ゴードン・ムーア氏逝去の報に考える、ムーアの法則は死んだか、今でも生きているのか?

ゴードン・ムーア氏逝去の報に考える、ムーアの法則は死んだか、今でも生きているのか?
https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/ubiq/1488545.html

『 笠原 一輝 2023年3月28日 06:16

Intelとゴードン・ベティ・ムーア財団から、Intelの共同創始者であるゴードン・ムーア氏が3月24日に94歳で他界されたことが発表された。既にムーア氏は実業から引退し、ハワイ州で余生を過ごされている中での死だったと発表されている。

 そうしたムーア氏は、1968年にシリコンバレーの創業期にフェアチャイルド・セミコンダクターで一緒に働いていてロバート・ノイス氏と共同でIntelを創業し、そしてフェアチャイルドで部下だったアンディ・グローブ氏を加えて、3人でIntelを世界最大の半導体メーカーに育てあげた。

ムーア氏の功績はまさに半導体産業を今の規模にしたことにあると言ってよく、その功績を心からたたえ、ご冥福をお祈りしたい。

 そのムーア氏の名前を一躍有名にしたのは、「ムーアの法則」と呼ばれる「半導体メーカーにとって、1年から2年でトランジスタの密度を2倍にすることが、経済的合理性がある」という経済原則を提唱したことだ。そのムーアの法則は、ムーア氏自身が語った「経済的な合理性」という意味を超えて、「2年でトランジスタが2倍になる」という法則だと解釈されて使われることが多い。

 ムーアの法則は今後も半導体産業の原則であり続けるのか、IntelのリーダーであるIntel CEO パット・ゲルシンガー氏は「ムーアの法則はまだ生きている」と言っており、その競合となるNVIDIAのジェンスン・フアンCEOは「ムーアの法則は死んだ」と言っている。そうした違いが出てくる背景には何があるのだろうか?

ロバート・ノイス氏とIntelを創業し、アンディ・グローブ氏とともにIntelを大きくしたゴードン・ムーア氏

Intel本社でかつての盟友の名前を冠した「ロバート・ノイス・ビルディング」に入るゴードン・ムーア氏(写真提供:Intel)

 ゴードン・ムーア氏は、シリコンバレー創世記に半導体メーカーとして知られていた「フェアチャイルド・セミコンダクター」で一緒に働いていたロバート・ノイス氏と共同で、1968年にIntelを創業した。

Intelという社名は「Integrated」(統合)、Electronics(電気)などの言葉から創造された(とされている)社名で、常に同社の半導体には、新しい機能を半導体に統合していく、そうしたビジョンがこめられている。

 1979年からは社長になり、1987年からはCEOとして1997年までIntelを引っ張ってきた。その時期にはフェアチャイルド・セミコンダクターで部下だったアンディ・グローブ氏が社長となり、テックカンパニーとしてのビジョンをムーア氏が、そして日々の会社の運営はグローブ氏がという形でIntelを引っ張ってきた。

 Intelの公式な社史ではノイス氏とムーア氏が共同創業者とされているが、実質的にIntelが現在のような巨大な企業になったのはムーアCEOとグローブ社長の時代で、グローブ氏を加えた「Intel三人衆」(Intel Trinity)を実質的な創業者と見なす人が多い。

その観点で創業時のIntelの社史を書いた書籍が「The Intel Trinity」(マイケル・マローン著、邦題:インテル 世界で最も重要な会社の産業史、文藝春秋刊)に詳しいので、ご興味がある方はぜひそちらを、お読みいただくことをおすすめしたい。

Intel三人衆(Intel Trinity)となるゴードン・ムーア氏(左)、ロバート・ノイス氏(中央)、アンディ・グローブ氏(右)(写真提供:Intel)

 ノイス氏、ムーア氏、そしてグローブ氏の3人(1987年にノイス氏が急逝されて以降は2人)がIntelをリードしていた時代に、Intelは何度か大きな危機を迎えている。

その代表的な例は、1980年代の前半にそれまでIntelの主力製品だったDRAMが、日本の半導体メーカーの勃興により競争力がなくなるという事態だ。

 Intelは創業期から、他社よりも大容量で高速なDRAMを最先端の製造技術を活用して製造して提供するというのがビジネスモデルだった。

しかし、DRAMは今でもそうだがコモディティ製品(誰にでも作れる一般的な製品)であったため、当時米国などに比べて人件費などが安かった日本の半導体メーカーに対して競争力を失いつつあったのだ。

 そこで、ノイス氏、ムーア氏とグローブ氏は、創業時の事業であったDRAM事業から大胆に撤退し、当時IBM PCに採用されるなどしていた「8086」などのロジック半導体に社運をかけることに決定した。

 その後8086の後継製品になる80286、Intel 386、Intel 486などをリリースしていき、MicrosoftのMS-DOS/Windowsの普及と一緒にIBM PC互換機市場で大きく市場していく中で、世界最大の半導体メーカーに成長していった。

そのため、両社の主力製品(Windows)と社名(Intel)を合わせて「Wintel」(ウインテル)と冷やかされるほど、強いプラットフォームを作り上げていったことは、PCの発展期をご存じの方には周知の事実だろう。

 ムーア氏、ノイス氏とグローブ氏の3人が下した「創業の事業であるDRAMから撤退する」という難しい決断は、その後のIntelの勢いを作っていったことを考えれば、グローブ氏が好んで使っていた「戦略的転換点(ストラテジック・インフレクション・ポイント、市場などで発生する環境変化のこと)」で企業の方針を急転換させるという難しい判断を迫られている中で、正しい判断を下したというのが、その後の歴史が示す事実だ。

 前出の「The Intel Trinity」の中で、奇抜ですぐに新しいことをやりたがるロバート・ノイス氏、そして自分にも部下にも厳しかったアンディ・グローブ氏とは対照的に、ゴードン・ムーア氏は論争を好まずいつもニコニコしていながら大胆な判断を下す時にはそれに賛成するというエンジニア出身の経営者として描かれている。

 以前、VMwareのCEOを務めていた時代のパット・ゲルシンガー氏(現Intel CEO)にムーア氏のことを伺ったときに「ゴードンはいつもボロボロの車をベティと2人で乗っていて、これで十分なのだと言っていた」と説明してくれたことがある。

そうした非常につつましい生活を、億万長者になった後でもしていたと聞いている。そうした姿勢が引退後の活動にも現われており、ゴードン・ベティ・ムーア財団(Gordon and Betty Moore Foundation)を設立し、未来を切り開く変化への投資、未来を作る若者への投資などを行なう社会奉仕活動などに資産を使っていった。

 スーパーカーを乗り回すよりも、未来を作る実現する活動に自分の資産を費やす、ムーア氏の人生とはまさに「ノブレス・オブリージュ」(高貴な立場が行なうべき徳のある行動)を体現したような人生だったと言っていいだろう。

ムーア氏が提唱した「ムーアの法則」と「ムーア氏が言っていないムーアの法則」があり、一般的には後者が流布されている

 そうしたゴードン・ムーア氏の名前を有名にしたのは、まだIntelを創業する前に同氏が当時の産業紙に寄稿した、後に「ムーアの法則」と呼ばれることになる経済原則だ。

この「ムーアの法則」に関する話でよく覚えているのは、2003年のISSCCだったと思うのだが、当時Intelの名誉会長職を務めていたムーア氏がISSCCの講演に登壇し、会場に詰めかけた半導体産業関係者の質問に答えていた時のことだ。

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 ムーア氏は「私は一度も2年で半導体の性能が倍になるなんていっていない、ただ、1年から2年の間にトランジスタが倍になるように計画していくことが、半導体メーカーにとって経済的な合理性があると言っただけだ」と述べ、会場を笑わせていた。

 さらに、「自分はムーアの法則なんてことは言っていないし、それはマーケティング関係者が都合よいからそう使っているだけだ」とも述べ、ほとんどが半導体産業のエンジニアであるISSCCの参加者を大いに沸かせた。

 というのも、一般的に流布されているムーアの法則というのは「2年で半導体の性能が倍になる」というものであって、2年で半導体の性能が倍になっていくことがムーア氏の予測だと受け取られているからだ(そしてそれは今も続いている)。

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 ムーア氏が言っていたのは、1年~2年の間に1つのチップに詰め込めるトランジスタの数(トランジスタの集積率)が倍になるように、製造技術(プロセスノード)を開発し、工場に投資していくことが、半導体メーカーの収益にとって合理的ということであって、決して2年で性能が倍になるなんてことはいっていないのだ。

ムーア氏が「自分はそもそも“ムーアの法則”なんて言っていない」と言っていたのはそういう意味だ(以下2年で性能が倍になるという一般的に信じられているムーアの法則を「ムーア氏は言っていないムーアの法則」と呼ぶことにする)。

 しかし、受け取る側、特にマーケティングの担当者にとっては「半導体の性能は2年で倍になるのです、だからそれに従って製品を開発しましょう」と自分の顧客に説明する方が、都合が良いのは言うまでもない。

 実際のところ、2010年代の前半ぐらいまでは、若干のズレはあっても、2年に1度は新しいプロセスノードを導入して、その度に必ず2倍と言わなくても、それに近いトランジスタの数を増やし続けてきた。その意味で、ムーア氏の言うところも「ムーア氏は言っていないムーアの法則」はその通りに実現されてきたのだ。

 しかし、2010年代に入って、「ムーア氏は言っていないムーアの法則」は機能しなくなる。プロセスノードの研究開発がやや停滞したこともあり、2年で性能が倍は実現されなくなっている。

 Intelのプロセスノードで言うと、22nmは2012年に出荷開始し、14nmは2015年に出荷を開始したので約3年、その14nmから10nmへ移行を開始したのは2019年と4年もかかってしまっている。

さらに、EUVの技術が導入される7nm(今ではIntel 4に改名されている)は、ようやく今年の後半に出荷されるMeteor Lakeで出荷開始されるため、こちらも4年かかっている。

このように、Intelの例で見れば、ムーア氏が言っていないムーアの法則はもはや実現されていないのが現実だ。

NVIDIAのフアンCEOは「ムーア氏は言っていないムーアの法則」はもはや死んだと強調
NVIDIA CEO ジェンスン・フアン氏(先週GTCの記者会見で撮影)

 先週開催されたNVIDIAの年次イベント「GTC」の会期中に、筆者などのメディア関係者からの質疑応答に応じたNVIDIAのジェンスン・フアン氏は「ムーアの法則は既に死んだ。これからはアクセラレーテッドコンピューティングがAIを実現するコンピューティング環境を進化させていく」と述べ、もはやムーアの法則は死に、これからはGPUのようなCPUとはことなる、別種類のプロセッサで10倍、20倍といった性能の向上を実現していく必要があると強調した。

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 フアン氏は「ムーアの法則を言い換えれば、同じコストで同じ消費電力であれば性能が2倍になるという考え方だったと言っていい。だが、もはやそのペースで製造技術は進化していない、その意味でムーアの法則は死んだのだ」と述べた。その上で、GPUのようなCPUとは異なるプロセッサを異種混合(ヘテロジニアス)に使っていくことが、今後も2倍上のペースで性能を伸ばしていく唯一の道だ、と強調した。

 ここで注意したいのはフアン氏が死んだといっているムーアの法則は筆者の定義するところの「ムーア氏は言っていないムーアの法則」の方だということだ。先ほどIntelのプロセスノードの例でも分かるように、既にプロセスノードの進化は4年に1度になっているのがこの10年だということは繰り返すまでもないだろう。2年に1度のペースでは進化できていないのだから、フアン氏が「ムーア氏は言っていないムーアの法則は死んだ」というのはまったくその通りだと思う。

 フアン氏が言いたいのは「半導体製造技術は前のようなスピードでは進化していない、それに頼っていては性能を上げることは難しくなっているから、アーキテクチャを劇的に変えて性能を上げていく必要がある、その答えが“GPU”だ」ということにあると考えられるだろう。

 Intelだってそう思うからこそ、Intel Data Center GPU Max(Ponte Vecchio)のような製品を開発し、CUDAの対抗になるようなoneAPIを開発して普及を目指しているのだ。

そのように、Intelでさえ、NVIDIAを後追いしているような現状を考えれば、HPCのような市場ではまさに「フアンの法則」(GPUのような異なるアーキテクチャで10倍、20倍を実現していくとフアン氏が説明していること)が支配しているといって過言ではないだろう。

IntelのゲルシンガーCEOは、4年間で5つのプロセスノードを投入するなど「ムーアの法則」に従ったロードマップで勝負
Intel CEO パット・ゲルシンガー氏(昨年5月のVisionで撮影)

 それに対して、そのムーア氏の直系の後継者となるIntel CEOのパット・ゲルシンガー氏は「ムーアの法則はまだ生きている(Moore’s law is still alive)。そしてより良くなっている」と昨年9月に語っている。「フアンの法則」で「ムーアの法則は死んだ」と言われているのに、なぜゲルシンガー氏はそれが生きているといっているのだろうか?

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 勘のいい人はもう分かったと思うが、ゲルシンガー氏が言っている「ムーアの法則はまだ生きている」は、ムーア氏が本当に言っていた「ムーアの法則」(1年から2年でトランジスタの集積率が倍になるのが経済的な合理性がある)の方だからだ。

 どういうことかと言うと、ゲルシンガー氏は2021年にIntelにCEOとして復帰して以来、新しい戦略をどんどん打ち出しており、それを着々と実行してきている。

そのゲルシンガー氏の新戦略の肝となるのが「IDM 2.0」という進化したIDM(Integrated Device Manufacturer)というビジネスモデルだ。

 IDMとは、Intelのように半導体の設計と製造の両方をやっている半導体メーカーを示す言葉だ。IDMの対義語となるのが「ファブレス・メーカー」で、NVIDIAやAMDのようにTSMCなどのファウンドリ(受託製造半導体メーカー)に委託して製造している半導体メーカーのことを意味している。

 IDM 2.0とは進化したIDMという意味で、その根幹をなしているのは「Intel Foundry Services(IFS)」と呼ばれる、Intelが自社製品向けだけでなく、他社の半導体を製造するファウンドリも兼ねるということにある。

自社だけでは製造する半導体の数に限界がある、それが従来のIDMの弱点だった。

IDM 2.0ではファウンドリビジネスを行なうことで、極端に言えば競合メーカーの製造をも行なうことで、「数」を確保して、他のファウンドリーとの競争に打ち勝っていく、それが基本戦略だ。

 このIFSにおいて、TSMCやSamsungといったほかのファウンドリとの差別化を実現するため、今Intelはプロセスノードの開発に力を入れている。

それが「4年間で5つのプロセスノードを導入する」という戦略で、Intel 7(従来の10nm Enhanced SuperFin)、Intel 4(従来の7nm)、Intel 3、Intel 20A、Intel 18Aという5つのプロセスノードを4年間で次々に投入するという意欲的なプランだ。

 Intel 4とIntel 3、Intel 20AとIntel 18Aは従来のIntelのプロセスノード世代の数え方だと同じ世代と言ってよいので、4年で2つの世代と換算すると、まさにムーア氏の言っていた「ムーアの法則」に従っている、つまりムーアの法則の復興にほかならない。

 この4年間で5つのノードという計画を計画通りに実行できれば、TSMCやSamsungをIntelが追い越して半導体製造技術でナンバーワンに返り咲き、ファウンドリーの顧客を増やして、再び規模でもIntelの製造部門がTSMCやSamsungを追い越していく……今Intelが取り組んでいるIDM 2.0というのはそういう壮大なプランなのだ。

そうしたプランを推進している、Intelのリーダーであるゲルシンガー氏が「ムーアの法則はまだ生きている、よりよくなっていく」と言うのはある意味当然だろう。
両者ともにゴードン・ムーア氏が実現しようとしていた未来を作ろうという姿勢では共通
 つまり、どちらも言っていることは正しいが、使っているレイヤー(アーキテクチャか製造か)の違いが「ムーアの法則は死んだ」(フアン氏)、「ムーアの法則は生きている」(ゲルシンガー氏)という違いにつながっていると考えられる。

 NVIDIAのフアン氏が言っているのは、半導体をファウンドリに製造してもらうファブレス半導体メーカーとしての立場で、「半導体を製造しているファウンドリやIDMは既に2年で性能が倍になることは実現できていないじゃないか」ということだ。

だからこそ、その上のレイヤーであるマイクロアーキテクチャを工夫することで、対処していかないと性能は上げられないし、電力効率も改善できない、そういうことだ。

 それに対してIntelのゲルシンガー氏が言っていることは、IDMとして、そしてこれからはファウンドリとして、TSMCやSamsungといった、いつのまにかIntelを追い越していったファウンドリから再び首位の座を奪い返すという目的のために、IDM 2.0を実現する「経済的な合理性がある法則」として「ムーアの法則」を手段として実現していくという話に他ならない。だからゲルシンガー氏が「ムーアの法則はまだ生きている」というのは当然だ。

 そこはファブレスのNVIDIAとIDMのIntelのビジネスモデルの違いと言えばいいだろう。
ただ、半導体業界の記者として両者を多数取材したことがある記者として感じることは、フアン氏にせよ、ゲルシンガー氏にせよ共に共通していることは、どちらもムーア氏の志である「半導体を使ってより良い未来を作る」という根本的なビジョンを共有していることだ。

 部下として直接薫陶を受けたゲルシンガー氏はもちろんのこと、Intelの競合メーカーを一代で構築したフアン氏も、生前のムーア氏が実現しようとしていた「技術で社会をより良くしていく、人々に幸せを提供する」という姿勢では首尾一貫している。

その手段は立場の違いもあって違う(ムーアの法則を肯定するか、否定するかの違い)が、目指すところはムーア氏が実現しようとしていた「未来」であることが、ムーア氏の生前の業績への、最大の称賛ではないか、と筆者は感じている。

 最後になるが、ゴードン・ムーア氏の逝去に、ご遺族の皆さまに心からお悔やみを申し上げ、ご冥福をお祈りし、この記事のまとめとしたい。』

韓国大統領、日米台と半導体で協力 シャトル外交に期待

韓国大統領、日米台と半導体で協力 シャトル外交に期待
書面インタビュー
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM154NH0V10C23A3000000/

『【ソウル=恩地洋介】韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は15日、日本経済新聞などの書面インタビューに応じた。韓国経済を支える半導体産業を巡り、日本と米国、台湾によるサプライチェーン(供給網)協力に期待を示した。日本が強化した韓国向け輸出管理に関しては「政策対話を通じ、解決策が早急に導き出されることを期待する」と指摘した。

韓国は米中対立の先鋭化に伴い、半導体を巡る地政学リスクを意識している。…

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『韓国サムスン電子は15日、政府の支援を受けてソウル市近郊に新たな半導体拠点を建設する計画を公表した。

総額300兆ウォン(約31兆円)の巨額投資で、日本の装置や素材メーカーとの連携にも期待がある。尹政権は2022年5月の発足以来、日米両国と経済安保で連携を強める方針を唱えてきた。

尹氏は「半導体産業を主導する韓国、日本、米国、台湾などの実質的な協力は、国際供給網の安定に寄与する」と指摘。「相互補完的な協力分野を発掘していけば、シナジー(相乗効果)を創出できる」との認識を示した。

歴史問題を巡る日韓の外交対立は経済協力にも影を落とした。日本は19年7月に韓国向け輸出管理を厳格化した。韓国政府が3月6日に元徴用工問題の解決策を発表したことで、両政府は3年ぶりに厳格化の解除に向けた対話を再開する準備に入った。

尹氏は16日に日本を訪れ、岸田文雄首相と会談する。会談では首脳が互いに両国を行き来する「シャトル外交」を提案するとみられる。

インタビューでも「今後も形式や時期にこだわらず随時、意思疎通していくことを希望する」と訴えた。欧州諸国の首脳は問題が生じた際、すぐに互いの国を訪れているとして「約2時間で行き来できる韓国と日本もこのような協議が可能だ」と強調した。

尹氏は日本を「普遍的価値を共有し、安全保障や経済、科学技術、グローバル課題など様々な分野で協力するパートナー」と位置づけた。「韓日間の未来志向的な協力は世界全体の自由、平和、繁栄に貢献すると確信する」と強調し、若い世代の相互訪問が活発になることに期待を示した。

尹氏は17日に日韓の経済団体の会合に参加し、経済安保や先端技術開発などの協力を呼びかける見通しだ。

韓国大統領府の崔相穆(チェ・サンモク)経済首席秘書官は15日、日本との経済協力に関して「供給網のパートナーである日本との関係改善は韓国にとって必須だ。日本との関係が疎遠になり、韓国経済には相当な損失が発生した」と述べた。

書面インタビューは日本経済新聞と朝日新聞、毎日新聞が個別に要請し、韓国大統領府がまとめて回答した。

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・韓国大統領、徴用工解決「大局的に決断」 日韓の努力促す
・韓国大統領の書面インタビュー要旨

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峯岸博
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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ひとこと解説 半導体は米国が進める民主主義国家陣営による経済安全保障の象徴です。
一方で台湾と並ぶ半導体大国の韓国に対し、日本は2019年以降、半導体材料の輸出管理を強化する措置を続けています。韓国はずいぶん前に日本が指摘した問題点の改善措置を講じており、経済面でも関係を強化するのが相互利益です。

尹錫悦大統領は「モメンタムが失われないうちに」と周囲の慎重論を押し切って6日に元徴用工問題の解決策を発表し、その10日後には来日するという電光石火の展開です。このため首脳会談の共同声明づくりも間に合いませんでしたが、この決断力とスピード感は韓国への疑心を拭いきれない国会議員や世論にも響くのではないかと思います。

2023年3月16日 7:58 』

ワケありだった中国工場、インテルは韓国SKハイニックスにババを掴ませたのか

ワケありだった中国工場、インテルは韓国SKハイニックスにババを掴ませたのか
韓国半導体メーカーが大不況と米国の対中政策のダブルパンチで危機に直面
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74157

 ※ 補助金政策や、外国企業抑制策など、「政策の動向」は、企業活動に大きな影響を与える…。

 ※ その「動向」を掴んでおくことは、必須となる…。

 ※ そして、そういう「機微情報」を掴むには、「政権中枢」にどれだけ「喰い込んでいる」のかが、「圧倒的に重要」となる…。

『(湯之上 隆:技術経営コンサルタント、微細加工研究所所長)

 韓国の2大半導体メーカー、サムスン電子(Samsung Electronics)およびSKハイニックス(SK hynix)は、2022年の世界半導体メーカー売上高ランキングで(台湾TSMCをランキングに入れなければ)、それぞれ1位および3位となった(図1)。
図1 2022年の半導体メーカー売上高ランキング・トップ10
出所:Gartner(2023年1月17日)の発表データ
ギャラリーページへ

【本記事は多数の図版を掲載しています。配信先のサイトでご覧になっていて図版が表示されていない場合は、JBpressのサイトでご覧ください。】

 そのサムスン電子とSKハイニックスが苦境に直面している。苦境の原因は以下の2つである。

(1)コロナ特需の終焉による大不況
(2)米国の半導体政策による悪影響

 今のところ、サムスン電子とSKハイニックスは、世界1位と3位に位置しているが、上記の問題への対処によっては、ランキングの上位から滑り落ちるだけでなく、企業存亡の危機に立つ可能性もある。それほど事態は深刻である。

 特に、2020年10月20日に90億ドルで米インテルのNANDフラッシュメモリ事業を買収したSKハイニックスの先行きはかなり厳しい。そして、この買収は、もしかしたらインテルの策略によって、SKハイニックスがババをつかまされたのではないかと勘繰っている。

 以下では、サムスン電子とSKハイニックスが直面している2つの苦境について説明し、その上で、SKハイニックスが貧乏くじを引いたかもしれない推測を論じる。』

(※ 以下省略。一部を抜粋して、紹介)

『それともう一つ、大きな出来事がある。2020年10月20日に、SKハイニックスが90億ドルで、インテルのNAND事業を買収することが発表された。インテルのNANDは、中国の大連工場で生産している。この買収の第1段階として、2021年12月22日に、インテルのSSD事業と大連工場の譲渡が完了した。第2段階は、設計、R&D、IPなどを2025年3月までに買収することになっている。

 このように集約されつつあるNAND市場であるが、2022年Q3のシェアは大きい順に、サムスン電子が31.4%、キオクシアが20.6%、インテルを買収したSK hynixが18.5%、WDが12.6%、マイクロンが12.3%、中国のYMTCが約4%となっている。』

『ところが一つ大きな問題が浮上した。それは、CHIPS法と同時に、「CHIPS法は、コストを削減し、雇用を創出し、サプライチェーンを強化し、中国に対抗する」と題したファクトシートが発表され、それには強力な『ガードレール』がついていることが明らかになったことにある。

 その『ガードレール』では、米国半導体産業の競争力を保護することを確実にするため、「補助金を受ける企業はその後10年間、中国の最先端のチップ製造施設(28nm以降)に投資/拡張することを禁じている」のである。

 この『ガードレール』によって、中国南京工場で40~16nmのロジック半導体を生産しているTSMC、中国西安工場で3次元NANDを生産しているサムスン電子、中国無錫(むしゃく)工場でDRAMを生産し、インテルから買収した中国大連工場で3次元NANDを生産しているSKハイニックスは、CHIPS法に基づいて補助金を受け取った場合、向こう10年間、上記の中国工場に一切の投資ができなくなる(1年間の猶予を与えられたが、本質的な解決策にはならない)。』

『この中で、TSMCにおける中国南京工場の割合は同社の10%にも満たないが、サムスン電子の西安工場で生産する3次元NANDは同社の約40%を占める。また、SKハイニックスの大連工場で生産する3次元NANDは同社の約30%、無錫工場で生産するDRAMは同社の約50%を占める。

 もし、サムスン電子とSKハイニックスがCHIPS法による補助金を受け取ってしまうと、中国にあるメモリ工場に先端投資も増産投資もできなくなる。半導体メモリは、2年で一世代先端に進むことにより競争力を維持している。そのため、メモリメーカーに「投資するな」というのは、「死ね」と言われるに等しい。従って、これら韓国メーカーは、中国から撤退することも検討せざるを得ない状況に陥った。』

『つまり、CHIPS法による補助金を受け取ろうと、受け取るまいと、米国による「2022・10・7」規制によって、サムスン電子とSKハイニックスは中国工場で先端メモリを生産できなくなるということだ。したがって、サムスン電子とSKハイニックスは、本当に中国から撤退せざるを得ないかもしれない。』

『インテルの大連工場売却は謀略?

 恐らく、SKハイニックスは、インテルの大連工場を買収したことを後悔しているのではないか。いや、もっと突っ込んだ見方をすると、インテルは、米国の半導体政策の内容を知ってしまったために、中国の大連工場を売却することにしたのではないか。「大連に工場を持っていても良いことがない」ことが分かってしまったからだ。

 インテルは、2010年に大連工場を立ち上げた。最初は、プロセッサ用だったが、後に最先端の3次元NANDに切り替えた。インテルは、大学に寄附講座をつくるなどして、中国で優秀な技術者を育成しようとした。インテルは、そのような努力を10年以上してきたにもかかわらず、いとも簡単に大連工場をSKハイニックスに売却したわけである。そこには、やはり、ワケがあると考えたくなるものだ。

 結果的に、SKハイニックスは、大連工場というババをつかまされてしまった。その上、SKハイニックスのDRAMの半分を生産している無錫工場も撤退せざるを得ないかもしれない。

 SKハイニックスが、いくら世界半導体売上高ランキングで3位といっても、大不況により赤字に転落し、今後、ドル箱だった中国のメモリ工場を閉じなくてはならないとなると、先行きは暗い。SKハイニックスの明日はどうなる?』

中国、半導体企業を支援 「国家安全に影響」

中国、半導体企業を支援 「国家安全に影響」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM034JR0T00C23A3000000/

『【北京=多部田俊輔】中国の劉鶴(リュウ・ハァ)副首相は2日、中国の半導体企業などを集めた会合を開いた。中国受託生産最大手、中芯国際集成電路製造(SMIC)の北京工場を視察し、米国の禁輸措置が事業運営に与える影響などを聴取した。劉氏は半導体は国家安全に関わる国内産業の核心だと指摘し、運営上の課題解消を支援する方針を打ち出した。

中国国営の新華社が伝えた。劉氏は会合で「習近平(シー・ジンピン)総書記…

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『劉氏は会合で「習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)は半導体産業の発展を高く重視している」と述べた。米政府が中国の半導体企業を次々と禁輸対象にしていることを受け、政府として支援に乗り出す姿勢を強調した。

習指導部の下で企業や研究機関が総力を挙げて半導体産業を育成する「新型挙国体制」を構築する。政府と市場が連携して長期投資を引き出し、人材育成も支援する。外国籍の専門家にも中国国民と同等の待遇を与える。

劉氏は半導体産業を育成する利点として市場の大きさと用途の広がりを指摘。半導体サプライチェーン(供給網)もほぼ整ったと述べた。

米中対立の先鋭化により中国側の先端技術には影響が出ている。

半導体大手の長江存儲科技(YMTC)や長鑫存儲技術(CXMT)は米国の禁輸措置によって工場建設が遅れ、外国籍人材も流出した。SMICが建設中の新工場は成熟技術を用いた生産設備にとどまる。

中国の半導体業界団体は2月、米国がオランダと日本に同調を呼びかけている先端半導体の対中輸出規制について「現実になれば中国の半導体産業に深刻な被害を与える」と反対声明を出した。』

ファーウェイへの全面禁輸 米政府高官が検討示唆

ファーウェイへの全面禁輸 米政府高官が検討示唆
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN010HX0R00C23A3000000/

『【ワシントン=飛田臨太郎】米政府高官は28日、華為技術(ファーウェイ)への輸出を全面的に禁じる措置を検討していると示唆した。エステベズ商務次官が下院外交委員会の公聴会で規制の見直しに言及し「全て検証中だ」と語った。全面禁止が実現すれば、取引を続けている幅広い企業に影響が及ぶ。

米商務省はファーウェイを原則、輸出禁止とする「エンティティー・リスト」に加えているものの、安全保障の懸念が生じない品目は…

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『エステベズ氏は公聴会で「米国の機密技術が悪意ある人物の手に渡るのを防ぐために全力を尽くす」と強調した。「輸出管理政策の見直しを続け、脅威の環境を評価する」と説明した。

バイデン政権は中国の偵察気球が米領空を侵犯した問題を受け、通信傍受の技術流出に一段と神経をとがらせる。汎用品の半導体であってもスパイや軍事活動に使われる例がある。先端技術に焦点をあててきた米政府の輸出規制がさらに拡大する可能性がある。』

米、半導体補助金の受付開始 中国生産10年禁止が条件

米、半導体補助金の受付開始 中国生産10年禁止が条件
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN010870R00C23A3000000/

『【ワシントン=飛田臨太郎】バイデン米政権は28日、半導体の国内生産を増やすための補助金を巡り、390億ドル(約5.3兆円)分の申請受け付けを開始すると発表した。申請する条件として、10年間、中国への関連投資を禁じる。中国への輸出規制と合わせ、半導体の米中分断が一段と深まる。

半導体補助金は昨年8月に成立した関連法に盛り込まれた。総額は527億ドルに及び、今回は第1弾として製造を対象にする。最先端のロジックやメモリーチップの生産拡大を目指す。研究開発向けの補助金は今秋に始める。

米商務省は28日、申請の条件を指針として示した。中国との取引を大幅に制限するのが柱となる。中国を中心に安全保障上の懸念がある外国企業と共同研究をしたり技術提供をしたりした場合は全額返金を求める。

1.5億ドル以上の資金を受け取る企業は、事前予測を超えた収益がでた場合には政府に一部を返還する。自社株買いや配当金に使用するのも禁じる。女性労働者が働きやすいように保育サービスの整備も求める。

補助金の受給を見こして、既に多くの企業が米国で投資を始めている。半導体受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)はアリゾナ州で高性能の「4ナノ(ナノは10億分の1)品」を生産する。同州の総投資額は400億ドルで、米国では過去最大級の海外投資になる。

米インテルや韓国サムスン電子も生産を拡大する。レモンド商務長官は日本企業にも活用を呼びかける。同氏は「我々の目標は、最先端のチップを生産できる全ての企業が米国内で大規模に生産をおこなう唯一の国にすることだ」と強調する。

巨額補助金は先端半導体の優位性で中国を上回るための戦略の一環だ。商務省によると、中国は過去2年間、ある特定チップの生産能力で世界の80%以上を占めたという。米国は1990年に世界のチップ生産の約4割を占めていたが、現在は1割に落ちた。輸出規制で中国への技術流出を抑え、補助金で米国への技術流入を進める。

米国の動きは補助金合戦を誘発している。欧州連合(EU)は1345億ユーロ(約20兆円)を拠出する計画だ。日本も累計2兆円規模の補助を打ち出し、国内投資を支援する。

もともと中国は25年に自給率を70%まで高める国家目標を掲げ、巨額の補助金を投入してきた経緯がある。米欧日も中国式に追随する形で、世界の半導体生産には保護主義の懸念が強まっている。TSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏は昨年末、アリゾナ州の工場建設を祝う式典で「地政学的な変化があった。自由貿易はほぼ死んだ」と言及した。

【関連記事】

・米国、対中半導体規制で「経済戦争」へ 日蘭追随の観測も
・TSMCの米国誘致、バイデン氏「ゲームチェンジャーに」
・米中貿易、4年ぶり過去最高 日用品・食品など依存高く 』

米政府、ファーウェイへの輸出許可を全面停止 FT報道

米政府、ファーウェイへの輸出許可を全面停止 FT報道
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN310E60R30C23A1000000/

 ※ 今日は、こんな所で…。

『【ワシントン=飛田臨太郎】英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は30日、バイデン米政権が華為技術(ファーウェイ)への輸出許可を停止したと報じた。すでに禁じている半導体などに加えて全面的に米技術・製品の輸出を取りやめる措置になる。

米政府は2019年5月に原則、輸出禁止の対象とする「エンティティー・リスト(禁輸リスト)」にファーウェイを加えた。その後も一部の品目については輸出許可を与えていたとみられる。完全に取引を遮断し、ファーウェイの経営に一段と打撃を与える。

米商務省の広報担当者は日本経済新聞に「エネルギー省や国防総省など各省の輸出管理担当者と緊密に協力しながら政策や規制を継続的に評価し、外部の関係者と定期的にコミュニケーションをとっている」と語った。そのうえで「特定企業の審議についてコメントはしない」と述べた。

バイデン政権は22年11月、ファーウェイの通信機器について米国内での販売を事実上、禁じた。米国内で販売する際に必要な認証の対象からファーウェイを外した。輸出入ともに厳しい制限をかけることになる。

22年10月からスーパーコンピューターなどに使われる先端半導体をめぐり、中国への技術・製造装置・人材などの輸出を事実上、禁止する措置を始めた。バイデン政権の対中輸出規制は最先端品は「面」で、重要企業は汎用品も含めて「点」で抑える戦略をとる。

【関連記事】

・米国、禁輸対象の中国企業・団体600超 供給網に影響
・[FT]米国の対中国禁輸リスト、新興半導体企業を狙い撃ち
・ファーウェイ、気づけば車部品メガサプライヤー視界に

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ブリンケンが北京訪問を前に、このニュースが飛び込んできた。これではブリンケンが北京を訪問しても、米中関係は改善しない。ただこのニュースをみて、正直に驚くことはない。5Gの技術を持つ中国のリーディングカンパニーのファーウェイを徹底的に制裁するのはアメリカの戦略。CFOがカナダで拘束されたことから始まった制裁はファーウェイを完全に無力化している。振り返れば、少し前まで、中国製造2025が謳歌されていた。清華大学の胡鞍鋼教授は北京で開かれたフォーラムで我が国の科学技術はすでに全面的にアメリカを凌駕していると豪語した。世界を知ってから発言したほうがいい
2023年1月31日 7:54

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バイデン政権』

アメリカの対中半導体規制があまりにもエグい。

アメリカの対中半導体規制があまりにもエグい。中国の半導体産業は終了、韓国企業も大きな巻き添えを食らい、さらに台湾有事が早まる可能性も
https://rakukan.net/article/497081406.html

 ※ 世界情勢の「大きな流れ」が読めないと、こういうことになる…。

 ※ さんざん、警告されてたハズだ…。

 ※ 世の中のプライオリティは、安全保障>経済活動>文化活動(学術、スポーツ、芸能など)…、という順番となる…。

 ※ 安全保障と経済活動が衝突した場合、「安全保障」に軍配が上がる…。

 ※ 身の安全や財産の保全が保(たも)たれないなら、「経済活動(利益・儲けを追求する行為)」もへったくれも無いからだ…。

 ※ ドイツのノルドストリームも、しかりだ…。

『なぜTSMCが米日欧に工場を建設するのか ~米国の半導体政策とその影響(EETimes)

  2020年になってコロナの感染が拡大し、爆発的にリモートワーク、オンライン学習、ネットショッピングが普及したため、2021年に世界的に半導体が不足する事態となった。加えて、「半導体を制する者が世界を制する」というブームが到来し、世界中で半導体工場の建設ラッシュとなった。 (中略)

 本稿では、米国の半導体政策に焦点を当て、それが世界にどのような影響を及ぼしてきたか、または及ぼすと予測されるかについて論じる。

 結論を先取りすると以下のようになる。2022年10月7日に米国が発表した対中規制(以下、「2022・10・7」規制と呼ぶ)は異次元の厳しい措置であり、中国半導体産業に甚大なダメージを与えることになる。しかし、その報復措置として中国が台湾に軍事侵攻する、いわゆる「台湾有事」を誘発するかもしれない。そして、そのような時の保険として、TSMCが生産能力を分散するために米日独にファウンドリーを建設することにしたのではないか、と推測した。
(引用ここまで)

 Twitterで「これ読んで!」って先の数時間ほど騒ぎ続けていた記事。
 明日の本日の動向でピックアップするか、Twitterで完結させるか悩んでいたのですが。
 まあ、韓国についても言及があるので本編でも取り上げようかなということで。

 以前から楽韓Webでは「今回のアメリカによる対中国半導体輸出規制はすごい」「すごいうというかやばい」「これなんで日本のメディアは取り上げないの」と言い続けてきました。
 その内容を網羅して書き記すことすら一苦労なので羅列はしてきませんでしたが。
 本記事を見てもらえればそのやばさが一目瞭然であると思います。

 そもそも2020年5月にTSMCがHuaweiへの半導体出荷を取りやめた時点で「え、これを理由として中国の台湾侵攻くらいありえるぞ?」って思っていたのですが。
 これはまだ序章だったのですね。

 去年8月のCHIP法への署名が行われ、ついで10月に課されたCHIP法で補助金を受け取った企業は中国への工場投資一切を禁じるという発表がありました。
 もう、本当に微に入り細に入り。
 中国の半導体工場は息をすることも禁じるっていうレベルでの規制。

 これによって韓国企業のサムスン電子、SKハイニックスは中国に大規模投資したNANDフラッシュメモリとDRAM工場の競争力を奪われました。

TSMCにおける中国南京工場の割合は同社の10%にも満たないが、Samsungの西安工場で生産する3次元NANDは同社の約40%を占める。また、SK hynixの大連工場で生産する3次元NANDは同社の約30%、無錫工場で生産するDRAMは同社の約50%を占める。
(引用ここまで)

 半導体製造、特にメモリー製造においては最新プロセスを採用してなんぼの代物なので、アメリカの規制でこれらの工場は細々と古いプロセスでの製造をするしかなくなったのですね。

 一応、工場への納入は「許可制」ではありますが、基本的に拒絶されるものとなっています(ただし、1年間の猶予あり)。

 韓国メディアが「SKハイニックスはインテルの中国工場をつかまされた。だまし討ちだ」と言うのもまあ多少の理があるのではないかって感じられるほどのもの。
 まあ、もっと正直な話をすればアメリカ政府の方向性を見ていたらなんであんな投資したんだって話ですけどね。

 さらにアメリカは12月に長江メモリ(YMTC)を「中国人民解放軍と関係性が高い」として貿易禁止リストに入れる意向を示しました。

中国YMTCなど30社超を禁輸リスト 米商務省が発表(日経新聞)

 YMTCは積層NANDフラッシュメモリの開発に成功して、アップルが「安いならサプライメーカーに入れるかも」くらいに言っていたメーカー(でした)。

アップル、中国半導体の調達保留(日経新聞)

 この時の衝撃度はちょっと筆舌に尽くしがたいというか……「そこまでやるんだ」って感じでしたね。
 YMTCはもう廃業するしか手がないです。いや、本気で。

 「実を言うと中国の半導体産業はもうだめです。突然こんなこと言ってごめんね。
 でも本当です。2、3日後にものすごく黒いリストにYMTCが掲載されます。
 それが終わりの合図です。程なく大きめの反発が来るので気をつけて。
 それがやんだら、少しだけ間をおいて終わりがきます」

 石油禁輸どころじゃない。
 中国国内では28nmプロセスが作れるかどうか、主力は40nmプロセス以上っていう状況で5世代以上先を行っているTSMCと競わなければいけないとかね。
 その結果として冒頭記事の筆者は「台湾有事が早まったのではないか、そのリスク対策としてTSMCは工場を分散させたのではないか」と推測するのですが。
 まあ、その結論の是非はともかく。

 記事中のアメリカの本気度を読んでみてください。
 楽韓さんがこれまで「これやばいよ」と言い続けてきた理由が分かってもらえるかと思います。
 メンテすらできないんじゃ終わったも同然。

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[FT]米国の対中国禁輸リスト、新興半導体企業を狙い撃ち

[FT]米国の対中国禁輸リスト、新興半導体企業を狙い撃ち
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB221840S2A221C2000000/

『中国南部のハイテク産業拠点、深圳市で先週、新興半導体メーカーの鵬芯微集成電路製造(PXW)の従業員らがパニック状態に陥った。米政府が同社を事実上の禁輸リストに加えたからだ。

米政府は中国人民解放軍への技術供与が疑われる監視技術や半導体、ドローン(無人機)、スマートフォン関連のハイテク企業や研究機関を次々にELに追加してきた=ロイター

ある従業員は「チームリーダーと幹部のほぼ全員が緊急会議に招集されたが、残った平社員は『デリケート』な問題に関する議論を禁じられた」と話した。米政府は15日、安全保障上問題がある企業を並べた「エンティティー・リスト(EL)」にPXWなど計36社の中国企業を追加すると発表した。この従業員によれば、緊急会議は翌16日も続いたという。

米国のサプライヤーがELに載った企業に輸出するには米政府の許可が必要となり、申請しても却下される可能性が高い。米政府は10月、中国による最先端半導体やその製造装置、技術者の調達を大幅に制限する措置を導入している。今回の追加措置は10月の規制強化策の抜け穴を塞ぐための「保守管理作業」だとアナリストはみている。

もぐらたたきゲームの様相

コペンハーゲン・ビジネススクール(デンマーク)で中国半導体産業を専門とするダグラス・フラー氏は「もぐらたたきゲームのようだ」と表現する。「米政府が制裁を発動するたびに中国側が新たなプロジェクトを立ち上げ、米国がその阻止に動くという繰り返しだ」

米国が中国の技術的台頭を抑えるために輸出制限を課したのは、2019年5月に通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)をELに登録したのが最初だ。それ以来、米政府は中国人民解放軍への技術供与が疑われる監視技術や半導体、ドローン(無人機)、スマートフォン関連のハイテク企業や研究機関を次々にELに追加してきた。

15日の追加措置では半導体開発に乗り出したばかりのPXWなど、ファーウェイのような大企業と比べて制裁の影響を受けやすい新興企業が標的になった。

香港の調査会社カウンターポイントの台湾駐在アナリスト、ブレディ・ワン氏は「米政府は中国の半導体サプライチェーン(供給網)を熟知しており、優先的に標的にすべき企業や将来性の高い企業を見極めている」と指摘した。

PXWは深圳市政府から資金を受け、ファーウェイの元幹部が経営に参画するなど強力な後ろ盾がある。同社の2人の従業員によれば、複数の米企業に発注した半導体製造装置を23年に受け取る予定だったが、その可能性はついえた。

合肥兆芯電子も今回、期せずしてELに名を連ねた。同社は米インテル製に代わる国産のパソコン用プロセッサーの開発を目指し、台湾の半導体設計会社、威盛電子(VIAテクノロジーズ)の元社員によって設立された。合肥兆芯電子の技術者は今回の措置について「不快な驚きだ」と語った。「米政府の目に留まるとは誰も予想していなかった」

西側諸国のある貿易当局者は、合肥兆芯電子がスーパーコンピューター向けのプロセッサーの開発に携わっているか、中国の先端半導体開発を支援していることを米国が察知した可能性があると見ている。スパコンと先端半導体はいずれも10月の輸出規制強化の対象になった分野だ。

無名企業も有名企業もリスト入り

この当局者は「米国はこれまで無名だった企業を含め、中国のハイテク業界をより細部まで把握しつつある」と指摘した。

一方、今回の措置では著名な企業もELに加えられた。

中国の半導体大手、長江存儲科技(YMTC)は10月に輸出規制の対象になり、すでに大打撃を受けている。YMTCの上級技術者によれば、同社は生産拡張計画を中止し、米国の製造装置メーカーに発注済みの機器の頭金を返還するよう求めているという。

この技術者は「当初は最先端ではないチップの製造に戻ることも考えたが、今回の措置で逃げ場が完全になくなった」と話し、ELに加えられたことで生産拡大のための装置の輸入が許可される見込みはほぼ消えたとの見方を示した。

YMTCは中国国内で米アップルにスマホ「iPhone」向けのメモリーチップを供給する計画を進めていたが、10月に交渉が中断した。台湾の調査会社トレンドフォースによれば、YMTCは製造装置メーカーから必要な支援を受けられなくなれば最先端の3次元NAND型フラッシュメモリーの競争力を失い、24年までに同市場からの撤退を余儀なくされる可能性がある。

米政府は半導体製造装置を開発する有力企業もELに加えた。上海微電子装備(SMEE)は、現在オランダのASMLが独占している最先端の露光装置の国産化を託せる唯一の企業とみられている。

SMEEは半導体に回路を形成する露光装置の部品を輸入に依存しているうえ、大量生産の現場に導入した実績もない。SMEEの開発プロジェクトを指揮した上海市の当局者は「製品化はまだずっと先の話だ」と述べる一方、ASMLが派遣した現場作業員の仕事を担えるよう経験豊富な技術者のチームを社内に立ち上げていたと打ち明けた。だが、ASMLの作業員は米国の輸出規制を受けて引き揚げていった。

フラー氏は「一部の中国の半導体製造装置メーカーとは異なり、SMEEには米国人技術者はいない。そのため、10月の措置で追加された米国人技術者の移動規制による影響は比較的少ない」と述べた。

ファーウェイの国産半導体計画に関与

今回の追加制裁の対象の中で、もう1社見逃せないのが上海集成電路研発中心(ICRD)だ。同社はファーウェイによる国産半導体の増産計画に関与しているとみられるが、ファーウェイは否定している。

「ICRDをELに追加するのには時間がかかった」と西側の貿易当局者は話した。「2年前から禁輸リストに加わるだろうと予想していた。米国はファーウェイの半導体開発プロジェクトに関与している疑いのある企業を厳しく取り締まってきたからだ」

今回の記事で取り上げた中国企業にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

米政府は中国の最先端半導体開発にも狙いを定め、人工知能(AI)向け半導体設計の中科寒武紀科技(カンブリコン)と9つの子会社をELに追加した。これらの企業とその母体となった中国科学院は「外国直接製品ルール」の対象となり、米国の技術を一定比率以上含む製品やサービスの提供を受けられなくなった。

カンブリコンは電子商取引(EC)大手のアリババ集団や上海市政府から資金を得て、20年に上海のハイテク新興企業向け市場「科創板」に上場した。英半導体設計大手アームの知的財産や、米ケイデンス・デザイン・システムズとシノプシスの半導体設計支援ソフトを利用しているほか、半導体の製造を台湾積体電路製造(TSMC)に委託している。

カンブリコンは最新の資金調達資料で「米中の貿易摩擦が激化すれば、今後の製品開発やサプライチェーンに深刻な悪影響が及ぶ可能性がある」と懸念を表明した。

アナリストは中国の他の新興企業にも同様の運命が待ち受けているとみている。フラー氏は「半導体設計の分野ではさらに多くの規制の動きがあるだろう」と述べた。

By Qianer Liu and Kathrin Hille

(2022年12月21日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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米中衝突

[FT]米国の対中国禁輸リスト、新興半導体企業を狙い撃ち(22日 15:00)
鉄鋼の脱炭素で新国際枠組み 米USTR代表が検討表明(20日 更新)』

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「半導体戦争」、10年かけて中国抑止 米連合の結束が要

「半導体戦争」、10年かけて中国抑止 米連合の結束が要
「CHIP WAR」著者、タフツ大のクリス・ミラー准教授に聞く
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1402T0U2A211C2000000/

『「ゲームチェンジャーになり得る」。中国との競争の最前線でバイデン米大統領は断言した。半導体受託生産の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)が巨費を投じるアリゾナ州の工場を訪れた6日のことだ。半導体を巡る米中競争を描いた「CHIP WAR」の著者、タフツ大学のクリス・ミラー准教授に「半導体戦争」の行方を聞いた。

――TSMC創業者の張忠謀(モリス・チャン)氏は6日のアリゾナ州での式典で「グローバリゼーションはほぼ死んだ。自由貿易もほぼ死んだ」と述べました。

「私は違うと思う。中国が世界の他の経済圏に結びついたことは過去30年以上にわたる重要な傾向だった。その特定の傾向が限界に達し、多くの国が中国のリスクに過度にさらされることや技術移転を懸念しているとの見方は正しい。だからといってグローバリゼーションが終わるとは思わない。変化しながらプロセスは続く」

「半導体は石油のように持つ国と持たざる国に分かれるわけではないが、生産は集中している。台湾は世界のプロセッサーチップの3分の1以上を生産し、オランダのASMLは最先端のEUV(極端紫外線)露光装置を100%生産している。その集中ぶりは半導体に石油以上の政治的要素をもたらしている」

――バイデン政権は10月に先端半導体の対中輸出を厳しく制限しました。中国を抑止できますか。

「短期的にはノーだ。10年単位の時間軸で考えるべきだ。10年かけて規制が効けば、米国と仲間ができることと中国ができることの差は広がる。コンピューティング、センシング、コミュニケーションのすべてが半導体に依存し、軍事技術に不可欠だ。米国が半導体技術で中国より優位に立てば、情報技術や軍事技術でも優位となる」

――経済の「相互依存の武器化」はどんな未来をもたらしますか。約80年前、米国による石油の禁輸を1つの要因として日本は米国との戦争に突き進みました。

「1941年の日本との比較はそぐわない。中国が輸入できなくなる先端半導体は全体の数パーセントで、中国は電話用やPC用などほとんどの半導体を輸入できる。中国が民生用に提供された技術を自国の軍事に利用しているため、米国は相互依存が乱用される状況を続けられないと判断した。私たちは今、危険な状態にある。 少なくとも今後2、3年は軍事的な力学が中国に有利な方向に変化し続けるからだ」

――中国が台湾に侵攻してもASMLの製造装置がなければ先端半導体は作れません。一方で中国共産党の目標は半導体製造能力の獲得ではなく、台湾統一そのものです。

「その通りだ。世界のほとんどの国にとって台湾は半導体を製造しているがゆえに重要だが、中国共産党は半導体の発明以前から台湾を支配しようと考えていた」

「中国が第2次大戦中のノルマンディー上陸作戦のような侵攻を考えるなら、コストが高すぎると判断するかもしれない。では中国が米国との戦争の引き金となる基準に満たない行動に出たらどうなるか。それを心配している。例えば台湾が統治する台湾海峡の無人島を中国が占拠したら、米国は次に何をするだろう。戦争に踏み切れば世界経済に莫大な損害がおよぶことを米国は考慮せざるを得ない。半導体産業における台湾の重要性が逆に、米国が台湾を助けることを抑止するかもしれない」

――米国が対中競争に敗れるとしたら、何が敗因となるでしょう。

「米中だけの競争ではなく、日本、オランダ、台湾、韓国が絡む。米国は仲間の十分な合意を得られるような連合を維持し、機能させる必要がある。今後10年、(半導体の性能が1年半から2年で2倍になる)『ムーアの法則』が続くと確信することも難しい。法則が働かなくなると(最先端の技術開発で先行しても性能の差が開かなくなるため)米国がライバルより速く走ることも難しくなる」

Chris Miller 米エール大で歴史学博士。10月に出版した新著は5年前に書き始めた。当初は冷戦時代の軍拡競争を書くつもりだったが、ミサイル技術の重要な進歩は誘導システムにあり、そのカギは半導体だと気づいて構想を膨らませた。

米中Round Trip https://regist.nikkei.com/ds/setup/briefing.do?me=B001&n_cid=DSREA_roundtrip 

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※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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分析・考察

「米国は仲間の十分な合意を得られるような連合を維持し、機能させる必要がある」という部分が、極めて重要な指摘だと思います。米国は、半導体の対中デカップリング政策の目的を、明確に定義しないと、同盟国の協力を維持するのが難しくなります。「中国に対して米国の軍事的優位性を維持し、台湾への軍事的な冒険主義を抑止する」というのであれば、同盟国は支持すると思います。しかし単なる経済競争で米国の産業の優位性を追求する、というのであれば、そして同盟国の産業や経済が犠牲になるというのであれば、連合の維持は難しくなるはずです。このあたりが今後の難しい課題になりそうです。
2022年12月15日 7:20
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

少し前に、中国製造2025について大きく騒がれていたが、今は、中国の公式メディアでは、その言い方はまったく出てこなくなった。中国が技術覇権を握ろうとトランプ政権に見抜かれてしまい、制裁が始まった。バイデン政権になってから、米国の制裁に加え、半導体連合を作り、対中制裁をさらに強化している。それに中国はどうして対抗できない。WTOに提訴したが、WTOはもはや国際機関として役割を果たせなくなっている。ある意味では、半導体戦争の勝負はすでに明らかになっている。問題はその下流にある諸産業の行方である。半導体不足は様々な産業に影響するこれからも供給網は不安定になろう
2022年12月15日 6:44 』

https://nkis.nikkei.com/pub_click/174/rKKK7ug0Y5snsqsOvJLTV4s5Wyi1RcOc9r2Yv3lzD5A95HoJMF7iZ7R6KzBSkKWkq6Oc6_5hcZn1E_IVKBnezHRFNaTIY0N0yCnj_1J7g7-iS9Y_1XVDWrRxGEQP3XTXxQPHX5s2MLcE3WqjE5GLUUj6S0xgzuqZvBYT-rfE_NKd4hEvb17nnUzZENENMpBpYHrqrc28NJPep_F7o3NS86G_txnaVQ4kWPsR2uSUV3mN_b0pSZPKe5goD3XLPbiqKGG9TVGyCVe3iHIosrWIGrF7Iv_p8RjmW6rerabJO3KJDfkairFLdIeNfs0aazAqm1Q4vjk-mvoHaDLdfNzyN8deoYnUm0n_-ZK5hsBU2DmYDwTfc6Kf3A_imWR22uXtJ6GA2y3RviNJyYpgchS1gB0POacKOQnZF7HLPQVZZy2HTlLGDBHW3CI9huRZnPNbarAWJJkIjhhVaOVpZsPgyucKYFQLyhb1j012JyUKrL33YL1gq-x0DLQ64G8N//111571/149584/https://ps.nikkei.com/spire/

米政府、中国半導体YMTCなどを輸出禁止リストに

米政府、中国半導体YMTCなどを輸出禁止リストに
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN14DZV0U2A211C2000000/

『【ワシントン=飛田臨太郎】バイデン米政権は週内にも中国半導体メーカーの長江存儲科技(YMTC)を含む30超の中国企業・団体を事実上の禁輸リストに加える。中国は世界貿易機関(WTO)に米国の先端半導体を巡る対中輸出規制が不当だと提訴したばかりで、半導体関連の米中対立が激しさを増している。

米ブルームバーグ通信などが14日、報じた。米商務省は10月、米技術を使った半導体を軍事や兵器開発に転用する恐れがあるとし、YMTCなどを懸念先リストに指定した。一定の猶予期間を経ても懸念が消えない場合は輸出禁止リストに盛り込む措置で、米政府は改善がないと判断した。

YMTCは中国政府系ファンドから多額の資金を受け、データ保存に使う「NAND型フラッシュメモリー」などの量産で急成長したとされる。米議会は同社を禁輸対象にするよう要求していた。同社への米国製品の輸出申請は商務省に原則却下されることになる。

米国は10月、スーパーコンピューターなど先端技術の対中取引を幅広く制限する措置を発表した。半導体そのものだけでなく製造装置や設計ソフト、人材も含めて規制する。特定の企業でなく中国全体に網をかけた。中国商務省は12日夜の公表文で「典型的な貿易保護主義」だと批判した。

10月は主に先端技術が制限対象だったが、今回の措置により規制対象の製品・サービスが広がる。YMTCなど対象企業の経営環境はさらに厳しくなる。日本の半導体関連メーカーもYMTCと取引があったとされ、日本企業にも影響が及ぶ可能性もある。

米政府はすでに華為技術(ファーウェイ)や半導体受託生産の中芯国際集成電路製造(SMIC)への輸出を厳しく取り締まる。対象企業を広範囲にして、中国の半導体産業への効果を強める。

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分析・考察

先日、バリ島で実施された米中首脳会談では、両首脳が微笑んでいた。米中の和解が期待されていたが、バイデン政権は対中制裁をまったく緩めない。否、もっと強化しているようにみえる。このままいくと、中国企業はローエンドの産業ならできるが、ミドルエンド、とりわけ、ハイエンドの分野から完全に締め出されてしまう。どうやって、米国との相互信頼を取り戻すか、北京にとって重要な課題になっている。
2022年12月15日 6:51』

中国、米国をWTOに提訴 半導体輸出規制で

中国、米国をWTOに提訴 半導体輸出規制で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN130250T11C22A2000000/

『【北京=川手伊織】中国商務省は12日夜、米国による半導体などの対中輸出規制が不当だとし、世界貿易機関(WTO)に提訴したと発表した。「米国による輸出規制措置の乱用は世界のサプライチェーン(供給網)の安定に脅威を与え、国際的な経済貿易の秩序を破壊している」と強調。そのうえで「典型的な貿易保護主義のやり方だ」と批判した。

米国は10月、スーパーコンピューターなどの先端技術を巡り、中国との取引を幅広く制限する措置を発表した。輸出管理の法律に基づく規制を改めた。半導体そのものだけでなく、製造装置や設計ソフト、人材も対象に含めて許可制とした。

中国は高性能な半導体や製造装置を輸入に頼ってきた。習近平(シー・ジンピン)指導部は「科学技術の自立自強」をめざし、半導体の自給率引き上げなどに力を入れる。米国の規制強化をうけ、中国の戦略には強い逆風が吹く。

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ひとこと解説

WTOに提訴するのはメンバーであれば、だれでもできる。しかし、状況が変わるかというと、変わる可能性はほとんどない。半導体の問題をほんとうに深掘りすれば、中国にとって不利な結果になる可能性がある。今となって、WTOにとっても迷惑なことになる。アメリカにとって不利な判決を出すわけにはいかないし、世界最大の貿易国中国の訴えを無視するわけにはいかない。WTOの真価が問われる事案かもしれない
2022年12月13日 8:34』

https://nkis.nikkei.com/pub_click/174/X_dTqLQPEKYUcWilQIldqPWLkIaDpT8f4dHxEZWkCXwpHvcfLeTsKQLLKlPSwmeP0wKFnHu1wGIvYk8obpR7JZX1cuz_poVpE-LiGnorEGBLFbQMlUV2mKw5iT9_44dOubS1BVLO0Dw3-QXxXHDElWQXlC2jb1lyClBxm859Li7rsIrPThyXv9eLg9i2DfeRBvDg1sM03SG25zSOZgEJq8bKHRiuH4j69nbRqU0Y6EgH9xhGZpHbmlVJsHiIPmfXOXx_HlWQ_J6vbBDiI-fp-ScYPfdr1xwrhNzA0InFWFrX7Q1lcvZyvYc0wxW0vVPyl4W18lo_8nP4Iiel1VmEJr9cLgjb2mXvnn7LNK-BZDinRiiFVddnsL7_LN4jEqF9XweNAVSVIX-hpVj9LluO79GoKfjMYG4yp7qUGJOAftN9J132aaPuGMg7wV25glRGEDgY21TUzMhkM0GE-tpxwkEfG8QKBYgFphvBdnd5_EEpwfW7TmjVQwoREmmL//113417/151712/https://www.nikkei.com/promotion/campaign/line_friend/?n_cid=DSPRM1DP01_2022lineb

米政権の半導体戦略、中国を直撃

米政権の半導体戦略、中国を直撃 岩田一政氏
日本経済研究センター理事長
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD17AFP0X11C22A1000000/

『バイデン米政権は10月7日、先端半導体分野を対象に新たな対中国輸出規制を公表した。台湾有事リスクが拡大する中、中国の関連産業をグローバルサプライチェーンから隔離する政策といえる。米中の「技術・人工知能(AI)卓越性」を巡る争い(テクノナショナリズム)は頂点に達しつつある。

先端半導体に関する中国隔離政策はアメとムチからなる。ムチは、外国企業も含め米国の技術を使用した関連製品・技術の輸出を禁止する措置だ。さらに、米政府の補助金を受けた企業が中国の先端分野製造施設の生産能力を高める新規投資を禁止し、米国籍を有する人材がその施設で就業することも禁止した。
岩田一政・日本経済研究センター理事長(日経センター提供)

米国輸出規制の専門家ケビン・ウルフ氏は、外国企業も対象とするのは、中国の軍民融合体制の下での華為技術(ファーウェイ)に対する制裁措置が不十分であるほか、米国企業が他国企業との競争上不利になることを回避するためとしている。しかし、米国の国内法・規制を外国企業に域外適用することは、国際法上問題がある。軍民両用技術に関する多国間合意を取り付けることが望ましい。

アメは、先に成立した「CHIPS・科学法」に盛り込んだ527億ドルの補助金供与で、米国で生産・技術開発する外国企業も対象となる。先端半導体は経済安全保障上の戦略物資だが、生産は台湾と韓国に集中しており、米国への誘致を目指す。

日本の半導体産業の世界市場シェアは10%程度だが、製造装置、素材の分野では存在感がある。外国企業も対象とした新規投資・人材に関する規制付き補助金供与は、国際ルールとの整合性で問題は残るが、日本にとっては半導体産業復権の機会となろう。

日本企業は今回の輸出規制に関連して、米国の先端技術が生産過程のどの部分で使われているか、必死で探っている。半導体分野では自社技術と補完的な他企業の特許を利用する必要がある。また、国境を幾度も越えるサプライチェーンが複雑に絡み合い、中国を含めたコンピューター関連産業の国際的な相互依存関係は極めて高い。今回の輸出規制実施は中国関連の半導体・コンピューター貿易を大幅に縮小させよう。

なお、バイデン政権は電気自動車(EV)購入の補助金対象を北米で最終的に組み立てた車両に限定した。韓国企業は米国と自由貿易協定(FTA)があるにもかかわらず、輸出EVが例外とされ怒りを爆発させている。欧州連合(EU)もEV車生産の北米シフトを懸念している。

バッテリー生産に不可欠な鉱物を「懸念される外国企業」からの輸入に依存することも禁止した。鉱物の生産・加工段階で中国の市場シェアは極めて大きい。この分野でもグローバルサプライチェーンの再構築は避けられまい。

外国企業を差別的に扱うようなEV補助金は、世界貿易機関(WTO)ルールに抵触する可能性が高い。アジア諸国とは「インド太平洋経済枠組み」(IPEF)、欧州諸国とは「貿易技術評議会」(TTC)での協議による撤廃を期待したい。

https://nkis.nikkei.com/pub_click/174/abWCtGm7E2DEdnTDkJy5D2Fv39cxqxYXnLptAZ7iAaHgSdhYdxYsg6HryJL41NETVGIy69zrQCUaGaTswhKRvaKjmAPOcJMj6Jjg-ZdY53gWye5T9PCD5dir_vr2bDJ1y34lDUJLnBq_R3X6_sUH9jj_e3o1SfLqKup7BPq-I4gfTvCeIN-Fc7qsXZ7s7hvP7DdnZTFz5h7pgZVLiE2EZDNlaFu5UZZEufl5OUYiXBP1xZZwIr4RddNj5-_ybc0RXxlY6VsF2TZXgEnYnrWK8LYTCQYzc6fgOE7ipQwpZRJjpbOMsp45qqhkdSXhAzYRlJHip64tHSOUeQO7w2732pc6anXIkxl8HEhYwiRmjGW6gsdL8jTGVjGRfyuADPvAd3rrv0p423jJgN4Ri-9vYVBtNud0geErPKoUBZeq11OakMQ_gtiunMANC3qmJ6j-BuxuTwacj6DCbB-H59RVQuTx36eU3Czd9ESnDGkQP09mGeqVTPE20gXjzz8//111571/149584/https://ps.nikkei.com/spire/

【社説】(※ 中央日報日本語版)刀抜いた日本の半導体ドリームチーム、冬眠する韓国のK-CHIPS法

『 ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2022.11.14 08:08

日本が刀を抜いた。半導体産業での主導権回復のためだ。この戦いに出た日本企業はそうそうたる顔ぶれだ。日本の半導体ドリームチームにはトヨタ、キオクシア、ソニー、NTT、ソフトバンク、NEC、デンソー、三菱UFJの8社が参加する。これら企業は各分野で世界1位であったり1位になったりしたことがある底力を持っている。

日本のドリームチーム「ラピダス」は、「速い」という意味のラテン語のように速度戦を予告した。2027年から先端チップ量産を目標にしてだ。1980年代に世界のメモリー半導体市場を掌握しただけに生産技術は持っている。カギは先端人材だが、ラピダスは台湾や米国などから日本人エンジニアを呼び戻して回路幅2ナノメートル(ナノメートルは10億分の1メートル)製品の先端半導体を生産することにした。2ナノメートル製品はサムスン電子、TSMC、インテルなど世界トップの企業が早ければ2025年から活用すると予想される製品だ。

要するに日本が韓国に奪われた半導体帝国の地位を取り戻すという野心にあふれた計画だ。こうした試みは初めてではない。1992年世界10大半導体企業のうち6社を占めた日本はサムスン電子とのチキンゲームで毎回倒れた。その後も日本企業は敗残兵のように力を集めてサムスン電子に挑戦したりもしたが、サムスン電子の果敢ながらも一歩速い投資攻勢に押され秋風落葉のように倒れいまは最初から存在感を失った。

だが半導体市場の地殻変動で日本企業に再び機会が訪れた。これまで半導体市場はメモリーチップが主導したが、いまは新たな技術環境が広がっている。第4次産業革命が導火線になり多様な用途のシステム半導体を柔軟に生産する委託生産方式のファウンドリーが半導体市場の核心に浮上してだ。自動運転車、スマートフォン用イメージセンサー、人工知能(AI)とスーパーコンピュータなど多様な用途のシステム半導体が必要になった。

DRAMとNAND型フラッシュなどメモリーチップに注力してきたサムスン電子が対応できなかったこの分野ではTSMCが出てきた。この数年間に台湾は島国の特性のため水不足に陥ると、水田への水を断ち半導体工場に用水を供給して半導体崛起に全力を注いだ。米国が半導体生産に拍車をかけており、今度は日本が半導体領土回復に袖まくりしている。

ところで韓国はどこへ向かっているのか。韓国も半導体クラスター許認可手続き簡素化などを含んだK-CHIPS(半導体産業競争力強化法)を立案したが、深い冬眠に陥っている。野党「共に民主党」が大企業への特恵として反対しているためだ。韓国唯一の経済の柱であり安保の武器が政争に巻き込まれさまよっている。尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権は野党を説得し超党派的にK-CHIPSを通過させなければならない。日本が再び半導体帝国建設に成功すれば韓国の未来はない。』

(社説)(朝日新聞デジタル)半導体新会社 国の主導で成算あるか

(社説)(朝日新聞デジタル)半導体新会社 国の主導で成算あるか
https://www.asahi.com/articles/DA3S15476022.html

『最先端の半導体開発を掲げる新会社が立ち上がった。国が多額の補助金をつぎ込むという。だが、政府のかけ声と税金頼みで成算が得られるほど、この分野の競争は甘くない。官民の役割分担をはきちがえた政策は、再考すべきだ。

 トヨタ自動車やソニーグループなど国内大手8社が、新会社「ラピダス」を設立した。次世代型のデジタル機器の頭脳にあたるロジック半導体を開発し、27年の国産化を目指すという。

 政府は、700億円の補助金を出すことを決めた。開発後、実際に生産する工場を建設するには、5兆円規模の投資が必要で、兆円単位の国費が追加投入される可能性がある。
 西村康稔経産相は「半導体はデジタル化、脱炭素化を支えるキーテクノロジーで、経済安全保障の観点からも重要性が増している」という。一般論としては理解できるが、「国策」としての目的や実現性には疑問が山積みだ。

 ロジック半導体の競争は熾烈(しれつ)を極める。最先端を走る台湾のTSMCは、今年だけで5兆円を投資する。日本の技術が「10年あるいは20年遅れている」(新会社の小池淳義社長)なか、民間企業が社運をかける姿勢で臨まなければ、遅れを取り戻すのはまず無理だろう。

 ところが、新会社への8社の出資額は計73億円しかない。うち7社が10億円ずつと横並びで、責任の所在もあいまいだ。往年の半導体大国の復活を夢想する政府や自民党議員への「おつきあい」で出資したのが実情ではないのか。

 経産省が主導した国策プロジェクトは多くが頓挫してきた。肝心な企業がこの姿勢では、失敗を繰り返す恐れが強い。

 企業側が及び腰なのは、現実的な使途が見通しにくいからだろう。新会社が手がける最先端の半導体は、主にパソコンやスマートフォン向けだ。しかし、こうした産業の国内生産基盤は既にほぼ失われている。

 経産省は将来の完全自動運転車に必要と主張するが、自動車は安全が最優先で、品質が安定した世代遅れの部品を使うのが一般的だ。

 政府は昨年度補正予算で、TSMCの国内工場誘致などに6千億円を投じた。今年度2次補正案にも半導体関連に1・3兆円を計上した。物価高で国民の暮らしが打撃を受けるなか、円安で潤う大企業を破格に優遇する政策に、納得感は乏しい。

 高齢化による社会保障費の増加で財政は火の車だ。子育て施策や脱炭素投資の財源確保にも四苦八苦している。成算なき事業に湯水のごとく国費を注ぐ余裕はないはずだ。

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イラン製ドローン、部品の大半は西側製 ウクライナ分析ほぼ3分の1は日本企業によって製造

イラン製ドローン、部品の大半は西側製 ウクライナ分析
ほぼ3分の1は日本企業によって製造
https://jp.wsj.com/articles/ukrainian-analysis-identifies-western-supply-chain-behind-iran-s-drones-11668620220

 ※ やれやれ…。

 ※ またゾロ、「日本叩き」の再燃か…。

 ※ 3分の1は日本製、3分の1は中国製、3分の1は米国製…、というオチじゃね…。

 ※ イランが、ICチップ(その他の半導体部品)を内製できない以上、そういうような「比率」になるに決まっている…。

『ウクライナの情報当局が同国で墜落した複数のイラン製ドローン(無人機)を分析した結果、部品の大半は米欧など同志国の企業によって製造されていたことが分かった。事情に詳しい関係者やウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が確認した資料によると、西側当局者らはこの問題に対し懸念を強めており、米政府は調査に乗り出している。

 ウクライナ情報当局はWSJが確認した資料の中で、墜落したイラン製ドローンの部品のうち、4分の3は米国製との推定を示した。ウクライナ軍は複数のドローンを撃墜したほか、イラン製「モハジェル6」1機は当局が飛行中にハッキングし無傷で着陸させたという。

 部品の詳細はウクライナの軍情報部が特定し、首都キーウ(キエフ)を拠点とする非営利団体「独立反汚職委員会(NAKO)」が確認した。NAKOの報告書をWSJは閲覧した。
… 』

(※ 無料は、ここまで。)

「Rapidus(ラピダス)」設立 日の丸半導体、復活なるか

「Rapidus(ラピダス)」設立 日の丸半導体、復活なるか
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/28544

『玉村 治 (スポーツ科学ジャーナリスト、科学ジャーナリスト)

トヨタ自動車やNTTなど国内企業主要8社が11月、人工知能(AI)、スパコンなどに使う次世代半導体の国産化を目指す新会社を設立した。かつて世界のトップを走った日本の半導体産業は、「失われた30年」と軌を一にするように凋落した。世界の冠たる技術力を誇りながら国際競争力で大きく取り残された日本。日本のモノづくり再興のけん引となるのか。過去の失敗を教訓とできるのか、今後を考える。
(Ismed Syahrul/gettyimages)

今や日本の半導体のシェアが6%となった背景

 新たな半導体製造会社は、ラテン語で「速い」を意味する「Rapidus(ラピダス)」。2社のほかにソニーグループ、NEC、ソフトバンク、キオクシアホールディングスに加え三菱UFJ銀行が参加する。

 現在、半導体の多くは、世界最大の生産拠点である台湾に依存している。有事があれば、多くの企業に甚大なる被害を与える可能性があるという、経済安全保障の観点が設立の背景にある。政府も補助金を出すなど官民一体となって支援し、さらに日米政府が連携を強化しながら、研究開発と量産を図っていく。

 果たして半導体産業の復興はなるのか。今後の日本のモノづくりの試金石となるのか、過去を振り返りながら展望したい。

 1980年代後半、バブルに沸いていた日本のモノづくりは、我が世の春のように世界を席巻した。その代表が、「産業のねじ釘」と言われた半導体だ。正式には集積回路(IC)という。

 半導体産業は、当時、世界トップを走っていた。1988年ごろの、半導体生産額世界トップ10社を見ると、NECを含め日本メーカーが名を連ね、日本のシェアは50%を超えていた。ところが、2020年時点の日本のシェアは10%にも満たない。現在は6%まで落ち込んだ。

 この間、半導体市場は4兆円(1998年)から60兆円(2020年)を超える巨大市場へと急成長した。ネット社会、デジタル社会の到来で、通信分野だけでなく、車をはじめ多くの製品に使われ、半導体需要が大きく膨らんだためだ。半導体不足が、車、電気製品の生産に影響しているように、今後も半導体市場は拡大することは間違いない。』

『しかし、日本は、この成長に大きく取り残された形だ。産業構造の変化に対応できなかった。市場が大きく変貌している様を見ずに、目先の価格競争やサプライチェーンの拡大ばかりに目を向けた。既存の製品のマイナーチェンジ、改良ばかりに目を奪われ、メモリからロジック(CPU)へと切り替わる時代の潮流をとらえることができなかったというわけだ。バブル崩壊の影響を受けて設備投資はほとんどなく、リストラなどが相次いだ。

 こうした凋落の背景を分析すると、いくつかの要因が考えられる。

凋落の教訓 日米半導体協定の足かせ

 一つ目は、米国の影響だ。1980年代半ば以降、車など日本製品が米国内でよく売れ、日米貿易摩擦が取りざたされた。日本車をハンマーで壊す映像が記憶に残る「ジャパン・バッシング」だ。

 半導体分野にも波及し、この摩擦を解消しようと1986年に締結されたのが、日米半導体協定だ。その前年には、プラザ合意で、日本からの輸入に不利な円高ドル安への為替介入が行われたが、日米半導体協定によって、日本は米製品の購入を迫られ、一方で日本製品に高い輸入関税などが課せられた。

 こうした逆境にもめげず日本は、DRAM(半導体メモリ)の製造力増強で対抗したが、90年代に入ると、米国メーカーは知的財産権への侵害を理由に、日本メーカーにジャブ攻撃を与えてきた。日本メーカーは、数千億円ともいわれる特許料を支払ったとされ、ただでさえ、バブル崩壊で屋台骨が揺らいだ日本メーカーには大きな痛手となった。

水平分業の失敗

 二つ目は、水平分業の失敗だ。日本メーカーは、半導体製品の設計から製造までを一貫して自社で行う「垂直統合」に固執した。米国では、コスト削減の観点から80年代後半、設計から製造までを一貫して行う「IDM」(Integrated Device Manufacturer)を脱皮し、工場を持たずICの設計・販売を行う「ファブレス」と、製造に特化する「ファウンドリ」という業態(水平分業)にシフトする構造改革が起きていた。

 一方、日本企業は、「せっかく工場があるのだからもったいない」というスタンスで、垂直統合を維持するため、目まぐるしく変化する半導体に合わせて設備を準備することに追われた。

 これに対し、米国で起こった構造改革の流れに乗ったのが、台湾だ。70年代から国策として半導体産業育成を目指していた台湾に87年、世界初のファウンドリとして創立されたのがTSMC(台湾積体電路製造)だ。

 テキサス・インスツルメンツ副社長だったモリス・チャン(張忠謀)が設立した。当初は、下請け的な存在だったが、アップルやグーグルと手を組むことで、今日世界をリードする世界最大のファウンドリの地位を不動のものにした。』

『部品屋脱出できず

 三つ目は、個々の部品の技術力はすごいが、それを統合して魅力的な商品(最終製品)を世に送り出せなかったことだ。端的な例がアップル社のiPhoneだ。最大iPhoneの6割近くが、日本のメーカーが作った部品なのに、それを集めてiPhoneのようなスマホを作れなかった。

 日本メーカーの状況を端的に示すのが次のエピソードだ。84年に、当時東芝の技術者だった舛岡富士夫氏は、世界で初めてNAND型フラッシュメモリを開発した。しかし、その重要性は正当に評価されず、舛岡氏は、東芝を辞し、東北大学教授に転身した。

 フラッシュメモリは、一瞬にしてデータを消すことができるところからそのように名付けられたが、舛岡氏が発明して以来、デジタルカメラや携帯電話や携帯音楽プレーヤーの主要部品となって今日に至っている。用途を見出したのも海外企業である。

 東芝でフラッシュメモリ開発に携わった元技術者の竹内健氏(現在、東京大学大学院教授)は、著書『世界で勝負する仕事術』の中で、開発したフラッシュメモリを、どう活用していくか、日米の技術者の発想、姿勢の差を以下のような趣旨で指摘している。

 「アップル社は、箱屋(部品を集めて仕上げ。セットベンダー)と呼ばれるが、技術者自らが商品の打ち合わせに参加した。『アップルに技術はない』は誤解。半導体技術を深くまで理解し、どう部品を組み合わせて活用していけば、新しい製品が作れるかを常に考えていた。メーカーに注文を出すくらい開発をリードした」という。

 一方で、「日本の顧客であるソニー、松下電器、富士写真フィルム社は、技術者でなく、部品調達の部門の人しか現れない。どんな製品を作るより、安く買うしか頭になかった」と振り返った。

 デジタルカメラからiPodの登場で、フラッシュメモリの需要は飛躍的に伸びたという。
内向き志向のままだった日の丸企業

 四つ目は、国内にばかり目を向け、海外企業と連携がなかったことだ。韓国も80年代半ばから政府の支援を受けてサムスンなどの財閥が半導体製造に乗り出した。日本と異なるのは、国内市場だけでは生き残れないと早い時期からシリコンバレーなどの海外ベンチャー企業と連携を深めていたことにある。

 その結果、サムスンは91年に世界初の「16M DRAM」を発売、翌年には「64M DRAM」の開発に成功。92年にはDRAM市場では東芝を抜いて、世界一に躍り出た。日本は、バブル崩壊で多くの技術者がリストラされ、トップ企業にいた70数人の技術者が高給待遇の技術顧問としてサムスンに移籍したのは、よく知られている。

 94年から95年にかけて、日本のNEC、東芝などはサムスンとの共同開発・製品情報の供与契約を締結。さらに96年には、通産省(当時)が「日の丸半導体」の優位性維持を狙い、コンソーシアム「半導体先端テクノロジーズ」を創設。日本メーカー以外に、サムスンの加盟を認めた。

 しかし、日本企業の動き、通産省の施策は、皮肉にもその後のサムソンの躍進の礎となった。経済安全保障の観点からは外れた施策といっても過言ではない。

 サムスンは、97年にアジアを襲った通貨危機で、巨大企業へと変貌を遂げる足がかりを得た。韓国政府は、世界通貨基金(IMF)支援の下、多くの財閥系企業を整理するとともに、倒産寸前だったサムスンらに公的資金を投入した。海外に目を向ける改革を行う一方で、サムスンは2000年代に入ると液晶ディスプレイ(LCD)事業や携帯電話事業へ本格的に投資した。

 一方、日本は迷走した。国内大手企業は、半導体事業を切り離して連携し、エルピーダメモリ、ルネサンスエレクトロニクスなどを設立した。それら〝日の丸企業体〟は度重なる経済危機によって、撤退(倒産)やリストラに見舞われた。価格と開発スピードに勝る、韓国、台湾企業との競争に敗れた形で、再び、多くの技術者が転職を余儀なくされ、海を渡った人も少なくなかった。

 サムスンは2009年薄型テレビ、半導体メモリで世界トップとなり、世界最大のIT・家電メーカーとなった。携帯電話も2位のシェアを誇り、白物家電も上位を占め、日本のお株を奪った。

 この間、日本政府は、明確な施策を打ち出せなかった。韓国、台湾だけでなく中国も大規模な補助金、減税を実施、国内産業を育成した。日本企業も、バブル崩壊による、デフレマインドが長引き、新たな投資に資金を回せなかった。』

『日本政府は本気か?

 日本凋落の背景をみると、負けるべくして負けたといえる。後出しじゃんけんで言い訳は可能だが、その時は、状況を読めなかったということだ。こうした反省を踏まえ、復興に生かすのか。

 政府は21年6月に今後のデジタル、半導体の方針をまとめた「半導体戦略」を策定した。半導体はあらゆる産業に関連し、デジタル社会を支える重要基盤であり、安全保障にも直結する死活的に重要な戦略技術と位置づけ、政府として積極的に関わっていくことを強調した。米中技術対立が深刻化し、経済安全保障の観点から半導体の国産化への宣言である。

 政府は5月に成立した経済安全保障推進法を受け、日本の経済・社会の戦略的な「特定重要物資」に半導体を盛り込んだ。その流れの中で、経済産業省は6月、TSMCとソニーグループなどが熊本県に作る工場に、最大4760億円の補助金を出すことを決めた。さらに、政府はキオクシアや米マイクロン・テクノロジーの国内工場への投資計画にも支援を表明している。

 国内生産回帰は、半導体製造能力で、米国、韓国、台湾に大きく差をつけられる中、国内で半導体を自給的に安定確保できる体制作りをする狙いがある。

 7月には、米国と半導体分野で共同研究を進めることで合意した。産業技術総合研究所、理化学研究所、東京大学などと研究開発組織を創設する。米企業はIBMなどが参画する。

 政府は、11月初旬に発表した22年度の2次補正予算案で、この日米連携を後押しする意味で、研究拠点整備に約3500億円を計上した。今回設立されたラピダスは、AI、スパコンなどに使われる、回路の線幅2ナノメートルの最先端の半導体(ロジック半導体と呼ばれる)開発を目指す。

 まだ世界でどこも成功していないもので、再び世界の主導権を握る考えだ。政府は700億円を出資する。

 日本の半導体生産は、世界からみて遅れているが、日本の技術が決して世界に劣っているわけではない。生産体制のアップデート、部品を良質な最終製品につなげる橋渡し、国際連携など失われた30年時代の〝失敗〟をどう生かすか。世界の潮流を見極める洞察力も問われている。

 米国との連携を図りながら、内向きだった過去の轍は踏んではならない。ただ、米国も半導体産業の国内回帰を目指しており、これにつられ、日本の強みである半導体製造装置、材料部品工場が拠点を移すことも否定できない。懸念も山積するが、状況を見極めることも大事だろう。
モノづくり再興になるか

 省エネに貢献した日本の技術は、SDGs、GX(グリーントランスフォーメイション)の技術でも貢献できる、強い分野である。そういう意味で、モノづくりにこだわらない、モノづくりなど発想の転換、パラダイムシフトが必要なのかもしれない。

 先ほども触れたが、ラピダスは、「速い」を意味する。名前の意味するところを解すれば、かつて「速さ」を売りに世界市場にでていたのが、韓国、台湾。その速さを見習うと同時に、世界最速の小型の半導体を開発しようという意欲の表れでもある。

 大事なのは、政府を含め官民一体となって、日本のモノづくりを見直し、再考する絶好の契機をものにし、将来につなげることだろう。』

ドイツ、中国による国内半導体企業への投資を阻止

ドイツ、中国による国内半導体企業への投資を阻止
https://jp.reuters.com/article/germany-china-idJPKBN2S0078

『[ベルリン 9日 ロイター] – ドイツ政府は9日、国内半導体メーカー2社に対する中国の投資を阻止したと明らかにした。ドイツでは中国からの投資を巡り、重要な技術の中国への流出や国家安全保障を巡る懸念が強まっている。

政府が阻止した案件の1つは、中国のサイ・マイクロエレクトロニクス(賽微電子)の子会社であるスウェーデンのシレックスによるエルモスの半導体工場の買収。エスモスはドルトムントを拠点としている。

政府筋がロイターに語ったところによると、もう1つの案件は、バイエルン州を拠点とするERSエレクトロニックに対する中国の投資。ERSの広報担当者は、自社を売却する計画はないが、中国のプライベートエクイティ(PE)会社から投資を受ける選択肢を検討していたと話した。

ドイツのハーベック経済・気候保護相は声明で企業買収について、重要なインフラが対象となっている場合や、技術が欧州連合(EU)以外の国へ流出する恐れがある場合には、入念に審査する必要があると指摘。「特に半導体部門では、ドイツと欧州の技術的かつ経済的な主権を守ることが重要だ。無論、ドイツは投資に開かれた姿勢を維持するが、無邪気ではない」と表明した。

中国外務省の報道官は定例の記者説明で、エルモスとERSの具体的な件については承知していないとした上で、「ドイツを含む全ての国々は、中国企業が通常の事業を行える、公平で開かれ、差別のない市場環境を提供すべきであり、通常の経済・貿易協力を政治化することは控えねばならない。国家安全保障を根拠とする保護主義については言うまでもない」とけん制した。』

中国への半導体規制 米国の照準、まず日本とオランダ

中国への半導体規制 米国の照準、まず日本とオランダ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN050I10V01C22A1000000/

『【ワシントン=飛田臨太郎】米国が同盟国に導入を求める先端半導体の対中輸出規制について、レモンド米商務長官は「日本とオランダが私たちに追随するだろう」と明言した。両国に照準を合わせ、早期に同調するよう圧力をかけた。

3日の米CNBCのインタビューで語った。具体的な中身は触れなかった。米政府高官が対中輸出規制で個別の国を名指しして連携を求めるのは初めてとみられる。

バイデン米政権は10月から半導体の先端技術や製造装置、関連人材について、中国との取引を事実上、禁じた。この規制には、外国企業でも米国の技術を使っていれば半導体の輸出を認めない措置が入った。

米国企業は先端半導体を作るためのソフトウエアや設計ソフトに強い。韓国や台湾の企業はこうした米技術を使った製品を扱うケースが多く、すでに規制の網が一定程度、かかっている。

矛先が日本とオランダに向かったのは、米の規制が及ばない半導体製造装置で強みを持つためだ。両国の企業は米技術に頼らず造れる製品があるとみられる。

世界の半導体製造装置市場は、首位の米アプライドマテリアルズ、2位のオランダ・ASML、3位の東京エレクトロンなどが競り合う。

東京エレクトロンは半導体ウエハーに特殊な薬剤を塗って回路を形成する機器で世界シェアの9割、ウエハー表面に薄い膜をつくる機器でも4割近いシェアがある。2022年3月期の連結売上高約2兆円のうち、中国向けは4分の1(5135億円)と、韓台を上回る最大の顧客だ。

米国半導体工業会(SIA)のグッドリッチ副会長は4日「米国企業が海外の競争相手に市場シェアを奪われないように、同盟国にはすぐに賛成してほしい」と訴えた。日本とオランダの2社が念頭にあるとみられる。

レモンド氏は「ホワイトハウスは同盟国を取り込むために懸命に動いている」と強調した。欧州連合(EU)や韓国も含め幅広く協力を求めていく構えだが、日本とオランダが最優先となる。

米紙報道によると商務省の高官が今月中にオランダを訪問する。近く日本とも本格的な協議に入る可能性が高い。

半導体製造装置の対中輸出を制限すれば日本経済への影響は大きい。半導体製造装置の輸出額は1~9月におよそ3兆円となり、前年同期比3割近く増えた。10年前からは3倍に急拡大した。

自動車部品(約2.8兆円)を上回り、鉄鋼(約3.5兆円)に次ぐ規模に成長した。輸出全体の4%超を占める。そのうち中国向けは9700億円ほどで10年前の7倍超に増えている。

米国の半導体規制の目的は安全保障だ。先端半導体の優劣は「極超音速ミサイル」や精密誘導兵器など最新軍事品の開発競争に直結する。レモンド氏は「我々は中国に先んじる必要がある。彼らの軍事的進歩に必要なこの技術を与えてはならない」と説明した。

「これまでにおこなった中で最も戦略的で大胆な行動だ。完全な遮断だ」と強調した。日本は米国と同盟関係にあり、安全保障上の中国の脅威の認識を共有する。台湾で有事があれば共同で対処する可能性がある。

経済産業省は米国の規制の影響などに関して日本企業へのヒアリングを進めるとともに、今後とりうる選択肢を協議している。同省関係者はレモンド氏の発言を受け「米国とは日常的に意見交換している」と述べた。

米国からの打診の有無については「外交上のやりとりなのでコメントできない」と述べるにとどめた。西村康稔経済産業相は4日の記者会見で今後の対応を問われ「適切に対応していきたい」と語っていた。
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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

「バイデン米政権は10月から半導体の先端技術や製造装置、関連人材について、中国との取引を事実上、禁じた」とはあるが、これは原則米国市民や米国企業を対象としたものであり、日本の企業に直接影響する規制ではない。ゆえに米国は日本にも同様の措置を求めているわけだが、それは対中半導体輸出規制を徹底するだけでなく、米国企業と同じ競争条件で中国に関わるようにする、という話でもある。
2022年11月5日 21:57 』

米商務長官、対中半導体規制「日本も追随するだろう」

米商務長官、対中半導体規制「日本も追随するだろう」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN04D3L0U2A101C2000000/

『【ワシントン=飛田臨太郎】米国のレモンド商務長官は米国政府が始めた先端半導体の対中輸出規制について日本も追随するとの考えを示した。「日本とオランダが私たちに追随するだろう」と述べた。3日の米CNBCのインタビューで明らかにした。

米政府高官が対中輸出規制での連携について具体的な国名を明言したのは初めてとみられる。日本政府は米国からの打診を受けて、どのような内容なら追随できるか議論している。レモンド氏は具体的な中身については言及しなかった。

米国は10月から半導体の先端技術をめぐり中国との取引を幅広く制限する措置を始めた。製造装置や関連人材も含めて中国との事業を事実上、できなくした。レモンド氏は「これまでにおこなった中で最も戦略的で大胆な行動だ。完全な遮断だ」と強調した。

先端半導体の優劣は「極超音速ミサイル」や精密誘導兵器など最新軍事装備品の開発競争に直結する。レモンド氏は「我々は先んじる必要がある。彼らの軍事的進歩に必要なこの技術を否定する必要がある」と意義を説いた。

米産業界からは米国企業だけが不公平な競争環境に置かれるとして不満がでている。レモンド氏は「他の国も続くだろう」と理解を求めた。「国家安全保障のミッションを成し遂げ、米国企業を罰することのないよう的を絞っている」と説明した。

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