中韓、自民新総裁との距離感見極め 中国は反中政策警戒

中韓、自民新総裁との距離感見極め 中国は反中政策警戒
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM227SD0S1A920C2000000/

『【北京=羽田野主、ソウル=恩地洋介】29日投開票の自民党総裁選で、候補者の外交姿勢をとりわけ注視しているのが中国と韓国だ。中国は候補者が打ち出す対中政策が「反中」に傾いていると警戒する。韓国メディアにも日韓関係の改善を期待する論調は少なく、総裁選における安倍晋三前首相の影響力に注目が集まる。

「総裁選の候補者がこともあろうに中国カードを切り始めた」。中国共産党系メディアの環球時報は14日付の1面トップ記事で岸田文雄前政調会長の発言にかみついた。

動画投稿サイト「ユーチューブ」に出演した岸田氏が、中国によるウイグル族への人権侵害などに対処するため人権問題担当の首相補佐官を設ける考えを示したからだ。環球時報は「(中国への)人権カードを使って存在感を高めようとしている」と批判した。

中国はバイデン米政権と歩調を合わせ、中国に強硬姿勢をとる日本政府にいらだっている。岸田氏には「軽武装・経済重視の宏池会会長を務め、元外相として経験も豊富だ。注目している」(中国社会科学院日本研究所の楊伯江所長)と期待する声があっただけに、失望が広がっている。

中国メディアは河野太郎規制改革相が慰安婦問題に関する1993年の「河野談話」について「これまで自民党政権が継承してきた歴史認識は受け継いでいきたい」と発言したことに注目した。環球時報は河野氏が「親中派」とレッテルを貼られて批判にさらされていると伝えた。保守派の支持を得ようと「カメレオン」のように態度を変える可能性にも触れている。

高市早苗前総務相は「保守派」の筆頭格として知られる。「首相になった高市氏が靖国神社に参拝すれば、中日関係は大きく後退する」(北京の大学教授)と警戒する声が出ている。

「靖国神社に対する中国の立場は一貫し、明確だ。日本の政治屋は中国を持ち出すのをやめるべきだ」。中国外務省の趙立堅副報道局長は14日の記者会見で、高市氏が首相就任後も靖国神社参拝を続ける考えを示していることに不快感を示した。

安倍政権下で長く外相を務めた河野、岸田両氏は韓国でも知名度は高いが、冷却した日韓関係に大きな変化はないとの見方が支配的だ。大手紙の朝鮮日報は、総裁選を分析する記事で「誰がなっても韓日関係は冷気流」との見出しを掲げた。

メディアに登場する日本専門家は、河野氏を「国民世論をよく見て動く政治家」と紹介している。外相だった2019年に元徴用工訴訟を巡って呼び出した駐日韓国大使に「無礼だ」と抗議するなど、韓国では政治的パフォーマンスにたけた人物との印象が強い。

他方、河野氏が康京和(カン・ギョンファ)前外相と良好な関係を築いたことも知られている。文在寅(ムン・ジェイン)政権の元高官は「国際感覚が優れている点で最も期待できる」と評価している。

岸田氏は慰安婦問題に関する15年の日韓合意当時に外相だった。朴槿恵(パク・クネ)政権の後の文政権では、合意に基づいて設立した元慰安婦を支援する財団を解散するなど合意は大きく形骸化した。

このため、ある放送局は「韓国が約束を守らなかったとの思いから、岸田氏は積極的な関係改善には動かない」とする日本専門家の岸田評を報じた。岸田氏が任期中の憲法改正に言及したことへの批判的な視線もある。

むしろ関心は安倍前首相の動向に注がれている。大手紙の中央日報は安倍氏が支える高市氏に「安倍前首相の本音を代弁する拡声器の役割を自任する」と警戒のまなざしを向けた。京郷新聞は総裁選の行方を「安倍氏の影響力が変数」と分析している。

過去に韓国紙のインタビューで日韓関係の重要性を語った野田聖子氏は「代表的な親韓派議員」(朝鮮日報)と見られている。

【関連記事】自民党総裁選、海外の目は 東京特派員に聞く 』

自民党の「保守」とは何か

自民党の「保守」とは何か 御厨貴・東大名誉教授に聞く
政界Zoom
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA201440Q1A920C2000000/

 ※「自民党」に籍を置いている以上、「あなたは、”保守”ですか、”革新”(もしくは、そのソフトな言い換えの”リベラル”)ですか?」と(二項対立、二分類法)で聞かれれば、そりゃ「”保守”です。」と答えるだろう…。たとえ、”リベラル寄り”であってもな…。

 ※ 「堅実な人生観を持てば生きていけると考える。それが、非常に曖昧だが保守といわれるものだと思う」」…。

 ※ なるほど、御厨さんの中では、”保守”とは、そういうものなんだな…。

『自民党総裁選(29日投開票)で4人の候補者は異口同音に「保守」を語る。それぞれの主張から幅の広い概念のようにみえる。今の日本政治で保守とは何を指すのか。自民党政治に詳しい御厨貴・東大名誉教授(日本政治史)に聞いた。

御厨貴・東大名誉教授
――「保守」をどう定義しますか。

「人々の住む社会への感覚で、分断されかかっているところはあるが、堅実な人生観を持てば生きていけると考える。それが、非常に曖昧だが保守といわれるものだと思う」

「社会を批判して、分断されているから、なんとかしないといけないと考えるのがいわゆるリベラルだ」 

「保守は、昔は自民党とイコールだった。今は自民党は総じてイデオロギー的に、かなり分かれたところがあって、戦前の路線を思わせるような保守もある」

「リベラルに近寄り、話ができるような保守が自民党の中に確立しているといえるだろうか」

――自民党における保守本流とは何ですか。

「やはり吉田茂氏の旧吉田派だろう。それが分かれた池田勇人氏の宏池会(現岸田派)の系統もそう。佐藤栄作氏は宏池会よりはやや右寄りだ」

「本当の本流は実は池田氏のあと大平正芳氏、宮沢喜一氏へとつながる。ただ自分たちが保守本流だとあまり主張しない」

「麻生太郎氏は宏池会ではない。ただやはり吉田氏の孫だ。吉田直系だと本人は思っているだろう。祖父の血をひいて、若いころから横で政治を眺めていた。そういう自負心があるのではないか」

――傍流は。

「長い戦後の政治の流れで言えば、中曽根派や三木派が第2保守党の系列だ。中曽根康弘氏は傍流という言い方はしなかった」

「世の中を変えていくが、持っている思想は保守だと強調した。三木武夫氏もそれに近い。傍流から2人首相が出たのはすごい」

「清和会(現細田派)につらなる岸信介氏をどう見るか。岸氏は自分は本流だと思っていたが、永田町の感覚からすると保守本流ではないとなる」

「その後、いろいろな展開があって、清和会が大きくなると、実は自分たちも保守本流に入っているのではないかという話になる。その意味でも保守は時代によって、融通むげという気がする」

――2000年代以降は清和会の時代です。本流・傍流という意義づけが曖昧になってきた印象を受けます。

「その通りだ。自民党は保守とは何か常に定義したり議論したりすることはなかった。谷垣禎一氏が野党時代に総裁になったとき、保守を定義し直すと言った。ところが定義を自民党としてはしていない」

(左から)河野、岸田、高市、野田の各氏(17日、自民党本部)
――総裁選に出馬した高市早苗氏は安倍晋三前首相が支持しています。

「安倍氏は実務ができてイデオロギーがある人間を求めているのではないか。高市氏は総務相の仕事をこなした。そういう政治家を育ててきたのが安倍氏のこの10年間の長期戦略だったと考える」

――河野太郎氏をどうみますか。

「動物的な勘で動いていく点で、祖父の河野一郎氏に似ている。父の河野洋平氏はリベラルだ。原発の問題などで、首相になったら考え方の本質を変えるとは思わない」 

――岸田文雄氏や野田聖子氏を保守の文脈ではどう捉えますか。

「岸田氏は外相のときに、集団的自衛権の行使ができるという憲法の解釈の変更を認めた。そのときに彼は『宏池会の思想も時代に合わせて変わっていく』と言った。全く違う思想に転じるという話ではない。飛躍がないし、安定している」

「野田氏は個人の権利を広げたいと主張する。日本の伝統的な保守とは違うかもしれない」

聞き手から 4候補で多様な捉え方

保守とは何か。自民党総裁選で向き合うテーマである。英国や米国などそれぞれの国で保守の定義は異なる。日本で保守は伝統と慣習を重んじて急激に変わるのを望まない考え方とされる。

一方で、例えば憲法を巡って改憲は、変化を好まない保守勢力が訴え、護憲は、現状からの改善を唱えるリベラル勢力の主張と理解されている。保守とリベラルの持つ言葉の意味がねじれているようにみえる。

「保守というのは昔、自民党とイコールだった」。御厨氏はこう振り返りつつ、「自民党における保守は融通むげ」と指摘した。

保守の解釈の多様性と変化――。現在の総裁選の4候補の議論を聞いていると、御厨氏のいう保守の捉え方と重なる点が多い気がする。

政治部長(政治・外交グループ長) 吉野直也
政治記者として細川護熙首相から菅義偉首相まで14人の首相を取材。財務省、経済産業省、金融庁など経済官庁も担当した。2012年4月から17年3月までワシントンに駐在し、12年と16年の米大統領選を現地で報じた。著書は「核なき世界の終着点 オバマ対日外交の深層」(16年日本経済新聞出版社)、「ワシントン緊急報告 アメリカ大乱」(17年日経BP)。
吉野直也政治部長と高橋哲史経済部長が自民党総裁選、衆院選とその後の経済・外交の行方を展望するライブ配信イベントを27日午後6時から開きます。お申し込みはこちらです。

https://www.nikkei.com/live/event/EVT210820001
日本経済新聞 政治・外交Twitter
https://twitter.com/nikkeiseijibu 』

試される国際秩序、中国TPP申請 貿易・安保切り離せず

試される国際秩序、中国TPP申請 貿易・安保切り離せず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA174WC0X10C21A9000000/

 ※「プライオリティ」ということを、常に考えた方がいい…。

 ※「安全保障」と「経済価値」が衝突するときは、直ちに安全保障>経済活動…だと、オレは価値判断している…。

 ※ たとえ、一部の国民が失われても、生き残った残存勢力の国民が、必ずや立ち上がり「復興」してくれると信じているからだ…。

 ※ そういう「強靭な残存国民」を、どう育成していくのかということを、考えた方がいい…。

 ※「生存競争」「自然淘汰」というのは、何も「種の保存」に限ったことじゃ無い…。
 ※「国家・国民」にも、当てはまる話しだ…。

 ※ 泣き言ばっかり垂れて、他人がしてくれることを要求ばかりしているような種類の「国民」だけが残存しているならば、「国(クニ)」としては、滅亡する他は無い…。

 ※「一国の興亡」は、そういう「国民としての性質・能力」にかかっている…。

『自由主義陣営が主導する国際秩序が中国に試されている。中国は16日、環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を申請した。巨大な国内市場を武器に自国に都合のよいルールづくりを目指す中国を受け入れれば秩序は保てない。米中の対立が激しさを増す中、TPP加盟国は安全保障の観点も交えた判断を迫られる。

中国の加盟申請に各国は身構える。「高い基準を満たす用意ができているか見極める必要がある」(梶山弘志経済産業相)。17日、日本の閣僚からは慎重な発言が相次いだ。国有企業への補助など、中国の経済ルールでは加盟交渉入りは難しいとみる関係者が多い。

オーストラリアも難色を示す。同国が新型コロナウイルスの発生源に関して独立調査を求めたことに反発した中国は、豪産大麦やワインに高関税を課し、一部の食肉や石炭の輸入を制限した。

オーストラリアのテハン貿易・観光・投資相は声明を出し「(豪中の間では)閣僚間で取り組むべき重要な問題がある」と指摘。中国が高関税などの問題を解決しない限りは、中国の交渉入りを支持しない姿勢を示唆した。巨大市場の力をちらつかせて強権を振りかざす中国のやり方にTPP加盟国は懸念を強める。

【関連記事】
・中国、TPP加盟を正式申請 アジア貿易主導権狙う
・中国のTPP加盟、データのルールなど実現に3つの壁

中国が受け入れられるとの見方は多くないが、それでも申請したのは、米国が新たな自由貿易協定の締結に後ろ向きな中、その隙をつく狙いもあった。習近平(シー・ジンピン)国家主席は17日に講演し、米国などを念頭に「ルールという旗印を使って国際秩序を壊し、対抗と分裂を作り出す行動に反対しなければならない」と語った。

そもそもTPPは日米が主導し、インド太平洋で中国に対抗する経済圏をつくる構想だった。ただ17年に米トランプ政権が離脱を表明。日本政府は中国への対抗には米国の復帰が最善とみるが米国では反対論が根強い。

米国務省の報道官は16日、「中国の非市場的な貿易慣行と他国に対する経済的な威圧が(加盟を認めるかどうかの)加盟国の判断要素となるだろう」と述べた。

TPPには対中国で安全保障上の焦点となっている台湾も加盟への関心を示す。米国、英国、オーストラリアは15日、対中国を念頭に新たな安保協力の枠組みを創設した。欧州連合(EU)は16日に「インド太平洋協力戦略」を公表し、台湾との関係強化を打ち出した。その直後のTPP加盟申請は、通商だけの意味合いにとどまらない。

現在加盟する11カ国の実質国内総生産(GDP)は世界の1割超で、中国が加わると3割になる。安全保障上の中国の脅威が高まる中、加盟国は単純に経済の観点で判断できない状況になっている。(江渕智弘、北京=川手伊織、ワシントン=鳳山太成)

この記事の英文をNikkei Asiaで読む 』

中国の姿勢、見極めへ TPP加入申請、閣僚発言相次ぐ

中国の姿勢、見極めへ TPP加入申請、閣僚発言相次ぐ
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021091700468&g=pol

『中国が環太平洋連携協定(TPP)に加入申請したことを受け、17日には閣僚から発言が相次いだ。TPP担当の西村康稔経済再生担当相は閣議後記者会見で、「中国が高いレべルのTPPルールを満たす用意ができているか、見極める必要がある」と指摘した。
中国、TPP参加を正式申請 通商交渉で主導権狙う

 正式な交渉に入るには、最高意思決定機関「TPP委員会」の決定が必要で、日本は今年議長国を務める。西村氏は「TPPは知的財産保護、政府調達などで極めてレベルの高いルールがある」と強調。「他の参加国と相談し、対応していきたい」と語った。

 梶山弘志経産相は「データ流通の公平性、強制労働の問題などで懸念を抱かれないようにしないといけない。国有企業への補助金や政府調達の在り方でも透明性を維持する必要がある」と指摘した。

 米国はトランプ政権時代の2017年にTPP離脱を表明。中国の申請には米国をけん制する狙いもあるとみられるが、加藤勝信官房長官は「アメリカ政府自体がTPPに対しどう考えるかだ」と述べるにとどめた。』

中国からみた自民総裁選

中国からみた自民総裁選 日本政治「混迷期に」
Angle 高橋哲史
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA14BL00U1A910C2000000/

『17日告示、29日投開票の自民党総裁選には、中国も強い関心を寄せる。日本の次の首相がだれになるかだけではない。二階俊博幹事長が党内でどこまで影響力を保つか。むしろ、そちらを気にしている。

中国共産党の対外部門に属する幹部から、何度も同じせりふを聞いた。「二階さんは必ず約束を守ってくれる。中国にとって特別な存在だ」

中国が最も信頼する日本の政治家といっていいだろう。1972年に首相として国交正常化を実現した田中角栄氏から続く対中人脈を引き継ぎ、日中間で問題が起こるたびに動いてきた。新型コロナウイルス危機の前はしばしば訪中し、習近平(シー・ジンピン)国家主席ら要人と会談を重ねた。

2020年7月、自民党の外交部会が習氏の国賓来日を中止するよう求める決議をした際の発言は、中国でも語り草だ。

「外交部会長か何部会長か知らんが、そう軽々に判断すべきものじゃない」。二階氏がすごむと、決議の表現は原案の「中止を要請する」から「中止を要請せざるを得ない」に弱まった。

その二階氏に党内で逆風が吹く。

総裁選に出馬する岸田文雄前政調会長は「総裁を除く党役員は1期1年、連続3期まで」と言い切った。5年にわたって幹事長を務める二階氏の再任を否定した発言だ。

菅義偉首相も総裁選への不出馬を表明する前、二階氏の交代を探った。二階氏の党運営に不満を抱く若手議員は多く、だれが新総裁になっても同氏の幹事長続投は考えにくい。

米国と激しく対立する中国は、日本とそこそこ良い関係を保っておきたいのが本音だ。自民党内の対中強硬論を抑えてきた二階氏が総裁選後に権力の中枢から外れるとすれば、中国にとっては痛手となる。

「中国は日本の政治が再び短期間で首相が繰り返し代わる時代に入ったとみている」。こう指摘するのは中国政治が専門の加茂具樹・慶大教授だ。

06年から12年にかけて、日本では6人の首相がほぼ1年ごとに代わった。日中関係はそのたびに仕切り直しを迫られ、12年に民主党の野田佳彦政権が尖閣諸島を国有化すると、かつてない険悪な状態に陥った。

米国をけん制するために日本をひき付けておきたい中国は、そんな時代に逆戻りするのを望んでいない。しかし、現実には日本政治の混迷がしばらく続くと判断し、対日戦略の練り直しに動いている。

折しも、5年に1度の中国共産党大会が1年後の22年秋に迫る。政治の季節に入った中国は、どんどん内向きになる。9月の新学期から小中高で「習近平思想」を必修科目にするなど、民主主義を掲げる側からすると時代錯誤にしかみえない危うげな動きが続く。

内政に連動し、外交でも強硬姿勢を強めるのは必至だ。台湾や新疆ウイグル自治区の問題で圧力をかける米国に、妥協する余地はない。米国との連携を深める日本にも、より厳しい姿勢で臨んでくるだろう。

巨大な中国市場は、日本経済にとって死活的に重要だ。日本の経済界は日中関係の行方に気をもむ。しかし、だからといって政治と経済を分けて考える「政経分離」は、もはや中国に通用しない。

中国とどう向き合うか。総裁選で、もっと突っ込んだ議論があってもいい。

吉野直也政治部長と高橋哲史経済部長が自民党総裁選、衆院選とその後の経済・外交の行方を展望するライブ配信イベントを27日午後6時から開きます。お申し込みはこちらです。
https://www.nikkei.com/live/event/EVT210820001

経済・社会保障グループ長(経済部長) 高橋哲史

大蔵省(現・財務省)を振り出しに霞が関の経済官庁や首相官邸、自民党、日銀などを取材。中国に返還される前の香港での2年間を含め、計10年以上に及ぶ中華圏での駐在経験をもつ。2017年4月からは中国総局長として北京を拠点に中国の変化を報じ、21年4月に帰国した。』

麻生は声を荒らげ「おまえと一緒に、河野の将来まで沈めるわけにいかねえだろ」』→フェイクニュースでした

西日本新聞『菅首相が麻生財務相と接触。麻生は声を荒らげ「おまえと一緒に、河野の将来まで沈めるわけにいかねえだろ」』→フェイクニュースでした | 保守速報
https://hosyusokuhou.jp/archives/48910198.html

 ※ 何が、何やら…。

 ※ 時々載ってた、「目の覚めるような記事」も、取材無しの想像で書いた「ウソ記事」だったのか…。

※ こうまで言っているからには、麻生さんが西日本新聞の当該記者から「取材を受けていない」ということは、本当なんだろう…。

総裁選が揺らす派閥政治 問われる政策の求心力

総裁選が揺らす派閥政治 問われる政策の求心力
恩恵薄れて縛りきかず
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE07CTU0X00C21A9000000/

『自民党総裁選で派閥の動きがまとまらない。支援する候補を一本化できたのは会長の岸田文雄氏を推す岸田派くらいで、ほかの派閥は所属する国会議員を縛れていない。資金やポストの面倒をみるのが派閥から党執行部に代わり、議員にとって派閥に尽くす恩恵が薄れた。今回の総裁選は本来なら求心力であるべき政策不在の派閥のありさまを浮き彫りにしている。

【関連記事】
・脱炭素が問う自民総裁選 原発と再生エネが主戦場
・自民総裁選、党員票も「勝ち馬」探し 薄れる団体・派閥

かつては総裁選でまとまった行動をとるのが派閥の大原則だった。派閥は国会議員の①資金②ポスト③選挙での公認――という3つを提供する機能があった。

政策面でも各派閥の特徴ははっきりしていた。

例えば池田勇人元首相の「所得倍増計画」や、田中角栄元首相の「日本列島改造論」や中国との国交正常化など、派閥の領袖が主に経済や外交で政策を掲げた。派閥はその実現を旗印に結束し、派閥トップを総裁に押し上げる原動力に変えた。

今の派閥に政策の色は薄い。

保守を掲げた中曽根派の流れをくむ二階派は中国との関係が深い二階俊博幹事長が率いる。自民党入りした野党出身議員らも入れて派閥の数を増やした。麻生派も派閥を大きくする過程で、源流とする宏池会(現岸田派)だけでなく、三木武夫氏が率いた派閥の出身者などを取り込んだ。

政策とトップ個人との結びつきが弱まれば派閥は単なる利益共同体となりかねない。さらにかつてのように資金やポストといった「利益」すら配分できなくなれば、まとまりを失うのは自明だ。

それでもなお派閥に存在意義を見いだそうとするなら、名実ともに「政策集団」という原点に立ち返る必要がある。

「かつて池田内閣は所得倍増計画で消費を喚起した」。岸田氏は8日の記者会見で宏池会を立ち上げた池田氏の看板政策に触れ、自らの経済政策を「令和版所得倍増」と表現した。派閥の特色を打ち出そうとの試みだ。

党内では衆院選を前に政策よりも世論受けを重視する雰囲気がある。河野太郎規制改革相がまだ総裁選の公約を示していないにもかかわらず、人気がある河野氏を支持する動きが各派で目立つのはその証左といえる。

変化のきっかけは1990年代の政治改革だ。それまでは1つの選挙区に同じ党から複数候補が出る中選挙区制。同じ選挙区で派閥の違う候補同士が争うため、派閥間の政策競争も盛んだった。

衆院が1選挙区で1人しか当選しない小選挙区制に移ると、党執行部が公認権を握り、各候補は党の公約の下で野党候補と戦うことになった。

あわせて国民1人あたり250円、総額300億円規模を政党に助成する制度が始まり、政党以外への企業・団体献金を禁じた。資金を持つのも派閥から政党に移った。

派閥全盛期の80年代は、夏に「氷代」、冬に「モチ代」と呼んで配る資金は1回あたり200万~400万円が相場だったとされる。

職を辞して政界をめざす候補者の活動資金から生活費までを派閥が世話した。所属する派閥領袖の方針に背くのは考えられなかった。

その分、当時の派閥幹部に資金力は不可欠で、リクルート事件や東京佐川急便事件など政治とカネの問題が続いた。

いま派閥が議員に渡すモチ代の相場は50万~100万円とされる。派閥の収入源は政治資金パーティーが大半で、逆に所属議員はパーティー券販売のノルマを課される。「資金面でのメリットはほとんどない」との声が漏れる。

派閥に入らない議員は89年には3%しかいなかった。2009年からの野党暮らしで36%まで増えた。12年末に政権復帰して派閥が盛り返したとはいえ、無派閥の割合は今も高止まりする。

19年の参院選前、公職選挙法違反で有罪が確定し当選無効になった河井案里元参院議員の陣営に党本部が送った選挙資金は計1億5000万円。このうち1億2000万円が政党交付金だった。

主要派閥の年間収入の6~7割分を1選挙区に投じた計算になる。一橋大の中北浩爾教授は「党本部の資金力が示されたという意味で、古くて新しい政治とカネの事件だった」と位置づける。

ポスト面からみても派閥に属する利点は減ってきた。以前は派閥均衡人事が徹底されたが今は首相が一本釣りする。派閥の希望を聞くことはあっても、差配は首相の腹一つで決まる。

一般的な不人気を覆して派閥の力で総裁を誕生させたのは98年の小渕恵三氏が事実上最後となる。それから四半世紀近い時が流れ、派閥が主導権を握って総裁を射止めた例は見当たらない。

派閥が支援したようにみえても、実態は世論調査で人気がある候補を推しただけの色が濃い。総裁選びの基準は派閥の意向でなく「選挙の顔」になるか否かになった。

今回のように衆目が一致する「勝ち馬」が見当たらないと、派閥がまとまらなくなるのは当然の帰結といえる。

野党の支持率が低く政権交代の脅威をあまり感じない期間が長引き、自民党が政策立案に真摯に向き合う動機も薄れた。国際情勢が流動的ななか政策重視の総裁選となるかが注目されている。

【関連記事】
・「世代と派閥」自民の岐路 総裁選せめぎ合い
・自民総裁選、自主投票を要求 若手が「衆院選の顔」意識 
・岸田氏「新自由主義を転換」  規制改革などで河野氏意識
・高市氏、憲法や安保で保守政策を前面に 』

『 多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

鈴木一人のアバター
鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授

コメントメニュー
分析・考察 中選挙区制時代の遺物である派閥は、元々派閥のボスを総理総裁に押し上げるための仕組みであった。

しかし、小選挙区制になり、総裁は必ずしも派閥のボスから選ばれるわけではなく、選挙の顔として機能することが期待されるようになると、総裁を生み出す(≒人事をコントロールする)仕組みとしての派閥の価値はなくなる。ゆえに派閥としてまとまった行動をとらないのは当然で、むしろ派閥単位で行動しようとする前時代の枠組みで政治家が行動していることの方が異常。

中選挙区制の記憶を持たない政治家が増えれば、いずれ派閥は政策を中心に集まるか、人間関係をつなぐ仕組みとしてしか残らないだろう。

2021年9月9日 7:28いいね
25

菅野幹雄のアバター
菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター

コメントメニュー
ひとこと解説 派閥ってなんだろう。今週月曜日に別の記事でそんな問題提起をしましたが、この記事は私の疑問にかなり答えてくれました。

派閥というのは戦後日本で圧倒的な長期間にわたり政権与党に座っている自民党に特有の仕組みのように思います。いまのように若手議員が派閥での拘束に抵抗して自主投票をする動きが相次ぐと、そのシステムの綻びが露呈してしまいます。

キングメーカーでもない、カネもポストも結束も保証できない、政策面での特色も出せないとなれば、派閥という存在はどんどん形式的なものになっていくのかもしれません。新聞記者の政治取材もなお「派閥単位」ではあるのですが……。

2021年9月9日 7:51いいね
15 』

菅総理に引導を渡した意外な人物

菅総理に引導を渡した意外な人物 自民党重鎮は「総裁選ではますます派閥の力が強くなる」と断言する根拠
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/09071102/?all=1&page=1

『菅総理が退陣を表明した。

 安倍麻生が三行半を突きつけたとか、ぶら下がりの記者をもドン引きさせるほど泣いてみせた小泉進次郎が実は勇退を迫っていたとか、あちこちでいろいろな憶測が飛び交っている。

【写真4枚】菅総理と真理子夫人

 しかし、私はさる情報筋から、菅総理に引導を渡した本当の人物の情報を得た。

 菅総理夫人だ。

 そもそも国会議員の夫人というのは、不在がちな夫に代わって地元で活動するので、夫に対する市井の反応を誰よりもリアルに感じ取る。総理夫人ともなれば、推して知るべし。横浜市長選後には特に厳しい反応を感じたことだろう。

菅義偉、菅真理子
菅総理と真理子夫人(他の写真を見る)

 そんな中、打つ手が全て裏目に出て求心力が低下し、ぼろぼろになる夫の様子を見た夫人は、とうとう辞職を進言した。これによって、菅総理の心が一夜にしてポッキリ折れた。私はそう聞いている。

 衆議院の解散権を封じられて退陣せざるをえなかったとも言われているが、菅総理が本当に強い気持ちを持ち続けていれば、解散総選挙は決して不可能ではなかった。私がそう思う背景には、海部政権末期のこのような証言がある。

 1991年ある秋の日、当時の最高実力者である金丸信は自宅で麻雀を打っていた。ともに卓を囲んでいた一人が、4回生議員だった野中広務。金丸はいつも、麻雀を打ちながら横に置いた電話で議員や役人に指示を飛ばすのだが、その日は時の総理・海部俊樹からの電話を受けていた。すると、金丸は突如、怒気を含んだ声で相手に向かって言った。「なら、あんたの好きにせい」。

 その様子を目の当たりにした野中は、海部が衆議院解散を伝達して金丸が応じたと悟り、すぐさま側近に選挙準備を指示した。

 しかし、結末はそうでなかった。

 海部は、金丸の突き放した物言いに、解散を反対されたと思い込んで尻込みした。

 そこで、解散ではなく、総辞職の道を選んだ。

 あの時、海部が金丸に電話をかけず、自らの判断で解散総選挙に打って出ていたら、その後の日本の歴史は全く異なった歩みとなっていただろう。

 ここで肝心なのは、金丸がなぜ、明確な反対をせず「好きにせい」と発言したかである。

 金丸は知っていたのだ。たとえドンと称される自分であろうと、総理大臣の権力を押しとどめることはできないと。要は、総理大臣の気持ち一つなのだ。

菅義偉、菅真理子

菅総理と真理子夫人(他の写真を見る)

 だからこそ今回の菅も、解散総選挙こそいま必要なのだと強く信じることができれば、実行出来た。そうならなかったのは、菅が自分自身への信頼を無くしていたからに違いない。そこにきて夫人からの引導となれば、もはや「背中を押してもらった」という状況だったのではないかと推測する。

 話は、今後の総選挙へと移る。

「菅さんと二階さんが辞めれば、負ける理由はないんだよ。」

 ある自民党重鎮は菅が辞任表明した日、こう断言した。総裁選のことではない。その次に行われるより大事な選挙・衆議院総選挙の話しだ。

 現に、菅退陣表明直後の世論調査で、自民党への支持率は5.6ポイント上昇し38.0%となった。(TBS調査)支持なしと答えた人が5.7ポイント下がっているので、無党派層の支持を自民が根こそぎ持って行った感じだ。もともと低い立民への支持は、ほとんど動いていない。

 総選挙で自民が単独過半数を確保する目処が立てば、その前に行われる総裁選では自民党内の派閥の力がますます強くなるとも、その重鎮は指摘した。

 理由はこうだ。現職議員が再選したとしても、もし総裁選で負け馬に乗っていた場合、党内非主流派となる。それはすなわち、今後の人事での冷遇につながる。であれば、何としても勝ち馬に乗るべきで、今は派閥の言うことを素直に聞いておこう……となる。もちろん、新総裁は目新しさから国民人気も一時的には高くなる。その新総裁に自分の選挙区に応援演説に来てもらいたい。注目され、可愛がられることで、重要選挙区として選挙対策のカネを重点的に配分してもらいたい!

 こうなると、派閥として一致団結することが一にも二にも大切なのだ。政治において派閥がなくなることはないが、だからといって国会議員の己の利益、しかも目先の利益のために派閥が使われる現実にはげんなりする。』

『新総裁、イメージ戦略に騙されるな
 では、新総裁すなわち100代目となる歴史的な総理大臣の座には誰が就くのか。

 党員や国会議員でない我々に決める術はないが、ネットを中心とする世論で大きなプレッシャーをかけることは出来る。

 その上で、これだけは肝に銘じて頂きたい。

 イメージ戦略に騙されるな。

 菅総理が就任した際、メディアは以下のような報道を繰り返した。

 秋田の農家から叩き上げた苦労人。
 かわいいパンケーキおじさん。
 酒もタバコもやらない修行僧。

 このように礼賛した評論家やジャーナリスト、メディアは大いに恥ずべきである。1年経って分かったことは、苦労人のかわいいパンケーキ修行僧と政治力は全くの無関係だったということだ。

 メディアが作り上げるイメージがどれほど無意味で、危険なものですらあるか、昨年、菅礼賛を鵜呑みにしてしまった人々はいま、身に染みているであろう。

 今回の総裁選で、高市さんは毅然としてカッコいいとか、石破さんの話には誠意があるとか、岸田さんは穏やかで頭がいいとか、河野さんは対応が迅速で感性が若いとか、「イメージ」で誰が良いと口にしてしまうようであれば、それこそ政治家の好き勝手を許すことになる。

 総選挙での自民単独過半数、自公政権安定継続が見えてきた。自民党員や公明党員でない多くの国民は、総裁選の電波ジャックに踊らされることなく冷めた視線でコロナ下の、そして将来の日本を見つめたい。

武田一顕(たけだ・かずあき)
元TBS北京特派員。元TBSラジオ政治記者。国内政治の分析に定評があるほか、フェニックステレビでは中国人識者と中国語で論戦。中国の動向にも詳しい。

デイリー新潮取材班編集 』

自民・甘利氏「菅、二階の負のイメージが国民に定着」

自民・甘利氏「菅、二階の負のイメージが国民に定着」
https://news.yahoo.co.jp/articles/5c91465192b92fa4e9700a41a565dfa53f6c93a9

 ※ 久々の、甘利さんの動向だ…。

 ※ オレは、ずっとこの人の「幹事長」の目はあると思って来た…。

 ※ なにせ、「胆力」は屈指のようだからな…。

 ※ T※※交渉の「手腕」は、凄かった…。「国益」をかけて、一歩も引かなかった…。
 ※ それで、某国の覚えは、目出度く無くなった…。

 ※ 結局、秘書の不祥事が発覚して、引責で表舞台からは退いた形になった…。

 ※ アレも、リークくさい事件だった…。

 ※ 乱世向きの人材だと思うんで、情勢次第では、再び表舞台に立つことも、あるだろう…。

『自民党の甘利明税調会長は6日夜、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、菅義偉首相が党総裁選の不出馬に追い込まれたことについて、二階俊博幹事長の名前を挙げて「二階さんとのコンビ。菅、二階というイメージが国民の間に負のイメージで定着し、それをどうしてもはねのけられなかった」と指摘した。

 甘利氏は番組で、菅首相が衆院を解散し、総裁選を先送りするとの観測が出た際、「(衆院選で)玉砕することになる」として、首相に「やめた方がいい」と伝えたと明かした。

 また、総裁選の対応について、甘利氏は、出馬の意向を固めている河野太郎行政改革相と同じ麻生派に所属するが、岸田文雄前政調会長に言及し、「誰の言うことにも真摯(しんし)に耳を傾けるっていう姿勢の政治家としては、党内きっての人だ」と評価。「岸田さんにシンパシーを感じている」とし、「事情が許せば応援してあげたい」と述べた。(中田絢子)』

中国政策で岸田氏を警戒する米国

中国政策で岸田氏を警戒する米国、希望は河野太郎首相
菅政権崩壊を“予測”していたワシントン、安倍再登板にも期待
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66808

『日米共同声明という「羅針盤」は残る
 米国の対日専門家たちは、菅義偉首相(自民党総裁)の退陣表明について総じてこう見ている。

「菅氏は、新型コロナウイルス禍が好転せず、局面打開を狙った東京五輪の強行開催は国民の反発を招いた」

「局面打開を懸けて探った衆院解散、人事刷新という延命策も成就せず、万策尽きたためだ」

「ジョー・バイデン政権発足後、最初に対面会談の外国首脳として菅氏をホワイトハウスに招いたのも菅氏個人というよりも最重要同盟国・日本の首相だったからだ」

「その結果、米国の最重要課題になっている対中戦略、特に台湾海峡に対する現状認識の共有を共同声明に明記するなど日本を巻き込んだ」

「菅政権下で強固な日米関係はより制度化された(Institutionalized)わけだ」

「つまり、菅政権下で安倍晋三前政権の対米路線を引き継ぐ日本政府の外交安保当局のスタンスが推進された。菅・バイデン両首脳は共同声明という『羅針盤』を残したからだ」

 ホワイトハウス報道官は、こう述べている。

「バイデン大統領は、新型コロナウイルスや気候変動、北朝鮮、中国、台湾海峡の平和と安定の維持など日米の共通の課題に対する菅首相の指導力に感謝している。日米同盟は強固であり、今後も添い合い続ける」

 米国にとって、菅氏は安倍政権の忠実な継承者としてありがたい存在だった。米有力シンクタンクの日本専門家の一人はこう米国の本音を吐露する。

「菅氏は、Backroom Dealer(縁の下の力もち)であり、とてもではないがMass Leader(大衆を引き付けるリーダー)ではないと見られていた」

「米政府内外の日本専門家たちは、菅氏はあくまでも安倍氏の空席を短期的に埋める『中継ぎ投手』として見ていた。いずれ「本格派投手」に交代することを予測していた」

「その時期が若干早かったか、予測通りだったか。いずれにしても想定外のことではなかった」』

『米情報調査機関:対米戦略公約は弱体化
 その「本格派投手」とは誰なのか。次期自民党総裁、内閣総理大臣は誰なのか。

 全世界の政治、外交、経済などの動きを事前に予測する民間の情報調査機関、「レイン・ネットワーク」(RANE Network)の傘下プロジェクト、「ストラットフォー」*1(Stratfor)は9月3日時点で今後の政局を以下のように予測・分析をしている。

*1=ストラットフォーは、テキサス州プラトノに本社を置く米情報調査機関。全世界に情報網を持っており、各国政府機関、大企業、シンクタンクを顧客にしている。その情報、予測、分析は高く評価されている。

一、菅氏の後任を狙う政治家は数人いるが、そのほかに安倍晋三前首相の再出馬のミステリーがくすぶっている。同氏が総裁選に立候補すれば選ばれることは間違いない。

二、立候補が確実視されている河野太郎改革担当相は、党内でも強力な派閥(麻生太郎副総理兼財務相を領袖とする麻生派、国会議員53人)に属している。安倍内閣の外相として安倍氏の政策に深く関与してきた。有権者にも支持者が多い。

三、ハト派の元外相、岸田文雄・前自民党政調会長(宏池会・岸田派、国会議員46人)はいち早く立候補を表明している。だが世論調査では有権者の支持は芳しくない。

 岸田氏は日本は対米、対中関係でバランスをとるべきだと考えている。2020年の安倍氏退陣の際、安倍氏は岸田氏を推したと信じられている。

四、超タカ派で対中強硬派・無派閥の高市早苗・前総務相も立候補を目指しているが、立候補に必要な国会議員数20人を得るのは難しい状況にある。

五、元防衛相の石破茂氏は世論調査では高い支持率を得ている。貧富の格差是正を唱えているからだ。だが今回もまだ立候補するかどうか態度を留保している。

六、安倍氏の立候補については今のところ噂の域を出ていない。しかし党内での広範囲な支持があることを考えると、出れば容易に選出されるだろう。

七、菅氏の後継者(総選挙で自民党は議席を失うため)が総理・総裁になった場合は、政権運営は極めて難しく、公明党に対する依存度は増大する。

八、前述の候補者が総理・総裁になっても長期的に政権を維持することは困難で、かつてのような「次から次と首相が変わる回転ドア」のような時代」(the era of revolving-door prime ministers)の再来になりそうだ。

九、その結果、長引く経済のスタグフレーション、激化する中国との競争関係に直面している日本の内政・外交政策は不安定化する可能性がある。

 これを防ぐには党内三大派閥が菅政権をサポートしてきたように後継者を一致協力して支える以外にない。日本が一貫性のある内政、外交政策を堅持するにはこれしかない。

十、誰が菅氏の後継者になろうとも11月29日に衆院議員の任期が切れ、同日か、それ以前に総選挙が実施される。自民党(現在276議席)が衆院議席の絶対過半数を割ることになれば、(今まで以上に)公明党(現在29議席)との連立を組む以外にない。

十一、公明党は反核、反武装対立を主張してきた。公明党への依存度が強まれば、自民党はこれまで菅政権が堅持し推進してきた米台の戦略的協力関係の是認や中国の南シナ海、東シナ海への海洋進出、台湾に対する脅威に対抗するための軍事力強化といったスタンスを弱めざるを得なくなるかもしれない。

(https://worldview.stratfor.com/)』

『自民党内に世代交代の波
 菅氏が政権運営に行き詰まった要因について外交問題評議会の、シーラ・スミス上級研究員は、ブログでこう指摘している。

「一向に好転しない新型コロナウイルスによるパンデミック禍に打つ手なしの菅政権に対するフラストレーションは極限に達していた。病棟が不足したから自宅療養を奨励するに至って国民世論の堪忍袋の緒は切れてしまった」

「自民・公明連立政権には、次から次とスキャンダルが襲い掛かった」

「選挙違反で有罪判決を受けた元法相の補欠選挙では野党候補に負け、パンデミック禍の最中には公明党議員が禁じられていた会食に出席、最後のとどめは菅氏が地元・横浜市長選に推薦した候補の惨敗だった」

 さらに同氏は自民党内にくすぶっている世代交代論が菅氏の延命工作を封じてしまったとみている。

「世間一般の通念からすると、これら挑戦者たちはまだ身をかがめて総裁選の行方を見守っている」

「ワクチン接種普及を担当する河野太郎・行革担当相(58)は職務に専念しているように見えるが、いつ総裁選に立候補するか世間の目は彼に注がれている。同氏の新著『日本を前に進める』は各書店の店頭に山積みされている」

「若いが人気抜群の自民党のスター、小泉進次郎・環境相(40)は、次期内閣では重要閣僚として入閣するとのうわさが流れている」

「安倍氏や麻生氏と近い甘利昭・元経産相(72)は(二階俊博氏=82=の後任の)幹事長に色気を見せているらしいし、茂木敏充外相(65)も次は党幹部のポストを狙っている」

「この秋の日本の政治は予想以上に流動化し、面白くなってきた」

(https://www.cfr.org/blog/politics-heat-tokyo)』

『優柔不断な親中派の岸田氏に警戒心
 米国では共通しているのは、今のところフロントランナーの岸田氏に対するネガティブな評価だ。

 同氏は、2012年12月から17年8月まで4年8カ月、安倍第2次、第3次、第3次1次改造、第2次改造時の外相を務め、米政界や国務省関係者にも友人、知人が数多くいるはずなのに、米国の外交・安保関係者からは敬遠されているのだ。

 なぜか。米上院外交委員会関係者の一人はこう指摘する。

「所属する派閥、宏池会は元々、親中派が多く、岸田氏が特に親中派の古賀誠元会長の側近だったことが災いしているのではないか」

 ブルームバーグ通信社のイサベル・レイノルズ記者は岸田氏の対中認識を質した。岸田氏はこう答えている。

「時代は大きく変化している。中国も変わった。中国は今や国際社会で大きな存在になっている。私は中国の権威主義的な態度に懸念している」

「台湾は、米中関係行き詰まりのフロントラインになっている。香港(中国による民主化運動弾圧)や新疆ウイグル(少数民族抑圧)の状況を見ると、台湾海峡は次の大きな問題になるだろう」

「台湾有事は日本にとっても重大な影響を与える。日本はそうした脅威に備えるために防衛費を引き続き増やしている」

「(台湾有事の際に日本はどうするか、との質問には)法律に照らして行動するだけだ」

 レイノルズ記者は岸田氏の答えにこうコメントをつけている。

「麻生副総理は『台湾危機に際して日米はともに台湾を防衛せねばならない』と言った。また岸信夫防衛相の『台湾防衛は日本の防衛に直接リンクしている』と述べていた」

(https://www.bloomberg.com/news/articles/2021-09-03/top-contender-to-lead-japan-warns-taiwan-is-next-big-problem)』

『岸田氏の答えは、明らかに4月、菅首相とバイデン大統領とが署名した共同声明に明記された「台湾海峡の平和と安全の重要性」に対する認識から後退している印象を受ける。

参考:日米声明「台湾海峡」明記 初の会談、中国の威圧に反対: 日本経済新聞 (https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE170BH0X10C21A4000000/)

 岸田氏、河野氏、石破氏の中で米国は誰に首相になってもらいたいのか。

 日本政治に精通する元外交官の一人は「内政干渉はしたくないが」と言いつつ、こう言い切っている。

「岸田氏は長いこと外相だったからワシントンでは名前も顔も売れている。その一方で中国問題など主要な政策では岸田氏はソフトで、煮え切らないというか、決断力に欠けるという評価があった。ある種の警戒心がある」

「誰がどう言ったというわけではないが、私の感覚では、米国では岸田氏よりも河野氏の方が好かれている。ベストな首相候補だ」

「その理由は同氏のバックグラウンド(ジョージタウン大学卒、防衛相、外相歴任)。抜群の英語力。明快な発言。若いし、ルックスもいい」

「米議会やシンクタンクのタカ派は(防衛問題に強い)石破氏が好きなようだが、総裁選の立候補に必要な推薦人を集められるかどうかだ」

 河野氏については、官僚に対するパワハラ疑惑やら閣議決定をタテに官僚の作成した政策素案の撤回を求めるなど物議をかもしているようだ。

 また総裁候補選びでは、選挙基盤の弱い若手議員が「選挙の顔」を求めて、派閥幹部の意向に応じない構えを見せている。情勢は流動化、複雑化している。

 本稿は、あくまでも米国の対日問題専門家たちの「総理・総裁候補評定」を書き留めたもの。

 そこには、誰が首相になっても不安定化する政権が、今後の日米関係に暗い影を落としかねないという米国の危惧の念が感じ取られることは間違いない。』

コロナ対策丸投げされオリパラ開催とともに使い捨てされた菅総理

コロナ対策丸投げされオリパラ開催とともに使い捨てされた菅総理
「感染拡大防止に専念」という嘘とコロナ対策が評価されない理由
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66815

『「総理」と「草履」は使い捨て――。

 いまから20年前に小泉純一郎内閣が立ち上がった頃に目にしたコラムのタイトルだ。書いたのは心理学者の岸田秀。「ソウリ」と「ゾウリ」の語呂合わせだけでなく、どちらも新品は好まれるが、すり切れてきたらそのまま捨てられておしまい、ということを説いていた。言い得て妙だと記憶に残っている。

安倍政権の「尻ぬぐい」に奔走したのにあっさり使い捨て

 菅義偉首相の突然の退陣表明で、その言葉が浮かんだ。ちょうど1年前、安倍晋三前首相の体調不良による辞意を受けて総裁選への出馬を表明すると、自民党の各派閥は我先にと支持を表明。圧勝の流れができあがってそのまま総裁に就任すると、高い支持率で政権が発足したはずだった。

 それからわずか1年。任期満了が近づく総選挙を前に、「菅では戦えない」という党内の「菅離れ」が加速すると、首相は今月に予定された総裁選前の解散を模索して挫折。すぐさま党内人事の刷新で求心力を回復させようとするも頓挫。総理総裁の権力の源泉である「解散権」と「人事権」を封印されて、あれよあれよという間に総裁選不出馬、退陣へと追い込まれた。これほどまでに見事な使い捨てもあるまい。

 もっとも、ここまでの展開を見る限りは、安倍長期政権の「尻ぬぐい内閣」あるいは「しんがり内閣」と言ったほうが正しいかも知れない。

 任期をあと1年残しての安倍前首相の辞任で、政権発足以来の官房長官を務めていた人物があとを引き継ぐ。そのまま新型コロナ対策に取り組み、1年延期を決めた東京オリンピック、パラリンピックを無観客でも開催して帳尻を合わせる。使い終わったように前政権の任期を満了してお払い箱になる。』

『その一方で、安倍晋三が2006年に最初に首相の座に就いてわずか1年で辞任すると、そこから毎年9月に1年ごとに首相が入れ替わる時代が民主党政権まで続いた。それが再び安倍が復権するまで止まらなかったことからすれば、「安倍の呪い」の再来といったところか。

総裁選不出馬表明会見の「嘘」

 いずれにしても、菅首相がここまで支持率を失い、求心力を失って使い捨てられていく大きな原因となったものが、新型コロナ対策の失敗にある。では、なぜ失敗したのかといえば、根本は菅首相の繰り出す日本語の不正確さと意味不明ぶりにある。菅首相の日本語がおかしいことは、以前から指摘してきたことでもあるが、そこに透けて見えるのが、思考の曖昧さと理念構築の崩壊だ。

(参考)「スピード感をもって」とは?国語力疑わしい菅首相
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64286

 直近の一例を挙げると、今回の突然の辞任表明。3日の昼過ぎに首相官邸のエントランスで記者たちを前にこう語っている。短いので全文を記す。

「先ほど開かれました自民党役員会において、私自身、新型コロナ対策に専念したい、そういう思いの中で、自民党総裁選挙には出馬しないことを申し上げました。

 総理大臣になってから1年間、正に新型コロナ対策を中心とする、様々な国が抱える問題について、全力で取り組んできました。

 そして、今月17日から自民党の総裁選挙が始まることになっております。私自身、出馬を予定する中で、コロナ対策と選挙活動、こうしたことを考えたときに、実際、莫大なエネルギーが必要でした。そういう中で、やはり両立はできない、どちらかを選択すべきである、国民の皆さんにお約束を何回ともしています、新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、私は専念したい、そういう判断をいたしました。

 国民の皆さんの命と暮らしを守る、内閣総理大臣として、私の責務でありますので、専念して、やり遂げたいと思います。

 また来週にでも、改めて記者会見をしたいと思います。以上です」

 新型コロナ対策に専念したいから総裁選に出ない、総理を辞める、という理由からしてもう既に、とってつけた言い訳であることは明々白々だ。そこでさらに着目すべきは「新型コロナウイルスの感染拡大を防止するために、私は専念したい」と語っていることだ。文脈からしても菅首相のいう「新型コロナ対策」とは「感染拡大を防止する」ことにあるようだ。』

『だが、感染拡大の防止のなにに専念するというのだろうか。やっていることといえば、緊急事態宣言を繰り返して、毎度の会見を開いては、国民の皆さんに「自粛」をお願いすることくらいしかない。

どこに「感染拡大防止に専念」すべき余地あるのか

 感染が急拡大した先月、政府は17日に新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言に茨城、栃木、群馬、静岡、京都、兵庫、福岡の7府県を20日から追加し、これにあわせてすでに発出されている東京、埼玉、千葉、神奈川、大坂、沖縄の6都府県の期限も8月31日から9月12日まで延長することを決めた。宣言に準じるまん延防止等重点措置については、すでに適用されている北海道、福島、石川、愛知、滋賀、熊本の6道県に宮城、富山、山梨、岐阜、三重、岡山、広島、香川、愛媛、鹿児島の10県を加えた。

 さらに25日には、北海道、宮城、岐阜、愛知、三重、滋賀、岡山、広島に緊急事態宣言を発出、高知、佐賀、長崎、宮崎にまん延防止等重点措置を適用。期間を8月27日から9月12日までとした。

 もうここに書き連ねるだけでも分けがわからなくなるのだが、これで全国の半分以上の都道府県が法律の規制を受けることになり、どちらの対象にもならない県のほうが希少だ。東京だけを見ても、現在4回目の緊急事態宣言が発出中で、それ以前からまん延防止等重点措置をあわせると、今年に入っていずれの対象にもならなかった期間はわずか4週間のみである。もはや規制が常態化していると言える。言い換えれば、今年に入ってこの生活が日常であって、緊急事態宣言も常態化すれば、それは「緊急事態」ではなくなる。いまさらながらに「緊急事態」の言葉が意味を成さない。

 しかも、その時の会見で菅首相が語っていたことは、あらたに対策の「3つの柱」として「医療体制の構築」「感染防止」「ワクチン接種」を打ち出したことだった。このうち「医療体制の構築」とは、自宅療養のための支援の拡充や病床ベッド数の確保、あるいは中和抗体薬の積極投与といったことで、感染してしまった患者への対策を語っている。つまり医療体制の強化を自讃して、感染してもご安心ください、と国民に訴えている。

 次に「感染防止」だが、これこそ従前の人流抑制、テレワークの推進、飲食店の時短営業、酒類提供の停止の自粛を求め、相変わらずの「3密」の回避を呼びかけるに過ぎない。あとの「ワクチン接種」はその進捗状況を良好と語っているに過ぎない。

 これであとどこに首相として感染拡大の防止に専念する余地があるのだろうか。』

『首相が胸を張ったコロナ対策が国民にさっぱり相手にされなかった理由

 こうした会見の度に、質問に立つ記者たちが「危機感が伝わらない」「国民に総理の声が届かない」などと指摘するが、当たり前だ。首相は、医療体制は整っているから安心してください、医療崩壊は起こさせませんよ、と言っているのであって、それだったら感染しても大丈夫だ、と国民を落ち着かせるメッセージを発信しているのだから。その一方で「自粛」を呼びかけても説得力は無い。首相の発言内容そのものに矛盾がある。

 もっとも、東京オリンピックがはじまって東京都の1日の新規感染者数が5000人を超えるとは思ってもみなかったのだろう。その度に場当たり的な対策に終始し、緊急事態宣言を発出して常態化させ、危機感を呼びかけるはずが医療体制の拡充を宣伝して安心を呼びかける会見では、感染防止への国民の士気も高まらない。自分の発言の主旨や会見を必要とする意義も理解できてない。

 こうした見通しの甘さと場当たり的な姿勢は、この1週間で総裁選前の解散に打って出ようとしたり、総裁選直前の党内人事の刷新を図ろうとしたりして、どれも一夜で霧散していくところにも現れている。権力基盤維持もできない権力者に感染拡大阻止という国家事業ができるはずもない。それだけすり切れが早くて脆いゾウリだったということだろう。今年1月の施政方針演説で今夏の東京オリンピック・パラリンピックを「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証」と語っていたはずが、その新型コロナウイルスに打ち負けた首相の言葉の虚実を嗤う。

 これで来月には新しい首相が誕生することになった。政治家は言葉がすべてと言われるように、その発信する言葉のなかに、その正体を探る素地があることをあらため知っておきたい。』

「退陣」決断までの5日間、菅首相は何を考えていたのか

「退陣」決断までの5日間、菅首相は何を考えていたのか
直前まで総裁選に闘志燃やしていた首相の心を折った「情報」
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/66802

『突然の出来事だった。菅義偉首相が3日昼、自民党臨時役員会で総裁選に立候補しないと明言した。9月29日に選出される新総裁が、第100代内閣総理大臣に就任した時点で菅内閣は総辞職する。この間、菅首相は正面突破を何度も図り、続投を前提にした強気の構えを崩さなかった。一夜にして態度が変わった背景は何なのか。「退陣」決断までの5日間を振り返る。

8月30日(月)「恫喝と非情」

 菅首相は8月29日の日曜日、赤坂の衆院議員宿舎で1日を過ごした。外出が一切ない日は5カ月ぶりである。菅首相はもともと休むという習慣がなく、その意識すらも持っていないタイプだが、この日の静養で相当のエネルギーを充填したのは間違いない。翌30日からフルパワーで政局に挑んでいく。

 30日午前11時24分。総裁選出馬に意欲を示していた下村博文政調会長が官邸を訪れ、菅首相と面会した。下村氏は菅首相から出馬断念か政調会長辞任を迫られた。下村氏はあっさり白旗を掲げ、出馬見送りを決めた。菅首相の“恫喝”が炸裂した瞬間だった。面会時間はわずか13分だった。

 菅首相の動きは止まらない。同日午後3時31分、二階俊博幹事長と林幹雄幹事長代理を官邸に呼んだ。経済対策の策定指示、党の人事刷新についての相談だった。経済対策の指示はこの時点で「退陣」する気持ちが0%であったことを意味する。

 驚くべきは、菅首相が二階氏をクビにすることで難局を打開しようと考えたことだ。政権維持のためなら、菅政権の生みの親であり、5年以上幹事長の座に君臨するドンでも容赦なく斬る。勘の鋭い二階氏は菅首相の意向を察知したとみられ、「(自分に)遠慮せずに人事をやってほしい」と答えた。

二階俊博・自民党幹事長(写真:Motoo Naka/アフロ)
ギャラリーページへ
 菅首相はこの1年、「二階氏の言いなり」「二階氏の支持がなければ何もできない」と言われ続けてきただけに、その見方を覆す非情な判断だったといえる。一方で、「二階外し」は党内世論に悪影響ももたらし、二階氏を斬って自らが首相の座にとどまることへの批判が次々に出始める。』

『30日夕、菅首相は官邸裏のザ・キャピトルホテル東急の客室に秘書官と入っている。朝食を取る場所として頻繁に使っていたキャピトルだが、最近はほとんど利用していなかった。客室なので、官邸や議員会館、議員宿舎では面会できない人物と接触していた可能性がある。局面の転換に向けた作戦会議を誰かと行っていたとみていいだろう。

8月31日(火)「謀略と憤怒」

「二階外し」の報道の余波が続いていた日だが、菅首相は来日中のケリー米気候変動問題担当大統領特使の表敬訪問を受け、気脈を通じている長崎幸太郎山梨県知事と面会するなど公務を黙々とこなした。

 何もないまま終わるかと思われた日だったが、夜に入って政局を急変させる衝撃的なニュースが流れた。毎日新聞が午後10時26分、「首相、9月中旬解散意向」と速報したのだ。

「菅義偉首相は自民党役員人事と内閣改造を来週行い、9月中旬に衆院解散に踏み切る意向だ」

 この記事は、政局を大きく動かしていく。党内から「自分が総裁選で負けるから、総裁選をつぶすための解散だ!」との声が次々に出たうえ、「今解散したら討ち死にだ、下野するかもしれない。首相は本気なのか」という恐怖混じりの認識が共有されていった。菅首相に反発しているとされる閣僚経験者のベテランが仕掛けた「謀略報道説」、菅首相側近からの「アドバルーン説」などが深夜まで飛び交う騒ぎとなった。

 後から考えれば、この毎日報道が、菅首相の解散権を実質的に奪い、「退陣」決意のきっかけになったといっていい。

 読売新聞によると、31日夜、安倍晋三前首相が菅首相に解散を思いとどまるよう電話で諫めたという。安倍前首相は「党内で反乱が起こってしまう」と語ったとされる。

 菅首相に近い政治ジャーナリストの田崎史郎氏は9月4日、日本テレビ系の番組で「大きく局面が変わったのは、8月31日の火曜日の夜に、9月中旬に解散、総裁選を先送りするんだという報道が流れて、水曜日朝の毎日新聞にその記事がそのまま出たんですね。それで党内の空気がガラっと変わって、総裁選先送りなんて許されないってことになって、一段と菅離れが進んだ」と解説した。

 さらに「その報道に対して菅さんは、ものすごく怒っていました。『ひどい、ひど過ぎる』と言われていました」と語った(スポーツ報知から引用)。

 田崎氏の指摘の通りだ。菅首相の憤怒は頂点に達していた。「首相には解散するつもりは最初からなかった」との見方があり、それゆえの怒りだったのではないか。少なくとも、筆者にはそう感じられる。菅首相は、その憤怒の気持ちを党役員人事・内閣改造断行の決意へと昇華させていく。』

『9月1日(水)「攻勢と誤解」

 菅政権の目玉政策の代表格であるデジタル庁が発足した日である。新たな組織を1年で整えたことは画期的であり、菅首相の政策実行力の賜物である。

 ただしその感慨に浸るような時間の余裕はなかった。毎日新聞に端を発した「解散」報道が燎原の火のごとく広がったため、菅首相は午前9時25分に記者団の前に姿を見せ、「今のような厳しい状況では、衆院解散はできない」と強く否定した。総裁選も予定通り実施すると明言した。

 おそらく菅首相は、これで党内のざわつきも鎮静化すると思ったのではないか。だが、メディアは「打ち消しに躍起」と報じるばかりで、逆に党内の不信感も一気に増幅されていった。

 それでも、菅首相は再び攻勢に出る。3日11時30分から、党本部で臨時役員会を開催することを決めたのだ。辞表を取りまとめ、6日にも党役員人事・内閣改造を断行する準備を確定させる流れだった。1日午後3時ごろには、臨時役員会開催の連絡がメディア向けに広報されている。菅首相の凄まじい執念を感じざるを得ない。

 しかし、党内から吹く逆風は止まらない。「総裁選前の人事は納得できない」。総裁選前の人事に賛成する声が少ない。「総裁選つぶしをなおも図っている」との観測、誤解も依然、広がり続けていた。

 劣勢下でなぜ攻勢に出たのか。解散権を封じられた菅首相が、人事権を行使して主導権を奪還しようとした、と捉えるのが一番すっきりするが、真相はわからない。ヒントになりそうな公開情報がある。この日夕方、日課のように立ち寄る議員会館の自室で、気心を許せる当選同期の盟友・山口泰明選対委員長と約30分会談している点だ。菅首相は山口氏に本音を漏らしただろうと推測できる。』

『9月2日(木)「包囲と決断」

 攻防4日目、菅首相との対決姿勢を鮮明にしている岸田文雄前政調会長が動いた。午前10時から、コロナ対策を中心とした政策発表の記者会見を開いたのだ。岸田氏は8月26日の出馬表明の記者会見で、党役員の任期制限を掲げ、「二階外し」をぶち上げた。この作戦は好評で、二階氏を疎ましく思う党内の支持を取り付ける切り札になりそうだったが、菅首相が「二階外し」を突然打ち出したため、その効果がなくなっていた。

 岸田氏としては発信を強化する意味でも大事な記者会見となる。「国民には説明が十分でないのではないか。楽観的すぎるのではないかという声が多数ある」と菅首相のコロナ対応をしっかり批判することも忘れなかった。

岸田文雄・前政調会長
ギャラリーページへ

 岸田氏の言動が菅首相の闘争心に火をつけたことは容易に想像できる。菅首相は午後3時53分、官邸を出て自民党本部に入り、二階俊博幹事長に総裁選出馬の意向を伝達した。面会時間は16分。この時点で菅首相は総裁選不出馬を模索したり、検討したりした形跡は一切ない。むしろ、戦闘意欲は満々だった。

 しかし、状況が一変するような情報が菅首相にもたらされる。毎日新聞によると、この日の夜、菅首相は側近の佐藤勉総務会長と電話している。佐藤氏は翌日に控えた臨時役員会で、党役員人事の一任に関し、「文句が出そうだ」と伝えたというのだ。

 菅首相は佐藤氏と親しく、信頼する仲間の1人である。佐藤氏の見通しが、主戦論で押し通してきた菅首相の心を折った可能性がある。そこまで反対論があるのか、と天を仰いだかもしれない。読売新聞は、家族からも退陣を促されたと報じている。いずれにしても、2日夜、菅首相は正面突破を諦めたとみていいだろう。

 さらに注目すべき情報がある。

 自民党関係者によると、菅首相は小泉進次郎環境相から、安倍晋三前首相や麻生太郎財務相が“菅おろし”に関与していたとの情報を得ていたという。小泉氏は8月30日から5日連続で菅首相と面会している。1対1で会った時間は、30日=10分、31日=1分、9月1日=33分、2日=35分、3日=20分。ジャーナリストの田原総一朗氏は、菅首相が小泉氏に幹事長就任を打診し続けた、と言っているが、両者の話はそれだけではない可能性がある。

 小泉氏は青年局長時代に築いた地方議員や若手の有力党員らとの太いパイプを持っている。そこを通じて、安倍氏や麻生氏が地方の自民党筋に“菅おろし”をにおわせる活動、策動をしていることを独自に把握していたフシがある。四面楚歌に陥っている状況を小泉氏は菅首相に何度も報告したのだろう。小泉氏がもたらした情報が「退陣」決断の決定打になった可能性が高い。

 その安倍前首相は、今年5月3日、菅首相支持をBSの番組で明言していた。ただ、その後4カ月間、実質的に沈黙を守ってきた。そして安倍前首相が高市早苗元総務相を推すとの報道が出始めた。菅首相はキングメーカーである安倍前首相が自分を見限ったと考え、万事休すと思ったのではないか。

 いずれにしても、2日夜、どこかの時点で菅首相は正面突破を諦めたとみていいだろう。』

『9月3日(金)「豹変と撤退」

 3日朝、菅首相の動きに目立った変化はなかった。いつものように、8時前に官邸に入り、敷地内を散歩している。だが産経新聞によると、この日朝、政務秘書官らに「(総裁選には)出ない」と語ったという。2日夜に態度を180度変えたのはほぼ間違いなさそうだ。
 四書五経のひとつ「易経」に有名な「君子豹変」という言葉がある。突然態度を変える際に使われる場合が多いが、正確には「君子は日進月歩、日々に善に進化していく」という意味だ(諸橋轍次編「中国古典名言辞典」)。実はこの君子豹変の後に「小人は面を革(あらた)む」と続いている。これは「小さな人物は心にもなく、顔だけ上の人の意に従う態度を取る」という意味だ。菅首相が善に進化したかどうかはともかくとして、衆院選を前にした党の窮地を救う決断を電撃的に下した点は、「君子豹変」と言えるだろう。

 3日午前11時17分、悲壮な表情をした菅首相が自民党本部に入った。二階俊博幹事長と面会し、総裁選不出馬を伝えた。各種報道によると、二階氏は慰留をしたという。午前11時34分、臨時役員会が始まり、菅首相は総裁選不出馬の意向を表明し、約6分で退出した。

 官邸に戻った菅首相はすぐに記者団の前に登場したわけではない。菅政権を全力で支えてきた側近中の側近である武田良太総務相と真っ先に面会している。その後、河野太郎行革担当相とも個別会談した。この2人との面会は見逃せないポイントである。武田氏は党役員人事が行われれば、三役への起用が見込まれていた上、菅首相の主戦論を支持しつつ、何らかの形で軟着陸を図ろうと努力していた。河野氏についても、この場で菅首相が後事を託す意味で、総裁選出馬を後押しした可能性がある。

 菅首相は武田氏と河野氏との面会後、午後1時6分、官邸で記者団に対し、不出馬表明を行った。「コロナ対策に専念したいという思いの中で、総裁選には出馬をしない」「コロナ対策と選挙活動、莫大なエネルギーが必要なのでどちらかを選択すべき」。ややわかりにくい不出馬の理由は、党内や世論を踏まえて身を退いた——とは絶対に言わないという決意がにじんでいる。

 現時点では、「退陣」の決断は2日夜ということしかわからないが、衆院選に向けた自民党の風向きは一気に良くなった。次期衆院選での大敗は回避される気配が濃厚だ。菅首相は衆院選勝利の立役者、功績者として、その身の退き方を含めて、後々評価されるのではないか。』

自民党総裁選、混迷の派閥

自民党総裁選、混迷の派閥 衆院選前で世論重視
細田派、高市氏で統一難しく 麻生派「河野・岸田氏割れる」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA03EKX0T00C21A9000000/

『自民党総裁選を巡る各派閥の対応が混迷を深めてきた。菅義偉首相の不出馬表明で前回首相を支援した最大派閥の細田派と、第2派閥の麻生派は支援候補の絞り込みが難しい情勢だ。次期衆院選を間近に控えて世論重視で「勝てる候補」を探る。中堅若手の動き次第で自主投票になりかねない。

【関連記事】高市前総務相、出馬の意向 自民総裁選
総裁選は17日告示―29日投開票の日程で実施される。1人1票の国会議員票383票と、党員・党友票383票の計766票を競う。

記者会見で自民党総裁選への出馬を表明する岸田氏(8月26日、国会内)

立候補はまず岸田文雄氏が明らかにした。菅政権の閣内にいる河野太郎規制改革相は週内にも出馬表明の記者会見に臨む見通しで、高市早苗氏も立候補する意向だ。

石破茂氏は派内などで協議しており、野田聖子幹事長代行は推薦人集めを急ぐ。

昨年、安倍晋三前首相が辞任表明した後の総裁選は7派閥のうち細田、麻生、竹下、二階、石原の5派が菅首相を支え圧勝を主導した。今回は首相の不出馬で「勝ち馬」が見えなくなり、各派は戦略を再検討している。

細田派は今週前半にも幹部会合を開く。同派に影響力をもつ安倍氏は無派閥の高市氏を支援する考えだ。保守層を代弁する立場を期待するもので、衆院当選4回の高鳥修一氏は支持を明言する。

自民党総裁選に出馬意向の高市氏

高市氏はかつて同派を離れた。細田派幹部は「高市氏で派閥をまとめるのは簡単ではない」と言う。選挙基盤の弱い衆院当選3回以下の議員が3割超を占め、河野氏や岸田氏支持を求める主張が高まればまとまるのは難しい。

同派の下村博文政調会長も出馬を探る。いったん断念したが、首相不出馬で状況が変わったと判断した。推薦人20人の確保に向けて派内の議員らと協議している。

河野氏が所属する麻生派は態度を決めていない。会長の麻生太郎副総理・財務相は3日、会談した河野氏に支援の言質を与えなかった。

出馬検討を表明する河野太郎氏(3日、東京・永田町)

同派の中堅・若手は報道各社の世論調査で次の首相候補で上位の河野氏に出馬を促す。同派幹部は「今回は派内が岸田勢力と河野勢力に二分する。一つに無理やりまとめるのは不可能だ」と話す。

竹下派には昨年に「ポスト安倍」候補にあがった会長代行の茂木敏充外相がいる。衆院の中堅・若手から待望論があがる一方、参院側には距離が残る。

茂木氏「グループまとめるのが重要」

茂木氏は5日のNHK番組で「グループをしっかりまとめるのが何より重要だ」と強調した。
同派は2018年総裁選で衆参両院の対応が割れた。衆院の大勢が当時の安倍首相を支持したのに対し参院側は石破氏に回った。参院竹下派に影響力をもつ青木幹雄元参院議員会長の意向もあった。

河野氏は4日、竹下派の若手議員に電話し「応援よろしく」と伝えた。同派の協力を得るため、幹部との面会も調整する。派としての対応を定められなければ草刈り場になるおそれが出る。

首相の再選支持を表明済みだった二階派と石原派は軌道修正する。首相は3日夜、都内の衆院議員宿舎で二階氏と会談した。二階氏は「俺はまだ旗振りしない。しばらくみんなで勉強すればいい」と周辺に語る。

石破氏、二階氏と会談

石破派は石破氏が出馬を決断するかが焦点となる。同派の議員は17人で出馬に必要な推薦人20人に足りない。石破氏は4日、都内で二階氏と会談し、総裁選について意見交換した。他派閥や無派閥からの賛同を得られるか見極める。

今のところ派閥単位で態度を決めたのは岸田氏が会長を務める岸田派だけだ。告示まで3週間以上ある8月26日に出馬を表明し、党員・党友票の開拓に動く。

国会議員票と党員・党友票が同数となる「フルスペック」の総裁選は世論を代弁する党員票がものをいう。一方で1回目の投票で過半数に届く候補がいなければ上位2候補で決選投票を実施する。

都道府県連票47票と国会議員票の集計となり国会議員票の重みが増す。自民党が野党時代に実施した12年秋の総裁選は決選投票で安倍氏に国会議員票が流れ、1回目トップの石破氏に勝利した。

今回の総裁選で候補が乱立すれば決選投票になる可能性が高まる。主要派閥の領袖は影響力を保つため派内の結束維持に努める。

【関連記事】
・「世代と派閥」自民の岐路 総裁選せめぎ合い
・首相退陣、それぞれの誤算 安倍・岸田・石破各氏ら 』

『多様な観点からニュースを考える
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

竹中治堅のアバター
竹中治堅
政策研究大学院大学 教授

コメントメニュー
分析・考察 現在の政治の基盤にある小選挙区・比例代表並立制という衆議院の選挙制度の下では選挙は政党本位で行われる。

首相は「選挙の顔」として与党の象徴となり、首相の人気は与党の戦績に大きな影響を及ぼす。総選挙の可能性が高まれば高まるほど与党政治家は首相の人気を意識する。2020年9月の総裁選で多くの派閥が菅義偉氏支持で纏まることができたのは、菅氏の人気が高く、派閥の考えと党首の人気重視の自民党政治家の志向が一致したからである。

今回は、出馬表明した岸田文雄・河野太郎両氏、出馬の可能性が注目される石破茂氏はいずれも一定の人気を誇り、派閥が一人の候補に纏めるのは難しい。多くの派閥は自由投票を選ぶことになるだろう。

2021年9月6日 13:57 (2021年9月6日 14:00更新)
いいね
3

白井さゆりのアバター
白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授

コメントメニュー
別の視点 自民党総裁選の議論の争点のひとつに気候変動を取り上げるべきだと思います。

各候補が「改正地球温暖化対策推進法」で正式に掲げた2050年までに排出量正味ゼロを実現するために、その中間目標である2030年46%減(2013年比)と7月発表の電源構成についてどのようにして実現していくのか具体的なビジョンを示してほしい。

11月に英国グラスゴーで、「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」(COP26)が開催され、日本のリーダーシップが期待されます。

2021年9月6日 8:07いいね
38

菅野幹雄のアバター
菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター

コメントメニュー
分析・考察 派閥ってなんだろう。そんな基本的な疑問が浮かんできます。総裁候補がいて、領袖がいる。選挙に負けまいと必死の若手議員と、派閥のグリップを失いたくないボスたち。有権者が一番気にしている政策の立案と実行に内向きの発想は弊害だらけで、むしろ自主投票の方がいいくらいです。

政治ですから数が勝負であり人々が群れるのは当然ですが、危機の最中に首相がまたも一年で替わる事態になった日本には、有権者本位で語り、実行できる強い指導者を選ぶことが必須の課題です。

自民党の方々はその原点を忘れずに戦いに臨んでほしいです。菅首相が衆院解散や幹事長交代を探りムラの論理で迷走した展開を繰り返せば、遠からずそっぽを向かれます。

2021年9月6日 7:33 (2021年9月6日 11:12更新)
いいね
145 』

「世代と派閥」自民の岐路 総裁選せめぎ合い

「世代と派閥」自民の岐路 総裁選せめぎ合い
衆院選へ「勝ち馬」見定め
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE03E340T00C21A9000000/

『自民党総裁選の動きが一気に活発になってきた。菅義偉首相(自民党総裁)の不出馬を受け、間近に迫る衆院選を意識した「選挙の顔」を誰にするのか、勝ち馬を見定めようと党内が動く。自民党衆院議員の半数近くを占める当選1~3回生は世論の人気を重視し、派閥の動きは鈍い。

【関連記事】
・首相退陣、それぞれの誤算 安倍・岸田・石破各氏ら
・自民総裁選「ポスト菅」動く SNS発信や議員支持集め
・安倍前首相、高市氏を支援の意向 自民総裁選
・「五輪後に政変」ジンクス破れず 今回も首相が退陣

その時々の政治課題や時流をみて動く新しい世代が総裁候補を押し上げるのか、従来の派閥力学が維持されるのか。世代と派閥がせめぎ合う総裁選は、自民党の今後を決める岐路になる。

総裁選は既に出馬表明した岸田文雄氏、立候補する意向を固めた河野太郎規制改革相、意欲を示す高市早苗氏ら複数の候補で争う。野田聖子氏も模索する。

現職の総裁が出馬せず、圧倒的に優位な候補が見当たらないのが現状だ。

首相が出馬を断念した背景には、党内若手の「菅首相では衆院選を戦えない」との声があった。

2012年、自民党が政権に復帰した衆院選で国政に出た議員は現在当選3回にあたる。3回生は84人に上り、突出して多い。14年、17年などの選挙で初当選した議員を含めると、3回生以下は46%に達する。

厳しい選挙を戦った経験がない若手は首相の不人気に動揺し「菅氏以外なら誰でもいい」との意見が強まっていた。

昨年の総裁選では首相を支持した細田派や麻生派でさえ、今回は「菅氏への支持で派閥はまとまらない」との見方が広がっていた。世代と派閥、2つの要素を満たせない首相には、不出馬しかなかったといえる。

最初に出馬表明した岸田氏は「菅氏以外なら誰でも」の感情を捉えた。党役員任期を「1期1年、連続3期まで」と主張し、二階俊博幹事長の再任を否定した。

中堅・若手の登用を掲げたのも、当選1~3回生の空気を反映したものだ。「首相と事実上の一騎打ちなら、岸田氏有利」との見方もあった。

首相の不出馬で状況を変えたのは、世論調査で「次の総裁にふさわしい人」のトップを走る河野氏の登場だ。

3日、河野氏は麻生太郎副総理・財務相を大臣室に訪ねて出馬の意向を伝えた。

「今回が勝負をかける時期なのか」。麻生氏の問いかけに河野氏は「そうです」と答えた。「わかった。賛成もしないが、反対もしない」と麻生氏が言うと、河野氏は「じゃあ出ます」と語った。

河野氏を主に推すのは若手たちだ。河野氏は58歳で、自民党内ではネット世代の先駆けで派閥の領袖でもない。麻生派は岸田氏と河野氏の支持に割れる。

前回は首相を支持した細田派も対応は定まらない。同派に影響力がある安倍晋三前首相は高市氏を支援する考えだ。高市氏は無派閥で、かつては現在の細田派に所属していた。

細田派では下村博文政調会長も再び、名前が取り沙汰される。最大派閥は一枚岩で動ける状況にはない。

こうした状況をにらみ、河野氏と並んで世論調査で人気のある石破茂氏も立候補を検討する。今回の総裁選は国会議員票と党員・党友票が同じ数になる。石破氏に期待するグループは「今回はチャンスがある」とみる。

12年に政権復帰してから、自民党政権の中枢は7年8カ月にわたって首相を務めた安倍氏、盟友で副総理を続ける麻生氏、官房長官を経て首相になった菅氏、二階氏らが占めてきた。

現在、党所属衆院議員276人の平均年齢は59歳で、60歳未満は半分に迫る。無派閥も2割弱に上る。引退を表明した議員が相次ぎ、さらに世代が若返るのは間違いない。

新たな若手の動きも出てきた。当選3回、30~50歳代の有志20人ほどは9月中に総裁選のあり方や党改革を提言する。細田派の福田達夫氏は「長老の意向に左右される不透明な意思決定というイメージを払拭する」と話す。

昨年の総裁選では「勝ち馬は菅氏だ」とみて、無派閥の菅氏に大派閥が乗って首相の誕生につながった。今回も派閥は主導権をとれない。世代と派閥がせめぎ合い、総裁選は先の読めない真剣勝負となってきた。

(重田俊介)

【関連記事】
・総裁選の構図一変 岸田氏と河野氏出馬、石破氏も検討
・政局、金融界に影響は? 地銀再編・みずほなど課題残る
・菅首相退陣、選挙と市場どう動く 注目記事まとめ読み
・小泉氏進言、首相不出馬に影響 解散・人事…万策尽きる
・小泉氏、断腸の退陣説得 首相と膝詰め1週間

この記事の英文をNikkei Asiaで読む 』

平井氏、デジタル庁への影響否定

平井氏、デジタル庁への影響否定
発足3日目に生みの親、首相辞意
https://nordot.app/806445429529329664?c=39546741839462401

『デジタル庁は発足から3日目に、生みの親である菅義偉首相が退陣の意向を表明する事態に見舞われた。平井卓也デジタル相は、どの内閣でも行政手続きのオンライン化などは重要課題であり、大きな影響はないとの見解を示した。

 退陣の一報は、初代デジタル相に就いた平井氏に対し、報道各社が合同でインタビューする直前に舞い込んだ。平井氏は「お考えがあって決断されたと思う。閣僚として重く受け止めたい」と厳しい表情で語った。

 その上で「国の方針を国会が決めた。政治状況に左右されずに前へ進む。この路線は、いかなる状況になったとしても変わらない」と述べた。』

菅首相の退陣表明で霞が関

「ショック」「明るくなる」 菅首相の退陣表明で霞が関
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021090301003&g=pol

『 菅義偉首相の退陣表明を受け、中央省庁の幹部らは「本当にびっくり」「これほど急に政局が動くのは見たことがない」と一様に驚いた。同時に、官房長官から9年近く政権中枢にいた菅氏について「長かった」と弊害を指摘する幹部もいた。
菅首相、延命狙うも万策尽き 頼みの派閥支援望めず―小泉氏進言背中押す

 菅氏は官房長官時代の2019年、電気や農業の利水ダムを水害対策に使う方針を決定。省庁の縦割りを破る施策で、国土交通省幹部は「災害対応に並々ならぬ強い意識を持っていた。馬力があった」。
 50年に温室効果ガスの排出を実質ゼロとする目標を打ち出すなど地球温暖化対策にも意欲的で、環境省幹部は「ショックだ」と肩を落とす。パラリンピック開催中の退陣表明となったが、文部科学省幹部は「(大会を)やり遂げる強い意志があった。感謝している」と話した。
 来年度予算編成作業を本格化させる財務省。幹部は「ぼろぼろになる前に辞任を表明して良かった。体面は保たれたが、政治的な影響力はもうなくなるだろう」。菅氏は成長戦略の具体化策の取りまとめを指示したが、この幹部は「新しいことは次の首相がやるのでは」と話した。
 政府は14年、省庁幹部人事を一元管理する「内閣人事局」を設置。官邸が人事を掌握し、官僚の過度な忖度(そんたく)を生んでいると批判された。ある省幹部は「長かった。同じ人がずっと人事をやっていると好き嫌いが出てくる。霞が関も明るくなるのでは」と語った。
 人事で中央官庁ににらみを利かせてきた菅氏だが、退陣の引き金となったのは自民党役員人事。別の省幹部は「人事で局面を打開してきたのに、人事でだめだった。皮肉な結末だ」。』

安倍前首相、高市氏を支援の意向 自民総裁選

安倍前首相、高市氏を支援の意向 自民総裁選
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA040UN0U1A900C2000000/

『安倍晋三前首相が自民党総裁選で高市早苗前総務相を支援する考えを示したことが4日、わかった。安倍氏が出身派閥の細田派の幹部や高市氏本人に伝えた。総裁選後の衆院選もにらんで保守層をつなぎとめる狙いがあるとみられる。

高市氏は2012年の第2次安倍政権発足以降、党政調会長や総務相などを歴任した。安倍氏と高市氏は自民党有志の保守系グループ「保守団結の会」でともに顧問を務め、政治信条が近い。

高市氏は現在の細田派にかつて所属し、いまは無派閥だ。細田派は党内の最大派閥で動向が注目される。高市氏が同派の所属議員からの支持を広げられれば、立候補に必要な推薦人20人の確保が見通せるようになる。

高市氏は3日、国会内で記者団に「出馬の意思は変わらない。幅広くいろんな方に支援をお願いしたい」と強調した。

細田派は3日に幹部会合を開き、総裁選の構図を見極めながら9日の派閥総会で対応を協議すると確認した。

総裁選は17日告示―29日投開票の日程で実施される。現職の菅義偉首相(党総裁)は3日に不出馬を表明した。岸田文雄前政調会長が出馬を明言している。河野太郎規制改革相が立候補の意向を固め、石破茂元幹事長らも対応を検討している。

【関連記事】総裁選の構図一変 岸田氏と河野氏出馬、石破氏も検討 』

菅新総裁が向き合う三国志(再掲)

菅新総裁が向き合う三国志 令和の自民党の権力構造
https://http476386114.com/2020/09/15/%e8%8f%85%e6%96%b0%e7%b7%8f%e8%a3%81%e3%81%8c%e5%90%91%e3%81%8d%e5%90%88%e3%81%86%e4%b8%89%e5%9b%bd%e5%bf%97%e3%80%80%e4%bb%a4%e5%92%8c%e3%81%ae%e8%87%aa%e6%b0%91%e5%85%9a%e3%81%ae%e6%a8%a9%e5%8a%9b/

 ※ 表示させて読んでいる人がいたんで、オレも読み返してみた…。

 ※ もう、すっかり貼ったの忘れていた…。

 ※ 今、読み返してみると、相当に参考になる…。

 ※ 菅さんの権力基盤、自民党内の権力構造…。

 ※ 今でも、そんなに変化して無いだろう…。

 ※ ただ、「フルスペックの総裁選」やる場合、どうしても「党員票」が問題となる…。


 ※ そして、SNSとネットの発達により、昔のように「メディア操作」を通じた「大衆操作」がやりにくくなっている…、という点がちょっと違って来た点だろう…。

『首相の安倍晋三が退陣を表明した翌日の8月29日。菅は国会内の議員事務所にこもった後、前からの約束を変更せずに私的な食事会で肩の力を抜いた。本番はここからだ。東京・赤坂の衆院議員宿舎の応接室で幹事長の二階俊博、その側近で幹事長代理の林幹雄、国会対策委員長の森山裕(石原派)と向き合った。この4人組は全員が秘書や地方議員からのたたき上げだ。』

『週明けの31日、二階の電光石火の策動を仕上げたのが森山だ。9月14日の両院総会で新総裁を決め、政治空白の回避を理由に16日に臨時国会を召集して首相指名選挙を実施する。こんな短期決戦の政治日程で主要野党と素早く話をつけた。1日の総務会で総裁公選を要求した青年局長の小林史明ら若手議員も「野党に今さら迷惑をかけられない」との森山の論法に屈した。

霞が関の官僚機構を動かし、情報を吸い上げる官房長官。選挙対策や資金配分など党務を差配する幹事長。野党も巻き込んで政治日程を組み立てる国対委員長。安倍が首脳外交やアベノミクスなどでトップダウンの政権運営を展開した「安倍一強」を舞台裏で支えてきた、たたき上げの「裏方同盟」が総裁選で菅本命の流れを一気につくり出したのである。これを「二階派主導」とだけ見るのは皮相だ。』

『官邸と党執行部の要のポストを押さえた「実権派」グループだから、次の党内権力の奪取でも決定的な先手を取れたのだ。新型コロナウイルス対策に苦慮した安倍が、側近の官邸官僚たちの進言で一斉休校、アベノマスクの配布、自宅でくつろぐ動画配信などで迷走。内閣支持率を低下させ、健康不安を再燃させていった陰で「裏方同盟」による権力の静かな簒奪(さんだつ)が進んでいたともいえる。』

『安倍や副総理・財務相の麻生太郎がポスト安倍に擬したのは、同じ世襲議員で気が合う政調会長の岸田文雄だった。2019年に新元号を発表して「令和おじさん」で知名度を上げた菅は岸田後継に反対。安倍側近スタッフたちはポスト安倍への菅の野心を疑い、すきま風が吹いた。官邸がコロナ対策に追われた20年前半、菅の存在感は薄れた。』

『安倍晋三首相と麻生太郎副総理は石破茂氏を担ぎ出すシナリオを警戒した

そこへ派内に総裁候補を持たずに幹事長続投を狙う二階がすかさず菅に接近した。返す刀で、安倍と麻生が次期首相には絶対に容認できない宿敵の石破を持ち上げて見せるなど「岸田後継」をけん制。「菅・二階連合」が石破を担ぎ出すまさかの悪夢だけは避けねば、と安倍・麻生ラインが警戒し、次善の選択として「菅後継」も思案せざるを得ない環境が醸成された。

それを象徴したのが6月19日。安倍、麻生が党税調会長の甘利明(元経済財政相)も誘い、菅を入れて4人で3年ぶりに会食した場面だった。12年12月に安倍が首相に再登板し、異次元の金融緩和を軸として発動したアベノミクスを内閣で推進してきたカルテットだ。政権の原点を再確認する形で、安倍、麻生と菅の微妙に開いた距離を縮める「復縁」の儀式ともいえた。』

『この頃、霞が関の官僚たちからは「菅氏はやる気を失ってなどいない」との驚きも漏れてきた。菅が今夏の各府省の幹部人事の随所に手を入れ、官僚機構の手綱を締め続ける意欲十分だったからだ。官房長官の実権を手放す気配など一切なかった。』

『6月18日を最後に官邸での記者会見に応じず、「引きこもり」とも言われた安倍と対照的に、菅は政権の司令塔としての重みを回復していく。コロナで不備が露呈したマイナンバーカードの活用拡大。総裁選でも力説した治水・利水ダムの縦割り行政打破による水害対策。「コロナ感染拡大阻止と社会経済活動の両立」を旗印に掲げ、「Go To トラベル」事業の推進に不退転の姿勢も打ち出した。

安倍が健康不安を隠せなくなり、退陣表明するまでのひと月で、菅は6回もテレビやインターネットの報道・討論番組に出演した。辞意会見の6日前の8月22日、自らのブログで安倍を議長とする未来投資会議を4年ぶりに話題に。「ウィズコロナ、ポストコロナの時代の新たな社会像への議論を始めた」と新たな経済社会ビジョンづくりへの意欲すらにじませた。事実上の権力移行が始まっていた。』

『菅が権力の正統性を「安倍継承」に頼り切らず、独自に調達するには早期の衆院解散・総選挙で有権者から信任を受けるしかない。「仕事がしたい」と意気込む菅だが、衆院選抜きに「安倍前総裁の残任期間1年の暫定政権」は脱せない。権力基盤を増強するため第3の勢力も育成しつつある。そのキーワードは負けても権力闘争に挑み続けたこの20年余の政治活動で常に旗印に掲げた「脱派閥と世代交代」だ。

「無派閥で総裁になるのは私が初めてだろう。派閥の組み合わせから総裁候補になったんじゃない。無派閥を貫いていく」

菅は11日、インターネット番組でこう「脱派閥」を訴えた。』

『総裁選で「防衛相の河野太郎さんが出れば、河野さんを応援します」と環境相の小泉進次郎が発言し、河野も「非常にありがたい」と応じるひと幕があった。麻生派の河野も無派閥の小泉も結局は同じ神奈川県選出の菅支持に落ち着いたが、これは麻生にとって笑い事ではなかった。「総裁候補・河野」への世代交代を派内が一致して受け入れる態勢になかったからだ。

といって、麻生が岸田支持なら、河野は出馬に走って派閥は割れたかもしれない。河野に影響力を持つ菅を担ぐことで降ろすしかなかったのだ。世代交代のマグマは安倍のお膝元の細田派でも胎動する。「改革意欲に富む人材を登用する」と宣言する菅は親しい河野や小泉らに仕事をさせ、世代交代の後見役を演じることで派閥領袖たちをけん制するはずだ。天下三分の計は現代に生きている。=敬称略 』

「お前と一緒に沈められねえだろ」

「お前と一緒に沈められねえだろ」退陣表明前夜、“2A”から首相に三くだり半
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/795598/

 ※ 良記事だ…。「西日本新聞」という地方紙の記事だ…。福岡中心に発行されているものらしい…。

 ※ 共同通信のサイト(47NEWSとか言うもの)に、載っているものだ…。

 ※ ここは、時々、目の覚めるような「良記事」を載せるんで、注目している…。

 ※ 東京駐在の記者が、足で取材活動しているんだろうな…。

 ※ 各有力者達とのやり取りを、語っていて生々しい…。

 ※ 今回の人事案を評して、「個利個略だ!」という反発が出たという記事を見かけたが、ちょっと意味が分からんかった…。

 ※ その意味するところが、分かったよ…。

 ※ ただ、3Aの最後の一人の甘利氏の動きが、全く語られていないな…。

 ※ 同氏は、どういう動きをしたんだろうな…。

『2日夜。菅義偉首相は、自民党役員人事の一任を取り付けるため、麻生太郎副総理兼財務相と接触した。

【関連】菅首相、国民に語る「言葉」なく

 同じ神奈川県選出で信頼する麻生派の河野太郎行政改革担当相を要職に起用できないか―。だが、麻生氏は声を荒らげた。「おまえと一緒に、河野の将来まで沈めるわけにいかねえだろ」

 首相は説得を試みたが、麻生氏は最後まで首を縦に振らなかった。

 もう1人、首相の後ろ盾である安倍晋三前首相にも党人事への協力を求めたが“三くだり半”を突き付けられた。首相が「孤立」した瞬間だった。

 一夜明けた3日午前11時半、自民党本部8階。居並ぶ党幹部を前にした首相は静かに目を閉じた。事務方が用意した「党役員人事は6日に行う」という書類には目を落とさず、こう言葉を絞り出した。

 「1年間、コロナ対策に全力を尽くしてきた。総裁選を戦うには相当のエネルギーを要する。総裁選は不出馬とし、コロナ対策を全うしたい」』

『3日午前11時20分ごろ、菅義偉首相は自民党役員会に出席するために訪れた党本部で、二階俊博幹事長に辞意を伝えた。

 前日には総裁選出馬の意向を示していた菅氏の突然の変心。驚いた二階氏は慰留したが、首相は無言だった。

 首相はこれに先立ち、官邸で麻生太郎副総理兼財務相にも面会。「しんどいです」。首相の気力はすでに失われていた。

 新型コロナウイルス対策では「後手」批判を浴び続け、東京五輪の政権浮揚効果も不発。8月にあった地元の横浜市長選でも支援候補が「大敗」した。

 党内には「首相のもとでは選挙は戦えない」という声が日増しに高まる。支持を期待する麻生氏も周囲に「このままだと、選挙は厳しいな」と漏らすようになった。

 追い打ちを掛けたのが、9月の自民党総裁選で対抗馬になる岸田文雄前政調会長の「二階切り」を含む人事改革案。党内の中堅、若手から歓迎する声が上がり、総裁選の流れは岸田氏に傾き始めた。』

『焦りを募らせた首相や側近議員たちは、総裁選の先送りを模索。そこで浮上したのが、総裁選前に衆院解散し、与党勝利をもって党総裁選を乗り切る「9月中旬解散説」だ。

 東京・赤坂の衆院議員宿舎で8月31日、首相は二階氏に既定路線とされた任期満了選挙に加え、9月中旬解散が選択肢にあることを伝達。二階氏は首相の判断に委ねると返答した。

 だが、31日夜にこの話は漏れ伝わり、党内から「道連れ解散だ」「無理心中するつもりか」との批判が一気に広がった。麻生氏から9月解散説を知らされた安倍晋三前首相は、首相に電話で「総裁選はしっかりやるべきだ」と忠告。首相が重用している小泉進次郎環境相も「総裁選を先送りしたら首相も党も終わりです」と進言した。

 翌1日朝、首相は官邸で「解散できる状況ではない」と表明。首相は「解散カード」を封じられた上、党内の信頼も同時に失った。

 首相が、岸田氏の「二階切り」への対抗策として打ち出した人事刷新案もこの解散騒動で行き詰まる。

 首相は安倍、麻生両氏と折り合いが悪い二階氏を幹事長から外すことで歓心を買い、さらに知名度の高い河野太郎行政改革担当相や小泉氏らを要職に起用することで刷新感を演出するはずだった。

 だが、総裁任期まで1カ月を切る中での異例の人事案は「保身のためという狙いが透けて見える」(中堅議員)など、遠心力を招くばかり。麻生氏は河野氏に人事要請を受けないよう求め、安倍氏の出身派閥の細田派も距離を置き始めていた。

 総裁選で菅氏が敗れることを想定すれば、菅氏の人事案に乗ることはリスクが高い。「誰も引き受け手はいない」(首相周辺)。無派閥で党内基盤のもろい首相に残された手は、もう残っていなかった。』

『二階氏は首相と面会した2日夜、派閥議員たちに「菅さんはやる気満々だ」との印象を伝えた。菅政権を支えてきた森山裕国対委員長も、菅氏が辞意表明する3日朝まで総裁選戦略や人事案などについて思案していた。

 首相は3日、官邸で辞意の理由について「コロナ対策と総裁選は両立できない」と語った。だが、人事が見込みも立たず、孤立無援の末に1人で辞任を決めざる得なかったのが実情だ。

 首相側近はテレビで首相の辞意を知り、こう嘆いた。「人事権も解散権も封じ込まれた総理総裁なんて見たことがない。最後は裸の王様だったよ」

 (古川幸太郎、久知邦)』

首相退陣、勝負を分けた3つの瞬間

首相退陣、勝負を分けた3つの瞬間
Angle 吉野直也
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA251H60V20C21A8000000/

『菅義偉首相が自民党総裁選への出馬を見送り、退陣する。2020年9月16日に政権が発足してから1年足らず。この1年を振り返ると勝負を分けた瞬間が3つあった。

1つは衆院解散の判断だ。日本経済新聞社の世論調査で、発足直後の内閣支持率は74%と発足時で過去3位という好スタートを切った。同年11月までは60%近い高支持率を保った。その頃までに解散していれば、過去の支持率と獲得議席を照らし合わせても、自民党が単独過半数を維持できる可能性が高かった。

08年に麻生太郎首相は就任直後の衆院解散をためらい、結局、09年衆院選で民主党に政権交代を許した。菅首相は自民党選挙対策副委員長としてその過程をつぶさにみていたはずだが、教訓は生かされなかった。

模索した9月中旬の衆院解散は反対され、それを覆す体力は政権に残っていなかった。衆院選で信任された政権と、そうでない政権は自民党の国会議員や国民の受け止め方も違ったものになる。信任を得ていれば、人事で自らの意向を反映しやすくなるためだ。

現在と比べると新型コロナウイルスの新規感染者数が少なかった20年秋ごろに解散してまず4年の時間を確保していれば、衆院選への不安心理が底流にある今回の政局の様相は根本的に異なっていた。衆院選と総裁選をセットで考える戦略が解散の判断を鈍らせる結果となった。

2つ目はコロナ対策だ。切り札と位置づけたワクチン接種は出遅れた。自衛隊の大規模会場の設置や職場での接種で巻き返したが、そのさなかに職場接種が滞った。

逆に政府のコロナ対策に不安が広がった。追い打ちをかけるように新規感染者数が拡大。最後と繰り返していた緊急事態宣言は7月12日に東京都への4度目の適用に追い込まれた。
東京五輪・パラリンピック開催が支持一色にならなかったのも誤算だった。五輪後の上昇を描いていた内閣支持率は、開くことそのものの賛否が割れ、上がらなかった。

3つ目は8月22日投開票の横浜市長選だ。盟友の小此木八郎前国家公安委員長が出馬し、首相が全面支援したにもかかわらず、落選した。首相の地元での敗北で求心力は一気に落ちた。次期衆院選の「顔」として戦えないとの認識が支配的となった。地元での選挙に深くかかわったことが裏目に出た。「地元」「選挙」は政治家の力の源泉である。

自民党は29日に新総裁を選出する。コロナ対策を巡って縦割り行政の壁やデジタル化の遅滞が政策の遂行を阻む実態が鮮明になっている。国と地方の関係など日本の統治の問題も浮かび上がる。自民党の「表紙」をかえたところで、これらの問題が解決するわけではない。

米中対立が及ぼす東アジアの緊張など日本を取り巻く外交・安全保障の環境も厳しい。自民党総裁選はこうした現実を直視し、日本の針路を骨太に論じてほしい。

吉野政治部長と高橋哲史経済部長が自民党総裁選、衆院選とその後の経済・外交の行方を展望するライブ配信イベントを27日18時から開きます。お申し込みはこちらです。
https://www.nikkei.com/live/event/EVT210820001

政治部長(政治・外交グループ長) 吉野直也
政治記者として細川護熙首相から菅義偉首相まで14人の首相を取材。財務省、経済産業省、金融庁など経済官庁も担当した。2012年4月から17年3月までワシントンに駐在し、12年と16年の米大統領選を現地で報じた。著書は「核なき世界の終着点 オバマ対日外交の深層」(16年日本経済新聞出版社)「ワシントン緊急報告 アメリカ大乱」(17年日経BP)。

日本経済新聞 政治・外交Twitter
https://twitter.com/nikkeiseijibu 』