく、敵対勢力が間違っているかを説く。これがいま、国際外交の場で注目を集めるナラティブだ。国際世論を動かす力となり、ときに侵略や虐殺をも正当化してしまう。
ナラティブに力を入れるのがロシアや中国など強権国家。欧米の植民地支配を受けてきたアフリカ諸国に、ロシアは旧ソ連時代から独立を支援した経緯を訴える。欧米勢は「自分たちが正しいと思い込み、他国を説得すらしない」(ボレル氏)
国連投票の結果でも民主主義陣営は押され気味だ。3月にはウクライナに侵攻したロシアを非難する決議に、加盟193カ国中141カ国が賛成した。しかし9月のウクライナによるビデオ演説を認める決議では賛成が101カ国にまで減った。とりわけアフリカ勢の「造反」が顕著だ。
米欧日はウクライナ支援は「民主主義を守る戦い」と強調するが、新興国には響いていない。新型コロナウイルスの大流行で、先進国が自国優先でワクチンを買い占め、新興国に配慮しなかったことも一因だ。
「13億人以上が住むアフリカは数百年にわたって植民地支配や搾取、軽視、そして開発不足を経験してきた」。南アフリカのパンドール外相は9月21日の演説で強調した。欧米に対する根強い不満にロシアや中国のナラティブが重なり、新興国の心は離れつつある。
肝心の米国や欧州で民主主義が後退している影響も大きい。英誌エコノミストの調査部門による世界の民主主義ランキングで、10年に19位だった米国は21年には25位にまで後退した。トランプ前政権が発足して以来深まった米社会の分断は「民主主義の失敗」として世界に失望を広げている。
豊かで自由な米欧日は世界の憧れの対象だったが、中国の台頭で大きく変わりつつある。開発独裁型の経済成長に加え、ハイテク監視など自国統治の優位性を誇り、中国モデルを支持する新興国が相次ぐ。民主陣営と強権国家との間で独自色を出そうと動く、トルコやインドといった第三勢力も増えている。
今回の国連総会で米欧日は安全保障理事会の拡大や拒否権の理由を求める新ルールの導入を訴えるが、実現には国際社会の理解が欠かせない。米欧日が自らの民主主義を鍛え直すことができなければ、国連の漂流も続きそうだ。
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川島真
東京大学大学院総合文化研究科 教授
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別の視点
民主主義が大きく後退していることは確かだが、果たして中国モデルが新興国や開発途上国から支持されているのかは疑問だ。
中国は確かにデジタル建設を推進し、監視システムを開発途上国などに提供する。ただ、それは中国型の社会主義輸出でも、党国体制輸出でもない。
ただ、経済発展し、治安も良く社会が安定しているように見えるものの、政治的、社会的人権が限定される状態が中国モデルだというなら、新興国それぞれが類似した形態を持つといえるかもしれない。
だが、それも相当に多様だろう。民主主義か専制か、というが、「専制」とされるものも相当に多様だ。そして民主主義も同様だろう。二分法ではなく多様性や広がりにも留意したい。
2022年10月1日 6:37』