株高で含み20兆円、日銀のETF それでも売らないワケ

株高で含み20兆円、日銀のETF それでも売らないワケ
編集委員 清水功哉
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD07AWS0X00C23A6000000/

『日経平均株価がバブル後高値を更新するなど株高が続く中、日銀が持つ上場投資信託(ETF)の含み益も増え、5月末に民間試算でついに20兆円程度に達した。1年前から6兆円以上の増加で月末値としては過去最高だ。この含み益を国民に還元すべきだとする意見もあり、7日の国会でも議論があった。ただ、早期放出は簡単でなさそうだ。

日銀が事実上の「株式」であるETFの買い入れを始めたのは2010年。13年導入の異次…

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『日銀が事実上の「株式」であるETFの買い入れを始めたのは2010年。13年導入の異次元金融緩和のもとで購入額は一気に膨らみ、17〜20年には年4兆〜7兆円程度も買った。 

既に「テーパリング」は開始

主要中央銀行で「株式」を買う金融政策を手掛けているのは日銀だけ。株価形成やガバナンス(企業統治)のゆがみといった副作用は軽視できず、日銀も既に購入額は減らし始めた。いわば「テーパリング」だ。

具体的には、21年春の政策修正で、買うのは大幅な株安局面に限る姿勢に転じた。購入額はかなり減り、23年1〜5月は約1400億円だ。それでも株価が大きく上昇しているのは、株式市場で日銀の存在感が低下したということだろう。望ましい話だ。

こうして購入面の出口政策が進むなら、次の課題として保有面の出口政策、つまり売却が意識されやすくなる。背景には日銀保有のETFにかなりの含み益がある事実もある。

日銀によると23年3月末のETF保有額は簿価約37兆円、時価約53兆円で、含み益は約16兆円だった。ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏の試算によると、その後の株高で5月末の含み益は一段と膨らみ19兆9359億円とほぼ20兆円に達したという。6月に入りさらに増えている可能性がある。

早期の放出には慎重

この含み益を国民に還元したらどうかという議論がかねてある。売却制限を付けた上でETFを割引価格で個人投資家に譲渡するなどの案だ。だが、日銀は「処分の具体的な方法に言及するのはまだ早い」(植田和男総裁)とする一方、「処分価格は時価をベースとする」(同)という姿勢だ。つまり早期の放出はなさそうで、仮に将来売るとしても割引価格ではないという方向性だ。

ETFは時価であれ割引価格であれ売却すれば株価へのマイナスの影響が懸念される。だが、日銀が早期放出に慎重になる理由はそれ以外にもあるようだ。異次元緩和のもうひとつの出口政策である短期政策金利の引き上げが関係している。

将来、マイナス金利政策を解除し利上げを進める際に、日銀は金融機関が持つ日銀当座預金の大部分にかかる金利(付利)を上げる手法を当面とると見られている。なぜか。

巨額なマネーが供給されている状況を考慮すれば、日銀がちょっとやそっとの資金吸収をしても短期市場金利を高めに誘導するのは難しい。だからといって、保有する長期国債を思い切って売るようなことをすれば短期金利どころか長期金利までが跳ね上がり、経済が混乱しかねない。そこで大量の国債を持ち続けたまま短期金利を上げるための方策が、付利引き上げなのだろう。

問題は異次元緩和で日銀当座預金が膨張している点だ。

付利対象部分の当座預金は今春時点で500兆円を超えていたもようで、大ざっぱな計算だが0.25%の利上げごとに年間1兆円超の金融機関への追加的支出になる。一方、日銀の当期剰余金(最終利益に相当)は、現行日銀法施行(1998年)以降で「最高益」だった2022年度でも2兆円程度。0.5%の利上げで消える計算だ。金利が上がっていくなら資産側の保有国債の利息収入が増加する点も考慮は必要だが、あくまで新たに買った分から徐々に増えるのが基本だ。

仮にETFを手放し分配金(22年度で1兆1000億円程度)を得られなくなれば、以上のような利上げ時の日銀財務への悪影響が強まりかねない。日銀の「自己資本」は22年度末で12兆円程度だから、利上げが進んでいくなら何年かで債務超過になる恐れすら指摘される。これがETFの売却に慎重な一因ではないか。

もちろん時価での売却ならその時点では利益を手にできる。割引価格で売るよりは財務への打撃が小さい。だから「処分価格は時価がベース」なのだろう。ただし、すべて売ってしまえば利益は得られなくなる。日銀はそれより保有を続けて分配金を継続的に得た方が望ましいと判断しているかもしれない。とすれば時価であっても早期の売却はしない方がいい。そこで「処分の具体的な方法に言及するのはまだ早い」としているように見える。
中銀が短期的に赤字や債務超過に陥っても政策がしっかり運営されていれば問題はないとの議論にはそれなりに説得力があるものの、市場が冷静に受け止めるかはわからない。円売り材料になるリスクもゼロではない。

利上げが視野に入りつつある証拠?

7日の国会で植田総裁も「ETFの配当金が無い場合は、その分、収益は下がるので、全体の姿はやや厳しめになる」と語った。「日銀の財務の悪化が着目されて金融政策の議論をめぐる無用の混乱が生じ、信認の低下につながるリスクを避けるために、財務の健全性にも留意しつつ適切な政策運営に努めたい」とも述べた。9日の国会では、金融政策の出口になったときETFを持ち続けることも「ひとつの選択肢」と答えた。

将来の金利引き上げ局面でETFの分配金が重要性を増すと考えている印象はやはりある。そう判断しているのは、利上げが徐々に視野に入りつつある証拠なのかもしれないのだが。

[日経ヴェリタス2023年6月11日号]

【関連記事】

・植田日銀総裁、ETFの処分議論「まだ早い」
・利上げとETF放出の両立難しく 日銀、緩和出口の難路
・植田日銀、揺れる緩和維持シナリオ 強まる物価高に苦悩 』

金融庁、千葉銀と傘下証券処分へ 仕組み債で監視委勧告

金融庁、千葉銀と傘下証券処分へ 仕組み債で監視委勧告
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB073UY0X00C23A2000000/

 ※ この手の話しが、増えてきたし、これからも増えるだろう…。

 ※ なにしろ、『リスク性商品の購入経験がない銀行の顧客に十分な説明をせず高リスクの仕組み債を販売していた。』、ということだからな…。

 ※ 世の中の人は、「金利」の多寡にのみ目が行って、肝心の「リスク」という概念を全く知らないからな…。

 ※ リーマン・ショックの時、日経平均は8000円台となった…。

 ※ 多くの人がうろたえて、右往左往していた時に、「なーに。上がることも、あるだろう…。」と、泰然自若としていた人を、知っている…。

 ※ そういう「胆力」ある人のみが、生き残っていける…。

『【この記事のポイント】

・千葉銀行と傘下のちばぎん証券が行政処分される見通し
・不十分な説明で高リスクの仕組み債を販売していた
・適合性の原則違反で行政処分されれば2004年3月以来、2例目

証券取引等監視委員会は複雑でリスクの高い「仕組み債」の販売をめぐり、千葉銀行と傘下のちばぎん証券を行政処分するよう金融庁に勧告する方針を固めた。リスク性商品の購入経験がない銀行の顧客に十分な説明をせず高リスクの仕組…

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『リスク性商品の購入経験がない銀行の顧客に十分な説明をせず高リスクの仕組み債を販売していた。監視委の勧告を受け、金融庁は業務改善命令などの処分を検討する。

金融庁によると、銀行や証券会社の2021年度の仕組み債の販売額は約4.1兆円で、うち約6400億円が地方銀行による販売分だ。金融庁や証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)に寄せられるトラブル事例は後を絶たず、投資初心者などへの販売が問題視されている。

仕組み債はデリバティブ(金融派生商品)を使った複雑な仕組みの債券で、もともとプロ向けに開発された。高い利回りをうたう一方、個別株や為替相場などの指標があらかじめ決めた水準(ノックイン価格)を下回ると償還時に元本割れが発生したり、利益を出すことなく早期償還されたりする場合がある。

米利上げに伴う相場の急変でノックイン条項に抵触し、損失を抱える個人が増えたとみられることが仕組み債問題の背景にある。

千葉銀は自行の顧客をちばぎん証券に紹介し、ちばぎん証券がその顧客に仕組み債を販売していた。監視委はこの「銀証連携」について検査を実施。その結果、定期預金取引が中心で元本割れリスクのある投資商品の購入経験がない顧客に複雑な仕組みやリスクを十分に説明せずに仕組み債を販売していたことを問題視しているようだ。

金融商品取引法は顧客の知識や経験、財産の状況、契約の目的に沿って販売する「適合性の原則」を定めている。投資経験に乏しい顧客に十分な説明を尽くさずに仕組み債を販売したことが、この適合性の原則に違反するとして金融庁への処分勧告に踏み切るとみられる。

金融庁が金商法の適合性の原則違反で行政処分を出せば2004年3月に泉証券に対して業務停止命令と業務改善命令を出して以来、2例目となる。仕組み債に関する行政処分は日本に本社を置く銀行・証券会社に対しては初めて。

【関連記事】

・仕組み債販売、地銀で撤退進む 11月販売は3割のみ
・仕組み債とは デリバティブで高利回り設定、元本毀損も
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野崎浩成
東洋大学 国際学部教授
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ひとこと解説 政府が掲げる資産所得倍増プランに向けての一環と捉えることができます。昨年来、行政が重視しているのが「プロダクト・ガバナンス」で、顧客に提供される金融商品の中身について販売者(売り手)と運用者(作り手)が細心の注意を払い、顧客の利益に資するものかを自己監視することを指します。毎月分配型投信や今回の仕組み債などが、従来から問題点を指摘され続けてきました。個人が自らの労働による勤労所得ばかりでなく、お金にも働いてもらうためには、個人が十二分に商品性を理解をしたうえで投資できる環境を整えることが必要条件となります。金融機関が自らの利益でなく、顧客利益を優先できるかは、常に問いかけられるべきです。
2023年6月9日 7:18 (2023年6月9日 7:19更新) 』

三菱UFJ、旧行システム完全統合に次ぐ「大手術」へ

三菱UFJ、旧行システム完全統合に次ぐ「大手術」へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC157VU0V10C23A5000000/

『三菱UFJ、旧行システム完全統合に次ぐ「大手術」へ
3メガバンクCIOに聞く(上)

勘定系システムは非競争領域――。こう言い切る銀行すら出始めたなか、3メガバンクグループは勘定系システムをどう位置付けているのか。3メガバンクの決断は、地方銀行やインターネット専業銀行のみならず金融事業を手掛ける大手IT(情報技術)ベンダーの戦略にも影響を与える。各グループの最高情報責任者(CIO)へのインタビューを通じて3メガバンクの勘定系システム戦略を明らかにし、その未来を展望する。

旧東京三菱…

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『旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行のシステムを完全統合した「Day2」以来の大手術――。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が勘定系システムの根本的な見直しに挑んでいる。「アーキテクチャ戦略」をまとめ、2022年度からの10年間で約1400億円を投じる計画だ。MUFGでグループCIOを務める越智俊城執行役常務に同戦略を進める真意を聞いた。

三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役常務グループCIOの越智俊城氏(写真:北山 宏一)

──三菱UFJ銀行を中心にシステムを抜本的に見直す「アーキテクチャ戦略」を21年から推進しています。このタイミングになった理由は何でしょう。

「私は17年にシステム企画部長に就きましたが、その頃から実はアーキテクチャ戦略という言葉が出ていました。当時は18年度に始まる中期経営計画を作るために『MUFG再創造イニシアティブ』を打ち出し、構造改革を進めていました。柱の1つがデジタライゼーションです。こうした動きをきっかけに(将来を見据えて)システムはどうあるべきか考え始めました」

MUFGのアーキテクチャ戦略のポイント

──システムのアーキテクチャーを評価した結果はどうでしたか。

「チャネル系システムと勘定系システムは密結合でメンテナンス性が悪いといった、いくつかの課題が洗い出されました。アーキテクチャ戦略はこうした課題を踏まえ、『10年先に困らないように』という方針でまとめています」

「アーキテクチャ戦略のテーマは大きく2つです。1つが堅牢(けんろう)性を維持しながら(レガシーシステムを手掛ける)人材や技術的な枯渇に対してどんな手を打っていくか。もう1つが(インターネットバンキングなどの)チャネルやアプリケーションの柔軟性や効率性をいかに高めていくかです」

──旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行のシステムを完全統合したDay2は、投資額2500億円、総工数11万人月という規模でした。22年度からの10年間で約1400億円を投じるアーキテクチャ戦略はDay2以来の規模のプロジェクトでは。

「その通りです。Day2に次ぐシステムの大手術になると考えています」

勘定系は根源的な信頼を支える

──勘定系を「非競争領域」と捉える銀行も出始めたなか、同システムをどう位置付けていますか。

「勘定系システムは頻繁に変更を加えるものではありませんが、銀行の根源的な信頼を支えている仕組みです。そこが(塩漬けで)じっとしたままだと維持できなくなってしまうため、勘定系システムをいかに守っていくかはすごく大事なことだと思っています」

「例えばメンテナンスがしやすいように複雑な構造をシンプルにしたり、メインフレーム(大型汎用機)というハードウエアだけでなく、そこで動作するソフトウエアや開発ツールを整備し続けたりする必要があります。システム全体をモダナイズ(近代化)していくことは、我々にとって非常に重要な取り組みです」

──オープン基盤やクラウドの進化が著しい状況で、システムの堅牢性を維持するメインフレームの役割は今後どのように変化するのでしょうか。

「今、メインフレームが担っているのは、高い可用性と処理能力が求められるシステムです。今まではメインフレーム上で様々なシステムが動いていましたが、今後はメインフレームが担う部分を少なくしていきます。ソースコードをスリムにするだけでなく、メインフレーム上で動作する機能そのものを限定していく想定です」

「具体的には、融資や外国為替のトランザクションを管理したり、融資の審査をしたりする機能をメインフレームの外にどんどん出して、できればオープン系サーバー上で動作するパッケージソフトに置き換えたい。一方、口座振替などはひとたびトラブルが起きると、他の処理に影響を及ぼし、大変な事態を招くため、メインフレームが必要です。顧客への影響が大きい預金や為替も同様に必要でしょう」

このままではDXの足かせに

──このタイミングでシステムを見直さないと、DX(デジタルトランスフォーメーション)の足かせになるといった危機感があったのでしょうか。

「まさに17年にアーキテクチャーを評価したとき、『足かせになる可能性がある』と書かれていました」

──アーキテクチャ戦略をまとめる段階で、勘定系システムなどの全面オープン化は選択肢にあったのでしょうか。

「選択肢として(全面オープン化を)最初から落としてはいないと聞いています。フラットに検討した結果、今の形(メインフレームとオープン基盤のハイブリッド型)に落ち着きました」

──システム内製化の動きが強まるなか、日本IBMや日立製作所を中心としたITベンダーとの関係性は今後どのように変化していきそうですか。

「これまでの歴史をひもとくと、ITベンダーとは銀行のシステムをつくってきたというよりは、ミドルウエアなどベンダーの製品も含めて一緒に開発してきたという関係でした。そこの関係性は変えたくない。一方で人的リソースの調達でベンダーに頼ってきた部分については、人材の流動化や採用難を踏まえて、自前で手掛ける部分を増やす必要があるでしょう」

=つづく

(聞き手は日経FinTech 山端宏実、日経コンピュータ 玉置亮太)

[日経コンピュータ 2023年5月11日号の記事を再構成]

越智俊城(おち・としき)氏
1991年3月一橋大学商学部卒、同年4月三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。三菱UFJニコス常務執行役員などを経て、2022年4月より三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役常務グループCIO。三菱UFJ銀行取締役常務執行役員CIOを兼務。』

野村証券福井支店が閉店、74年の歴史に幕

野村証券福井支店が閉店、74年の歴史に幕 業務提携の福井銀行へ50人出向、共同で金融商品販売
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1783748

 ※ たぶん、こういう動きは、「全国規模」で展開されると思われる…。

 ※ 日銀の政策は、植田総裁体制になっても、「緩和基調」は続くと思われ、「利ザヤを稼ぐ」環境は、厳しいままと考えられるからだ…。

 ※ 銀行(特に、地銀)の経営環境としては…。

 ※ そうすると、「債券、証券販売」とかで稼ぐ他なく、記事にある通り、「信託・証券部門を分社化」して、証券会社と(部分)合体するのが、「解の一つ」となるからだ…。

 ※ 証券会社側も、地銀が保有している「富裕層のリスト」を利用できることになるので、ウインウインとなる…。

 ※ ただし、顧客は「リスク資産」に手を出すことになるので、その分「トラブル」も増えると思われる…。

 ※ 福井銀行の昔からの顧客が、「AT1債」の知識とか、あるのかな…。

『2023年5月13日 午後5時00分

野村証券の福井支店(福井県福井市)が5月12日、福井銀行との業務提携のため閉店した。15日からは支店社員の約50人が福井銀に出向し、共同で金融商品の勧誘や販売を行う。74年の歴史ある支店を閉じて関係を深める背景には、両社が互いの強みを生かし、「貯蓄から投資へ」のニーズを呼び込みたい思惑がある。

 野村と地銀との提携は北陸で初めて。福井銀は、会社分割の手法で投資信託や公共債などの口座を野村に承継。野村の社員を受け入れ、県内4カ所に設ける「コンサルティングプラザ」を拠点に、野村の金融商品を仲介し、勧誘からアフターフォローまでを担う。野村は、法人向け一部業務については福井市に新設する「福井法人部」に移管する。

⇒福井銀行が金融商品販売のグループ設置 組織改編と人事異動発表

 野村の福井支店開設は、東証で戦後の取引が始まった1949年(当時は福井営業所)にさかのぼる。現存する110支店のうち27番目に古く、昨年7月の会見で奥田健太郎社長は「福井県は創業者の母の出身地で、大切な地域」と思いを打ち明けた。大切な地域の看板を外して提携したのは、福井銀が抱える顧客にアクセスできる利点があったためだ。

 福井銀の2023年3月末時点の預金残高は2兆8623億円。政府が「資産所得倍増」「貯蓄から投資へ」の旗印を掲げる中、福井銀の顧客と預金は経営強化の源泉となる。野村は営業拠点が福井支店1店舗だったが、提携で4カ所に増えるメリットもある。

⇒福井銀2年ぶり増益、貸出金利息が増加 3月期決算、新幹線向け挑戦支援

 一方の福井銀は、コロナ禍もあり足元で預金が急増。銀行は預金などで集めた資金で融資を行い、利ざや(貸し出しと預金の金利差)を稼ぐのが本業。2023年3月末の貸出金利回りは15年ぶりに上昇したが、超低金利で経営を取り巻く環境が厳しい状態は依然として続いている。

 顧客が預金を投資に振り向ければ販売手数料が期待できるが「豊富な金融商品をそろえ、販売のノウハウも豊かな証券会社に地銀はかなわない。これから専門社員を育成するより、野村と手を組んで仲介手数料を受け取る形の方がいい」(関係者)というのが本音だ。

 12日の決算会見で、長谷川英一福井銀頭取は「証券会社は顧客の預金残高などが分からない中での営業だったが、銀行は重要な情報も営業拠点もある。お客さまにしっかりとした情報と商品を提供し、資産所得の倍増につなげていくのがわれわれの責務だ」と力を込めた。福井銀は2社合計の投資信託、個人向け国債、株式などの県内預かり資産残高(預金除く)を現状の約3600億円から5年後に5千億円へ引き上げる目標を立てている。』

日銀、国債補完供給の品貸料引き上げ 空売り抑え取引円滑化狙う

日銀、国債補完供給の品貸料引き上げ 空売り抑え取引円滑化狙う
https://jp.reuters.com/article/boj-10-year-idJPKBN2UQ0JW

 ※ 今日は、こんな所で…。

 ※ 直接には、コレが「引き金」だろう…。

 ※ まあ、「天下の日銀様」に逆らって、無事でいられるヘッジファンドは、いないと思うが…。

 ※ そもそも、「他国の通貨」に「空売り」仕掛けて、儲けようとか、「フテー話し」だ…。

 ※ 返り討ちにあって、「いい気味」だ…。

 ※ 全く、同情する気には、ならんな…。

 ※ ちょっと説明を、加えておく…。

 ※ 日本国債の「空売り」を仕掛けようにも、かたっぱしから「日銀様」が「買い上げて」しまわれるんで、「市場に」「タマ」自体が出回らない状況になっている…。

 ※ そこで、「編み出した」のが、「賃貸料」を支払って、「国債の入札」に参加している「国内の金融機関勢」から、「借りる」という手法だ…。

 ※ 「借りて」「空売り(先行き、売りポジションを取る)」するというわけだな…。
 ※ しかーし、「日銀様」が「お怒り」になられて、その「借りる際の賃料」を引き上げることにするという「お達し」を、発令されたのじゃー…。

 ※ それで、空売りのコストが、「利益」に見合わなくなって、投げ売り・撤退するヘッジファンドが続出し、「がん首並べて」討ち取られ―…。

 ※ 大体、そーゆー話し…。

『2023年2月16日5:30 午後Updated 3ヶ月前

[東京 16日 ロイター] – 日銀は16日、10年物国債のカレント3銘柄のうち、レポ市場で長期にわたり需給が逼迫する懸念がある銘柄を対象に、国債補完供給における最低品貸料を引き上げると発表した。日銀は国債補完供給が本来の制度趣旨から外れて利用が膨らみ、空売り圧力が高まっていることを懸念。国債補完供給の使い勝手を悪くすることで空売り圧力を抑え、円滑な市場取引の確保を目指す。

2月16日、日銀は10年物国債のカレント3銘柄のうち、レポ市場で長期にわたり需給が逼迫する懸念がある銘柄を対象に、国債補完供給について最低品貸料を見直すと発表した。写真は2013年2月、都内で撮影(2023年 ロイター/Shohei Miyano)

最低品貸料を従来の0.25%から原則として1.0%に引き上げる。2月27日以降のオペに適用する。同措置を講じる銘柄については、特に必要と認める場合、銘柄別の売却上限額を「日銀の保有残高の100%」から引き下げる。売却上限額を引き下げた銘柄については、原則として午後の国債補完供給のオファーを行わない。

また、これらの措置を講じる銘柄については、国債市場における利回り水準が0.5%に達しないと見込まれる場合には、連続指し値オペの対象としないことがあり得るとした。

<日銀、国債補完供給の利用で「大規模な空売り」懸念>

国債補完供給は本来、市場の流動性を確保する観点から国債を一時的かつ補完的に供給するものだが、日銀の国債買い入れで流動性が落ちる中、足元では10年物カレント銘柄の一部で利用が膨らんでいた。16日の国債補完供給オペでは、カレント銘柄の367回債で1兆2553億円、368回債で8082億円の利用があった。

大和総研・金融調査部の中村文香研究員は「国債補完供給オペが使いやすいために国債の空売りがしやすくなり、そうすると金利上昇圧力が高まって日銀がまた買い入れなければならないという悪循環に陥っていた」と指摘。今回の最低品貸料の引き上げはこうした悪循環を断つことを狙ったものだと話す。

日銀は「国債補完供給を長期にわたって継続的に利用することを前提とした大規模な空売りが見受けられている」と指摘。「こうした空売りの買い手となった市場参加者が連続指し値オペに応札することで、一部の対象銘柄についてSCレポ市場(特定銘柄取引)における需給が長期にわたり著しく引き締まる懸念が生じる状況となっている」とした。

その上で、今回の一連の措置を通じ「国債補完供給の趣旨に即した利用を促すことで市場取引の円滑を確保し、金融市場調節のいっそうの円滑化を図る」とコメントした。

野村証券のチーフ金利ストラテジスト、中島武信氏は最低品貸料の引き上げについて「日銀から国債補完供給で国債を借りてショートするのを難しくするだろう」と指摘。連続指し値オペはカレント3銘柄を対象としているため、現在、日銀は0.5%以下の銘柄も買わなければならないが「その必要がなくなれば、流動性も向上すると期待される」との見方を示している。

もっとも、引き上げ後の最低品貸料は、制度の「悪用」防止と流動性維持のバランスを保つ観点から微妙な判断になった可能性がある。大和総研の中村氏は原則1.0%の最低品貸料について「様子を見ながら変更する可能性もある」と話す。

(伊賀大記、和田崇彦 編集:石田仁志)』

日本という特殊な条件を考えずに仕掛けた海外ヘッジファンドの空売り全滅

日本という特殊な条件を考えずに仕掛けた海外ヘッジファンドの空売り全滅
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/31486082.html

『最後の抵抗を示していた日本国債に空売りを仕掛けていた海外ヘッジファンドが、ほぼ壊滅した模様です。損を確定して、市場から撤退を始めましたね。他人事ながら、以前の日銀砲が発動した時のように、多数の投資家の皆様の命が失われる事が無いように願っています。仕掛けた事の結果は、必ず引き受けさせられますので、投資で敗れた時の末路は悲惨です。

海外のヘッジファンドの日本国債空売りの根拠になっていたのは、次のような理屈です。日本の高い財政赤字と巨額の国債残高、および長期的なデフレ圧力により、日本国債の価格が下落し、金利が上昇するとの見方です。日本政府が国債の利払い負担に耐えられなくなり、インフレが加速し、日本円が大幅に下落すると予測していました。この理屈は、間違っていないし、大抵の国には当てはまります。しかし、その国の財政というのは、一律ではありません。日本には、日本固有の状況がありました。

それは、日本の国債の殆どを買い占めていたのは、他ならぬ日銀だったという事です。余りにも利率が低い為に、外国には人気が無く、投資の対象とは見なされていませんでした。なので、通貨発行権を持つ日銀が、買い取っていたわけです。それを、「一般的な」国家財政の理屈で、いつか限界を迎えると踏んで、空売りを仕掛けていたのが、海外のヘッジファンド勢です。通常、国の発行した国債は、アメリカ国債のように、外国の投資家もバリバリ買います。注意しないといけないのは、国債の金利が高い国ほど、財政破綻してディフォルトする可能性が高いという事です。ヨーロッパだと、イタリアとかギリシャとかですね。この前、破綻したクレディスイスなんかは、苦しい経営を支える為に、この辺りの金利の高い国債を、ガンガンと買っていました。

空売りを仕掛けるには、まず、その時のレートで日本国債を借りてくる必要があります。そして、約定日に、その時のレートで買い戻す義務があります。その時に日本国債の価格が下落していれば、利益になり、上昇していれば損になります。ところが、日本の国債価格は、日銀にガッチリと管理され続けた上に、殆どを発行元の日銀が買い占めていたので、約定日になっても買い戻す為の日本国債がどこにも無いという、極めて異例の状態が発生しました。既に、日本の銀行や生保が所有していた日本国債は、殆ど手数利用を払って借りてきていたので、買戻しができない状態です。それゆえ、罰金を支払って、手打ちにするか、日銀に高い金利を払って(直接ではない。間に証券会社が挟まるが、便宜的にこういう表現にしました)買い戻すしかなくなり、殆どの場合市場で損失を出した上に、高い金利を支払って退場という悲惨な結末を迎えています。

債権の場合、株式と違って、大量保有した場合に、それを公示する義務が無いので、具体的に誰が、どれだけ損をしたかは不明ですし、厳密に言うと、実際に大損があったかどうかも、ヘッジファンド側の発表が無い限り不明なのですが、諸所の状況を見ると、まず間違い無いはずです。日銀の国債の保有比率が高い事は、度々批判の的になってきました。市場の健全性から見ると、まったく「ごもっとも」であり、実に不健全な状態であった事は確かです。しかし、事、海外ヘッジファンドの日本国債の空売り攻撃に関しては、鉄壁の防波堤として機能しました。理由は、国債を発行するのも、金利を設定して貸し出すのも、胴元が日銀だからです。つまり、好きにコントロールできます。こんな賭場で、勝てる博徒は存在しません。無理に張り込めば、スッテンテンにされて退場するしか道がありません。

海外ヘッジファンドの読みは、大方の国家に対しては、有効なものですが、日本の特殊事情に関して言えば、間違いだったのです。まぁ、その特殊事情も、決して自慢できるようなものでは無いのですが、他に類例が無い為、とても「一般的」な考えで、市場に介入してしまったのが運の尽きです。今回も、討ち死に状態で、日銀の前に敗退した事になります。

ちなみに、この考え方も、1つの見解に過ぎず、全てのデータが公開されていない以上、予測の域を出ない事は、申し添えておきます。特に債権は、「判った気になる」のが一番危険です。世界の市場において、最大の規模を誇るのは、為替でも株式でもなく、債権市場なのですから、簡単な言葉で全てが説明できるわけでも、理解できるわけでもありません。そのことは、くれぐれも、ご理解下さい。』

大阪カジノの晴れぬ霧 銀行団、巨額融資にためらいも

大阪カジノの晴れぬ霧 銀行団、巨額融資にためらいも
金融取材メモ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB241210U3A420C2000000/

 ※ まさか、「感染症」「パンデミック」みたいなものに直撃されるとは、関係者の誰もが思わんかったろうな…。

 ※ 世の中には、そういう「リスク」も、潜んでおったわけだ…。

『日本初のカジノを含む大阪の統合型リゾート(IR)計画が4月に政府の認定を受け、2029年秋〜冬ごろの開業へ動き出した。事業費は1兆800億円と巨額で、協調融資の組成額は5500億円と空前の規模になる。融資団には20社前後の参加が期待されるが、新型コロナウイルスの流行で世界中のカジノが営業停止に追い込まれた記憶も生々しい。金融機関の目線は厳しさを増している。

国際会議場や劇場、ホテル、カジノを一体…

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『国際会議場や劇場、ホテル、カジノを一体で整備するIR。プロジェクトのゆくえを左右するのが資金調達の成否やその条件だ。ギャンブルの依存症や治安への不安など住民に忌避感も残り、資金を支える銀行にとっては難しい案件といえる。

参加行を率いるリードアレンジャーは、大阪を源流のひとつとする三菱UFJ銀行と三井住友銀行が務める。幹事行の呼びかけにどれだけの金融機関が応じるかによるが、両行で計2000億〜3000億円程度を負担する見込みだ。

りそな銀行とSBI新生銀行が参加の意向を示し、三井住友信託銀行や日本政策投資銀行も検討を進める。幹事行は地域金融機関や生命保険会社にも参加を呼びかけ、オールジャパンの様相を呈している。総額5500億円の協調融資は、新千歳空港など北海道にある7つの空港を民営化した際の融資額(約3600億円)を上回り、国内で最高額となる。

ところが参加行を想定する一覧表で、みずほ銀行の応諾額は空欄のままだ。前向きな返事はまだ届いていないという。

みずほがIRへの融資をはなから除外しているわけではない。むしろ計画が撤回された横浜では京浜急行電鉄や大成建設、電通などからなる「八社会」とカジノの運営を担う海外企業で構成する陣営に、自らを中心とする銀行団が6000億円融資する計画を温めていた。

大阪で足並みがそろわないのは、融資を巡る考えの違いを埋めきれないからだ。

三菱UFJと三井住友は事業から将来得られるキャッシュフローを返済の原資とするプロジェクトファイナンスを前提に進める。対するみずほは企業体の信用力を裏付けにした企業向け融資を推し、プロジェクトファイナンスと一線を画す。最大1000億円の融資を期待されるみずほが不参加となれば、ほかの金融機関が穴埋めすることになる。

慎重なのはみずほだけではない。IRの舞台となる夢洲は人工島で、地盤沈下や土壌汚染のリスクが残る。地盤をかさ上げしたり、土壌を入れ替えたりして想定外の費用が発生したとき、だれが費用を負担するのか。融資に際してはこうしたリスクを一つひとつ洗い出し、表面化した際の解決策を決めておく必要がある。

融資に前向きな銀行の幹部でさえ「懸念を解消できていない」と決裁できずにいる。大口の参加を期待されていた生命保険会社は要請を断った。当初の予定より応諾額を減らした銀行もある。みずほがプロジェクトファイナンスに慎重な姿勢を崩さないのも、そこに潜むリスクを見極めきれずにいるからだ。

コロナ禍で世界的にオンラインカジノの市場が急成長し、カジノが収益の約8割を稼ぐ大阪の計画を不安視する向きもある。韓国でカジノの運営に携わるセガサミーホールディングスによると、21年の来場者は前の年から57%も減った。感染症の流行で融資の前提となる収益計画が根底から揺さぶられる事態を目の当たりにし、金融機関の熱気も薄れているように映る。

(渡辺淳)

話題の金融ニュースの裏側で何が起きているのか。金融機関や金融庁を日々取材する現場記者の取材メモから読み解きます。
【関連記事】

・大阪IR7つの「宿題」 開業に向け、求められる解答
・大阪IR、モデルはシンガポール カジノ「依存」に懸念 』

英トラス前首相の悔恨 「知らなかった」財政のリスク

英トラス前首相の悔恨 「知らなかった」財政のリスク
加藤晶也
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA110NV0R10C23A4000000/

 ※ 財政出動は困難…、となれば、残りは「金融政策」のみとなる…。

 ※ それで、「非伝統的緩和政策(異次元緩和、とも言う)」を採れば、日銀の国債保有の増大化、日銀のETF保有の増大化となる…。

 ※ 前者は、「実質上の、日銀の国債引き受けだ!」と言われ、後者は、「実質上の、日銀による日本株の買い入れだ!」と言われることになる…。

 ※ 事程左様に、世の中、「こちら立てれば、あちらが立たず。」だ…。

 ※ さらに残るは、「構造改革」だ…。

 ※ これとて、「デジタル革命!」「DXの推進だ!」と囃し立てたが、進捗はどんなものだったか…。

 ※ 「コロナ直撃!」にもかかわらず、せいぜいが「ハンコの廃止」くらいのものじゃないのか…。

 ※ それでも、「マイナカード」の取得割合は、80%くらいにはなってるようだが…。

『少し、話しにくそうだった。2月に来日した英国のトラス前首相にインタビューした時のことだ。最初は「自由な世界は中国からの深刻な挑戦に直面している」と対中政策を立て板に水のごとく話していた。

首相在任時の経済・財政運営から日本や世界が学ぶべき教訓は何か。話題を変えると天井をいったん見上げて言葉を選びながら答えた。「英国固有の状況に直面した。必ずしも他の国に当てはまるものではない」

トラス氏は今から半…

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『トラス氏は今から半年前、英国史上最短で首相の座から退いた。わずか49日、経済・財政運営を巡る混乱が原因だった。

保守党の党首選で経済成長を最優先に取り組む姿勢を繰り返してきた。就任後、大規模減税や規制緩和を組み合わせた経済政策を公表すると、英国債利回りが急上昇(債券価格は下落)した。財政赤字拡大への懸念から国債が売られたためだ。

英政府は所得税の最高税率引き下げの撤回を表明するなど事態の収拾に動いたが時すでに遅し。保守党内からも辞任論が噴出し退陣に追い込まれた。

トラス氏が言う「英国固有」の状況とは何か。

年金基金が国債などを担保にレバレッジ(てこ)をかける「ライアビリティー・ドリブン・インベストメント(LDI=債務主導投資)」という運用戦略をとっていたことだ。

金利が上昇し大きな損失を出し、取引相手方の金融機関からマージンコール(追加担保の差し入れ要求)を突きつけられた。支払いの現金を捻出するために国債などを売却せざるを得なくなり、売りの連鎖が発生した。

本当に英国だけの事情なのか。混乱のきっかけが財政規律の緩みを見透かされたことという点では日本も対岸の火事とはいえない。日本の国内総生産(GDP)と比べた債務残高の比率は英国よりはるかに大きい。

市場関係者は警鐘を鳴らす。「必ずしも日本ですぐ起きることではないが、市場が群集心理で反応することは常にありうる。財政規律のタガが外れている現状を修正し、財政赤字を減らす努力をしなければいけない」(りそなアセットマネジメントの黒瀬浩一氏)

驚いたのはトラス氏がこの年金基金の運用手法による市場の脆弱さを「知らなかった」と答えたことだ。財務省やイングランド銀行(中央銀行)との間で「明らかなコミュニケーションの問題があった」とも話した。

トラス氏は就任した直後に財務次官を解任したり、イングランド銀行の「役割を見直す」などと言及したりした。互いに不信感が広がっていた。

国のトップと中央銀行、財政当局との信頼関係なくして安定した経済運営は成り立たない。英国から学ぶ点はここにもある。

日本では植田和男氏が9日に新たな日銀総裁に就任し、翌日の10日にはさっそく岸田文雄首相の元を訪れた。鈴木俊一財務相も立ち会い協調を確認した。

インタビューの終盤、トラス氏が発した言葉が耳に残る。

「もし、もう一度時間があったら違った行動を取っていたかもしれない」

財政支出を拡大しつづけても日本では金利は急騰しないか。財政規律の緩みを放置すれば英国のような事態が起きうるのか。財政を巡る議論は国内でも百家争鳴だ。

ただ一つだけ言えることがある。経済・財政運営のやり直しはできない。英国から学ぶ最大の教訓だ。

【関連記事】

・史上最短首相のトラス氏、再始動 英財政の慣習に批判も
・トラスノミクスの失敗、「震源」は大減税よりもエネ対策
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深川由起子
早稲田大学政治経済学術院 教授
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分析・考察 (まだ)国際金融市場を擁する国の首相が年金運用の脆弱性を「知らなかった」と言えることを民主主義国家の強みとみるのか、脆弱さとみるのか、と言われれば今は後者が大でしょう。日本でも前政権下で財務省と官邸の関係に問題があったことは首相の回顧録が示すとおり。市場の群衆行動は不安になるとポジよりネガに激しく反応し、潜在的地政学リスクの相手から揺さぶりが来ることも考えられると思います。ばらまき懸念は常に存在するので、リスク情報の共有はしっかりやってもらわないと。
2023年4月17日 8:16いいね
37

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中空麻奈
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部 副会長
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ひとこと解説 人の噂も75日とはよく言ったもので、トラス政権の失敗を他山の石にしようとする意識が薄れ、日本の財政は防衛、子ども、グリーンに向かい拡大が目される。財政規律を取り戻した上での支出ならまだしも、心配は尽きない。また、トラス政権での失敗の一つに、政府と中央銀行との間のコミュニケーションが指摘されると、日本の政府と日銀間のアコードの存在に意義が見出せるということなのかもしれない。金利が低い間に慣れてしまった財政の弛緩は大問題だと認識を改めたい。6月に向けてアメリカの債務上限問題の浮上を含め、過剰債務問題が中心のリスクになりえることに再度注意である。
2023年4月17日 10:10いいね
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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説 昨年9月末から10月初めにおきた英国の国債市場の不安定化は、年金基金の投資戦略にあった。問題は年金基金だけでなくファンドを含むノンバンクの存在が大きくなっておりかならずしも十分規制が適用されていないのに、投資実態が十分わかっていないことだ。銀行はリーマンショック以降金融規制が強化されているが、ノンバンクとの連関も高まっており危機が発生するとどのように銀行に波及するかも十分わかっていない。このような認識があるにもかかわらず、世界の金融当局はまだ十分対応しきれていない。英国ではイングランド銀行の介入で混乱が収まった。3月の米国の地域銀行の破綻も原因は異なるが、金利上昇に関連するものだった。
2023年4月17日 8:15いいね
18

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永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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ひとこと解説 当時の英国では、インフレ率が既に+10%台に到達しており、需給ひっ迫によりインフレ率が目標の+2%を大きく超えてしまっていました。
実際、IMFのGDPギャップで比較すると、英国では2022年時点で需要超過になっており、需要超過によりインフレ率が加速していました。
さらに、各国国債の信認を左右するとされる4指標についてG7で比較しても、英国は政府純債務/GDPと政府債務対外債務比率はG7中3番目に低かったものの、基軸通貨国米国に次ぐ経常赤字/GDPが大きい国である上、米国とフランスに次ぐ対外純債務/GDPが高いことからすれば、財政出動は限界だったと言えるでしょう。
2023年4月17日 8:13 』

MUFG、クレディSのAT1債950億円を富裕層に販売ー無価値

MUFG、クレディSのAT1債950億円を富裕層に販売ー無価値
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-14/RT3DW6T0G1L601?srnd=cojp-v2
 ※ 『MUFGの広報担当者はブルームバーグの取材に対し事実を認め、この件で顧客に心配をかけて大変心苦しく思うとしたうえで「影響を受けた顧客には今後も継続して丁寧に説明していく」と電子メールでコメントした。』…。

 ※ 買った総額「950億円」の債券が、ぱあになっても、それだけだぞ…。

 ※ もっとも、「規約」にちゃんと「明記」されてたハズだからな…。文句は、言えない…。

 ※ 顧客が、ちゃんと読んだかは、怪しいものだが…。

 ※ 『顧客の大半が個人の富裕層で、一部法人も含まれるという』…。

 ※ とんだ話しだ…。『高い利率』に釣られて、買ったんだろう…。

 ※ 世の中に、「ローリスク、ハイリターン」なんてものは、存在しない…。

 ※ まあ、その程度の「損失」は、「屁でも無い」という層が、買ったんだろう…。

『 2023年4月14日 18:01 JST 更新日時 2023年4月14日 19:26 JST

無価値化の時点で約1500の顧客口座で保有、一部で法人も
MUFGは対策会議を招集、実態把握や顧客への説明状況を確認中

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の三菱UFJモルガン・スタンレー証券が、経営危機に伴って無価値となったクレディ・スイス・グループの永久劣後債(AT1債)約950億円分を顧客に販売していたことが分かった。事情に詳しい複数の関係者が14日までに明らかにした。

Financial Institutions in Japan As Libor Expiry Looms
三菱モルガンの看板
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  関係者らによると、無価値となった時点で同証の約1500の顧客口座でクレディSのAT1債保有があった。顧客の大半が個人の富裕層で、一部法人も含まれるという。MUFGは役員を含めた対策会議を開き、実態把握や顧客に対する状況説明の進捗(しんちょく)などの確認を行っているという。

  MUFGの広報担当者はブルームバーグの取材に対し事実を認め、この件で顧客に心配をかけて大変心苦しく思うとしたうえで「影響を受けた顧客には今後も継続して丁寧に説明していく」と電子メールでコメントした。

  クレディSのAT1債は3月、スイスの銀行大手UBSグループによる同社の買収合意を受け、約160億スイス・フラン(約2兆3800億円)相当が無価値になった。三菱モルガンの販売分はその4%程度に当たる。

 土屋アセットマネジメントの土屋剛俊社長は「正確な数字が公表されていないことからはっきりとしたことは言えないが、AT1債というアセットクラスの大きさや、リスクウエートが高いことから販売先が限定される状況下で、単一発行体で950億円、それも総発行額の4%におよぶAT1債を国内の一つの証券会社が販売するというのは突出して多いと推測される」とコメントした。

  ブルームバーグインテリジェンス(BI)のクレジットアナリスト、ヨルーン・ユリウス氏によると、AT1債の発行条件に恒久的な元本減額を可能にする条項が含まれているのはクレディSとUBSだけで、欧州や英国の大半の銀行ではより多くの保護を提供しているという。BIのプリ・デシルバ氏によると、AT1債は利回りの相対的な高さからプライベートバンクや資産管理業界でも人気のアセットクラスだったとされ、個人への影響が注視されていた。  

  クレディSのAT1債無価値化を受け、国内の大手運用会社は設定・運用する公募ファンドなどに組み入れている同債の保有状況を相次ぎ開示。各ファンドへの組み入れは概ね1%以下の水準にとどまっていた。

  米モルガン・スタンレーとの合弁である三菱モルガンはかねてから富裕層向け(ウェルスマネジメント)事業を強化してきた。同事業を手掛けていた三菱UFJモルガン・スタンレーPB証券を2020年に合併し、グループ内の同事業を再編。小林真社長は22年6月のブルームバーグとのインタビューで、同事業について「日本のナンバーワンハウス(企業)を目指す」と意気込みを語っていた。

関連記事:

クレディ・スイス債2兆円強が無価値に、当局は市場沈静化を急ぐ
運用会社がクレディSのAT1債保有状況開示、個人への影響注視
三井住友FGがAT1債発行へ需要調査、クレディS後に動き本格化

(第5段落に専門家のコメントを追加します) 』

特別永住者証提示断った在日韓国人の口座開設を銀行拒否 「外国人差別」と救済申し立て

特別永住者証提示断った在日韓国人の口座開設を銀行拒否 「外国人差別」と救済申し立て
https://news.yahoo.co.jp/articles/c60a5ef8b4d9452c8c31dad10cbfcd15e12026ab

『在日韓国人男性が大阪市内のりそな銀行支店で預金口座を開設しようとした際、本人確認のための運転免許証を提示したが特別永住者証明書を提示しなかったとして口座開設を拒否された。

 男性は3月10日、日本国内に住居がある在日外国人の口座開設に特別永住者証明書や在留カードの提示を求めるのは外国人差別だとして、日本弁護士連合会(日弁連)にりそな銀行と金融庁に対し差別的取り扱いをやめるよう警告することを求める人権救済申立書を提出した。

 申立人の男性は韓国籍の在日3世で、特別永住者の在留資格がある。男性は2021年12月、りそな銀行鶴橋支店近くの職場に勤務することになったため口座を開設しようと同支店を訪れた。書類に必要事項を記入して運転免許証を示し、韓国籍の特別永住者であると告げたところ、窓口の担当者は特別永住者証明書の提示を求めた。男性は運転免許証で本人確認をしているから特別永住者証明書を提示する必要はないと主張した。

 窓口担当者と代わった支店長は、りそな銀行の内規を示しながら日本国籍でない顧客については国籍、在留資格、在留期間を確認できる書類の提示を求めていると説明。男性は特別永住者証明書などを提示しなければ口座を開設できないというのは差別的取り扱いだとして提示を拒み、口座を開設できなかった。男性は他の2金融機関でも同様の扱いを受け、多民族共生人権教育センター(大阪市生野区)に相談して人権救済申し立てに踏み切った。

 申立書によると、りそな銀行が示した内規は「お客様の確認事項」として氏名、住所、生年月日、職業などのほか、日本国籍がない場合は国籍、在留資格、在留期間を挙げている。こうした確認事項は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下、犯収法)に規定されているが、犯収法では日本国内に住居がある外国人の確認事項は日本人と同様と定められており、在留期間などを確認事項とする法的根拠はない。

 具体的には、確認事項の写真付き本人確認書類として、犯収法施行規則は運転免許証、パスポート、特別永住者証明書、在留カードなどを挙げていずれかの書類を提示すれば足りるとしており、運転免許証があれば特別永住者証明書などはなくてもよいとしている。』

『背景に「テロ対策」か

 ではなぜ、りそな銀行などの銀行が法的根拠のない特別永住者証明書や在留カードの提示を求めるのか。申立書は金融庁が21年2月作成の「マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問」で、在留期間の定めのある外国人についてリスク低減措置として在留期間を確認するなどの顧客管理を実施する必要性を示唆しているからだと説明する。

 こうしたことから申立書は、りそな銀行が日本国内に住居がある外国人の口座開設にあたって特別永住者証明書や在留カードの提示を求めるのは不合理な外国人差別だとし、金融庁は自由権規約や人種差別撤廃条約の締約国として銀行によるこうした差別的取り扱いをやめさせる条約上の義務を負うとして、りそな銀行と金融庁に警告を出すことを求めている。

 申立人を支援する多民族共生人権教育センターの文公輝事務局長によると、1980年代まで在日外国人が口座を開設しようとした際に外国人登録証の提示を求められたが、抗議行動によって提示しなくてもよくなった。2012年の改正出入国管理法施行で外国人登録証は特別永住者証明書と在留カードに替わったが、以前と同様のことが起きたのは、外国人は犯罪リスクが高いとする差別意識が変わっていないからだと批判する。

 筆者の取材に対し、りそな銀行大阪本社は「日本国籍のない人の口座開設については在留期間などの確認のために在留カードの提示を求め、特別永住者証明書は在留期限のないことの確認のためにお願いしている」、金融庁は「本人確認事項などの調査は金融機関がリスクに応じて判断すべき事柄であり、一律に特別永住者証明書などによる確認を求めているものではない」と回答した。』

植田日銀総裁誕生の裏に“権力の興亡”

植田日銀総裁誕生の裏に“権力の興亡” 本命・雨宮副総裁が漏らしていた“本音”とはhttps://www.dailyshincho.jp/article/2023/04030558/?all=1

『10年にも及んだ異次元緩和を主導した黒田東彦日銀総裁に代わり、新たに中央銀行を統べるは経済学者の植田和男氏(71)。難題山積の中、異例の学者総裁にかじ取りを任せるのはなぜか。日銀、財務省、そして官邸の間で繰り広げられた「権力の興亡」、その内幕に迫る。【軽部謙介/ジャーナリスト・帝京大学教授】

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【写真を見る】キャッシュで億ションを購入したという日銀・黒田総裁

 10年ぶりに日本銀行の総裁が交代する。4月以降は、総裁・植田和男(東大名誉教授)、副総裁・氷見野良三(前金融庁長官)、同・内田眞一(日銀理事)という体制に金融政策のかじ取りが委ねられるが、人選の過程を検証していくと「日本の権力構造」に潜む問題点が浮き上がってくる。そしてそれは、日銀総裁とは、誰が、どのように、何を基準にして選ぶべきなのかという問いにつながっていく。
雨宮の言い分

 元首相の安倍晋三が撃たれた2022年の夏も終わろうとしていた。

 財務省の有力OB二人と日銀副総裁の雨宮正佳が都内の鮨屋でネタをつまみながら杯を交わしていた。アルコールがダメな雨宮も旧知の顔ぶれを相手に、よもやま話に花を咲かせた。

 佳境に入り黒田東彦(はるひこ)・日銀総裁の後任人事に話が及んだ。このとき、後継の最有力候補といわれていた雨宮は二人にこういう趣旨の話をした。

――新総裁は、黒田体制の10年だけでなく1998年の新日銀法施行以降の「非伝統的」と呼ばれた金融政策全般を対象に点検・検証するべきだ。しかし、自分はそれを主宰する任にはふさわしくない。なぜならその大半に関与しているからだ――。

 確かに、雨宮は2000年代以降の量的緩和開始、異次元緩和実施、長短金利を操作するイールドカーブ・コントロール(YCC)導入など非伝統的金融政策に深く関わった。その張本人が問題点を含めた検証を行ったら正当性が確保できないという言い分には一理あった。
各国の中央銀行総裁の多くは学者

 もう一つ、雨宮が強調したポイントがあった。それは「学者の起用に道を開く」ということだ。副総裁就任後、各国の中央銀行総裁が集まる会合に代理出席する機会も多くなった雨宮は、トップたちが部下の助けも借りずに難解なテーマを自分たちの言葉で議論している現場を目の当たりにしてきた。

 彼らの多くは経済学の博士号を取得している。ノーベル経済学賞を受賞したベン・バーナンキ(元米連邦準備制度理事会=FRB=議長)、ジャネット・イエレン(前FRB議長)、スタンレー・フィッシャー(元イスラエル中銀総裁)、ラグラム・ラジャン(元インド中銀総裁)らは世界的に名の通った学者でもある。中国や韓国でも中銀のトップは学者が務めている。

 しかも、中央銀行の国際的な連携は、リーマンショックを契機に、事務当局者同士が下で詰めて上に上げていくというやり方から、トップが電話で協議するというやり方に変わっている。問題は日本がそのコミュニティーに入っていけるかだ。経済・金融理論に対する深い知識や語学力など、日銀総裁には従来と異なる資質も求められる。

「優秀な学者が中央銀行トップになるという国際標準を、日本でも実現するべきではないか」

 雨宮はこう言っていた。』

『雨宮の真意

 財務省は日銀の所管官庁として総裁選びにも深く関与する。実は先のOBだけでなく、このころ日銀人事を準備する過程で雨宮と接触した現役官僚も同じ趣旨の話を聞かされていた。

 財務省の関係者たちには意外な感じがした。日銀総裁レースの大本命は雨宮だ。望んでもなれないそのポストは、1979年の入行以来日銀一筋で生きてきたこの男にとっても悲願のはず。「本当はやりたいと思っているが、最初は「自分には無理だ」などと言って一歩下がる常識的な対応」という見方も強かった。

 雨宮の言っていることは本心なのだろうか。それとも一種の目くらまし戦術なのか――。

 財務省は最後まで雨宮の真意を測りかねた。

 そもそも彼らは今回の人事をこう位置付けていた。

「うちの番ではない」

 この意味は歴代総裁の出自をたどればよくわかる。財務省が大蔵省だった時代から、日銀・財務の出身者が中央銀行トップの座をほぼ独占しており、両者が交代で就任するたすき掛け人事、いわゆる「交代ルール」が暗黙の了解だったのだ(掲載の表参照)。今回は財務省出身の黒田が2期10年務めた後で、「日銀の番」となるのが順当だった。
交代ルールを外れた人事

 それでも、この役所は早くから正副総裁についていくつかの組み合わせを想定していた。最有力とみられたのは雨宮を頂点とし、副総裁の一人に財務省関係者、もう一人を学者にする案だ。

 副総裁候補には財務官経験者ら何人かの名前が挙がった。しかし、ここで年次が問題になる。雨宮は79年の日銀入行。入省年次が同期もしくはそれよりも上の場合は対象から外された。そこで浮上してきたのが氷見野だった。金融庁長官を務めたが、もともとは83年の大蔵省入省だ。氷見野の副総裁就任は、財務省が「雨宮総裁」を予想していたことの裏返しだったわけだ。

 そして、もう一人の学者としては、雨宮より年齢が上の植田ではなく、日銀出身の東大教授である渡辺努などの名前が挙がっていた。

 しかし、結果的に総裁に選ばれたのは、交代ルールを外れるばかりか、21代宇佐美洵(まこと)以来、戦後2人目となる「民間」出身者の植田だった。

 関係者によると、雨宮から固辞の理由を聞かされていた首相の岸田文雄は、深く共鳴するところがあったようで、総裁の条件を問われた国会質疑で「主要国中央銀行トップとの緊密な連携、質の高い発信力、受信力が格段に重要になっている」と説明している。雨宮の主張にそっくりだ。

 そして、大本命の雨宮の辞意が固いとみた岸田官邸は、かねてから目をつけていた植田への傾斜を強めていく。最終的に正副総裁三人の人選が固まったのは年末から年始にかけてだったといわれる。』

『知らされなかった財務省

 しかし、財務省は最後までこの人選を知らされなかった。彼らが「植田総裁」という情報を得たのは、メディアで一斉に報じられた2月10日の数日前だったのだという。過去に日銀を従えて総裁の人選に深く関与してきた財務省は「死んだふり」をしているのか。それとも本当に死んでしまったのかは判然としない。

 財務省・日銀出身者の交代ルールが崩れたことに加えて、今回の総裁人事にはもう一つ特徴があった。それは2代続けてのポリティカル・アポインティー(政治任用)化だ。

 後述する98年の新日銀法施行以前も、以降も、総裁選びは所管官庁である財務省(以前は大蔵省)と日銀が官邸とあうんの呼吸で詰めていくのが流儀だった。この二つの組織が交代ルールを参考にしながら有力として推す候補者に決着できるよう根回しも万全だった。
特定の金融政策を実施するために選ばれた総裁

 しかし、10年前このプロセスは大きく変化した。12年12月の総選挙に勝利し政権に復帰した安倍は「大胆な金融政策」を柱とする経済政策、「アベノミクス」を掲げていた。そのため、13年4月に迫っていた日銀総裁人事は政権の行方を占う上でも間違いの許されない非常に重要な政治イベントになっていた。

 前任の白川方明が日銀出身だったため、交代ルールに従えば自分たちの番だったこともあり、財務省は08年の総裁レースで国会承認の獲得に失敗した次官OBの武藤敏郎を強く推していた。しかし、安倍は彼らの意向を無視。財務省本流とは異なり「デフレは貨幣的現象なので金融政策だけで対処できる」とリフレ派的な主張を繰り返した黒田を最有力候補として位置付け、総裁就任を要請した。

 この行為は政治家による内閣人事権を行使した「一本釣り」ともいえる。しかも、リフレであれ何であれ、特定の金融政策を実施するために総裁が決められるのは初めてだった。

 安倍はさらに、日銀と財務省が予定調和的に決めていた副総裁や審議委員の人事も政治的に利用。黒田の補佐役として「リフレ派の教祖」と言われた学習院大学教授の岩田規久男を副総裁に抜てきしただけではなく、その後も若田部昌澄、原田泰、片岡剛士らリフレ派の面々を副総裁や審議委員に起用することで日銀をコントロールしようと試みた。

「内閣人事権の活用と政策を結び付けろ」と提唱していたのは21年11月に86歳で亡くなった中原伸之だ。東燃の社長を務め日銀の審議委員も経験した中原は財界応援団を組織し安倍をサポートしていたが、第2次政権以前から何度も「金融政策を変更したいなら、内閣や国会は審議委員の人選で考えればいい」という持論を安倍に伝えていたのだという。』
『政治任用の意図

 日銀・財務から推薦を受けた候補を粛々と指名していくという過去のやり方ではないという意味で、今回の植田総裁誕生も岸田による政治任用といえる。ただ、安倍が「リフレ政策の実現」という特定の方向性を求めて黒田を指名したのとは異なり、岸田が何か政策的な意図を持っているのかははっきりとしない。

 人事の決め方は98年施行の新日銀法で「総裁及び副総裁は、両議院の同意を得て、内閣が任命する」(23条)と規定されたが、政治任用の可能性を残すこの内閣人事権は当初甘く見られていた。

 96年の夏。日銀の幹部たちは連日朝早く日本橋本石町の本店会議室に招集された。「夏合宿」と称されたこの会議は日銀法改正に向けて自らのポジションを固めるためのものだった。この時の日銀法(旧法)は、議院の同意を必要としない、文字通りの内閣人事権はもちろん、「総裁の解任権」や「一般的な業務指揮権」などが政府に認められており、日本の中央銀行は所在地をもじって「大蔵省本石町出張所」などと揶揄される組織だった。

「政府からの独立」はバブル崩壊後のさまざまな不祥事から始まった大蔵省改革の一環として議論されていた。ただ、実際に改正となれば、何を、どう法文化していくのか決めるのはそう簡単でない。
「内閣には人事権があるのだから…」

 合宿の場に企画局からこんなペーパーが提示された。

「政策の内容からいって独立性と中立性が要求され、他方で、任命権を通じた政策委員に対する内閣のコントロール手段が確保されていれば、準備率の設定・変更・廃止についての権限を政策委員会が有することとしても、直ちに違憲というわけではない」(情報公開法で入手した96年7月10日付「日銀法改正の論点検討」)

 民間金融機関は、受け入れている預金等のうち一定比率以上を日銀の当座預金に預けておかねばならず、この比率を準備率という。政策委員とは正副総裁を含めた審議委員のことだ。

 当時、準備率の変更には大蔵大臣の認可が必要だった。準備率の変更は金融政策としても活用されていただけに、日銀としてはこの問題で大蔵の認可は必要ないということを言っていたのだ。そして、その根拠として「任命権を通じた政策委員に対する内閣のコントロール」を挙げていた。つまり「内閣には人事権があるのだからほかのことは自由にやらせろ」というわけだ。

「中央銀行に完全な独立性などあり得ない」という主張も強い中、日銀は「人事権よりも金融政策を含む一般的な業務での独立性を獲得する方が大事」と考えていたので、こんな主張をしていたのだ。しかも陰りが見え始めたとはいえ、当時官僚の力はまだ強く、総裁人事にも大きな影響力を持っていた。まさか、財務・日銀の交代ルールまでほごにされ、挙句、政治任用で総裁が決まる日が来るなどとは思っていなかっただろう。』

『総裁にふさわしいか

 それから四半世紀経った2022年。夏の終わりに財務省OBに披瀝した問題意識を、雨宮は各方面に広く伝えていた。そしてそれは、結果的に、これまで財務・日銀に支配されていた「総裁選び」の構造に真正面から挑むものになった。特に財務省だ。

 政治任用だった黒田を除き、総裁を務めた大蔵省出身者は全員が事務次官経験者だ。このポストは昔、「大蔵次官にとっての天下り先ナンバーワン」と言われたように事務次官経験者の中でも最も格が高いという位置付けだった。

 次官に上り詰める財務官僚は主計局長からの昇格が大半を占める。主計局長になるには、多くの場合、局内で課長や主計官のポストを歴任する。財政を担当するセクションは政治との折衝に忙殺される。

 しかし、大物といわれる次官OBだとしても、そのような経歴が日銀総裁にふさわしいかは別問題というのが岸田や雨宮の考え方のようだ。特にグローバル化の進展に合わせ中銀トップの間での情報交換が密になればなるほど、そのコミュニティーに入っていく重要性は増す。雨宮は周辺にこう漏らしたことがある。

「事務次官をなさった方は皆それなりの人なんだけど、その方が総裁というのは少し違うんじゃないか」

もし経済運営に失敗すれば…

 日銀総裁人事をめぐるうごめきは収束した。これからはYCCをどのように「手じまい」するのか、異次元緩和の出口をどのように潜(くぐ)るのか、さまざまな副作用にどう対処するのかなど、当面の課題処理に焦点が移る。

 岸田や雨宮の意図がどこにあれ、結果的に2代続けて日銀総裁が政治任用となったことは、戦後続いてきた旧態依然たる交代ルールに終止符が打たれたことを意味する。財務次官経験者だからといって安易に総裁になれる時代ではないことも明確になった。

 しかし、もし今後5年間で日銀が経済運営に失敗したら、「旧来の秩序に戻すべきではないか」との声が強まる可能性は大きいだろう。マクロ政策の象徴的存在である日銀総裁の人事は、誰が、何を基準に決めるべきなのか――。

「統治の仕方」がどうなっていくのかという観点からも、植田体制の責任は重い。

(文中敬称略)

軽部謙介(かるべけんすけ)
ジャーナリスト・帝京大学教授。1955年生まれ。早稲田大学卒業後、79年に時事通信社入社。経済部次長、ニューヨーク総局長、解説委員長などを歴任。2020年より現職。近著に『アフター・アベノミクス 異形の経済政策はいかに変質したのか』(岩波新書)。

週刊新潮 2023年3月30日号掲載

特別読物「異例の学者抜擢 誰がどう選ぶのか 『植田日銀』誕生の裏に“権力の興亡”」より 』

みずほ・LINEの新銀行 なぜ開業断念?

みずほ・LINEの新銀行 なぜ開業断念?
イチからわかる金融ニュース
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB313OI0R30C23A3000000/

 ※ LINEのサーバー管理が韓国に置かれ、中国からアクセス可能になっていた事件も、微妙に影を落としたと思う…。

『みずほフィナンシャルグループ(FG)とLINEは3月30日、共同で開業を目指してきた新銀行「LINEバンク」の設立中止を決めたと発表しました。スマートフォンを使って本格的な銀行サービスを展開する予定でした。なぜ、開業を断念したのでしょうか。

この記事のポイント
LINEバンクとは?
なぜ、開業断念?
経営体制の影響は?
LINEバンクとは?

みずほFGとLINEが共同で新銀行をつくると発表したのが2018年11月です。当初は20年度の開業を目指すとしていました。新型コロナウイルス禍もあり、開業時期を22年度に延期していました。

従来のように店舗を各地に開いてサービスを展開するのではなく、スマートフォンを使った銀行サービスを想定していました。当初は「手のひら」の手軽な決済銀行というイメージでしたが、新型コロナウイルス禍でデジタル化が進むと判断し、本格的な銀行を目指そうと路線転換を図りました。

構想で掲げていた目標は強気でした。20年秋ごろまでは口座数で400万、預金残高を3000億円とする計画でした。21年に入って開業2年で口座数を1000万まで伸ばす内容に上方修正していました。

なぜ、開業断念?
一つは銀行サービスを取り巻く環境の変化です。構想の発表から撤退を判断するまで4年以上がかかりました。この間、個人情報の保護、サイバーセキュリティー、経済安全保障やマネーロンダリング(資金洗浄)対策などについて社会の関心が高まり、システム面の対応コストが上がりました。

2021年にシステム障害が複数回起きた

みずほ銀行では21年にシステム障害が起きました。同じ年にLINEは利用者の情報が中国からアクセスできる状態にあった問題で、利用者から疑念を持たれることになりました。

システム対応のハードルが高まったこともあり、みずほとLINEは勘定系システムの開発を富士通から韓国の業者に切り替えました。富士通とはシステムの要件やコスト負担などで折り合えなかったためとみられます。

みずほとLINEが手間取っている間にライバルはどんどん先行していました。約1300万口座の楽天銀行をはじめ、ネット銀行はすでに激しい戦いを繰り広げています。みずほとLINEは追加投資を続けて開業しても勝算はないと判断しました。

経営体制の影響は
両社の経営体制の変化も開業を断念した理由の一つです。開業を発表した後にZホールディングス(HD)とLINEが経営統合しました。ZHDにはすでにPayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)を抱えています。ジャパンネット銀行は2000年に開業したネット銀の老舗で、名称をキャッシュレス決済でブランドが浸透しているPayPay銀行に変えました。大株主のソフトバンクなどからも「LINEが金融事業をやる意味はあるのか。グループに2つも銀行はいらない」といった声が漏れていました。

経営統合の記者会見で握手するZホールディングスの川辺健太郎社長㊧とLINEの出沢剛社長
ZHDは2月にヤフー、LINEと3社合併する方針を公表しました。事業の選択と集中が急務となるなか、構想の発表から4年が経過しても設立のメドがたたないLINEバンクは事業整理の対象リストの最上位にあったとみられます。

一方のみずほ側もシステム障害を経て経営陣が一斉交代。22年2月に木原正裕社長が就任しました。みずほ社内でも撤退ムードが強まっていたと言います。

みずほはデジタル戦略で後れをとっています。LINEバンクの頓挫で、今後は自らバンキングアプリの使い勝手向上や機能集約、出資した楽天証券を通じた若年層の開拓などに注力することになります。

(五艘志織、松田直樹)

【注目記事】

・みずほ「LINEバンク」断念 失われた4年、システム鬼門
・みずほ、LINEバンク断念発表 サービス開始「見通せず」 』

LINEの個人情報はなぜ中国からアクセスでき、韓国にデータを置いていたのか。本当の問題点は
https://allabout.co.jp/gm/gc/487634/

『更新日:2021年03月24日

LINEは3月23日、日本国内における個人情報の取り扱いを強化していくと発表した。そもそもなぜ、LINEの日本ユーザーのデータに中国からアクセスできる状態だったのか。データが韓国に保管されていた理由は。ITジャーナリストの石川温が解説する。

更新日:2021年03月24日
石川 温
執筆者:石川 温

携帯電話・スマートフォンガイド

3月23日、LINEは日本国内における個人情報の取り扱いを強化していくと発表した。

一部報道で、LINEでやりとりされている個人情報に中国からアクセスできる状態であったことが明らかになった。また、トーク上の画像や動画などを韓国のデータセンターで保管しているという。本来、ユーザーにこうした情報を明示すべきであったが、LINEでは具体的な国名を明示していなかった。

現状、海外の企業に業務委託することは個人情報保護法には抵触しない。また、LINEでは個人情報が流出したり、詐欺に悪用されたりなどの事実はないとしている。LINEの出沢剛社長は「法的にどうこうという問題ではない。ユーザーが気持ち悪いと感じるなど、ユーザーへの配慮が足りなかった」と釈明した。
LINEの池邉智洋上級役員(左)、出澤剛社長(中央)、舛田淳CSMO(右)。3月23日の会見にて
LINEの池邉智洋上級役員(左)、出澤剛社長(中央)、舛田淳CSMO(右)。3月23日の会見にて

中国からのアクセスの何が問題なのか
そもそも、中国から日本の個人情報にアクセスできるのが、なぜ問題視されるのか。中国では数年前から「国家情報法」という法律によって、民間企業が扱うデータが中国政府に渡るリスクが存在する。アメリカのトランプ政権が通信機器メーカーのファーウェイやTikTokを敵視し続けてきたのも、「アメリカ国民の個人情報が脅かされ、国家安全保障にも影響を及ぼす」という強い懸念があったからだ。

数年前まで、LINEだけでなく、多くのインターネット企業は開発や顧客管理などの業務委託を中国の企業に依頼してきた。中国であれば低コストでの開発、運用が可能となるからだ。

LINEでは日本だけでなく、韓国、台湾、ベトナム、タイ、インドネシア、中国と世界に7つの開発拠点を持っている。

かなり前から中国企業での開発を続けていたが、数年前に中国で国家情報法が成立。本来ならば、そのタイミングで中国企業に対する業務を見直す必要があった。しかし、LINEはそれを怠ってしまった。出沢社長は「(中国での開発を)長く続けてきたが、2017年から18年の潮目の変化など、我々として見落としていた」と素直に落ち度を認める。

LINEの出沢剛社長
LINEの出沢剛社長

LINEでは3月23日現在、プライバシー性の高い個人情報に関して、中国からのアクセスを遮断した。

普段我々が使っているLINEのトークに関しては通常は「Letter Sealing」と呼ばれる暗号化がされており、ユーザーの端末間においては、LINEのシステム開発者であっても中身を確認することができない。

トークのテキストに関しては日本のデータセンターで管理されているが、動画や画像に関しては韓国のデータセンターで保存されている。LINEでは2021年6月までに画像や動画データを日本国内のデータセンターに移転する計画だ。』

『なぜ韓国に画像データを置いていたのか

では、なぜLINEは画像データを韓国に置いていたのか。

LINEの舛田淳CSMOは「画像や動画のデータはテキストのメッセージに比べてサイズが大きい」とした上で「日本だけではなく、アジア圏、中東、ロシアに向けて、データの遅延が小さくなる場所を探した。セキュリティが担保され、人材がいる。コスト面も条件だった」という。

LINEはかつてロシアや中東でも人気のメッセンジャーだった。これらの地域でも、快適に画像や動画のデータをやりとりできる場所として、韓国が候補に挙がったようだ。また、LINEの親会社が、韓国NAVER社だったことから韓国のデータセンターが選ばれたとのことだ。

韓国で保管しているデータは、日本のデータセンターに統一する
韓国で保管しているデータは、日本のデータセンターに統一する

可能性としてはLINEだけではない

現在、LINEだけがメディアなどで問題視されているが、立地、技術、コスト面でデータセンターの場所として韓国が選ばれたとするならば、LINE以外のSNSや個人情報を扱うWebサービスも韓国のデータセンターを利用していることも考えられる。

アメリカ企業のSNSも、イメージとしてはアメリカのデータセンターを採用していると考えられるが、アジアや中東向けのデータに関しては韓国で保存されている可能性もゼロではなさそうだ。

今回を契機に、LINE以外のSNSやWebサービスも「個人情報はどこのデータセンターを使っているか」といった情報開示が必要になってくるかもしれない。

今回、騒動が大きくなったのは、日本において、LINEのユーザーは8600万人以上いるという点があるだろう。スマホを持つユーザーの大半がLINEをインストールして使っている。そのため、政府や地方自治体などが公式アカウントを設け、住民に向けて情報発信をしている。

やはり、政府や地方自治体としては、扱うデータや個人情報が、中国に筒抜けになっていては、LINEの活用に二の足を踏んでしまうのは仕方ない。

LINEでは政府や自治体向けのLINE公式アカウントのデータアクセスに関しては、完全に日本国内に制限するとしている。データの保管場所についても2021年8月までに国内に移転する。

一部の自治体では、コロナワクチン接種の予約をLINEで受け付けているところもあるが、予約システムに関するデータは国内のデータセンターのみに保管し、国内からのみアクセスできるとしている。

LINEとしては個人情報などに関して、すでに国内への移管を計画していたようだが、今回の騒動が起きたことで、計画を前倒しで進めていくようだ。

LINEは無料のメッセンジャーから、ゲームや音楽、決済や金融、広告など事業範囲を大幅に拡大。2021年3月からはYahoo!を傘下に持つZホールディングスと経営統合している。

これまで急ピッチで成長してきたLINEであるが、個人情報保護という点においては、先延ばしし、ややおざなりになっていたのかもしれない。

LINEは国内のIT企業の中でも、もはやユーザーの生活に根ざした社会インフラと言える。この騒動で、ユーザーには不信感が広がってしまったが、これを契機にしっかりと個人情報保護を徹底してもらいたいものだ。』

日銀、地銀支援策終了へ 支給総額2000億円規模に

日銀、地銀支援策終了へ 支給総額2000億円規模に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB275MG0X20C23A3000000/

 ※ 日銀準備預金に、一定の「付利」を付けていた…。

 ※ それは、一種の「補助金」的な機能を、果たしていた…。

 ※ それを、打ち切ることにした…。

 ※ そんなような話し、のようだ…。

 ※ まあ、総裁も変わることだし、「非伝統的緩和手段」も、徐々に「手仕舞い」に向かうということだろう…。

『日銀が3年間の「時限措置」として始めた地域金融機関への支援策が3月末に終了する。経営の合理化を進めた銀行へ上乗せ金利を支払う制度で、現在約90の地銀が支援を受ける。支給する付利の総額は2000億円規模となる見通しだ。地銀は不採算店舗の統廃合を進め、経営統合も加速したが、苦境は続く。付利は事実上の国民負担をもたらしており、負担に見合った効果が得られたか検証の余地は残る。
地銀の経費率5%強改善

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みずほ・LINEの新銀行、開業断念へ システム開発難航

みずほ・LINEの新銀行、開業断念へ システム開発難航
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2781Y0X20C23A3000000/

 ※ 鳴り物入りだった「LINE銀行」も、開業する前にポシャリか…。

 ※ LINE利用者の「貸し倒れリスク」を、「AI使って判定する。そのノウハウを、持っている!」と、鼻息荒かったんだが…。

『みずほフィナンシャルグループ(FG)とLINEが共同で設立を目指してきた新銀行「LINEバンク」の開業を断念する方針を固めたことが29日、わかった。スマートフォン専業銀行で若者の取り込みを狙う新事業だったが、システム開発が難航し競争環境も大きく変化した。みずほにとってはデジタル戦略の仕切り直しになる。

両社は2018年11月にそれぞれ傘下のみずほ銀行とLINEフィナンシャルが共同出資し、新銀行を…

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異次元緩和は失敗だったのか 日銀批判の先へ

異次元緩和は失敗だったのか 日銀批判の先へ
金融PLUS 金融グループ次長 石川潤
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB030ZE0T00C23A3000000/

『日銀の黒田東彦総裁が進めた10年間の異次元緩和は失敗だったのか。黒田日銀の最後の金融政策決定会合が9〜10日に迫るなか、大規模緩和の乏しい効果や膨らむ副作用を指摘する論調が目立つ。市場機能が低下し、経済の新陳代謝が鈍り、財政規律が緩んだとされるが、金融政策の責任ばかりを強調すれば、問題の本質を見誤りかねない。この国の成長に何が必要か、批判を超えた議論が求められる。
誤解による大規模緩和

異次元緩…

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『白川方明前総裁は1日公表された短い論文で、各国中銀の大規模緩和の背景にあったデフレへの危機感について「根拠なき恐怖」と表現した。日本では緩やかなデフレ下にあっても、ほかの主要7カ国(G7)と比べて遜色のない1人当たり国内総生産(GDP)成長率を維持できた。恐怖に駆られて導入した非伝統的な金融緩和政策には問題があったというのが白川氏の見解といえる。

白川氏は日本の異次元緩和を「大いなる金融実験」と称し、インフレ率や成長への影響は「ささやか(modest)」だったと結論づけた。さらに、日本では高齢化や人口減による構造的な成長率の低迷が「循環的な弱さだと誤解された」とし、その結果、何十年も続く金融緩和につながったと分析した。』

『東大の渡辺努教授は著書「物価とは何か」で、デフレの問題として、企業が価格支配力を失ってコストカットなどの「後ろ向きの経営」に陥ることを挙げた。経済に壊滅的な打撃を与えるデフレスパイラルが起こらなくても、緩やかなデフレが続くこと自体に危険があるというわけだ。

異次元緩和は2013年春に始まったが「その時点ではすでに、価格据え置きという振る舞いが日本社会の奥深くにビルトインされてしまっていた」というのが渡辺氏の見立てだ。この考えを踏まえれば、もっと早く日銀が大規模緩和に動いていれば、金融緩和がより効果を発揮した可能性もある。』

『異次元緩和について、確かに言えることもある。当初2年程度の短期決戦のはずだった異次元緩和が10年も続き、市場機能低下などの副作用が想定外に膨れあがってしまったことだ。

岐路となったのが14年10月31日、黒田日銀が実施したハロウィーン緩和だ。日銀は13年4月に「戦力の逐次投入はしない」と大見えを切って異次元緩和を始めたが、当時すでに物価上昇圧力が衰え始めていた。サプライズの追加緩和で立て直しをはかったが、結果的には自らの退路を断ち、さらなる緩和へと追い立てられることになった。

長期国債の購入量を年50兆円から80兆円に引き上げたことで、いずれ日銀が国債を買い尽くして金融緩和が限界を迎えるとの思惑が広がった。限界論を打ち消そうとするあまり、黒田日銀はマイナス金利政策や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)といった副作用の大きい政策の導入に傾いていった面がある。』

『もっとも、副作用とされる問題についても、冷静な分析が必要だ。

白川氏は論文で、金融緩和が長期化すれば「資金配分のゆがみを通した生産性向上への悪影響が深刻になる」との懸念をつづった。日銀の異次元緩和について、ゾンビ企業の延命により経済の新陳代謝の低下を招いたと指摘する論者も少なくない。

一方で、緩和的な金融環境は本来、スタートアップなどの成長にはプラスに働くはずだ。経済学者のダロン・アセモグル氏とジェイムズ・A・ロビンソン氏は著書「国家はなぜ衰退するのか」で、スタートアップが育った米国と育たなかったメキシコの20世紀初めごろの違いとして、競争が激しく低い金利で融資をしてくれる銀行の存在を挙げた。

金融が極めて緩和された日本でスタートアップが育たず、経済の新陳代謝につながらなかったのだとすれば、日銀の金融政策以外にその原因は求められるべきだろう。』

『財政についても、異次元緩和による超低金利が規律の緩みを招いたことは確かだ。だが、膨らむ財政赤字を問題にするのであれば、責められるべきは日銀ではなく、政府・与党だろう。日銀が利上げをすれば、成長や財政の問題が解決するわけではない。すべての責任を日銀に押しつけようとすることは、金融政策万能論の裏返しのようにもみえる。

次期日銀総裁候補の植田和男氏は2月24日、国会での所信聴取で「私の使命は魔法のような特別な金融緩和を考えて実行することではない」と語った。金融緩和の継続を約束する一方で、過度の日銀依存とは距離を置こうとする姿勢だ。

植田氏に政府の経済政策への注文など、金融政策以外での情報発信を求める声がある。もし日銀の新総裁に何らかの「正解」を求めているのだとすれば、それは日銀頼みから精神的に抜け出せていない証左だろう。日本経済を成長に導くために何が必要か。植田氏の知見に期待するだけでなく、私たち自身が考え、動くべきときだ。』

迫られる脱・日銀緩和頼み 政府は成長の約束果たすとき

迫られる脱・日銀緩和頼み 政府は成長の約束果たすとき
岐路の異次元緩和㊥
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1314S0T10C23A2000000/

『【この記事のポイント】
・金融緩和の恩恵に甘え政府の財政規律は緩んだ
・成長戦略、財政健全化の政府約束は果たされず
・緊張感をもち履行を迫るのも新体制日銀の仕事

「補正予算が必要だ」。政府が新型コロナウイルス禍に始めた実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」。ただでさえ異例の策だが、その返済に困る経営者にせがまれた与党議員が補助金を求め声を上げる。

【前回記事】植田日銀、10年緩和の出口担う 市場のゆがみ限界に

2023年度予算案を国会審議するさなか与党議員

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多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
ひとこと解説

近年の成長戦略の世界的潮流は、財政政策を伴うものになっています。
代表的なのが、バイデン政権の元でイエレン米財務長官が進めているMSSE(モダンサプライサイドエコノミクス)です。
具体的には、財政健全性の見方を変えることにより、人的資本の蓄積やインフラ整備、R&D強化、温暖化防止面等での財政需要を拡大することでサプライサイドを強化し、長期の成長力を確保するというものです。
日本も見習うべきでしょう。』

『2023年度予算案を国会審議するさなか与党議員が補正予算に言及するのは本来ご法度だ。財務省も歯止め役を果たせない。

黒田東彦総裁が就任する直前、2013年1月に政府と日銀はそれぞれの役割を記した共同声明(アコード)を結んだ。日銀は2%のインフレ目標に向けて金融緩和に取り組み、政府は成長戦略を実現し財政健全化を進める。そんな相互努力の約束だった。

それから10年。市場機能の低下という副作用を生むほど金融緩和に突き進んだ日銀に対し、政府は約束を果たしたと言いがたい。

それどころか、金融緩和が生み出した恩恵に甘え、財政の規律は緩んだ。日銀が大量の国債を市場で買い、政府が簡単に借金を重ねられる状況は、事実上の財政ファイナンスだ。

黒田総裁の就任前の12年末に691兆円だった普通国債の残高は10年間で4割以上増え1000兆円を超えた。国内総生産(GDP)に対する政府債務の比率は主要国で突出する。

財政の大盤振る舞いは経済を強くするどころか、逆に衰えを招いた面もある。帝国データバンクによると実質破綻状態で事業を続けるゾンビ企業は21年度に18万8000社。ゼロゼロ融資が拍車をかけた。

ゾンビ企業は全体の12.9%に達する一方、廃業率は先進国平均の半分以下の3%どまり。産業の新陳代謝が進まず、変革は生まれない。デジタル投資はこの10年は微増にとどまり、3〜5割伸びた米欧に劣後する。潜在成長率は0.3〜0.5%に低迷する。

グリーン革命と呼ばれる脱炭素の社会づくりの停滞は象徴的だ。再生可能エネルギーへのシフトに逆行するガソリン補助金は3カ月の予定だったが延長を繰り返し、1年以上も続いている。使われる国費は当初の計画の70倍にあたる6.2兆円に膨らんだ。

米欧はコロナ対応から財政健全化にかじを切り、世界が日本に送る視線は厳しい。「金融支援策の対象は存続可能な企業に限定されるべきである」「エネルギー補助金はもっと対象を絞ることができたはずだ」。国際通貨基金(IMF)は1月に発表した声明で日本への注文を並べた。

英国債の投資家向け広報(IR)で来日した英債務管理庁長官が9日、財務省を訪れた。金融引き締めに動く中央銀行の国債売却と英政府の国債発行が重なって市場が混乱しないよう「中銀とよく連携している」と説明した。

市場の英国売りで政権が倒れた22年の出来事は関係者の記憶に生々しく残る。英国のような激しいショックに見舞われる前に、日本の財政を立て直し経済を成長に導けるかどうか。

共同声明でうたった約束を政府に迫る緊張感はこの10年、日銀にも足りなかった。独立性と適切な距離感を保ち政府と向き合うところから、植田和男氏の総裁としての仕事は始まる。

多様な観点からニュースを考える
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永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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ひとこと解説近年の成長戦略の世界的潮流は、財政政策を伴うものになっています。
代表的なのが、バイデン政権の元でイエレン米財務長官が進めているMSSE(モダンサプライサイドエコノミクス)です。
具体的には、財政健全性の見方を変えることにより、人的資本の蓄積やインフラ整備、R&D強化、温暖化防止面等での財政需要を拡大することでサプライサイドを強化し、長期の成長力を確保するというものです。
日本も見習うべきでしょう。
2023年2月16日 8:33 (2023年2月16日 8:35更新)
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中空麻奈
BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部 副会長
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今後の展望さまざまな捉え方は可能でも、日銀は2013年1月アコード以降、一貫して緩和をし、深掘りし、日本の景況感を下支えしてきたのは確か。この間に経済成長出来なかったのは、むしろ政府の経済対策に問題があったと言われても仕方がない。更に問題は財政再建が出来なかったどころか、悪化の一途を辿ったことだ。その意味で、日銀幹部が新しくなったところで、アコードの見直しをするのなら、政府のコミットメントは欠かせないものとなる。ただし、アコードはなくていいもの、である。それを設定するとすれば、何のために設定し、何があればアコードの終了となるか、も考慮しておくべきではないだろうか。
2023年2月16日 9:43いいね
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説日本経済にとってもっとましな政策がなかったのか。これまでの30年間、景気が後退すると、いつも輸血しかされない。人、物、金のなかでいつも金に頼っている。しかし、そのツケがこれから回ってくる。物価は上昇している。デフレからインフレになっている。低所得層の生活が脅かされる。でも、財政は巨額の赤字。しかも、国家の債務はGDPを大きく上回っている。それでも、国家予算は毎年最多更新。そろそろ政策を転換しないといけないのでは。
2023年2月16日 7:03いいね
146 』

植田日銀、10年緩和の出口担う 市場のゆがみ限界に

植田日銀、10年緩和の出口担う 市場のゆがみ限界に
岐路の異次元緩和㊤
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB110YO0R10C23A2000000/

※ ここら辺の「異次元緩和(アベノミクス、第一の矢)」の功罪については、「金融と社会」第15回(最終回)が詳しい…。

『【この記事のポイント】
・政府、日銀総裁に植田和男氏を起用する案を国会に提示
・債券市場は「売り」で反応 異次元緩和の修正を予想 
・どう動く植田氏 昨年は「出口に向けた戦略必要」と指摘

政府は14日、経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を次期日銀総裁に起用する人事案を国会に提示した。10年続いた異次元緩和は発行済み国債の半分を日銀が買い占めるという異常事態を招き、市場のゆがみも限界に近づいてきた。市場…

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『10年続いた異次元緩和は発行済み国債の半分を日銀が買い占めるという異常事態を招き、市場のゆがみも限界に近づいてきた。市場や経済へのショックを避けつつ、どう政策を修正していくのか。金融政策の正常化に向けた「軟着陸」が新体制に託される。

【関連記事】日銀総裁に植田氏、政府提示 副総裁に氷見野・内田氏
歴代最長の10年間、日銀総裁を務めた黒田東彦氏の後継に、政府は初めて学者出身である植田氏を選んだ。異次元緩和の10年で日銀の国債保有額は4倍超となった。上場投資信託(ETF)購入で、日銀が多くの企業の主要株主になるというひずみも生まれた。

植田氏に期待されるのが、膨れあがった副作用を取り除くための異次元緩和の修正だ。だが、投機筋はそのタイミングを見計らって国債を売り浴びせようと構えている。植田氏は就任初日から市場との戦いに身を投じることになる。

「植田氏は経済情勢を見極め、就任後は長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の撤廃に踏み切るだろう」。日本国債の空売りを進めてきた英ヘッジファンド、ブルーベイ・アセット・マネジメントのマーク・ダウディング氏は取材にこう話した。日銀の緩和修正を見越し、国債売りを継続する姿勢を崩していない。

植田氏の起用が伝わると、債券市場は売りで反応した。長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは14日、連日で日銀が上限とする0.5%を付けた。英投資会社、Abrdnのジェームズ・エイシー氏は「信じられないほど金融緩和に積極的な黒田総裁ですら(昨年12月に)政策を修正した」と指摘し、植田日銀はさらなる政策修正に踏み込むと読む。

修正観測が高まっているのは、市場のゆがみが広がり、日銀も放置はできないと踏んでいるためだ。昨年12月の日銀の政策修正の直前には、これまで金利低下の恩恵を受けてきた財務省でさえ「市場機能の阻害が大きくなっている」との懸念を日銀に伝えた。

長短金利操作による10年物国債の利回り抑制が20年物や30年物国債の入札不調を招いていた。20年物など超長期債を買うときは10年物国債や先物を売って損失リスクを避けることが多い。流通する国債が少なくなり、10年債や先物の値動きが不安定になった結果、リスクヘッジできなくなった証券会社や投資家が超長期債を買い控えるようになった。

ゆがみは債券市場にとどまらない。昨年10月には日米の金利差の拡大を反映して円安・ドル高が止まらなくなり、円相場は1ドル=151円台と32年ぶりの安値を付けた。

市場の経済・物価見通しを映すはずの長期金利を無理やり固定しようとすると、マネーの圧力は外国為替市場に集中する。景気を支えるはずの金融緩和が、円安加速と物価上昇の連動を通じて経済を不安定にした。

植田氏はどう動くのか。昨年7月の日本経済新聞「経済教室」では「日銀は出口に向けた戦略を立てておく必要がある」と指摘。「多くの人の予想を超えて長期化した異例の金融緩和枠組みの今後については、どこかで真剣な検討が必要だろう」と記した。短期金利はゼロ近辺に据え置きながら、長期金利の柔軟性を高める方向で政策修正を探るというのが市場参加者の相場観だ。

もっとも軟着陸は簡単ではない。日本経済研究センターは昨年12月、日銀が長短金利操作を廃止した場合、長期金利は最大で1.1%まで上昇するとの試算を公表した。企業の利払い負担が増し、経常利益を最大で年3%程度、設備投資を9%程度押し下げる可能性がある。

金利上昇は財政の持続性への懸念も高めかねない。いまや日銀の国債購入は「日本国債の格付けを支える要因のひとつ」(大手格付け会社フィッチ・レーティングスの担当者)だ。財政健全化の道筋がみえないままに日銀の緩和が出口に向かえば、格下げと金利上昇の負の連鎖に入り込むリスクも否定はできない。

問われるのは、植田氏の対話力だろう。当面は緩和的な金融環境を維持していくと約束しながら、持続性の乏しい政策は修正し、サプライズに翻弄されてきた市場参加者に安心感を与えられるかどうか。金融政策だけでこの国の経済構造を変えられない以上、時には政府に必要な改革を求めていく大胆さも求められるはずだ。

【関連記事】

・サプライズの「植田日銀総裁」 国際性・専門性、世界の潮流
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柯 隆
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分析・考察 まだ総裁に就任していないから、ほとんど記事はこれまでの植田氏の発言を踏まえ、推察したものである。実際に総裁に就任して、今の経済状況を鑑みて、単なる黒田政策を継承するだけでいいとは思えない。どれほど利上げするのではなく、金融政策の柔軟性を確保することで政策の正常化からスタートしなければならない。そして、中央銀行の独立性も確保する必要がある。あとは黒田時代の負の遺産をどのように処理するかである。負の遺産とはこれまで買い込んだ証券である
2023年2月15日 7:56 』

〔「金融と社会」第12回 デフレと非伝統的金融政策、紹介する。〕

 ※ 実は、去年の夏に、「衛星放送」導入した。

 ※ 「遅ればせながら」なんだが、これが非常に役に立つ。

 ※ 特に、「放送大学」は、ためになる。

 ※ 今さら、「大学生」になって、「単位」取ったりするつもりは、さらさら無い。

 ※ しかし、録画しておいて、暇なときに(メシ食いながらとか)、再生して視る分には、何の支障も無い。

 ※ 当代一流の先生方の「名講義」を、寝転がりながら、拝聴しても、問題は無い。

 ※ 調べたら、「印刷教材」(講義のテキスト)も、市販されているんだな。

 ※ 本格的に、学習するんだったら、そういうものを購入して、深く学ぶのも、いいだろう。

 ※ そういうことで、その一端を、紹介する。

※ 毎回、その回のポイントを、初めに示してくれる。

※ 日本のバブル崩壊後、日本経済は低迷し、「デフレ」と判断されるような状態に陥ったわけだが、その原因の考察だ。

※ ここでは、「貨幣乗数の低下」という観点から、説明している。

※ まず、GDPというものの概説から、説明している。

※ 「物価」の代表的な指標である「消費者物価指数」の推移だ。

※ 政府の定義では、「2カ月以上連続して、どうなったか」という観点で見るらしい…。

※ 過去の借金の、名目額は、変化しない(1000万円の借金の名目額は、1000万円のまま)。

※ しかし、デフレで「物価が下がる」≒「貨幣価値は上がる」だから、過去の借金の「実質負担」は増大する。生活実感としては、「生活がジワジワ苦しくなっているのに、借金返済額は重くのしかかる。」というような感じになる…。

※ 実質利子率という観点からも、同じ。

※ デフレが景気悪化を引き起こし、その景気悪化はさらなるデフレを呼ぶという「悪循環」に陥る…。

※ 「経済成長の、エンジン」という観点からの考察だ。

※ さまざまな「経済活動のリソース」を、効率よく「配分」する必要があるのだが、その「資源(リソース)の移動」が、妨げられる。

※ デフレの原因の考察。

※ よく言われるのが、供給過剰+需要不足。

※ 供給過剰の主因は、バブル期の「過剰設備投資」だろう、と言っていた。

※ マネタリスト的な観点からの、考察。

※ 本当に、貨幣流通量は、「少なかった」のかの考察。

※ このグラフによれば、「バブル期の7割」くらいの「貨幣量」は、供給されていた。

※ コールレートも、「1%」以下に引き下げられていた。

※ それでも、「デフレ傾向、物価の低迷傾向」は続いたんで、さらなる「緩和策」を模索することになる。

※ 従来からの「伝統的な緩和策」では、あまり効果が出ない原因の考察。

※ ここで、登場する「分析ツール」が、「貨幣流通速度」というものだ。

※ 「1万円」の貨幣を発行した場合、それが「1回」しか使用されない、というわけでは無い。

※ 例えば、4回使われたとすれば、結局、「4万円」の取り引きに使用されたという「計算」になる。

※ 名目GDPを、マネーストックM1で割ったものを計算すれば、大体、総計でどれくらいの「経済取引」に使われたのか、という「総量」を割り出すことができるだろう。

※ ごらんの通りの、低下傾向だ。

※ 「流動性の罠」≒通貨当局が、必死で「緩和策」を取り、貨幣をジャブジャブ流し込んでいるのに、さっぱり「物価上昇」が起きない現象、の原因の考察。

※ 「貨幣需要」と言っているが、「貨幣選好」だな。

※ 人々は、貨幣を獲得しても、それを物やサービスを購入したりする「経済活動」に使うことよりも、それを「貯め込んで」、胎蔵する方を選んでしまうという行動に出る。

※ そういう「人々の行動」を変えるための「政策」について、エライ学者先生であるポール・クルーグマン大先生(ノーベル経済学賞の受賞者だ)の「ご託宣」が、あったわけだ。

※ そういうことで、06年頃までゼロ金利政策を、続けたわけだ。

※ それを、やめたのは、GDP成長率がちょっと上向いたのと、こういう「未経験の政策」をずっと続けることを、「危惧する声」が上がったからだ、と言っていた…。

※ 政策目標と、その達成度合いの検証。

※ 金融システム不安の解消は、まあまあ、達成されただろうと言っていた。

※ 確かに、「金融機関」の大型倒産は、無かったからな…。

※ まあ、「金融再編」は、随分なされたようだが…。

※ 貨幣総量とか、コールレートとかは、日銀が操作しやすいもので、これは「短期金利」の低下に効果がある。

※ そういう「操作しやすいもの」に働きかけて、さらには「長期金利」の低下も狙っていく。

※ 長期金利は、国債や、株式、不動産なんかの「資産」へと「資金」の導入を誘導する側面がある。

※ 人々に「インフレ期待」を起こさせるために、日銀が「○○までは、この緩和策を続ける。」とアナウンスすることで、人々の「意識」を変えようとした。

※ 日銀当座預金については、ちょっと話しが複雑なんで、ここら辺でも見て( マイナス金利も関係する日銀当座預金とは?この仕組みをわかりやすく https://greenapple-investment.com/currentaccount-of-boj.html ) 

※ いずれ、市中銀行が日銀に積み立てを要する「準備金の口座」みたいなもので、その額や「金利」を操作することで、世の中の金融の状況を、コントロールしていこうとするもの、のような感じのもののようだ…。

※ そういう目的で、「日銀当座預金」を操作したから、上記の図にある通り、「日銀当座預金」が増大すると、マネタリーベースも増大するという関係性が、見て取れる。

※ アナウンスメントの方も、「デフレ懸念が払しょくされるまで」というような、「あいまいな表現」から、さらに踏み込んで、「消費者物価指数の前年比上昇率が、安定的にゼロ以上となるまで」と、明確な基準を呈示した。

※ しかし、そういう「非伝統的な緩和策」を、長く続けることに「不安を覚える」声の方も、根強く存在した…。

※ それで、少し「上向きかげん」になったら、「ここで、打ち止めしといた方がいい。」となった…。

※ ここで、目を転じて、サブプライムショック後の、欧米の金融当局の非伝統的金融政策を見てみよう。

※ ご覧の通り、短期間で、ともかく短期金利を、限りなくゼロに近づけた…。

※ こういう「急激な政策」は、日本のバブル崩壊後の「デフレ没入経験」が、教訓となったと言う話しだ…。

※ 一旦、デフレに陥ると、そこから脱却するのは、あらゆる「緩和政策」をもってしても、「容易なことじゃない」ということを、各国の中銀首脳たちが深く学習していた、という話しだ…。

※ 金利の操作だけでなく、「資産の買い入れ」も行った。

※ MBSは、モーゲージ・バックト・セキュリティー(抵当担保証券?)、不動産関係会社が所有している資産性の証券だろう。

※ CPは、コマーシャルペーパー。企業の短期社債だ。

※ 日銀の言ってた、「時間軸効果」は、「フォワード・ガイダンス」と名前を変えて、行われた。

※ そういう欧米の緩和策も参考にして、2010年10月からは、「包括的な金融緩和政策」という名前の、「資産買い入れ策」も実施された。

※ ETFの買い入れは、証券市場に資金を流し込むことになり、REITの買い入れは不動産市場に資金を流し込むことになる。

※ 非伝統的金融政策とは、まとめると、上記の3つに要約される。

※ 物事には、必ず功・罪の両面がある。

※ こういう「超金融緩和策」にも、「負の側面」は、必ずある。

※ その一つが、ハイリスクハイリターン運用の傾向の増大だ。

※ 低金利になると、一般大衆から「巨額の資金」を集めても、伝統的な「貸し出し」策では、「利ザヤ」が稼げなくなる…。

※ それで、勢い、「利を追求する」ためには、「非伝統的な、危ない貸出先に貸したり」、「リスクを厭わずに、利を取りに行く」行動が誘発される…。

※ どうせ、「首脳部は、知らなかった。現場のファンド・マネージャーが、勝手に暴走した。」ということで、済まされる…(これは、オレの独り言)。

※ マクロプルーデンス政策とは、こういう金融危機への対処は、一国だけでは難しい。むしろ、各国が、初めから、「金融全体、世界の金融秩序全体」のことを考えて、「協調姿勢・共同歩調」を取って行くべきだ、というような話しのようだ…。

※ 第12回では、上記の3つを解説した。

※ 毎回、このように「まとめ」で、締めてくれる。

※ ありがとうございました。

日銀総裁なぜ辞退? 雨宮正佳副総裁の2つの信念

日銀総裁なぜ辞退? 雨宮正佳副総裁の2つの信念
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB110KR0R10C23A2000000/

『政府は日銀の黒田東彦総裁の後任に、経済学者である植田和男元審議委員を指名する人事を固めた。サプライズの人選となった理由は、本命とされた雨宮正佳副総裁が最後まで政府の打診を固辞したことにある。そこには植田氏起用にもつながる雨宮氏の2つの信念があった。
雨宮氏「私は適任ではない」

「(報じられている通りなら)次期体制は理想的な布陣になったんじゃないか?」。植田氏らを起用する日銀人事が報じられた10日…

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『ある関係者が雨宮氏に連絡をとると、そんな朗らかな声が返ってきたという。

雨宮氏は20年を超える長期緩和の制度設計を一手に担った「日銀のプリンス」。次期総裁の筆頭候補で、政府も同氏に総裁ポストを打診。長く調整作業が続けられてきた。

ところが雨宮氏は最後の最後まで固辞。人事の国会提示が迫る2月10日になって、植田氏の起用が固まった。なぜ雨宮氏は総裁ポストを固辞し続けたのか。そして、なぜ経済学者である植田氏に白羽の矢がたったのか。

日銀の雨宮副総裁は最後まで総裁ポストを辞退し続けた

「日銀の次期体制は長い金融緩和の点検と修正が求められる。私は緩和政策を実行してきた当事者中の当事者であり、客観的に公正な見直し作業ができるとは思えない」。雨宮氏が総裁ポストを固辞した一つの理由はこれだ。

確かに雨宮氏は、2001年の量的緩和から10年の包括緩和、さらには13年の異次元緩和、16年のマイナス金利政策まで、あらゆる実験的な金融政策の設計を主導してきた。長期緩和の点検作業は、雨宮氏が繰り出した一連の施策の自己批判でもある。

ただ、政府関係者らは「長期緩和のすべてを知るからこそ、その点検と修正もできるのでは」と雨宮氏を説得し続けた。雨宮氏は政府や市場関係者とのパイプも太く、異次元緩和からの出口を描く際の「対話力」で右に出る人物はいない。それでも雨宮氏は総裁ポストを辞退した。

実は雨宮氏にはもう一つの強い信念があった。「中央銀行のトップ人事の世界標準は、もはや中銀マンの内部昇格や官界からの登用などではない」

米連邦準備理事会(FRB)議長には後にノーベル経済学賞を受賞するバーナンキ氏や労働経済学者であるイエレン氏が起用され、欧州中央銀行(ECB)もドラギ前総裁は米マサチューセッツ工科大(MIT)出身のエコノミスト。中央銀行の首脳会議は単なる金融政策を語る場ではなく、複雑なマクロ経済分析を披露する場ですらある。

アジアをみても、中国人民銀行の易綱総裁は米イリノイ大で博士号を取得した経済学者であり、李昌鏞(イ・チャンヨン)韓国銀行総裁も米ハーバード大で経済学を学んでアジア開発銀行(ADB)チーフエコノミストなどを歴任している。世界の主要中銀では日銀と財務省(大蔵省)のたすき掛けのようなトップ人事はありえない。

主流派経済学者との長い闘い
政府は最終的に次期総裁に植田氏を起用する人事を固めたが、背景には雨宮氏の「世界的な経済学者を登用すべきだ」という一貫した主張があった。植田氏のMIT留学時代の指導教官は、世界の中銀の理論的支柱であるスタンレー・フィッシャー氏(FRB元副議長)。バーナンキ氏もドラギ氏も、フィッシャー氏の教え子である。

雨宮氏が総裁ポストを固辞した2つの主張は「きれい事すぎるのでは」と、うがった見方も残るだろう。同氏には難作業である異次元緩和の出口から「逃げ出した」との批判すら出るかもしれない。

それでも中央銀行と経済学界の融合を求める雨宮氏の信念は強かった。1990年代後半からの日銀のデフレとの闘いは、米国を中心とする主流派経済学者との闘いでもあったからだ。

2000年前後の日銀は、バーナンキ氏やポール・クルーグマン氏ら主流派経済学者から「日本がデフレから脱却できないのは、日銀がインフレ目標も設定せず、大量の資金供給もしないからだ」などと手厳しい批判を浴びた。その主張は日本の政界の日銀批判に発展して、雨宮氏ら日銀執行部は深く苦悩することになる。

逆にクルーグマン氏はECBのドラギ総裁(当時)を「現代における最も偉大な中央銀行家」などと持ち上げた。中銀にとって最も大事なことは世間の信認だ。その評価を左右する著名経済学者の理解がなければ、金融政策はスムーズに進んでいかない。黒田体制での異次元緩和は、米国の主流派経済学者の主張をそっくり採り入れて始まった。

もっとも「大量の資金供給でインフレ期待に働きかける」という異次元緩和の理論はうまく機能せず、バーナンキ氏もクルーグマン氏も今ではかつての日銀批判を修正している。現在のパウエルFRB議長とラガルドECB総裁は、ともに法律専門家でありエコノミストではない。08年の金融危機を予見できなかった主流派経済学者は力を落としており、米欧中銀にはエコノミスト偏重の組織運営に見直し機運がある。

雨宮氏は現在67歳。5年後の日銀総裁人事では、また雨宮氏の名前が有力候補として挙がるだろう。そのときに中央銀行のトップ人事の世界標準がまた変わっていれば、次こそ「雨宮日銀」の誕生が現実味を帯びる。

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村上芽
日本総合研究所創発戦略センター シニアスペシャリスト
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別の視点中央銀行のトップ人事の世界標準、というフレーズから思いつくのは、文中にはありませんがマーク・カーニー氏です。民間投資銀出身で、2008-13年までカナダ銀行総裁、2013‐20年までイングランド銀行総裁、そしてその間、「金融安定と気候変動」に焦点をあて、いまのTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の生みの親です。イングランド銀行総裁の時に、化石燃料への投資が「座礁」するリスクについて警鐘を鳴らしたスピーチは印象的でした。日銀の総裁にもそういう顔を(いずれ)期待したいです。
2023年2月13日 8:16いいね
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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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別の視点副総裁として黒田路線にコミットしすぎており政策の改革に適任でないと自分で考えること(日銀OBの強い批判も意識しているかもしれない)、アカデミックなバックグラウンドのある人が日本でも中央銀行総裁になるべきだという強い信念に加え、趣味人としてこのあたりで自由な時間が欲しいという思いも、雨宮氏の心中にあるのではないかと、勝手に推測している。政策当局のトップになると、自由な時間はますます限られるだろう。日経ヴェリタスの元旦号に掲載された清水功哉編集員のコラムには、「『自由な身』になったら、やりたいことは色々あるよ」との数年前の雨宮氏の言葉が紹介されていた。ワークライフバランスは、偉い方でも重要である。
2023年2月13日 8:36いいね
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説中央銀行総裁と聞いてなりたい人がいっぱいいるはず。なりたくないといって断る人は皆無ではないが、多くはない。今の経済状況をみて、だれが総裁になっても、尻拭いは簡単なことではない。単なるゼロ金利を続けるならば、総裁を変える意味はない。金融政策の柔軟性を高めるのは経済を正常化する重要な措置である。しかし、拙速に利上げすると、経済は失速してしまう恐れがある。いずれにせよ、雨宮氏の冷静さを褒めたい
2023年2月13日 7:36 』

日銀新総裁に植田氏起用へ 海外から評価と驚きの声

日銀新総裁に植田氏起用へ 海外から評価と驚きの声
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN110530R10C23A2000000/

『政府は日銀の新たな総裁に元日銀審議委員の植田和男氏を起用する人事を固めた。海外の有識者や市場関係者からは新体制への期待とともに、黒田東彦総裁が推し進めた大規模緩和策の修正がどのように進むかに強い関心が集まった。
植田氏は適任、23年中に政策変更も

アレン・サイナイ氏(ディシジョン・エコノミクス社長) 

植田和男氏は学術の実績と実務経験を両方持つ、非常に適した人物だと思う。特に(1999年のゼロ金…

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『特に(1999年のゼロ金利政策や2001年の量的緩和政策の導入などの)金融緩和政策に携わった経験が生きるだろう。

日本のデフレは終わった。黒田東彦総裁率いる日銀は勝利宣言すべきだ。インフレは目標の2%を大きく上回り、日本経済は回復している。新総裁の仕事はインフレを制御し、超緩和的な金融政策を終わらせることだ。日本のように機関決定がゆっくり進む国では、一夜にしてできることではない。植田氏がまず黒田路線を引き継ぐと発言するのはうなずける。

植田氏の就任後1?2回の会合で変更が出てくるとは思わないが、23年中には金融政策の変更があるだろう。日本の金融政策の新たな章の始まりだ。物価目標を2%に据える限り、植田氏に利上げ以外の選択肢はないと思う。米国が利上げを終えるころに日本が利上げに動き、為替は円高に振れるだろう。円は1ドル=120円台になるとみている。

市場の政策変更圧力続く

ロバート・ティップ氏
ロバート・ティップ氏(PGIMフィクスト・インカムのチーフ投資ストラテジスト)

日銀の正副総裁候補は経歴と組み合わせを見る限り、非常にバランスの取れたチームといえる。総裁候補の植田和男氏は(日銀審議委員を務めていた)1990年代後半から2000年代前半における低インフレ・デフレがその後も続いたことを知っており、かつて早すぎる利上げに反対したこともある。時期尚早な(緩和的な)政策からの出口には敏感だろう。

副総裁候補の内田真一理事は政策設計に長く携わってきたため、今後の円滑な政策変更を探るうえで理想的だ。もう一人の副総裁候補の氷見野良三前金融庁長官は、銀行規制の幅広い経験を持つという点で他のメンバーと補完的で、政策変更時の金融機関への影響にも目配りできる。

日銀の政策の先行きに決定的な影響を及ぼすのは、国内要因よりも世界の経済情勢やインフレの行方だろう。日本はインフレが定着したとしても、物価上昇率は0?2%の間でとどまるとみている。一方、世界の金利が高止まりすれば、昨年の急速な円安進行時に見られたような内外の大きな金利差を放置できないかもしれない。長期金利の変動幅は一段と拡大される運命にあり、年内に金利誘導を終了する可能性もある。

日銀の首脳陣交代というタイミングと足元の物価上昇率が2%の目標を大幅に上回っていることを考えれば、市場は日銀に政策変更の圧力をかけ続けるだろう。金利の変動幅の上限を守るため、日銀は(国債の大量購入という)市場介入を迫られる。新体制は金利の上昇抑制を終えられる状況か半年から1年間は様子をみたいと思うかもしれないが、望むよりも早く行動を起こすかもしれない。

超緩和策脱し、日銀に新風も

マイケル・アシュレイ・シュルマン氏
マイケル・アシュレイ・シュルマン氏(ランニング・ポイント・キャピタル・アドバイザーズの最高投資責任者)

世界が金利上昇に向かう中で日本の金融政策は身動きが取れないワナにはまった状態で、日本の金融市場にとっては将来危機的な状況になる可能性があった。学界出身の植田和男氏が新総裁になることで極端に緩和的な政策から脱し、日銀に新風をもたらせるかもしれない。

日銀は昨年12月に長期金利の誘導幅の上限を引き上げた。これはある意味で、長期的な市場の安定を維持するために新総裁が新しい政策に移行することの黙認ともいえるだろう。

植田氏が新総裁に起用されるとの報道を受けて円相場が上昇した。市場関係者の承認と、金融政策が引き締め方向にシフトして金利が上昇するとの思惑を反映している。

インフレ低下で超緩和政策続く

マーク・チャンドラー氏
マーク・チャンドラー氏(バノックバーン・グローバル・フォレックス チーフ市場ストラテジスト) 

2022年12月の日銀の政策修正に続き、またしても日本からのサプライズだ。植田和男氏の姿勢が未知数ということもあり、外国為替市場では円高に振れ、日本国債市場では金利が上昇した。植田氏の起用以上に驚いたのは、雨宮正佳副総裁の辞退だ。政策の見通しが大きく変わるのか、不透明になった。

金融政策は最終的にはファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)で動く。日本では今後数カ月で物価上昇率が低下するだろう。植田氏は22年、早期の利上げをけん制する持論を展開している。日銀の新たなチームは、超緩和的な政策がまだ適切だと判断し、政策に継続性が出てくるだろう。

翌日物金利スワップ(OIS)市場では、(黒田氏の任期満了後となる)4月に短期金利がプラスになると予想されているが、これは行き過ぎだ。長短金利操作は継続されると思う。日本のマイナス金利政策は24年まで続く可能性がある。

不本意な引き締めが任務に
ジェースン・ベラミー氏(米コンサルタント会社ベラミー創業者) 

経済学者である植田和男氏の総裁起用は市場関係者にとって驚きのニュースとなった。市場のコンセンサスでは雨宮正佳副総裁か中曽宏前副総裁が有力視されていただけに不意を突かれた格好だ。

ジェースン・ベラミー氏
新総裁が黒田東彦総裁の緩和的な政策から方向転換するのかどうかはわからない。外国為替市場では報道の直後に円が上昇した後は再び下落しただけに、今のところそうは見ていないようだ。ただ、日本の物価上昇率が4%を超えた現在、日銀が金融引き締めに動くのは時間の問題だ。植田氏は金融引き締めという自身にとっては不本意な任務を背負うことになるだろう。

(ニューヨーク=斉藤雄太、大島有美子、伴百江)』