健康保険証 「誤り3万件」が映すマイナンバーの不思議 知っ得・お金のトリセツ(45)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB056F00V00C21A4000000/

『菅義偉首相肝煎り、「デジタル庁」の発足が間近だ。関連法案は6日に衆院を通過し月内にも成立する見通し。デジタルガバメント成否のカギを握るのはいわずと知れた個人番号、通称・マイナンバー。日本に住む1億2000万人超の全員に割り振られている12ケタの数字だ。1960年代まで遡る国民的な侃々諤々(かんかんがくがく)を経て制度そのものは5年以上も前に発足したにもかかわらず、いざ使いこなそうとすると必要になるプラスチック製のICチップ付きカード(マイナンバーカード)の普及率は1割前後の低空飛行を続けてきた。皮肉にも新型コロナウイルス禍での10万円給付金の配布を巡るドタバタで必要性が認識され、税金によるキャッシュバック、マイナポイント事業も相まってようやく3割弱まで普及が進んだ。

個人情報の誤り3万件

だが、問題は依然山積み。最近ではマイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにする「マイナ健康保険証」の稼働が予定の3月下旬から半年程度の延期を余儀なくされた。”好例”という言葉は適切ではないが「なんでそんな問題が起きるの?」と素朴に疑問を持つと、マイナンバーを取り巻く課題が浮かび上がってくる。

本来であれば3月下旬には準備ができた病院・薬局の受付に顔認証用のカードリーダーが設置され、マイナンバーカードを読み取らせれば瞬時に本人確認ができるシステムの本格導入が始まるはずだった。だが昨年10月以降、健康保険組合など公的医療保険の保険者が持つデータとマイナンバーを突き合わせる作業を進める中で、氏名・年齢など本人の基本情報とマイナンバーとが合致しないケースが多数発見されたのだ。その数は2月には最大3万件に達した。マイナ保険証は受付だけでなく医療データの収集・閲覧も可能な機能を持つため、このまま本番に突入すれば最悪の場合、自分の特定健診データや薬剤情報などが他人の目に触れる恐れさえあった。

データ扱う保険者は約3000 随所にヒューマンエラーの可能性

一体、なぜ? 原因は保険者が持つデータにマイナンバーを加える際の誤りとみられる。国民皆保険の日本では全員が何らかの公的医療保険に加入している。自治体が運営する市町村国保や公務員が入る共済組合の他に民間企業が母体の組合健保や協会けんぽなど計3000以上が存在する。ザックリ割ると1保険者平均10の誤入力があった計算だ。多いか少ないかは微妙だが、保険者によるマイナンバー収集過程を考えると確かに随所に誤りが起きる可能性を内包している。

マイナンバーは「番号法」という法律にガチガチに縛られ運用される。企業や団体はむやみに個人に対して番号の提供を求めてはならず、その取得や保管・管理にも罰則規定のある厳しいルールが課されている。健保は個人から直接マイナンバーの提供を受けられる主体でないため、通常企業を経由して番号を入手する。そして企業の場合の入手方法は会社員個人からの自己申告だ。

12ケタもある個人番号を手書きで提出すれば誤記の可能性は常にある。しかも家族で1番号の健康保険証に対し、マイナンバーは個人ごとの番号だから5人家族なら誤記の可能性も5倍に。原本(マイナンバーカード、もしくは通知書のコピー)との突き合わせ確認をしているはずだが、現場でどこまで徹底できているかは疑問も残る。さらに大企業では外部のデータ入力会社に作業を委託するケースも多い。会社→委託会社→健保と関係者が増えれば、誤入力や情報漏洩の危険性は増大する。

強制と任意のはざま 定まらぬ覚悟

問題のあった3万件については厚生労働省がそれぞれの保険者に伝え、担当者が人海戦術で潰していった結果、現時点では問題はほぼ解消しているという。今後は「ヒューマンエラーが起こりうることを前提にシステム対応を強化する」(厚労省)。この手のことに百%ミスなしがあり得ないのは当然だが、効率化のための仕組みづくりなのに逆説的に膨大な作業量が生じているのは皮肉な現状だ。

それも「なぜ?」と考えるに、行政と国民の間で土台となる共通認識が欠如している現実に行き着く。マイナンバーとはどういう数字で、どう生かし、どう規制するか――。議論の整理を避けたまま運用の拡大は続く。マイナンバー自体は日本に住む全員に好むと好まざるとにかかわらず、いわば強制的に付番されている。にもかかわらず「自己情報コントロール権の侵害」という批判を恐れてか、運用プロセスにおいては随所で「任意」を組み込むことで不要なヒューマンエラーを呼び込んでいるようにもみえる。任意でつくるマイナンバーカードの低普及率しかり、健保の情報収集の誤りしかりだ。問題の在りかについて同志社大学の北寿郎教授は「政府側にマイナンバーを使う覚悟ができていないという根本的な問題があり、利用者側にも誤解を含めてそんな政府を信用していないという事情がある」と指摘する。

山本由里(やまもと・ゆり)

1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー編集センターのマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

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福島沖の洋上風力発電 撤去、消える復興の夢

福島沖の洋上風力発電 撤去、消える復興の夢
海と水辺の散歩
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 ※ 全く世の中、あちら立てれば、こちら立たずだ…。

 ※ せっかく、漁業権と折り合いつけて、「浮体式洋上発電事業」を試みても、「600億円の国費」投じて、データ取っただけか…。

 ※ そういうムダが、次の展開につながればいいんだが…。

『東日本大震災から10年、この間おこなわれた「復興事業」のひとつに、福島沖洋上風力発電実証事業がある。目的は、世界初の複数基による浮体式洋上風力発電システムの安全性・信頼性・経済性を明らかにすること、福島沖での実証と事業化により風力発電関連産業の集積を期待することなど。

楢葉町沖合20キロメートルには3基の浮体式洋上風力発電施設と1基の変電機が設置された。ところが昨年12月、政府は不採算を理由に、設…

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ところが昨年12月、政府は不採算を理由に、設置した施設を21年度に全て撤去することを決めた。

洋上風力には、陸上と比べて風況が安定的、土地利用規制などの制約を受けずに複数の発電施設の設置も可能、騒音や鳥類の衝突などの環境問題の緩和などの利点がある。

福島沖に置かれたような、沖合で、チェーンなどで海底に連結する浮体式には、塩害対策や遠隔監視といった海上ゆえに必要な技術の開発、海底に基礎やケーブルなどを設置するためにかかる費用の削減、海面利用者である漁業者との調整など、実用化にはさまざま課題はあるものの、脱炭素社会を図る手段として、世界的に期待が高まっている。

震災での原発事故を経て、福島県は「原子力に依存しない、安全・安心で持続的な発展可能な社会づくり」にかじを切った。2011年夏、県は風力発電事業要望書を政府に提出し、同年の第3次補正予算で「福島復興・浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業委託費」(経済産業省)に125億円が措置された。

県は、自然エネルギー産業による地域の雇用創出とエネルギー生産に、製造業がさかんで小名浜港を擁するいわき市は「ものづくりの街」の復活に、大いに期待を寄せた。漁場で実施される事業に反対していた漁業者たちも、漁業との共存共栄をはかるという関係者の説得に、これを受け入れた。

では、肝心の技術開発はどうなったのか。事業は大手の重電・海洋・造船・素材メーカー、商社など10社、1大学からなるコンソーシアム(共同事業体)が請け負った。コンソーシアムのパンフレットには「東日本大震災の被害からの復興に向けて,再生可能エネルギーを中心とした新たな産業の集積・雇用の創出を行い、福島が風車産業の一大集積地となることを目指しています」とある。

だが、早くから機器の不具合や稼働率の低さが報じられていた。特に世界最大級の風車(7メガワット機)については、経産省が委託した専門家委員会が18年に「商用運転の実現は困難であり、早急に発電を停止し、撤去の準備を進めるべきだ」と提言した。残った2基も、実用化に向けて引き継ごうとする事業者はいなかった。

投じられた国費は約600億円。データは取れたというものの、県や自治体が切望した自然エネルギーも地元の雇用も産業も生み出すことなく、洋上風力は福島の海から姿を消そうとしている。洋上風力による復興という福島の大いなる夢を深い失望に変えて、事業にかかわった方々は今、どのような思いをお持ちなのだろうか。復興の文脈における事業の検証を望みたい。

(東京海洋大学教授 川辺みどり)

50年排出ゼロ宣言、自治体急増 総人口1億人超え

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGG2645P0W1A220C2000000/

『温暖化ガスの排出を2050年までに実質ゼロとする目標を宣言した自治体が増えている。19年9月には4自治体だけだったが3月上旬には300を超え、総人口は1億人を上回った。長野県や横浜市など積極的に取り組む地域もある。ただ自治体ごとに取り組みには濃淡があり、今後は具体性が問われる。

菅義偉首相は20年10月26日に政府として「50年ゼロ」を宣言したが、一足早く地方で進んでいる。19年9月時点で宣言した…

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19年9月時点で宣言したのは東京都、横浜市など4自治体だけだったが、首相の宣言時には166自治体に増えていた。

「ゼロカーボン宣言をした自治体の人口カバー率は日本が世界最大ではないか」。21年2月、小泉進次郎環境相は米バイデン政権で気候変動対策を担うジョン・ケリー大統領特使とのオンライン会談で、旗振り役として取り組んだ成果を強調した。

先行するのは長野県だ。20年4月に「気候危機突破方針」を発表し、再生可能エネルギーの生産量を3倍以上にする工程表を作った。全ての建物に50年までに太陽光パネルを設置することを例として挙げる。河川や農業用水などを使う小水力発電も導入できる場所に全て設置するとした。

21年度予算で10億円規模の「ゼロカーボン基金」を新設した。太陽光や小水力、バイオマス発電の立ち上げ資金の貸し付けをする。ゼロカーボンに役立つ技術開発をする企業への補助金にもあてる。県立大学の電力を100%再生エネに切り替えた。県によると国公立大学では全国初となる。

京都市は3月、国内の自治体として初めて、英国やカナダ政府が主導する「脱石炭連盟」に加入した。石炭火力の廃止やクリーンなエネルギーへの転換を求める組織で約35カ国、約35自治体などが加盟している。

横浜市は青森県や岩手県など東北の13市町村と再生可能エネルギーを融通する連携を進めている。東北地方で生み出した電気を横浜市内に供給する予定だ。電気代の一部を東北地方の地域活性化に使う。

エネルギー消費量が大きい大都市は、域内の省エネや再生エネ導入だけで50年ゼロを達成することが難しい。温暖化ガスの排出量を上回る削減効果を実現する「カーボンマイナス」を達成した自治体との協力が重要だ。横浜市らの連携は先行例と注目されている。

東京都や横浜市など大都市の自治体は宣言によって再生エネを調達しやすいことをアピールし、企業誘致など投資を呼び込む狙いだ。過疎の進む自治体は、経済の域内循環や雇用創出、災害に強い街づくりにつなげる。企業からは工場やオフィスに再生エネを求める声が大きくなっている。

政府は自治体の取り組みを後押しする。地球温暖化対策推進法改正案(温対法)では、自治体に再生エネ導入の目標設定を義務づける。20年末から始めた国・地方脱炭素実現会議で6月にも、地域の脱炭素の工程表を作るなど具体的な取り組みを急ぐ。

現状では、大多数の自治体は宣言しただけで具体策はこれからだ。早稲田大学の大塚直教授は「宣言によって自治体はスタートラインに立った。温対法に基づいて再生エネの導入計画を作り実行するといった具体的な取り組みが必要だ」と話す。

世界でも、自治体が気候変動対策で主要な役割をしている。米カリフォルニア州は独自にガソリン車を35年までに禁止する。同州バークリーでは新築住宅や商業施設で天然ガスを禁止するなど独自の取り組みを進めている。日本も自治体や企業の本気度が問われる。(気候変動エディター 塙和也、岩井淳哉)

「グリーン水素」へ東芝系など挑む 脱炭素の切り札に

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ231ZP0T20C21A3000000/

『燃焼時に二酸化炭素(CO2)を排出しない水素は、カーボンゼロ実現に向けた有望なエネルギーだ。その製造過程でもCO2を一切、排出しない水素が「グリーン水素」だ。製造に必要な電力は再生可能エネルギーを使う。グリーン水素を作り出す水電解装置の開発・製造では日本、欧州を中心に世界各社がしのぎを削る。

従来型より電力を3割削減へ
横浜市の臨海工業地帯にある東芝エネルギーシステムズの京浜事業所。ここでは燃料電池の…

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ここでは燃料電池の技術を応用した次世代型の水素製造装置の開発が進む。目指しているのは省電力だ。装置が完成すれば、従来型より電力を3割削減できるようになる。

水素には様々な製造法があるが、グリーン水素は水を電気で分解して作る。水電解の方法は、水素の取り出しにイオン交換膜を使う「固体高分子形(PEM形)」と強アルカリの水溶液に電流を流す「アルカリ形」の2つが主流だ。

一方、東芝エネルギーシステムズが開発を進めるのは燃料電池の技術を応用した「固体酸化物形(SOEC)」と呼ぶ方式。水素と酸素を反応させて電気を生み出すのが燃料電池だ。これを逆にして水蒸気と電気から水素を作るのがSOEC方式の水電解装置だ。エネルギーシステム技術開発センター化学技術開発部の長田憲和氏は「PEM形やアルカリ形に比べ省電力に優位性がある。20年代後半には実用化したい」と話す。

製造システムの低コスト化を目指すのはPEM形を製造する日立造船だ。構造を簡素化し部材を減らすなどして、従来品よりも製造費用を抑える製品を開発している。

相次ぐ大規模プロジェクト

グリーン水素を製造する水電解装置の開発では、欧州メーカーが先行している。装置を大型化し、大規模なグリーン水素の製造プロジェクトを次々と打ち出している。

独シーメンス・エナジーは15年から欧州などで大型の水素製造装置の出荷を始めた。19年にはオーストリアで6000キロワットの再エネ電力を使った水素製造装置を納入した。現在は1万7500キロワットの電力で年間約2900トンの水素を製造できる装置の開発に着手している。対応する電力容量が増えれば増えるほど大量の水素を製造できる。

英ITMパワーは、2万4千キロワットの電力で水素を製造する装置を22年後半にも稼働させると発表。ノルウェーのネルもスペインなどで太陽光発電を利用した大規模な製造拠点を展開している。

一方、日本でもグリーン水素の大規模製造プラントの建設が始まっている。旭化成は福島県浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド」で1万キロワットの太陽光発電の電力に対応した製造設備を納入。年間900トンの水素を製造でき、現時点では世界最大規模だ。

地熱発電を利用する取り組みも始まる。21年7月をめどに大林組は大分県九重町で実証プラントを設置する。

ただ、日本国内ではプラントの大型化に課題がある。ボトルネックになるのが再生エネ電力の価格だ。火力発電が主力の日本では再生エネ電力の価格が高止まっている。一方、メガソーラーや大規模な洋上・陸上風力発電設備の設置が進んでいる欧州では安価で再生エネ電力が調達できる。建設費などを含めた再生エネの発電コストを比べると日本は英国やドイツの2~3倍にもなる。

一方、日欧メーカーでタッグを組む事例も出てきた。三菱重工業は20年10月、ノルウェーのハイドロジェンプロに出資。ハイドロジェンプロは、1日あたり水素を4.4トン製造できる9000キロワット級の水電解装置を開発している。

欧州が先行し、日本が技術に磨きをかけている水電解装置だが、北米でもグリーン水素製造に動き始めた。20年11月、エンジンメーカーの米カミンズはカナダの水素製造装置メーカー、ハイドロジェニックスを買収。

今後は中国メーカーの本格参入も見込まれる。上海電気は中国科学院大連化学物理研究所と提携してPEM形のR&Dセンターを新設すると発表。中国では大型プラントの開発計画もある。

日本政府も重視

日本政府は20年12月に発表した「グリーン成長戦略」で水素を重要な産業の一つに位置づけた。経済産業省は水電解装置は50年までに年間で約8800万キロワットの導入が進み、年間の市場規模が約4兆4000億円にまで及ぶと予測する。日本よりも再生エネの導入が先行する欧州市場への日本企業の参入を促す政策も打ち出している。

世界に先駆け水素に着目し、技術開発を続けてきた日本メーカー。だが実用化・大型化では欧州に遅れをとっている。今後は技術力を生かし、海外勢にない製品をスピーディーに市場に投入する開発体制が求められる。

水素は無色透明な気体だが、カーボンゼロの観点から色分けされている。

製造過程で完全に二酸化炭素(CO2)を排出しないのがグリーン水素。水を電気分解して水素を取り出す過程だけでなく、使用する電気も再生可能エネルギーを使う。もし火力発電など化石燃料由来の電力を使うとグリーン水素とは呼べなくなる。

一方、現在世界で作られる水素の9割以上は、もっともレベルの低いグレー水素だ。天然ガスや石炭など化石燃料を燃やしガス化して抽出する。その際、CO2が発生し、大気に放出するとグレーとなる。CO2を地中に埋めてとじ込め、大気中に放出しなければブルー水素になる。

ほかにターコイズ水素もある。天然ガスなどに含まれるメタンを電気で熱分解する製法で、炭素を固体化することでCO2を排出しない。使用する電気は再生エネルギーを使う。さらにはグリーン水素と同じ水電解で、原子力の電力を使うイエロー水素もある。

水素自体はエネルギー源として使うため燃焼させてもCO2を発生しない。だが、その製造過程でCO2を排出してしまってはクリーンエネルギーとは呼べない。最終的にはグリーン水素の製造を目指す動きが欧州を中心に活発になっている。

(柘植衛)

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脱炭素有識者会議が初会合 首相「国際社会の議論主導」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE312Q90R30C21A3000000/

『政府は31日、首相官邸で温暖化ガス削減を議論する有識者会議の初会合を開いた。菅義偉首相は「世界の脱炭素化に積極的に貢献し、国際社会の議論をリードする」と述べた。2050年の温暖化ガス排出実質ゼロの達成に向け、30年までの削減目標や炭素税のあり方を検討する。

学習院大の伊藤元重教授が会議の座長に就いた。ソニーの吉田憲一郎会長兼社長や三井住友フィナンシャルグループの国部毅会長、イオンの三宅香環境・社会貢献担当責任者ら各業界の代表や…

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ソニーの吉田憲一郎会長兼社長や三井住友フィナンシャルグループの国部毅会長、イオンの三宅香環境・社会貢献担当責任者ら各業界の代表や専門家ら10人が参加した。

政府は今夏をメドにまとめる30年までの排出削減目標など関連政策の計画を策定する。有識者会議の議論を政府の計画づくりに反映させる。

首相は「次なる大きな成長戦略を描くうえでも気候変動対策への取り組みは極めて重要だ」と指摘した。「国際的な潮流も踏まえつつ、日本の目指すべき方向性や将来ビジョンについてビジネスの現場や専門的な視点から忌憚(きたん)のない議論をお願いしたい」と語った。

首相は4月9日にバイデン米大統領との初めての首脳会談に臨む。22日には米国主催の気候変動サミットにオンライン形式で参加する。米国など主要国は30年の排出削減目標を重視する。有識者会議での議論を急ぐ。

安保関連の土地取引制限法案、実効性は? 有識者に聞く

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE2417B0U1A320C2000000/

『政府は26日、安全保障上で重要な土地の取引を調査・規制する新法案を閣議決定した。自衛隊の基地周辺や領海の基線となる国境離島で外国資本などが土地を買収し電波妨害や盗聴するのを防ぐ。私権制限への懸念を踏まえ、規制は個人情報保護に留意し「必要最小限度のもの」と明記した。

今国会で成立させ、2022年4月の運用開始をめざす。

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安保関連の土地取引、事前届け出を義務化 法案閣議決定
法案は自衛隊や海上保安庁の施設、原子力発電所など重要インフラからほぼ1キロメート…

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法案は自衛隊や海上保安庁の施設、原子力発電所など重要インフラからほぼ1キロメートルを「注視区域」に指定する。自衛隊司令部の近くや国境離島はより重要性の高い「特別注視区域」とみなす。

国が住民基本台帳などで所有者名や国籍といった最新情報と利用実態をつかみやすくする。重要施設への電波妨害や、ライフラインを遮断するおそれがあれば利用中止を勧告・命令する。従わなければ懲役2年以下か罰金200万円以下を科す。

特別注視区域の規制はより厳しい。所有権が移る場合、氏名や利用目的の事前届け出を義務付ける。届け出がなかったり虚偽の報告だったりすれば罰則の対象になる。

公明党は私権制限の拡大を懸念する立場で「自由な土地取引を阻害しかねない」と主張した。政府は対象区域に「経済的社会的観点から留意」と修正した。市街地など所有者の変化が頻繁な地域を除外できる。

海保施設や重要インフラの周辺は特別注視区域と法案で明記しなかった。離島の漁港も対象から外れる見通しだ。

兼原信克・同志社大特別客員教授「実態把握、経済安保に不可欠」

日本企業への出資などを規制する外為法は土地の売買を対象としていない。新法案で国内の土地取引を調査し規制できるようになれば穴埋めができる。

外資による土地買収は増えている。経済安全保障の観点からも、取引の実態把握は必要だ。これまでは国に権限がなかった。自治体の管理する住民基本台帳などを閲覧できるようになれば実態をつかみやすくなる。

法案が日本人と外国人を等しく扱う「内外無差別」の原則を守るのも評価できる。警戒すべき土地買収は外資だけでない。外資が背後にいる国内企業も安保上の脅威になり得る。

日本で自由な土地取引は規制できないしすべきではない。法案は規制について「最小限度」と明記した。市街地などを対象から外せるようにしたのは妥当な判断だ。

平野秀樹・姫路大特任教授「規制対象が限定的、実効性に不安」

外資の土地取引規制の法整備は大事な一歩だが実効性で不安な部分がある。

主な対象は防衛施設の周辺や国境離島の土地取引だ。中国資本による買収が相次ぐ森林や農地は事前届け出を義務付ける特別注視区域として想定していないという。

安保は防衛や領土にとどまらず、エネルギーや水、食糧、鉱物資源、医療物資と幅広い。法案に基づく調査や規制の対象が限定的になるなら効果に疑問符がつく。国土の利用実態がつかめぬまま、不当に使われ続けるリスクが残る。

日本のように地籍調査が不十分で、広大な所有者不明の土地を抱える先進国は珍しい。政府は法施行後、対象区域の指定や調査のあり方を改めて示す。市街地の画一的な除外など規制の対象や内容が過剰に制限され、実効性が骨抜きにされないよう注視したい。

東北新社の衛星放送チャンネル、5月に一部認定取り消し

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF260V00W1A320C2000000/

『武田良太総務相は26日の閣議後の記者会見で、放送事業会社「東北新社」の衛星放送事業の一部の認定を5月1日付で取り消すと発表した。取り消しの対象は洋画専門チャンネル「ザ・シネマ4K」。同チャンネルは認定を申請した2016年10月時点で放送法が定める外資規制に違反していたとして、武田氏が認定を取り消す方針を示していた。

武田氏は「処分にあわせて受信者への周知など必要な措置をとるよう要請した」と語った。そのうえで「総務省でも認定のプロセスにおける審査が十分でなかったと考えており、こうした事態を二度と起こさぬよう審査体制の強化について検討を進める」と述べた。

ザ・シネマ4Kは4月末で放送できなくなる。周知期間や同チャンネルの契約が1カ月単位であることを考慮し、5月1日付での取り消しとした。放送停止による受信機の誤作動を防ぐため、6月末までは放送終了を知らせるテロップなどの送信は認める。ケーブルテレビなど衛星契約以外の放送は継続できる。

総務省によると、衛星放送の事業認定取り消しは、2007年の別の企業の事例に続いて今回で2例目という。前回は外資規制違反ではなく、経営難による放送休止が理由という。

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放送法は外国法人が議決権の20%以上の株式を持つ場合は、衛星放送などの事業認定をしないと定める。東北新社は16年10月にザ・シネマ4Kの認定を申請し、総務省が17年1月に事業認定した。同社による総務省幹部への接待問題発覚後に、当時の外資比率が20.75%だったことが判明。総務省が取り消しに向け聴聞を実施していた。

東北新社がグループで運営する8チャンネルのうち、ザ・シネマ4Kの認定が取り消しとなる。東北新社はザ・シネマ4Kについて、17年9月に子会社の東北新社メディアサービスへの事業引き継ぎを申請し、同年10月に総務省が認可。現在は子会社が運営する。

東北新社は菅義偉首相の長男が勤務し、総務省幹部に対する複数回の接待が明らかになった。総務省は2月24日、同社から接待を受けたとして谷脇康彦前総務審議官ら幹部11人を処分している。

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技術流出対策に重点 政府、科技基本計画を決定

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE24D5Q0U1A320C2000000/

『政府は26日午前、2021年度から5年間の科学技術政策の指針となる「第6期科学技術・イノベーション基本計画」を閣議決定した。科学技術予算の総額を30兆円にする目標を掲げ、国際競争力の向上を目指す。

中国を念頭に技術流出を防ぐ対策を課題に挙げた。大学や研究機関と連携し、海外企業との共同研究について指針を整備する方針を示した。

基本計画は5年ごとに改定する。菅義偉首相が議長の総合科学技術・イノベーション会議でまとめた。日本の研究力を高め、世界的に需要が高まるデジタルトランスフォーメーション(DX)や脱炭素分野の技術革新を主導する狙いがある。

中国への技術流出の脅威が高まっているのを踏まえ、対策を強化する。基本計画には21年の早期に技術保護のための政府の方向性を示すと記した。経済安全保障の観点から海外機関との研究に関して、透明性を確保する仕組みの構築を目指す。

若手研究者の育成も進める。10兆円規模の大学ファンド(基金)を立ち上げ、運用益を大学の研究支援に充てる方針を盛り込んだ。25年度までに生活費相当額を受給する大学院博士課程の学生を約3倍に増やす目標も掲げた。

【関連記事】
先端技術開発に「倫理観」 文理融合、問われる本気度
「大学改革へ法的枠組み」次期国会に提出 首相表明
DX・脱炭素が柱 6期科技計画、研究力高まるか

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安保関連の土地取引、事前届け出を義務化 法案閣議決定

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE252I80V20C21A3000000/

 ※ これも、「やっとか…。」だな…。

 ※ 北海道のどこだかで、やたら「広い土地」が購入され、「外人租界」みたいになっている…、という記事を見たのは、いつだったか…。確か、サンケイの特集だったような気がする…。

 ※ まだ、win7の頃の話しだ…。

 ※ あれから、何年くらい、経ったのか…。

 ※ 『 北海道の千歳市議会では14年、中国資本が航空自衛隊千歳基地に近い苫小牧市内の森林を買い取ったと報告された。 』

 ※ これだとすれば、7年前の話しだ…。

『政府は26日、安全保障上で重要な土地の取引を調査・規制する法案を閣議決定した。自衛隊施設の周辺や離島の土地を取得する場合、氏名や国籍、利用目的を事前に届け出るよう義務付ける。過度な私権制限を防ぐため、規制は「必要な最小限度」と記した。

「重要土地調査等法案」の今国会成立をめざす。2022年4月にも運用を始める。

【関連記事】
安保関連の土地取引制限法案、実効性は? 有識者に聞く

領土問題を担当する小此木八郎国家公安委員長は26日の記者会見で、自衛隊施設周辺や国境離島での不透明な土地買収について「長きにわたり問題視されてきた」と指摘した。「法案は積年の課題への第一歩として大変意義がある」と述べた。

法案は自衛隊や米軍、海上保安庁、重要インフラの施設からほぼ1キロメートルを「注視区域」に指定する。有人、無人の離島も対象になる。政府は住民基本台帳などを使って所有者の氏名や国籍を調べられる。

なかでも自衛隊の司令部や領海の基線となる国境離島は特に重要性の高い「特別注視区域」に分類する。一定面積以上の土地取引に対し、あらかじめ氏名や住所、国籍、利用目的を届け出させる。

対象の区域内で隣接する防衛施設などへの電波妨害や盗聴を確認すれば、利用の中止を勧告する。勧告で改善しない場合は強制力を伴う命令を出す。それでも従わなければ懲役2年以下か罰金200万円以下の罰則を科す。

特別注視区域の取引で事前の届け出がなかったり、虚偽の報告だったりすれば不正利用が確認されていなくても罰則の対象になる。6カ月以下の懲役か罰金100万円以下とする。

政府は対象区域の指定や勧告を出すかどうか第三者の意見を聞いて決める。有識者らでつくる「土地等利用状況審議会」を22年度にも創設する。法施行後、不正な土地利用の防止に向けた基本方針をまとめる。

土地取引を巡る過度な私見制限を危惧する公明党に配慮し、法案は原案から修正した。規制は必要最小限になるよう義務付けた。対象区域の指定は「経済的社会的観点から留意」と記し、所有者が頻繁に変わる市街地などを除けるようにした。

こうした土地の所有者は国籍を問わず調査・規制の対象になる。外国人を日本人と等しく扱う「内外無差別」の原則をとる。外資が背後にいる国内企業が規制の網から漏れるのを防ぐ。

背景には外資による日本国内の土地買収の増加がある。長崎県対馬市で13年、韓国系企業が海上自衛隊施設の隣接地を買収した事例が取り上げられた。北海道の千歳市議会では14年、中国資本が航空自衛隊千歳基地に近い苫小牧市内の森林を買い取ったと報告された。

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データ移転ルール厳格に 自民・甘利氏、LINE問題踏まえ「保護不十分な国認めず」

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE249AB0U1A320C2000000/

『自民党ルール形成戦略議員連盟の甘利明会長はLINE利用者の個人情報が中国から閲覧可能だった問題を受け、日本のデータ移転ルールを厳格にするよう提起した。移転先について「データ保護のレベルが日本と同等の国や地域に限るべきだ」と述べた。

違反した場合、企業名を公表する仕組みの導入も促した。

2022年春に施行する予定の改正個人情報保護法は移転先の国名を特定し、本人の同意をとることなどを盛り込んだ。甘利氏…

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甘利氏は「日本が間に立ってつなぐ役割を果たすべきだ」と説いた。

日米欧で共通の基準ができれば「国際標準をクリアした国同士でしかデータを出せなくなる」と話した。経済安全保障の観点で、データ移転先から中国を事実上外すことなどを想定する。

LINEは今回の問題を踏まえ、中国で日本で利用する人の情報を扱うサービス開発やデータの運用をしない方針に切り替える。

中国は17年に国家情報法を施行し、民間企業や個人にも情報活動への協力を義務づけた。LINE利用者のデータも中国の委託先を経由して中国当局にわたるおそれがある。

甘利氏は「これはLINE1社の問題ではない」と強調した。「データ処理やアプリ開発で中国に委託し、もっと深刻な問題を抱える企業もあるようだ」とも指摘した。

各省庁にそれぞれが所管する業界を通じ、中国の委託先企業の実態を調査するよう指示したと明らかにした。

現行の個人情報保護法は利用者が同意すれば個人情報を国外に移したり、日本にある情報を海外から見られるようにしたりするのを認める。

LINE側は利用者向けの指針で「パーソナルデータを第三国に移転することがある」と明記しており、法的な問題はないと主張している。甘利氏は「個人情報にかかわる重要な項目は真っ先に読まれるように改善を指導すべきだ」と訴えた。

日本は20年に個人情報保護法を改正した際、EUの「一般データ保護規則(GDPR)」を参考にした。GDPRはイラストなどを使って利用者に理解されないと同意を得たことにならないと定める。

LINEは日本発のプラットフォーマーとして期待されるIT(情報技術)大手だ。甘利氏は「プラットフォームは公的インフラであり、国益を意識してもらいたい」と呼びかけた。

グーグルやアマゾンなどGAFAにマイクロソフトを加えた米IT大手5社を意識したプラットフォーマーをめざすうえで「いい試練になったと捉えるべきだ」と言及した。LINE問題をきっかけに「日本全体で危機感が共有できる機会になった」と発言した。

データ流通のルールづくりを巡っては、安倍晋三前首相が19年の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)で、データ活用の分野で「大阪トラック」を提唱した。

プライバシーを尊重し信頼あるデータの自由な流通をめざす内容で、国家主導でデータを管理する中国に改善を求めた。

自民党のルール形成議連は経済と安全保障が密接に絡む経済安保のあり方を議論してきた。軍事転用可能な技術の流出防止や輸出管理などの強化策を考える狙いは中国への対応にある。

米国も先端技術が中国に流出するのを警戒し、企業や研究分野での中国政府の活動への監視を強めている。

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今村卓
丸紅 執行役員 経済研究所長
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ひとこと解説 日本企業は業種を超えて、ビジネスが米中対立の影響を受けていないか、経済安全保障リスクに直面していないか、今後の恐れはないかの点検が必要です。グローバルに国を意識せずに、コストや機能の優劣だけを基準にパートナー、生産拠点、委託先などを選べた時代は終わりました。経済安全保障も重要な基準として選ぶ必要があります。

コンプライアンスだけでは企業を守れないという危機感も必要です。経済安全保障のルールは形成途上であり、ただ法整備を待つことはリスクの放置と同じです。日本企業も政府渉外活動を強化し、自社に影響するルールを予測し、自らルール形成に積極的に参加することが求められていると思います。

2021年3月25日 14:02いいね
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滝田洋一
日本経済新聞社 編集委員
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分析・考察 LINE問題は個人情報保護と同時に情報安全保障の問題です。中国が2017年に施行した国家情報法では、民間企業や個人にも情報活動への協力を義務づけている。LINEについても実際にデータが流出したかしないかの前に、法制度上、中国の委託先を経由して中国当局にわたるおそれがある。そこに問題があるのです。

甘利氏がデータの移転先について「データ保護のレベルが日本と同等の国や地域に限るべきだ」と述べているのは重要です。中国はいわずもがなとして、政治的に中国への傾斜を深めている韓国などはどうなのか。事業者からの徹底的な聞き取りと早急な法制整備が望まれます。

2021年3月25日 12:46いいね
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村山恵一
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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ひとこと解説 個人データの取り扱いについてLINEは日本で「優等生」とみられてきました。そういう会社がこのような状況に陥ったことは重く、改めて日本全体でデータに対する意識を高める必要があります。社会、経済のためにデータを活用する流れは不可逆的です。これを機にデータ保護の体制をしっかり整え世界に発信できるくらいにならないと、国としての存在感、競争力が失われてしまいます。

2021年3月25日 12:16いいね
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