日本企業が不祥事を起こす七つの原因

日本企業が不祥事を起こす七つの原因 ~いつまでこんなことが続くんだ!~【怒れるガバナンス】
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020122800300&g=eco

『◆作家・江上 剛◆
【作家・江上剛】会社経営とは 渋沢栄一が残してくれたもの

 第一生命保険のセールスレディーが、約19億円もの顧客資金を詐取したという事件が起きた。彼女は89歳という高齢だ。事件が発覚して以来、認知症だと主張しているらしい。

 高齢の人には申し訳ないが、89歳というのは日本人の平均寿命を超えており、亡くなっている人の方が多いということだ。生きている人でも大方は現役を去り、静かな余生を送っていることだろう。

 ところが彼女は、第一生命でただ一人という「特別調査役」の肩書を与えられ、それを材料に使い、自分に任せれば10~30%の利回りを保証すると客を信用させていたというから、すごいという一言に尽きる。

 事件の全体像は、これから解明されるだろうが、人生100年時代とはいえ、こんな高齢の女性を営業の現場に立たせ続け、不正のうわさもあったらしいが、そのことには耳を傾けなかった第一生命の責任は重いと言わざるを得ない。

 ◆不正の予兆
 報道によると、同社は被害額の30%を弁済すると言っているようだが、根拠が分からない。19億円は巨額だが、事件を長引かせることで失う同社の信用、信頼の損失の大きさを考えれば、さっさと全額を弁済し、被害者との訴訟問題を収め、事件解明に努めた方がプラスではないか。

 第一生命は、不正の予兆を感知することはできなかったと説明しているようだが、本当にそうだろうか。3年も前に外部から問題を指摘する情報が上げられていたという報道もある。怪しい、おかしいなどという声が現場から上がってきていたにもかかわらず、上層部は、それを深く追及しなかったのだろう。

 イエス・キリストは「彼らは見ても見ず、聞いても聞かず、また悟らないからである」(新約聖書フランシスコ会聖書研究所訳注)と語ったが、現場からの声に経営者が耳を傾けなかっただけではないのか。

 実は、彼女をモデルにしたと思われる小説がある。小説なので事実とは異なるだろうが、小説の主人公の生保レディーは、ある地方銀行の実力頭取の庇護(ひご)を受けているという設定だ。

 その銀行では、頭取に認めてもらうため、彼女の保険契約に関し行員が競い合っていたという。その結果、彼女は所属する保険会社でナンバーワンの実績を挙げることが可能となったというストーリーだ。

 下世話な表現を許してもらえれば、女の武器を使い頭取を籠絡し、威光を背に抜群の成績を挙げたのだ。

 小説内の保険会社では、頭取の威光もあり、また成績を挙げた彼女の機嫌を悪くしないように、いつの間にか腫れ物扱いになっていたのだ。

 ◆触らぬ神に
 本事件の報道では、この小説に描かれたような背景の問題は出てこないので、これを事実として扱うことはできない。しかし、第一生命においては、当該の89歳のセールスレディーが何らかの事由で「アンタッチャブル」、すなわち「タブー」、すなわち「触らぬ神にたたりなし」扱いになっていたことは事実だろう。

 第一生命と同様に「触らぬ神にたたりなし」的人物のせいで経営が揺らいだのが、関西電力だ。関電の幹部たちが、福井県高浜町の元助役から数億円に上る多額の現金やスーツ仕立券を受け取っていた事件だ。

 当該元助役は、すでに鬼籍に入っているが、原発立地に貢献した人物らしく、もし金品などの受け取りを拒否すれば、「ワシを軽く見るなよ」と脅迫されたため、受け取らざるを得なかったという。

 関電側は「死人に口なし」とばかりに被害者として振る舞い、当時のトップは「不適切だが、違法ではなかった」と発言し、ひんしゅくを買った。

 この資金が、原発立地に関わる資金であれば、結果として電力料金に跳ね返る。ならば「真の被害者は消費者だ」と強く言いたい。結果、関電側は、事件の責任を取って辞任した旧経営陣たちに善管注意義務違反があったとして約19億円の損害賠償請求訴訟を行うようだ。

 余談だが、関電ともなれば、経営陣を監視する社外取締役には、重厚な人物が就任していたと思うが、彼らの責任追及はどうなったのか。
 現在は、社外取締役などの重要性がいわれているが、彼らに活躍してもらうためには、事件が発覚した際に責任を負う覚悟が必要だ。
 そうでなければ、現役引退後の良い稼ぎ場所として、幾つもの企業の社外取締役を掛け持ちする「なんちゃって社外取締役」ばかりになってしまう。

 後で触れるが、第一勧業銀行(現みずほ銀行)総会屋事件の際には、社外監査役が責任を取らされてはたまらないと、さっさと辞任し、後任を見付けるのに苦労した記憶がある。

 ◆総会屋事件
 なぜ企業に「触らぬ神にたたりなし」的存在が大きくなり、それが原因で不祥事に発展するのか、私が経験した総会屋事件で考えてみたい。

 私が勤務していた第一勧銀は、1997年5月に総会屋との癒着を問われ、東京地検の家宅捜索を受けることになった。第一勧銀総会屋事件である。結果として11人の幹部が逮捕され、宮崎邦次相談役が自殺するという大きな経済事件となった。

 企業に寄生し、不当な利益を上げる総会屋は、82年10月の商法改正以降も、たびたび事件化していた。イトーヨーカ堂、高島屋、キリンビール、味の素、野村証券などだ。事件が発生するたびにトップは辞任していた。

 そんな事態を第一勧銀の幹部は見ていながら、自分の銀行にも総会屋が巣くっている事実から目をふさいでいた。まさに「彼らは見ても見ず、聞いても聞かず、また悟らないからである」状態だった。

 私は、当該事件の処理を直接担当したが、出てくる事実に驚愕(きょうがく)、当惑、困惑するばかりだった。
 大物総会屋は事件発覚当時、すでに亡くなっていた。にもかかわらず、彼との関係は、後任の総会屋に引き継がれていたのだ。

 第一勧銀は、第一銀行と日本勧業銀行が71年に合併して発足したが、大物総会屋はその際に暗躍したらしい。それ以来、26年にも及ぶ総会屋との関係が、彼らをいつの間にか「触らぬ神にたたりなし」的存在に祭り上げてしまったのだ。

 ◆「呪縛」という言葉

 私は、東京地検が家宅捜索に入った後の記者会見の原稿を作っていた。その際、トップの責任回避を考えて、総会屋との癒着関係は、総務部や審査部などが、いわば勝手にやっており、頭取などは関係していないという文章を作った。そして、それを頭取たちが居並ぶ会議で発表した。

 するとM副頭取が、「それは違う。責任は自分たち経営陣にある。総務部や審査部の責任ではない。長年にわたる総会屋との関係を断ち切れなかった経営陣である自分たちの責任だ。そういうことをはっきりさせる会見文に直してほしい」と発言した。

 この発言で、その場がシンと静まり返ったのをよく覚えている。経営陣は、この事件は自分たちの責任で、現場はそれに従った、忖度(そんたく)しただけで、責任はないと言い切ったのだ。

 私は少なからず、感動を覚えた。それで、会見文を書き直すため、N法人企画部長と2人で、どういう内容に直すべきか、呻吟(しんぎん)した。

 N部長は漢字に強かったのだろう。「呪縛という言葉はどうだろうか」と言った。私は即座に、その言葉に飛びついた。大物総会屋という存在の呪いに縛られ、身動きが取れなくなった状態を表していたからだ。

 それに経営陣の責任も、何となく曖昧な感じ、やむを得ない感じがするではないか。当時は、今のようにコンプライアンス(法令順守)意識が強くなかったせいもあるが、長い歴史の中で、経営陣が思うに任せないほど巨大化してしまった「悪」の存在に、責任を負わせるのにふさわしい言葉だと思った。

 案の定、その「呪縛」という言葉を記者会見でK頭取が発言すると、会見場に集まった記者たちは目の色を変え、その言葉を原稿に打ち込んだ。「呪縛」という、それ以前はあまり使われなかった言葉が、世間に広まった瞬間だった。

 ◆なぜ失敗するのか

 「名経営者が、なぜ失敗するのか?」(シドニー・フィンケルシュタイン著)という本がある。この本は、著者が多くの企業経営者の失敗を分析した内容で、失敗の原因を次の7項目に集約している。

 1、傲慢(ごうまん)=自分と会社が市場や環境を支配していると思い込む
 2、私物化=自分と会社の境を見失い、公器であることを忘れ、公私混同する
 3、過信=自分を全知全能だと勘違いする
 4、排斥=自分を100%支持する人間以外を排斥する
 5、空虚化=会社の理想像にとらわれ、現実を見なくなる。現場を忘れる
 6、鈍感=ビジネス上の大きな障害を過小評価して見くびる
 7、執着=かつての成功体験にしがみつく (※番号は、オレがつけた)

 この7項目を活用して第一生命や関電、そして第一勧銀の「触らぬ神にたたりなし」的存在による不祥事の説明を試みてみよう。

 カッコ内は私の見た第一勧銀のそれぞれの項目に関連する実態である。
 3社とも社会的に尊敬される大企業であり、自分たちは不祥事と縁はないと「傲慢」になっていた。

 〔銀行に東京地検が家宅捜索に入るはずはない。そんなことになれば金融システムが揺らぐ、と裁判官出身の大物顧問弁護士が発言した〕

 本来の顧客のことを考えず、経営を「私物化」していたからこそ、「触らぬ神にたたりなし」的存在と癒着してしまった。

 〔総会屋の言うなりに不良債権になることが分かっているのに、無担保、無審査で巨額融資を繰り返した〕

 自分たちの不祥事は発覚しない、あるいは問題にならないと「過信」していた。

 〔他社での総会屋事件を他山の石ではなく、対岸の火事と考えていた。総会屋と関係するのも仕事だと思っていた浅はかな経営者がいた。また大蔵省(当時)検査のごまかし、検査官を接待し籠絡することが常態化しており、他行も同じようにしているから、問題ないとうそぶく役員がいた〕

 経営陣に「触らぬ神にたたりなし」的存在について警告、諫言(かんげん)する人を「排斥」していた。

 〔総会屋との関係を続けてはならないと経営陣に諫言した総務部長は左遷されてしまった〕

 自分たちが在籍するのは立派な会社である、その評判を落としてはならない、と不祥事を隠蔽(いんぺい)することが常態化し、経営が外見のみにとらわれ、「空虚化」していた。

 〔大物総会屋が亡くなったにもかかわらず、後任総会屋やその他の総会屋との関係を断とうとしなかったのは、銀行の評判が落ちることを懸念したからだ。銀行=無謬(むびゅう)との空虚な神話にとらわれていた〕

 長い間の「触らぬ神にたたりなし」的存在に「鈍感」になっていた。

 〔総会屋事件発覚後の株主総会においてさえ、ある経営者は現場に「うまくやってくれよ」と言った。言われた総務部長は逮捕されたため、私が株主総会を仕切ることになった。事態の深刻さを自覚せず、うまくやってくれよと発言した経営者の名前を総務部長は明かさなかった。彼は「トップに忠誠を誓うのが男のロマンだ」と悲しくつぶやいた〕

 生保も、電力も、銀行も、かつての成功体験に「執着」し、ビジネスモデルの変換に苦労している業界だ。だから過去の経営者たちの「触らぬ神にたたりなし」的存在との関係をそのまま引き継いでしまう。

 〔株主総会は、行員株主ばかりでシャンシャン総会。総会屋関係の会社から物品などを購入し、彼らに資金提供を続けていた。それらを断ち切ったら「行員の命が危ないから」とある役員は恐怖におののきながら語った。しかし、自己保身でしかないだろう。昔の経営者が彼らとうまく付き合ったのに、自分が関係を悪化させたくないと思っただけだ。過去もうまくやってきたのだから、先々もうまくやらねばならないと思っていた〕

 ◆傲慢こそ最悪

 この本が指摘する7項目の失敗の原因に、第一生命も関電も第一勧銀も見事に符合するではないか。

 私は7項目の中でも「傲慢」が最悪だと考えている。企業は、傲慢になれば、その時が失敗のわなに落ちる時である。「この世をば わが世とぞ思ふ 望月(もちづき)の 欠けたることも なしと思へば」(藤原道長)の古歌にあるように、望月になれば次は欠けるだけなのである。

 今や、世の中の価値観は大きく変わった。また変わらねばならない。特に感染症拡大で、私たちは生き方そのものの変革を迫られている。
 しかし、いまだに会社の中に「触らぬ神にたたりなし」的存在がいる企業は多いのではないだろうか。

 それは「悪」というべき存在ばかりではないだろう。過去の成功体験、偉大な先輩経営者の遺訓、失敗を恐れる気持ちなどなど。「悪」であろうとなかろうと、「触らぬ神にたたりなし」的存在を断ち切ってこそ、日本企業のイノベーションがあるのではないだろうか。
 (時事通信社「金融財政ビジネス」より)』

〔みずほ、連続トラブルの背景にあるもの…。〕

第一銀行
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E9%8A%80%E8%A1%8C

『概説
明治政府は殖産興業政策の遂行、健全な通貨制度の確立のために近代銀行制度の確立を急務と考え国立銀行条例を制定。その最初の模範となる銀行としての第一国立銀行の設立を積極的に勧奨した。銀行創設にあたっては合本主義(株式会社制度)の考え方により、広く民間資金を集める事を志向し、旧幕時代から両替商の重鎮として力があった三井組、小野組の大口出資と協力を得て誕生した[1]。資本金250万円のうち、三井組、小野組が各100万円を拠出した。日本最初の株式会社である。三井組、小野組それぞれから頭取を選任する一方で、その上に経営の最高責任者である総監役を置いた。総監役は政府にあって国立銀行条例の立案にあたり、三井組と小野組を勧奨して設立を準備した渋沢栄一が官を辞して自ら就任した。

本店における創立総会は1873年(明治6年)6月11日、同年7月20日に本店と横浜、大阪、神戸の三支店で営業開始、同年12月には行章として赤い二重星(ダブルスター)を大蔵省に届け出た。開業翌年の1874年(明治7年)11月に、政府の一方的な金融政策の急変により小野組が破綻し、小野組関連貸出等が回収困難となり経営危機を招いたが、小野組保有の株式100万円の資本減少を行い、総監役を廃止し渋沢栄一が単独で頭取となる新体制を敷き危機を回避した[2]。

1884年には李氏朝鮮(後の大韓帝国)と契約して、関税取扱業務を代行し、後に民間銀行でありながら、同国の中央銀行の業務を代行した。1896年に普通銀行の第一銀行に改組。1943年に三井銀行と合併して帝国銀行(通称・帝銀)となる。

1948年に帝銀が分割され、新たに第一銀行が発足したが、金融当局による出店規制に阻まれ中位行のまま推移し、1971年に日本勧業銀行と合併し第一勧業銀行(存続行は日本勧業銀行)となる。2002年(平成14年)、第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行の分割・合併により、みずほ銀行(存続行は第一勧業銀行)とみずほコーポレート銀行(存続行は富士銀行)となり、2013年(平成25年)7月1日、みずほコーポレート銀行がみずほ銀行を合併して逆に行名をみずほ銀行に改称した。』

日本勧業銀行
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E5%8B%A7%E6%A5%AD%E9%8A%80%E8%A1%8C

『概要
1896年(明治29年)、農工業の改良のための長期融資を目的に「日本勧業銀行法」(勧銀法)が制定され、翌年に政府を中心に設立された。東京に本店を置き、支店は大阪のみに限られ、それ以外の地域には北海道を除く各府県には事実上の子会社である農工銀行(勧業銀行法と同時に制定された「農工銀行法」に基づく)が設置され、勧銀への取り次ぎまたは勧銀と同等の業務を行った。なお、基幹産業(特に重化学工業)向けには別途日本興業銀行(興銀)が設置され、勧銀との棲み分けが行われた。また、北海道には勧銀や興銀の代わりに北海道拓殖銀行(拓銀)が設置された。

長期融資が基本であるため、預金が原資とは成り得ず、代わりに金融債の発行が認められ、かつ割増金付きの債券が唯一認められ、発行した(抽選を行い、当選番号の債券を持つ者に対しては割増金付きで償還された。農工銀行や興銀、拓銀も金融債を発行したが、割増金は認められていなかった)。

だが、農業に関する融資は個々の農家に対してではなく、事業や組合、担保能力のある地主を対象としたために全く融資が進まず、1911年(明治44年)の法律改正で商業に対する融資も解禁された。大正末期より市街地の不動産金融に乗り出す一方、業務の重複と機能低下を理由に1921年(大正10年)の法律改正(「勧・農合併法」ともいう)以後、各府県の農工銀行を悉く合併し店舗網を拡大した(このことが、後述のように現在のみずほ銀行が全国の県庁所在地に必ず支店を設置することになる嚆矢となっている)。また1923年(大正12年)に当時日本領であった台湾には台北州・台北市に台北支店が開設され、その後も五州の州庁所在地高雄・台中・台南・新竹に支店を次々と開設した[注釈 1]。割増金付き金融債の発行実績が認められ、太平洋戦争中の割増金付き戦時債券の幹事銀行となるが、やがてこの債券は射幸性が高くなり終戦直前には「勝札」と言う名の富籤となり、これが現在の「宝くじ」に繋がる。戦後は福徳定期預金(割増金付きの定期預金)の幹事銀行にもなる。

戦後の1950年に勧銀法が廃止され、特殊銀行から民間の普通銀行に転換[注釈 2]。さらに長短分離政策に伴い拓銀と共に普通銀行の道を選択することとなり[注釈 3]、金融債の発行を打ち切って都市銀行の一角となる。

以降はシンボルをバラの花、コーポレートカラーをローズレッドと定め、漫画家・岡部冬彦がデザインしたオリジナルキャラクター「のばらちゃん」やイメージキャラクターに抜擢された女優の山東昭子(現・自民党参議院議員)が店頭や広告媒体などに登場。「ばらの勧銀」のキャッチコピーを採用して大衆化に努めた。法人部門では、融資系列で財閥色の薄いフコク生命や日産火災(現:SOMPOホールディングス)、日立製作所を交えて勧銀十五社会を結成。また、戦時債券の名残で、戦後「宝くじ」の業務を受託していた。

宝くじ業務の関係や、大正時代に全国各地にあった農工銀行からの事業譲渡や農工銀行の吸収合併に伴う受け皿支店の開設などの理由により、全国都道府県庁所在地に必ず一店舗は存在した[注釈 4]。他の都市銀行とは異なり、かつてあった、都市銀行の出店規制[注釈 5]があったが、都道府県庁所在地名の支店は廃止の対象にならなかった。むしろ、他の都市銀行の地方支店の廃止の際には受け皿となっているケースがある[注釈 6]。

勧銀末期における地方部での出店は上記経緯から店舗数が多かった反面、在京行としては首都圏での出店は手薄であり、全体の4割弱と当時の関西系上位行とほぼ同等の店舗数の留まっていたため旧五大銀行でありながら中位行に甘んじていた第一銀行との合併の一因となった。

初代勧銀本店は1926年、京成電気軌道(現京成電鉄)に売却され、「谷津遊園楽天府」として阪東妻三郎プロダクションが使用した。その後千葉市に移管、千葉市役所庁舎を経て、現在は千葉トヨペット本社となり登録有形文化財でもある。また、内幸町の本店も、第一勧銀発足後の10年間を除き、引き継がれ2度の建て直しを経て、現在はみずほ銀行内幸町本部ビルとなっている。』

みずほ銀行暴力団融資事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BF%E3%81%9A%E3%81%BB%E9%8A%80%E8%A1%8C%E6%9A%B4%E5%8A%9B%E5%9B%A3%E8%9E%8D%E8%B3%87%E4%BA%8B%E4%BB%B6

(第一勧業銀行)総会屋利益供与事件
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%B8%80%E5%8B%A7%E6%A5%AD%E9%8A%80%E8%A1%8C

『1997年(平成9年)には、総会屋・小池隆一へ460億円にのぼる利益供与事件で、第一勧業銀行本店を東京地方検察庁特別捜査部に家宅捜索された。

近藤克彦頭取は、1997年(平成9年)5月23日に「(総会屋側に)多額の融資を行った最大の要因は、(歴代最高幹部が親しかった)元出版社社長の依頼を断れなかったことで、社長の死後もその呪縛が解けず、関係を断ち切れなかった…」と記者会見で述べ退任、次期頭取と紹介された副頭取藤田一郎の「以前から不正融資を知っていた」と記者会見で告白し、一銀幹部も驚く爆弾発言となった[5]。

頭取経験者の11人に及ぶ逮捕や、宮崎邦次元会長の自殺という事態を引き起こし、更に調べ上げると、第一勧業銀行が1985年(昭和60年)から1996年(平成8年)まで、総会屋に提供した総額460億円にのぼる資金は、四大証券会社(山一證券・野村證券・日興証券・大和証券)を揺る資金元となり、銀行・証券界と監督当局との腐りきった関係を、白日の下に晒した大蔵省接待汚職事件、遂には大蔵省解体と帰結し、未曾有の経済疑獄となって、日本国民は信じがたい事実に、金融業界の断末魔を見ることになった[5]。

この時も、逮捕された元頭取の中には「あれは旧第一銀行の案件で、自分は旧日本勧業銀行出身だから関係ない」などと公判で無責任な証言をした者がおり、いかに旧第一・勧業の関係が悪いものであったかを露呈してしまう結果になった。この不祥事以降、宝くじの広告から「受託 第一勧業銀行」の文字が消え、みずほ銀行となった2018年現在も、広告には表示されていない[注釈 5]。

第一勧業銀行総会屋利益供与事件をきっかけに、この年出版された高杉良による経済小説『金融腐蝕列島』が耳目を集め、後年には事件を題材に続編である『呪縛ー金融腐蝕列島2』が書かれ、「金融腐蝕列島 呪縛」(1999年)として映画化もされた。タイトルは、近藤克彦頭取の「呪縛が解けなかった。」と、記者会見で述べた事に由来している。』

みずほ、10年改革は振り出しに 外圧頼み「魂」入らず

みずほ、10年改革は振り出しに 外圧頼み「魂」入らず
金融PLUS 金融グループ長 河浪武史
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB318AX0R30C21A5000000/

『「みずほ銀行頭取はネットニュースで自行のATM障害を認識するに至った」――。みずほフィナンシャルグループ(FG)が15日公表したシステム障害の第三者委員会報告書。多くの関係者を驚かせたのは、藤原弘治みずほ銀頭取が、障害発生から数時間も誰からも連絡を受けていなかった事実だろう。坂井辰史FG社長への一報も電子メールだけで、開封時は障害発生から既に6時間がたっていた。

第三者委はみずほを「危機対応力が弱く、問題解決の姿勢も弱い」と指弾し、それを「企業風土」とまで断じてみせた。同行は2011年、東日本大震災の直後という最悪のタイミングで、給与振り込みなど100万件超の入金が遅延する大規模障害を起こしている。その後は組織再編やシステム刷新など一定の自浄作用を発揮したかにみえたが、あっという間に再び「事なかれ主義」に陥った。なぜか。』

『「みずほが主体的に組織改革を進めないと、市場も取引先も納得しない」。10年前のシステム障害時。取材メモを読み返すと、同社首脳は筆者にこう吐露している。当時は第一勧業銀行、富士銀行、日本興業銀行の旧3行出身者が、みずほFG 、みずほ銀、旧みずほコーポレート銀行のトップを同列で分け合う「1社2バンク3トップ制」。意思疎通の悪さが目立っていた。』

『ただ、そうした自己改革の機運はわずか2年で弱まっていく。契機は13年に発覚した反社会勢力への融資問題だ。当初は「担当者どまり」とされた反社融資が、実は取締役会の資料に記載されていたことが判明。佐藤FG社長(当時)らも「知りうる立場にあった」ことがわかった。佐藤氏は兼務していたみずほ銀頭取を辞任。経営の透明性を高めるため「委員会設置会社」への移行も決めた。

この委員会設置会社案は、実はみずほ内部ではなく金融庁が持ち出したものだ。反社融資が公になった13年9月以降、佐藤氏は国会に参考人招致され、金融庁も2度も検査に入るなどして圧力をかけ続けた。「そのころから、みずほは一段と当局の意向ばかり気にするようになった」(同行OB)。』

『金融当局や社外取締役が「改革役」に浮かび上がる一方で、みずほ本体の執行部隊は主体性を失っていく。第三者委報告書では、みずほ銀が18年にもATM障害を起こし、今回と同じようにカードなどが吸い込まれる事故が1800件も発生したことを明らかにした。当時は対外公表を見送っただけでなく、システム改修などの根本対策も取らず、その危機意識の欠如が今回の大規模障害を招いた。

みずほFGは今回、藤原頭取らの交代を軸とした人事案をまとめたが、検査を継続する金融庁が正式発表直前に「待った」をかけた。みずほは今や首脳人事すら決められず、手足を縛られて身動きがとれない。

「巨大な象が自らの足を踏んで倒れないようにしないと」。当時としては世界最大規模の経営統合を発表した1999年、第一勧銀頭取の杉田力之氏はこんな戒めの言葉を発している。みずほはその後の成長鈍化で「巨象」ではなくなり、今では倒れたまま起き上がり方すら見失いつつあるようにみえる。』

物価は上昇しても「給料」は上がらない、根本的な問題

“物価は上昇しても「給料」は上がらない、根本的な問題:“いま”が分かるビジネス塾(1/4 ページ)”
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2104/13/news038.html

『4月から公共料金や食品など多くの商品が値上がりしているが、一方で給料はまったく上がる気配が見えない。コロナ後の景気回復を期待する声もあるが、今後、賃金をさらに下落させる新しい制度が始まっている。収入を増やすには、副業などに積極的に取り組むしなかさそうだ。

日本は事実上の生涯労働制へ
 日本ではデフレが続いているとされてきたが、実際はそうではない。物価の上昇率こそ低く推移してきたが、物価そのものは着実に上がっている。しかも、インフレやデフレというのは、多数の商品価格を平均した消費者物価指数を基準に判断される。高額商品など不景気で値下がりした商品があると、それに引っ張られて指数も下落しがちだが、生活必需品は価格が上昇しているケースが圧倒的に多い。つまり多くの人にとって日本社会はデフレでも何でもなく、インフレというのが現実である。

 生活必需品が値上がりしても、給料も上がっていくのなら何とか生活は維持できるが、日本の場合、賃金だけは上がらない。それどころか賃金下落のダメ押しとも言える制度が4月からスタートしている。それは企業に対して70歳までの就業機会確保を努力義務とする「改正高齢者雇用安定法」の施行である。

改正高齢者雇用安定法が4月にスタート(出典:厚生労働省)
 これまで、企業は希望する社員について65歳まで雇用することが義務付けられていたが、4月1日以降は、70歳までの就業機会の確保が努力義務となる。これは雇用ではなく就業機会の確保なので、再雇用とは限らず、フリーランスとして業務委託契約を結ぶといった形態も可能となる。加えて、現時点では「努力義務」なので、企業は順守しなければいけないというものではない。

 だが大手企業にとって努力義務というのは、限りなく義務化に近いものであり、コストという点からいっても、雇用を延長したことと大きく変わるわけではない。つい最近まで企業の定年は60歳だったが、それが事実上、70歳まで伸びたようなものである。

 近い将来、70歳までの雇用が完全義務化される可能性はそれなりに高いと考えられるので、今回の法改正によって日本は事実上、生涯労働時代に入ったと考えてよいだろう。

社員数が多すぎる最大の理由は…… 』

『社員数が多すぎる最大の理由は雇用制度
 とりあえず70歳まで働けるということは、年金減額が確実な状況において朗報といってよいかもしれない。だが賃金という面で考えた場合、この制度は、日本のビジネス社会に致命的な影響を与える可能性が高い。

 日本企業はもともと大企業を中心に終身雇用と年功序列の雇用体系となっており、ビジネスの規模に比して社員数が多すぎる。日本企業の生産性データなどから計算すると、日本企業は米国やドイツなど諸外国と比較して、同じ収益を稼ぐために投入する社員数が1~2割多い。

 これは事業の付加価値が低いというビジネスモデル上の原因もあるが、社員数が多すぎることも大きく影響している。日本企業には、会社に在籍しているにもかかわらず、事実上、仕事がないという、いわゆる社内失業者が400万人以上もいるとの調査結果があるが、これは全正社員数の1割に達する数字である。諸外国と比較して、社員数が多すぎるのはウソではない。

ビジネスパーソンの給与は、やはり上がらないのか
 そして日本企業において社員数が過剰となる最大の要因は、やはり雇用慣行と考えられる。

 諸外国の場合、業務内容をあらかじめ決めた上で採用を行う、いわゆるジョブ型雇用がほとんどなので、同じ仕事をずっと続ける社員が多い。一方、日本はそうではないことから、新入社員に現場仕事や雑務を割当て、年齢が上がると、多くの人は能力にかかわらず管理職に昇進する仕組みになっている。

 このため、常に新卒社員を採用し続けないと現場の業務が回らない。一方で、定年は延長になっているので、中高年社員は管理職として、長期間、会社に雇用され続けることになる。結果として、日本企業では社員数が膨れあがってしまうのだ。

賃金を取るのか、雇用を取るのか』

『賃金を取るのか、雇用を取るのか
 以前は「60歳定年」という切り札があったが、これが65歳に延長され、今回の改正で事実上、70歳まで延長された。社員の平均在籍期間が延びれば、当然の結果として総社員数が増えることになる。一方で、企業が社員に支払う人件費の原資は決まっているので、1人当たりの賃金は下がらざるを得ない。

 つまり日本においては、雇用制度を抜本的に変えて雇用の流動性を高めない限り、今後も継続して賃金が下がる可能性が高いのだ。若いビジネスパーソンにとっては、逃げ切りにも見える中高年社員に対しては複雑な感情だろうが、とりあえず雇用だけは保障されている点において、若い世代も日本型雇用慣行の恩恵を受けている。

雇用制度を変えなければ、賃金は下がる可能性が高い
 企業によって程度の違いはあるものの、日本全体としては、賃金を取るのか、雇用を取るのかという二択が迫られていると考えてよい。

 これは日本特有の現象であり、海外事情とは無関係である。一方、諸外国は新興国を中心に高い成長が続いており、全世界の物価は今後もさらに高騰することが予想されている。しかもコロナ後を見据えた先行投資が相次いでおり、食糧品価格や資材価格はすでにコロナ前を大きく上回っている。

今後、節約は意味をなさない 』

『今後、節約は意味をなさない
 日本で消費される製品の多くは輸入なので、日本国内の状況とは関係なく価格が決まってしまう。つまり今春の値上げは前哨戦である可能性が高く、年後半から来年にかけて、さらに生活必需品の価格は上がっていくと考えられる。そうなると、今後、モノの値段だけが上がり、給料は上がらないという悪夢のような事態になる可能性が十分にある。

平均給与の推移(出典:厚生労働省)
 これまでの時代は、節約が事態を解決する有力な方法の一つだったが、その概念は崩壊していくだろう。もはや節約だけでカバーできる状況ではなく、年収の絶対値を増やさなければ、今の生活水準は維持できない。スキルアップに成功し、年収が上がっている一部のビジネスパーソンを除き、副業への取り組みはもはや必須になったと考えるべきだろう。』

経産省と「幹部の過半数」に見切られた東芝・車谷社長「男子の本懐」

経産省と「幹部の過半数」に見切られた東芝・車谷社長「男子の本懐」
国際 Foresight 2021年4月15日掲載
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/04150530/?all=1

『3月下旬、車谷氏は密かに経産省へ根回しを開始。一方、4月7日のCVC買収報道で激怒した指名委員会は、すぐさま「解職」に動き出す。後ろ盾になってきた嶋田隆・元経産事務次官と今井尚哉・元首相秘書官の助力も得られず、14日の臨時取締役会に提出される議案を察知した車谷氏は……。

「今年1月の東証1部復帰で東芝再生のミッションがすべて完了した。まさに男子の本懐だ」。

 東芝は14日、車谷暢昭社長兼最高経営責任者(CEO)が同日付で退任すると発表した。後任には車谷氏の前任社長を務めた綱川智会長が復帰する。冒頭の言は東芝が同日公表した、車谷氏の退任にあたってのコメントである。東芝再建の区切りを迎えたことによる清々しい「円満退任」が強調されているが、真実は真逆だ。きっかけはわずか一週間前に明らかになった英投資ファンドによる東芝への買収提案。このディールを自ら仕掛けて保身に走った車谷氏が孤立無援となり、事実上「クビ」となったという話が本当のところだ。

 そもそも車谷氏はすでに窮地に立たされていた。東芝は近年、「物言う株主」として知られるシンガポールの投資ファンドで、筆頭株主のエフィッシモ・キャピタル・マネジメントと対立してきた。昨年7月の株主総会では、エフィッシモが提出した同ファンド創業者の今井陽一郎氏らを取締役とする株主提案は否決された一方、車谷社長の再任案の賛成率も約57%どまり。さらに昨年の総会での議決権集計方法に問題があるとして、今年3月に開かれた臨時株主総会では、外部の弁護士3人を選任するとのエフィッシモの提案が可決していた。「車谷氏とでは対話ができない」。アクティビストの圧力は高まっていた。 

一度は「会長」案も検討されたが
 社内でも車谷氏への逆風が吹いていた。今春に東芝の指名委員会が実施した調査によると、過半数の幹部が車谷氏への「不信任」を表明していた。そうした事実に東芝の指名委員会にとっても、車谷氏の処遇は避けて通れぬ問題になっていた。だが、社内外で車谷氏の社長留任は難しいとの共通認識が醸成される一方で、指名委員会では、車谷氏を経営陣に残す案が検討されたこともある。関係者は「綱川氏を社長に戻し、車谷氏は会長に置くという人事案はあった」と話す。

 こうした議論をすべて吹き飛ばしたのが、英投資ファンド、CVCキャピタル・パートナーズによる買収提案である。CVCは、政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)や事業会社とともに2兆円超を投じ、東芝を非公開化するというものだ。

 だが、買収提案が明らかになった時点で、社内では「アクティビスト対策の非公開化は車谷氏の保身のためだ」との冷めた見方が広がった。初期提案のなかに「マネジメント」の維持という項目があったためだ。利益相反の疑いもそれに輪をかけた。車谷氏は東芝社長の就任直前にCVC日本法人の会長兼共同代表の座にあった。東芝社外取締役の藤森義明氏(LIXILグループ元社長)は、CVC日本法人の最高顧問だ。これも社内で車谷氏への逆風を急速に強めた。そして、とどめとなったのが社内への根回し不足だ。別の関係者はこう話す。「車谷氏は3月下旬ごろから経済産業省にCVC案件の根回しを進める一方、東芝幹部にはまったく伝えていなかった」。しかも、買収提案が報道された4月7日は、まさに指名委員会の当日。車谷氏のガバナンスを無視した振る舞いに堪忍袋の緒が切れた指名委員会の一部の委員は、すぐに解職に向けて根回しを始めることになる。

 だが、車谷氏が頼りとした経産省の動きも今回は鈍かった。もともと三井住友フィナンシャルグループでトップの座を逃し、CVCに転じていた車谷氏を東芝に迎え入れたのが、元経産事務次官の嶋田隆氏と、同じく経産省出身で安倍晋三前首相の補佐官兼秘書官を務めた今井尚哉氏とされる。だが、両者とも車谷氏を支援するのは難しかった。梶山弘志経産相も9日の記者会見で、買収提案に関連し「当該事業を継続し、発展させることのできる体制が構築されるか多大な関心を持って注視する」と述べるにとどめた。早くも先週末には経産省内にも「車谷氏の退任やむなし」の空気が広がった。

 関係者によると、今週に入って東芝は臨時取締役会を14日に定め、車谷氏の解職と綱川氏の社長就任の議案を用意していた。だが、事態は急変する。この動きを直前に察知した車谷氏が、解職を避けるために先手を打って辞任を申し出たのだ。14日の記者会見で永山治取締役会議長は、車谷氏の「最後の意向」を汲むかたちで、「再生に向けた使命が完了したとして14日に辞任の申し出があり、受理した」と説明した。 

KKRの提示は2兆円を上回るとも
 今後、東芝にとって爆弾になりかねないのが、車谷氏の「置き土産」ともいえるCVCの買収提案である。永山氏は「CVCの提案は初期のものでまだ内容が乏しい」として慎重に対応する考えを示した。だが、今回のCVCの買収提案は新たな提案の呼び水となっている。すでに、米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)やカナダ系資産運用会社のブルックフィールド・アセット・マネジメントなど大手ファンドが東芝買収に関心を示しているとされる。特にKKRの案はCVCが提示した約2兆円超の買収案を上回る可能性が高い。

 今回社長に返り咲いた綱川氏は、株主総会に向けたアクティビストとの対話が一つの大きなミッションとなる。2016年に社長に就いた綱川氏は、海外投資家を引受先とする6000億円の第三者割当増資を実施するなど「物言う株主」とのパイプ役には適しているとみられ、14日の会見でも「株主とコミュニケーションをとり企業価値を上げたい」と抱負を述べた。

 だが、アクティビストといってもそれぞれ立場は異なる。あるファンド関係者は「経営に関与していくスタイルのエフィッシモと異なり、長期投資を考えていないファンドもある」と話す。今後の東芝には、こうしたスタンスの異なる複数のアクティビストと対峙しながら収提案の検討を迫られるという、さらに厳しい局面が待っている。』

中国製EV、日本に本格上陸 佐川急便が7200台採用

中国製EV、日本に本格上陸 佐川急便が7200台採用
【イブニングスクープ】
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC136SH0T10C21A4000000/

『中国の自動車・部品メーカー、広西汽車集団が小型商用の電気自動車(EV)を日本企業に供給する。SGホールディングス傘下の佐川急便が国内での配送用トラックとして7200台採用することを決めた。EVの普及で先行する中国製のEVが日本に本格上陸する事例となる。

広西は中国南部の広西チワン族自治区柳州市に本拠を構える。供給するEVは軽自動車サイズの商用バンで航続距離は200キロメートル以上。配送拠点から配達先までの短距離を走り、配送拠点で夜間などに充電する。8月に仕様を固めて、広西が9月にも量産を始める。実際の納入は2022年9月になる見通し。

生産を担当する広西のグループ企業は日本経済新聞の取材に対し「量産に向けた準備を進めている」とコメントした。

日本の自動車メーカーが手薄な小型商用分野を市場開拓の足がかりにする。当初は並行輸入車などとして日本に供給する。並行して国内で継続的にナンバーをとるのに必要となる国土交通省の型式認証手続きを進める。

車両の企画開発や製品保証は日本のEV関連スタートアップのASF(東京・港)が担当する。広西はASFからOEM(相手先ブランドによる生産)を受託する形となる。佐川は今回採用するEVのコストを明らかにしていないが、現状のガソリン車の軽ミニバンの130万~150万円を下回る水準とみられる。

小型EV商用車は、採算性や安全性の確保、ブランド維持の観点から日本メーカーがあまり手を付けていない領域だ。三菱自動車が世界初の軽商用EV「ミニキャブ・ミーブ」を11年に発売したが、累計で9100台の販売にとどまる。

中国製EVは商用車ではそろりと浸透し始めた。中国大手の比亜迪(BYD)が日本での納入例を増やしており、上野動物園(東京・台東)やハウステンボス(長崎県佐世保市)などが園内バスとして採用しており、のべ53台を納入済みだ。BYDは22年6月までに100台まで増やすことをめざしている。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む https://asia.nikkei.com/Spotlight/Electric-cars-in-China/Japan-s-Sagawa-to-buy-7-200-low-priced-EVs-made-in-China?n_cid=DSBNNAR

いすゞが3年で3000億円投資!トラックのモデルチェンジとCASEに重点化

https://newswitch.jp/p/26753

『いすゞ自動車は2024年3月期までの3年間に合計3000億円規模の設備投資を実施する方針を固めた。21年3月期までの3カ年中期経営計画期間と比較して約30%増となる見通し。主にトラックのモデルチェンジ対応などに割り振る。海外拠点の生産最適化も進める。自動車業界で競争が激しい「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)」関連の投資は研究開発費が中心となる。

いすゞは現在、24年3月期までの新中計を策定中。期間中にトラックのモデルチェンジなどを行い、それに伴う工場設備への投資が膨らむ見通し。

デジタル関連投資も進める。22年5月をめどに本社を現在の東京都品川区から横浜市に移転する。本社移転に合わせた情報システムの刷新などで数百億円程度を投じる方向。IT環境の改善で生産性向上を見込む。販売拠点のデジタル化も推進する。

海外ではタイを中心に好調な主力のピックアップトラック「D―MAX」について、生産拠点の整備に力を入れる。CASE関連は開発段階のものが多いことから設備投資への影響は少なく、研究開発費で対応。CASE関連分野の開発については今後3年間で1000億円程度を投じる。

ただ過度な開発投資を防ぐため、スウェーデンのボルボ・グループなど他社との連携を生かして投資効率を高める戦略をとる。

日刊工業新聞2021年4月9日』

金融、IT競争力が左右 みずほ障害で浮き彫り エンジニア比率は米30%、日本4%

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF051E60V00C21A4000000/

『みずほフィナンシャルグループの一連のシステム障害は、日本の金融機関に共通する課題を浮き彫りにした。システムの維持更新に追われ、中長期的な競争力を左右するIT運用の高度化や新たな事業モデル構築につながる投資は欧米金融機関に比べて手薄になっている。

坂井社長は5日の会見で基幹システムの運用について、最適な人員配置に課題があったことを認めた。2019年に稼働した基幹システムが軌道に乗るなかで、肝心の運用に緩みが出ていた構図が浮かぶ…

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2019年に稼働した基幹システムが軌道に乗るなかで、肝心の運用に緩みが出ていた構図が浮かぶ。

みずほは02年と11年に大規模なシステム障害を起こした反省を踏まえ、合併前の旧行の継ぎはぎだったシステムを一本化し、全面的に刷新する方針を12年3月に決めた。14年4月の時点で3100億円だった「MINORI」(ミノリ)の開発費は4500億円まで膨らみ、数度の延期を重ねて19年7月までに全面稼働した。

5日の会見で坂井氏は「一連の障害に直接的な因果関係は判明していない」と強調したが、運用が安定するなかでシステムの制御を担う専門の人材を減らしてきたことが明らかになった。

金融庁へ提出した報告書でも「制御系の知識や経験を有する人材」や「(システムの構築を担った)ベンダーの常駐サポート」が減っていた点を認めている。坂井社長は5日の会見で「横断的なチェックがおろそかになっていた面もある」と話した。

銀行の日常業務を支えるシステムは競争力そのものを左右する。戦略的な活用は国内銀行に共通した課題でもある。

金融庁によると、米国の大手行は全従業員に占めるITエンジニアの割合が約30%なのに対し、日本では4%弱にとどまる。たとえば米JPモルガン・チェースはビッグデータの専門家を含めて5万人のエンジニアを抱え、IT投資に年100億ドル(約1兆1000億円)規模の資金を投じている。

米国の銀行ではIT予算の約6割を既存のサービスを改良する目的で投じるのに対し、国内銀行では既存の金融サービスを維持する目的の投資が7割を占めるとの調査もある。

米の金融機関は新しい金融技術を持つベンチャー企業との連携もオープンな形で進めてきた。米国では「スーパー地銀」と呼ばれる大手行に次ぐ位置の銀行も、オンラインの住宅融資やセキュリティー関連など、相次ぎフィンテック企業に投資をしている。

半面、国内銀行は再編後のシステム統合に多額の費用を投じてきた。システム統合後も膨大な維持費がかかり、戦略的な分野に資金を投じる余地は乏しいとの指摘もある。

経済産業省はITシステムに関するリポートで、日本企業がデータ活用などによる事業モデルの変革を遂げられなければ、年間最大12兆円の経済損失が生じる「2025年の崖」を警鐘した。

リポートでは、日本企業がシステムの維持更新の費用負担が高いことや、保守運用の担い手不在を懸念している。みずほのような課題は日本企業全体に横たわっており、警鐘が現実のものとなる可能性は小さくない。

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山崎俊彦
東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授
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貴重な体験談

「IT競争力が左右」するのは金融業界に限ったことではありません。よくある笑い話に、「うちの会社はIT障害が何も起きない。IT部門には無駄に給料を払っているだけだ。くびに/縮小/解散しよう。」と決断したところ障害が起こりまくってしまって「君等がちゃんとやってくれていたお陰だったのか・・・」ということが分かったいうものがあります。「ごん狐」のような世界。

2021年4月6日 7:56

スズキの軽、電動化は「つなぎ」簡易HV EVは道半ば

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ19BUS0Z10C21A3000000/

『スズキが急速に押し寄せる脱炭素の荒波に直面している。国内でも政府の方針を受けて、主力の軽自動車を2035年までに全て電動化することを迫られる。軽については簡易型のハイブリッド車(HV)を全車種に設定して当面を乗り切る考え。一方で、世界で勝ち残るには本格HVや電気自動車(EV)への対応が必須だ。機能の簡素化や低価格を強みとしてきたスズキの実力が試される。

「地球温暖化の問題は差し迫った危機。スズキとしても…

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スズキとしても脱炭素に向け協力していかなければならない。挑戦しよう」。2月に退任を発表したスズキの鈴木修会長は昨年末から社内でこう訴えてきた。菅義偉政権は20年12月下旬、35年までに全ての新車販売をHVやEVなどの電動車とする方針を発表。対象には軽も含まれる。2月24日の退任会見で鈴木会長は「若手のチーム力を利用して一気に30年や50年につなげる努力をしてもらいたい」と語った。

簡易型ハイブリッドを搭載するスズキの「スペーシア」
この一環としてスズキは今後、軽の全車種で「マイルドハイブリッド」と呼ばれる簡易型HVを用意する方針だ。低速時などにモーターがエンジンの駆動を補助することで燃費性能を高める。既に販売する軽の約5割に搭載しているが、残り半分にも搭載していく。

トヨタ自動車などが導入している「ストロングハイブリッド」と呼ばれるような本格HVほどの燃費改善効果はないものの、ガソリン車よりも10万円程度の価格の高さと比較的安価で導入できる。「EVなど本格的な電動車までのつなぎとしては現実解」(スズキ幹部)というわけだ。

スズキの主力商品である軽や小型車は電動化のハードルが高いとされる。EVなどに必要な電池やモーターは価格が高く、スペースも必要になる。特に軽の最大の強みである安さや車内空間が失われかねない。地方を中心に、電動化による値上げが消費者離れを招く可能性がある。

消費者がいかに価格に敏感かをスズキは知り抜いている。20年12月にフルモデルチェンジした人気の小型車「ソリオ」。16年に独自開発のストロングHVを初めて設定した車種だが、今回は外した。価格が簡易型HVよりも2割ほど高く、販売が伸びなかったためだ。

政府も簡易型HVを電動車に含めることを決定済みだ。スズキは現時点で軽の電動車を販売していない首位のダイハツ工業やホンダと比べると、一足先にハードルをクリアするかのようにもみえる。それでも、ある幹部は「いずれは来ると思っていた脱炭素の波が一気にやってきて難破しそうだ」と苦境を訴える。

世界の自動車市場ではこの1年で脱炭素の動きが加速した。新型コロナウイルス禍からの経済復興をめざす各国の補助金もEVシフトに拍車をかけた。国内販売で電動化をクリアできたとしても、スズキの世界販売の約2割にすぎない。現状では環境規制が世界でも進む欧州市場では、資本・業務提携しているトヨタから環境性能に優れるプラグインハイブリッド車(PHV)の供給を受けている。

ただ、トヨタに頼りすぎると自社の技術を磨く機会が失われるリスクもはらむ。ある幹部は国内の「ソリオ」ではあえて外した本格HVの技術についても「手放すことはあり得ない。性能を上げつつ、コストを抑える努力を続けるしかない」と語る。鈴木俊宏社長も「あくまで自社開発を進めていきたい」とする。

インドでは「ワゴンR」をベースにした小型EVでの走行試験を続ける
EV対応も道半ばだ。スズキの世界販売の5割を占めるインドでは、トヨタと共同開発したEVを20年に投入する計画で18年秋から走行試験を重ねてきた。ただ「充電インフラやニーズを見るとまだ投入すべき段階ではない」(幹部)と延期。電動化の環境が整っていないがゆえの合理的な判断とも言えるが、厳しい環境規制や他社との競争でEVを磨いている欧州や中国の自動車大手などと差がついてしまうという面もある。

中国ではいま、米ゼネラル・モーターズ(GM)などが出資する上汽通用五菱汽車の50万円程度の小型EV「宏光MINI」が飛ぶように売れている。価格帯はスズキがインドなどで販売するガソリン車と同水準。今後はこうしたEVとの競争を迫られるのは確実だ。

スズキは独自の設計技術などを強みに小型・軽量化や燃費性能を高めてきた。電動化でもこうしたお家芸を発揮できるか。今年で創立102年目の同社に大きな課題が突きつけられた。

(為広剛)

日経産業新聞の記事一覧へ https://www.nikkei.com/theme/?dw=18083101 

Oneみずほの落とし穴 システム障害、真の教訓は

Oneみずほの落とし穴 システム障害、真の教訓は
本社コメンテーター 上杉素直
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK010VS0R00C21A4000000/

『既視感に襲われた。みずほ銀行が2月末からの2週間で4度のシステム障害を起こした。そのドタバタを見ていて思い出したのは、2002年と11年の大規模なシステム障害よりもむしろ、13年に明るみに出た反社会的勢力への融資にまつわる不祥事だ。
反社会的勢力への融資の存在は当時の経営トップまで報告されていたにもかかわらず、「報告はなかった」と間違った説明をした。世間の視線が一気に厳しくなったきっかけは、そんな…

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世間の視線が一気に厳しくなったきっかけは、そんな事後対応の失敗であり、組織としての危機管理の甘さだった。

今回、2月28日に起きた最初のシステム障害は、一部の定期預金を紙の通帳のないデジタル口座へ移す作業が引き金になった。ふに落ちないのは翌3月1日におわびの記者会見に臨んだ幹部たちがデジタル口座という言葉にまったく触れなかった点だ。

素早く正確で丁寧な情報開示は不祥事対応のイロハのイ。翌日になっても状況をつかめずにいたなら問題だし、知っていて説明しなかったのだとしたらより深刻だ。こんな姿を目にすると、過去の失敗からいったいなにを学んだのかとがっかりする。

親会社のみずほフィナンシャルグループは第三者委員会を設けて原因を探り、金融庁は立ち入り検査で実態を洗い出すそうだ。一連のシステム障害をもたらしたプログラムの欠点や運用の課題は遠からずはっきりするだろう。それはそれで改めるしかない。

だが、今回のドタバタで浮かび上がった一番重要なポイントは、いざトラブルが生じたとき適切に対処できない組織の弱さやガバナンスの不具合にちがいない。発火点はシステム障害だったが、燃え上がらせてしまった原因は顧客をはじめとする関係者への対応のまずさ、感度の鈍さだ。

では、組織の風通しを悪くする問題の根はどこにあるのか。要因はさまざまに絡み合うが、新しいみずほを形づくる土台として16年にスタートしたカンパニー制という陣立てに目を向けたい。顧客のニーズをつかむ商品やサービスをグループ一体となって提供する「One(ワン)みずほ」戦略の要となる仕掛けだ。

カンパニー制のそもそもの理念に反対する人はいないだろう。5つのカンパニーは個人や企業など顧客の属性ごとに分かれ、銀行、証券会社、信託銀行の各組織に横串を通す形で存在する。それぞれのカンパニー長は収益責任を負い、あたかも会社のトップような指揮命令の権限をもつ。

もっとも、新しい試みが良いことばかりもたらす保証はなく、落とし穴がどこかに潜んでいると考えたほうがいい。カンパニー制を強力に進めるほど、副作用だって大きくなる。負の側面が今回の不祥事で垣間見えたのではないかという問いかけだ。

よくよく注意しないとカンパニー制が生み出してしまう負の側面を2つ挙げたい。いずれも「カンケツ」が失われる現象だ。

まずは簡潔。銀行や証券という既存の組織の縦ラインに、カンパニーという横の軸が重なり合う。どれだけ縦と横の役割分担をうたっても、業務をとりまくややこしさや複雑さは明らかだ。

そして完結。かつてに比べて銀行は独立した組織として尊重されなくなった。頭取は銀行にまつわるすべての事柄を決める最終権限があるかといえば、そうでない。その裏返しとして、責任の所在もあいまいになりやすい。

半期に一度の部店長会議は以前は頭取が自分の思いを伝える舞台だった。しかし最近は持ち株会社のカンパニー長たちへと主役の座が移ったらしい。頭取人事よりカンパニー長人事のほうがグループにとって大事になった、と受け止める幹部は少なくない。

やや乱暴なたとえを示そう。安倍前政権は官邸主導を強めるため、省庁の幹部人事を掌握し、波長の合う役人を首相の周りに登用した。結果として政策の実行部隊であり専門家集団である役所の一部にしらけたムードが広がり、士気は下がったといわれる。

同じ構図で持ち株会社を官邸に、銀行を省庁に見立てたらどうだろう。一歩間違えば銀行の現場に近年の霞が関のような空気が忍びこまないか。最近、みずほの人たちと話していると、そんな心配が頭をよぎることがある。

もちろん、だからといってカンパニー制や持ち株会社主導のグループ運営をやめればよいという話にはならない。グローバルに戦っていくには銀行と証券の連動は必須の条件だ。要は、いかにバランスをとりながら、効果的に組織を回していくかという鉄則におのずと行き着くだろう。

どうすればよいか、答えはとっくにわかっている。「都合の悪い話であっても持ち株と銀行、証券の関係者が互いに腹落ちするまで意見を言い合おう」。カンパニー制を始めたころ、当時の経営陣の1人はそう話して回った。

縦に横にと組織を張り巡らせるだけでなく、コミュニケーションも縦横斜めに繰り返す。上意下達に偏らず、現場の息づかいをきちんと共有できなければ組織を的確に動かせるわけがない。みずほに限らず、業容を広げようと陣立てを見直すすべての銀行、あらゆる企業に当てはまる。

今度は見て見ぬふりをせず、組織のカルチャーにまで踏み込んでもらいたい。不祥事から学べるかどうかの分岐点にいる。

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上杉 素直

金融ビジネスや金融政策、税制・財政をはじめとする経済政策、社会保障の現場を取材してきた。2010年からのロンドン駐在では欧州債務危機に揺れる政治や行政、人々の暮らしをのぞいた。編集委員を経て18年から現職。

Oneみずほの落とし穴 システム障害、真の教訓は(11:30)
コロナ検査、岩盤を壊せ 経済のアクセル踏むために(2月27日)

不二越、ベアリングをタイに集約 電動化が迫る生産再編

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD268KC0W1A320C2000000/

『自動車用ベアリング(軸受け)大手の不二越は汎用品の生産を国内などからタイに集約する。自動車の電動化でエンジン需要が減り、エンジンに使う軸受け市場も縮む。拠点集約でコストを下げ、工作機械など車以外の顧客を開拓する。デンソーなどもエンジン関連事業の見直しに動いており、電動化にあわせた部品会社の生産再編が広がっている。

形や大きさなどの仕様が決まっている汎用品の生産をタイに移す。約100億円を投じ、タイ中部のラヨーン…

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約100億円を投じ、タイ中部のラヨーン県にある既存工場の近くに新工場を設ける。2022年2月に稼働させ、日本の富山事業所(富山市)や台湾の拠点から生産を移す。全社のベアリングの生産量のうちタイが占める比率を22年末までに4割と倍増させる。日本などの残る拠点は顧客の仕様にあわせた特注品をおもに手がける。

生産移管に伴い富山事業所の人員は契約社員の満期などにあわせ、200人ほど減る見通し。同社の有価証券報告書によると20年11月末の同事業所の従業員は臨時雇用者を含め約2200人だった。今後は耐久性や強度が高い特殊品の生産に集中する。

不二越が生産体制を再編する背景には、自動車業界の急速な電動化がある。英調査会社のLMCオートモーティブは、世界の自動車販売台数に占めるエンジン車の割合が20年の89%から30年には54%に低下すると予想する。

軸受けは機械の部品を滑らかに回転させる役割を持ち、自動車では主にエンジンや変速機の周辺で使う。エンジン車1台あたり100~150個程度使われており、電気自動車(EV)に切り替わると約3割減るとされている。

不二越の20年11月期の連結売上高2010億円のうち、軸受けは32%を占める。軸受けの6割は自動車用で、残りは工作機械など産業機械向けだ。生産集約などにより製造原価を2割以上引き下げ、産業機械向けの顧客を開拓。産業機械向けの比率を6割に引き上げる。中国製よりもなお割高とみられるが、信頼性などを踏まえれば優位性はあるとみる。

軸受け国内最大手の日本精工もEVなどで使う小型モーターや風力発電機向けを成長分野と位置づける。風力発電向けの大型製品は中国工場に今後3年間に最大50億円を投じて増産し、現地の発電設備会社に供給する。

電動化の影響は軸受けにとどまらない。動力源が複雑な部品機構を含む「エンジン+変速機」から「電池+モーター」に代わると、自動車の部品点数は約3万点から約2万点に減るとの調査もある。エンジンがなくなれば、燃料噴射装置やピストンの動きを支えるピストンリング、排ガス部品などが不要となる。

これに合わせ軸受け以外の部品会社も事業の見直しに動いている。デンソーは自動車向けの燃料ポンプ事業をグループ会社の愛三工業に移管する。電動化対応にあわせ、既存事業での重複を解消して生産や開発を効率化する。

独大手のコンチネンタルもガソリンやディーゼルなど旧来型のエンジン開発を30年までにやめる計画を表明済み。19年には電動化をにらみ、エンジンやモーターなどの動力機構を手がけるパワートレイン部門を分社化した。

もっとも電動化はモーターや電池などで新たな需要も生む。PwCの19年の調査では、40年の自動車部品市場のうちエンジンとトランスミッションが占める比率は19%と17年と比べ5ポイント下がる。一方、モーターや電池などの電動化部品は30年の9%から40年には13%へと高まる見通し。

日本電産はEV用駆動モーターを将来の主力事業と位置づけ、中国だけでなく欧州のセルビアでも約2000億円を投じる新工場の建設を計画する。EV用電池の主力であるリチウムイオン電池では、三菱ケミカルは主要4部材のひとつである電解液の生産能力を約5割引き上げる。旭化成も4部材のうち、セパレーターの増産に約300億円を投じる。

各国政府は脱ガソリン車政策を相次ぎ打ち出している。英国は20年秋に、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を30年までに禁止すると発表。これまでからさらに5年早めた。中国も35年をめどに新車販売のすべてをEVやハイブリッド車(HV)などの環境対応車とする方針だ。東京都も30年までに都内で販売する新車すべてをEVやHVなどの電動車に切り替えることを目指す。

(柘植康文)

〔高炉〕

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E7%82%89

『高炉(こうろ、blast furnace)は製鉄所の主要な設備で、鉄鉱石を熱処理して、鉄を取り出すための炉。鉄溶鉱炉(てつようこうろ)と呼ばれることもある。大型のものでは高さ 100 メートルを超え、製鉄所のシンボル的存在となっている。

鉱石から銑鉄を取りだす高炉、その銑鉄を鋼鉄に処理する転炉、生産された鉄を圧延や連続鋳造で製品加工する設備を持つ、銑鋼一貫製鉄所のみが高炉を所有している。このような大規模施設を持つ鉄鋼会社は高炉メーカーと呼ばれている。』

『高炉による銑鉄生産

1.焼結鉱、石灰石 2.コークス 3.ベルトコンベヤ 4.投入口 5.焼結鉱、塊鉱石、石灰石 6.コークス 7.熱風管 8.スラグ 9.溶銑 10.スラグ車 11.トーピードカー 12.ガス分離器 13.熱風炉 14.煙突 15.冷風 16.微粉炭 17.粉砕機 18.分配器

高炉の頂部から鉄鉱石による金属原料とコークスなどの燃料を兼ねる還元材、不純物除去の目的で石灰石を入れ、下部側面から加熱された空気を吹き入れてコークスを燃焼させる。頂部から投入される原料等はあらかじめ簡単に焼かれて固塊状に加工されており、炉内での高温ガスの上方への流路と原料等の流動性が確保されている。高炉内部ではコークスの炭素が鉄から酸素を奪って熱と一酸化炭素、二酸化炭素を生じる。この反応が熱源となり鉄鉱石を溶かし、炉の上部から下部に沈降してゆく過程で必要な反応が連続的に行なわれ下部に到達する頃には燃焼温度は最高となり、炉の底部で高温液体状の銑鉄が得られる。不純物を多く含む高温液体状のスラグは銑鉄の上に層を成してたまる。銑鉄とスラグは底部側面から適時、自然流動によって取り出される。

高炉頂部からは一酸化炭素、二酸化炭素等を多く含む高温の高炉ガスがパイプによって取り出され、粉塵等がサイクロンで除去された後、随時切り替えられる複数組の熱風炉の1つへと送られる。高温ガスは熱風炉内のレンガ等を加熱した後、煙突より排気される。十分に加熱された熱風炉の1つが排気経路とは別に切り替えられて、外気より取り込まれた冷風が熱風炉により加熱される。熱くなった空気は炉下部の側面より粉砕された微粉末炭と共に圧入され、炉内を上昇する内に酸素が燃焼に寄与する。これらの流れにより一連のガスサイクルを形成する。

高炉にはコークス炉や鉄鉱石焼結炉が常に併設され、投入原料の事前加工が行なわれている。一度、火が入れられた高炉は常に稼動されて、数年に一度の程度の炉内壁の修理等の時以外に停止されることはない。

高炉で作られた銑鉄は保温効率と移送の利便性を兼ね備えた「トーピードカー」(混銑車)と呼ばれる細長いタンク車両に流しこまれて、次の工程へと送られる。送られた銑鉄は溶銑予備処理を施した後、転炉へ入れられ、鋼鉄へと変換される。』

日本製鉄、1万人合理化 「がくぜんとした」 瀬戸際の鉄鋼(1)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ258AC0V20C21A3000000/

『3月5日午前10時すぎ、日本製鉄本社14階。取締役会で社長の橋本英二は問いかけた。「ご質問があれば頂戴したい」

居並ぶ取締役17人に示したのは2025年度までの経営計画。橋本の落ち着いた様子とは対照的に内容は大胆だった。

東日本製鉄所鹿島地区(茨城県鹿嶋市)では基幹設備の高炉を1基休止。ほかの拠点とあわせ生産能力を2割減らし、協力会社を含め1万人規模を合理化する。

経営陣には概要を説明してあり、会議は円滑…

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経営陣には概要を説明してあり、会議は円滑に進んだ。一方、その数時間後に本社9階の会議室で橋本たちから正式に知らされた従業員側への衝撃は大きかった。

「驚きを禁じ得ない」。同日中に会社が受け取った労働組合の意見書にはこう記された。無理もない。1年前にも瀬戸内製鉄所呉地区(広島県呉市)の閉鎖など大規模な合理化を発表。高炉休止を2年続けて決める異例の事態となったからだ。

衝撃は製鉄所のお膝元に広がる。「がくぜんとした。市の人口がさらに5千人ほど減ることも覚悟しなければ」。一報に接した鹿嶋市の市長、錦織孝一もうなだれた。

日本の近代化を支えた鉄鋼業と、再編を繰り返しながら国内では最大手として君臨し続けた日本製鉄。内需低迷と中韓勢の台頭により、かつてない苦境に追い込まれている。

合理化の予兆はあった。「構造改革を断行する年になる」。1月、橋本は新年のあいさつで社員に危機感を訴えた。4315億円と過去最悪の最終赤字だった20年3月期に続き、21年3月期も1200億円の最終赤字を見込む。

特に本丸の国内製鉄事業は厳しい。在庫評価損益を除く真水の単独営業損益は20年3月期まで3年連続で赤字だった。以前は単独の損益を知るのは限られた部署のみ。それを橋本は19年5月に社内に危機感を植え付けるため初めて公表した。

その翌月、本社で一つの部署が本社12階から13階に移った。「生産設備企画」。製鉄所の設備計画を中長期で考える部門だ。同時に所管は技術を統括する部署から経営企画に移管。生産設備企画と経営企画が連携し、今回の計画をまとめた。

日鉄は事務系が経営企画を牛耳る一方、設備計画は技術系や製鉄所に任せる傾向が強かった。

「(自分は企画部門で)珍しがられている」。19年4月に名古屋製鉄所(愛知県東海市)所長から経営企画担当の常務執行役員に就いた今井正も当初、そう感じるほどに組織の壁は厚かった。

結果として両者の情報共有は遅れがちに。現場で目立つのは生産性が落ち、補修費がかさむ設備。その稼働を維持するために安値で売る悪循環に陥った。今井は「事務だ、技術だといってる時代じゃない」と訴える。

住友金属工業や日新製鋼との統合を重ねた日鉄。各地での設備の老朽化は操業トラブルという形でも出ていた。

「足場が狭く、危ない」。19年8月初旬、呉の拠点を訪ねた橋本は現場で胸騒ぎを覚えた。直後の8月末、予感は的中する。中核設備で火災が発生。自動車用鋼材の供給に支障がでた。最近では名古屋製鉄所でも火災が起きている。

採算改善にむけ、余剰設備の集約はかねて課題だった。ただ製鉄所は地域経済の要であり「鉄は国家なり」との自負もある。アベノミクスで事業環境が好転し、実力値がみえにくくなっていた。

「つくれば売れるとの発想から抜けきれなかった」。旧住金出身で統合後に副社長も務めた本部文雄は嘆く。

そこに政府の脱炭素政策が追い打ちをかける。政府は50年ゼロにむけ、炭素排出に値段をつけるカーボンプライシング(CP)も検討する。

いまの製鉄法は、石炭を使い二酸化炭素が多く発生する。そのためCPは日鉄にはコスト増と同じ。「CPは市場をゆがめる」。橋本は2月に官邸で首相の菅義偉に反対を訴えたが、CP構想がとまる保証はない。

技術革新で対応しようにも、切り札の水素製鉄などの実現には4兆~5兆円かかり、1社で負担できる範囲を超える。

内外に強まる逆風に日鉄の橋本はつぶやく。「脱炭素の競争にも遅れたら日本の鉄鋼業は存亡の危機に陥る」(敬称略)

「鉄冷え」の再来と脱炭素政策にあえぐ鉄鋼業。その最前線を追う。

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多様な観点からニュースを考える
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竹内純子のアバター
竹内純子
国際環境経済研究所 理事・主席研究員
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ひとこと解説 記事に出てくる茨城県鹿嶋市は、2050年ネットゼロカーボンシティ宣言したんですね。であれば少なくとも今の炉の存在は認められないというメッセージを自ら出したわけです。
日本は世界で唯一、鉄鋼が中国に対して輸出超過とのこと。高機能製品を作る技術でまだ優位性を持っていたから。ただ、鉄の製造プロセスからはCO2は排出されます。記事中には水素還元製鉄の課題をコストだけのように書いていますが、そもそも水素還元製鉄は商用機レベルではまだどこにも存在しません。2050年ネットゼロに向けてどう移行を進めるかを社会として考える必要がありますが、それが鉄鋼業界に丸投げされている感も。

2021年4月5日 9:28いいね
2

深尾三四郎のアバター
深尾三四郎
伊藤忠総研 上席主任研究員
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ひとこと解説 日本の鉄鋼は中国に量だけでなく環境価値(質)でも大きく水を開けられようとしている。
欧州を模範にする中国は全土での鉄鋼産業向け排出権取引制度(ETS)を近い将来実施する。そして炭素国境調整措置も導入し、ETS非導入国の鉄鋼製品に対して「グリーン関税」を課す可能性がある。中国以外の主要輸出先の韓国やタイもETS整備で日本を先行している。即ち、CPで出遅れる日本の輸出競争力は中国のみならずアジアでも低下するリスクがある。脱炭素技術では、日本は水素還元法の原料(水素)のコストが高く、電炉法も電源にしたい再エネの発電量が少ない。拠点の海外移転で国内雇用が更に減少し、産業が空洞化する懸念が高まっている。

2021年4月5日 7:49 (2021年4月5日 7:49更新)
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15

志田富雄のアバター
志田富雄
日本経済新聞社 編集委員
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分析・考察 いま、日本の高炉は3つの競争に直面していると思います。1つは昨年の粗鋼生産で世界の56%を占める中国の存在。個別企業の生産能力でも世界の上位2社と大きな差ができました。2つ目には軽量化をめざす自動車を中心にアルミなどの非鉄金属や炭素繊維、合成樹脂製品など他素材との競争があります
3つ目は環境負荷という新たな物差しの台頭です。この物差しでは、同じ鋼材でも鉄スクラップを原料につくる電炉製品が優位になります。公共工事や需要家が、リサイクル素材である電炉製品の使用比率目標を導入してくる可能性も否定できません。高炉各社には厳しい環境が続きます。

2021年4月5日 9:04いいね
1

「グリーン水素」へ東芝系など挑む 脱炭素の切り札に

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ231ZP0T20C21A3000000/

『燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しない水素は、カーボンゼロ実現に向けた有望なエネルギーだ。その製造過程でもCO2を一切、排出しない水素が「グリーン水素」だ。製造に必要な電力は再生可能エネルギーを使う。グリーン水素を作り出す水電解装置の開発・製造では日本、欧州を中心に世界各社がしのぎを削る。

従来型より電力を3割削減へ
横浜市の臨海工業地帯にある東芝エネルギーシステムズの京浜事業所。ここでは燃料電池の…

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ここでは燃料電池の技術を応用した次世代型の水素製造装置の開発が進む。目指しているのは省電力だ。装置が完成すれば、従来型より電力を3割削減できるようになる。

水素には様々な製造法があるが、グリーン水素は水を電気で分解して作る。水電解の方法は、水素の取り出しにイオン交換膜を使う「固体高分子形(PEM形)」と強アルカリの水溶液に電流を流す「アルカリ形」の2つが主流だ。

一方、東芝エネルギーシステムズが開発を進めるのは燃料電池の技術を応用した「固体酸化物形(SOEC)」と呼ぶ方式。水素と酸素を反応させて電気を生み出すのが燃料電池だ。これを逆にして水蒸気と電気から水素を作るのがSOEC方式の水電解装置だ。エネルギーシステム技術開発センター化学技術開発部の長田憲和氏は「PEM形やアルカリ形に比べ省電力に優位性がある。20年代後半には実用化したい」と話す。

製造システムの低コスト化を目指すのはPEM形を製造する日立造船だ。構造を簡素化し部材を減らすなどして、従来品よりも製造費用を抑える製品を開発している。

相次ぐ大規模プロジェクト

グリーン水素を製造する水電解装置の開発では、欧州メーカーが先行している。装置を大型化し、大規模なグリーン水素の製造プロジェクトを次々と打ち出している。

独シーメンス・エナジーは15年から欧州などで大型の水素製造装置の出荷を始めた。19年にはオーストリアで6000キロワットの再エネ電力を使った水素製造装置を納入した。現在は1万7500キロワットの電力で年間約2900トンの水素を製造できる装置の開発に着手している。対応する電力容量が増えれば増えるほど大量の水素を製造できる。

英ITMパワーは、2万4千キロワットの電力で水素を製造する装置を22年後半にも稼働させると発表。ノルウェーのネルもスペインなどで太陽光発電を利用した大規模な製造拠点を展開している。

一方、日本でもグリーン水素の大規模製造プラントの建設が始まっている。旭化成は福島県浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド」で1万キロワットの太陽光発電の電力に対応した製造設備を納入。年間900トンの水素を製造でき、現時点では世界最大規模だ。

地熱発電を利用する取り組みも始まる。21年7月をめどに大林組は大分県九重町で実証プラントを設置する。

ただ、日本国内ではプラントの大型化に課題がある。ボトルネックになるのが再生エネ電力の価格だ。火力発電が主力の日本では再生エネ電力の価格が高止まっている。一方、メガソーラーや大規模な洋上・陸上風力発電設備の設置が進んでいる欧州では安価で再生エネ電力が調達できる。建設費などを含めた再生エネの発電コストを比べると日本は英国やドイツの2~3倍にもなる。

一方、日欧メーカーでタッグを組む事例も出てきた。三菱重工業は20年10月、ノルウェーのハイドロジェンプロに出資。ハイドロジェンプロは、1日あたり水素を4.4トン製造できる9000キロワット級の水電解装置を開発している。

欧州が先行し、日本が技術に磨きをかけている水電解装置だが、北米でもグリーン水素製造に動き始めた。20年11月、エンジンメーカーの米カミンズはカナダの水素製造装置メーカー、ハイドロジェニックスを買収。

今後は中国メーカーの本格参入も見込まれる。上海電気は中国科学院大連化学物理研究所と提携してPEM形のR&Dセンターを新設すると発表。中国では大型プラントの開発計画もある。

日本政府も重視

日本政府は20年12月に発表した「グリーン成長戦略」で水素を重要な産業の一つに位置づけた。経済産業省は水電解装置は50年までに年間で約8800万キロワットの導入が進み、年間の市場規模が約4兆4000億円にまで及ぶと予測する。日本よりも再生エネの導入が先行する欧州市場への日本企業の参入を促す政策も打ち出している。

世界に先駆け水素に着目し、技術開発を続けてきた日本メーカー。だが実用化・大型化では欧州に遅れをとっている。今後は技術力を生かし、海外勢にない製品をスピーディーに市場に投入する開発体制が求められる。

水素は無色透明な気体だが、カーボンゼロの観点から色分けされている。

製造過程で完全に二酸化炭素(CO2)を排出しないのがグリーン水素。水を電気分解して水素を取り出す過程だけでなく、使用する電気も再生可能エネルギーを使う。もし火力発電など化石燃料由来の電力を使うとグリーン水素とは呼べなくなる。

一方、現在世界で作られる水素の9割以上は、もっともレベルの低いグレー水素だ。天然ガスや石炭など化石燃料を燃やしガス化して抽出する。その際、CO2が発生し、大気に放出するとグレーとなる。CO2を地中に埋めてとじ込め、大気中に放出しなければブルー水素になる。

ほかにターコイズ水素もある。天然ガスなどに含まれるメタンを電気で熱分解する製法で、炭素を固体化することでCO2を排出しない。使用する電気は再生エネルギーを使う。さらにはグリーン水素と同じ水電解で、原子力の電力を使うイエロー水素もある。

水素自体はエネルギー源として使うため燃焼させてもCO2を発生しない。だが、その製造過程でCO2を排出してしまってはクリーンエネルギーとは呼べない。最終的にはグリーン水素の製造を目指す動きが欧州を中心に活発になっている。

(柘植衛)

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LINE立ち入り、業務超えた閲覧の有無焦点 実態解明へ

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODG3142O0R30C21A3000000/

※ 大体、サーバーを韓国に置いている段階で、「お察し」というヤツだろう…。

※ しかも、ネットでは、ずっと「話題になっていたこと」だ…。

『LINE(ライン)の利用者の個人情報が中国の関連会社から閲覧できた問題で、個人情報保護委員会は31日、個人情報保護法に基づき、LINEや親会社のZホールディングスなど関係先の立ち入り検査を実施した。従業員らが業務の範囲を超えて閲覧していなかったかなどを焦点に、同社の情報管理体制の実態解明を進める。

同社などによると、中国・上海の関連会社の従業員が2018年8月から21年2月までの間、日本のサーバー…

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同社などによると、中国・上海の関連会社の従業員が2018年8月から21年2月までの間、日本のサーバーに保管されている氏名や電話番号などの個人情報にアクセスできる状態だった。これまでに少なくとも計32回のアクセスがあったことが確認されている。

また利用者から「不適切だ」などと通報があったメッセージに対し、中国・大連の業務委託先からアクセスしていた。

同社はこれまで中国の従業員が閲覧した情報は「業務上必要な範囲だった」などと説明する。ただ、委託先の従業員がどんな種類の個人情報にアクセスできるのか、必要な業務範囲とは何かーーといった運用ルールなど詳細を明らかにしていない。

個人情報に関する業務を委託する場合、企業などには委託先を監督する義務がある。個人情報に詳しい弁護士は「LINEの体制に不備があり、委託先を十分に監督できていなかった可能性がある」と話す。

そもそも個人情報に関する業務を、中国にある企業に委託していた点を疑問視する声も多い。背景にあるのは17年施行の国家情報法だ。中国では国が民間企業や個人に対し、情報提供を強要することができる。「一般データ保護規則(GDPR)」を定めプライバシー保護を強化した欧州連合(EU)などとは大きくルールが異なる。

海外に業務を委託すること自体は違法ではないが、「中国では情報漏洩など安全保障上のリスクは否定できない」(同弁護士)という。

同委員会は問題発覚後、LINEの委託先の業務内容や個人情報へのアクセス状況、個人データの扱いに関する社内ルールの順守状況などの調査を進めている。同社が中国からのアクセスを遮断したとする対応策についても、適切に遮断されているのか検証するという。

LINEの利用者は約8600万人に上る。プライバシー保護や危機管理を専門とする日置巴美弁護士は「個人データの厳格管理が求められる時代に、LINEは委託先をチェックする体制が整備されていたか疑問だ。個人情報を扱う企業として、安全や危機管理の意識が低かったと言わざるを得ない」と指摘する。委員会は立ち入り検査で同社の管理体制に不備が無かったかどうかなど実態解明を急ぐ。

みずほ障害「組織スキルが低下」 金融庁に報告書危機管理官を設置へ

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『2月末から相次いだシステム障害を受け、みずほ銀行が31日に金融庁へ提出した報告書の概要が分かった。全国にある7割強のATMが一時動かなくなった2月28日のトラブルを念頭に「組織的なスキルが低下するとともに、横断的な統制が機能しなかった」と明記。障害時の迅速な対応に備える危機管理の担当者を設置することも盛り込んだ。

報告書では約2週間で4件起きた障害について「社会に広く不安を与え、極めて重く受け止め…

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報告書では約2週間で4件起きた障害について「社会に広く不安を与え、極めて重く受け止めている」と陳謝。「4つの事案に因果関係は確認されず、一つの障害がほかの事象を連鎖的に引き起こしたものではない」と結論づけた。2019年までに移行した新しい基幹システムについては「障害に対応する機能は想定通りに作動した」とし、システム自体に大きな問題はないとの認識を示した。

発端となった2月末の障害は、全体の73%にあたる4318台のATMが一時動かなくなるなど利用者に不信感を与えた。現金を引き出そうとした利用者のキャッシュカードや預金通帳を取り込んだ件数は5244件にのぼる。

引き金となったのは、1年以上にわたって記帳されていない定期預金の口座をデジタルに移す作業だった。データの処理量が事前に準備した容量を超えてパンクし、作業を復元する「自動取り消し処理」もできなくなる二重エラーが発生。ATMの取引をつかさどる区画に波及し、カードを取り込む事象につながった。

一般的にカードが吸い込まれると、利用者は備え付けの電話でオペレーターに問い合わせる。不正利用がないと確認できれば遠隔からの操作などを通じ、利用者にカードを返却する取り決めだ。

ところが障害の起きた28日は日曜日で、朝9時の時点でオペレーターは15人弱にとどまっていた。問い合わせが急増した午前10時以降に電話で応対できなかった割合は90%台で高止まりし、利用者をATMコーナーで長時間待たせる結果につながった。

緊急時の連携にも課題を残した。ATMが広範囲で止まっていると担当部へ情報が上がったのは午後1時過ぎ。幹部が全拠点に出勤を指示したのは午後2時半ごろだったが、休日でメールを閲覧できる端末を携行していない管理職が多かった。本部が顧客への対応で明確な指示を出したのも午後5時半と後手に回った。

こうした対応について「全体像を組織として早期に把握するに至らなかった」と指摘。「役員への報告が断片的な情報にとどまり、適切なタイミングで指示ができなかった」と振り返っている。

システムの運用面では「全体を俯瞰(ふかん)した確認が不十分だった」と総括した。新しい勘定系システムが安定的に稼働し、制御を手掛ける担当者も減少。システムを構築したベンダーからなる組織は解散していた。「制御などに関する組織的なスキルやノウハウが低下するとともに、横断的なチェックや統制が十分に機能しなくなっていた」という。

今後の対応策として、システムの改修にあたっては多層的に点検する態勢を整える。カードを取り込んだATMの仕様については、4月末から9月末にかけて順次見直すという。日常的に危機管理のノウハウを磨き、危機時の迅速な対応につなげる担当者も設置する。みずほはこうした方針を4月上旬をめどに開く記者会見で説明することにしている。

DXシフトへ1兆円買収 日立、先行する欧米勢追う

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『日立製作所が米IT(情報技術)大手グローバルロジックの買収を決めた。産業向け機器から家電までを手がける製造業の強みを生かしつつ、データを駆使したデジタル企業への転換を目指す。電機業界で過去最大級の1兆円を投じ、遅れが目立つIT事業の世界展開を一気に進める。欧米の競合が先行していた製造業のソフト化が日本でも加速する。

31日、96億ドル(約1兆368億円)を投じる買収を発表した。7月をメドにスイスの大手投資フ…

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7月をメドにスイスの大手投資ファンド、パートナーズ・グループなどの既存株主から全株式を取得する。

2000年創業のグローバルロジックは米シリコンバレーに本社を持ち、デジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するシステムを提供している。年間売上高は1000億円強で、米通信大手のTモバイルやスウェーデンの商用車大手ボルボなど欧米の大手企業を中心に世界400社超の顧客を抱える。

日立は鉄道やエレベーター、電源設備など多くの産業向け機器を商品群に持つ。変圧器は受注額のシェアで世界首位だ。

ただ中国勢などの追い上げが激しく、ハード機器を売るだけでは十分な収益を確保できなくなっている。対応策としてデータの収集や分析を駆使した独自のIoT基盤サービスを16年に投入。例えばエレベーターの機器と同サービスをセットで売り込み、センサーデータを基に故障を予知して早期の部品交換を促すビジネスを展開している。

鉄道でも、車両に加えて乗客の増減を基に運行ダイヤを柔軟に変えるIoTサービスを顧客に提案している。ソフトサービスは利用に応じて売り上げが発生するためハード機器売りと組みあわせれば利益率の向上にもつながる。

オンラインで記者会見する日立の東原敏昭社長(3月31日)
デジタルシフトを急ぐなかで課題は海外展開だ。現状ではIT事業は国内官公庁や金融機関向けが中心で海外売上比率は3割程度にとどまる。日立全体の約5割と比較しても見劣りする。IoTシステムの構築は顧客と一体となった開発が不可欠だが、海外での足場が弱く相手の要求に応じきれないなどの限界があった。

グローバルロジックは製造現場などから吸い上げたデータを活用し、経営全体の改善までつなげるシステムの構築などに強みがある。また世界各地に開発や顧客との接点となる拠点網がある。同日、記者会見した東原敏昭社長は買収について「グローバル展開を加速させるためだ」と明言。1兆円の金額も「妥当だ」と述べた。

IT技術を取り込んでの構造転換は欧米製造業が先行する。独シーメンスは家電や通信機器などの事業の株式を売却。一方で産業用機器からデータを集めて分析する新サービスを強化し、故障予知などのビジネスを拡大している。米ゼネラル・エレクトリック(GE)もデータ分析を使った産業向けIoT基盤「プレディックス」を展開している。

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杉本貴司
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別の視点(再掲)
もはや日立製作所が社名から「製作所」を外してHitachiに変更しても驚かない。会社が向かうべき方向性をはっきりと示したと言えます。課題解決型のIoTプラットフォーマーへの大転換を、グローバル規模で進められるか――。割高との指摘もありますが、その決意がにじむ超大型ディールだと思います。

ものづくりからソフトウエア主導の企業への転換は日本の電機産業全体の課題です。パナソニックもブルーヨンダーの買収交渉が伝えられ、1日はソニーが社名を変更。エレクトロニクスの会社から「テクノロジーに裏打ちされたクリエイティブエンタテインメントカンパニー」への転換をうたう。日本の巨象はもう一度踊るか。

2021年4月1日 0:45いいね
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ファナック、中国でロボット工場増設 260億円投資

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『ファナックは260億円を投じて中国上海市で産業用ロボットの工場を増設する。中国経済は新型コロナウイルス禍から立ち直り、「製造強国」を目指して電子機器など様々な分野で生産の自動化を推進している。産業用ロボット自体の国産化も進められるなか、ファナックは大型投資で需要をとらえて中国でのシェア首位を守る考えだ。

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投資額は260億円で、ファナックの中国での一度の投資としては過去最大となる。増設部分は2023年中に稼働。工場の敷地面積は従来の5倍の合計34万平方メートルに広がる。

ロボット本体は従来通り本社工場(山梨県忍野村)など国内で生産し、輸出する。部品の質は日本メーカーの方が高いためだ。上海市の工場では顧客ごとの要望に応じてロボットの手やセンサーを交換し、プログラムを設定するなどカスタマイズする能力を高める。

大型投資の背景にあるのは、中国で幅広い分野で高まる自動化需要だ。従来から活用されていた自動車分野だけでなく、電子機器や建設機械の生産、物流分野でもロボット導入が加速している。

国際ロボット連盟によると19年時点で国別の産業用ロボット稼働台数は中国が78万台と最多だが、製造業の従業員数あたりの台数では日本の半分で成長余地は大きい。人件費の上昇も自動化を後押しする。上海市の最低賃金は16年比で13%、江蘇省も14%増えた。

中国のロボット需要を巡っては安川電機も約50億円を投じ、江蘇省にある既存工場の隣に新しい工場を22年度中にも稼働させる。スイスABBも21年中に、上海市で約170億円を投じた新しい工場を完成させる。

一方、中国は産業用ロボットの国産化も狙い、現在3~4割の自国メーカーのシェアを25年に7割まで高める目標を掲げている。17年には美的集団が産業用ロボット世界大手の独クーカを買収するなど技術取得を意欲的に進めている。

現地調査会社MIRによると、19年時点の中国でのシェアはファナックが12%と首位で、ABB(11%)や安川電機(8%)が続く。ファナックは中国勢との競争に勝つためにも、膨らむ需要をいち早くとらえる考えだ。

ルネサス火災「生産再開1カ月」 車メーカー追加減産も

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ210H40R20C21A3000000/

『半導体大手のルネサスエレクトロニクスは21日、火災により生産停止中の那珂工場(茨城県ひたちなか市)の生産再開に1カ月程度かかるとの認識を示した。半導体は工程が多く一般的に製造に2~3カ月かかり、供給正常化までに3カ月超かかる計算だ。米中貿易摩擦や需要急増で世界で不足する車載半導体は、2月中旬の米国の大寒波で現地工場が止まり拍車がかかる。自動車メーカーの追加減産のリスクが高まっている。

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ルネサスの柴田英利社長が21日の会見で「1カ月以内での生産再開にたどりつけるよう尽力する」と述べた。ただ「一部では不透明感がある」として遅れる懸念も示唆。生産停止が「半導体供給に大きな影響になると危惧している」と話した。

火災は19日午前2時47分に発生し約5時間半後に鎮火した。先端品の量産を担う直径300ミリメートルの半導体ウエハーに対応した生産ラインに被害が出たが、主に自動車の走行を制御するマイコンと呼ぶ半導体を生産している。ルネサスは約2割のシェアを持ち、世界で2番目に売上高が多い。トヨタ自動車や日産自動車などに供給している。伊藤忠総研の深尾三四郎上席主任研究員は「自動車産業は半年くらい(半導体が)調達難となる可能性が高い」と指摘する。

ルネサスによると「仕掛かり品を含め在庫は1カ月しかない」状況だ。半導体商社の担当者は、メーカーとの仲介役である代理店の保有分とあわせた在庫は2~3カ月分で「車メーカーや部品大手にはほとんど在庫はない」とみる。生産途中だった在庫を使った出荷は早期にできても、火災前の供給水準には3カ月超かかるもようだ。

ホンダは「今すぐ影響は出ないものの(停止が)1カ月となると在庫が切れ始める4月以降に生産への影響が出てくるだろう」と21日にコメント。「ルネサス製以外の製品への代替などで工場を止めないよう調整していくことになる」とする。トヨタは生産車種の変更や代替生産の可能性なども踏まえ、生産への影響台数を精査する。

英調査会社オムディアの南川明氏は「国内メーカーを中心に世界での影響は数万台では収まらないだろう」と話す。ルネサスは自社工場や外部での代替生産を検討するが、300ミリメートルの生産ラインは那珂工場にしか保有していない。少量多品種向けの200ミリメートルの生産ラインで代替生産しようとしても、そのラインも火災で止まった旭化成の半導体工場の代替生産などで稼働率は高く、穴埋めは難しい。

ルネサスの那珂工場は2011年の東日本大震災で被災し操業を約3カ月止めた。自動車生産が打撃を受け「ルネサス・ショック」と呼ばれた。今回は世界で需給が逼迫している中での停止で広がりが懸念されている。

ルネサスエレクトロニクスの半導体工場で起きた火災現場の様子(同社のオンライン会見資料より)

2月に米南部テキサス州に寒波が襲来して大規模停電が起き、マイコンのシェアで世界首位のオランダNXPセミコンダクターズと、3位の独インフィニオンテクノロジーズの工場が停止した。NXPは3月上旬にテキサス州内の工場で約1カ月分の生産が失われたと発表。インフィニオンは生産が元の水準に戻るのは6月になるという。

こうした半導体不足などを受け、18~19日には日産や米フォード・モーター、トヨタが工場を停止した。そこにルネサスの火災が加わり、車載半導体3強のそれぞれの工場が停止する異常事態となっており、不足懸念が高まっている。

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深尾三四郎
伊藤忠総研 上席主任研究員
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ひとこと解説 現時点では状況は極めて深刻だと考える。完全復旧まで半年はかかるだろう。
焼損面積が小さくても、僅かな埃の付着も許されないクリーンルーム(CR)に煤(すす)が入ってしまったのは一大事。また、半導体の世界需給が長らくひっ迫している状況下で、社内外での代替生産の余力もなく、焼損した設備の代替調達をしようにも、装置在庫も少ないだろう。2階のCRが無傷とはいえ、1階のCRと一体運営されており、稼働低下の範囲が焼損面積より大きい。復旧に向けては、被災した1階CRの清掃、代替装置の調達・搬入、設備の組み直しや装置の再調整、再発防止策の構築などが必要で、1か月以内で生産再開に漕ぎ着けるのは至難の業だと思う。

2021年3月22日 6:51いいね
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梶原誠
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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分析・考察 米中などでの販売増で、自動車メーカーの国内工場の稼働率が上がっていました。低迷していた日産自動車の株価も昨年11月を境に大きく回復しています。それだけに今回のことは気がかりです。国内景気は「世界景気の回復と円安」という追い風と「五輪での海外観光客の受け入れ見送り」という逆風がぶつかる構図を描いていましたが、逆風側に1要素加えなければなりません。

2021年3月22日 7:50いいね
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日銀、緩和副作用に配慮 株や国債「市場支配」意識

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『日銀が19日の金融政策決定会合で決めた政策修正は、8年間に及ぶ大規模緩和で生じた副作用への配慮が色濃くにじんだ。上場投資信託(ETF)の購入を柔軟にしたり、長期金利の変動幅を事実上広げたりして緩和の持続力は高めたが、肝心の2%の物価目標の達成は遠い。資産市場における日銀の存在感が過度に高まり、緩和策をやめられなくなっている実態も浮かぶ。

日銀は2013年4月から大規模な金融緩和策を始めた。黒田東彦総裁…

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黒田東彦総裁は「2年で2%の物価上昇目標を念頭に、必要な措置はすべて取った」と宣言し、国債やETFなどを大量に買う異例の政策を決めた。長短金利操作などの政策変更を経つつ緩和策を続けたが、8年たっても2%目標達成の道筋はみえない。足元の消費者物価は新型コロナウイルス禍の影響もありマイナス圏に沈む。

それでも日銀が大規模緩和を続行するのは、物価の押し上げ効果を見込むというよりも自らの市場での存在感が高まりすぎ、安易に「出口」に向かえなくなっている面がある。日銀の国債保有比率は13年3月末の13%から昨年末に45%まで高まった。コロナ対応の財政出動で公的債務残高は一段と積み上がり、日銀が超低金利政策を続けて財政不安を防ぐ構図も強まっている。

国債市場は「日銀支配」で値動きが乏しくなり、金融機関の収益機会の喪失といった副作用が出ている。日銀が今回の政策修正で長期金利の誘導策で認める変動幅を見直し、プラスマイナス0.25%程度と若干広げたのも、市場機能の一段の低下を食い止める狙いがある。だが、多少の金利変動を認めても効果には限界がある。

日銀のETF購入も難路に入っている。開始から10年以上がたち、ETFの保有残高は時価で約50兆円に膨らんだ。東京証券取引所の時価総額の約7%を占める。「物言わぬ株主」の日銀の存在が企業の経営監視の緩みにつながるといった批判が出ている。

こうした副作用を意識し、日銀は政策修正で原則年6兆円としていたETF購入額の目安を削除した。これまでは株高局面でも「緩和の後退」と受け取られるETF購入の大幅減に動きづらかった。今後は市場が混乱した場面でのみ買うなどよりメリハリをつけた対応が可能になる。

ただ、黒田総裁は19日の記者会見で「ETFの買い入れを減らそうとか、(売却による)出口を考えているわけでは全くない」と語った。株式市場への影響の大きさを考慮し、日銀が自ら出口戦略を語れない状況に陥っている。

緩和策を続ける主目的は物価上昇ではなく、市場の安定に変質しつつある。黒田総裁は「市場の安定に向けた対応と物価目標の達成は矛盾せず、表裏一体だ」と強調した。現実には、強力な金融緩和が生んだ歴史的な株高とデフレ懸念のくすぶる物価との不均衡は広がる。

コロナ禍の影響が残るなかで経済・物価を下支えする緩和策を続けつつ、資産バブルの助長や金融システムの揺らぎなど、新たな危機の発生を抑えられるのか。黒田日銀の政策運営は一段と難しさを増した。

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