それでも政府・日銀が金利を引き上げない理由

それでも政府・日銀が金利を引き上げない理由
島澤 諭 (関東学院大学経済学部教授)
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/28033

『9月22日、政府・日本銀行は、1998年6月以来24年ぶりに円安に対応した円買いドル売りの為替市場介入を断行した。この介入により、円ドル相場は午後4時台1ドル=145.90円から約5時間後には140.40円と3.8%の円高となるなど、一定の介入効果はあったように見えた。

政府・日本銀行による市場介入により、円は一時140円台に上昇した(ロイター/アフロ)
 しかし、9月26日現在、円ドルレートは144円台後半まで円安が進むなど、再度1ドル=150円を目指した動きになりつつある。

 主要先進国がインフレ退治のために軒並み金利を引き上げる中、政府・日銀が金利の引き上げを頑なに拒否し、米国による為替操作国認定のリスクを冒してまで円安局面での介入という戦後日本では稀有な対処に及んだ。理由は、故安倍晋三元首相の悲願であったデフレからの脱却、インフレ率2%達成というよりはもっと深いものがあるのではないか。
 つまり、金利を引き上げたくても引き上げられないのだ。

日本国債の最大の保有者は日銀

 なぜ、政府・日銀は金利を引き上げられないのだろうか。

 金利引き上げが日本経済に与える影響は広範囲に及ぶが、最大の懸念は国債価格暴落、つまり、国債バブルの破裂にある。』

『現状では、国債の保有主体は、日本銀行44.3%を筆頭に、生保等19.6%、銀行(預金取扱機関)14.7%となっている。
(出所)日本銀行「資金循環統計」 写真を拡大

 つまり、日銀は世界最大の日本国債保有主体であり、金利引き上げによる国債バブルの破裂の影響を最悪の形で受けることになる。

 ただし、金利引き上げにより国債価格が暴落したとしても、あくまでも含み損でしかなく、日銀が日本国債を満期まで保有すれば形式上問題はない。しかし、日銀が満期償還まで含み損を抱えている事実に変わりはない。マーケットがこの含み損をどう評価するかに日銀の信用力は依存することになる。

 仮に、マーケットが問題なしとすれば日銀の信用力は維持され、したがって日銀の信用力に裏打ちされる日本円の信用力も維持される。

 反対に、マーケットが日銀の国債関連の含み損について、日銀のバランスシートを著しく棄損し、日銀の経営基盤に大きなマイナスだと評価すれば、日銀の信用力は地に落ちる。そうすれば日本円の価値も地に落ち、日本経済と日本国民は激しいインフレと激しい円安に見舞われる。
金利を引き上げても引き上げなくても結果は同じ

 このとき、金利を現状から据え置いても、円安によるインフレの高騰が生じるのに対して、金利を引き上げても日銀が大量に日本国債を保有することから生じる財務悪化を懸念してインフレが生じる。面白いことに、金利を引き上げても引き上げなくても結局同じ結果が生じていることに注意が必要だ。

 結局、日銀が金利を引き上げても引き上げなくても、現状の世界経済環境が続くのであれば、日本経済はいずれハイパーインフレとハイパー円安のリスクに直面する。

 つまり、黒田東彦日銀が現状のインフレに対して金利を引き上げないということは、結果が同じならば、円安に対しては米国に睨まれない程度に要所要所の介入で対応し、世界的なインフレに対しては、資源価格や食料品価格への政府補助金で対応してもらう方がましと判断したのだろう。インフレはともかく、円安であれば海外に展開する企業からの利益還流による税収増が見込めるのに対し、円高では元々国際競争力が落ちてしまっている日本企業の競争力がいっそう低下して景気も冷え込むだけだからだ。』

『このように、黒田日銀は金利を引き上げた場合のリスクの蓋然性の方が大きいと判断した可能性が高い。

利上げで早まる財政破綻

 現在、国家予算は新型コロナ対応もあって、2020年、21年と140兆円を超え膨張した。22年度当初予算は107.6兆円だが、自民党の茂木敏充幹事長は30兆円規模の補正予算を提言していることもあり、最終的には140兆円近くの予算規模と引き続き拡張的な予算となるだろう。

 一方で、大規模な歳出を支えるのは国債の発行だ。新発債と借換債を含めて毎年200兆円を超える国債を発行しても、低金利で推移しているのは、先にも見た通り、日銀が事実上の財政ファイナスを行っているからだ。この結果、日銀が保有する国債からの受取利息は1兆1233億円である上、国税を加えると1兆2584億円を国庫納付金として政府に還流させている。

 現状では、政府がさらに歳出規模を拡大させ、日銀が引き続き財政ファイナンスを行ったとしても、問題なさそう見える。しかし、金利を引き上げた場合、この好循環が断たれてしまうどころか、日銀のバランスシートが含み損のせいで棄損するのに加えて、政府の財政破綻を早めるリスクまで抱えてしまう。

 黒田日銀はインフレ率を口実に金利政策の変更は時期尚早としているが、実はそもそも何が起きようとも金利の引き上げは困難なのである。内外金利差の拡大で円安になれば、「円安のデメリットももちろんあるが、輸出が伸びるメリットが上回る」と言ってみたり、インフレ率が2%を達成したら「コアインフレ率はまだ2%に到達していない」と言ってみたり、今後も金利引き上げの要求が高まったとしても、結局、あれこれ理由を付けてそれに応じることはないだろう。

  なぜなら、日銀が安心して金利を引き上げられる環境が整うのは、政府債務の削減が進んだ時であり、そのためには短期的にはバラマキ的な財政運営からの脱却、中長期的には社会保障制度の抜本的な改革という2つの政府財政赤字の根源を退治することが必要だからだ。

 政府も政治も高齢者の票を大切にするあまり、日本経済や若者の未来を大きなリスクに晒している点を反省すべきだろう。』

政府・日銀、24年ぶり円買い介入 円一時140円台に上昇

政府・日銀、24年ぶり円買い介入 円一時140円台に上昇
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA12A5H0S2A410C2000000/

『【この記事のポイント】
・輸入物価の高騰で家計の負担増につながる円安を阻止
・一時1ドル=145円台まで進んだ円安、介入後5円程度上昇した
・大規模な介入繰り返すのは難しく、効果は限定的との見方も

政府・日銀は22日、1998年6月以来、約24年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入に踏み切った。日銀が金融政策決定会合で大規模な金融緩和を維持することを決め、利上げを進める米国との金融政策の違いから円安・ドル高に拍車がかかっていた。輸入物価の高騰で家計の負担増につながる円安を阻止する姿勢を示した。

円安の原因である日米の金利差はさらに広がるとみられる。円買い介入の効果が持続するかは見通せない状況にある。

鈴木俊一財務相は介入後の22日夜に財務省内で記者会見した。為替は原則として市場で決まるものだと前置きしつつ、「投機による過度な変動が繰り返されることは決して見過ごすことができない」と理由を述べた。関係者によると介入規模は「兆円単位」という。

今回は他国と足並みをそろえる協調介入ではなく、日本の単独介入だった。米財務省の広報担当者は22日、日本経済新聞の取材に対して「米財務省は為替介入には参加していない。日本の当局は為替介入は最近の円のボラティリティー(変動)の高まりを抑えるのが目的だと述べており、我々は日本の行動を理解している」とコメントした。欧州中央銀行(ECB)の広報担当者は22日、取材に対し「為替市場で介入はしていない」とした。

会見に同席した神田真人財務官は判断の決め手は円相場の水準そのものではなく、値動きの荒さだと強調した。「あまりにもおかしなボラティリティーの場合はマーケットを正常化する営みが求められる」と述べた。

訪米中の岸田文雄首相は22日のニューヨークでの内外記者会見で為替介入に言及し、「過度な変動に対しては断固として必要な対応をとりたい」と強調した。

夕方の介入を受け、円相場は一時1ドル=140円台と、直前から5円程度上昇した。

米連邦準備理事会(FRB)は21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅な利上げを続ける方針を示した。日銀は22日まで開いた金融政策決定会合で金融緩和の維持を決めた。

今後も日米の金利差が開くとの見方から金利の高いドルを買う動きが強まり、22日正午ごろには一時1ドル=145円台まで円安が進んだ。午後1時30分過ぎには神田財務官が記者団に対し、為替介入の可能性について「スタンバイの状態と考えていい。いつでもやる用意がある」と語っていた。

3月初めまで1ドル=115円程度で安定していた円相場は同月の途中から円安に振れた。半年あまりで30円も円安に進んだことになる。

ロシアによるウクライナ侵攻で原油や天然ガスの国際価格が上がった。円安は輸入する資源や原材料の値上がりにつながり、日本の企業や家計を圧迫している。

ただ、介入の効果は限定的との見方がある。金利差を背景に円安・ドル高になりやすい構造は変わらない。円買い・ドル売り介入は手持ちのドルを売る必要があり、原資となる外貨準備の範囲内でしか実施できない。大規模な介入を繰り返すのは難しい。

不良債権問題などで日本経済が低迷していた1998年6月も1ドル=140円を超えて円安が進んだ。歯止めをかけようと日米で協調介入に踏み切った。円安に誘導する円売り・ドル買い介入は日本が単独で実施した11年11月が最後だった。米国の景気不安や欧州の信用不安などを背景に直前の10月末に1ドル=75円32銭の史上最高値をつけた。

【関連記事】

・財務相「投機的な動き見過ごせず」 24年ぶり円買い介入
・日銀は緩和維持・FRBは0.75%利上げ 金利差で円安加速

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Business/Markets/Currencies/Japan-intervenes-in-forex-market-to-stem-yen-s-slide?n_cid=DSBNNAR 

多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

日本の通貨当局は言行一致を貫いた形である。日銀が異次元緩和続行を決めた前後の急激な相場変動に対して、G7・G20合意で認められている「スムージングオペ」、相場の過度の変動を落ち着かせる目的だという体裁で、今回為替介入に踏み切ったのだろう。だが本音では、大きな問題にもなっている円安ドル高に、そろそろ歯止めをかけたいはずである。介入は、タイミングと効率が重要。勝ちを収めたいのなら、円を売り持ちにしている海外などのプレーヤーを、損失確定の円買い戻しに追い込む必要がある。チャート上の節目は近いところでは142.40円、141.50円など。これらの水準に到達することで、介入の効果はより大きくなる。
2022年9月22日 17:51

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尾河真樹
ソニーフィナンシャルグループ執行役員兼金融市場調査部長
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ひとこと解説

145円を超える円安は日本政府として容認できないというメッセージを市場に明確に示した点で、意味のある介入だ。したがって、当面ドル円の145円付近は重くなるのではないか。ただ、今の円安は日本の経常黒字の急速な減少や、諸外国の利上げに対し、日本だけが緩和維持姿勢であることが際立っていることなどが背景にあり、こうしたファンダメンタルズに変化がなければ、介入でドル円を「上昇トレンド」から「下落トレンド」へと向きを変えることは難しいとみている。今後米国経済が悪化し、インフレが抑制されれば自然とドル円は反落しよう。それまでの時間稼ぎという趣旨であれば、今後複数回の介入が必要になるかもしれない。
2022年9月22日 18:49

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菅野幹雄
日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員
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分析・考察

焦るFRBの大幅利上げ、動けぬ日銀の現状維持で円安が進む展開は見えていたのですが、このまま何ら反応しない「ゼロ回答」では為替市場ににらみが利かず、日本の当局として「やってる感」を出さねばならなかったというところでしょう。円安による値上がりで国民の不満が蓄積するなか、岸田政権としても「円安無策」の批判は避けたいはずで、思惑が一致したということでしょうか。過度の為替変動には断固対処するという筋道は通したわけですが、構造的な円安要因は全く消えません。介入の足元をみてくる市場と日本政府の我慢比べが始まったということかと思います。
2022年9月22日 18:40

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伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事
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ひとこと解説

円安阻止のための利上げの可能性を否定した黒田総裁の会見終了後に円安傾向が加速、146円が目前に迫っていたが、足もとは142円台まで押し戻されている。
日本時間16時30分には、スイス中銀が0.75%の大幅利上げを決め、マイナス金利政策採用国が日本のみという構図になったことも、円安に拍車をかけた可能性がある。
今夜は日本時間20時にイングランド銀行の金融政策委員会が少なくとも0.5%の利上げと量的縮小の開始を公表する見込み。
「動かない日銀」がクローズアップされやすい環境で、介入がどこまで効果を発揮するのか見極めたい。
2022年9月22日 17:33』

円安で縮む日本 ドル建てGDP、30年ぶり4兆ドル割れ

円安で縮む日本 ドル建てGDP、30年ぶり4兆ドル割れ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB13ART0T10C22A9000000/

『【この記事のポイント】
・ドルでみた日本が縮小。GDPは30年前に逆戻り
・国力低下、円安止まらず。安い賃金、株買いも弱く
・ITなど投資不足。高付加価値の産業へ転換が重要

ドル建てでみた日本が縮んでいる。1ドル=140円換算なら2022年の名目国内総生産(GDP)は30年ぶりに4兆ドル(約560兆円)を下回り、4位のドイツとほぼ並ぶ見込み。ドル建ての日経平均株価は今年2割安に沈む。賃金も30年前に逆戻りし、日本の購買力や人材吸引力を低下させている。付加価値の高い産業を基盤に、賃金が上がり通貨も強い経済構造への転換が急務だ。

経済協力開発機構(OECD)によると日本の今年の名目GDPは553兆円の見込み。1ドル=140円でドル換算すると3.9兆ドルと1992年以来、30年ぶりに4兆ドルを下回る計算だ。現時点での期中平均は127円程度だが、円安が進んだり定着したりすると今年や来年の4兆ドル割れの可能性が高まる。

ドルでみた経済規模はバブル経済崩壊直後に戻ったことを示す。世界のGDPはその間、4倍になっており、15%を上回っていた日本のシェアは4%弱に縮む。12年には6兆ドル超とドイツに比べ8割大きかったが、足元で並びつつある。

経済成長や景況感は円ベースのGDPに連動する。今年のドル建てGDPが21年に比べ2割減るといっても、大不況というわけではない。ただ、ドル建てでの国際比較は長い目でみた「国力」の指標になる。

一橋大学の野口悠紀雄名誉教授は「通貨安は『国力』を低下させる。海外から人材を引き付けられなくなり成長を妨げる」と指摘する。

1ドル=140円なら平均賃金は年3万ドルと90年ごろに戻る計算だ。外国人労働者にとって日本で働く魅力は低下している。今年の対ドルの下落率は円が韓国ウォンを上回り、ドル建ての平均賃金は韓国とほぼ並ぶ。11年には2倍の開きがあった。物価差を加味した購買力平価ベースでは逆転済みだが、市場レートでも並ぶ。

世界経済を揺るがすエネルギー高も通貨安の国には重くのしかかる。原油先物の代表的な指標であるドル建てのWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は昨年末に比べ13%上昇した。円建ての東京商品取引所の原油先物(中心限月)は33%とさらに上昇している。

かつての円安局面の特徴だった、外国人が企業収益拡大を期待して日本株を買う動きは見られない。

外国人は22年1~8月に日本株を2.7兆円売り越した。日銀が異次元緩和を始めて急速な円安となった13年1~8月に9.1兆円買い越したのと様変わりだ。「調達コスト増を価格転嫁できず、企業の利益が落ち込む例がある」(仏コムジェスト・アセットマネジメントのリチャード・ケイ氏)とマイナス面を警戒する。

外国人が運用成績の評価に使うドル建てでは日経平均は今年23%安と、年間の下落率で金融危機の2008年(42%)以来となっており、海外からみれば日本の資産は価値が急減している。

円安は輸出競争力を高めるほか、海外からの直接投資や旅行者の誘因にもなる。景気刺激の面では望ましい。ただ、90年代以降の円安を志向する政策の下で、IT(情報技術)投資不足などで産業競争力は落ちた。「円安が続かないと生存できない企業が増えて全体の生産性が低下し、賃金低迷を招いた」(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト)。円安や金融緩和の支えに甘え、改革を怠れば国力低下は止まらない。

(真鍋和也、今堀祥和、小池颯、南泰葉、川路洋助)

【関連記事】

・政府・日銀、苦渋の為替介入準備 急速な円安に危機感
・日銀が「レートチェック」 為替介入の準備か
・株、円安はもはや売り材料か 「業績にもマイナス」の声 』

住宅ローン契約者の3人に1人が破綻する? 統計が浮き彫りにした金利上昇の大きなリスク

住宅ローン契約者の3人に1人が破綻する? 統計が浮き彫りにした金利上昇の大きなリスク
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2209/15/news207.html

 ※ 円安による「物価上昇」を回避するため、「異次元緩和政策」を変更すると、こういう問題が浮上する…。

 ※ この世の中、「誰一人、取り残さない!」「三方丸く収まる。」「誰にとっても、ソンの無い話し。」なんてものは、「無い」んだ…。

 ※ 有るのは、「なるべく多くの人が、それほど酷い目に合わないライン」「なるべく多くの人が、生存すらして行けなくなる事態を、回避する策」などの、ごくごく「現実的なもの」だけだ…。

 ※ それを、標語的に表現すれば、「最大多数の、最大幸福」ということになる…。

『1ドル140円を超える急激な円安で、日銀の異次元緩和政策が岐路に立たされている。

 9月13日には、8月の企業物価指数が前年同月比で9.0%も増加し、過去最高を更新した。日本の消費者物価指数(コアCPI)も、足元では年率2.0%の水準を超えている。いよいよ日銀も、「緩和の縮小」ないしは「利上げによる金融引き締め」へ舵取りをしていかなければならないタイミングになってきたといえる。

 金融緩和を縮小する金融政策には、「市中金利を高める」という効果がある。簡単にいえば、今後借金の金利が上がることになる。そんな局面では、大規模なローンを組んでいる者ほど割を喰らうことになる。

 では、企業を除いて最も大きな借金とは何だろうか。それは「住宅ローン」である。
(写真提供:ゲッティイメージズ)

これから「3人に1人が破綻」する?

 3月に、筆者は金利上昇リスクの高まりによって現住宅ローン契約者の4人に1人が破たん予備軍となることを説明した。そして、9月の状況は当時の市況よりもさらに悪化している。

 2022年3月当時における日本の長期金利は、今の水準から2割ほど低い0.186%であった。さらに、米国の利上げターゲットとされている水準も、当時は2%程度であったが、今ではその倍の4%程度への利上げも視野に入ってきている状況だ。

 ここで、以前に紹介した金利上昇の到来によって破綻する可能性がある「4人に1人」はどのような根拠があったかをおさらいしたい。この「1人」に共通するのは、ある”危険な住宅ローンの組み方”をしていることだ。

 それは、「頭金が最小限で、固定金利だと借りられない金額を、変動金利では借りられるためにローンを組んだ」という人だ。

 固定金利は変動金利を上回るのが原則だ。そのため、借入可能額と毎月の支払額を一定とした場合、固定金利よりも変動金利の方が、総返済額に対する元本の割合が高くなる。そのため、変動金利を選んだ方がグレードの高い家に住めるようになるのだ。

 固定金利では立地、間取り、日当たりなどのさまざまな条件に目を瞑って、妥協した家を買うことになる。しかし、変動金利では妥協しない理想の家でも、(今の金利の想定では)ギリギリ返済できるというという想定で満額を借りてしまう人が4人のうちの1人の破綻予備軍に該当するのである。

 住宅金融支援機構によれば、金利上昇が始まる前の21年10月時点において「変動金利」を選択した顧客は67.4%と全体の3分の2以上であった。しかし、驚くべきことに、最新の調査結果では、目先で金利上昇が発生しているにもかかわらず「変動金利」を選択している契約者が73.9%まで増加しているのだ。

出所:住宅ローン利用者の実態調査(2022年4月)金利上昇で変動型を選択する契約者が増加している

 それだけではない。変動型の融資を選択した顧客において48.5%が、物件価格に対する融資の割合が90%を超えているのだ。

出所:住宅ローン利用者の実態調査(2022年4月)融資の比率が90%を超える変動金利の選択者は44.8%にものぼる。

 住宅ローン契約者で変動金利を選択した73.8%のうち、9割以上の融資率となっているのは44.8%である。つまり足元では、全住宅ローン契約者のうち33%、3人に1人が住宅ローンの破綻予備軍となっている。』

『少しでも高級な物件を買うために……

 「変動金利で融資率が90%以上の分布が異様に突出している」という“歪み”からは、「固定金利だと借りられない金額を、変動金利では借りられるので、借りられるだけ借りる」という危険なローンの組み方が半ば当然かのように設定されている節もある。

 不動産会社としては、変動金利であれば固定金利よりも高額な物件を購入してもらえるため、目先の営業成果が最大化するというメリットがある。筆者が実際に目にした例では、自社リノベ物件を「頭金10万円」で、変動金利で目いっぱい借りさせ、買わせようとする例もあった。その担当者の「みんな変動(金利)です」といった発言があったことからも、この統計には説得力があると思われた。

 しかし変動金利の場合、金利上昇によって、場合によってはその時に固定金利を組んでいた場合よりも高い金利を支払わなければならないパターンに陥ることもある。「金利が上がれば固定に乗り換えればいい」という言説もSNSでは散見されるが、金利上昇局面で、変動金利から固定金利に乗り換えようとしても、今よりさらに高い金利で固定されてしまうため、あまり有効な手段とはいえない。

 そもそも、変動金利でギリギリの額を借りていたとしたら、今よりさらに高い金利の固定金利に乗り換えることは難しいのではないだろうか。このような住宅ローン破綻予備軍が金利上昇局面に備えてできることは「収入を増やす」か、「物件を売却する」か、はたまた「金利が下がるように祈る」といったものしかない。

 変動金利のローン商品は、金利の見直しが半年ごとであるため、足元では目立った変化こそ生じていない。しかし、足元の状況を踏まえれば、次回の見直しで変動金利で組んだローンの金利負担が増えてくる可能性は高い。

 また住宅ローンには5年ルールという、「毎月の返済額が5年毎にしか見直されない」というルールがあり、金利が上がってもしばらくは支払額は一定であるため、直ちに家計の負担を圧迫するとはいえない。

 しかし、金利が上がっても返済額が一定ということは、借入元本の返済ペースがスローダウンし、支払い総額を高めてしまうことにもつながる。金利上昇局面においてはやはり変動金利のデメリットを避けることはできない。

本当に金利は上がるのか

 ここで気になるのが、目に見えない「金利」の上昇をどうやって事前に察知するかという点ではないだろうか。

 この点について、日本国債の利回りを確認することで、すでに将来の金利上昇を市場が織り込み始めていることを確認できる。一般的に「金利」として参照される日本の長期国債(10年物)利回りを確認すると、ここ1カ月でその利回りは年率0.160%程度から0.246%まで急騰している。

 日銀は「イールドカーブコントロール」という政策で、一定の価格で無限に日本国債を買い支えて、事実上の金利上限を0.25%に抑えようとしている。

 しかし、最近は0.25%の水準を突破してくる回数が増えてきた。これは、日銀の吸収スピードを上回るほどの国債売りが発生していることを表しており、市場は日銀の政策変更を見込んで大量に日本国債を売っているということになる。つまり、市場と日銀の攻防戦が繰り広げられているのである。

筆者プロフィール:古田拓也 カンバンクラウドCFO

1級FP技能士・FP技能士センター正会員。中央大学卒業後、フィンテックベンチャーにて証券会社の設立や事業会社向けサービス構築を手がけたのち、2022年4月に広告枠のマーケットプレイスを展開するカンバンクラウド株式会社を設立。CFOとしてビジネスモデル構築や財務等を手がける。Twitterはこちら https://twitter.com/full_tangent 』

止まらぬ円安、日銀のレートチェックって何?

止まらぬ円安、日銀のレートチェックって何?
イチからわかる金融ニュース
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB154BY0V10C22A9000000/

 ※ 世の中、「構造」から生じている現象を、その「構造」を変化させること無くして、現象の方だけ「変える」ということは、難しい…。

 ※ 今般の「円安」も、根本は「日米金利差」という「構造」から生じているもので、これが「変わらない」限り、「ドル高・円安」という「力学」は働き続ける…。

 ※ それでも、「政治的思わく」や、「時の政権のご意向」なんかにより、「力学を無視して、打って出る」可能性は、無いわけではない…。

 ※ 案外、安倍氏の「遺産」である「アベノミクス」の根幹であった「異次元緩和」を取りやめることで、「安部カラー」の払拭を図る…、なんてことが、時の政権の「最大の目的」となる可能性が、無いわけではない…。

 ※ これに、次期日銀総裁の「人事」なんてものも、絡んでくるんで、事態は、ますます複雑化してくる…。

 ※ 日銀総裁の人事は、基本、「たすき掛け」で、「財務官僚畑」の人と、「日銀生え抜き畑」の人とで、交互に就任することになっているらしい…。

 ※ 現黒田総裁は、「財務官僚畑」の人だったんで、次期は、「日銀生え抜き畑」から就任するだろうと目されているらしい…。

 ※ 有力候補としては、『最多数は現日銀副総裁の雨宮正佳氏で、エコノミスト30名中29名が次期日銀総裁だと予想した。次点は28名が予想する大和総研理事長 中曽宏氏。雨宮氏とほぼ拮抗する結果となった。3番目に予想が多かったのは、アジア開発銀行総裁の浅川雅嗣氏(9名)だった。

この結果を素直に受け取れば、現在点では雨宮氏、中曽氏、浅川氏の3名が次期日銀総裁の有力候補となるだろう。』という3名の名前が上がっているらしい…。

『日銀が為替介入の準備のために市場参加者に相場水準を尋ねる「レートチェック」を実施しました。今は1ドル=140円を超える円安水準で為替相場が推移していることは、市場参加者に聞かなくても分かります。なぜ、わざわざ日銀は相場水準を聞いたのでしょうか。このタイミングで聞く狙いは何でしょうか。

何を聞くの?誰が聞くの?

レートチェックは当局者が市場の動きをけん制する口先介入から一歩踏み込み、為替介入の準備段階にあたります。聞くのは日銀金融市場局為替課の職員です。東京・日本橋本石町にある日銀本店の4階にある一室から、銀行など金融機関で為替売買をするディーラーに電話で聞きます。質問は「ドル売りだと、いくらのレートでいけますか」といった内容です。

もちろん、日銀もオンラインで為替の動向をリアルタイムで把握しており、相場の見通しについても日ごろから市場参加者と情報交換しています。あえて電話という手段で複数のディーラーに売買のレートを問い合わせることで、為替介入の実行部隊である日銀が準備に動いていることをアピールする狙いがあります。

日銀はレートチェックを実施したかどうかについて、過去の実績も含めて公表していません。関係者によると、為替課の部屋は周囲からの視線を遮るために、ブラインドやシャッターを閉め切っているそうです。

【注目記事】

・日銀が「レートチェック」 為替介入の準備か
・鈴木財務相、為替介入「やるときは間髪入れず瞬時に」

なぜこのタイミング?

急速に進む円安に対して、政府・日銀は口先介入を繰り返してきました。7日に鈴木俊一財務相が急激な為替の変動には「必要な対応をとる」と発言。8日には財務省、日銀、金融庁の3者が会合を開き為替相場の急変に強い警戒感を示しました。9日には日銀の黒田東彦総裁が官邸の岸田文雄首相を訪ねています。それでも円安・ドル高傾向は止まらず、強いメッセージを出して市場をけん制しました。

もう一つは世界の主要中銀の政策決定スケジュールです。日銀が21~22日に金融政策の方向性を決める金融政策決定会合を開くほか、直前の20~21日に米連邦準備理事会(FRB)が米連邦公開市場委員会(FOMC)を予定しています。FRBなど海外中銀が大幅な利上げを表明すれば、市場は大規模緩和を続ける日本との金利差をより強く意識します。

一般的に、金利が低い通貨から金利の高い通貨にお金は流れます。今は米国と比べて日本の金利が低い状況なので、金利の低い円を売り、金利が高いドルを買う動きが活発です。FOMC後に金利の高い米ドルを買って低い円を売る動きが加速する前に、レートチェックによって介入の可能性をにおわせてけん制したとの見方もあります。

【注目記事】

・日銀が実施した「レートチェック」とは?
・政府・日銀、苦渋の為替介入準備 急速な円安に危機感
・円安、なぜ止まらぬ? 政府・日銀は介入・利上げに動くか
・米国、問われる利上げ耐性 年内に4%超との見方も

円安を止める効果はありますか?

14日の円相場は午前7時ごろに1ドル=144円台後半を付け145円が迫っていました。複数の関係者の話では、日銀は1ドル=144円90銭付近に差し掛かったところでレートチェックに踏み切ったようです。レートチェック後の15日の円相場は1ドル=143円台を中心に推移しています。ユーロなど他の幅広い通貨に対しても円高が進みました。日系の為替ディーラーは「為替介入の可能性がちらつく中であえて円を売る動きはなくなっている」と話します。現時点では効果を発揮しているようです。

この効果が続くかははっきりしません。というのも、現在の円安の要因は、金融引き締めを強化する米国と大規模緩和を続ける日本という金融政策の構造の違いが大きいためです。市場関係者は、円買い・ドル売りの「実弾介入」があるかどうかに注目しています。レートチェックが「介入のふり」と見る市場関係者が増えれば再び為替は円安に戻る可能性もあります。

【注目記事】円、レートチェック後は全面高 「介入で反転」過去3割

(三島大地、前田尚歩)
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上野泰也
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ひとこと解説

レートチェックには、(1)為替介入の準備が進んでおり「臨戦態勢」であること、(2)相場の変化スピードに対して通貨当局が懸念を抱いていること、以上2点を知らしめるアナウンスメント効果がある。介入は、相場は市場で形成されるという原理原則への例外措置であり、必ずしも適切な例えではないかもしれないが、警官が犯人に対して拳銃を向け、引き金に指がかかっているものの、できれば発砲せずに済ませたい状況のようなもの。なお、過去には、レートチェックが行われた(行われたという観測が市場で流れた)ものの、その後に介入がなかったケースもある。レートチェックから介入実施までのインターバルが1か月以上と長かったこともある。
2022年9月16日 7:31 』

政府・日銀、苦渋の為替介入準備

政府・日銀、苦渋の為替介入準備 急速な円安に危機感
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA147QM0U2A910C2000000/

『政府・日銀と市場関係者の為替相場を巡る緊張感が高まっている。13日夜に米物価統計が公表された後の急速な円安を受け、日銀は為替介入の準備のための「レートチェック」を実施した。当局者が市場の動きをけん制する「口先介入」から一歩進んだが、金融緩和のもとで円安の基調が変わるとの見方は乏しい。協調介入のハードルは高く、円安を止めるのは難しい状況だ。

14日午前、銀行などの外為担当者に日銀から電話が入った。「ある程度の規模で円買い・ドル売り取引をする際のレートはいくらですか」。通常、政府・日銀が為替介入をする前の準備として行うレートチェックだ。

14日の円相場は午前7時ごろに1ドル=144円台後半を付け、145円が迫っていた。市場関係者は「145円の節目を突破するとどんどん円安が進む可能性があり、危機感が高まっていた」という。

実際に為替介入を準備している姿勢を市場に示す。政府・日銀のこの動きは3月から進む円安について、介入以外にとりうる策が尽きた結果の苦渋の選択でもある。

3月上旬の1ドル=114円台から強まった円安基調に対し、鈴木俊一財務相らは過度な為替の動きをけん制する「口先介入」を繰り返してきた。足元では輸入物価の値上がりへの企業や消費者の不満も無視できない。鈴木氏は4月には「悪い円安」、最近では「あらゆる手段を排除しない」とまで語るようになったが、円安の動きは止まっていない。

鈴木氏は14日午後には円安に対応する手段に為替介入を含むかどうかについて「あらゆる手段であり、そう考えていい」と記者団に述べた。同日夕になると介入は「やるときは間髪入れずに瞬時にやる」と述べ、神田真人財務官も「適切な対応を取る準備ができている」と語った。レートチェックが進む中、当局による円安けん制のメッセージは近年になく強まった。

しかし、市場関係者は「介入のふり」とみているようだ。日経電子版が日銀によるレートチェックの実施を報じたのは午後1時半ごろ。1㌦=144円30銭台だった相場は円高に振れたものの、143円台後半でいったん止まった。

シティグループ証券の高島修氏は過去に介入する際に使っていた「断固たる措置をとる」という表現が政府関係者から発せられていないことから「1ドル=150円に乗せるまでは介入に動く可能性は低い」とみる。

円安に対抗する円買い・ドル売り介入は手持ちのドルを売る必要があり、外貨準備の範囲内でしか実施できない。これまで円高に対応する円売り・ドル買い介入を319回実施したのに対し、円買い・ドル売り介入は32回にとどまる。1998年6月を最後に封印している。

ドル安に転じれば米国の輸入物価は上がる。インフレに苦しむ米国の理解を得るのは難しく、協調介入の機運は乏しい。7月に鈴木氏とイエレン財務長官の会談でまとめた文書に為替安定の記述が入ったのは日本側の働きかけによるものだった。日米の温度差は大きい。財務省幹部は「日本単独でも介入できる」と話すが、効果は限られる。

このまま介入に踏み切れば投機的な動きはけん制できる可能性がある。しかし、日米の金利差が埋まるわけではなく、円安の圧力は残り続ける。今後の大きな焦点が、日銀が21~22日に開く金融政策決定会合だ。

黒田東彦総裁は前回7月の決定会合後の記者会見で「少し金利を上げても円安が止まることは到底考えられない」と述べ、円安に対応するための金融政策の変更に否定的な見解を示した。

現在も金融政策の変更を予想する市場関係者は少数派だが、日銀内でも急速に進む円安を無視できない状況になりつつある。ある日銀関係者は「為替は経済を構成する重要要素。(利上げの)リスク、効果などを見極めた上で政策を考える必要がある」と指摘する。

【関連記事】

・「米利上げ不況」市場で強まる警戒 業績不安で株安連鎖
・CPIショック再び、世界で株安連鎖 日経平均一時800円安
・日銀が「レートチェック」 為替介入の準備か

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ひとこと解説

レートチェックは、「実弾介入」の一歩手前の動き。介入実行の準備をしていることを市場参加者に対して、強くアナウンスする効果を有する。ドル/円相場の市場実勢は、取引端末や情報スクリーンなどから、リアルタイムで通貨当局も知ることができる。それでもあえて、民間銀行に対して取引可能な相場水準を日銀がきくことには、そうした意味合いがある。市場における円売りに対するそうしたけん制に効果がなく、レートチェックをした水準を超えて急ピッチで円安ドル高が進むようなら、日本単独での介入実施が真剣に検討されるだろう。ドル/円での介入実施には米財務省の容認姿勢が必要とみられる中、岸田首相の米国訪問が近く予定されている。
2022年9月15日 7:48

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

遅いが、やらないよりはやったほうがいい。むろん、円買い介入しても、円安を止めることができない。円買いしながら、金融緩和・ゼロ金利を転換する。そうすれば、状況はかなり変わる。あと2週間で10月に入る。さらなる物価上昇が予想される。需要が供給を上回って物価が上昇しているのではない。輸入インフレだ。輸入インフレは企業経営に直撃する。最近、毎日のようにこのようなコメントを書いている。昨日、ガソリンスタンドにいって給油したら、高い。
2022年9月15日 7:23 』

金融商品取引法をわかりやすく解説、やってはいけない「5つの販売・勧誘ルール」とは

金融商品取引法をわかりやすく解説、やってはいけない「5つの販売・勧誘ルール」とは
https://www.sbbit.jp/article/fj/83112

『 金融商品取引法とは、投資家が安心して投資を行えるような環境を作ること、取引市場の公正性・透明性を向上させることを目指して作られた法律です。同法律では、投資家に金融商品を販売する事業者や、取引参加者が「守らなければならないルール」がいくつも設けられています。具体的な内容をわかりやすく解説していきます。

執筆:1級FP技能士、社会保険労務士 加治直樹 』

『 <目次>

金融商品取引法とは
金融商品取引法誕生の背景
金融商品取引法の「4つのポイント」
規制の対象となる「金融商品取引業者」とは
規制の対象となる「投資性のある金融商品」とは
販売業者が守らないといけない「5つの販売・勧誘ルール」
・広告の規制
・書面交付義務
・適合性の原則
・禁止行為
・損失補填の禁止
販売業者に商品の説明を求める「金融商品販売法」とは 』

『金融商品取引法とは
 金融商品取引法とは、投資性(価格が変動するリスク)のある金融商品を取引する消費者を保護するために成立した法律です。

 金融商品取引法が成立したことによって、たとえば、株式や債券、投資信託などの金融商品を取り扱う事業者は必ず内閣総理大臣に申請し、登録業者として認定されなければビジネスができないようになったほか、事業者が消費者に金融商品を販売・勧誘する際に「やってはいけないこと」などを決めたルールが整備されました。

 ここで紹介したのはほんの一部ですが、このように金融商品取引法では、金融商品を買ったり売ったりする消費者が不利益を被らないよう、また透明性のある公正な取引市場をつくるためにあらゆるルールが設けられているのです。ここからは、そんな金融商品取引法を詳しく解説していきます。

金融商品取引法誕生の背景
 個人投資家の「貯蓄から投資」を推進する政府は、金融・資本市場の環境の変化に対応することにより日本経済の発展を目指す中で、2007年9月にいくつかの法律を廃止・統合し金融商品取引法を制定しました。前身の法律は「証券取引法」で、その名を「金融商品取引法」と改名した形です。

 具体的には以下の4つの法律を統廃合し、さらに全89もの法律を改正し、その一部を統合する形で金融商品取引法は作られました。

金融先物取引法
外国証券業者に関する法律
有価証券に係る投資顧問業の規制等に関する法律
抵当証券業の規制等に関する法律

 証券取引法から金融商品取引法に変わったことで、それまで分かれていた「証券取引所」と「金融先物取引所」は、まとめて「金融商品取引所」に改名されています。

画像
金融商品取引法では、投資性のある金融商品を取引する消費者を保護するため、さらには透明性のある公正な取引市場をつくるために、あらゆるルールが設けられています
(Photo/Getty Images)

金融商品取引法の「4つのポイント」
 金融商品取引法が定めるルールは、大きく分けて下記の4つになります。それぞれのポイントを見ていきましょう。

(1)投資性の強い金融商品を幅広く対象とする横断的な利用者保護制(いわゆる投資サービス法制)の構築
(2)開示制度の拡充
(3)取引所の自主規制機能の強化
(4)不公正取引などへの厳正な対応

(1)投資性の強い金融商品を幅広く対象とする横断的な利用者保護制(いわゆる投資サービス法制)の構築
 金融商品取引法では、投資家保護強化のために、規制対象となる金融商品や業務の範囲を拡大したり、金融商品を取り扱う業者が守るべき販売・勧誘ルールを整備したりしています。対象となる金融商品や業者が守るべきルールについては、後ほど解説します。

(2)開示制度の拡充
 金融商品取引法では、投資家が投資判断材料を入手できるように、上場会社に「四半期報告書」の提出を義務付けています。「四半期報告書」は、公認会計士・監査法人による監査の対象になっており、虚偽の記載があれば罰則や課徴金の対象です。

 上場会社が開示する情報としては、年1回作成される事業内容などが記載された「有価証券報告書」、四半期ごとに提出される「四半期報告書」などがあります。また、有価証券報告書などの記載内容が適切であるかを、利害関係のない公認会計士や監査法人の監査の対象とすることで、内部統制の強化を図っているのです。

(3)取引所の自主規制機能の強化
 株式会社の形態をとる証券取引所は、株式会社として利益を追求するのと同時に、取引所としての公正性や透明性を確保するために、取引者を参加資格を有する証券会社に限定したり、投資対象となり得る企業だけが上場する取引所にするため上場廃止基準に沿って企業を見極めるなど、自主規制業務を行っています。このように、立場上利益相反が生じやすい証券取引所に対し、金融商品取引法では、自主規制業務の適正な運営をさせるためのルールを設けています。

(4)不公正取引などへの厳正な対応(※2)
 金融商品取引法では、投資家保護と取引所の透明性や公正性を確保するために、インサイダー取引や相場操縦、さらには発行体の有価証券届出書の不提出など、あらゆる違反行為に対する罰則を強化しています。

 たとえば、インサイダー取引や有価証券届出書などの不提出の場合は、「5年以下の懲役もしくは500万円以下(法人の場合は5億円以下)の罰金、または併科」という罰則がもうけられています。また、行政処分として「課徴金」の納付が命じられることもあります。

 ここまで紹介してきた4つのポイントのうち、ここからは特に重要な(1)の内容、具体的には規制の対象となる金融商品や業者が守るべき販売・勧誘ルールについて解説していきます。

規制の対象となる「金融商品取引業者」とは
 この法律で規制対象となる業者は、法律上「金融商品取引業者」と呼ばれます。具体的に該当する業者としては、下記などが挙げられます。

■「金融商品取引業者」に該当する業者

証券会社
金融先物取引業者
商品投資販売業者
信託受益権販売業者
投資顧問業者
投資信託委託業者

規制の対象となる「投資性のある金融商品」とは
 金融商品取引法の誕生により、規制対象となる「有価証券」の範囲は大きく拡大しました。金融商品取引法の成立以前の証券取引法では、国債や地方債、社債、株式、投資信託などを有価証券として規制の対象としていましたが、金融商品取引法では「信託受益権全般」に加え、ファンドなどと呼ばれる「集団投資スキームの持分」も有価証券とみなして規制対象に加えています。

■金融商品取引法が規制対象とする金融商品

国債
地方債
社債
株式
投資信託
信託受益権全般
集団投資スキームの持分
多様なデリバティブ取引
暗号通貨(※2020年5月施行の改正金融商品取引法)

 また、デリバティブ取引についても、有価証券に限定せず通貨・金利スワップ取引や天候デリバティブ取引など、多様なデリバティブ取引も対象とし、規制対象となる範囲を拡大しています。

 さらに、2020年5月に施行された改正金融商品取引法では、これまで適用除外とされていた暗号通貨が規制の対象となる金融商品に加わりました。

【次ページ】販売業者が守らないといけない「5つの販売・勧誘ルール」、広告の規制、書面交付義務、適合性の原則、禁止行為、損失補填の禁止とは?』

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ミスター黒田、際立つ国際人脈 最後のジャクソンホール

ミスター黒田、際立つ国際人脈 最後のジャクソンホール
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB313BX0R30C22A8000000/

 ※ 国際金融政策は、こういう「インナーサークル」の中での、「阿吽の呼吸」で決められていく…。「金融マフィア」などという言い方もされるが…。

 ※ そういう「構造」の中で、重大決定の前に「そっと耳打ちされる」立場にあるのか、「事前に何も知らされず、不意打ち食らう」立場にあるのか…、などということが「その国の行く末を」大きく左右していく…。

『経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が閉幕した。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長らがインフレ退治の決意を示して話題を集めた同会議だが、トップ同士が腹のうちを明かすインナーサークルの集まりである側面を持つ。日銀の黒田東彦総裁に目立った発言はなかったが、その存在感は国際社会でも際立つ。来春以降に想定される日銀新体制は黒田氏が築いた国際人脈を継承できるかも焦点となる。

ジャクソンホール会議は1982年から始まり、毎年夏に開かれている。米カンザスシティー連邦準備銀行が主催するシンポジウムで中央銀行関係者や経済学者らが参加し、世界経済や金融政策を議論する。新型コロナウイルスの影響で2020、21年はオンライン開催となったが、3年ぶりに対面での開催となった。

「(インフレ退治を)やり遂げるまでやり続けなければならない」(パウエル氏)、「インフレ抑制には犠牲がつきもの」(欧州中央銀行=ECBのシュナーベル専務理事)。各中銀トップの利上げを巡る発言が注目を集める一方、黒田氏は従来の大規模緩和の必要性を強調するにとどめた。

表向き目立った発言はなく、随行したのも秘書らごく一部の職員だけ。来年4月に任期を迎える総裁として最後の出席になるであろう会合は比較的ひっそりと、目立たぬかたちで幕を閉じたように見えた。

それでも「今回の会議は収穫が多かった」。多くの日銀関係者は口をそろえる。それはジャクソンホールのもう一つの顔が理由だ。各国中銀トップが講演やシンポジウムで市場へ強いメッセージを打ち出す側面が注目されるが、各国中銀トップがインナーの場で決して表に出さない本音を交わしている。

異次元緩和を維持する日銀だが、利上げという出口戦略を将来にわたり全く念頭に置いていないわけではない。金融政策で他の主要中銀との違いが鮮明になっても、各国のインフレ対応は今後の政策運営を考える上で重要情報となるのは間違いない。

財務官、アジア開発銀行(ADB)総裁を歴任した黒田氏の国際的な知名度は高い。それに加え、10年目に入った日銀総裁在任期間は今の主要中銀の中で群を抜く。

7月にイエレン米財務長官が来日した際も、財務相会談の前にひそかに黒田氏と面会したとされる。日銀関係者は「(黒田氏は)独自の人脈で海外の高官と直接会い、頻繁に意見を交わしている」と明かす。

他国から日銀の金融政策に干渉する向きはほとんどみられない。「ミスタークロダ」の存在感は依然として大きく、「国際的な会合では他国の中銀関係者が黒田氏のもとにあいさつに訪れるカリスマ的存在だ」(日銀関係者)。

残り任期が半年余りとなった黒田氏だが、今から利上げに踏み切ると見る声は市場でも少なくなりつつある。市場の視線が徐々にポスト黒田へ移るなか、ある日銀OBは「異次元緩和は永遠に続けられるものではない。5年のうちには正常化が求められる。次の総裁は火中のくりを拾うようなものだ」との見方を示す。

金融政策を講じる上で国際社会の置かれた情勢を迅速に、正確に把握できる主要中銀のインナーの地位を築いたのは黒田氏の力が大きい。異次元緩和を維持するにしろ、出口を模索するにせよ、次期正副総裁は黒田氏に匹敵するだけの国際人脈を備えることができるかも試されることになる。

(小野沢健一)

【関連記事】

・ジャクソンホール、素顔の交流に意義 3年ぶり対面開催
・米欧中銀、インフレ阻止へ覚悟 ジャクソンホール閉幕

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ひとこと解説

一般論として、日銀総裁は海外の政策当局者と堂々とわたりあえる人物が望ましい。日本の金融政策は、日本だけで鎖国的に完結する事柄ではない。経済がグローバル化しており、かつ金融市場の影響力が以前にも増して大きくなっている中で、日本にとってベストの政策の道筋を探るべく、記事にあるような非公式ベースのものも含めてさまざまな情報を入手した上で、政策運営に生かしていく必要がある。そうした金融政策のプロとしての資質に加え、日銀という大きな会社組織のトップとしての統率力・指導力、国会における参考人質疑を無難にこなすことなどができるコミュニケーション能力なども要求されてくる。次期総裁の人選に、市場は注目している。
2022年9月2日 9:08 』

円、対ドルで138円台に下落 1カ月ぶり円安水準

円、対ドルで138円台に下落 1カ月ぶり円安水準
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2908Y0Z20C22A8000000/

『29日午前の外国為替市場で円が対ドルで一時1ドル=138円台に下落した。138円台は7月21日以来およそ1カ月ぶり。25~27日に米国で開いた経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で米連邦準備理事会(FRB)が市場の想定以上の金融引き締めを続ける姿勢を示した一方、日銀の黒田東彦総裁は大規模な金融緩和を続けると表明した。日米金利差の拡大を見込んだ円売り・ドル買いが膨らんだ。

前週末26日のニューヨーク市場では137円60~70銭で取引を終えていた。週内には8月の米雇用統計など重要指標の発表も控えており、神経質な動きが続くとの見方が多い。7月14日に付けた直近安値の1ドル=139円38銭が節目として意識されそうだ。

ジャクソンホール会議でFRBのパウエル議長は高インフレの抑制について「やり遂げるまでやり続けなければならない」と発言した。米金利先物相場の値動きから利上げ確率を算出する「Fedウオッチ」によると、9月20~21日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.75%の利上げに動く確率が6割と最も高くなっている。8月中旬には0.50%の利上げ見通しが最も多かったが、FRBが急激な利上げを続けるとの見方が改めて強まっている。

【関連記事】

・FRBと市場、「ジャクソンホール」でさようなら
・日経平均、大幅反落 一時2万8000円割れ 』

日本政策投資銀行

日本政策投資銀行
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%94%BF%E7%AD%96%E6%8A%95%E8%B3%87%E9%8A%80%E8%A1%8C

『株式会社日本政策投資銀行(にっぽんせいさくとうしぎんこう、英称:Development Bank of Japan Inc.、略称:DBJ、または政投銀)は、株式会社日本政策投資銀行法に基づき設立された、財務省所管の特殊会社、日本の政策金融機関である。

前身は、復興金融金庫、日本開発銀行、北海道東北開発公庫、(旧)日本政策投資銀行であり、今日は民営化されている。 同じく2008年10月1日に設立された株式会社日本政策金融公庫(JFC、旧・国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫)とは、全く別の法人である。 』

『概要

旧本店ビル

出資と融資を一体的に行う手法その他高度な金融上の手法を用いることにより、長期の事業資金に係る投融資機能を発揮し、長期の事業資金を必要とする顧客に対する資金供給の円滑化及び金融機能の高度化に寄与することを事業目的とする[1][注 2]。 資金の流れを「官から民」に移し経済を活性化する政策金融改革の一環で、2008年(平成20年)10月1日に、特殊法人の日本政策投資銀行(旧DBJ)を解散し、特殊会社たる株式会社日本政策投資銀行(新DBJ)として新たに発足した(旧DBJの全財産の出資により新DBJが設立され、新DBJ設立と同時に旧DBJは割当を受けた新DBJ全株式を政府に無償譲渡し、旧DBJは解散)。

旧日本政策投資銀行との差異

資金調達において、預金の受け入れや民間企業からの借り入れが可能となった。

完全民営化

当初は、2012年(平成24年)~2014年(平成26年)を目途に、日本国政府保有株式の全てを処分し完全民営化する予定であった。しかし2008年(平成20年)からの世界金融危機および、2011年(平成23年)に発生した東日本大震災の災害復旧に対応するため、政策金融機関に対する日本国政府の関与を維持する方向での見直しが行われた。

まず、2009年の株式会社日本政策投資銀行法の一部を改正する法律(平成21年法律第67号)により、完全民営化の時期が2012年(平成24年)4月1日から5~7年後に延期された。その後、2011年(平成23年)に施行された東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律(平成23年法律第40号)において、2015年(平成27年)4月1日から5~7年後を目途に完全民営化するものとされた。また、政府は、2014年度(平成26年度)末を目途として、日本国政府による株式保有のありかたを含めたDBJの組織等を見直すこととなり、それまでの間、DBJの株式を処分しないと定められている[2]。

ただし、簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律(平成十八年法律第四十七号)六条により「日本政策投資銀行は、完全民営化するもの」とされており、同法を所管する内閣官房では定期的に同銀行に対するヒアリングを実施している。 』

『業務内容

投融資一体型の特色ある金融サービスを提供している。

融資部門:中長期融資、仕組み金融(ストラクチャードファイナンス等)、劣後融資等の提供
    評価認証型融資(DBJ環境格付、DBJ BCM格付、DBJ健康経営格付)
    DBJ Green Building認証
投資部門:リスクマネー(メザニンファイナンス、エクイティ)の提供
コンサルティング/アドバイザリー部門:仕組み金融のアレンジャー、M&Aのアドバイザー、産業調査機能や環境・技術評価等のノウハウの提供

平成27年DBJ法改正により、危機対応業務が義務付けられ、特定投資業務が創設された。

プロジェクト・ファイナンス、PFI、事業再生、ベンチャー、産学官連携、国際協力、社会・環境活動など、政策性が高いプロジェクトを支援するための融資や投資が基本となる。また、旧北海道東北開発公庫の業務を引き継いでいる経緯より、投融資枠の一部が「北東枠」として設けられ、主に北海道・東北地域への投融資に向けられている。[要出典]

投融資例

1998年 中山共同発電株式会社 - 日本初のプロジェクトファイナンス(旧三和銀行と共同幹事)
2002年 株式会社ダイエー - 当時の主力取引行などと共に「企業債権ファンド」を組織し、100億円の融資を実行する。
2003年 株式会社ペンシル - 知的財産権担保融資として、ポータルサイト「髪ナビ!」[1]を担保とする日本初の融資を受ける。
2010年 不動産市場安定化ファンドに対するメザニンローン 』

『沿革
組織の変遷

1947年(昭和22年)1月 - 復興金融金庫設立。初代理事長に伊藤謙二が就任[3][4]。
1951年(昭和26年)4月20日 - 日本開発銀行法(1951年3月31日公布、1952年1月16日全面施行)に基づき、当時の大蔵大臣・池田勇人によって日本開発銀行が設立される。復興金融金庫(1951年12月26日復興金融金庫解散・業務引継令公布(政令))の貸付債権を承継(池田勇人#講和・独立後の政権運営)。5月15日開業。開銀は恒常的に外債を発行した。
1952年(昭和27年)8月30日 - 電源開発に49億5000万円出資。9月14日見返資金特別会計の債権を承継(8月30日同政令公布)。
1954年(昭和29年)4月15日 - 日本航空のチェース・ナショナル銀行からの借入れを外貨保証。
1956年(昭和31年)6月 - 北海道開発公庫法に基づき、北海道開発公庫が設立される。
1957年(昭和32年) - 法改正により、北海道開発公庫から北海道東北開発公庫に改組。
1967年(昭和42年)2月1日 - 日産自動車に40億円を貸付、体制金融の第1号。

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1999年(平成11年)
    6月11日 - 日本政策投資銀行法(平成11年法律第73号)公布。同日施行。
    10月1日 - 日本開発銀行及び北海道東北開発公庫の一切の権利義務を承継し、日本政策投資銀行設立(これに伴い日本開発銀行及び北海道東北開発公庫がそれぞれ解散)。
2007年(平成19年)6月13日 - 株式会社日本政策投資銀行法(平成19年法律第85号)公布。同日施行。
2008年(平成20年)
    10月1日 - 特殊法人の日本政策投資銀行を解散し、特殊会社たる株式会社日本政策投資銀行設立。
    12月 - シンガポール事務所を現地法人化し、DBJ Singapore Limited設立。
2009年(平成21年)6月 - ロンドン事務所を現地法人化し、DBJ Europe Limited設立。
2012年(平成24年) - 大手町フィナンシャルシティ完成に伴い、本店移転。

拠点・関連
拠点

本店(東京)
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岡山事務所
松山事務所
大分事務所
ニューヨーク駐在員事務所

関係会社

連結子会社

株式会社日本経済研究所
株式会社価値総合研究所
DBJ証券株式会社
DBJ事業投資株式会社
DBJキャピタル株式会社
DBJアセットマネジメント株式会社
DBJ Singapore Limited(シンガポール)
DBJ Europe Limited(ロンドン)
DBJ投資アドバイザリー株式会社
DBJリアルエステート株式会社
政投銀投資諮詢(北京)有限公司

その他11社。

持分法適用関連会社

その他20社。

関連財団

一般財団法人日本経済研究所 』

(※ その他は、省略。)

中国が円を売る日 幻の日中「国債持ち合い」

中国が円を売る日 幻の日中「国債持ち合い」
経済部長 高橋哲史
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA232OP0T20C22A8000000/

 ※ なるほど、「中国が、日本国債をどれくらい保有するつもりなのか。」ということも、日本の金融政策に影響を与える「ファクター(要素)」の一つなのか…。

 ※ 次の視点は、「その要素が、どれくらい”円高(or 円安)”に影響を与え得るのか」ということだな…。

 ※ そういう「影響度」を、「定量的」に判定できる「方程式」みたいなものは、確立されているのだろうか…。

 ※ 最近読んだ「地政学」の文献に、「国力の方程式」というものが載っていた…。

 ※ 『クラインの方程式は、次のとおりである。

 国力=((基本指標:人口+領土)+経済力+軍事力)×(戦略目的+国家意思)

  (注)国家意思=戦略目的を遂行する意思』…、というものだ。

『いま振り返れば、日本と中国の金融協力が最もうまくいっていた時期かもしれない。

「円高が加速する局面では、日本国債への投資を減らす」。10年前の2012年3月、中国人民銀行(中央銀行)の易綱副総裁(現総裁)は記者会見でこう語った。

いまと違い、日本経済が1ドル=80円前後の超円高にもがいていたときである。

欧州の債務危機でユーロの先行きが懸念され、円に買いが集まっていた。中国も日本国債への投資を増やしているのではないか。そんな観測が絶えないなかで、易氏の発言は飛び出した。

円高を抑えたい日本にとって助け舟になったのは言うまでもない。「日本側は中国からの投資が多すぎ、円相場の上昇につながることを非常に心配している」。易氏はこう述べ、日本に配慮する姿勢をにじませた。

伏線は、3カ月前の11年12月に訪中した当時の野田佳彦首相と、中国の温家宝首相が合意した「国債の持ち合い」にあった。

中国では外国当局が国債を買う場合、人民銀の許可を取らなければならない。中国側が日本に中国国債の購入を認め、日中それぞれが互いの国債を保有する。そんな枠組みは両国の金融協力が新たな段階に入る象徴となるはずだった。

十年一昔である。

日本による中国国債の購入は12年9月の尖閣諸島の国有化で暗礁に乗り上げ、いまだ実現していない。今年9月の国交正常化50周年を前に日中は互いに不信を募らせ、国債の持ち合いを再び前に進めようという機運はない。

ペロシ米下院議長が8月初めに台湾を訪問し、それに怒った中国は台湾周辺で大規模な軍事演習を実施した。中国軍が発射したミサイルは日本の排他的経済水域(EEZ)内にも落ち、日中間にはかつてない緊張が漂う。

秋葉剛男国家安全保障局長と中国外交トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員は17日、中国の天津で7時間にわたって会談した。

岸田文雄首相と習近平(シー・ジンピン)国家主席の首脳対話も議題になったもようだが、実現へのハードルは高い。5年に一度の共産党大会を秋に控える習氏は、米国と歩調を合わせて台湾への関与を強める日本に弱腰を見せられない。

10年前と変わらないのは、中国がなお日本国債を買っているとみられる点だ。21年末の保有額はおよそ24兆円で、前年に比べ5割増えた。

米中対立が激しさを増すなか、中国はドルに偏った外貨準備の運用先を他の通貨に振り分けている。中国からみて、日本国債は有力な選択肢の一つだ。

日本の普通国債の発行残高は1000兆円の大台に迫る。国債の安定消化を考えれば、中国を含む買い手の裾野が広がるのは必ずしも悪い話ではない。

だが、中国にとって日本国債の保有は、日本に圧力をかける手段にもなり得る。実際、10年に尖閣沖で海上保安庁の巡視船と中国漁船の衝突事件が起きたときは、中国政府内から「日本国債を買い増し、円高に誘導すべきだ」との声が公然と上がった。

いまなら、中国は日本国債の売却をちらつかせるだけで、急激な円安を誘えるだろう。国債の持ち合いで合意した10年前と違って、中国が日本に配慮する理由は見あたらない。

巨額の借金は日本の「弱点」に映る。中国に隙を見せないためにも、財政がいま以上に悪化するのを防ぐ努力が欠かせない。
経済部長(経済・社会保障グループ長) 高橋哲史
大蔵省(現・財務省)を振り出しに霞が関の経済官庁や首相官邸、自民党、日銀などを取材。中国に返還される前の香港での2年間を含め、計10年以上に及ぶ中華圏での駐在経験をもつ。2017年4月からは中国総局長として北京を拠点に中国の変化を報じ、21年4月に帰国した。
日本経済新聞 経済・社会保障Twitter https://twitter.com/nikkei_keizai
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

一般的に金融協力といえば、金融の安定を図るために、助け合う行為。東アジアのスワップ協定はその一例。しかし、日中の間では、ほんとうの金融協力がほとんど行われていない。かつて、中国経済と金融が弱かった時代、中国の金融関係者は日本に来て、不良債権の処理などについて学んでいたが、中国経済は日本を追い抜いてから、彼らはもっぱらウォール街をみている。今、米中対立が激化しているから、一時的に日本にアプローチしている
2022年8月25日 8:37 』

中国の銀行の怪しい動き

中国の銀行の怪しい動き
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/29458798.html

 ※ みずほの話しは、たぶん、お上からの「指導」が入ったんだろう…。

 ※ マネロン対策なんだろう…。

 ※ そうやって、「頻繫に、本人確認してくれ。」ということなんだろう…。

 ※ この頃じゃ、「会社の役員は、されていませんか?(インサイダー取引対策)」「「政府系法人の役員は、されていませんか?」なんてことまで聞かれるぜ…。

 ※ 「自分の金」を送金したり、引き落としたりするのにだ…。

 ※ なんか、「確認書」みたいな書類を作っていた節(フシ)もあったな…。

『私は、銀行口座の一つを、みずほ銀行に持っているのですが、正確に何年前か確認できないのですが、突然口座の一回の送金の上限を、設定していた500万から50万に下げられました。口座を新規に作った場合は、仮の設定として50万が適用されるのですが、申請する事で上限を上げる事ができます。既に、一回申請を出していて、500万に設定していたわけです。

それが、メールで通知が来て、一度、一律で50万に戻すので、不都合がある人は、再申請してくれという内容の案内があり、実際に、こちらの都合に関係無く50万に下げられたのですね。この上限を上げる手続きというのは、申請者の居住確認を含む、そこそこ手間のかかる手続きが必要で、書類のやりとりも含めて、2週間程度かかります。みずほ銀行と言えば、システム・トラブルを何回も起こしているので、某かのトラブルが起きた時の被害を抑える為に、送金の上限を一律で抑えて、申請があった人だけ元に戻す事をしているのかなと疑いました。

銀行が個人の口座に対して、一律で何かをする場合、背後には何かしらの銀行の都合の問題があります。単にセキュリティー上の確認を改めてしたいという場合もありますが(いわゆる持ち主から忘れられている口座や、持ち主が死亡して放置されている口座は、多いのでリスクを最小にする為に上記の事を行う場合もある)、深刻な理由が隠れている場合もあります。

そして、中国の銀行で、法人口座を含む、大量の口座を凍結するという事件が置きました。全ての銀行ではなく、シンセンなどの一部の銀行です。個人口座でも問題ですが、取引や決済に使用している法人口座まで凍結されるとなると、これは大問題です。その理由は、公安部からの要求で、凍結したと銀行は説明しています。そして、公安部は、オレオレ詐欺のような犯罪を防止する為に、口座を凍結したと説明しています。つまり、一律に口座を凍結して、必要としている人から申請して、口座を再開する事で、犯罪のリスクを減らす為の処置だというわけです。

しかし、巷で噂されているのは、「銀行に資金が無くなったので、流動的な資金の流れを止める為に、一律の口座凍結をしたのではないか」と言われています。このブログでも、複数回記事にしましたが、中国の地方銀行で、8000億円の資金が消失して、口座が機能しなくなり、政府が立て替えるという対策が取られました。まぁ、預金者保護は、法律でうたっている義務なのですが、法律で決まっていても、実行されるか判らないのが中国社会です。恐らく、3000人の人々が立ち上がって、デモを起こし、話題にならなかったら、何もされなかったと思われます。

つまり、経営がうまくいっていない銀行は、実際に増えていて、預金者の払い戻しに応じる能力が疑われているという事ですね。これが、信用不安につながって、「取り敢えず、預金をおろして、手元に現金として措いておこう」となると、いわゆる取り付け騒ぎになります。銀行は、預かった資金を金利をつけて貸し出す事で、利益をあげてますから、実際、一斉に預金をおろされた場合、どんな銀行でも現金が足らなくなります。つまり、銀行の運営を信じて、常に預けられた金額が流動的な資金を上回っていないと、銀行は破産します。信用不安が一番怖いので、政府が上限付きの預金者保護などの保証を付けているわけです。取り付け騒ぎが拡大すると、金融システムが維持できなくなります。

詐欺犯罪対策で、法人口座まで凍結するのは、意味が判らないですし、個人でも銀行口座と紐づいた決済サービスを利用している場合、いきなり支払いができなくなるので、大問題です。特に、海外旅行などに出ていて、口座が凍結されたら、身動きが取れなくなります。どう考えても、公安部の言っている理由は、影響と天秤にかけた場合、対策として、おかしいですね。』

ビットコインが有価証券化されたらどうなる?今後の影響について解説!

ビットコインが有価証券化されたらどうなる?今後の影響について解説!
https://zuu.co.jp/media/cryptocurrency/valuable-papers

 ※ 仮想通貨の取引を勧める記述や、オススメの取引所に関する記述、ビットコインは今後も高値を維持するだろうという記述なんかは、カットした…。

 ※ まあ、「参考」程度に読んでくれ。

『2017年あたりから多くの人たちに認知されてきた仮想通貨。その後、取引所のセキュリティをめぐる事故などにより下火となっていましたが、コロナ禍における各国の金融緩和などの影響により、再び注目が集まっています。

今回は、今後の仮想通貨の価値に大きく影響を与える「仮想通貨の有価証券化」の動向について解説していきます。また、仮想通貨と有価証券との違いをはじめ、有価証券化された場合の影響についても説明します。

仮想通貨は有価証券として認められる?

仮想通貨は当初、一部のITに精通している人々にのみ熱狂的に受け入れられ、一般の人々からは、その将来性や安全性が疑問視されていました。ただ、今では一般の人々にもその有用性が浸透しつつあり、有価証券として認めるべきだという議論が日本だけでなく、世界中でされています。ここからは、仮想通貨は本当に有価証券として認められるのか、についてみていきましょう。

仮想通貨と有価証券の違いとは

仮想通貨とは、電子データのみでやりとりされる通貨のことを言います。インターネットを通じて不特定多数の間で取引される商品やサービスの売買で使用でき、換金も可能です。仮想通貨の種類は、年々増加傾向にあり、代表的なものとして「ビットコイン」や「イーサリアム」「リップル」などが挙げられます。

仮想通貨は大きく以下の2種類に分けられます。

仮想通貨は大きく2種類に分けられる

ビットコイン
ビットコイン以外=アルトコイン

ビットコインは世界的な認知度も高く、多くの投資家に信頼されている仮想通貨です。一方、ビットコイン以外の仮想通貨、イーサリアムやリップルはアルトコインと呼ばれています。

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リップルの最新ニュースを紹介!今後の価格はどう動く?

仮想通貨を有価証券として認可?アメリカの動向

ここ数年、仮想通貨を有価証券として認めるべきという論争は世界中でされていますが、どの国においてもまだ仮想通貨を有価証券として認めている国はありません。

ここからは、世界の中でも先進的な動きを見せているアメリカの規制ルールについてみていきましょう。

  1. 米証券取引委員会(SEC)

米証券取引委員会は証券の取引を監視し監督するアメリカの組織で、Securities and Exchange Commission(SEC)と呼ばれます。そのSECにて、2018年11月、仮想通貨の調達方法であるICO(※注)を有価証券とみなし、規制する方向であることを発表しました。

ICOによって新規に公開された仮想通貨は「トークン」と呼ばれ、これらのトークンに対して、先見性を持った投資家が購入(出資)を行います。これが株式を使用した資金調達方法とかなり類似していることから、SECは仮想通貨を有価証券としてみなすべきだという見解を示しているのです。

※注)ICO(イニシャルコインオファリング)。新規通貨公開。株式で言うところのIPO(株式公開)とほぼ同義。

  1. 米国商品先物取引委員会(CFTC)

CFTCは2017年7月に仮想通貨「ビットコイン」の先物取引を認可しました。これがビットコインをコモディティ(商品)として判断したということで話題となりました。CFTCで取引されているコモディティは、以下です。

CFTCで取引されているコモディティ

エネルギー(ガス・原油)
貴金属(金、銀、プラチナなど)
穀物(小麦、大豆、とうもろこしなど)
非鉄金属(アルミ、銅など)

これまでは目に見える実物の資産のみがコモディティに該当していましたので、ビットコインのような目に見えない商品を取引対象としたことは、とても革新的な動きでした。

  1. 米国連邦地方裁判所

米国商品先物取引委員会(CFTC)はビットコインを含む仮想通貨は商品であり、監視下に置くべきだという主張をしています。この主張と合わせて、米国連邦地方裁判所でも同様に「仮想通貨はコモディティ(商品)である」という判決を下しました。

このようにアメリカでは、仮想通貨を有価証券として定める方向で準備が進んでいます。
ビットコインをはじめとした仮想通貨が有価証券として認められれば、株式のように証券取引所に上場させる動きも活発になるでしょう。そして、今以上に多くの投資家から注目を集め盛んに取引されることになるでしょう。また、アメリカに比べてスローペースな日本国内においても、アメリカでの動向はかなり大きな影響を与えることから、今後の動きに注目が集まります。

仮想通貨と有価証券の大きな違いとは?

2021年4月現在、日本国内においても仮想通貨は有価証券として認められていません。ここからは、仮想通貨と有価証券が具体的にどのように違うのかについて詳しくみていきましょう。

仮想通貨と有価証券の違い

仮想通貨:雑所得扱い

有価証券:財産として価値があると証明されるもの
 例)株式、国債、債券、手形、小切手

雑所得である「仮想通貨」は、課税の対象です。通常利益額の3割、場合によっては半分以上の金額を税金として支払わなければいけないことから、他の投資と比較して不利になることが多いとされています。特に日本の場合は累進課税のため、利益額が大きければ大きいほど支払う税金の額は増えていきます。

一方、有価証券は「財産権を示す証券」のことで以下の3種類に分類されます。

有価証券の種類

貨幣証券:手形・小切手・運送証券など、金銭と引き換えられる証券のこと

物財証券:商品券や船荷証券、証拠証券など、一定のサービスを受ける権利を有する証券のこと

資本証券:資本提供者の権利を表す証券のことをいい、株式や債券、投資信託など受益証券がある

資本証券は課税対象となっていますが、雑所得よりも税金はかなり抑えられているのが特徴です。株式に関しては、所得税15.315%と住民税5%の税金を納めることになっているので、仮想通貨よりもかなり節税できることがわかります。このため、投資家たちの間では仮想通貨を有価証券化すべきだという意見が多く出ており、議論がされているのです。

仮想通貨「リップル」に見る有価証券との違い

有価証券化問題で大きく打撃を受けているのが、仮想通貨の中でも世界的認知度の高い「リップル」です。証券に該当する可能性が、とても高い仮想通貨を独占的に販売したことで1,300億円の売り上げを出していたため、米国証券取引委員会(SEC)から提訴されています。

しかしリップル社は「有価証券に該当しない」と一貫して主張し、証券としてみなされることに強い危機感を表しているようです。その理由は、以下が考えられます。

リップルが証券ではないと主張する理由

規制当局の監督下に置かれることで規制が強化される
ICO(イニシャルコインオファリング)が作りづらくなる
仮想通貨取引所で取引しづらくなる

規制当局の監督下に置かれることで規制が強化される

様々な規制が強化されることで、今までのような柔軟かつ自由な取引ができなくなることを懸念していると言われています。特に取引ルールが厳格化されることで、ICO(イニシャルコインオファリング)での資金調達が難しくなると考えられており、企業にとっては死活問題ともなりかねません。

ICO(イニシャルコインオファリング)が作りづらくなる

仮想通貨が有価証券として取引されることで、管轄元から認可されていない仮想通貨取引所では取り扱うことができなくなります。

仮想通貨取引所で取引しづらくなる

仮想通貨が有価証券化された場合、証券取引所でしか取引ができなくなります。現状、仮想通貨取引所は24時間365日営業しているため、いつでもどこでも好きなタイミングで取引ができます。一方、証券取引所は限られた営業時間のなかでの取引となるため取引時間が限られてしまい、売買のチャンスを逃してしまうことも大いに考えられるのです。

上記3つの理由からリップル社は仮想通貨・リップルの有価証券化に対して前向きな姿勢を示していないのです。

金融庁が「有価証券ではない」と発言

リップルの証券化問題で話題となっている最中、日本の金融庁は2021年1月に「リップル社の仮想通貨XRPは有価証券に該当しない」という書面を世界に向けて発表しました。金融庁がXRP問題に関して法的な見地からコメントを発表したのは初めてだったことから、業界内外でもかなり話題となりました。

金融庁の発表を受け、国内大手の暗号資産取引所を運営するSBIホールディングス代表取締役の北尾氏は「日本の金融庁はXRPが証券でないことを明言しています。SBIホールディングスは引き続きRippleの確固たるパートナーとして、共にアジアで事業拡大に取り組みます」と発言しています。金融庁や大手企業の取締役の発言が今後アメリカでの訴訟問題に大きく関わってくると世界中から注目が集まっているのです。

ビットコインの今後の扱いはどう変わる?

ビットコインは仮想通貨の代表的な通貨として知られており、一度は耳にしたことがあるという方がほとんどでしょう。様々な仮想通貨が発行されていますが、ビットコインは常に時価総額首位をキープしてきました。ここからはそんなビットコインの有価証券化に向けての動きや今後の動向について解説していきます。

今後有価証券化される可能性はかなり大きい

ビットコインは、仮想通貨の中でもシェア率が最も高いこともあり、有価証券化がかなり有力とされています。しかし、2019年にはアメリカのSECが「ビットコインは有価証券でない」と見解を示しました。

この見解には明確な規制や法的拘束力があるわけではありませんが、SECがこのような考えを明確に示したことは世界に大きな影響を与えたのです。しかし、今後先進国で仮想通貨の有価証券化の流れが加速していけば、ビットコインに関しても同様の動きがあることでしょう。

仮想通貨の今後に注目が集まる

ビットコインをはじめとした仮想通貨の有価証券化について解説してきました。アメリカ国内では現在も議論がされていますが、アメリカの規制が世界に大きな影響を与えることは間違いありません。今後も最新の動向に注視しながら、上手に仮想通貨と付き合っていきましょう。

暗号資産(仮想通貨)と有価証券の関係に関するQ&A
 
Q. 暗号資産(仮想通貨)は有価証券ですか?

A:2021年現在、有価証券に暗号資産を含めている国はありません。
ここ数年、世界中で”暗号資産を有価証券とすべきか否か”が議論されています。
特にアメリカからは有価証券と認める方向性が見受けられます。
 
Q. 暗号資産(仮想通貨)と有価証券の違いは何ですか?

A:税法上の違いが大きく、暗号資産は雑所得としての課税対象です。

有価証券も課税対象ですが、雑所得と比較するとかなり低い税率です。
暗号資産に係る税率は約30%、場合により50%以上です。
株式の場合は税率が約20%なので、暗号資産と有価証券における税率の差はとても大きいです。
 
Q. 暗号資産(仮想通貨)は将来、有価証券とみなされる可能性がありますか?

A:現在は暗号資産を有価証券としている国はありませんが、将来的には認められる可能性があります。
特にビットコイン は暗号資産の中でも占有率が高く、有価証券化が有力視されれいます。
SEC(米証券取引委員会)の見解は「暗号資産を有価証券とみなすべき」というのも見逃せません。

CFTC(米国商品先物取引委員会)はビットコインの先物取引を許可し、米国連邦地方裁判所は「暗号資産は商品である」との判決を出しました。

日本はアメリカに比べ動きが遅い点は否めませんが、アメリカの動向に影響を受けると思われます。
 
NET MONEY, 編集部
著者 NETMONEY(ネットマネー)編集部 』

デジタル円、23年度にも実験最終段階 決済効率に期待

デジタル円、23年度にも実験最終段階 決済効率に期待
解剖フィンテック 攻防CBDC(3)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB171UR0X10C22A7000000/

『クレジットカードで最長1カ月程度かかっていたお店への着金期間がゼロに――。中央銀行デジタル通貨(CBDC)を使う世界では、お店で買い物をするとき、現金と同じように支払いと同時に着金できる。決済効率が上がり、お店側の資金の流動性が高まる。利用者にとっても送金などの費用が安くなることが期待できる。

新興国だけでなく、欧米も導入にアクセルを踏み始めたCBDC。日銀も現在、実証実験を進めている。第1フェーズでは発行や流通といった基本的な機能を検証し、4月に始まった第2フェーズでは自動送金予約などのサービスが機能するか検証する。早ければ来年度にも、民間事業者や消費者らが参加する最後の第3フェーズに入る。

日銀はCBDCについて、全ての機能を中銀が提供するのではなく、中銀と民間による「二層構造」を想定する。日銀は現金のやりとりを電子に置き換え、インフラ部分を整備する。一方、預金口座の管理や決済などは民間が主導権を握る見通しで、クレジットカードや「○○ペイ」などを介して買い物をする今の構図と大きく変わらない。

CBDC導入の利点の一つは決済の効率化だ。各中銀は、現金と同じ機能をデジタルで実現することを狙いとしており、買い物時に即時着金できるシステムをつくる。即時着金ならお店側に売掛金が発生せず、資金の流動性が高まる。決済効率化以外にも、民間主導でイノベーションが進めば生体認証で決済ができる未来も開ける。

特定のプログラムを組み込む「プログラマブル」な決済機能も整備されるとみられる。商品が納入された時点で自動的に決済が完了したり、電気自動車(EV)の充電ができるようになったりする仕組みも想定される。

もっとも、CBDCの導入はまだ決まってはいない。「改めて申し上げるが、日銀はCBDCを発行するか否かについて、決定していない」。4月、CBDCの官民協議会の冒頭、日銀の内田真一理事は強調した。

「CBDCを発行するとすれば」「CBDCが存在する、あるいは存在しない決済システムの将来像」――。いずれも内田理事がこれまでの協議会で掲げた講演タイトルだ。「最近、新たな日銀文学が生まれたんです」。出席したマネーフォワードの瀧俊雄フィンテック研究所長はこう話す。景気や物価の判断を示す際に日銀が用いる難解な表現になぞらえた。

2021年の日本のキャッシュレス比率は3割で、5割前後かそれ以上の海外に見劣りする。高齢者らを中心に現金信仰はいまだ根強い。CBDCは年齢や国籍、性別を問わず利用できるが、過度な匿名性を与えればマネーロンダリング(資金洗浄)や脱税などを助長しかねない。

そんななか、世界各国が導入に向けた動きを速めている。中国のデジタル人民元や暗号資産が国内で大々的に流通する事態になれば、日本の通貨の影響力は大きく低下する。「CBDCの導入には通貨主権を維持し、日本にとって望ましい通貨体制を維持する目的もある」。自民党のデジタルマネー推進PTで座長を務めた村井英樹首相補佐官は指摘する。

村井氏は「第2フェーズが終わりに近づく22年末ごろには日本版CBDCの姿が見え始める」と語る。最大の課題は国民合意を得ることだ。法改正やシステム整備にも時間がかかり、政府が導入を正式に決めても「実際の導入には少なくとも数年かかる」(日銀関係者)。

貝や石から金属、紙へと通貨は時代に応じてその姿を変えてきた。デジタル化の進展に伴い、通貨がデジタルに移行するのは歴史の必然ともいえる。CBDCが普及する未来はゆっくりと、しかし着実に近づいている。

(三島大地)』

円相場 一時130円台に値上がり 約2か月ぶり

円相場 一時130円台に値上がり 約2か月ぶり
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220802/k10013747221000.html

『2日の東京外国為替市場、円相場は1円以上値上がりして、およそ2か月ぶりに、1ドル=130円台をつけました。アメリカの景気減速への懸念に加えて、ペロシ下院議長が台湾を訪問する見通しだと伝わったことで今後、米中の対立が強まるという懸念も投資家の間で高まり、ドルを売って円を買う動きが強まっています。』

みずほ銀行の教訓に学ぶ、KDDI障害再発防止策の焦点は「レジリエンス」

みずほ銀行の教訓に学ぶ、KDDI障害再発防止策の焦点は「レジリエンス」
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02152/072700002/

『後編

中田 敦、金子 寛人、高槻 芳、山端 宏実
日経クロステック/日経コンピュータ
堀越 功
日経クロステック

大規模通信障害の発生を受けてKDDIは2022年7月28日にも総務省へ報告書を提出する。報告書の焦点は、実効性の高い再発防止策を打ち出せるかどうかだ。一連のシステム障害を起こしたみずほ銀行も再発防止策を策定し、取り組みを進めている。緊急座談会の後編では、みずほ銀行の教訓から学ぶKDDIの再発防止策のポイントを探る。(司会は堀越 功=日経クロステック)

前編はこちら https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02152/072600001/?i_cid=nbpnxt_sied_blogcard 

大規模障害を起こしたKDDIとみずほ銀行、運用体制の弱さに共通点

 KDDIとみずほ銀行のシステム障害に共通点はあるのか。KDDIが再発防止策を準備する中、みずほ銀行の事例から学べる教訓は何か。みずほ銀行とKDDIの障害を追ってきた日経クロステックの記者が集まり、緊…

2022/07/27

KDDIの通信障害が大規模化、長期化した理由として、昔と比べてモバイルネットワークが複雑になっている点が指摘されています。

日経クロステック高槻 芳: KDDIの通信障害は、制御信号と呼ばれる電話システム特有のトラフィックが、加入者データベース(DB)に集中したことが原因の一つです。モバイルネットワークでは、同期コミュニケーションである音声通話を必ずつながるようにするために、実際の音声データだけでなくさまざまな制御信号がやりとりされます。

 現在のモバイルネットワークは、IP網上でこのような音声通話の仕組みを再現している状態です。Webシステムなどと比べて、非常に複雑なトランザクション処理が必要になる点が違います。わずかなボタンの掛け違いで、雪だるまのように制御信号が増えてしまい、アクセスが集中する「輻輳(ふくそう)」状態に陥ります。

 金融システムもトランザクション処理があります。しかしモバイルネットワークの場合、数百万、数千万という規模で制御信号がやりとりされます。ここは少し特殊な部分だと思います。

通信会社が恐れる重大トラブル「輻輳」とは、KDDIの大規模障害で注目

 KDDIの携帯電話サービスで2022年7月2日未明から発生した大規模な通信障害。きっかけは機器交換のトラブルによるわずか15分間の音声通話の不通だったが、その対処中に発生した「輻輳(ふくそう)」によ…

2022/07/08

みずほ銀行のシステム障害も、DBに起因するトランザクションのエラーが原因の1つでした。

日経クロステック中田 敦:みずほ銀行の2021年2月28日のシステム障害は、DB周辺のトラブルが原因でした。定期預金システムで使っていたDBが、大量のトランザクションを処理できる設定になっていませんでした。

 定期預金システムのDBが処理できなくなったことで、その影響がメインフレームで稼働しているDBに波及し、エラーが起きました。エラーを抑えるために、メインフレームのDBへのトランザクションを絞る機構が働き、その影響でATMからのトランザクション処理が失敗して、ATMが通帳やカードを飲み込んだという流れになります。

 みずほ銀行の定期預金システムのDBは富士通製で、メインフレームのDBは日本IBM製でした。そのため定期預金システムを見ている担当者は、メインフレームにエラーが波及している状況を把握していませんでした。連鎖障害の影響を見極められなかった点が、システム障害を長引かせた大きな原因になっています。

 なお今回のKDDI通信障害では、「DBが輻輳」という表現が普通に使われている点に、違和感があります。情報システムの場合、「トランザクションがどれくらい失敗したのか」「レスポンスタイムがどれくらい遅くなったのか」「同時接続数をどれくらい減らしたのか」といった言葉で説明します。「DBが輻輳」では、何も語っていないのと同じです。

みずほ銀行システム障害を悪化させた、「エラー設計」と運用のミスを解説

 みずほ銀行で2021年2月28日に発生したシステム障害では、勘定系システム「MINORI」のサブシステムで発生したエラーがシステムの中枢に波及し、トラブルの範囲が拡大した。なぜエラーは連鎖したのか。…

2021/07/06

KDDIの通信障害は、利用者への周知が十分ではなかったという指摘があります。

日経クロステック金子 寛人: KDDIが通信障害発生後、最初に会見した際の高橋誠社長の対応について、ネットでは「社長なのにきちんと説明できている」という称賛の声があがりました。これはKDDIの実務担当者が障害の初動段階で、一般の利用者に対してどのような問題が起きているのか、きちんと説明できていなかったことの裏返しではないでしょうか。

 通信障害を起こしたKDDIは、総務省から「もっと顧客目線で情報開示すべきだ」という指摘を受けました。KDDIはその後、1時間ごとに情報を開示するように改めました。

 顧客目線で情報開示するという方向性は間違っていません。ただし1時間ごとに情報を小出しにするだけでは、利用者の不安はいつまでたっても消えません。もっと利用者の不安を解消するような情報開示の仕方があったのではないでしょうか。

 例えば「Wi-Fiのような代替手段があります」とか「Wi-Fiに接続すれば、対話アプリを使って音声通話ができます」など、利用者の目線に立った情報開示の方法はいろいろあったと思います。

KDDI通信障害の周知・広報が悪評を買った訳、解釈できず利用者に混乱を招く

 KDDIが2022年7月2~4日に起こした大規模通信障害を巡っては、利用者への周知・広報がまずかったとの指摘が多く出ている。金子恭之総務相も7月5日の記者会見で同社の周知・広報に苦言を呈した。とはい…

2022/07/20 』

『KDDIが「復旧作業が終わった」と公表後も、利用者レベルではつながらないケースがありました。

金子:KDDIの中では、復旧作業が終わったという意味での「復旧」と、利用者のレベルで使えるようになる意味での「回復」を使い分けていたと思います。しかし一般の利用者には、「復旧」と「回復」の違いがまったく伝わらず、混乱が生じました。

 やはり利用者目線で、技術を翻訳できる存在を常日ごろから育てていく必要があります。そうしなければ、このような緊急事態時に、人材育成ができていない点が明らかになってしまうでしょう。

みずほ銀行のシステム障害でも、顧客への情報開示が課題でした。

日経クロステック山端 宏実:みずほ銀行の2021年2月28日のシステム障害は日曜日に発生し、営業店に行員がいませんでした。その結果、カードや通帳をATMに取り込まれた利用者が立ち往生するという被害をもたらしました。

 みずほ銀行側で障害規模を的確につかめなかったため、営業店への行員の出勤指示が遅れました。結果的に行員への出勤指示が出たのは、障害発生から4時間以上が経過した同日午後2時25分以降です。

 広報が中心となって対応していたホームページ上の告知についても、部門間のやりとりに手間取り遅れました。対外告知を開始したのはシステム障害が発生してから3時間以上も後でした。

 みずほ銀行は、システム面に加え顧客への情報開示方法を含めて、再発防止策を策定しています。しかし先に触れたように、みずほ銀行は現在、経過観察期間のような位置づけです。実効性が担保できるような形で再発防止策が進んでいるのか、まだ検証できていません。

システム障害の警告を見落とした、みずほ銀行の組織的欠陥

 みずほ銀行で2021年2月28日に起きたシステム障害では、運用担当部門が警告を見逃したりエラーを適切に分析できなかったりした結果、トラブルが拡大した。運用担当者は貧弱なツールしか与えられず、電話や口…

2021/07/12

みずほ銀行は2022年1月に再発防止策を出しました。どのような内容でしょうか。

中田:細かい項目がずらりと並んでいます。

 みずほ銀行は2002年と2011年にも大きなシステム障害を起こしました。この2つのシステム障害は原因が明確で、やるべきことがはっきりしていました。例えば2011年のシステム障害は、勘定系システムの老朽化が大きな原因でした。再発防止策として、勘定系システムの刷新を進めるというシナリオを描けました。

 これに対し、今回のケースでは細かな原因が山程あります。全体像をつかむことは困難です。システム運用は、細かい点の積み重ねであることの裏返しかもしれません。

山端:みずほ銀行が10回以上起こしたシステム障害の技術的な共通原因を、誰もが探したくなります。しかし実際には見つけられず、その結果として企業風土の問題を指摘する声があります。再発防止策には、風土改革のためのさまざまな施策も含まれています。

中田:みずほ銀行の企業風土の問題にばかり耳目が集まっている点について、個人的にはあまりよくないと思っています。技術的な原因をきちんと指摘できないため、社風にその答えを求めているように見えるからです。

 経営者が心を入れ替えたり、社風を改めたりするだけで、システム障害がなくなることはありません。技術的な原因があるからこそシステム障害が起きます。その点を正しく修正しない限り、システム障害は続きます。

 KDDIの再発防止策においても、社風に原因を求めるのではなく、技術的な対策をきちんと示してほしいです。システム障害は必ず起きます。そこからどう素早く回復するのかがポイントです。レジリエンス(復元力)を高めることが重要になります。

みずほ銀行システム障害再発防止策の実像、DB統一や人材育成で安定稼働は成るか

 みずほ銀行はシステム障害の連鎖を止められるのか――。同行は現在、勘定系システム「MINORI」の安定稼働対策の見直しを進めている。MINORIのハードウエアは更新時期が近づいているため、それに合わせ…

2022/03/09

KDDIが近く公表を予定する報告書について、どのような内容を期待しますか。

高槻:トラブルは起きるという前提に立ち、総合的なシステムアーキテクチャーをいかに描くのかがポイントになると思います。報告書には、障害の原因や経緯が書いてあるだけではなく、それに対してレジリエンスを高める方策や、障害が起こることを前提にどのように対応するのかまで踏み込んだ内容を期待します。

 先ほど、モバイルネットワークは電話システム特有の複雑さがあると指摘しました。でも通信が重要な社会インフラになった今、いつまでも「特殊だ、複雑だ」とは言っていられないでしょう。利用者の目線に立った、普通の会社として説明をしてほしいところです。

山端:システム障害としては、東京証券取引所(東証)も2020年に、全銘柄の終日売買停止という障害を起こしました。

 東証は現在、米Google(グーグル)が提唱するシステム安定稼働の方法論「SRE(Site Reliability Engineering)」を踏まえて取り組みを進めています。例えば、障害対応の専門チームをつくったり、専門チームが扱う新たなシステムを構築したりしようとしています。

 新たなシステムでは、どこに障害が起きているのかを把握するだけでなく、障害によってどのようなサービスが影響を受ける可能性があるかを直感的に見られるようにしていきます。東証ではこのシステムを、業務部門の人でも見られるようにし、部門間の情報共有のタイムラグをなくすようにしていく計画です。

 東証はこれまで「ネバーストップ」というキーワードを掲げてシステム運用してきました。今後はこれに加えて「レジリエンス」も両立していくとしています。「ネバーストップ」と「レジリエンス」を両立する組織や仕組みをどのようにつくるのか。KDDIやみずほ銀行にとっても、東証の事例は参考になると思います。

東証・次期arrowheadの全貌、新方針レジリエンス確保へ3つの「秘策」

 東京証券取引所は2024年度後半をめどに、株式売買システム「arrowhead」を刷新する。2020年10月1日に発生したシステム障害による全銘柄の終日売買停止を受けて、「レジリエンス(復元力)」の…

2022/07/25

金子:航空業界では10年ほど前、米Boeing(ボーイング)の中型機「787」のトラブル多発を受けて、世界で同機が運航停止になったことがあります。この時、日本航空(JAL)のパイロットが「どんな機器であっても壊れるリスクを完全にゼロにすることはできない。ただ壊れ方にも、よい壊れ方と悪い壊れ方がある。『壊れました』とメッセージを出し、他のシステムに迷惑を掛けないよう静かに壊れるのがあるべき姿だ」と話したことを覚えています。

 みなさんが指摘する通り、システム障害はなくなりません。障害が起きた時に、いかに影響を最小化できるのか。壊れることを前提に、素早く回復するような仕組みが必要になります。

 加入者に黒電話をレンタルしていた電電公社の時代とは異なり、多種多様なデバイスがネットワークにつながるようになりました。通信事業者はすべてのデバイスをコントロールできません。それを前提に、いかにネットワークを維持管理していくのか。報告書ではそのような道筋を示してほしいです。

 KDDI自身、もはや社会インフラを担う大事な会社です。これまでの通信業界とはフェーズが変わっていることを意識しながら、再発防止策をつくってほしいです。

中田:KDDIは今回の教訓を、日本のインターネット技術者のミーティングである「JANOG」などでオープンに話をしてほしいです。2022年7月に開催されたJANOGのミーティングでも、携帯電話事業者のシステム運用監視におけるシステムインテグレーター依存が課題として取り上げられていたそうです。これが通信業界全体の課題だとしたら、業界全体で改善してほしいです。

 さらにはKDDI自身が、今回の通信障害についてのポストモーテム(事後検証)を書き、広く公開していくことも期待しています。』

外為14時 円、買い一巡 135円台半ば

外為14時 円、買い一巡 135円台半ば 米長期金利の低下が一服
https://www.nikkei.com/article/DGXZASS0IMF05_Y2A720C2000000/

『28日午後の東京外国為替市場で、円買いの勢いが一巡している。円相場は14時時点で1ドル=135円43~45銭と前日17時時点と比べて1円54銭の円高・ドル安だった。日本時間28日午後の取引で米長期金利の低下が一服し、円買い・ドル売りの勢いが弱まった。日経平均株価が底堅く推移しているのも「低リスク通貨」とされる円の上値を抑え、相場は膠着感を強めている。

〔日経QUICKニュース(NQN)〕

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https://www.nikkei.com/r123/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZASS0IMF05_Y2A720C2000000&n_cid=DSPRM1AR08 』

海外ヘッジファンド、日銀砲の前に討ち死にか?

海外ヘッジファンド、日銀砲の前に討ち死にか? : 机上空間
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/29283078.html

『今回の記事ですが、経済というのは、誰であれ断言できるようなモノでは無いので、傍証からの判断という事になります。なので、必ずしも正しいと言い張るつもりは、微塵もありません。ただし、一つの山は越えて、自信満々に海外ヘッジファンドの勝利を語っていた、経済アナリストも、見方を変えたようです。

——— 引用 ———-
債券は大幅高、長期金利が0.2%割れ-日銀の定例オペは無難通過

債券相場は大幅高。長期金利は0.2%を割り込んでいる。前週末に米長期金利が大幅低下した流れを引き継ぎ買いが優勢だ。日本銀行が先物決済に使われるチーペスト(受け渡し適格最割安)銘柄を含む指し値オペを継続しているのに加え、定例の国債買い入れオペを無難に通過したことも相場の支えとなっている。

SMBC日興証券の奥村任金利ストラテジストは、長期金利の低下について「イールドカーブコントロール(YCC)スペキュレーションで366回債を売った海外勢が買い戻しを迫られ、それにカレント債も引っ張られる状況だ」と指摘。海外金利低下など外部環境も日銀に正常化を迫る状況にはなく、「日銀と市場との攻防は終わった」との見方を示した。この日の定例オペは、無難な結果だったとした。
———- 引用 ———-

今後、敗戦処理として、日本国債で売りを仕掛けた海外ヘッジファンドは、買い戻しを強制的に迫れる事になります。つい、2週間前までは、まるで痙攣でも起きたかのように、薄商いの時を狙って、日本国債が売られていました。売り崩しを狙った仕掛けなのですが、これが瞬時に買い戻されて、0.25%の金利に戻されるという攻防が続いていました。ものすごいのは、その資金です。一回の攻防での日本国債の上下動で、10兆円の資金が飛び交いました。

こうした海外ヘッジファンドの経済攻撃は、過去にも数回あり、日銀が全勝しています。理屈では、通貨発行権を持つ日銀は、いくらでも通貨を発行できるので、勝てるわけが無いのですが、日本の財政が借金依存になっているので、取れる方策が固定されている上に、昨今の日本以外の主要国の政策金利の利上げもあり、恐らくは今回は勝てると踏んでいたものと思われます。実際、かなり厳しい戦いだった事は想像できます。何しろ、あのスイスですから、自国の通貨であるスイス・フランの金利を17年振りに上げたのです。そして、つい先日、EUはゼロ金利政策を捨てて、0.5%の大幅利上げを行いました。

つまり、周りから見れば、「そのうち日本も政策金利の利上げをするはずだ。仕掛けておけば、雪崩のように金融防衛が崩れて、大儲けができる」絶好のカモだったわけです。数ヶ月で10円以上も円安に動いた、昨今の事情は、もちろん、周辺の主要国が政策金利をインフレ対策で上げたという事が大きいですが、実は日本国債に売り圧力をかけていた海外ヘッジファンドの資金も関係しています。日銀は、発行した国債を買取る事で、金利を0.25%以下に固定する指値オペをしているので、売り圧力が高まれば、円を発行して、国債を日銀が買い取るしかないのです。理屈では、無限に買い取れますが、円の価値は希釈される為、その分価値が低下する事になります。

海外ヘッジファンドが国に勝てるはずが無いと思うのは、昨今では当てはまりません。彼らの資金源は、中東の石油王だったり、国が資産運用する資金だったり、国際的な大企業の資金運用部門だったりするので、動かす金も兆単位/社だったりします。もちろん、それだけの大資金を運用しているところは、限られますが、徒党を組んで挑めば、例え国と言えど食いつぶされます。実際、EUが結成される前のイギリスのポンドは、世界三大投資家の一人であるジョージ・ソロス氏のポンド売りの仕掛けによって、「女王陛下の金庫番」と言われていたイングランド銀行を破産させ、当時の貨幣価値で1500億ドルの利益を叩き出しています。イギリスは、通貨の防衛に失敗したのです。

これも、EUによる通貨統合の前で、国民の意志とは別に、ユーロへの通貨統合に参加する気があった当時の政府が、ポンドの価値を保つ為に、通貨防衛に多額の資金を投入して、それが限界に来ていたのが原因です。もちろん、そんな事はイギリス政府は、一言も言っていませんが、虚勢を張っているのが、ソロス氏にバレて、彼単独で2兆円規模のポンド売りを仕掛けられたのです。彼が動いた事で、市場はポンド売り一色になり、ついにイングランド銀行は破産し、ポンドの価値は下落しました。まぁ、結果的に、国民投票で、ポンドはユーロに統合されない事になり、通貨の独立性は保たれたので、まったく無駄な努力をしていた弱みを突かれた形になります。

このように、通貨発行権を持つ国と言えど、財政が極端に歪になると、海外ヘッジファンドの攻撃対象となり、必ず勝てるとは限らないのです。まだ、完全に油断はできませんが、海外ヘッジファンドが、折れた心を持ち直すのは、容易では無いでしょう。』

景気優先、日銀動かず 為替対応「合理的でない」

景気優先、日銀動かず 為替対応「合理的でない」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB214ZV0R20C22A7000000/

『日銀の黒田東彦総裁が利上げを強く否定したのは、金融緩和で新型コロナウイルス禍からの回復途上にある日本経済を支えるためだ。黒田総裁は21日の金融政策決定会合後の記者会見で円安に懸念を示す一方、為替対応での利上げは「合理的でない」と述べた。企業収益向上と賃上げの好循環につながるまで大規模緩和を続ける。

【関連記事】

・日銀総裁、利上げ「全くない」 物価見通し2.3%に
・海外中銀は大幅利上げが主流 FRB0.75%、カナダは1%

21日の会合後の外国為替市場で円相場は一時1ドル=138円台後半をつけた。市場には円安の背景として、利上げに動く米国との金融政策の違いを指摘する声がある。黒田総裁は「(指摘は)事実だと思うが絶対的なものではない」とし、「金利格差が拡大していない英国や韓国でも(対ドルで通貨価値が)大きく下落している」と述べた。

利上げによる円安抑制策についても、「少し金利を上げても円安が止まることは到底考えられない。大きな引き上げは経済にダメージとなる」と否定的な見解を示した。
金融政策決定会合を終え、記者会見する日銀の黒田総裁(21日、日銀本店)=代表撮影

日銀は今回、22年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率見通しを2.3%に引き上げた。政府・日銀が掲げる2%の物価目標に1年を通じて達することを認めた形だが、「企業収益が伸び、賃金が上昇するなかで物価も上昇する好循環になっていない」とし、大規模緩和の必要性を強調した。

国内の賃上げ状況には「賃金上昇が進んでいることは事実だが、物価上昇に追いついていない」との見方を示した。大規模緩和によって「経済が拡大し企業収益が増え、労働需給がよりタイトになっていく」ことが、もう1段階の賃金上昇につながるとの姿勢だ。

ウクライナ危機が続くなか、エネルギー価格の高騰で高インフレにあえぐ欧米を中心に金融引き締めの動きが広がる。世界銀行は6月、22年の世界経済の実質成長率を2.9%と前回1月から1.2ポイント下方修正し、世界的な景気後退リスクが懸念されている。

黒田総裁は欧米の経済状況について「ある程度減速することはあり得る」としながらも、「リセッション(景気後退)やスタグフレーション(景気悪化とインフレの併存)になることを考える必要は今のところない」との見方を示した。

コロナの感染再拡大については「非常に心配している。感染が拡大しており、注意しないといけない」とした。日銀は感染拡大が本格化し始めた20年3月の決定会合以降、企業の資金繰り支援策を順次拡充してきた。今回の会合では9月末に終了を予定する中小企業向けの資金繰り支援策について打ち切りの是非を議論したが、「(終了して)中小の資金繰りに影響が出ると困る。9月に決定する」とし、結論を先送りした。

【関連記事】

・ECBが11年ぶり利上げ、幅0.5% マイナス金利解除
・日銀総裁の会見要旨「国債買い入れ増は一時的」

多様な観点からニュースを考える

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

円安を止めるために金融引き締めに転じることを、黒田総裁は全否定して見せた。この点についてのみ言えば、妥当な結論だろう。為替相場変動=日本経済ではない。利上げが波及することによる中小企業などの金利コスト増は、国内景気にとりネガティブである。ユーロ圏が0.5%ポイント幅、米国が0.75%ポイント幅で利上げしている場面で、日本がたとえばマイナス金利を解除して0.1%ポイント幅で利上げしても、多勢に無勢。この程度の利上げでは不十分だと、思惑的な円売りをかえって多く呼び込んでしまう可能性もある。また、日本では為替政策は政府(財務省)の所管である。この点の認識がマスコミも含めて十分浸透していない感もある。
2022年7月22日 7:49
柯 隆のアバター
柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

どの国でも同じだが、中央銀行の役割は通貨価値の安定。円が1ドル=140円に迫る水準を考えれば、明らかに行き過ぎた円安といえる。それは日本の輸出製造業にとって朗報かも

しれないが、輸入業者にとって想像以上のコスト増になっている。今の日本経済の実態を踏まえれば、ゼロ金利を続けた場合のメリットとデメリットを比較して、デメリットのほうが大きいのは一目瞭然。そもそもゼロ金利政策の目的はデフレ脱却だったが、今の日本経済はインフレの渦のなかにある。
2022年7月22日 8:26 』

「長期視点で経済改革」 米識者に聞く安倍氏の功績

「長期視点で経済改革」 米識者に聞く安倍氏の功績
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN08FIA0Y2A700C2000000/

 ※ アベノミクスの「三本の矢」とは、

 1、長期金利の引き下げ(金融政策 → お金を借りやすくして、経済活動を活性化する)

 2、成長が見込まれる分野に、公共事業予算を厚く配分する(財政政策 → 民間が参入して来やすくして、新規事業の立ち上げを促進する)

 3、構造改革(これまでのしがらみ・行きがかりから、ガチガチの規制がなされているものを、「規制緩和」して、新規事業が可能なようにする)

 という構想だった…。

 しかし、現実には

 1 → 日銀が頑張って、「異次元緩和」を続けたが、「マイナス成長」からの「脱却」が、精一杯のところで、「リフレ(2%程度の物価上昇)」状態までには、もっていけなかった…。そこへ持って来て、ウクライナ事態に起因するエネルギー価格・食料価格の上昇が襲って来て、海外中央銀行との「金利差」に起因する「円安」も重なって、「悪いインフレ」に見舞われそうになっている…。

 2 → 最初のうちこそ、それなりに「予算が潤沢についた」が、いつのまにか「尻すぼみ」になって、「元の木阿弥」の「均衡・緊縮」財政に戻ってしまった…。
 財務省の「財政健全化にも、ご配慮願います。」の声が、通ったんだろう…。

 3 → 「規制緩和」の意欲はあったが、現実には困難だった…。

 幼保一体化(幼稚園は、文科省管轄で、保育園は厚労省管轄というのを止めて、一元化した仕組みを作る)、獣医師をもっと増やす(加計学園スキャンダルで、ポシャった)、諸悪の根源とされる電波免許制に入札制度を導入するべく「電波オークション」を実施する案も、いつの間にか尻すぼみとなった…。
 菅さんが、強力に旗を振った、「ケータイ・スマホ料金値下げ」がやや実現したくらいか…。
 カジノを含むIRも、ワイロ取った国会議員が出たりして、世論の非難を浴びた…。
 
 まあ、そういう感じか…。

『8日に死去した安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」の評価について、米国の識者に聞いた。

高い伝達能力で国民に安心感

日本経済に詳しいコロンビア大のデービッド・ワインスタイン教授

デービッド・ワインスタイン氏(コロンビア大教授)

「アベノミクス」を非常に効果的な政策にした理由のひとつに、安倍晋三元首相の伝達能力がある。3つの目標を明確にし、日本の抱える問題をあぶりだすとともに、道筋を明示することで国民にある種の楽観を与えた。安倍氏は多くの卓越した経済学者と交流し、自身が学び、政策に生かした。アベノミクスは単なるスローガンではなく、注意深い経済的な分析から生まれた。

金融政策について、日本はデフレの収束へ対策が打てていないと批判されてきた。安倍氏が2度目の首相に就任後すぐ、日銀総裁に黒田東彦氏を指名したことは重要な分岐点だ。期待通りの物価上昇率とはならなかったが、長年苦しんできたマイナス圏からは抜け出した。

財政政策については消費税の扱いも含め非常に難しいかじ取りを迫られた。財政危機を懸念する声も上がったが、そうならなかった。3本目の矢(成長戦略)は最も重要かつ難しい目標だった。構造改革はひとつの政策では終わらないからだ。女性活躍が経済を活性化させる「ウーマノミクス」は機能したと思う。内閣にも多くの女性を起用した。

初めて安倍氏と面会したのは、1度目の首相辞任後すぐだったと記憶している。うまく物事を回せなかったことを振り返る率直さに驚いた。次はもっとよい仕事をしようと学んでいた。

第2次政権下で面会した際、安倍氏は「いかに迅速に国を変えられるかには限界がある」と打ち明けた。改革を推し進めたいが、急ぎすぎることもできない。選挙で負けてしまうからだ。彼は一夜にして日本を変えるのではなく、規制改革などを通じて長期視点で変えたいと考えた。

安倍氏がいなくなることは、海外の投資家に大きな影響は及ぼさないとみている。既に首相の座を退いており、安倍氏の政策による恩恵を享受しているためだ。日本の政治が世界各国と比べて極めて安定していることも理解している。

今の日本を取り巻く環境は安倍氏の首相在任中と大きく変わった。深刻なエネルギー危機に見舞われている。安倍政権時代、経済安全保障は今ほど重要な問題ではなかった。ロシアや中国、北朝鮮と日本の近隣諸国の環境は厳しさを増す。こうした課題への対処が岸田文雄政権の重要な部分を占めるだろう。

(聞き手はニューヨーク=大島有美子)

【関連記事】「日米同盟を強固に」 米識者に聞く安倍氏の功績

自由貿易の推進、日本への認識変えた

ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長

アダム・ポーゼン氏(米ピーターソン国際経済研究所所長)

アベノミクスは実に画期的な政策だった。安倍氏は民主的に選ばれた指導者が多様な利害関係者に対し短期的に反応するのではなく、長期的な視点に立って政策を展開することで再選を勝ち取れることを実証した。人々の日本に対する認識も変わった。米国や英国など他の高所得の民主主義国家が外に目を向けることで何が可能かを示したという意味でも、並外れた変化をもたらした。

人口減の問題を抱える日本にとって、女性の才能を生かし、労働参加を進める「ウーマノミクス」は最良の方法だった。包括的・先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)を通じて農業をはじめとする産業を開放し、日本が他国との結びつきを強めたのも大きな成果だ。経済外交では米国との同盟関係を強化しつつ、中国とも経済的に敵対することがないようにする強力なリバランスに動いた。

積極的な財政・金融政策でデフレから(物価が上昇に向かう)リフレに導くというコミットメントもあった。これは完全に成功したとは言いがたい。ただ、もしそれまでと同じ政策を続けていれば日本経済はもっと悪くなっていただろう。安倍政権時に進んだ円安については、日本の物価上昇や経済に与える影響は小さく、それは今の円安局面でも証明されている。

安倍氏の死去で影響が大きいのは金融政策だろう。首相在任時は黒田東彦総裁と関係を築き、首相辞任後も緩和姿勢を後押ししてきたが、黒田氏は来春に退任する。岸田文雄首相は新しい総裁や政策委員を任命する際に金融政策の方向性を変えるチャンスを持つが、あまり極端に政策を変えるべきではない。日銀が今の政策を続ければ、おそらく日本は2%のインフレ目標を達成できるだろう。

財政政策はあまり変わらないとみるが、変化は可能だ。米国ではケネディ大統領が暗殺されたあと、後任のジョンソン大統領は積極的な財政政策や公民権政策をとり、自らの政治課題を推進した。

安倍政権以後のここ10年を振り返ると、日本の経済状況は他の先進国と比べ良かった。国内総生産(GDP)の変動は小さく、失業率は低く、デフレは進まなかった。ただ改善の余地も大いにある。働く女性をさらに平等にし、日本への海外投資を増やし、企業統治を改善する。CPTPPで他国をリードし、留学生や外国人労働者の受け入れも進めるべきだ。

(聞き手はニューヨーク=斉藤雄太)

女性の地位向上、政策で道筋

サード・アロー・ストラテジーズ創業者のトレイシー・ゴパール氏

トレイシー・ゴパール氏(コンサルタント会社サード・アロー・ストラテジーズ創業者) 日本の企業統治やダイバーシティー(多様性)向上のために私が代表を務める団体は、安倍晋三元首相が進めた経済政策の柱である「3本の矢」にあやかって名付けた。サード・アロー(3番目の矢)の中心は女性の地位向上だ。

企業の取締役や幹部への女性の登用は、2020年時点でも日本政府が定めた目標に達していない。しかし、企業の幹部や女性社員と話すたびに、日本でも着実に改革が進んでいることがわかる。日本企業のダイバーシティーは大きく改善し、ペースは年々速まっている。安倍元首相による3つの矢の政策が目標達成への道筋を作った。

ESG(環境・社会・企業統治)の向上を通じて日本企業の価値を高めようという我々の活動を説明する際には、必ず安倍氏の政策に言及する。私のライフワークは安倍氏の提唱した改革の中身を推進することで成り立っているといえる。安倍氏の政策が今も生きており、日本経済の活性化につながっていると信じている。

(聞き手はニューヨーク=伴百江)』