「戦狼」不信と岸田外交

「戦狼」不信と岸田外交
 風見鶏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA12AUT0S2A510C2000000/

『国と国の首脳会談は事務方が積み上げた事項を確認するだけの場ではない。トップ同士が一対一で本音を交わす。率直な意見交換で首脳自身が感じたことが次の判断の材料になる。

岸田文雄首相は今春、東南アジアの首脳にこうささやかれた。「中国は絶対に許さない。信頼しているのは日本だ」

首相は3月下旬から5月上旬に東南アジア5カ国とインドの首脳と対面で会談した。発言はそのうちの一人のものだ。

中国は軍事・経済で優位な立場を背景に威圧的に要求を飲ませようとする。中国のアクション映画のタイトルから「戦狼」外交と呼ばれることも多い。

足元では新型コロナウイルスを徹底して抑え込む中国の「ゼロコロナ」政策が周辺国の経済にも打撃を与えた。東南アジアの首脳が中国への怒りを吐露しやすい時期ではあった。
首相がそのときに思い出したのは2010年12月、自民党が野党だった時のインドネシアとシンガポールの記憶だ。いま自民党幹事長の茂木敏充氏と2人で視察した。

日本が国内総生産(GDP)で中国に抜かれ、世界第3位に転落した年だった。中国が国際的な大型投資に動き、期待が高まる実態を現地で目の当たりにした。「このままではアジアは中国に全部取られるぞ」。茂木氏と語り合った。

東南アジア諸国連合(ASEAN)はその後も中国への経済的依存を深めてきた。日本企業の駐在員は「首根っこを中国に押さえられている」と話す。

首相は今回の訪問で12年前には考えられなかった空気に接した。「経済的利益だけを見て中国のいうことを聞いていたら危険だ」という東南アジア各国の警戒感があった。

首脳外交を支えるのは首相が政治家として自負する「聞く力」である。首脳会談で得た意見、感じ取った雰囲気をどう次の一手につなげるかが大事だ。

大型連休で首相は東南アジアのあとにすぐイタリアと英国を訪ねた。アジア各国の首脳の本音を伝えた。遠い異国の実態は貴重な情報になる。欧州とアジアの橋渡しを担った。

首相周辺は「首相はまず相手の話に耳を傾け、言い方も押しつけがましくない」という。相手国にとっては米国や中国などの大国を相手にするのとは違って、心を許しやすいと分析する。

岸田政権は「新時代リアリズム外交」を掲げる。「一国のみで自国の平和と安全を守ることは現実的ではない」と説明する。国と国の間に入り望ましい環境をつくる外交だ。

ウクライナ危機で国際社会は覇権主義の危険性を実感した。首相はインド太平洋での中国の行動もロシアと同じ「力による現状変更」と位置づける。中ロの結束を防ぐためアジアにも欧州にも働きかける。

「ウクライナはあすの東アジア」と首相は説く。経済を基軸に中国をみていた欧州も、中国の別の顔に気づき始めた。欧州のある首脳は「中国が台湾侵攻に動くだろう」と首相に語った。

日本の安全保障の最大の懸案は中国だ。30年ごろには東アジアでの中国の軍事力は日米を逆転するという予測もある。

「戦狼」不信があっても日本が経済を再生させて米国と共に防衛力を強化しなければ対処できない。「経済を強くしないと外交に影響する」というのは首相の信念でもある。

23日に首相はバイデン米大統領と会談する。互いの中国観をぶつけ合うだけでなく、対中抑止の具体策を示さなければならない。そうでなければ聞く力は単なる受け身と化してしまう。(秋山裕之)』

中国、国際電話の着受信制限 進む鎖国?

中国、国際電話の着受信制限 進む鎖国?
https://www.epochtimes.jp/2022/05/106394.html

『中国の複数の省ではこのほど、香港や台湾を含む海外からの携帯電話着信や、ショートメールの受信サービスを制限する動きがみられた。

中国メディア「IT之家」11日付によると、中国国有通信最大手の中国移動(チャイナ・モバイル)の浙江省の支社は「国際電話を使った振り込め詐欺の被害を防止するために、海外や香港、マカオ、台湾からの電話の着受信を終了する」との通達を利用者に向けて出した。国際電話の着受信が必要な市民は、20日までに身分証明書などを提示して事前に申請する必要がある。

「上游新聞」9日の報道では、浙江省のほかに河南省、江西省、遼寧省、貴州省の通信会社もすでに国際電話の着信を制限した。一部の地区は昨年8月以降、海外からのショートメール受信サービスを相次いで終了した。

SNS微博(ウェイボー)では、ネットユーザーらは「詐欺電話は1本もかかってきたことがないのに、海外にいる家族の電話はもう受けられない」「違憲行為だ。第2の北朝鮮になる」などと批判を強めている。

時事評論家の魯難氏は、米ラジオ・フリー・アジアに対して「国際電話を受けるのに身分証明書が必要ということで、当局は誰がまだ海外と連絡を取っているのかがすぐわかる。中国政府はこれらの国民をより監視しやすくなる」と指摘した。

カナダ在住の中国人作家、盛雪氏は大紀元グループの新唐人テレビのインタビューで、「中国政府の鎖国政策の一環ではないか。当局は国民と海外の交流を断とうとしている」と語った。

張哲 』

中国、幹部家族の海外資産を禁止

中国、幹部家族の海外資産を禁止
保有者は昇進もさせずと米紙
https://nordot.app/900234565489033216?c=39546741839462401

『【北京共同】米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)は19日、中国共産党が3月に党幹部に対して家族が海外資産を保有することを禁じる通達を出し、保有者は昇進させない方針だと伝えた。香港発で、複数の関係者の話としている。

 ウクライナ侵攻を巡り西側諸国から幹部に制裁を科されたロシアのような事態に追い込まれることを避ける狙いがあるとしている。

 中国の習近平国家主席は今年の党大会で異例の3期目続投を目指しており、党幹部や家族の海外蓄財が焦点となれば習氏の権威にも傷が付きかねない。

 通達では留学などの正当な理由がない限り、国外での外国金融機関の口座開設も禁じた。』

[FT]「ゼロコロナ」で冷える中国消費 不動産市場を直撃

[FT]「ゼロコロナ」で冷える中国消費 不動産市場を直撃
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB191CR0Z10C22A5000000/

『中国の上海市に住むオフィスワーカーのウーさん(28)は、普段なら1カ月当たり約1万2000元(約23万円)を日々の生活で使う。買い物をためらうことはほとんどないと彼女は話す。だが上海市でロックダウン(都市封鎖)が実施された4月には、普段の3分の1程度しかお金を使えなかったという。

上海での新型コロナウイルス検査では大勢の住民が長蛇の列を作った=ロイター

「買ったものといえば肉、卵、牛乳、野菜など欠かせない食材が大半だ」。1回の買い物で卵を90個購入したこともあったという。「すでに冷蔵庫は満杯だが、まだ不安だ」

中国では新型コロナウイルスのオミクロン型による感染拡大を抑え込むため、数十の都市でロックダウンが実施され、何億人もの身動きが取れなくなった。その中国が全国的に深刻な景気後退に直面している。ウーさんのような消費者がお金を使えないことが原因の1つだ。

中国国家統計局が16日に公表した4月の経済統計では、厳格なロックダウンによる打撃の深刻さが初めてとらえられた。最も明白なのは、消費への影響だ。消費活動の指標となる小売売上高は前年同月比で11%減少し、2020年初頭以来の落ち込み幅となった。一方、工業生産は3%減少した。

長年、中国の平均的な消費者の購買力が上昇することによって、輸出と建設を中心とした経済成長モデルから脱却できると期待されていた。だが、今秋の共産党大会で異例となる3期目の党トップ就任を狙う習近平(シー・ジンピン)国家主席は、ウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策を推進しており、そうした経済の長期目標とは相いれない。
「貸出残高の伸びは低調」

すでに中国は不動産部門の危機に対応するため金融緩和に乗り出しており、多くの経済専門家は今年中に追加の景気刺激策が実施されると予測している。政策当局者にとって悩ましい問題は、このような厳しい行動制限のなかで従来の金融緩和や財政出動が期待されるほどの効果を上げられるのかどうかだ。とりわけ、今回あるいは今後の新たな感染拡大に伴う制限がいつまで続くのか先が見えない状況では疑問が残る。

英調査会社オックスフォード・エコノミクスのリードエコノミスト、トミー・ウー氏は「4月までの金融統計を見てみると、すでに様々な刺激策が実施されているにもかかわらず、需要低迷の影響で貸出残高の伸び率はまだ比較的低調だ」と指摘する。「企業は明らかに借り入れを増やしたがっていない」

不動産市場に関する統計には、経済活動をてこ入れすることの困難さが表れている。中国政府は15日、1軒目の購入者を対象に住宅ローン金利の下限を4.6%から4.4%に引き下げた。だが、4月の住宅販売は床面積ベースで前年同月に比べて42%落ち込んだ。2年前にコロナ禍が始まって以来、最大の減少幅だ。

住宅ローン金利の引き下げに加え、中国人民銀行(中央銀行)は4月25日、預金準備率を0.25~0.5ポイント下げた。だが人民銀の動きは一貫して慎重だった。

スイスのプライベートバンク大手ユニオン・バンケール・プリベ(UBP)のアジアエコノミスト、カルロス・カサノバ氏は「実体経済に効果をもたらし、金利引き下げが景気に反映されると確信できない限り、人民銀はより強力な支援策を実施しないとみられる」と解説する。

飲食料品や医薬品など販売増はわずか

4月の小売売上高では、商品購入全般が10%減少したのに対し、飲食業では23%と落ち込みが激しかった。消費項目別で前年同月と比べて増加したのは食料、飲料、石油、医薬品のみだった。一方、自動車は31.6%と最も大きく減少した。

上海市自動車販売業協会によれば、4月は上海市内の新車販売台数がゼロだった。上海市内全域のロックダウンは約7週間続いている。

一方、4月には失業率が20年の初頭以降で初めて6%を超え、消費意欲をさらに冷え込ませている。オランダ金融大手INGの中華圏担当チーフエコノミスト、アイリス・パン氏は、国有企業が雇用を増やす可能性を指摘する。「複数回のロックダウンを乗り越えた民間企業には、そのような余裕はもうない」

中国政府は3月、1.5兆元の増値税(付加価値税)を年内に還付すると表明した。9割は零細企業に還付される見込み。一部地域では消費クーポン券の配布などの財政措置も取られる。だがオックスフォード・エコノミクスのウー氏は、先に人々が消費する必要があるため、政府が取りうる手段は限られると指摘する。

「このような状況では、人々はそもそも消費したがらない」とウー氏は説明する。「新型コロナに対する警戒で心理が冷え込み、労働市場は低調で、収入の見通しが好ましくない状況では、何をしようと景気回復は非常に難しい」

封鎖緩和でも根強い消費者の不安

その代わりに、大規模な感染防止策を取る中国政府にとっては、コロナ対策をどうするかが最大の政治的手段になっている。とはいえ、ワクチン未接種の高齢者が多いなかで、あくまで感染拡大を収束させる方針を押し通してきた政府としては、コロナ対策の緩和は政治的な賭けになる。

「もし上海市でロックダウンが緩和されれば、必ず6月には繰り延べ需要の影響だけで消費の回復がみられるだろう」とカサノバ氏は予測する。ただし、緩和されたとしても「消費ブーム」になるとは考えられないという。

今もロックダウンで閉じ込められている冒頭のウーさんは、制限が解除されたときのために買いたい物をリストに書き出した。しかし、あまりに不安感が強く、どんな消費衝動も2、3日しか続かないという。

「ロックダウン中に給与が3分の1もカットされた」とウーさんは打ち明ける。「この経済的な不安は簡単には消えないだろう」

By Thomas Hale and Andy Lin

(2022年5月18日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』

対中輸出数量2割減、7年ぶり下落率 上海封鎖で経済収縮

対中輸出数量2割減、7年ぶり下落率 上海封鎖で経済収縮
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA194820Z10C22A5000000/

『中国経済の減速が日本の貿易に波及してきた。財務省が19日発表した4月の貿易統計速報によると、日本から中国へのモノの荷動きを示す輸出数量指数(2015年=100)は110.9と前年同月比22.6%下がった。下落率は2015年2月以来の大きさとなった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う上海などの都市封鎖(ロックダウン)による経済活動の収縮を映す。

商品別の輸出量をみると自動車は1万9743台と30.2%減った。鉄鋼は30.3%減の32万8000トン、原動機は39.9%減の1万2591トン、集積回路は28.5%減の17億1600万個だった。主要な輸出品目が軒並み急減した。

上海の都市封鎖をはじめとする厳格なゼロコロナ政策をとる中国は物流の混乱や工場の稼働停止などで経済が収縮している。輸出数量指数の低下は2カ月連続で、3月の13.0%より下落幅が大きくなった。

中国からの輸入数量指数も20.4%の急落で92.0となった。コロナの感染が広がった当初の20年2月以来の下落幅となった。

対中貿易の停滞が足を引っ張るかたちで世界全体に対する輸出数量指数は4.4%、輸入数量指数は9.0%下がった。いずれもコロナ禍で低迷した20年夏~秋以来の落ち込み幅だった。
金額でみた世界全体との貿易収支は8391億円の赤字だった。赤字は9カ月連続。原油などエネルギー価格の高騰で輸入額は28.2%増の8兆9154億円に膨らみ、単月として過去最大だった。輸出額は12.5%増の8兆762億円で3月に次ぐ過去2番目の水準だった。

輸出入とも数量が減ったにもかかわらず金額が増えたのは製品価格が上がったためだ。財務省の担当者は「世界的な賃金や物流面などのコストアップが影響している」と説明した。為替の円安・ドル高の進行も輸入物価の上昇に拍車をかけた。

対中貿易は金額にして輸出が5.9%減の1兆4890億円、輸入が5.5%減の1兆6573億円だった。貿易量の減少が大きいため、金額ベースでも前年水準を下回った。

対ロシアは1633億円の貿易赤字で、赤字幅は前月より2割増えた。輸出は237億円と自動車や一般機械を中心に69.3%減った。ウクライナ侵攻を踏まえた政府の輸出禁止措置や企業の自主的な事業の停止が響いた。輸入は67.3%増の1870億円だった。原油は43.2%増、石炭は2.7倍になった。それぞれ価格の高騰が大きく、数量は減っている。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Economy/As-Chinese-economy-slows-Japanese-exports-take-a-hit?n_cid=DSBNNAR 』

中国人の大半がロシアを支持しなくなった理由

中国人の大半がロシアを支持しなくなった理由
SNSが世界秩序形成を変え、若者がグローバルガバナンス牽引
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70139?page=4

『1.繰り返される国連の機能不全

 ロシアによるウクライナ侵攻は、世界秩序形成の重要局面で国連が機能しないことを改めて示した。

 ウクライナ侵攻開始直後、国連安保理は緊急特別会合を開催し、ロシア非難決議を採択しようとしたが、常任理事国であるロシアが拒否権を発動したため決議を採択できなかった。

 それを受けて、3月2日に国連総会の緊急特別会合でロシアのウクライナ侵攻に対して「最も強い言葉で遺憾の意を表す」とする決議を採択した。

 日本や米国など141カ国が賛成し、中国、インドなど35カ国が棄権。反対はロシア、北朝鮮など5カ国だけだった。

 しかし、総会決議には法的拘束力がないため、これほど多くの国が賛成しても具体的な施策の実施にはつながらない。

 この状況に対して、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、国連は機能していないと繰り返し批判した。

 国連の機能不全は今に始まったことではない。

 ロシアの関係では、2014年のクリミア戦争の時もロシアの拒否権発動により安保理決議を採択できなかった。

 2020年には、新型コロナ感染拡大抑制のために国連加盟国が一致団結して協力することを世界中の人々が願っていた。しかし、米中対立の影響を受けて国連傘下の世界保健機関(WHO)は期待された有効な対策を実行することができなかった。

 国連において加盟国が具体的な施策の実施を義務づけられる決定を行う権限を持っているのは、唯一安全保障理事会だけである。

 安全保障理事会では常任理事国(米英仏中露)だけが拒否権を行使できる。

 米英仏と中露ではイデオロギー、政治体制が異なるため、多くの場合、重要課題において合意に達することが難しく、しばしば拒否権が行使され、重要な決議を採択できなくなる。

 これが国連が機能不全に陥る根本的原因であり、今後もこの欠陥を改善できる展望はない。

 次善の策として、国際社会に対して国連加盟国の意志を伝えるため、総会決議の採択という方法が採用される。

 これには法的拘束力がないが、大多数の国が賛成すれば、間接的な影響力を発揮することが期待されている。』

『 2.世界企業による経済制裁インパクト

 今回のウクライナ侵攻に際しては、こうした国連総会決議の影響力以上にロシアに対して大きなインパクトを与えた新たな動きが見られた。

 それはグローバル市場をリードする主要民間企業による自発的な対ロ経済制裁である。

 前述の国連総会決議前日の3月1日、アップル、ナイキ、フォード、BMWなどが製品の販売停止や生産停止を発表した。

 ビザカード、マスターカードもロシア系の銀行が発行したカードの利用を停止した。

 エクソン・モービルは同日に石油・ガス開発事業「サハリン1」からの撤退を表明。BPやシェルはそれ以前にロシア事業からの撤退を発表していた。

 このようにグローバル市場の一流企業のうちロシア事業の停止あるいはロシア市場からの撤退に踏み切った企業は600社以上に達した(イェール大学経営大学院研究チーム調べ、4月12日発表)。

 グローバル市場の主要民間企業のこうした動きは即座にロシア経済に甚大な影響を及ぼす点で、国連総会決議よりインパクトが大きい。

 これらの動きは国家や国際機関による強制ではなく、各企業の自主的な判断に基づく自発的行動である。そうであるがゆえに決定も迅速である。

 何がこうした動きをもたらしたのか?

 グローバル主要企業は自国市場よりグローバル市場を重視している。

 そのグローバル市場の消費者や顧客企業の間で、ロシア軍のウクライナ市民に対する非人道的な攻撃の事実が認識され、世界中の人々が短時間のうちにウラジーミル・プーチン大統領とロシア軍に対する強い反感を共有した。

 そうしたグローバル市場の大多数の顧客が反ロシアの感情を共有する状況下、ロシアでのビジネスをこれまで通り継続すれば、自社に対する批判を招きかねない。

 このようなレピュテーションリスクを強く意識せざるを得ないグローバル企業は即座に重大な決断を下した。

 それが今回の生産停止や撤退といった厳しい対ロシア経済制裁につながったと考えられる。』

『 3.SNSと若者世代が創り出す新世界秩序

 ウクライナにおけるロシア軍の非人道的攻撃の実態を世界中に鮮烈に伝えた主役は従来のメディアではなく、SNSに代表されるソーシャルメディアだった。

 その主な利用者は30代以下の若者世代である。

 米国では「ミレニアル世代」(1980年代~90年代半ばに生まれた世代)および「Z世代」(1990年代半ば~2000年代初頭に生まれた世代)、中国では「90后」(ジォウリンホウ、1990年以降に生まれた世代)および「00后」(リンリンホウ、2000年以降に生まれた世代)などがその中心だ。

 この世代は日本、欧州などでも共通した特徴が見られる。

 彼らは新聞、TVなど従来のメディアのニュースよりスマホやPCを通じたソーシャルメディアのニュースに主な情報源を求める傾向がある。一般的に情報伝達はより速く、より詳細である。

 ソーシャルメディアには情報選別機能が備わっているため、得られる情報は受け手の好みに合うものに偏る傾向がある。

 しかし、ロシア軍による非人道的攻撃のような事実は即座に全世界で伝わり、国家の決定を待つまでもなく、人間の基本的なモラルとして許せるものではないという認識が国を超えて短い間に共有される。

 中国ではウクライナ侵攻開始直後、新聞・TVなどのメディア上ではロシアの国営放送の情報だけが報じられていたため、世論はロシア支持が圧倒的だった。

 しかし、SNSを通じて若者たちがウクライナにおけるロシア軍の非人道的攻撃の実態を知り、その事実が瞬く間に世代を越えて共有された。

 4月にはロシア支持とウクライナ支持に世論が2分されていたが、5月の連休明けには中国人の大半がウクライナ支持に傾いたと中国の国際政治の専門家が教えてくれた。

 ソーシャルメディアの影響力がグローバルな情報共有を促し、それが世界の主要企業にレピュテーションリスクを意識させ、国家間の合意に基づくルール形成を超えて世界を動かした。

 こうした新たな世界秩序形成のメカニズムの存在がウクライナ侵攻を巡るグローバル企業の対ロ経済制裁の急速な拡大によって明らかになった。』

『 4.新たなグローバル・ガバナンス誕生

 今後のグローバル社会では、若者世代を中心とする情報共有が、グローバル企業に影響を及ぼし、国家や国際機関の秩序形成機能の不全を補う動きを発揮するようになることが予想される。

 これは、これまでの国家とルールによる世界秩序形成の仕組みを民間企業とモラルが補完することを意味する。

 その土台を支えるのが若い世代を中心とするソーシャルメディアを通じた情報共有である。

 これまで国家単位で分断されていたグローバル社会の枠組みが、ソーシャルメディアのネットワークによる情報共有を通じて、国境によって分断されることがないグローバル・コミュニティへと変化した。

 1つのコミュニティだからこそ、国を越えて共有されるモラルがグローバルな共通規範として機能し、新たなグローバル・ガバナンスを形成しつつあると評価できる。

 人間として尊重すべきモラルが人為的なルールを超える規範を形成するメカニズムが動き出したのである。

 グローバル社会の将来を長期的に展望すれば、世界経済における米国経済の相対的縮小に伴うリーダーシップの低下、米中対立、世界の多極化などが続く中、既存の国際機関や国際連携による世界秩序形成がますます不安定化に向かうことは不可避である。

 国家間の合意に基づくルール形成の限界が明らかになった状況下、それを補完する仕組みが必要とされている。

 今回のウクライナ侵攻に際して示されたグローバル企業による秩序形成補完機能は世界秩序形成の不安定化を緩和する一つの重要な柱として機能することが期待できる。

 今後もソーシャルメディアの発達と若者世代の影響力の増大は続く。

 それに伴い、国を越えて共有されるモラルに基づく「民(non-state actors)」主導の新たなグローバル・ガバナンスが機能する領域が拡大する。

 このような方向で世界秩序形成の仕組みが一段と進化し、世界秩序が安定を保持することを期待したい。』

苦境の「共青団派」李首相が突如復権、経済失速で出番

苦境の「共青団派」李首相が突如復権、経済失速で出番
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK13CIH0T10C22A5000000/

 ※ ははあ…。

 ※ こういうウクライナ事態 → ロシアの苦戦 → フィンランド、スウェーデンのNATOへの加盟申請 → 国際情勢の激変…、なんかも影響しているわけだ…。

 ※ 中国共産党内の、「権力闘争」にも、影響を与えているわけだ…。

 ※ それで、すわ「習近平氏を押し込める、クーデターが発生か!」とか言ってる人も出て来てるわけだな…。

『中国共産党内で首相の李克強(リー・クォーチャン)がここにきて突如、「復権」したことが大きな話題になっている。この9年余り、国家主席の習近平(シー・ジンピン)は自らに権力を集中し、国務院(政府)のトップに立つ李が担うべきマクロ経済政策を巡る権限も有名無実化してきた。だが、この1カ月で様相が一変している。

多くの党員らが目を見張ったのが、5月14日に共産党機関紙、人民日報が第2面のほぼすべてを割いて掲載した李の演説全文である。1万字近い文章は、4月25日の「国務院第5回廉政(クリーンな政治)工作会議」での演説内容だ。3週間近く前の演説内容がなぜ、今になって大々的に載ったのか。

「これは明らかな変化への糸口だ」「中身よりも重要な意味を持つのは、驚くほど大きい演説の扱いである」「習主席の強い権力とのバランスをとる動きだろう」。党内のざわつき方は半端でない。

会議のテーマであるクリーンな政治は、腐敗撲滅という習の大方針に沿うもので、習のメンツを十分、立てる工夫がなされている。だが内容をつぶさにみると、ほぼ全編にわたり、経済立て直し策、市場重視、税負担軽減、民間の中小零細企業支援、就職の促進などに関して事細かに述べている。

経済失速のなか党風にも言及

さほど関連性に乏しいクリーンな政治や反腐敗は、枕ことばになっているだけ。習政権の発足直後に「リコノミクス」と騒がれた「李克強ワールド」が全開の様相なのだ。
4月25日の李克強首相の演説は、5月14 日付の人民日報が全文を掲載した(国営中国中央テレビの映像から)

注意すべきは、李が強調した次の一節である。「経済工作は、(共産)党として国を治めるガバナンスの中心に置くべき仕事である。経済社会発展の推進は各レベルの政府の基本的な職責で、クリーンな政治という党風建設の必然的な要求だ」

これは習が事実上主導してきた経済政策執行の不調を暗に批判しているようにもみえる。政治闘争色の強い「反腐敗運動」をひたすら上位に置き、経済建設をないがしろにしていると言わんばかりだ。「政策執行の際、ただスローガンを叫ぶ」「喜ばしい成果だけ上に報告して問題含みの内容は報告しない」「(政治)運動式で進めようとする」――こうした輩(やから)を厳しくたしなめる言葉も目立つ。

4月の中国経済統計は衝撃的な悪さだった。工業生産、小売売上高とも前年同月比マイナスに落ち込んだ。これには新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策だけでなく、習主導で相次ぎ打ち出したIT(情報技術)企業、不動産関連企業、学習塾などへの圧力もかなり影響している。

李はトップである習の専権事項だったはずの党の仕事や党風建設にまで言及した。演説をみる限り、別格の地位を指す「核心」で総書記の習の権威は以前ほどでなく、集団指導制の下、あるべきナンバー2の役割を李が果たし始めている。

もうひとつの注目点は、先の党政治局常務委員会で確認したはずのゼロコロナ政策にほぼ触れていない点だ。習がこだわるこの政策に李が触れる機会は従来から少なかった。

共青団設立100周年大会で演説する中国の習近平国家主席(10日、北京の人民大会堂)=新華社・共同

一連の動きを政治的に分析すると、中国経済の失速があらわになった4月以降、党内で何らかの重要な変化があったと考えるのが自然だ。その証拠が、人民日報の李演説の大々的な扱いである。

少なくとも崖っぷちの経済運営の実務、政策づくりは習主導から李主導に移行する。そんな合意が形成されつつある。今後、政策調整がより具体化するとみてよい。苦境に際し、お鉢が李に回ってきたという見方もできる。

寂しい共青団100年と団員急減

一方、習サイドも反撃を忘れていない。習の最側近のひとり、何立峰がトップを務める国家発展改革委員会は4月29日に雑誌「習近平経済思想研究」を創刊した。思想という言葉を冠したより大きな枠組みで習が仕切る新時代の経済工作を浸透させようとする政治的な布石だ。

共青団90周年大会に出席した当時の胡錦濤前国家主席(2012年5月、中国国営中央テレビの映像から)

もう一つ、注目すべき動きあった。李が基盤とする党の青年組織、共産主義青年団(共青団)の設立100周年記念大会への圧力である。共青団出身の前国家主席、胡錦濤(フー・ジンタオ)の時代、日の出の勢いだった共青団は、習がトップに立つと一転、不遇の時代を迎える。その象徴が5月10日、北京の人民大会堂で行われた共青団100周年大会が醸し出した寂しい雰囲気だ。

共青団の全盛期だった12年5月の90周年記念大会は、胡錦濤を迎えて全国人民代表大会(全人代)の開会式などを開く大講堂で大々的に挙行された。司会を務めたのは当時、国家副主席だった習自身だ。

2012年5月、北京・人民大会堂大講堂で挙行された共青団設立90周年記念大会(中国国営中央テレビの映像から)

今回はまるで違った。数千人を収容できるメインの大講堂ではなく、宴会場を使った。参加人数も大幅に絞られた。新型コロナ対策だとの説明はできるが、それだけでは辻つまが合わない。100周年の節目なのに90周年より格を落としたのは、政治判断があったとみてよい。

「共産党がなければ共青団もない」。習は演説で若者らに「闘争」の重要性を訴えた。共青団トップである第1書記の賀軍科は「習近平総書記が舵(かじ)を握って航路を進めば、中華民族の偉大な復興が足を止めることはない」と歯の浮くような賛辞を送った。その言葉遣いは、毛沢東への崇拝を思い起こさせる。

共青団の衰退は数字上も明らかだ。胡錦濤時代まで順調に増えた共青団員数は急減している。12年末には8990万人と、本体の共産党員数(8512万人)をしのいでいたが、21年末になると7371万人にまで減った。この間、共産党員数は1000万人余り増えた。

10日、北京・人民大会堂の宴会場で開かれた共青団設立100周年記念大会=新華社・AP

28歳になると幹部以外は退団という規定を厳格に運用したのが主因である。これまで一部では30歳を大幅に超えても共青団にとどまる例も多かった。とはいえ9年で1600万人も減ったのは異常だ。組織の影響力低下も著しい。「トップの共青団への厳しい姿勢が影響している」という見方は的を射ている。

習指導部は、16年に発表した苛烈な共青団中央の改革案で「機関化、行政化、貴族化、娯楽化」という4大問題を指弾した。特に貴族化、娯楽化という指摘には多くの人が驚いた。党の下部組織として体をなさず、遊びほうけているという批判である。

党大会後の次期政権でも重責か

胡錦濤ばかりではく、首相の李、後に副首相となる胡春華(フー・チュンホア)ら共青団出身者はメンツを潰された。革命時代の高級幹部を父母に持つ「紅二代」の習にとって、巨大な共青団は政治力を備えたライバルなのだ。

 胡春華副首相=共同

その後、17年の共産党大会では、共青団派の有力者で国家副主席だった李源潮が、慣例の引退年齢68歳に達していないのに更迭された。李源潮は胡錦濤時代、ルールにのっとった昇進システムづくりに励んだが、習時代に入って業績は全て覆された。

共青団派である李克強の突然の復権と、共青団100年大会が醸し出した寂しさ。対照的な出来事は、秋の党大会に向けた政治的なつばぜりあいの始まりを意味する。

李克強は憲法の任期制限規定によって来春、首相ポストから降りる。ただ復権した李が今後も党内で力を維持し、さらに存在感を増すなら、今期限りでの完全引退はなくなる。党大会後の5年を担う次期政権でも相当な重責を担う可能性が強まるのだ。

向かうところ敵なしだった習としては一大事である。夏にかけての正念場で力学が変われば、仮に総書記として続投できても力のない名目だけのトップに成り下がる恐れさえある。今後も「1強」として君臨するには、政治的な戦いで完勝し、ライバル勢力をたたきのめすしかない。何か大変なことが必ず起きる。それが5年に1度の党大会前の恒例である。(敬称略)

中沢克二(なかざわ・かつじ)

1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。』

ウクライナ戦争で中国は“ロシア寄り”で金欠状態

ウクライナ戦争で中国は“ロシア寄り”で金欠状態 政府系メディアにも異変の危機感
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/05170631/?all=1

 ※ こういう話しが、習近平氏ダウン、李克強氏アップの動きなんかに、つながっているのかもしれんな…。

『ロシアがウクライナに侵攻してから2ヶ月以上が経過した。ロシア軍による激しい攻撃が続く一方、ウクライナは米国などの軍事支援を受けて徹底抗戦の構えを崩さず、紛争の長期化が確実な情勢となっている。

【写真】侵攻の「制裁」からロシア経済を守った女性

 西側諸国がロシアに対して苛烈な経済制裁を科していることもかんがみれば、「ロシアの国力は時間が経てば経つほど衰えていく」との見方に説得力が増している。

「ロシアを弱体化させる」ことを戦略目標に掲げるバイデン米政権にとっては望むところだろうが、「ロシアが窮すれば、経済の対中依存をさらに深め、ロシアは中国に従属する国家に陥っていくのではないか」との懸念も生じている。

 ロシアはたしかに軍事大国だが、GDPは中国の10分の1に過ぎない。輸出入ともに中国に大きく依存しており、この傾向はさらに強まることが予想されている。
中国の「金欠」状態

 米中対立を早期から予言してきたシカゴ大学政治学部のジョン・ミアシャイマー教授は文藝春秋(2022年6月号)のインタビューで「この戦争の最大の勝者は中国だ」と警鐘を鳴らしている。その理由として(1)米国が東アジアに「軸足移動」ができなくなったこと(2)ロシアを中国側に追いやってしまったことを挙げている。

「ウクライナ危機が長引くほど中国が有利となり、尖閣諸島や台湾問題などで対立する日本にとって由々しき事態になる」との論調が高まっているが、はたしてそうだろうか。

 日本ではあまり語られることはないが、プーチン大統領の盟友関係が仇となり、中国経済は深刻な「金欠」状態になりつつある。

 習近平国家主席は2月4日に北京冬季五輪の開催に合わせてプーチン大統領と対面で会談し、直後の共同声明に「両国の友情に限界はなく、協力する上で禁じられた分野はない」との文言が入ったことから、「プーチン大統領は中国の後ろ盾を得てウクライナ侵攻に踏み切った」ことが定説となっている。

 中国は「要請に応じてどこまでもロシアを支援する」わけだから、米国は中国の動きを警戒し、「対ロ支援をすれば中国に制裁を実施する」との強硬姿勢を鮮明にしている。

 世界の投資家たちも中国の資産を巡る地政学リスクに敏感になっている。西側諸国の経済制裁でロシアの資産が無価値となり、大きな痛手を被ったからだ。

「ロシアを支援する可能性がある中国に投資すれば、米国から2次制裁(制裁対象と取引を行った者を制裁すること)を科されるリスクがある」との心配から、対中証券投資の引き揚げが急速に拡大している。

 国際金融協会(IIF)によれば、ロシアのウクライナ侵攻以来、中国からの投資マネーの流出が前例のない規模になっており、5月6日に発表したレポートでは「中国は今年約3000億ドルの純資本流出が見込まれる」との見解を示した。1290億ドルだった昨年の純流出額の2倍以上だ。

 IIFは「新型コロナの変異株対応で延々と続く都市封鎖(ロックダウン)やエネルギー価格の高騰が中国経済の成長の重しになる」と分析した上で「世界の投資家はロシアのウクライナ侵攻に伴う地政学リスクも懸念している」と指摘している。』

『ロシア事業に及び腰の中国企業

 海外への資金流出の加速化は、昨年後半から不調に陥っている中国の不動産市場に甚大な影響を与えることになる。

 中国の民間調査会社によれば、4月30日から5日間の労働節連休中の新築住宅販売は面積ベースで前年に比べて33%減少し、不動産企業上位100社の1~4月の販売実績は半減したという。

 中国政府はてこ入れ策を講じているが、その効果はあらわれておらず、不動産企業の資金繰りは悪化するばかりだ。中でも深刻なのは海外で発行したドル建て債券の償還だ。「海外の債権者は不利な扱いを受けている」との不満が高まっている中、ロシア関連の地政学リスクが意識されれば、中国の不動産企業のデフォルトが相次ぎ、不動産バブル崩壊はますます現実味を帯びてくるのではないだろうか。

「欧米企業が撤退したロシア市場を中国企業が席巻する」との見立てもあったが、実際には逆の動きとなっている。

 割安となったロシア産原油を「爆買い」しているインドとは対照的に、中国の石油企業はロシア産原油の調達に慎重だ。欧米企業が相次いで手放したロシアの原油や天然ガスの権益の獲得にも積極的ではない。中国のテクノロジー企業もひそかにロシア事業から撤退している(5月6日付ウォール・ストリート・ジャーナル)。

 中国企業がロシア事業に及び腰になっているのは米国の制裁が怖いからだ。米国が構築した国際金融システムの恩恵を最も享受してきた中国企業は、今や米国を始めとする海外マネー抜きには経営が成り立たなくなっている。

「ロシア寄り」とみなされることのデメリットが顕在化したことで、中国政府のスタンスは徐々に変わりつつある。政権中枢で異論が続出していることを反映してか、政府系のメデイアは5月に入り「ウクライナ寄り」の記事を配信し始めている。

 楽観的過ぎるかもしれないが、筆者は「ロシア軍のウクライナでの苦戦を目の当たりにした中国軍は肝を冷やし、今後軍事活動に慎重になるのではないか」と考えている。

 繰り返し主張してきたことだが、ウクライナ危機の本質は冷戦終結以降の国際秩序が崩壊してしまうことにある。「誰が勝者になるか」というレベルの問題ではない。一刻も早い停戦が何より求められている。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部 』

中国景気、ゼロコロナの傷深く 4月生産・小売り悪化

中国景気、ゼロコロナの傷深く 4月生産・小売り悪化
4~6月マイナス成長も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1635Y0W2A510C2000000/

『【北京=川手伊織】中国政府が新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策で、中国景気の傷が深まってきた。4月は物流の混乱などで生産、小売り、雇用が軒並み悪化した。共産党の習近平(シー・ジンピン)指導部はゼロコロナ政策を堅持する方針で、民間予測では4~6月のマイナス成長を懸念する声も出始めた。

【関連記事】「ゼロコロナ」政策とは 厳しい制限で感染防止

中国国家統計局が16日、4月の主な経済統計を発表した。工業生産は前年同月を2.9%下回った。約2年ぶりの減少で、中国経済が初めて新型コロナの打撃を被った2020年1~2月(前年同期比13.5%減)以来の落ち込み幅となった。

自動車の生産量が前年同月を4割超下回った。サプライチェーン(供給網)の寸断で部品や原材料の調達が滞った。中国経済の「体温」を映す発電量も4.3%減った。

厳しい行動制限で、サービス業も不振が目立った。4月のサービス業生産指数は6.1%低下し、マイナス幅は3月(0.9%)より拡大した。小売売上高も11.1%減少した。都市封鎖(ロックダウン)が続く上海市では小売売上高の落ち込みが4割に達したとの試算もある。

経済活動の停滞で、雇用が悪化した。失業率は6.1%と6カ月連続で前月を上回った。このうち、16~24歳の若年失業率は18.2%と、過去最悪を更新した。今夏には1000万人超の大学卒業生らが労働市場に入る。若年失業率は一段と高まる公算が大きい。

5月に入っても、ゼロコロナ規制による経済の低迷は続いている。首都の北京市も飲食店の店内飲食を止め、多くの小売業やサービス業が営業を禁じられている。5月1日の労働節(メーデー)に伴う大型連休では、観光収入が前年同期を4割下回った。

習指導部は5日開いた党の会議で、ゼロコロナ政策の徹底を確認した。上海市は16日、感染拡大に歯止めが掛かったとして都市封鎖を6月中に解除する方針を示したが、秋の党大会を前に中国全体の行動制限がどこまで緩まるかは見通せない。
新型コロナ検査を受ける上海市民=ロイター

新型コロナの影響を理由に、23年6~7月に開くサッカーのアジア・カップの開催を断念したほどだ。政府関係者からも「感染が再拡大したら、また厳しい制限をかけるのか」とゼロコロナ規制に疑問の声が漏れる。

オランダ金融大手のINGは4~6月の実質国内総生産(GDP)が前年同期比1%減少すると予想する。湖北省武漢市の都市封鎖などで四半期ベースで初のマイナス成長だった20年1~3月以来の景気悪化を見込む。物流の混乱と内需の停滞で中国の輸入は3、4月と前年同月比横ばいだった。世界経済の回復に水を差す可能性がある。

中国国内の有識者からも景気を懸念する声が出始めた。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、北京大学の徐建国副教授は「22年の経済成長率が、政府目標の5.5%前後どころか、20年実績に届くかどうか疑問だ」と語った。統計局によると、20年は2.2%だった。

【関連記事】

・中国工業生産4月2.9%減 コロナ規制で2年ぶりマイナス
・上海市、6月に封鎖解除 習指導部「ゼロコロナ」堅持
・景気減速への警戒強まる、株式への逆風続くか

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柯 隆
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分析・考察

景気悪化には避けられないものと回避できるものがある。本来なら中国の景気はここまで悪化しなくて済むはず。民主主義の国であれば、行き過ぎたゼロコロナ政策に対して、野党が批判し、マスコミは追究。そうすると、政府は早めに政策を修正する。昨日のFTの特集でも、上海を中心に中国の物流、とくに海運は大幅に停滞しているといわれている。それでも中国国内のメディアやネットをみると、ゼロコロナ政策の勝利を謳歌する記事が満載。行き過ぎるまで戻ってこない。傷がさらに深くなるだろうな。問題は中国は北朝鮮ではない。北朝鮮経済は成長しなくてもだれも気にしない。中国経済の減速は世界経済に大きく響いてしまう
2022年5月17日 8:14 』

「勝利」しかない専制主義 進む中国の現実離れ

「勝利」しかない専制主義 進む中国の現実離れ
風見鶏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM108X40Q2A510C2000000/

『5月初めの連休が明けてすぐ、中国でまたタガがはずれた音がした気がした。

新型コロナウイルスのゼロコロナ対策で混乱が続くなか、様々な省や市、区で相次ぎ緊急会議が開かれた。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が5日に共産党最高指導部の会議で演説し「わが国の防疫政策を疑い、否定するあらゆる言動と断固戦う」と厳命したことを受けたものだ。

事実上の都市封鎖(ロックダウン)下にある上海市でも急きょ市や区で「大上海防衛戦必勝動員会」を開いた。出席した幹部らは口々に習氏を称賛し、一層厳しい姿勢でゼロコロナに臨む決意を表明したという。

言葉だけでなく、実際に理不尽さは加速した。陽性者と同じ棟に住むだけで陰性でも隔離施設送りになる措置も出た。市民の不満は募る一方だが、上海に許されたゴールはひとつしかない。感染を抑え込み「上海市民の勝利」を皆でたたえ合う未来だ。

中国の人たちはなぜ政府の無理難題に唯々諾々と従うのか――。彼らの思いを推測する言葉として「ニラ」というネット用語がある。「刈っても刈っても生えてくる代替可能な存在」。庶民の自嘲表現だ。

中国で人民が政治に関わる機会はほぼない。そもそも中国には西側諸国のような「政治」もない。あるのは党内の権力闘争だけだ。

庶民も生活に直結する問題では時に声をあげる。党中央の耳に届けば地方の役人が処分されたりもする。

上海でも「食べものがない」「通院できない」という激しい怒りの声が現場の職員らにぶつけられた。これを受け、新型コロナ収束後は役人の処分が相次ぐだろう。だが、それだけだ。命を落とした人々や壊された生活が検証されることはおそらくない。市民らも政権の責任など追及することなく日常に戻っていく。

中国共産党を風刺し中国系の人々に大ヒットしたYouTubeの動画にはパンダがニラをザクザクと切る隠喩が出てくる(YouTube画面より)

人口学者のエマニュエル・トッド氏は中国の社会構造を「家父長を持つ農村の外婚制共同体家族」と説明した。「絶対的な父」に従う権威主義には伝統的になじみがあり、思考を止めて党の指導に従う体制への抵抗は少ないといえる。

それでも1989年6月、若者たちは自分たちの手で政治を変えられる時代が来たと考え天安門広場に集った。それは勘違いだった。党はまったく変わっておらず、敵でもなければ武装もしていない学生たちを戦車や銃で弾圧した。

だから、再び人々は「ニラ」になった――。生きていくため。家族のため。

今回の上海ロックダウンを受け、世界では中国経済が致命的な打撃を受けるとの見方が優勢だ。それも習氏にとっては必要な犠牲であり敗北ではないだろう。

中国政府は5.5%前後とした今年の経済成長目標を「堅持する」とし、インフラ・不動産投資の拡大に向け金融政策を積極投入する姿勢も示している。若者の失業率が2桁に達するなど不安材料は事欠かないがそれだけ強気な背景にはなにか秘策があるのだろう。

結局、勝利以外の結末は許されない。それは専制国家が抱える性(さが)といえるが中国ではゼロコロナを機にタガがはずれ現実との乖離(かいり)が加速したようにみえる。隣国には大きなリスク要因となる。

習近平国家主席(21年11月11日、中国中央テレビ放映)=共同

そして改めて感じるのは「負けた」と言える日本の恵まれた状況だ。だからといってそれで終わっていては意味がない。コロナ禍を通じてあらわとなった日本の数々の問題の検証と改革は進んでいるのだろうか。

加えてその改革を考えるプロセスには多くの市民も参画しなければ民主主義社会とはいえない。自由は責任と義務を伴う。それでも「ニラ」ではなく「考えるアシ」でいたいと思う。

(中国総局長 桃井裕理)』

中国元建て融資、4月7割減 コロナ封鎖で住宅ローン不振

中国元建て融資、4月7割減 コロナ封鎖で住宅ローン不振
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM141950U2A510C2000000/

『【北京=川手伊織】中国で銀行融資が落ち込んでいる。4月の人民元建て新規貸し出しは前年同月比72%減った。減少率は2010年3月以来、約12年ぶりの大きさとなった。新型コロナウイルスの感染を徹底して抑え込む「ゼロコロナ規制」で厳しい行動制限が広がり、ローンを組んで住宅や自動車を買う人が大幅に減った。

中国人民銀行(中央銀行)が13日、社会全体が銀行や市場から調達した資金を示す「社会融資規模」などを公表した。4月の新規調達額は9102億元(約17兆3000億円)で、前年同月から51%減った。このうち元建ての融資額は3616億元と、09年11月以来の低水準だった。

上海市の都市封鎖(ロックダウン)など厳しい行動制限で、住宅や自動車の販売が大幅に落ち込んだためだ。住宅や自動車向けの新規ローンはマイナスとなった。新たな借入額が返済額を下回ったことを示す。

社会融資規模の4月末の残高は前年同月末より10.2%増えた。地方政府によるインフラ債の発行が全体を押し上げた。政府債券を除いた残高は9.0%増だった。遡れる17年以降で最も低い伸びで、企業や家計の資金需要の弱さを示した。』

北京、自宅待機3日間を要請 市中心部でゼロコロナ堅持

北京、自宅待機3日間を要請 市中心部でゼロコロナ堅持
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM12CU60S2A510C2000000/

『【北京=羽田野主】北京市政府は12日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため13~15日は自宅で待機するよう市中心部の市民に要請した。

上海市のようにロックダウン(都市封鎖)する可能性は否定したが、コロナを徹底して封じ込める「ゼロコロナ」政策を堅持する方針を示した。

対象となる地域には日系企業の駐在員が多く住む朝陽区や、共産党の最高指導部が執務室を構える中南海がある西城区、北京大学など大学が集まる海淀区を含む。

約2200万人の北京市の人口の8割以上が対象になる見通し。PCR検査も連日義務づける。

北京市では12日、新たに36人の感染者が見つかった。人の移動を極力制限してゼロに近づける。

市内では12日にスーパーで食品を買いだめする動きが起きた。北京市政府の担当者は同日の記者会見で「北京市を封鎖することはない。野菜を買いだめする必要はない」と呼びかけた。

【関連記事】
・中国、コロナ規制で野菜24%高 物流混乱・運送費高騰で
・WHO、中国のゼロコロナ規制「持続可能ではない」
・ゼロコロナ「世界で最も成功」中国外務省、WHOに反論

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坂田亮太郎
日経BP 「日経バイオテク」編集長
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別の視点

「北京市を封鎖することはない」という北京市政府の言葉を信じる北京市民がどれだけいるのでしょうか。

ロックダウン状態が1カ月以上も続く上海市の惨状は、「微信」や「微博」などを通じて中国全土へ広がっています。

オミクロン型が登場するまでの中国は、たしかに封じ込めに成功していました。2020年3月以降の感染者数は多くても1日当たり100人程度(その大半が輸入症例)。2021年1月から約1年間は、中国全土で新型コロナによる死亡者が発生しないという「ゼロ行進」が続いていました。

共産党指導部は大いに自信を深めたことでしょうが、局面が変わっても政策を変えることができていません。もはや人災に近づきつつあります。

2022年5月13日 8:48

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柯 隆
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COVID ZERO Policy(ゼロコロナ政策)はゴキブリをゼロにするような考えであり、実に愚かである。

そして、政府が市場に代わって生活物資を配分し送り届けるのも市場の力を過小評価し、政府の能力を過大評価している。

なによりも、選挙がなく、ガバナンスが確立していない国だから、現場の幹部は住民に対する暴力行為は後を絶たない。

ゼロコロナ政策を続ければ続けるほど、共産党への求心力が低下していく。簡単な理屈なのに、なぜわからないのか

2022年5月13日 7:05 』

中国元大使「ロシア敗北」必至政府見解と距離、発言削除

中国元大使「ロシア敗北」必至
政府見解と距離、発言削除
https://nordot.app/897234365138993152?c=39546741839462401

『【北京共同】中国の高玉生元駐ウクライナ大使(74)がこのほど研究機関のシンポジウムでロシアのウクライナ侵攻を巡り「ロシアの敗北は時間の問題だ」などと発言をしたところ、インターネット上から関連記事が相次いで削除された。

 ロシア寄りの姿勢を維持する中国政府の立場と異なる見解を示したためとみられる。

 中国語ニュースサイトによると、高氏は現代の戦争について、軍事、経済、外交、世論、情報などによる「混合戦争」だと指摘。一方で、ロシアは戦場だけでなく他の領域でも主導権を失っており、敗北は時間の問題だとした。背景としてソ連解体後のロシアの衰退があると指摘した。』

【中国ウォッチ】習近平派幹部、予想外の「落選」

【中国ウォッチ】習近平派幹部、予想外の「落選」─閑職異動で次期指導部入り成らず
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022051200706&g=int

『中国の習近平国家主席にとって、今秋開かれるとみられる第20回共産党大会は自分の党総書記3選だけでなく、どれだけ多くの直系幹部を昇進させることができるかも重要になる。

しかし、最近の高官人事では、次期党指導部入りの可能性が高いといわれていた習派有力者が閑職に異動させられるなど、政権主流であるはずの習派に勢いが感じられない。(時事通信解説委員・西村哲也)

◇コロナ対策の「功臣」

 中国共産党政権では、中央の閣僚ではなく、地方首脳が官僚の出世コースだ。

政権最高幹部の大半は閣僚経験がないが、地方の省党委員会書記や省長(行政トップ)を務めたことがある。このため、省党委書記などの地方人事は中央人事との絡みで注目されることが多い。

 中国の国会に当たる全国人民代表大会(全人代)常務委員会は4月20日、前湖北省党委書記の応勇氏を全人代憲法・法律委の副主任委員(副委員長)に任命した。地方トップから実権のない名誉職への転任だ。

 応氏は警察出身。かつて習氏が書記を務めた浙江省と上海市の両方で高級人民法院院長(高裁長官)を歴任した。

習氏の信頼が厚く、上海市長(閣僚級)のポストにあった2020年2月、新型コロナウイルス対策の不手際で湖北省党委書記(同)が更迭されると、その後任に起用された。

 応氏は省都・武漢市などでコロナ抑え込みに成功し、習派でも有数の「功臣」となった。

治安部門出身であることから、第20回党大会で党指導部メンバーの政治局員に昇格し、警察、裁判所などを統括する党中央政法委書記に就任するか、政治局入りしなくても最高人民法院院長(最高裁長官)など閣僚より上位の国家指導者になるとの見方が多かった。
 ところが、実際には党大会前に全人代へ異動。応氏は今年11月に閣僚級の党・政府高官の定年とされる65歳になるので、高齢を理由とする退任ではあるが、昇格せずに事実上の半引退となった。

◇天津市長が謎の急死

 地方トップでは、昨年12月にも新疆ウイグル自治区党委書記が突然交代。

前書記の陳全国氏は党政治局員なので、今年3月の全人代で政治局員級ポストの副首相に任命されるという説があったが、そうはならなかった。

 陳氏はウイグル族を徹底的に弾圧し、少数民族に抑圧的な大漢族主義の習路線を忠実に実行したにもかかわらず、米国で新疆からの輸入を全面的に禁じる法律が成立した直後に更迭された。後任は馬興瑞広東省長が抜てきされた。

 馬氏は、党指導部ナンバー4で国政諮問機関の人民政治協商会議(政協)主席である汪洋氏が広東省党委書記時代に中央の工業・情報化次官から広東に引っ張った実務派幹部。
汪氏は胡錦濤前国家主席や李克強首相と同じ共産主義青年団(共青団)出身で、習政権では非主流派に属する。

 公式報道によると、汪氏は3月に新疆を視察した際、「民生改善、団結増進」や「法律・規定に沿った反テロ・安定維持工作」を指示した。

ウイグル族を抑え込む方針自体が変わるとは思えないが、新疆当局では馬書記の赴任後、恒常的に休日返上で「安定維持工作」に当たる過酷な勤務態勢が改められたといわれる。
 天津市では4月27日に廖国勲市長が急死した。

廖氏は官僚としては貴州省出身で、習氏の権力基盤となっている浙江省での勤務経験もある。

貴州時代は習氏の盟友とされる栗戦書全人代常務委員長(党指導部ナンバー3)、浙江では政協副主席と国務院(内閣)香港マカオ事務弁公室主任を兼ねる習派大幹部の夏宝竜氏が上司の省党委書記だった。

 浙江勤務は短く、習派の中核を成す「之江新軍」(浙江人脈)とは言えないものの、党中央委メンバーではないのに近年急速に出世しており、習派有力者たちの評価が高かったのは間違いない。いずれ政治局入りしてもおかしくない人材だった。

 廖氏の死去について、天津市当局は「突発的な疾病のため、不幸にも他界した」と発表したが、死亡時の詳しい状況は不明。汚職取り締まりの調査対象になって自殺したとの説もある。

 中国の「反腐敗闘争」は事実上、政治的粛清の手段として使われている。汚職調査絡みの自殺説が事実とすれば、廖氏は政権主流派だったにもかかわらず、粛清の標的になったということになる。

◇李首相周辺は続々昇進

 一方、4月30日に内モンゴル自治区党委書記の退任が発表された石泰峰氏は、最大級の公式シンクタンクである社会科学院の院長に就任した。複数の香港紙は、来春には政協副主席を兼ねる見通しだと報じた。

 石氏は1歳年上の李首相と同じく北京大で法律を学び、李氏に近いといわれる。昨年9月、定年の65歳になったが、内モンゴル自治区党委書記を続投していた。社会科学院に移ったことから、権力中枢の政治局に入ることはないだろうが、政協副主席になれば、国家指導者に昇格する。

 今年3月以降、上記の応、石の両氏を含め、65歳前後の省・自治区党委書記6人が退任した。新しい書記のほとんどが閣僚など中央からの起用という珍しい人事。省長(省党委副書記兼任)から省党委書記に昇格する通常のパターンは青海省の1人だけだった。

 中央から異動した5人のうち3人は国務院の住宅・都市農村建設相、退役軍人事務相、税関総署署長(閣僚級)。いずれも李首相の部下である。

 主要閣僚ではない国務院の高官を相次いで地方トップに起用する人事は単なる偶然なのか、それとも、政権内で力関係の変化や人事ルールの変更があったのかは今のところ判然としない。 』

香港の枢機卿ら国安法違反容疑で逮捕 「外国勢力と結託」

香港の枢機卿ら国安法違反容疑で逮捕 「外国勢力と結託」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM11D6T0R10C22A5000000/

『【香港=木原雄士】香港警察の国家安全部門は11日、カトリック香港教区元司教の陳日君・枢機卿や歌手の何韻詩(デニス・ホー)氏を香港国家安全維持法(国安法)違反容疑で逮捕した。主要な香港メディアが報じた。デモ参加者を支援する基金の運営をめぐり、外国勢力と結託した疑いがもたれている。

報道によると、逮捕されたのは陳氏と何氏のほか、元立法会(議会)議員の呉靄儀氏と学者の許宝強氏。許氏は10日、香港国際空港でドイツに向けて出国する直前に逮捕された。4人は2019年の抗議活動で逮捕された若者らを支援する基金の運営に携わっていた。

陳氏は民主化運動の支持者として知られ、中国国内の宗教弾圧にも警鐘を鳴らしていた。英人権団体の香港ウオッチは逮捕を受けて「北京が香港で基本的権利や自由に対する取り締まりを強めている」と非難する声明を出した。

香港政府によると、3月末までに国安法違反容疑で175人が逮捕され、112人が起訴された。
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この記事を読んで、ただ一言、言葉がない。心配するのは香港の人々がこれをどう受け止めるかである。昔の香港を振り返れば、その魅力といえば、雑多のなかで秩序が保たれ、ロンドンの警察と同じようにペアで香港の警察も巡回する。ホテルや洋服店の前にインド人のドアマンはドアをあけてくれる。今の言葉で表現すれば、イギリス、古い中国と東南アジアの匂いがハイブリッドされたあの空気は世界の人々を引き付けた。本屋を覗いてみると、確かに玉石混交だった。それに対しては、香港は?これから何をもって世界の人々を引き付けるのか
2022年5月12日 7:48

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中国、人工中絶に規制論 少子化対策との見方も

中国、人工中絶に規制論 少子化対策との見方も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM2743W0X20C22A4000000/

 ※ 「人工妊娠中絶」手術は、「不妊」につながる…。

 ※ 「胎児」と「母体」は、「胎盤」でつながっている…。

 ※ それを、人工的に手術を施して、「排出」するわけだから、「子宮」内の着床・育成にかかわっている「組織」は、傷ついてしまう…。

 ※ どんなに「名医」が行ってもだ…。

 ※ 開腹手術だって、「手術痕」が残るだろ?そういう「痕」は、子宮内に残る…。

 ※ 「人工」的に行うわけだから、当然だ…。

『中国で人工中絶の規制論が浮上している。年間の手術人数が900万人前後で高止まりし、主要国で突出しているためだ。「手術は無痛で簡単に終わる」といった認識で中絶への危機意識が乏しいことから、手術を複数回受ける未婚の若い女性も少なくないという。国は女性の身体を守るためと説明するが、少子化が加速し人口減少が間近に迫るなか、庶民からは「中絶規制は出生数の増加が狙いではないか」との疑問が出ている。

「未婚者の中絶に介入する特別行動を実施する」。政府の産児制限に関わってきた中国計画出産協会が、1月末に公表した2022年の重点業務に、こんな一文が盛り込まれた。国務院(政府)が21年9月に発表した女性の地位向上に関する長期計画も「医学的に不要な人工中絶は減らす」と明記した。
中絶数の割合、米国や日本より高く

中絶数の高止まりを社会問題として捉えているためだ。国家衛生健康委員会の最新統計によると、20年は896万人だった。15~49歳の女性人口と比べた割合は2.78%に及んだ。時期は異なるが、米国(13年)の1.17%や日本(16年)の0.65%、ドイツ(15年)の0.57%よりはるかに高い。

中国のスーパーでは、レジ近くの棚にコンドームを陳列して販売する店舗も多い。避妊の意識が高いように見えるが、なぜ中絶が多いのか。

政府関係者は「中絶手術は無痛で簡単とうたうネット広告が多く、中絶が身体にもたらす危害を軽視している大学生や専門学生が少なくない」と語る。計画出産協会の王培安常務副会長は「中絶手術を受ける未婚女性は毎年400万人近くいる。このうち2割は複数回の手術経験がある」と明かす。

中国は1980年ごろから一人っ子政策を本格化させた。そのため、82~92年はほぼ毎年、中絶数が年1000万人を超えた。人口増加を抑えるため、中絶を推奨する風潮さえあった。かつては学校内やバス停のベンチでも、中絶手術を行う病院の広告がみられた。長年の産児制限が、中絶手術への抵抗感を弱める遠因だとみる専門家もいる。

人々の中絶に対する考え方のほか、中国都市部の経済環境も影響を及ぼしている。

「子育てで両親の助けを借りられないため、産めなかった」。北京市のIT(情報技術)企業に勤める王麗さん(28、仮名)は3年前の春節(旧正月)、河南省の実家に帰省した時に妊娠した。出産したいと思ったが、最後は中絶を選ばざるを得なかった。王さんの両親も実家を離れて、別の都市で生計を立てているためだ。

中国の都市部では夫婦共働きが一般的だ。家賃をはじめ生活コストが高いためだ。子ども手当のような地方政府の財政支援も乏しい。女性は子を産んでも、できるだけ早く職場に戻り、子育てで親の援助を受ける例が多い。都市部の家族事情も中絶が減らない一因だ。

中国政府が今、膨大な中絶の抑制に乗り出したのには理由がある。少子化に歯止めがきかず、総人口の減少が間近に迫っていることへの危機感が根底にあるからだ。計画出産協会の王氏は「青少年の性と生殖に関する健康問題は楽観できず、将来の民族の競争力に重大な脅威となっている」と語る。
昨年の中絶数は推定900万人前後、出生数に迫る

2021年の中絶数は公式データがないが、中国人民大学の楊菊華教授は、900万人前後と分析する。一方、出生数は前年比12%減の1062万人だった。習近平(シー・ジンピン)指導部は1組の夫婦に3人目の出産を認めたが効果は乏しく、1949年の建国以来で最少となった。出生数に対する中絶数の割合は85%程度で、4年間で30ポイントも上がった。

「急速な少子化への懸念も耳にしますが、中国は中絶問題を解決できれば、少子化もそれほど深刻ではなくなりますよ」。関係者によると、中国政府の高官は昨秋、北京市で外国要人と面会した際に断言した。

前述の政府関係者は高官の意図を「中絶手術を規制して出生数の増加につなげようということだ」と解説する。「母胎が危ないといった医学的に必要な中絶を除き、医療機関が手術の受け付けを絞り込むよう指導していく可能性はある」と指摘する。

総人口は2022年にも減少に転じる。長期的な人口減少は中国の潜在成長率を押し下げ、米国との覇権争いに影を落とす。社会保障制度の整備が道半ばで、急速な高齢化は社会不安を強めるリスクとなりかねない。人口問題への焦りが中絶規制論を生み出したわけだが、インターネット上の庶民の反応は冷めている。「出産抑制の次は中絶抑制か。意味ないよ」

(北京=川手伊織)

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中国、コロナ規制で野菜24%高 物流混乱・運送費高騰で

中国、コロナ規制で野菜24%高 物流混乱・運送費高騰で
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM113P40R10C22A5000000/

『【北京=川手伊織】中国で新型コロナウイルスの感染を徹底して抑え込む「ゼロコロナ規制」が、物価にも波及してきた。4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比2.1%上昇し、5カ月ぶりの伸びとなった。物流の混乱や運送費の高騰で野菜など食品が大きく値上がりしたためだ。雇用が悪化するなか必需品の価格が上昇し、家計は節約志向を強めている。

中国国家統計局が11日発表した。食品のうち、生鮮野菜は前年同月を24%上回った。伸び率は3月より7ポイント近く拡大した。生鮮果物や鶏卵、イモ類もそれぞれ12~14%値上がりした。

主因は、最大経済都市で物流の拠点でもある上海市の都市封鎖(ロックダウン)など厳しい行動制限だ。感染拡大を防ぐため、高速道路の出入り口を封鎖する動きが広がった。配送後の自宅隔離などを避けるため、感染エリアへの配送を嫌がるトラック運転手も多かったという。

サプライチェーン(供給網)が混乱したほか、燃料高の影響もある。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに国際商品市況が高騰しており、ガソリンなど燃料価格は4月、28%上がった。

必需品の値上がりは家計の購買力を奪う。主要国の中央銀行が物価の趨勢を見極めるうえで重視する「食品とエネルギーを除くコア指数」の伸びは0.9%にとどまった。2021年6月以来の低さとなった。個人消費の弱さを映している。

同時に発表した4月の卸売物価指数(PPI)の上昇率は8.0%だった。石炭や石油・天然ガスが3月に続いて、5割前後上がった。

産業構造の川下に多い民間企業は過当競争のうえ、消費が弱く、コストの転嫁を進めにくい。就業者の8割が民間企業で働くだけに、収益の減少は雇用や所得の落ち込みを通じて、今後の消費に重くのしかかる。

ゼロコロナ規制がもたらす経済的打撃への懸念が、中国の学識経験者からも出てきた。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、北京大学の徐建国副教授は「22年に都市封鎖など新型コロナ規制を導入した地域の経済産出量は18兆元(約347兆円)に達し、湖北省武漢市を封鎖した20年の10倍以上に及ぶ」と指摘した。

そのうえで「22年の経済成長率が、政府目標の5.5%前後どころか、2.2%だった20年実績に届くかどうか疑問だ」と語った。

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中国、ゼロコロナ批判に反発「無責任」

中国、ゼロコロナ批判に反発「無責任」
https://www.sankei.com/article/20220511-2WN3SZZJCZJJNGM4ZTEQIQEFIY/?ownedutm_source=owned%20site&ownedutm_medium=referral&ownedutm_campaign=ranking&ownedutm_content=%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%80%81%E3%82%BC%E3%83%AD%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E6%89%B9%E5%88%A4%E3%81%AB%E5%8F%8D%E7%99%BA%E3%80%8C%E7%84%A1%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E3%80%8D

『【北京=三塚聖平】中国外務省の趙立堅(ちょう・りつけん)報道官は11日の記者会見で、中国の「ゼロコロナ」政策について世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が批判したことに対し、「無責任な言論を発表してはいけない」と反発した。

趙氏は、中国の新型コロナウイルスの感染率や死亡率が「全世界で最も低い水準を保っている」などと主張し、自国の感染対策について「科学的、有効であり、中国は世界で感染対策に最も成功した国の一つだ」と自賛。ゼロコロナ政策について「私は最も中国に適した感染対策だと信じている」と強調した。

テドロス氏は10日の記者会見で、中国のゼロコロナ政策について「持続可能とは思えない」と批判。「別の戦略への移行は非常に重要だ」と述べ、方針転換を勧めた。』

中国の憲法学者、SNSで上海封鎖批判 投稿禁止に

中国の憲法学者、SNSで上海封鎖批判 投稿禁止に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM106390Q2A510C2000000/

『【北京=羽田野主】中国の憲法学者が、上海をロックダウン(都市封鎖)して住民の行動を制限するのは憲法違反だと批判する意見書を中国のSNS(交流サイト)で公表した。直ちに削除され、学者は投稿を禁止された。香港紙、明報が10日伝えた。

この学者は華東政法大(上海)の童之偉教授で、微博(ウェイボ)に投稿したとされる。8日公表の意見書で「上海市が強制的な手段を用い、住民を隔離施設に送ることは直ちにやめるべきだ」と指摘した。

上海市の防疫担当者が住民に自宅の鍵を渡すよう強要し、強制的に室内を消毒する行為は「中国公民の住宅は侵害されない」と規定する憲法に違反すると強調した。

童氏の微博のアカウントは「関連の法律や法規に違反した」という理由で投稿禁止の状態になった。意見書は北京大や復旦大、上海交通大などの教授20人あまりの見解を取り入れて作成したという。

上海で防護服を着た当局者が玄関の扉を破壊して入り、感染疑いのある住民をむりやり連れ出す動画などが中国のインターネット上で拡散し、そのたびに当局が削除する「いたちごっこ」が続いている。

習近平(シー・ジンピン)指導部は5日、共産党の政治局常務委員会を開き「わが国の防疫方針を疑い、否定する言動とは断固として闘う」との方針を決めたばかり。新型コロナウイルスの徹底した封じ込めを実現する「ゼロコロナ」政策を堅持し、異論を許さない姿勢を鮮明にしている。』

WHO、中国のゼロコロナ規制「持続可能ではない」

WHO、中国のゼロコロナ規制「持続可能ではない」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR10ERX0Q2A510C2000000/

『【パリ=白石透冴】世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は10日、新型コロナウイルスを徹底して抑え込む中国政府の「ゼロコロナ規制」について「持続可能ではない」と批判した。WHOが特定の国のコロナ対策を批判するのは珍しい。

テドロス氏は記者会見で「ウイルスの振る舞いを考えると、ゼロコロナ規制は持続可能ではないと考えている。今はいい対策もそろってきている」と指摘した。「中国の専門家と議論し、規制が持続可能ではないと伝えた」ことも明らかにした。

感染力が強いが毒性が下がった変異型「オミクロン型」の拡大とともに、世界の多くの国は対策を緩めてウイルスとの共生を探った。だが中国は感染件数を限りなく減らす対策にこだわり、上海市の都市封鎖(ロックダウン)などを決めている。中国政府は反対意見をネット上から削除するなどしており、WHOの勧告を受け入れる可能性は現時点では低そうだ。

一方、WHOの欧州域内加盟国は同日特別会合を開き、ロシアによるウクライナ侵攻で公衆衛生の危機が起きていると非難する決議を賛成多数で可決した。ロイター通信が報じた。WHOのロシア拠点閉鎖や、欧州加盟国の会合へのロシアの参加禁止などを検討する内容となっている。欧州主要国が賛成し、ロシアとベラルーシ、タジキスタンは反対した。』