三菱UFJ、旧行システム完全統合に次ぐ「大手術」へ

三菱UFJ、旧行システム完全統合に次ぐ「大手術」へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC157VU0V10C23A5000000/

『三菱UFJ、旧行システム完全統合に次ぐ「大手術」へ
3メガバンクCIOに聞く(上)

勘定系システムは非競争領域――。こう言い切る銀行すら出始めたなか、3メガバンクグループは勘定系システムをどう位置付けているのか。3メガバンクの決断は、地方銀行やインターネット専業銀行のみならず金融事業を手掛ける大手IT(情報技術)ベンダーの戦略にも影響を与える。各グループの最高情報責任者(CIO)へのインタビューを通じて3メガバンクの勘定系システム戦略を明らかにし、その未来を展望する。

旧東京三菱…

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『旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行のシステムを完全統合した「Day2」以来の大手術――。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が勘定系システムの根本的な見直しに挑んでいる。「アーキテクチャ戦略」をまとめ、2022年度からの10年間で約1400億円を投じる計画だ。MUFGでグループCIOを務める越智俊城執行役常務に同戦略を進める真意を聞いた。

三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役常務グループCIOの越智俊城氏(写真:北山 宏一)

──三菱UFJ銀行を中心にシステムを抜本的に見直す「アーキテクチャ戦略」を21年から推進しています。このタイミングになった理由は何でしょう。

「私は17年にシステム企画部長に就きましたが、その頃から実はアーキテクチャ戦略という言葉が出ていました。当時は18年度に始まる中期経営計画を作るために『MUFG再創造イニシアティブ』を打ち出し、構造改革を進めていました。柱の1つがデジタライゼーションです。こうした動きをきっかけに(将来を見据えて)システムはどうあるべきか考え始めました」

MUFGのアーキテクチャ戦略のポイント

──システムのアーキテクチャーを評価した結果はどうでしたか。

「チャネル系システムと勘定系システムは密結合でメンテナンス性が悪いといった、いくつかの課題が洗い出されました。アーキテクチャ戦略はこうした課題を踏まえ、『10年先に困らないように』という方針でまとめています」

「アーキテクチャ戦略のテーマは大きく2つです。1つが堅牢(けんろう)性を維持しながら(レガシーシステムを手掛ける)人材や技術的な枯渇に対してどんな手を打っていくか。もう1つが(インターネットバンキングなどの)チャネルやアプリケーションの柔軟性や効率性をいかに高めていくかです」

──旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行のシステムを完全統合したDay2は、投資額2500億円、総工数11万人月という規模でした。22年度からの10年間で約1400億円を投じるアーキテクチャ戦略はDay2以来の規模のプロジェクトでは。

「その通りです。Day2に次ぐシステムの大手術になると考えています」

勘定系は根源的な信頼を支える

──勘定系を「非競争領域」と捉える銀行も出始めたなか、同システムをどう位置付けていますか。

「勘定系システムは頻繁に変更を加えるものではありませんが、銀行の根源的な信頼を支えている仕組みです。そこが(塩漬けで)じっとしたままだと維持できなくなってしまうため、勘定系システムをいかに守っていくかはすごく大事なことだと思っています」

「例えばメンテナンスがしやすいように複雑な構造をシンプルにしたり、メインフレーム(大型汎用機)というハードウエアだけでなく、そこで動作するソフトウエアや開発ツールを整備し続けたりする必要があります。システム全体をモダナイズ(近代化)していくことは、我々にとって非常に重要な取り組みです」

──オープン基盤やクラウドの進化が著しい状況で、システムの堅牢性を維持するメインフレームの役割は今後どのように変化するのでしょうか。

「今、メインフレームが担っているのは、高い可用性と処理能力が求められるシステムです。今まではメインフレーム上で様々なシステムが動いていましたが、今後はメインフレームが担う部分を少なくしていきます。ソースコードをスリムにするだけでなく、メインフレーム上で動作する機能そのものを限定していく想定です」

「具体的には、融資や外国為替のトランザクションを管理したり、融資の審査をしたりする機能をメインフレームの外にどんどん出して、できればオープン系サーバー上で動作するパッケージソフトに置き換えたい。一方、口座振替などはひとたびトラブルが起きると、他の処理に影響を及ぼし、大変な事態を招くため、メインフレームが必要です。顧客への影響が大きい預金や為替も同様に必要でしょう」

このままではDXの足かせに

──このタイミングでシステムを見直さないと、DX(デジタルトランスフォーメーション)の足かせになるといった危機感があったのでしょうか。

「まさに17年にアーキテクチャーを評価したとき、『足かせになる可能性がある』と書かれていました」

──アーキテクチャ戦略をまとめる段階で、勘定系システムなどの全面オープン化は選択肢にあったのでしょうか。

「選択肢として(全面オープン化を)最初から落としてはいないと聞いています。フラットに検討した結果、今の形(メインフレームとオープン基盤のハイブリッド型)に落ち着きました」

──システム内製化の動きが強まるなか、日本IBMや日立製作所を中心としたITベンダーとの関係性は今後どのように変化していきそうですか。

「これまでの歴史をひもとくと、ITベンダーとは銀行のシステムをつくってきたというよりは、ミドルウエアなどベンダーの製品も含めて一緒に開発してきたという関係でした。そこの関係性は変えたくない。一方で人的リソースの調達でベンダーに頼ってきた部分については、人材の流動化や採用難を踏まえて、自前で手掛ける部分を増やす必要があるでしょう」

=つづく

(聞き手は日経FinTech 山端宏実、日経コンピュータ 玉置亮太)

[日経コンピュータ 2023年5月11日号の記事を再構成]

越智俊城(おち・としき)氏
1991年3月一橋大学商学部卒、同年4月三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。三菱UFJニコス常務執行役員などを経て、2022年4月より三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役常務グループCIO。三菱UFJ銀行取締役常務執行役員CIOを兼務。』

野村証券福井支店が閉店、74年の歴史に幕

野村証券福井支店が閉店、74年の歴史に幕 業務提携の福井銀行へ50人出向、共同で金融商品販売
https://www.fukuishimbun.co.jp/articles/-/1783748

 ※ たぶん、こういう動きは、「全国規模」で展開されると思われる…。

 ※ 日銀の政策は、植田総裁体制になっても、「緩和基調」は続くと思われ、「利ザヤを稼ぐ」環境は、厳しいままと考えられるからだ…。

 ※ 銀行(特に、地銀)の経営環境としては…。

 ※ そうすると、「債券、証券販売」とかで稼ぐ他なく、記事にある通り、「信託・証券部門を分社化」して、証券会社と(部分)合体するのが、「解の一つ」となるからだ…。

 ※ 証券会社側も、地銀が保有している「富裕層のリスト」を利用できることになるので、ウインウインとなる…。

 ※ ただし、顧客は「リスク資産」に手を出すことになるので、その分「トラブル」も増えると思われる…。

 ※ 福井銀行の昔からの顧客が、「AT1債」の知識とか、あるのかな…。

『2023年5月13日 午後5時00分

野村証券の福井支店(福井県福井市)が5月12日、福井銀行との業務提携のため閉店した。15日からは支店社員の約50人が福井銀に出向し、共同で金融商品の勧誘や販売を行う。74年の歴史ある支店を閉じて関係を深める背景には、両社が互いの強みを生かし、「貯蓄から投資へ」のニーズを呼び込みたい思惑がある。

 野村と地銀との提携は北陸で初めて。福井銀は、会社分割の手法で投資信託や公共債などの口座を野村に承継。野村の社員を受け入れ、県内4カ所に設ける「コンサルティングプラザ」を拠点に、野村の金融商品を仲介し、勧誘からアフターフォローまでを担う。野村は、法人向け一部業務については福井市に新設する「福井法人部」に移管する。

⇒福井銀行が金融商品販売のグループ設置 組織改編と人事異動発表

 野村の福井支店開設は、東証で戦後の取引が始まった1949年(当時は福井営業所)にさかのぼる。現存する110支店のうち27番目に古く、昨年7月の会見で奥田健太郎社長は「福井県は創業者の母の出身地で、大切な地域」と思いを打ち明けた。大切な地域の看板を外して提携したのは、福井銀が抱える顧客にアクセスできる利点があったためだ。

 福井銀の2023年3月末時点の預金残高は2兆8623億円。政府が「資産所得倍増」「貯蓄から投資へ」の旗印を掲げる中、福井銀の顧客と預金は経営強化の源泉となる。野村は営業拠点が福井支店1店舗だったが、提携で4カ所に増えるメリットもある。

⇒福井銀2年ぶり増益、貸出金利息が増加 3月期決算、新幹線向け挑戦支援

 一方の福井銀は、コロナ禍もあり足元で預金が急増。銀行は預金などで集めた資金で融資を行い、利ざや(貸し出しと預金の金利差)を稼ぐのが本業。2023年3月末の貸出金利回りは15年ぶりに上昇したが、超低金利で経営を取り巻く環境が厳しい状態は依然として続いている。

 顧客が預金を投資に振り向ければ販売手数料が期待できるが「豊富な金融商品をそろえ、販売のノウハウも豊かな証券会社に地銀はかなわない。これから専門社員を育成するより、野村と手を組んで仲介手数料を受け取る形の方がいい」(関係者)というのが本音だ。

 12日の決算会見で、長谷川英一福井銀頭取は「証券会社は顧客の預金残高などが分からない中での営業だったが、銀行は重要な情報も営業拠点もある。お客さまにしっかりとした情報と商品を提供し、資産所得の倍増につなげていくのがわれわれの責務だ」と力を込めた。福井銀は2社合計の投資信託、個人向け国債、株式などの県内預かり資産残高(預金除く)を現状の約3600億円から5年後に5千億円へ引き上げる目標を立てている。』

トヨタ 車位置情報など約215万人分 外部から約10年閲覧可能に

トヨタ 車位置情報など約215万人分 外部から約10年閲覧可能に
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230512/k10014065421000.html

 ※ 今日は、こんな所で…。

 ※ 「つながる車」は、コレがあるからな…。

 ※ いや、全ての「IоT」には、コレがある…。

 ※ 君の保有しているネットワークカメラ、テレビ、冷蔵庫、エアコンなんかから、個人情報が収集されているかも、知れんのだ…。

 ※ よく、ペットの猫を飼っていて、「心配で、インターネット経由で、観察」したりしてるだろう?

 ※ ご用心、ご用心だ…。

 ※ ともかくも、「繋ぎっぱなしで、放置」は、良くない…。

 ※ 常時、「接続状態」を「可視化」して、「チェックできる」体制にしておかないと…。

 ※ それが「不可能」なら、繋がらないことだ…。

『トヨタ自動車は車とインターネットをつなぎ遠隔で車の状態を確認したり、緊急時に通報したりできるサービスで、利用者およそ215万人分の車の位置情報などが、およそ10年間にわたり外部から閲覧できる状態だったと発表しました。

トヨタ自動車によりますと、閲覧できる状態だったのは、車と外部をインターネットでつなぐことで、さまざまなサービスを提供するコネクティッドサービス「T-Connect」などの利用者の情報で、車の位置情報や時刻、それに車を識別するために割り当てられた車台番号などです。

2012年1月から2023年4月までに契約したおよそ215万人について、データを管理するクラウド環境の設定ミスのために、2013年11月から2023年4月まで、およそ10年間にわたって外部から閲覧できる状態になっていました。

会社によりますと、これまでに情報の漏えいや被害は確認されておらず、仮に漏えいしても、これらのデータのみで個人が特定されることはないとしています。

トヨタは「お客様や関係の皆さまに大変なご迷惑、ご心配をおかけすることをおわび申し上げます。従業員への教育を徹底し、再発防止に取り組みます」とコメントしています。』

郵政上場、そのスケールと稼ぐ力

郵政上場、そのスケールと稼ぐ力
https://vdata.nikkei.com/prj2/jppreport/

『 2015年10月30日 公開 2015年11月4日 更新

日本郵政グループ3社が11月4日、株式を同時上場した。持株会社の日本郵政の株式を政府が、金融子会社のゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式を日本郵政が市場に放出する親子同時上場だ。郵政民営化法が2005年に成立してから10年が経過し、ようやく上場という民営化の節目を迎えた。

 郵便、銀行、保険の事業規模はいずれも民間のライバルを大きく引き離し、総資産295兆円を誇る日本最大の企業グループだ。郵便物を中心に年間220億の荷物を運び、貯金と保険契約を合わせると200兆円を上回り日本の個人金融資産約1700兆円の1割超を握る。大型上場案件として金融市場も注目する巨大組織の実態をデータでひもとく。
日本郵政グループ

日本郵便
ゆうちょ銀行
かんぽ生命

(2015年3月期)

1,真っ赤に染まる日本地図
2,「子」頼みの収益構造
3,市場が期待する大型上場
4,赤字の郵便・物流、海外に活路

5,金融、競合より高い配当利回り
6,隠れた不動産長者
7,民営化の経緯を振り返る
8,ライバル、ヤマト社長の見方

1,真っ赤に染まる日本地図

 全国に張り巡らされた郵便局網で郵便・物流、銀行、保険のサービスを提供する日本郵政グループ。9月30日時点の郵便局2万4153局の実際の住所データをもとに、コーポレートカラーの赤い点をプロットしたのが下のイラストだ。郵便局の所在地を印すだけで詳細な日本地図が浮かび上がる。銀行最大手の三菱東京UFJ銀行の支店数とは桁違いなうえ、コンビニエンスストア最大手のセブン―イレブンをも6000店上回る。圧倒的なネットワークが郵政グループの特徴だ。

セブン-イレブンより多い郵便局

 郵便局が全国あまねく立地しているのは法律上の義務があるからだ。郵便、銀行、保険を全国一律に利用できるユニバーサルサービスを確保するため、郵政民営化法は「将来にわたり」ネットワークを維持することを求めている。

 ただ、サービス維持のコストは軽くない。総務省の審議会資料によると、郵便業務では約8割の赤字地域のコストを約2割の黒字地域の利益でまかなっている。不採算でも事業継続が義務付けられている一方、上場を機に収益重視の姿勢が今まで以上に求められる。グループ最大の特徴であるネットワークをどう収益に結びつけるのか、難しい課題と向き合うことになる。

トヨタ、日立に次ぐ従業員数

(期末従業員数と平均臨時従業員数の合計)
nikkei-ValueSearch

2,「子」頼みの収益構造

日本郵政の収益はゆうちょ・かんぽが支え

 日本郵政のオモテの顔は郵便局ネットワークだが、収益の実態は子会社の金融2社に依存している。2015年3月期で売上高に相当する日本郵政の連結経常収益14兆円あまりのうち、大半をゆうちょ銀行とかんぽ生命保険が稼ぎ出す。約4800億円の純利益も同様だ。

経常収益
純利益

日本郵便
ゆうちょ銀行
かんぽ生命
日本郵政

2011年3月期2012年3月期2013年3月期2014年3月期2015年3月期 024681012141618兆円

 グループ3社の上場後も日本郵政の100%子会社として残り続ける日本郵便は、ゆうちょ銀行とかんぽ生命から「窓口業務手数料」として毎年1兆円規模の支払いを受けている。ユニバーサルサービスの義務を負う日本郵便は高コスト体質から抜け出せず、金融2社からの手数料収入がなければ立ちゆかない。上場する金融2社にしてみれば、サービス維持のためのコスト負担が自らの成長への制約になりかねない。実質的に子が親を支える構図がいつまで続くのか、上場後の焦点のひとつだ。

上場後の株式売却はどう進む?

 11月の上場を機に日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式のそれぞれ11%が投資家に売却される。また、日本郵政は金融2社の株式の売却資金を元手に最大7309億円の自社株を政府から取得する。

 法律上は、政府が保有する日本郵政株は1/3超まで早期に売却し、日本郵政が保有する金融2社の株式は全株式の早期処分が規定されている。ただ、具体的な売却時期は定まっておらず、日本郵政は金融2社の株式を当面は50%まで段階的に売却する方針を示している。
3,市場が期待する大型上場

 同時上場の日本郵政グループ3社の売り出し価格は、いずれも仮条件の上限で決まり、投資家の期待の高さを映し出した。3社合計の資金調達額は1兆4362億円に達し、新規株式公開(IPO)では1987年上場のNTT、98年上場のNTTドコモに次ぐ歴代3位の大型上場となる。

歴代の大型上場 調達額ランキング

 もっとも、調達資金は郵政グループの成長には向かわない。日本郵政株の売却資金が政府の手に入るだけでなく、日本郵政が金融2社株の売却で得る資金も政府からの自社株取得にあてられる。将来の売り出しも含めて、市場から調達する資金の約4兆円は東日本大震災の復興財源にあてることが決まっている。

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NTT
NTTドコモ
JR東日本
JR東海
JT
06121824上場後経過年数-100-50050100150200250300350400450500株価騰落率 (%)NTTNTTドコモJR東日本JR東海JT
主な大型上場銘柄の株価推移
nikkei-ValueSearch
大型上場銘柄の上場後の株価は?

 これまでの民営化に伴う大型上場銘柄を振り返ると、NTTは上場直後こそ初値を上回って推移したものの、バブル崩壊後は水面下に沈んだ状態が続く。上場後も中長期的に好調な株価水準を維持しているJTやJR東海は、積極的な海外企業の買収やリニア中央新幹線計画など成長戦略が評価された結果と言える。日本郵政グループも国内中心の既存事業の拡大が見込みにくい中で、投資家を納得させられる成長シナリオを描けるのだろうか。
4,赤字の郵便・物流、海外に活路

 日本郵便は売上高こそヤマトホールディングスやSGホールディングスを圧倒するが、稼ぐ力は大きく見劣りする。主力である郵便・物流事業は2015年3月期が営業赤字で足を引っ張る。

 宅配便はネット通販の拡大で需要が膨らむが、競争環境が厳しくなっている。日本郵便の「ゆうパック」は積極攻勢でシェアを伸ばし、15年3月期は13.6%と前の期から1.7ポイント上昇した。取扱個数を増やすものの、運賃の下落圧力が強く、人件費をはじめとするコスト増も重しになる。ハガキや手紙といった「一般信書」を扱う郵便はユニバーサルサービスを義務付けられ、日本郵便が手がけるが減収を避けられない。カタログなどを扱う「メール便」は右肩上がりで、日本郵便は61.5%のシェアを握り強みとする。

 物流事業の成長戦略では、海外でのM&A(合併・買収)を掲げる。今年5月、豪物流大手のトール・ホールディングスを6000億円強で買収した。国内を基盤とする収益構造からの脱却が、今後の収益性を左右する。

legend
日本郵便、メール便で圧倒

5,金融、競合より高い配当利回り

 日本郵政グループの収益を支える金融事業。ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の上場時の売り出し価格はともに仮条件の上限で決まり、投資家の需要の強さを見せつけた。投資先としては競合よりも高い配当利回りが魅力の一つだが、収益力などには課題もある。
legend
ゆうちょ銀は割安な高配当銘柄 nikkei-ValueSearch
ゆうちょ銀、収益性に見劣り

 売り出し価格から算出したゆうちょ銀の時価総額は6.5兆円と、三井住友フィナンシャルグループと同水準だ。株価が割高か割安かをみるPBR(株価純資産倍率)はメガバンクよりも低く、割安感があると言える。年換算した予想配当利回りはメガバンクよりやや高い3.45%。割安感と配当で投資家を引きつける。

 課題は収益力だ。ゆうちょ銀の預金残高は177兆円と三菱UFJの153兆円(連結)を上回る規模だが、純利益額は大きく見劣りしている。その理由は資産の中身にある。

企業名 時価総額 純利益 ROE
(%) 予想利回り
(%) PBR
(倍)
ゆうちょ銀行 6.53兆円 3694億円 3.2 3.4 0.47
三菱UFJ 11.04兆円 10338億円 7.3 2.3 0.70
三井住友 6.82兆円 7536億円 9.3 3.1 0.73
みずほ 6.12兆円 6119億円 8.4 3.0 0.74

ゆうちょ銀行は売り出し価格、他社は10月28日時点の株価で計算。純利益、ROEは前期末。
ゆうちょ銀の資産の半分は国債

(2015年3月期)
nikkei-ValueSearch

資産の半分、国債が占める

 三菱UFJは資産の約4割を貸出金に振り向けているのに対し、ゆうちょ銀は資産の半分が国債を占め、貸出金はほとんどない。郵政民営化法によって貸し付けを含む新規業務への参入が制限されているためだ。当面は国債中心の運用から外国証券などに資産を分散しながら収益の積み上げを目指していくことになる。

 カギを握るのが、ゴールドマン・サックス証券や年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などから続々と引き入れている運用担当の幹部たち。その運用資金の大きさゆえに市場で「巨鯨」と呼ばれるゆうちょ銀行の一手に注目が集まっている。
安定配当のかんぽ生命だが・・・

 かんぽ生命も予想配当利回りが2%台半ばと競合に比べて相対的に高い。中期経営計画でも配当性向30~50%を目標に掲げており、安定的な配当が投資家を集めそうだ。かんぽ生命の売上高にあたる保険料収入は5.9兆円と第一生命の5.4兆円を上回る。財務の健全性を示すソルベンシーマージン比率も1644%と競合より高く、経営は安定している。

 それでも過去の契約が徐々に満了を迎え、かんぽ生命の保有契約件数は減少傾向にある。人口減少で国内市場が縮小するなか、競合の第一生命などの民間大手は海外生保の買収に打って出ている。一方、かんぽ生命は郵政民営化法の縛りで子会社保有は規制されており、急激な成長は見込みにくい。

legend
かんぽ生命は規模が大きく、配当が安定しているが・・・ nikkei-ValueSearch

企業名 時価総額 保険料収入 ROE
(%) 予想利回り
(%) PBR
(倍)
かんぽ生命 1.32兆円 5.96兆円 4.6 2.5 0.67
第一生命 2.50兆円 5.43兆円 5.2 1.7 0.68
T&D 1.09兆円 1.96兆円 8.0 1.6 0.77

かんぽ生命は売り出し価格、他社は10月28日時点の株価で計算。保険料収入、ROEは前期末。

6,隠れた不動産長者
日本郵便、メール便で圧倒 nikkei-ValueSearch
土地所有額は上場企業で6番目

 上場企業の土地保有額をランキングしたところ、日本郵政は三井不動産に次ぐ第6位にランクインした。日本郵政が保有する土地約1.5兆円のうち、大半の約1.2兆円を日本郵便が持つ。郵便事業は歴史的に鉄道輸送網に支えられていたこともあり、主要ターミナル駅前の一等地に郵便局として利用してきた優良な不動産を抱えているためだ。

 2012年に竣工した東京駅前の「JPタワー」を手始めに、日本郵政は不動産の再開発に力を入れている。15年11月には名古屋駅前に複合ビル「JPタワー名古屋」が竣工し、16年春には大型商業施設「KITTE博多」が開業予定だ。日本郵政の中期経営計画では不動産事業の収益を18年3月期に250億円へと倍増(14年3月期比)させ、安定的な収益源にする狙いがある。

7,民営化の経緯を振り返る

西室社長

 「民営化の本当の意味での第一歩がようやく始まった」。日本郵政の西室泰三社長は上場計画を発表した2014年末の記者会見でこう語った。小泉純一郎内閣のもとで郵政民営化法が成立してから10年、上場までの道のりがこれほど長引いたのは、不安定な政治情勢に翻弄されてきたためだ。紆余曲折を経た民営化の歩みを振り返る。
2001年 4月 郵政事業の民営化を持論とする小泉純一郎内閣が発足
2003年 4月 日本郵政公社が発足。初代総裁に生田正治・元商船三井会長
2005年 8月 郵政民営化法案が参院で否決、直後に小泉首相が衆院を解散。いわゆる「郵政解散」
9月 衆院選で自民党が圧勝
10月 郵政民営化法が成立
2007年 10月 日本郵政グループが発足。初代社長に西川善文・元三井住友銀行頭取
2009年 8月 衆院選で民主党が圧勝し、第1党に
9月 民主・社民・国民新党の連立内閣として鳩山由紀夫内閣が発足。民営化に反対する亀井静香氏が郵政・金融担当相として入閣
10月 民営化を巡る政府との路線対立で西川氏が辞任。後任社長に斎藤次郎・元大蔵次官
12月 日本郵政グループの株式売却凍結法が成立
2011年 3月 東日本大震災
11月 震災復興財源確保法が成立。日本郵政株式の処分が盛り込まれる
2012年 4月 改正郵政民営化法が成立。株式売却凍結法は廃止に
10月 郵便局会社と郵便事業会社が統合し、日本郵便に
12月 衆院選で自民党が圧勝
政権交代期に斎藤氏が退任し、後任社長として財務省出身の坂篤郎副社長が昇格
第2次安倍晋三内閣が発足
2013年 6月 坂氏が事実上更迭され、後任社長に西室泰三・元東芝会長が就任
2014年 12月 日本郵政がゆうちょ銀行、かんぽ生命保険を含む親子3社同時上場計画を発表
2015年 11月 日本郵政グループ3社が上場

8,ライバルはこう見る

ヤマト運輸社長
ヤマトホールディングス・山内雅喜社長

「脅威となる存在。公平公正な競争を求める」

――ライバルである日本郵便を傘下に持つ日本郵政が上場する。
「日本郵便が持つ配送網の潜在力が大きく、経営強化に動いており脅威となる存在だ。競争が厳しくなるのは当然の流れで、我々としては挑戦を受けて立つ。株式上場をきっかけにし、健全な競争環境が実現されるのであればプラスになる。株主を含め市場の目から同じようにチェックされる立場となり、社会が利便性に向かう方向でサービス提供していければ望ましい」

――上場を控えて、ハガキや手紙を届ける「信書」を扱う郵便のユニバーサルサービスに対して、9月にヤマトとしての主張を公表した。
 「全国一律のユニバーサルサービスを維持するため、固定資産税の軽減といった優遇措置は最小限であるべき。上場のタイミングで縮小されるというのであれば理解できる。郵便事業だけに限れば黒字を確保しており、赤字である貨物事業を補っている収益構造がある。ユニバーサルサービスは信書だけが対象であるはず。公平公正な競争条件(イコールフッテイング)が整ってこそ、民間事業者も含めて良い商品が生まれる」

――信書問題を巡って、「メール便」を今年3月に廃止した。
 「信書が『メール便』に交じってしまい、利用者が罰則を科されるリスクをのぞくことを優先した。個人向けをやめて、事前契約による企業向けに限定したサービスに衣替えした。個人の秘密は守られるべきであるが、デジタルでの情報のやり取りが主流になるなかで拡大解釈されている側面がある。内容ではなく、サイズなど見た目で分かる外形標準の導入を訴えてきた。今回のメール便事業の見直しは、株式上場を見すえて改めて問題を提起する狙いがあった」

――物流業界全体では輸送力不足を懸念される。
 「少子高齢化に加えて、荷物が小口化して配送頻度が増すなかで、物流業界として能力が追いつけるのかという議論がある。国内の通信業界での民営化の流れを振り返れば、社会インフラや技術が開放されて多様なサービスが生まれてきた。全国に広がる郵便局、幹線輸送網を今から築き上げるのは難しく、地方の人口密度が低いエリアで共有する考え方があってもいい」
 「破損なく、時間通りに届けるという従来通りの品質に加えて、さらに高度な輸送が競争力を左右する時代になる。金融、IT(情報技術)を組み合わせた機能を求められる。IoT(インターネット・オブ・シングス)の考え方が広がれば、モノが自動で発注・生産されて、それにあわせて部品や製品が動くようになる。国内にとどまらず、国境をまたいだ輸送網を整える必要がある。そうした面で、我々は一歩先を進んでいる」

取材・制作
牛込 俊介、森園泰寛、松本千恵、安田 翔平

データ出典
日経バリューサーチ(従業員ランキング、大型上場銘柄の株価推移、競合比較・金融編、土地所有ランキング)
野村証券(資金調達額ランキング)
その他各社資料より作成

nikkei-ValueSearch

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「年賀状じまい」働く世代の2割弱 企業でも廃止の動き

2022.12.28
日本の価格転嫁5割どまり 中小賃上げへ政府が監視強化

2023.02.08
楽天モバイル店舗2割閉鎖 契約獲得へ社員のツテ総動員

2023.01.20
かんぽ生命・日本郵便の新社長会見 「再生に全力」

2023.04.21
郵政人事、続く官僚出身者 不祥事からの立て直し途上

2023.04.19
アクセスランキング(日経電子版)
郵政社長、郵便局網「整理が必要」 統廃合の検討表明 』

日本郵政、郵便局の統廃合検討 増田社長「整理が必要」

日本郵政、郵便局の統廃合検討 増田社長「整理が必要」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA110UZ0R10C23A5000000/

『日本郵政の増田寛也社長は日本経済新聞のインタビューで、約2万4000カ所ある郵便局に関し2040年ごろをめどに「整理が必要になる」と述べた。郵便物や人口が減る中で、全国一律での提供が求められる郵便などの「ユニバーサルサービス」のあり方を模索する。
NIKKEI Financial にインタビューの詳細を掲載
日本郵政増田社長「できることはどんどんやる」
https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOUA077DQ0X00C23A4000000?s=1…

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『日本郵政は郵政民営化で07年に発足した。国内の郵便局はその際から250ほどしか減っていない。郵便物などの取扱数はインターネットの広がりなどで、ピーク時の01年度の267億通から22年度は185億通と3割減った。

日本郵便の業績も低迷する。連結営業利益はピークの19年3月期に比べ、22年3月期は19%減り、1482億円になった。

郵政民営化法は日本郵政に対し、郵便や金融について郵便局を窓口とし全国一律・同水準のユニバーサルサービスの提供を義務付けている。

地方を中心に郵便局の減少に慎重な政治圧力もあり、日本郵政は本格的な統廃合の可能性に言及してこなかった。

増田氏は抜本的な統廃合を検討する意向を示した。「銀座など都心では賃料などのコストがかなり高いところがある。地方だけでなく都心も整理しなければならない」と語った。

統廃合の時期は「40年が一つのタイミングになる」と述べ、30年代後半から本格検討が必要との認識を示した。「ユニバーサルサービスの水準は維持した上で、新たな形でサービス改善を実感してもらう」と強調した。 

コンビニエンスストアのように郵便局での物販を強化したり、自動運転やドローンなどのデジタル化で物流業務の効率を高めたりすることを想定する。店舗や銀行が少ない地域で郵便局がなくなると反発が出る可能性もある。増田氏は「政府や自治体、地域代表の政治家が議論して考えていく必要がある」と提起した。

見直し表明の背景にあるのは日本郵政グループの収益構造のいびつさだ。日本郵政の22年3月期の連結経常利益9914億円の85%はゆうちょ銀行とかんぽ生命保険によるものだ。

金融2社は日本郵便に対し、預貯金や保険販売などの業務委託費を払うほか、郵便のネットワーク維持を名目とした「交付金」を負担している。22年3月期のこれらの支払いは8000億円を超えた。

日本郵政はかんぽ商品の不適切な販売の問題などを受け、増田氏のもとで再建中だ。これまでのところ大胆なコスト削減や、新たな成長の柱の確立はできていない。

海外では物流・郵政の民営化が着実に進む例もある。独ドイツポストは民営化を経て、2000年に株式を上場した。02年には世界的な物流大手のDHLインターナショナルを完全子会社化するなどM&A(合併・買収)をテコに成長している。

日本郵政も26年3月期までの中期経営計画に戦略的なIT(情報技術)に4300億円程度、不動産に5000億円程度を投資すると盛り込んだ。M&Aなどにも最大1兆円程度を投じる方針だ。増田氏は「成長に向けては自前主義ではない」と明言し、業種を超えた提携や出資に意欲を示す。

郵政民営化から10月で16年になる。ユニバーサルサービスの一つの固定電話がかつて事業の主体だったNTTはインターネットのネットワークなどに軸足を移してきた。郵政と同様に金融で稼ぐ収益を実業に回してきた各地の農協も統廃合が進む。競争環境の変化や、人口減少を見据えた改革が日本郵政にも必要になっている。

増田氏は聖域となっていた分野の改革に着手すると踏み込んだ。実現すれば大きな転換となる。中長期の課題となるだけに改革を着実に進めるしかけも重要になる。

【関連記事】ユニバーサルサービスとは 郵政民営化法で義務付け 』

ソフトバンクG、長引くテック不況 金利上昇が追い打ち

ソフトバンクG、長引くテック不況 金利上昇が追い打ち
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB10ABE0Q3A510C2000000/

『【この記事のポイント】

・SBGの2023年3月期連結決算は厳しい内容の公算
・投資先である世界の新興企業の業績や株価低迷が重荷
・アーム上場が望み。資金調達多様化につながる可能性

ソフトバンクグループ(SBG)が11日、2023年3月期の連結決算(国際会計基準)を発表する。業績は人工知能(AI)関連の企業に投資するビジョン・ファンド事業の苦戦が続き、前の期に続いて厳しい内容だった公算が大きい。世界のス…

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『世界のスタートアップ業界はハイテク株安などが響き長期低迷しており、世界有数の投資家であるSBGも苦境が続く。決算のポイントを解説する。

孫正義会長兼社長は欠席
11日の決算記者会見は前回に続いて孫正義会長兼社長は欠席する。「金庫番」である後藤芳光最高財務責任者(CFO)が中心となり、業績や今後の経営方針を説明する。

22年4〜12月期の連結最終損益は9125億円の赤字だった。証券アナリストの業績予想の平均であるQUICKコンセンサス(5月8日時点、12社)はSBGの前期の連結最終損益を800億円程度の赤字と見込んでいる。1兆7080億円の赤字だった前の期に続き、2期連続で最終赤字とみている。国内最大の4兆9879億円の純利益を計上していた21年3月期からの落差が大きい。

業績が悪化しているのは、投資先である世界の新興企業の業績や株価が低迷しているためだ。SBGは傘下の「ビジョン・ファンド」や「ラテンアメリカ・ファンド」を通じ、世界の有力スタートアップに投資してきた。22年12月末時点での投資先数は約440銘柄にのぼる。

SBGは会計ルールに基づいて投資先企業の価値を四半期ごとに評価し直し、含み損益の増減を損益計算書に反映している。上場済みの銘柄であれば株価をもとに算定し、未上場企業であれば類似の上場企業の株価や足元の業績などを参考に評価損益をはじき出す。

アリババ株で5兆円の利益発生でも赤字予想
22年以降、急激なインフレや金利上昇の影響で世界の新興企業の業績や株価は低迷しており、SBGの業績の重荷となっている。ビジョン・ファンド事業は22年10〜12月期まで4四半期連続の赤字で、この間に計上した赤字額は合わせて約6兆2000億円にのぼった。23年1〜3月期も同事業は赤字だったとみられる。

前期にはデリバティブ(金融派生商品)取引に差し出していた中国・アリババ集団株を前倒し決済して手放すことで、総額5兆円規模で会計上の一時的な利益が発生した。この利益を加味したうえで市場が赤字を予想しているところにSBGの苦境ぶりがあらわれている。

業績悪化を受けて、SBGは財務の守りを固めている。ビジョン・ファンドを通じた新規投資はほぼ停止しており、22年10〜12月期の新規投資額は3億ドル(約400億円)と、前年同期から97%減らした。23年に入っても停止状態を続けているもようだ。

保有資産の売却や資金化も急いでおり、22年4〜12月期にはアリババ株を活用したデリバティブ取引で244億ドルを調達した。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によると、SBGは23年に入って残るアリババ株の大部分も取引に差し出し、約72億ドルを調達した。22年12月末時点で3兆円超にのぼる手元資金は、足元でさらに増えている可能性がある。

アーム上場に望み
SBGが守勢を続けるのは金利上昇が業績と資金調達の両面で重荷となっているからだ。金利上昇に伴うハイテク株安の影響で業績面はすでに苦戦が鮮明だが、足元では借り換え時の利払い負担の増加も表面化している。4月に発行した国内個人向けハイブリッド債2220億円の利率は年4.75%。前回発行した21年6月の年利より2ポイント上昇した。

成長戦略が行き詰まるなかで望みをつなぐのが、英半導体設計大手アームの新規株式公開(IPO)だ。4月末には米国市場へ上場を申請した。上場すればアリババ株に代わる主要資産となり、資金調達手段の多様化にもつながる。

多額の手元資金とアーム上場の前進により、かねて浮上しているMBO(経営陣が参加する買収)観測は現実味が増す。もっとも、実際にMBOに踏み切れば22年12月末で6兆円弱にのぼる社債の投資家が取り残されるなど、懸念材料は多い。

市場からは「社債が残る状況での株式の非公開化はクレジット評価上ネガティブとなるので、手段にかかわらず断固反対」(大和証券の大橋俊安チーフクレジットアナリスト)といった声もあがる。

SBGの経営はハイテク株の動向に左右されやすいだけに、市況が回復すれば反転攻勢の芽もみえてくる。世界最大級のベンチャーキャピタルであるSBGの戦略は今後のスタートアップ市場全体を占うことになりそうだ。

(和田大蔵)

【関連記事】

・ソフトバンクG、傘下の米ファンド売却合意近い FT報道
・ソフトバンク、生成AI活用の新会社 ChatGPT生かす
・ソフトバンクG資金調達、再び個人に傾斜 海外金利高で 』

特別永住者証提示断った在日韓国人の口座開設を銀行拒否 「外国人差別」と救済申し立て

特別永住者証提示断った在日韓国人の口座開設を銀行拒否 「外国人差別」と救済申し立て
https://news.yahoo.co.jp/articles/c60a5ef8b4d9452c8c31dad10cbfcd15e12026ab

『在日韓国人男性が大阪市内のりそな銀行支店で預金口座を開設しようとした際、本人確認のための運転免許証を提示したが特別永住者証明書を提示しなかったとして口座開設を拒否された。

 男性は3月10日、日本国内に住居がある在日外国人の口座開設に特別永住者証明書や在留カードの提示を求めるのは外国人差別だとして、日本弁護士連合会(日弁連)にりそな銀行と金融庁に対し差別的取り扱いをやめるよう警告することを求める人権救済申立書を提出した。

 申立人の男性は韓国籍の在日3世で、特別永住者の在留資格がある。男性は2021年12月、りそな銀行鶴橋支店近くの職場に勤務することになったため口座を開設しようと同支店を訪れた。書類に必要事項を記入して運転免許証を示し、韓国籍の特別永住者であると告げたところ、窓口の担当者は特別永住者証明書の提示を求めた。男性は運転免許証で本人確認をしているから特別永住者証明書を提示する必要はないと主張した。

 窓口担当者と代わった支店長は、りそな銀行の内規を示しながら日本国籍でない顧客については国籍、在留資格、在留期間を確認できる書類の提示を求めていると説明。男性は特別永住者証明書などを提示しなければ口座を開設できないというのは差別的取り扱いだとして提示を拒み、口座を開設できなかった。男性は他の2金融機関でも同様の扱いを受け、多民族共生人権教育センター(大阪市生野区)に相談して人権救済申し立てに踏み切った。

 申立書によると、りそな銀行が示した内規は「お客様の確認事項」として氏名、住所、生年月日、職業などのほか、日本国籍がない場合は国籍、在留資格、在留期間を挙げている。こうした確認事項は「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下、犯収法)に規定されているが、犯収法では日本国内に住居がある外国人の確認事項は日本人と同様と定められており、在留期間などを確認事項とする法的根拠はない。

 具体的には、確認事項の写真付き本人確認書類として、犯収法施行規則は運転免許証、パスポート、特別永住者証明書、在留カードなどを挙げていずれかの書類を提示すれば足りるとしており、運転免許証があれば特別永住者証明書などはなくてもよいとしている。』

『背景に「テロ対策」か

 ではなぜ、りそな銀行などの銀行が法的根拠のない特別永住者証明書や在留カードの提示を求めるのか。申立書は金融庁が21年2月作成の「マネロン・テロ資金供与対策ガイドラインに関するよくあるご質問」で、在留期間の定めのある外国人についてリスク低減措置として在留期間を確認するなどの顧客管理を実施する必要性を示唆しているからだと説明する。

 こうしたことから申立書は、りそな銀行が日本国内に住居がある外国人の口座開設にあたって特別永住者証明書や在留カードの提示を求めるのは不合理な外国人差別だとし、金融庁は自由権規約や人種差別撤廃条約の締約国として銀行によるこうした差別的取り扱いをやめさせる条約上の義務を負うとして、りそな銀行と金融庁に警告を出すことを求めている。

 申立人を支援する多民族共生人権教育センターの文公輝事務局長によると、1980年代まで在日外国人が口座を開設しようとした際に外国人登録証の提示を求められたが、抗議行動によって提示しなくてもよくなった。2012年の改正出入国管理法施行で外国人登録証は特別永住者証明書と在留カードに替わったが、以前と同様のことが起きたのは、外国人は犯罪リスクが高いとする差別意識が変わっていないからだと批判する。

 筆者の取材に対し、りそな銀行大阪本社は「日本国籍のない人の口座開設については在留期間などの確認のために在留カードの提示を求め、特別永住者証明書は在留期限のないことの確認のためにお願いしている」、金融庁は「本人確認事項などの調査は金融機関がリスクに応じて判断すべき事柄であり、一律に特別永住者証明書などによる確認を求めているものではない」と回答した。』

トヨタ、水素活用による福島での工場カーボンニュートラルの取り組みを加速

トヨタ、水素活用による福島での工場カーボンニュートラルの取り組みを加速
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/38917305.html

『トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は、2021年6月以降、福島県と共同で「福島発」の水素・技術を活用した新たな未来のまちづくりに向けた活動を進めています。この一環としてトヨタは、デンソーグループと連携して、工場におけるカーボンニュートラルの実現に向けて、再生可能エネルギーとあわせて水素の利活用に取り組んでいます。

このほどトヨタは、「MIRAI」のFCスタックなどを流用して、水を電気分解して水素を製造する水電解装置を新たに開発し、今後の普及促進に向けた技術実装の場として、本年3月に株式会社デンソー福島の工場(以下、デンソー福島工場)において稼働を開始します。今後、この水電解装置で製造したクリーンな水素を工場ガス炉で自家消費する「水素地産地消」モデルの構築を目指して取り組みを加速させていきます。

さらに、こうした水素利活用モデルの構築に向けた取り組み内容を広く公開し、様々な業界や地域において多くの方に仲間に加わっていただき、実装の輪を広げていきたいと考えています。
デンソー福島工場における水素利活用は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として実施します

トヨタはカーボンニュートラルの実現に貢献するために、CO2排出量の削減を目指した取り組みを進める中で、水素を重要な燃料と位置づけています。こうして、乗用・商用のトラックやバスを含めた燃料電池自動車(FCEV)だけではなく、FC定置式発電機の開発・実証運転などFC製品の普及による水素利活用の促進を目指し、水素を「つくる/はこぶ/ためる/つかう」の各領域において、様々な業界のパートナーの方々との取り組みを進めています。

これまでトヨタは、FCEVやFC定置式発電機、工場での製造時などで水素を「つかう」とともに、水素運搬のためのFCトラックの開発・製造など「はこぶ」活動を進めてきました。今回の水電解装置の開発による水素製造に加え、今後、タイでの家畜の糞尿から発生するバイオガスを活用した水素の製造に取り組むことにより、「つくる」領域での選択肢の拡大にも貢献していきたいと考えています。
水電解装置の特徴

「MIRAI」やFCバス「SORA」に搭載しているFCスタックを流用した水電解装置は、トヨタが長年にわたるFCEV開発で培ってきた技術、世界の様々な使用環境の中で蓄積してきた知見・ノウハウを活かして新開発したものです。その特徴は、以下のとおりです。

水を電気分解するスタック(水電解スタック)に使用しているセルは、2014年12月の初代「MIRAI」発売以降、700万枚以上(FCEV約2万台分)の量産・使用実績に裏付けられた高い信頼性を確保。
トヨタは、FCEV用に開発し初代MIRAI以降搭載しているスタックのセパレーターにチタンを採用し、耐食性の高いチタンの特性を活かして水電解装置に求められる耐久性の向上を追求。長期にわたり安心してお使いいただけるよう、約8万時間の稼働を経ても初期とほぼ変わらない性能維持を目指して開発。
水電解スタックの生産過程において、FCEV用FCスタックの部品及びFCスタック生産設備の90%以上の流用/共用が可能であり、これによる量産効果により、今後、普及可能なコストレベルを追求。
さらに、長年にわたるFCEV開発で培ってきた技術・知見・経験を活かすことにより開発期間の大幅な短縮が可能。

水電解装置の概要 現在の開発段階でのイメージ
外観(デンソー福島工場での設置状況)

外観(デンソー福島工場での設置状況)

水電解装置の内部構造

水電解装置の内部構造

サイズ(縦×横×高さ) 約2.3m×約5.8m×約2.8m
水素製造能力 約8kg/時間
水素製造エネルギー 53kWh/水素製造1kg
スタック種類 固体高分子形
数値は目標値であり、変更となる場合もあります。
水電解装置の構成

水電解装置の構成

スタックの使い方 : 燃料電池(FC)と水電解

スタックの使い方 : 燃料電池(FC)と水電解

トヨタは、この水電解装置に搭載しているスタックなどを、3月15日(水)~17日(金)に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催される「FC EXPO(水素・燃料電池展)」に出展します。

以上 』

みずほ・LINEの新銀行 なぜ開業断念?

みずほ・LINEの新銀行 なぜ開業断念?
イチからわかる金融ニュース
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB313OI0R30C23A3000000/

 ※ LINEのサーバー管理が韓国に置かれ、中国からアクセス可能になっていた事件も、微妙に影を落としたと思う…。

『みずほフィナンシャルグループ(FG)とLINEは3月30日、共同で開業を目指してきた新銀行「LINEバンク」の設立中止を決めたと発表しました。スマートフォンを使って本格的な銀行サービスを展開する予定でした。なぜ、開業を断念したのでしょうか。

この記事のポイント
LINEバンクとは?
なぜ、開業断念?
経営体制の影響は?
LINEバンクとは?

みずほFGとLINEが共同で新銀行をつくると発表したのが2018年11月です。当初は20年度の開業を目指すとしていました。新型コロナウイルス禍もあり、開業時期を22年度に延期していました。

従来のように店舗を各地に開いてサービスを展開するのではなく、スマートフォンを使った銀行サービスを想定していました。当初は「手のひら」の手軽な決済銀行というイメージでしたが、新型コロナウイルス禍でデジタル化が進むと判断し、本格的な銀行を目指そうと路線転換を図りました。

構想で掲げていた目標は強気でした。20年秋ごろまでは口座数で400万、預金残高を3000億円とする計画でした。21年に入って開業2年で口座数を1000万まで伸ばす内容に上方修正していました。

なぜ、開業断念?
一つは銀行サービスを取り巻く環境の変化です。構想の発表から撤退を判断するまで4年以上がかかりました。この間、個人情報の保護、サイバーセキュリティー、経済安全保障やマネーロンダリング(資金洗浄)対策などについて社会の関心が高まり、システム面の対応コストが上がりました。

2021年にシステム障害が複数回起きた

みずほ銀行では21年にシステム障害が起きました。同じ年にLINEは利用者の情報が中国からアクセスできる状態にあった問題で、利用者から疑念を持たれることになりました。

システム対応のハードルが高まったこともあり、みずほとLINEは勘定系システムの開発を富士通から韓国の業者に切り替えました。富士通とはシステムの要件やコスト負担などで折り合えなかったためとみられます。

みずほとLINEが手間取っている間にライバルはどんどん先行していました。約1300万口座の楽天銀行をはじめ、ネット銀行はすでに激しい戦いを繰り広げています。みずほとLINEは追加投資を続けて開業しても勝算はないと判断しました。

経営体制の影響は
両社の経営体制の変化も開業を断念した理由の一つです。開業を発表した後にZホールディングス(HD)とLINEが経営統合しました。ZHDにはすでにPayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)を抱えています。ジャパンネット銀行は2000年に開業したネット銀の老舗で、名称をキャッシュレス決済でブランドが浸透しているPayPay銀行に変えました。大株主のソフトバンクなどからも「LINEが金融事業をやる意味はあるのか。グループに2つも銀行はいらない」といった声が漏れていました。

経営統合の記者会見で握手するZホールディングスの川辺健太郎社長㊧とLINEの出沢剛社長
ZHDは2月にヤフー、LINEと3社合併する方針を公表しました。事業の選択と集中が急務となるなか、構想の発表から4年が経過しても設立のメドがたたないLINEバンクは事業整理の対象リストの最上位にあったとみられます。

一方のみずほ側もシステム障害を経て経営陣が一斉交代。22年2月に木原正裕社長が就任しました。みずほ社内でも撤退ムードが強まっていたと言います。

みずほはデジタル戦略で後れをとっています。LINEバンクの頓挫で、今後は自らバンキングアプリの使い勝手向上や機能集約、出資した楽天証券を通じた若年層の開拓などに注力することになります。

(五艘志織、松田直樹)

【注目記事】

・みずほ「LINEバンク」断念 失われた4年、システム鬼門
・みずほ、LINEバンク断念発表 サービス開始「見通せず」 』

LINEの個人情報はなぜ中国からアクセスでき、韓国にデータを置いていたのか。本当の問題点は
https://allabout.co.jp/gm/gc/487634/

『更新日:2021年03月24日

LINEは3月23日、日本国内における個人情報の取り扱いを強化していくと発表した。そもそもなぜ、LINEの日本ユーザーのデータに中国からアクセスできる状態だったのか。データが韓国に保管されていた理由は。ITジャーナリストの石川温が解説する。

更新日:2021年03月24日
石川 温
執筆者:石川 温

携帯電話・スマートフォンガイド

3月23日、LINEは日本国内における個人情報の取り扱いを強化していくと発表した。

一部報道で、LINEでやりとりされている個人情報に中国からアクセスできる状態であったことが明らかになった。また、トーク上の画像や動画などを韓国のデータセンターで保管しているという。本来、ユーザーにこうした情報を明示すべきであったが、LINEでは具体的な国名を明示していなかった。

現状、海外の企業に業務委託することは個人情報保護法には抵触しない。また、LINEでは個人情報が流出したり、詐欺に悪用されたりなどの事実はないとしている。LINEの出沢剛社長は「法的にどうこうという問題ではない。ユーザーが気持ち悪いと感じるなど、ユーザーへの配慮が足りなかった」と釈明した。
LINEの池邉智洋上級役員(左)、出澤剛社長(中央)、舛田淳CSMO(右)。3月23日の会見にて
LINEの池邉智洋上級役員(左)、出澤剛社長(中央)、舛田淳CSMO(右)。3月23日の会見にて

中国からのアクセスの何が問題なのか
そもそも、中国から日本の個人情報にアクセスできるのが、なぜ問題視されるのか。中国では数年前から「国家情報法」という法律によって、民間企業が扱うデータが中国政府に渡るリスクが存在する。アメリカのトランプ政権が通信機器メーカーのファーウェイやTikTokを敵視し続けてきたのも、「アメリカ国民の個人情報が脅かされ、国家安全保障にも影響を及ぼす」という強い懸念があったからだ。

数年前まで、LINEだけでなく、多くのインターネット企業は開発や顧客管理などの業務委託を中国の企業に依頼してきた。中国であれば低コストでの開発、運用が可能となるからだ。

LINEでは日本だけでなく、韓国、台湾、ベトナム、タイ、インドネシア、中国と世界に7つの開発拠点を持っている。

かなり前から中国企業での開発を続けていたが、数年前に中国で国家情報法が成立。本来ならば、そのタイミングで中国企業に対する業務を見直す必要があった。しかし、LINEはそれを怠ってしまった。出沢社長は「(中国での開発を)長く続けてきたが、2017年から18年の潮目の変化など、我々として見落としていた」と素直に落ち度を認める。

LINEの出沢剛社長
LINEの出沢剛社長

LINEでは3月23日現在、プライバシー性の高い個人情報に関して、中国からのアクセスを遮断した。

普段我々が使っているLINEのトークに関しては通常は「Letter Sealing」と呼ばれる暗号化がされており、ユーザーの端末間においては、LINEのシステム開発者であっても中身を確認することができない。

トークのテキストに関しては日本のデータセンターで管理されているが、動画や画像に関しては韓国のデータセンターで保存されている。LINEでは2021年6月までに画像や動画データを日本国内のデータセンターに移転する計画だ。』

『なぜ韓国に画像データを置いていたのか

では、なぜLINEは画像データを韓国に置いていたのか。

LINEの舛田淳CSMOは「画像や動画のデータはテキストのメッセージに比べてサイズが大きい」とした上で「日本だけではなく、アジア圏、中東、ロシアに向けて、データの遅延が小さくなる場所を探した。セキュリティが担保され、人材がいる。コスト面も条件だった」という。

LINEはかつてロシアや中東でも人気のメッセンジャーだった。これらの地域でも、快適に画像や動画のデータをやりとりできる場所として、韓国が候補に挙がったようだ。また、LINEの親会社が、韓国NAVER社だったことから韓国のデータセンターが選ばれたとのことだ。

韓国で保管しているデータは、日本のデータセンターに統一する
韓国で保管しているデータは、日本のデータセンターに統一する

可能性としてはLINEだけではない

現在、LINEだけがメディアなどで問題視されているが、立地、技術、コスト面でデータセンターの場所として韓国が選ばれたとするならば、LINE以外のSNSや個人情報を扱うWebサービスも韓国のデータセンターを利用していることも考えられる。

アメリカ企業のSNSも、イメージとしてはアメリカのデータセンターを採用していると考えられるが、アジアや中東向けのデータに関しては韓国で保存されている可能性もゼロではなさそうだ。

今回を契機に、LINE以外のSNSやWebサービスも「個人情報はどこのデータセンターを使っているか」といった情報開示が必要になってくるかもしれない。

今回、騒動が大きくなったのは、日本において、LINEのユーザーは8600万人以上いるという点があるだろう。スマホを持つユーザーの大半がLINEをインストールして使っている。そのため、政府や地方自治体などが公式アカウントを設け、住民に向けて情報発信をしている。

やはり、政府や地方自治体としては、扱うデータや個人情報が、中国に筒抜けになっていては、LINEの活用に二の足を踏んでしまうのは仕方ない。

LINEでは政府や自治体向けのLINE公式アカウントのデータアクセスに関しては、完全に日本国内に制限するとしている。データの保管場所についても2021年8月までに国内に移転する。

一部の自治体では、コロナワクチン接種の予約をLINEで受け付けているところもあるが、予約システムに関するデータは国内のデータセンターのみに保管し、国内からのみアクセスできるとしている。

LINEとしては個人情報などに関して、すでに国内への移管を計画していたようだが、今回の騒動が起きたことで、計画を前倒しで進めていくようだ。

LINEは無料のメッセンジャーから、ゲームや音楽、決済や金融、広告など事業範囲を大幅に拡大。2021年3月からはYahoo!を傘下に持つZホールディングスと経営統合している。

これまで急ピッチで成長してきたLINEであるが、個人情報保護という点においては、先延ばしし、ややおざなりになっていたのかもしれない。

LINEは国内のIT企業の中でも、もはやユーザーの生活に根ざした社会インフラと言える。この騒動で、ユーザーには不信感が広がってしまったが、これを契機にしっかりと個人情報保護を徹底してもらいたいものだ。』

電力自由化、骨抜きに「厳罰」 3社に課徴金1010億円

電力自由化、骨抜きに「厳罰」 3社に課徴金1010億円
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUE22C4M0S3A320C2000000/

『公正取引委員会が30日、中国電力、中部電力、九州電力に計1010億円の課徴金納付命令を出した。過去最高額の処分からは自社の利益を優先し、自由化政策の基となる市場競争に背を向ける姿勢が浮かぶ。中部電が同日、取り消しを求めて提訴すると発表しており、今後は「合意形成」の有無が焦点になる。

「代表者を含む幅広い層が電力自由化の理念をないがしろにした」。公取委の田辺治審査局長は30日の記者会見で、互いに営…

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みずほ・LINEの新銀行、開業断念へ システム開発難航

みずほ・LINEの新銀行、開業断念へ システム開発難航
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB2781Y0X20C23A3000000/

 ※ 鳴り物入りだった「LINE銀行」も、開業する前にポシャリか…。

 ※ LINE利用者の「貸し倒れリスク」を、「AI使って判定する。そのノウハウを、持っている!」と、鼻息荒かったんだが…。

『みずほフィナンシャルグループ(FG)とLINEが共同で設立を目指してきた新銀行「LINEバンク」の開業を断念する方針を固めたことが29日、わかった。スマートフォン専業銀行で若者の取り込みを狙う新事業だったが、システム開発が難航し競争環境も大きく変化した。みずほにとってはデジタル戦略の仕切り直しになる。

両社は2018年11月にそれぞれ傘下のみずほ銀行とLINEフィナンシャルが共同出資し、新銀行を…

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JOLED、民事再生法申請 ソニーとパナの有機EL統合会社

JOLED、民事再生法申請 ソニーとパナの有機EL統合会社
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC277RY0X20C23A3000000/

『』パナソニックホールディングスとソニーグループの有機EL事業を2015年に統合して発足したJOLED(ジェイオーレッド)は27日、東京地方裁判所に民事再生手続き開始の申し立てをしたと発表した。同日、保全処分と監督命令を受けた。負債総額は337億円。事業の一部はジャパンディスプレイ(JDI)に承継する。日本は有機ELの技術で中国や韓国企業に先行しながら、ビジネスとして大きく立ち上げられなかった。

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『JOLEDは能美事業所(石川県能美市)、千葉事業所(千葉県茂原市)を閉鎖する。製造部門などで働く約280人は解雇し、製造・販売ビジネスから撤退する。技術・開発部門についてはJDIに承継することで、基本合意書を結んだ。同部門では約100人が働く。

JDIは「JOLEDの人材やノウハウは当社の成長戦略に寄与する」とコメントした。同社は有機ELを使った小型パネルの生産を続けている。JOLED設立時に15%を出資していたが20年3月に全株式をINCJ(旧産業革新機構)に譲渡した経緯があった。

57%を出資する筆頭株主のINCJは投融資合わせ1390億円を投じていた。同機構として2番目の大型案件にあたる。勝又幹英社長はJOLEDの民事再生法申請について「誠に断腸の思い」とコメントした。「さらなる資金投下が必要な中で、関係者からの追加出資を望めなかった」ことで継続支援を断念したという。

【関連記事】INCJ社長、JOLED破綻「量産の課題 克服に時間」
JOLEDはソニーとパナソニックから有機ELの技術を引き継いだ。両社とINCJなどの出資を受け、独自の生産技術を使った有機ELの生産を目指していた。大型パネル化への対応や低コストによる量産に利点があるとされていた。

有機ELは液晶ディスプレーと異なりバックライトが不要で、軽量化などもしやすい。日本が技術開発で先行しながら、事業化で韓国企業に出遅れた経緯がある。日本の電機産業が投資を足踏みする間に、サムスン電子などは大型投資を繰り返し、市場シェアを押さえていった。

JOLEDは量産ライン立ち上げの資金確保にむけ、18年にデンソーや豊田通商、住友化学など国内事業会社からの出資を受け入れた。20年には中国・家電大手のTCL科技集団と資本業務提携を締結していた。

ただ、20年を目指していた量産稼働は、新型コロナウイルスの感染拡大などを受け21年春にずれ込んだ。半導体不足による供給難や、巣ごもり需要の剝落による市況悪化などで収益改善も遅れ最終赤字が続いた。22年3月期末時点で債務超過に陥っていた。

有機ELパネルを巡っては、サムスンや韓国のLGディスプレーが規模の大きいスマートフォン向けやテレビ向け市場で圧倒的に優位に立つ。JOLEDはパソコンのディスプレー向けなど中型パネルの生産技術しか持たず、有機ELシフトが進んだ市場を取り込めなかった。日本勢が手掛けるのはJDIの小型パネルなどにとどまる。

【関連記事】

・有機ELパネル3%安 10~12月、欧米でテレビ販売不振
・ディスプレー生産、有機ELも中国が猛追 シェア4割へ
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佐藤一郎
国立情報学研究所 教授
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ひとこと解説 日本は有機ELの開発では先行したが、ビジネスでは敗退となるであろう。
いろいろ要因があるだろうが、JOLEDは、経営破綻したエルピーダや、しばしば経営悪化が報道されるジャパンディスプレーと同様に、政府主導で設立した国策企業であり、しかも日の丸○○を標榜するなど、多く点で重なる。

今後、同じ失敗を繰り返さないためにも、国策企業が適切だったのかを総括をすべきだろう。

なお、昨年設立した、最先端の微細半導体製造を狙う国策企業、ラピダスがあるが、同じ流れを辿らないことを祈りたい。

2023年3月28日 2:00』

東芝TOBの応募焦点に 国内連合、業績悪化で提示額下げ

東芝TOBの応募焦点に 国内連合、業績悪化で提示額下げ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2345F0T20C23A3000000/

『日本産業パートナーズ(JIP)などの連合は7月下旬にも東芝に対してTOB(株式公開買い付け)を始める。成立には3分の2以上の応募が必要となる。TOB価格は4620円と足元の株価を1割上回る。交渉の過程では東芝の業績悪化を受け、価格が引き下げられていたことも明らかになった。TOB価格についてアクティビスト(物言う株主)など株主がどう判断するかが焦点となる。

TOB価格は23日終値(4213円)を1…

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『日本産業パートナーズ(JIP)などの連合は7月下旬にも東芝に対してTOB(株式公開買い付け)を始める。成立には3分の2以上の応募が必要となる。TOB価格は4620円と足元の株価を1割上回る。交渉の過程では東芝の業績悪化を受け、価格が引き下げられていたことも明らかになった。TOB価格についてアクティビスト(物言う株主)など株主がどう判断するかが焦点となる。

TOB価格は23日終値(4213円)を10%上回るが、直近6カ月の平均株価(4683円)とほぼ同じ水準だ。東芝の株価は21年4月に最初の買収提案が明らかになってから高値圏で推移している。それ以前の6カ月の平均株価は3195円でTOB価格は大きく上回る。

東芝の株主は5割強を外国人が占める。大量保有報告書を基にするとアクティビストはエフィッシモ・キャピタル・マネージメント(9.9%)、3Dインベストメント・パートナーズ(7.2%)、ファラロン・キャピタル・マネジメント(5.3%)など全体の3割程度いるとみられる。

大株主の多くは東芝が経営危機に陥った17年に約6000億円の増資を引き受けた投資家たちだ。当時の発行価格は1株あたり2628円で、TOB価格は8割近く高い水準だ。QUICK・ファクトセットによると主要株主の平均取得価格は30ドル前後で簿価が変わっていなければ、利益は出る計算になる。

アクティビストのうち、ファラロンとエリオット・マネジメントは幹部が東芝の社外取締役となっている。今回社外取締役を含めた取締役会で提案受け入れを決議したこともあり、アクティビストの多くはTOBに応じる公算が大きい。

外国人以外の株主は金融機関が26%、個人株主を含めたその他が17%いる。アクティビストを除いた7割程度の株主は売却によって利益がでるかで判断することになる。再編期待が高まる前から保有している場合は売却益がでる株主も多いとみられる。短期保有で株価が高いときに取得した株主がTOBに応じるかは不透明だ。

23日にはJIPが交渉の過程でTOB価格を引き下げたことも明らかになった。

JIPが優先交渉権を得た22年11月に提示した価格は1株5200円だった。その後、東芝が業績見通しを下方修正したことを受け、23年2月には4710円に引き下げた。同月に東芝は再度見通しを下方修正し、2023年3月期の連結営業利益は前期比で約4割減る見通しとなった。
【関連記事】東芝、営業減益幅拡大 再編へ成長戦略課題

主力のデータセンター向け記憶媒体のハードディスク駆動装置(HDD)の販売が減っている。半導体メモリーもスマートフォン向けなど需要が減っており、関連会社のキオクシアの業績も落ち込んでいる。有利子負債の増加も踏まえ、JIPは3月に4610円まで提示額を下げた。その後の交渉で10円上積みし、4620円となった。

再編交渉が長引くなか、世界では利上げによって景気後退懸念が広がり、金融危機も現実味を帯びた。JIPは提示額は引き下げたが提案は取り下げず、金融機関も融資を確約した。

TOBが不成立となって再編期待がしぼんだ場合、株価は下落する可能性もある。株主は保有し続けることが利益につながるかどうかを考慮しながら応募を判断することになる。

TOBで発行済み株式の3分の2以上を取得できるかが焦点となる。3分の2以上を取得できれば、株主総会の特別決議によって残りの株主から強制的に株式を買い取ることができる。その結果、JIP連合による買収会社が東芝の唯一の株主となる。

投資ファンドによる買収は、買収資金として調達した負債が結果として買収された会社の負債となる。そのため買収後の東芝の有利子負債は膨らむことになり、財務改善は引き続き課題となる。

【関連記事】

・東芝、買収案受諾を決議 国内連合が1株4620円でTOB
・物言う株主の提案件数、世界で最多に迫る テック標的に
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森幹晴
弁護士・東京国際法律事務所 代表パートナー
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ひとこと解説 東芝の再編案が1株4620円のTOBで一区切りを迎える。不正会計問題が発覚した2015年から約8年、半導体やヘルスケア事業の売却、ファンドと経営をめぐる混乱と代償は大きかった。

今後の焦点は、TOBの成否はもとより、TOB成立後の東芝再建の道筋だろう。

買収陣営を取りまとめるのはJIPで、オリックス、ローム、中部電力など事業会社10数社、金融機関数社、投資ファンド等が普通株、優先株式、融資等の様々な形で資金を拠出する。各社の利害は様々で、これだけスポンサーが多い買収陣営も珍しい。

船頭多くして船山に登るとならぬよう、JIPは関係者をとりまとめる役割を果たせるか。東芝の再建を応援したい。

2023年3月24日 7:53 』

ガソリン車を「電池交換式EV」に改造 新興のFOMM

ガソリン車を「電池交換式EV」に改造 新興のFOMM
【イブニングスクープ】
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC098680Z01C22A1000000/

『電気自動車(EV)新興のFOMM(フォム、横浜市)は4月、ガソリン商用車を電池交換式EVに改造する事業を始める。電池を数分で入れ替えられる交換式EVは稼働率を高めたい物流会社に需要がある一方、電池の統一規格がないことなどを理由に事業化の動きは乏しかった。電池保管の規制緩和で市場が広がり、EV普及に弾みがつく可能性がある。

フォムは2013年、スズキの元技術者で、トヨタ車体の小型EV「コムス」の開…

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『一般的なEVの充電は通常10時間程度、急速充電でも30分〜1時間かかる。商用EVでは半日フル稼働すると残り半日を充電にあてることが多い。交換式EVは助手席後方に電池を配置し、2分程度で満充電のものと交換する。充電器は物流会社の配送拠点などに設置し、荷物の積み替え時に電池も交換して終日稼働できるようになる。

交換式EVへの改造は各地の自動車整備工場に委託する。自動車整備の業界団体と連携し、整備工場への研修も手掛ける。23年度に1000台の改造を目指す。

改造費用は180万円程度を見込む。中古車のEV改造は国や東京都が実施しているEV補助金事業の対象外で、補助金込みで新車を買うよりやや割高となる。物流会社などが繁忙期に終日稼働できる点を売り物にする。新車の供給難が続くなか、一般のEVより納期が早いのも利点だ。

交換式EVは電池の統一規格がないことや、消防法によるリチウムイオン電池の保管規制などの影響で普及が進んでいない。政府は保管規制について23年中に緩和する方針。これまで保管場所は原則、平屋に限られていたが、スプリンクラー設置などを条件に複数階の建物で保管できるようにして、電池交換スタンドを建てやすくする。』

トヨタ・メガクルーザー

トヨタ・メガクルーザー
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%82%AC%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B6%E3%83%BC

『メガクルーザー(MEGA CRUISER)は、トヨタ自動車が生産していた多目的自動車である。陸上自衛隊向け高機動車の民生用として1996年(平成8年)1月に登場した。航空自衛隊と海上自衛隊は高機動車ではなく、この車種を採用している。

概要

登場時にはその大きさや外観から「和製ハマー」とも呼ばれた。

2170mmという車幅の数値は逆輸入ではない日本車(商用車を除く)としては最大である[3]。エアコン、オーディオ取り付け用2DIN スペース(センターコンソールにあり、運転席側を向いており、助手席側からは操作できない)など、ある程度の快適装備は有しているが、高価格にもかかわらずタコメーターすらないインストルメントパネルや、4速ATしか用意されないなど、開発の主眼が災害時の救援や人命救助などの任務を迅速に遂行する点に置かれており、いわゆる一般消費者向けのSUV的な自動車ではない。最終組み立ては岐阜県各務原市の岐阜車体工業で行われた。その関連もあってか、日本で唯一、岐阜県警察警備部機動隊に「災害用高性能機動力車両」の名で警察車両として導入されている[4][5][6]。

本車はバン型の貨物自動車として生産されており、通常1ナンバー車であるが、何らかの架装をしての納車が多いと見込まれたため型式指定は取得しておらず、新車登録時には運輸支局または自動車検査登録事務所への持ち込み登録車[7]となっていた。

リアに油圧作動の逆相(小回り)4WSを装備しており、最小回転半径は同社の3代目ヴィッツの「1.5 RS」、および「GRMN」と同じ5.6 mであるが、リアオーバーハングが大きい。センタリングスプリングによるフェイルセーフ機構を持ち、エンジン始動中のPレンジ時やサイドブレーキを引いた状態、油圧系統の異常時やエンジン停止時には中立を保つ。

定員は6名(前席2名、後席1列4名)となっている。RAV4(SXA10系)のものを流用した着脱式のサンルーフも選べるが、これも「作業用ハッチ」の意味合いが強い。このサンルーフに合わせるため、前部ルーフは不自然に膨らんでいる。最低地上高が高く、グリップに捕まりながらの乗降を要する。後部には高機動車と同じ格納式の乗降ステップが装着されている。運転席と助手席の間にはクーラーユニットが付いており、車内での行き来は出来ない。後部ヒータースイッチは助手席側に付いており、運転席からの操作はできない。

フレーム下やサスペンションアームの処理が非常に良く、ハブリダクションドライブを採用しているため、最低地上高の420 mmは実用数値である。通常、車体下部にあるプロペラシャフトやデフが大きな最低地上高を確保するために出来る限り上部に上げられたため、その一部が車内に入り込み運転席と助手席間が大きく離れた。(ハマーH1も同様)。ハブリダクションによってホイール内にブレーキを装着できないためインボード式ディスクブレーキを採用している。止まる直前に強くブレーキをかけているとハブリダクションのバックラッシュとサスペンションのたわみで船のようなピッチングが起こる。トルク感応型LSD(トルセンデフ)のほかにマニュアル・デフロックを持ち、さらに後輪のみではあるが、オプションでタイヤ空気圧調節機能まで備えるため、「このクルマでスタックするようなら、後はクローラ(履帯)付きの車両を使う以外に走行手段はない」とまで言われる。

走破性重視のため、タイヤ空気圧はフルタイム4WDにもかかわらず前1.4 kgf/cm2(140 kPa)、後2.4 kgf/cm2(240 kPa)と異なる。

ハブリダクションギアでも減速されるため、通常のSUVとは比べものにならないほどの減速比を得ており、急な上り勾配でもトルクコンバータのクリープで登坂できる。

高機動車と異なりランフラットタイヤ(タイヤ自体はマッドテレーンのブリヂストン・マッドデューラーで同じだが、高機動車はタイヤ内に鉄輪の中子が入っている)ではないため、スペアタイヤを装備するが、タイヤを動かす際には標準装備のウインチを使用する。地上高の高さもあいまってスペアタイヤキャリアの位置が非常に高いため、背面キャリアでありながら、トラックのフレーム下キャリアと同様なタイヤ引き上げ用のチェーンブロックが装備されている。ボンネットは一般的な積層FRPで、高機動車の真空成型品に比べ、ややグレードが落ちる。サスペンションは高機動車と同様、縦置きトーションバースプリングとダブルウィッシュボーンによる4輪独立懸架となっている。トーションバーが長く車重もあるため、乗り心地は良い。

発売当初は興味本位の一般ユーザーの購入や企業の広告塔[8]として利用された例も見られたが、後にJAFや消防、地方公共団体などが主なユーザーとなった。

価格は962万円(エンジンが変更された1999年以降は980万円)で、諸費用を含めると1,010万円(オプション別)となり、トラックやバスを除く日本車の中では、同社のセンチュリー(GZG50型・1997年4月発売で925 – 987万円)や、ホンダ・NSX(NA1型・1995年3月改良で830.7 – 995.7万円)とほぼ同等の最高価格帯クラスに位置していた。車体色は標準では白と紺の2色が用意されており、室内はビニールのセミトリムとされ、色はグレーであった。2001年(平成13年)8月で生産は終了となった。一時期、ホイールベースを変更して、スーパーダイナやコースター4WDにもこの高機動シャーシが使われていた。

メガクルーザーの生産は2001年8月[9]に終了し、12月に販売を終了した。販売期間中の新車登録台数の累計は133台[1]

カタログにはないハイルーフ仕様もあった。

車両重量が2850kgであるため一部は準中型自動車(5t未満)に分類されており、2017年3月12日以降に普通自動車免許を取得した場合、運転できない。
グレード構成

出典元:デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車第75号16ページより。
発売 ボディタイプ 仕様 車両型式 ミッション 全長×全幅×全高 ホイールベース 車両重量 エンジン名 排気量 最高出力 最大トルク 価格
1996年1月 5ドアワゴン ベースグレード BXD20V 4AT 5090x2170x2075mm 3395mm 2850kg 15B-FT 4104cc 155ps/3200rpm 39.0kg-m/1800rpm 962万円
1999年5月 5ドアワゴン ベースグレード BXD20V 4AT 5090x2170x2075mm 3395mm 2850kg 15B-FT 4104cc 170ps/300rpm 43.0kg-m/1600rpm 980万円

脚注
[脚注の使い方]

^ a b c d e f g h i j k l デアゴスティーニジャパン 週刊日本の名車第75号15ページより。
^ “メガクルーザー(トヨタ)のモデル・グレード別カタログ情報”. グー (2020年1月17日). 2020年1月17日閲覧。
^ From TAM Archives GM・ハマーH1 & トヨタ メガクルーザートヨタ博物館だより(No.77 2008年12月号)
^ “スキー場で救出訓練 県警山岳警備隊など 多目的自動車も登場 飛驒高山 /岐阜”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2020年11月7日) 2020年11月29日閲覧。
^ “北方警察署ニュース令和元年第2号 - 岐阜県警察 - 岐阜県公式ホームページ”. 北方警察署ニュース (岐阜県警察). (2019年6月27日) 2020年11月29日閲覧。
^ “全国で唯一、トヨタ メガクルーザーの 警察車両をモデル化! 12月7日から予約受付開始” (プレスリリース), 株式会社ヒコセブン, (2016年12月7日) 2020年11月29日閲覧。
^ 新型届出自動車
^ ナイキ・ジャパンが、朱色地に白でスウッシュ(同社のロゴ)とNIKEのレタリングを施したメガクルーザーを社用車として導入した例がある。
^ “メガクルーザー(トヨタ)のカタログ”. リクルート株式会社 (2020年1月17日). 2020年1月17日閲覧。』

トヨタの高機動車は、どういうわけか、ロシアの民間市場では一般的

トヨタの高機動車は、どういうわけか、ロシアの民間市場では一般的なのだという。
https://st2019.site/?p=20923

『Boyko Nikolov 記者による2023-2-25記事「Rare Japanese Toyota HMV BXD10s at Russian Army: delivery or prey」。

   「テレグラム」にウクライナ側がUpした動画にジャンビーが映っている。場所は露軍の車両修理廠だという。「トヨタ HMV BXD10」が、「スコルピオン LTA-2B」と同じガレージで修理されているのだ。

 トヨタの高機動車は、どういうわけか、ロシアの民間市場では一般的なのだという。
 動画からは、それが最初から市販されたモデルなのか、それとも自衛隊が廃車にしたものなのか、なんとも言えない。塗装はOD一色である。

 これをUpしたウクライナ人いわく。トヨタは軍用の装甲を施した「HMV BDX10」を133台、民間市場に売った記録があるという。
 しかしバイヤーはわからないという。

 「HMV BDX10」は、「トヨタ・メガクルーザー」の派生型である。

 HMVは、ハイ・モビリティ・ヴィークル=高機動車 である。

 メガクルーザーは1995年から2001年まで製造された。』

三菱重工、国産ジェット旅客機撤退へ 開発会社も清算

三菱重工、国産ジェット旅客機撤退へ 開発会社も清算
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC023ED0S3A200C2000000/

『三菱重工業が国産ジェット旅客機の事業から撤退する方針を固めたことが6日、分かった。2020年秋に「三菱スペースジェット(MSJ)」の開発を事実上凍結していたが、今後の事業成長を見通せないと判断した。開発子会社の三菱航空機(愛知県豊山町)も清算する方針。累計1兆円の開発費を投じながら納期を6度延期するなど空回りが続いた。新たな産業育成に向けた官民による国産旅客機の構想は頓挫した。

7日にも発表する。20年秋に「いったん立ち止まる」(泉沢清次社長)と開発を事実上凍結した。その後も商業運航に必要な型式証明(TC)取得に向けた作業を続けてきた。新型コロナウイルス禍から航空市場が回復した後も、座席が100未満の小型ジェット旅客機「リージョナルジェット」市場の成長は見通せないと判断したとみられる。

三菱航空機は三菱重工側を含めて外国人技術者など最盛期に1000人規模がいたが、足元では10分の1の100人規模になっていた。凍結後は21〜23年度の開発費は200億円程度と、18〜20年度(3700億円程度)から大幅に圧縮した。22年3月には試験飛行をしていた米国ワシントン州の拠点を閉鎖するなど縮小を進めていた。国産旅客機は1962年に初飛行した「YS-11」以来の開発だった。

MSJは2008年に事業化が決定した。当初は「三菱リージョナルジェット(MRJ)」の名称で90席クラスの機体として開発が始まった。民間企業の主導で日本の航空機産業の育成を目指す一大プロジェクトだった。13年にも最初の顧客である全日本空輸への納入を予定していた。技術力の不足などでトラブルが相次ぎ6度も開発期限の延期を余儀なくされた。

当初1500億円としていた開発費は1兆円規模に膨らんだ。20年3月期にはMSJ関連の資産などを対象に1224億円の減損損失を計上することなどにより、減損は「一巡している」(三菱重工)という。日本の航空機産業を育成する官民肝煎りのプロジェクトとして経済産業省も500億円を支援していた。

三菱重工は今後は日本と英国、イタリアの3カ国で35年の配備に向けて次期戦闘機の開発を目指している。国産ジェット機の開発で得られた知見を生かしていく。

【関連記事】

・三菱重工、ジェット機「MSJ」米試験場を3月末閉鎖
・中国国産ジェット「ARJ21」、海外初納入 インドネシア
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柳沢幸雄
北鎌倉女子学園学園長・東京大学名誉教授
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分析・考察

日本の失われた30年を象徴的に表す出来事である。ホンダジェットとの対比でみると、なぜ日本の経済は失速したのかが分かる。リーダーシップの欠如である。そしてそのリーダーにとことん任せる最高意思決定者の覚悟である。
 主翼の上にエンジンを乗せるという奇抜な設計の妥当性を理論的に証明し、実証機を作ることに奔走したエンジニアを、ホンダの最高意思決定者は支えた。今や小型ジェット機カテゴリーにおける出荷数で2017年から4年連続で世界一を達成している 。
 船頭が多ければ船は陸に上がる。多様性、シナジー効果と言う呪文で、リーダーシップの欠如したプロジェクトは、MSJのように飛び立つことはできない。
2023年2月6日 20:19 (2023年2月7日 7:54更新) 』

日産・ルノー、出資「対等」へ声明発表 「15%を相互に保有」

日産・ルノー、出資「対等」へ声明発表 「15%を相互に保有」
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023013000744&g=eco

 ※ 今日は、こんな所で…。

『日産自動車と仏自動車大手ルノーによる出資比率見直し交渉で、両社は30日、「15%の株式を相互に保有」する新たな提携関係について共同声明を発表した。両社首脳は、ルノーによる日産株式の保有比率を現行の43.4%から、日産が保有するルノー株の比率と同じ15%まで引き下げる。

 今後開催される両社の取締役会での承認を経て、正式決定する見通し。

 バブル崩壊後の経営難で1999年にルノーの支援を受けた日産だが、出資比率が対等になることで、両社の提携関係は新たな段階を迎える。 』

英首相、SBG首脳らと協議 半導体子会社の上場巡り―報道

英首相、SBG首脳らと協議 半導体子会社の上場巡り―報道
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023010900544&g=int

『【ロンドン時事】英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は9日、スナク英首相がソフトバンクグループ(SBG)の孫正義会長兼社長らと協議し、子会社の英半導体設計大手アームをロンドン証券取引所に上場させるよう求めたと報じた。相次ぐ首相交代による政治の混乱で中断していたSBGへの働き掛けを再開したという。

中間決算、1290億円の赤字 7~9月期は黒字―ソフトバンクG

 同紙によると、スナク氏は先月、アームのハース最高経営責任者(CEO)らと首相官邸で会談し、孫氏もオンラインで参加した。SBGはかねてアームの米市場への上場を目指しているが、英政府はロンドン証取への重複上場を促しているという。 』

世界は燃料電池車に舵を切り始めているのか,どうやって水素を調達するのか,疑問

世界は燃料電池車に舵を切り始めているのか,どうやって水素を調達するのか,疑問
http://blog.livedoor.jp/adachihayao/

『2022年12月05日09:32

2022年12月5日 月曜日 曇かな

車は電気自動車EVから燃料電池車FCVに舵を切っているのか,先日の私のEV主流説に基づいた議論の展開について,ツイッター仲間から,「欧州はFCVまたは水素エンジンに舵を切っていますよ」,とアドバイスされた,そういえば私も最近北京で,FCVの新たなスタートの記事を見ていた

トヨタは,はたまた世界は,EVから水素に舵を切っているのか,過去一月の日本語記事を追っかけると,全体が何となくFCVに傾いている,これもトヨタの努力のせい,などの評価も,電気自動車は重くて駄目だ,自民党の税調も,EV新税の課税の検討に入っている,道路の補修費が嵩むと言う

私の議論にとってはEVでもFCVでも良いのだけれども,何れの議論も水素獲得の議論は殆どされていない,まるで水素が地から沸いてくるような,でも,苦労して発電した電力をわざわざ水素に変換する手間,全国に張り巡らされた電力網があるのに,また水素網を構築するのか,疑問一杯,』

(過去の投稿)

「燃料電池車」(FCV)というものの話し…。
https://http476386114.com/2020/12/17/%e3%80%8c%e7%87%83%e6%96%99%e9%9b%bb%e6%b1%a0%e8%bb%8a%e3%80%8d%ef%bc%88fcv%ef%bc%89%e3%81%a8%e3%81%84%e3%81%86%e3%82%82%e3%81%ae%e3%81%ae%e8%a9%b1%e3%81%97%e3%80%82/ 

グリーン水素を豪州で事業化 住友商事、太陽光由来
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貯蔵・輸送・ハンドリング技術 |イワタニと水素技術
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