日本の実質賃金は今後上昇に転じるのか?: 高水準の大手賃上げも、懸念される労働者間のバラつき拡大

日本の実質賃金は今後上昇に転じるのか?: 高水準の大手賃上げも、懸念される労働者間のバラつき拡大
https://www.nippon.com/ja/in-depth/d00908/

『 2023年の春闘では、歴史的な物価高騰の中、高い賃上げ率が妥結されている。今後、労働組合のない企業も含めて改定内容が賃金に反映された際、実質賃金は上昇に転じるだろうか、今後の行方を考察する際のポイントを探る。

本記事では、はじめに今年の春闘の執筆時点までの状況や今後の考察の留意点を整理する。その後、統計データが利用可能な春闘直前までの賃金動向の分析を示しながら、賃金の実質的価値の今後の行方を考察する際のポイントを探る。

今年の春闘では、大企業の高い賃上げ率が中小企業にも波及

春闘の起源は、1955 年に実施された8単産共闘まで遡り、毎年春に多くの産業別労働組合が集結することで労働側の経営側に対する交渉上の地歩(バーゲニング・ポジション)の強化を目指す。パターンセッターとなる労働組合が賃上げ分を獲得した後、他産業組合や中小企業などに賃上げ分を波及させていくといった構図である(※1)。

日本労働組合総連合会(以下「連合」)が公表した『2023 春季生活闘争 第5回 回答集計結果(5月10日公表)』をみると、平均賃金方式で交渉した1000人以上の大企業組合では、定昇相当込み賃上げ率が3.73%、賃上げ分(ベア)が2.17%。いずれも近年において高い値である。

平均賃金方式で交渉した99人以下の小規模企業組合では、定昇相当込み賃上げ率が3.03%、賃上げ分(ベア)が1.83%。この時点で妥結した小規模企業組合数は1417(組合員数6万2080人)であり、前年の同調査最終版(22年7月5日公表)と比較すれば、5月公表時点でおおむね6割程度の組合が妥結した結果である。

なお、「賃上げ分(ベア)」はベースアップを指し、既存の賃金表の改定により賃金水準を引き上げた分である。「定昇」は定期昇給を指し、労働協約・就業規則等で定められた制度に従って、既存の賃金表に沿って前任者(先輩)に追いつくための昇給分である。

春闘を先行して相場形成した1000人以上の大企業組合と比較すれば、後発の99人以下の小規模企業組合の数値はやや抑制されるが、賃上げの流れが波及していることが示唆される1つのシグナルであろう。

また、フルタイム組合員の一時金(年間)の状況をみると、金額交渉している組合では159万7406円と昨年比+3万3352円だが、相対的に多い月数交渉している組合では4.88月と昨年比▲0.01月となっている。これまでの賃上げ方法は人件費として固定化しにくい一時金(賞与)の活用が多かったが、本年はベースアップにシフトしている可能性が示唆され、中長期にみた賃金増加の持続性といった面からは重要な変化であろう。

労働組合がない企業にどう波及していくのか

厚生労働省『賃金引上げ等の実態に関する調査』によれば、2022年で労働組合が組織されている企業割合は21.2%で、労働組合がない企業も多い。業種別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」は58.0%、「鉱業,採石業,砂利採取業」は57.3%である一方で、「医療,福祉」は3.6%、「生活関連サービス業,娯楽業」は5.8%、「宿泊業,飲食サービス業」は6.6%と業種間の差異が大きい。

さらに、この調査は、常用労働者100人以上を雇用する民間企業を調査対象ベースとしており、同省『労働組合基礎調査』によれば、22年で企業規模99人以下の推定組織率は0.8%であることから、小規模企業を含めると労働組合がある企業の割合は、より低くなる可能性がある。

このため、労働組合による交渉結果を集計した連合の調査結果が、労働組合のない企業にどのように波及していくかも重要なポイントである。近年、計量分析の結果、労働組合への所属が、統計的有意に賃金を引き上げる効果が確認されている(※2)。これを踏まえると、労働組合がない企業における賃上げ率は抑制的となる可能性もある。

さらに、『賃金引上げ等の実態に関する調査』によれば、労働組合がある企業でも、「賃上げ要求交渉がなかった企業」の割合が22年で26.0%ある。労働組合がない企業では、賃上げ交渉の機会がより生じにくい可能性も予想されるが、歴史的な物価高騰を踏まえれば、賃上げの可否を労使で真摯に話し合う機会を設けることが例年にも増して重要である。
実質賃金の変動率は中期的にプラスに転じる可能性も

『賃金引上げ等の実態に関する調査』によれば、春闘における賃金改定内容の適用時期を4月分とする企業が最も多く、後発して賃金交渉を行う企業もあり、7月分までの各月を適用時期とする企業も一定程度いる。本記事の執筆時点では、厚生労働省『毎月勤労統計調査』の2月分(確報)までのデータが使用可能であるため、今年の春闘が反映された賃金動向の分析は今後の課題となるが、ここからは、賃金の実質的価値の今後の行方を考察する際のポイントを探る観点から分析する。

最初に、「実質賃金(総額)」は2023年2月時点で19年同月比▲2.4%(※3)である。寄与度分解すると、一般労働者の現金給与総額(名目)が+2.3%、パート労働者の現金給与総額(名目)が+0.5%である。他方、消費者物価は▲5.0%と大きなマイナス寄与である。また、相対的に平均賃金よりも低いパート労働者の構成比の上昇による寄与度が▲0.2%である。

一般労働者の現金給与総額(名目)に着目すると、20年から21年にかけて所定外給与やボーナスを含む特別給与のマイナス寄与がみられたが、所定内給与は大きく変動しなかった。その後、22年に入ると主に所定内給与のプラス寄与が現金給与総額(名目)の増加をけん引している(図1)。

一般労働者の現金給与総額(名目)の寄与度分解 (2019年同月比)

春闘では、定昇相当分+賃上げ分(ベア)で賃上げ率を考える。労働者個人の賃金変動の軌跡といった観点では、これが賃金の増加分となるが、マクロ統計として過去と比較する際には、賃上げ分(ベア)が所定内給与の変動に関連している面が強い(※4)。これを踏まえつつ、連合の最新調査によれば、賃上げ分(ベア)は組合規模計で2.14%であるため、今後、労働組合がない中小企業にも波及し、毎月勤労統計調査の所定内給与が2.14%ポイント増加する場合には、実質賃金の変動率はおおむねゼロ近傍まで押し上げられる可能性もある。

さらに、日本経済研究センターのESPフォーキャスト調査(民間エコノミスト約40名の予測を集計した調査)によれば、消費者物価(生鮮食品を除く総合)の高騰は、22年第4四半期以降、徐々に落ち着いていくと予想されており、仮に消費者物価のマイナス寄与が鈍化していけば、上記とあいまって、中期的に実質賃金の変動率はプラスに転じる可能性も期待される。

時間当たり賃金(名目)のバラつきが拡大している可能性

今後、平均値でみた実質賃金の変動率がおおむねゼロ近傍になる可能性等に触れたが、労働者間の名目賃金には「バラつき」という観点があることにも留意が必要である。つまり、平均値でみた実質賃金の変動率がおおむねゼロ近傍であっても、労働者間の名目賃金のバラつきが大きい場合、基本的に誰しもが平等に消費者物価の高騰に影響されるため、実質賃金が増加する人と実質的価値が保てない人との間の差が大きくなる可能性がある。

そこで『毎月勤労統計調査』の公表データを活用し、簡易的方法で就業形態間、産業間、事業所規模間でみた時間当たり賃金(名目)のバラつきを示す指標を作成した(具体的方法は図2の注4を参照)。個票データを活用した分散値とは厳密に合致しないため、一定の幅をもってみる必要があるが、2020年から22年にかけてバラつきが縮小傾向にあった後、22年以降にはバラつきが拡大している。さらに、バラつきの拡大要因は一般労働者間であるとみられる(図2)。(※5)

就業形態間、産業間、事業所規模間でみた時間当た り賃金(名目)のバラつきを示す指標の動向

歴史的動向から考えてみると、リーマンショックや東日本大震災直後には、指標が同様の動きをしている局面がある(※6)。これを踏まえると、ショック直後の景気後退局面では、多くの企業が所定外給与や賞与を中心に賃金を減少させるため、時間当たり賃金(名目)のバラつきが縮小する一方で、その後の景気回復局面では、賃金を増加させることのできる企業力の差異が生じるため(※7)、時間当たり賃金(名目)のバラつきが拡大する、といった背景がありそうだ。

具体的に一般労働者の時間当たり賃金(名目)のバラつきが拡大している業種を確認するため、事業所規模500人以上から事業所規模5~29人以下を差分した値をみると、23年2月と22年1月を比較して、「宿泊業,飲食サービス業」が+223円、「学術研究,専門・技術サービス業」が+193円、「不動産業,物品賃貸業」が+164円、「卸売業,小売業」が+161円となっている(図3)。

事業所規模間でみた一般労働者の時間当たり賃金 の差(500人以上から5~29人以下を差分した値)

例えば「宿泊業,飲食サービス業」では、23年2月時点で時間当たり賃金(名目)の事業所規模間の差が+567円であり、仮に1日9時間の週5日勤務だとすると、1年(約52週)で賃金総額に約132.7万円の事業所規模間差が生じており、22年1月から23年2月に掛けての増加分である+223円は、約52.2万円の新たな差を生じさせる。

まとめると、実質賃金の今後の行方を考察するポイントは以下の通りである。

歴史的動向から、景気回復局面では、賃金を増加させることのできる企業力の差異が生じるため、時間当たり賃金(名目)のバラつきは拡大する可能性が示唆され、また、2022年以降のバラつきが拡大傾向にある。

今後、春闘の賃金改定内容が反映され、仮に実質賃金の平均値の変動率がおおむねゼロ近傍まで押し上げられたとしても、企業間での賃金改定内容のバラつきが拡大し、労働者間の差が大きい状況となる可能性もあり、分析の観点として、平均値だけでなくバラつきの動向も注視していくことが重要な局面である。

2022年以降の時間当たり賃金(名目)のバラつきの拡大(事業所規模間の差の拡大)は、中小企業での賃金交渉に当たって、従業員の賃金の実質価値を担保するといった観点から、先行する大企業の賃上げ率をそのまま適用するのではなく、賃金交渉前の段階で大企業との時間当たり賃金(名目)の差が拡大してきたことも加味して話し合う必要性を示唆している。

歴史的な物価高騰の中で、例年にも増して労使間の真摯な対話が進んでいくことが期待され、引き続き中小企業の賃金交渉の状況を注視していくことが重要である。

(本記事は、執筆者個人の見解を整理したものであり、所属する組織の公式見解を示すものではない)

バナー写真:労使交渉の回答状況が書き込まれた金属労協のホワイトボード=2023年5月15日、東京都中央区(時事)

(※1) ^ 春闘の歴史や近年の課題、労働組合の効果などは、戸田卓宏(2022)「コロナ禍・中長期における賃金の動向と賃金の上方硬直性に係る論点整理」、 JILPT Discussion Paper 22-10を参照。

(※2) ^ 同上

(※3) ^ 前年同月比や前々年同月比の場合、コロナ禍で落ち込んだ期間との比較となり、反動増が含まれる可能性があるため、より適切な評価がしやすいように2019年同月を基準として比較した。

(※4) ^ 中井雅之(2023)「毎勤の賃金上昇を決めているのはベア。定昇ではない ~春季賃上げ率と賃金統計との関係~」も参考になる。

(※5) ^ 「2010年以降継続して比較可能な業種×パート労働者計」も同様に算出し、2022年1月が98.2、2023年2月が91.7であったため、バラつきの拡大要因はパート労働者間ではないとみられる。

(※6) ^ バラツキが拡大する度合い(折れ線の傾き)は、リーマンショック後よりアフターコロナの景気回復局面が緩やかである。コロナ禍にて前例のない規模の雇用調整助成金等により雇用維持を支援したことが、アフターコロナの景気回復局面における当該度合いの増加テンポを抑制している可能性がある。つまり、これら政策は、労働者の雇用の安定に資するとともに、アフターコロナにおける事業活動・企業収益の円滑な回復のため、社内に必要な人材を雇用保蔵したい企業ニーズを支援した面もあり、助成金を活用した企業が賃上げに対応できる土壌形成に役立っている可能性がある。ただし、マクロでみたバラツキ自体は足下で拡大傾向にあることから、上記効果はバラツキ自体を維持・縮小させるまでの効果ではない可能性も示唆される。

(※7) ^ 事業活動のレジリエンス(回復力)の差異による企業収益のバラつきが要因の一つと考えられるが、その背景には、必要な人員数・人材の確保の困難性や、中小企業にとって価格転嫁しにくい下請け構造等が考えられる。さらに、労働者側(労働組合側)においても、企業収益が芳しくなければ、賃上げ交渉よりも雇用維持の確保を優先させることも要因の一つであろう。

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賃金 賃上げ 春闘
戸田 卓宏TODA Takahiro経歴・執筆一覧を見る

厚生労働省から経済協力開発機構(OECD)に出向中。2009年度入省。雇用政策の企画立案や労働経済白書の執筆などを担当した後、2022年9月より現職。主な著書に『コロナ禍・中長期における賃金の動向と賃金の上方硬直性に係る論点整理』(JILPTディスカッションペーパー、2022年)、『検証・コロナ期日本の働き方:意識・行動変化と雇用政策の課題(第1章担当)』(慶應義塾大学出版会、2023年)など。』

株高で含み20兆円、日銀のETF それでも売らないワケ

株高で含み20兆円、日銀のETF それでも売らないワケ
編集委員 清水功哉
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD07AWS0X00C23A6000000/

『日経平均株価がバブル後高値を更新するなど株高が続く中、日銀が持つ上場投資信託(ETF)の含み益も増え、5月末に民間試算でついに20兆円程度に達した。1年前から6兆円以上の増加で月末値としては過去最高だ。この含み益を国民に還元すべきだとする意見もあり、7日の国会でも議論があった。ただ、早期放出は簡単でなさそうだ。

日銀が事実上の「株式」であるETFの買い入れを始めたのは2010年。13年導入の異次…

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『日銀が事実上の「株式」であるETFの買い入れを始めたのは2010年。13年導入の異次元金融緩和のもとで購入額は一気に膨らみ、17〜20年には年4兆〜7兆円程度も買った。 

既に「テーパリング」は開始

主要中央銀行で「株式」を買う金融政策を手掛けているのは日銀だけ。株価形成やガバナンス(企業統治)のゆがみといった副作用は軽視できず、日銀も既に購入額は減らし始めた。いわば「テーパリング」だ。

具体的には、21年春の政策修正で、買うのは大幅な株安局面に限る姿勢に転じた。購入額はかなり減り、23年1〜5月は約1400億円だ。それでも株価が大きく上昇しているのは、株式市場で日銀の存在感が低下したということだろう。望ましい話だ。

こうして購入面の出口政策が進むなら、次の課題として保有面の出口政策、つまり売却が意識されやすくなる。背景には日銀保有のETFにかなりの含み益がある事実もある。

日銀によると23年3月末のETF保有額は簿価約37兆円、時価約53兆円で、含み益は約16兆円だった。ニッセイ基礎研究所の井出真吾氏の試算によると、その後の株高で5月末の含み益は一段と膨らみ19兆9359億円とほぼ20兆円に達したという。6月に入りさらに増えている可能性がある。

早期の放出には慎重

この含み益を国民に還元したらどうかという議論がかねてある。売却制限を付けた上でETFを割引価格で個人投資家に譲渡するなどの案だ。だが、日銀は「処分の具体的な方法に言及するのはまだ早い」(植田和男総裁)とする一方、「処分価格は時価をベースとする」(同)という姿勢だ。つまり早期の放出はなさそうで、仮に将来売るとしても割引価格ではないという方向性だ。

ETFは時価であれ割引価格であれ売却すれば株価へのマイナスの影響が懸念される。だが、日銀が早期放出に慎重になる理由はそれ以外にもあるようだ。異次元緩和のもうひとつの出口政策である短期政策金利の引き上げが関係している。

将来、マイナス金利政策を解除し利上げを進める際に、日銀は金融機関が持つ日銀当座預金の大部分にかかる金利(付利)を上げる手法を当面とると見られている。なぜか。

巨額なマネーが供給されている状況を考慮すれば、日銀がちょっとやそっとの資金吸収をしても短期市場金利を高めに誘導するのは難しい。だからといって、保有する長期国債を思い切って売るようなことをすれば短期金利どころか長期金利までが跳ね上がり、経済が混乱しかねない。そこで大量の国債を持ち続けたまま短期金利を上げるための方策が、付利引き上げなのだろう。

問題は異次元緩和で日銀当座預金が膨張している点だ。

付利対象部分の当座預金は今春時点で500兆円を超えていたもようで、大ざっぱな計算だが0.25%の利上げごとに年間1兆円超の金融機関への追加的支出になる。一方、日銀の当期剰余金(最終利益に相当)は、現行日銀法施行(1998年)以降で「最高益」だった2022年度でも2兆円程度。0.5%の利上げで消える計算だ。金利が上がっていくなら資産側の保有国債の利息収入が増加する点も考慮は必要だが、あくまで新たに買った分から徐々に増えるのが基本だ。

仮にETFを手放し分配金(22年度で1兆1000億円程度)を得られなくなれば、以上のような利上げ時の日銀財務への悪影響が強まりかねない。日銀の「自己資本」は22年度末で12兆円程度だから、利上げが進んでいくなら何年かで債務超過になる恐れすら指摘される。これがETFの売却に慎重な一因ではないか。

もちろん時価での売却ならその時点では利益を手にできる。割引価格で売るよりは財務への打撃が小さい。だから「処分価格は時価がベース」なのだろう。ただし、すべて売ってしまえば利益は得られなくなる。日銀はそれより保有を続けて分配金を継続的に得た方が望ましいと判断しているかもしれない。とすれば時価であっても早期の売却はしない方がいい。そこで「処分の具体的な方法に言及するのはまだ早い」としているように見える。
中銀が短期的に赤字や債務超過に陥っても政策がしっかり運営されていれば問題はないとの議論にはそれなりに説得力があるものの、市場が冷静に受け止めるかはわからない。円売り材料になるリスクもゼロではない。

利上げが視野に入りつつある証拠?

7日の国会で植田総裁も「ETFの配当金が無い場合は、その分、収益は下がるので、全体の姿はやや厳しめになる」と語った。「日銀の財務の悪化が着目されて金融政策の議論をめぐる無用の混乱が生じ、信認の低下につながるリスクを避けるために、財務の健全性にも留意しつつ適切な政策運営に努めたい」とも述べた。9日の国会では、金融政策の出口になったときETFを持ち続けることも「ひとつの選択肢」と答えた。

将来の金利引き上げ局面でETFの分配金が重要性を増すと考えている印象はやはりある。そう判断しているのは、利上げが徐々に視野に入りつつある証拠なのかもしれないのだが。

[日経ヴェリタス2023年6月11日号]

【関連記事】

・植田日銀総裁、ETFの処分議論「まだ早い」
・利上げとETF放出の両立難しく 日銀、緩和出口の難路
・植田日銀、揺れる緩和維持シナリオ 強まる物価高に苦悩 』

金融庁、千葉銀と傘下証券処分へ 仕組み債で監視委勧告

金融庁、千葉銀と傘下証券処分へ 仕組み債で監視委勧告
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB073UY0X00C23A2000000/

 ※ この手の話しが、増えてきたし、これからも増えるだろう…。

 ※ なにしろ、『リスク性商品の購入経験がない銀行の顧客に十分な説明をせず高リスクの仕組み債を販売していた。』、ということだからな…。

 ※ 世の中の人は、「金利」の多寡にのみ目が行って、肝心の「リスク」という概念を全く知らないからな…。

 ※ リーマン・ショックの時、日経平均は8000円台となった…。

 ※ 多くの人がうろたえて、右往左往していた時に、「なーに。上がることも、あるだろう…。」と、泰然自若としていた人を、知っている…。

 ※ そういう「胆力」ある人のみが、生き残っていける…。

『【この記事のポイント】

・千葉銀行と傘下のちばぎん証券が行政処分される見通し
・不十分な説明で高リスクの仕組み債を販売していた
・適合性の原則違反で行政処分されれば2004年3月以来、2例目

証券取引等監視委員会は複雑でリスクの高い「仕組み債」の販売をめぐり、千葉銀行と傘下のちばぎん証券を行政処分するよう金融庁に勧告する方針を固めた。リスク性商品の購入経験がない銀行の顧客に十分な説明をせず高リスクの仕組…

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『リスク性商品の購入経験がない銀行の顧客に十分な説明をせず高リスクの仕組み債を販売していた。監視委の勧告を受け、金融庁は業務改善命令などの処分を検討する。

金融庁によると、銀行や証券会社の2021年度の仕組み債の販売額は約4.1兆円で、うち約6400億円が地方銀行による販売分だ。金融庁や証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)に寄せられるトラブル事例は後を絶たず、投資初心者などへの販売が問題視されている。

仕組み債はデリバティブ(金融派生商品)を使った複雑な仕組みの債券で、もともとプロ向けに開発された。高い利回りをうたう一方、個別株や為替相場などの指標があらかじめ決めた水準(ノックイン価格)を下回ると償還時に元本割れが発生したり、利益を出すことなく早期償還されたりする場合がある。

米利上げに伴う相場の急変でノックイン条項に抵触し、損失を抱える個人が増えたとみられることが仕組み債問題の背景にある。

千葉銀は自行の顧客をちばぎん証券に紹介し、ちばぎん証券がその顧客に仕組み債を販売していた。監視委はこの「銀証連携」について検査を実施。その結果、定期預金取引が中心で元本割れリスクのある投資商品の購入経験がない顧客に複雑な仕組みやリスクを十分に説明せずに仕組み債を販売していたことを問題視しているようだ。

金融商品取引法は顧客の知識や経験、財産の状況、契約の目的に沿って販売する「適合性の原則」を定めている。投資経験に乏しい顧客に十分な説明を尽くさずに仕組み債を販売したことが、この適合性の原則に違反するとして金融庁への処分勧告に踏み切るとみられる。

金融庁が金商法の適合性の原則違反で行政処分を出せば2004年3月に泉証券に対して業務停止命令と業務改善命令を出して以来、2例目となる。仕組み債に関する行政処分は日本に本社を置く銀行・証券会社に対しては初めて。

【関連記事】

・仕組み債販売、地銀で撤退進む 11月販売は3割のみ
・仕組み債とは デリバティブで高利回り設定、元本毀損も
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野崎浩成
東洋大学 国際学部教授
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ひとこと解説 政府が掲げる資産所得倍増プランに向けての一環と捉えることができます。昨年来、行政が重視しているのが「プロダクト・ガバナンス」で、顧客に提供される金融商品の中身について販売者(売り手)と運用者(作り手)が細心の注意を払い、顧客の利益に資するものかを自己監視することを指します。毎月分配型投信や今回の仕組み債などが、従来から問題点を指摘され続けてきました。個人が自らの労働による勤労所得ばかりでなく、お金にも働いてもらうためには、個人が十二分に商品性を理解をしたうえで投資できる環境を整えることが必要条件となります。金融機関が自らの利益でなく、顧客利益を優先できるかは、常に問いかけられるべきです。
2023年6月9日 7:18 (2023年6月9日 7:19更新) 』

入管法案、参院法務委員会で可決 9日にも成立、立民など抵抗

入管法案、参院法務委員会で可決 9日にも成立、立民など抵抗
https://nordot.app/1039356598855827580?c=302675738515047521

『外国人の収容・送還のルールを見直す入管難民法改正案が8日、参院法務委員会で、与党などの賛成多数で可決された。与党は9日の参院本会議で改正案を成立させたい考え。

難民の保護を目的とした対案を提出している立憲民主党や共産党は、審議が不十分だなどとして採決に反対したが、杉久武委員長(公明党)が職権で8日の採決を決めた。

 改正案は、不法滞在などで強制退去を命じられても送還を拒む外国人の退去を進め、入管施設への長期収容を解消するのが狙い。

入管当局は、送還を逃れる意図で難民申請を繰り返すケースが多いとみており、3回目の申請以降は「難民認定すべき相当の理由」を示さなければ送還するとした。本国で迫害を受ける恐れがある人を帰してしまうとの懸念が根強い。

 このほか、認定基準に満たなくても、紛争地域の住民らを難民に準じる「補完的保護対象者」として在留を許可。収容長期化を防ぐため「監理措置」を新設し、支援者ら監理人の下で社会での生活を認める。収容中も3カ月ごとに必要性を見直す。

© 一般社団法人共同通信社』

防衛装備の生産・輸出費助成、新法成立 企業の撤退防ぐ

防衛装備の生産・輸出費助成、新法成立 企業の撤退防ぐ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA06ABB0W3A600C2000000/

『防衛装備の生産や輸出を後押しするための法案が7日の参院本会議で与党などの賛成多数で可決、成立した。製造の効率化や供給網の拡充に必要な経費を補助し、輸出用に仕様を変える費用を助成する基金も設ける。利益率の改善を促して事業撤退を抑制し、防衛産業の維持・育成につなげる。

10月1日に施行する。施行後5年をめどに運用状況を点検し、法改正など必要な措置を検討する。

政府は自衛隊の任務に不可欠な装備をつくる企業のサイバー防御対策の拡充や事業承継の費用を支える。日本政策金融公庫は装備の生産や輸出の促進を目的とする資金の貸し付けに配慮すると法律に記した。

国が一連の支援策を講じても経営難からの脱却が難しい場合に限り、国が製造施設を保有し別の企業に運営を委託する。

経済安全保障の視点も反映した。防衛省は他国に意図せず機微な情報が流出するリスクなど供給網の安全性を調べる。企業は調査に回答する努力義務を負う。

情報管理も強める。自衛隊が使う装備に関する秘密を漏洩・盗用した場合、2年以下の拘禁や100万円以下の罰金といった刑事罰の対象となる可能性がある。いまは契約上の守秘義務にとどまり、違反しても受ける代償が比較的軽いとの指摘がある。

政治・外交 最新情報はこちら』

新空港線(蒲蒲線 ※ かまかません)

新空港線(蒲蒲線 ※ かまかません)
https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/sumaimachinami/koutsu/kamakamasen/shinkukosen-main.html

『更新日:2023年4月19日

新空港線とは

新空港線の整備概要位置図

 新空港線は、東急多摩川線矢口渡駅の近くから多摩川線を地下化し、JR・東急蒲田駅の地下、京急蒲田駅の地下を通って、大鳥居駅の手前で京急空港線に乗り入れる計画です。
 JR・東急蒲田駅から京急蒲田駅までの約 800m を鉄道で結ぶことで、区内の東西の移動が便利になります。さらに沿線まちづくりも一緒に進めることで地域活性化に繋げます。
 また、東急東横線や東京メトロ副都心線などへ相互直通させることで、羽田空港が渋谷・新宿・池袋の都市や和光・所沢・川越等の埼玉県方面と繋がり、広域的な鉄道ネットワークが生まれ、東京の国際競争力の強化が期待できます。
 現在は、国の交通政策審議会答申198号に基づき、矢口渡から京急蒲田までの区間について、事業化に向けた準備をしており、令和4年10月に設立した羽田エアポートライン株式会社(線路や駅を作る会社)と連携して取り組んでいます。

 新空港線の事業計画概要(案)、交通政策審議会の答申については、下記ページをご覧ください。

新空港線(蒲蒲線)の事業計画(案)概要 (事業計画案、事業費、費用便益比等)

新空港線「蒲蒲線」整備事業のPRパンフレット 「つながり はばたけ 新空港線(蒲蒲線)」

平成28年4月 交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会が公表した答申(案)に対する大田区長及び大田区自治会連合会会長のコメント

 新空港線(蒲蒲線)のPR動画を配信しています!

外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。新空港線ショート動画~800mの新路線開通で”世界”と大田区が繋がる!大田区の活性化、待った無し!~

外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。新空港線及び蒲田駅周辺の将来イメージ動画

外部サイトへリンク 新規ウインドウで開きます。【新空港線ホントのところ!】メリット編
新空港線の整備効果
移動・アクセスが便利になります

 蒲田駅と京急蒲田駅が鉄道で結ばれると、区内の東西方向の移動が便利になるとともに、天気にも左右されず、高齢の方、障がいのある方、ベビーカーなどを利用される方も、安全で快適に移動できるようになります。
 また、東急東横線や東京メトロ副都心線などとの相互直通運転が可能になり、区内から羽田空港や、渋谷・新宿・池袋、埼玉県方面へのアクセスが便利になります。
まちがにぎわい、地域の活性化につながります

 新空港線によって新たな人の流れが生まれると、沿線のまちづくりを行うきっかけとなり、まちがにぎわい、地域の活性化につながるとともに、区内に大きな経済波及効果を生み出します。
 大田区は、令和4年12月に「鉄道と魅力的なまちづくり宣言」を行い、まちづくりを行っていく意思表示をするとともに、将来像を共有しその目標に向かって、区民や事業者と連携して取り組んでいくための「大田区鉄道沿線まちづくり構想」の策定に取り組んでいます。

鉄道と魅力的なまちづくり宣言の詳細はこちら

大田区鉄道沿線まちづくり構想の詳細はこちら
ゼロカーボンシティに貢献

自動車から鉄道への転換が促され、CO2が削減されることで、大田区が目指すゼロカーボンシティの実現にも貢献します。
災害時の代替ルートの確保

災害があった時などの帰宅困難者に対する、代替ルートとしての選択肢が広がります。
事業の整備手法ついて

 新空港線整備のうち、矢口渡から京急蒲田までの区間については、都市鉄道利便増進事業という国の制度を活用する予定です。
 この制度では、「電車を走らせる会社」と「線路や駅をつくる会社」とに分けて事業を進めます。(下図のとおり)
 事業にかかる費用は、国が3分の1を、地方自治体(東京都と大田区)が3分の1を補助金(注釈1)として「線路や駅をつくる会社」に交付しますが、区からの補助金には、東京都からの財源などを使えるように調整しています。
 なお、「線路や駅を作る会社」が負担する費用は、銀行などから借りる予定ですが、開業後に「電車を走らせる会社」から支払われる線路や駅の使用料から返済していく予定です。

(注釈1)地方自治体が負担する補助金の都と区の割合を含む基本的事項については、令和4年6月に東京都と合意しました。協議の経緯や合意内容については、以下をご覧ください。

協議の経緯はこちら

ファイルダウンロード 新規ウインドウで開きます。合意文(PDF:82KB)

都市鉄道利便増進事業のしくみ図
よくある質問について

 新空港線(蒲蒲線)整備促進事業に関するよくあるご質問については、下記ページをご覧ください。

新空港線(蒲蒲線)整備促進事業に関するよくある質問(Q&A)
これまでの主な経過について

大田区新空港線「蒲蒲線」整備促進区民協議会(平成25年8月~令和4年12月)

新空港線整備に向けた第三セクターの設立について(令和4年10月)

第三セクター設立に関する東急電鉄との協定の締結について(令和4年9月)

おおた区報 新空港線臨時特集号(令和4年7月30日号)

新空港線に関する臨時区長記者会見(令和4年6月)

新空港線及び沿線まちづくり等の促進に関する協議の場(令和2年9月~令和4年6月)

鉄道とまちづくりに関する講演会(令和元年12月)
広報活動

新空港線(蒲蒲線)を実現させよう! 新空港線のPR活動について

新空港線(蒲蒲線)絵画コンクール作品展

新空港線(蒲蒲線)標語・絵画コンクールについて

区内初となる新空港線(蒲蒲線)の標語・絵画が描かれたラッピング車両の運行について
要望活動

令和4年7月27日 国土交通大臣に要望活動を実施しました。

東京商工会議所5支部からの区に対する要望について

平成29年9月 東京都知事に要望活動を実施しました。 (3市長+15区長連名)

平成28年2月 国土交通大臣に要望活動を実施しました。 (3市長+14区長連名)

平成27年3月 東京都及び国土交通省に要望活動を実施しました。(9区長連名)
交通政策審議会答申等に対する区長コメント

平成28年4月 交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会東京圏における今後の都市鉄道のあり方に関する小委員会が公表した答申(案)に対する大田区長及び大田区自治会連合会会長のコメント

平成27年7月 東京都の「広域交通ネットワーク計画について」≪交通政策審議会答申に向けた検討のまとめ≫に関する大田区長コメント

平成27年3月 東京都の広域交通ネットワーク計画に関する中間まとめ公表についての大田区長コメント』

新空港線(蒲蒲線)の事業計画(案)概要 (事業計画案、事業費、費用便益比等)
https://www.city.ota.tokyo.jp/seikatsu/sumaimachinami/koutsu/kamakamasen/project-plan_gaiyou.html

『(1)計画の全体像

 新空港線は、東急多摩川線矢口渡駅付近から多摩川線を地下化し、東急蒲田地下駅、京急蒲田地下駅を通り、大鳥居駅の手前で京急空港線に乗り入れる計画です。

新空港線の概要(全体像)
新空港線で広がる鉄道ネットワーク

新空港線で広がる鉄道ネットワーク
(2)段階整備(案)

 上記全体計画に対して、平成28年4月の国の交通政策審議会答申では、「矢口渡から京急蒲田の事業計画の検討は進んでおり、事業化に向けて関係地方公共団体・鉄道事業者等において、費用負担のあり方等について合意形成を進めるべき」「大鳥居までの整備については、軌間が異なる路線間の接続方法等の課題があり、さらなる検討が行われることを期待。」と記載されました。

交通政策審議会答申第198号の内容はこちら

 国の答申に示されたとおり、現在の計画では一期整備として、蒲田駅と京急蒲田駅の未接続の解消を第一に考え、まずは、東急多摩川線を京急蒲田駅までつなぎ、そこで京急空港線に乗り換える形となっています。

段階整備(イメージ)

<一期整備とは>

 上記の国の答申第198号を受け、まずは蒲田駅と京急蒲田駅の未接続の解消を第一に考え東急多摩川線を矢口渡付近から地下化・延伸し、京急蒲田駅までつなぐ区間を「一期整備」としています。

<二期整備とは>
 京急蒲田駅から大鳥居駅の手前で京急空港線に接続するまでの整備を「二期整備」としています。
需要予測及び収支採算性等の精査について

 上記の整備内容について、「新空港線及び沿線まちづくり等の促進に関する協議の場」(以下、「協議の場」とする。)で工事の施工難易度や特殊性を加味し、事業費の適切性について検証を行い、以下のように総事業費の見直しを行いました。

○事業費:約1,360億円 (H28年度調査時の総事業費1,260億円にデフレーターの考慮や工事手法を見直した結果)
 なお、事業費は、現時点で想定される条件のもと算出したものであり、今後、大田区、第三セクター及び関係者により事業費を精査します。

「協議の場」の経緯はこちら

 その「協議の場」での検討結果を基に、以下のとおり需要予測・収支採算性・費用便益比などを算出いたしました。(スキームは都市鉄道等利便増進法、営業主体は東急電鉄と想定)

○費用便益比:2.0 (基準値の1.0を大きく上回り、社会経済的に有意義な事業と評価できる。)

○累積資金収支黒字転換年数:17年 (整備主体が公的第三セクターの場合に国の示している基準は40年以内であり、その基準以内。)

ファイルダウンロード 新規ウインドウで開きます。検討結果はこちら(PDF:236KB)
新空港線整備資金積立基金について

 新空港線の整備に向け、平成24年度から令和3年度までの累計積立額は約80億円となります。令和4年度においても約10億円の予算を計上し、積立てを行う予定です。
新空港線(蒲蒲線)の整備に向け、大きな一歩を踏み出しました!

 新空港線は、昭和57年の大田区基本構想に位置付けて以来、40年来の悲願でしたが、このたび、大田区と東京都は費用負担割合などについて合意し、大きな一歩を踏み出しました。
 今後、早期実現に向けた検討を深めるとともに、地域がさらに活性化するよう、皆様と連携し、魅力ある沿線のまちづくりを進め、これまで以上に大田区に住み続けたいと思っていただける「まち」を創造してまいります。

ファイルダウンロード 新規ウインドウで開きます。主な合意内容等詳細はこちら(PDF:2,392KB)』

健康保険証、24年秋に廃止 改正マイナンバー法が成立

健康保険証、24年秋に廃止 改正マイナンバー法が成立
不同意なしで口座登録も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA318VW0R30C23A5000000/

 ※ こりゃ、いよいよ、「マイナカード」を作らないとならんのか…。

 ※ 来年の秋までか…。

 ※ そう言えば、かかりつけ医の窓口にも、「読み取り機」らしきものが、設置されてたな…。

『行政のデジタル化を進めるための改正マイナンバー法が2日の参院本会議で可決、成立した。2024年秋に予定する現行の健康保険証の廃止に向けた制度をそろえた。誤登録などが相次いでおり制度改善には余地がある。

政府はマイナンバーカードと保険証を一体にする「マイナ保険証」の普及をめざす。今の保険証は来年秋以降、1年の猶予期間を経て使えなくなる。

法改正によりカードを持たない人でも保険診療を受けられるようにする「資格確認書」の発行が健康保険組合などで可能になる。確認書の期限は1年とする方針で、カードの利用者よりも受診時の窓口負担を割高にする検討も進める。カードへの移行を促す狙いだ。

乳幼児の顔つきが成長で変わることを踏まえ1歳未満に交付するカードには顔写真を不要とする内容も入れた。

政府などの給付金を個人に迅速に配るため口座の登録を広げる措置を盛り込んだ。年金の受給口座の情報を日本年金機構から政府に提供することを事前に通知し、不同意の連絡が1カ月程度なければ同意したと扱う。

新型コロナウイルス禍での個人給付では通帳のコピーなどの提出が必要で行き渡るまでに時間がかかった。口座登録の割合が高齢者で低いことを踏まえ年金口座の利用を決めた。

税と社会保障、災害対策の3分野に限ってきたマイナンバーの活用を広げる。引っ越しの際の自動車変更登録や国家資格の手続きなどでも使えるようにする。

改正マイナンバー法は与党と日本維新の会、国民民主党などが賛成した。個人情報の漏洩防止の徹底や全ての被保険者が保険診療を受けられる措置の導入などを盛り込んだ付帯決議を採択した。

政府はマイナカードを「23年3月までにほぼ全国民に行き渡らせる」と号令をかけ、ポイントを付与するなどして国民に取得を呼びかけた。全国民の申請率は8割弱、交付率は7割強に達した。

コンビニエンスストアで住民票などの証明書を他人に発行したりマイナ保険証で別人の情報をひもづけたりするなどのトラブルも多く発覚した。システムの問題や人為的な入力ミスに起因している。』

OpenAIに行政指導 個人情報保護委、取得手法に懸念

OpenAIに行政指導 個人情報保護委、取得手法に懸念
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA023IJ0S3A600C2000000/

『政府の個人情報保護委員会は2日、生成型の人工知能(AI)「Chat(チャット)GPT」を開発した米新興のオープンAIを行政指導したと発表した。重要な個人情報の取得の仕方に懸念があると判断し、1日付で同社に注意喚起した。

犯罪歴や病歴といった重要な個人情報が収集・利用されないような取り組みを求めた。やむを得ず収集した場合は、即時削除することをオープンAIに求めた。

同委員会の担当者は「現時点で個人情報保護法の違反は確認しておらず、利用停止などを求めるものではない」と説明した。

【関連記事】

・「ChatGPT」CEO来日、個人データ保護「政府に協力」
・EUと米国、生成AI規制を協議 経済安保は連携確認
・AIに「人類絶滅リスク」 ChatGPT開発トップら共同声明

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藤井聡太七冠誕生 七冠・羽生善治の壮大な仕掛けが結実

藤井聡太七冠誕生 七冠・羽生善治の壮大な仕掛けが結実
大崎善生氏(作家、元「将棋世界」編集長)寄稿
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD2989U0Z20C23A5000000/

 ※ 『それから羽生はあることに徹底した。タイトル戦や研究会や棋士としてのイベントや行事の合間を縫うように、ひたすら将棋の定跡書を書き連ねたのである。

タイトル戦が混み合うときは、まるで自分がどこにいて何をやっているのかさえも不確かになる。そんな極限状態のスケジュールの中においても、定跡の一手一手を地道に系統立てて書き連ねていくという気の遠くなる作業を、羽生はただの一度も手を抜くことをせずに続けた。体力的にぎりぎりの状況にあっても必ず自力で一字一句を書き連ねていく。』
 ※ 『自分が今ある不確かな定跡体系を系統立てて書き連ねることによって、いつかそれに反応したより強力な棋士が出来上がるのではないか。そしてそのことこそが、将棋の本質に向かうということにつながっていくのではないか。』

 ※ 『日本中の将棋好きの指導者たちが呼応した。

羽生の書く月刊誌の定跡講座を、コピーし貼り付け一字一句を子どもたちに伝えていった。藤井を幼稚園時代から指導した講師もまたそういう一人である。彼の教えは徹底していた。

自分が何かを教えるのではなく羽生の残した言葉の一行一句を子どもたちの体に染み込ませ、血と肉とすること。羽生の定跡書は何冊も何冊も切り刻まれ、コピーされ子どもたちの頭脳に体の一部となり浸透していく。丸ごと記憶する。それが何よりも大切なことだった。

今現在の藤井聡太の戦いを見ていて、どういうわけか羽生がかつて成し遂げたことを見ているような興奮が沸いてこない。何かすべては羽生という天才が仕掛けた想定通りのことのように思えてならないのである。』…。

 ※ スゲー話しだな…。

 ※ まあ、「偉業」なんてものは、そういう「地道なことの積み重ね」の延長線上にしか、起こり得ないものなんだろう…。

『将棋の藤井聡太六冠(20)が1日、最年少で名人のタイトルを奪取し七冠を達成した。七冠は羽生善治九段(52)に次いで史上2人目の快挙で、全八冠独占まで残るタイトルは王座のみ。七冠の意義について、両者を知る元「将棋世界」編集長で作家の大崎善生氏に寄稿してもらった。

私はいつからかこのように考えるようになっていた。

藤井聡太という棋士の存在、その姿はある一人の稀有(けう)な天才が作り出した、一つの実験の…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』

『藤井聡太という棋士の存在、その姿はある一人の稀有(けう)な天才が作り出した、一つの実験の結果であり理想像なのではないかと。その天才の描いた想像の線の上に藤井聡太は、やはりそれが必然であるかのように忽然(こつぜん)と存在した。

これから藤井が挑むであろう八冠全冠制覇という大偉業、しかしそれすらもある意味では、その天才にとっては一つの十分に想定内の出来事に過ぎないのではないか。

時代は27年前に遡る。

1996年、冬。羽生善治というたった一人のやせ細った青年が、絶対にあり得ないと言われていた大偉業を成し遂げた。七冠完全制覇。その達成はまるで海が割れていく奇跡のように、私たちの眼前に事実として提示されたのである。

その瞬間に私たちは奇跡の目撃者となった。目の前で起きてしまえば、それは奇跡というあやふやなものではなく、れっきとした事実であり現実であった。羽生という一人の青年が、それを現実として我々の前に生み落とし、そしてその瞬間から将棋界はすべての面で大きく変わっていったといえるのかもしれない。

これから何を目指すのか。

全冠制覇を達成した羽生に私は聞いた。この本人でも無理と思っていたという偉業を成し遂げてしまっては、これからの棋士人生を何を目標に過ごしていくのか。それは近くで見ていた私にとってはごく当たり前の疑問だった。羽生はまだ25歳の青年だった。

将棋の本質を目指す。それを解き明かす。

それが羽生の答えであった。もちろんそう簡単に割り切った答えが出たわけではないが、大きく何度となく考え直して言葉にしてみれば、要するに羽生の言葉はそれに近いものだったのではないかと思う。

それから羽生はあることに徹底した。タイトル戦や研究会や棋士としてのイベントや行事の合間を縫うように、ひたすら将棋の定跡書を書き連ねたのである。

タイトル戦が混み合うときは、まるで自分がどこにいて何をやっているのかさえも不確かになる。そんな極限状態のスケジュールの中においても、定跡の一手一手を地道に系統立てて書き連ねていくという気の遠くなる作業を、羽生はただの一度も手を抜くことをせずに続けた。体力的にぎりぎりの状況にあっても必ず自力で一字一句を書き連ねていく。それは大きな使命感を持っていなければできない大変な作業だったことと思う。

羽生の考えはおそらくこうだ。

自分が今ある不確かな定跡体系を系統立てて書き連ねることによって、いつかそれに反応したより強力な棋士が出来上がるのではないか。そしてそのことこそが、将棋の本質に向かうということにつながっていくのではないか。

七冠王羽生善治の壮大な仕掛け。

自分ではなく新しい才能や可能性に託す思い。

将棋とは何か。何が正しくどこへ行きつくのか。

それを自分が解き明かすのではなくヒントを残すことによって新しい才能、次の世代に懸ける。そしてほどなくして羽生の実験は現実のものとして動き出すのである。

日本中の将棋好きの指導者たちが呼応した。

羽生の書く月刊誌の定跡講座を、コピーし貼り付け一字一句を子どもたちに伝えていった。藤井を幼稚園時代から指導した講師もまたそういう一人である。彼の教えは徹底していた。

自分が何かを教えるのではなく羽生の残した言葉の一行一句を子どもたちの体に染み込ませ、血と肉とすること。羽生の定跡書は何冊も何冊も切り刻まれ、コピーされ子どもたちの頭脳に体の一部となり浸透していく。丸ごと記憶する。それが何よりも大切なことだった。

今現在の藤井聡太の戦いを見ていて、どういうわけか羽生がかつて成し遂げたことを見ているような興奮が沸いてこない。何かすべては羽生という天才が仕掛けた想定通りのことのように思えてならないのである。

まあ、しかしそれも現時点のことかもしれない。

八冠が現実となって藤井の手によって提示されれば、その瞬間からまた大きな時代が開き新しい奇跡のページが始まるのかもしれないのだ。

何が起こるか分からない。ただ息を潜め目を瞠(みは)っているしかない。

おおさき・よしお 1957年、札幌市生まれ。日本将棋連盟発行の「将棋世界」編集長などを経て、故村山聖九段の生涯を描いた「聖の青春」(新潮学芸賞)でデビュー。著書に「パイロットフィッシュ」(吉川英治文学新人賞)、「将棋の子」など。
【関連記事】

・藤井聡太七冠達成 写真で振り返る
・藤井聡太フィーバー再燃 「見届け」1局250万円、新棋戦も
・将棋・藤井聡太六冠が名人戦制す 最年少で七冠に

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北川和徳
日本経済新聞社 編集委員
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今後の展望 藤井名人には8つのタイトルの全冠制覇をぜひ見せてほしいです。早ければ秋にもと言われていますが、それには王座戦のトーナメントを勝ち抜いて挑戦者になって5番勝負に勝つだけではなく、その間も自分が保持している棋聖と王位も防衛しなければならないのだから、気が遠くなります。でも、これまでもそれを繰り返しての7冠ですね。将棋はよく分かりませんが、何時間も集中力を求められる勝負を1週間に1回くらいのペースで行い、そこで圧倒的な勝率を維持できるということが、とても信じられません。
2023年6月2日 8:35』

マイナンバー法など改正案 参院特別委で可決 6月2日に成立へ | NHK |

マイナンバー法など改正案 参院特別委で可決 6月2日に成立へ | NHK |
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230531/k10014084541000.html

『2023年5月31日 20時10分

マイナンバーカードと健康保険証の一体化や、マイナンバーの利用範囲を拡大するための改正案は、参議院の特別委員会で採決が行われ、賛成多数で可決されました。
6月2日に開かれる参議院本会議で可決・成立する見通しです。

政府が提出したマイナンバー法などの改正案は、
▽健康保険証を廃止してマイナンバーカードと一体化したり、
▽社会保障と税、災害対策の3分野に限定されていたマイナンバーの利用範囲を拡大したりすることなどが盛り込まれています。

委員会では5月31日、改正案の採決が行われ、賛成多数で可決されました。

改正案は、6月2日に開かれる参議院本会議で可決・成立する見通しです。

マイナンバーカードをめぐっては、一体化した健康保険証に他人の情報が登録されたケースが7300件余り確認されたほか、国の給付金などを受け取ることができる公金受取口座が別の人のマイナンバーに登録されるミスが起きるなど、トラブルが相次いでいます。

これについて、採決に先立って行われた連合審査会で、加藤厚生労働大臣は「システム全体の信頼を毀損することにつながり、国民に大変心配をおかけしていることは申し訳なく思っている。これまでのデータの点検などを通じて、システムに対する信頼を勝ち取れるよう努力していきたい」と述べました。

また、河野デジタル大臣は、「人間が介在すれば、間違いが起こることが大前提だ。定期的に問題が起きていないかきちんとデータを確認し、ミスを繰り返さないようデジタル庁の体制をしっかり確立していきたい」と述べました。』

世界遺産「春日大社」:神の使いの鹿と3000基の燈籠が伝える、奈良時代から続く信仰心

世界遺産「春日大社」:神の使いの鹿と3000基の燈籠が伝える、奈良時代から続く信仰心https://www.nippon.com/ja/guide-to-japan/gu900252/

 ※ 今日は、こんな所で…。

『 信仰心
旅 歴史 文化 2023.05.21

古代から信仰の対象だった御蓋山(みかさやま)の麓に鎮座する世界遺産「春日大社」(奈良市)。約100万平方メートルの自然豊かな境内では、神の使いの鹿たちが闊歩する。平安貴族や戦国武将も寄進した燈籠(とうろう)が約3000基あり、万人に敬われてきた歴史を伝えている。

奈良公園の人気者にまつわるいにしえの教え

「古都奈良の文化財」としてユネスコの世界文化遺産に登録される春日大社、東大寺、興福寺。その3つの社寺に囲まれる奈良公園一帯で、東大寺「奈良の大仏さま」と並び、インバウンドのお目当てになっているのが、あちらこちらで群れ遊ぶ鹿たちである。

「奈良のシカ」は国の天然記念物で、飼育動物ではない。人間と野生の鹿が市街地で共生する光景は、世界的に見ても大変珍しい。鹿は春日大社の「神の使い」と考えられたため、人々が大切にしてきたのだ。

2023年1月に発表された学術論文は、「神鹿(しんろく)信仰」が奈良時代から受け継がれてきたことを証明すると話題を呼んだ。約1400年前に奈良にすみ着き、周辺の鹿集団が狩りによって消滅する中で、固有のDNAを守り続けたと推測している。

鹿は奈良公園一帯に約1200頭が生息している

春日大社の歴史は、武神として崇敬される武甕槌命(たけみかづちのみこと)が、御蓋山(通称・春日山)頂上の浮雲峰(うきぐものみね)に降り立ったのが始まりとされる。武甕槌命は鹿島(茨城県)から白鹿に乗って来たと伝わるため、この地の鹿は神鹿とされた。

春日大社を信奉したのが、奈良時代から平安時代に栄華を誇った貴族・藤原氏。朝廷では権勢を振るったが、鹿に出会った時は、わざわざ輿から降りて頭を下げたという。

神山・御蓋山は狩猟や伐採が禁じられたため、野生の鹿にとっても安住の地となった。春日大社の東側に広がる「春日山原始林」は、今でも多様な生態系を保持することから、世界遺産「古都奈良の文化財」の一つとなっている。

武甕槌命が降り立った御蓋山の山頂には本宮神社が祀られるが立ち入り禁止。本殿の東にある御蓋山浮雲峰遙拝所から拝む

平安貴族から戦国武将に至るまで信仰を集める

武甕槌命はしばらく浮雲峰に祀(まつ)られていたが、768(神護景雲2)年、称徳天皇の命を受け、藤原氏が現在の場所に本殿を造営。その際に、香取(千葉県)から経津主命(ふつぬしのみこと)、枚岡(大阪府)より藤原氏の遠祖とされる天児屋根命(あめのこやねのみこと)と妻の比売神(ひめがみ)を迎え、4柱を共に祀った。

藤原氏は春日大社を氏神と仰ぎ、氏寺の興福寺と共に手厚く保護。特に平安時代には、皇族や貴族の春日詣でが盛んになり、849(嘉祥2)年には天皇の使者「勅使」が派遣される盛大な「春日祭」が始まった。現在も毎年3月13日に開催し、京都の賀茂祭(葵祭)、石清水祭と並ぶ三大勅祭に数えられている。

春日祭 撮影:松井良浩

12世紀ごろからは、新たな支配者層となった武家も、武芸向上や勝負運の御利益を求めて崇敬した。その人気は次第に庶民にも広がっていき、現在は全国に約3000もの春日神社がある。

中門と左右約13メートルの御廊(おろう、重要文化財)。中門の前から奥にある本殿を参拝する

正門に当たる南門(重要文化財)。高さ約12メートルで春日大社最大の楼門

主祭神を祀る4棟の本殿を中心とする聖域を「大宮」と呼ぶ。中門と「御廊」に加え、社殿や宝庫、周囲の回廊や4つの門など、建造物のほとんどが重要文化財だ。

春日大社の建造物は、奈良・平安時代の建築技術の粋を集めたもの。特に大宮の本殿は、「春日造」という代表的な神社本殿形式の一つとして現代に受け継がれている。美しい反りを描く大屋根、それと一体化した庇 (ひさし)が特徴だ。20年に一度、修繕や造り替えをする「式年造替」を1200年にわたって執り行ってきた。4柱の4殿が横一列に並ぶ珍しいもので、国宝の指定を受ける。

大宮本殿(国宝)と同じ春日造の社殿を持つ摂社・若宮本殿(重要文化財)

左手前が社頭の大杉。周囲8.7メートル、高さ25メートルにも及ぶ大木

大宮内では、樹齢800~1000年と推測される「社頭の大杉」や、子授けの御利益があるという「七種寄木(なないろのやどりぎ)」など霊木や植物も見どころ。

晩春の花・藤は特に有名だ。南門を抜けて左手にある藤棚は、地面の砂にすれるほど花房を伸ばして咲くことから、「砂ずりの藤」と名が付いた銘木。藤は春日大社の象徴で、社紋にも用いられているが、これは藤原氏の家紋が藤であることと無縁ではない。古くから境内に自生し、「萬葉植物園」では20品種約200本が花を咲かせる。

「砂ずりの藤」は樹齢700年以上。藤原氏の嫡流、近衛家(このえけ)の献木と伝わる 写真:PIXTA

萬葉植物園の「藤の園」。藤棚とは違って、目線の高さで鑑賞できるよう工夫されている。毎年4月下旬から5月上旬に見頃を迎える 写真:PIXTA

あまたの燈籠が長年の信奉を物語る

春日大社境内の最大の特徴といえるのが、約3000基もある燈籠。広報の秋田真吾さんは「室町時代からは貴族や武士だけでなく、庶民からの寄進も増えた。全国に現存する室町以前の燈籠の約7割が、春日大社にあるといわれている」と語る通り、日本最多の神社である。

燈籠について解説してくれた広報の秋田さん

社寺の参道に燈籠を並べる風習も、春日大社が発祥だという。燈籠は本来、神仏を照らすために社殿やお堂の前に設けるが、春日大社では大宮と摂社・若宮をつなぐ参道「御間道(おあいみち)」を神前同様の聖域とするため、鎌倉時代末期から石燈籠が立ち並び始めたそうだ。その数はどんどん増え、次第に境内全域へと広がった。江戸時代になると春日大社にならって、全国の社寺が参道に石燈籠を並べるようになったという。

日本で初めて参道に石燈籠が並べられたという御間道

木製で立方体の火袋が特徴の「御間型燈籠」。2022年秋に、戦国時代の黒漆塗(くろうるしぬり)火袋の燈籠が1基復元された

境内を歩く際には、石燈籠の柱に注目したい。ほとんどの燈籠には「春日社」と刻まれているが、約2000基あるうち15基だけが「春日大明神」の文字になっているそうだ。ひと晩で3基見付けると「長者になれる」との言い伝えがあるので、ぜひ探してみよう。

「春日大明神」と刻まれた石燈籠

時代を超えた祈りを感じる光景

大宮の回廊にずらりと並ぶ釣燈籠は、現代でも寄進が絶えない。こちらは境内全体で約1000基を数え、古くは平安時代にさかのぼる。江戸幕府5代将軍・徳川綱吉、戦国武将の藤堂高虎や直江兼続、宇喜多秀家らが寄進した燈籠も、現役で御廊につるされている。

東回廊(重要文化財)に列を成す釣燈籠

左から2番目が徳川綱吉、3~4番目が藤堂高虎の寄進

膨大な数の燈籠は、「江戸時代までは毎日、火をともしていた」(広報・秋田さん)そうだ。現在は2月の節分、お盆の8月14、15日の伝統行事「万燈籠」の夜にだけ、その光景を目の当たりにできる。深い森の闇にあまたのともし火が揺らめき、神聖な参道や回廊がより厳かな空気に包まれる。

幻想的な雰囲気に包まれる「万燈籠」 撮影:松井良浩

大宮内の「藤浪之屋(ふじなみのや)」では、万燈籠の雰囲気を一年中体感できる。江戸時代まで神職の詰所だった歴史ある建物内に、100基以上の釣燈籠が明かりをともしているので、時を忘れて見入ってしまう。

幽玄な世界を楽しめる藤浪之屋(重要文化財)

石燈籠を眺めながら参道を歩いていると、鹿がひょこっと顔を出すことがある。その光景を数百年前の貴族や武将も見ていたかも、と思うと感慨深い。時代を超え、現代ではアイドル的な人気者になった鹿たちは、参拝者を笑顔にし、癒やしをくれる存在だ。

こけむした石燈籠が並ぶ表参道。たくさんの鹿にも出会える

春日大社

住所:奈良県奈良市春日野町160
拝観時間:御本殿参拝所 3月-10月=午前6時30分~午後5時30分、11月-2月=午前7時~午後5時 ※お札・お守り・御朱印等は午前9時~閉門まで、御本殿特別参拝 午前9時~午後4時(参拝不可の日時あり)
拝観料:境内参拝自由、御本殿特別参拝500円
アクセス:JR「奈良」駅、近鉄「奈良(奈良公園前)」駅から奈良交通バス「春日大社本殿」行き終点下車すぐ

取材・文=ニッポンドットコム編集部、EditZ
写真=EditZ

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東急東横線 目黒線 新横浜線 全線で運転再開

東急東横線 目黒線 新横浜線 全線で運転再開
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230531/k10014083971000.html

『 2023年5月31日 14時43分

東急電鉄の東急東横線と東急目黒線、それに東急新横浜線は、横浜市の日吉駅の線路で煙が出ているのが見つかった影響で一部の区間で運転を見合わせていましたが、さきほど午後2時半ごろに全線で運転を再開しました。』

政府「こども金庫」新設 政策収支、特別会計で一元管理

政府「こども金庫」新設 政策収支、特別会計で一元管理
https://nordot.app/1035105914403881682?ncmp=post_rcmd

『2023/05/27

自民党の茂木敏充幹事長は27日、党本部で講演し、政府の少子化対策の財源を巡り、子ども政策の収支を一元的に管理するための特別会計を新設する方針を明らかにした。「こども金庫を創設し、費用負担の『見える化』を進める予定だ」と述べた。

 政府は少子化対策に充てる当面の財源を確保するため、国債の一種である「つなぎ国債」の発行を検討している。つなぎ国債もこの特別会計で管理する方向で調整している。

 茂木氏は講演で、政府が6月に策定する経済財政運営の指針「骨太方針」に向けて議論を加速すると強調。財源確保については「まずは歳出改革を徹底する」と語った。

© 一般社団法人共同通信社 』

少子化対策予算「3兆円台半ば」と首相指示

少子化対策予算「3兆円台半ば」と首相指示
https://nordot.app/1036492346365215523?c=302675738515047521

『岸田文雄首相は31日、少子化対策の関係閣僚に対し、今後3年間の重点施策の予算額を「3兆円台半ば」とするよう指示した。後藤茂之経済再生担当相が協議後、官邸で記者団に明らかにした。

© 一般社団法人共同通信社 』

高速道の有料50年延長=改正特措法成立

高速道の有料50年延長=改正特措法成立
https://www.nippon.com/ja/news/yjj2023053100131/

『2065年までとしていた高速道路の料金徴収期間を最長2115年まで延長する改正道路整備特別措置法などが31日の参院本会議で可決、成立した。

人口減少で料金収入の落ち込みが見込まれる中、老朽化したトンネルや橋の更新に必要な対策費用を確保する。高速道路の4車線化の整備にも充てる。

高速道路会社は、必要な更新事業を追加した計画を随時作成し、国土交通相の許可を得ながら事業を進める。国交省は2115年までに必要となる高速道路の老朽化対策費用が8兆3000億円に上ると試算している。』

岸田総理長男は「家柄、学歴、職歴文句なし」欠けているのは「良識と常識」伊藤惇夫氏バッサリ

岸田総理長男は「家柄、学歴、職歴文句なし」欠けているのは「良識と常識」伊藤惇夫氏バッサリ
https://www.daily.co.jp/gossip/2023/05/30/0016413448.shtml?fbclid=IwAR01KiX-iDPP8xixN8huIrLzCC0guTubtHaVxb3dy07AY8RLw9r9-n9rnCs

 ※ 「良識」と「常識」が欠けている人物って、「政治家の資質」うんぬんよりも、「人」として、どうなのよ…。

 ※ やれやれな話しだ…。

 ※ まあ、「デイリースポーツ」では、あるが…。

『政治アナリスト・伊藤惇夫氏が30日、TBS系「ひるおび!」で、事実上更迭された岸田文雄総理の長男・翔太郎秘書官について、学歴、職歴など文句がないだけに「欠けているのは良識と常識かなと」との思いを語った。

 この日は事実上更迭となった岸田総理の長男・翔太郎秘書官の問題を取り上げた。先週の時点では厳重注意だったが、前日に急転直下の事実上の更迭となった。

 「乗り切れると思ったのか?」という恵俊彰の問いかけに伊藤氏は「金曜の発言を聞くとね。前回のイタリア観光旅行疑惑もありましたが、あの時も乗り切った訳ですから、今回も行けると判断したのかもしれませんが」と辛らつ。そして「今後、これを引き延ばすとダメージが強くなるというのもあったのかもしれない」と分析した。

 翔太郎氏は慶大卒業後は三井物産に入社。20年に岸田事務所で公設秘書となり、22年10月に総理秘書官となった。伊藤氏は「翔太郎さんは家柄も学歴も職歴も文句ない。となると、欠けているのは良識と常識かなと」と厳しい言葉も。「この辺を岸田さんがどう指導し、教育したのかが問われる」とも語っていた。』

批判覚悟の「PayPay改悪」 楽天経済圏に対抗

批判覚悟の「PayPay改悪」 楽天経済圏に対抗
LINE・ヤフー 背水の合併(2)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC199EB0Z10C23A5000000/

『「使いづらくなる」「PayPayさよなら」――。5月1日、ネット上はZホールディングス(HD)子会社のPayPayに対する批判の投稿であふれた。ツイッターでは「PayPay改悪」がトレンド入りした。PayPayのスマートフォン決済はクレジットカード払いの場合、他社が発行するカードも利用できるが、8月から自社の「PayPayカード」に限定すると発表したからだ。

他社カード排除により自社カードの発行…

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『他社カード排除により自社カードの発行数を増やし、スマホ決済、ポイント、カードなどPayPayで完結できる経済圏への誘導を狙う。だが、他社カードを使う利用者が離れかねないリスクもはらむ。

批判覚悟で囲い込みを優先するのは、ZHDとして経済圏づくりで先行する楽天グループを追うためだ。決済取扱高はPayPayの10兆円に対し、楽天はカード取扱高のみでPayPayの1.8倍、グループ電子商取引(EC)取扱高は1.5倍にのぼる。

囲い込み策に踏み切れるのは「数の力」があってこそだ。PayPayはサービス開始からわずか4年半で利用者が5700万人を超えた。スマホ決済シェアは3分の2を握る。ただ、PayPay幹部や営業現場はさらなる利用者獲得に貪欲だ。

2月中旬、東京都港区にあるPayPay本社の一室に同社幹部らが勢ぞろいした。「LINEのように、日常に欠かせない存在にならないといけない。絶対に(利用者数増の)スピードを緩めるな」。社長の中山一郎は檄(げき)を飛ばした。

「『楽天市場』でもPayPayを導入してもらいたい」。PayPay副社長の馬場一は目的のためには「敵」とさえ組みたいという本音も隠さない。2022年にはアマゾンジャパンと提携。ヤフーのECでためたPayPayポイントをアマゾンで使うこともできる。ヤフーからは「なぜ敵に塩を送るのか」との声が漏れる。

「PayPayの成長は異例の速さだ」。ZHD社長の出沢剛のPayPayにかける期待は大きい。LINEやヤフーの業績が足踏みするだけに、グループの次の成長を担う存在になりうる。9500万人が利用するLINEとの連携でさらなる利用者の拡大も狙える。PayPayを活用した囲い込み策が吉と出るか凶と出るかは、10月に発足する合併新会社LINEヤフーの行く末を占う。(敬称略)

【関連記事】

・PayPay、他社のクレジットカードの利用停止 8月から
・PayPay、スマホ決済5700万人をクレカへ 楽天に対抗
・PayPayサービス変更 他社カード利用停止に衝撃も
・「線」になれぬLINEとヤフー AIで挽回なるか
・EC決済比率、PayPayがコンビニ抜く 2年で3倍

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楠木建
一橋ビジネススクール特任教授
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分析・考察 スマートフォン決済のように価値の差別化が難しい業界では、初期の段階は顧客への「出血サービス」でユーザーの数を増やす競争がしばらく続く。しかしそれだけでいずれもたなくなる。利便性の一部を落としてでも将来の利益につながるようなサービスの仕様変更が必要になる。
2023年5月31日 8:43』

三菱UFJ、旧行システム完全統合に次ぐ「大手術」へ

三菱UFJ、旧行システム完全統合に次ぐ「大手術」へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC157VU0V10C23A5000000/

『三菱UFJ、旧行システム完全統合に次ぐ「大手術」へ
3メガバンクCIOに聞く(上)

勘定系システムは非競争領域――。こう言い切る銀行すら出始めたなか、3メガバンクグループは勘定系システムをどう位置付けているのか。3メガバンクの決断は、地方銀行やインターネット専業銀行のみならず金融事業を手掛ける大手IT(情報技術)ベンダーの戦略にも影響を与える。各グループの最高情報責任者(CIO)へのインタビューを通じて3メガバンクの勘定系システム戦略を明らかにし、その未来を展望する。

旧東京三菱…

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『旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行のシステムを完全統合した「Day2」以来の大手術――。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が勘定系システムの根本的な見直しに挑んでいる。「アーキテクチャ戦略」をまとめ、2022年度からの10年間で約1400億円を投じる計画だ。MUFGでグループCIOを務める越智俊城執行役常務に同戦略を進める真意を聞いた。

三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役常務グループCIOの越智俊城氏(写真:北山 宏一)

──三菱UFJ銀行を中心にシステムを抜本的に見直す「アーキテクチャ戦略」を21年から推進しています。このタイミングになった理由は何でしょう。

「私は17年にシステム企画部長に就きましたが、その頃から実はアーキテクチャ戦略という言葉が出ていました。当時は18年度に始まる中期経営計画を作るために『MUFG再創造イニシアティブ』を打ち出し、構造改革を進めていました。柱の1つがデジタライゼーションです。こうした動きをきっかけに(将来を見据えて)システムはどうあるべきか考え始めました」

MUFGのアーキテクチャ戦略のポイント

──システムのアーキテクチャーを評価した結果はどうでしたか。

「チャネル系システムと勘定系システムは密結合でメンテナンス性が悪いといった、いくつかの課題が洗い出されました。アーキテクチャ戦略はこうした課題を踏まえ、『10年先に困らないように』という方針でまとめています」

「アーキテクチャ戦略のテーマは大きく2つです。1つが堅牢(けんろう)性を維持しながら(レガシーシステムを手掛ける)人材や技術的な枯渇に対してどんな手を打っていくか。もう1つが(インターネットバンキングなどの)チャネルやアプリケーションの柔軟性や効率性をいかに高めていくかです」

──旧東京三菱銀行と旧UFJ銀行のシステムを完全統合したDay2は、投資額2500億円、総工数11万人月という規模でした。22年度からの10年間で約1400億円を投じるアーキテクチャ戦略はDay2以来の規模のプロジェクトでは。

「その通りです。Day2に次ぐシステムの大手術になると考えています」

勘定系は根源的な信頼を支える

──勘定系を「非競争領域」と捉える銀行も出始めたなか、同システムをどう位置付けていますか。

「勘定系システムは頻繁に変更を加えるものではありませんが、銀行の根源的な信頼を支えている仕組みです。そこが(塩漬けで)じっとしたままだと維持できなくなってしまうため、勘定系システムをいかに守っていくかはすごく大事なことだと思っています」

「例えばメンテナンスがしやすいように複雑な構造をシンプルにしたり、メインフレーム(大型汎用機)というハードウエアだけでなく、そこで動作するソフトウエアや開発ツールを整備し続けたりする必要があります。システム全体をモダナイズ(近代化)していくことは、我々にとって非常に重要な取り組みです」

──オープン基盤やクラウドの進化が著しい状況で、システムの堅牢性を維持するメインフレームの役割は今後どのように変化するのでしょうか。

「今、メインフレームが担っているのは、高い可用性と処理能力が求められるシステムです。今まではメインフレーム上で様々なシステムが動いていましたが、今後はメインフレームが担う部分を少なくしていきます。ソースコードをスリムにするだけでなく、メインフレーム上で動作する機能そのものを限定していく想定です」

「具体的には、融資や外国為替のトランザクションを管理したり、融資の審査をしたりする機能をメインフレームの外にどんどん出して、できればオープン系サーバー上で動作するパッケージソフトに置き換えたい。一方、口座振替などはひとたびトラブルが起きると、他の処理に影響を及ぼし、大変な事態を招くため、メインフレームが必要です。顧客への影響が大きい預金や為替も同様に必要でしょう」

このままではDXの足かせに

──このタイミングでシステムを見直さないと、DX(デジタルトランスフォーメーション)の足かせになるといった危機感があったのでしょうか。

「まさに17年にアーキテクチャーを評価したとき、『足かせになる可能性がある』と書かれていました」

──アーキテクチャ戦略をまとめる段階で、勘定系システムなどの全面オープン化は選択肢にあったのでしょうか。

「選択肢として(全面オープン化を)最初から落としてはいないと聞いています。フラットに検討した結果、今の形(メインフレームとオープン基盤のハイブリッド型)に落ち着きました」

──システム内製化の動きが強まるなか、日本IBMや日立製作所を中心としたITベンダーとの関係性は今後どのように変化していきそうですか。

「これまでの歴史をひもとくと、ITベンダーとは銀行のシステムをつくってきたというよりは、ミドルウエアなどベンダーの製品も含めて一緒に開発してきたという関係でした。そこの関係性は変えたくない。一方で人的リソースの調達でベンダーに頼ってきた部分については、人材の流動化や採用難を踏まえて、自前で手掛ける部分を増やす必要があるでしょう」

=つづく

(聞き手は日経FinTech 山端宏実、日経コンピュータ 玉置亮太)

[日経コンピュータ 2023年5月11日号の記事を再構成]

越智俊城(おち・としき)氏
1991年3月一橋大学商学部卒、同年4月三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。三菱UFJニコス常務執行役員などを経て、2022年4月より三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役常務グループCIO。三菱UFJ銀行取締役常務執行役員CIOを兼務。』