中国船「海上民兵」の洗礼を浴びたインド 印中軍事対立は日本にとって対岸の火事ではない

中国船「海上民兵」の洗礼を浴びたインド 印中軍事対立は日本にとって対岸の火事ではない
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05300600/?all=1

 ※ 今日は、こんな所で…。

『FIPICの首脳会談が数年ぶりに開催された理由

「私が前回このステージで見たのはブルース・スプリングスティーン(米ミュージシャン)だったが、モディ首相ほどの歓迎を受けていなかった」

【写真で見る】日本では高評価…中国史上もっとも悪名高い「裏切り者」とは

 5月23日、オーストラリアのシドニーにあるスタジアムで、2万人以上のインド系住民が、9年ぶりに同国を訪問したインド首相のモディ氏に熱狂的な歓声を上げた。その光景を目にした同国のアルバニージー首相は、モディ氏をこのように讃えた。

 モディ氏がオーストラリアを訪問した狙いは、台頭する中国への警戒感を背景に、安全保障と経済の両面で同国との連携を強化することだ。

 モディ氏は5月22日、オーストラリア訪問に先立ち、パプアニューギニアで開催された「インドと太平洋諸島フォーラム(FIPIC)」の3回目の首脳会談にも出席した。14の島嶼国との協力枠組みであるFIPICは、モディ氏が2014年11月、インド系の住民が約4割を占めるフィジーを訪問した際に設立されたものだが、2015年にインドで2回目の会合が開かれて以降、空白期間が続いていた。

 インドが改めてFIPICに注目した理由として、太平洋での海洋進出を進める中国を念頭に、島嶼国への関与を強める狙いが指摘されている。

 太平洋地域ではこのところ、米国と中国が自国の影響力強化にしのぎを削っている。

 バイデン米大統領もパプアニューギニアとオーストラリアを訪問する予定だったが、内政問題を理由に中止を余儀なくされたため、モディ氏の動向に注目が集まった形だ。

インド周囲で圧倒的な存在感を放つ中国海軍

 5月19日から21日にかけて開かれたG7(主要国首脳会議)広島サミットでも話題の中心にいたモディ氏だが、悩みの種は中国との間で高まる軍事的な対立だ。

 インド海軍はASEAN諸国とともに5月7日から2日間、海上演習を実施したが、ベトナムの排他的経済水域(EEZ)で活動していた際に、海上民兵を乗せた中国船が急接近する事案が発生した(5月9日付ロイター)。

 中国政府は海上民兵の存在を否定しているが、「漁船に乗った中国の退役軍人らが当局と連携しながら南シナ海で政治的な活動をしている」というのが一般的な見解だ。

 台湾やフィリピン、ベトナムなどは既に海上民兵の脅威にさらされているが、インドも今回、その洗礼を浴びたのだ。

「アクト・イースト(東方重視)」政策を掲げ、太平洋への関与を強めるインドにも「中国の影」が見え隠れするようになったわけだが、最大の懸案は自国を取り囲むインド洋で中国海軍の存在感が圧倒的になっていることだ(5月17日付ニューズ・ウィーク)。

 2009年以来、中国海軍がインド洋で活動している。そのきっかけは海賊対策だった。当時、インド洋北西部に位置するジブチやソマリアの沖合で身代金目的の海賊行為などが横行していたため、国際社会はその対策に乗り出した。この取り組みに参加した中国は2017年、海軍の補給支援を行う目的でジブチに人民解放軍初の海外基地を2017年に建設した。
 中国はその後も基地の整備・拡大を続けたことから、ジブチでは現在、全長300メートルにわたる係留ドックが整備され、空母や潜水艦、揚陸艦などが入港可能になっている。
 中国は近年、「真珠の首飾り」と呼ばれるインド洋での港湾拠点の確保に動き、インド包囲網を形成してきた。このため、米海軍や日本の海上自衛隊が目を光らせている西太平洋とは異なり、インド洋は中国海軍にとって安心して活動できる海域となっている。

 中国の潜水艦や調査船の行動が、インド沿岸近くで日増しに活発になっていることから、「自国の安全保障が脅かされている」との危機感を募らせるインド政府は対抗措置を講じざるを得なくなっている。』

『インドと中国の対立が海でも発生すると日本にも影響

 ミャンマー西部ラカイン州のシットウェーで5月9日、インド政府が支援する港湾が開港した。ラカイン州で拠点を整備している中国の動きを牽制する目的だが、中国はインドの対抗手段を無力化する企みを準備しているようだ。

 最新の動きとして注目されているのは、中国がインド洋に浮かぶミャンマー領ココ諸島で監視基地の建設を進めていることだ(5月6日付日本経済新聞)。インド軍関係者は「東部での軍事活動が中国側に筒抜けになる」と警戒しており、監視基地の建設によってインドがさらに劣勢に立たされる展開が懸念されている。

 ココ島諸島はインドが複数の軍事施設を展開するアンダマン・ニコバル諸島のすぐ北に位置する。アンダマン・ニコバル諸島は、東アジアと中東、欧州を結ぶシーレーンのチョークポイント(戦略的に重要な海上水路)の1つであり、ここを押さえることはインドの対中国戦略にとって最重要課題となっている。

 だが、中国がココ諸島に戦略的な足場を築けば、インドの戦略は大幅な見直しを余儀なくされる。インドと中国との間で軍拡がエスカレーションするような事態になれば、日本にとっても「生命線」といえるインド洋のシーレーンの安全確保が危うくなってしまう。
 さらにインドと中国は、ヒマラヤ山中の未画定の国境を巡って長年対立している。

 インドのシン国防相は4月27日、中国の李国防相に「協定に違反した中国軍の行為が二国間関係の基盤全体を侵食している」と非難した。対して、中国の秦外相は5月6日、パキスタンのブット外相との結束をアピールしてインドに圧力をかけ、解決に向けての出口が見えない状況が続いている。

 陸での軍事的対立は「対岸の火事」かもしれないが、その対立が海へと飛び火する可能性が排除できなくなっている。日本にとっても一大事になってしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部 』

印・ASEAN軍艦に中国民兵船が接近、南シナ海で演習中

印・ASEAN軍艦に中国民兵船が接近、南シナ海で演習中
https://news.yahoo.co.jp/articles/ff560316adfd67232e55f85b6ef365a49be2c2ac

『 5/10(水) 9:58配信

[北京/ニューデリー 9日 ロイター] – 中国外務省は9日、インドと東南アジア諸国連合(ASEAN)の海軍が演習を行っていた南シナ海の海域に中国の海上民兵の船が意図的に接近したという批判を退けた。

ベトナムの専門家は、中国政府が海軍演習を妨害するため民兵を利用しているようだと指摘した。

中国外務省はロイターの取材に対し「われわれの理解では、中国の漁船や科学調査船は中国の管轄下にある海域で通常の操業をしている」とし、他国は根拠のない非難をすべきでないと述べた。

インドとベトナムの政府はコメントを控えた。

インドとASEANの海上演習は7日から2日間実施。インドの関係筋によると、ベトナムの排他的経済水域(EEZ)で活動していた際に中国船が近づいたが、双方の船は対峙(たいじ)することなくすれ違った。

海上民兵は商業漁船で構成され、南シナ海で政治的目的のために中国当局と連携して活動している。中国政府はそうした民兵の存在を過去に否定している。』

キッシンジャーのリアリズム

キッシンジャーのリアリズム – 風来庵風流記
https://blog.goo.ne.jp/mitakawind/e/3b59e1a32a8c3f0ab8fa07d3880c344e

『2021-06-11 00:19:04 | 時事放談

二週間近く前のことになるが、日経の記事でキッシンジャー氏が俄かに話題になった。

 数年前に遡るが、来日されたシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授の講演を聞きに行ったとき、国際政治上の(キッシンジャーのような)リアリストはイデオロギーなんぞは気にしないのだと言い放ったのを、些か衝撃をもって受け止めた。

確かに、かつて冷戦時代に、いくら宿敵の旧・ソ連に対抗するためとは言え、保守派のニクソン政権が共産主義・中国を取り込んだのは、イデオロギーを気にしていては出来ない離れ技だった。

一般論としてリアリズムはイデオロギーに縛られないと言われると、ロジックとしては分かるが、現実に、例えば当時、保守派の安倍政権の価値観外交を目の当たりにしていただけに、容易に肚落ちせず、小骨として喉の奥に引っ掛かり続けた。

 これから紹介する日経記事は、トランプ政権発足時にトランプ氏と会い、密使として習近平氏とも会うなどして、御年90を軽く超えてなお矍鑠としていたキッシンジャー氏(1923年生まれ)の影響力が、さすがに現政権内で衰えていることと並行して、現象として、キッシンジャー氏が仲介した中国との対立の先鋭化と、当時、断交した台湾への支援の拡大が進行する現状を報じるものである。

 一つ目の記事①は、日経記者による「キッシンジャー路線との決別」と題するコラムで、アメリカ政権内でのキッシンジャー氏の影響力の低下を、「キッシンジャー路線」=「中国への関与政策」からの決別、と伝えた。

 恐らくそれに触発されたのであろう、翌日(記事②)、慶應大学の細谷雄一教授は「キッシンジャーが創った時代の黄昏」と題して、アカデミックな観点から解説を加えられた。

「キッシンジャー路線」から外れてアメリカが台湾防衛に乗り出すかどうかが焦点になっている。かつて、「自由」という規範を重視した十字軍的な軍事関与がアメリカの国益を利するわけでもなく、アメリカに有利となる勢力均衡を形成するわけでもないと喝破したキッシンジャー路線だったが、職業外交官による合理的な「国家理性」の実現を目指す「旧外交」の時代とは違って、SNSが拡散し、世論の影響力が拡大した第一次大戦以降の「新・外交」の現代にあって、「キッシンジャー路線は自ずとよりいっそうの限界に直面するであろう」と予想され、それが東アジアの秩序に不可避的な影響を及ぼしかねないとも予想される。

 ちょっと補足すると、そもそもアメリカは国柄として、権力政治のヨーロッパの延長上に、しかしヨーロッパの権力政治を否定する新天地として、自由・民主主義(当時は共和主義)を奉じる「理念の国」である。

貴族だったアレクシ・ド・トクヴィルは、古代ギリシアのポリスじゃあるまいし、国家レベルで王政・貴族制ではなく民主制で政治を実践できるわけがなかろうと、1831~32年にかけて、アメリカを実地検分し、帰国後に『アメリカのデモクラシー』を書いて、アメリカを「例外主義」と呼んだ。

そのちょっと前、保守の元祖と言われるエドマンド・バークは『フランス革命の省察』を書いて、フランス革命の急進性を危うんだように、「諸国民の春」を経て、国民国家体制が西欧で当たり前になるのは、ずっと後年のことである。

そんな生い立ちの後、アメリカは19世紀を通して経済大国化し、二度の大戦で世界に関わらざるを得なくなるが、基本はモンロー宣言のまま、トランプじゃなくても「アメリカ・ファースト」で、子ブッシュじゃなくても「単独行動主義」で、国際社会に関与するときには「理念」や「大義」を掲げて十字軍的に介入する(朝鮮戦争、ベトナム戦争だけでなく、湾岸戦争、イラク・アフガン戦争も)、我が儘でお節介な「理念の国」である。

そして国際社会のあり方として、現実的な権力政治の一つの典型である勢力均衡ではなく、国際連盟や国際連合といった共同体、すなわち力の均衡ではなく力の共同体を構想したほどである。

そのアメリカの歴史から見れば、キッシンジャー(あるいはニクソン政権)やセオドア・ルーズベルトのようなリアリズムは例外に属すると言ってよい。

それでもアメリカは多様な国であって、ウォルター・ラッセル・ミード教授が活写したように、アメリカ外交は、孤立主義だけでなく国際主義(介入主義)という両極端の間を、また理想主義だけでなく現実主義という両極端の間を、振り子のように揺れ動くという、多様性あるいはバランス感覚を持った国である。

 これら二つの記事①②の前に、日経は「バイデン氏、独ロに歩み寄り」と題して、ノルドストリーム2への制裁見送りを伝える記事③を伝えた。

(トランプ氏が散々関係を悪化させたメルケルさんの)ドイツもさることながら、(プーチン氏のことを、記者の質問に促されたとは言え「殺人者」と呼び、サイバー攻撃を非難し続ける)ロシアとの関係がどうなるのか、気になるところだ。

この記事で「キッシンジャー」の名前は出て来なかったが、かつてのキッシンジャー氏の中国接近になぞらえて、今、アメリカのロシア接近はあり得ないものかと、つい妄想してしまった。

 勿論、細谷教授がご指摘されるように、これまで50年間続いた中国への関与というキッシンジャー路線のように、イデオロギーに囚われないリアリズムは、昨今、世間ウケはしまい。

その意味で、米露接近などもってのほかと受け止められるに違いない。

かつての冷戦時代に遡る旧・ソ連の悪しき記憶が残るだけでなく、その後も民主化を期待されながら権威主義を強めてきたプーチン体制に対する反発は、クリミア併合やサイバー攻撃を通した大統領選挙介入などを持ち出すまでもなく、根強いだろうからだ。

しかし、イデオロギー的に受け入れ難いとは言え、対中包囲網を形成する上で、西側諸国の結束と並んで、米露接近ほど有効な策はないのもまた事実である。中国への関与という旧・キッシンジャー路線を外れて、ロシアへの接近・取り込みという新たな“キッシンジャー的”路線・・・とは言っても、かつての米中接近ほどの鮮やかさまでは行かないにしても、ロシアに対して中国から一定の距離を置かせるような、新たなロシアとの関係を実現出来ないものかどうか、ちょっと期待してしまう。

 バイデン大統領は、(記事③によれば)今なお習近平氏との対面での会談を提案していない中で、G7サミットに続いて、6月16日にジュネーブで米露首脳会談を予定している。

そこでは、米露関係をどのように「管理」するかがテーマになると伝えられる。これに先立って、楊潔篪氏がロシアを訪問するというのもまた中国の反応として面白いところだ。
果たして優柔不断なバイデン大統領は、G7の(期待される)結束を盾に、米露首脳会談でプーチン氏にどこまで迫れるのか、結果として米・中・露でどのような三角形が描かれることになるのか、注目される。

①「キッシンジャー路線との決別 オバマ広島訪問から5年」(2021年5月27日付、日経Angle) 
  https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA249XB0U1A520C2000000/
②「キッシンジャーが創った時代の黄昏」(2021年5月28日付、日経COMEMO)
  https://comemo.nikkei.com/n/na8eb75327568
③「バイデン氏、独ロに歩み寄り ガス管計画を容認」(2021年5月26日付、日本経済新聞)
  https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2605R0W1A520C2000000/ 』

冷戦後の米対中関与「戦略的大失策」 ミアシャイマー氏

冷戦後の米対中関与「戦略的大失策」 ミアシャイマー氏
ニクソン訪中50年
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN115QT0R10C22A2000000/

『2022年2月22日 0:00

米中国交正常化のきっかけとなったニクソン米大統領(当時)の中国訪問から21日で50年となった。米国は中国がいずれ民主化すると期待し、国際秩序に取り込む「関与政策」を長く続けた。2001年初版の著書「大国政治の悲劇」で「関与政策は失敗する」「米中は敵同士となる運命」と断言したシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授に米中関係の半世紀と今後を聞いた。(聞き手はワシントン=大越匡洋)

――50年前、中国との国交正常化への道を開いたニクソン大統領、キッシンジャー大統領補佐官の決断はそもそも間違っていたのでしょうか。

「そうではない。米国の過去50年の対中政策は冷戦時代と1990年前後から2017年までのポスト冷戦期、それ以降を区別して評価する必要がある。冷戦時代の米国は中国に関与し、ソ連に対抗する関係を結んだ。非常に理にかなったことだ」

「89年に冷戦が終結し、91年にソ連が崩壊すると、米国はソ連を封じ込めるために中国の力を必要としなくなった。米国は愚かにも中国が経済的に強くなるのを助ける『関与政策』を追求した。中国は当然、成長した経済力を軍事力に転換した。米国は同等の競争相手を創り出す戦略上の大失策を犯した」

――米国は中国が台頭する潜在力を過小評価していたのですか。

「違う。米国は中国が経済的に強大になると予測し、中国を世界経済に統合しようと努めた。同時に冷戦への勝利から、欧米の政策エリートは共産主義やファシズムがもはや実行可能な政治形態ではなく、中国もロシアもいずれ自由民主主義国となると考えた。米国に限らず、欧州、日本、台湾、みなが中国を支援しても地政学的脅威にならないと考えた。中国は米国に挑戦することをめざし、新冷戦が始まったのだ」

――中国の「封じ込め」は実行可能ですか。

「トランプ前政権は基本的に関与政策を放棄し、バイデン政権も封じ込めを追求している。まず軍事的側面として米国と同盟国は中国が南シナ海を占領したり、東シナ海の現状を変えたりするのを阻止しようと決意している。経済的に狙っているのは中国の成長を可能な限り抑え、同時に欧米の成長を加速させること。最先端技術を中国に支配させないことが主になる。問題は誰がより多くの損害を被るかだ」

――米中の武力衝突の可能性をどうみますか。

「米中の新冷戦は米ソ冷戦より『熱戦』に至る可能性が高い。地理的な理由が大きい。米ソ冷戦は欧州が中心で、北大西洋条約機構(NATO)とワルシャワ条約機構の衝突は瞬時に核戦争に発展する可能性が高かった。代償が大きい分、米ソ間の抑止力は非常に強固だった。一方、東アジアの現状からは米中が台湾や南・東シナ海を巡って限定的な戦争に至る事態が想定できる。限定的な分、可能性は高まる。冷戦時代の米ソ戦争の可能性との比較で考えれば、米中戦争の可能性の方が高いという意味だ」

――限定的衝突でも核戦争につながる恐れがあります。

「たとえば中国が台湾をめぐる争いに負けた場合、海上で核兵器を使用する事態が想像できる。米国による逆のケースもある。核兵器が海上で選択的に使われる事態だ。慎重な表現が必要だが、米ソ冷戦時の核戦争の可能性よりも、海上における米中の戦いで核が使われることを想像するほうが容易だろう」

――中国は「時間は中国の味方」と考えています。

「正しいかもしれない。中国が台湾を統一しようと考えれば、米国に対してはるかに優位になるまで待ったほうがよい。だが今後30年、中国経済がどうなるか知ることは難しい。だから最悪のケースに備え、米国は中国の封じ込めに全力を尽くさなければならない。軍事力は結局、経済力に基づいている」

――93年の論文でウクライナの非核化に反対しました。ロシアの脅威を抑止できなくなるとの理由でしたが、米国はアジアと欧州の問題に同時に対処できますか。

「正確を期そう。米国は欧州とアジアの問題に同時に対処する能力がある。しかし、双方で同時に良い成果を上げる能力はない。米国は愚かにもロシアを中国側に追い込んだ。 中国に対抗するためには米国はロシアと手を結ぶことが自然だ。 NATOを東に拡大したことでロシアとの間で危機を招き、アジアに完全に軸足を移せずにいる」

――バイデン政権が昨年開いた「民主主義サミット」は中国など権威主義国家の台頭を抑えるために有効でしょうか。

「思わない。いまの争いは地政学的な競争であり、イデオロギー的な競争ではない。日本や米国が民主主義国家であることは素晴らしいが、イデオロギーと関係なく、中国は両国にとって脅威である。私はリアリストなので地政学的な考察を重視したい」

――日本の役割は。

「日本は対中連合の主要プレーヤーとして米国に対し、なぜ東欧でロシアと争うことが不合理か、なぜ米国は東アジアに集中すべきか、徹底的に説明すべきだ」

John J. Mearsheimer シカゴ大学教授。大国間の力関係から国際関係を分析する「現実主義者(リアリスト)」の代表的理論家。米コーネル大で博士号。米ウエストポイントの陸軍士官学校を卒業し、空軍に5年間勤務した。1947年生まれ 』

アジアの覇権めざす 中国人民元の挑戦(1)

アジアの覇権めざす 中国人民元の挑戦(1)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO82528370Z20C15A1I10000/

『2015年2月3日 7:00

台頭する中国はアジアの覇権をめざしている。「海洋強国」の建設は、東シナ海や南シナ海であつれきを招いている。その中国の海洋戦略は通貨戦略と連動する。リーマン・ショックによる世界経済危機を受けて、中国は人民元の国際化やBRICS開発銀行、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立など矢継ぎ早の戦略を打ち出している。野心的ともいえる人民元の挑戦は、米ドルを基軸とする第2次大戦後の国際通貨体制に揺さぶりをかけるものである。

海洋進出と連動

米国の国際政治学者、ジョン・ミアシャイマー・シカゴ大教授はリアリストといわれるだけに、中国をめぐる国際情勢の冷厳な現実を見据えている。「冷戦終結から25年、米国一極の時代と思われたが、中国が米国を凌駕(りょうが)するのではないかという位置に到達している。パワーバランスは時間が経てば経つほど中国有利になっていく。中国はその経済力を軍事力増強に回すだろう」と語る。そのうえで「米国が西半球で覇権を確立しているように、中国は東アジアで覇権国になろうとするだろう」と指摘する。

たしかに、日本を抜いて世界第2の経済大国になった中国の軍事力増強は急ピッチだ。その規模は2014年度で8082億元で、米国に次ぐ2位。米国の4分の1だが、日本の2.27倍だ。この10年間で4倍という急拡大である。中国の国防費は、外国からの兵器調達などが含まれないため、実際の規模はその1.3~2倍になると米国防総省は分析している。

中国は空母の建設に乗り出すなど海洋強国をめざす動きが顕著だが、それだけではない。バラク・オバマ米大統領が打ち上げた「核兵器なき世界」のもとで核保有国は核軍縮に取り組んだが、中国だけは核兵器も増強している。

東シナ海では尖閣諸島をめぐる日中のあつれきは解消できず、南シナ海ではベトナム、フィリピンなど東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国との緊張も深まっている。この海洋進出がアジアで覇権をめざす一環だとすれば、緊張をほぐすのは容易ではない。

米国のシンクタンク、カーネギー平和財団による「2030年の中国の軍事力と日米同盟」に関する報告では、中国は日本の国防力や日米同盟による抑止力を圧倒する軍拡を背景に、日本との紛争を軍事力の行使なしに、有利に決着することになると分析している。

リーマン・ショックが転機

中国はなぜ「覇権主義」に走り出したのか。1978年、政権についた鄧小平は改革開放路線を打ち出し、現代中国の基礎を築いた。当時、鄧小平が唱えたのは「韜光養晦(とうこうようかい)」(才能を隠して内に力を蓄えよ)である。同時に、覇権は追求しない方針を打ち出した。まだ発展段階の始まりにすぎなかった中国にすれば、当然の路線選択だった。

この基本路線を転換させたのは、2008年9月のリーマン・ショックである。震源地、米国をはじめ世界経済が危機に陥り、米国の指導力がしだいに低下するという読みが中国内で強まったからだ。すかさず11月に、胡錦濤政権は4兆元の大規模な景気対策を打ち出す。胡錦濤国家主席は「中国の内需拡大は世界経済への最大の貢献になる」と胸を張った。リーマン・ショック後の大転換時代に、中国が主導的役割を担う姿勢を鮮明にしたのである。

2009年9月の四中全会のコミュニケでは、世界経済の枠組みが変化し世界のパワーバランスが変わるという認識から、国際経済システムの再建に参画する絶好のタイミングととらえていることを示した。

中華思想の復活

大国として中国は、国際社会でどう振る舞うか。胡錦濤が提示したのは4つの力である。第1に政治面でいっそう影響力をもち、第2に経済面でいっそう競争力をもち、第3にイメージ面でいっそう親和力をもち、第4に道義面でいっそう感化力をもつ。ハードパワーとソフトパワーを兼ね備えた国際戦略といえる。

胡錦濤の後を受けた習近平国家主席の主張はもっと直截である。「中華民族の復興」という言葉が繰り返される。

19世紀初頭まで中国は世界最大の経済大国だった。アンガス・マディソン・グローニンゲン大教授の推計によれば、1820年の中国の国内総生産(GDP)は、西欧全体の1.4倍、米国の9倍の規模だった。それが産業革命で流れは変わる。1870年には、中国は首位に立つ西欧の半分の規模に転落する。長い低迷の時代が続くことになる。

「中華民族の復興」とは、国際社会で中国を19世紀初頭以前の地位に戻そうという戦略といえる。それは単なる「中国の台頭」ではない。「16世紀以来の歴史的な再台頭」(ジョセフ・ナイ・ハーバード大教授)なのである。

攻めの金融戦略

リーマン・ショック前、中国の金融戦略は守りの域を出なかった。人民元改革は米国議会の不満や米連邦準備理事会(FRB)の批判に対応した受け身の改革だった。中国当局は人民元切り上げで競争力が落ちるのを恐れた。2005年、人民元は固定制から管理フロートになり、米ドルから通貨バスケットにペッグすることになった。漸進改革の域を出ていない。

しかし、リーマン・ショックで米ドルの信認が揺らいだとみて、攻めの戦略に転じる。人民元を国際的な貿易や投資の決済通貨として普及させる方針を打ち出した。中国企業の為替リスクを避けるとともに、決済通貨としての米ドル依存を抑えるのが狙いだ。

もちろん、人民元は米ドルやユーロ、円、ポンドに比べて不自由な通貨である。しかし、その不自由さを逆手に取って、人民元通貨外交を展開する。中国は本土以外で非居住者が資金をやりとりするオフショア市場での人民元取引を制限している。だから、海外から人民元を中国に送る場合、中国人民銀行が認めた決済銀行を通す必要がある。

この決済銀行は従来、香港、マカオ、台湾、シンガポールという「中華圏」に限られていた。それをこの1年に一挙に韓国、マレーシア、タイ、オーストラリア、カナダというアジア太平洋地域に、さらに独仏英、ルクセンブルクという欧州に、そして中東のカタールに拡大した。

習近平国家主席

習近平政権は人民元の国際化を重要政策に位置付けている。人民元決済は貿易、投資の拡大で需要が高まる。その「特権」を付与することによって、中国の影響力を行使する。まさに「中華思想」の復活である。

それは米ドルにばかり依存しない国際通貨体制を中国主導で構築しようという戦略の第一歩ともいえる。

3大通貨への30年戦略

中国はさらに人民元の国際通貨としての役割を高める長期戦略を構築しようとしている。それは人民元をドル、ユーロとともに世界の3大通貨とするための30年戦略である。

中国人民大学の国際通貨研究所がまとめた「人民元―国際化への挑戦」はこう指摘する。「ドルを中心に、ユーロ、ポンド、円などが国際準備通貨になっている構造から、20~30年後にドル、人民元、ユーロの均衡という新たな構造に転換する」

そのために、人民元の国際化の範囲を拡大する。最初の10年は周辺国で人民元を決済通貨とする貿易を推進する。次の10年はそれをアジア地域に広げ、最後の10年で世界に拡大する。

同時に、人民元の国際通貨としての役割を開拓する。最初の10年は貿易決済機能を、次の10年は支払い機能を、そして最後の10年で準備通貨になるという長期戦略である。

出遅れる日本

こうした人民元国際化の潮流に、日本は出遅れている。日本政府は人民元建ての債券発行、決済銀行の設置、日本の機関投資家による人民元建て投資枠の創設など他のアジアや欧州諸国並みの扱いを中国に求めている。

東京を国際金融センターにするには、人民元の国際化に対応するしかない。日本の出遅れは、尖閣諸島の国有化をきっかけとする日中関係の冷却化が響いているだろう。中国が長期戦略のなかで、ドル、ユーロと並び人民元を3大通貨と位置付け、あえて円をはずしているのも、アジアでの覇権をめざす姿勢といえる。
パワーより信認

もちろん人民元が国際準備通貨になるには、様々な条件がいる。ドル、ユーロ、円、ポンドのような世界の市場で自由に取引できる通貨でなければならない。変動相場制の導入や資本取引の自由化が求められるのはいうまでもない。自国の経済政策が市場のプレッシャーにさらされるのを覚悟しなければならない。

重要なのは、各国通貨当局と市場の信頼である。例えば、人民元の決済銀行の選定にあたって政治的恣意性を優先させるようでは、人民元の国際化にも限界があるだろう。国際通貨は、それが広く受け入れられるかどうかで存立が決まる。パワーより信認なのである。

(敬称略)
岡部直明(おかべ・なおあき)
 1969年 早稲田大学政経学部卒、日本経済新聞入社。
編集局産業部、経済部記者を経て、ブリュッセル特派員、ニューヨーク支局長、取締役論説主幹、専務執行役員主幹、コラムニストを歴任。日米欧で幅広く国際通貨を取材。早稲田大学大学院客員教授を経て現在は明治大学国際総合研究所フェロー
主な著書は「主役なき世界―グローバル連鎖危機とさまよう日本」「ベーシック日本経済入門」「応酬―円ドルの政治力学」ほか』

カンボジア  総選挙での権力世襲に向けて、野党を選挙から排除 更に強固となる中国との関係

カンボジア  総選挙での権力世襲に向けて、野党を選挙から排除 更に強固となる中国との関係 – 孤帆の遠影碧空に尽き
https://blog.goo.ne.jp/azianokaze/e/e3997ef1be11c85fd3dd12778500e603

『(フン・セン首相と長男であるフン・マネ氏 【2021年12月2日 STAR CANBODIA】

フン・セン首相は「私は今日、息子が首相として継続することを支持することを宣言しますが、私たちは選挙を通過しなければなりません。」と語り、形式上「選挙」による民意でフン・マネ氏への権力移譲がなされたという形を整える構えです。 憲法上、議員内閣制であるカンボジアですが、上下院とも政権党が議席を独占し、政府提案は満場一致で通ることになっています。 その選挙からは有力野党は排除されます。)

【総選挙での権力世襲に向けて、野党を選挙から排除】

カンボジアのフン・セン首相の強権弾圧政治の動きが止まらないことは、首相の息子の越権行為を批判した独立系メディアの免許剥奪などについて、2月23日ブログ“タイとカンボジア 総選挙に向けた政治状況 タイは親軍勢力の「分裂選挙」 独裁色強めるカンボジア”でも取り上げました。

その独立系メディアの免許剥奪の際、フン・セン首相は「私と息子を攻撃しようとした。政府の尊厳は守らねばならない」と。(【2月13日 時事】より) 要するに、批判は一切許さないということです。

そうしてフン・セン首相が強引に推し進めるのは、息子の権力の世襲です。

****フン・セン氏長男が出馬へ カンボジア、世襲に前進****

カンボジアの政権与党、カンボジア人民党が7月に実施される下院選の候補者として、フン・セン首相の長男フン・マネット陸軍司令官の選出を決めたことが1日、党関係者への取材で分かった。

フン・マネット氏は既に後継首相候補に選ばれており、首相世襲に向け一歩前進したことになる。

党首であるフン・セン氏が決定書に署名したという。首相在任40年近くのフン・セン氏も引退はせず、別の選挙区から出馬する予定で、首相交代がいつになるのかは不透明だ。

カンボジアを実質支配する人民党の議員に選ばれれば、フン・マネット氏の政界での存在感がさらに高まる。国政を長年担ってきた指導層全体の世代交代も進みそうだ。【4月1日 共同】

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更に、フン・セン親子の権力世襲の邪魔になりそうなものを次々に排除しています。

カンボジアの裁判所は3月3日、旧最大野党・救国党の元党首で国家反逆罪に問われたケム・ソカ被告に対し、禁錮27年の判決を言い渡しました。政治活動も禁じられます。

****カンボジア元野党党首、反逆罪で禁錮27年*****

カンボジアの首都プノンペンの裁判所は3日、国家反逆罪に問われていた元野党党首ケム・ソカ氏(69)に禁錮27年を言い渡した。人権団体は、ケム・ソカ氏の裁判は政治的動機に基づいているとしている。

ケム・ソカ氏は解党された救国党の共同創設者。同氏は長年、アジアで在職期間が最長のフン・セン首相の政敵とされてきた。

裁判官は、ケム・ソカ氏が「国内外で外国人と共謀した」と述べた。

ケム・ソカ氏は判決後、すぐに自宅軟禁となった。家族以外との面会も禁じられる。選挙権と被選挙権も剥奪される。
ケム・ソカ氏は2017年、外国の組織と共謀し政府転覆を計画したとして逮捕された。同氏は繰り返し、これを否定している。
フン・セン首相は民主主義と自由を後退させるとともに、反対勢力を押さえつけるために司法制度を利用し、多数の反体制派活動家や人権活動家を投獄していると批判されている。

裁判を傍聴したパトリック・マーフィー駐カンボジア米国大使は、裁判と判決について「誤り」だと非難した。【翻訳編集AFPBBNews】

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政敵である旧最大野党・救国党を潰したのと同様に、総選挙に向けて、最近国民支持を広げてきた(解党に追い込まれた救国党の流れをくむ)野党・キャンドルライト党への弾圧を強め、ついに今年7月予定の総選挙から排除しています。

****再開した野党弾圧、6月選挙で健闘したキャンドルライト党にも****

<長男への権力世襲を狙うカンボジアのフン・セン首相。総選挙はまだ1年も先なのだが>

来年7月に総選挙を控え、カンボジアのフン・セン政権は再び野党勢力の大規模訴追に乗り出した。
2017年に解党を命じられた野党カンボジア救国党(CNRP)の党員ら34人が国家転覆罪などで起訴されたと、8月22日に地元メディアが報じた。亡命中のサム・レンシー元党首ら幹部が含まれるが、彼らは既に繰り返し起訴されている。

野党関係者の大規模弾圧は2020年以降、3度目。2013年総選挙でCNRPが大躍進したことに与党カンボジア人民党(CPP)が危機感を募らせて以降、100人以上が反逆や扇動の罪で起訴されている。

フン・セン首相は長男マネットへの権力移行を進めており、総選挙を前に基盤強化を狙う。

今年6月の地方選挙ではCNRP系の新党キャンドルライト党が健闘したが、政権は同党の弾圧も強めている。

野党勢力にとって残る手段は欧米各国に制裁を求めることくらいだが、今回の起訴でそれすら「外国勢力との共謀」と見なされる恐れもある。【2022年8月29日 Newsweek】

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****カンボジア 政権に抵抗する野党の総選挙への参加 選管が認めず****
ことし7月に総選挙が行われるカンボジアの選挙管理委員会は15日、現政権に抵抗する野党の選挙への参加を認めない決定を行いました。

カンボジアではこの政党への弾圧が続いていて、欧米諸国などから民主主義後退への懸念の声が出ています。

カンボジアでは、ことし7月に5年に1度の総選挙が行われますが、現地の選挙管理委員会は15日、フン・セン政権に抵抗する野党・キャンドルライト党の参加を認めない決定を行いました。

理由については、政党と候補者の登録手続きに必要な書類が提出されなかったためだとしています。

キャンドルライト党は、前回の総選挙前に解党に追い込まれた当時の最大野党・救国党の流れをくみ、今回の総選挙の前哨戦として注目された去年の地方選挙で与党に次ぐ議席数を獲得していました。

このため、前回の総選挙と同様、政権側が主要な野党を排除したという見方が広がっています。

長く続いた内戦後に始まったカンボジアの総選挙が民主的に実施されるよう日本も長年支援を行っていますが、40年近く続くフン・セン政権による抵抗勢力への弾圧が続いていて、欧米諸国などから民主主義後退への懸念の声が出ています。【5月16日 NHK】

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****「総選挙参加資格の剥奪は不当」カンボジア有力野党の訴えを憲法評議会が棄却****

今年7月に行われるカンボジアの総選挙をめぐり、憲法評議会は、選挙資格の剥奪は不当だとする有力野党の訴えを棄却しました。(後略)【5月26日 日テレNEWS】

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批判するメディアは免許を剥奪し、野党は解党に追い込み、また、総選挙から排除する。そして息子への権力世襲を進める・・・“民主主義後退”というより、もはや民主主義でも何でもない単なる強権支配です。

【中国との関係 更に強固に】

こういう暴挙をASEANは問題にしないのか?とも思うのですが、「内政不干渉」云々以前に、ASEANはそもそもベトナム・ラオスのような社会主義国も加盟国ですから、いわゆる欧米的「民主主義価値観」を前提にしていません。

こういう強権支配体制は政治的にも中国の共産党支配と親和性が強いところですが、経済的にも強固な関係があり、カンボジアはラオス・ミャンマーとともに、ASEAN内にあっては中国の代弁者的な立場にあります。

****カンボジア「全ては中国の内政問題」ラオス「二つの中国への意図に反対」…批判しない姿勢で一貫****

カンボジアの首都プノンペンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の一連の外相会議では、米中など大国間の対立が先鋭化する中、ASEAN各国が国際情勢にどう向き合うかが改めて焦点となった。対立から距離を置こうとする国がある一方、中国寄りの立場を明確にする国も目立った。

対面3年ぶり

一連の会議が対面で開かれるのは3年ぶりだ。カンボジアは議長国として、国軍による市民弾圧が続くミャンマー情勢などに対し、足並みをそろえて対応して域内の結束を確かめることを目指した。

(2022年8月)5日に開かれたASEAN地域フォーラム(ARF)外相会議の冒頭、プラク・ソコン副首相兼外相は「一触即発の事態を回避するため、この会議は貢献できると信じている」と語った。

会期中にナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問し、中国が大規模演習を展開するなど地域の不安定さが増す中、ASEANが主催する一連の会議が地域の安定に向けた協議の場となるとの見方を示したものだ。

割れる対応

台湾問題を巡り、ASEAN各国の対応はわかれた。

シンガポール外務省は3日の声明で、「地域の平和と繁栄には、安定した米中関係が不可欠だ」と表明。マレーシアのサイフディン・アブドゥッラー外相も「我々は米中両国を重要視しており、双方の友人でいたいと考えている」と述べ、中立的な姿勢で米中双方に自制を求めた。

カンボジアの外交アナリスト、リム・ソクビー氏は、「これらの国々は米中双方と貿易など経済的な結びつきが深く、どちらかに肩入れはしたくない。米中のどちらかを選択するような事態を恐れている」と指摘する。

一方、カンボジアのクン・ポアク外務次官は4日、議長国として行った会見で、「カンボジアの立場としては、台湾や新疆ウイグル自治区、香港などは全て中国の内政問題だ」と述べた。

ラオスも外務省報道官の声明で、「『二つの中国』の状況を作り出そうとするあらゆる意図に反対する」と表明した。カンボジアとラオスは中国に経済で大きく依存しており、中国を批判しない姿勢で一貫している。(後略)【2022年8月6日 読売】

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今年2月にはフン・セン首相が訪中し、その関係強化を確認したことをCGTN(中国国営テレビ・中国中央電視台の英語による国際ニュース放送チャンネル)が伝えています。

****CGTN:65年を経て、中国とカンボジアの共同体が未来を共有する新時代を開く****
中国国民の古い友人であり良い友人でもあるカンボジア王国のフン・セン首相が旧正月明けの3日間、中国を公式訪問した。

2月9日から11日にかけて、フン・セン氏は中国指導層との会談のほか、「中国・カンボジア友好年」(China-Cambodia Friendship Year)の開始式や中国・カンボジアのビジネス・投資・観光フォーラムの開会式に出席し、外交、経済・貿易、開発協力、農産物、インフラ、メディアなどの分野に及ぶ一連の協力文書への調印を行った。

中国のSun Weidong外務副大臣は10日、China Media Group(CMG、中央広播電視総台)に、中国とカンボジアは国交樹立65周年を迎え、「1つの立場、6つの協力、2つの回廊」を通じて二国間協力をさらに進める用意があると述べた。

▽1つの立場

中国とカンボジアは11日、新時代における未来を共有する中国・カンボジア共同体の構築に関する共同声明を発表し、双方はフン・セン氏の訪問中に重要な合意に達した。

声明には、「国際情勢がどのように変化しようとも、中国とカンボジアは揺るぐことのない鉄壁の友情を深め、互恵的で双方に利益をもたらす実務協力を行い、未来を共有する共同体の構築を推進する」と記されている。(中略)

フン・セン氏は3年前と今回の訪問を通じて、カンボジア国民は常に中国国民と固く結ばれていることを明確なメッセージとして伝えたいと述べた。同氏は、カンボジアと中国の包括的戦略協力パートナーシップの成果をさらに推し進め、未来を共有するカンボジアと中国の共同体を協力して構築することを誓った。

▽6つの協力

フン・セン氏の訪問中、双方は中国・カンボジアの「ダイヤモンド・ヘキサゴン」協力枠組みについても合意に達した。

習国家主席が指摘したように、双方は政治、生産能力、農業、エネルギー、安全保障、人的・文化交流の分野で協力枠組みを構築できる可能性がある。フン・セン氏は中国の協力枠組みの提案に全面的に同意した。

この協力枠組みは、共同声明に主要6分野の詳細な協力計画が記述されている。

このように、両国はすでにいくつかの分野で実務的な行動を起こしている。フン・セン氏が出席した中国・カンボジアのビジネス・投資・観光フォーラムには、両国の政府・企業代表者約300人が参加した。(中略)

中国商務省によると、中国は11年連続でカンボジアの最大の貿易パートナーであり、2022年も二国間貿易額は過去最高を記録し、前年比17.5%増の160億2000万ドルに拡大した。

また、中国人観光客が徐々に東南アジア諸国に戻ってきたことで、カンボジアは観光業の回復に大きな期待を寄せている。パンデミック以前、中国はカンボジアを訪れる外国人観光客の最大の供給源だった。

カンボジアのタオン・コン(Thong Khon)観光大臣によると、1月に2万5000人の中国人観光客が同国を訪問し、2023年には80万人から100万人の中国人観光客を誘致しようとしている。

▽2つの回廊

共同声明で強調されたように、両国はシアヌークビル州を中心とした産業開発回廊およびトンレサップ湖地域の魚・米回廊の2回廊の構築に注力することでも合意した。

産業開発回廊を構築するために、中国はより多くの中国企業のカンボジアへの投資を奨励し、シアヌークビル経済特区(SSEZ)を促進することを習氏はフン・セン氏に語った。

11平方キロメートルにおよぶ同SSEZは現在、世界各国の約170の工場を擁し、総投資額は13億ドル以上で約3万人の雇用を創出している。

習氏が湖の近くで農業協力の取り組みを促したことから、両国は多次元的、複合的、効率的な近代的農業システムを備えた魚・米の回廊を共同で構築することに合意した。

カンボジア農林水産省が発表した報告書によると、中国は2022年、カンボジアの農産物の主要輸入国の1つだった。2022年の1月から11月の間に、約68万9702トンのカンボジアの農産物が中国に出荷された。【2月14日 PRwire】

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7月の“形式的”総選挙で与党が圧勝し、長男への権力世襲のレールを確かなものとし、カンボジア・中国関係はいよいよ強固に・・・ということのようです。』

ネパールの大規模水力タモール,中国企業が実施へ,インドと妥協なったか

ネパールの大規模水力タモール,中国企業が実施へ,インドと妥協なったか
http://blog.livedoor.jp/adachihayao/

『【日刊 アジアのエネルギー最前線】 ネパールの大規模水力タモール,中国企業が実施へ,インドと妥協なったか
http://www.adachihayao.net

2023年5月29日 月曜日 雨

ネパールの包蔵水力3000万KWの開発は,人類にとっての喫緊の課題だが,大規模水力の開発には,ネパールの伝統的解釈,インドへの送電,中国企業の強烈な開発意欲が,三つ巴となって開発を阻んできた,最たる問題は,中国企業が開発しても,インドが売電契約に同意しない限り開発できない

今日のネパール地元紙は,中国企業とインド政府の間に,ある種の妥協が成立した可能性を示唆している,長年に亘って置き去りになったネパールと中国の覚書,ネパールの東部,76万KWのタモール水力(Tamor)の中国企業による開発約束,おそらくインドがアルン下流水力(Lower Arun)を開発

問題となった二つのプロジェクト,タモールとアルンは,いずれもネパール東端の大規模水力で,インド企業が開発することになったアルン下流水力は67万KWであり,三者間に政治的な妥協が図られたのだろう,ただその東のブータンはインドが一手に開発してきた経緯あり,送電連携が問題に,』

中国がアメリカの壁から自らを引き離す

中国がアメリカの壁から自らを引き離す (www.inss.org.il)
https://milterm.com/archives/3195

『イスラエルの研究機関の記事「INSS Insight No. 1714, April 24, 2023」の紹介。イスラエルから見た中国の米国に対する対応について学ぼうとする記事。(軍事)

中国がアメリカの壁から自らを引き離す

China Extricates Itself from the Surrounding American Wall

近年、COVID-19の規制や米国との「新冷戦」など、大国中国のイメージは悪化の一途をたどっている。北京はどのように国際的なイメージを回復しようとしているのか、そしてイスラエルはそこから何を学ぶことができるのか。

INSS Insight No. 1714, April 24, 2023

Oded Eran

オデッド・エラン(Oded Eran)は、国家安全保障研究所上級研究員で、イスラエル外務省などでの長いキャリアを経て、2008年7月から2011年11月までINSSのディレクターを務めた。世界ユダヤ人会議イスラエル代表、WJCイスラエル支部事務局長などを歴任し、INSSに参画。2002年から2007年まで、イスラエルの駐EU大使を務める(NATOも担当)。それ以前(1997-2000年)は、駐ヨルダンイスラエル大使、パレスチナ人との交渉チーム長(1999-2000年)を務めた。その他、外務省副長官、在ワシントン・イスラエル大使館副館長などを歴任。

2022年最終四半期に入ってから、中国はCOVID-19のパンデミックがもたらした内部危機からの脱出に精力的に取り組み、パンデミック後に中国政府が課した厳しい制限により、経済の減速や新興国としての中国のイメージダウンにつながった。

また、ウクライナを侵略したロシアのイデオロギー、政治、経済、安全保障上の同盟国であることも、中国のイメージを悪化させた。そのイメージを回復し、米国が築こうとする壁を弱めるための努力は、特に習近平主席のリーダーシップの下、外交活動に大きな比重が置かれている。

中国を主要な戦略的ライバルと位置づける米国は、COVID-19の流行で中国を襲った危機を利用して、特にインド太平洋地域で中国を包囲し、オーストラリア、日本、韓国を中心とする同盟国との政治、安全、技術関係を強化するための措置をとった。

同時に、米国の関心と努力は、高度な技術力の開発に関連する経済分野への中国の関与を制限することを狙いとしている。安全保障の調整と同様に、この問題に関しても欧州との協力が増加している。これは、中国による大陸への浸透への懸念と、ウクライナで進行中の戦争とその安全保障、経済、人口動態への影響によってもたらされたものである。

同時に、パンデミック関連の状況下で中国を孤立させようとするアメリカの試みも、2022年の冬季オリンピック開催で中国が得ようとした威信を最小限に抑えようとする努力も、中国の少数民族ウイグル人に対する扱いに対する政治戦線を作ろうとする試みも、部分的かつ短期間の成功にとどまった。

国際的な地位を回復しようとする中国の取組みは、実は内政面で始まった。「中国版民主化プロセス」によって、事実上、習主席の任期は無制限となった。それ以来、中国は攻勢に転じ、南米、中東、欧州といったアメリカの戦略空間におけるポジションを獲得することで、アメリカ包囲網を突破しようとしている。

2022年12月上旬、習主席はサウジアラビアで堂々とした歓待を受けた。ホストであるサルマン国王とその息子モハメッド氏は、二国間会談に加え、エジプト大統領やヨルダン国王など域内の首脳、そして湾岸協力会議の首脳との会談を2回、習主席のために手配した。

湾岸地域における米国の政治・経済・安全保障上のプレゼンスは中国の数倍であるが、習主席の訪問は、サウジアラビアとイランの国交更新という米国の世界戦略の一翼を担う地域に対する自国の関与を一段と高めるものであったといえるだろう、 中国がエネルギーの大部分(石油の40%、天然ガスの30%)を購入し、米国や欧州を上回る最大の輸出国となっているこの地域で、中国を含む多くの国が仲介することは、中国の影響力が強まっていることのさらなる証左である。

中国が仲介したサウジアラビアとイランの関係更新の調印式|China Daily via REUTERS

ここにはイスラエルの角度もある。2023年4月17日、中国の外務大臣がイスラエルとパレスチナの担当者に電話をかけ、両者の協議に中国の援助を提供した。中国がイランとサウジアラビアの仲介に成功したことを受けてのことだが、米国との関係に新たな緊張をもたらすことを避けたいイスラエル政府は、この構想に難色を示すだろう。

中国にとって欧州は、その経済的な重要性と、ソ連に対抗するために形成され、現在は中国を主要なライバルとする西側諸国の戦略的同盟の中心的要素としての重要性を持っている。2012年に習近平政権が誕生して以来、米国と欧州の間にくさびを打ち込もうとする中国の努力はますます強くなっている。巨大なインフラプロジェクトは、経済的な依存関係を作り出し、影響力を拡大する手法の一つである。

東欧・中欧諸国を含む16+1協力フォーラムは、中国が「一帯一路構想」(歴史的なシルクロードの主要ルートとその各支流に沿ったプロジェクト)を実施するために用いるもう一つのツールである。2012年に設立された16カ国からなるこのフォーラムは、2019年にギリシャが参加したが、2021年にリトアニアが脱退したことで、再び縮小した。

その1年後、プーチン大統領と習近平国家主席が、かつてソビエト連邦に属していたバルト三国の脅威の隣人である中国とロシアの「無限の友情(unlimited friendship)」を宣言したことを受けて、ラトビアとエストニアもフォーラムから離脱した。

欧州連合(EU)は、中国が人参と棒の戦術を用いてEU加盟国の意思決定プロセスに対する影響力を拡大しようとしていることを認識している。また、民主主義と人権の価値を支持する組織として、ガバナンス、個人の自由、マイノリティに対する態度などあらゆる面で中国と欧州の違いを認識している。

一方、欧州諸国は中国の経済力を無視することはできず、神聖な価値観の維持と経済的利益のバランスを取るために継続的な闘争に従事していることに気づく。このような緊張関係の中で、中国は、例えばハンガリーなどいくつかの国が、EUの基本原則や、フランスやドイツを中心とする主要加盟国が「戦略的自律性(strategic autonomy)」を維持しながら大西洋横断同盟を維持したいという希望にあまり関心がないという事実を利用しようとするのである。

2023年4月にフランスのエマニュエル・マクロン大統領が中国を訪問した後、ヨーロッパの「戦略的自律性(strategic autonomy)」が再び話題となった。マクロン大統領はインタビューで、欧州が直面する最大の危険は、欧州に関係のない危機に巻き込まれ、自律的な戦略を展開できなくなるリスクであると述べ、米国下院議長と台湾総統との会談をめぐる米中間の緊張を明確に言及した。

マクロン氏は、最悪の対応は、米国の思惑通りに行動すること、あるいは中国の過剰反応であると付け加えた。中国指導部はマクロンの言葉に肯定的なシグナルを見出した。マクロンが、米英豪が2021年に設定した安全保障条約(AUKUS)からフランスを除外したことへの怒りを隠さず、とりわけオーストラリア艦隊への原子力潜水艦搭載-この計画は中国から強く批判されている-を取り上げたからである。

一方、マクロン氏自身は、「戦略的自律性(strategic autonomy)」は紛争を意味するものではなく、フランスと米国はそれぞれ様々な事柄に対して独自のアプローチを持っていることを明らかにした。米国との合意の例として、台湾問題やインド太平洋地域の航行の自由に関する現状維持へのフランスの支持を想起し、そこに配備されているフランスのフリゲート艦「プレイリアル(Prairial)※」に言及した。

※フランス海軍のフロレアル級フリゲート2番艦。

習主席とプーチン大統領|Sputnik/Alexei Druzhinin/Kremlin via REUTERS

マクロン大統領の訪問の最後に行われた共同発表では、ウクライナ戦争に言及し、国連憲章の原則に基づく解決策を見出す必要があるとした。マクロン大統領と北京に同行した欧州委員会委員長は、ロシアへの武器供与を思いとどまらせようとしたが、中国外相が「ウクライナで戦ういかなる当事者にも武器を供与することはない」と述べたことが、その一因となったと思われる。

これは、米国大統領と国務長官が中国にロシアへの武器供給を控えるよう求めた際の怒りに満ちた反応とは対照的である。中仏の共同発表で盛んに言及された核問題での中国の活動やイランへの影響力を追跡し、フランスがこの問題で中国から他より多くの協力を得られるかどうか、興味深いところである。

台湾問題では、中国はフランスの対米不満を利用しようと考えたのだろうが、2023年4月にドイツのアンナレーナ・ベアボック(Annalena Baerbock)外相が訪中した際、ホスト国は、ドイツが台湾との連合を認める代わりに、中国がソ連崩壊後のドイツ統一を認めたことを根拠に、両国関係を煽ってドイツをアメリカから孤立させようとした。

数週間前まで中国外相を務め、現在は中国指導部の幹部である王毅は、今回の訪問で「ドイツが台湾との平和的な連合を支持することを望み、信じる」と述べ、中国が(ソ連崩壊後の)ドイツの再会を支持したことに言及した。さらに、台湾の中国への返還は、第二次世界大戦後の世界秩序において重要な要素であったと付け加えた。

中国政府高官は、前日の中国側との共同記者会見で、台湾をめぐる戦争は悪夢のシナリオであり、全世界に破壊的な結果をもたらすというベアボック(Baerbock)からの率直な警告を無視した。王毅はおそらく、紛争は平和的な方法によってのみ解決され、暴力的で一方的な現状変更はヨーロッパでは受け入れられないというベアボック(Baerbock)の発言を頼りにしていたのだろう。

しかし、ベアボック(Baerbock)は、ドイツの立場、そして間接的にヨーロッパの大部分の立場について、疑いの余地を与えなかった。中国は、ヨーロッパが世界銀行、国際通貨基金、OECDのデータを無視することはできないという事実に安心することができる。世界銀行は、2023年の中国の経済成長率を約5%と推定しているが、これに対してアメリカは1.6%、ヨーロッパは0.8%である。

これらのことから、4月16日から18日にかけて日本で開催されたG7の外相は、気候変動、健康安全保障、経済回復などの地球規模の問題解決に向けた中国との協力の希望を表明するとともに、不公平で競争の激しい経済行動、知的財産の不法譲渡・窃盗、インド太平洋地域の現状を武力で変えようとしていること、香港の自治権侵奪、チベット・ウイグルの権利侵害などの一連の問題について中国に対する批判も表明した。

7カ国の外相が台湾に関して「一つの中国(one China)」原則への支持を表明したことは、北京にとって十分ではなく、日本が中国の内政に干渉していると批判している。

現在までに、ブラジルのルーラ・ダ・シルバ(Lula da Silva)大統領が中国を訪問した。ルーラ・ダ・シルバ(Lula da Silva)大統領は、工業化の刷新のために中国の経済援助を得るとともに、ブラジルを見捨てることを決めた米国企業に代わって、中国企業がブラジルに進出することを期待している。中国は、南米最大の国として、またBRICSグループの一員として、ブラジルを重要なパートナーと考えている。

ブラジル大統領が自国での中国の活動を招聘することは、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアなど米国と敵対する多数の国を含むこの地域での中国の影響力拡大につながるだろう。3月、ホンジュラスが台湾の承認を取り消し、台湾との関係を断ち切り、中国との国交を樹立したことで、中国は外交的勝利を収めた。

イスラエルの政治家の中には、中国の外圧への対応や、政府による国家目標の妥協のない追求を、見習うべき行動モデルと考える人がいるかもしれない。しかし、規模や能力、特に経済力の違いや、中国が他国をいかに依存させてきたかを考慮する必要がある。また、イスラエルは、中国がこれまでイスラエル社会で受け入れられないとされてきた価値観や手段を、異なるシステムで集団的規律を達成できることを忘れてはならない。

カテゴリー
国際情勢 』

闘わずして勝つ?中国が「認知戦(cognitive warfare)」を模索する理由

闘わずして勝つ?中国が「認知戦(cognitive warfare)」を模索する理由
https://milterm.com/archives/3201

『 闘わずして勝つ?中国が「認知戦(cognitive warfare)」を模索する理由 (www.japantimes.co.jp)
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MILTERMで何度も紹介してきたハドソン研究所研究員の高木耕一郎氏であるが、ジャパンタイムズにインタビュー記事が掲載されているので紹介する。本記事にもあるとおり、高木耕一郎氏は人工知能(AI)やデータ・マイニングの研究もされている方であり、それらの技術的知識に裏付けられた論文等は様々な研究論文(最近では「OFFSET-X-Closing the Detterence Gap and Building the Future Joint Force-」)にも引用されている。(軍事)

闘わずして勝つ?中国が「認知戦(cognitive warfare)」を模索する理由

Winning without fighting? Why China is exploring ‘cognitive warfare.’

BY GABRIEL DOMINGUEZ

May 26, 2023

昨年10月、北京の中国人民革命軍事博物館で、中国共産党の旗の横に習近平が映し出された巨大スクリーンの前に立つ見学者たち。| REUTERS

米国とその同盟国は台湾周辺の軍事能力を急速に強化しており、中国が台湾(自治権を有する島)の占領することはもちろん、侵略することも困難になってきている。

しかし、中国人民解放軍(PLA)は、人工知能を活用した軍事システムや作戦コンセプトを指す「知能化戦(intelligent warfare)」にますます力を入れており、専門家は、北京がいずれ「認知戦(cognitive warfare)」という新しいカードを手にする可能性があると警告している。

この用語は、人工知能(AI)などの技法や技術を駆使して、敵対者の心(mind)に影響を与え、決心を形成することで、戦略的に有利な環境を作り出したり、闘わずして制圧したりすることを狙いとした作戦を指す。

軍事情報技術の専門家で、ワシントンのシンクタンク、ハドソン研究所の高木耕一郎研究員は、「人民解放軍(PLA)は、人工知能(AI)を使って人間の認知をコントロールする意図は明言していない」と指摘する。

「しかし、中国では認知戦(cognitive warfare)について活発な議論が行われており、その開発は中国の政策立案者にとって大きな魅力があり、特に従来型の兵器(conventional weapons)を使わずに台湾における勝利をもたらすのに役立つだろう」と述べた。

中国の国家安全保障と軍事的野心にとって人工知能(AI)がどれほど重要なものになっているかは、昨年10月に開催された異例の共産党大会で習近平主席が強調し、人工知能(AI)やその他の最先端技術の開発に対する北京のコミットメントを強調している。中国は2030年までに世界有数の人工知能(AI)大国になることを計画しているだけでなく、北京はこれを達成するために軍民融合戦略(military-civil fusion strategy)にも目を向けている。

米軍と中国軍はともに、情報処理、無人兵器、意思決定の3つの共通分野に人工知能(AI)を一体化することを目指している。しかし、北京はこの技術をさらに一歩進めて、認知戦(cognitive warfare)での利用を模索している。一部の中国の軍事専門家は、物理空間(physical space)と情報空間(information space)の次に重要な戦場になる可能性が高いと述べている。

昨年2月、北京の人工知能アカデミーをメディア向けに見学した際、人工知能システムによるデジタル手話システムを表示する画面を記録するジャーナリスト。| REUTERS

昨年8月に人民解放軍日報(PLA Daily)紙に掲載された記事によると、認知戦(cognitive warfare)は、すべての当事者が「比較的制御された方法(relatively controlled manner)」で政治的到達目標を達成しようと努力するため、「大国間のゲームにおける重要なツール(an important tool in the game of great powers)」になっているという。

そのため、人民解放軍(PLA)が「将来の戦争に勝つ(win future wars)」ために、認知作戦(cognitive operations)の特性についての洞察を獲得することや認知作戦(cognitive operations)を開発することは、「緊急(urgent)」であるだけでなく「現実的な意義(practical significance)」があると記事は述べている。

つまり、人民解放軍(PLA)は、陸上、海上、航空、サイバー、宇宙(spatial)と並ぶ新たな戦いのドメイン(new warfare domain)として、認知作戦(cognitive operations)を積極的に検討している。

高木氏は、中国がライバル国の意思決定者、軍隊指揮官、一般市民の思考に影響を与えようとする方法について、「これは、米国や同盟国のほとんどの議論が想定しているのとは全く異なる使い方をするもの」と述べている。

例えば、北京はソーシャル・メディアやその他の手段を使って、ディープフェイクを含む偽情報を拡散し、台湾の世論を操作することができる。また、台湾を支援する米国の取組みを貶めようとする可能性もある、と高木氏は付け加えた。

このことを起こすためには、中国は必要なサイバー、心理、ソーシャル・エンジニアリングの能力を開発するだけでなく、詳細な個人情報を大量に収集する必要がある。

これはまさに、ワシントン(米国政府)が長い間、北京(中国共産党)がやっていると非難してきたことである。

人工知能(AI)やデータ・マイニングを研究してきた高木氏は、中国はすでに政府関係者や一般の米国市民に関する大量のデータを収集しており、人々の知覚(perceptions)に影響を与えるための基盤を確保しているという。

その方法のひとつがサイバー攻撃(cyberattacks)である。

2015年、政府の民間労働力を管理する機関である米国人事管理局が、人事ファイルの一部がハッキングされていたことが判明した。その中には、政府のセキュリティ・クリアランスを求める人の身元調査で集められた個人情報を含む数百万枚の用紙や、数百人の指紋の記録も含まれていた。犯人の出所に関する決定的な証拠は見つかっていないが、このハッキングは中国政府のために働く攻撃者の仕業であるというのが一致した見解である。

これは孤立した事件ではなかった。5年後、米国司法省(U.S. DoJ)は、消費者信用調査機関であるEquifaxに対する2017年のサイバー攻撃に関連して、中国の「軍に支援されたハッカー(military-backed hackers)」4人とする告発を発表した。この侵入(intrusion)は、国家的な支援を受けた行為者によって行われた、個人を特定できる情報の過去最大の窃盗につながった。

高木氏は、こうしたデータが「将来的に武器になる(weaponized in the future)」可能性を危惧している。

実際、北京はすでに認知作戦(cognitive operations)に頼っているように見えると高木氏は言う。

「これらの活動は、中国政府が自国の領土とみなす台湾や香港で特に積極的かつ強圧的に行われている」とし、デジタル手段を用いて選挙に影響を与える試みは、2020年の台湾総統選挙でも見られたと指摘した。

中国人民解放軍は、人工知能を活用した軍事システムや作戦コンセプトを指す「知能化戦(intelligent warfare)」にますます力を注いでおり、専門家は、北京が認知戦(cognitive warfare)という新たな軍事戦線を支配する上で、最終的に役立つだろうと述べている。| 写真|GETTY IMAGES

一方、中国軍も人工知能(AI)を使って自軍の心の状態(state of mind)に直接影響を与えることに注力しているようで、人民解放軍日報(PLA Daily)も昨年8月に、自軍の兵士が実際の戦闘状況に対応できるよう、ウェアラブル技術や「心理支援システム(psychological support system)」の開発に取り組んでいると報じている。

ますます多くの兵士に「将校や兵士の顔情報を連続的に記録し、データ・フィードバックによってリアルタイムに心理状態(psychological state)を判断し、アーカイブする」ことができるスマート・センサー・ブレスレットが支給されていると、同紙は報じている。

この装置は、戦闘中に将校や兵士が直面しうるさまざまな戦時心理的問題(wartime psychological problems)を調べ、対処するためのシステムの一部である。

人民解放軍(PLA)は、兵士の精神状態(mental state)を紛争に勝利するための重要な要素とみなしている。「戦争は物質的な争いだけでなく、精神的な争いでもある(War is not only a material contest, but also a spiritual contest)」と人民解放軍日報(PLA Daily)は12月に別の記事で述べている。

「人は常に戦争の結果を左右する決定的な要因であり、人が効果的に機能するかどうかは、良好な心理状況(psychological situation)や安定した心理的質(psychological quality)の支援にかかっている」。と書かれている。

とはいえ、これらの新しいツールや技術が、最終的に人民解放軍(PLA)の専門家が期待するような効果を発揮するかどうかは、まだ判断がつかない。

高木氏は、中国軍の人工知能(AI)や自律システムの利用に関する分析の中には、中国の理論家がこれらの技術に内在する脆弱性(質の低いデータによるアルゴリズム・バイアスなど)を見落とし、その能力を強調しすぎていることを示唆するものもあると指摘する。
「実現可能性は依然として不明であり、政治的な必要性から過大評価された可能性がある」と述べた。これは、中国の指導者たちが人民解放軍(PLA)に対して、中国本土と北京が分離独立した省とみなす台湾を統一するための新しいアイデアを出すように圧力をかけた結果かもしれない。

とはいえ、ワシントン(米国政府)はチャンスを逃したくないので、人工知能(AI)やスーパーコンピューティング用の高度なチップの中国への販売に制限を加えている。

高木氏は、「中国の軍備増強の焦点が人工知能であることを考えると、米国とそのパートナー国の両方で開発されたハイエンド半導体を中国が短期的に複製することは極めて困難であるため、これらの制限は非常に有効である」と述べている。

しかし、長期的には、中国は独自の技術やサプライ・チェーンを開発することができると彼は付け加えた。

中国の「知能化戦(intelligent warfare)」が成功するかどうかにかかわらず、戦いにおける認知ドメイン(cognitive domain in warfare)域注目することは重要だと高木氏は言う。

「人の心(human mind)に直接影響を与えるというアイデアは新しいものではないが、人工知能(AI)技術の進歩により、ますます実現可能性が高まるかもしれない」。

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人工知能[AI](Autonomy)、国際情勢、認知戦(cognitive warfare)

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50万円の中国激安EV「宏光MINI」ブーム終えんか。3月の販売44%減

50万円の中国激安EV「宏光MINI」ブーム終えんか。3月の販売44%減
https://news.yahoo.co.jp/articles/848fc2e0b0ecac88e0ca3af2c46a0ca0661a3569

『中国の自動車メーカー「上汽通用五菱汽車(SGMW)」の超小型電気自動車(EV)「宏光MINI EV」は、2020年7月に市場に投入されて以降、長期間にわたって中国の新エネルギー車(NEV)市場のトップに君臨してきた。宏光MINI EVは、2万8800元(約57万円)からという格安価格に加え、全長3メートル未満・ホイールベース2メートル未満の小さなボディで、超小型EVブームを巻き起こし、「神車」と呼ばれた。公式発表によると、同車の最高月間販売台数は5万600台、NEV販売台数ランキングで28カ月連続1位を達成している。

ところが、宏光MINI EVの販売台数は22年末以降、減少に転じている。23年1~4月の販売台数は前年同期比26.5%減の8万7900台だった。うち、3月の販売台数は前年同月比44.8%減と、中国自動車市場で最大級の落ち込みを見せた。

市場全体の見通しも楽観視できない。中国で「A00クラス」と呼ばれる小型NEVセダンの23年1~3月期の販売台数は前年同期比55.1%減の13万1000台で、全クラスで最大の落ち込みとなっている。小型NEVに対する熱は冷め始めたようだ。

しかも、宏光MINI EVと競合する車種は多い。例えば、吉利汽車(Geely Automobile)の「熊猫mini」、長安汽車(Changan Automobile)の「Lumin」、BYDの「海鴎」などだ。

日本経済新聞によると、名古屋大学は同車を分解・調査したところ、SGMWがコスト抑制のため、エネルギー回収システムを採用せず、寿命が短いインバーターと、安価なコンシューマー向け半導体を搭載したことが明らかになった。それでも、車全体の基本コストは2万6900元(約53万円)に達し、1台あたりの利益はわずか88元(約1730円)しかなかったという。財通証券(Caitong Securities)による別の試算では、同車1台当たりの粗利益率は2~3%だという。

*2023年5月24日のレート(1元=約19.7円)で計算しています。

(36Kr Japan編集部)』

対中国「リスク管理」新時代 「切り離し」論と一線

対中国「リスク管理」新時代 「切り離し」論と一線
G7後の岸田外交①de-risking(リスク低減)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA25CUU0V20C23A5000000/

『主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)は中国との向き合い方を巡り新たな共通認識を形成する舞台となった。「切り離し」論と一線を引き、リスク管理を重視する考え方だ。覇権主義的な行動をとる中国へ実効性のある行動をとれるのか。サミット後の「岸田外交」の命題となる。

ウクライナのゼレンスキー大統領の電撃来日で沸いた20日、中国を巡る新表現を盛る首脳宣言が採択された。「我々は『de-coupling―デカッ…

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『「我々は『de-coupling―デカップリング(切り離し)』や内向き志向にはならない。『de-risking―デリスキング(リスク低減)』と多様化が必要だ」

安全保障分野で台湾有事を抑止する意味合いを持つ「台湾海峡の平和と安定の重要性」は従来通り、明記した。安全保障面で中国を抑止するが、自国の経済的利益も追求していく――。書きぶりから浮かびあがるのは各国のこんな思惑だ。

日本政府関係者によると、文言を主導したのはウクライナ侵攻後、脱ロシア依存で苦しむ欧州連合(EU)だという。

口火を切ったのはフォンデアライエン欧州委員長だ。訪中直前の3月に「中国の切り離しは不可能で欧州の利益にもならない。焦点を当てるのは『デリスキング』だ」と演説で訴えた。

米国のサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)も4月に「米中経済の『デカップリング』を求めてはいない」と続いた。大事なのはリスク軽減に向けて強靱(きょうじん)なサプライチェーン(供給網)を築くことにあると説いた。

こうした姿勢は対中政策を厳格にしたトランプ前政権時代の米国とは異なる。当時は華為技術(ファーウェイ)などへの規制を強め、米中貿易戦争の様相を呈した。デカップリングもやむを得ないという強硬姿勢があった。

ロシアによるウクライナの侵攻が長期化すると、各国は困難さも認識するようになった。欧州はエネルギーの脱ロシア化を進めたものの、インフレや石炭への回帰といった副作用が生じた。米国でも共和党などに「支援疲れ」が表面化する。

経済が甚大な影響を受けるデカップリングを実行に移せば、各国は国内世論の反発にも直面しかねない。中国は名目国内総生産(GDP)でロシアの8倍ほどで、各国の依存度は大きい。より現実的な中国への向き合い方が必要との認識が広がっていた。

そこで急浮上したのが「デリスキング」だ。

首脳宣言はまず「我々の政策方針は中国を害することを目的としておらず、中国の経済的進歩、発展を妨げようともしていない」と経済活動を認めた。

そのうえで経済安全保障を「経済的な脆弱性の武器化への防御」と位置づけた。半導体やレアアース(希土類)などの重要物資に絞った供給網を分散してリスク低減をはかる方針を明記した。

日米は主導して中国当局による現地企業への圧力にも照準をあわせた。「中国の非市場的政策と慣行がもたらす課題に対処する。不当な技術移転やデータ開示などの悪意ある慣行に対抗する」と記述した。

この路線は新興・途上国の「グローバルサウス」からも共感を得た。事前調整で経済活動を継続する路線に異論を唱える国はなかった。

一方、実効性を疑問視する声もある。中国はレアアースといった重要鉱物などを使い経済を外交・軍事の手段とするからだ。東大の佐橋亮准教授は「経済的威圧をされたときに確実に報復するというメッセージを出さないと抑止は成立しない」と危惧する。

G7前にはフランスのマクロン大統領が台湾有事を巡り「米国に追随しない」と発言するなど、中国を巡る米国との温度差も浮き彫りとなった。佐橋氏は「抑えめのメッセージとなれば、逆に中国リスクが増す可能性すらある」とも提起した。

7年ぶりの日本開催のサミット最大のテーマはアジア情勢――。関係者はこう口をそろえる。新たなG7合意をアジアの安定に結びつけられるか。「建設的かつ安定的な関係」を掲げた岸田外交の真価はこれから問われる。(随時掲載)

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察デカップリングとデリスキングのどこが違うのか。そもそも完全なデカップリングがあり得ないことについて、政治とビジネスにおいてコンセンサスを得られていた。ハイテク技術を中心とする部分的なデカップリングをデリスキングと定義するならば、わざわざこの造語を作る必要はなかろう。デリスキングにおいてハイテク技術のデカップリングはもう必要がないというなら、それでは、局面が違ってくる。実態は明らかに違う。したがって、政治家は造語でごまかすのがうまい人たちだが、問題の本質をみないといけない。問題の本質とはなにか。価値観を共有できないため、信頼関係が完全に崩れてしまったことである
2023年5月29日 7:54 (2023年5月29日 8:06更新)
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梶原誠
日本経済新聞社 本社コメンテーター
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ひとこと解説 金融市場関係者にとってデリスキングはなじみのある用語です。「リスク・オフ」とも言い、金融危機などに備えて投資先をリスクの高い新興国から安全資産の米国や先進国に移す戦略です。でもこの結果、デカップリングになるのも事実。マネーは新興国から米国などに戻るわけですから。G7の外交・対外経済政策も同じです。「その結果はやはりデカップリングであり、世界経済のリスクであり続けるのではないか」。市場関係者の多くは警戒を解きません。
2023年5月29日 7:17 (2023年5月29日 7:34更新) 』

「ロシアは中国の属国」が波紋 習氏はウクライナに特使

「ロシアは中国の属国」が波紋 習氏はウクライナに特使
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFE150JL0V10C23A5000000/

『「ロシアは、早くも地政学上の戦争で敗退した。ロシアが事実上、中国に付属する国と化す過程が既に始まっている」

ウクライナ大統領のゼレンスキーとパリで会談したフランス大統領のマクロンが、仏メディアに語った中ロ関係の現状を形容する衝撃的な言葉が、なぜか中国内で瞬く間に広がった。そして様々な波紋を広げている。

このマクロン発言は、ロシアとウクライナの仲介を探る中国国家主席、習近平(シー・ジンピン)が送っ…

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『このマクロン発言は、ロシアとウクライナの仲介を探る中国国家主席、習近平(シー・ジンピン)が送った代表団が、ウクライナに入る直前だっただけに、中国内で一段と注目を集めた。

ロシアの「ジュニアパートナー化」にうれしげ

ロシアが、中国の「ジュニアパートナー」になりさがる――。そもそもの経済不振に加えて、ウクライナでの苦戦によって、ロシアが政治・経済上、中国に全面的に頼らざるを得ない構造の指摘は、欧米の学界では決して新しいものではない。むしろ、最近、はやりの分析といえる。

しかし、その地政学を動かす当事者である欧州主要国で、国連安全保障理事会常任理事国でもある国のトップが、自ら公に言及する意味はそれなりに重い。

マクロン発言について中国共産党内では強い警戒感が出ている。目立つのは「中国とロシアのあらゆる側面での緊密さに不満な西側諸国が、蜜月関係を引き裂こうとする『離間の計』だ」という見方である。

だが、その一方で、中国内では、なんとなくうれしげな雰囲気も漂っている。ウキウキ、ソワソワ、ニヤニヤという感覚が、ここ数日、一気に広がっている様々なニュースと評論文の行間からにじみ出ている。

少なくとも、異例の速さでマクロン発言が広がったのは、他国にはない現象だ。中国代表団のウクライナ入りよりも、マクロン発言の方が熱い議論になって、インターネット空間でも取り上げられているのは異様だ。

台湾問題を抱える中国共産党の思いとしては、ロシアがこのウクライナでの戦いで敗退するのは、望ましくない。しかし、一般的な中国の庶民の感覚としては、苦境のロシアが、経済・政治両面で中国に頼らざるを得ない国際力学の変化は心地よいのだ。

米ソ冷戦を戦った世界の二大国の一方だったソ連。その継承者であるロシアが、いまや中国の属国状態にあるというマクロンの評価は、米国と並ぶ大国になったと自任する中国の人々の自尊心をくすぐる。

広島G7にぶつけたウクライナ入り

とはいえ、中国にとって喫緊の課題は、西側自由主義諸国が敷く中国包囲網の打破である。「その包囲網は効果をあげていないばかりか、逆効果。真に世界平和に貢献しているのは中国である」という宣伝こそが重要になる。

中国が最も意識しているのは、19日から広島で開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)だ。中国への圧力に対する対抗手段として、入念に準備してきたのが、中国代表団のウクライナ入りである。代表団を率いる李輝は、旧ソ連圏への駐在経験の長いベテラン外交官で、ユーラシア事務特別代表という地位にある。

中国政府の李輝ユーラシア事務特別代表=CNSPHOTO・共同

ウクライナへの代表団派遣は、4月の習・ゼレンスキー電話協議で決まった成果である。中国側は、これを鳴り物入りで宣伝してきた。代表団はまずウクライナ入りし、最後の締めとしてウクライナが戦う宿敵、ロシアを訪れる。その間、ポーランド、フランス、ドイツにも寄る。

とはいえ、習の事実上の特使を受け入れる側になるウクライナの様子が興味深い。当のゼレンスキーは、代表団がウクライナに出発する段階で、まだ英国におり、首相のスナクと会談していたのである。

ゼレンスキーはその日、スナクから数百発の防空ミサイル、射程200キロを超える長距離攻撃型ドローン(無人機)数百機などの追加供与を受ける約束を取り付けた。直前には「ロシアは中国の属国」と言い放ったマクロンとパリで会談。フランスは数週間以内に仏製「AMX10RC」を含む装甲車数十台を供与する方針だ。

14日、パリで会談したマクロン仏大統領(左)とゼレンスキー・ウクライナ大統領=ロイター

ゼレンスキーは、ドイツで首相のショルツとも会い、ウクライナへの27億ユーロ(約4000億円)規模の軍事支援を獲得している。

今、国際政治上、最も注目されているのは、ゼレンスキーがどの段階で本格的な反転攻勢に出るかである。ウクライナ軍の指揮者は、スナクとの会談後、「もう少し時間が必要だ。それほどかからない」と答えている。

さらなる武器供与の約束を得たウクライナが、反転攻勢を探る現在の情勢からして、中国が探る仲介の努力が今すぐ、奏功する機運は熟していない。情勢が厳しいことは、中国側も十分に意識している。

中国内で有名なタカ派の「戦狼(せんろう)」系学者も、中国代表団がウクライナに出発する直前になって、「(中国の和平仲介に向けた使節団に)過大な期待を抱くな」と期待値を下げようとする発言をしている。目をひく動きである。

ここで考えるべきなのは、それでも習政権が、中国代表団を今、このタイミングでウクライナに送るしかなかった、という裏事情である。

中国の習近平国家主席(左)とウクライナのゼレンスキー大統領=AP

「最大の目的は、G7広島サミットに対抗する話題づくりだ」。これは、中国の内政・外交に通じる識者の冷静な分析である。世界のニュースがサミットや、オーストラリアで開く日米豪印のクワッド(Quad)首脳会議にさらわれるのを阻む必要があったのだ。

実のところ、習政権はもう一つ、タマを用意していた。 中国代表団のウクライナ訪問に続く18、19日両日、「中国・中央アジアサミット」を、中国・西安で開くのである。 現時点では大きなニュースになっていないが、ここに習が出席する。

限られる中国「宣伝戦」の効果

旧ソ連圏の中央アジア諸国首脳をこの時期に招くもう一つの動きによって、世界がG7の話題一色になるのを防ぎたい。少なくとも中国国内は、これら、ふたつのニュースが連日、報じられるだろう。ただし、ウクライナが対ロシアで反転攻勢に出ようとしている今、中国が仕掛ける宣伝戦の効果は限られる。

厳しい対立が続く米中両国の間では、先に中国外交トップの王毅(ワン・イー)と、米大統領補佐官(国家安全保障担当)のサリバンが、オーストリアのウィーンで事前公表なしに、いきなり長時間、会談した。

米バイデン政権の発足直後だった2021年3月、米アラスカで米中外交トップが、メディアのカメラの前で激しくやり合った記憶は鮮明だ。だが、現在の米中両国の対立は、そこからさらに先鋭化し、一触即発の危険な状態にある。

いまの米中両国には、カメラの前で激しくやり合う余裕など既にない。とにかく偶発的な衝突の防止のため、裏で最低限の意思疎通をするのが最優先課題だった。アラスカでの米中外交トップの表だった言い争いは「今は昔」という感覚である。

プーチン・ロシア大統領はどうでるのか=AP

緊迫した国際情勢の下、マクロンに「中国の属国」とまでこき下ろされたロシア大統領のプーチンは今後、どう出るのか。ロシアへの影響力を確実に強めている中国の習は、決してプーチンのメンツをつぶさないよう間合いをはかっている。

だが、先行きの見通しも立たない。かつて中国が「覇権主義国家」と決めつけ、警戒していたソ連。その時代の勢力回復への郷愁からウクライナに攻め入ったプーチンが、習の仲介に素直に乗るとは思えない。乗れば、ロシアが本当の意味で中国の属国になってしまう恐れがあるからだ。

かたや、欧州諸国から武器援助を得たゼレンスキーも、本格的な反転攻勢と、その後を見据えた戦略づくりで頭がいっぱいだろう。そこに、ロシアに一定の影響力を持つ中国をどう利用できるのか熟考している。

習が、G7広島サミットにぶつけるという自国の都合から、いまウクライナに送った中国代表団。いうまでもなく、その遣使が、この1回だけの訪問で実質的な成果を上げるのは極めて困難だ。探り合いが当面、続く。(敬称略)

中沢克二(なかざわ・かつじ)
1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。
【関連記事】

・中国、ウクライナ・ロシアに特別代表派遣へ 15日から
・[FT]中国、和平仲介なるか ウクライナ戦争終結が利益に
・中ロが軍事・情報戦で共闘 G7に対抗、武器支援は不透明 』

中国、韓国サッカー選手を拘束 遼寧省の公安当局が調査

中国、韓国サッカー選手を拘束 遼寧省の公安当局が調査
https://www.47news.jp/9325728.html

『【北京共同】韓国の聯合ニュースは15日、中国を拠点とする韓国のサッカー選手、孫準浩氏が中国当局に拘束されたと伝えた。在中国・韓国大使館が明らかにした。具体的な拘束理由は不明だが、遼寧省の公安当局の調査を受けているという。

 聯合によると、孫氏は中国スーパーリーグのクラブに所属。ワールドカップ(W杯)カタール大会では韓国代表としてプレーした。

 中国のサッカー界では最近、関係者への調査や摘発が相次いでいる。』

中国、165年ぶりにウラジオストク港の使用権を取り戻す

中国、165年ぶりにウラジオストク港の使用権を取り戻す
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/05/16/2023051680007.html

『記事入力 : 2023/05/16 10:16

中国が165年ぶりにロシアのウラジオストク港の使用権を取り戻した。中国とロシアの関係がこれまで以上に強固になるのはもちろん、物流網の改善により経済成長の効果も期待できそうだ。

 香港明報など中国メディアは15日、中国東北部の吉林省と黒竜江省が来月1日からウラジオストク港を中国国内の港と同じように使用することが可能になったと報じた。

 これは中国海関総署(関税庁)が今月4日にホームページに掲載した2023年の第44号公告を引用したものだ。海関総署は「東北部の老朽化した工業基地の振興戦略を実現し、国内の貿易商品の国境間運送協力を遂行する海外港湾の使用を促進するため、吉林省から国内貿易商品の国境間運送事業範囲をさらに拡大することを決めた」と説明した。

 これに伴い中国東北部の各都市は物流に要する時間と費用を大きく削減できる。これらの都市はこれまで陸路で約1000キロ運送し、遼寧省の営口や大連港などで貨物を積み替え、船舶を利用してきた。中国経済メディアの財新は「費用の削減に加え、中国北京に近い山海関貨物鉄道の混雑も緩和できる」と伝えた。

 ウラジオストクはかつて中国の領土だったが、1858年に当時の清朝と帝政ロシアの間で締結された不平等条約のアイグン条約でロシア領となった。つまり165年ぶりにウラジオストク港の使用権を取り戻したことになる。

 ウラジオストクはかつての中国領で、清の時代には「海参蔵」と呼ばれていた。ところが1858年に清と当時の帝政ロシアによるアイグン条約でロシアに割譲され、その後は「東方の征服」を意味するウラジオストクへと名称が変わった。

 中国は国連の対北朝鮮制裁で北朝鮮の羅津港が使えなくなったため、これに代えてウラジオストクに目をつけたとの見方もある。中国は北朝鮮の羅津港につながる約48キロの道路を建設したが、これは今も使用できない状態が続いている。

北京=イ・ユンジョン特派員

チョソン・ドットコム/朝鮮日報日本語版 』

中国共産党のますます洗練されたサイバー対応の影響作戦

ゲーム世論 中国共産党のますます洗練されたサイバー対応の影響作戦
https://www.aspi.org.au/report/gaming-public-opinion

『(※ 翻訳は、Microsoft Edge翻訳)

アルバート・チャン , ティラ・ホージャ & ジャスミン・ラティモア
@ASPI_ICPC

何がそんなに問題ですか。

中国共産党(CCP)による大規模なオンライン影響力作戦の受け入れと、西側のソーシャルメディアプラットフォームでの偽情報の拡散は、2019年にシリコンバレー企業からの最初の主要な帰属以来エスカレートしています。中国のパブリックディプロマシーは、長年のオオカミ戦士のオンラインレトリックの後、2023年に穏やかなトーンにシフトした可能性がありますが、中国政府はグローバルな秘密のサイバー対応の影響作戦を実施し続けています。これらの作戦は現在、中国共産党の戦略的目標を支援する上で、より頻繁に、ますます洗練され、ますます効果的になっています。彼らは外国の国内、外交、安全保障、防衛政策を混乱させることに焦点を当てており、何よりも民主主義を標的にしています。

現在、標的とされた民主主義国では、ほとんどの政治指導者、政策立案者、企業、市民社会グループ、および一般市民は、中国共産党が自国でオンラインで秘密の活動に現在どのように関与しているかをほとんど理解していません。インターネットの不可欠性と、干渉のないオープンなオンラインスペースへの依存を考えると、民主主義にとってリスクは高いです。ソーシャルメディアプラットフォーム、政府、ASPIなどの研究機関によるCCPのサイバー対応の秘密の影響力作戦を何年にもわたって監視してきたにもかかわらず、これらの活動を推進しているアクターの決定的な公的帰属はまれです。秘密のオンライン操作は、設計上、検出が難しく、国家主体に帰属します。

ソーシャルメディアプラットフォームと政府は、増加する悪意のある活動を特定、防止、抑止するために十分なリソースを投入するのに苦労しており、政治的、経済的、および/または商業的な理由で中国政府の名前を挙げて恥をかかせたくない場合があります。

しかし、可能であれば、パブリックアトリビューションは悪意のあるアクターを抑止する上でより大きな役割を果たすことができます。どの中国政府機関がそのような作戦を行っているか、そしてその根底にあるドクトリンを理解することは、適切な対干渉および抑止戦略を構築するために不可欠です。公的帰属の価値も抑止力を超えています。たとえば、パブリックアトリビューションは、オンラインの影響力操作の意図されたターゲットであることが多い市民社会や企業が脅威の状況を理解し、悪意のある活動に対する回復力を構築するのに役立ちます。また、一般の人々に基本的な情報を提供して、国が直面している現代の安全保障上の課題について知らされることも重要であり、公的帰属はその情報を提供するのに役立ちます。

Twitter、Facebook、Reddit、Sina Weibo、ByteDance製品にまたがる専門的なデータ収集を含むこのレポートのASPI調査では、米国が中国や他の国に対して無責任にサイバースパイ活動を行っているという主張を広めるために不正なアカウントを使用しているSpamouflageネットワークにリンクされた、これまで報告されていなかったCCPサイバー対応の影響作戦を明らかにしています。この調査の一環として、そのネットワークのオペレーターの一部を江蘇省塩城に地理的に配置し、Spamouflageの背後にいるオペレーターの少なくとも一部が塩城公安局の一部である可能性があることを示しています。

国際世論に影響を与えようとする中国共産党の秘密の努力は、ほんの数年前の以前の戦術とは非常に異なるツールキットに依存しています。中国共産党のサイバーを活用した影響力作戦は、世界の世論を形成し、中国の「国際的な言説力」を強化するためのより広範な戦略の一部であり続けている。これらの取り組みは、世論を中国共産党にとってより有利な立場に誘導し、他国の政治的意思決定プロセスに干渉するように進化してきました。秘密のソーシャルメディアアカウントにさらに焦点を当てることで、中国共産党はもっともらしく否定できるカバーを提供しながら、その利益を追求することができます。

新興技術と中国固有のサイバーセキュリティ産業も、中国共産党が西側のソーシャルプラットフォームで秘密裏に活動し続けるための新しい能力を生み出しています。

中国共産党のサイバー対応影響力作戦への投資の増加は、政治エリートの経済的意思決定に首尾よく影響を与え、危機時の社会的結束を不安定にし、指導者や民主的な制度やプロセスへの不信感を植え付け、同盟やパートナーシップを破壊し、ジャーナリスト、研究者、活動家が中国に関する正確な情報を共有することを思いとどまらせる恐れがあります。
解決策は何ですか?

このレポートは、ソーシャルメディアプラットフォーム上のCCPの秘密のオンラインネットワークの最初の公開経験的レビューを提供します。

政府とソーシャルメディアプラットフォーム向けの39つの主要な政策提言の概要を説明します(詳細は<>ページにあります)。

ソーシャルメディアプラットフォームは、サイバー対応の影響作戦をより効果的に阻止するために、彼らが管理するデジタルインフラストラクチャを利用する必要があります。将来の影響力作戦を混乱させるために、ソーシャルメディアプラットフォームは、プラットフォームポリシーに違反する疑わしいアカウントの分析へのアクセスを削除し、特定された悪意のある攻撃者が影響力作戦の有効性を測定することを困難にする可能性があります。
ソーシャルメディアプラットフォームは、サイバー対応の影響力作戦と戦うために、より革新的な情報共有を追求する必要があります。たとえば、ソーシャルメディアプラットフォームは、個人を特定できる情報を明らかにすることなく、影響力作戦に関与するデジタルインフラストラクチャに関するより多くの情報を共有できます。
各国政府は、スピーチや政策文書の文言を変えて、ソーシャルメディア・プラットフォームを重要なインフラとして表現すべきだ。これは、民主主義におけるこれらのプラットフォームの既存の重要性を認識し、電力網でのサイバー操作のように、情報エコシステムに干渉する努力が比例した応答で満たされるという信号を悪意のある攻撃者に伝達します。
各国政府は、外国の干渉法を見直し、国民の脅威に対する意識を高めるために、ソーシャルメディアプラットフォームが国家が支援する影響力作戦やその他の透明性報告を開示することを義務付けることを検討する必要があります。
パブリック・ディプロマシーは、あらゆる悪意ある影響対策戦略の柱となるべきです。政府の指導者と外交官は、これらの活動を阻止するために、サイバー対応の悪意のある影響力作戦、およびそれらの活動に関与するエンティティ(州および非政府)の名前を挙げて恥をかかせる必要があります。
パートナーと同盟国は、この新たな安全保障上の課題に関する諜報外交を強化し、そのような影響力作戦についてより多くの情報を互いに共有するよう努めるべきである。強力なオープンソースインテリジェンススキルと収集機能は、これらの操作を調査して帰属させる上で重要な部分であり、分類が低いため、インテリジェンスの共有が容易になります。
各国政府は、影響力作戦やその他のハイブリッド脅威に関するさらなる研究を支援すべきである。悪意のある影響作戦を含む、地域全体でハイブリッド脅威に対するより広範な状況認識を構築するために、民主主義国はインド太平洋地域のハイブリッド脅威センターを設立する必要があります。

主な調査結果

中国共産党は、偽情報を広め、世論戦争を行い、独自の外交メッセージ、経済的強制、その他の国家権力のレバーを支援するために、ソーシャルメディアプラットフォーム上でペルソナの調整されたネットワークを維持するための洗練された永続的な能力を開発しました。

その能力は進化しており、インド太平洋地域を主要なターゲットとして、増加する国際的な視聴者に幅広い物語をプッシュするために拡大しています。

中国共産党は、これらのサイバー対応の影響力作戦を利用して、米国の政治、オーストラリアの政治、国家安全保障の決定に干渉し、クアッドと日本の防衛政策を弱体化させ、オーストラリアと北米の希土類採掘会社にコストを課そうとしている。

中国共産党のサイバー対応の影響力作戦は、集団的ではないにしても、おそらく複数の中国の党国家機関によって並行して行われている。これらの機関は、中国の民間企業と協力するために時々現れます。そのような作戦を行っている可能性が高い最も注目すべきアクターには、人民解放軍の政治戦争の一環としてサイバー作戦を実施する人民解放軍の戦略支援部隊(PLASSF)が含まれます。国家安全保障のための秘密作戦を実施する国家安全保障省(MSS)。中国の国内外の宣伝活動を監督する中央宣伝部。中国のインターネット法を施行する公安省(MPS)。中国のインターネットエコシステムを規制する中国サイバースペース管理局(CAC)。中国の国営メディアと外交部(MFA)当局者も、彼ら自身の明白な宣伝を増幅し、活動に影響を与えようとする秘密作戦を実行しています。

2021年以降、これまで報告されていなかったCCPのサイバー対応影響力作戦は、CIAと国家安全保障局が「中国や他の国に対して無責任にサイバースパイ活動を行っている」という物語を広めています。ASPIは、米国の諜報機関の活動を検証する立場にありません。しかし、反米の物語を広めるために使用された手段(このキャンペーンは、Spamouflageとして知られる親CCPが調整した不正なネットワークによって部分的に推進されているようです)は、影響力作戦を強く示唆しています。ASPIの調査によると、キャンペーンの背後にいる少なくとも一部のオペレーターはMPSと提携しているか、CACに雇われた「インターネットコメンテーター」であり、CACはこのキャンペーンを「ハニーアナグマ作戦」と名付けた可能性があります。証拠は、中国政府がおそらく東南アジア市場や一帯一路イニシアチブに関与する他の国々に影響を与えて、それらの地域での中国のサイバーセキュリティ企業の拡大を支援することを意図していたことを示しています。

中国のサイバーセキュリティ会社Qi An Xin(奇安信)は、影響力のある操作をサポートしている可能性がある場合があります。同社は、東南アジアやその他の国のクライアントに対する高度で持続的な脅威に関する偽情報をまき散らす能力を持っています。中国の諜報機関、軍事、治安機関と深く結びついており、中国のサイバーセキュリティと国家安全保障戦略において重要な役割を果たしています。

紹介

このレポートは、ASPIがサイバードメインを使用して個人、コミュニティ、政府に影響を与える計画された行動として広く定義している、中国のグローバルに焦点を当て、ますます洗練されたサイバー対応の影響力作戦によってもたらされる増大する課題を調査しています。

これらの行動には、公の言説を導き、干渉し、偽情報を助長し、個人やグループを脅迫し、嫌がらせをしようとする、外国(時には個別にまたは地域として)を対象としたさまざまな国家認可の活動が含まれます。これらの活動は通常、ソーシャルメディアプラットフォームで行われ、業界や国家安全保障の利害関係者からは、組織的な不正な行動とも呼ばれます。1情報操作、2認知領域の操作、3情報戦または世論戦。4

すぐ下から始まるこのレポートの最初のセクションでは、中国を起源とする秘密のサイバー対応の影響作戦の既存の証拠を検討し、中国共産党の進化する能力の評価を提供します。ソーシャルメディアプラットフォームやその他の公開されている情報源によって開示されたデータセットを分析することにより、中国共産党のオンラインネットワークをマッピングし、ソーシャルメディアやその他のプラットフォームで秘密裏に活動している幅広い中国の国家主体を明らかにします。

11番目のセクション(<>ページから)では、中国政府関連の組織による「蜜獾行动作戦」と名付けられた最近の調整されたCCPプロパガンダキャンペーンに関する独自の実証的研究を紹介します。

2023年<>月の時点で、このキャンペーンは引き続きサイバースパイ活動を米国政府に帰しています。MPSがサイバーセキュリティ会社のQi An Xinの支援を受けて、5このキャンペーンに関与している可能性があります。このセクションは非常に技術的で詳細であり、その後の戦略的評価のための証拠ベースを設定します。

最後のセクション(37ページから)では、中国共産党のサイバー対応の影響作戦が、ソーシャルメディアでの目的を達成するためのより広範な戦略の一部である方法について説明します。このセクションと私たちの推奨事項は、政策立案者に最も関連があります。私たちの方法論とその限界は、付録1に記載されています。

レポート全文をダウンロード
読者は、以下を含む完全なレポートをダウンロード( https://ad-aspi.s3.ap-southeast-2.amazonaws.com/2023-05/Gaming%20public%20opinion.pdf?VersionId=QYkBIWncbBU0E1KAhg9mX3TD7kwlWcWj )することをお勧めします。

何がそんなに問題ですか。
解決策は何ですか?
主な調査結果
紹介
中国のサイバー対応影響力作戦
スパムフラージュの進化
オンラインの中国の秘密ネットワークについて私たちが知っていると思うこと
ケーススタディ:ハニーアナグマ作戦(蜜獾行动)
米国のサイバー覇権を主張する組織的な不正な行動
中国のソーシャルメディアプラットフォーム上のアカウントをスパムする
チー・アン・シンとのつながり
チー・アンシンと中国共産党のサイバー対応影響力作戦とのつながり
チー・アン・シンと他の影響作戦とのつながり
ソーシャルメディアにおける中国共産党のオンライン影響目標
政策提言
付録
付録1:方法論と制限
付録2:中国共産党のサイバー対応影響作戦の事例歴
付録3:APT41へのスパムフラージュリンクの可能性
付録4:チーアンシン(奇安信)
筆記
頭字語と略語
26年2023月<>日

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内容
[読書時間:約13分]
何がそんなに問題ですか。
解決策は何ですか?
主な調査結果
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参照
著者
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アルバート・チャン
アナリスト

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ティラ・ホージャ
研究員

Jasmine Latimore – profile
ジャスミン・ラティモア
リサーチインターン 』

中国の「孔子学院」日本にまだ13校 文科省は無気力

北の国から猫と二人で想う事 livedoor版:中国の「孔子学院」日本にまだ13校 文科省は無気力
https://nappi11.livedoor.blog/archives/5434226.html

『政府は中国政府が海外での中国語教育のために設置している「孔子学院」について、日本国内に少なくとも13校設置されているとする答弁書を閣議決定した。

孔子学院は中国政府が出資し、中国語や中国文化の普及を目的として世界各国に設置されているが、中国の宣伝機関だとして欧米諸国を中心に問題が指摘され、一部で閉鎖されている。 図の参照記事 
EM55TGUAQBAJ5GBYTZTDUT3HLA

2023年5月12日に閣議決定された答弁書では、2023年4月時点で早稲田大学や立命館大学など日本に少なくとも13校が設置されていることを確認した。  

法律に規定されている学校や専修学校などに該当しないため、設置に関する規則はないと説明し、一方で、文部科学省では透明性を確保する必要があるとして、運営などに関する情報を公開するよう働き掛けているという。  

また、法律違反があると認められる場合には適切に対応すると答弁した。参照記事 過去ブログ:2023年3月中国の統一戦線工作部(UFWD)による情報侵略は日本にも:、、、

日本政府は2021年5月にも「孔子学院の教育内容や組織運営の状況について、情報公開を徹底するよう求める。文科省や外務省など関係省庁が連携し、情報収集を進める方針だ。」と、全く同じ答弁をしている 参照記事。その後の報告が無い事から、結局何もしていないのだろう。呆れるほど文部科学省は、対中国関連に対し無気力だ。

2021年5月13日の参院文教科学委員会で、萩生田光一文科相(当時)は「同盟国である米国、また、自由や民主主義、法の支配といった共通の価値観を持つヨーロッパの国々からも廃止や情報公開を求める懸念の声が高まっております」と発言。「孔子学院を設置している大学に対して、組織運営や教育研究内容等の透明性を高めるべく、情報公開を促してまいりたいと思います」と答弁していた。

フィンランドでは、国民の要望から2022年6月に閉鎖を決定し、2023年1月閉鎖した。

日本の外務省は2021年、カナダのマクマスター大学やシャーブルック大学、フランスのリヨン大学、ドイツのシュトゥットガルト・メディア大学やホーエンハイム大学、スウェーデンのストックホルム大学などの高等教育機関が孔子学院を閉鎖したことを把握していることを明らかにした 

参照記事。過去ブログ:2022年6月岸田政権のダブルスタンダード:2021年6月日本国内の「孔子学院」に対し政府が情報公開を促す 5月日本国内の孔子学院について参議院議員が問題提起 5月カナダ特別委員会で孔子学院院長に中共との関係を追及: 』

中国人の不動産購入を制限する米国、しない日本

北の国から猫と二人で想う事 livedoor版:中国人の不動産購入を制限する米国、しない日本
https://nappi11.livedoor.blog/archives/5433445.html

『2023年5月9日、華字メディア・日本華僑報網は「日本が中国人のために、米国に異を唱えている」とする文章を掲載した。文章は、日本と米国の関係は国際関係の中枢的存在であり、さまざまな分野において密接な協力を展開し、それが各産業にも影響を与えてきたと紹介。一方で、両国間で意見の相違が生じた場合にも各業界に大きな影響が生じることになるとした。

米国では4月中旬より10以上の州で中国人による現地の不動産購入を禁止する議案が出されており、そのうちテキサス州、フロリダ州、サウスカロライナ州ではすでに可決されたと指摘。規則に反した場合は販売者や仲介業者も罰せられることになり、例えばフロリダ州では中国人に不動産を売却した米国人が1年以上の禁固刑になるとしたほか、テキサス州では先月6日より永住権を持つ中国籍の住民も自分で住む目的以外での不動産購入ができなくなったと紹介している。

また、米国は中国人留学生の受け入れを拒む姿勢も見せており、2021年7月には中国人留学生500人余りの米国留学ビザ申請が却下されたと紹介。トランプ政権時には国の安全保障を名目として北京理工大学、北京航空航天大学など多くの中国国内大学の留学生による米国留学を禁止する大統領令も出されたと伝えた。

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一方日本では「米国と大きく異なり、中国籍の不動産購入者や中国人留学生を「熱烈歓迎」し続けているとし、初めて買う人、すでに複数の物件を購入している人に関係なく、また自分で住むか、投資目的かも関係なく、基本的な条件にさえ合えば日本の不動産市場の門戸は大きく開かれている」と伝えた。

また、留学生についても受け入れ規模がさらに拡大し、日本語学校の環境改善や大学卒業後の就職サポートなど手厚いバックアップが行われていることから「今後10年は日本留学の黄金時代になるだろう」と予想し、「中国人の不動産購入と留学という二つの事柄については、日本は米国に異を唱えている。それが今後数年以内に、中国の中産階級による海外投資の傾向に変化を及ぼすかもしれない」と結んでいる。参照記事 

FireShot Webpage Screenshot #808 – ‘(1) 池田信夫さんはTwitterを使っています_、、、

日本の現状は、頭の軽い日中議員連盟やチャイナスクール出の親中派官僚の暗躍の結果なのだろうか?

進行中のウクライナ戦争で、大国主義国家中露が侵略すら肯定する体制だと明確になった以上、中露への安易な共栄への期待は早急に見直し、対策を講じるべきと思うが、、。screenshot(59)

当ブログでは、国際犯罪へも注意を向けているが、中国人が行きやすい場所へは、必ず組織犯罪も上陸する事を知るべきだ。

麻薬などで違法に儲けようとし、富裕層が、彼らを利用する傾向があるからだ。

米、カナダは、その対策に苦慮している。 参照映像記事 参考映像記事:日本より中国を優先する派閥?外務省の派閥について元官僚が語ります。 :参考:外国人は日本の不動産を購入できるか? 所有権、制限の有無等:どうなる日本の土地!?購入しまくっている中国人投資家の実態とは!?:

34030d92過去ブログ:2023年4月米司法省の合成麻薬取締強化で浮上した中国、グアテマラ:2022年10月麻薬フェンタニル過剰摂取が18~45歳の米国人死因の第1位:2021年10月米国で「フェンタニル」過剰摂取や中国製麻薬での死亡急増 2018年12月統計でも明らかになった麻薬鎮痛剤フェンタニルの危険性と中国 12月中国の第二の「アヘン戦争」カナダへ侵攻とファイブ・アイズ 2017年8月中国発の麻薬フェンタニル過剰摂取で年に数万人が死亡 米国』

中国の不動産向け不良債権、4大銀6割増 直近10年で最大

中国の不動産向け不良債権、4大銀6割増 直近10年で最大
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM124EV0S3A410C2000000/

『【香港=伊原健作】中国の銀行で不動産業界向けの不良債権が増え続けている。2022年末時点で中国工商銀行など4大銀行の残高は前年比6割増え、直近10年で過去最大になった。不良債権を処理する政府系資産会社の業績悪化も鮮明で、中国恒大集団の経営危機から1年以上たつ今も火種がくすぶる。米地銀破綻や欧州のクレディ・スイス救済問題に続き、世界の金融システムを揺さぶるリスクになっている。

不動産投資は中国のG…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』

『不動産投資は中国のGDPの3割程度を占めると言われ、経済への影響が大きい。香港証券取引所に上場する主要32行の22年12月期決算を集計したところ、不動産向け不良債権は2640億元(約5兆1千億円)と1年前に比べ7割弱増えた。うち長期で比較できる四大銀行では約1800億元と6割増え直近10年で最大となり、この数年は1?3%台で推移していた不良債権比率(不動産向け)も5.8%まで急速に悪化した。

一部の銀行が直近で発表した1?3月期決算でも傾向は不変だ。準大手の招商銀行が4月後半に開示した決算では、不動産向けの不良債権は152億元と昨年末に比べ15%増えた。

中国は20年に不動産大手を対象に負債額に厳しい上限を設けるなどの「3つのレッドライン」と呼ぶ規制強化を実施した。企業の資金繰りが悪化し、21年12月に恒大集団がデフォルト(債務不履行)に陥るなど危機が広がった。過剰債務の適正化を目指す施策だったが、銀行の不良債権が膨らむ結果を招いた。大手行以外も厳しく、地方地盤の貴州銀行は昨年6月時点で0%台の不動産向け不良債権比率が20%台に悪化した。

中国では主要70都市の新築マンション価格が2月に1年半ぶりの上昇に転じるなど楽観的な見方もある。ただ日本総合研究所の関辰一・主任研究員は「住宅購入意欲の強い25?34歳の人口は減少に転じ、市場が勢いを取り戻すのは構造的に難しい」と話す。「不動産は回復途上で問題解決にはより多くの時間を要する」(中国銀行のリスクマネジメント担当役員、劉堅東氏)との声もある。

各行は不良債権の圧縮を急ぐ。甘粛銀行の決算書によると昨年6月と12月にオークションを実施し、政府系資産管理会社などに総額27億元超の不良債権を売却した。21年末時点の不良債権残高全体の約7割に当たる規模だ。浙江省の浙商銀行も昨年に約28億元分の不良債権を証券化したほか、約49億元分を第三者に譲渡したと開示した。

もっとも「リスクが不良債権の受け皿会社に転嫁されている面がある」(日本総研の関氏)。中国ではAMCと呼ばれる資産管理会社が銀行から不良債権を買い取り、再生して転売する。大手の中国華融資産管理は22年12月期の最終損益は赤字に転落し、同業の中国信達資産管理も純利益が半減した。いずれも不動産価格下落の影響で多額の減損損失を計上した。

格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは4月、AMC大手の華融の長期発行体格付けを「Baa3」(トリプルBマイナス相当)に1段階格下げした。今後も「多くの民間不動産会社はストレスを抱え、業界へのエクスポージャー(投資・事業資産残高)は圧力に直面するだろう」と指摘した。

華融など大手AMCは1990年代に四大銀の不良債権処理のため設立された。13年以降は多数の地方政府系AMCが設立され、後ろ盾となる地方政府自体の財政悪化が深刻だ。貴州省では4月、政府の公式ホームページに一時「財源は限られ、債務の救済作業を進めることは非常に困難」として中央政府の支援が必要とする文書が掲載された。現在は削除されている。

AMCにも資本の制約があり、不良債権を処理し続けるのには限界がある。不動産以外も含めた全体の不良債権比率(32行ベース)は平均1.6%台にとどまるが、政府は昨年末から不動産会社の資金調達規制を一部緩和し、市況が回復しなければ不良債権がさらに増える可能性がある。

S&Pグローバルは中国で不動産向け不良債権が24年まで増え続けるとみる。米欧でも米シリコンバレーバンク破綻などを機に商業用不動産に流れ込んでいたマネーが逆回転する懸念があり、世界的に不動産投資への警戒が強まっている。

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察実態はもっと深刻なはずである。不動産向けの不良債権はいわれているより遥かに多い。デベロッパーの借り入れは焦げ付いているだけでなく、個人の住宅ローン返済も滞っているケースが急増。競売に出されている物件が増えている現実から簡単に想像できる。ゼロコロナ政策によってサービス業が直撃され、廃業に追い込まれている会社は急増した。これらの不良債権をいかにreperformしていくかについてテクニカルな問題だけでなく、政府の支援が求められているが、中央財政も地方財政も困窮している。AMCは簿価で不良債権を買い取る余力がない。時価で買い取ると、銀行のバランスシートに穴が開いてしまう
2023年5月15日 6:49』

習近平氏と徳川家康の分かれ道 力に頼る政治の限界

習近平氏と徳川家康の分かれ道 力に頼る政治の限界
風見鶏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD080TG0Y3A500C2000000/

『4月末に訪れた静岡県の浜松市は、大勢の観光客でにぎわっていた。お目当てはもちろん、大河ドラマで脚光を浴びる徳川家康が築いた浜松城である。

家康は29歳からの17年間をここですごし、天下人への足がかりをつかんだ。浜松城は江戸時代になってからも歴代の城主が相次いで幕府の要職に就き、いつしか「出世城」の異名を持つようになったという。

城内のあちこちで外国人の姿を見かけた。「入場券はどこで買えますか?」。1958年に再建された天守閣を支える石垣の前では、中国人の女性が係員に英語でたずねていた。

家康が中国で最も有名な日本人のひとりであると聞けば、驚く人もいるかもしれない。

2007年に出た山岡荘八の小説「徳川家康」の中国語版が、累計で200万部を超すベストセラーになり、人気に火をつけた。

小国のあるじにすぎなかった家康が戦乱の世を生き抜き、ついには天下を取る。何度もくじけながら耐え忍ぶその生きざまは、立身出世の物語を好む中国人の心を捉えて放さない。

中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席も「徳川家康」を読んだだろうか。ふたりはどこか似たところがあるような気がする。

まず、生い立ちだ。家康は岡崎城主の嫡男として生まれた。習氏は元副首相の習仲勲氏を父に持つ。ともに名門の出で、農村からはい上がった豊臣秀吉や毛沢東とは明らかにちがう。

若いころ苦労したのも同じだ。家康は6歳で人質に出され、異郷の地で育った。習氏は文化大革命のさなか、15歳で黄土高原の谷あいにある小さな村に送り込まれ、およそ7年間を洞穴式の住居ですごした。

権力を握ったあとのふるまいも似る。家康は1614〜15年の大坂の陣で豊臣家を滅ぼした。

たとえ天下を取っても、自らの支配を脅かすおそれがある勢力は徹底的にたたく。そうした姿勢は2022年の中国共産党大会で、当時の李克強(リー・クォーチャン)首相や胡春華(フー・チュンホア)副首相らを指導部から締め出した習氏にも通じる。

徳川の世が永遠に続くようにするにはどうすればいいか。家康はそこに知略のかぎりを尽くした。

中国共産党の指導を貫徹するには何が必要か。習氏はそれに心血を注ぐ。

ふたりの人物像は、やはり多くの点で重なるのではないか。日本総合研究所の呉軍華・上席理事に意見を求めると「家康と習氏には決定的な違いがある」との答えが返ってきた。

「家康が基礎を築いた徳川家の統治は、独立した藩を幕府が束ねる封建制(幕藩体制)のうえに成り立っていた。一方、習氏はあらゆる権限を自らに集めようとしている」

家臣の進言をよく聞き、細事にはこだわらなかった家康。党の指導を絶対と考え、社会の隅々にまで自身の意向を行き渡らせようとする習氏。呉氏の目には、ふたりが異なるタイプの指導者に映る。

国際日本文化研究センターの磯田道史教授は著書で家康を「織田信長のように『力の原理主義者』にはならなかった」と評す。

引き締めすぎず、緩めすぎず。力に頼るばかりでなかった家康流の統治がしみ渡っていたからこそ、江戸幕府は265年の長きにわたって続いたのだろう。

そういえば、岸田文雄首相も「徳川家康」の愛読者だと聞く。

岸田氏と習氏のどちらが家康により近いか。その答えは日本と中国だけでなく、混迷する世界の行方をも占うカギになる。

(編集委員 高橋哲史)』

日中は「一衣帯水」 李首相、林外相に

日中は「一衣帯水」 李首相、林外相に
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023040200425&g=pol

『2023年04月02日21時18分

【北京時事】林芳正外相は2日、中国の李強首相と北京の中南海で面会した。李氏は「中日両国は一衣帯水(いちいたいすい)の隣国だ。中国語には遠い親戚より近い友人という言葉がある」と強調。日中経済関係の重要性を訴えた。

林氏、拘束邦人の早期解放要求 秦氏「法に基づき処置」―対話継続を確認・日中外相会談

 李氏は中国共産党ナンバー2で、3月に首相に就任した。林氏は同月に起きた中国当局による邦人拘束を念頭に、「日本人や日本企業が中国で安心して活動できる環境が極めて重要だ」と指摘した。 』