デンジャー・ゾーン(仮) 迫る中国との戦争

デンジャー・ゾーン(仮) 迫る中国との戦争
ハル・ブランズ 、 マイケル・ベックリー 、 奥山真司
https://tower.jp/item/5575592/%E3%83%87%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3(%E4%BB%AE)-%E8%BF%AB%E3%82%8B%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%A8%E3%81%AE%E6%88%A6%E4%BA%89

 ※ オレのサイトで、この「ハル・ブランズ」で検索してた人がいた…。

 ※ ググったら、この本にヒットした…。

 ※ 参考になりそうなんで(奥山真司さん完訳の、「地政学 ー地理と戦略ー」というkindle本を、買って読んだ。けっこう、参考になった)、発売日の前のようだが、紹介しておく。

『フォーマット

書籍

構成数

1

国内/輸入

国内

パッケージ仕様

発売日

2022年12月26日

規格品番

レーベル

飛鳥新社

ISBN

9784864109291

版型

46

ページ数

288』

『「2025年台湾戦争」を警告した2022年8月刊の話題書、第一人者による邦訳決定!

・ピークを迎えた大国が陥る罠!

中国の国力は今が絶頂で、台湾を武力で併合するチャンスはしだいに失われていく。
「ドアが閉じる前に」行動しないと間に合わない、という焦りと誘惑。
習近平中国は第一次大戦のドイツ、真珠湾攻撃の日本と同じ道を歩む?

・ピークを越えた(今後の衰退を悟った)大国が最も攻撃的になる

・米中対立と紛争の可能性はこれからの直近5年間がもっとも危ない。
「トゥキディデスの罠」「100年マラソン」をくつがえす警鐘作
ベストセラー『米中もし戦わば』(ナヴァロ)『China2049』(ピルズベリー)『米中開戦前夜』(アリソン)を越える衝撃作!

・英エコノミスト誌、日経新聞、日経ビジネス、現代ビジネス、サウスチャイナモーニングポスト紙など続々紹介!』…、というものらしい…。

[FT]ドイツ製兵器、東欧への供与進まず ロシアに配慮か

[FT]ドイツ製兵器、東欧への供与進まず ロシアに配慮か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB2926J0Z20C22A7000000/

『ドイツと東欧の同盟国が編み出したウクライナ支援計画は、当初は妙案に思えた。ポーランドなどの国が旧ソ連製の戦車をウクライナに供与する見返りに、ドイツが西側製の装備を補充するという計画だった。
ドイツからポーランドへの戦車などの武器供与は公約通りに進んでいない=ロイター

だが、結束の価値を示し、ウクライナが必要としているすぐに使える武器を速やかに供与するこの構想は、約束が果たされていないと同盟国が非難し合う争いの種になっている。

ドイツにとって、この構想はウクライナに戦車や装甲車両を直接供与し、ロシアをむやみに挑発するのを避ける狙いがあった。ドイツは今週、ポーランド、スロベニア、スロバキア、ギリシャ、チェコと長期にわたり協議しているにもかかわらず、まだどの国とも契約締結に至っていないと認めた。

ポーランドとはこれを機に関係が悪化する恐れがある。ポーランド政府はウクライナに旧ソ連製戦車T72を240両供与し、ドイツから戦車レオパルトを補充してもらえると期待していた。だが、ドイツはまだ20両しか提供していない。

ポーランドは代替戦車を調達するため、米国と韓国に目を向けている。ドイツ当局筋は「ポーランド政府との合意は基本的に機能していない」と明かした。

こうした状況を受け、ドイツの野党は怒りをあらわにしている。キリスト教民主同盟(CDU)所属の連邦議会議員で、独連邦軍大佐だったローデリヒ・キーゼベッター氏は「ドイツは長年築き上げてきた信頼をみすみす失いつつある」と非難した。
ドイツ野党からも怒りの声

ドイツ政府は同盟国やウクライナを裏切ったとの批判を退けている。今週、ウクライナ政府からゲパルト対空戦車15両のうちの3両、多連装ロケットシステム「MARS」3基、自走式りゅう弾砲「パンツァーハウビッツェ(PzH)」3門が届いたと連絡があったと説明した。ドイツ政府は6月にもPzH7門を供与している。一方、PzH2000を製造する独防衛機器大手クラウス・マッファイ・ベクマン(KMW)に対し、ウクライナ政府にPzH2000を追加で100門供与することも認めた。総額17億ユーロ(約2300億円)相当に上る。

ドイツ当局筋は独連邦軍が地対空ミサイル「パトリオット」をスロバキアに配備したとも強調した。もっとも、これは供与したわけではない。スロバキア政府がウクライナに旧ソ連製の地対空ミサイルシステム「S300」1基を供与したことに対する措置だ。

だが、野党の怒りは収まっていない。野党は政府にウクライナへの重火器供与を義務付けた4月の連邦議会の決議を守っていないとして、ショルツ独首相を非難している。

CDUのメルツ党首は「国民と議会はだまされた」と憤る。「(ショルツ氏の)ウクライナ軍支援の発表は検証に耐えられない」と語気を強めた。

ドイツ当局は当初、武器移転の合意締結に自信を示していた。ショルツ氏は5月、ギリシャがウクライナに旧ソ連製の装甲兵員輸送車を供与し、ドイツがギリシャに代替車を補充すると明言した。だが、これは実行に移されていない。
関係者が多すぎるとの弁明

当局者らは3カ国の政府が関わる合意は複雑なため、妥結に至っていないと弁明する。ギリシャ政府の担当者は「関係者が多すぎて、何も実現しないだろう」との見方を示した。ドイツ政府の担当者も「1つの歯車が狂えば全体が機能しなくなる非常に複雑な作業だ」と語った。

ショルツ氏の広報官は25日、移転契約の締結を断念しない方針を示した。「一連の移転契約について相手国と緊密に連携している。協議は非常に建設的で、一部はかなり進展している」と述べた。

実際、ドイツのベーアボック外相は26日、チェコがT72数十両をウクライナに供与した代わりに、ドイツが自国の戦車をチェコに供与することで合意に近づいていることを明らかにした。

もっとも、ポーランドとの状況はこの構想の落とし穴を示している。ドイツとポーランドの国防相は4月、ドイツのラムシュタイン空軍基地で開かれたウクライナに関する国際会議で、武器移転に原則合意した。

だが、ポーランドのブワシュチャク国防相は今週、ポーランド誌「Sieci」とのインタビューで、ドイツからの供与はレオパルト2A4戦車20両にとどまっていることを示した。さらに「すぐに使えるような状態ではない。修理に1年かかるだろう」とも語った。
自国軍の増強に動くポーランド

ブワシュチャク氏は小規模部隊に配備できるよう供与する戦車を44両に増やすようドイツに要請したとも語った。だが、ドイツ政府はこれを断った。ドイツ当局筋は「実際には、連邦軍には供与できるほど多くの装備がない」と漏らす。

ドイツの消極姿勢を横目に、ポーランドは自国軍を増強し、ウクライナに供与した武器を補充する手段を探っている。7月に入り、米国から中古のエイブラムス戦車116両を調達すると発表したほか、27日には韓国と戦車1000両近く、大砲600門以上、戦闘機数十機を購入することで合意したともしている。韓国のK2戦車180両は年内に納入される。

だが、ポーランド政府はドイツに対する反撃に打って出ている。ポーランドのシモン・シンコフスキ・ベル・センク外務副大臣は7月、独誌シュピーゲルとのインタビューでドイツの約束は「詐欺」だったと批判した。

このコメントはロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、ポーランド政府によるドイツに対するとげを含んだ物言いの典型だ。近く退任するドイツのローリングホーフェン駐ポーランド大使は最近、ポーランド主要紙ジェチポスポリタに対し「ポーランド政府の意図を自問している」と吐露した。「ドイツをポーランドの強力な同盟国にしたいのか。それとも内部闘争の身代わりとして私たちを必要としているのか」と疑問を呈した。

それでもなお、武器移転合意を巡る論争により、東欧諸国の一部ではドイツのウクライナ支援は不十分で、約束の履行も遅いとの認識が明確になっている。

公営シンクタンク、ポーランド経済研究所のピョートル・アラック所長は、ドイツの対ウクライナ政策は「まさに言行不一致だ」と指摘する。ポーランドは「(ドイツは)戦争疲れに陥り、経済問題が本格化すれば対ロシア経済制裁を緩和し、ロシアとガス輸入の増加に向けて再び取引するのではないか」との疑念を示した。

By Guy Chazan and Raphael Minder

(2022年7月28日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.』

〔地政学(その6)〕

【人事部長の教養100冊】「歴史入門」F.ブローデル
https://jinjibuchou.com/%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E5%85%A5%E9%96%80

 ※ この人のことは、知らんかった…。

 ※ 地政学関係の文献、読んでて、出てきたんで、ちょっと調べた…。

 ※ 地政学の学者というよりも、「歴史学者」として有名な人らしい…。

『「歴史入門」
フェルナン・ブローデル

目次

基本情報
どんな本?
著者が伝えたいこと
著者
こんな人におすすめ
書評
要約・あらすじ
学びのポイント

基本情報

初版   1995年(日本)
※原書は1985年発行「資本主義のダイナミズム」
出版社  中央公論新社等
難易度  ★★☆☆☆
オススメ度★★★☆☆
ページ数 193ページ
所要時間 2時間00分
どんな本?

歴史を史実の羅列ではなく、3つの時間軸(地理的(長期)、社会的(中期)、個人的(短期))と3つの階層(日常生活、市場経済、資本主義)で捉え、歴史学に変革をもたらしたブローデルの入門書。

著者が伝えたいこと

歴史は、瞬く間に過ぎていく個人史及び出来事史という「短期」、ゆっくりとリズムを刻む社会史である「中期」、最も深層において、ほとんど動くことのない自然や環境、構造という「長期」があり、特に「長期」を重視すべきだ。

例えば産業革命も、それ単体で見るのではなく、その下層部にある日常の経済生活や市場経済、周辺部にある奴隷制や農奴制等の在り方など、産業革命に至る長期的流れと合わせて把握すべきである。

著者

フェルナン・ブローデル(1902 ? 1985)

ブローデル

フランスの「アナール学派*」を代表する歴史学者。 20世紀の最も重要な歴史学者の1人に数えられる。代表作は『物質文明・経済・資本主義』。

パリ大学卒業後,9年間アルジェリアのリセで教え,地中海地方に興味をいだいた。その後ブラジルのサンパウロ大学を経て,パリの実務高等研究学校の教授となる。

第2次世界大戦ではドイツ軍の捕虜となり,約5年間ドイツの収容所で暮した。その間,記憶から書上げた博士論文をもとにして著わした『フェリペ2世時代の地中海と地中海社会』 が代表作となった。 84年にはアカデミー・フランセーズの会員に選ばれている。

アナール学派・・・政治、外交、戦争中心だったそれまでの歴史学を批判し、気候や地形、農業、技術、交通、通信、社会グループ、精神構造なども含めた経済学・統計学・人類学・言語学等を横断する社会史の視点を尊重した一派。アナールは「年報」の意で、彼らが発刊した雑誌名から名付けられた。

こんな人におすすめ

歴史を俯瞰的に眺めてみたい人、アナール学派に関心のある人

書評

日本語版のタイトルは『歴史入門』だが、原題は『資本主義のダイナミズム』。歴史学というより、社会学や経済史に近い。

それほど難しいことは書いていないのでスラスラ読める。しかし、ブローデルの自著である『物質文明・経済・資本主義』を講演用に要約した内容となっているので、「ああ、資本主義の歴史を時系列でではなくて、構造的に把握しようとしているのだな」と大括りで理解できれば十分だろう。

歴史入門 (F・ブローデル)

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要約・あらすじ

第一章 物質生活と経済生活の再考

■歴史の根底には、人間の無意識の習慣・行動がある。例えばヨーロッパは地理的に小麦が適しており、家畜と結びついて肉食となって体格を増した。アメリカ大陸はトウモロコシを選んで余剰労働力で公共工事を促進した。

■ヨーロッパの市場経済は、14世紀のペスト流行からの回復期以降に発展した。15世紀には各地に市ができ、16世紀にはアントワープ等の国際的大市ができ、17~18世紀にはアムステルダムやロンドンが国際金融センターとして機能するようになる。

■ヨーロッパの経済は、取引所や信用形式といった道具と制度によって、他地域より発展していた。日本やマレー半島、イスラム世界もほぼ同様だが、自給自足的経済を続けた中国は大きく出遅れていた。

第2章 市場経済と資本主義

■人々が村で自給自足的に生活している段階を「物質生活(=日常生活)」と呼ぶなら、次の段階はそれらを交換することにより発生する「市場経済」である。

■小売業や卸売業といった市場経済の基礎部分は、取引が透明で、競争原理が働く。しかしその上に乗る資本の動きは、船主であれ保険業者であれ銀行家であれ、少数の者に握られていて、一般市民からは見えにくい。

■封建体制では、土地という富の源泉が次世代にも相続される、安定した秩序を保っていた。そして資本主義でも、商取引・高利貸し・遠隔地交易・行政上の役職等を通じ、何世代かにわたってゆっくりと領主階層の富がブルジョアに移転していった。

■しかし、この傾向が見られるのはヨーロッパと日本くらいである。例えば中国は国家が土地を所有して徴税し、経済を監視・統制していた。商人と官吏との腐敗はあったが、大きな力を持つには至らなかった。イスラム世界でも、土地は世襲ではなく、領主が死ねば、その土地と全財産はスルタンなり皇帝なりに戻された。

■つまり、資本主義の発展と繁栄には、社会秩序の安定性と、国家による経済への中立性という社会的条件が必要なのである。

第3章 世界時間

■歴史的に世界には「経済圏」が存在してきた。ローマ時代のローマとアレクサンドリア、14世紀のヴェネチアとジェノヴァ、18世紀のアムステルダムとロンドン、欧州外ではロシア、トルコ帝国、インド、マレー半島、中国などである。

■これらの「経済圏」が資本主義の母体となった。経済圏は常に経済力の強いところへ移動していく。ヨーロッパで経済圏が地中海から北海へ移動したのは、宗教の差でも、商才の差でもなく、単に北海近辺の商人が自分たちの粗悪品にヴェネチアの商標を付けて売りさばくような争いの結果に過ぎない。

■同時に、そのような経済圏の周辺には、奴隷制、農奴制といった前近代的な制度も併存していた。奴隷的労働が無ければ、資本主義は成り立たない。奴隷制→農奴制→資本主義と順番に出現してきたわけではない。

■イギリスで産業革命が起きたのは偶然ではない。まずその底辺には「日常生活」があった。技術革新の多くは職人が生んだものであるし、産業家も多くは下層階級だった。次に力強い生産と交換のプロセス、つまり市場経済があった。加えて、市場の拡大や労働力の確保等の条件が揃っていたのである。

学びのポイント

地理的時間軸(長期)

ヨーロッパが選択した小麦は、定期的に大地を休ませることを必要とし、家畜の飼育も必要とした。この結果ヨーロッパでは常に農業と家畜が結びつき、肉食の傾向を帯びることになった。

一方、米の栽培には動物の入り込む余地はなく、米作地域では肉食は少ない。トウモロコシは生産性が高く、アメリカ大陸の農民への強制労働を可能にした。(要約)

ブローデルが、歴史を見る上で必要とした3つの時間軸の一つ「地理的時間軸」に関する例示。直接的にではないにせよ、地域に拠る主食の違いが、その後の歴史に大きな影響を与えている可能性があるという内容。これは普通、歴史の教科書には書かれない。

最近ではアメリカの地理学者であり医学者ジャレド・ダイヤモンドが、著書『銃・病原菌・鉄』でこの点に着目し、民族や集団による権力の集中度合いや技術の差は、固有の遺伝的優位性によるものではなく、主に環境の差異に起因していると主張した。

マックス・ヴェーバーへの批判

歴史的に、キリスト教会は利付き貸出について反対の姿勢を貫いてきた。

マックス・ヴェーバーは、こうした資本主義に対する疑念は宗教改革によって初めて解消され、それが北ヨーロッパ諸国における資本主義の躍進に繋がったとするが、それはいささか短絡的であり、誤っている。

北ヨーロッパ諸国はただ、それ以前に、長きにわたって反映し続けてきた地中海沿岸の資本主義を引き継いだだけなのである。北ヨーロッパは、技術の面でも商業の面でも新しいものを生み出さなかった。

アムステルダムはヴェネチアを模倣し、ロンドンはアムステルダムを模倣し、NYはロンドンを模倣した。それは世界経済の重心が移動しただけであり、地中海から北海への中心の移動も、新興地域による旧勢力への勝利を意味するだけである。

ドイツの社会学者マックス・ヴェーバーは著書『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』において、概ね以下のように主張した。

・プロテスタントにおいては「人間が救われるか救われないかは予め決まっている」という予定説を採る。

注)なお、カトリックは「○○すれば天国に行ける」という因果説を採る。もともとプロテスタントは、ローマ教皇レオ10世が「この贖宥状(免罪符)を買えば天国に行ける」と資金集めしたことに対抗する勢力だった。

・自分が救われるかどうか分からないという状況は、人間に恐怖と緊張状態を強いる。よってプロテスタントでは、神から与えられた職業(=天職)に励むことで救済を確信する証を得ることを奨励された。

・また、天職に励んだ結果としての蓄財も、安くて良質な商品やサービスを人々に提供したという「隣人愛」の実践の結果として肯定された。

・この「禁欲的な労働」と「利潤追求の正当性」が資本主義の発展に寄与した。

・カトリック圏である南ヨーロッパ諸国では、日が昇ると働き始め、仲間とおしゃべりなどをしながら適当に働き、昼には長い昼食時間をとり、午後には昼寝や間食の時間をとり、日が沈むと仕事を終える。実質的な労働時間は短く、おおらかで人間的ではあるが、生産性の低く資本主義には馴染まない。

一方、ブローデルは「いやいや、単に経済の覇権が地中海から北海方面に移動しただけでしょ」と主張する。

どちらが正しいかは難しいところだが、カトリック教徒が多かったヴェネチアやジェノヴァでもそれなりに経済が発展していたことを考慮すると、「利潤追求に対する後ろめたさが和らいだ」というヴェーバーの主張はあまり正しくないのかもしれない。

しかし、「禁欲的な労働」という側面では、南欧諸国の人々が北欧諸国に比べると、おおらかで若干怠惰な面があるのは事実だろう。事実、EUのお荷物と言われている国々には地中海沿岸国が多い。ユーロ圏で財政状況がとりわけ厳しいポルトガル(Portugal)、イタリア(Italy)、ギリシャ(Greece)、スペイン(Spain)の4カ国は、その頭文字を取ってPIGSと呼ばれている。

もっとも、これも宗教的な違いではなく、単なる気候の差なのかもしれない。温かい地域の人々は、気候も安定しているため、それほど苦労せずに穀物を育て、食料を確保できる。しかし、寒冷な地域の人々は、痩せた土地で冷害にも苛まれながら、様々な工夫を凝らして生活を成り立たせている。そして自然と勤勉になる。

世界に視点を広げてみても、主に熱帯である赤道~北緯・南緯30度くらいまでは、いわゆる先進国は見当たらない。気候が人々の気質に影響を与える一つの要因である、よい例ではないだろうか。

OECD加盟国

歴史入門 (F・ブローデル)

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〔地政学(その5)〕

地政学の基礎用語まとめ(ハートランド、リムランド、グレートゲーム 等)
https://hotnews8.net/society/world/geopolitics

『地政学の基礎用語まとめ(ハートランド、リムランド、グレートゲーム 等) – GHQが日本に禁じた学問とは?

「なぜウクライナ危機は発生したのか?」

「アメリカが日本に軍事基地を置く真の目的は?」

地政学は国家安全保障上、絶対に欠かせない学問。ゆえにGHQは日本人による地政学の研究を禁止。日本の第一人者たちは公職追放され、関連書籍は焚書された。

日本政府もメディアも国民に説明しない(できない?)地政学上の背景を知ることは、我が国の国益に資する。

日本のエリートが軍事学・地政学に通じていないことは大問題なのだ。
目次

地政学とは?
ハートランド理論 - ランドパワー
リムランド
ワールドシー理論 - シーパワー
マージナルシー
シーレーンとチョークポイント
大陸 vs 海洋の攻防史
英露「グレートゲーム」
英国流 バランス・オブ・パワー
地政学の歴史 - 帝国主義とグローバリズム
日本で地政学は禁止

地政学の基礎用語まとめ(ハートランド、リムランド、グレートゲーム 等) – GHQが日本に禁じた学問とは?
地政学とは?

地政学(Geopolitics)とは「19世紀 欧米列強が、帝国主義を展開する上で発展した 軍事戦略の学問」。

地理的条件が国家の政治・経済・軍事に与える影響を研究する。
ハートランド理論 – ランドパワー

地政学まとめ-ハートランド他
ランドパワー ユーラシア大陸にある大陸国家

  • ロシア、ドイツ、中国
    提唱者 英国のハルフォード・マッキンダー卿
    特徴 道路、鉄道を利用した輸送能力が高い
    強い陸軍、徴兵制
    農業が社会基盤
    主張 ハートランドを制するものは、世界を制する

ハートランド

地政学-冬のハートランド

ほぼ現在のロシアの位置に相当。
世界最大である アフロ・ユーラシア大陸(世界島)の最奥部にあり、南側は巨大な山脈と広大な砂漠、北側の海岸線は凍結するため 制圧はほぼ不可能。
広大な領土ゆえに食糧の自給自足が可能。

かつては欧州を支配したナポレオン、ヒトラーですら撤退した難攻不落エリア。

現在では、莫大な天然資源を保有していることも判明。21世紀でも 欧州のエネルギー供給源であり、マッキンダー卿の時代よりも存在感が増している。

東欧制圧がポイント

地政学-マッキンダーの法則

マッキンダーは、21世紀のウクライナ危機にも通じる有名な格言を残していた。

東欧を制するものはハートランドを制し、
ハートランドを制するものは世界島を制し、
世界島を制するものは世界を制する。

ハルフォード・マッキンダー

南のハートランド

あまり注目されないが、サハラ砂漠以南のアフリカ大陸南方を「南のハートランド」と見ることもできる。居住は困難だが、豊富な天然資源に恵まれている。

金本位制による世界覇権のため、大英帝国は 南アフリカ共和国の金鉱脈とダイアモンドを強奪。海の要衝、希望峰も抑えた。

地政学-南北ハートランドとアラビア半島
アラビア半島 – 南北ハートランドの交差点

南北のハートランドを連結するのがアラビア半島。マッキンダーがその重要性を指摘したのは、石油資源の発見よりも早い。つまり、アラビア半島は石油がなくとも重要な拠点。
特にアラビア半島の付け根イスラエルは、地中海にも面しており、東西南北、アジア・欧州を結ぶ世界の中心ともいえる要衝。ゆえに戦争が絶えない。

マッキンダー地政学『ハートランド』 – ウクライナ危機、NATO東方拡大の正体とは?ウクライナ危機2022はなぜ起こったのか? この問いに対する答えの一つが、マッキンダー地政学「ハートランド理論」

リムランド

地政学-リムランド
位置 ハートランドの外円部
(欧州~中東~インド~東アジア)。
日本、台湾、朝鮮半島、インドシナ半島
特徴 温暖で雨量も多く、農業が発展
経済活動に適し、人口も多い

極寒地域であるハートランドが進出したり、大陸に進出するシーパワーが上陸することで衝突も起こりやすい地域。第二次世界大戦は リムランド争奪戦だったとの見方もある。

リムランドを制するものは ハートランドを制し
ハートランドを制するものは 世界の命運を制する。

スパイクマン

リムランドとその周辺の別称
危機の弧 マッキンダー
不安定の弧 米国防総省
自由と繁栄の弧 第一次安倍内閣の価値観外交
(麻生外相)
バッファゾーン

緩衝地帯。大国同士が直接衝突することを防ぐ役割を果たしている地域や国。代理戦争が発生しやすい。

朝鮮半島 日本、中国、ロシア
バルカン半島
(ユーゴスラビア) NATO諸国、ロシア
東欧
(ウクライナ) NATO諸国、ロシア
シャッターゾーン

社会的な分断要因があり、政治的に不安定な地域。分断要因とは、民族、言語、宗教など。
位置 バルカン半島、中東など
特徴 大国から分断を利用した干渉を受けやすい
紛争が頻発

ワールドシー理論 – シーパワー

地政学-ワールドシー
シーパワー 国境の多くが海に面する海洋国家

  • 日本、英国、米国
    提唱者 米国の海軍士官アルフレッド・マハン
    特徴 長い海岸線と良湾
    強い造船業と海軍、志願制
    植民地が多い
    主張 ワールドシーを制するものが、世界を制する

米国がハートランドを直接制することは不可能。ゆえにマハンがハートランド周辺のリムランド、マージナルシー(後述)を制することで、世界支配できる方法を考案。

海洋国家は海外へ進出しやすいので、世界中で植民地を獲得し帝国を構築。

ワールドシー

太平洋と大西洋という大きな海洋。

ワールドシーにおける世界の物流、軍事行動を支配すれば、世界を制覇できる。現時点ではアメリカの影響力が強い。
マージナルシー

地政学-マージナルシー

大陸外側の弧状列島、半島、群島に囲まれた海域。つまり、リムランドを囲む海。まさに日本を取り囲む海域。

中曽根総理は日本列島を「不沈空母」と称した。

ベーリング海
オホーツク海
日本海
東シナ海
南シナ海

マージナルシーを支配することは、リムランドの支配に繋がる。そして リムランドを支配するものは、ハートランドを制する。

在日米軍基地の意味

米軍がマージナルシー周辺部である横須賀、沖縄に重要拠点を築いているのは、ワールドシーを支配しておくため。日本防衛が真意とは限らない。

シーレーンとチョークポイント

海洋国家が制海権を持つためには シーレーンの安全確保と、そのためのチョークポイント支配が必須。

シーレーン

自国の貿易を守る安全な海上交通路のこと。

7つの海をくまなく支配するのは膨大なコスト。海上交通路シーレーンを確保することが、すなわち海洋の支配を意味する。

地政学-シーレーンとチョークポイント
日本のシーレーン

日本がシーレーンを安全確保できない場合、石油エネルギーの99.7%が不足。国家の生死に直結する。

台湾、尖閣諸島、沖縄の防衛を絶対に譲歩してはならないし、自衛隊がソマリア沖、アデン湾を防衛する理由だ。

チョークポイント

地政学-チョークポイント

シーレーンを確保するための要衝となる海峡や運河。低コストの防衛で莫大な効果を望め、通航料も徴収できる。

世界規模では約10ヶ所前後存在し、その多くで英米の影響力が強い。

マラッカ海峡
ホルムズ海峡
スエズ運河
パナマ運河

大陸 vs 海洋の攻防史

地政学-ランドパワー、シーパワーの比較

歴史的にランドパワーとシーパワーは衝突を繰り返してきた。
10?15世紀 ランドパワー優位
物流は陸路中心
15?19世紀 シーパワー優位
大航海時代
スペイン無敵艦隊。大英帝国
19?20世紀 ランドパワー優位
鉄道網の発達
ドイツ、ロシア台頭
20世紀後半 シーパワー優位
戦勝国アメリカと その同盟国日本が台頭

リムランド、マージナルシーでの激突

守りに強く、攻めに弱いのがハートランド。ロシアは極寒ゆえに守備は鉄壁だが、不凍港を求め南下政策も実施。
シーパワーは海上交通の安定のため、ユーラシア大陸周辺の良港・良湾を獲得、維持したい。

ここで両者が衝突するのがリムランドであり、マージナルシー。世界規模の軍事衝突は多くがこのエリア。二次に渡る世界大戦も発生。

地政学-リムランド・マージナルシー、陸vs海
1950年~ 朝鮮戦争
1955年~ ベトナム戦争
1991年~ 湾岸戦争
2001年~ アフガニスタン戦争
2003年~ イラク戦争
「ランドパワーとシーパワーは両立できない」

ローマ帝国(ランドパワー)海洋進出で国力低下
大日本帝国(シーパワー)大陸進出で国力低下

尖閣諸島や沖縄、南シナ海という第一列島線への進出を狙う中国。地政学上のセオリーでは、中国の一帯一路という野望は挫折することがわかっている。
ディープステートの野望『新世界秩序』とは? – 1%による99%支配計画コロナパンデミックによるショックドクトリンでグレートリセットが懸念される中、新世界秩序(New World Order)計画が
英露「グレートゲーム」

19世紀以降の海洋国家イギリスと、大陸国家ロシアの覇権争いはグレートゲームと称される。両者はチェス盤で陣取り合戦をするかのように、クリミア、アフガニスタンを奪い合った。

地政学-英露グレートゲーム
日露戦争はグレートゲームの代理戦争

日露戦争は、東アジアにおける英国の補完戦力として扱われた日本が、結果として英国のために戦ったグレートゲームの一環。
ウクライナ危機もグレートゲーム

冷戦とそれ以降のグレートゲームは、米国が英国を引き継ぎ継続。2022年のウクライナ危機もグレートゲームの文脈で理解できる。

今日に継続するグレートゲームについては後日、別稿で言及する。

英国流 バランス・オブ・パワー

勢力均衡戦略。特定国家が突出して強力にならず、勢力を均衡させて国際秩序を守るメカニズム。

かつての大英帝国のお家芸であり、冷戦以降もアメリカがその伝統を継承。

地政学-バランス・オブ・パワー
「サクッとわかる教養地政学」より
英国流バランス・オブ・パワー

地政学-英国流バランス・オブ・パワー

大陸国家ドイツやロシアが発展すると、フランスをそそのかしたり、独露両者を対決させたりするなどの外交術で力を発揮。漁夫の利を得て来た。
ディープステートの戦略①『両建て作戦』 – ネオコンも共産主義もDeepStateが産みの親?ディープステートの手口①『両建て作戦』について解説。左右に武器を販売。なんと東西冷戦ですら彼らの茶番

地政学の歴史 – 帝国主義とグローバリズム

地政学(Geopolitics)は、1899年 スウェーデンの政治学者ルドルフ・チェーレンが初めて用いた用語。

国破れて山河あり
杜甫

世界の地理は基本的に時代を超えて同じ条件であり、それを前提に各国の戦略は練られている。ゆえに、地政学は現実的な学問だ。

戦争の原因がイデオロギーなどの建前よりも、領土や資源の獲得という本音を 地政学は隠さない。

帝国主義 = グローバリズム

19世紀産業革命で欧州列強が手にしたパワー。列強は帝国主義による植民地政策を促進。海洋国家である大英帝国が全盛期を迎える一方、大陸国家であるドイツ、ロシアも勢力を拡大。

帝国主義という体裁をしたグローバリズムが、欧州列強のパワーバランスを揺るがしていた。

ディープステートの戦略②『国際協調主義』 – 外圧で国家を上から支配?国連、EU、WTO、IMFなどの国際機関は、平和を装いながら 世界中の国家主権を剥奪してきた。その目的は世界統一市場による新世界秩序。民主主義選挙を経ないでこっそり各国を支配するその手口とは?

地政学の誕生

こうした背景で地政学の原型が発展。

地政学開祖の一人とされるハルフォード・マッキンダー卿は、英国の覇権が維持されるための道を真剣に考えた。

その結論こそ「ハートランドの支配が世界覇権を決すること」であり、ゆえに英国がソ連を封じる必要性を主張した。

地政学とグローバリズム

こうして振り返ると、地政学の誕生は帝国主義と関係している。帝国主義の最終形態は世界制覇。つまり世界統一政府であり、それはすなわちグローバリズム。

海洋国家 英国のマッキンダー卿が、大陸のハートランド理論を主張したことは興味深い。大英帝国には大陸を牛耳り、世界を覇権する野心があることを示唆している。

別稿で解説する予定だが、英国の世界覇権志向を継承したのが、21世紀の米国である。

英米に潜むグローバリズム

本稿でまとめた地政学は主に英米流の地政学だが、英米の根底にグローバリズムが潜んでいることを感じたのではないだろうか。

極論を言えば、各国が自給自足すれば世界は平和であるはず。帝国主義は植民地から資源・資産を奪う思想だ。

英米の地政学は世界制覇を前提としている。

日本で地政学は禁止

日本地図

敗戦国である日本とドイツにおいて、地政学がタブーとなった理由はなんだろうか。

ドイツ地政学は封印

ドイツの地理学者カール・ハウスホーファーの理論は 日本やナチスにも影響を与えた。

ドイツがソ連や日本との同盟
輸入に依存しない国家経済の自給自足
生存圏*

ハウスホーファーの主張は連合国(英米)にとって不都合なものばかり。これでは日独露がそれぞれ発展してしまうし、ユーラシア同盟を結成されてしまえば手がつけられない。
ハウスホーファーはナチスを正当化したとの理由で批判を受け、戦後まもなく自殺。以後、ドイツにおいて地政学はタブー扱い。

*生存圏 – 国家が生存するために必要な政治的支配が及ぶ領土。人口増加に伴い資源が必要になれば、その生存圏を拡張するのは国家の権利であるとも主張した。

日本の取るべき進路

彼を知り己を知れば百戦殆うからず
孫子

GHQは日本での地政学を禁じ、焚書までした。GHQは日本国民が地政学の意味を理解することを非常に恐れたのである。それはGHQ、在日米軍の正体を知られることでもあったからだ。

21世紀の日本人は 今こそ地政学を再発見すべき時だ。日本は地政学上、世界覇権の趨勢を決する要衝なのだから。

そして地政学を学ぶことは、日本のアイデンティティを深化させてくれるはずだ。

マッキンダー地政学『ハートランド』 – ウクライナ危機、NATO東方拡大の正体とは?ウクライナ危機2022はなぜ起こったのか? この問いに対する答えの一つが、マッキンダー地政学「ハートランド理論」
東欧カラー革命(色の革命)手法と事例まとめ – ソロスとCIAが政権転覆!2020アメリカ大統領選が当初から予想された通り、不正選挙疑惑で泥沼化。「東欧カラー革命」「アラブの春」がディープステート
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ディープステートとは? トランプ演説による「世界とアメリカを牛耳る裏の支配者」について世界とアメリカの裏の支配者ディープステートとは? 左派ユダヤのグローバリストがFRB、中央銀行を操作する本物の錬金術とは?ケネディ、リンカーン暗殺の理由とは? トランプ大統領の
この記事のまとめ
地政学の基礎用語まとめ(ハートランド、リムランド、グレートゲーム 等) – GHQが日本に禁じた学問とは?

地政学とは「19世紀 欧米列強が、帝国主義を展開する上で発展した 軍事戦略の学問」
ランドパワー理論「ハートランドを制するものが、世界を制する」
シーパワー理論「ワールドシーを制するものが、世界を制する」
世界規模衝突の多くがリムランド、マージナルシーで発生する
帝国主義=グローバリズム
日本はGHQに禁じられた地政学を学び直す必要がある

※ この記事は「世界の深層シリーズ」の一部です。世界の深層 – グローバリズム、ディープステート、文化マルクス主義(リベラリズム)・共産主義 』

〔地政学(その4)〕

危機管理に効く「地政学」のススメ(後編)
https://spectee.co.jp/report/geopolitics_for_crisis_management_2/

『 前編では、地政学という学問についてや、基本的な概念や考え方をご紹介しました。後編では、それらを現在の国際問題にあてはめて考察してみることにします。
米中対立を読み解く

現在の国際情勢において、最大のトピックは「米中対立」ではないでしょうか。

中国はもともと世界第3位の広大な土地を持つランドパワーでしたが、近年では大幅な経済成長を成し遂げて国外に力を向ける余裕が生まれたことから、空母を建造するなど海洋進出(シーパワー化)を急速に進めています。これは世界最大のシーパワーである米国にとっては看過できないことで、地政学的なすみ分けができなくなっていることが基本的な構図と言えます。

前編で「シーパワーは、港を含む海上交通路や経済拠点のネットワークを持つ」と説明しましたが、それがわかるのが尖閣諸島の問題です。日本政府は歴史的にも、国際法上も明確に尖閣諸島は日本の領土であり、領有権の問題は存在しないというスタンスですが、なぜ近年になって急に中国はその領有権を強く主張し始めたのでしょうか。それは、中国がシーパワーとしての「拠点」を海上に得て、日本海や東シナ海を制覇するための足掛かりを持ちたいというのがその背景です。

その他にも、南シナ海での人工島の建設、スリランカなどでの港の建設、ジブチへの基地配備など、地政学的な観点から戦略的に「リムランド」に楔を打ち込んでいることがわかります。また、習近平政権が掲げる「一帯一路」は、陸と海の両方で中国とユーラシア大陸の国々を結んで貿易を促進する構想ですが、まさにこれまでのランドパワーに加えて、シーパワーを得ようという意図がそこから明確にうかがえます。

こうした中国の動きに対抗するのが、米国のインド太平洋戦略やその中心概念である「クアッド(日米豪印4か国の枠組み)」で、民主的国家が結束して中国をけん制しようとしています。また、日本も独自に「自由で開かれたインド太平洋」戦略を打ち出していますが、いずれも、インド洋・太平洋に張り出してシーパワー化する中国をハートランドに押しとどめることを狙ったものです。

人類の歴史を振り返ってみると、ランドパワーとシーパワーが両立した例はありません。ローマ帝国は広大な領土と道路など物流網を誇り、ランドパワーとして栄華を極めましたが、海洋進出とともに衰退しました。シーパワーの日本も、太平洋戦争では海の支配に加えてユーラシア大陸への進出を試み、第二次世界大戦での敗戦により失敗に終わりました。ランドパワーとシーパワーを同時に手に入れようとする中国の覇権的な動きがどう帰着するのか、こうした地政学の枠組みから見ることが有効だと考えられます。

地政学の視点からロシアを見る

もうひとつの例として、ロシアという国とその動きを、地理的な条件をもとに見てみましょう。

ロシアの国土面積は17,098平方キロメートル。2位のカナダの9,985平方キロメートルを大きく引き離して世界で最大の国です。しかし、ロシアの地理を立体的に見てみると、ウラル山脈が南北に国土を分断しており人の往来を制限していることから、その東西で様相が全く異なります。ウラル山脈より東はウラル・シベリア・極東の3つの地域に分けられますが、人口は少なく、開発は進んでいません。一方、欧州に近いウラル山脈より西のエリアは、面積としては全体の24%にすぎませんが、人口の実に74%が集中しており、首都のモスクワやサンクトペテルブルクといった都市もこちらに位置します。

また、国土の北側は、近年地球温暖化で変わりつつあるものの、大変寒冷な地域で、冬も含めて年中利用できる不凍港は少なく、自由に海に出ていける環境ではありません。そして西側には欧州やアメリカなどのNATO勢力が控えています。こうして見てみると、広大な土地を持ち、広く海に面したロシアが、実は様々な地理的な条件による制約を抱えていることがわかります。

ロシアは2014年、ウクライナのクリミア半島を強引に併合し、世界に衝撃を与えました。地政学的にその背景を読み解いてみましょう。一つ目の理由としてロシアは、NATO勢力との間のバッファゾーンに位置するウクライナに対する影響力を何としてでも保持したかったということがあります。二つ目の理由としては、クリミア半島にある良港「セヴァストポリ港」を支配することで、黒海を通って地中海に出ていくルートを確保したかったという背景があります。前述したようにロシアの北側は寒冷で自由に海にで出ていく事が難しいために、この「黒海ルート」を保持することはロシアにとって死活問題となるのです。

地政学はひとつの考え方、フレームワークであり、国際情勢の詳細を全て説明できるものではありません。しかし地政学の観点に立って地図を眺めてみると、また異なる様相が見えてくることも事実です。企業の危機管理担当としても、例えば海外への進出候補地を決める、サプライチェーンを設計する、赴任者や出張者の安全を考えるといった際に、地政学的な知識や観点は大きな味方になるのではないでしょうか。

(SN)
October 13, 2021
参考情報

Prisoners of Geography
http://www.amazon.co.jp/dp/1783962437
メールマガジン 』

〔地政学(その3)〕

〔地政学(その3)〕

危機管理に効く「地政学」のススメ(前編)
2021.10.06
https://spectee.co.jp/report/geopolitics_for_crisis_management_1/

『地政学とは

地政学とは、地理的な条件が国家に与える政治的、軍事的、経済的な影響をマクロの視点から研究する学問分野です。英国の地理学者であったハルフォード・マッキンダー(1861年~1914年)や米国の海軍将校であったアルフレッド・セイヤー・マハン(1840年~1914年)などによって理論化された近現代の地政学はその後、ナチスドイツや旧日本軍の領土拡張を正当化する論理の一つとして使われたことから、負のイメージを負いました。また第二次世界大戦後は、資本主義vs共産主義という「イデオロギーの対立」が先鋭化したこともあり、地理に重点を置く地政学は下火の時期が続きました。しかし昨今、書店では地政学をタイトルに冠する本が多く見られ、再び脚光を浴びるようになっています。

なぜ脚光を浴びているのでしょうか。それは、グローバル化が進展し、複雑にからみあってかつ流動的な世の中を読み解くにあたり、1万7000年の人類の歴史を通じて大きく変わっていない地理を軸に考えることの有用性が認められたからだと考えられます。後述するように、現在起きている国際間の対立などは地政学の理論によって、シンプルに整理することが可能です。

地政学的リスクとは、特定の地域が抱える政治的・軍事的・社会的な緊張の高まりや変化が、地理的な位置関係によって、国際政治や経済に及ぼす影響とその要因を指します。具体的にどのような事象を含まれるかの定義は様々にありますが、下記は世界経済フォーラムがGlobal Risks Reportという報告書の中で挙げた項目となります。

地政学は、歴史学、地理学、政治学、軍事学、文化学など様々な見地から研究を行うために広範にわたる知識が不可欠となる学際的な学問ですが、その基本的な考え方に触れるだけでも、国際情勢やそこから生まれるリスクや危機というものを考察する助けになると思われます。ここでは基本的な考え方である「ランドパワーとシーパワー」、「ハートランドとリムランド」という概念と、拠点の重要性及びチョークポイントについてご紹介します。

基本的な考え方①:ランドパワーとシーパワー

「ランドパワー」とは、陸上における経済拠点や交通網などを支配・防衛するための軍事力・輸送力を含む総合的な能力を持つ勢力で、ユーラシア大陸にある大陸国家、具体的にはロシア、中国、ドイツなどが該当します。一方で「シーパワー」とは、港を含む海上交通路や経済拠点のネットワークを持ち、それにより海洋を支配・利用するための総合能力を持つ海洋国家で、具体的な例としてはアメリカ、イギリス、日本などが挙げられます。

歴史を振り返ってみると、ランドパワーの国が領土を拡張しようとふるまい、これに対して自分の領域を守ろうとするシーパワーの国が港や基地を整備して権益を守ろうとする、ということを繰り返してきました。そのせめぎあいが歴史を作ってきたと言うことができます。陸路での物流が中心だった時代から、15~19世紀は大航海時代を迎え、スペインやイギリスが世界中の海を制覇したシーパワーの時代でした。19世紀から20世紀前半にかけては鉄道網や道路網などの建設で陸上輸送能力が急激に発達し、ドイツやロシアといったランドパワーの国が台頭、2つの世界大戦を経験しました。そして20世紀後半からにかけては、第二次世界大戦の戦勝国のアメリカやその後勃興した日本がシーパワーの国として繁栄を極めました。

基本的な考え方②:ハートランドとリムランド
ランドパワー/シーパワーという分類は、その国の勢力の性質を表すものですが、領域に関する概念が「ハートランド」と「リムランド」です。

「ハートランド」とは、シーパワーの影響がほとんど皆無であるユーラシアの中央部から北部に広がる領域を指します。現在のロシアと重なるエリアです。このエリアを支配することは巨大なランドパワーを得ることと同義であると考えられていますが、雨が少なく寒冷であり、古くから人口は多くなく、文明が栄えることはあまりありませんでした。一方の「リムランド」とはユーラシア大陸の海岸線に沿ったエリアで、中国東北部から東南アジア、インド半島、アラビア半島を経てヨーロッパ大陸に至る長大なユーラシア沿海領域を指します。この領域は温暖で雨量が多く、農耕の生産性が高く、経済活動が盛んであり、大都市と多くの人口がここに集中しています。

歴史上、厳しい環境のハートランドの国は、豊かなリムランドにたびたび侵攻し、リムランドの国やその外側のシーパワーの国と衝突しています。朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争などが例となります。リムランドとは、「ハートランドのランドパワー」と、「周辺のシーパワー」がぶつかり合い、国際紛争が起きやすい地域と言うことができます。

基本的な考え方③拠点の重要性とチョークポイント

どの勢力がどこに拠点を構えているのかを俯瞰することも、国際情勢を見る際に大変重要です。「シーパワーは、港を含む海上交通路や経済拠点を維持・防衛する」と前述しましたが、最大のシーパワーであるアメリカ合衆国が、多くの駐留人口を抱える海外拠点を見てみましょう。

これら主要な基地が、前述のリムランド及びその周辺に配置されていることにお気づきのことと思います。米国はランドパワーへの対抗として拠点を築き、その拡大を抑え込もうとしているのです。

また、「チョークポイント」という地政学上で非常に大切な概念がありますが、これについては別稿で説明しているためそちらをご参照ください。

海の物流、危機管理のカギを握る「チョークポイント」・・・スエズ運河での座礁事故を受けて
https://spectee.co.jp/report/suez_chokepoint/

後編ではここまで説明した概念を用いて、現在の国際情勢を読み解きます。

(SN)
October 06, 2021
参考情報

The Global Risks Report 2021 (World Economic Forum)
https://www.weforum.org/reports/the-global-risks-report-2021

メールマガジン

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〔地政学(その2)〕

〔地政学(その2)〕

リムランド
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%A0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89

『リムランド (Rimland) は地政学の用語のひとつ。

概要

「ニコラス・スパイクマン#リムランド理論」も参照

ニコラス・スパイクマンによる造語であり、北西ヨーロッパから中東、インドシナ半島までの東南アジア、中国大陸、ユーラシア大陸東部に至るユーラシアの沿岸地帯を指す。ハルフォード・マッキンダーの主張した内側の三日月地帯を指しており、ハートランドを覆うように三日月地帯を形成しているのが特徴である。

スパイクマンはランドパワーとシーパワーの間に起こる紛争がすべてこの地帯で発生していることから、リムランドこそ最も重要な地政学的地域であると主張した。スパイクマンはアメリカがリムランドに対して、その力を投影させ、ソヴィエト連邦を中心とする他の勢力の浸透を阻止させ、グローバルな勢力均衡を図るよう提言した。また、スパイクマンは「リムランドを制するものはユーラシアを制し、ユーラシアを制するものは世界の命運を制する。」と述べている。

関連項目
ウィキブックスに地政学/理論/リムランド理論関連の解説書・教科書があります。

地政学
大陸国家
海洋国家
ハートランド
シャッターベルト
不安定の弧

カテゴリ:

地政学海洋国家国際関係論

最終更新 2022年5月6日 (金) 02:04 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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ニコラス・スパイクマン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%91%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%9E%E3%83%B3#%E3%83%AA%E3%83%A0%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E7%90%86%E8%AB%96

『ニコラス・ジョン・スパイクマン(Nicholas J. Spykman, 1893年10月13日 – 1943年6月26日)は、オランダ系アメリカ人の政治学者・地政学者で、イエール大学の国際関係学の教授。49歳でガンによって死去した。

彼の教え子にはまず第一に地理の知識を叩き込ませていたという。地理の知識なしに地政学を理解するのは不可能であるからである。

リムランド理論

ニコラス・スパイクマンはマハンのシーパワー理論やマッキンダーのランドパワー理論を踏まえてエアパワーにも注目しリムランド理論を提唱した。

マッキンダーが「東欧を制するものはハートランドを制し、ハートランドを制するものは世界島を制し、世界島を制するものは世界を制する。」と述べたのに対し、一見広大で資源に恵まれているハートランドが、実はウラル以東では資源が未開発な状態で農業や居住に適していないために、人口が増えにくく工業や産業が発展しにくい点、反対にリムランドは温暖湿潤な気候で人口と産業を支える国々が集中している点にスパイクマンは着目し「リムランドを制するものはユーラシアを制し、ユーラシアを制するものは世界の運命を制する。」と主張した。

またスパイクマンは、旧世界(南北アメリカ大陸以外の大陸)の紛争はハートランドとリムランド間の紛争、リムランド内での紛争、リムランドとシーパワー間の紛争のようにリムランド一帯に集中している点と、地理的な位置から南北アメリカ大陸がユーラシア大陸だけでなく、アフリカ大陸やオーストラリア大陸に包囲されている点、に気づき旧世界の大西洋沿岸と太平洋沿岸の2つの地域からアメリカの安全を脅かすリムランドを支配する国家あるいはリムランド国家の同盟の出現は脅威だと考え、積極的にその試みを阻止する対外政策の必要性を主張した。

彼はリムランド理論を踏まえて米国の政策に以下の提案を行っている。

ハートランドへの侵入ルートにあたるリムランドの主要な国々とアメリカが同盟を結ぶこと。この侵入ルートをふさぐ強力なリムランド国家(例、ヒトラー・ドイツによるフランスやノルウェー支配/ギリシャやトルコとの同盟)をつくらせないこと。

リムランド諸国間のアメリカ抜きの同盟をバラバラに切断するが、同時に、ハートランドの国にリムランドの国々を支配させないようにする(戦後のNATOや冷戦につながる)。
現代(当時は第二次世界大戦中)の船舶技術において、アメリカをとりまく大西洋も太平洋も「防波堤ではなく、逆に高速道路である」と認識しており、現代の兵器技術においていかなる国のパワーも地球上のいかなる場所であれ「地理的距離とは無関係に投入できる」と見抜いており、アメリカの孤立主義(モンロー主義)の不毛と危険を警告し続けた。

また、この理論に基づけばこれらリムランドに該当する極東の国々つまり中国、朝鮮の間でそれぞれが分裂した状態であることが望ましいということになると指摘する研究者もいる。

名言

「地理とは外交政策において最も基本的なファクターである。何故ならば地理は不変であるからである。」

“Geography is the most fundamental factor in foreign policy because it is the most permanent.” —from The Geography of the Peace.

「地理的条件は変わる事はない。しかし外交政策におけるその意味合いは変化しうる。」

“Geographic facts do not change, but their meaning for foreign policy will.”
著書

The Social Theory of Georg Simmel, (University of Chicago Press, 1925).

山下覺太郎訳『ジムメルの社會學論』(寶文館, 1932年)

America's Strategy in World Politics: the United States and the Balance of Power, (Harcourt, Brace, 1942).

渡邉公太訳『スパイクマン地政学 世界政治と米国の戦略』(芙蓉書房出版, 2017年)
小野圭司訳『米国を巡る地政学と戦略 スパイクマンの勢力均衡論』(芙蓉書房出版, 2021年)

The Geography of the Peace, (Harcourt, Brace, 1944).

奥山真司訳『平和の地政学――アメリカの大戦略の原点』(芙蓉書房出版, 2008年 )』

〔地政学(その1)〕

ハートランド
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89

『ハートランド(英: Heartland)は、地政学の用語。ハルフォード・マッキンダーが『デモクラシーの理想と現実』の中でユーラシア大陸の中核地域を中軸地帯と呼んだことに始まり、後にハートランドと改められた。

概要
出典:”The Geographical Pivot of History”, Geographical Journal 23, no. 4 (April 1904)

中軸地帯、内側の三日月地帯と外側の三日月地帯

マッキンダーは20世紀初頭の世界情勢をとらえ、これからはランドパワーの時代と唱えた。とりわけ、それまでの歴史が海軍大国(海洋国家)優位の歴史であったのに対し、鉄道の整備などにより大陸国家の移動や物資の輸送などが容易となったことで、ハートランドを支配する勢力による脅威が増しているとし、海洋国家同士の連携を主張した。

マッキンダーは1900年代初頭の世界地図をユーラシア内陸部を

中軸地帯(ハートランド) (Pivot Area)
内側の三日月地帯 (Inner or marginal crescent)
外側の三日月地帯 (Lands of outer or insular crescent)

に分け、「東ヨーロッパを支配するものがハートランドを支配し、ハートランドを支配するものが世界島(ワールド・アイランド)を支配し、世界島を支配するものが世界を支配する」と説き反響を呼んだ。また、マッキンダーはユーラシアに存在する大国群をシーパワー・ランドパワーに分けて、それぞれが対立する関係にあると論じ、大陸国家がヨーロッパを中心として熾烈な戦争を始め、戦線を拡大していくに違いないと予見した(事実ナチス・ドイツとソビエト連邦が熾烈な覇権争いを行った)。

現代への影響

しかしマッキンダーは、当時次第に注目されつつあった空軍力の影響力を重視せず、第一次世界大戦以降、航空機戦力を中心とした戦争が中心となるにつれ、次第にマッキンダーのハートランド論は時代遅れと批判されることとなった。

しかしこうした国際政治の構造や力学に鋭い視点を展開したマッキンダーのハートランド論は時代環境の変化に照らして、さらに地政学の世界で応用的に用いられ、ニコラス・スパイクマンによって主張されたリムランド論や、コリン・グレイなどによってハートランドのモデル化など、後の地政学や軍事戦略におおいに影響を与えたとされる。

カテゴリ:

地政学海洋国家国際関係論ユーラシア

最終更新 2021年6月7日 (月) 09:15 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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戦間期ポーランドから見る地政学的な定石

戦間期ポーランドから見る地政学的な定石【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】https://jp.reuters.com/article/idJP00093300_20200714_00220200714

『(2020年7月14日9:32 午前Updated 2年前)

1918年から1939年の間に存在したポーランド第二共和国は、その地理的な特性上、2つの潜在的でかつ伝統的な敵であるドイツとロシアに挟まれていた。これに対抗するために、ポーランドが行った2つの戦略構想について見てみようと思う。

■インテルマリウム/ミェンズィモジェ(海洋間)構想

ここで言う海洋間は、バルト海から黒海までを指す。この構想では、この海洋間を跨ぐ、なるべく1つの連合体を作り、これでドイツやロシア(ソ連)に対抗する軸とするという構想である。

海洋間の連合体が想定する領域はもともとポーランド・リトアニア共和国という、ポーランドにとっての黄金期における領土を概ねカバーしている。ロシア帝国がポーランドのほとんどを支配下においていたときに、ロシアの外務大臣を務めたことがあるチャルトリスキが19世紀半ばにおいて、ポーランドの再独立のためにその時代にあわせたポーランド・リトアニアを再興しようとしたことがインテルマリウム構想の元祖とも言える。

ポーランドが再独立を果たした後、ユゼフ・ピウスツキ(ポーランドの初代国家元首、元帥など非常に重要な立ち位置にあった)は上記の大連合を構築しようと努力する。しかし、リトアニア自身がポーランドの支配下になる可能性を危惧、ウクライナも同様に思い、ベラルーシあたりの地域ではそもそも独立国を作ろうとする運動が弱かった。また、ポーランドは自らの国境画定のための紛争を数回周辺国と起こしたことも、ポーランドを軸とした連合体の実現可能性を低めた。ポーランド内からも「ポーランド民族」のみの国家を望む勢力から反対に会った。ピウスツキが途中から事実上の独裁者になったことで、「民主主義的な価値観」に基づくはずだった連合体に対する懸念がさらに増した。

「独立したウクライナなくして独立したポーランドはない」という考えが、この戦略では重要な位置を占める。これは、同盟を結んでいると共に、重要な緩衝地帯としての独立国が必要であることを示している。しかし、他方では国家の本能をそのまま遂行するかのように、なるべく自らの国境をより東におきたいという意味でもある。そこにいる民族ポーランド人を併合するために、友好関係にあることが重要であるウクライナに対しても紛争を起こしてしまってもいる。民族統一と「真の独立」を志す感情が、長期戦略の合理性を上回ってしまったと見ていいかもしれない。

1920年から1921年の間でおきたポーランド・ソ連戦争において、ポーランドが事実上勝利したのにも関わらず、同盟していたウクライナがソ連に飲み込まれたことによって、連合体構想が事実上瓦解した。これの代わりに、バルトからバルカンまで、よってチェコスロバキア、ハンガリー、北欧諸国、バルト三国、イタリア、ルーマニア、ブルガリア、ユーゴスラヴィア、ギリシアまでを一つの大同盟にする戦略が考えられた。しかし、チェコスロバキアやリトアニアと国境紛争を起こしたことでポーランドが信用されてないこと、構成の候補国間の関係が必ずしも良好ではなかったことから、各国の都合に合わせた個別の小さい同盟が作られるのみにとどまった。この中で、ポーランドはルーマニアと同盟を結び、ピウスツキが1935年に死去した後に、これを拡大してポーランド、ハンガリー、ルーマニアを軸とした「第三の欧州」という構想も練られたが、これは進まなかった。

ポーランドがドイツとソ連に侵攻され、亡命政府が立てられると、それまでの同盟構想があった国々の亡命政府との交流、中東欧における連合体を作ることに関する話し合いが進められた。亡命政府の存在で、とりあえずポーランドの生存に向けての今までの基礎戦略が受け継がれたことになる。

ソ連崩壊後に伴って、ワルシャワ条約機構がなくなった。これにより、上記に述べた構想の候補国が徐々にNATOや欧州連合に加盟すること、いわゆるヴィシュグラード・グループなどを作り、大同盟によって大国に対抗するという構想が現代になって事実上達成されたともみられる。

■プロメテウス主義

プロメテウス主義は、インテルマリウム構想と並行して行われた戦略的構想である。プロメテウスと名付けたのは、ゼウス(大国)の意思に反して人類に火(民族自決、自由)を授けたという神話からとったもので、特にロシア帝国及びその後継国家であるソ連に対して、内部の民族主義を刺激することで弱体化することを目的とした。

プロメテウス主義の歴史としては、ピウスツキが日露戦争中の1904年、日本政府に対して、ロシア内の少数民族らを支援することが日本の戦争遂行を助けるとともに、各国の自由をもたらすため、それを支援すべきというメッセージを送ったことがはじめとみられる。
実際に第一次世界大戦後にポーランドが独立した後、ポーランドが旧ロシア帝国内の民族自決に向けて積極的な支援を行おうとした。しかし、ロシア帝国をこれ以上弱体化したくなかった西洋諸国と、ロシアの反共白軍の抵抗にあったため、ロシア内戦の混乱中に独立した国は長続きしなかった。別途、ドイツ主導による「ウクライナ国」の建国もあったが、第一次世界大戦でのドイツ敗北によってこれも消滅した。

ポーランドのプロメテウス主義は第一次世界大戦直後において、バルト三国やフィンランドの独立を早い段階での承認をし始め、ウクライナ、ジョージア、アゼルバイジャン、各コサック自治体、コーカサス地域の民族自決を目指す集団に対する支援も行った。特に重要なのが(途中、国境をめぐる紛争もあったが)ウクライナ人民共和国に対する支援である。プロメテウス主義の一環として、クリミア半島をポーランドの保護国にすることが国際連盟でも提案された。

前述のポーランド・ソ連戦争でウクライナの独立がなくなってからは、ウクライナや黒海沿岸国の「正統」政府の亡命を推進させることなどを行い、この時期から積極的に外務省と参謀本部にプロメテウス主義を担う人員が固まり始めた。しかし、ピウスツキが1923年から1926年まで一時期、権力の座から降りた際、スターリンがソ連内での民族自治体制度で独立の機運を低くすることに成功してきたこともあり、ポーランド政府もプロメテウス主義をスケールバックした。だが、ピウスツキが1926年のクーデターで政権を掌握すると、外務省と参謀本部にプロメテウス主義を推進する部局が正式に設立され、各民族自決を目指す組織に対しての積極的な支援が開始された。

しかし、1932年に締結されたソ連・ポーランド不可侵条約、世界経済情勢悪化による予算の低下、ピウスツキ含むプロメテウス主義を推進していた重要人物らの相次ぐ死、そしてナチスドイツの影響下にある民族主義団体の設立や別チャンネルからの支援によるポーランド影響力の低下もあり、全般的にプロメテウス主義の推進が困難となった。中東欧における各民族自決のプロセスにポーランドが中心的な役割を果たせなくなったことはポーランドの影響力低下を招き、最終的にポーランドがその独立を失った理由の一つであると、プロメテウス主義推進に携わっていた情報将校は分析する。

■戦間期ポーランドの戦略はどこでも見られる?

このように、自国の影響力やその主権を守るためには、大同盟のようなものを作ることによって一国だけで対処が難しい国に対抗するというやり方が一つ。そして、できるのなら相手国の内部の不安要因を煽ることによって、良ければ緩衝地帯にする、一番悪くても相手国を弱体化させて自国への脅威を減らすという動き。この二つは様々な強度で世界の国々が行っていると考えられるため、ポーランドという非常に難しい立場にあった国が取らざる得ない積極的な行動という前提に立てば、全般的に国家の本能的な行動パターンがある程度見えてくると考えられる。

地経学アナリスト 宮城宏豪

幼少期から主にイギリスを中心として海外滞在をした後、英国での工学修士課程半ばで帰国。日本では経済学部へ転じ、卒業論文はアフリカのローデシア(現ジンバブエ)の軍事支出と経済発展の関係性について分析。大学卒業後は国内大手信託銀行に入社。実業之日本社に転職後、経営企画と編集(マンガを含む)を担当している。これまで積み上げてきた知識をもとに、日々国内外のオープンソース情報を読み解き、実業之日本社やフィスコなどが共同で開催している「フィスコ世界金融経済シナリオ分析会議」では、地経学アナリストとしても活躍している。

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ミェンズィモジェ(※ ラテン語で「海洋間の」という意味のインテルマリウム(羅: Intermarium)という名前でも呼ばれている。 )

ミェンズィモジェ(※ ラテン語で「海洋間の」という意味のインテルマリウム(羅: Intermarium)という名前でも呼ばれている。 )
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%A7%E3%83%B3%E3%82%BA%E3%82%A3%E3%83%A2%E3%82%B8%E3%82%A7

『ミェンズィモジェ(波: Międzymorze、ウクライナ語: Міжмор’я、ベラルーシ語: Міжмор’е)は、かつてのポーランド=リトアニア共和国構成国の政治家によって何度も提言されてきた地理的計画のことであり、提唱者の中には、かつての構成国ではなかった周辺の国家をも包括するという考え方もされている。提唱された多国政体はその領域をバルト海から黒海にまで広げることになるため、ラテン語で「海洋間の」という意味のインテルマリウム(羅: Intermarium)という名前でも呼ばれている。

概要

ミェンズィモジェは、中欧・東欧の連合が形成されることを見越して[1][2][3][4][5]、当時のポーランド指導者でロシア帝国時代に政治犯であったユゼフ・ピウスツキによって追求され、その中でバルト三国(エストニア・ラトビア・リトアニア)やフィンランド[6]・ウクライナやベラルーシ・ハンガリー・ルーマニア・ユーゴスラビア・チェコスロバキアの勧誘を模索していた[7][8]。ポーランド名である “Międzymorze” は、ラテン語の “Intermarium” を直訳したものである[9]。

ミェンズィモジェ構想は、ポーランド王国とリトアニア大公国の合同によって成立し、16世紀末から18世紀末まで存在したポーランド=リトアニア共和国を見習い、その領域をバルト海から黒海にまで伸ばすことを標榜とし、同時にピウスツキはミェンズィモジェを、彼が目指していたロシア帝国領土の分割およびロシア帝国領から生じる収益の固有化などの方針(これはプロメテイズム(英語版)、またはプロメテアニズムと呼ばれている)を補完するものと位置付けた[10][11][12][13]。

ところが、ミェンズィモジェ構想はリトアニア人にとって「ようやく手に入れた独立に対する脅威」であるとされ、またウクライナ人にも「自分たちの独立願望を阻害する脅威」と認知された[14][15][16]。その一方でフランスはこれらの活動を支援したが、ロシア帝国やその他の西欧諸国はこの運動に反対していた[17][18][19]。ピウスツキの計画が失敗に終わって20年が経った頃には、彼が編入を試みたほぼすべての国家がソヴィエト連邦やナチス・ドイツに編入されてしまった(フィンランドはソヴィエト連邦との冬戦争にて幾分かの領土を失ったものの、国家の編入へと至ることはなかった)。

始まり

ポーランド=リトアニア共和国
詳細は「ポーランド・リトアニア共和国」および「ハーデャチ条約」を参照
ポーランド=リトアニア共和国の最大版図

ポーランドとリトアニアによる合同と軍事同盟の締結は、ドイツ騎士団やジョチ・ウルス、モスクワ大公国などの両国共通の脅威に対する相互援助を実現させた。この同盟は1385年に初めて締結され、ポーランド女王ヤドヴィガとリトアニア大公国のゲディミナス朝大公ヨガイラの婚姻が行われた。リトアニア大公のヨガイラは、後にヴワディスワフ2世としてポーランド国王に就任することとなった。

この連合はポーランド=リトアニア共和国として長く続くことになり、18世紀末のポーランド分割までその名を地図に刻むことになった。

共和国の下で、この計画は「ポーランド=リトアニア=モスクワ共和国」と呼ばれる国家の樹立を標榜するまでに至ったが、ついに計画が実現することはなかった。

チャルトリスキの計画

一月蜂起にて掲げられたポーランド=リトアニア=モスクワ共和国の紋章。ポーランド王国の白い鷲、リトアニア大公国の騎士、モスクワ大公国の大天使ミカエルと各国の紋章のモチーフが描かれている。

1832年11月から1863年の一月蜂起にかけて、ポーランド=リトアニア共和国を復活させるという考えが、当時パリに亡命中であったポーランド王国の貴族アダム・イエジィ・チャルトリスキによって提唱された[20]。

アダム・イエジィ・チャルトリスキ

チャルトリスキは、1792年のポーランド=ロシア戦争にてロシア帝国と戦い、1794年のコシューシコ蜂起にも参加をするつもりだった(彼はその道中のブリュッセルにて逮捕されたため参加できなかった)。その後、1795年に彼と弟はロシア帝国陸軍への加入を果たした。当時の国王エカチェリーナ2世は彼らをとても気に入り、彼らから没収していた土地の一部を回復させてやるほどであった。チャルトリスキは、ロシア皇帝パーヴェル1世とアレクサンドル1世の下で外交官や外務大臣に務め、ナポレオン戦争の最中には対仏大同盟の結成にも寄与した。彼は1830年11月に発生したポーランド蜂起の指導者の一人でもあり、ロシア帝国による蜂起の鎮圧後には死刑を宣告されるも、最終的にフランスへの亡命を許された。

1827年に完成し1830年にのみ出版された彼の著書 ”Essai sur la diplomatie” (外交論)において、チャルトリスキは「国家の支配域を南や西へと拡大し、東や北からの到達不可能な自然の摂理によって、ロシアはヨーロッパの継続的な脅威になる」と気付き、また「奴隷よりも友人」と関係を築きながらは上手くやっていくだろうと述べた。また彼はプロイセンによる将来的な脅威を突き止め、東プロイセンのポーランドへの編入を力説した[21]。

チャルトリスキの外交努力はピウスツキのプロメテイズム計画、特にポーランド独立を他のヨーロッパの被支配諸国の運動(その中にはコーカサス山脈に位置するジョージアまで含まれていた)から見抜いていた[22]。

チャルトリスキは、フランスやイギリスやオスマン帝国のサポートによってポーランド=リトアニア共和国が復活することを何より切望しており、その共和国にはチェコ人・スロバキア人・ハンガリー人・ルーマニア人・そして後にユーゴスラビアを形成する南スラヴ人が含まれていた。彼の構想では、ポーランドがハンガリー人とスラヴ人・ルーマニア人との闘争の調停を行えるように出来ていた[23]。この構想は1848年革命が発生する中で到達できると考えられていた[23]が、西欧諸国からの支援が得られなかったこと、ハンガリーとチェコ・スロヴァキア・ルーマニアとの間で妥協が取れなかったこと、ドイツ民族主義が勃興していたことが合わさり失敗に終わった[23]。

それにもかかわらず、ポーランドの歴史研究家マリアン・カミル・ジエヴァノフスキ(英語版)は「王子の努力は16世紀のヤゲヴォ朝政権とユゼフ・ピウスツキのプロメテイズム連合体計画とを繋ぐ重要な考えである」と結論付けている[23]。

ピウスツキとミェンズィモジェ

ピウスツキの最初のポーランド=リトアニア共和国『復興』計画

ユゼフ・ピウスツキの戦略的な目標は、強化された準民主的なポーランド=リトアニア共和国を復活させることであった一方、ロシア帝国や後続のソヴィエト連邦を民族構成を利用して崩壊させるように活動していた[24](特にソヴィエト連邦の崩壊は彼のプロメテイズム計画の一つであった[24])。ピウスツキはミェンズィモジェによって誕生する連合をロシアやドイツの帝国主義に対抗する平衡力と見ていた[25][26]。

ジエヴァノフスキによると、ピウスツキのミェンズィモジェ構想は計画的に実施されることはなく、彼自身の実用本位的な直感に依存していたという[27]。また、ブリストル大学の学者ジョージ・サンフォード(英語版)によると、1920年のポーランド=ソヴィエト戦争の頃にはピウスツキもこの計画が実行できないことは理解していたという[28]。

対立

ユゼフ・ピウスツキ

ピウスツキの計画は、事実上全方面からの反対に遭った。ミェンズィモジェ構想によって自身の勢力圏が直接的に脅かされていたソヴィエト連邦は、ミェンズィモジェ協議の妨害工作を行った[18]。また、連合国はボルシェヴィズムが一時的脅威であるとしか認識せず、勢力均衡の観点から事態を荒立てることでロシアとの歴史的繋がりを失うことは望んでいなかった。

その為、ピウスツキがロシア白軍の支援を断ったことに対して連合国は激怒。ピウスツキや彼のミェンズィモジェ構想を疑問視し、ポーランドに対して「自身の民族圏に引きこもっていればよい」と主張するまでに至った[29][30][31]。

1918年に独立を勝ち取ったリトアニア[30][32]はミェンズィモジェへの加入に消極的になり、独立を模索していたウクライナ[19]は再びポーランドへ編入されることを恐れた[30]。

当時まだ民族意識が小さかった白ロシア(ベラルーシ)の人々は、独立することにもピウスツキによって連合に組み入れられることにも興味が無かった[30]。結局ピウスツキの計画は、第一次世界大戦とその後に引き続いて発生した幾度もの領土を巡った国境紛争(ポーランド=ソヴィエト戦争、ポーランド=リトアニア戦争(英語版)、ポーランド=ウクライナ戦争、チェコスロヴァキアとの国境紛争)によって、実現の機会を失ってしまったのだった。

また、ピウスツキの構想は国内からも反発の声が上がった。特に、ポーランド国民民主党(英語版)の党首ロマン・ドゥモフスキ(英語版)は非ポーランド人をポーランド国民化することによって民族的に同質なポーランドを建国することについて疑問を呈した[4][33][34]。ドゥモフスキを始めとするポーランドの政治家の多くは多文化的な連邦国家の形成に反対し、ポーランド人による単一の国民国家の形成をより望んだ[4]。サンフォードは1926年のクーデタにて再び権力を掌握したピウスツキの政策について、それまでと同じように東部のスラヴ民族の同化や権力の集中化に努めたと語った[28]。

幾人かの学者が、ピウスツキが自身の連合構想で語った選挙君主制に額面的に賛成していた[35]一方で、ほかの学者達は選挙君主制に対して懐疑的であり、1926年クーデタ以降にピウスツキが独裁的な権力を握っているという見方が強かった[13][36]。特筆すべきことにの構想に対してほとんどのウクライナ人歴史家が否定的な見方を示しており、例えばオレクサンドル・デルハチョフは「ミェンズィモジェ連合は、ポーランド人以外(殊にウクライナ人)への興味が薄い大ポーランドを形成することになっただろう」と述べている[15]。

ピウスツキは「ウクライナの独立無くして、ポーランドの独立はない」と主張していた。このことに関して幾人かの歴史研究家は、ピウスツキはウクライナの繁栄を確かなものとするためにロシアからウクライナを独立させることに関心があったのではないか、と考えている[37]。しかし、彼はガリツィアやヴォルィーニ(両地域ともウクライナに編入されていた地域である)獲得の為にウクライナと戦争を起こすことに躊躇しなかった上、独立した西ウクライナ人民共和国を滅ぼして係争地であったブク川以東にポーランド陸軍を進駐させた[38](ルヴフのようなポーランド人が大多数を占めていた都市は、その周囲がウクライナ人が多数住む地域にあったのだった)。

ポーランドの将来的な国境について、ピウスツキは「協商国に頼りながら西方で獲得できる地は皆ドイツに奪われた」と語った一方で、東方については「開閉可能なドアは多くあるし、それらは誰かが無理やり開けさせることでしか開かない」と語った[39]。東欧の混沌に際して、ポーランドは可能な限りの領土拡張に乗り出し、その一方でロシア内戦への西欧諸国の介入[38]やその行く末には関心を示さなかった。

失敗

ピウスツキの二番目のミェンズィモジェ構想

ポーランド=ソヴィエト戦争の余波によって、ピウスツキが計画してきたポーランドとウクライナの合同を礎とする中東欧連合は、遂に実現の機会を失った[40]。

ピウスツキは新たにバルト三国やバルカン諸国との連合や同盟を構想し始めた。この計画は中央ヨーロッパ連合体の形成を目指してポーランド・チェコスロヴァキア・ハンガリー・スカンディナヴィア諸国(スウェーデン・デンマーク・ノルウェー・フィンランド)・バルト三国(エストニア・ラトヴィア・リトアニア)・イタリア・ルーマニア・ブルガリア・ユーゴスラヴィア・ギリシアの参加が予定された。つまり、ミェンズィモジェはその領域をバルト海から黒海だけではなく、北極海から地中海にまで広げたということだ[40]。

しかし、この計画もまた失敗に終わった。ポーランドがチェコスロヴァキア・リトアニアから信頼されていなかったのであった。他の国々とは良好な関係が築けていたのだが、これらの両国はポーランドと国境を接しており、全ての参加国が互いに協力し合う関係を築かねばならないような巨大な中欧国家を建設することは事実上不可能だったのだ。結局、この計画は1921年にポーランド=ルーマニア同盟(英語版)が締結されるのみに終わり[41]、チェコスロヴァキアは対照的にフランスの支援の下で、ルーマニア・ユーゴスラヴィアと共に小協商を設立することに成功したのだった。

ユゼフ・ベックの「第三のヨーロッパ」構想。ポーランド、ハンガリー、ルーマニアから構成されている。

ピウスツキは1935年に死亡。二番目に考案されたミェンズィモジェ構想は、戦間期にポーランド外務大臣でピウスツキの子分でもあったユゼフ・ベックの下で「第三のヨーロッパ」構想として1930年代後半に実現が試みられることとなった[40]。

1932年に結ばれていたポーランド=ソヴィエト不可侵条約があるにも関わらず、ソヴィエト連邦はナチス・ドイツとの合同を許諾、中欧と東欧をそれぞれの支配下に置くことを承認した[42]。幾人かの歴史研究家は、ピウスツキのミェンズィモジェ構想のように、ドイツやソヴィエト連邦との平衡力を作ることに失敗したのは、第二次世界大戦における被支配国の運命だったのではないだろうか、と語っている[25][26][43]。

第二次世界大戦とその後

ヴワディスワフ・シコルスキ

バルト海・黒海・アドリア海およびエーゲ海にまたがって広がる地理的自主独立体を結成するという「中央ヨーロッパ連合」構想は、第二次世界大戦期にポーランド亡命政府のヴワディスワフ・シコルスキによって復活することになった。

1942年にその第一歩としてギリシア・チェコスロヴァキア・ポーランド・ユーゴスラヴィアの4亡命政府による会談が実施され、ギリシア=ユーゴスラヴィア連合(英語版)とポーランド=チェコスロヴァキア連合の将来的な結成が決定した。

しかし、この合意に対してチェコ人の反発や連合国の反感を招いたうえ、最終的にこの計画はソヴィエト連邦の反対によって失敗に終わった[40]。同時期にポーランド地下国家(英語版)の樹立が宣言されると、どんな単一の国家にも支配されない中央ヨーロッパの連合国家の建設を叫ぶ声が高まっていった[44][45]。

20世紀の末から21世紀にかけても様々な形でミェンズィモジェ構想は継続して考えられており、中にはポーランド主導ではないような地域安全保障協定などもある。しかし、ポーランドの近隣国は変わらず、そういった数々の提案を帝国主義的であると見ている[46]。
1991年にワルシャワ条約機構が解体。その後1999年にチェコ・ハンガリー・ポーランドの三国は北大西洋条約機構に加盟し、他の旧社会主義国家へNATO加盟への足掛かりを作った[42]。

事実、2004年にはスロベニア・スロバキア・ブルガリア・ルーマニア・バルト三国の七か国がNATOへと加盟した。ウクライナもヴィクトル・ユシチェンコ大統領がNATOへの加盟に関心を示した[47]が、次代のヴィクトル・ヤヌコーヴィチは一切関心を示さなかった[48]。

その後欧州連合にも、2004年にポーランド・スロベニア・スロバキア・チェコ・ハンガリー・バルト三国が、2007年にルーマニアとブルガリアが、2013年にはクロアチアが加盟している。

2011年5月12日、ヴィシェグラード・グループに参加する四か国(ポーランド・スロバキア・チェコ・ハンガリー)は、ポーランドを最高司令とする任務部隊の結成を宣言した。
2016年までに各国から独立した部隊として結成が予定され、NATOの指揮下には入らないことも同時に宣言された。さらに、2013年からヴィシェグラード・グループの四か国はNATO即応部隊の援助のもとで合同演習を実施することも決定した。研究者の中には、この一連の動きが中央ヨーロッパの統合を進める第一歩となるとする者もいる[49]。

また2015年8月6日、ポーランド大統領のアンジェイ・ドゥダは就任演説において、ミェンズィモジェをモデルにしたと考えられる中央ヨーロッパ連合の構想を発表した[50][51][52]。この構想に似たものとして、三海洋イニシアティブの第一回サミットが2016年にクロアチアのドゥブロニクにて開催されている[53]。

影響

ポーランドのミェンズィモジェ連合という概念は、世界中の様々な地域においても似たように確認できる。

19世紀初頭に、エルサルバドル・ニカラグア・ホンジュラス・グアテマラ・コスタリカといった中央アメリカの諸国において、イギリス帝国やメキシコ帝国、大コロンビアといった強国に対抗するために中央アメリカ連邦共和国という国家を樹立しようとする試みがなされた[54]。しかし、この連邦共和国は内紛によって短命に終わった[55]。

また20世紀末には、カンボジア=ベトナム戦争や中越戦争によって引き起こされた反ベトナム感情(英語版)の影響によって、ベトナム国内ではインドシナ半島を中心とした東南アジアに、中国などに対抗するための共産主義ミェンズィモジェを設立する構想が高まりを見せた[56]。しかし、ベトナムの帝国主義的発想や「中国・カンボジア・タイへの侵攻計画」に対して批判が殺到し、実現することはなかった。 』

ふたつの世界大戦を挟んだ時期、中欧で計画されたインテルマリウム復活の意味

ふたつの世界大戦を挟んだ時期、中欧で計画されたインテルマリウム復活の意味 | 《櫻井ジャーナル》 – 楽天ブログ
https://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/202207040000/

『ラトビアのリガで6月20から「​三海洋イニシアチブ​」の首脳会議が開かれ、ウクライナの加盟が事実上決まったようだ。名称に含まれる「三海洋」とはバルト海、アドリア海、黒海を指す。

 この集まりは2015年にポーランドとクロアチアが主導して組織され、現在加盟している国はオーストリア、ブルガリア、クロアチア、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア。そこにウクライナが加わるわけだが、その上にはアメリカとイギリスが存在している。

 ウォロディミル・ゼレンスキーが大統領を務めているウクライナの現体制は2013年11月から14年2月にかけてバラク・オバマ政権が仕掛けてクーデターによって作り出された。ウクライナの東部や南部、つまりロシア語を話し、ロシア正教の影響下にある地域を支持基盤にしていたビクトル・ヤヌコビッチ大統領を暴力的に排除したのだ。

 東部や南部の人びとはクーデター政権を拒否、南部のクリミアでは住民投票を経て人びとはロシアとの統合を選んだ。東部のドネツクでは自治を、ルガンスクは独立をそれぞれ住民投票で決めたが、クーデター政権が送り込んだ部隊と戦闘になり、戦争が続いている。オデッサではネオ・ナチの集団が反クーデター派の住民を虐殺、制圧してしまった。

 ゼレンスキー政権はドネツクとルガンスク、つまりドンバスを制圧してロシア語系住民を「浄化」する作戦を3月から開始する予定だったことを示す文書がロシア軍によって回収されているが、このプランは成功しそうにない。

 ある時期までドンバスを占領してきたウクライナ内務省の親衛隊は住宅地域に攻撃拠点を築き、住民を人質にしてロシア軍に対抗していたものの、戦況は圧倒的に不利だった。ここにきてウクライナ兵の離脱が目立っている。

 ドイツの情報機関「BND(連邦情報局)」が分析しているように、​このまま進むと、ゼレンスキー政権が送り込んだ部隊は7月いっぱいで抵抗を終えざるをえなくなり、ロシア軍は8月にドンバス全域を制圧できる​と見られている。

 ジョージ・ソロスやネオコンはウクライナに対し、ロシア軍と戦い続けろと言っているが、​ヘンリー・キッシンジャーはスイスのダボスで開かれたWEF(世界経済フォーラム)の年次総会で、平和を実現するためにドンバスやクリミアを割譲するべきだと語っている​。

 そうした状況の中、ゼレンスキー大統領は「三海洋イニシアチブ」へ参加する意思を示し、事実上認められたわけだ。軍事的な抵抗をやめざるをえなくなることを見通しての布石だろう。

 このイニシアティブは第1次世界大戦の後に始まった運動「インテルマリウム」の焼き直しである。バルト海と黒海にはさまれた地域ということでこのように名づけられたようだ。

 これはポーランドで反ロシア運動を指揮していたユゼフ・ピウスツキが中心になって始められ、そのピウスツキは日露戦争が勃発した1904年に来日し、彼の運動に協力するよう、日本側を説得している。

 ポーランドでは1925年に「プロメテウス同盟」という地下組織が編成され、ウクライナのナショナリストも参加したのだが、ポーランド主導の運動だったことから離反するウクライナの若者が増え、OUN(ウクライナ民族主義者機構)が組織された。

 中央ヨーロッパには16世紀から18世紀にかけて「ポーランド・リトアニア連邦」が存在していたが、その領土が最大だった1600年当時の連邦をピウスツキは復活させようとしていたようだ。この地域はカトリックの信徒が多く、ローマ教皇庁の内部には中央ヨーロッパをカトリックで統一しようという動きがあり、インテルマリウムと一体化していく。

 中央ヨーロッパを統一しようという動きでは、ブリュッセルを拠点としたPEU(汎ヨーロッパ連合)も関係してくる。この組織はオットー・フォン・ハプスブルクやリヒャルト・フォン・クーデンホーフ-カレルギーらによって1922年に創設され、メンバーにはウィンストン・チャーチルも含まれていた。(Stephen Dorril, “MI6”, Fourth Estate, 2000)

 チャーチルはイギリスの貴族を父に、アメリカの富豪を母に持つ人物で、ロスチャイルド家の強い影響下にあった。そのイギリスは19世紀にロシアを制圧するプロジェクトを始めている。いわゆる「グレート・ゲーム」だ。

 そうした戦略をまとめ、1904年に「歴史における地理的要件」というタイトルで発表したハルフォード・マッキンダーは地政学の父と呼ばれている。その後、アメリカやイギリスの戦略家はマッキンダーの戦略を踏襲してきた。その中にはジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」もマッキンダーの理論に基づいている。インテルマリウムはマッキンダーの戦略に合致し、ロシアを制圧する上で重要な意味を持つ。

 マッキンダーの理論はユーラシア大陸の周辺部を海軍力で支配、内陸部を締め上げ、最終的にはロシアを制圧するというもの。この戦略を成立するためにスエズ運河が大きな意味を持つことは言うまでもない。

 この運河は1869年に完成、75年からイギリス系の会社が所有している。そのスエズ運河会社の支援を受け、1928年に創設されたのがムスリム同胞団だ。後にイギリスはイスラエルとサウジアラビアを建国、日本で薩摩や長州を支援して「明治維新」を成功させているが、これもイギリスの戦略に合致している。

 インテルマリウムはポーランド人ナショナリストの妄想から始まったが、カトリック教会の思惑やイギリスやアメリカの戦略にも合う。米英にとって西ヨーロッパ、特にドイツ、フランス、イタリアは潜在的なライバル。20世紀にあったふたつの世界大戦はこの3カ国をライバルから潜在的ライバルへ引き摺り下ろすことになったが、復活する可能性はある。

 第1次世界大戦が始まる直前、帝政ロシアでは支配層の内部が割れていた。帝国は大地主と産業資本家に支えられていたが、対立が生じていた。大地主がドイツとの戦争に反対していたのに対し、産業資本家は賛成していたのだ。

 大地主側の象徴がグリゴリー・ラスプーチンであり、産業資本家側には有力貴族のフェリックス・ユスポフがいた。ユスポフ家はロマノフ家を上回る財力があるとも言われる貴族で、イギリス人を家庭教師として雇っていた。

 その家庭教師の息子で、ユスポフ家の邸宅で生まれたステファン・アリーは成人してからイギリスの情報機関MI6のオフィサーになった。またフェリックスは後にイギリスのオックスフォード大学へ留学、そこで親友になったオズワルド・レイナーもMI6のオフィサーになる。

 ラスプーチンが暗殺未遂事件で入院したこともあり、ロシアは参戦するが、ラスプーチンは戦争反対の意見を変えない。そうした中、イギリスはMI6のチームをロシアへ送り込んだが、その中心メンバーはアリーとレイナーだった。ラスプーチンを射殺したのはユスポフだと一般的には言われているが、殺害に使われた銃の口径などからレイナーが真犯人だとする説もある。

 1917年3月の「二月革命」でロマノフ朝は崩壊、産業資本家を中心とする体制ができあがり、戦争は継続されることになった。それを嫌ったドイツは即時停戦を主張していた亡命中のウラジミル・レーニンに注目し、ボルシェビキの指導者を列車でモスクワへ運び、同年11月の「十月革命」につながる。こうした経緯があるため、ナチスが実権を握るまでソ連とドイツの関係は良好だった。米英の巨大金融資本がナチスのスポンサーだったということは本ブログで指摘してきた通りだ。

 ソ連/ロシアとドイツが手を組むことを米英の支配層は嫌う。アメリカのジョー・バイデン政権が行っているロシアに対する「制裁」で最も大きなダメージを受けるのは西ヨーロッパだ。

 ソ連/ロシアと西ヨーロッパを分断するインテルマリウムは米英の戦略に合致すると言える。インテルマリムに「三海洋イニシアチブ」という新しいタグをつけて復活させた意味は言うまでもないだろう。』

対ロ戦、「世界秩序」決める ゼレンスキー氏、NATOに支援要請

対ロ戦、「世界秩序」決める ゼレンスキー氏、NATOに支援要請
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022062901146&g=int

 ※ マッキンダーや、スパイクマンの「地政学」によれば、「ハートランド」を支配する者は、「世界島」を支配することになる…、とされる…。

『【エルマウ時事】ウクライナのゼレンスキー大統領は29日、マドリードで開かれている北大西洋条約機構(NATO)首脳会議にオンラインで出席して演説した。ロシアとの戦いは「将来の世界秩序」を決めるとして、NATOが軍事・財政面で一段の支援を行うよう求めた。

欧州の米軍戦力増強 「NATOはかつてなく必要」―バイデン氏

 ゼレンスキー氏は、ロシアの次の標的は「モルドバかバルト3国か、それともポーランドか」と問い掛けた上で「答えはこれらすべてだ」と指摘。現在の戦闘は「欧州の支配をめぐる戦争だ。将来の世界秩序がどうなるかを決める」と強調した。

 その上で、勝利には「最新のミサイルと防空システムが必要だ」と支援を要請。財政面でも月50億ドル(約6800億円)の援助を求めた。 』

地政学で読む世界覇権2030

地政学で読む世界覇権2030 単行本 ? 2016/1/29
https://www.amazon.co.jp/%E5%9C%B0%E6%94%BF%E5%AD%A6%E3%81%A7%E8%AA%AD%E3%82%80%E4%B8%96%E7%95%8C%E8%A6%87%E6%A8%A9%EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BC%93%EF%BC%90-%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%BC%E3%82%A4%E3%83%8F%E3%83%B3-ebook/dp/B01B2GQMTI

 ※ ある意味、「予言の書」だった…。

 ※ 事態は、「この本に書かれていることの通りに推移した」ように、見える…。

 ※ オレは、「kindle版」を買って、「kindle for PC」で読んだ…。

『中国、欧州、ロシアは次々に自滅。
世界は確かに破滅に向かっている。
しかし、アメリカだけがそれを免れる。
気鋭の地政学ストラテジストが、2030年以降の世界地図を読み解く。

ベストセラー『100年予測』著者のジョージ・フリードマンが1996年に設立した影のCIAとも呼ばれる情報機関「ストラトフォー」。

影のCIAとも呼ばれるその機関で、著者はバイス・プレジデントまで上り詰めた。

ウォール・ストリート・ジャーナル、ブルームバーグ、AP、フォーブスなど、多数のメディアが彼の分析に注目している。

『100年予測』やランダース『2052』、英エコノミスト編集部『2050年の世界』、カプラン『地政学の逆襲』、トマス・フリードマン『フラット化する世界』につづく未来予測の新機軸。

●2030年までに、いったんは米国中心主義が薄れる。
●しかしその後、ロシア、欧州、中国は次々に自滅し、アメリカは世界で圧倒的な超大国になる。
●世界各地で紛争が勃発し、アメリカのライバルたちは疲弊する。
●地理的に離れているため、世界で起きる紛争はアメリカに影響しない。
●地形のおかげでアメリカはすでに必要なものをすべて手に入れている。
●アメリカの人口構成が若返り、ふたたびキャッシュを生み出す。』

※ 人口動態的に、ロシアには時間的な余裕が無かった…、軍事行動を起こすことができるギリギリのタイミングが「2022年」だった…、という分析だ…。

〔「逆説の地政学」〕

 ※ 残念ながら、紙の本しか無いようだが、目次だけでも参考になるようなんで、紹介しておく…。

逆説の地政学 単行本(ソフトカバー) – 2018/3/30
上久保 誠人 (著)
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4771030243/diamondonline-22

『21の逆説で混迷の国際情勢を読み解く

日本人の常識を覆す視点から、国際社会における日本の戦略を再考。独自の「4D地政学」で21世紀の問題郡への新たな視点を提供する。

これまでの地政学による地理上の国家間関係・安全保障だけではなく、石油・天然ガス・原子力など資源エネルギーを独占する多国籍企業ネットワークや金融など、今日の複雑化する国際情勢を独自の「4D地政学」を提唱することで読み解く。

日本人の常識を覆す「英国が中心の世界地図」の視点を用い、国際社会における日本の戦略を再考する。

21の逆説で混迷の国際情勢を読み解き、「4D地政学」を用いて21世紀の問題郡への新たな視点を提供する。』

『目 次

序 章

第1章 地政学とは
1.1. 海洋国家の視点に立つ「英米系地政学」とは
1.2. 英米系地政学は「平和のための勢力均衡」
1.3. 地政学で見る、国家間紛争の歴史

第I部 アメリカ・ファーストと新しい国際秩序

第2章 米国が築いてきた第二次世界大戦後の国際社会体制

第3章 石油を巡る国際関係の歴史

3.1. 石油の時代の始まり
3.2. 第二次世界大戦まで――石油の戦略物質化とセブン・シスターズによる支配の完成
3.3. 第二次大戦後、産油国の「資源ナショナリズム」と覇権国・米国の戦略
3.4. 冷戦終結後の新石油秩序の形成

第4章 天然ガスの地政学

4.1. 天然ガス――知られざる実力者
4.2. 天然ガス・パイプラインを巡る国際政治

第5章 原子力の歴史

5.1. 第二次世界大戦後の原子力の平和利用の始まり
5.2. 原発事故と核兵器削減の動き

第6章 原子力の地政学

6.1. 「原子力産業の衰退」から「環境にやさしい原子力」へ
6.2. 原発輸出と地政学

第7章 シェール革命とアメリカ・ファースト

7.1. シェール石油・シェールガスとは
7.2. 「シェール革命」と米国
7.3. 「シェール革命」の国際社会への影響
7.4「.アメリカ・ファースト」と「生存圏」を争う国際社会へ――「アメリカ・ファースト」による、世界の新しい潮流

第8章 「EU離脱後」の英国を考える

8.1. 英国の「EU離脱」
8.2. 英国が持つ巨大なリソース
8.3. まとめ――EU離脱は英国に不利にならない可能性がある

第9章 ドイツの「生存圏」確保のために存在するEU

9.1. そもそもEUが創設された理由は「ドイツ問題」だった
9.2. 「ドイツを封じ込めるため」から「ドイツ独り勝ち」へ
9.3. EUは、ランドパワー化したドイツの「生存圏」確保のためにある
9.4. 「ドイツ独り勝ち」に対する不満が爆発する
9.5. ドイツ経済が抱えるリスク
9.6. EUは「エネルギー自給」に問題があり、「生存圏」を築けない

第10章 ロシア――停滞と復活の間で

10.1. 英米系地政学で考えるランドパワー・ロシアの戦略的敗北
10.2. プーチン大統領が掲げる「大国ロシア」は虚構に過ぎない
10.3. 「生存圏」確保のためにロシアとドイツは接近する

第11章 急拡大する中国とどう対峙するか

11.1. 中国の軍事的拡大、経済発展と民主化を考える
11.2. 将来の民主化につながる学生という名の「政治アクター」
11.3. 第I部のまとめ――アメリカ・ファーストの時代を生き抜くために

第II部 地理で考える政策科学

第12章 国際通貨政策の地政学

12.1. 経済学における「円の国際化」「人民元の国際化」の先行研究
12.2. 日本の「円の国際化」の取り組み
12.3. 中国の「人民元の国際化」の取り組み
12.4. 2008年の世界的金融危機以降、中国の影響力が拡大している
12.5. 分析――日中国際金融政策過程の比較

第13章 成長戦略と地政学

13.1. 日本の成長戦略は、日本企業の成長とイコールではないはず
13.2. 革新機構による産業再編は「国家による斜陽産業の延命」の再現だ
13.3. 日本は外資導入が経済成長につながる好条件を備えている
13.4. 外国製造業の「アジア地域向け研究開発拠点」や「高品質部品の製造拠点」を日本に誘致せよ
13.5. 経営学を専門的に学んだアジアの若い経営者が日本企業を経営することの利点
13.6. 例えば、トランプ政権とシリコンバレーの摩擦解消に一役買う

第14章 エネルギーから福祉の循環型ネットワーク形成と紛争回避

――ロシア・サハリン州を事例として――

14.1. 「紛争」に焦点を当てた、従来の石油天然ガスを巡る国際政治学
14.2. 「エネルギーから福祉の循環型地域ネットワーク」の構想
14.3. 「エネルギーから福祉への循環型地域ネットワーク」建設の事例――ノルウェー
14.4. ロシア・サハリン州
14.5. サハリン州「発展戦略2025」
14.6. サハリン州の福祉政策・教育政策
14.7. サハリン州の様々な建設プロジェクト
14.8. サハリン州を巡るロシア、中国、韓国の動き
14.9. 日本はどう動くべきか
14.10. まとめ

第15章 民主主義を考える

15.1. 日本のテロ対策は英国流・フランス流のどちらにすべきか
15.2. メディアは国益に反する報道を控えるべきか――?英BBC・ガーディアン紙の矜恃に学ぶ
15.3. ロシアとの共同研究で改めて知る、日本の「学問の自由・独立」の価値

第16章 未来の地政学

16.1. 「空間」における国家間の「動的」な距離感を説明する「4D地政学」
16.2. 人工知能と地政学

終 章

あとがき
人名索引
事項索引』

〔遠交近攻〕

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%A0%E4%BA%A4%E8%BF%91%E6%94%BB

『遠交近攻(えんこうきんこう)は、兵法三十六計の第二十三計にあたる戦術。「遠とほきに交まじはり近ちかきを攻せむ」と訓読し、「遠い国と親しくし近くの国を攻略する」という意味。

概要

中国の戦国時代では諸国は絶えず戦争を続けていたが、多くの国々が分立していたため、一国を攻める場合には複数の国々が同盟を組み、攻める国を二正面戦争状態にさせ、一国を攻めた後に得られた戦果は分担するのが慣わしであった。遠方との緊密な連絡を確保するのが難しい前近代においては、通常その場合に同盟相手として選ばれるのは自国と隣接した国であった。しかし近隣の同盟国と共同して遠方の他国に攻め込み、そこから領地を得られたとしても、それは飛び地となってしまう場合が多い。このため領地の維持が難しく、結局はすぐまた領地を取り返されてしまっていた。中国は広大な大陸国家であるので、飛び地の領土経営・管理防衛は本国からでは非常に難しかったのである。

范雎は諸国を遊説し、はじめ魏の大夫に仕えたが、異心があると疑われて、秦に逃れ、昭襄王に仕えて遠交近攻を説いた。すなわち、遠い国と同盟を組んで隣接した国を攻めれば、その国を滅ぼして領地としても本国から近いので防衛維持が容易である。この方策に感銘を受けた昭襄王は范雎を宰相にして国政を預けた。

遠い斉や楚と同盟し、近い韓、魏、趙を攻めた秦は膨張を続け、やがて六国を平定して中国大陸の統一を成し遂げた。

このように遠くの相手と手を結んで近くの敵を片付ける政策を遠交近攻という。』

※ こういう地図ばかり見ていると、気づかないが、米ロは、実は「隣国」だ…。

※ 御覧の通りだ…。

※ それで、まあ、いきなり「中央」に攻め込むのは、ムリだから、ジワジワその周辺から固めていくという戦略を立てたわけだ…。

※ もう一度、よく見てみよう…。

※ ユーラシア大陸の西の端にある「島国」は、何か…。東の端にある「島国」は何か…。

※ ブレグジットしたのは、何故か…。2プラス2なんか盛んにやっているのは、何故か…。

※ いろんなものが、だんだん見えてくるだろう?

次の太平洋軍司令官候補が台湾に切迫する危機に警鐘

次の太平洋軍司令官候補が台湾に切迫する危機に警鐘:東京の郊外より・・・:SSブログ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-25

『3月23日の上院での指名承認公聴会で
中国のインド国境、香港、ウイグルでの行動をよく見よ
我々が予期していなかった行動を次々と繰り出している

Aquilino4.jpg23日、次の太平洋軍司令官(有事に対中国作戦の米軍指揮を大統領直属で執る)候補であるJohn Aquilino太平洋海軍司令官が上院軍事委員会での指名承認公聴会で、中国は台湾支配に向けた行動を「最優先」にしているとして、「大半の人が考えているよりもはるかに切迫している」と強い危機感を訴えました。

一方で、今の太平洋軍司令官であるDavidson海軍大将が9日に同じ委員会で述べた、「6年以内に」との表現については明確にコメントしませんでした 

この指名承認公聴会は、大半が中国対処問題について費やされ、その他の報道では、グアム島のミサイル防衛が重要な点や、空母11隻体制に関しての質問があったようですが、台湾への危機感を述べた部分が大きな関心を集めていますのでご紹介しておきます

24日付CNN電子版報道によればAquilino大将は
Aquilino5.jpg●「この問題は大半の人が考えているよりもはるかに切迫しているというのが私の意見だ。われわれは受けて立たなければならない」
●「中国とインドの国境問題にしても、香港での民主化運動弾圧においても、ウイグル族に対する行動にしても、我々が予期していたよりも遥かに速い速度で、中国は攻撃的な姿勢で行動を起こしている」

●「だから私は、事態の緊急性について訴え続けているのだ。今すぐに備えなければならない」 ただし、具体的な時程や、この発言の裏付けとなる情報について言及しなかった

●また「我々は中国の行動を変えることができなかった。我々が目にしてきた、彼らの願望、意図、過去最大の大規模な軍事能力増強などすべてに対し、何もできなかった」

●更に議員からの「中国の台湾侵攻を許すとどのような影響が出るか」との質問に対し、「中国の軍事力が、台湾近傍を通過する世界の物流の2/3を脅かされる恐れがあり、日本・韓国・フィリピンなどアジアの同盟国が米国に寄せる信頼が損なわれる」という2つの大きな懸念があると述べた

グアム島のミサイル防衛強化に関し
Aquilino2.jpg●予算化されていない要求事項として、先にDavidson現司令官が2022年度予算に追加で約5000億円を要望し、グアム島のミサイル防衛強化を最優先事項とした件についてAquilino大将は、「ミサイル防衛上の懸念は、戦域全体の課題である」、「グアム島には、17万人の米国市民と2万人の米軍兵士が所在しており、防護強化は絶対的に必要だ」と語った
●Aegis Ashoreシステムについて同大将は、ポーランドでの配備でコストや種々の課題が判明している件や、日本が最近導入をキャンセルしたことに触れつつ、これらの教訓を踏まえて取り組みことで、2025年までに配備完了可能と考えると語った

●ただし、あくまでもAegis Ashoreは現時点での最適オプションだとの見方を示し、「仮に私が太平洋軍司令官に就くことができ、近未来に実現可能なより良いオプションが見つかれば、耳を傾ける用意がある」と慎重な姿勢も見せ、
●更に、対抗者が追求している攻撃能力に対処するためには、極超音速システムを攻撃と防御の両方で開発することが重要だと強調した

米海軍の空母11隻体制強化の必要性
●米海軍空母の態勢を、現在の11隻体制から16隻体制にすべきと主張している共和党Roger Wicker議員からの、「世界情勢や中国に対処するのに、現在の法律が定める11隻体制で十分なのか? 我々は法律を変えることができる立場にある。考えを聞かせてほしい」と質問に対し、
●同大将は「新たな情勢の変化がない限り、現時点では今の規模が正しいと考えている」と回答した
///////////////////////////////////////////////////

Asia Pacific.jpgDavidson海軍大将が9日に同じ委員会で述べた「中国が今後6年以内に台湾を侵攻して支配下に置く可能性がある」との発言と、23日にAquilino大将が述べた台湾侵攻・支配への懸念度合いのどちらが強いのか、記事によって書き方はまちまちですが、Aquilino大将も相当高い危機感を持っていると感じました

インド国境や香港やウイグルでの動きを、世界がコロナの中で実質上「傍観」している間に、予期せぬ間に、中国にしてやられたのは紛れもない事実であり、その点は肝に銘じておくべきでしょう。

「最後の空母をもっと欲しいか?」質問は、ちょっとかわいそうな質問です。厳しき予算や中国の脅威を踏まえ、国防省として空母削減を検討せざるを得ない厳しい状況にあるのですから。現場指揮官に聞かれても・・・

次の太平洋軍司令官候補者のご紹介

日本との関係も深い優秀なFA-18パイロットです
「対中国作戦指揮官はトップガンパイロットへ」→→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-12-06

アジア太平洋軍関連の記事

「海兵隊長射程兵器の予算カットに不満」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-13
「太平洋軍司令官が追加要望事項レポート」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-03-03
「海兵隊司令官が在日米海兵隊削減を示唆」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-25
「米海兵隊は戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-16-1

タグ:台湾 太平洋軍司令官 上院軍事委員会 John Aquilino 』

中国の海洋進出と我が国の対応策に関する一考察

PDF~「戦略的辺疆」と「3つのパワー」の視点から~
倉持一,海洋政策研究財団研究員
https://www.spf.org/oceans/analysis_ja02/b141126.html

※ 70年前の「言説」が、未だに輝きを失っていないとは、凄い話しだ…。

※ それが、「地政学」の凄みだ…。

※ もっとも、「70年くらいで」一国家や、大陸の「様子」が変わるハズもないから、当然か…。

※ それでも、その「地勢」から「地政」を読み解くんだから、凄まじい「眼力」であることは、確かだ…。

揺らぐ米の覇権、新政権試練 湾岸戦争30年で勢力図一変

揺らぐ米の覇権、新政権試練 湾岸戦争30年で勢力図一変
2021年 世界の転換点(上)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR22BLJ0S0A221C2000000

『2021年は米国、中国、ロシアという大国がそれぞれ歴史の節目を迎える。米国は30年前の湾岸戦争で唯一の超大国の座を誇示したが、その影響力は低下した。国際協調を唱えるバイデン次期米大統領は指導力を取り戻せるのか。世界の行方を展望する。

1月20日。第46代大統領に就任するバイデン氏が、言葉通りに行動するなら、米国は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への再加入や世界保健機関(WHO)への復帰手続きを行…

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・1月20日。第46代大統領に就任するバイデン氏が、言葉通りに行動するなら、米国は温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への再加入や世界保健機関(WHO)への復帰手続きを行い、イラン核合意の立て直しに着手する。

・4年前の17年1月、就任直後のトランプ現大統領が行ったのが、環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱やイスラム圏7カ国からの入国禁止だった。

・「我々は再び自由と民主主義を擁護する。自由主義陣営を導く信頼を取り戻す」。20年12月28日の演説でバイデン氏は多国間主義や法の支配を重視する指導者として振る舞う決意を示した。

・しかし、国内外に広がったトランプ時代の混迷と分断を簡単にリセットし、影響力を取り戻すのは簡単ではない。

【関連記事】
「世界、歴史的転換点に」日本貿易会の小林健新会長
[FT]株式市場、「オズの国」に 迷う投資家

・1991年1月17日に開戦した湾岸戦争。イラクのフセイン政権によるクウェート侵攻と支配を、唯一の超大国となった米国のリーダーシップによって阻止、戦後国際政治の転換点となった。

・冷戦期に激しく対立してきたソ連も米国の立場を支持し、国連決議を法的な根拠として主要国が団結して行動した。日本も経済的にこれを支援し、戦後、自衛隊にとって初の海外派遣としてペルシャ湾の機雷除去に掃海艇を送った。

・「我々と将来世代のために新世界秩序を築く」。当時のブッシュ米大統領(第41代)は開戦時の演説で誇った。

・湾岸戦争後、自衛隊の国際貢献が問われるようになった(2002年12月、海上自衛隊横須賀基地からインド洋に向け出港するイージス艦「きりしま」)
それから30年。「パクス・アメリカーナ(米国による平和)」の陶酔は見る影もない。2001年の米同時テロを経て、力を過信した米国はアフガニスタンとイラクという2つの戦争に突き進み、単独で中東の民主化を強引に進めようとして挫折した。

・上院議員だったバイデン氏は湾岸戦争に反対した。逆にイラク戦争では、上院外交委員長の立場で積極的に開戦を後押しした過去を持つ。後にイラク戦争への賛成を「大きな間違いだった」と後悔の念を示した。

・09年、厭戦(えんせん)ムードのなかで就任したオバマ大統領は、中東からの拙速な撤退を進めた。オバマ氏は「米国は世界の警察官ではない」と言い切った。副大統領だったバイデン氏も同調した。

・14年のロシアによるウクライナ南部クリミア半島併合の背景には、「米国は動かない」とのプーチン大統領の冷たい計算があった。ロシアはフェイクニュースの拡散やサイバー攻撃を駆使、自由主義陣営の分断を図る。

・北朝鮮はイラクやウクライナの経験から「核をやすやすと手放すのは得策でない」という誤った教訓を引き出した。「警察官」の役割を降りた米国の出方を瀬踏みしようと、中国は南シナ海で実効支配の動きを強めた。

2001年9月11日、米同時多発テロで破壊される世界貿易センタービル=ロイター

・世界の勢力図は様変わりした。米国の国内総生産(GDP)の世界に占めるシェアは今世紀初め、世界の30%を超えていたが、20年は25%まで低下。30年前にわずか1.6%だった中国は18%にまで高まった。中国は急速に強まった経済を武器に米国の覇権に挑む。

・12月にドバイで開かれた中東アフリカ最大のIT(情報技術)見本市GITEX。新型コロナウイルス禍の影響で閑散とした会場で、目立ったのは中国企業の姿だった。

・トランプ政権の警告や圧力をよそに、中東やアフリカの国々はコスト面で勝る中国製の高速通信技術や国民監視システムを相次いで採用する。

・「米国のみが世界の安定に責任を持つ」という見方は30年前ですら幻想にすぎなかったかもしれない。それでも、コロナ危機に直面する世界はかつてないほど協力を必要としている。気候変動や過激派テロ対策など一国では解決できない問題ばかりだからだ。

・中ロのような強権国家に対抗するには、米国は価値観を共有する欧州や日本という同盟国と手を携えて進むしかない。同盟と世界の修復に向けたバイデン氏の手腕が問われている。

(ドバイ=岐部秀光)

〈キーワード〉湾岸戦争

1991年1月17日、米国など多国籍軍がイラクを攻撃し始まった戦争。90年8月2日にイラクに侵攻されたクウェートの解放をめざしたもので、91年2月には地上戦に突入した。地上戦突入100時間後にはクウェートを解放し、3月3日には停戦を迎えた。イラクのフセイン政権はイスラエルなども攻撃したが、イスラエルは報復を自重した。約30カ国が参加した多国籍軍の勝利により、米国は超大国の地位を確立した。
日本は多国籍軍支援に130億ドルを拠出したものの、人的貢献がないとして国際社会に評価されなかった。政府は92年に国連平和維持活動(PKO)協力法を成立させ、自衛隊が海外で活動する道が開かれた。

デジタル人民元 「大陸国家」初の基軸通貨狙うか

デジタル人民元 「大陸国家」初の基軸通貨狙うか
編集委員 清水功哉
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65397870T21C20A0000000

『2020年10月26日 2:00 [有料会員限定]

「あれほど力を入れた報告書を出すほど、差し迫った話なのか」。日米欧の中央銀行グループが10月上旬、中銀デジタル通貨(CBDC)に関する報告書を出したことについて、ある日本の金融当局OBが漏らした感想だ。

確かに中銀デジタル通貨がすぐに日本で発行されることはないだろう。技術面などで詰めるべき点はなお少なくない。どの程度のニーズがあるのかという問題もある。ただ、中銀デジタル通貨は単にそうした点だけで論…

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・中銀デジタル通貨は単にそうした点だけで論じるべき話ではない。この分野で先行する中国への対抗という地政学的な意味も持つ話だからだ。

・そこで、本稿では、国家の地理的な条件に着目して国際情勢を分析する地政学の知見を踏まえつつ、中国が計画するデジタル人民元が持つ意味を考える。浮かび上がるのは、歴史的にシーパワー(海洋国家)優位だった通貨覇権の構図をデジタル人民元が崩すシナリオだ。ランドパワー(大陸国家)から初めて基軸通貨が生まれる可能性も意識されやすくなりそうだ。どういうことか。

・シーパワーやランドパワーは地政学の概念だ。前者は海で囲まれていたり、海に接する部分が多かったりする国。米国、英国、日本などだ。後者はユーラシア大陸の中国、ロシア、ドイツなど。以下では前者を海洋国家、後者を大陸国家と記すが、地政学には両者の対立を軸に国際情勢を見る視点がある。そして近代以降、強い経済的な覇権を確立し、世界で幅広く使われる通貨(基軸通貨)を握ったのは海洋国家の側だった。かつては英国、今は米国だ。

「海洋国家」優位だった従来の通貨覇権

・なぜ海洋国家が基軸通貨国となったのか。様々な理由があるだろうが、海を渡った活動により世界に張り巡らせた植民地や同盟国などのネットワークで貿易を活発化。自国通貨の利用を広げた面がありそうだ。

・自国通貨が貿易、投資、決済などで世界的に使われるようになると、様々なメリットを享受できる。貿易で為替変動リスクを気にしなくてすむ。対外赤字が膨らんだ場合の不安感も小さい。海外流出した自国通貨は投資の形で戻ってくる可能性が高いからだ。自らに脅威になる国があれば、決済をできなくする制裁もできる。こうした利点により、通貨覇権の裏付けとなる国力が一段と強まる好循環が起きる。

・もちろん、歴史を振り返ればロシアやドイツのように大陸国家の中にも大きな存在感を持った例はあった。だが基軸通貨を持つには至らなかった。独仏主導で導入した欧州単一通貨ユーロも大陸国家が基軸通貨を持とうと狙った例と言えるが、ドル覇権を揺るがす存在になっていない。貿易、投資、決済の国際的なネットワークづくりで大陸国家は見劣りする。

・そこに登場するのが中国のデジタル人民元だ。2022年までに発行する方針で、実証実験も始めている。日米欧をリードしているのは事実だろう。ただ、過去の法則を当てはめれば、大陸国家、中国が基軸通貨を持つのは難しいことになる。実際、現時点ではドルと比べた人民元の存在感はかなり小さい(グラフ参照)。

・だが、従来の「常識」はアナログ時代のものにすぎないかもしれない。デジタル通貨を手にした国家がどのような影響力を持つのか。明らかになっていない部分も多いのだ。

・ここで重要な意味を持つのは、デジタル技術に高い関心を持つ新興国の間で、この分野の研究・開発に力を入れる中国の影響力が高まっている点である。伊藤亜聖東大准教授は近著『デジタル化する新興国』(中公新書)で「デジタルの領域に目を向けた場合、新興国(あるいは第三世界)における中国の影響力は製造業や一般的なインフラ建設よりも強く現れる可能性がある」と指摘する。

中国はデジタル技術を武器に新興国に進出

・似たことは通貨にも言えそうだ。デジタル人民元は、「アナログ人民元」では見られなかったような新興国への普及を実現させる可能性がある。デジタル通貨は国民の経済活動を監視しやすく、権威主義的な政権が多い新興国には魅力的な面もあるかもしれない。中国と欧州をつなぐ巨大な経済圏をつくる「一帯一路」構想にそって、新興国を中心にデジタル人民元が行き渡るシナリオも絵空事とはいいにくい。デジタル人民元が基軸通貨になるかはともかく、「ドル通貨圏とは独立の通貨圏が形成される可能性は十分にある」(元財務官で現アジア開発銀行総裁の浅川雅嗣氏)。

・いずれにせよ、従来、国際的なネットワークづくりで海洋国家と比べて劣勢だった大陸国家の弱点をデジタル技術が補う可能性に注意が必要だ。一概には言えないが、海洋国家は外との交流を重視してきた「開かれた体質」により、自由貿易、市場経済、民主主義といった価値観との親和性が高かった印象があるのに対して、大陸国家には違った傾向もあるのではないか。権威主義的な政治体制を持ち、金融政策の独立性も低い中国が、デジタル通貨を武器に経済圏を形成・拡大するなら、日本の経済安全保障にいかなる意味を持つのか。こうした点に関する議論も深めるべきだろう。

米、独ロガス計画に「近く制裁」 欧州に撤退迫る

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN240NU0U0A221C2000000

『天然ガスをロシアからドイツに運ぶパイプライン建設計画を阻止するため、トランプ米政権が制裁を近く発動する方向で検討していることが23日、分かった。発動すれば完工が遅れる可能性が高く、米独関係は一段と悪化しそうだ。米欧同盟の修復を掲げるバイデン次期米大統領の足かせになりかねない。

米政府高官が23日、日本経済新聞の取材に対し、独ロのパイプライン建設計画「ノルドストリーム2」をめぐり「とても近い将来に制…』

・欧州の政府や企業に撤退を促している。欧州側の反応を見極めて、制裁の是非を最終判断するとみられる。事業計画はバルト海を通って全長1200キロメートルのパイプラインを建設し、90%以上がすでに完成している。

・トランプ政権や議会はノルドストリーム2について、北大西洋条約機構(NATO)が最大の脅威とみなすロシアに対する欧州のエネルギー依存度が高まると懸念してきた。パイプラインは経済再建がおぼつかないウクライナを経由しないため同国のガス通過料収入が大きく減るとの弊害もある。

・2021会計年度(20年10月~21年9月)の米国防予算の大枠を定める国防権限法案はノルドストリーム2について制裁対象を拡大する条項を盛りこんだ。具体的にはパイプライン建設をめぐる保険や機器認証、敷設船の改良などに関わる企業や個人が追加対象になるとされる。米政権は既存の制裁権限に加え、新法の活用を検討しているとみられる。

・トランプ大統領は23日、米軍の海外駐留縮小を制限する条項などに反対し、国防権限法案に拒否権を発動した。ただ上下両院は3分の2の賛成多数で再可決し、法案は成立する見通しだ。

・米財務省で経済制裁を担当したブライアン・オトゥール氏は「トランプ政権が保険分野に対して最大限の制裁を発動すれば建設は確実に遅れ、潜在的には中止につながる可能性がある」と指摘する。ロイター通信によると、ノルドストリーム2の関係者は国防権限法案が成立すれば「欧州の少なくとも12カ国の120社以上が影響を受ける可能性がある」と主張している。

・トランプ政権がこのタイミングで制裁に踏み切れば、21年1月の任期切れ前に「米国第一」の方針を支持者にアピールできる。米国はNATOの条約5条に基づきドイツをロシアから守る義務を負うが、ノルドストリーム2のようにドイツはロシアとのビジネスを拡大させる。これをトランプ氏は「米国の納税者にとって不公平だ」と非難する。対米貿易収支の黒字を抱えるドイツにトランプ氏はほぼ一貫して批判的な立場をとってきた。

・オトゥール氏は、バイデン氏が大統領就任後、ノルドストリーム2を批判しながら制裁を封印し、外交的解決を目指すとみる。トランプ政権下で進んだ米欧同盟の亀裂の修復を外交政策の柱に据えるからだ。具体的にはロシアが欧州へのガス供給を停止した場合に備えて綿密な対応策を事前に練ったり、ウクライナへの経済支援を確約したりするよう欧州諸国に求めると推測する。

・トランプ政権が先手を打って欧州企業に制裁を科せば、バイデン氏の構想は狂いかねない。ノルドストリーム2への制裁には同氏を支える米民主党の大半が賛成しており、制裁解除にはハードルがある。ロシアは米政府機関に対して大規模なサイバー攻撃を実施したとされ、米ロ対立は激しさを増す。制裁解除はロシアにビジネスを認めることを意味し、米国内でロシアに弱腰との批判を浴びるリスクがある。

・ノルドストリーム2はロシア北西部と独北部を結ぶ。事業費は95億ユーロ(約1兆2000億円)とされ、ロシア国営ガスプロム傘下の事業会社に独仏などのエネルギー5社が最大10%ずつの資金を拠出した。輸送能力は年間550億立方メートルで、19年のロシアから欧州への天然ガスの輸出量の約4分の1に当たる。20年半ばの稼働を目指していたが、19年に米議会が制裁の権限を大統領に付与し、内容を明らかにしたため、スイス企業が敷設作業を中断した。(中村亮)

ロシアのプーチン大統領は制裁発動を示唆する米国にも強気の姿勢だ=ロイター

・【モスクワ=小川知世】ロシアは外国企業に頼らず自力でノルドストリーム2を完工させると強調する。同国のプーチン大統領は17日の記者会見で、ノルドストリーム2は「事実上、完成している。我々は作業を終えるだろう」と述べ、米制裁下でも自力で完工させる考えを強調した。

・ロシア国営ガスプロム傘下の事業会社は11日、2019年12月に明かされた米制裁を受けて中断したノルドストリーム2のパイプライン敷設作業を約1年ぶりに再開した。再開は19年の制裁対象外の水深が浅い区域だ。

・ロシアは米国が自国産の液化天然ガス(LNG)の輸出拡大をもくろみ、事業に圧力をかけていると非難してきた。

・ロシアのペスコフ大統領報道官は24日「(仮に制裁が強化されれば)事態が複雑になる可能性はあるが、欧州もロシアも(ノルドストリーム2の)実現に関心を持っている」と述べ、事業が欧州の利益になると改めて主張した。タス通信が伝えた。

・一方、ロシアのエネルギー調査会社ルスエナジーのミハイル・クルチヒン氏は「いずれ事業の断念を迫られる可能性がある」とみる。ロシアのウクライナなどに対する外交方針が変わらない限り、制裁解除は期待できないと指摘した。

ガスプロムの政治経済学(2016年版) (3)
https://jp.sputniknews.com/blogs/201610172901292/