日本の実質賃金は今後上昇に転じるのか?: 高水準の大手賃上げも、懸念される労働者間のバラつき拡大

日本の実質賃金は今後上昇に転じるのか?: 高水準の大手賃上げも、懸念される労働者間のバラつき拡大
https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00908/

『 2023年の春闘では、歴史的な物価高騰の中、高い賃上げ率が妥結されている。今後、労働組合のない企業も含めて改定内容が賃金に反映された際、実質賃金は上昇に転じるだろうか、今後の行方を考察する際のポイントを探る。

本記事では、はじめに今年の春闘の執筆時点までの状況や今後の考察の留意点を整理する。その後、統計データが利用可能な春闘直前までの賃金動向の分析を示しながら、賃金の実質的価値の今後の行方を考察する際のポイントを探る。

今年の春闘では、大企業の高い賃上げ率が中小企業にも波及

春闘の起源は、1955 年に実施された8単産共闘まで遡り、毎年春に多くの産業別労働組合が集結することで労働側の経営側に対する交渉上の地歩(バーゲニング・ポジション)の強化を目指す。パターンセッターとなる労働組合が賃上げ分を獲得した後、他産業組合や中小企業などに賃上げ分を波及させていくといった構図である(※1)。

日本労働組合総連合会(以下「連合」)が公表した『2023 春季生活闘争 第5回 回答集計結果(5月10日公表)』をみると、平均賃金方式で交渉した1000人以上の大企業組合では、定昇相当込み賃上げ率が3.73%、賃上げ分(ベア)が2.17%。いずれも近年において高い値である。

平均賃金方式で交渉した99人以下の小規模企業組合では、定昇相当込み賃上げ率が3.03%、賃上げ分(ベア)が1.83%。この時点で妥結した小規模企業組合数は1417(組合員数6万2080人)であり、前年の同調査最終版(22年7月5日公表)と比較すれば、5月公表時点でおおむね6割程度の組合が妥結した結果である。

なお、「賃上げ分(ベア)」はベースアップを指し、既存の賃金表の改定により賃金水準を引き上げた分である。「定昇」は定期昇給を指し、労働協約・就業規則等で定められた制度に従って、既存の賃金表に沿って前任者(先輩)に追いつくための昇給分である。

春闘を先行して相場形成した1000人以上の大企業組合と比較すれば、後発の99人以下の小規模企業組合の数値はやや抑制されるが、賃上げの流れが波及していることが示唆される1つのシグナルであろう。

また、フルタイム組合員の一時金(年間)の状況をみると、金額交渉している組合では159万7406円と昨年比+3万3352円だが、相対的に多い月数交渉している組合では4.88月と昨年比▲0.01月となっている。これまでの賃上げ方法は人件費として固定化しにくい一時金(賞与)の活用が多かったが、本年はベースアップにシフトしている可能性が示唆され、中長期にみた賃金増加の持続性といった面からは重要な変化であろう。

労働組合がない企業にどう波及していくのか

厚生労働省『賃金引上げ等の実態に関する調査』によれば、2022年で労働組合が組織されている企業割合は21.2%で、労働組合がない企業も多い。業種別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」は58.0%、「鉱業,採石業,砂利採取業」は57.3%である一方で、「医療,福祉」は3.6%、「生活関連サービス業,娯楽業」は5.8%、「宿泊業,飲食サービス業」は6.6%と業種間の差異が大きい。

さらに、この調査は、常用労働者100人以上を雇用する民間企業を調査対象ベースとしており、同省『労働組合基礎調査』によれば、22年で企業規模99人以下の推定組織率は0.8%であることから、小規模企業を含めると労働組合がある企業の割合は、より低くなる可能性がある。

このため、労働組合による交渉結果を集計した連合の調査結果が、労働組合のない企業にどのように波及していくかも重要なポイントである。近年、計量分析の結果、労働組合への所属が、統計的有意に賃金を引き上げる効果が確認されている(※2)。これを踏まえると、労働組合がない企業における賃上げ率は抑制的となる可能性もある。

さらに、『賃金引上げ等の実態に関する調査』によれば、労働組合がある企業でも、「賃上げ要求交渉がなかった企業」の割合が22年で26.0%ある。労働組合がない企業では、賃上げ交渉の機会がより生じにくい可能性も予想されるが、歴史的な物価高騰を踏まえれば、賃上げの可否を労使で真摯に話し合う機会を設けることが例年にも増して重要である。
実質賃金の変動率は中期的にプラスに転じる可能性も

『賃金引上げ等の実態に関する調査』によれば、春闘における賃金改定内容の適用時期を4月分とする企業が最も多く、後発して賃金交渉を行う企業もあり、7月分までの各月を適用時期とする企業も一定程度いる。本記事の執筆時点では、厚生労働省『毎月勤労統計調査』の2月分(確報)までのデータが使用可能であるため、今年の春闘が反映された賃金動向の分析は今後の課題となるが、ここからは、賃金の実質的価値の今後の行方を考察する際のポイントを探る観点から分析する。

最初に、「実質賃金(総額)」は2023年2月時点で19年同月比▲2.4%(※3)である。寄与度分解すると、一般労働者の現金給与総額(名目)が+2.3%、パート労働者の現金給与総額(名目)が+0.5%である。他方、消費者物価は▲5.0%と大きなマイナス寄与である。また、相対的に平均賃金よりも低いパート労働者の構成比の上昇による寄与度が▲0.2%である。

一般労働者の現金給与総額(名目)に着目すると、20年から21年にかけて所定外給与やボーナスを含む特別給与のマイナス寄与がみられたが、所定内給与は大きく変動しなかった。その後、22年に入ると主に所定内給与のプラス寄与が現金給与総額(名目)の増加をけん引している(図1)。

一般労働者の現金給与総額(名目)の寄与度分解 (2019年同月比)

春闘では、定昇相当分+賃上げ分(ベア)で賃上げ率を考える。労働者個人の賃金変動の軌跡といった観点では、これが賃金の増加分となるが、マクロ統計として過去と比較する際には、賃上げ分(ベア)が所定内給与の変動に関連している面が強い(※4)。これを踏まえつつ、連合の最新調査によれば、賃上げ分(ベア)は組合規模計で2.14%であるため、今後、労働組合がない中小企業にも波及し、毎月勤労統計調査の所定内給与が2.14%ポイント増加する場合には、実質賃金の変動率はおおむねゼロ近傍まで押し上げられる可能性もある。

さらに、日本経済研究センターのESPフォーキャスト調査(民間エコノミスト約40名の予測を集計した調査)によれば、消費者物価(生鮮食品を除く総合)の高騰は、22年第4四半期以降、徐々に落ち着いていくと予想されており、仮に消費者物価のマイナス寄与が鈍化していけば、上記とあいまって、中期的に実質賃金の変動率はプラスに転じる可能性も期待される。

時間当たり賃金(名目)のバラつきが拡大している可能性

今後、平均値でみた実質賃金の変動率がおおむねゼロ近傍になる可能性等に触れたが、労働者間の名目賃金には「バラつき」という観点があることにも留意が必要である。つまり、平均値でみた実質賃金の変動率がおおむねゼロ近傍であっても、労働者間の名目賃金のバラつきが大きい場合、基本的に誰しもが平等に消費者物価の高騰に影響されるため、実質賃金が増加する人と実質的価値が保てない人との間の差が大きくなる可能性がある。

そこで『毎月勤労統計調査』の公表データを活用し、簡易的方法で就業形態間、産業間、事業所規模間でみた時間当たり賃金(名目)のバラつきを示す指標を作成した(具体的方法は図2の注4を参照)。個票データを活用した分散値とは厳密に合致しないため、一定の幅をもってみる必要があるが、2020年から22年にかけてバラつきが縮小傾向にあった後、22年以降にはバラつきが拡大している。さらに、バラつきの拡大要因は一般労働者間であるとみられる(図2)。(※5)

就業形態間、産業間、事業所規模間でみた時間当た り賃金(名目)のバラつきを示す指標の動向

歴史的動向から考えてみると、リーマンショックや東日本大震災直後には、指標が同様の動きをしている局面がある(※6)。これを踏まえると、ショック直後の景気後退局面では、多くの企業が所定外給与や賞与を中心に賃金を減少させるため、時間当たり賃金(名目)のバラつきが縮小する一方で、その後の景気回復局面では、賃金を増加させることのできる企業力の差異が生じるため(※7)、時間当たり賃金(名目)のバラつきが拡大する、といった背景がありそうだ。

具体的に一般労働者の時間当たり賃金(名目)のバラつきが拡大している業種を確認するため、事業所規模500人以上から事業所規模5~29人以下を差分した値をみると、23年2月と22年1月を比較して、「宿泊業,飲食サービス業」が+223円、「学術研究,専門・技術サービス業」が+193円、「不動産業,物品賃貸業」が+164円、「卸売業,小売業」が+161円となっている(図3)。

事業所規模間でみた一般労働者の時間当たり賃金 の差(500人以上から5~29人以下を差分した値)

例えば「宿泊業,飲食サービス業」では、23年2月時点で時間当たり賃金(名目)の事業所規模間の差が+567円であり、仮に1日9時間の週5日勤務だとすると、1年(約52週)で賃金総額に約132.7万円の事業所規模間差が生じており、22年1月から23年2月に掛けての増加分である+223円は、約52.2万円の新たな差を生じさせる。

まとめると、実質賃金の今後の行方を考察するポイントは以下の通りである。

歴史的動向から、景気回復局面では、賃金を増加させることのできる企業力の差異が生じるため、時間当たり賃金(名目)のバラつきは拡大する可能性が示唆され、また、2022年以降のバラつきが拡大傾向にある。

今後、春闘の賃金改定内容が反映され、仮に実質賃金の平均値の変動率がおおむねゼロ近傍まで押し上げられたとしても、企業間での賃金改定内容のバラつきが拡大し、労働者間の差が大きい状況となる可能性もあり、分析の観点として、平均値だけでなくバラつきの動向も注視していくことが重要な局面である。

2022年以降の時間当たり賃金(名目)のバラつきの拡大(事業所規模間の差の拡大)は、中小企業での賃金交渉に当たって、従業員の賃金の実質価値を担保するといった観点から、先行する大企業の賃上げ率をそのまま適用するのではなく、賃金交渉前の段階で大企業との時間当たり賃金(名目)の差が拡大してきたことも加味して話し合う必要性を示唆している。

歴史的な物価高騰の中で、例年にも増して労使間の真摯な対話が進んでいくことが期待され、引き続き中小企業の賃金交渉の状況を注視していくことが重要である。

(本記事は、執筆者個人の見解を整理したものであり、所属する組織の公式見解を示すものではない)

バナー写真:労使交渉の回答状況が書き込まれた金属労協のホワイトボード=2023年5月15日、東京都中央区(時事)

(※1) ^ 春闘の歴史や近年の課題、労働組合の効果などは、戸田卓宏(2022)「コロナ禍・中長期における賃金の動向と賃金の上方硬直性に係る論点整理」、 JILPT Discussion Paper 22-10を参照。

(※2) ^ 同上

(※3) ^ 前年同月比や前々年同月比の場合、コロナ禍で落ち込んだ期間との比較となり、反動増が含まれる可能性があるため、より適切な評価がしやすいように2019年同月を基準として比較した。

(※4) ^ 中井雅之(2023)「毎勤の賃金上昇を決めているのはベア。定昇ではない ~春季賃上げ率と賃金統計との関係~」も参考になる。

(※5) ^ 「2010年以降継続して比較可能な業種×パート労働者計」も同様に算出し、2022年1月が98.2、2023年2月が91.7であったため、バラつきの拡大要因はパート労働者間ではないとみられる。

(※6) ^ バラツキが拡大する度合い(折れ線の傾き)は、リーマンショック後よりアフターコロナの景気回復局面が緩やかである。コロナ禍にて前例のない規模の雇用調整助成金等により雇用維持を支援したことが、アフターコロナの景気回復局面における当該度合いの増加テンポを抑制している可能性がある。つまり、これら政策は、労働者の雇用の安定に資するとともに、アフターコロナにおける事業活動・企業収益の円滑な回復のため、社内に必要な人材を雇用保蔵したい企業ニーズを支援した面もあり、助成金を活用した企業が賃上げに対応できる土壌形成に役立っている可能性がある。ただし、マクロでみたバラツキ自体は足下で拡大傾向にあることから、上記効果はバラツキ自体を維持・縮小させるまでの効果ではない可能性も示唆される。

(※7) ^ 事業活動のレジリエンス(回復力)の差異による企業収益のバラつきが要因の一つと考えられるが、その背景には、必要な人員数・人材の確保の困難性や、中小企業にとって価格転嫁しにくい下請け構造等が考えられる。さらに、労働者側(労働組合側)においても、企業収益が芳しくなければ、賃上げ交渉よりも雇用維持の確保を優先させることも要因の一つであろう。

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賃金 賃上げ 春闘
戸田 卓宏TODA Takahiro経歴・執筆一覧を見る

厚生労働省から経済協力開発機構(OECD)に出向中。2009年度入省。雇用政策の企画立案や労働経済白書の執筆などを担当した後、2022年9月より現職。主な著書に『コロナ禍・中長期における賃金の動向と賃金の上方硬直性に係る論点整理』(JILPTディスカッションペーパー、2022年)、『検証・コロナ期日本の働き方:意識・行動変化と雇用政策の課題(第1章担当)』(慶應義塾大学出版会、2023年)など。』

GDP年率1.6%増 1~3月、3四半期ぶりプラス

GDP年率1.6%増 1~3月、3四半期ぶりプラス
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA160Y10W3A510C2000000/

『内閣府が17日発表した1〜3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.4%増、年率換算で1.6%増えた。3四半期ぶりにプラスとなった。GDPの過半を占める個人消費は前期比0.6%増えた。

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

予想より良い結果となり、とくに消費と設備投資が他の先行して公表されたデータと比べて強かったと思います。耐久財の需要が非常に強く、ついでサービス消費が強くなっています。ただ耐久財の買い時判断などはさほど大きく改善していないので持続性があるかはまだ分かりません。また半導体などの不足による供給制約がどの程度改善したのかもみていく必要があります。住宅投資も幾分改善した点は注目しています。雇用の改善や賃金上昇を見込んだものなのか確認していきたいと思います。輸出は予想通り下落していますが、インバウンド需要の回復が昨年から続いており財輸出の下落を幾分相殺しています。全体として比較的良い内容だったと思います
2023年5月17日 9:39

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永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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ひとこと解説

内訳を見ると、最大の押し上げ要因は控除項目となる輸入の減少ですが、それに次ぐ押し上げ要因は個人消費となっており、やはりコロナからのリオープンの寄与が大きいことが推察されます。
また、設備投資も個人消費に次ぐ押し上げ要因となっており、各種設備投資計画調査などに基づけば、経済対策の効果などもあり、DX・GX・経済安全保障関連の設備投資がけん引していることが推察されます。
ただ一方で、実質GNIや実質雇用者報酬等の実質所得関連指標はいずれもマイナス成長であり、生産や需要は増えているものの、交易損失の悪化で実質所得は厳しい構図に変わりないという見方もできるでしょう。
2023年5月17日 9:15

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滝田洋一
日本経済新聞社 特任編集委員
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①GDPは名目では前期比年率7.1%の伸びとなりました。名目が実質を大きく上回ったのは、デフレが解消しつつあるおかげでしょう。企業の売り上げや利益、給与、そして税収の伸びは名目値ですから、名目成長率の高まりは経済活動全体を温める役割を果たします。
②そんな動きを見て日本株を再評価する動きが出てきました。資産価格の上昇がこうした経済活動を後押しする試算効果も働きだすなら、日本経済はどっこい粘り腰を発揮するかもしれません。
2023年5月17日 9:13』

企業物価5.8%上昇 4月、伸びは4カ月連続鈍化

企業物価5.8%上昇 4月、伸びは4カ月連続鈍化
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB150HC0V10C23A5000000/

『日銀が15日発表した4月の企業物価指数(速報値、2020年平均=100)は119.8と、前年同月比で5.8%上昇した。上昇率は4カ月連続で鈍化した。エネルギー価格や円安に…

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『エネルギー価格や円安による押し上げがやわらぎ、輸入物価は円ベースで2.9%下落。21年2月以来、26カ月ぶりにマイナスに転じた。飲食料品など消費者に近い川下などで価格転嫁の動きも進んでいる。』

2022年度の経常黒字54%減、9兆2256億円 資源高響く

2022年度の経常黒字54%減、9兆2256億円 資源高響く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA108DX0Q3A510C2000000/

『財務省が11日発表した2022年度の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引状況を表す経常収支の黒字は9兆2256億円と21年度から54%減少した。原油や液化天然ガス(LNG)といった資源価格の高騰に円安が重なり、貿易収支が18兆602億円の赤字となったことが響いた。

貿易赤字は2年連続。経常収支は8兆7031億円の黒字だった14年度以来の低水準となった。

経常収支は主に3つのデータで構成する。輸出から輸入を差し引いた貿易収支、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支、旅行収支を含むサービス収支などからはじき出す。

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・輸出、消える円安の恩恵 産業構造変化で貿易赤字最大に
・所得収支、経常黒字へ孤軍奮闘 裏に直接投資の不均衡 』

3月の実質賃金 前年同月比2.9%減 12か月連続マイナス 厚労省

3月の実質賃金 前年同月比2.9%減 12か月連続マイナス 厚労省
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230509/k10014060871000.html

 ※ 賃金の上昇が、物価の高騰に追いついていない…。

 ※ 余力のある大企業(内部留保もある)は、十分な賃上げが可能だろう…。

 ※ しかし、中小・零細は、ムリな話しだ…。

 ※ 世界経済全体・日本経済全体が、「上向いて来る」のを、ジッと待ち続けるしか無い…。

 ※ しかし、先行きに、「明るい兆し」なんてものは、見えない…。

 ※ まあ、「できること」から確実に…、だな…。

『物価の上昇が続く中、ことし3月の働く人1人あたりの実質賃金は去年の同じ月に比べて2.9%減少し、12か月連続のマイナスとなりました。

厚生労働省が従業員5人以上の事業所3万余りを対象に行っている「毎月勤労統計調査」の速報値によりますと、物価の変動分を反映したことし3月の実質賃金は去年3月に比べて2.9%減少しました。

基本給や残業代などをあわせた働く人1人あたりの現金給与総額は、平均で29万1081円と期末手当の支給が増えたことなどから去年3月に比べて0.8%増加しましたが、物価の上昇率がこれを上回りました。

実質賃金がマイナスとなるのは12か月連続です。

厚生労働省は「実質賃金のマイナスが長期化してきている。一方、ことしは、春闘で例年にない賃上げの動きが広がっていて、大企業を中心に賃金改定が行われる4月以降の動向を注視したい」としています。』

日銀短観 大企業製造業の景気判断 5期連続で悪化

日銀短観 大企業製造業の景気判断 5期連続で悪化
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230403/k10014027401000.html

『日銀は3日、短観=企業短期経済観測調査を発表し、大企業の製造業の景気判断を示す指数はプラス1ポイントと前回を6ポイント下回り、5期連続で悪化しました。

日銀の短観は、国内の企業およそ9200社に3か月ごとに景気の現状などを尋ねる調査で、景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた指数で景気を判断します。

今回の調査はことし2月27日から3月31日にかけて行われ、大企業の製造業の指数はプラス1ポイントと、前回・12月の調査を6ポイント下回り、5期連続で悪化しました。
海外経済の減速への懸念や半導体の需要の落ち込みで、「電気機械」や「鉄鋼」などの業種が悪化したほか、原材料価格の高止まりによる仕入れコストの増加で、「紙・パルプ」や「非鉄金属」なども悪化しました。

一方、大企業の非製造業の景気判断は、プラス20ポイントと、前回を1ポイント上回り、4期連続で改善し、コロナ禍前の2019年12月の水準と並びました。
新型コロナの影響の緩和や外国人観光客の増加によって、「小売」やレジャー施設などの「対個人サービス」が改善しました。

3か月後の見通しについては、大企業の製造業では自動車の生産が回復するほか、「繊維」や「紙・パルプ」、それに「非鉄金属」など、幅広い業種で原材料価格の高騰の影響が一服するとの見方が出ていることから、2ポイントの改善となっています。

一方、大企業の非製造業では、「建設」や「不動産」などで原材料価格の高騰への懸念があるほか人手不足が続くとの見方もあって、5ポイントの悪化が見込まれています。』

大企業製造業が4期連続悪化、非製造業は改善 日銀短観

大企業製造業が4期連続悪化、非製造業は改善 日銀短観
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB133310T11C22A2000000/

『日銀が14日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)で、大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は前回の9月調査から1ポイント悪化し、プラス7となった。円安と資源高を背景とした原材料コストの増加が景況感を下押しし、4四半期連続で悪化した。大企業非製造業は新型コロナウイルスの影響緩和から3期連続で改善し、プラス19となった。

業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値だ。12月調査の回答期間は11月10日~12月13日。回答基準日の11月28日までに企業の7割台半ばが答えた。

大企業製造業の業況判断DIはプラス7と、QUICKが集計した市場予想の中心値(プラス6)をやや上回った。原材料コスト高などが全体の景況感の足かせとなった。石油・石炭製品はマイナス33と前回から40ポイント悪化し、素材業種の紙・パルプや化学も前回から8ポイント悪化した。

サプライチェーン(供給網)の改善や販売価格へのコスト転嫁の進展から景況感が改善した業種もみられた。自動車がマイナス14と前回から1ポイント改善したほか、金属製品はプラス8と8ポイント改善した。ただ先行きは海外経済の減速懸念も強く、大企業製造業全体でプラス6と足元から小幅の悪化を見込む。

非製造業では新型コロナの感染抑制と経済活動の両立が進んだことで景況感の改善が続く。大企業非製造業の業況判断DIはプラス19と市場予想(プラス17)を上回った。コロナ禍で一時マイナス91まで景況感が落ち込んでいた宿泊・飲食サービスも、前回から28ポイント改善し0となった。政府の観光促進策「全国旅行支援」や新型コロナの水際対策の緩和も景況感改善の後押しになった。

長引く原材料高で、企業がコストを販売価格に転嫁する動きも徐々に強まる。販売価格が「上昇」との回答から「下落」の割合を引いた販売価格判断DIは大企業製造業でプラス41と、調査を開始した1974年5月以降で過去最高だった。仕入れ価格判断DIも大企業製造業でプラス66と1980年5月(プラス77)以来の高水準で推移している。

企業の消費者物価見通しも高水準にある。全規模全産業の1年後の見通し平均は前年比2.7%上昇と、調査を始めた2014年以降で過去最高となった。3年後見通しは2.2%、5年後見通しは2.0%と、どれも2%台になっている。

企業の事業計画の前提となる22年度の想定為替レートは全規模全産業で1ドル=130円75銭と、9月調査(125円71銭)から円安方向に修正された。足元の円相場は一時1ドル=135円台で推移しており、修正された想定レートより円安・ドル高水準にある。

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永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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ひとこと解説

ヘッドラインだけで見ると、当初の想定ほど悪くないという見方もできるかもしれません。
しかし、経常利益計画を見ると、特に輸出関連産業の多い製造業において今年度下期で大幅下方修正の減益計画となっています。
やはり背景には、エネルギー価格の高騰や急速な金融引き締めの継続などにより、欧米を中心とした世界経済の悪化が見込まれているものと推察されます。
このため、特に製造業に関しては決して楽観視できる結果とはいえないでしょう。
2022年12月14日 9:07 (2022年12月14日 11:26更新)

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小宮一慶
小宮コンサルタンツ 代表取締役CEO
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ひとこと解説

企業の仕入れを表す「企業物価」は、ここ数か月では前年比で9%を上回っている。一方、消費者物価も10月には3.6%まで上昇しているが、国内だけを考えれば、企業は十分に仕入れ価格の上昇を価格に転嫁できていないということだ。とくに中小企業ではその傾向が強いように、企業の現場を見ていて感じる。
海外で活躍する企業の業績と国内を主戦場とする企業との業績格差が大きくなっており、そのことにより賃上げが二極化することを懸念している。
2022年12月14日 10:42

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経常収支10月641億円赤字 円安・資源高で1月以来

経常収支10月641億円赤字 円安・資源高で1月以来
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA080PB0Y2A201C2000000/

『財務省が8日発表した10月の国際収支統計(速報)によると、貿易や投資などの海外との取引状況を表す経常収支は641億円の赤字だった。赤字は1月以来。比較可能な1985年以降で10月に赤字となるのは162億円の赤字だった2013年以来、2度目だ。円安や資源高でエネルギー関連の輸入額が膨らんだことが響いた。

経常収支は輸出から輸入を差し引いた貿易収支や、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支、旅行収支を含むサービス収支などで構成する。今年10月の経常収支は1兆7347億円の黒字だった21年10月からマイナス方向に1兆7988億円変化した。マイナスの変化幅としては過去最も大きかった。

10月は貿易収支が1兆8754億円の赤字となり、経常収支全体の赤字につながった。輸入額が10兆8646億円と前年同月比56.9%増えた。原油と石炭、液化天然ガス(LNG)の値上がりが響いた。10月の原油の輸入価格は1バレルあたり105ドル96セントと前年同月比37.8%上がった。円建ては1キロリットルあたり9万6684円と、79.4%の大幅な上昇となった。

10月は円相場が一時1ドル=150円台の記録的な円安・ドル高となっていた。輸入物価の上昇に円安が拍車をかけた。

輸出額は前年同月比26.9%増の8兆9892億円だった。自動車や半導体等電子部品などが増えた。

輸出入とも単月として過去最大を更新した。輸出は中国経済の減速などで伸び悩んでいる面があり、輸入の増加ペースが大きく上回った。

サービス収支は7224億円の赤字だった。赤字は前年同月から1153億円拡大した。海外に対する研究開発費の支払いなどが増えた。

訪日外国人の消費額から日本人が海外で使った金額を引いた旅行収支は430億円の黒字だった。黒字の大きさは新型コロナウイルスの感染が広がる前の20年1月の2962億円以来となった。水際対策の緩和で訪日客が戻り始めた効果が出てきている。

第1次所得収支の黒字は2兆8261億円と前年同月比19.0%増えた。商社や自動車メーカーの海外からの配当などが増えた。日本企業の海外での稼ぎを貿易収支の赤字が打ち消す構図が強まった。

【関連記事】経常黒字6割減 22年度上期、エネルギー転換遅れ映す

ニューズレター
多様な観点からニュースを考える

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永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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ひとこと解説

季節調整値でみると、2014年3月以来の経常赤字となります。
最大の要因は、第一次所得収支の黒字額が前月から8000億円以上縮小したことです。
しかし、第一次所得収支は単月の振れが大きく、一方で貿易・サービス収支も原油価格のピークアウトやインバウンド消費増加などにより今後は赤字幅縮小が期待されますので、経常赤字が定着する可能性は低いと思います。
2022年12月8日 9:15 (2022年12月8日 10:56更新)

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

経常収支が2022年1月以来赤字に転落しましたが、主因は所得収支とサービス収支の悪化で、貿易赤字の拡大を上回っています。所得収支は証券投資からの収入がネットで減少したことが主因ですが、サービス収支は外国人観光客が増えていますので旅行収支は改善しつつありますが、ビジネス関連で大きく支払いが増えたことによるもので一時的な要因による可能性もあります。貿易収支は今年4月以降赤字幅が大きくなっていますが、輸入する原材料価格の高騰と円安によりしばらく赤字が続きそうです。貿易赤字により日本経済の成長には長らく低迷していた設備投資の拡大が中心となり、ついでサービス消費の緩やかな回復が寄与していくでしょう。
2022年12月8日 9:39 (2022年12月8日 9:51更新)

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機械受注7~9月1.6%減 製造業の回復に一服感

機械受注7~9月1.6%減 製造業の回復に一服感
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA15BE80V11C22A1000000/

『内閣府が16日発表した7~9月期の機械受注統計によると、設備投資の先行指標とされる民需(船舶・電力を除く、季節調整済み)は前期比1.6%減の2兆7438億円だった。2四半期ぶりのマイナスとなった。製造業が6四半期ぶりに減少に転じた。設備投資は新型コロナウイルス禍からの回復局面にあったが、足元で一服感が出てきている。

製造業が前期比2.0%減、船舶と電力を除く非製造業も1.4%減で2四半期ぶりのマイナスだった。

業種別では、製造業のうち半導体製造装置などを発注する電気機械で10.1%減少した。造船業では28.5%減、金属製品は19.6%減で、いずれも4~6月期はプラスになっていた。非製造業では建設業が25.5%、卸売業・小売業が14.7%それぞれ減少した。

9月末時点で調査した10~12月期の受注見通しは前期比3.6%増だった。世界経済の減速が先行きの大きな懸念材料になる。

同日発表した9月の民需(船舶・電力を除く、季節調整済み)の受注額は前月比4.6%減で、2カ月連続のマイナスとなった。内閣府は基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に下げた。

製造業は8.5%の減少。前月に核燃料サイクル関連の「原子力原動機」の大型受注があった反動で、非鉄金属が82.4%減った。船舶と電力を除く非製造業は4.4%の受注増だった。』

日本のGDP年率1.2%減 7~9月、4期ぶりマイナス成長

日本のGDP年率1.2%減 7~9月、4期ぶりマイナス成長
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA149200U2A111C2000000/

『内閣府が15日発表した7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.3%減、年率換算で1.2%減だった。マイナス成長は4四半期ぶり。GDPの過半を占める個人消費は新型コロナウイルスの第7波などの影響で伸び悩み、前期比0.3%増にとどまった。

市場ではプラス成長が続くとの見方が大勢を占めていた。QUICKがまとめたGDP予測の中心値は年率1.0%増だった。

マイナス成長に転落した主因は外需だ。前期比の寄与度はマイナス0.7%。GDPの計算で差し引く輸入が5.2%増え、全体を押し下げた。特にサービスの輸入が17.1%増と大きく膨らんだのが響いた。

内閣府の担当者は「広告に関連する業務で海外への支払いが増えた」と説明した。「決済時期のずれも影響し、一時的だ」との見方を示した。

内需も低調で、寄与度は前期のプラス1.0%から0.4%に鈍化した。柱の個人消費は前期比0.3%増にとどまった。コロナの流行第7波が直撃し、交通や宿泊関連などのサービス消費が伸び悩んだ。

耐久財は3.5%減と2四半期ぶりにマイナスに沈んだ。家電やスマートフォンなどが物価上昇の影響もあって振るわなかった。

内需のもう一つの柱である設備投資は1.5%増で2四半期連続で伸びた。企業がコロナ禍で持ち越した分の挽回も含め、デジタル化や省力化の投資を進めている。

住宅投資は0.4%減で5四半期連続のマイナス。建築資材の高騰が影を落としている。公共投資は1.2%増と2四半期連続で増えた。21年度補正予算や22年度当初予算の執行が進んだ。コロナワクチンの接種費用を含む政府消費は横ばいだった。

名目GDPは前期比0.5%減、年率換算で2.0%減となった。円安で輸入額が膨らんでおり、実質でみるよりマイナス幅が大きくなっている。

国内の総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比0.5%低下とマイナスが続く。日本全体として輸入物価の上昇を価格転嫁できていない構図が浮かぶ。

家計の収入の動きを示す雇用者報酬は名目で前年同期比1.8%増えた。実質は1.6%減り、2四半期連続でマイナスとなった。物価上昇に賃金が追いついていない。
多様な観点からニュースを考える

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小黒一正のアバター
小黒一正
法政大学経済学部 教授
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分析・考察

2022年7月ー9月期における名目GDP成長率(季節調整済み)は、前期比▲0.5%(年率▲2%)ですが、円安や資源価格の高騰による、輸入コストの急増が成長の足枷になっている現実がデータから明らかに分かります。民間住宅の0%を除き、消費や設備投資、輸出など成長に寄与する項目が全てプラスの伸びにもかかわらず、輸入が前期比で11.4%の増加になっています。年率では54%の伸びに相当し、尋常ではない増加率に思います。現在は一時的に円安が修正されていますが、日米間の金利差は存在するため、再び円安が進行する可能性もゼロでなく、難しい問題ですが、この問題をどう制御するか、真剣に検討する必要があると思います。
2022年11月15日 11:23 (2022年11月15日 11:31更新)

白井さゆりのアバター
白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

緩やかなプラス成長になると思っていたが、マイナスになり日本経済の基盤の弱さを感じています。輸入急増が主因で、特殊要因もあるとおもいますが近年設備投資との相関が強くなっているように思います。また消費は予想されたように弱かったですが、サービスが緩やかにかっくだいを続けており、今後もサービスを中心に消費回復がつづいていくとみています。ただサービス回復といっても、コロナ感染症危機以降、大きく落ち込んだところからの回復なので、まだ2019年始めの水準をかなり下回っています。耐久財は巣ごもり需要で大きく拡大したのち、現在は需要の下落が目立ちます。エネルギーや食料など価格が高騰した項目の消費低下がきになる。
2022年11月15日 11:09

永浜利広のアバター
永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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分析・考察

最大の下押し要因は実質輸入の増加であり、民間在庫もマイナス寄与なので、国内需要がそこまで悪くないというとらえ方をすれば、ヘッドラインの数字を見て額面通り悲観することもないという見方もできます。
しかし、構造的にはそれだけ輸入に頼らざるを得ない輸入依存度の高さが露呈されたとも見れます。
いずれにしても、国内自給率の向上が課題というのが良くわかる結果と言えるでしょう。
2022年11月15日 9:44

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滝田洋一
日本経済新聞社 特任編集委員
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ひとこと解説

①「生産」を物差しにするGDPは前期比年率▲1.2%でしたが、「所得」が物差しのGDI(国内総所得)やGNI(国民総所得)の落ち込みはもっときつい。前期比年率でGDIは▲3.9%、GNIは▲2.9%でした。

②資源・エネルギー価格の高騰で同じ量を輸入するにも、海外に余計におカネを支払わなければならない。「交易条件」の悪化が日本経済にズシリとのしかかっている姿が浮き彫りになっています。

③一方、「名目」でみるとGDPは▲2.0%と、「実質」の▲1.2%より減少幅が大きい。輸入デフレーターの上昇で、GDPデフレーターのマイナス幅が4~6月期に比べて拡大したことが響きました。

2022年11月15日 9:35 (2022年11月15日 9:44更新)

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https://nkis.nikkei.com/pub_click/174/oN1wj19P4iK2xeaGzTIx081pouFIEDZf8H3thNpPiPB-JIjKUfjryoOXU7bJWJeZAc2ooBPqQsM_EO-aKegAjhlVOsC7i0Mk_smOPJfQZEtwuxoDHrd4jYdjABu4TknahC8dX5WCTfQm9LqxibNZT9D-NC83fVbDwKSHT12jxg7jMEKnoLIR_dyTMdX_npWMYZZZ0YYF5NBIEqTWVlDGDddavmz3kG2s4S-4nS-fFnhfa4b7e8YmgHDZjUtDNFGsQuPpuU6-NpsM9I14yB3pZKLAsh6jxltoq8M8uDQwuOWh6XGKvUuZuPMKCnVy9eEmSSWgA6Dk0_qpcDruQQmEUk3AHpVLK8hDyGmC3MVjOMRiAqGPEL3Q10Xx9_isnglMdPYm6inwb4jAOqDZ49oYGamTXPOilvEYUYS3CznHmJePhA19fxneG0hfFKfU1EpqPsL2dR7ijFXbgNoQCBPrqI5CxSRKAdoH3wtq5G5phY0prl8DIRjyA8PMotj5//113417/151711/https://www.nikkei.com/promotion/campaign/line_friend/?n_cid=DSPRM1DP01_2022linea 』

年金と消費税に見る不公平

北の国から猫と二人で想う事 livedoor版:年金と消費税に見る不公平
https://nappi11.livedoor.blog/archives/5384208.html

 ※ 確かに、こういうグラフを見ると、「ギョッとする」…。

 ※ しかし、そういう時こそ、立ち止まって、よくよく冷静に考えよう…。

『右の表を見て、良く言われるのは、「老人に金使いすぎ、医療負担が重荷、、」等などだが、日本の人口の年齢構成からみて当然のことである。

実際筆者は年金受給者で、途中から自営になった経歴から、決して十分な受給ではないが、貯める必要はないからすべてを消費に回している。

多くの受給者がそうだろうと思えば、この一群は、日本の巨大な消費経済の中でも顕著な巨大消費組織であり、膨大な医療従事者、福祉従事者をけん引し、其の産業は薬品、関連機器、維持費、人件費を消費し、さらに関連する企業、産業は無数にある。年金として吐き出される財政は巨大なマーケット(市場)を構築しているのだ。これも国内経済の重要なファクター(要因)なのだ。

これを賄う一つが消費税だが、筆者が問題とするのは、なんでもかんでも一律で掛けることへの不公平さだ。

一例をあげれば、キジの冬の餌を最近買ったが、15キロ詰の価格が税込2千数百円ほどだったのが量販店で税込3千円ほどに値上がりしていて、会計で「間違いでは?」と言ったほどだ。

運賃や原材料の高騰が原因だとは分かるが、ペットでもない、野鳥の餌への消費税には疑問を感じるが、売る方も識別できないだろうから無理な注文かもしれないのだが、一方で動植物保護の重要性も言われる社会である。

また、バスも無い地域での車にも高額な税金がかかり、過疎な地域はより過疎になり、人口減少の地方自治体の財政不足が加速し、病院も維持が困難になり、過疎に拍車をかける。こんな矛盾を上げれば切りがないだろうが、政治とは、こういう事への配慮や対策を指すのではないのか?

政治家はあてにできない。関係する企業がもっと声を上げるべきだろう。』

日銀短観 大企業製造業 景気判断は3期連続悪化 非製造業は改善

日銀短観 大企業製造業 景気判断は3期連続悪化 非製造業は改善
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20221003/k10013846161000.html

『日銀は短観=企業短期経済観測調査を先ほど発表し、大企業の製造業の景気判断を示す指数はプラス8ポイントと、前回を1ポイント下回り3期連続で悪化しました。
一方、大企業の非製造業はプラス14ポイントで前回を1ポイント上回り、2期連続で改善しました。』

円安で縮む日本 ドル建てGDP、30年ぶり4兆ドル割れ

円安で縮む日本 ドル建てGDP、30年ぶり4兆ドル割れ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB13ART0T10C22A9000000/

『【この記事のポイント】
・ドルでみた日本が縮小。GDPは30年前に逆戻り
・国力低下、円安止まらず。安い賃金、株買いも弱く
・ITなど投資不足。高付加価値の産業へ転換が重要

ドル建てでみた日本が縮んでいる。1ドル=140円換算なら2022年の名目国内総生産(GDP)は30年ぶりに4兆ドル(約560兆円)を下回り、4位のドイツとほぼ並ぶ見込み。ドル建ての日経平均株価は今年2割安に沈む。賃金も30年前に逆戻りし、日本の購買力や人材吸引力を低下させている。付加価値の高い産業を基盤に、賃金が上がり通貨も強い経済構造への転換が急務だ。

経済協力開発機構(OECD)によると日本の今年の名目GDPは553兆円の見込み。1ドル=140円でドル換算すると3.9兆ドルと1992年以来、30年ぶりに4兆ドルを下回る計算だ。現時点での期中平均は127円程度だが、円安が進んだり定着したりすると今年や来年の4兆ドル割れの可能性が高まる。

ドルでみた経済規模はバブル経済崩壊直後に戻ったことを示す。世界のGDPはその間、4倍になっており、15%を上回っていた日本のシェアは4%弱に縮む。12年には6兆ドル超とドイツに比べ8割大きかったが、足元で並びつつある。

経済成長や景況感は円ベースのGDPに連動する。今年のドル建てGDPが21年に比べ2割減るといっても、大不況というわけではない。ただ、ドル建てでの国際比較は長い目でみた「国力」の指標になる。

一橋大学の野口悠紀雄名誉教授は「通貨安は『国力』を低下させる。海外から人材を引き付けられなくなり成長を妨げる」と指摘する。

1ドル=140円なら平均賃金は年3万ドルと90年ごろに戻る計算だ。外国人労働者にとって日本で働く魅力は低下している。今年の対ドルの下落率は円が韓国ウォンを上回り、ドル建ての平均賃金は韓国とほぼ並ぶ。11年には2倍の開きがあった。物価差を加味した購買力平価ベースでは逆転済みだが、市場レートでも並ぶ。

世界経済を揺るがすエネルギー高も通貨安の国には重くのしかかる。原油先物の代表的な指標であるドル建てのWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は昨年末に比べ13%上昇した。円建ての東京商品取引所の原油先物(中心限月)は33%とさらに上昇している。

かつての円安局面の特徴だった、外国人が企業収益拡大を期待して日本株を買う動きは見られない。

外国人は22年1~8月に日本株を2.7兆円売り越した。日銀が異次元緩和を始めて急速な円安となった13年1~8月に9.1兆円買い越したのと様変わりだ。「調達コスト増を価格転嫁できず、企業の利益が落ち込む例がある」(仏コムジェスト・アセットマネジメントのリチャード・ケイ氏)とマイナス面を警戒する。

外国人が運用成績の評価に使うドル建てでは日経平均は今年23%安と、年間の下落率で金融危機の2008年(42%)以来となっており、海外からみれば日本の資産は価値が急減している。

円安は輸出競争力を高めるほか、海外からの直接投資や旅行者の誘因にもなる。景気刺激の面では望ましい。ただ、90年代以降の円安を志向する政策の下で、IT(情報技術)投資不足などで産業競争力は落ちた。「円安が続かないと生存できない企業が増えて全体の生産性が低下し、賃金低迷を招いた」(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト)。円安や金融緩和の支えに甘え、改革を怠れば国力低下は止まらない。

(真鍋和也、今堀祥和、小池颯、南泰葉、川路洋助)

【関連記事】

・政府・日銀、苦渋の為替介入準備 急速な円安に危機感
・日銀が「レートチェック」 為替介入の準備か
・株、円安はもはや売り材料か 「業績にもマイナス」の声 』

貿易赤字が過去最大2.8兆円 8月

貿易赤字が過去最大2.8兆円 8月、資源高・円安で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA14BTU0U2A910C2000000/

『財務省が15日発表した8月の貿易統計速報によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は2兆8173億円の赤字だった。2014年1月を上回り過去最大の赤字となった。

資源高や円安で輸入額が前年同月比49.9%増の10兆8792億円だった。19カ月連続で前年同月を上回った。

輸出額は22.1%増の8兆619億円で、18カ月連続で前年同月を上回った。』

経常黒字86.6%減2290億円 7月、85年以降で最小

経常黒字86.6%減2290億円 7月、85年以降で最小
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA079JF0X00C22A9000000/

『財務省が8日発表した7月の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引状況を表す経常収支は2290億円の黒字だった。黒字額は前年同月と比べて86.6%減少し、7月としては比較可能な1985年以降で最小だった。原油価格が高騰し、エネルギー関連の輸入額が膨らんだことが響いた。

経常収支は輸出から輸入を差し引いた貿易収支や、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支、旅行収支を含むサービス収支などで構成する。

貿易収支は1兆2122億円の赤字だった。外国為替市場で円安が進み、原油や液化天然ガス(LNG)といった輸入額の増加が影響した。』

「成熟した債権国」へ向かう日本

「成熟した債権国」へ向かう日本
https://comemo.nikkei.com/n/n0aa6c6467440

『長らく貿易黒字の結果として巨大な経常黒字を維持してきた歴史も背景に、「円安になる時は投機、円高になる時は実需」というのが円相場を見る上での1つの常識でもありました。しかし、近年の日本の経常収支は明確に構造変化を起こしています。

「成熟した債権国」へ

 2011年前後を境として日本の経常収支から貿易黒字は姿を消し、第一次所得収支の黒字が主体となっています。経済学者クローサーの国際収支発展段階説に基づけば、本格的に「未成熟の債権国」から「成熟した債権国」への階段を昇り始めた状況です。「昇り始めた」というのは、減少したとはいえ、未だ日本の貿易・サービス収支は断続的に黒字だからです。これが赤字で定着し、本当に所得収支だけで黒字を維持するようになると「成熟した債権国」になります。

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 実は上の図に示されるように、金融危機前の10年間(1999~2008年)とその後の10年間(2009~2018年)で経常黒字の水準が大きく変わったわけではありません。具体的には10年平均で見ると、危機前は約+16.7兆円、危機後は約+13.5兆円です。この間、財貿易の黒字額は約+10.9兆円から約+1840億円へ激減しています。片や、第一次所得収支は約+11.2兆円から約17.3兆円へはっきり増加しています。合わせてサービス収支赤字が約▲4.4兆円から約▲2.4兆円へ半減していることも目に付きますが、日本の経常黒字の水準が10年前と比較しても大きく変わらずに済んでいる背景には貿易で黒字を出せなくなった分、過去の投資の「あがり」としての第一次所得収支黒字が増えたことが主因なのです。

もはやフローベースでも直接投資収益が主役

 実はこの第一次所得収支の黒字は貿易収支の黒字と決定的に違う部分があります。それは稼いだ外貨が日本円に転換されない部分が多そうだということです。第一次所得収支は投資収益、雇用者報酬、その他第一次所得の3つから構成されますが、基本的には投資収益と読み替えて問題ありません。そして投資収益は証券投資収益と直接投資収益に分かれます。下図は両者の構成比について見たものです。2000年には証券投資収益が66.5%、直接投資収益が23.3%だったものが、2018年はそれぞれ47.3%と48.2%と概ね対等になっています(両者の構成比は2018年に初めて逆転しました)。日本の経常収支の構造は「貿易黒字から第一次所得収支黒字へ。その中でも証券投資収益から直接投資収益へ」と変容していると言えます。

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円相場への影響は?

 では、こうした経常収支の構造変化は円相場にどのような影響を持つのでしょうか。貿易黒字であれば、輸出企業は稼いだ外貨を円に転じる必要があるため円買い・外貨売り圧力に直結すると考えられます。こうした取引は「アウトライト(買い切り、売り切り)取引」と呼ばれ、取引のボリュームもさることながら、これに追随しようとする投資家・投機家の存在から方向感を形成しやすいと考えられています。

 しかし、現在の日本の経常黒字の大部分を占める第一次所得収支黒字の場合、為替需給に与える経路は貿易黒字ほどシンプルではありません。例えば証券投資収益は配当金と債券利子に分かれますが、実態としては約80~90%が債券利子です。こうしたフローは黒字が記帳された段階ではまだ外貨であるという点が重要です。例えば、日本人投資家Aが保有している米国債から利子収入を受け取る場合、それは海外口座に入金された段階で第一次所得収支上の「黒字」が記録されます。受け取った利子はそのまま再投資されると仮定すれば(そうしたケースは多いと考えられます)、証券投資収益からの円転フローはほぼ期待できないという話になります。

 片や、直接投資収益の中身は配当金・配分済支店収益、再投資収益、利子所得に分かれますが、2018年では配当金・配分済支店収益が45.4%、再投資収益が53.2%と分け合う格好でした。配当金・配分済支店収益は実際に直接投資家(または本社)へ送金されたものであるの対し再投資収益は直接投資された企業が稼得した営業利益のうち、投資家に配分されずに内部留保として積み立てられたものです。つまり、直接投資収益の約半分についても円転フローは期待できないという実態が透けて見えます。

「実需なき黒字」

 以上の議論をまとめると、第一次所得収支黒字のうち、証券投資収益の債券利子部分に相当する約80%、直接投資収益の再投資収益に相当する約50%については性質上、円買い・外貨売りのフローが発生しないことが予想される。これを絶対額の議論に引き直すとどうなるか。2018年の第一次所得収支は約+20.8兆円だが、再投資収益を除くと約+15.5兆円、再投資収益と債券利子を除くと約+6.5兆円まで減少します。

 もちろん、「巨大な経常黒字国である」という強固な対外経済部門にまつわるステータスは構造が変わっても大きく変わるものではありません。しかし「円相場への影響」、より正確に言えば「円高をもたらす影響」についてはかつての経常黒字ほどの「怖さ」が失せている可能性は否めません。こうした「実需なき黒字」は「投機の円安、実需の円高」というかつての常識を修正する論点として今後ますます着目されることになりそうです。最近、米金利が下がっても、株価が急落しても、かつてほど円高に振れなくなった一因としても注目です。』

日本の経常収支の動向

日本の経常収支の動向
https://shokosoken.or.jp/shokokinyuu/2020/05/202005_8.pdf

 ※ こりゃ、スゲーな…。

 ※ 最近じゃ、経常収支の黒字のほぼ9割を「第一次所得収支」が占めるような状態に、なっていたんだ…。

 ※ 第一次所得収支とは、「親会社と子会社との間の配当金等の受払を示す」ようなもののことだ…。

『国際収支統計によると、2019 年の経常収支は20.1兆円の黒字となった。これはリーマンショック前の2000 年代半ばとほぼ同じ水準であるが、その内訳は大きく変化している。経常収支は、貿易収支、サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支からなる(下図)。
経常黒字額がほぼ同じであった2006 年と2019 年を比較すると、貿易収支の黒字額は2006 年の11.1兆円から2019 年には0.5兆円に大きく減少している。一方、サービス収支は3.7 兆円の赤字から0.2兆円の黒字に転じている。また、親会社と子会社との間の配当金等の受払を示す第一次所得収支の黒字は14.2 兆円から20.7 兆円に増加している。第二次所得収支(居住者と非居住者間の対価を伴わない資産の提供に係る収支状況を示す)は、大きな変化はみられない。
こうした動きの要因をみると、貿易黒字の減少は輸入が輸出を上回って増加したことによるものである。
サービス収支が黒字となったのは、アジアを中心としたインバウンド旅行者の増加等により赤字が続いていた旅行収支が黒字化したほか、知的財産権等使用料収支の黒字が増加したことが主因である。第一次所得収支の黒字が増加したのは、直接投資や証券投資の拡大を背景として海外からの配当金等の受取が増加したためである。
さらに貿易黒字が減少した要因を探るため輸出入の動向をみよう。貿易統計により2006年と2019年を比較すると、輸出は1.7 兆円増加している。品目別には、2019年の輸出の20%を占める自動車・同部分品は2006 年とほぼ同水準であり、増加に寄与しているのは半導体等製造装置などである。一方、輸入は11.3 兆円増加している。品目別にみると、2019 年の輸入額の22%を占める鉱物性燃料は、東日本大震災後に一時大幅に増加したが、2019年は2006年より減少している。増加への寄与度が大きいのは、通信機(携帯電話等)、医薬品、自動車及び同部分品、航空機類などである。
経常収支の内訳をみると、2000年代前半は貿易黒字が主役であったが、2010年代になると第一次所得収支が経常黒字の多くを稼ぎ出し、主役が交代しているようにみえる。ただ、輸出は最近も70 ~ 80 兆円台で推移しており、輸入が増加するなか、引き続き日本経済を支える重要な柱である。
(商工総合研究所常務理事 小林 昇)』

4~6月期の全産業経常利益17・6%増 円安で過去最大に

4~6月期の全産業経常利益17・6%増 円安で過去最大に
https://mainichi.jp/articles/20220901/k00/00m/020/059000c

 ※ どっかのテレビで、「専門家」が、「日本の企業は、”円高”の時に、生産拠点を海外に移転させたから、”円安”の恩恵は、さほど受けない構造に変化している。それよりも、物価が上がって、ダメージの方が大きい構造に変化してナンタラカンタラ…。」と言っていたが、どうも、違うようだな…。

 ※ いずれ、政府と日銀が、「総合的な判断」を下すだろう…。

『財務省が1日発表した4~6月期の法人企業統計は、金融・保険業を除く全産業の経常利益が前年同期比17・6%増の28兆3181億円となり、四半期では統計を取り始めた1954年以降で過去最大となった。前年同期比のプラスは6四半期連続。新型コロナウイルス禍で落ち込んだ世界経済の回復や円安を背景に、大企業中心に幅広い業種で利益が伸びた。

 4~6月の製造業の経常利益は11・7%増の11兆2260億円。世界的な半導体の需要増に伴い関連する企業の業績が伸びた。非製造業は21・9%増の17兆921億円。特に資源価格の上昇で商社などが好調だったほか、小売業も新型コロナ禍による行動制限が撤廃されたことで増益となった。(※ 無料は、ここまで。)』

今この時代に梅毒がなぜ流行る?

今この時代に梅毒がなぜ流行る?
https://medley.life/news/5c7643bb5f510f79850057ae/

『日本で梅毒が流行しています。昔からあるこの病気はしばらく下火になっていましたが、2010年代前半から患者数が増える傾向にあり、2018年になっても未だに患者数は増え続けています。

古くは16世紀の書物に日本で流行の記載が残されているように、梅毒は500年ほど前から存在する感染症です。また、梅毒にはペニシリンという絶対的な治療薬があります。にもかかわらず、医療技術の進歩した現代で、どうして流行しているのでしょうか?梅毒の特徴から考えていきます。

  1. 梅毒という病気について

梅毒という名前を知っている人は多いと思います。しかし、梅毒について詳しく知っている人はそこまで多くはないかもしれません。梅毒は性病(性感染症)です。つまり、性行為によって相手にうつることがある、クラミジアや淋菌、HIV感染症と同じ類の病気です。

梅毒は梅毒トレポネーマ(Treponema Pallidum)が皮膚や粘膜の傷から体内に侵入して感染が起こります。性行為の際にコンドームを使用すれば基本的に梅毒がうつることはありません。にもかかわらず近年その患者数は増えている状況です。

梅毒の患者数*国立感染症研究所「日本の梅毒症例の動向について」より作成

梅毒という病気はとても昔から知られており、江戸時代にはすでに流行り病としての認識あったことが分かっています。当時は治療薬もなく、多くの人が梅毒に苦しんでいたと思われますが、どうしてそんなにも流行したのでしょうか。その歴史とともにもう少し掘り下げてみます。

  1. 人類が梅毒とともにたどってきた歴史

梅毒が流行した起源は諸説ありますが、1492年コロンブスのアメリカ大陸発見が引き金となり、世界的に流行しだしたと考えられています。コロンブス一行が帰国した時期からスペインやイタリアで梅毒が流行りだしたという事実があるため、彼らが現地民と性交した際に感染し、ヨーロッパに持ちこんだと考える説が有力です。

ヨーロッパで流行した梅毒は、インドや中国や東南アジアに伝わり、その後日本にも渡ってきたと考えられています。1512年には日本国内で梅毒発症の記載が確認されており、当時の戦国武将の中にも梅毒に悩む人が少なくなかったようです。

このように梅毒はわずか20年ほどで日本へ広まり、世界的に流行したことになります。

日本で梅毒はどう流行していったのか

江戸時代になると芸者や遊女の業界(花柳界)関係者の間で梅毒が流行していたため、花柳病と呼ばれていました。当時は梅毒に対する適切な治療薬はなく、一部の人では梅毒の症状がどんどん進行してしました。最終的には鼻が取れたり(ゴム腫)、発狂(神経梅毒の症状)したりすることも知られていました。当時の川柳に梅毒のことがたびたび登場することからも、日本人は長きにわたって梅毒と付き合っていたことがうかがえます。

梅毒の日本到来から400年以上経って初めてペニシリンという治療薬が登場します。ペニシリンは梅毒に対してとても有効であったため、梅毒治療はそれまでと激変します。それ以前に水銀やヒ素を用いた治療薬が登場したことがありましたが、副作用が強く、効果も不十分でした。ペニシリンの登場により、梅毒は治療できる病気になったのです。

ペニシリンの出現のおかげで梅毒患者数は激減していきます。終戦直後には年間200,000-300,000人ほど梅毒にかかる患者がいましたが、段々と患者数は減っていき、21世紀になると新たな患者数は年間1,000人を下回る程度で推移していました。それに伴い梅毒は昔の病気とされ、注目されることも少なくなってきました。しかし、2013年ごろから徐々に患者数が増え続け、2018年には新規発症患者が6900人を超えました。

  1. 梅毒の症状は多彩である

梅毒の原因微生物である梅毒トレポネーマが皮膚や粘膜の傷から体内に侵入すると、血液やリンパ液を介して徐々に全身へ広がります。一方で、梅毒トレポネーマが侵入してきても、免疫の作用によって感染を免れることもあります。また、梅毒に感染しても、すぐに症状が出ないことがほとんどです。

最初に梅毒の人に訪れる症状とは

感染してから3週間ほど経つと、皮膚が固くなる変化(硬結)が陰部を中心に肛門や口などにも見られることがあります。これを「硬性下疳(こうせいげかん)」といいます。最初にこの症状に気づく人はいますが、痛みやかゆみがほとんどない上に、気付いたらいつの間にかこの変化は消えてしまいます。そのため、気のせいで済ませてしまう人も少なくありません。

また、皮膚の硬結が見られる部位の周囲にあるリンパ節が腫れることがあります。これを「リンパ節腫大」といいます。皮膚の表面に近いリンパ節が腫れている人は、皮膚を押すように触ることで数mmから数cm程度の丸いしこりのようなものが現れます。リンパ節腫大も特に痛みがないことが多く、気がつきにくい症状です。

このように、梅毒の初期症状は「皮膚が固くなる」「リンパ節が腫れる」といったものが多いです。これらは日常生活に支障が出るものではありませんが、数週間以内に性行為をした人で症状が出た場合には、医療機関を受診して検査を受けるようにしてください。

梅毒が進行すると感じるようになる症状とは

梅毒は治療しないと進行する病気で、進行の程度によって見られる症状が変わってきます。皮膚や全身に症状が出たりと、内容はさまざまです。次の表に主な症状をまとめているので参考にしてください。

【梅毒が進行した人に見られやすい症状】
バラ疹 赤色や薄紅色の斑点(紅斑)。数mmから10mm程度の大きさで全身に見られる。
扁平コンジローマ 扁平に隆起したイボ。一部から感染性のある分泌液が出る。
丘疹性梅毒 隆起を伴う数mmから10mm程度の皮疹。バラ疹のあとに見られることが多い。
発熱 全身炎症の影響を受けて発熱が起こる。
関節痛 全身炎症の影響を受けて関節痛が起こる。
リンパ節腫脹 全身炎症の影響を受けてリンパ節腫脹が起こる。
全身倦怠感 全身炎症の影響を受けて身体がだるくなる。

上にあげた症状の中には発熱や関節痛のように風邪などの一般的な病気でもみられるものがあり、これらは梅毒へ直接結びつけにくいものですが、扁平コンジローマは梅毒に特徴的です。自分の症状が扁平コンジローマに似ている場合には必ず医療機関を受診するようにしてください。

梅毒がさらに進行し、重症化すると、骨や神経にまで影響を及ぼします。有名な変化が「ゴム腫」と「神経梅毒」です。

皮膚や筋肉、骨にゴムのようなしこりができることをゴム腫といいます。ゴム腫によって鼻の軟骨が破壊され、陥没したりすることから、鼻が取れる(鼻が落ちる)ような変化が起こることがあります。

また、脳神経に感染の影響が及ぶと、神経梅毒という状態に至ります。頭痛や耳鳴り・めまいなどを覚えるようになり、徐々に進行していくと記憶障害や麻痺、錯乱などが見られるようになります。

現在の日本では梅毒を調べる検査や治療が確立しているため、ゴム腫や神経梅毒といった末期症状が出る前に完治することがほとんどです。一方で、明らかに疑わしい症状があるのにもかかわらず放置していると、梅毒がどんどん進行して、こうした末期症状を招く恐れがあります。さらに、梅毒は性行為でうつる病気ですので、パートナーにうつしてしまう危険性もあります。思い当たる節がある人は早めに検査してもらうようにしてください。

梅毒の落とし穴に注意

梅毒がこれだけ流行している原因の一つとして、自分が梅毒だと自覚しにくいことが考えられます。気づかないうちにうつしあって、感染を拡大しているという構図です。

特に病気の初期に自分が梅毒であることに気づける人はあまり多くありません。その理由として次のことが考えられます。

 症状が梅毒に特徴的でないものが多く、他の病気と判断がつきにくい
初期の症状に気づいても、いつの間にか消えている

例えば梅毒と同じ性病であってもクラミジアや淋菌感染症の場合は、排尿時の違和感や尿道から膿がでるいった通常は経験しない症状が持続するため、発病した人が気づきやすいです。しかし、梅毒にかかって間もないうちは上記の理由から、見逃されやすく病気を疑うことが難しいです。

ここまで梅毒の症状の特徴を簡単に説明しました。梅毒の症状について詳しく知りたい人は、「梅毒の症状ページ」で写真付きで説明していますので、参考にしてください。

  1. こんな人は要注意

花柳界で流行が見られた当時は男性にも女性にも梅毒罹患者が多かったようですが、戦後は男性に多いことが特徴でした。特に同性愛者に多かったのですが、上のグラフにもあるようにここ最近は女性の患者も増えています。なぜ女性に患者が多いのかがはっきりしているわけではありませんが、セックスライフの変化が関与している可能性は否定できません。

繰り返しますが、梅毒は性行為でうつる病気です。それは今も昔も同じですので、仮に自覚症状がなかったとしても、コンドームを適切に使うことがとても大切です。

どんなタイミングで梅毒を疑う

上で述べた「硬性下疳」と「扁平コンジローマ」は梅毒に特徴的な症状です。これらは症状が現れたり消えたりするので、自然に治ったと思われがちですが、疑われる症状が現れたときには梅毒の検査を受ける必要があります。できるだけはやく医療機関を受診するようにしてください。

一方で、それ以外の症状に関しては、一般的な病気でも見られる症状ですので、梅毒と診断するための有力な根拠とはなりません。例えば、発熱や関節痛は風邪でよく見られる症状でですし、紅斑(赤い皮疹)も丘疹(盛り上がった皮疹)は麻疹などのウイルス性疾患でよく見られます。

梅毒を疑って検査を受けるべき人のポイントを押さえておくと便利です。以下を参考にしてください。

 皮膚に固くなる変化(硬性下疳)がある
皮膚に楕円形のイボ(扁平コンジローマ)がある
原因に思い当たるふしがないのに皮疹やリンパ節腫脹がある
数ヶ月以内にコンドームをつけないで新たなパートナーと性行為をしてから調子が悪い

一般的に、病気に特徴的な症状が見られた場合には診断の根拠になります。しかし、特徴的な症状が見られない場合には、生活や嗜好、内服薬などに手がかりがないかを確認します。

梅毒はコンドームを着用しないで性行為をするとうつります。性的な嗜好はプライバシーに関わるため、なかなか口に出しづらいものですが、上のリストに当てはまる人は医療機関で相談してください。

梅毒は早期発見早期治療すれば特に後遺症なく治る病気です。副作用が少ないペニシリンを2週間使用するだけでほとんどの場合完治します。このコラムに書いてある内容を参考にして、一度自分の状況を照らし合わせてみてください。

年々梅毒患者の数が増え、身近な感染症となっています。一人ひとりが知識を持ち、気をつけることで感染の拡大を食い止めることが期待できます。

執筆者 園田 唯(医師)』