韓国が「旧ホワイト国」復帰 輸出管理の実効性確認 経産省

韓国が「旧ホワイト国」復帰 輸出管理の実効性確認 経産省
https://news.yahoo.co.jp/articles/7640df771ce48d31282cbf2f3e827050e3da38d4

 ※ 今日は、こんな所で…。

『4/28(金) 12:24配信

 経済産業省は28日、韓国を輸出手続きを簡素化する「グループA(旧ホワイト国)」に復帰させる方針を固めた。

【ひと目でわかる推移グラフ】貿易収支

 軍事転用が可能な物資や技術に対する韓国の輸出管理の実効性を確認できたと判断した。近く発表する。 』

【インテル・トリニティの生涯】ロバート・ノイス:ノーベル賞を「2度も」獲り損なった男

【インテル・トリニティの生涯】ロバート・ノイス:ノーベル賞を「2度も」獲り損なった男
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/semicon/1496846.html

『インテルの創業と発展に寄与した三位一体(トリニティ)

 「インテル・トリニティ(Intel Trinity)」とは、インテル(Intel)の共同創業者であるロバート・ノイス(Robert Noyce)氏とゴードン・ムーア(Gordon Moore)氏、それからインテルの社員第1号であるアンドリュー・グローブ(Andrew Grove)氏をまとめた呼称だ。インテルの創業と成長を一体となって支えた3名(三位一体)を意味する。

 この呼称は、シリコンバレーで長年にわたって新聞記者をつとめたマイケル・マローン(Michael Malone)氏の著作「The Intel Trinity: How Robert Noyce, Gordon Moore, and Andy Grove Built the World’s Most Important Company」(Harper Business、2014年7月発行)により、米国では広く知られるようになった。邦訳書籍は「インテル 世界で最も重要な会社の産業史」(文藝春秋、2015年発行)である。邦訳タイトルには「インテル・トリニティ」が入っていない。このためか、日本における「インテル・トリニティ」の知名度はあまり高くない。

 本コラムの【インテル・トリニティの生涯】では、トリニティで最後の1人となったゴードン・ムーア氏が2023年3月24日に逝去した機会を捉え、トリニティの生涯を紹介する。本来であれば誕生年月順から言ってロバート・ノイス氏を始めに紹介すべきなのだが、逝去したばかりで読者の記憶に新しいであろうムーア氏を先に紹介した。

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【福田昭のセミコン業界最前線】【インテル・トリニティの生涯】ゴードン・ムーア:インテルを最も長く愛し続けた男

「インテル・トリニティ」を構成するノイス氏、ムーア氏、グローブ氏の生涯(概略、文中敬称略)。公表資料から筆者がまとめたもの

日本語版がないノイス氏の伝記

 今回はムーア氏とともにインテルを創業したロバート・ノイス氏の経歴を述べる。ノイス氏の伝記として最も優れているとされるのは、シリコンバレーを専門とする歴史学者のレスリー・バーリン(Leslie Berlin)氏が著した「The Man Behind the Microchip: Robert Noyce and the Invention of Silicon Valley」(Oxford University Press、2005年6月10日初版発行)だろう。440ページというかなりの大著である。

 インテルのWebサイトでノイス氏を記念するページを閲覧すると、ノイス氏のバイオグラフィ(伝記)として同書へのリンク(厳密にはバーリン氏のWebサイトへのリンク)が張られている。インテルが公式に認めた伝記本ともいえる存在だ。なお、筆者が調べた限りでは、邦訳本(日本語版書籍)は出版されていない。

ロバート・ノイス氏の伝記へのリンク部分。インテルのWebサイトに置かれたノイス氏を記念するページから抜粋

包括的なキルビーの発明、製造技術に特化したホーニーとノイスの発明

 ロバート・ノイス氏(以降は一部を除いて敬称略)の経歴で日本でも知られているのは、フェアチャイルド半導体の共同創業者、インテルの共同創業者、日米半導体貿易摩擦における対日攻撃の急先鋒、モノリシック集積回路の発明者といったところだろうか。バーリン氏の著作「The Man Behind the Microchip: Robert Noyce and the Invention of Silicon Valley」を閲覧すると上記のほか、いくつかの興味深い事実が浮かび上がる。

 最も興味深かったのは、ノイスがノーベル物理学賞を2回も獲り損なったというエピソードだ。2回の中で1回は、集積回路(IC)の発明である。このことは、半導体の研究開発コミュニティではよく知られている。

 そもそも半導体コミュニティでは「集積回路の発明者」として、テキサス・インスツルメンツ(TI)のジャック・キルビー(Jack Kilby)氏、それからフェアチャイルド半導体のノイスとジーン・ホーニー(Jean Hoerni)氏の3名を挙げることが少なくない。

 キルビーは1958年7月に、半導体基板にトランジスタやダイオード、抵抗素子などをまとめて搭載するという「集積回路の概念」を着想した。ホーニーは1957年12月にシリコン酸化膜でシリコンのトランジスタを保護するプレーナ型プロセスを考案した。ノイスはホーニーの発明を発展させ、シリコンのプレーナ型プロセスを回路素子間の相互接続(導体配線)に拡張した、モノリシック集積回路を1959年1月に発明した。キルビーの特許は1959年2月、ホーニーの特許は1959年5月(2件)、ノイスの特許は1959年7月に出願されている。
キルビーの特許「Miniaturized Electronic Circuits」(特許番号3138743)に描かれた実施例(マルチバイブレータ回路)の図面。図面で配線は空中の金(Au)線となっている(試作したICと類似している)が、考え方としては半導体基板と配線は一体化させる。図面の出所:1986年11月27日付け特許出願公告「特公昭61-55256」の第1図と第2図(いずれも米国特許と同じ図面)

ホーニーの特許「Method of Manufacturing Semiconductor Devices」(特許番号3025589)および「Semiconductor Device」(特許番号3064167)に描かれた図面の例(いずれの特許も同じ図面を使用)。シリコン酸化膜をマスクと保護膜に利用する

ノイスの特許「Semiconductor Device-and-Lead Structure」(特許番号2981877)に描かれた図面の例。上が平面図、下が断面図。左側のpn接合ダイオードと右側のnpnトランジスタを配線(30番および31番のリード(Lead)で結ぶ

 キルビーの発明は最も包括的であり、「半導体集積回路の概念」に関するアイデアだった。請求範囲が広く、米国、日本、欧州を問わずに半導体メーカーにとってはかなり厄介な存在だった。このため手続きに時間がかかったとみられる。3名の中では特許の成立が最も遅く、1964年6月になっている(特許番号は3138743)。

 逆にノイスの特許は最も早く、キルビーの3年ほど前、1961年4月に成立した(特許番号は2981877)。1959年当時はトランジスタ全盛時代であり、集積回路の製品がまだ登場していなかったことが、特許の成立を早めたとみられる。プレーナ型トランジスタとダイオードの製造に関わるホーニーの特許2件はノイスよりも1年ほど遅く、1962年3月(特許番号は3025589)と1962年11月(特許番号は3064167)に成立した。

 ホーニーのプレーナ型プロセスとノイスのモノリシック集積回路プロセスはその後、シリコン集積回路とトランジスタ(バイポーラおよびMOS)、ダイオードの標準的な製造技術となった。特にMOS FETとその集積回路(MOS IC)は、ホーニーとノイスの発明によって実用化の道筋が開けたと言える。半導体産業の発展に与えた影響は、非常に大きい。

ノーベル賞の対象とは見なされなかった「集積回路」の発明

 ただし半導体の研究開発コミュニティでは、集積回路の発明はノーベル賞の対象とはなりにくいとの見方が少なくなかった。集積回路の考案は学問的な業績ではなく、工業的な業績とみなされたからだ。固体物理学における偉大な発見であるトランジスタ(1956年にノーベル物理学賞を受賞)とは、発明の性格が大きく異なる。

 たとえばゴードン・ムーアは1994年に、以下のように述べている。「トランジスタを発明したショックレー博士はノーベル賞を受賞したが、キルビー氏やノイス氏は受賞していない。ホーニー氏にいたってはきちんと評価されたとも言えない。その理由は2つあると思う。トランジスタは基礎的な物理研究と密接に関わっていた。ICはそれよりも技術問題だった。もう1つは少人数を特定して功績を断定することがより難しかった。キルビー氏、ノイス氏、ホーニー氏の3氏というのも1つの可能性なのだろうが、この点について明確な提案は残念ながらなかった」(玉置直司、「インテルとともに―ゴードン・ムーア 私の半導体人生―」、1995年6月発行、p.61)。

遅すぎた「集積回路」のノーベル賞授与決定

 ところが2000年10月10日、スウェーデン王立科学アカデミーは同年のノーベル物理学賞を、キルビーを含めた3名の研究者に授与すると発表した。授与の理由は、現代情報技術(Modern Information Technology)の構築に寄与したこと。2名は化合物半導体のレーザーと高速トランジスタの基本構造「ヘテロ接合」の開発に対してノーベル賞を与えられ、この2名が賞金の半分を折半するとした。賞金の残り半分は「集積回路の発明に関するキルビー氏の寄与」に対してキルビーに授与された。

2000年10月10日にスウェーデン王立科学アカデミーが発表した、2000年のノーベル物理学賞の授与に関するリリース(Webサイトのページを一部抜粋したもの)

 ノイスは、集積回路の発明に対してノーベル賞を授与されなかった。理由は2000年の時点で彼は鬼録に登っていたからだ。ノイスはこの10年前、すなわち1990年に亡くなっていた(ノーベル賞は生者のみに授与される)。ホーニーも1997年に亡くなっており、受賞資格を失っていた。なお同アカデミーが2000年のノーベル物理学賞の対象業績を解説したWebページは、ノイスの業績についてもふれている。

江崎玲於奈氏らよりも早期にトンネルダイオードを着想

 ロバート・ノイスが逃したノーベル賞クラスの発明はもう1つある。それは「負性抵抗ダイオード(トンネルダイオード)」を理論的に着想したことだ。「負性抵抗」とは、電圧を上げると電流が減少する状態を意味する。1950年代は量子効果の1つである「トンネル効果」が半導体素子で生じると固体物理学の世界で予想されてはいたものの、実証には至らなかった時期である。pn接合ダイオードにおけるトンネル効果の発見は、半導体における量子効果の実証を意味した。

 読者の多くがご存知のように、トンネルダイオードを発明したのはソニー(当時は東京通信工業)の江崎玲於奈氏らのグループである。以下の記述はソニーのWebサイトに掲載されたトンネルダイオード(別名:エサキダイオード)の発見にまつわるエピソードを参考にした。

 1957年夏にソニーはゲルマニウム(Ge)の高周波トランジスタを開発する過程で生じたトラブル(ボンディングによるpn接合破壊)に対処するため、不純物濃度を変えたpn接合の特性を調べていた。このときに江崎らのチームは偶然、高濃度にリン(P)をドープしたpn接合の電流電圧特性が異常なふるまいを示すという現象に遭遇した。逆方向バイアスでは電圧の上昇とともに電流が単調に増加する。順方向では電圧の上昇とともに電流がゆるやかに増加し、ある電圧から電流が減少する。さらに電圧を上げると電流は再び増加していく。

 トラブルはトランジスタのリン濃度を調節することで解決された。江崎は高濃度pn接合ダイオードで生じた負性抵抗をトンネル効果だと推測し、1957年10月に日本物理学会年会で発表した。残念ながら、反響はあまりなかったという。

江崎らの研究チームが1957年10月の日本物理学会年会で発表したpn接合ダイオードの負性抵抗に関する講演の予稿。出所:日本物理学会年会講演予稿集

ショックレーに潰されたノイスのトンネルダイオード

 ソニーの江崎らがpn接合ダイオードのトンネル効果を発見していたのとほぼ同時期に、ノイスはpn接合ダイオードの不純物濃度を極端に高めるとトンネル効果が生じることを理論的に発見した。1956年8月14日のことであり、江崎らの発見よりも1年ほど早い。当時、ノイスはショックレー半導体研究所につとめていた。ノイスによる発見の経緯を、前述のレスリー・バーリンとデューク大学名誉教授のクレイグ・ケーシー(H. Craig Casey Jr.)は共同で、「IEEE Spectrum」誌の2005年5月号に寄稿した(「Robert Noyce and the Tunnel Diode」、May 2005、IEEE Spectrum、pp.49-53)。

 ノイスは、通常の数千倍もの高い不純物濃度を有するpn接合ダイオードでは、順方向の電流電圧特性が以下のようになると予想した。

 順方向の印加電圧をゼロから少しずつ上げていくとしよう。印加電圧がわずかなときには、通常のpn接合ダイオードよりもやや高い電流が流れて増加し始める。このとき伝導電子はpn接合間の極めて薄い空乏層を「トンネル効果」によって通り抜ける。

 印加電圧をもう少し上げるとpn接合のエネルギー帯で空乏層が厚くなり、伝導電流(トンネル電流)が減少する。すなわち負性抵抗が生じる。印加電圧をさらに上げると空乏層の傾斜がゆるやかになり、通常のpn接合と同じように電流が増えていく。

ノイスが1956年8月14日にトンネルダイオードのアイデアを著した研究ノート。右上に日付がある。右下に電流電圧特性の予想曲線(順方向にトンネル電流と負性抵抗が生じる)が描かれている。出所:Computer History Museum, Department of Special Collections, Stanford University

 このエキサイティングなアイデアをノイスはまず同僚のムーアに話し、次に上司のショックレー(William Bradford Shockley Jr.)に報告した。若きノイスは、ショックレーがこのアイデアに感激してくれるものと期待した。

 ところがショックレーは、ノイスのアイデアに何の関心も示さず、このアイデアに基づく研究(ダイオードの試作や理論の検証など)への道を閉ざしてしまった。ショックレーは競争心が異常に強く、自分の部下が独自のアイデアで研究を進めることを許さない性格だった。失意に打ちのめされたノイスは、ショックレーの意図に沿った別テーマの研究に取り組んだ。

ショックレーが「エサキダイオード」を称賛した不可解

 失意のノイスをさらに打ちのめす出来事が、1958年1月に起こる。著名な固体物理の論文誌「Physical Review」の1958年1月15日号に、「New Phenomenon in Germanium p-n Junctions」と題する江崎の論文が掲載された。試作したGeダイオードの順方向電流電圧特性で、トンネル効果による負性抵抗を観測したという報告だった。

 ノイスはこのとき、ムーアらとともにショックレー半導体を退社してフェアチャイルド半導体を共同で創業しており、同社で忙しく働いていた。ノイスは江崎論文のコピーをムーアに見せ、ノイスと江崎のトンネルダイオードを比較した。両者の構造と特性は非常によく似ていた。大きく違うのは、ノイスはダイオードを試作しなかったことだ。江崎はダイオードを試作して室温(300K)と低温(200K)で電流電圧特性を測定した。低温ではトンネル効果がより顕著に現れた。

 江崎は、続く1958年6月にベルギーのブリュッセルで開かれた国際固体物理学会(International Conference on Solid State Physics)で、高濃度に不純物をドープしたGeトンネルダイオードを発表することにした。ここで不可解なことが起こった。学会の冒頭に実施されたキーノートアドレスで、すでに固体物理学の権威となっていたショックレーが「東京から来た江崎がトンネルダイオードを発表する」と述べ、江崎の研究成果を高く評価したのだ。これには発表者の江崎本人が非常に驚いた。ショックレーが事前にアピールしたこともあり、江崎の発表には多くの聴衆が集まった。

 ノイスのトンネルダイオード「ノイスダイオード」をショックレーはすでに知っていた。「エサキダイオード」がノイスダイオードと本質的に同じものであることも理解していたはずだ。ショックレーは「ノイスダイオード」を無視し、「エサキダイオード」を称賛したのはなぜなのだろうか。

 先に紹介した「Robert Noyce and the Tunnel Diode」は、いくつかの可能性を挙げている。まず、ショックレーは意見や方針などを頻繁に変える傾向があったこと。ショックレーの部下の1人は、彼は会社をいつも「揺さぶっていた」とコメントした。別の部下は、ショックレーはトンネルダイオードに対する考えを変えたのではないかと述べた。また、1957年8月にショックレーを裏切った8名(ノイスを含めたフェアチャイルド半導体の共同創業者)に対する恨みが1958年6月の時点では癒えてなかったからだとする意見もある。いずれにせよ、今となっては本当の理由は分からない。

 ベルギーでの発表から15年後の1973年10月23日、スウェーデン王立アカデミーは1973年のノーベル物理学賞を「固体中のトンネル効果の発見」に関する業績で江崎玲於奈を含む3名に授与すると発表した。

1973年10月23日にスウェーデン王立科学アカデミーが発表した、2000年のノーベル物理学賞の授与に関するリリース(Webサイトのページを一部抜粋したもの)

米国半導体産業の復活に力を尽くす途上で急逝

 トンネルダイオードにノーベル物理学賞が授与されたとき、ノイスとムーアが共同で1968年7月に創業したインテルは、創立6年目に入っていた。インテルの1978年版年次報告書によると、1973年の売上高は6,620万ドル、従業員数は約2,500名(1973年末時点)、続く1974年の売上高は1億3,450万ドル、従業員数は約3,100名(1974年末時点)である。急激な成長ぶりがうかがえる。ノイスに過去を振り返っているヒマはなかっただろう。

ロバート・ノイスと2つのノーベル物理学賞。赤い文字はトンネルダイオード、青い文字は集積回路に関連する出来事

ロバート・ノイスの年譜

 ノイスの活動は1970年代半ば以降、ベンチャー企業の育成や米国半導体産業の保護・強化へと軸足を移していく。1975年にインテルの社長を辞して取締役会会長となり、1979年には取締役会副会長へとステップダウンする。この間、日本半導体メーカーのキャッチアップと対米販売攻勢に注意を払うようになる。そして業界団体である「米国半導体工業会(SIA)」の設立(1977年に発足)を主導する。

 1980年代には日米半導体貿易摩擦が起こり、米国半導体産業における製造技術の強化を真剣に考えるようになる。1988年には、半導体製造の要素技術開発を目的とする官民合同企業セマテック(SEMATECH)のCEOとなり、現役の経営者に復帰する。そして初めて、米国南部のテキサス州オースチンへと自宅を移す。セマテックの本社がオースチンにあったからだ。それまでノイスはシリコンバレーで暮らしていた。

 ノイスはヘビースモーカーだったが、健康診断では何の異常もなかった。しごく健康であり、1990年6月3日には注文していた自家用飛行機を受け取る予定だった。しかし朝に自宅のプールで泳いだあと、体調不良を訴え、病院に搬送されるも不帰の人となってしまう。死因は心不全だった。半導体関係者はノイスの急逝に驚き、悲しみ、落胆した。

 そして「インテル・トリニティ」のシリーズでは最後に、アンドリュー・グローブ氏の生涯について紹介する予定だ。ご期待されたし。 』

日本の半導体製造装置輸出規制、中国が「重大な懸念」表明

日本の半導体製造装置輸出規制、中国が「重大な懸念」表明
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-04-04/RSLK9LT1UM1A01

『Foster Wong
2023年4月5日 0:58 JST

中国商務省は4日夜の声明で、日本が計画する半導体製造装置23品目の輸出規制に「重大な懸念」を表明した。

  声明は中国が世界最大の半導体市場であることや、日本の半導体製造機器にとって最大の輸出先であることを指摘し、日本が提案する制限は世界的なサプライチェーンの安定のみならず、日中両国の企業利益を損なうと警告。日本の提案は事実上、個別国の強要に値し、中国に危害を加える行為だと非難した。

  半導体産業における日中協力を妨害することを日本側が主張するなら、中国は「正当な権利と利益を断固守るために」決然とした措置を講じる意向だと表明した。』

中国、米メモリメーカーのマイクロンに「サイバーセキュリティ調査」を発動……ここから見えてくるつばぜり合いとは?

中国、米メモリメーカーのマイクロンに「サイバーセキュリティ調査」を発動……ここから見えてくるつばぜり合いとは?: 楽韓Web
https://rakukan.net/article/498834206.html

『中国、米半導体メーカーミクロンサイバーセキュリティ調査に着手(ファイナンシャルニュース・朝鮮語)

中国当局が米国メモリー半導体メーカーのマイクロンテクノロジーに対するサイバーセキュリティ調査に着手した。

米中間の緊張が高まる中、中国で活動するグローバル半導体メーカーに対する中国当局の圧迫が本格化する信号弾と解釈される。 (中略)

これは先端半導体、半導体装備の対中輸出を阻止した米政府に対する対抗作戦と見られる。たとえ中国に先端半導体を輸出することはできないが、汎用半導体の輸出で中国で莫大な金を稼いでいる米国をはじめとするグローバル半導体メーカーに圧力をかけ、資金源を塞ぐ恐れもあるという警告と解釈される。

中国市場はマイクロンの中核市場だ。昨年の年間売上の11%、33億ドル(約4兆3000億ウォン)が中国から出た。 (中略)

中国のマイクロン圧迫は、米国が中国半導体掘削機を粉砕するための各種制裁を出す中で出た。

米国は昨年、中国最先端半導体メーカーを輸出禁止対象ブラックリストに載せた。ヤンツメモリーがブラックリストに上がり、このためグローバル半導体装備業者等がここに常駐していた職員を撤収させ半導体生産が一時停止したりもした。
(引用ここまで)

 ちょっと興味深い話が出てきたのでピックアップします。
 あと後年に振り返った時に重要な分岐点になっていそうな予感がするので。

 中国がアメリカのメモリメーカーのマイクロンに対して「サイバーセキュリティ調査」に着手。
 マイクロンって基本的にDRAMとフラッシュメモリ(NAND、NOR)しか作っていない。
 そんな企業の製品のどこにサイバーセキュリティ調査をするんだって話なんですが。

 たとえばインテルを「調査」すると話が大きくなりすぎる上に、中国にも影響が大きい。
 テキサスインスツルメンツなんかでも同様。
 じゃあ、マイクロンかな……ってなった感がありますね。
 もちろん、これは実質的にはアメリカのCHIPS法による対中半導体輸出規制への対抗措置でしかない。

 アメリカへの対抗措置であるのと同時に中国に大規模な工場を持つサムスン電子、SKハイニックスへの圧力ともなっている妙手。
 「おまえら、撤退だの縮小だのしようもんならどうなるか分かってんだろうな」っていう。

 サムスン電子、SKハイニックスともに、中国工場はいまひとつ「最新」とはいえない設備でしかない。
 CHIPS法による縛りで製造機器を10年間はアップデートできないので、もはやレガシーなメモリを作るしかない。
 それで採算が取れるのか、というとかなり微妙。地消地産なのでそれなりに引き合いはあるとは思いますが。

 ただまあ、韓国はなにも主体的に動けていないなぁ……という感触。
 中国とアメリカの作り出した渦に巻きこまれて、たまに浮上してどうにか呼吸しているみたいな感じ。
 日本の製造機器メーカーはまだアメリカの強い引き合いでなんとかなっている部分が大きいけど。
 もはや中国に工場持っているっていうのは本当にディスアドバンテージでしかないな……。

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中国当局、米マイクロンを調査 国家安全法などで

中国当局、米マイクロンを調査 国家安全法などで
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM31CMF0R30C23A3000000/

『【香港=多部田俊輔】中国当局は31日、国家の安全を幅広く取り締まる「国家安全法」などに基づき、米半導体大手のマイクロン・テクノロジーの調査に着手したと発表した。「対中規制強化に対する報復かもしれない」(業界関係者)との見方も浮上しており、米中の半導体分野の対立が激しくなりそうだ。

中国でネットを統制する国家インターネット情報弁公室が同日、発表した。「インターネット安全法(サ…

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『「インターネット安全法(サイバーセキュリティー法)」などを根拠に、マイクロンが中国で販売した製品について、ネットワークの安全審査に着手したとしている。重要インフラのサプライチェーン(供給網)の保護などのためとしているが、具体的な問題や製品名などについては明らかにしていない。

米中のハイテク分野の対立が先鋭化するなか、米バイデン政権は先端半導体の対中輸出の規制を強化しており、日本も足並みをそろえた。』

半導体「ブロック化」 日本は輸出規制で足並み、中国反発

半導体「ブロック化」 日本は輸出規制で足並み、中国反発
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA311D50R30C23A3000000/

『日本が先端半導体の製造装置の輸出規制に踏み出す。中国への対抗姿勢を強める米国の要請で足並みをそろえる。オランダも同調する。経済のブロック化が鮮明になり、企業は戦略の見直しを迫られる。分断のコストが成長の重荷になる懸念も強まる。

西村康稔経済産業相が規制強化を表明した3月31日。すぐさま中国外務省の毛寧副報道局長が記者会見で「世界のサプライチェーン(供給網)の安定を破壊する行為だ」と反発した。中国側が対抗措置をとるかどうかにかかわらず、従来通りの貿易は難しくなる見通しだ。

日本が輸出管理を強化する23品目で、影響を受ける国内企業は10社程度になりそうだ。東京エレクトロンやSCREENホールディングス、ニコンなどが対象になる可能性がある。

政府は最先端品向けに絞っており「全体としての影響は限定的だ」と説明する。企業は情報収集や見極めを急ぐ。

成膜や洗浄など複数の工程の製造装置が規制対象になるとみられる国内最大手の東京エレクトロンは「一企業として地政学的な事案・規制に関してコメントする立場にない。発表内容について確認し、適切に対応する」。洗浄装置を手がけるSCREENホールディングスの広報担当者は「内容を精査して経済産業省の指導を仰ぐ」という。

先端品向けの露光装置を生産するニコンは「影響を精査中だが、決められたルールに従って取引をする」とコメントした。規制に該当するとみられる「フッ化アルゴン(ArF)液浸露光装置」は、2022年度に計5台販売したうちの少なくとも1台が中国向けだったという。

レーザーテックがつくる極端紫外線(EUV)露光技術に対応した検査装置も輸出管理の対象となる。「どのように運用されるか不透明な部分もあり、関係省庁や業界団体などから情報収集をして対応する」

米中の覇権争いが激しくなり、各社とも事業の先行きを見通しにくくなっているのは一緒だ。

これまでは2大国の対立も両国間のせめぎ合いが主だった。米国はトランプ前政権下で、中国が15年に公表した半導体などの産業政策「中国製造2025」への警戒感をあらわにして、高速通信規格「5G」などのハイテク分野で中国の切り離しを進めた。

18年には半導体メモリーのDRAMメーカー、福建省晋華集成電路(JHICC)を、事実上の禁輸措置を課すエンティティー・リストに追加した。19年には華為技術(ファーウェイ)、20年には半導体受託生産の中芯国際集成電路製造(SMIC)もリストに加えた。

こうした動きが今、米主導の西側陣営による中国包囲網づくりという新局面に入りつつある。

米国は22年10月、スーパーコンピューターや人工知能(AI)に使う先端半導体の製造に必要な装置や技術について、中国への輸出を事実上、禁じた。さらに半導体製造装置に強みをもつ日本とオランダにも同調するよう求めてきた。

今回、日本が先端品関連23品目の輸出管理強化を発表したのは米国に足並みをそろえる動きだ。オランダも規制品目を増やす方針を明らかにしており、夏前にも導入する構えだ。
新型コロナウイルス禍やウクライナ危機などを経て、今の米国はサプライチェーンを再構築する「フレンドショアリング」を掲げ、同盟国や友好国を巻き込んだ枠組みの構築を急ぐ。この流れが加速すれば企業活動への影響が一段と大きくなるのは避けられそうにない。

すでに足元では米国が22年10月に導入した規制が影を落とす。各国の貿易統計などによると、半導体装置の22年10〜12月期の中国向けの輸出額は日本が前年同期比16%減、米国が50%減だった。対中国以外の輸出額は日本が26%、米国が10%増えており、対照的だ。

中国が今回の輸出規制に対抗措置を取るリスクもある。足元の規制の影響にとどまらず、各社は長期的な経営戦略の再考まで迫られる可能性がある。

分断が深まり、先端品を巡る切り離しが進む流れは当面続く公算が大きい。収益の確保のために、規制にかからない汎用品などのビジネスを継続するかどうかなど今後も難しい判断を迫られる局面が増えそうだ。

【関連記事】

・半導体装置23品目規制 中国への輸出、先端品難しく
・半導体、中国との分断進む 日米の装置輸出22年は減少
・中国当局、米マイクロンを調査 国家安全法などで 』

政府 半導体製造装置の輸出管理厳格化 中国などへ手続き厳しく

政府 半導体製造装置の輸出管理厳格化 中国などへ手続き厳しく
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230331/k10014025251000.html

『2023年3月31日 12時27分

政府は、国際的な安全保障をめぐる環境が厳しくなる中、先端半導体の製造装置23品目の輸出管理を厳しくする措置を新たに行うと発表しました。アメリカ・韓国・台湾などへの輸出よりも中国などへの輸出の際の手続きを厳しくします。

発表によりますと、対象となるのは日本企業が高い技術力を持つ、先端半導体の材料に回路を焼き付ける「露光(ろこう)装置」など23品目です。

政府が、輸出管理の仕組みが整っていると認めたアメリカや韓国、台湾など42の国や地域への輸出よりも、中国を含むその他の国や地域への輸出の際の手続きを厳しくし、毎回、経済産業大臣の許可を取ることを必要とします。

米中の覇権争いが激しさを増す中、アメリカは中国向けの輸出規制を強め、半導体の製造装置で高いシェアを持つ日本やオランダにも輸出管理の強化を要請していました。

これに対してオランダは、ことし夏までに先端半導体の製造装置の輸出規制を強化する方針を明らかにしていて、今回、日本としての対応を示した形です。

ただ、日本にとって中国は最大の貿易相手国で、日本の半導体製造装置メーカーは、スマートフォンやデータセンター向けの半導体需要の高まりを受けて、中国への輸出を伸ばしてきました。

経済産業省によりますと、措置の対象となる装置を作っている日本企業は10社あまりで、軍事転用のおそれがなければ、輸出を許可することから影響は限られるとしています。

西村経済産業大臣は閣議のあとの会見で、「軍事転用の防止を目的とした今回の措置によって、技術保有国として国際社会における責任を果たし、国際的な平和および安全の維持に貢献していきたい」と述べました。

今回の対応は、アメリカからの要請に応えつつ日本企業への影響をできるだけ抑えようというもので、経済産業省は中国を念頭に置いた措置ではないとしていますが、米中それぞれがどう受け止めるかが焦点になります。

米 半導体の輸出規制の背景

中国向けの半導体をめぐって、アメリカのバイデン政権は去年10月、新たな輸出規制の実施を明らかにしました。

対象は、AI=人工知能やスーパーコンピューターなどに使われ、大量破壊兵器の開発や最新の軍事システムなどに転用が可能な先端半導体や製造装置で、アメリカ政府は、半導体の製造装置で高いシェアを持つ日本やオランダに対しても規制の協力を求めてきました。
規制強化の背景にあるのが、ハイテク分野での米中の覇権争いです。

アメリカは去年10月に発表した国家安全保障戦略で、中国を「国際秩序を変える意思と能力を兼ね備えた唯一の競合国」と位置づけ、軍事、経済、科学技術などの分野で総合的な抑止力を構築する方針を示しています。

このうち半導体については去年8月、520億ドル以上、日本円にして7兆円余りを投じてアメリカ国内における半導体の生産や開発を補助金などで後押しする法律を成立させました。

中国が国家主導でばく大な予算を使い半導体の技術開発を進めていることに対抗するねらいで、2月には補助金の申請受け付けを始めました。

補助金を受ける企業は今後10年間、中国で新たな関連の投資を行わないことを条件とするなど、半導体をめぐって中国の製造能力を抑えこむ姿勢を鮮明にしています。』

日本政府、半導体製造装置を輸出管理対象に 米が対中規制要請

日本政府、半導体製造装置を輸出管理対象に 米が対中規制要請
https://jp.reuters.com/article/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%94%BF%E5%BA%9C-%E5%8D%8A%E5%B0%8E%E4%BD%93%E8%A3%BD%E9%80%A0%E8%A3%85%E7%BD%AE%E3%82%92%E8%BC%B8%E5%87%BA%E7%AE%A1%E7%90%86%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E3%81%AB%E3%80%80%E7%B1%B3%E3%81%8C%E5%AF%BE%E4%B8%AD%E8%A6%8F%E5%88%B6%E8%A6%81%E8%AB%8B-idJPT9N31N01I

『[東京 31日 ロイター] – 経済産業省は31日、軍事転用の防止を目的に、半導体製造装置を輸出管理対象に追加すると発表した。中国の台頭を懸念する米国は、製造装置に強い日本とオランダに輸出規制の強化を求めていた。日本は管理対象の仕向け地を中国に限らず全地域とし、高性能装置の輸出を事前許可制とする。日本メーカー10数社が影響を受ける。

外為法の省令を改正し、輸出には経産大臣の事前許可が必要になる。パブリックコメントの募集を経て5月に公布、7月の施行を予定している。対象の仕向け地は全地域だが、輸出管理体制の状況などを踏まえ米国など42カ国向けは包括許可に、中国を含めその他向けは輸出契約1件ごとの個別許可とする。

東京エレクトロンが手掛けるエッチング装置やニコンが手掛ける露光装置など6分類23品目が対象で、回路線幅14ナノ前後よりも微細な先端半導体を製造できる高性能装置が規制される。経産省によると、10数社が影響を受ける。

米国は昨年10月、中国が軍事転用する恐れがあるとして半導体の輸出規制を強化。先端半導体を作るのに必要な技術や製造装置の輸出に広く網をかけた。製造装置メーカー最大手の米アプライドマテリアルなどが影響を受ける中、米国は有力な製造装置メーカーを抱える日本とオランダにも足並みをそろえるよう求めていた。

3カ国は今年1月、先端半導体の製造装置輸出を規制することで合意。オランダは3月上旬、国家安全保障の観点から先端的な半導体技術の新たな輸出規制を計画していると表明したが、日本は「今般のオランダの動向も踏まえて適切な対応を検討していきたい」(西村康稔経産相)とするにとどめていた。』

日本政府、半導体製造装置を輸出管理対象に 米が対中規制要請
https://www.epochtimes.jp/2023/03/143878.html

『[東京 31日 ロイター] – 経済産業省は31日、軍事転用の防止を目的に、半導体製造装置を輸出管理対象に追加すると発表した。中国の台頭を懸念する米国は、製造装置に強い日本とオランダに輸出規制の強化を求めていた。日本は管理対象の仕向け地を中国に限らず全地域とし、高性能装置の輸出を事前許可制とする。日本メーカー10数社が影響を受ける。

外為法の省令を改正し、輸出には経産大臣の事前許可が必要になる。パブリックコメントの募集を経て5月に公布、7月の施行を予定している。対象の仕向け地は全地域だが、輸出管理体制の状況などを踏まえ米国など42カ国向けは包括許可に、中国を含めその他向けは輸出契約1件ごとの個別許可とする。』

ゴードン・ムーア氏逝去の報に考える、ムーアの法則は死んだか、今でも生きているのか?

ゴードン・ムーア氏逝去の報に考える、ムーアの法則は死んだか、今でも生きているのか?
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/ubiq/1488545.html

『 笠原 一輝 2023年3月28日 06:16

Intelとゴードン・ベティ・ムーア財団から、Intelの共同創始者であるゴードン・ムーア氏が3月24日に94歳で他界されたことが発表された。既にムーア氏は実業から引退し、ハワイ州で余生を過ごされている中での死だったと発表されている。

 そうしたムーア氏は、1968年にシリコンバレーの創業期にフェアチャイルド・セミコンダクターで一緒に働いていてロバート・ノイス氏と共同でIntelを創業し、そしてフェアチャイルドで部下だったアンディ・グローブ氏を加えて、3人でIntelを世界最大の半導体メーカーに育てあげた。

ムーア氏の功績はまさに半導体産業を今の規模にしたことにあると言ってよく、その功績を心からたたえ、ご冥福をお祈りしたい。

 そのムーア氏の名前を一躍有名にしたのは、「ムーアの法則」と呼ばれる「半導体メーカーにとって、1年から2年でトランジスタの密度を2倍にすることが、経済的合理性がある」という経済原則を提唱したことだ。そのムーアの法則は、ムーア氏自身が語った「経済的な合理性」という意味を超えて、「2年でトランジスタが2倍になる」という法則だと解釈されて使われることが多い。

 ムーアの法則は今後も半導体産業の原則であり続けるのか、IntelのリーダーであるIntel CEO パット・ゲルシンガー氏は「ムーアの法則はまだ生きている」と言っており、その競合となるNVIDIAのジェンスン・フアンCEOは「ムーアの法則は死んだ」と言っている。そうした違いが出てくる背景には何があるのだろうか?

ロバート・ノイス氏とIntelを創業し、アンディ・グローブ氏とともにIntelを大きくしたゴードン・ムーア氏

Intel本社でかつての盟友の名前を冠した「ロバート・ノイス・ビルディング」に入るゴードン・ムーア氏(写真提供:Intel)

 ゴードン・ムーア氏は、シリコンバレー創世記に半導体メーカーとして知られていた「フェアチャイルド・セミコンダクター」で一緒に働いていたロバート・ノイス氏と共同で、1968年にIntelを創業した。

Intelという社名は「Integrated」(統合)、Electronics(電気)などの言葉から創造された(とされている)社名で、常に同社の半導体には、新しい機能を半導体に統合していく、そうしたビジョンがこめられている。

 1979年からは社長になり、1987年からはCEOとして1997年までIntelを引っ張ってきた。その時期にはフェアチャイルド・セミコンダクターで部下だったアンディ・グローブ氏が社長となり、テックカンパニーとしてのビジョンをムーア氏が、そして日々の会社の運営はグローブ氏がという形でIntelを引っ張ってきた。

 Intelの公式な社史ではノイス氏とムーア氏が共同創業者とされているが、実質的にIntelが現在のような巨大な企業になったのはムーアCEOとグローブ社長の時代で、グローブ氏を加えた「Intel三人衆」(Intel Trinity)を実質的な創業者と見なす人が多い。

その観点で創業時のIntelの社史を書いた書籍が「The Intel Trinity」(マイケル・マローン著、邦題:インテル 世界で最も重要な会社の産業史、文藝春秋刊)に詳しいので、ご興味がある方はぜひそちらを、お読みいただくことをおすすめしたい。

Intel三人衆(Intel Trinity)となるゴードン・ムーア氏(左)、ロバート・ノイス氏(中央)、アンディ・グローブ氏(右)(写真提供:Intel)

 ノイス氏、ムーア氏、そしてグローブ氏の3人(1987年にノイス氏が急逝されて以降は2人)がIntelをリードしていた時代に、Intelは何度か大きな危機を迎えている。

その代表的な例は、1980年代の前半にそれまでIntelの主力製品だったDRAMが、日本の半導体メーカーの勃興により競争力がなくなるという事態だ。

 Intelは創業期から、他社よりも大容量で高速なDRAMを最先端の製造技術を活用して製造して提供するというのがビジネスモデルだった。

しかし、DRAMは今でもそうだがコモディティ製品(誰にでも作れる一般的な製品)であったため、当時米国などに比べて人件費などが安かった日本の半導体メーカーに対して競争力を失いつつあったのだ。

 そこで、ノイス氏、ムーア氏とグローブ氏は、創業時の事業であったDRAM事業から大胆に撤退し、当時IBM PCに採用されるなどしていた「8086」などのロジック半導体に社運をかけることに決定した。

 その後8086の後継製品になる80286、Intel 386、Intel 486などをリリースしていき、MicrosoftのMS-DOS/Windowsの普及と一緒にIBM PC互換機市場で大きく市場していく中で、世界最大の半導体メーカーに成長していった。

そのため、両社の主力製品(Windows)と社名(Intel)を合わせて「Wintel」(ウインテル)と冷やかされるほど、強いプラットフォームを作り上げていったことは、PCの発展期をご存じの方には周知の事実だろう。

 ムーア氏、ノイス氏とグローブ氏の3人が下した「創業の事業であるDRAMから撤退する」という難しい決断は、その後のIntelの勢いを作っていったことを考えれば、グローブ氏が好んで使っていた「戦略的転換点(ストラテジック・インフレクション・ポイント、市場などで発生する環境変化のこと)」で企業の方針を急転換させるという難しい判断を迫られている中で、正しい判断を下したというのが、その後の歴史が示す事実だ。

 前出の「The Intel Trinity」の中で、奇抜ですぐに新しいことをやりたがるロバート・ノイス氏、そして自分にも部下にも厳しかったアンディ・グローブ氏とは対照的に、ゴードン・ムーア氏は論争を好まずいつもニコニコしていながら大胆な判断を下す時にはそれに賛成するというエンジニア出身の経営者として描かれている。

 以前、VMwareのCEOを務めていた時代のパット・ゲルシンガー氏(現Intel CEO)にムーア氏のことを伺ったときに「ゴードンはいつもボロボロの車をベティと2人で乗っていて、これで十分なのだと言っていた」と説明してくれたことがある。

そうした非常につつましい生活を、億万長者になった後でもしていたと聞いている。そうした姿勢が引退後の活動にも現われており、ゴードン・ベティ・ムーア財団(Gordon and Betty Moore Foundation)を設立し、未来を切り開く変化への投資、未来を作る若者への投資などを行なう社会奉仕活動などに資産を使っていった。

 スーパーカーを乗り回すよりも、未来を作る実現する活動に自分の資産を費やす、ムーア氏の人生とはまさに「ノブレス・オブリージュ」(高貴な立場が行なうべき徳のある行動)を体現したような人生だったと言っていいだろう。

ムーア氏が提唱した「ムーアの法則」と「ムーア氏が言っていないムーアの法則」があり、一般的には後者が流布されている

 そうしたゴードン・ムーア氏の名前を有名にしたのは、まだIntelを創業する前に同氏が当時の産業紙に寄稿した、後に「ムーアの法則」と呼ばれることになる経済原則だ。

この「ムーアの法則」に関する話でよく覚えているのは、2003年のISSCCだったと思うのだが、当時Intelの名誉会長職を務めていたムーア氏がISSCCの講演に登壇し、会場に詰めかけた半導体産業関係者の質問に答えていた時のことだ。

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 ムーア氏は「私は一度も2年で半導体の性能が倍になるなんていっていない、ただ、1年から2年の間にトランジスタが倍になるように計画していくことが、半導体メーカーにとって経済的な合理性があると言っただけだ」と述べ、会場を笑わせていた。

 さらに、「自分はムーアの法則なんてことは言っていないし、それはマーケティング関係者が都合よいからそう使っているだけだ」とも述べ、ほとんどが半導体産業のエンジニアであるISSCCの参加者を大いに沸かせた。

 というのも、一般的に流布されているムーアの法則というのは「2年で半導体の性能が倍になる」というものであって、2年で半導体の性能が倍になっていくことがムーア氏の予測だと受け取られているからだ(そしてそれは今も続いている)。

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 ムーア氏が言っていたのは、1年~2年の間に1つのチップに詰め込めるトランジスタの数(トランジスタの集積率)が倍になるように、製造技術(プロセスノード)を開発し、工場に投資していくことが、半導体メーカーの収益にとって合理的ということであって、決して2年で性能が倍になるなんてことはいっていないのだ。

ムーア氏が「自分はそもそも“ムーアの法則”なんて言っていない」と言っていたのはそういう意味だ(以下2年で性能が倍になるという一般的に信じられているムーアの法則を「ムーア氏は言っていないムーアの法則」と呼ぶことにする)。

 しかし、受け取る側、特にマーケティングの担当者にとっては「半導体の性能は2年で倍になるのです、だからそれに従って製品を開発しましょう」と自分の顧客に説明する方が、都合が良いのは言うまでもない。

 実際のところ、2010年代の前半ぐらいまでは、若干のズレはあっても、2年に1度は新しいプロセスノードを導入して、その度に必ず2倍と言わなくても、それに近いトランジスタの数を増やし続けてきた。その意味で、ムーア氏の言うところも「ムーア氏は言っていないムーアの法則」はその通りに実現されてきたのだ。

 しかし、2010年代に入って、「ムーア氏は言っていないムーアの法則」は機能しなくなる。プロセスノードの研究開発がやや停滞したこともあり、2年で性能が倍は実現されなくなっている。

 Intelのプロセスノードで言うと、22nmは2012年に出荷開始し、14nmは2015年に出荷を開始したので約3年、その14nmから10nmへ移行を開始したのは2019年と4年もかかってしまっている。

さらに、EUVの技術が導入される7nm(今ではIntel 4に改名されている)は、ようやく今年の後半に出荷されるMeteor Lakeで出荷開始されるため、こちらも4年かかっている。

このように、Intelの例で見れば、ムーア氏が言っていないムーアの法則はもはや実現されていないのが現実だ。

NVIDIAのフアンCEOは「ムーア氏は言っていないムーアの法則」はもはや死んだと強調
NVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏(先週GTCの記者会見で撮影)

 先週開催されたNVIDIAの年次イベント「GTC」の会期中に、筆者などのメディア関係者からの質疑応答に応じたNVIDIAのジェンスン・フアン氏は「ムーアの法則は既に死んだ。これからはアクセラレーテッドコンピューティングがAIを実現するコンピューティング環境を進化させていく」と述べ、もはやムーアの法則は死に、これからはGPUのようなCPUとはことなる、別種類のプロセッサで10倍、20倍といった性能の向上を実現していく必要があると強調した。

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 フアン氏は「ムーアの法則を言い換えれば、同じコストで同じ消費電力であれば性能が2倍になるという考え方だったと言っていい。だが、もはやそのペースで製造技術は進化していない、その意味でムーアの法則は死んだのだ」と述べた。その上で、GPUのようなCPUとは異なるプロセッサを異種混合(ヘテロジニアス)に使っていくことが、今後も2倍上のペースで性能を伸ばしていく唯一の道だ、と強調した。

 ここで注意したいのはフアン氏が死んだといっているムーアの法則は筆者の定義するところの「ムーア氏は言っていないムーアの法則」の方だということだ。先ほどIntelのプロセスノードの例でも分かるように、既にプロセスノードの進化は4年に1度になっているのがこの10年だということは繰り返すまでもないだろう。2年に1度のペースでは進化できていないのだから、フアン氏が「ムーア氏は言っていないムーアの法則は死んだ」というのはまったくその通りだと思う。

 フアン氏が言いたいのは「半導体製造技術は前のようなスピードでは進化していない、それに頼っていては性能を上げることは難しくなっているから、アーキテクチャを劇的に変えて性能を上げていく必要がある、その答えが“GPU”だ」ということにあると考えられるだろう。

 Intelだってそう思うからこそ、Intel Data Center GPU Max(Ponte Vecchio)のような製品を開発し、CUDAの対抗になるようなoneAPIを開発して普及を目指しているのだ。

そのように、Intelでさえ、NVIDIAを後追いしているような現状を考えれば、HPCのような市場ではまさに「フアンの法則」(GPUのような異なるアーキテクチャで10倍、20倍を実現していくとフアン氏が説明していること)が支配しているといって過言ではないだろう。

IntelのゲルシンガーCEOは、4年間で5つのプロセスノードを投入するなど「ムーアの法則」に従ったロードマップで勝負
Intel CEO パット・ゲルシンガー氏(昨年5月のVisionで撮影)

 それに対して、そのムーア氏の直系の後継者となるIntel CEOのパット・ゲルシンガー氏は「ムーアの法則はまだ生きている(Moore’s law is still alive)。そしてより良くなっている」と昨年9月に語っている。「フアンの法則」で「ムーアの法則は死んだ」と言われているのに、なぜゲルシンガー氏はそれが生きているといっているのだろうか?

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 勘のいい人はもう分かったと思うが、ゲルシンガー氏が言っている「ムーアの法則はまだ生きている」は、ムーア氏が本当に言っていた「ムーアの法則」(1年から2年でトランジスタの集積率が倍になるのが経済的な合理性がある)の方だからだ。

 どういうことかと言うと、ゲルシンガー氏は2021年にIntelにCEOとして復帰して以来、新しい戦略をどんどん打ち出しており、それを着々と実行してきている。

そのゲルシンガー氏の新戦略の肝となるのが「IDM 2.0」という進化したIDM(Integrated Device Manufacturer)というビジネスモデルだ。

 IDMとは、Intelのように半導体の設計と製造の両方をやっている半導体メーカーを示す言葉だ。IDMの対義語となるのが「ファブレス・メーカー」で、NVIDIAやAMDのようにTSMCなどのファウンドリ(受託製造半導体メーカー)に委託して製造している半導体メーカーのことを意味している。

 IDM 2.0とは進化したIDMという意味で、その根幹をなしているのは「Intel Foundry Services(IFS)」と呼ばれる、Intelが自社製品向けだけでなく、他社の半導体を製造するファウンドリも兼ねるということにある。

自社だけでは製造する半導体の数に限界がある、それが従来のIDMの弱点だった。

IDM 2.0ではファウンドリビジネスを行なうことで、極端に言えば競合メーカーの製造をも行なうことで、「数」を確保して、他のファウンドリーとの競争に打ち勝っていく、それが基本戦略だ。

 このIFSにおいて、TSMCやSamsungといったほかのファウンドリとの差別化を実現するため、今Intelはプロセスノードの開発に力を入れている。

それが「4年間で5つのプロセスノードを導入する」という戦略で、Intel 7(従来の10nm Enhanced SuperFin)、Intel 4(従来の7nm)、Intel 3、Intel 20A、Intel 18Aという5つのプロセスノードを4年間で次々に投入するという意欲的なプランだ。

 Intel 4とIntel 3、Intel 20AとIntel 18Aは従来のIntelのプロセスノード世代の数え方だと同じ世代と言ってよいので、4年で2つの世代と換算すると、まさにムーア氏の言っていた「ムーアの法則」に従っている、つまりムーアの法則の復興にほかならない。

 この4年間で5つのノードという計画を計画通りに実行できれば、TSMCやSamsungをIntelが追い越して半導体製造技術でナンバーワンに返り咲き、ファウンドリーの顧客を増やして、再び規模でもIntelの製造部門がTSMCやSamsungを追い越していく……今Intelが取り組んでいるIDM 2.0というのはそういう壮大なプランなのだ。

そうしたプランを推進している、Intelのリーダーであるゲルシンガー氏が「ムーアの法則はまだ生きている、よりよくなっていく」と言うのはある意味当然だろう。
両者ともにゴードン・ムーア氏が実現しようとしていた未来を作ろうという姿勢では共通
 つまり、どちらも言っていることは正しいが、使っているレイヤー(アーキテクチャか製造か)の違いが「ムーアの法則は死んだ」(フアン氏)、「ムーアの法則は生きている」(ゲルシンガー氏)という違いにつながっていると考えられる。

 NVIDIAのフアン氏が言っているのは、半導体をファウンドリに製造してもらうファブレス半導体メーカーとしての立場で、「半導体を製造しているファウンドリやIDMは既に2年で性能が倍になることは実現できていないじゃないか」ということだ。

だからこそ、その上のレイヤーであるマイクロアーキテクチャを工夫することで、対処していかないと性能は上げられないし、電力効率も改善できない、そういうことだ。

 それに対してIntelのゲルシンガー氏が言っていることは、IDMとして、そしてこれからはファウンドリとして、TSMCやSamsungといった、いつのまにかIntelを追い越していったファウンドリから再び首位の座を奪い返すという目的のために、IDM 2.0を実現する「経済的な合理性がある法則」として「ムーアの法則」を手段として実現していくという話に他ならない。だからゲルシンガー氏が「ムーアの法則はまだ生きている」というのは当然だ。

 そこはファブレスのNVIDIAとIDMのIntelのビジネスモデルの違いと言えばいいだろう。
ただ、半導体業界の記者として両者を多数取材したことがある記者として感じることは、フアン氏にせよ、ゲルシンガー氏にせよ共に共通していることは、どちらもムーア氏の志である「半導体を使ってより良い未来を作る」という根本的なビジョンを共有していることだ。

 部下として直接薫陶を受けたゲルシンガー氏はもちろんのこと、Intelの競合メーカーを一代で構築したフアン氏も、生前のムーア氏が実現しようとしていた「技術で社会をより良くしていく、人々に幸せを提供する」という姿勢では首尾一貫している。

その手段は立場の違いもあって違う(ムーアの法則を肯定するか、否定するかの違い)が、目指すところはムーア氏が実現しようとしていた「未来」であることが、ムーア氏の生前の業績への、最大の称賛ではないか、と筆者は感じている。

 最後になるが、ゴードン・ムーア氏の逝去に、ご遺族の皆さまに心からお悔やみを申し上げ、ご冥福をお祈りし、この記事のまとめとしたい。』

ムーアの法則

ムーアの法則
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%82%A2%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87

 ※ 今日は、こんな所で…。

 ※ オレが初めて買った「コンピューター」は、NEC製のPC-98で、確か、「80286」搭載だったと思ったな…。

 ※ まだ、「フロッピー」でOS読み込むタイプで、起動すると「ツンツン、ツーン…」とかいう音がしたもんだよ…。

『出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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原文と比べた結果、この記事には多数の(または内容の大部分に影響ある)誤訳があることが判明しています。情報の利用には注意してください。正確な表現に改訳できる方を求めています。(2016年5月)

集積回路に実装されたトランジスタ数の増大(片対数グラフ)

ムーアの法則(ムーアのほうそく、英: Moore’s law)とは、大規模集積回路(LSI IC)の製造・生産における長期傾向について論じた1つの指標であり、経験則に類する将来予測である。発表当時フェアチャイルドセミコンダクターに所属しており後に米インテル社の創業者のひとりとなるゴードン・ムーアが1965年に自らの論文上に示したのが最初であり、その後、関連産業界を中心に広まった。

彼は1965年に、集積回路あたりの部品数が毎年2倍になると予測し、この成長率は少なくともあと10年は続くと予測した。1975年には、次の10年を見据えて、2年ごとに2倍になるという予測に修正した。彼の予測は1975年以降も維持され、それ以来「法則」として知られるようになった。

初出

ムーアの元々の文章は以下である。

(原文) The complexity for minimum component costs has increased at a rate of roughly a factor of two per year (see graph on next page). Certainly over the short term this rate can be expected to continue, if not to increase. Over the longer term, the rate of increase is a bit more uncertain, although there is no reason to believe it will not remain nearly constant for at least 10 years. That means by 1975, the number of components per integrated circuit for minimum cost will be 65,000.

I believe that such a large circuit can be built on a single wafer.

"Cramming more components onto integrated circuits", Electronics Magazine 19 April 1965[1]

(訳)部品あたりのコストが最小になるような複雑さは、毎年およそ2倍の割合で増大してきた((訳注)元文献ではここでグラフを参照している)。短期的には、この増加率が上昇しないまでも、現状を維持することは確実である。より長期的には、増加率はやや不確実であるとはいえ、少なくとも今後10年間ほぼ一定の率を保てないと信ずべき理由は無い。すなわち、1975年までには、最小コストで得られる集積回路の部品数は65,000に達するであろう。

私は、それほどにも大規模な回路が1個のウェハー上に構築できるようになると信じている。

チップの複雑さはトランジスタの個数に比例すると仮定し、それらが何に使われているかを無視するならば、この法則は今日まで充分時の試練に耐えてきたと言える。

しかし、トランジスタ当たりの複雑さは、RAMキャッシュでは実行ユニットほど高くないという議論もあり得る。

こんにちのマイクロプロセッサの祖である4004も、DRAMの祖である1103(en:Intel 1103)も1970年前後に登場したのであり、それらより5年も前に述べられたことでもある(また「1個のウェハー」についても、こんにちの直径300mmのウェハーへの wafer-scale integration のようなものを想定してはいないだろう)。

そういった観点からすれば、ムーアの法則の妥当性は、その定式化のしかたによっては疑問符がつくものとなる。ただし、その成長が指数的であるという点に異論は無いと推測される。

なお、1枚のチップ(a chip)に集積される部品数は、プロセスの微細化とチップ面積の拡大の2つの要素の掛け合わせで増加する。

また「ムーアの法則」と名づけたのはムーア自身ではなく、その著書 Introduction to VLSI Systems(『超LSIシステム入門』)などで知られるカーバー・ミードによる[2]。

ムーアは今日の機械式マウスの共同発明者であるダグラス・エンゲルバートから、1960年の講義にて集積回路のサイズ縮小の見通しについて議論したのを聞いた可能性がある[3]。

公式

ムーアの法則の公式は、集積回路上のトランジスタ数は「2年ごとに倍になる」というものである。

これを式で表現すると、n年後の倍率 p は、

p = 2 n / 2 {\displaystyle p=2^{n/2}}

となる。

したがって、2年後には2倍、5年後には5.66倍、7年後には11.3倍、10年後には32倍、15年後には181.0倍、20年後には1024倍ということになる。

さらには、1チップあたりのコストに対するコンピューティングパワーをどんどん増加させ続けるものがムーアの法則だとされ、ハードディスクや果てはコンピュータ以外の技術でも指数的な成長をしていればなんであれどんどんムーアの法則と呼ぶような傾向さえ現れたが、それらについてはこれ以上触れない。

定量的にはともかく、コンピュータの性能という視点からは「トランジスタ数=ゲートやラッチ数の増加により、より複雑なプロセッサが実装できる」「デナード則により、微細化=高速省電力化である」という、ムーアの法則から間接的に発生する複数の要素が関与して、ひたすらに性能向上が進んだ、と定性的には言うことができるのは確かである。

クーメイはこれを定量的に捉え直す試みとして、ムーアの法則による微細化にともなう、デナード則による速度向上と省電力化の定式化と、過去のコンピュータの消費エネルギーあたりの計算量の再調査による長期の傾向から、法則性を取り出し「クーメイの法則」とした。クーメイによれば21世紀に入った後ではその値の成長は鈍化している。

鈍化の原因としては、ゲートやラッチの数をより増やしても、それに比例するようにはコンピュータの性能を上げられなくなったこと(ポラックの法則)、また集積回路技術の微細化による電子的な特性ではリーク電流による悪影響のほうが強くなって、省電力性能が上がりにくくなったこと、が言われている。実際に商品のトレンドとしても、2020年現在では、クロック周波数やシングルスレッド性能は伸び悩み、その一方でコア数の増加は進んでいる。

産業牽引力

集積回路製造の業界用語で、それに関係する生産プロセスに投入される技術を指すプロセステクノロジ(process technologie)という用語がある。以下では、ムーアの法則の本来の適用範囲についてはその用語「プロセステクノロジ」を、逸脱した拡大解釈によるその他の技術などへの外挿の場合は「技術」などの用語を使う。

ムーアの法則は最初は半導体産業でのプロセステクノロジの観察と予測によって生まれたが、今日ではより広く受け入れられ、先進的な工業製品一般における性能向上の1つの予測値や目標値として用いられることがある。

コンピュータ関係の製品や部品を製造する企業にとって、ムーアの法則が暗示する将来予測は無視できない。

例えばCPUやハードディスクのような製品を新規に設計・生産する場合には、最初の出荷まで2年から5年ほどの期間を要するため、こういったメーカーは、投資と収益に関する大きな経済的リスクを負うと共に、数年先の市場を予測した製品開発を行わねばならない。
製品の陳腐化が早いいくつかの産業では、先行者利益が大きい分だけ市場参入の遅れは大きな損失を負う可能性があるが、逆に、他社が提供できない新規性があり高性能な製品であっても生産コストが高く販売価格が市場に受け入れられなければ、特殊な用途向きの小さな市場にしか得られない可能性があるため、将来予測は重要である。

過去の結果から将来を演繹する将来予測は、「自己成就」などと呼ばれる、それを信じる参加者が多いことでより信頼度の高いものとなるという性質があり、「ムーアの法則」はそのような特性も持っている。

「2年ごとに倍になる」という表現は、ムーアの法則が近年の技術の表象的な進み具合をほのめかしている。より短い時間軸で表現されると、ムーアの法則は平均して1週間に0.6%以上半導体産業全体のパフォーマンスを向上させていると言い換えることができる。

法則の限界

2010年代後半、半導体の開発ペースが鈍化し始め、ムーアの法則のペースが維持できなくなるとの説が広まりだした。2017年5月、NVIDIAのJensen Huangは大手半導体企業のCEOとして初めて、「ムーアの法則は終わった」ことに言及している[4]。

インテル チック・タックは、200x年代なかばにインテルが打ち出した戦略で、パターンの大幅な変更無しに新しいプロセステクノロジによって縮小して高性能化した世代のチップと、新しくマイクロアーキテクチャを設計してその前の世代と同じプロセステクノロジで製造するチップとを、毎年交互にリリースする、というもので、ムーアの法則によって2年に1回のペースで新しいプロセステクノロジへの更新があることを前提にしていた。

2010年代後半に、この戦略が崩れたことも、現実がムーアの法則通りではなくなっていることのあらわれとみなされている。

将来のトレンド
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主要なCPUにおけるトランジスター数の推移

各々初出荷時点での数

(以下の記述は執筆時点がだいぶ古いものも含まれている)

2006年第一四半期において、PCのプロセッサは90nmで製造されており、65nmのチップはIntel(Pentium DおよびIntel Core)からのみ出荷されていた。10年前では、チップは500nmで製造されていた。各企業は45nmや30nm、さらにそれ以下の細かさのチップを製造するために起こる複雑な課題を解決するため、ナノテクノロジーを用いて開発を行っている。これらのプロセステクノロジに因って、半導体産業が直面するムーアの法則の限界の到達が延伸することになるだろう(その後、2010年32nmでトランジスタ数約4億個、2015年には14nmを実現)。

2001年頃のコンピュータ業界のロードマップは、ムーアの法則はチップ数世代にわたって継続するであろう、と予測していた。そのロードマップでの計算によると、2011年にチップ上のトランジスタ数は2の100乗個にまで増加するだろう、と予測していた、というわけである。半導体産業のロードマップではマイクロプロセッサのトランジスタ数は3年で2倍になるとしているので、それに従うと10年で2の9乗個になる。

この法則に経済的合理性があるのは、トランジスタ1個あたりのコストが劇的に下がることである。例えばCore i5には13億個のトランジスタがあり、7万個のトランジスタで1ペニーである。

2006年初頭、IBMの研究者らは深紫外光 (DUV、193nm) のフォトリソグラフィで、29.9nm幅の回路をプリントするプロセステクノロジを開発したと発表した。当時IBMは、これによってチップ市場は今までのやり方でムーアの法則の予言をこの数年達成し続けることができるだろう、とした。

計算能力を向上させる方法は、単一の命令ストリームを1つの演算部で可能な限り早く処理するだけとは限らず、遅い動作クロックであっても複数の演算部で並列的に処理することでも計算能力を向上できる。

一般に動作クロックの上昇は処理性能に寄与するが、発熱もまた増すために、ある程度まで高速化された演算部では処理性能の向上よりも発熱量の増加が上回り、高集積な回路であれば放熱問題に直面して、動作クロックの高速化は現実的でなくなる[5]。

ムーアの法則を基にして、ヴァーナー・ヴィンジやブルース・スターリング、レイ・カーツワイルのような有識者が技術的特異点を部分的に推定している。

しかしながら、2005年4月13日、ゴードン・ムーア自身が、「ムーアの法則は長くは続かないだろう。なぜなら、トランジスタが原子レベルにまで小さくなり限界に達するからである」とインタビューで述べている。

もっとも、横に並べるならば原子の大きさによる限界があるであろう、というのはムーアでなくてもわかることであって、実際に縦方向に並べる研究がさかんに進められている。
(トランジスタの)サイズに関して、我々は基本的な障壁である原子のサイズに到達するであろう。

しかし、その向こう側に行くにはまだ2, 3世代ある。そして、我々が見ることができるよりもさらに向こう側がある。我々が基本的な限界に到達するまでにはあと10〜20年ある。そのときまでには10億を超えるトランジスタを搭載するより巨大なチップを作ることができるだろう[6]。(2005年の発言)

ムーアの法則を今後も時間軸に沿って維持するには、裏に潜む様々な挑戦なしにはなしえない。

集積回路における主要な挑戦のうちの一つは、ナノスケールのトランジスタを用いることで増加する特性のばらつきとリーク電流である。

ばらつきとリーク電流の結果、予測可能な設計マージンはより厳しく、加えてスイッチングしていないにもかかわらず、かなりの電力を消費してしまう。

リーク電力を削減するように適応的かつ統計的に設計すると、CMOSのサイズを縮小するのには非常に困難である。これらの話題は「Leakage in Nanometer CMOS Technologies」によく取り上げられている。サイズを縮小する際に生じる挑戦には以下のものがある。

・トランジスタ内の寄生抵抗および容量の制御
・電気配線の抵抗および容量の削減
・ON/OFFの挙動を制御するためにゲートを終端できる適切なトランジスタ電気的特性の維持
・線端の粗さによる影響の増加
・ドーピングによる変動
・システムレベルでの電力配送
・電力配送における損失を効果的に制御する熱設計
・システム全体における製造コストを常に引き下げるようなあらゆる挑戦

カーツワイルによる推測

ムーアの法則を、カーツワイルが拡張したもの(収穫加速の法則)。集積回路の登場より以前のトランジスタ、真空管、リレー、電気機械式コンピュータまでさかのぼり、基本的なトレンドがパラダイムシフトによって維持されていることが示されている。

カーツワイルの目算は、ムーアの法則が2019年まで継続することにより、将来たった原子2, 3個分にしかない幅のトランジスタがもたらされるというものである。

もちろん、より高精度なフォトリソグラフィーを用いるやり方によって達成できるが、このことはムーアの法則の終わりを意味するものではないと彼は考えている。

カーツワイルいわく、集積回路におけるムーアの法則は、価格対効果を加速する最初のではなく5番目のパラダイムである。

コンピュータは(単位時間当たりの)処理能力はとっくに何倍にもなってきた。

1890年にアメリカの国勢調査で使用されたタビュレーティングマシンからLorenz暗号を破るためのMax Newmanのリレー式計算機”Robinson”、アイゼンハワーの選挙予想に使われたCBSの真空管式コンピュータUNIVAC I、最初の宇宙旅行に使われたトランジスタ式コンピュータ、集積回路を用いたPCへと[7]。

カーツワイルは、なんらかの新しい技術が現在の集積回路技術を置き換え、ムーアの法則は2020年以降もずっと長く維持されるのではないか、と推測している。

つまり彼は、ムーアの法則に沿った技術の指数関数的な成長は、(ムーアの法則の本来の適用範囲である)プロセステクノロジの発展による集積回路の向上に仮に限界があったとしてもそれを乗り越えて、技術的特異点をもたらすまで、今後も続くであろうと信じているのである。

「収穫加速の法則」の中でカーツワイルは、多くの方法によってムーアの法則の一般的な認識は変更されてきたと述べている。ムーアの法則は技術のすべての形を予測すると共通に(しかしそれは誤っているが)信じられている。

たとえそれが実際には半導体回路に関してのみ適用されるものとしてもである。多くの未来学者は、いまだカーツワイルによって力を与えられたこれらの考えを述べるために、「ムーアの法則」という言葉を用いている。

その他

KraussとStarkmanは彼らの論文である「Universal Limits of Computation」で、宇宙に存在するあらゆるシステムの情報処理容量の合計を厳密に見積もった結果、600年という非常に長い期間をムーアの法則の限界と発表した。

この法則は明らかに克服できないように見える障害にしばしば直面したが、すぐにこれらを乗り越えていった。

ムーアは、自分が実現した以上に今やこの法則が美しいものに見える、と述べている。「ムーアの法則はマーフィーの法則に違反している。すべてのものはどんどんよくなっていくのだ。」[8]

コスト

2015年時点で、最新のプロセステクノロジを用いたチップの設計と実用試験には約1億$かかった(2005年には1600万$だった)。新型チップ製造工場の建設には100億$かかった[9]。

他の関心事

コンピュータ関連業界において、ムーアの法則に従って開発が進むのは容量と速度だけではない。

RAMの速度とハードディスクのシークタイムは最高年2, 3%ずつ改善されている。

RAMとハードディスクの容量はそれらの速度と比べて非常に速く増えているので、それらの容量をうまく使うことはますます重要になっている。

多くの場合、処理時間とスペースは交換できることがわかっているので、素早いアクセスを行うために何かしらの方法で処理前にインデックスをつけてデータを格納しておく方法などである。

コストの点で、より多くのディスクやメモリのスペースが使われる。スペースは時間と比べてより安くなっている。

他方、時々間違えてしまうが、指数関数的なハードウェアの改良は、必ずしもそれと同様な指数関数的なソフトウェアの改良を意味するものではないということである。

ソフトウェア開発者の生産性はハードウェアでの進化と共に指数関数的に確実に増えているというわけではなく、たいていの測定では、ゆっくりとまた断続的に増えていく。

ソフトウェアは時間と共により大きく複雑になっていく。ヴィルトの法則では「ソフトウェアは、ハードウェアが高速化するより急速に低速化する。」とさえ述べている。

さらに、もっとも有名な間違った考えは、メガヘルツ神話として知られる、プロセッサのクロック速度が処理速度を決定する、というものである。

これは実際には、単位時間当たりに処理できる命令数にも依存するので(それぞれの命令の複雑さも同様に依存する)、クロック速度は単に2つの同一の回路同士を比較する時にのみ用いることができる。

もちろん、バス幅や周辺回路の速度のような他の要因も考慮に入れなければならない。

それゆえに、もっとも有名な「コンピュータの速度」の評価は、原理を理解しなければ元々バイアスがかかっている。

これは特にPentiumの時代には真実であった。この時は有名なメーカーが速度の普通の認識として、新製品のクロック速度を宣伝するのに力を入れていた[10]。

たいていのよくある並列化されていないアプリケーションのため、マルチコアCPUのトランジスタ密度は実用的な計算能力に反映して増えているというわけではないことに注意することも重要である。

コンピュータの能力を使用する消費者が負担するコストが落ちているが、ムーアの法則を達成するためのメーカーのコストは逆のトレンドをたどっている。

研究開発や製造、テストのコストはチップの世代が新しくなるごとに着実に増えている。
半導体メーカーの設備にかかるコストも増え続けると思われるので、メーカーはよりたくさんより大きくて利益の出るチップを売らなければならない。(180nmのチップをテープアウトするのにかかるコストは約30万ドルであった。90nmのチップをテープアウトするのにかかるコストは75万ドルを超え、65nmでは100万ドルを超えると思われる。)

近年、アナリストたちは先進的なプロセス(0.13umやそれ以下)で「設計開始」された数が減っているのを目の当たりにしている。

2000年以降の景気の低迷の間これらのことが観察されたが、開発の衰退は、長い間世界市場にいた伝統的な半導体メーカーが、経営的にムーアの法則を維持できなくなっていることの証拠であるかもしれない。

しかし、2005年のインテルの報告書では、経営的に安定させながらシリコンチップをダウンサイジングすることは次の十年可能である、としている[11]。

シリコン以外の材料を使用することが増えるとのインテルの予想は2006年中ごろには確かめられ、2009年までにはトライ・ゲート・トランジスタを使用するつもりであるとしている。

IBMとジョージア工科大学の研究者らは、ヘリウムで極低温まで冷却したシリコン/ゲルマニウムチップを500GHzで動作させ、新しい動作記録速度を作った[12]。

チップは4.5K(摂氏マイナス268.65度)で500GHz以上で動作し[13]、シミュレーションの結果では恐らく1THz(1000GHz)で動作することも可能であるとしている。 』

ゴードン・ムーア

ゴードン・ムーア
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B4%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%82%A2

 ※ この人、そもそもは「化学畑」の人だったんだな…。

 ※ 「八人の裏切り者」とか、知らんかった…。

 ※ 「フェアチャイルド」の創設者の一人でもあったんだな…。

『出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
曖昧さ回避 「ゴードン・ムーア (イギリス海軍軍人)」とは別人です。
魚釣りを楽しむゴードン・ムーア(2005年ごろ)

ゴードン・ムーア(Gordon E. Moore, 1929年1月3日 – 2023年3月24日)は、Intel Corporation(インテル)の設立者の一人であり、現名誉会長である(2005年現在)。
経歴

1929年、サンフランシスコ南部の太平洋岸の小さな田舎町で生まれた。中学生の頃におもちゃの実験セットで黒色火薬などを作って遊んでいる内に科学に興味を持ち、高校時代にはニトログリセリンを作ったこともあった。

1946年、サンノゼ州立大学へ進学。専攻は化学、副専攻は数学を学び、1948年に化学の上級カリキュラムを学ぶためカリフォルニア大学バークレー校に転籍し1950年に卒業した。 すぐにカリフォルニア工科大学大学院に進学。赤外線分光学分野の研究で化学博士号を取得した。 卒業後ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所に入社した。しかし研究チームの解散とともに退社した。

1956年、ウィリアム・ショックレー博士に誘われてショックレー半導体研究所に入社。ここで盟友ロバート・ノイスに出会う。だが博士との折り合いの悪さから8人の仲間とともに同社を退社することになる。後にこの時の8人の研究員は「八人の裏切り者」と呼ばれることになる。

起業家アーサー・ロックの支援により、ムーアは仲間とともに1957年にフェアチャイルドセミコンダクターを設立した。1961年にはICの大量生産に乗り出し、60年代半ばには世界最大の半導体メーカーとなった。1963年には同社に面接に来たアンドルー・グローヴを採用している。

しかし会社が大きくなるにつれて人事を巡る問題が生じ、経営陣に強い不満を持っていたノイスと共に会社を去ることになった。そして1968年7月18日にインテルを設立した。翌8月に従業員第一号としてグローヴを採用した。

1979年にはインテル会長に就任。ノイスは副会長、グローヴは社長という体制になった。1979年から1987年までCEO(最高経営責任者)を務め、同社を世界的な半導体メーカーに育てた[1]。

1965年にムーアが唱えた「ムーアの法則」は、半導体産業のガイドライン的な役割を果たすようになる。

2023年3月24日に、米ハワイ州の自宅で94歳で死去した[1]。
受賞歴

1990年 - アメリカ国家技術賞
1997年 - IEEEファウンダーズメダル
2002年 - バウアー賞ビジネスリーダーシップ部門
2003年 - C&C賞
2008年 - IEEE栄誉賞
2010年 - ダン・デイヴィッド賞 』

ゴードン・ムーア氏死去 インテル創業「ムーアの法則」

ゴードン・ムーア氏死去 インテル創業「ムーアの法則」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN250OA0V20C23A3000000/

 ※ 「ムーアの法則」の御大も、死去か…。

『【シリコンバレー=佐藤浩実】米インテルの共同創業者で「ムーアの法則」の提唱者として知られるゴードン・ムーア氏が24日、米ハワイ州の自宅で死去した。同氏の設立した財団とインテルが発表した。94歳だった。

ムーア氏は長年の同僚だったロバート・ノイス氏とともに1968年にインテルを設立。79年から87年まで最高経営責任者(CEO)を務め、同社を世界的な半導体メーカーに育てた。「半導体の集積度は2年ごとに倍増する」という同氏の予測はムーアの法則と呼ばれ、長らく半導体やIT(情報技術)産業の技術革新における指針となった。

インテルCEOのパット・ゲルシンガー氏は「ムーア氏は洞察力と先見性によってテクノロジー産業を定義した。トランジスタの力を明らかにすることに貢献し、数十年にわたって技術者や起業家に着想を与えた」と声明を出した。

1995年2月、日本経済新聞に「私の履歴書」を執筆した。

【関連記事】

・「ムーアの法則」の先へ カギ握る製造装置
・ムーアの法則 限界の先は(2017年掲載)
・ムーアの法則 考案者が語った長期継続の理由と未来(2015年掲載)』

韓国大統領、日米台と半導体で協力 シャトル外交に期待

韓国大統領、日米台と半導体で協力 シャトル外交に期待
書面インタビュー
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM154NH0V10C23A3000000/

『【ソウル=恩地洋介】韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は15日、日本経済新聞などの書面インタビューに応じた。韓国経済を支える半導体産業を巡り、日本と米国、台湾によるサプライチェーン(供給網)協力に期待を示した。日本が強化した韓国向け輸出管理に関しては「政策対話を通じ、解決策が早急に導き出されることを期待する」と指摘した。

韓国は米中対立の先鋭化に伴い、半導体を巡る地政学リスクを意識している。…

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『韓国サムスン電子は15日、政府の支援を受けてソウル市近郊に新たな半導体拠点を建設する計画を公表した。

総額300兆ウォン(約31兆円)の巨額投資で、日本の装置や素材メーカーとの連携にも期待がある。尹政権は2022年5月の発足以来、日米両国と経済安保で連携を強める方針を唱えてきた。

尹氏は「半導体産業を主導する韓国、日本、米国、台湾などの実質的な協力は、国際供給網の安定に寄与する」と指摘。「相互補完的な協力分野を発掘していけば、シナジー(相乗効果)を創出できる」との認識を示した。

歴史問題を巡る日韓の外交対立は経済協力にも影を落とした。日本は19年7月に韓国向け輸出管理を厳格化した。韓国政府が3月6日に元徴用工問題の解決策を発表したことで、両政府は3年ぶりに厳格化の解除に向けた対話を再開する準備に入った。

尹氏は16日に日本を訪れ、岸田文雄首相と会談する。会談では首脳が互いに両国を行き来する「シャトル外交」を提案するとみられる。

インタビューでも「今後も形式や時期にこだわらず随時、意思疎通していくことを希望する」と訴えた。欧州諸国の首脳は問題が生じた際、すぐに互いの国を訪れているとして「約2時間で行き来できる韓国と日本もこのような協議が可能だ」と強調した。

尹氏は日本を「普遍的価値を共有し、安全保障や経済、科学技術、グローバル課題など様々な分野で協力するパートナー」と位置づけた。「韓日間の未来志向的な協力は世界全体の自由、平和、繁栄に貢献すると確信する」と強調し、若い世代の相互訪問が活発になることに期待を示した。

尹氏は17日に日韓の経済団体の会合に参加し、経済安保や先端技術開発などの協力を呼びかける見通しだ。

韓国大統領府の崔相穆(チェ・サンモク)経済首席秘書官は15日、日本との経済協力に関して「供給網のパートナーである日本との関係改善は韓国にとって必須だ。日本との関係が疎遠になり、韓国経済には相当な損失が発生した」と述べた。

書面インタビューは日本経済新聞と朝日新聞、毎日新聞が個別に要請し、韓国大統領府がまとめて回答した。

【関連記事】

・韓国大統領、東アジア「不安定化」警戒 日本と平和貢献
・韓国大統領、徴用工解決「大局的に決断」 日韓の努力促す
・韓国大統領の書面インタビュー要旨

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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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ひとこと解説 半導体は米国が進める民主主義国家陣営による経済安全保障の象徴です。
一方で台湾と並ぶ半導体大国の韓国に対し、日本は2019年以降、半導体材料の輸出管理を強化する措置を続けています。韓国はずいぶん前に日本が指摘した問題点の改善措置を講じており、経済面でも関係を強化するのが相互利益です。

尹錫悦大統領は「モメンタムが失われないうちに」と周囲の慎重論を押し切って6日に元徴用工問題の解決策を発表し、その10日後には来日するという電光石火の展開です。このため首脳会談の共同声明づくりも間に合いませんでしたが、この決断力とスピード感は韓国への疑心を拭いきれない国会議員や世論にも響くのではないかと思います。

2023年3月16日 7:58 』

フォトレジスト・フッ化水素など4年続いた日本の輸出規制も解除へ

フォトレジスト・フッ化水素など4年続いた日本の輸出規制も解除へ
https://japanese.joins.com/JArticle/301712?sectcode=A10&servcode=A00

『 ? 中央日報/中央日報日本語版2023.03.07 06:37

尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が強制徴用問題解決策を発表したことで4年近く続いた日本の対韓輸出規制も解消手続きに入った。韓国政府は日本と早期に協議に乗り出す一方、これまで進めてきた世界貿易機関(WTO)の紛争手続きを中断することにした。産業通商資源部は6日にこうした内容を発表し、日本の経済産業省もこれに呼応する内容を明らかにした。

これに先立ち日本は韓国大法院(最高裁)の強制徴用賠償判決に反発し2019年7月に半導体とディスプレーの核心素材であるフォトレジスト、フッ化水素、フッ化ポリイミドの3品目の輸出統制に出た。8月には輸出管理優遇対象国である「ホワイト国」から韓国を除外した。これを受け韓国は9月に日本の輸出規制措置をWTOに提訴した。

日本政府はこうした規制措置緩和を議論する韓日間の輸出管理政策対話を近く開催することにした。産業通商資源部のカン・ガムチャン貿易安保政策官は「WTO提訴撤回ではなく暫定中止。提訴撤回は(輸出規制関連の)協議が完了した後にされるとみるが、両国政府がこれを同時に発表することもできる」と話した。

輸出規制が解除されても韓国企業にすぐ利益になる状況ではない。これまで輸入先多角化と素材・部品・装備の国産化などで半導体生産に大きな問題は出ていないためだ。ただ供給網強化、国内投資拡大のような効果を期待する声は大きい。全経連など経済6団体は共同声明を通じ「韓日関係改善と経済協力がさらに拡大することを期待する」として歓迎した。中小企業中央会の金基文(キム・ギムン)会長はこの日「韓国の素材・部品・装備産業が多く育成されたというが、日本は基本技術とノウハウが多い。日本の中小企業・専門企業と取引と交流を多くできるようにしたい」と話した。』

半導体装置、オランダも輸出規制へ 中国念頭、米国と足並み

半導体装置、オランダも輸出規制へ 中国念頭、米国と足並み
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023030901023&g=int

『【ブリュッセル時事】オランダ政府が半導体製造装置の輸出規制を今夏までに導入する方針を固めたことが、9日までに明らかになった。中国を念頭に、先端技術の軍事転用を阻止するのが狙い。既に対中輸出規制を強化している米国と足並みをそろえる格好となる。

対中投資規制で連携模索 米主導、G7で議論―報道

 今回の規制方針は、スフレイネマーヘル貿易・開発協力相が議会に宛てた書簡で判明した。オランダが強みを持つ深紫外線(DUV)露光装置などが対象となる。同国は既に、最先端の極端紫外線(EUV)露光装置の対中輸出を規制している。

 オランダ半導体製造装置大手ASMLは8日の声明で、規制の影響が及ぶと認めたが、今後の業績見通しに影響はないとの認識を示した。 』

ワケありだった中国工場、インテルは韓国SKハイニックスにババを掴ませたのか

ワケありだった中国工場、インテルは韓国SKハイニックスにババを掴ませたのか
韓国半導体メーカーが大不況と米国の対中政策のダブルパンチで危機に直面
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74157

 ※ 補助金政策や、外国企業抑制策など、「政策の動向」は、企業活動に大きな影響を与える…。

 ※ その「動向」を掴んでおくことは、必須となる…。

 ※ そして、そういう「機微情報」を掴むには、「政権中枢」にどれだけ「喰い込んでいる」のかが、「圧倒的に重要」となる…。

『(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

 韓国の2大半導体メーカー、サムスン電子(Samsung Electronics)およびSKハイニックス(SK hynix)は、2022年の世界半導体メーカー売上高ランキングで(台湾TSMCをランキングに入れなければ)、それぞれ1位および3位となった(図1)。
図1 2022年の半導体メーカー売上高ランキング・トップ10
出所:Gartner(2023年1月17日)の発表データ
ギャラリーページへ

【本記事は多数の図版を掲載しています。配信先のサイトでご覧になっていて図版が表示されていない場合は、JBpressのサイトでご覧ください。】

 そのサムスン電子とSKハイニックスが苦境に直面している。苦境の原因は以下の2つである。

(1)コロナ特需の終焉による大不況
(2)米国の半導体政策による悪影響

 今のところ、サムスン電子とSKハイニックスは、世界1位と3位に位置しているが、上記の問題への対処によっては、ランキングの上位から滑り落ちるだけでなく、企業存亡の危機に立つ可能性もある。それほど事態は深刻である。

 特に、2020年10月20日に90億ドルで米インテルのNANDフラッシュメモリ事業を買収したSKハイニックスの先行きはかなり厳しい。そして、この買収は、もしかしたらインテルの策略によって、SKハイニックスがババをつかまされたのではないかと勘繰っている。

 以下では、サムスン電子とSKハイニックスが直面している2つの苦境について説明し、その上で、SKハイニックスが貧乏くじを引いたかもしれない推測を論じる。』

(※ 以下省略。一部を抜粋して、紹介)

『それともう一つ、大きな出来事がある。2020年10月20日に、SKハイニックスが90億ドルで、インテルのNAND事業を買収することが発表された。インテルのNANDは、中国の大連工場で生産している。この買収の第1段階として、2021年12月22日に、インテルのSSD事業と大連工場の譲渡が完了した。第2段階は、設計、R&D、IPなどを2025年3月までに買収することになっている。

 このように集約されつつあるNAND市場であるが、2022年Q3のシェアは大きい順に、サムスン電子が31.4%、キオクシアが20.6%、インテルを買収したSK hynixが18.5%、WDが12.6%、マイクロンが12.3%、中国のYMTCが約4%となっている。』

『ところが一つ大きな問題が浮上した。それは、CHIPS法と同時に、「CHIPS法は、コストを削減し、雇用を創出し、サプライチェーンを強化し、中国に対抗する」と題したファクトシートが発表され、それには強力な『ガードレール』がついていることが明らかになったことにある。

 その『ガードレール』では、米国半導体産業の競争力を保護することを確実にするため、「補助金を受ける企業はその後10年間、中国の最先端のチップ製造施設(28nm以降)に投資/拡張することを禁じている」のである。

 この『ガードレール』によって、中国南京工場で40~16nmのロジック半導体を生産しているTSMC、中国西安工場で3次元NANDを生産しているサムスン電子、中国無錫(むしゃく)工場でDRAMを生産し、インテルから買収した中国大連工場で3次元NANDを生産しているSKハイニックスは、CHIPS法に基づいて補助金を受け取った場合、向こう10年間、上記の中国工場に一切の投資ができなくなる(1年間の猶予を与えられたが、本質的な解決策にはならない)。』

『この中で、TSMCにおける中国南京工場の割合は同社の10%にも満たないが、サムスン電子の西安工場で生産する3次元NANDは同社の約40%を占める。また、SKハイニックスの大連工場で生産する3次元NANDは同社の約30%、無錫工場で生産するDRAMは同社の約50%を占める。

 もし、サムスン電子とSKハイニックスがCHIPS法による補助金を受け取ってしまうと、中国にあるメモリ工場に先端投資も増産投資もできなくなる。半導体メモリは、2年で一世代先端に進むことにより競争力を維持している。そのため、メモリメーカーに「投資するな」というのは、「死ね」と言われるに等しい。従って、これら韓国メーカーは、中国から撤退することも検討せざるを得ない状況に陥った。』

『つまり、CHIPS法による補助金を受け取ろうと、受け取るまいと、米国による「2022・10・7」規制によって、サムスン電子とSKハイニックスは中国工場で先端メモリを生産できなくなるということだ。したがって、サムスン電子とSKハイニックスは、本当に中国から撤退せざるを得ないかもしれない。』

『インテルの大連工場売却は謀略?

 恐らく、SKハイニックスは、インテルの大連工場を買収したことを後悔しているのではないか。いや、もっと突っ込んだ見方をすると、インテルは、米国の半導体政策の内容を知ってしまったために、中国の大連工場を売却することにしたのではないか。「大連に工場を持っていても良いことがない」ことが分かってしまったからだ。

 インテルは、2010年に大連工場を立ち上げた。最初は、プロセッサ用だったが、後に最先端の3次元NANDに切り替えた。インテルは、大学に寄附講座をつくるなどして、中国で優秀な技術者を育成しようとした。インテルは、そのような努力を10年以上してきたにもかかわらず、いとも簡単に大連工場をSKハイニックスに売却したわけである。そこには、やはり、ワケがあると考えたくなるものだ。

 結果的に、SKハイニックスは、大連工場というババをつかまされてしまった。その上、SKハイニックスのDRAMの半分を生産している無錫工場も撤退せざるを得ないかもしれない。

 SKハイニックスが、いくら世界半導体売上高ランキングで3位といっても、大不況により赤字に転落し、今後、ドル箱だった中国のメモリ工場を閉じなくてはならないとなると、先行きは暗い。SKハイニックスの明日はどうなる?』

中国、半導体企業を支援 「国家安全に影響」

中国、半導体企業を支援 「国家安全に影響」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM034JR0T00C23A3000000/

『【北京=多部田俊輔】中国の劉鶴(リュウ・ハァ)副首相は2日、中国の半導体企業などを集めた会合を開いた。中国受託生産最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)の北京工場を視察し、米国の禁輸措置が事業運営に与える影響などを聴取した。劉氏は半導体は国家安全に関わる国内産業の核心だと指摘し、運営上の課題解消を支援する方針を打ち出した。

中国国営の新華社が伝えた。劉氏は会合で「習近平(シー・ジンピン)総書記…

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『劉氏は会合で「習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)は半導体産業の発展を高く重視している」と述べた。米政府が中国の半導体企業を次々と禁輸対象にしていることを受け、政府として支援に乗り出す姿勢を強調した。

習指導部の下で企業や研究機関が総力を挙げて半導体産業を育成する「新型挙国体制」を構築する。政府と市場が連携して長期投資を引き出し、人材育成も支援する。外国籍の専門家にも中国国民と同等の待遇を与える。

劉氏は半導体産業を育成する利点として市場の大きさと用途の広がりを指摘。半導体サプライチェーン(供給網)もほぼ整ったと述べた。

米中対立の先鋭化により中国側の先端技術には影響が出ている。

半導体大手の長江存儲科技(YMTC)や長鑫存儲技術(CXMT)は米国の禁輸措置によって工場建設が遅れ、外国籍人材も流出した。SMICが建設中の新工場は成熟技術を用いた生産設備にとどまる。

中国の半導体業界団体は2月、米国がオランダと日本に同調を呼びかけている先端半導体の対中輸出規制について「現実になれば中国の半導体産業に深刻な被害を与える」と反対声明を出した。』

米国、中国の遺伝子企業など禁輸 ウイグル弾圧関与で

米国、中国の遺伝子企業など禁輸 ウイグル弾圧関与で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN033KJ0T00C23A3000000/

 ※ 「竜芯中科技術も入った」か…。

 ※ これで、x86互換のCPUを「独自開発」する道は、ほぼ断たれたな…。

 ※ まあ、既に、パソコンのOSは、TPM絡みで、Windows11以降は、独自開発は、ほぼ閉ざされたも同然だったんだが…。

 ※ 半導体チップも、CPUも、OSも、全ては「米国の管理」下に置かれるわけだ…。

 ※ 他国が開発した「技術」を、使用する限り、こういうことになる…。

『2023年3月3日 22:35 [有料会員限定]

【ワシントン=飛田臨太郎】米政府は2日、原則輸出を禁止する企業リストに中国の遺伝子データやクラウドを扱う企業を加えた。ウイグル族など少数民族の弾圧や軍事転用に制裁を加える狙いがある。対中輸出規制の業種が拡大し、先端技術を巡る米中の分断は一段と加速する。

新たに28の中国企業や団体、個人を「エンティティー・リスト」に入れた。遺伝子解析大手の華大基因(BGI)の関連事業者BGIリサーチやBGIテック…

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『遺伝子解析大手の華大基因(BGI)の関連事業者BGIリサーチやBGIテック・ソリューションズ、サーバー大手の浪潮集団(インスパー)などが含まれる。CPU(中央演算処理装置)メーカーの竜芯中科技術も入った。

米企業が輸出する場合は米商務省の許可が必要となり、企業の申請は原則却下する方針だ。商務省のアクセルロッド次官補は「敵対国が人権侵害やその他の抑圧行為を行うために技術を悪用・乱用することを許すわけにはいかない」と強調した。

米政府は遺伝子データがウイグル族の住民を追跡するのに利用されているとみる。商務省はBGIを「中国政府による監視にくみし少数民族弾圧に使われる危険性が高い」と断じた。インスパーは「中国の軍事力近代化を支援するため米製品を取得したり、試みたりした」と説明した。

中国株式市場では対中禁輸を嫌気する売りが膨らんだ。インスパーの主要上場子会社である浪潮電子信息産業(インスパー・エレクトロニック・インフォメーション・インダストリー)は3日の深圳株式市場で制限値幅の下限である前日比10%安まで売られた。

香港株式市場に上場する浪潮数字企業技術(インスパー・デジタル・エンタープライズ・テクノロジー)も一時同17%超安と急落した。

バイデン政権は昨年10月、先端半導体を巡り中国全体を対象に輸出規制を導入した。先端半導体が最新軍事品の開発競争に直結するためだ。

米政府は半導体以外でも対応を進める。エステベズ商務次官は「テクノロジーが軍事力の原動力となる世界にいる。バイオテクノロジーや量子で敵からの脅威を阻止する必要がある」と話す。

商務省によると2月末時点でエンティティー・リストに639を超える中国拠点の企業・団体を掲載している。2021年に発足したバイデン政権下で155を超える企業・団体を追加した。

エンティティー・リストは19年5月に華為技術(ファーウェイ)を禁輸対象に指定して以降に急増した。対象産業の範囲は拡大し、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン)や太陽光パネル企業も加わった。スーパーコンピューターやドローン関連も対象入りした。

バイデン政権は人権弾圧や軍事転用の懸念がある場合、業態に限らず輸出規制の対象とする方針だ。レモンド商務長官は2日、米メディアのインタビューで年内の訪中を検討していると明かしたが、対話の機運は盛り上がっていない。

米政府は2日、中国以外にミャンマーやロシアなどの事業者を含む計約40の企業・団体をエンティティー・リストに加えた。』

ファーウェイへの全面禁輸 米政府高官が検討示唆

ファーウェイへの全面禁輸 米政府高官が検討示唆
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN010HX0R00C23A3000000/

『【ワシントン=飛田臨太郎】米政府高官は28日、華為技術(ファーウェイ)への輸出を全面的に禁じる措置を検討していると示唆した。エステベズ商務次官が下院外交委員会の公聴会で規制の見直しに言及し「全て検証中だ」と語った。全面禁止が実現すれば、取引を続けている幅広い企業に影響が及ぶ。

米商務省はファーウェイを原則、輸出禁止とする「エンティティー・リスト」に加えているものの、安全保障の懸念が生じない品目は…

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『エステベズ氏は公聴会で「米国の機密技術が悪意ある人物の手に渡るのを防ぐために全力を尽くす」と強調した。「輸出管理政策の見直しを続け、脅威の環境を評価する」と説明した。

バイデン政権は中国の偵察気球が米領空を侵犯した問題を受け、通信傍受の技術流出に一段と神経をとがらせる。汎用品の半導体であってもスパイや軍事活動に使われる例がある。先端技術に焦点をあててきた米政府の輸出規制がさらに拡大する可能性がある。』

米、半導体補助金の受付開始 中国生産10年禁止が条件

米、半導体補助金の受付開始 中国生産10年禁止が条件
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN010870R00C23A3000000/

『【ワシントン=飛田臨太郎】バイデン米政権は28日、半導体の国内生産を増やすための補助金を巡り、390億ドル(約5.3兆円)分の申請受け付けを開始すると発表した。申請する条件として、10年間、中国への関連投資を禁じる。中国への輸出規制と合わせ、半導体の米中分断が一段と深まる。

半導体補助金は昨年8月に成立した関連法に盛り込まれた。総額は527億ドルに及び、今回は第1弾として製造を対象にする。最先端のロジックやメモリーチップの生産拡大を目指す。研究開発向けの補助金は今秋に始める。

米商務省は28日、申請の条件を指針として示した。中国との取引を大幅に制限するのが柱となる。中国を中心に安全保障上の懸念がある外国企業と共同研究をしたり技術提供をしたりした場合は全額返金を求める。

1.5億ドル以上の資金を受け取る企業は、事前予測を超えた収益がでた場合には政府に一部を返還する。自社株買いや配当金に使用するのも禁じる。女性労働者が働きやすいように保育サービスの整備も求める。

補助金の受給を見こして、既に多くの企業が米国で投資を始めている。半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)はアリゾナ州で高性能の「4ナノ(ナノは10億分の1)品」を生産する。同州の総投資額は400億ドルで、米国では過去最大級の海外投資になる。

米インテルや韓国サムスン電子も生産を拡大する。レモンド商務長官は日本企業にも活用を呼びかける。同氏は「我々の目標は、最先端のチップを生産できる全ての企業が米国内で大規模に生産をおこなう唯一の国にすることだ」と強調する。

巨額補助金は先端半導体の優位性で中国を上回るための戦略の一環だ。商務省によると、中国は過去2年間、ある特定チップの生産能力で世界の80%以上を占めたという。米国は1990年に世界のチップ生産の約4割を占めていたが、現在は1割に落ちた。輸出規制で中国への技術流出を抑え、補助金で米国への技術流入を進める。

米国の動きは補助金合戦を誘発している。欧州連合(EU)は1345億ユーロ(約20兆円)を拠出する計画だ。日本も累計2兆円規模の補助を打ち出し、国内投資を支援する。

もともと中国は25年に自給率を70%まで高める国家目標を掲げ、巨額の補助金を投入してきた経緯がある。米欧日も中国式に追随する形で、世界の半導体生産には保護主義の懸念が強まっている。TSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏は昨年末、アリゾナ州の工場建設を祝う式典で「地政学的な変化があった。自由貿易はほぼ死んだ」と言及した。

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