日本人の承認欲求 (新潮新書) 新書

日本人の承認欲求 (新潮新書) 新書
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 ※ テレワークを阻んでいるのは、結局は「ヒトの社会的欲求」という話しかい…。

 ※ ことは「欲求」「欲望」なんで、課題解決するのは難しい…。

 ※ 「解脱じゃあ。解脱するんじゃあ。」…。

『苦手な上司も、厄介な部下も、根っこは同じ!?

ムダな出社を命じられる、在宅勤務なのに疲れる、新人が職場に馴染まない。
コロナの感染拡大が落ち着くと、多くの企業は瞬く間に出社へと切り替えた。
日本でリモート改革が進まない原因は、閉ざされた組織に巣くう特異な「承認欲求」にある。
誰もが持つ認められたい気持ちをコントロールし、満たされるにはどうすればいいのか――
組織研究の第一人者が、日本的「見せびらかし」文化の挫折と希望を解き明かす。』

『(目次)

序章 テレワークの普及を拒む、最大の「壁」

「日本的な働き方」のナゾを解く、二つのキーワード/テレワーク生活で気づいたこと

そしてメンタルにも支障が/薄れる管理職の存在感/社内の勢力図が変わった

日本の弱みを強みに変えられるか

第一章 「テレワークうつ」の正体は承認不足

一 なぜ出社しないと不安になるのか?

奪われた「見えない報酬」/誤解・軽視される承認欲求/自分を綺麗に映す鏡がほしい
リモートでは得られない承認もある/同期生に会えない不安/後々まで残る「承認不足」のダメージ

すぐに廃れた「リモート飲み会」/なぜ、自信が失われたのか/リモートだと緊張しないワケ

「気楽さ」と「物足りなさ」は表裏一体/葛藤の背後にある「承認欲求の呪縛」/部下が見えない上司の憂鬱

仕切りがないオフィスへのこだわり/大部屋で働きたがる上司は、よい上司か?/管理職特有の承認欲求とは

二 テレワークで気づいた会社の存在感

日本人にとって「会社で認められる」意味は/能力・個性が認められる唯一の場所
日本の企業人は社外に友人がいない/会社は「見せびらかし」の場

第二章 「見せびらかし」文化の罪

一 やる気の原動力は「見せびらかし」?

役職ポストの威光/「見せびらかす」ための競争/理性で制御できない、肥大化した承認欲求

二 「働き方改革」と生産性向上の足を引っ張る承認欲求

上司の目がないと〝やる気〟が出ない/認められるための残業?/根強い役職ポストへの執着

ムダがムダを呼ぶ本末転倒の連鎖

三 承認の相互依存がゆがめる人事

「近くにいる者ほど評価される」という法則/承認の返報性原理

第三章 「見せびらかし」から「チラ見せ」へ

一 奪われた「ハレの舞台」

テレワークで「見せびらかし」が困難に/「偉さ」の基盤が崩壊

フラット化する社会に「偉さ」は無縁/回り始めた負のスパイラル

二 「チラ見せ」に長けたZ世代も……

自尊感情を表に出さない日本の若者/叩かれないための「チラ見せ
Z世代は「チラ見せ」の達人/管理職も外では「チラ見せ」が必要

「チラ見せ」で品格が問われる社会/チラ見せに呼応した、社内の「ほめる」取り組み
嫉妬を避けるため表彰も控えめに/内向きになった若者/リアルな関係に飢えるZ世代

第四章 テレワークで反転攻勢に……そのカギは

一 日本人の価値観も「ハイブリッド型」に?

コロナ禍を改革の好機に/「ハイブリッド型」の働き方が主流に/コスモポリタンとローカル

テレワークの制度化が転機に/共同体の呪縛から脱却

二 消える承認の「床」と「天井」、そして「壁」

承認の「床」が抜ける?/捨てる神あれば拾う神あり/「天井」にも穴が開く

三 副業が「個」を解き放つ

「副業解禁」のインパクト/副業で社会的な尊敬を得るチャンスが/起業の原動力は
強い承認欲求/テレワークが切り開くシームレスなキャリアチェンジ/コワーキング
スペースが承認の場に/崩れる会社の「壁」/時間の「壁」も消える/テレワークで得をする人

四 日本人が捨てるもの、生かすもの

「濃い関係」の強み/「見せびらかし」文化の復権/「偉い」から「すごい」「さすが」……へ

会社のなかにも新たな変化が

あとがき 』

テレワークで行き場失う承認欲求

テレワークで行き場失う承認欲求 偉さ誇る時代の終わり テレワークと承認欲求(上) 同志社大学政策学部教授 太田 肇
https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXZQOCD237TV023052022000000

『2022/7/4

 新型コロナウイルス禍を受けて、半ば強制的にテレワークが導入されてからおよそ2年が経過した。コロナ禍が落ち着きを見せるとともに大都市圏では通勤ラッシュが復活し、オフィスにもにぎわいが戻ってきた。会社が対面での働き方に戻し、出社を求められるようになった会社員も多いだろう。

テレワークの普及で管理職が「偉さ」を誇る時代は終わりつつある(写真はイメージ)

 各種の調査から分かってきたのは、テレワークでどうしてもできない仕事はさほど多くないという事実だ。営業や窓口業務のほか、製造や建設現場の仕事ですらリモートでこなせるようになっている。むしろテレワークの定着を妨げる「見えない壁」が社会的・心理的な要因の中にあることが分かってきた。

 拙著『日本人の承認欲求 テレワークがさらした深層』(新潮新書)は、社員の承認欲求、とりわけ職場という共同体の中で自分の存在感を示そうとする日本人特有の表れ方がテレワークの普及を妨げていることを明らかにした。さらにテレワークだけでなく、組織のスリム化やムダの削減といった改革にも少なからぬ影響を与えている。

 その一端は次の調査結果からもうかがえる。パーソル総合研究所(東京・港)が2020年3月にテレワークを行っている人を対象に行った調査では、回答者の4分の1以上が「私は孤立しているように思う」「私には仲間がいない」と答えた。テレワークの頻度が高いほど孤立感も強くなる傾向がみられた。

 なかでも管理職がテレワークの影響を強く受けていることは、「必要がないのに出社を命じられる」「リモート飲み会の開催を執拗に迫られる」といった部下が口にする不満の声からもうかがえる。

 管理職の承認欲求はこれまであまり注目されてこなかったが、他の欲求に勝るとも劣らない力で人の態度や行動に影響を及ぼすことが明らかになってきた。わが国特有の組織・社会構造によって欲求が前述した独特の表れ方をすることもわかってきた。

 「序列」意識させる大部屋オフィス

 本人がどれだけ意識しているかはともかく、日本企業の管理職にとって会社は自分の「偉さ」を見せびらかす場であり、それによって承認欲求を満たしているといってよい。地位の序列は「偉さ」の序列であり、大部屋で仕切りのないオフィスは序列を見せびらかすのに適した構造になっている。部下は上司の一挙手一投足に注目し、ひと言ひと言に耳を傾けてくれる。自分が仕切る会議やイベントは管理職にとってはハレの舞台だ。

 程度の差はあれ、非管理職や若手社員も意識は同じだ。社内での地位は低くても下請け企業や取引先に会社のブランドをひけらかすことがある。若手社員も新人が入ってきた途端にがぜん張り切り、先輩風を吹かす。先輩が新入社員を公私両面で指導するメンター制度も、メンティー(指導される側)はともかくメンター(指導する側)のモチベーションは明らかにアップする。

 背景にタテ社会と共同体型組織

 自分の「偉さ」を見せびらかすことによって承認欲求を満たす日本人サラリーマンの志向と行動特性は、日本の組織・社会特有の構造から生じている。

 一つは、わが国がいわゆる「タテ社会」(中根千枝著『タテ社会の人間関係』)だということである。社内の上司と部下の関係だけでなく、元請けと下請け、顧客と店舗、さらには取引先との間でも上下関係ができ、そこから「偉さ」の序列が生まれる。敬語や言葉遣いにそれが象徴的に表れる。要は「対等」という概念がないのだ。接待や宴会は「偉さ」を見せびらかす場でもある。

 もう一つは会社がイエやムラのような共同体としての性格を備えていることである。日本企業はいまだに終身雇用の枠組みを残しており、転職や中途採用などメンバーの入れ替わりが少ない。メンバーが固定化すると、自然に「偉さ」の序列ができる。

 このようなタテ社会と共同体型組織は、かつての工業社会、とりわけ少品種大量生産型システムとは相性がよかった。決まったものを正確に作るには、軍隊のような上意下達の規律正しい組織が効率的だった。単純な事務作業が中心のオフィスも同じだ。』

『ところが、ネットの世界は基本的にフラットである。テレワークはタテよりヨコの関係で進められる。これまで管理職が担ってきた情報の集約、伝達、仕事の配分といった仕事の多くは不要になり、組織の階層は少なくて済む。当然、管理職の数も減る。その結果、「偉さ」の源であるシンボルが消滅していく。

 テレワークだと物理的にも、社会的・心理的にも共同体の境界があいまいになる。上司からすると自分の存在を認めてくれる部下は目の前にいないし、部下は社外の人たちとネットワークを築いていく。情報・ソフト系の企業などでは、もはや会社の内と外との境界さえわかりにくくなっている。そのようななかで自分の「偉さ」を示そうとすると部下たちは離れていくか、下手をするとパワハラ扱いされるのがオチだ。

 健全な承認欲求を原動力に

 とはいえ、「見せびらかしたい」という意識は米国の心理学者アブラハム・マズローのいう「尊敬の欲求」(承認欲求の一部)からくるもので、それ自体を否定すべきではない。そもそも「欲求」である以上、食欲や性欲などと同様に捨て去ることは難しい。問題は人格的な上下関係に基づく「偉さ」を誇るところにあり、人格的に対等な関係の中で個々人が能力や業績、個性などを認められる場をつくればいいわけだ。

 ある機械メーカーでは、製造した機械に製作者の名前を入れて出荷するようにしたところ、若手の離職者がほぼゼロになった。毎月研究会を開いてメンバーが順番に自分の実績や得意なことを発表している職場では、メンバーの帰属意識や一体感が目にみえて高まったという。

 新たに表彰制度を取り入れた会社では「社員が失敗を恐れず挑戦するようになった」「社員のモチベーションが上がって業績がV字回復した」といった声が聞かれる。

 スポーツや芸能などの世界を見れば分かるように、「自分をアピールしたい」という欲求は活躍と成長の原動力にもなる。コロナ下のテレワークで従来の価値観や行動様式が通用しなくなった今こそ健全な形で承認欲求を満たせる場を広げていきたい。
太田肇(おおた・はじめ)
同志社大学政策学部・同大学院総合政策科学研究科教授。神戸大学大学院経営学研究科修了。経済学博士。専門は組織論、とくに「個人を生かす組織」について研究。日本労務学会常任理事。組織学会賞、経営科学文献賞、中小企業研究奨励賞本賞などを受賞。『「承認欲求」の呪縛』(新潮新書)、『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書)、『公務員革命』(ちくま新書)、『「見せかけの勤勉」の正体』(PHP研究所)、『個人尊重の組織論』(中公新書)、『「超」働き方改革』(ちくま新書)、『同調圧力の正体』(PHP新書)など著書多数。近著に『日本人の承認欲求 テレワークがさらした深層』(新潮新書)。』

社内会議、あえてオンライン

社内会議、あえてオンライン 席順なし・空気読まず
Bizワザ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1637Y0W1A710C2000000/

『新型コロナウイルス下のオンライン会議に習熟するにつれ「対面のリアル会議よりも優れている面がある」との声が増えている。コロナにかかわらず、あえてオンラインを選ぶメリットがある会議はどんなものか。リアルとの使い分けのポイントを探った。

組織コンサルタントの堀公俊さんによると、オンライン会議は「心理的にフラットな議論がしやすい」。リアルの会議室のような席順はなく、どんな肩書の出席者も画面上では同列に扱われるからだ。

上役の顔色をうかがったり、多数派に合わせたり、といった忖度(そんたく)、同調の空気を発生しにくくする効果が期待できる。発言したい場合はボタンひとつで「挙手」できるため、タイミングや司会者とのアイコンタクトなどに気配りしなくていい。

パソコンの画面越しのコミュニケーションは他の参加者からの直接の視線がなく、会議の張りつめた雰囲気も薄い。在宅勤務なら、よりリラックスして上役に対しても率直な意見が述べやすくなる。

組織コンサルタントの堀公俊さんは「オンライン会議の教科書」の著書もある

オンライン会議には、発言しない出席者の意見をすくい取るツールもある。

エン・ジャパン人材活躍支援事業部シニアコンサルタントの勝又康仁さんは「参加人数が多い研修や初対面同士が多い会議では匿名投票の機能を使う」という。意思表示のハードルを下げて「議論が活発になるよう促している」。

匿名投票の機能はオンライン会議システム「ズーム」などに付いている。権限のある上役や声の大きい人の意見に対して、仮に水面下で異論があれば匿名投票で浮かび上がるはずだ。

「グーグルフォーム」「Slido(スライド)」といった自由回答方式のアンケート機能を併用してもいい。これらはリアル会議でも使えるツールだが、オンラインではアンケートの回答フォームを即座に画面で共有できるメリットがある。

堀さんは「話が脱線しにくいのもオンライン会議の特長のひとつ」と語る。結論を出さなければならない案件で、本筋と関係のない余計なやり取りが発生しにくいオンラインは有利だ。「提案やアイデアは事前に共有し、会議ではその可否だけを話し合う」といった対策を講じれば会議時間をさらに短縮できる。

勝又さんは「記録性はオンラインのほうが勝っている」と分析する。グーグルの音声文字変換アプリはマイクの音声を自動で文字に起こすため、記録係は不要。全員が議論に集中できる。文字はリアルタイムでスマートフォンやタブレットに表示され、保存しておけば議事録にもなる。

エン・ジャパンはオンライン会議ツールを活用し、話しやすい空気をつくっている

こうした文字起こしや録画は都合で会議に参加できなかったメンバーへの伝達にも役立つ。リアル会議も録画などが不可能ではないが、機材のセッティングなど準備に手間がかかる。しかもオンラインに比べて参加者に「記録されている」という意識が働きやすい。

一方、人間関係の構築が主目的の場合はリアル会議が適している。発言者に全員そろって耳を傾けるだけでなく、出席者同士が自然発生的に自由にコミュニケーションできるからだ。

組織の一体感を高める社内の表彰式や新年度の社長挨拶なども、オンラインでは場にふさわしい空気を醸成しにくい。上意下達の業務命令なども「わざわざリアルで集めて指示した」という重みを付ければ浸透しやすい。オンラインかリアルかの見極めは組織運営の要諦のひとつといえそうだ。

(山口和輝)

誠意伝えるならリアル

オンラインとリアルを使い分けて仕事上のコミュニケーションを円滑にするには、どんな心構えが必要か。情報伝達の方法が人間心理に与える影響に詳しい上智大学経済学部の杉谷陽子教授に聞いた。

上智大学経済学部の杉谷陽子教授

――オンライン会議による社内コミュニケーションが広がっています。

「当初は業務に支障があるとの意見が多かったが、会議の取捨選択や会議時間の短縮につながり、やり取りがスムーズになったという話も出てきている。ただし、初対面からオンラインではうまくいかないケースも多い。参加者の人間関係や会議内容で使い分ける必要がある」

――オンライン会議のメリットは何ですか。

「複雑な情報を主観を入れずに伝えるのに向いている。人間の脳の認知には容量に制約があり、対面では相手の雰囲気や服装などの情報が多く、気が散ってしまうことがある。目的が明確に決まっているときほどオンラインが有効だ。一方、あまり話したことがない相手に何か依頼する場合などはリアルのほうが誠意が伝わり、トラブルも起きにくくなるだろう」

――初対面は対面のリアル会議のほうがいいですか。

「私が昨年末に実施したアンケート調査では、人間関係が出来あがっていない段階では対面で話すことが重要という意見が多かった。新人社員に対する教育など、相手のパーソナリティーを理解する必要がある場面ではリアルのほうが優位性が高いだろう」

「オンラインでも表情や身ぶり手ぶりは見えるが、コミュニケーションの『非言語的』な手がかりは対面のほうがずっと多い。その場が会議室なのか居酒屋なのかで同じ言葉でも意味が変わってくる」

――オンラインがいいかリアルがいいかを見極めるポイントは何ですか。

「仕事のチームの会議なら、ひとつはメンバーの関係性だ。新しいメンバー構成で働き始めるときは、リアルで信頼関係を築きたい。感情的な部分への配慮を大切にしつつ、オンラインやメールを効率的に使っていくといい」

「会議目的が指示の伝達か、議論や調整かによっても変わってくる。交渉したり、意見を出し合ったりするときは対面のほうが感情的なトラブルが起こりにくい。若い人はオンラインのほうが心理的プレッシャーなく発言できる面がある」

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コロナ禍で学ばなくなった

コロナ禍で学ばなくなった テレワークの意外な副作用
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC1373K0T10C21A7000000/

 ※ 別に「コロナ禍」のせいでは、無いだろう…。

 ※ 「学問する」「学ぶ」ということの本質は、「独学」だと思っている…。

 ※ そういうことを「実現できる能力」が無いことが、「露わになった」だけの話しだろう…。

 ※ 未だに、「対面で」「他人に、分からないことを「どうすればいいですか」とすぐ質問すること」が学びの重要な要素だと考えていることの方が、驚きだ…。

 ※ 世の中に、知りたいことが何でも書いてある「虎の巻」「教科書」、なんてものは無い…。

 ※ 分からないことを「質問すれば」、親切に教えてくれる「賢者」、なんてものは存在しない…。

 ※ 「分からないこと」「知りたいこと」は、自分で一つ一つ、コツコツ調べて、「この世の真実」に一歩づつ近づいて行くんだ…。

『新型コロナウイルスの感染拡大によりテレワークは広がったが、日本人の学ぶ時間は減っている――。こんな実態が7月5日、明らかになった。リクルートワークス研究所が2016年1月から毎年実施する「全国就業実態パネル調査(JPSED)」で分かった。

同研究所は同調査で全国15歳以上の男女約5万人を対象に、調査前年1年間の個人の就業状態や所得、仕事の状態などについて、同一の個人を追跡調査している。加えて、同研究所同調査を基に「Works Index」という加工統計を作成している。

Works Indexは「就業の安定」「生計の自立」「ワークライフバランス」「学習・訓練」「ディーセントワーク」の5項目で数値を算出し、合成したものだ。ディーセントワークとは仕事量や負荷が適切で、差別やハラスメントのない職場であるといった健全性が保たれていることを意味する。
働き方、総合的には前進したが…

17年1月のJPSEDに基づく「Works Index 2016」から21年1月のJPSEDに基づく「Works Index 2020」まで、5年間の変遷をたどると「『学習・訓練』を除く4つの指標で水準が上昇し、総合的にみると、日本の労働者の働き方は前進したといえる」(リクルートワークス研究所の孫亜文研究員・アナリスト)。

背景について孫研究員は「新型コロナ感染拡大以外にも、政府や企業が働き方改革に本格的に取り組んできたことや、セクハラ撲滅を掲げる#MeToo運動などの影響が大きい」と分析する。
「学習・訓練」は2年連続で上昇していたが、2020年に低下した(出所:リクルートワークス研究所)

「学習・訓練」は17年に31.3ポイントだったが、18年に32.5ポイント、19年に33.1ポイントと2年連続で上昇した。しかし20年には17年水準を下回る31.0ポイントまで下がった。

20年は、働き方改革により労働時間の短縮や休暇取得の増加が進んでいたことに加え、新型コロナ感染拡大により一部業種で休業や短時間勤務が求められて労働時間はさらに短くなった。

JPSEDではコロナ禍でテレワークが幅広い業種や職種で進んだことも明らかになっており、通勤にかけていた時間が浮いた人も少なくない。にもかかわらず、学習・訓練が20年に低下したのはなぜか。

学習・訓練の指標を細かく分析すると、20年はOJT(職場内訓練)の機会が19年と比べて1.9ポイント低下していた。OJTの種類には「(上司による)計画的な指導」「必要に応じた指導」など複数あるが、その中でも「(上司や先輩などから指導を受けてはいないが、他の人の仕事ぶりを)観察する(ことで新しい知識や技術を身に付ける)」の減り方が最も大きかった。
20年はOJTの中でも「他の人の仕事ぶりを観察する」が減った(出所:リクルートワークス研究所)

また調査ではコロナ禍で対面研修が延期されたり中止になったりしたためでOff-JT(職場外訓練)の機会も大きく減ったことが分かった。

コロナ禍にテレワークが広がり、オフィスへの出勤が制限されたことで、OJTの在り方は変化した。学ぶ側は周りにいる人を観察したり、分からないことを「どうすればいいですか」とすぐ質問して学んだりすることが難しくなり、教える側も相手の表情などを見て内容やレベルを調整しながら指導することがしにくくなった。

新たなOJTをどう進めればいいのか。孫研究員は「今後は上司が仕事の進捗などについてより積極的に部下に尋ね、相談しやすい環境をつくることが求められる。テレワークによって企業が提供する学びの在り方だけではなく、マネジメントの在り方も変わる」とする。

「自ら学んでいる」も減少

学習・訓練の指標のうち「自ら学んでいる(自己啓発)」も19年の27.0ポイントから20年には26.1ポイントまで減った。この背景として、孫研究員は2つの回答の関連性に注目しているという。具体的には、「仕事の難易度が下がった」という回答が増えていることと、「単調ではなく、様々な仕事を担当した」が減っていることとの関連性だ。
20年は「仕事の難易度が下がった」という回答が増え、「単調ではなく様々な仕事を担当した」という回答が減った(出所:リクルートワークス研究所)

この2つの回答からは、テレワークに移行しても従来と同じように業務を進める必要があったため、通常よりも業務の幅を狭めるケースが多かった可能性があるという。

オフィスに出勤しないために雑談や偶発的な出会いが減り、新しいアイデアや新しいプロジェクトなどが生まれにくくなっていることも、仕事が単調になっていると感じる人が増えた一因に考えられる。

18年にリクルートワークス研究所が実施した調査分析によると、自己学習をする労働者は全体の33.1%。7割程度の人が仕事のために自分の意志で学んでおらず、学ばない人の半数は「学ばないことに理由はない」という結果だった。

さらに同調査では、時間ができたからといって学ぶようになるわけではないことや、自発的に学ぶようになるには企業が学ぶ機会を提供するとともに、個人にとって難易度の高い仕事を担当させることが欠かせないことも分かった。

社会全体の人的資本を高めるためには、個人の自発的な学びを定着させる仕掛けが欠かせない。そのためには「企業は難易度の高い仕事を提供し、学ぶ意欲をかきたてることが必要。加えて、学んだことを役立てられる場を設けて評価し、継続的に学ぶ意識や習慣を身に付けてもらうことが大切だ」と孫研究員は語る。

テレワークが新常態となりつつある今、学びに関するこうした課題を克服し、学びを継続するための新たな仕組みづくりが求められる。

(日経クロステック/日経コンピュータ 外薗祐理子)

[日経クロステック2021年7月12日付の記事を再構成]

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多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

村上臣のアバター
村上臣
リンクトイン日本代表
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分析・考察

テレワークの副作用として、業務の幅を狭めるケースが多かったこと、仕事が単調になっていること、そしてOJTの機会が減っていることなどから学びの機会が減ったというのは興味深いです。難易度の高い仕事にチャレンジすることが学ぶ意欲をかきたてることに繋がるとのことですが、テレワークでどう実現するかはまだまだ課題がありそうです。
一方でe-learningによる自主的な学習は増加しています。LinkedInの提供するLinkedInラーニングの利用は、コロナ前後の比較で3倍弱の視聴時間となっており、テレワークで空いた時間を有効活用している様がデータでも見て取れます。
2021年7月27日 11:43

武田佳奈のアバター
武田佳奈
野村総合研究所未来創発センター 上級コンサルタント
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別の視点

記事にあるリクルートワークス研究所の調査で分かったという「時間ができたからといって学ぶようになるわけではない」という結果に注目したい。以前、週休3日制の記事に対し、週休3日制導入目的の一つとして学び直しによる人材力の底上げが挙げられているが、時間を付与するだけのインセンティブでは限界があるのではないかと指摘した。もともと能力向上意欲の高い人は現状でも研さんに取り組んでいる人が少なくなく、そこまでではないが関心はある人や関心がない人にも行動を起こさせられるかが課題になる。コロナを機とした働き方の変化が全てを解決するわけではないことも忘れてはいけないと思う。
2021年7月27日 15:10
細谷雄一のアバター
細谷雄一
慶應義塾大学法学部 教授
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分析・考察

こういった記事は有り難いです。なんとなく、そうなのかな、と思いながらも自分ではそれを調べたり確認する機会がないので、こちらの記事を読みあらためて、学習時間の低下という現実を直視しています。自分にもあてはまるかもしれません。やはり、以前から言われている、雑談などが仕事の効率を上げるという指摘が的確なことの証左かもしれません。「オフィスに出勤しないために雑談や偶発的な出会いが減り、新しいアイデアや新しいプロジェクトなどが生まれにくくなっていることも、仕事が単調になっていると感じる人が増えた一因に考えられる。」ポストコロナに向けての、重要な示唆が含まれているように感じました。
2021年7月27日 12:32

大湾秀雄のアバター
大湾秀雄
早稲田大学 教授
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ひとこと解説

これまでは、新入社員の教育訓練機会が減っていることが長期的にこの年次の稼得能力にどのような影響を与えるかという点に関心を持っていましたが、より広い年次でOffJTのみならず自己研鑽も減っているというのは、深刻な問題であると捉えるべきです。2つの問題があります。まず、在宅勤務でより権限移譲を進め自律的な働き方を広げる必要があるにも拘わらず、それが進んでいないという点です。2つ目に、自律的なキャリア形成機会を与え、本人が自律的に必要な知識や技能を身につけることが求められてきているのに、そのサポートや意識改革が進んでいないという点です。現状の会社主導の人材育成の行き詰まりを示すデータだと思います。
2021年7月27日 11:59

鈴木一人のアバター
鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
コメントメニュー

分析・考察

なかなか興味深い統計資料。人が学ぶという過程に人との接触や対話があり、それはオンラインではなかなか実現しないものというのがここからも明らかになる。大学が対面授業なしに教育をきちんと続けられるかという問いにもつながる問題。
2021年7月27日 10:58

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リモートが揺さぶる長期雇用 消える3つの「無限定」

リモートが揺さぶる長期雇用 消える3つの「無限定」
編集委員 水野裕司
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGH099390Z00C21A2000000/

『長期の雇用保障と引き換えに、転勤命令に従い長時間の残業も受け入れる。そうした日本の正社員の雇用慣行に、新型コロナウイルス禍で広がるリモートワークが風穴を開け始めた。たとえば遠く離れた地域の仕事もネットを介してこなせば、転勤は不要になる。気になるのは会社命令に従う代わりに正社員が享受してきた雇用保障の行方だ。

Nikkei Views
編集委員が日々のニュースを取り上げ、独自の切り口で分析します。
日本の雇用システムは職務を定…

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日本の雇用システムは職務を定めない雇用契約を土台に形づくられている。雇用契約は会社という組織の一員になる資格を得る意味があり、そのため日本型雇用はメンバーシップ(資格)型と呼ばれる。

職務が限定されず、受け持つ仕事の範囲が不明確なことは、さらに2つの正社員の特徴を生んだ。ひとつは仕事量が増えがちで、慢性的な長時間労働に陥りやすいこと。働く時間も限定されないわけだ。

もう一つは配置転換に柔軟に従う必要があり、本意でない転勤命令にも応じなければならないことだ。つまり働く場所も限定されず、どこに赴任することになるか分からない。日本の正社員の雇用はこうした3つの「無限定」の慣行から成ってきた。

リモートワークで急速に崩れるとみられるのがまず、勤務地が会社都合で決まり、本人の自由度が乏しい慣行だ。

富士通は本人が望まない単身赴任を解消する制度を始めた。社員に「遠隔勤務」を認め、親の介護など家族の事情で居住地を変えるのが難しい場合、転居せずに遠方からのリモートワークで業務をこなせるようにした。奈良県や福岡県に住みながら東京の本社の仕事をする社員もいる。地理的な距離を取り払うネットの力のおかげだ。

離れた2つのオフィス空間をつなぎ、双方の社員が協力して仕事を進められるようにして、転勤を不要にするリモート技術も登場した。内装会社のフロンティアコンサルティング(東京・中央)は、東京本社と大阪支店を常時接続し、互いに相手方の等身大の映像を映し出すシステムを導入した。会議や打ち合わせに活用している。

tonariが開発したシステムで大阪支店とやり取りするフロンティアコンサルティングの東京本社(東京都中央区)

ベンチャー企業のtonari(東京・渋谷)が開発したシステムで、画面の中央に高解像度の微少なカメラを埋め込んで自然と目線が合うようにし、相手が隣にいるような感覚で臨場感のあるコミュニケーションがとれる。「分散する事業拠点を、あたかもひとつの空間のように運営できる」とフロンティアコンサルティングの稲田晋司執行役員は話す。技術の進歩が在宅勤務に限らない「リモートワーク」を広げている。

転勤をめぐっては東亜ペイント(現トウペ)訴訟で1986年に最高裁が出した判決が知られる。転勤を拒否して解雇された元社員がその無効と損害賠償を求めた。単身赴任を強いられるこのケースで最高裁は、家庭生活への影響は「通常甘受すべき程度のもの」とみなし、転勤命令が会社の権利乱用には当たらないとした。

雇用保障があるのだから単身赴任は我慢すべきだという考え方だ。この判決は会社の転勤命令は原則拒否できないという暗黙のルールのよりどころとなった。だがリモートワークの普及で転勤自体が不要になっていけば、判決の重要性は薄れる。

正社員の働き方の根っこにある「職務が無限定」の慣行も、リモートワークが見直しを迫る。離れた場所で働く社員を的確に評価するには、受け持ってもらう仕事の内容を明確にし、可視化することが第一歩になるからだ。

経団連が1月に発表した人事・労務分野の調査によると、テレワークが広がるなかでは職務の明確化が求められると考える会員企業が目立った。「従業員個人の職務内容・範囲の明確化」を実施済み、実施予定の企業は合わせて30.3%。検討中とした企業も33.6%あった。

人材の活性化策として、ポジションごとに使命、役割や具体的な仕事内容を明確にする「ジョブ型」人事制度も産業界に広がり始めている。テレワークとの親和性が高いとする経営者が多い。職務を曖昧にし、正社員を便利な労働力と位置づけてきた日本的慣行は確実に崩れる方向にある。

「職務が無限定」の見直しが進めば長時間労働もおのずと是正に向かう。

政府の働き方改革では時間外労働への罰則付き上限規制が設けられた。長時間労働の是正に一定の成果を上げているが、職務が不明確という根っこの原因が除かれる効果は大きい。

「無限定」な働き方が見直されれば、その見返りに正社員が得てきた長期的な雇用保障は緩み始めておかしくない。現に、職務を曖昧にする慣行が崩れていけば様々な変化が起きると指摘されている。

「社員が携わる業務の可視化が進めば、正社員にまかせず外部委託で足りる仕事があることも見えてくる。リモートワークは正社員の人数を絞るきっかけになるのではないか」。経済学者の間にはそんな見方がある。

経団連は2021年春季労使交渉の企業向け指針である「経営労働政策特別委員会報告」で、ジョブ型雇用が企業に浸透すれば転職の橋渡しをする外部(企業外)労働市場の発達が期待できるとした。プロジェクトごとに専門性を備えた人材を期限付きで雇用するなど、人材の流動化が今後の方向性との認識だ。

労働組合の中央組織である連合はジョブ型について、「人工知能(AI)分野など高度専門人材の採用ではあり得る」としながらも、「技能育成を誰が担うのかなど、職場における課題の深掘りも必要」としている。テレワークの急速な広がりを背景に経団連が普及に積極的なジョブ型に対し、警戒感は強い。それだけ長期雇用の慣行への逆風を感じ取っているのではないか。

編集委員が独自の切り口で分析「Nikkei Views」一覧へNikkei Views
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テレワークで勤務多様に 富士通は遠隔地の居住解禁

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ241XG0U0A221C2000000

『新型コロナウイルス感染拡大で、テレワークを前提とした多様な働き方が広がっている。富士通は配属地以外での遠隔勤務を認め、単身赴任の解消につなげる。ソフトウエアのテストを手掛けるSHIFTは在宅専門のエンジニア採用を始めた。休暇先で業務を行うワーケーション制度を導入する企業も増えている。テレワーク助成なども広がり、暮らし方や場所の制限を受けない全員参加型の働き方が可能になってきた。

内閣府が2020年12月…

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内閣府が2020年12月に全国約1万人を対象に実施した調査では国内のテレワーク実施率は21.5%と19年12月調査(10.3%)の2倍。東京23区内の実施率も同2.4倍の42.8%と、テレワーク普及が進む。

【関連記事】
通信費、半額非課税に 社員のテレワーク補助で政府指針
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富士通はこのほど、遠隔勤務を認めた。親の介護や配偶者の事情で遠隔地に移住せざるを得ず退社するケースがあった。人材を引き留めるためにも部署やポストも変わらず、テレワークで仕事を継続できるようにした。東京都内の本社に所属しながら奈良県や福岡県から働く社員もいる。

約4千人いる単身赴任者も本人が希望すれば家族がいる場所に戻り、遠隔勤務に切り替えられるようにもする。富士通はオフィス出社は最大25%に抑えている。国内グループ会社を含めたオフィス面積を約3年で半減する作業も進めている。

日本でも共働きの一般化で配偶者の転勤に伴う帯同は難しくなっている。夫婦がそれぞれのキャリアを継続するため片方が単身赴任を選ぶケースは多い。

水処理大手のメタウォーターも20年夏、テレワークを活用することで単身赴任を解除する仕組みを導入。すでに約10人が単身赴任を外れ、帰任した。カルビーも所属部門が認めた場合の単身赴任の解消を決めた。

テレワークは欧米に比べて遅れていた「ワーケーション」の普及も後押ししそうだ。日本航空(JAL)は20年4~12月に延べ688人が利用した。働く動機を高める効果を期待して、顧客情報管理の米セールスフォース・ドットコムの日本法人は和歌山県白浜町にある施設でワーケーションを認めている。

テレワークは企業の拠点が少ない地方に住む人々の働く機会の拡大にもつながる。SHIFTは居住地を問わないテレワーク専門職の採用を始めている。SHIFTがオフィスを持たない広島県で業務に従事している社員がいるという。

テレワークで副業の機会を得る人も多い。地方企業に対してネット経由で副業人材を仲介するJOINS(東京・千代田)では、20年12月末時点で専用サイトに登録する副業希望者は約5千人となり、同1月比で4倍に増えた。中小企業のホームページ制作を支援するITエンジニアなどの登録が増えており、「在宅勤務の浸透で、本業との両立が可能になったことが大きい」(同社)。

クリックするとビジュアルデータへ https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-workstyle/

少子高齢化の加速で国内の労働力人口は減少が続く。パーソル総合研究所(東京・千代田)と中央大学は、30年時点で労働需要が労働供給を644万人上回ると予測する。場所を選ばないテレワークが普及すれば、女性や高齢者などの労働参加も高め、中長期的な日本の労働力不足を緩和する効果も期待できる。

通信費、半額非課税に 社員のテレワーク補助で政府指針

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODF145610U1A110C2000000

『新型コロナウイルスの感染拡大を機に企業が在宅勤務といった新しい働き方に対応したルールの整備を進めている。キリンホールディングスなどは従業員に手当を支給し在宅勤務への移行を促す。政府もこうした働き方の定着をにらみ税制面の対応を急ぐ。通信費の半額はテレワークに使用したとして所得税の課税対象にしないなど課税基準を明確にする。

新型コロナの感染拡大で2020年春に在宅勤務が広がり始めて以降、企業では在宅にともなう社員の負担を軽…

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・新型コロナの感染拡大で2020年春に在宅勤務が広がり始めて以降、企業では在宅にともなう社員の負担を軽減する動きが広がっている。社員向けのルールの変更で目立つのは手当の見直しだ。

・キリンホールディングスは工場勤務以外で週3日以上、在宅で勤務する社員約4000人を対象に月3000円の手当の支給を始めた。事後精算で定期代を支払う仕組みをやめ、出社時などの交通費を実費精算する形に変えた。同様の制度は富士通やソフトバンクなども導入している。

・中小企業でも動きが出ている。プログラミング教育のキラメックス(東京・渋谷)はパソコンを在宅勤務で利用する場合の通信費を会社で負担する。

・従来にない手当の支給では企業にとって税務処理が複雑になりかねない問題がある。特にテレワークの補助に関する税制は、どこまでが課税対象になるかが曖昧だった。財務省と国税庁は在宅勤務の普及の流れを維持するため対応が必要と判断。15日に国税庁が新たな指針を公表する。

・企業が従業員向けにスマートフォンやWi-Fiなどの通信費を補助する場合、実際に使う分の実費相当以外は給与とみなされ、所得税の課税対象になる。明細がある通話料と異なり、通信費は家庭用と仕事用の区別が難しい。企業からは源泉徴収の事務負担が増える懸念があり、目安を示してほしいとの要望が多かった。

・国税庁の指針では、在宅勤務をした日数分の通信費のうち、2分の1は仕事で使ったものと認める。残りは私用などとみなす。月30日のうち半分の15日を在宅で勤務すれば、通信費全体の4分の1が非課税となる。電気料金も目安を示し、業務で使った自宅の部屋の床面積などで水準が決まる仕組みにする。

・今年1月分の税額の計算から適用できる見通しで、企業の担当者は交通費などの補助と同様に税務処理を進めやすくなる。国が明確な目安を示すことで、より多くの企業が補助の導入に動く効果も期待できる。

・政府はこれまで11都府県に緊急事態宣言を発令した。感染防止で人の接触を減らすには夜の飲食の制限とともに会社員の出勤を減らすことがカギを握る。政府は出勤者数の7割削減を目標として在宅勤務を広げるよう企業に求めている。

【関連記事】

自宅をオフィスにして籠城 在宅勤務の費用は誰が?
在宅ワークの費用、だれが負担する? 就業規則で明確に
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「だから私はテレワークしない」 普及を阻む3大理由

「だから私はテレワークしない」 普及を阻む3大理由
テレワーク成功の勘所(24)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFK141JS0U0A211C2000000

『2020年は「テレワーク元年」ともいえる年だった。新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ目的で多くの企業が在宅勤務の活用に乗り出した。一方でいまだテレワークを拒む人もいる。その理由を独自調査で探ってみると、在宅勤務の普及を阻む要素がみえてきた。

【前回記事】

テレワーク効率低い40~50代 若手は冷ややかな目
調査は日経BP総合研究所イノベーションICTラボが日経BPのデジタルメディアの読者・会員を対象にウェブサイトを通じて20年10月に実施した。「直近1カ月において、あなたはテレワークを利用して職場(派遣・常駐先を含む)以外でどの程度働きましたか」と聞き、テレワークをしていないと答えた人にその理由を尋ねた(複数回答可)。

IT整備はそれなりに進んだが、制度の整備が遅れている

「直近1カ月において、あなたはテレワークを利用して職場(派遣・常駐先を含む)以外でどの程度働きましたか」との質問に「利用していないが、今後利用する予定」もしくは「テレワーク可能な仕事であるが、テレワークを利用していないし、今後も利用する予定はない」と答えた人の回答を集計した(出所:日経BP総合研究所イノベーションICTラボ)
利用しない理由の首位は「勤務先(または派遣・常駐先)がテレワーク制度を導入していないから」で37.3%の人が挙げた。ノートパソコンやウェブ会議ツールなどIT(情報技術)インフラの導入に比べて、制度面での対応が後手に回る企業が少なくないようだ。

自由意見には次のような声があった。「会社として形だけのテレワークに終始しているように思う。会社の就業規則や業務のシステム化などに課題がある」(製造、係長・主任クラス)

2位は「出社することでON/OFFを区分し、心身を仕事モードに切り替えたいから」で32.2%だった。3位は「同僚(上司や部下を含む)や取引先、顧客と直接対話したいから」で25.4%の人が選んだ。

4月比で増えた「心身を切り替えたい」
ここで日経BP総研が書籍「テレワーク大全」の発行に向けて4月に実施したテレワークの調査結果と比べてみたい。緊急事態宣言直後に実施した4月調査でも同じ設問を聞いているので、回答別の割合をグラフにまとめた。

テレワークしない理由についての回答で、4月調査と比べて最も増えたのは「出社することでON/OFFを区分し、心身を仕事モードに切り替えたいから」だった。同回答を選んだ人の割合は23.5ポイントも増加した。2位は「同僚(上司や部下を含む)や取引先、顧客と直接対話したいから」(17.5ポイント増)だった。

4月に緊急事態宣言が出されてから半年以上、テレワークを継続してみた本音として、気持ちの切り替えや同僚とのコミュニケーションに課題を感じる人はいるだろう。

自由意見でも「テレワークは移動時間が減るなど効率的な面があるが、仕事とそれ以外の時間の切り替えが難しく、微妙なコミュニケーションが取りづらいために仲間意識が育ちにくい」(IT・通信、専門職)、「テレワーク勤務によるコミュニケーションの希薄化が懸念される」(コンサルティング・調査、課長クラス)などの書き込みがあった。

4月比で選んだ人の割合が増えた回答の3位は「テレワークに適した環境が自宅にないから」で11.7ポイント増だった。4位の「テレワークを利用すると生産性が下がる・下がりそうだから」(10.9ポイント増)までが、4月比で10ポイント以上増えた。

テレワークをしてみたけれど成果が上がらなかったのでオフィスに回帰する、という人も少なからずいるだろう。直近1カ月はテレワークを利用していないと回答した、建設業の役員は「コロナ影響の低下がうかがえるので」と自由意見を述べた。

IT環境は半年で改善
この半年強で改善が進んだ要素もある。4月調査に比べて「利用しない理由」に選んだ人の割合が下がった要素の首位は「勤務先(または派遣・常駐先)がテレワークに必要なITシステム・インフラを整えていないから」だった。23.8ポイントも減った。

2位は「職場(または派遣・常駐先)で扱う帳票や文書の電子化が進んでいないから」(4月比12.4ポイント減)、3位は「情報セキュリティーの確保に不安があるから」(同4.9ポイント減)だった。日本企業におけるIT面でのテレワーク対応はそれなりに進んだようだ。

一方で専用機器などを使う仕事などは、テレワークを活用するのは難しい。「CAD(コンピューターによる設計)システムなどの導入が難しい」(コンサルティング、部長クラス)というコメントは、その通りだろう。

「テレワークに適さない業務を担当している」と答えた人に具体的な業務を回答してもらった。列挙してみると次の通りである。

建設などの現場作業、現場監督/管理、営業、システムなどの運用、現場検査/検査関連、発送業務、病院勤務、経営企画、人事総務、人工衛星の運用業務、自営業、農業――。

20年の時点では「確かにテレワークは難しそうだ」と感じる仕事が並んでいる。だが今後デジタル技術の進化により、これらの業務をこなす人でも遠隔勤務がしやすくなる時代が到来する可能性は十分にある。

「100年後には『昔は電車に乗って、オフィスという共有スペースに人が集まって仕事をしていたんですよ』と言っている気がします」(IT・通信、派遣・契約社員)。調査にはこんな自由意見も寄せられた。

新型コロナの問題も残念ながら収束にはもう少し時間がかかりそうだ。21年もテレワークを活用するシーンは少なくないだろう。この状況を好機ととらえ、新しい働き方を追究し、確立できる企業だけがニューノーマル(新常態)の時代を勝ち抜ける。

(日経BP総合研究所イノベーションICTラボ上席研究員 大和田尚孝)

【テレワーク成功の勘所 記事一覧】
・ハンコは命より大切か テレワークで「長期戦」に備え https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59521250V20C20A5000000/?n_cid=DSREA001
・生産性「下がった」6割超 間違いだらけのウェブ会議 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59586800W0A520C2000000/?n_cid=DSREA001
・テレワーク成功に導く就業規則見直し 3つのポイント https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59811700R00C20A6000000/?n_cid=DSREA001
・経営者がテレワーク阻害 「日立ショック」で変わるか https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59980920U0A600C2000000/?n_cid=DSREA001
・派遣社員にも臨時手当 IT企業が異色のテレワーク https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60243070R10C20A6000000/?n_cid=DSREA001
・「在宅勤務率」の落とし穴 社員に不便を強いるだけ? https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60484140Y0A610C2000000/?n_cid=DSREA001
・テレワークで銀行システム統合 「3密」開発変わるか https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60680570T20C20A6000000/?n_cid=DSREA001
・コロナ死ゼロ「ベトナムの奇跡」支えたデジタル活用 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61118730T00C20A7000000/?n_cid=DSREA001
・富士通が目指すDX伝道師 テレワーク起点に全社改革 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61282670Y0A700C2000000/?n_cid=DSREA001
・テレワーク「新・三種の神器」を生かす https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61442910T10C20A7000000/?n_cid=DSREA001
・ウェブ会議の表示が遅れる 犯人は誰だ https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61845310S0A720C2000000/?n_cid=DSREA001
・ウェブ会議「私だけ遅い」 社内の怪奇現象の正体 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62034030Z20C20A7000000/?n_cid=DSREA001
・テレワークを阻む自宅ネット回線 いま見直すポイント https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62364920W0A800C2000000/?n_cid=DSREA001
・効率悪い日本のテレワーク IT投資とリテラシー不足 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62966690U0A820C2000000/?n_cid=DSREA001
・隠れ残業でテレワーク疲れ 公私切り替えに悩む社員 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63304830R00C20A9000000/?n_cid=DSREA001
・テレワーク移住定着するか 脱サラせずに地方へ https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63844900V10C20A9000000/?n_cid=DSREA001
・テレワーク難民の自治体職員 80万人救う異例の計画 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64142990T20C20A9000000/?n_cid=DSREA001
・テレワークの情報漏洩対策 知らないと「大事故」に https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64142990T20C20A9000000/?n_cid=DSREA001
・「抜擢」は時代遅れ 三菱ケミカルが挑むジョブ型改革 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65260610R21C20A0000000/?n_cid=DSREA001
・ソフトバンクG急回復 孫氏、Zoom越しの目利き力 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66043310Q0A111C2000000/?n_cid=DSREA001
・日立がペーパーレス大作戦 年5億枚削減、ハンコ全廃 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66258000W0A111C2000000/?n_cid=DSREA001
・テレワーク新たな課題は「同僚との対話」 半年で悪化 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66613030V21C20A1000000/?n_cid=DSREA001
・テレワーク効率低い40~50代 若手は冷ややかな目』 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFK022H20S0A201C2000000?n_cid=DSREA001

オンライン副業で月30万円を稼ぐ30代男性 どんな仕事? 1週間の過ごし方は?

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2009/16/news001.html

『「娘にいい教育環境を与えたいし、家の購入も考えている。大好きな車も欲しい。今後のことを考えたら年収を200万~300万円ほどアップしたい」──東京都内在住の田端拓也さん(仮名、30代)はそう思い、2年ほど前に副業を始めた。新型コロナウイルスの感染が拡大し、世界中が今のような状況になるなど、考えつきもしなかった頃の話だ。

 本業は、都内の小売企業でデジタルマーケティング業務を行っている。本業とのバランスを考えながらリモートでできる副業先の企業を1つずつ増やし、現在は本業以外に3社の仕事を掛け持ちし、毎月30万円超を副業で稼ぐまでになった。当初の目標を優に超える金額を達成したことになる。

 本業を続けながら、これほど早く達成できたのは、コロナの影響も大きい。在宅勤務が増え、通勤時間や会食機会などが減り、以前と比べると月に30~40時間以上の時間が生まれたからだ。

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写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

オンライン副業の内容は? 田端さんの1週間
 田端さんの“オンライン副業先”の1つ、長野県にある社員20人ほどの生薬製剤メーカーでの1週間の「EC(ネット通販)の改善」業務を見てみよう。

 木曜日の夜か金曜日の朝(1時間程度)、ネット通販のリピート購入率やターゲットとしているキーワードでの検索順位などのデータ(KPI)を収集し、スプレッドシートに入力。チャットツールを使って、定例Web会議の参加メンバーとスプレッドシートを事前に共有しておく。

 金曜日(1~2時間程度)午後3時から、生薬製剤メーカーの社長、EC担当者、外部Web制作会社の担当者が参加する定例Web会議に出席。数値目標として立てた予算と実績を比較し、達成状況を分析。今後1週間で実行する施策を話し合う。

 参加メンバーからいくつかの案が出た場合は、デジタルマーケティング業務を専門に行ってきた過去の経験を生かし、積極的に会議をリードし「まず今週はこちらからやる必要がある」と発言することもあるという。田端さんの発言を受け、社長がその場でやることを決める。

 土曜日~水曜日(4~6時間)には、会議で決まった今後1週間の施策(例えば「ランディングページの改善」)で、肝となる文字要素の作成を行う。社内確認や最終チェックは社員担当者にチャットで依頼。社内確認と最終チェック終了後、外部のWeb制作会社へ該当のWebページのデザインや制作を依頼、詳細を指示する。こちらもチャットと電話で実施。「木曜日の夜か金曜日の朝」の業務に戻る。

 この生薬製剤メーカーによると、こうした作業を繰り返した結果、4週間を過ぎたあたりからリピート購入率などの数値が向上。売り上げも前年比130%と成果が出始めたという。

 田端さんの1週間を見ても分かるようにオンライン副業の中身は地味な作業が中心だ。特に地方の中小企業がオンライン副業人材を活用して成果を出すための1つのポイントはここにある。必要なのは「MBAを持っているグローバルエリート」や「派手なスーパーカリスマ経営者」などではなく、検証、施策検討、決定、実行という「地道なPDCA改善」を行える副業人材だということだ。

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写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

 地方の中小企業には、顕在化した労働人口不足の減少により慢性的に人手不足な企業が多く、社員のほとんどは日々の現業を回すことで精いっぱいだ。地道なPDCA業務に取り組みたくても、時間を割ける人材がいない。専門の人材を正社員として採用しようにも、社員として働いてもらうほどの業務量がなかったり、年収や居住地の面で人材側と企業側の条件が合わなかったり難しい状況にある。

 そうした課題に対し、都市部在住のオンライン副業人材がうまくはまり、成果が出始めている。

商社や大手広告代理店への転職も考えたが……
 田端さんは、コロナ禍でリモートワークが当たり前となった昨今、背中を押されるようにしてオンライン副業の仕事を拡大させた。だが「今後を考えて年収をアップしたい」と考えた時点では副業ではなく、「今以上に稼げる商社など業界を変えて働くか、現在の業務を生かせる大手広告代理店への転職も考えた」(田端さん)。

 転職ではなく、今働いている会社で働き続けながら副業で稼ぐことを選んだのは、「今は給料がいい大企業も10年後どうなっているかは分からない。デジタルマーケティング業務も好きだから続けたい」と思ったからだという。コロナ禍の今、10年後どころか来年、再来年すら、大企業だから安心とは感じられなくなった。

 筆者が代表を務めている、都市部と地方をつなぐ副業人材サービス「JOINS」では、人材登録者数が昨年の約3.5倍に急伸した。そういった都市部で働く人々の意識の変化を実感している。

 JOINSに登録しているオンライン副業人材の多くは、毎週平日に定例Web会議を1.5~2時間程度行い、平日毎日1時間程度、週末に2時間程度作業、合計で週8時間程度を副業の業務時間としている。現地への訪問は、業務始めや工場や商品の確認、社内スタッフとの交流などのために1~2カ月に1回程度で、それ以外は全てリモートワークということになる。時間給の平均は約3500円のため、副業による月の稼ぎは、平均約10万円だ。

 ネット通販の改善、製造業のデジタル化や人事、首都圏・海外営業などの業務は今、オンライン副業のニーズが高まっている。「地道なPDCA」が得意分野だという人には、絶好のチャンスが訪れている。』

他山の石:「急遽テレワーク導入」に落とし穴

他山の石:
「急遽テレワーク導入」に落とし穴 国内約40社が被害「VPN不正アクセス事件」が他人事とは限らない理由
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2009/06/news009.html

『([高橋睦美,ITmedia])
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、リモートワークが広がる中、8月下旬に「VPN(Virtual Private Network)のアカウント情報が盗まれ、ネット上で公開された」という事件がメディアを賑わせました。VPN接続に利用されるパルセキュア社の製品の脆弱(ぜいじゃく)性を突かれてアカウント情報が盗まれたというものです。世界で約900社が被害を受け、中には約40社の日本企業も含まれていました。新聞の一面を飾ったこともあり、「うちの会社は大丈夫か? 同じような攻撃を受けないか?」と不安に感じた読者もいるのではないでしょうか。

 もしかすると「このベンダーの製品を使っていないから大丈夫」と思われた方もいるかもしれません。ですが、実はそうとは限りません。この一件にはいくつか他山の石にしたいポイントがあります。

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狙われる「閉じられない、止められないサービス」
 前置きになりますが、今回話題になった製品「Pulse Connect Secure」以外の機器を利用していても、安心というわけではありません。

 実はパロアルトネットワークス、フォーティネット、シトリックスといったベンダーが提供する多くのVPN製品でも、悪用されるとリモートから任意のコードを実行されたり、今回のように認証情報などを取得されてしまう恐れのある脆弱性が以前から指摘されています。すでに攻撃用に使えるコードも公開されていて、単に大きく報道されていないだけで、同様の攻撃を受けている可能性もあります。この製品を使っていないからといって安心するのではなく、いま一度棚卸しと脆弱性の有無を確認する必要があるでしょう。

 さて、今回の件で考えさせられるポイントの1つ目は、こうしたVPN機器をはじめ、外部に公開せざるを得ないサービスをどのように守るかという昔からある課題です。

 今回悪用されたのは、テレワークの導入に伴って存在感を増したVPN製品「Pulse Connect Secure」の脆弱性でした。テレワークを行う以上、社内だけに閉じるわけにはいかないという環境が狙われてしまったのです。被害に遭ったいくつかの企業は「内部侵入は確認されなかった」としていますが、過去にはVPN経由で不正侵入され、データを消去される被害にあったケースも発生しています。

 しかも、外部からのリモートアクセスを許さざるを得ない「入り口」は他にも存在しています。

 典型的な例が、外部からのリモート接続に用いられる「RDP」(Remote Desktop Protocol)と呼ばれるサービスです。過去にはパスワードを総当たり攻撃で破られるという不正アクセス被害が発生した他、「Bluekeep」と呼ばれる深刻な脆弱性も指摘されています。修正しなければ、同様の被害に遭ったり、ランサムウェアを送り込まれたりする可能性は否定できません。

 不要なポートやサービスは停止することがセキュリティの鉄則ですが、企業が業務を継続するのに不可欠な閉じるわけにいかないポート、サービスはどうしても存在します。攻撃者はそこを狙ってくることを前提に、認証を強固にしたり、しっかり監視を行ったりしてリスクを下げる必要があるでしょう。

「急きょテレワークへ移行」に潜んでいた落とし穴
 次に今回の件で感じたのは、環境を変えたり、イレギュラーなことが起きたときほど要注意だということです。

被害を受けた一社、平田機工はプレスリリースの中で、経緯の詳細を説明しています。それによると、同社は新型コロナウイルスの感染が拡大し、緊急事態宣言が出された4月中旬からテレワークを始めていました。それに伴いVPN装置の負荷が急増したため、昨年度に交換して外していた旧VPN装置を急きょ再導入し、負荷を分散することにしたそうです。

 ここで非常に残念なのは、交換後の現行機種は脆弱性に対応済みだったのに、急きょ投入した旧機種は、脆弱性が潜んでいるバージョンのままだったということです。緊急事態宣言というイレギュラーな状況に対応すべく、できる範囲で最善の策を打ったのでしょうが、そこに落とし穴が潜んでいたのでした。

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脆弱性が潜んでいた旧VPN装置を使ってしまった=平田機工のプレスリリースより
 この経緯を聞いて、「もしかしたら、うちでも十分起こりうることだ」と感じるネットワーク管理者は少なくないのではないでしょうか。

 筆者が思い出した別のインシデントは、これまたメディアを賑わせた、NTTコミュニケーションズに対する不正アクセスの一件です。同社の5月28日のプレスリリースによれば、新サービスへの移行に伴って撤去を控えていたサーバや一部の通信経路が、攻撃者の侵入経路として利用されたとあります。これもまた、環境の変化に伴うイレギュラーな状態を突かれた例といえそうです。

 いったん導入したシステムや環境が、未来永劫変わらないことはあり得ません。また、移行の過程で今回のテレワーク導入のような緊急対応を迫られたとき、十分なリソースがあるとも限りません。万全の対応は取れないけれど、「取りあえずその場をしのごう」というパターンは少なくないでしょうが、そこが攻撃者に狙われることは十分あり得るのだと、あらためて感じさせられます。

「脆弱性の修正を」という原則はまだ机上論?
 最後に、そして最も悩ましい課題があります。

止められないサービスを提供している機器やサーバに深刻な脆弱性が発覚したときにどう対応していくかという、これまた“古くて新しい”問題です。

 今回悪用された脆弱性は、2019年4月、つまり1年以上前にパッチが公開されていました。しかも、19年8月にはこの脆弱性を悪用する方法が公表され、脆弱な機器を探索していると思われるスキャン行為が増加したことから、JPCERTコーディネーションセンターなどが注意を呼び掛けており、ニュースにもなりました。

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JPCERTコーディネーションセンターが注意を呼び掛けていた
 先日開催された記者説明会の質疑応答によると、開発元であるパルスセキュアも、顧客に対し、パートナーなどを介してパッチの適用を複数回呼び掛けてきたことを明らかにしています。にもかかわらず、パッチを適用しないまま運用されている機器が残っており、被害が発生してしまいました。

 特定の用途向けに開発された「アプライアンス製品」だったということもあり、ソフトウェアとはちょっと受け止められ方が異なり、アップデートに手間取る側面があったのかもしれません。しかし、富士通がコラムで指摘している通り、「本来は信頼すべきVPNというネットワーク区間であるからこそ、それが知らぬうちに悪用された場合のリスクと想定される被害の大きさを正しく評価する必要がある」といえます。

 セキュリティの大原則として、「脆弱性が発覚したらアップデートしたり、パッチを適用したりしましょう」ということは、耳にたこができるほど叫ばれています。けれども問題なく動いているシステムや機器には手を触れたくなかったり、運用委託先も含めたメンテナンス時期の調整に手間取ったり、あるいは前述の「イレギュラーな状態」と相まってシステムの中で忘れ去られていたり、そもそも存在すら認知されていなかったり……原則には例外がつきものなのでしょうか。

 しかし攻撃者はそうした例外を見逃してはくれません。「パッチを当てて脆弱性を修正すること」はセキュリティの大原則ですが、実はその原則がまだ机上論であり、徹底していない場面があちこちにあるのだな、と思い知らされます。しかも最初にお伝えした通り、深刻な脆弱性は他のVPN機器にも、それどころか企業ITシステムを支えるあちこちのソフトウェアにも存在しています。それらとどう向き合えばいいのでしょうか。

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写真はイメージです(提供:ゲッティーイメージズ)

 逆のケースもあります。少し古い話になりますが、17年にはWebアプリケーションをJavaで効率よく開発できる「Apache Struts 2」に深刻な脆弱性が発覚したことがありました。このときは、修正パッチの公表後わずかな期間で複数のWebサイトがこの脆弱性を悪用する攻撃を受け、情報漏えいなどの被害が発生しています。IT部門側ができる限り早く対応に当たったにもかかわらず、間に合わなかったケースです。つまり、脆弱性が発覚すれば、1年以上たって攻撃されることもあれば、発覚からほんの数日のうちに悪用されることもあるのです。

 この事実を受け止め、自社のシステムでセキュリティの原則を本当に徹底するにはどうすればいいのか、運用現場の状況と折り合いを付けながら、どうリスクを減らしていくのかを、真剣に問い直すきっかけになったという意味で、今回の事件はまだまだ終わらないのかもしれません。』

4月にはじめたテレワーク、5ヶ月の進化を振り返る……

4月にはじめたテレワーク、5ヶ月の進化を振り返る……Zoom、VPN、NAS、会社支給のノートPC ――急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記(17)
「私物だらけ」からのスタート……
飛田九十九2020年8月31日 10:00
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1273488.html

※ インプレスの「PC Watch」に載っていた、テレワークの奮戦記だ…。大分、身につまされる人も、多いんじゃないのか…。

※ 以下にもある通り、この手の「機器」は、買ってきて、接続すれば、それでOK…、というわけにはいかない…。そこが、まさに「コンピューティングの世界」なんだ…。

※ 必ずや、「設定」や「機器同士のすり合わせ」「設定の見直し」が必要となる…。

※ しかも、進歩が日進月歩だから、「マニュアル」もすぐ古くなる…。結局、自分で、トライアル&エラーで、いろいろ試してみる他無い…。

※ それでも、だんだん、「カンが働く」ようになって、うまく「ツボにはまる」ことができるように上達していく…。そういうモンだよな…。

〔「急遽テレワークを導入した中小企業の顛末記」記事一覧〕

【緊急事態宣言前日】 「えっ?今日から在宅勤務?」
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/review/1247752.html

【緊急事態宣言突入】初のオンライン会議で久々のシャツ姿!ところが……
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1249182.html

【GW直前】初のビデオ会議!「もう、LINEでいいんじゃない?」
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1251266.html

【GW明け】「そうだ!会議を録画しよう!」
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1252658.html

【5月中旬】ついにZoom有料プランを導入!
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1253767.html

【5月下旬(1)】先輩企業に聞いてみた「普通にやったら、効率は落ちます」
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1255461.html

【5月下旬(2)】「データ移行に1日がかり…は、もう嫌だ」
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1257318.html

【5月末】助成金、ついに決定! 盲点だった価格変動・在庫切れ……
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1257520.html

【6月上旬】セットアップをどうしよう?
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1260358.html

【6月中旬】VPNルーターを補助金で設置! IP電話用とWi-Fi用のルーターも設定を変えないと……
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1262113.html

【6月下旬】うちの会社にNASがきた! VPNで自宅からも利用
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1264412.html

【7月上旬】今どきのノートPCで思いっきりZoom、男の夢も…
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1265863.html

【7月中旬】「紙の書類のために出社」はなんと無し?うちの経理って、実は先進的…
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1267113.html

【7月下旬】「ビデオ会議で自分だけ顔が暗い……」外付けカメラもiphoneも…
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1268042.html

【8月上旬】ノートPCでは在宅勤務がツラい!「画面の増やし方」を考えてみた
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1269888.html

【8月中旬】「会社支給PCをテレワーク用に仕上げてみよう」UACとパスワード保護共有
4月にはじめたテレワーク、5ヶ月の進化を振り返る……
https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/teleworkstory/1271887.html

(好評連載中)

VPNのパスワードはどう流出したのか、国内企業を襲ったサイバー攻撃の真相

VPNのパスワードはどう流出したのか、国内企業を襲ったサイバー攻撃の真相
勝村 幸博 日経クロステック/日経NETWORK
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/04507/

※ パスワードを「平文」のままで記録しておくとか、勘弁してほしい話しだ…。素人のオレでも、その危険性は分かる…。ネットワーク責任者は、「切腹もの」だろう…。

※ この前紹介した「アドレス帳のハッキング」と言い、世の中「ハッキングの危険性」に満ち満ちている…。「ハッキング」は、されるもの…、「マルウェア」は、送り込まれるもの…、という前提で、もの事を考えた方がよさそうだ…。

※ それと、その「ハッキングされたぽい話し」に付け加えておく…。それは、win10の「更新」を、あえて「遅らせていたこと」との関係だ…。

※ 「更新」で不具合に見舞われるのがイヤで、わざと「遅らせていた」…。そうすると、今度は、「脆弱性の穴」が生じるんだよ…。

※ 悩ましいところだが、「バックアップ体制」しっかり取っておいて、「更新」はすぐに適用する方が良さそうだ…。今回、「見舞われて」そう思った…。

※ そのバックアップ体制の話しだが、「ウインドウズ・バックアップ」は、いずれ切られる…、という話しだ…。Acronisは、謎のサーバーとしきりに通信するんで、これもあまり信用できない…。

※ 全く、「どーすりゃいいのよ…。」状態だ…。ああ、AOSがあったか…。しかし、あれもやたら処理が遅いしな…。それと、レスキュー・ディスクとか作る体制が、イマイチだった…。どうしたものかねえ…。

『2020年8月下旬、国内企業が使うVPN(仮想私設網)製品からパスワードなどが流出したと報じられ話題になった。国内のセキュリティー組織であるJPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)も情報流出を確認。報道された情報と同一かまでは確認できなかったものの、国内に割り当てられたIPアドレスがおよそ90件含まれていたという。

 攻撃者はVPN製品の脆弱性を悪用して情報を盗んだと考えられる。どの脆弱性が悪用されたのか、どう流出したのか、流出した企業はどうすればよいのか。真相と対策を探った。

悪用が容易な脆弱性
 脆弱性を悪用されたのは、米Pulse Secure(パルスセキュア)のVPN製品「Pulse Connect Secure」とみられる。脆弱性の識別番号は「CVE-2019-11510」である。

 この脆弱性の特徴は、悪用が容易な点にある。細工を施したデータを該当のVPN製品に送信するだけで、ユーザー認証を経ることなくVPN製品に保存されている任意のファイルを取得できる。そのためのプログラムもインターネットで公開されている。さらに、同脆弱性にパッチを当てていない製品のIPアドレスも公開されているという。

関連記事:パッチ未適用のパルスセキュア社VPN、日本企業46社のIPアドレスがさらされる
 このため、同脆弱性を突こうとするアクセス(スキャン)が世界中で横行している。JPCERT/CCも同様のスキャンとみられる通信を観測。同脆弱性を狙った攻撃の被害報告が、国内の組織から複数寄せられたという。

 脆弱性が見つかったのは2019年4月。同時期にPulse Secureはパッチを提供したが、なかなか適用されなかったようだ。

 パッチ適用の有無は、不正アクセスに当たらない方法で容易に調べられる。セキュリティー企業の米Bad Packets(バッドパケッツ)が2019年8月末に調べたところ、世界で1万4500台の脆弱なVPN製品が存在し、そのうち1511台が日本国内にあるとしていた。

 JPCERT/CCによると、今回流出を確認した国内のIPアドレス90件は、この1511台のIPアドレスにほぼ含まれていた。このためパッチ未適用のPulse Secure製品から流出した情報だと推測できるとしている。

 その後対策が進み、脆弱なVPN製品は減っていったがまだ多数残っていると考えられる。JPCERT/CCによると、2020年3月24日時点でも298台残っていたという。

脆弱性(CVE-2019-11510)がある国内のパルスセキュア製品サーバー数の推移
(出所:JPCERTコーディネーションセンター)
[画像のクリックで拡大表示]

キャッシュファイルを盗まれた恐れ
 セキュリティー組織などがたびたび注意を呼びかけているものの、悪用が容易な脆弱性でパッチの適用も進んでいないため、国内外で被害報告が相次いでいる。

 最近では2020年8月4日に米メディアのZDNetが大規模な被害を報告した。900を超えるPulse Secure製品のユーザーIDとパスワードなどのリストが、あるフォーラム(攻撃者などが情報を交換するWebサイト)に投稿されていたというのだ。

 公開されている情報の件数などから、国内報道で話題になったのはこのリストである可能性が高い。今になって取り上げられたのは、この中に国内企業が含まれていたことが判明したためだと考えられる。

 JPCERT/CCによると、流出情報には該当製品のIPアドレスに加えて、ユーザーIDや暗号化されていない平文のパスワード、セッション情報などが公開されていたという。

 VPN製品に限らず、一般にコンピューターやセキュリティー機器はパスワードのハッシュ値しか保存しない。だがPulse Secureの該当製品には、一部の認証情報を平文で保存する場所があった。このためその場所のファイル(キャッシュファイル)を取得された可能性がある。

 実際にJPCERT/CCが脆弱性のある該当製品で検証したところ、平文のパスワードやセッション情報などを取得できたという。

多要素認証とパスワード変更で対応
 VPNのパスワードが流出したということで注目された今回のインシデント(セキュリティー事故)だが、事後対応が適切ならば慌てる必要はない。具体的にはパッチの適用に加えて、パスワード以外でも認証する多要素認証(2要素認証)を導入したりパスワードを変更したりすればよい。

 パッチを適用しても、盗まれたパスワードを使い続ければ不正にアクセスされてしまう。だが多要素認証を導入したりパスワードを変更したりすれば、盗まれたパスワードは使えなくなる。

 今回はPulse Secure製品だけが話題になったが、他社のVPN製品でも危険な脆弱性が見つかっている。VPN製品はテレワークの要。現在利用しているVPN製品に脆弱性がないかを確認し、影響を受けるようならパッチの適用といった対策が急務だ。

 さらに言えば、脆弱性を突かれてパスワードを盗まれたり侵入されたりすることはVPN製品に限った話ではない。インターネットからアクセス可能な製品やサービス全てが抱えるリスクである。そうした製品やサービスを運用する担当者は、セキュリティーの不備がないかどうかを改めて確認する必要がある。』

いまいち定着しないテレワーク、「今も実施」は3割止まり

いまいち定着しないテレワーク、「今も実施」は3割止まり-「7割普及」目指す政府と開き
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00800/

『調査は東京商工リサーチが全国の約1万4300社を対象に実施し、7月に公表した。在宅勤務・テレワークを「現在、実施している」とする回答が31.0%だった一方、「一時実施したが、既に取りやめた」との回答も26.7%に達した。インターネット経由での情報管理に不安があったり、社員が慣れなかったりしたことが要因とされる。「一度も実施していない」は42.2%に上った。

東京都や大阪市など都市部では新規感染者の増加傾向が続き、7月下旬以降は全国で「感染経路不明」の割合が5割を超えた。コロナ対策を所管する西村康稔・経済再生担当相は経済界に「テレワーク70%以上の実施」を要請している。

在宅勤務やテレワークを導入するには、テレビ会議や業務管理に関するパッケージシステムの導入に加え、在宅を前提にした人事評価など「ソフト面」の改革が重要になる。だが、システム投資の余裕が乏しく、「昔気質」の社風が色濃い中小企業にとって、ハードルは高い。東商リサーチの調査では、「(在宅勤務を)実施している」との回答は、大企業が55.2%に達した一方、中小企業は26.1%にとどまった。

バナー写真:PIXTA』

テレワーク、VPN暗証番号流出 国内38社に不正接続

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62994110U0A820C2MM8000/

『日立化成や住友林業など国内の38社が不正アクセスを受け、テレワークに欠かせない社外接続の暗証番号が流出した恐れがあることが分かった。第三者が機密情報を抜き取ったり、ウイルスをばらまいたりする2次被害が予想される。事態を重く見た内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)も調査に乗り出しており、企業は対策が急務となっている。

【関連記事】
VPN脆弱性、修正遅れ突く 「ゼロトラスト」不可欠
ウェブ会議「私だけ遅い」 社内の怪奇現象の正体

新型コロナウイルスの流行で、日本企業の大半が本社と社員の自宅をつなぐテレワーク対応を迫られている。今回流出が判明した中には、こうした在宅勤務を推進する企業も多く含まれている。ソフトや機器の更新を怠っていたとみられる例も散見され、リモート時代の情報リスクが改めて浮き彫りになった形だ。

漏洩したのは、VPN(仮想私設網)と呼ばれる接続サービスの利用情報だ。VPNは通信データを暗号化し、社外から業務システムに接続する際などに使う。実際の専用線を敷設するより導入コストが安いため、多くの企業が社員の在宅勤務などに役立てている。

NISCによると、8月中旬に犯罪サイト上で、世界900社超のVPN情報がやり取りされていることを確認。詳細を調べたところ、このうち38社は日本企業だったことが分かった。

日本経済新聞が入手した被害企業リストには、日立化成や住友林業、ゼンショーホールディングス、オンキヨーの名前が挙がっている。医薬品製造の全薬工業、エネルギー関連の岩谷産業、電力機器のダイヘン、自動車総連も含まれていた。

ロシア語を使うハッカーが各社に不正アクセスして情報を入手したとみられる。VPNを使う際のユーザー名やパスワード、ネット上の住所を示すIPアドレスが流通していた可能性がある。

悪意ある第三者に情報が渡れば、VPNを伝って各社の基幹システムへの侵入が可能となる。各社は「社員情報の流出などの被害は確認していない」(住友林業)と口をそろえる。だが特別な対策を取らないと、社員を装って社内情報を盗み見したり、内部からサイバー攻撃を仕掛けたりできる状態だという。

今回情報が流出した企業は、米専門企業パルスセキュアのVPNサービスを使っていた。パルスセキュアは世界で2万社以上の顧客を持つ業界大手だが、同社のVPNを巡っては2019年4月に自ら脆弱性についての情報を公表。修正プログラムも公開していた。

日本でも民間団体JPCERTコーディネーションセンターが注意を喚起していた。しかし必要な対策を取っていない企業が多く残っており、情報漏洩の危険性が問題視されていた。一部企業は安全性に問題があるままVPNを使い続けていたもようで、ハッカーはこの弱点を突いて情報を盗み取ったとみられる。

今後は38社を「踏み台」にして各社の取引先などへ不正アクセスを試みる動きも予想される。サイバーセキュリティー会社サイファーマ(東京・千代田)の山田正弘氏は「IDや暗証番号だけでなく、2要素認証などを導入し、監視を強化することが重要だ」と話す。

被害企業の多くは「当該装置は停止した」(日立化成)「必要な対応を取った」(全薬工業)とする。社員ごとにアクセス制限を設けるなど追加対策も欠かせない。

新型コロナの感染拡大を受け、企業はテレワークの体制拡充を急いでいる。NISCは緊急事態宣言が発令された4月以降、企業の安全対策の遅れが目立つと指摘。「混乱に乗じたサイバー攻撃の兆候がみられる」と警鐘を鳴らしていた。』

脆弱性、修正遅れ突く 「ゼロトラスト」不可欠
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62998890U0A820C2EA1000/

入社後いきなりテレワーク…。

入社後いきなりテレワークでも、成果を出せる新人と成果を出させるリーダーとは?
https://comemo.nikkei.com/n/n74583bcfa33e

『皆さん、こんにちは。

今回は、コロナ渦の中、「入社後いきなりテレワーク」で社会人のスタートを切った新入社員が、どのようにパフォーマンスを上げていけば良いのか、また、管理職はどのように新入社員を育成していけば良いのかについて書かせていただきます。

サイバーエージェントでは、多くの企業と同様、4月1日の入社式をフルリモートで実施しました。その後、通常2週間程度ある全体の「新卒研修」も、急遽フルリモートでの実施を余儀なくされました。

新卒研修の目的は、
・社会人としてのマインドセットを完了させ、良いスタートダッシュをきること
・同期同士の親睦を深め、これから困難なことがあってもお互い励まし合い、共に乗り越えていく関係構築をすること

でしたが、結論から申し上げると、オフィスに全員が一堂に会する研修でしか成立し得ないと思われていたマインドセットや関係構築が、「十分オンラインでも可能。ただし工夫が必要」という結論に至りました。

これまでの常識であった対面での研修と、オンラインでの研修を簡単に比較してみます。

図1

■新卒研修を設計/運営する人事側が意識したこと
・チャット機能などを活用しインタラクティブな研修にする
・新入社員がアウトプットする機会を増やす
・ワークなどはできるだけ少人数単位にしてチーム感や一体感を創出する
■新卒研修に参加する側に意識してもらったこと
・研修を“受ける”のではなく、自分たちで“作る”という当事者意識を持つ
・表情や身振り手振り、チャットなどでの発言を通して気持ちを表現する
・研修を通しての学びを言語化する
新卒研修期間を経て、総合職は入社後約2週間で、エンジニアやクリエイター職は入社後約1ヵ月で各部署へと配属になったわけですが、その後のコンディションや活躍度合いにも例年と比べて変化がありました。

私自身は人事組織の中で、「採用戦略本部」という部門を管轄していて、新卒採用・中途採用をメインで担当していますが、採用して終わりではなく、その後の才能開花(いわゆる育成やオンボーディング)も一気通貫で責任を持つという体制をとっています。

毎年、社内のアンケートシステムを通して新入社員の自己評価とトレーナーからの他己評価を全て可視化してそのギャップを見たり、コンディションが良くない社員や悩みを抱えている社員にはフォローアップを強化したりというアクションをとっていますが、リモートワークの環境になったことで、新入社員のコンディションが例年よりも悪くなるのではないかと想定していました。
ところが予想に反して、ここ数年の新入社員を比較してみると、2020年度の新入社員のコンディションの晴れ率が高く、雨率が極端に低かったのです。(コンディションは晴れ、曇り、雨の3段階の自己申告制です。)

・リモートワークに向いている、デジタルネイティブ世代であること
・満員電車で毎日通勤したり、オフィスに出社することでの人間関係の悩みやストレスがかからないこと
・もともと内定者時代からインターンシップやアルバイトなどでオフィスでの就業経験を有している人が多いこと

などいくつかの仮説はありますが、活躍している新入社員を見ていると、以下のような特徴が挙げられます。

画像2

新入社員に限らず、リモートワークの環境では個々人の業務がブラックボックス化します。
分からないことが出てきた時にいつどのタイミングで先輩や上司に聞けばいいのか分からず、適切なタイミングがくるまで自分で抱えたままにした結果、業務が止まり、その間にどんどん別のタスクが増え、ズルズルと夜まで仕事をし続けてメリハリがなくなり、心身ともにリズムをつかめず調子を崩し、最終的に成果も出ない、という悪循環に簡単に陥ってしまいます。

また、会社への貢献実感を得られないと自信も持てないため、何か一つ得意なことや自分のキャラクターが活きる“役割”を持つと良いと思います。
サイバーエージェントでは、入社したばかりの新入社員が、自発的にチームの朝会や締め会などを盛り上げるためにコンテンツを用意したり、各部署で進めている活性化キャンペーンの推進をしている光景をよく目にしますが、リモートワーク下でもチームワークを高める役割を積極的に担ってくれていることが多いです。

次に、リモートワークの環境下でも、育成が上手だなと思うリーダーの特徴は以下の通りです。

画像3

このように見てみると、オフィス出社であろうとリモートワークであろうと、新入社員を育成する上でのポイントに大きな違いはないように見えますが、すぐ近くの席で「都度、適切なアドバイスをする」とか、ちょっとした雑談の中で「会社やチームのビジョンを共有する」という方法が取りにくいため、意図的に1on1での時間をとるなどして、ちょっとした悩みを吸い上げたり、チームの方向性を伝える場作りは意識した方がいいかもしれません。

変化対応していかなければいけない有事の時だからこそ、リーダーはこれまで以上にスピード感を持って意思決定を行い、管理するのではなくチームメンバーを信頼して権限委譲しながら実行支援していくことが求められています。

最後に、「入社後いきなりテレワーク」という状況から社会人人生をスタートすることになった新入社員にとっては、戸惑うことだらけの環境だったと思います。
ですが、それは新入社員を受け入れる側のチームのトレーナーやマネージャーといった役割の社員も同様で、テレワークにおける「人材育成」の難しさを痛感している人が多いというのが実態ではないでしょうか。

どちらか一方だけが努力すれば解決する問題ではなく、双方がテレワークならではの仕事の進め方の工夫を模索し、お互いにとってスムーズなコミュニケーションの取り方、パフォーマンスの上げ方を確立していく必要があるのではないかと思います。

そして、企業の人事や経営者の皆さんは、数年先を見据えて、今こそ「どんな環境でも(オンラインでもオフラインでも)“人を育てられる人”を大量に作る」ことに注力していかなければいけないと思います。』

五感をぜんぶ使うのはコスパが悪い、という感覚。

https://comemo.nikkei.com/n/n5e3679aeca4a

『「耳だけ参加します」

リモートワークがはじまってから、そんなセリフを聞くようになった。

料理をしながら、
育児をしながら、
若しくは他のタスクをこなしながら、
会議に耳だけ参加する。

聴いてさえいれば、大まかな流れは掴めるから効率的だ。

五感を全て研ぎ澄ませて〜

そんな感覚はもう昔の話かもしれない。

今日はそんな話。

〔目次〕
■五感を捧げる、というマナー
■モノゴトの本質を炙り出したコロナ
◾️五感をすべて使うのはもったいない

■五感を捧げる、というマナー
かつては学校の授業にしても、会社の打ち合わせにしても、五感を捧げることがマナーだった。

1.触覚(手)
2.嗅覚(鼻)
3.味覚(舌)
4.視覚(眼)
5.聴覚(耳)

の中で、例えば学校の授業で実際に使うのは

1.触覚(手)→ ノートを取る
4.視覚(眼)→ 黒板を見る
5.聴覚(耳)→ 話を聞く

くらいだが、授業中にガムを噛んだら「失礼だ」と怒られるのは当たり前だった。

しかし、リモートが当たり前になった今、
授業中にガムを噛んでも、打ち合わせ中にスマホを見ても怒る人は(あまり)いない。

むしろ作業効率的には、そっちの方がいいこともある。

冷静に考えれば、先生や上司が今まで怒っていたことを、「リモートだから」という理由で怒らないのもおかしい。

そこで考える。

本当はこれまでも、怒る理由なんてなかったのではないか?

■モノゴトの本質を炙り出したコロナ
言わずもがな、授業や打ち合わせの本質は「内容を理解すること」だ。

ガムを噛もうが、スマホを見ようが、内容を理解さえできていれば問題はない。人それぞれ、集中できるやり方で理解すればいい。

例えば以前、北欧の小学校を見学した際のこと。
教室には色んな種類の椅子があった。日本ではあまりみない光景なので、その理由を聞くと「だって、普通の椅子の方が集中できる子もいれば、ソファーの方が集中できる子もいるじゃないですか?」と返された。

あまりに本質的な回答で唖然とした。

日本ではみんなが同じ椅子で、同じ姿勢で先生の話を拝聴することが当たり前。それが授業の本質である内容理解を阻害する、など考えたこともなかった。

「授業中にガムを噛むな」という発言もまた、子供の内容理解という本質よりも、敬意やマナーを重視した風習だった。

それが今、コロナによって「まずは(どんな形でも)授業をすることが大事」という本質に立ち戻った結果、付随していた余計な風習も削ぎ落とされはじめている。

なんだ、やればできるじゃないか。
なんで今まで対面にこだわっていたのだろう。
むしろ、こっちの方が便利かも。

そんな声が、あちこちから聞こえてくる。』

 ※ まあ、何事も「時と場合」「程度の問題」だと思うぞ…。

 「形式」や「しきたり」にも、それなりの「意義」はある…。子供の「適性」に合わせた「イス」や「ソファー」を用意するということも、一見「理想的」にも見える…。
 しかし、「導入コスト」「耐久性」の問題は、クリアできるのか…。居間なんかでくつろぐのを前提に作られたものに、現在使用中の学校用の「イス」「机」と同程度の「耐久性」は、あるのか…。
 そういう側面も、考えておかないとな…。