“肉のないハンバーガー” IPEFはうまくいくのか?

“肉のないハンバーガー” IPEFはうまくいくのか?
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220922/k10013831021000.html

 ※ 今日は、こんなところで…。

『ますます激しくなるアメリカと中国の覇権争い。経済の分野でその争いが先鋭化しているのが、成長著しいアジア太平洋地域です。アメリカは中国に対抗するため、経済連携の枠組み、IPEF(アイペフ)=インド太平洋経済枠組みの閣僚級会合を9月初旬に開催し、4つの分野で交渉を開始することで合意しました。

ただ、経済連携にとって最も重要な関税の撤廃や引き下げが含まれず、日本のある政府関係者は“肉のないハンバーガー”と揶揄(やゆ)します。最近はパテに肉を使わないヘルシーハンバーガーでおいしいものにも出会いますが、IPEFバーガー、果たして“おいしく”なるのでしょうか?』

『 “肉のないハンバーガー”

「IPEFが“肉のないハンバーガー”と言われても仕方ない。ただ、この地域にアメリカが関与することが何より重要なんだ」
日本政府の担当者がそう打ち明けます。

9月8日から2日間、アメリカ・ロサンゼルスで開かれたIPEFの閣僚級会合。
IPEFの閣僚級会合(9月8日)

初めてとなる対面での会合で▽半導体など重要物資のサプライチェーンの強化や▽デジタル技術を活用した貿易の円滑化など4つの分野で閣僚声明を公表。
インドが「貿易」に参加しなかった以外は、すべての国が4つの分野で交渉を始めることになりました。

会合を終えたアメリカのタイ通商代表は記者会見で、その意義をこう強調しました。

タイ通商代表

「政治状況や優先順位などが異なる14もの国が参加することは困難なことだが、我々の野心と革新を示す閣僚声明をまとめることができ、うれしく思っている」

通商では関税撤廃・削減は常識

通常、経済連携協定といえば程度の差はあれ、関税撤廃や引き下げが含まれるのが常識でした。

TPP署名式前に各国の閣僚(2018年3月)

代表格でいえばTPP=環太平洋パートナーシップ協定です。

農林水産品など幅広い品目で関税を撤廃することで合意。2018年12月に11か国で発効しました。

2019年に発効した日本とEUの経済連携協定(EPA)も、2022年1月に発効した日本や中国、韓国などが参加するRCEP=地域的な包括的経済連携も関税撤廃や引き下げが大きな柱となっています。

しかし、IPEFには関税分野が含まれていません。

トランプ前大統領による離脱があだに

なぜ、IPEFには関税についての項目がないのでしょうか。その要因はアメリカのトランプ前大統領にあります。

TPPからの離脱の命令書を示すトランプ大統領

TPP交渉で日本は国内の反対意見もあるなか、厳しい交渉を経て合意にたどり着きました。

しかし、アメリカはトランプ政権になったとたん、「自由貿易はアメリカの雇用を奪う」として、いとも簡単に離脱。

ASEAN=東南アジア諸国連合の国々が多く参加するTPPからの脱退は、「アメリカのアジアからの撤退」とも受け止められました。

この離脱があだとなり、この地域での影響力を高めたい中国にとっては、まさに棚ぼた=棚から牡丹餅、願ってもない状況となりました。

就任式で演説するバイデン大統領(2021年1月)

こうした中、TPPを推し進めたオバマ政権で副大統領を務めていたバイデン大統領が就任。

TPPへの復帰が期待されましたが、関税撤廃や引き下げが含まれるこの協定は国内の労働者から反発の声が根強いとして慎重な姿勢を貫いています。

トランプ前大統領の離脱決断によって、反TPPの世論が労働者中心に根づき、中間選挙を前にとても動ける状況ではないというのが今のバイデン政権の実情です。

放置すれば中国の覇権に

しかし、そうこうするうちに中国も加わるRCEPも発効し、着実にアジア太平洋地域で中国の経済的な存在感は高まる一方です。

中国 習近平国家主席

焦ったアメリカがいわば苦肉の策としてひねり出したのが、IPEFです。国内世論の反発を最小限に抑えつつ、なんとかこの地域への経済的な関与を強めたいとの思いからです。

IPEFの閣僚会合前、アメリカ政府の関係者からは「参加国の間には、IPEFに深く関わって中国が報復してきたら、アメリカが償ってくれるのかという思いが根底にある。強い熱意は感じられない」との声が漏れ聞こえてきました。

それでもアメリカはこだわっています。現状を放置すれば、世界のGDPの40%を占めるインド太平洋地域で中国の覇権を許すことにつながるからです。

日本の政府高官もこう語ります。

政府高官
「インド太平洋地域の大国が中国だけ、というのは“悪夢”だ。何としてもアメリカに踏みとどまらせないといけない」

ハードルを下げる

日米が神経質になっていたのは実際の交渉に加わる国の数です。

IPEFは、すべての分野の交渉に参加する必要がなく、国ごとに参加する分野を選択できるようにしています。経済連携としては異例の“緩い”枠組みです。
参加のハードルを下げるための措置ですが、多くの国が交渉に加わらない可能性を指摘されていました。

交渉参加国を少しでも増やすため、日米がテーマの1つとしたのが、世界が抱える構造的な課題=「サプライチェーンの強化」と世界で急速に進む脱炭素への取り組みでした。いずれも、各国に重くのしかかりながら、単独の国では解決が難しいテーマです。

日本の政府関係者は、過去のTPPやRCEPといった経済連携では想定されておらず、脱炭素などは中国が旗振り役を担うことが難しいとして、「うまいところを突いた」と満足げに語りました。

カギとなった大国インド+インドネシア

特に気を配ったのは、経済規模の大きいインドとインドネシアの参加でした。インドはTPP、RCEPともに、インドネシアはTPPに参加していないためです。

今回の閣僚級会合に先立ち、今月、アメリカのレモンド商務長官はインドに、西村経済産業大臣は、インドネシア・バリでのG20エネルギー相会合のあと、すぐにジャカルタに移動し、担当閣僚と会談しました。

そして、IPEF閣僚会合の前日・7日、ロサンゼルスに到着して両者は会談、それぞれの成果を持ち寄り、すりあわせを行いました。

西村経済産業相とインドネシアの経済担当調整相

その結果、インドネシアはほかの12か国とともにすべての分野への交渉参加を表明。

当初から一貫して「貿易」への不参加を表明していたインドもふたを開ければ「貿易」ではオブザーバーとして議論に参加したいと自ら提案するなど前向きな姿勢を示しているということです。

アジアから見るといまだ不信感も

ではIPEFの交渉は今後、うまく進むのでしょうか。

視点をアジアに変えると違った風景が見えてきます。特にIPEFの交渉に7か国が参加することになったASEANからの視点です。

まず、ASEAN10か国と中国との経済的な結びつきの強さです。

JETRO=日本貿易振興機構のまとめによると、ASEANの貿易総額の相手国構成比は中国が2010年に12%だったのが2020年には19.4%へと大幅に拡大したのに対して、アメリカは2010年に9.2%だったのが10年間で11.2%へと増えはしたものの、微増にとどまっています。

最大の貿易相手国として中国との経済関係が重みを増すなかで、どこまでアジア各国がIPEFを重視するか、懐疑的な見方も根強いのです。

また、アメリカへの不信感が拭い去れていないとの見方もあります。

トランプ前政権ではASEAN軽視ともとれる対応が続きました。

バイデン政権になって是正されるのかと思いきや、2021年12月にアメリカが主催した「民主主義サミット」ではASEANから招かれたのはマレーシア、インドネシア、フィリピンの3か国だけ。

世界100以上の国と地域が招待されたのにシンガポールやタイなどは招待されず、何を基準にアメリカに選別されたのかと不信感が強まったと指摘されています。

とりあえずの“入場券”か

ASEANの経済情勢に詳しい泰日工業大学の助川成也客員教授は次のように分析しています。
泰日工業大学 助川成也客員教授

助川教授

「IPEFの交渉分野の1つには労働や環境分野なども想定されているが、これらの分野はRCEPにも含まれておらず、ASEANがこれまで導入を回避してきた分野であるため、交渉は紆余曲折も予想される。

また、バイデン政権は通商交渉について議会から権限を与えられることが必要な大統領貿易促進権限(TPA)を有していない。IPEFについて議会の承認を得ず、行政協定によってこの枠組みの大部分を実施しようとしているが、非常に不確実だ。

ことし11月の中間選挙や2年後の大統領選挙の行方次第で、交渉結果自体が無に帰す可能性もある。IPEFへのASEAN各国の交渉参加はあくまでアメリカとの関係のうえで入場券を買っただけに過ぎないのではないか」

インド太平洋地域に空白は作れない

TPPからの脱退という、日本から見ればいわば失策を犯したともいえるアメリカ。こだわるのが具体的な形です。

アメリカ政府の元高官は、「バイデン政権の4年の任期が切れるまでには何らかの形で正式に発足させるだろう」と話します。

いまのアメリカには、経済成長が著しく、また中国の海洋進出もあって緊張感も高まるインド太平洋地域に空白は作れないという危機感があります。

日本もアメリカと危機感を共有しつつ、一方で中国との経済的結びつきも維持したいとの思いもあり、難しい対応を迫られています。

アメリカと中国、2つの大国の覇権争いの激化はこの地域を一段と不安定にしています。

「肉のないIPEFバーガー」がおいしくなるのか、そうでないのか。この地域における役割を冷静に、そして多様な角度から見ていくことが日本にとっても重要になりそうです。

中国はなぜゼロコロナを堅持するのか

中国はなぜゼロコロナを堅持するのか 解除したら医療崩壊し膨大な死者を招く
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20220925-00316698

『中国がゼロコロナ政策を維持しているのは、解除したら医療崩壊して数百万人以上の膨大な死者が出る可能性があるからだ。中国の医療資源の実態と、それに沿って行われたシミュレーションの結果を考察する。

 日本では、中国がなぜゼロコロナ政策を堅持しているかに関して、「習近平が自分の権威を保つため」とか「独裁体制を崩さないため」といった批判が多く見られ、最近では「三期目を批判する党の長老たちを家に閉じ込めておくため」といった、「奇想天外」な邪推までが横行し、呆気に取られている。

 中国のゼロコロナ政策が中国自身および世界の経済成長に与える影響が無視できないだけでなく、あまりに目に余る的外れな批判を見るにつけ、このままでは中国の真相を知ることも出来なくなり日本国民に不利益をもたらすと判断し、書くことにした。

◆中国の医療資源の実態

 まず中国の医療資源の実態に関してご紹介しよう。

 中国には「粤(えつ)開証券」というマクロ研究リポート(証券研究報告)があって、2022年4月14日に<コロナ下における医療資源比較:中国の31省市区(自治区)と36都市に基づく分析>というリポートが掲載されている(以下、リポート)。作者は羅志恒氏だ。分析に用いているのは、中国政府側あるいは各行政区分省庁が出している公報のデータである。非常に長いので、各都市に関するデータの紹介は省いて、全国の医療資源分布図をお示ししたい。

 まず全体的なデータを見てみよう。

 たとえば「医師数」では、「国際統計年鑑2020」によると、2017年の高所得国では1000人当たりの医師数は「3.1人」であったが、中国では「2.0人」にとどまった。 2021年までに、1000人当たりの中国の医師数は「3.0人」に増加しているが、2017年当時の高所得国基準を満たしていない。

 看護師数では、WHOの「世界看護報告書2020」によると、2018年の世界平均看護師数は1000人当たり3.7人で、そのうち8.3人がアメリカ、7.9人がヨーロッパだ。それに対して中国では、1000人当たりの看護師数は2.9人だった。2021年には3.5人に増加したものの、2018年の世界平均にさえ達していない。

 では中国における医療資源の分布を見るに当たって、人口密度が必要になってくるので、まずは人口密度分布を見てみよう。

1.中国の人口密度分布

 これはリポートのデータではなく、国連の国際連合児童基金に掲載されている「中国統計年鑑2018」に基づいて作成された人口密度分布を以下に示す。

出典:国際連合児童基金に掲載されている「中国統計年鑑2018」のデータ

 人口密度の高い行政区分地域は、特別行政区も含めれば上から順に「マカオ、香港、上海、北京、天津、江蘇、広東、山東・・・」となっている。全体としては東海岸が高く、北西地域が低くなっているのは歴然としている。簡体字のママだが、図2以下と比較しながら判読をお願いしたい。

 では、この基本情報を頭に入れた上で、リポートによる医療資源分布を見ること

にする。

2.1000人当たりの医師数に関する分布

出典:粤開証券研究院が各行政区分の統計公報に基づいて作成したデータ

 明らかに新疆ウィグル自治区やチベット自治区における人口当たりの医師数が少ないことが見て取れる。西部地域は人口が少ないにもかかわらず、人口当たりの医師数が少ない。

 吉林省や江西省が多いのは、省内の人が都会に出稼ぎに行っていて、人口密度が低いために相対的に多くなっているとみなすことができる。

 広東省が比較的少ないのは逆に、ハイテク企業が急激に集まったために人口密度が高いからである。

3.1000人当たりの看護師数分布

出典:粤開証券研究院が各行政区分の統計公報に基づいて作成したデータ

 同様に吉林省、江西省、陝西省が多いのは、出稼ぎに出て、人口が少ないせいだ。

4.1000人当たりの病院ベッド数分布

出典:粤開証券研究院が各行政区分の公報に基づいて作成したデータ

 北京や天津などで低いのは、胡錦涛政権時代に人口が集中したからで、習近平政権になってからは「新型城鎮化計画」や「京津冀」計画で大都市への人口集中軽減を図ったが、なかなか解消されるには至っていない。

 広東省は逆に習近平政権になってからハイテク企業の突進とともに人口が急増したので、人口当たりとなると非常に小さな値になっている。

5.病院数分布

出典:粤開証券研究院が各行政区分の公報に基づいて作成したデータ

 これは人口当たりの数ではないので、その地区の医療資源度合いが、そのままに出ている。四川省は面積も広く、軍関係の病院も多いので値が大きくなっていると思われる。

6.各地区における高性能病院の数
出典:粤開証券研究院が「中国衛生健康統計年鑑2021」に基づいて作成したデータ

 三甲病院というのは「甲乙丙」の「甲」で、レベルが高いことを意味し、「ベッド数501以上などの条件を満たす大型病院」で、かつ「評価点数が1000点満点で900点以上の高級病院」であることなどを指す。ICU(集中治療室)も備えている。

 面積のわりに北京に多いため、人口当たりの数もトップだ。チベットはあの広い地区に三甲病院が9つしかないが、人口が少ないため人口当たりの数は多い。

 四川省の三甲病院数が多いのは全体的レベルの割に面積が広いことと軍系列病院が多いことが影響しているかもしれない。山東省は自身の経験から言うと、かつてのドイツ租界の影響が至るところで見られた関係もあるだろう。広東が多いのはハイテク企業の進出によるためだろうが、これら三地区とも人口密度が高いため、人口当たりの三甲病院数は少なく、コロナの感染拡大には大きな影響をもたらすリスクを孕む。

 その他、各行政区分地区の財政力も関係してくると思うが、あまりに長くなるので、ここでは省略する。

◆ゼロコロナを解除した時の死亡者数シミュレーション

 以上述べた以外にも、非常に複雑に絡んだ医療資源状況があるが、概ねこのような医療資源状況を基礎として、以下のような初期条件の下で行ったシミュレーションの結果が2022年5月10日公開のNature Medicine(volume28,pages1468–1475)に、Modeling transmission of SARS-CoV-2 Omicron in China(中国におけるSARS-CoV-2オミクロンのモデリング伝播)というタイトルで掲載された。

【初期条件】

(1)2022年3月1日に20人のオミクロン感染者が中国人集団に導入された。

(2)シミュレーション開始時の再生数は、上海での流行の初期段階(2022年3月1日から3月8日まで)の推定値に一致させ、1人が3.4人に感染させるものと想定した。

(3)2022年3月1日から、不活化ワクチンのブースター用量が1日当たり500万回分の速度で展開されると設定した。

(4)一次ワクチン接種スケジュールを少なくとも6ヶ月までに完了した個人の90%がブースター接種を受ける。

【シミュレーション結果】

一、厳格なNPI(非医薬品介入=Non‐Pharmaceutical Intervention=公衆衛生的介入)がない場合、2022年3月に中国でオミクロン変異型が導入されると、COVID-19症例の津波を引き起こす可能性があることを示唆した。

二、6ヶ月間のシミュレーション期間にわたって、このような感染は1億1,220万例(1,000人あたり79.58人)見られた。

三、その内、510万人の入院(非ICU)入院(1,000人あたり3.60人)が見られた。

四、510万人の内、270万人の患者がICUに入院(1,000人あたり1.89人)した。

五、その間、160万人が死亡した(1,000人あたり1.10人の死亡)。流行の主な波は2022年5月から7月の間に発生した。

六、以上より、約3ヵ月の間に約160万人近くが死亡することがわかった。(結果、以上)

 これに関して中国政府系の中国日報(チャイナ・デイリー)は、7月18日、<コンピュータ・シミュレーションが、なぜゼロコロナを堅持しなければだめかを示してくれた【コンピュータ・シミュレーションの動画は、中国がもしゼロコロナ政策を放棄したら、どうなるかを教えてくれた】>というタイトルの動画を発信した。

 Natureの論文を基にしながら、一般庶民にわかりやすく、端的に解説している。

 ――集中治療室ICU の需要が急増しており、白い曲線をすぐに超えていることがわかります。空いている ICU のベッドは、これまでになく感染者で埋め尽くされます。病院は混乱状態にあり、ICU のベッドは絶望的に不足しており、集中治療室のキャパシティは予想を超えています。ピーク時には、ICUの需要は現在の容量の 15.6 倍に達すると予想されています。

と危機感を以て警鐘を鳴らしている。つまり完全に医療崩壊するのである。

◆習近平は犠牲者の上に経済を築くのか、それとも犠牲者を抑えて経済成長を目指すのか?

 以上より、もしゼロコロナ政策を解除したら、中国の医療資源では3ヵ月で約160万人が死去することが分かった。

 いま日中米の累計死者数および総人口に占める割合を略記するならば以下のようになる。

 日本(総人口1.2億人) : 累計死者数4.4万人(死者数は総人口の0.035%)

 中国(総人口14億人) : 累計死者数5000人(死者数は全人口の0.0004%)

 アメリカ(総人口3.3億人):累計死者数100万人(死者数は人口の0.32%)

 習近平は今、この累計死者数が増加しないようにゼロコロナ政策を堅持している。

 もし、3か月間で約160万人が死んでもいいと考えることが許されるなら、ゼロコロナ政策を解除し、経済成長に集中することができる。その代りに、一回の感染流行期間3ヵ月間で約160万人が亡くなるので、日本やアメリカのようにほぼウィズ・コロナで動いたとすれば、数回の流行の波が来て、その都度、類似の人数が犠牲になると考えた場合、数回のコロナ流行の波により約1000万人が命を落とすことになる。もちろんウイルスの種類が違うことによる微小なシミュレーション初期条件の調整をしなければならないが、犠牲者の数は大差ないだろう。

 それら犠牲者の上に経済繁栄を築き上げるのか、それとも命の重みを重視して、ゼロコロナ政策を堅持するのか。

 それは時の為政者の判断に委ねられることにもなろう。

 日本では習近平が独裁であるがゆえに、あるいは権威を保つためにゼロコロナ政策を解除しないと非難しているが(中には党の長老を家の中に閉じ込めておくためにという奇想天外のこじつけをする人もいるが)、逆に習近平がゼロコロナ政策を解除すると指令した時、今度は「ならば、この膨大な数の犠牲者をどうするつもりだ!」とか「人命を軽視するのか!」といった、逆方向の批難も出てこないわけではない。

 少なくともわれわれに言えるのは、「習近平がなぜゼロコロナ政策を堅持するのか」、その真相(客観的事実)を知っておく必要があるということだ。

 中国日報の動画の最後に、「春はまた巡ってきて、春が来れば、また花が咲く。しかし人の命は一度失ったら、二度と戻ってこない」というフレーズがある。

 私は1948年晩秋、7歳のときに、中国共産党に食糧封鎖された長春を逃れて難民行をしている内に体力尽きて地面に倒れたことがある。そのとき私のそばに野あざみの花が逞しく咲いていた。

 アザミになりたい――!

 アザミになって何年も咲き誇っていたいと、薄れゆく意識の中で思ったものだ(詳細は拙著『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』p.187-188)。

 あのとき毛沢東は「長春を死城たらしめよ」と命令し、数十万の庶民が餓死したが、習近平は毛沢東のように「屍の上」に繁栄を築くのか、それとも経済発展を抑えてでも人命を重んるのか――。

 動画の最後の言葉が胸にしみる。

 なお、このコラムは中国問題グローバル研究所のウェブサイトから転載した。
遠藤誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。』

対中関係強化のソロモン諸島、首相が国連で「中立」主張

対中関係強化のソロモン諸島、首相が国連で「中立」主張
https://www.afpbb.com/articles/-/3425446

『【9月24日 AFP】南太平洋の島国ソロモン諸島のマナセ・ソガバレ(Manasseh Sogavare)首相は23日、国連総会(UN General Assembly)で、同国は中国との結び付きを強めているにもかかかわらず、中立性を維持していると主張し、対中関係をめぐりメディアに誹謗(ひぼう)中傷されていると訴えた。

 ソロモン諸島は2019年、台湾と断交し中国と国交を樹立。今年4月には中国と安全保障協定を締結した。一部からはソガバレ氏の権威主義的な傾向を指摘する声も上がっている。

 ソガバレ氏は「わが国や他の主権国家を標的にするか、地域や世界の平和を脅かす外部勢力や安全保障機構とわが国が手を結ぶことはない」とした上で、「ソロモン諸島がどちらの側を選ぶか、強制は受けない」と述べた。

 さらに、大国が太平洋の覇権を争う中で、ソロモン諸島は「不当で誤った批判の嵐」にさらされてきたと主張。「ソロモン諸島は中国との国交樹立以来、メディアから誹謗中傷を受けている」と訴えた。(c)AFP 』

中国でのクーデターは恐らく嘘だが、何かが起きている??

北の国から猫と二人で想う事 livedoor版:中国でのクーデターは恐らく嘘だが、何かが起きている??
https://nappi11.livedoor.blog/archives/5374374.html

『まだ噂(うわさ)の域を出ないが、習近平国家主席が人民解放軍PLAの軍事クーデターにより自宅軟禁され、中国共産党CPC (Communist Party of China)から解任されたとの噂が記事で流出した。

習近平国家主席は2022年9月14~15日に中央アジアを訪問し、当ブログの記録でも、9月15日午後、ウズベキスタンのサマルカンド国賓館でロシアのプーチン大統領と2国間会談を行っている。

その間に、胡と温 Hu and Wenは14日の午後、元常務委員の宋平d6387bf2-66e9-469d-b02e-d055b1992754Song Ping, a former member of the Standing Committee:左の説得に成功し、宋はその夜、人民解放軍、中央警備局を掌握した。

江沢民と北京の中央委員会のメンバーには、電話一本で知らされた。元の常務委員は挙手によって、習近平の人民解放軍トップの地位を解任した。

それを知った習近平は、9月16日夜、北京に戻ったが、空港で逮捕された。中国共産党政治局は習近平を更迭し、現在習近平国家主席がは自宅軟禁されている。噂によると、北京の西に位置する河北省に80キロの装甲車の列が移動し、彼は逮捕されているとも書かれている。

また、中国でのクーデターの噂(うわさ)はおそらく嘘だが、何かが起きている とのツイートもあるとtheresa_fallon言う。

中央アジア研究の米国人教授、テレサ・ファロン氏Theresa Fallon:右, a US professor of Central Asian studiesのツートには”中国で軍事クーデターが起き、中国共産党の幹部が習近平をPLAのトップから解任し、逮捕されたという噂がインターネット上で飛び交っている。中国での大規模なフライト中止は単なる軍事演習なのか、それとも何か裏があるのか?” と書かれていると言う。

習近平主席は現在、10月16日の第20回中国共産党全国代表大会The National Congress of the Chinese Communist Partyを控え、国家主席と陸軍のトップとして3期目の5年を目指しているが、最近は上海などの都市でコロナ対策で厳格な隔離政策ロックダウンを行い、国民からの不満が高まっている。英文記事 、、、、名前の出た写真のSong Ping氏はすでに105歳である 参照記事。』

期待できない国連だが、改革は必要 中露締め付けは経済同盟で

北の国から猫と二人で想う事 livedoor版:期待できない国連だが、改革は必要 中露締め付けは経済同盟で
https://nappi11.livedoor.blog/archives/5374146.html

『日米豪印4か国の(反中目的の)協力枠組み「クアッドQuad」の外相会合が2022年9月23日、国連総会が開催中の米ニューヨークで開かれた。

会合後、国連改革や国連安全保障理事会の常任および非常任理事国の拡大を支持すると明記した共同文書が発表され,文書には「われわれは、国連安全保障理事会が現在の国際的な現実を反映し、地理的により多様な視点を組み入れるために、国連安全保障理事会の常任および非常任理事国の拡大を含む、統合的な国連改革プログラムを推進することにコミットしている」と記されている。4か国は、国連への全面的な支持を表明した。4か国はまた、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ(実施計画)」の実現に賛成した。

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図中のIPEFは、2022年5月20~24日のバイデン米大統領のアジア歴訪で実現した「インド太平洋経済枠組み(IPEF:Indo-Pacific Economic Framework)」で、現在13カ国が参加し、米国の中国への経済制裁を補強する意味合いがあると思える。 過去ブログ:2022年8月これまでにない流動的な国際情勢下の日米中 7月ウクライナ問題で米、欧州の結束強まり米中対決は陸から海上へ

「オーカス:AUKUS」締結は、国連の無力化と不信が生み出した、志を同じくするアングロサクソン海洋民主主義国家の同盟関係を強化した反中防衛同盟である。過去ブログ:2021年9月豪原潜導入からフランスとの契約破棄の舞台裏とオーカス 9月インド太平洋構想の連携強化とオーカス、CPTPP

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これに先立ち、2022年9月21日、米国のジョー・バイデン大統領は国連総会の一般討論演説に臨み、安保理常任理事国の拡大を含む安保理改革を支持した。国連安保理は現在、ロシア、中国、英国、フランス、米国の5か国が常任理事国。ロシアも拡大を支持している。(改革案のひとつである拡大は、常任理事国の議席増を指している)

、、、、、中露が国連改革を認めるうえで、中国は台湾の国家としての承認、露はウクライナ侵攻の停止、ロシアの一方的資源政策という現在進行形の問題に直面する。

これまで通りの対応であれば、中露は拒否権を発動して安保理で、自国が不利になる改革には、議題として協議されることすら反対するだろう。

また、反欧米の国家は多く存在し、国連自体が2極化し、重要な国際問題の協議が毎度「おとぎ話」で終わる状況は国連の無力化を見せつけているが、果して国連改革できるのか?中露は、自らが国際的地位の弱体化に繋がる国連改革に賛成するだろうか?

まずは、明確な国際法違反で侵略を行使する、ロシアの国連での権利停止などできないのかと思うが、これも「おとぎ話」でしかないのだろうか?恐らく、議題になる決議までに数年が掛かり、急がれるウクライナ問題の解決には、今の国連の位置は程遠いのが実際のところだ。しかし、長い目で見ていられない現状で、異端児中露を、欧米日印の種々の軍事、経済同盟が警戒、締め付けを行っているのが実情だ。

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過去、世界が領土拡張と侵略に明け暮れて居たころ、日本は鎖国政策を取り、長く(一般的に1639年から1854年)平和を維持した。

改めてそんな時期と、その後の日本を見直した。幾度かの侵略の危機を乗り越え、戦わずして国体維持は困難として打って出た時期もある。

敗戦では、米軍統治下となり、日本が世界地図から消えるかもしれない危機も経験した。
多くの犠牲を出しながら、しかし今も国と伝統は残り、資源の無い小国と言われながら存在感を維持しているのは世界が驚嘆している。 

過去ブログ:2019年5月日本軽視は「あまりにも危険」という中国記事への感想 2017年12月曖昧だが、確実に受け継がれる日本人の宗教観 2016年8月天正遣欧少年使節団の絵画天井裏で新発見 イタリー 2012年5月「鎖国」と「enclosed country」』

中印、ウクライナ侵攻に距離

中印、ウクライナ侵攻に距離 ロシアは孤立回避に腐心
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN243X60U2A920C2000000/

『【ニューヨーク=白岩ひおな】各国の首脳級演説が続く国連総会で24日、中国やインドの外相が演説し、ウクライナ侵攻を続けるロシアに一定の距離を置く姿勢を示した。一方、ロシアのラブロフ外相は中国が重視する台湾問題をめぐり米国を非難したほか、中印やアフリカ、中南米諸国と会談を重ねるなど世界での孤立回避に腐心している。

「ウクライナ紛争の激化が続くなか、われわれは誰の側に立つのかと頻繁に聞かれる。インドは平和の側にあり、国連憲章とその創設の原則を尊重する側に立つ」。インドのジャイシャンカル外相は24日の演説でこう明言し、早期解決を求めた。

インドのジャイシャンカル外相㊨は24日の演説でロシアへの懸念をにじませた(ニューヨークの国連本部)=AP

米欧はロシアによる侵攻や、23日に始まったウクライナの親ロシア派支配地域でのロシア編入を問う住民投票について、国連憲章違反として非難している。16日にはインドのモディ首相も、ロシアのプーチン大統領との会談で「いまは戦争の時ではない」と懸念を伝えた。

中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相は24日の演説で「ウクライナ危機の平和的解決に資するすべての努力を支持する」と述べ、対話による解決を優先するよう改めて求めた。プーチン大統領は15日の中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席との会談で「ウクライナ危機に関する中国の懸念を理解している」と自ら言及している。

24日の演説で、中国の王毅(ワン・イー)外相はウクライナ侵攻をめぐり、当事者の対話による平和的解決を求めた=AP

中印両国は侵攻以来、ロシアとの伝統的な外交関係から表立った対ロ批判は控えてきた。ただ、プーチン大統領が21日の国民向け演説で核兵器使用を辞さない考えを再び示し、ロシアの言動への懸念が一段と強まる中、中印はロシアと距離を置く姿勢に傾いている。

欧州連合(EU)のボレル外交安全保障上級代表は23日、ロシアの核の脅しに対し中国とインドが拒否反応を示していると語った。ボレル氏は中国外相との個別会談で核の使用や威嚇に反対する発言があったと明らかにした上で「ロシアは(プーチン氏の)演説の前よりもずっと孤立している」と指摘した。

孤立感を深めるロシアは、各国への働きかけを強める。ラブロフ氏はニューヨーク滞在中、中印のほか、南アフリカなどアフリカ諸国、ブラジルやベネズエラなど中南米を中心に30カ国以上と個別に会談した。

24日に演説したラブロフ氏は「米国は台湾で火遊びし、台湾への軍事支援を約束した」と批判。中国が重視する台湾問題への配慮を強調し、中国の歓心を買おうと努めた。

ラブロフ氏は同日の会見で、ロシアに編入される地域を防衛するために核兵器を使用する可能性を示唆した。「(将来的に)ロシアの憲法にさらに明記される領土を含むロシアの領土は国家の完全な保護下にあり、すべての法律やドクトリンが適用される」と表明した。同国の軍事ドクトリンは核兵器の使用要件を「国家の存在が脅威にさらされた時」と明記し、大統領が決定すると定めている。

22日に開いた安全保障理事会では、核の脅しを強めるロシアへの非難が集中した。ブリンケン米国務長官は「プーチン氏は自らおこした火に油を注ぐために国連憲章、国連総会と安保理を徹底的にないがしろにすることを選択した」と発言した。一方、ラブロフ氏はウクライナへの軍事支援で「西側諸国が紛争を故意にあおっている」などと反論。演説後には退席した。

ウクライナのゼレンスキー大統領は21日の国連総会でのオンライン演説で、ロシアの拒否権を剥奪すべきだと訴えた。ウクライナ侵攻以降、安保理はロシアの拒否権に阻まれ、法的拘束力のある決議を出せていない。8月の安保理での演説では国連総会にロシアの責任を追及する決議案を提出する方針も示していた。ウクライナの一部地域のロシアへの編入が決まれば、各国の応酬がさらに激しさを増しそうだ。』

習近平氏「強軍思想」の経済学 軍民融合の挙国体制

習近平氏「強軍思想」の経済学 軍民融合の挙国体制
風見鶏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM219170R20C22A9000000/

『10月の中国共産党大会を前に、中国人民革命軍事博物館は習近平(シー・ジンピン)中央軍事委員会主席の強軍思想と改革をたたえる特別展を開いた。7月末に来館した習氏は強調した。「あと5年で人民解放軍は建軍100年を迎える。『建軍100年奮闘目標』を全力で実現しよう」

習氏がしばしば言及するこの目標は実は中身が明確にされていない。習氏が3期目の総書記に就けば、5年後の2027年は任期の最終年となるだけに「秘めたる野心」への懸念は強い。

習氏は最高指導者としての10年間で「強軍建設」に加え、陸海空・宇宙・サイバーをつなぐ広大な空間を安全保障の対象とする概念を構築した。26兆円に達するいまの軍事費だけでは足りない。

そこであらゆる資源を活用する挙国体制をとった。代表例が国防と民間のイノベーションの相乗効果を図る「軍民融合」だ。

「海の万里の長城」とも呼ばれる海洋観測網がある。平時は漁業や海洋資源の開発を支援するが、有事は一転して潜水艦や軍艦の偵察網になる。習氏が4月に視察した中国海洋大学の研究院が開発した。衛星や調査船、海底装置など空と海の情報網を連動する。

同事業は別のイノベーションにも連鎖した。海底装置をつくるハイテク企業は昨年、海底技術の蓄積も生かして中国初の海中データセンター事業を発表した。

スマート漁業も安全保障と表裏一体だ。中国の漁船は衛星と連動する民間のアプリで海上でもチャットができ、漁場や魚の市況の情報も入手可能という。便利なシステムを通じて当局は漁船を統制し組織化する。

中国は南シナ海を含む広大な海域を「管轄海域」と主張する。海軍や海警局の船だけでは管理しきれない。100万隻ともいわれる漁船を監視や占拠、他国の海中探査機の回収に使って戦力化する戦略だ。
中国福建省石獅市の漁港から出港する漁船群(22年8月16日)=共同

地方政府や国有企業は次々と軍民融合投資ファンドを設立した。把握可能な20の基金の公開情報だけでも規模は約7000億元(14兆円)に達する。投資先は半導体や人工知能から電磁波、レーダー、ブロックチェーンなど多岐にわたる。

中国が挙国体制をとる一方で、日本は対中戦略でも縦割りが目立つ。

対中国で重要なサイバー防衛も、国家レベルの攻撃をどう抑止するかについて大きな絵図を描く体制はない。中国はあらゆる分野が国防で連携するのに、日本は産業界や学術界に分散する中国情報を集め、効率的な戦略を考える仕組みも不足する。

権威主義の中国だが、自動的に挙国体制が生まれたわけではない。最初に軍民融合を唱えたのは胡錦濤(フー・ジンタオ)前国家主席だ。当時は軍内部に利権がはびこり、縦割りの組織は命令しても十分に動かなかった。

習氏は「反腐敗闘争」の名目で利権を握る幹部らを追放した。無期懲役の厳罰や死者も相次いだ粛清を経て、ようやくトップダウンを可能とする組織改革を断行した。「軍にメスを入れれば返り血を浴びる」といわれるなかで、習氏にとっても危険な賭けだった。
中国人民革命軍事博物館(手前)の右奥には「八一大楼」と呼ばれる中央軍事委員会の入るビルがある(北京市内)

習氏は強い意志をもって強軍路線を進めてきた。そのために、持てる資源の価値を最大化する道を模索した。日本はどう対峙すべきか。防衛予算の増額も必要となるが、いまの国のあり方のまま予算を増やすだけでは十分な効果は発揮できないのではないか。

9月29日に日中は国交正常化50年を迎える。次の50年によりよい日中関係を維持するためにも中国への隙のない備えが必要となる。

(中国総局長 桃井裕理)』

停戦を望む中印が、プーチンに弱体化して欲しくない切実な理由

停戦を望む中印が、プーチンに弱体化して欲しくない切実な理由
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20220923-00316374

『中印とも早くからプーチンに「話し合いによる解決を」と言ってきたが、それは中印ともにプーチンに弱体化して欲しくないからだ。「話し合いを」と呼びかけてきた経緯と、弱体化して欲しくない切実な理由を考察する。

◆「話し合いによる解決を」と言い続けてきた中国側の経緯

 9月21日、プーチン大統領は「部分動員令」を発布すると同時に演説で「領土に危険性があれば、持っているすべての武器を使用する予定だ。これは、はったりではない」と話した。すなわち、戦術的核兵器の使用も辞さないと表明したことになる。

 一連の動きを受け、中国外交部の汪文斌報道官は同日の記者会見で、早期停戦を呼びかけると表明するとともに、「われわれは各国の主権や領土の一体性は尊重されるべきだと終始主張している」と強調した。その一方で、プーチンの行動を「合理的な安全への懸念」(=NATOの東方拡大)であると擁護もしている。

 これはいつも通りの中国の主張で、拙著『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』に書いた「軍冷経熱」という姿勢と少しも変わっていない。軍事的に賛成できないのは、中国国内にもウィグルやチベットなど、多くの少数民族地区を抱えているからだ。

 ウクライナへの侵攻が始まった2月24日の翌日、習近平はプーチンに電話して、「話し合いによる問題解決」を要求し、プーチンもそれを肯定して2月28日から停戦交渉に入りはした。

 ところが、4月24日のコラム<「いくつかのNATO国がウクライナ戦争継続を望んでいる」と、停戦仲介国トルコ外相>に書いたように、トルコの外相が「停戦させたくない国(=アメリカ)がある」と述べ、事実5月10日のコラム<米CIA長官「習近平はウクライナ戦争で動揺」発言は正しいのか?>に書いたように、アメリカのオースティン国防長官が「ロシアが二度と再び立ち上がれないようになるまでウクライナを軍事支援する」という趣旨のことを述べている。今ではウクライナ戦争はNATOを含めたアメリカとロシア一国の戦いの形となっており、戦争はやむ気配がないどころか、ますますエスカレートするばかりだ。

 そこで、習近平あるいは中国側が、こんにちまで、どのような形で早期停戦と「話し合いによる解決」をプーチンあるいはロシア側に訴えてきたか、時にはアメリカやウクライナなど第三者に表明した場合も含めて、列挙したい。もっとも、あまりに多すぎるので、拾い漏れがあるかもしれない。

【習近平】

 ●2022-02-25:習近平がプーチンに電話して、「中国側はロシアがウクライナと話し合いによって問題を解決することを支持する」、「すべての国の主権と領土保全を尊重し、国連憲章の目的と原則を遵守するという中国の基本的な立場は一貫している」と述べた。

 ●2022-03-18:習近平はバイデン(大統領)とのオンライン会談で、「ウクライナの現状は中国が見たいものではない。中国は平和を主張し戦争に反対する」と述べた上で、「関係国はロシアとウクライナの対話を支持すべきだ。アメリカとNATOはロシアとの対話を進めていくべきだ。ウクライナ危機の背後に何があるかを解明し、その問題を解決すべきだ」と主張している。

 ●2022-06-15:習近平とプーチンの電話会談で、習近平はプーチンに「中国はウクライナ問題に関して歴史的経緯と是非曲直(物事の善悪)から出発して自主的に判断している。世界平和を促進し、全世界の経済安定を重要視している。関係者は責任を以てウクライナ危機が妥当な解決を得るよう推し進めなければならない。中国はその役割を果たしたい」と述べた。

【楊潔篪(ようけっち)や王毅など】

 ●2022-02-24:王毅(外相)がロシアのラブロフ(外相)と電話会談し、王毅が「ロシアの安全問題条の懸念は理解するが、あくまでも話し合いによる解決を」と告げる。

 ●2022-02-26:王毅、ウクライナ問題に関する中国の5つの観点を表明。その中でプーチンがNATOに呼び掛けた話し合いをNATOが拒否したことを批判した上で、ウクライナ危機は外交努力によって解決すべきと表明。

 ●2022-03-01:王毅がウクライナのクレバ(外相)と電話会談し、ウクライナの国民が受けた被害に心からの悼みを表明した上で、話し合いによる解決を強く望むと表明。

 ●2022-03-07:王毅がウクライナ問題を解決するための4つの主張を表明。その中で、「冷戦思想をやめ、国連憲章に沿って各国の主権と領土保全を守り、話し合いによる解決をすべきだ」と主張。

 ●2022-03-15:楊潔篪(外事活動委員会主任)がウクライナ問題に対する立場を表明。「中国はすでにウクライナに人道主義支援を申し出ている」、「ウクライナ問題は平等な話し合いによって解決されなければならない」と述べた。

 ●2022-04-01:王毅がウクライナ問題に対する中国の5つの堅持を表明。話し合いによる解決を主張した。

 ●2022-04-04:王毅がウクライナのクレバ(外相)と電話会談。王毅が「停戦交渉がどんなに困難でも、戦争に向けてではなく話し合いに向けて努力して欲しい」と力説。中国は中立的立場で役割を果たしたいと述べた。

 ●2022-07-08:王毅がロシアのラブロフ(外相)と対面で会談し、「平和的手段でウクライナ問題を解決して欲しい」と述べた。

【中国外交部】

 あまりに多いので省略。冒頭にある発言を繰り返している。

 このように中国は「話し合いによる解決を」と言い続けているのである。

◆「話し合いによる解決を」と言い続けてきたインド側の経緯

 では、インドはどうなのだろうか。中国同様に拾ってみるが、漏れがあると思われるので、その点はお許しいただきたい。

●2022-02-24:ウクライナへの軍事侵攻が始まった直後、インドのモディ(首相)はプーチンに電話して会談した。モディは「NATOとロシアの間の相克は話し合いによってのみ解決されるべきだ」と述べ「暴力の即時停止」を強調し、「外交交渉と対話以外に解決の道はない」と述べた。

●2022-03-02:モディはプーチンに電話してウクライナにいるインド人学生の安全避難に対する協力を求めた。このときモディはウクライナのゼレンスキー(大統領)にも同様の依頼をしている。

●2022-03-07:モディはプーチンと電話会談を行った。その中でモディは「両国間の交渉が紛争の停止につながることを期待する」と述べた。

●2022-07-01:モディはプーチンと電話会談し、ウクライナ問題に関しては対話と外交で解決すべきであるという、インドの長年の立場を繰り返した。

●2022-09-15:モディとプーチンはウズベキスタンで和やかな雰囲気の中で対面会談し、その中でモディは、これまでと同様に「話し合による解決」を求めた。

 この最後の会談に関して、日本メディアは盛んに「モディ首相が初めてプーチンを批判した」というトーンで報道しているが、モディは習近平同様、最初から「話し合いによる解決を」と繰り返している。「突然、中印首脳がプーチンに冷淡になり、プーチンの孤立を招いた」というトーンで報道したくてならない日本メディアは、今後の世界動向を読み誤らせる「世論誘導」をしていると言っても過言ではないだろう。

◆中印とも、プーチンには弱体化して欲しくないと切に望んでいる

 なぜなら、習近平もモディも、プーチン政権が弱体化すれば手痛い打撃を受けるので、戦争には反対だが、なんとしてもプーチン政権には弱体化して欲しくないと思っているからだ。これを正確に把握していないと、今後の世界動向を完全に読み誤り、日本は外交政策に失敗するだろうことが目に見えているのである。

 まず、なぜ習近平がプーチンに弱体化して欲しくないと思っているかを見てみよう。

 いまアメリカは中国の強大化を抑え込もうと、経済的な制裁を強化し、対中包囲網の形成に余念がない。習近平はアメリカに対抗するために、同じくアメリカが主導している激しい制裁を受けているプーチンと手を組んでアメリカの制裁を撥(は)ね退(の)けようとしている。

 だから軍事的には冷淡(軍冷)でも、経済的には熱狂的な連携(経熱)を強化して、ロシア経済を支えている。今年8月に出されたデータによれば、ロシアのエネルギー製品に対する中国の支出は、83億ドルという最高記録を打ち出している。

 しかしもし、プーチンのロシア国内における支持率が低下し、万一にもリベラルな政権が誕生したら、「第二のゴルバチョフ」となってアメリカ側に取り込まれ、中央アジア諸国も欧米になびくので、習近平は共に対米対抗をしていく仲間を失い、完全に孤立する。となるとアメリカは中国を潰しやすくなる。

 このような状況だけは絶対に避けたいので、習近平はロシア経済を支え、ロシア国民がプーチンに不満を抱かないように密やかに、しかし必死でプーチンを支援しているのだ。

 この事情は、インドにおいても同様だ。

 インドの総選挙は2024年に行われるので、モディは再選を狙っている。

 しかし、もしプーチンが弱体化すれば、プーチンと仲が良いモディは再選されない可能性が大きくなる。

 現在のところ、5月の世論調査ではあるが、インド国民の62%が「現在のインドとロシアの関係を維持して欲しい」と回答し、77%が「軍事行動は状況を悪化させるだけだ(=だから反対)」と回答している。

 この状況下でモディの支持率は74%なので、プーチン政権が弱体化しなければモディの再選の可能性は大きいが、プーチンが弱体化すれば、モディ再選の可能性はなくなるかもしれない。

 したがって、中印ともウクライナ戦争には反対だが、プーチンには何としても弱体化して欲しくないという切なる願望を持っている。

 「プーチンが孤立した」という心地よい報道に傾いていると、日本は今「ロシア‐中国‐インド」と、大陸を北から南に貫く「巨大なアジア版コンチネンタル勢力圏」が形成されていこうとしている世界動向を見失うことになるだろう。

 そのことに警鐘を鳴らしたい。

遠藤誉

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『ウクライナ戦争における中国の対ロシア戦略』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。』

「プーチン離れ」迫られた習近平氏、その意外な手駒

「プーチン離れ」迫られた習近平氏、その意外な手駒
編集委員 中沢克二
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK180Y10Y2A910C2000000/

 ※ 今日は、こんなところで…。

『「(ウクライナ危機に関する)あなた方(中国)の疑問や懸念を理解している」「きょうは我々の立場を詳細に説明する」。ウズベキスタンのサマルカンドでの7カ月ぶりとなる対面式の中ロ首脳会談の冒頭、ロシア大統領のプーチンは、これまでなら考えにくい、へりくだった言葉を口にした。

中国国家主席の習近平(シー・ジンピン)への最大限のリップサービスに至るまでには、複雑な駆け引きがあった。まず重要なのは、習が2年8カ月ぶりとなる外国訪問の最初の国に選んだのが、意外にもカザフスタンだった経緯だ。

ヌルスルタンに到着した中国の習近平国家主席を出迎えるカザフスタンのトカエフ大統領(9月14日)=ロイター

上海協力機構(SCO)首脳会議が開かれるウズベキスタン入りに先立つカザフ訪問は、短時間だが国事訪問という重みある扱いだった。視線の先にあったのは翌日の中ロ会談である。

ロシアがウクライナ侵攻に踏み切った後、カザフスタンとロシアの関係は険悪になっていた。米欧の対ロシア制裁を巡り、カザフスタン大統領のトカエフが、カザフは決して制裁の抜け道にならないと言明し、プーチンの強い怒りを買った。

ロシア・カザフの確執も利用

ウクライナ侵攻前の1月、カザフで大規模デモが発生した。トカエフは旧ソ連の6カ国でつくる軍事同盟「集団安全保障条約機構」(CSTO)に平和維持部隊の派遣を要請し、ロシア軍を主力とする約2000人の兵力がカザフに入った。ロシアに借りを作った格好だが、情勢はウクライナ侵攻の開始で一変する。

ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席(9月16日、サマルカンド)=AP

ロシアの圧力にあらがうには、遠方の米欧との協力だけでは心もとない。隣の大国、中国からの助力が必要だった。習は微妙な力学を十分承知しながら、あえてカザフに足を踏み入れた。中央アジアでの影響力を確保する手駒としてカザフを使ったのだ。

「カザフスタンが国家の独立を維持し、主権と領土を守ることを断固、支持する」。トカエフとの首脳会談で習が口にした言葉は突出していた。カザフが誰から国家の独立を守るというのか。もちろん念頭にあるのはロシアだ。

カザフはウクライナと同様にロシア系住民を抱える。さらに関係が悪化すれば、プーチンは、ウクライナ侵攻と同じロシア系住民の保護を理由に介入してくる。「ロシアがウクライナで勝てば、次はカザフかもしれない」という恐怖感は強かった。

「プーチンと再び会う習主席が、わざわざ事前に来訪したのは、カザフ外交の大勝利だ」。カザフの国際政治学者は、中国を盾にロシアからの圧力を軽減できる利点を強調する。かたや習は中国の利益を考えていた。「言外にプーチンをけん制する手段としてカザフを使ったと解釈できる」。カザフ側では、そう受け止められた。

習にとってカザフは「一帯一路」構想につながる「新シルクロード経済帯」を2013年に打ち出したゆかりの地だ。トカエフは北京語言学院(現在の北京語言大学)に留学経験がある。中国語も堪能で気脈を通じやすい。習はカザフとの鉄道、運輸、天然ガスパイプライン、水利などでの協力を進めた。

ロシアとの間合いをはかる習の言動には、「プーチンの侵略戦争」に距離を置かざるをえなくなった中国の外交・安保戦略の大きな変化がにじむ。2月4日、北京での中ロ首脳会談で「無制限の友好」をうたい、「北大西洋条約機構(NATO)拡大反対」を共同声明に盛り込んだ。その中ロ蜜月は、曲がり角を迎えていた。

ウクライナ東部の戦況はロシア劣勢も伝えられている。ぐずぐずしていれば手遅れになる。これが今回、習が微妙な「プーチン離れ」を選択せざるをえなかった理由でもある。

10月16日からの中国共産党大会でトップ3期目を狙う習にとって、長期政権を担う盟友プーチンのウクライナ侵攻は悩みの種だった。会うのはやぶさかではない。米国との長期的な対決を覚悟する中国は、軍事大国のロシアとの協力を今後も維持したい。

だが明確な主権侵害であるウクライナ侵攻を中国が全面的に後押ししている、という悪いイメージからは早く脱却する必要があった。中国は、習の尊厳を保つ仕掛けが欲しかった。

それがウクライナ侵攻に関する中国の懸念について、プーチンが自ら説明するという儀式だ。中国側は、習が直接、ウクライナに触れたという公式発表は避ける一方、プーチンが国際社会にわかる形で語るなら、双方ともメンツを保てる。

プーチンは不愉快だろう。勢力圏とみなす中央アジアで中国がやりたい放題なのも苦々しい。それでも、ウクライナ情勢が不利だけに、対面による中ロ首脳会談の実現が最優先課題だった。一定の譲歩はしかたなかった。

習氏とプーチン氏の差別待遇

中国は用意周到だった。異例のプーチン発言を引き出した隠れた功労者は、習側近で中国序列3位の栗戦書(リー・ジャンシュー)である。全国人民代表大会常務委員長の栗は9月7日、ウラジオストクでプーチンと会談している。

9月7日、ウラジオストクでプーチン氏と会談する栗戦書・中国全国人民代表大会常務委員長=AP

「世界的に注目された(サマルカンドでの)中ロ首脳会談について、ウラジオストクを含め、様々な調整が事前になされていた」。SCO首脳会議参加国の関係者は、栗による重要な前さばきを指摘する。

習はカザフ同様、ウズベキスタンでも大歓迎された。9月14日夜、SCO首脳会議のためサマルカンド空港に到着した習を盛大に出迎えたのは、会議のホスト役であるウズベキスタン大統領のミルジヨエフ、首相のアリポフらだった。

サマルカンドに到着した習氏を出迎えるウズベキスタンのミルジヨエフ大統領(9月14日)=AP

対照的だったのが、プーチンの出迎えである。大統領は不在で首相のみ。明らかな差別待遇だ。しかもSCO首脳会議の集合写真を撮影した際も、ミルジヨエフは、まず習に丁重に尊敬の念を表明し、次にプーチンに「どうぞ」と話しかけた。この順番も意図的だ。

中央アジア各国は、表向きの態度表明とは別に、同じく旧ソ連に属していたウクライナへの全面侵攻に衝撃を受けていた。プーチンにとってサマルカンドは針のむしろだったに違いない。

インド首相のモディはロシアとの首脳会談で「今は戦争のときではない」とストレートに忠告した。「私たちは全てをできるだけ早く終わらせたい」と返したプーチンの言葉は、ウクライナ側に責任を押しつける容認しがたいものだが、早期停戦に触れたことは驚きである。

中国メディアは、中ロ首脳会談でのプーチンの微妙な発言を中国国内で公式に報じていない。ウクライナ侵攻以来の7カ月、一貫して「プーチン寄り」の報道を続けてきたため、いきなり急転換すれば中国国民が面食らう。慎重なコントロールが必要だった。

だが、中国外務省の影響力が強い一部中国メディアは、モディの忠告を紹介している。プーチンが置かれた厳しい環境を紹介し、中国の外交姿勢の微妙な変化もにじませる。そういう意図があった。

2年8カ月ぶり出国で巻き返し

各国首脳が勢ぞろいして歓談したSCO首脳会議の夕食会の場に習の姿はなかった。確かに中国共産党大会を前に新型コロナウイルス感染症にかかるのを恐れていた。一方、悪役が定着したプーチンとにこやかに談笑し、そのツーショット写真が世界に出回るのを避けた面もある。

中国は事後のフォローも忘れなかった。サマルカンドでの中ロ首脳会談に同席した中国外交トップの楊潔篪(ヤン・ジエチー)は、わずか4日後、中国福建省でプーチンに極めて近いロシアの安全保障会議書記であるパトルシェフと戦略的安全保障を巡って協議した。

注目点は、中国側が、先の中ロ首脳会談と一転して、ウクライナに関する意見交換を明言したことだ。福建協議に習側近で公安相に昇格して間もない王小洪が同席したのも目をひく。ロシアとの安全保障協力は軍事に重点を置かず、警察部門が仕切る治安面の協力、「テロ対策」が主体だと中国側は言いたい。

それでも、衣の下から鎧(よろい)がのぞく。パトルシェフも治安を担うロシア連邦保安庁(FSB)出身だが、プーチンと一心同体の側近としてウクライナ侵攻に立案の段階から深く関わっている人物なのだ。

習は、ウクライナ危機の収拾で中国が力を発揮するチャンスを虎視眈々(たんたん)と狙っている。見通しはまだ立たない。それでもプーチンとの会談で、中国が懸念を示している雰囲気を世界に宣伝できたのは大きい。楊潔篪もパトルシェフとの協議で、中国が今後、担える役割を探ったはずだ。
プーチン氏と握手するインドのモディ首相(9月16日、サマルカンド)=ロイター

中国外交は、新型コロナ感染症が最初に発見された湖北省武漢での事実隠蔽と初動の遅れによって長い間、劣勢に立たされた。それ以来、2年8カ月ぶりだった習の外国訪問は、巻き返しへの第一歩となるのか。もう少し見極める必要がある。(敬称略)

中沢克二(なかざわ・かつじ)
1987年日本経済新聞社入社。98年から3年間、北京駐在。首相官邸キャップ、政治部次長、東日本大震災特別取材班総括デスクなど歴任。2012年から中国総局長として北京へ。現在、編集委員兼論説委員。14年度ボーン・上田記念国際記者賞受賞。
習近平帝国の暗号 2035

著者 : 中澤 克二
出版 : 日本経済新聞出版
価格 : 1,980円(税込み)

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益尾知佐子
九州大学大学院比較社会文化研究院 教授
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分析・考察

中国にも地政学的な視点はあります。今日、中国から見て海域は米国中心勢力が良からぬことをたくらむ危険地帯。その分、ユーラシア大陸の陸域は自国の勢力で固める必要があります。中国はこれまでロシアに遠慮し中央アジアの主導権を二分してきましたが、今回の外遊で明確に踏み出しました。上海協力機構は中国中心組織に変質しています。

カザフスタン、ウズベキスタンは中央アジアの大国で、両国の指導者にとっても中国からの支持は国内的に大きな得点です。逆に習近平も、今回、彼に勲章を授与してくれた両国の大統領に「習近平主席は真の偉大な領袖だ」と言わしめたことで、中国人民に彼の世界的威光を示せることになりました。
2022年9月21日 20:27 (2022年9月21日 20:31更新)

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上野泰也
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中国にとっては寝耳に水で、ある意味迷惑でもある、ロシアのウクライナ侵攻。この暴挙についてプーチン大統領が公の場で習近平国家主席に対する事実上の釈明を余儀なくされるに至ったのは、中国の外交上の勝利と言えるだろう。それに加えて、記事でも触れられているが、中央アジアにおける中国の影響力を格段に強めることができたのも、中国からすれば大きな成果である。英紙フィナンシャルタイムズは9月17・18日付けで、中央アジアにおいて中国とロシアの利害は対立すること、ウクライナ侵攻をうけてカザフスタンなどはロシアへの警戒心を強めたこと、中央アジアにおける中国の影響力は増し、ロシアに対して優位に立ったことを報じていた。
2022年9月21日 13:06』

二階氏「媚中派とかいうけど中国と話できなくてどうすんだ」

二階氏「媚中派とかいうけど中国と話できなくてどうすんだ」日中関係50年支える“議員外交”
https://news.yahoo.co.jp/articles/4231726524a24639c001de3c9625d72f9ca57cfb

『来週、国交正常化50年を迎える日本と中国の関係を振り返る「日中50」です。両国関係に欠かせないものに“議員外交”がありますが、最近では「媚中派」という批判の声がついてまわります。

自民党 二階俊博 元幹事長

「中国との間に格別の関係があるんですよ」

中国との“議員外交”を牽引してきた自民党の二階元幹事長。

中国 習近平 国家主席

「中国は中日関係の発展を重視しています」

2015年、およそ3000人の大訪問団を率いて訪中します。党役員としては異例の習近平国家主席との面会を行い、安倍総理の親書を手渡しました。

自民党総務会長(当時) 二階俊博氏

「3000人の皆さんの前で(安倍総理の親書を)渡すのが一番良かろうと思って」

2012年の民主党政権による尖閣国有化と翌年の安倍総理の靖国神社参拝によって、“戦後最悪”と呼ばれるほど関係が悪化していた当時の両国。この時の訪中がその後の習主席の来日に繋がるなど、関係改善に大きく貢献したとされます。“議員外交”について、二階氏はこう語ります。

自民党 二階俊博氏

「政府の使いではないんですよね。ですから、そういう新たな立場で、(議員外交を)積極的にやっぱり、やっていくっていうことが大事でしょうね」

当時の田中総理と周恩来首相が北京で国交正常化に合意してから、29日で50年。歴史認識や天安門事件などで、日中は幾度も困難な時期を迎えましたが、小沢一郎氏や福田康夫氏らによる“議員外交”が関係改善の起爆剤になってきました。

しかし、中国の軍事拡大や新型コロナウイルスの発生で、“議員外交”は厳しい局面に立たされています。

さらに日中関係を重視する政治家への「媚中派」「朝貢外交」との批判がインターネット上などで強まっています。

自民党 二階俊博氏

「媚中派とか何とか言うけど、中国と話できなくてどうすんだと、言ってるお前は中国の誰と話できるんだと。中国のどの発言、どの態度が悪いって言うなら、一言抗議にいけるかって」

二階氏は近隣の大国である中国と本音で語り合える関係こそが重要なのだと強調します。

自民党 二階俊博氏

「50年って言ったら長い年月だけども、(日中の関係を)大きく捉えたら、短い期間とも言えるんですね。日本は中国なしに、やっぱり国際社会でやっていけないでしょう。中国との関係っていうのは深いでしょう。こういうことをやっぱり忘れたら駄目ですよね」

安倍政権時代に合意した習氏の来日は現在も宙に浮いた状態です。

次の50年の日中関係に、“議員外交”は何が出来るのか。政治家たちの底力が問われています。

TBSテレビ 』

中国で囁かれる、常軌を逸したゼロコロナ政策が終わらない本当の理由

中国で囁かれる、常軌を逸したゼロコロナ政策が終わらない本当の理由
ゼロコロナは「インビジブル文革」?党大会に向けた事実上の戒厳令か
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71936

 ※ あまりに、「ありそうな話し」だ…。

『(福島 香織:ジャーナリスト)

 中国の貴州省三都県で、ゼロコロナ政策のために隔離施設に移送される市民47人を乗せた「防疫バス」が深夜谷底に転落、27人が死亡し20人が負傷する大事故が起きた。ネット上では、この事故に人災だと怒りをぶつける声であふれた。

 なぜこのような事故が起きたかと言うと、現在中国では全国各地で部分的ロックダウンと「静態管理」と呼ばれるゼロコロナ政策が展開されており、それに伴う市民の強制隔離が夜中に闇に紛れて行われるケースが多いからだ。

 運転手も乗員も白いガサガサした動きにくい防護服を着せられて、何時間もバスを走らせて、遠方の山奥に陽性者や感染の可能性がある市民を隔離する。運転手は息苦しくて視野の狭い防護服を着たまま、街灯もない山道を猛スピードで運転するし、乗客の市民も防護服で息苦しい。バスは満員で子供も老人も妊婦もいるわけだし、どこに連れていかれるかわからないから、車内は不安と怒りで怒号や悲鳴があふれる。運転手も焦るだろうし、事故は起こるべくして起きたといえる。

 ネットでこの隔離バス(事故を起こしていない車両)の中の様子の動画が流れているが、市民が「バスから降ろせ」とものすごい剣幕で騒いでいる。市民が悪いのではない。いきなり夜中に強制隔離され、トイレ休憩もなく、何時間もバスでどこか知らないところに連れていかれようとすれば、私でも騒ぐだろう。

 事故を起こしたバスは、貴陽市から黔南州茘波県の隔離ホテルに向かうため、9月18日午前零時に出発した。事故は午前2時40分ごろだという。貴陽から東南へ約170キロの地点で、山中の高速道路から谷に転がり落ちたそうだ。20人が病院に搬送されて治療を受けているという。おそらくすぐには救助も来なかっただろう。

 ちなみに隔離された市民は陽性者ではない。地域に1人、濃厚接触者が出た、ということでコミュニティの住民全員の隔離措置をとったのだ。貴陽の人間をわざわざ黔南州まで連れて行くのは、おそらく強制収容者が多すぎて貴陽の施設がいっぱいだったからか。』
『だが、貴州省の感染者はいったい何人なのか。9月20日現在で350人だ。1日の新規感染者は41人で、死者は2人。ほとんどが無症状。ちなみに、中国全体では、感染者は98.3万人で死者は5226人である。

新疆、チベットでの新たな民族弾圧

 もっと悲劇的なのは新疆やチベットのゼロコロナ政策だ。

 新疆ウイグル自治区のイリでは、すでにロックダウン50日目を過ぎている。住民は自宅から外に出ることができない。そして、他の漢族の都市と違い、日ごろからウイグル人市民に対して厳しい弾圧を加えている当局は、自宅に閉じ込められた市民たちに十分なケアをしていない。食糧や医薬品をほとんど支給しない地域もある。このため少なからぬ市民が餓死しているようだ。あるいは餓えの苦しさ、辛さに耐えられず自殺する人もいるという。

 イリでは7月末からロックダウンが開始された。9月上旬に漏れ伝わってくる動画やSNSの声を総合すると、すでに数十人の餓死者がでているようだ。また数百人が病院で医療が受けられないために死亡したという。

 もちろん、この数字の裏は取れていない。だが公式には、新疆で確認された新たな感染者はこの1週間で1人。感染者合計は9月20日時点で1168人で、死者は3人だ。イリ市民のSNS投稿の中には、食べる者がないから庭の木の葉でスープを作っているといった話もある。1歳5カ月のわが子が病気になっても病院に行かせてもらえず亡くなったという話も投稿されていた。』

『新疆ではウイグル人の強制収容問題や弾圧が国際社会でも問題視されたが、このイリの今の状況は、新型コロナ防疫の名を借りた新たな民族弾圧ではないか、と疑われるくらいひどい。

 この仕打ちは、イリは人口の半分がウイグル人とカザフ人が占める北部都市で、第2次東トルキスタン共和国の拠点の1つであり、中国政府がトルキスタン独立勢力の動きを最も警戒する地域だからではないか。

 チベット自治区のラサも1カ月以上ロックダウンが続く。ラサの人口は90万人で7割がチベット人。連日、多くのチベット市民が深夜の闇に紛れてバスに詰め込まれて隔離施設に送りこまれている。

 チベット人女性が微博でこう訴える。PCR検査では陰性だったが、集中隔離施設に連行されることになった。未完成のコンクリート打ち放しの部屋に男友達ら4人が一緒に収容され、トイレも使えない。食べ物もトイレットペーパーも生理用品もない。惨状を訴えると、管理当局者が彼女を殴った。その傷をSNSでアップすると、当局者から削除命令がきた。だが、彼女は削除を拒否したという。

 今年(2022年)は上海、西安、成都、重慶などの一級、二級の大都市でも厳しいゼロコロナ政策の洗礼を受けているが、これら都市では、抗議活動や時に官民衝突に発展するようなデモが頻発していると聞く。だが少数民族地域で漢族と同様の抗議活動をすれば、テロとして弾圧される可能性もあり、抗議の声は上げにくい状態だと推察される。』

『長老たちを軟禁状態にするため?

 しかし、中国はどうしていまだにゼロコロナ政策から抜け出せないのだろう。世界的にみても中国の感染拡大はけっして深刻というほどではない。ましてやオミクロン株の重症化率は比較的低いのではないか。コロナで死ぬのではなくコロナ政策で殺される。苛政(かせい=民衆を苦しめる政治)は虎より猛し、いやコロナより猛し、だ。

 今ここに、チャイナウォッチャーの間に出回っている党内部筋からの「リーク」というのがある。私はこの手の「リーク」の信頼性は3割以下だと思っているので無視しようかと思ったが、友人のニューヨーク在住の華人評論家の陳破空も、このリークを受け取ったそうで、紹介していたので、ここでちょっと引用する。

 そのリークによれば、ゼロコロナ政策の目的は防疫ではなく、党大会前に習近平が政敵、特に力のある長老たちに、会議に出たり発言したりできないように自宅に足止めさせるため、いわゆる軟禁状態にするためだ、というのだ。

 その「リーク」は、ゼロコロナ政策に関する方針についての共産党内の内部通達と、リーク者である党内人士の反応からなる。およそ9項目ある。その概要を列挙してみよう。

(1)目的は防疫を口実に政治老人(長老、引退指導者)約50人を軟禁すること。外出、会議、集会への出席を阻止する。

(2)感染状況がなくても感染状況を作り出せ。PCR検査を継続し、別動隊によって感染を拡大せよ。

『(3)言論を封鎖せよ。感染状況は深刻でない、ウイルスは大して怖くないなどの言論、WHOのテドロス事務局長の「コロナ感染拡大が間もなく終息する」といった発言なども抑え込め。

(4)西安、上海、重慶、成都、貴陽、ウルムチ、ラサなどでは、感染状況を作り出し、ゼロコロナ政策、ロックダウンを徹底せよ。

(5)党大会で習近平が連任したのち、ゼロコロナ政策の大勝利を宣言する。そこでゼロコロナ政策を終わらせ、人心を買い、習近平の英明のおかげだと、党に感謝させよ。

(6)ゼロコロナ終結の期日は最も早くて10月20日、最も遅くて来年3月の全人代後。

(7)北戴河会議では、政治老人たちをコロナから守る名目で参加せさない。

(8)李克強は、ゼロコロナに対し怒り心頭だが、内部会議の守秘義務の原則によって、対外的には発言していない。

(9)党内では、党と国家が最も危険な時期を迎えているとびくびくしている。どのように党と国家を救えばよいか分からない。』

『105歳の大長老が異例の改革開放アピール

 裏も取れていない話で、鵜呑みにできるものではないが、多くの市民が、今中国が直面しているゼロコロナ政策の本当の目的は、防疫や人民の健康を守るためのものではなく、経済の悪化や社会の不安定化に対して不満をもつ人民が党大会前に騒ぎ出さないようにコントロールする口実ではないか、と疑っているのも確かだ。

 なので、感染状況をわざと作り出し、全国的に人の動きを管理し、ラサやイリなど要注意地域では長期のロックダウンを実施し、党内の反習近平派や長老たちの動きも、コロナ感染予防のため、といって会議や集会への欠席を促して、その発言を封じ込めようとしている、というのは妙に納得のいく話なのだ。

 老い先短い長老は怖いもの知らずで、習近平に対して面と向かって苦言する。江沢民、曽慶紅、朱鎔基、胡錦涛、温家宝はじめ長老のほとんどが、今の習近平の反鄧小平路線・毛沢東回帰路線に反対だ。

 105歳の大長老で、習近平を総書記に推した1人であり、歴代の総書記選びで強い発言権を持ってきた共産党のキングメーカーこと宋平(元政治局常務委員)が9月12日、珍しく公の場にオンラインで出席し、「改革開放は中国の発展に必要な道だ」と強く訴えた。ネット上に流れたこの短い動画はすぐに削除されたという。

 会議は江蘇省の奨学金の基金会の10周年記念のイベントだったが、そんな地方のイベントに宋平が105歳の高齢にかかわらずビデオ出演し、改革開放を訴えること自体が異様な印象を与えた。

 もし、このリークが本物なら、コロナのせいで発言の機会を奪われている長老たちの不満を代弁する形で、105歳のキングメーカーが高齢をおして出てきたということだ。

 陳破空は、この徹底したゼロコロナ政策は、習近平の穏形文革、あるいは穏形政変、つまり目に見えない「インビジブル」な文革、あるいは政変ではないか、という。政変というと、習近平から権力の座を奪おうとする軍のクーデターや反習近平派官僚による宮廷内クーデターをイメージするが、本来、鄧小平の打ち立てた集団指導体制と任期を2期に制限した平和的な権力禅譲システムを破壊して、独裁的権力を打ち立てようとする習近平の方が政変を起こそうとしているのだ、という見方だ。

 では、この政変が成功し、習近平が個人独裁体制を打ち立てた時、今度はビジブルな、目に見える文革が発動するのだろうか。中国が直面しつつあるこの政治的危機をどうやって回避することができるのか、私も想像がつかない。』

途上国から見ればウィンウィンではなかった一帯一路、軌道修正が始まった

途上国から見ればウィンウィンではなかった一帯一路、軌道修正が始まった
多くは中国による「無用の長物」の押しつけ、巨大債務に喘ぐ途上国
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69646

『(塚田 俊三:立命館アジア太平洋大学客員教授)

 ソビエト連邦時代、KGBの一幹部*1であったプーチンは、その後、国民的人気を誇るロシアの大統領となった。そのプーチンは現在、彼自身の最後の野望を実現すべく、ウクライナ侵攻という途轍もない実験を開始した。陸海空からの、容赦ない、無差別な軍事攻撃は国際社会から轟々たる非難を招き、プーチンは今や国際社会から完全に孤立してしまった。

 これが東洋の、権力闘争に熟達した指導者であれば、同じ夢を追うにしても、もっと巧みにことを進めていたであろう。それは、数千年前の昔からその国で採られてきた兵法に従い、深く、静かに潜行し、時が来れば立ち上がるとする戦法だ。

 これはプーチンが採ってきたような荒々しく、むき出しの攻撃とは対照的に、相手国を必要以上に警戒させることなく、しかもより深く侵入することを可能とする“トロイの木馬”方式である。

 そして、この東洋の指導者は、すでにシルクロードからの風を受けて、自らの夢の実現に挑み始めている。ただ、その全貌は、ときに別の衣をまとっていることもあり、外からは見え難いが、開始から数年を経過した今、その真の姿が明らかになりつつある。そこで本稿では、この問題を取り上げ、必要な分析を試みたい。

*1 Lieutenant colonel. Lieutenant colonel は米国等ではthree star officer であるが、ロシアではtwo star officer

欧米諸国による一帯一路への対抗策の策定
 言うまでもなく、ここに言う夢とは、習近平国家主席が手掛ける一帯一路構想であるが、欧米諸国は、同構想の途上国への急速な浸透を懸念して昨年相次いで一帯一路に対する対抗策を打ち出した。その先駆けとなったのは、米国の「Build-Back-Better World」構想で、バイデン大統領は、昨年6月12日、G7の場でこの構想を発表した。次いで、英国は11月1日に「Clean Green Initiative」を、そしてEUは12月1日に「Global Gateway」を発表した。

 これらの対抗策は、表現にこそ多少の違いはあれ、その狙いとするところは皆同じで、(i)普遍的価値の追求と(ii)高品質で透明なインフラの整備を挙げている。バイデン大統領は、これらのイニシアティブは、G7諸国が、強調して策定したものであるとして、その意義を強調した。』

『一帯一路は、それが実施に移されてからすでに十年に近い年月を経ているが、ここに来て、G7諸国がこぞって対抗策を打ち出すこととしたのは何故だろうか。

 これを打ち出したのが、米中対立の最中にある米国だけであれば何ら驚くに足らないが、これまで一帯一路に深く係わってきたEUまでもが(EUはその加盟国の3分の2がすでに一帯一路の正式パートナーとなっている)一体となって同様の対抗策を打ち出すこととした背景には、何か共通の認識があったからなのであろうか。

 本稿においては、この問いに答えるべく、これまでの一帯一路の展開の経緯、その特殊性、さらには、その問題性を分析し、一帯一路の隠された狙いを明らかにしたい。

一帯一路までの経緯
 一帯一路が発表されたのは、今から約10年前、すなわち2013年であるが、それは全く新しい施策としてというよりは、2001年来進められてきた対外展開政策の延長線上に策定されたものであり、これに明確なフレームワークを付し、新たなブランド名を付けて、打ち出されたものにすぎない。

 ただ、それは習近平主席の肝入りで打ち出されたことから、それまでの中国企業の海外進出施策とは次元を異にし、国家戦略上より高次のプログラムとして位置付けられた(2017年に開催された第19回共産党大会において一帯一路は党の最高令である党規約に盛り込まれた)。

 そこで中国の海外展開政策の変遷を少しさかのぼってみてみると、1990年代までは、同政策は基本的には、国内志向型であり、外国資本の国内誘致が中心であった。

 これが、2001年のWTO加盟後は、一転して中国企業が海外市場に出、外貨を稼ぐことを奨励する「走出去」に変わった。それは、今まで厳しく制限されていた中国の国営企業にその海外進出を認めるものであり、その意味で画期的な決断であった。

 さらに2008年の世界金融危機後は「走進去」の下、政府は中国企業の海外市場への進出を積極的に推奨し、中国国営企業は海外市場で大いに稼ぐべきとされた。

 次いで、2012年には、中国企業は(特に規模の大きい国営企業は)、世界のトップを目指すべしとする「走上去」が打ち出され、企業の海外進出に一段と拍車がかかった。

 このように中国の国営企業の海外進出政策は、段階的に強化され、ついには「海外事業をこれら国営企業の中心的な収益事業とすべし」とするところにまで進んだ*2 。

 あえて言うならば、長らく厳しい国家統制のもとにあった国営企業が、ワイルド・ウエストに解き放たれ、西部の荒野で荒稼ぎして良しとする政府のお墨付きを得たに等しく、国営企業は、海外市場では、稼げるところでは派手に稼ぐとするカウボーイ・ビジネスを身につけていったと言えよう。

*2 李立栄(2021), “中国金融の海外展開の新局面”、世界経済評論、3・4月号』

『一帯一路、その特殊性

 上記でみた通り、国営企業が海外で手掛けるインフラ事業は、中国政府の周到な指導の下に進められてきたことから、ともすれば、それは、中国の経済協力の一端をなすと解されがちであるが、それは、以下にみる通り、OECD諸国が進める通常の経済協力とは大きく異なる。

 通常の経済協力であれば、支援対象プロジェクトは両国の援助機関同士の協議を通じて決められるが、一帯一路下の場合、プロジェクトの発掘は、中国の国営企業が自ら行い、当該企業がこれを途上国側に提案し、その合意が得られれば、実施するとする企業主体の経済活動である。

 国営企業の海外事業は、中国では“対外経済合作”と呼ばれているが、それは途上国に対する経済協力事業というよりは、むしろ、外国政府あるいは国際機関からの支払いを受けて行う商業的請負事業である。この点は、中国の統計上も国営企業に拠る海外事業は、“対外支援”とは分類されず、“対外経済合作”として分類されていることからも分かる。

 このように国営企業が海外で行うインフラ開発事業は、あくまでも採算ベースの請負事業であるので、途上国側からの支払いがなければ着手されない。他方、途上国は、通常インフラ工事に必要とされるような多額の資金は持ち合わせていないので、(それが如何に魅力ある提案であっても)発注には出しえない。この点は、国営企業も十分に承知しており、「資金が必要であれば、アレンジしましょう」と申し出、そこで途上国側が「頼む」と言えば、当該国営企業は、すぐさま現地大使館(経済商務処)と連絡を取り、商務部を通じ、中国の国有銀行に話が繋がれ、融資が実現することとなる。

 言い換えれば、一帯一路は、国営企業と国有銀行とが、二人三脚となって進める中国特有の海外インフラ・ビジネスであるといえよう。』

『一帯一路が内包する問題点

 このように、一帯一路下で進められるインフラ開発は、途上国における企業主体の商業的活動であるので、どうしても儲け主義に走りがちであり、このため、現地で種々の問題を引き起こすことになる。その主な問題点を列記すると以下の通りである。

【高コスト】:一般に中国企業が提案するプロジェクトは低コストであると解されているが、実は逆で、高コストのプロジェクトが多い。

 例えばケニアの鉄道プロジェクトは、通常価格よりも3倍も高いといわれており、モルディブの首都マリに建設された病院は、通常価格の2.6倍であったといわれている。これ程大幅な価格アップではないとしても、3~4割高めのプロジェクトはざらにある。例えば、マレーシアの東海岸鉄道プロジェクトは、いったんは前政権の下で調印されたものの、新しく選ばれたマハティール首相は、プロジェクト・コストが高すぎるとし、再交渉に持ち込み、当初の見積価格を3割3分引き下げることに成功した。パキスタンでも、政府はML-1鉄道のコスト見積もりは高すぎるとして、再交渉に持ち込み、当初見積価格を2割6分引き下げた。

 どうして、一帯一路の下では高めのコスト設定が可能なのかというと、それは中国からのローンはタイド(ひも付き)であり、また通常の経済協力案件のように国際競争入札に掛ける必要がないので、中国企業は他社の応札価格を気にすることなく、必要と見込まれる費用はすべて盛り込んで請負価格を設定することができるからである。

 さらに、施工段階に入ってからも、請負企業は、正当な理由がありさえすれば、当初の契約価格の更改を求めることができ、このような形でのコストアップも珍しくない。

【中国基準の押し付け】:中国の国営企業が一帯一路の下で受注する請負契約は、一種の「Turn-key契約」(設計から建設及び試運転までの全業務を単一のコントラクターが一括して請け負い、キーを回しさえすれば稼働できる状態で発注者に引き渡す契約)、あるいは「Engineering, Procurement, and Construction契約」(設計エンジニアリング、調達、建設を一括して請負う契約)である。その下ではコントラクターは、基本設計から詳細設計、建設、引き渡しに至るまですべて自分でコントロールできるので、請負企業は、自国で慣れ親しんだやり方で工事を進め、自国で製造される資機材をそのまま現地に持ち込んで、迅速に建設できるように詳細設計を書き上げることができる。

 これが通常の経済協力案件であれば、先ずコンサルタントが選定され、そこが基本設計、予備設計等を実施し、プロジェクトの詳細が決まると、建設業者・コントラクターが別途雇用され、コンサルタントが先に準備した予備設計に基づき、工事を実施するとする二段階方式が採られる。だが一帯一路の下では、中国の国営企業がこの両方の段階を一括して引き受け、プロジェクトの発掘から設計、建設、引き渡しまで一気通貫で行うので、自由度が高い。このため、プロジェクトの迅速なデリバリーは可能となるが、工事の施工は、事業者寄りの、効率一点張りのものとなり、途上国側の希望は反映されないものになりがちである。

 実際、一帯一路下でのプロジェクトは、そのほとんどすべてが中国の基準に従って設計されており、そこで使われる資機材もほとんど中国製である。

 例えば、インドネシアのバンドン・ジャカルタ間の高速鉄道プロジェクトでは、高速鉄道車両は勿論、通信システムからレールに至るまで、すべて中国で製造され、それがインドネシアに運ばれ、現地で組み立てられる形を取った。調達価格も比較的自由に設定できるので、そこに、不透明な費用(tea moneyやpalm greasing)も潜り込ませることもでき、それが後々プロジェクトの“円滑な実施”に役立つことがある。』

『利益を生まず巨額の維持費を垂れ流し続ける「ホワイト・エレファント」
【ホワイト・エレファント】:先に述べた通り、国営企業は政府が掲げる「走進去」、「走先去」の下、海外事業の拡大に走ろうとするが、これに熱心なあまり、途上国の債務負担能力とは無関係に出来るだけ大きなプロジェクトを作り上げ、これを途上国に提示し、自己の売り上げを増やそうとすることが多い。

 例えば、ラオスのような低所得国に対し、急峻な山岳地帯を突き抜ける高規格の高速鉄道をつくることは(その総延長の6割はトンネルか橋梁にせざるを得ず、途轍もないコストが掛かることは目に見えている)、自己のエンジニアリング能力の高さを誇示するだけの提案であり、ラオスの経済規模からみて(このプロジェクトの総コストはラオスのGDPの4割に達する)、到底正当化されうるものではない。

 プロジェクトが完成すればするで、巨額の維持運営費がかかるので、とんでもないホワイト・エレファント(無用の長物)を背負わされてしまうことになる。

昨年12月に開通した中国・昆明とラオスのビエンチャンを結ぶ高速鉄道。このような急峻な地形を走る高速鉄道の建設には現在のラオスの国力に見合わない莫大な費用がかかった(写真:新華社/アフロ)
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【高い借入コスト】:これらの肥大化されたプロジェクトの費用を(当初の提示価格のみならず、正当な理由によるコストアップ部分も含めて)負担させられるのは(中国の国営企業ではなく)工事の発注元である途上国である。

 もちろん途上国側もこのような多額の費用を負担させられることは望まず、契約書にサインすることには躊躇するが、もしもそこに(通常は確保が難しい)必要資金をすぐさま貸してくれる銀行があり、また借入金の返済が始まるのも数年先のこととなるのであれば(長期資金の借入には通常5年程度のgrace periodが付く)、ついついこの銀行からお金を借りてしまう。

 これら資金の貸し手が、世銀、ADB等であれば、問題はさして大きくないが(世銀、ADBの貸付金利は1%程度。そもそも世銀、ADBがこのような返済の見込みのないプロジェクトにお金を貸してくれる訳はないが)、それが中国の国有銀行の場合は、その貸付金利は高く(譲渡性の高い融資を行うとされる中国輸出入銀行ですら2%台、ましてや、その4倍程度の融資実績を誇る中国開発銀行から借り入れた場合は6%台)、後々多額の返済義務を抱えることになる。』

『途上国側も蓋をし続けたい不透明契約
【不透明な契約条項】:中国との契約は、多くの秘密条項を含んでいる。例えば、途上国がデフォルトを起した場合、債務の肩代わりに天然資源の掘削権あるいは不動産開発権を中国企業に譲渡しなければならない、とする条項が含まれていることは稀ではない。

資源の採掘権を外国に明け渡してしまうことには国民の反対が強く、その反対を受けて政府は中国と解約交渉に入らざるを得なくなることが多いが、いざ解約しようとすると、その際に課されるペナルティーの額が非常に高く設定されていたことが分かり、結局は契約解除を諦めざるを得なくなるのだ。

 解約とまではいかなくとも、契約の内容が不当であるとして、投資紛争に持ち込むことはできるが、いざ投資紛争に持ち込もうとすると、今度は「仲裁は中国国内で、しかも中国の手続きに従って行わなければならない」とする契約条項が効いてきて、結局は勝ち目はないことが分かり、諦めてしまうことになるのだ。

 一帯一路下のプロジェクトにはこのような一方的な内容の契約条項が数多く含まれており、その契約は原則外部秘となっている。

 実はこれらの契約を外部秘とすることを望むのは、むしろ途上国側という皮肉な実態もそこにはある。これらの秘密条項が明らかになれば、真っ先に批判されるのはこのような契約にサインした当の政権であるからだ。

【地域社会との軋轢】:一帯一路に係る問題は、このような経済的問題に留まらず、社会的な問題にも及ぶ。プロジェクトが始まれば、多くの雇用機会が生まれると現地から期待されることが多いが、対外経済合作には、対外労務提供も含まれており、現地が期待するほどの雇用を生まないだけではなく、逆に中国から労働者が大挙して入ってくることになる(最近のプロジェクトでは、現地の労働者を使うものが増えてきてはいるが)。

 これらの労働者はプロジェクト終了後も(現地での婚約等を通じ)そのまま居着くことがあり、その多くが、現地で小売業を始め、現地の小売業界に少なからぬ影響を与えることがある。

 例えば、太平洋諸島の一国であるマーシャル諸島では、小売業の6割が、中国人一世または二世によって運営されていると言われている。一帯一路は、時の政権からは歓迎されるが、一般庶民からは強く反発される所以である。』

『以上、一帯一路が途上国でどのような問題を起こしているかを、典型的な事例に即してみてきたが、中国側は、一貫して、一帯一路は中国と途上国の双方にウィンウィンをもたらすとして、その意義を強調してきたが、実際上は、それは、(i)中国の国営企業にとっては請負事業増大の機会を*3、(ii)資機材のサプライヤーにとってはその資機材の輸出増の機会を 、(iii)国有銀行にとっては貸出増の機会を付与し、中国側には二重、三重の利益をもたらすものとなる一方、途上国にとっては益するところが少ない。そこでの「ウィン」は全て中国に帰属すると言って過言ではない。

 他方、途上国にとっては、「自力では作れないインフラを中国の支援のお陰で手に入れることができるのだから、それは途上国にとってもウィンではないか」とする反論がありうるが、もしも、当該インフラの規模が適切で、途上国が自力で維持管理できるものであればそうとも言えよう。だが、その施設が過大で、必要以上に立派なものであれば、当該施設は、完成後、収益どころか、累積赤字を生むだけのものとなり、それは途上国にとってはルーズ(lose、負け)でしかない。加えて、後々巨額の返済義務が残るのであれば、それはウィンウィンどころの話ではなく、途上国にとってはまさにルーズ・ルーズとなる。

 そしてたいがいの場合は、そのようになっている。

*3 当初から予想されている資機材の購入金額は、すでに請負契約の金額に含まれているため、この分は差し引いて考える必要があるが、施工期間中に発生するコストオーバーランに係る部分は貿易額の純増となる。

ついに軌道修正が
 一帯一路は、2013年に導入されて以来、急速に広まっていったが、実はその投資額は2016年をピークに、2017年から減少に転じている。これは一つには一帯一路の当初の目的であった「国内の余剰生産力のはけ口」としての役割が一巡したことにもよるが、それだけではなく、上記でのべたような問題点が徐々に噴出し始め、受入国側で一帯一路に対する警戒感が高まってきたことにもよる。

 このような問題事案の存在は、現地の状況に日々接する大使館・外務部においては既に認識されていたところであるが、これら外務部の認識・懸念は、政府部内で圧倒的な力を有する(一帯一路の主務官庁である)商務部の前にはかき消され、政府全体の意見とはならなかった。

 しかし、このような現地での問題は、党中枢の耳にも入り始め、一帯一路の進め方について見直しが行われ、党幹部が主宰する一帯一路建設工作指導小組からの指示もあり、2018年4月に、これまで商務部中心に進められてきた一帯一路の推進体制は大幅に改革され、国務院に新しく「国家国際発展協力署」が設置されることになった。同協力署には、それまで商務部内に置かれていた対外投資経済協力司が移管され、その運営は国家発展改革委員会が主導し、商務部、外務部がこれに参加する形となり、政府部内で外務部の声がより強く反映されるようになったのだった。』

『党本部から発せられる指導方針にも変化がみられた。2018年8月に開催された“一帯一路建設工作5周年座談会”において習近平主席は「一帯一路を質の高い発展の方向に変化させる必要性」があると述べ、さらに、2019年4月に開催された第2回「一帯一路国際協力ハイレベルフォーラム」においては、同主席は「国際スタンダード」を尊重することの重要性に言及するとともに、「一帯一路上のプロジェクトは、商業財政上の持続可能性を確保」したものとすべしであると述べた。これを受け、一帯一路案件に対する政府の審査は各段に強化され、その選定はより厳格なものとなった。

 同時に、投資先の分野も、従来からのハードウエア中心から、情報通信技術を始めとするソフトウエアも含めた、より広範なものへと変わっていった。また、情報通信関連技術は民間企業が多くを有することから、一帯一路への民間企業の参入も促された。さらに、一帯一路の支援対象は面的な広がりもみせ、“境外経済貿易合作区”の設置やスマートシティーの建設が打ち出された。これらの面的支援の拡充は、一時的な建設労働者に限らず、より幅の広い分野の要員の海外移転を促すことになり、それは現地での人的ネットワークの強化に繋がり、後々別の機能を果たすことになる。

裏に隠された地政学的な意図
 冒頭、欧米諸国が昨年相次いで一帯一路に対する対抗策を打ち出すこととしたのは、何故なのか、という問いを投げかけたが、もしも、中国政府が、一帯一路の問題点を認識し、これら問題を解決すべく、必要な改革に着手したのであれば、今暫くその推移を見守るべきで、今の段階であえて対決姿勢を打ち出す必要はなかったのではなかろうかとの見方もある。

 にもかかわらず、欧米諸国が、あえて、この段階で、強硬な姿勢を採ることとしたのは、何といっても、一帯一路が途上国で引き起こしている問題が欧米諸国の基本的価値観に抵触し、これ以上看過しえないとみたからであると思われる。

 だが、それだけでは、欧米諸国は、これ程強硬な措置を取らなかったと考えられるが、あえてかかる措置を、しかも、G7諸国が一体となって取ることとしたのは、一帯一路の裏に隠されてた中国の地政学的な意図を見て取ったからであると推測される。

 次回(明日掲載予定)は、この点を掘り下げてみてゆくこととする。

*【後編】はこちら
一帯一路下で整備された途上国の港湾施設は「中国軍事基地」の隠れ蓑
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69647

もっと知りたい!続けてお読みください

一帯一路下で整備された途上国の港湾施設は「中国軍事基地」の隠れ蓑
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69647 』

一帯一路に邁進の中国、アフリカ17カ国に提示した「債務免除」の狙いは何か

一帯一路に邁進の中国、アフリカ17カ国に提示した「債務免除」の狙いは何か
最貧国に差し伸べた救済の手か?あるいは高次の戦略に基づく懐柔策なのか?
2022.9.22(木)
塚田 俊三
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71917

『(塚田俊三:立命館アジア太平洋大学客員教授)

 中国の一帯一路は、2013年以来、世界のインフラ市場を席巻してきた。それは、あたかも国有企業を先兵として途上国に送り込み、そのコントラクターとしての戦場での戦いを、後方から国営銀行が支援するかのような連携プレーのなせる業であったといえよう。

 当初、一帯一路は多方面から歓迎されたが、プログラムが進むにつれて、綻びが出始めた。特に問題となったのは、債務の返済である。

「支払期限がきた無利子貸し出し、返済は一切無用」

 中国の国有企業は、できるだけ大きく稼ぐためにプロジェクトを膨らませて提示することが多く、これに伴う途上国の借入金も巨額となった。このため、数年もすると債務の返済に窮する国が続出した。

 深刻な債務危機に直面した途上国は、中国に対し、債務の削減を求めたが、中国側はこれには頑として応ぜず、債務の軽減を図るどころか、むしろ、プロジェクト資産の差し押さえ、さらには、債務の返済に代わる地下資源の譲渡を求めた。

 このような経緯があったことから、「中国の債務の取り立ては厳しい」という評判が途上国の間で広まっていった。

 そうした認識が途上国で共有され始めた中、先月8月18日、中国の王毅外相は、突如アフリカの17カ国に対し、「支払期限がきた23件の無利子貸し付けについては、その債務の返済を一切求めない」と切り出したのだ。

 この発表は、ほかでもない中国が行い、しかもその総額が100億ドルにも達するものであったことから、世界の注目を浴びた。

 債務の減免にはこれまで頑なな態度をとってきた中国が、何故にかくも寛大な施策をとることとしたのであろうか? そこには、何か隠された意図があったのであろうか? あるいは、それは単に、今や世界のスーパーパワーとしての地位を確立した中国は、世界のリーダーとしての責任を自覚し、それに相応しい振舞いを取り始めたということであろうか? 本稿においては、これらの問題を、中国の対外政策において中心的な役割を果たす一帯一路の変遷との関係から見ていきたい。』

『一帯一路の「構造」

 一帯一路は、その導入以来すでに10年を経るが、その性格は徐々に変化してきた。

 当初の狙いは、過剰な生産能力を抱えていた中国国営企業にそのはけ口を海外市場で与え、その活性化を図ることであった。これを受けて国営企業は、大挙して途上国のインフラ市場に乗り込み、手当たり次第にプロジェクトを見つけ、形だけは取り繕い(フィージビリティあり、環境問題無しとしとする等)、これを請負事業として途上国に売り込んでいった。

 その手法は、非援助型の対外経済協力とされる“対外経済合作”によるものであり、具体的には、中国企業が、自らプロジェクトを発掘し、これを基本設計から、建設、引き渡しに至るまで一括して引き受け、完成次第これを途上国に引き渡すとするものであり、その契約上の性格は、中国企業が海外からの発注を受けて行う請負事業である。

ケニアの首都ナイロビと第二の人口を擁する港湾都市モンバサを結ぶ長距離鉄道も中国の一帯一路によって建設され、2017年5月末に開業した。プロジェクトは予定より早く3年半で完成したが、そのコストは類似プロジェクトの3倍となった(写真:AP/アフロ)

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 通常、先進国が実施する経済協力であれば、フィージビリティ・スタディー(S/F)、環境影響評価(EIA)、基本設計等は第三者が実施し、その枠組みの下で、別の事業者がこれを施工するという手筈となるが、中国の対外経済合作では、こういった二段階手続きは踏まず、国営企業がそのすべてを一括して実施する。言い換えれば、S/FやEIA、さらには、基本設計はすべて中国企業が自ら行うので、その内容は自分に都合のいいように決められる(例えば、上記写真キャプションで述べたケニアの長距離鉄道は国立公園(Nairobi National Park)内を通過するが*1、このような路線の建設は、通常の環境影響評価では決して認められないにもかかわらず、中国企業が実施したEIAではこれを良しとした)。

*1 New York Times, August 7, 2022 “Jewel in Corruption – The troubles of Kenya’s China-funded rails”

 中国企業は、この利点を活かし、プロジェクトのサイズを必要以上に膨らましたり、時間のかかる環境対策を省いたりすることができるし、さらには、発注者の要望に応じ、完工時期を早めたり(例えば、次期選挙までに完成させるとか)、建設以外の目的に使用する曖昧な資金を浮かせたりすることもできる(例えば、次回の選挙資金向けとか)。

 途上国政権にとっては、中国企業が提案するプロジェクトは、面倒な調達手続きを要せず、工期も短く、すべて丸抱えでやってもらえるので大変ありがたく、また、いろいろ“お土産”も付いてくるので、できることなら中国企業に発注したいと考える。』

『だが、中国企業のプロジェクトはあくまでも請負ベースで行われるので、その資金を準備しなければ何も始まらない。他方、途上国は、インフラ整備に必要な多額の資金は持ち合わせていない。そこでその旨を中国企業側に伝えると、当該国有企業はすぐに動き、現地大使館に話を繋ぐ。現地大使館には商務部担当のアタッシェが駐在しており、そこから話が本国の商務部に上がり、適切な国営銀行が選ばれることになる(我が国の大使館と違うのは*2、中国はこの現地での相互連携が極めてスムースに行われるということである)。

*2 我が国大使館は、特定の企業をサポートしているとみられることを避けるため、すべてに慎重。

 途上国は、そのインフラ整備を一帯一路の枠組みの中で行うと、資金調達に関して中国の銀行を使う以外の選択肢はなく、またそのローンはタイド(ひも付き)であるという難点はある。だが、もしも世銀やアジア開発銀行(ADB)から借りると、詳細で時間のかかる審査を経る必要があり、加えて厄介なコンディショナリティも付いてくるので、こういった点をすべて省いてくれる中国からの融資は魅力があり、結局はこれを使うことになるのである。

2018年9月、北京で開かれた中国・アフリカ協力フォーラムサミットに併せて、中央アフリカ共和国のトゥアデラ大統領と会見した習近平主席(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
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綻びが出始めた一帯一路

 中国の国有企業と国営銀行の二人三脚で進められる一帯一路は、発足当初は順調な滑り出しを見せたが、数年も経つと問題点がいろいろ出てきた。

 そもそも、一帯一路のプロジェクトは先に述べたように、拙速で準備されたものが多く、実施段階に入るとエンジニアリング上の問題が表面化し、設計の途中変更を余儀なくされ、大幅遅延やコストオーバーランを引き起こすものが増えたのだ。

 また、短期間でのデリバリー(受け渡し)を売り物にして現地政府の受注にこぎつけたこともあり、当該国有企業は、早期完工を目指し、地元対策などには目もくれず、効率優先でことを進める。だから技術者はもちろん、労働者も大量に中国本土から呼び込み、資機材に至ってはほとんど中国本土のものを使用し、現地ではこれを据え付けるだけといった具合で工事を進めた。

 このため、現地には十分な雇用機会をもたらさず、また、資材の現地調達もなかったことから、地域経済界との間で軋轢が生じたり、環境悪化問題等を契機に地域で反対運動が起きたりした事例もあった*3。College of William and Maryの2019年の調べによれば(AidData*4)、一帯一路プロジェクトの35%は、汚職、環境、地域との軋轢等から、実施不能または大幅遅延に陥ったとした。

*3 モンテネグロの高速道路プロジェクトは環境問題を引き起こし、地元の反対にあった。

*4 同大学が中国の165か国、13,427件のプロジェクト融資案件を対象に行った調査結果であり、2021年9月に発表された。』

『一帯一路は、金融面でも問題を起こした。中国の政策銀行からの借入れは必ずしも安くはなく、中国開発銀行から借り入れた場合はその金利は4.5-6%であり、譲渡性が高いといわれる中国輸出入銀行から借りた場合であっても、2-3%である。これら金利は、世銀、ADBや先進国の開発援助機関からの借り入れた場合の1%前後と較べるとかなり高い。

 このように中国からの借り入れ案件は、金額が大きいだけではなく、金利コストも嵩むので、途上国にのしかかる債務負担は重く、数年間の返済猶予期間が終わるや否や、半年毎の均等割賦返済に窮する途上国が多数出始めた。債務の弁済が滞った場合、その取り立ては厳しく、デフォルトに陥ると、中国国営企業はすぐさまプロジェクト資産の接収を開始したり、さらには債務の弁済に代わる地下資源の提供を途上国側に求めたりし、窮地に陥る国が見られた。

 このような厳しい債権回収のやり方をみていて、中国は、“意図的にプロジェクトのサイズを膨らませ、貸せるだけ貸し込んでおいて、途上国を返済不能に追い込み、その上で、途上国の資産や地下資源を取り上げることを最初から目論んでいたのだ”とみる向きすら出てきた(いわゆる“債務の罠”)。

世界中に広がった「債務の罠」に対する警戒感

 このように一帯一路はそれが開始されてから数年も経つと、それが内包していた問題が噴出し始め、これを見ていた現地政府は、プロジェクトの規模の縮小あるいは貸し付け条件の緩和を、さらには債務の棚上げを中国政府に求めた。しかし、中国政府は、最重要の国策機関である国営政策銀行が多額の不良債権を抱えるような事態は何としても避けたいと考え、途上国政府の要請には応じなかった。

 こうした中国の債務救済に対する姿勢は、世銀、IMFが中心となって進めた、Debt Service Suspension Initiative (DSSI)においても表れた。DSSIは、COVID-19の蔓延に伴う債務の増大に直面する最貧途上国に対し、G20諸国が協調してその債務返済義務を一時的に猶予するとするものであり、2020年5月に始まり、その後半年毎に延伸され、2021年12月まで続いた。

 その際に争点となったのは、債務の支払猶予の対象となる公的融資機関の範囲をどこまでとするかという議論であった。中国側は、この範囲を国家国際発展合作署と輸出入銀行に限定し、国営銀行である中国開発銀行は含めないとする立場をとった。世銀、IMFは、中国開発銀行の融資額が国家国際発展合作署や輸出入銀行のそれよりも遥かに大きいことから*5、DSSIの対象機関に中国開発銀行も含めるべきだと主張したが、中国政府は頑としてこれを受け付けなかったのだ。

*5 中国開発銀行の2013年から2018年までの年平均融資額は317億ドルで、輸出入銀行の2013年から2019年の年平均融資額は、217億ドルである。国家国際発展合作署については、それが提供する無利子融資の額は、これら国営銀行の融資額と比較すると遥かに少ない。』

『中国が債務の返済猶予を受け付けなかった理由

 何故に中国がこのような立場をとったのかを理解するためには、これら機関の性格の違いを知る必要がある。国家国際発展合作署は、2018年商務部の海外援助部門から独立して設置された政府機関であるが、それは商務部がそれまで所管してきた無利子融資業務を引き継ぎ、これを継続して実施することを主な業務とした。

 中国輸出入銀行は、途上国に対する中長期資金(15-20年)の提供を主たる業務とするが、その資金には、政府助成が入っていることからその金利は、市場金利よりは低く、2-3%である*6。

*6 輸出入銀行の資金は、次の二つの窓口のいずれかから提供されている。一つは途上国に対する直接融資であり、途上国のsovereign guaranteeの下に提供される。もう一つは、輸出金融の一環として提供されるbuyer creditであり、途上国の国有企業が中国の国営企業から調達する設計施工サービスの支払いに充てられる。

 他方、中国開発銀行は、輸出入銀行と同じく国営の政策銀行とはいえ、その運営は、独立採算制を旨としており、利益を上げることが想定されている。

 その資金はもっぱら内外の資本市場での債券発行により調達しており、このため、高い信用格付けを維持することは極めて重要であり*7、債務の据え置きといった財務状況の悪化につながるような処置を採る余裕は無いのである(ちなみに、中国政府内での中国開発銀行の地位は高く、それは、国務院直轄の機関であり、地位的には大臣レベルであり、他のいかなる大臣の指示も受けない。他方、輸出入銀行は、その業務は国家国際発展合作署の監督の下に行われており、副大臣レベルの機関である)。

*7 S&Pでは“A+ with stable outlook”とされている。

 このように中国開発銀行は、基本的には市場原理に沿って運用されており、業務に対する政府の関与はなく、この点で、他の二つの機関とは大きく異なっており、これが世銀、IMFの要求には応じ得ないとした理由である。』

『なぜ急に債務救済に踏み切ったのか

 ここで冒頭の問いに戻ろう。

 先に述べたとおり、中国の王毅外相は、本年8月18日、中国・アフリカ協力フォーラム閣僚級会議成果実施調整者会議をオンラインベースで開催し、突如、その場において、アフリカの最貧17カ国に対し、無利子融資案件で、2021年末までに弁済期限がきたものについて、債務の弁済をすべて免除すると述べた。

同大臣の発言では、これら17カ国がどこの国か、無利子案件は何かは、明らかにされなかったが、その総額は100億ドルに達すると述べたことから、大きな反響を呼んだ。これは、中国の対外支援政策が大きく変わったことを意味するのであろうか? あるいは、その背後に何か特別な思惑があったからなのであろうか?

 この問いに対する答えは、意外なほど単純である。今回の発表は、一見すると中国の経済支援政策の大きな変更に見えるが、実はそうではなく、従来からの路線を踏襲したに過ぎない。

 中国では、最貧国(low income countries)に対しては無利子融資を提供してきているが、無利子融資については政府機関(以前は商務部、現在は国家国際発展合作署)を通じて提供していることから、従来より、外交上必要とされれば、政府の判断で(二国間協議を通じてではあるが)、特定国に対し、債務の棚上げや帳消しを認めてきた(これが、銀行から提供されている対外経済協力資金である場合は、債務の帳消しは、当該銀行の財務状況の悪化に繋がるので、通常は実施されない。ただ、輸出入銀行の場合、例外的に貸し付け条件の見直し等が行われることはある)。』

『債務免除でも中国の「身銭」は切らず

 このように中国の債務の減免は皆無ではないが*8、今回の発表が、かくも大きな注目を浴びたのは、その債務免除額が大きく、また、かかる措置が各国との事前交渉なしに、しかも、17カ国もの多くの国を対象に一斉に行われたということである。

*8 中国は今回のみならず昨年もアフリカの最貧15カ国に対し、総額1億ドル強の債務救済を行ったが、その金額は今回の発表と較べると極めて小さい。このほか、コンゴ民主共和国に対しても、2021年、0.1億ドルの債務救済を行ったが、それはコンゴ民主共和国との個別交渉を通じて行ったものであった。

 同時にここで注目しておくべきなのは、今回の債務救済措置は、中国側が身銭を一切使うことなく、行われたということである。

 というのは、債務を帳消しにした場合、当然その穴埋めをするためのお金をどこかで見つけなければならないが、中国は、このための資金として、昨年、IMFから“棚ぼた”的に手に入れたSDR(特別引出権)を使うこととしたからである。

 IMFは昨年8月、すべての加盟国を対象に、その持ち分に応じた額のSDRの特別配給を行うことを決定したが、中国のIMFへの出資比率は6.07%であったことから、これに対応する395億ドル相当の特別配分を受けており、それは外為特別会計で眠っていた訳で、今回はそれを使用するというだけのことであるので、特段の痛みは伴わない。

 ただ中国が巧みなのは、上記の債務救済の発表を、日本が、世銀、UNDP、アフリカ連合委員会の協力を得て開催する第8回アフリカ開発会議(本年8月27日、28日の両日)の直前にぶつけてきたことである。』

『我が国としては、今回のアフリカ開発会議を通じて、何とか、援助額では日本をはるかに上回る中国に対して有効な対抗軸を形成したいと考えていた。種々検討した結果、編みだしたのは、中国からの債務漬けで困窮している国に対し、そこからの脱却を手助けするため、もしも、当該途上国が“中国からの融資を再検討”するのであれば、日本のODA資金を提供するという作戦であった。だが、中国は、その機先を制し、同開発会議の直前に外相会議を開催し、その場でアフリカ諸国に対する大幅な債務棚上げを打ち上げた。

 その10日後、我が国は、予定通り、アフリカ開発会議を開催し、法の支配、透明性の確保、国際基準の順守といったいつものきれいごとを並べ立てたが、こういった発言は、実利を重んずるアフリカ諸国にとっては、全く効き目がないだけでなく、むしろ耳障りに聞こえたであろう。

 この点、中国のように、アフリカ諸国に対し、何本の無利子融資を帳消し、その総額は幾らとするといった具体的な提言の方がはるかによく聞いてもらえたであろう。

強権国家陣営vs自由主義陣営、アフリカ諸国は前者に好意的

 実は、中国が今回このような施策を大々的に打ち上げたことの背景にはもう一つ理由がある。

 ご承知の通り、ウクライナ戦争以来、世界は、中国、ロシアを枢軸とする強権国家陣営と、G7諸国を中心とする自由主義陣営とが鋭く対立する構図となったが、世界にはその間で立場を明確にしないグレーゾーン国が多数存在する。ここ2、3カ月の間激しくなってきたのは、このグレーゾーン国に対する2陣営による綱引きであった。今回の中国の債務救済発言は、そのような政治的なコンテクストの中で行われたものであり、それは、明らかにこれらグレーゾーン国を強権国家側に引き寄せることを狙ったものであった。』

『自由主義陣営の目から見れば、同陣営が圧倒的な支持を得ていると考えがちであるが、途上国は我々が思うほど自由主義陣営に傾いていない。

 中国は、アフリカ諸国には、実質的な面で既に圧倒的な食い込みを見せており、それが故、中国のアフリカ諸国における評価は決して悪くはない。アフリカ全域をベースに世論調査を行っている調査機関、アフロバロメーターが、昨年アフリカ34カ国を対象として行った調査によれば、63%が中国を肯定的に評価し、米国のそれ(60%)や国連のそれ(57%)を上回ったとしている。ましてや、アフリカにおいては影の薄い日本は選択肢にも挙がっていない状況であった。

 また、ロシアも、アフリカには、かなりの食い込みを見せており、サハラ砂漠以南の地域では最大の武器供与国であり、また、アフリカの20カ国とは軍事協定を結んでいる*9。このほか、マリ、リビア等の国々に、ロシアの傭兵集団、ワグネル・グループ*10を送り込む等、様々な軍事支援を行っている。

*9 読売新聞8月29日号3面

*10 Wagner Groupは、2014年のクリミア半島侵攻以来その存在が明らかになった傭兵集団であり、プーチン大統領の私的軍事集団であるともいわれている。

より高次の世界戦略として位置づけられる一帯一路

 上記で述べた中国の対応は、一帯一路が新たな段階に入ったことを示している。一帯一路が打ち出されたのは、習近平が国家主席となった第一期(2013-2017年)の期間中であるが、そこでの重点は、国内経済のさらなる発展を促し、これを通じてその権力基盤を強化することにあった。具体的には、先にも述べたとおり、過剰な生産能力を抱える国有企業に対し、そのはけ口を与える、また、外の世界から隔絶した中国北西内陸部に対し中央アジア・欧州につながるland-bridgeを提供することであった。

 習近平政権も第二期(2018-2022年)に入り、その政権基盤が確立すると、同主席は、その思想を、特に歴史観を強く打ち出した*11。同主席は、中国がかつて西欧諸国に踏みにじられたという苦い記憶を踏まえ、“中華民族の偉大なる再興”を国家目標とし、今世紀半ばまでに、経済、政治、軍事のすべての面で世界覇権を確立するとした。

*11 習近平主席は、歴史を好み、また、歴史から学ぶことを重視する。

 勿論、かかる壮大な夢は一夕にして実現するものではなく、まず途上国においてその支配構造を固め、これを踏み台として、世界制覇に向かうとするのが、現実的な方策であろう。この意味で、途上国経済への侵攻を図る一帯一路は、かかる世界戦略を進めるうえで欠かすことのできない重要な布石として位置づけられた。』

『このような戦略の下、一帯一路の援助内容も変化を見せ始め、従来からの“箱もの”インフラ中心から、よりソフトで戦術的な内容のものにかわっていった。具体的には、監視社会実現に必要なデジタル技術の輸出(5G機器や監視カメラ等)、海底ケーブルの敷設等の通信網の整備、スマート・シティの建設、治安当局の能力開発等に重点が移っていった。

54カ国も国連加盟国があるアフリカに積極的に手を差し伸べる中国の意図

 さらに、この段階において明確になったのは、一帯一路が軍事戦略上の重要な手段として用いられるようになったということであり、これと関連したインフラ施設の整備に重点が置かれた。例えば、戦略上重要なシーレーン上にあるジブチ、パキスタン、スリランカ、カンボジア等の港湾への支援が強化され、これら港湾が中国艦隊の寄港可能港として使用できるように整備された*12。さらに、これら港湾に近接する地域に、国際空港の建設が提案され、海空両面からの軍事使用が可能な拠点の整備が目指された。

*12 バースの延伸、水深の増大、岸壁の耐荷重の強化等

 同時に、習近平国家主席は、将来の国際政治は、国連主導型で進められるべきだとの考えを有している。これは一見いかにも公平で民主的なアプローチにみえるが、それは国連加盟国の多くは、途上国であり、これら途上国を中国側に靡かせることは容易であるという打算に基づく提案である。

 だからこそ、中国は54カ国もの国連加盟国があるアフリカ地域に対する支援を強化してきたのであり(勿論、その主な狙いは、地下資源の確保ではあるが)、また、太平洋地域も、そこに15カ国もの主権国家が散在することから、同地域への進出を強化してきている。先に述べた、グレーゾーン国に対する綱引きも、このコンテクストの中でとらえるべきだろう。

 中国の世界制覇への動きは、習近平主席の第3期就任が確定した段階で、さらに加速し、より確固たるものとなり、これを阻もうとする勢力があれば、容赦なく打ちのめそうとするであろう。アジア近隣諸国における地政学的リスクが高まっている現在、我が国は、このような国を隣国に持っているのだということを片時も忘れるべきではなく、反撃力の不断の強化と防衛網の高度化を図ることが必要であろう。小さくとも、俊敏な反撃力を有するが故に、手ごわい相手とみなされるようになることが、我が国が取りうる唯一の有効な牽制策であると言えよう。』

[FT]エクアドル、中国と債務再編で合意 14億ドル軽減

[FT]エクアドル、中国と債務再編で合意 14億ドル軽減
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB214CE0R20C22A9000000/

『南米エクアドルは19日、複数の中国の銀行と債務再編で合意したと発表した。2025年まで14億ドル(約2000億円)相当の返済負担が軽減されるという。中国は金融危機に陥りそうな国の救済に力を入れるようになっている。
エクアドルのラソ大統領(6月、ロサンゼルスでの米州サミット)=ロイター

中道右派のギジェルモ・ラソ大統領が率いるエクアドル政府は中国国家開発銀行との14億ドル、中国輸出入銀行との18億ドル相当の融資契約について再編で合意したと明らかにした。返済期限が先送りされ、金利と償却の負担は軽くなる。

今回の合意で、25年までの返済額は国家開発銀行向けが7億4500万ドル超、輸出入銀行向けは約6億8000万ドル減額される。計約14億ドルの返済負担が除かれる。

エクアドル大統領府は「合意によれば、返済期限は国家開発銀行分が27年まで、輸出入銀行分は32年まで先送りになる。キャッシュフローを政府の優先課題に回すことが可能になる」と説明する。

エクアドル政府は2月から対中債務の再編を模索していた。07~17年に政権を担当した左派のコレア前大統領の時代からの10年間、中国はエクアドルにとって最も重要な金融パートナーであり続けた。
中国からの融資は計180億ドル

中国からの融資はコレア氏の大統領就任から計180億ドル前後にのぼる。高金利にもかかわらず中国に傾斜するエクアドル政府に対し、国内のエコノミストは批判的だった。

中国は近年、各国に救済措置として数百億ドル規模の緊急融資を提供している。米欧が主導する国際通貨基金(IMF)に対抗しているようにもみえる。米ウィリアム・アンド・メアリー大の研究機関エイドデータがまとめた資料によると、パキスタン、スリランカ、アルゼンチンの3カ国に対する中国の救済融資の大きさが目立つ。17年以降に計328億3000万ドルに達した。

エクアドルは6月、燃料や食料の価格高騰に抗議するデモでまひ状態に陥った。ラソ氏はその後、デモを主導する先住民グループと交渉を続けてきた。債務再編で資金を確保できるのはよい材料だ。デモ参加者は社会支出の増額などを求めてきた。

エクアドル政府とは別に、同国の国営石油会社ペトロエクアドルは最近、中国と合意した契約で7億900万ドルの収入を得られるとの見通しを示した。同国の財務相は、ここで得た資金を社会支出にあてると約束した。

「この契約で石油の一部を市場価格で販売できるようになり、エクアドルに追加の利益をもたらす」と財務相は説明した。「これらの資金を使い、大統領は社会投資を一段と強化できる」と話す。
物価高に抗議する市民デモ

ラソ政権は抗議デモに直面しているうえ、議会では少数派で、勢いを失っている。だが、エクアドルの複数のアナリストは、今回の債務再編を同政権の政治的な勝利だと受け止めている。

首都キトの政治リスクコンサルティング会社プロフィタスの創業者、セバスチャン・ウルタド氏は「(債務再編は)前向きな合意だ。国家の役割を果たし、積極財政に転じる重要な政治上の欲求がある」と指摘する。「返済削減の実現は、公共財政の観点から大事だ」とも語る。

エクアドルは中国と自由貿易協定(FTA)を締結する考えだ。12月に開かれる中国と中南米カリブ海諸国とのビジネスサミットまでに実現する構えだ。

ウルタド氏は、債務再編の合意はFTAをにらんだ措置かもしれないとみている。「(中国とのFTAは)容易でないが、いずれにせよ中国との関係が良好だとの事実を物語っている」

By Joe Parkin Daniels

(2022年9月21日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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台湾有事を招きかねない米議会「台湾政策法案」

台湾有事を招きかねない米議会「台湾政策法案」、日本の最悪シナリオとは
https://news.yahoo.co.jp/articles/e8c703c3ae3c0d423ac71df12f7333f1f860925c?page=1

 ※ 今日は、こんなところで…。

『● ペロシ議長訪台に猛反発の中国が 本当に脅威に感じているもの

 ナンシー・ペロシ米下院議長(民主党)は米国政府の諫言を無視して8月2日に台湾を訪問。3日に蔡英文台湾総統と会談した後、5日には訪日し岸田文雄首相と朝食を共にした。

 対中強硬派であるペロシ議長は台北での記者会見で、台湾への友情と団結を強調したが、台湾の独立を支持する発言はなく、米国の「一つの中国」政策を評価する発言もあった。

 だが中国は議長の訪中に合わせて台湾周囲6海域でかつてない大規模の軍事演習を行い、短距離弾道ミサイルを計11発発射し、うち5発は沖縄・波照間島南西の日本の排他的経済水域(EEZ)に落下した。

 EEZは、領海ではないから演習を行うのは自由であり中国は事前に日本にも通告をしていた。とはいえ非友好的な行為であることは間違いなく、米国に従う日本に対しても威圧をしたとも取れる。

 米国下院議長は過去25年に台湾を訪れた最高位の米国公人だから中国は猛反発したといわれるが、中国が本当に脅威に感じていたのは、6月17日に米議会に提出された「2022年台湾政策法案」だと考えられる。

● 台湾を「同盟国」と位置付け 450億ドルの資金や兵器を提供

 法案は、民主党のロバート・メネンデス上院外交委員長と共和党の重鎮・リンゼー・グラム上院予算委員が提案したもので、台湾を独立国として認め、軍事面での同盟国として位置付けるものだ。

 米国と中国は正式に国交を樹立した1979年1月、カーター米大統領と鄧小平中国副主席(当時)の合意で、米国は台湾の中華民国と国交を断絶した。

 だが米議会では「台湾を見捨てた」との反感が高まり、「台湾関係法」が制定された。

 この法律は大統領が台湾防衛のための軍事行動の選択肢を持つとし、米国は台湾防衛の能力を維持すると定めたが、台湾防衛の義務を定めたわけではない。また台湾にあくまで防衛的な兵器を提供できるとしている。

 今回、提出された2022年台湾政策法案は、台湾関係法の根本的改定を目指すものだ。

 台湾の「中華民国」政府を台湾人の政府であると認め、外交特権を与え、同盟国として攻撃兵器を供与、作戦計画、訓練も調整、4年間に45億ドル(約6000億円)の軍事資金を提供する、などとしている。

 法案が成立することになれば、従来、米国が「中国の一部」としてきた台湾を分離独立させ、それを同盟国化する道を開くことになる。

 仮に米国が台湾の独立支援で武力行使をすることになれば、ロシアがウクライナ東部2州の独立を承認して勢力圏に入れようとしているのと同様の「侵略」に当たるだろう。

 グラム上院議員は米空軍の法務将校を務めた予備役大佐で、前回の大統領選挙で「不正があった」と主張して敗北を認めなかったトランプ前大統領支持のトランプ信者で、議事堂襲撃事件の弾劾裁判でもトランプ氏の無罪に投票した。

 一方でウクライナの戦争では「プーチン暗殺」を期待する発言をしている。

 法案提出の直前の今年6月には超党派の国会議員を率いて台湾を訪問していた。

 米国の議員には保守派に限らず、親台湾派が少なくなく、与党・民主党にも台湾政策法案の支持者は少なくないようだ。

 バイデン政権は中国との衝突を避けるため、民主党議員に法案に反対するよう求めているが、米国では日本と違い党議拘束は緩い。

 国民にも反中感情が広がっているため、11月の議会中間選挙を前に、強硬論を唱えて人気を得ようとする候補者が続出する可能性もありそうだ。』

『● 法案成立すれば日本は厳しい立場 米台日で中国と戦う事態も

 仮に台湾政策法が成立することになれば、日本への影響も大きい。

 日本では9月29日に「日中国交正常化50周年の慶典」が催される予定だが、もし慶典の前後に法案が成立すれば日本は極めて苦しい立場になる。

 1972年に田中角栄首相と周恩来中国国務院首相らが署名した「日中共同声明」は、

 (1)日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態はこの共同声明が発出される日に終了する。
(2)日本国政府は中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。
(3)中華人民共和国政府は台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本政府は、中華人民共和国の立場を十分理解し尊重しポツダム宣言第8項(満州、台湾、澎湖諸島などの中国への返還を定めた「カイロ」宣言の履行)に基づく立場を堅持する。

 ことなどが約束されている。

 その後、78年8月に園田直外相らが署名した「日中平和友好条約」は、日中共同声明に示された諸原則が厳格に遵守されるべきであることを再確認し、国会の承認を得て批准された。

 そして憲法98条第2項は「日本国が締結した条約及び確立された国際法規はこれを誠実に遵守することを必要とする」と定めている。

 これらの声明や条約によれば、日本は、台湾が中華人民共和国の領土であることを認めている。

 もし中国が「台湾統一」に動いて、台湾政府軍と武力衝突の事態になれば内乱であり、中国軍にとっては、戦闘は反政府との戦いということになる。

 ウクライナでは、2014年に東部のドネツク、ルハンシク(ルガンスク)2州のロシア住民が暴動を起こして州都を占拠、「独立宣言」をしたのに対し、政府軍が鎮定に向かったが、結局、8年間も内戦が続いた末、今年2月にロシアが独立派を支援して侵攻した。

 これは明白な侵略だが、もし米国が台湾の独立を支援するということで出兵すれば、ウクライナ侵攻と同じ形になる。

 さらに自衛隊が米軍に協力すれば、ウクライナ侵攻でロシアに協力しているベラルーシの役割を日本が演じることになる。これは憲法98条に対する重大な違反となる。

 日中平和友好条約は、日米安保条約と同様に期間は10年でその後は1年前に予告して破棄できる。

 だが米国を含め世界の180カ国が中華人民共和国政府を正統政権と認めて国交を樹立し、台湾の中華民国政府を認めているのは14カ国にすぎない。日本政府が国際社会に背いて日中平和友好協約を破棄する突飛な行動に出るとは考えにくい。

 また国連憲章51条は、国連加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には個別的・集団的自衛権の行使を認めている。だが台湾は国連加盟国ではないし、日本の同盟国でもないから、中国軍と台湾軍の戦闘が起きても、現状では日米が集団的自衛権を行使する対象にはならない。

 だが台湾政策法が現実のものになれば状況は変わってくる。』

『他国の内戦の際、反政府軍を支援、介入するのは主権の侵害であり、侵略に当たるとするのが、これまでは一般的だったが、近年、内戦で大規模な殺害や多数の難民が発生することが増えると「人道上の問題」として国連が介入を認めた例もまれではなくなり、介入の是非の判断が難しくなった。

 米国で台湾政策法が成立すれば、米国は台湾を同法で言う「主要な非NATO同盟国」に指定し、同盟国支援ということで台湾有事に軍事介入する可能性が高まる。

 また日本に対しても、「人道上の問題」ということで出兵を迫ったり、あるいは日米同盟での対応を求めたりする可能性がある。

 そうなれば、日米台の3国が中国と戦うということになりかねない。

● 「反撃能力」でミサイル迎撃は至難 貿易停止や邦人保護など難問

 そうした事態になれば、日本は軍事、経済の両面から大きな打撃を覚悟せざるを得ない。

 米中が戦うことになれば、沖縄の嘉手納空軍基地や那覇港をはじめ、佐世保港、岩国海兵隊航空基地、横田空軍基地、横須賀港、厚木海軍航空基地、三沢空軍基地などは米国の出撃拠点や司令部になるから、中国が弾道ミサイルや巡航ミサイルで攻撃をしてくるのは間違いないだろう。

 日本人の戦意を失わせようとして、主要都市も標的になる可能性も十分ある。

 中国が保有する中距離弾道ミサイルと巡航ミサイルは計約300発と推定される。短距離弾道ミサイルも190発あるようだが、それは台湾に向けて、日本には中距離ミサイルが使用される可能性がある。

 第2次世界大戦末期にドイツが量産した弾道ミサイル「V2号」(射程320キロ、弾頭1トン)はオランダから発射され、計517発がロンドンに落下し2700人の死者が出た。

 1発当たり5.2人だ。意外に少ないようだが、ウクライナでもロシアのミサイルによる死者は1発で数人が普通のようだ。

 もし日本に300発の火薬弾頭ミサイルが落下すると、死者は約1500人、負傷者は普通死者の2倍程度だから3000人に達すると思われる。

 中国は核弾頭も積める中距離ミサイルも保有するが、核を使えば米国は核で反撃し核戦争に発展するのはほぼ必定だから、絶望的状況で自暴自棄の心情になるまで核は使われないだろう。

 かつて「日米安保条約で日本は米国の戦争に巻き込まれる」との説は野党が主張したが、今では政府の方が「台湾有事は日本有事になる」という状態になった。

 こうした状況で政府や自民党内では「敵のミサイルを迎撃するミサイル防衛は困難だから、日本はミサイル攻撃に対し反撃能力を持つべき」という論が強まる。』

『だがミサイルは目標の精密な緯度・経度が分からないと発射できない。

 偵察衛星は秒速7.9キロで地球を南北方向に周回し、1日1回各地上空を通過する。固定目標は撮影できても自走発射機で移動するミサイルの位置はつかめない。

 「静止衛星はどうか」と言う人もいるが、これは赤道上空約3万6000キロで周回すると地球の自転に同調して止まっているように見えるものだ。

 通信の中継には役立つが、この距離から相手のミサイル発射や準備などの動きは発見できない。無人偵察機を上空に旋回させておけば撮影はできるが対空ミサイルで簡単に撃墜される。

 「ミサイルの位置が分からないなら、敵の司令部や政府の中枢を攻撃すればよい」との説もあるが、要人は地下の指揮所に入っているのが普通だ。

 深さ数十メートルの地中に届くような電柱型の貫通爆弾も造られてはいるが地下のトンネルがどちらに延びているかは秘密だからあまり役立ちそうにない。

 軍人や政治家も戦争を考える際には、軍事衝突の第1幕と短期戦を考えがちだが、中長期のことや国民生活や経済のことは後ろに置かれることが多い。

 だが戦争という事態になれば日中間の貿易は停止になる。

 2020年の日本の輸出の27.7%は香港を含む中国向けで、米国の18.4%をはるかに上回る。対中輸出が停まれば日本の工場の多くが閉鎖や縮小を免れないだろう。輸入でも中国からは全体の25.8%が来ているから部品や商品の供給が止まるなどで、連鎖倒産や失業が広がりそうだ。

 中国に進出している日本企業は1万6500社もあり、戦争になれば、工場や店舗などは敵性資産として凍結、接収されることになり、経済や産業への打撃は甚大なものになるだろう。

 中国に住む日本人は約11万人だが、仮に戦争に巻き込まれるとなったら、旅客機約300機分の人々を緊急に無事にどう帰国させるのか、逆に日本にいる中国人約78万人をどこに収容して保護、監視するのかも大変な難問だ。

● 台湾の世論は「現状維持」 「統一」も「独立」も戦火招く

 日中国交正常化50周年を前に、日経連などが12日に共催したシンポジウムで、林芳正外相は、双方の先人の努力をたたえ「建設的で安定的な関係を構築するのは我々の使命、責務だ」と語った。

 中国が望む「台湾統一」も、米国議員らが支持する「台湾独立」も、結局は戦争を招くことを意味する。

 幸い台湾人は現実的、合理的だから、台湾行政府の昨年11月の世論調査でも84.9%が「現状維持」を望み「すみやかに独立」は6.8%、「すみやかに統一」は1.6%にすぎない。

 安全保障の要諦はできる限り戦争を避けることであり、日本としては、もし2022年台湾政策法が制定されることになれば、米国との距離を置いて、曖昧だが中庸を得た現状維持に努めるしかないだろう。

 (軍事ジャーナリスト 田岡俊次)』

バイデン米大統領、「台湾独立」で発言ぶれ

バイデン米大統領、「台湾独立」で発言ぶれ 中国と対立
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN203GB0Q2A920C2000000/

『【ニューヨーク=中村亮】バイデン米大統領が台湾の独立を巡り「台湾が決めることだ」との見解を示し、波紋が広がっている。台湾が一方的に独立を決めても米国が容認すると受け取られかねない発言で、その場合、米国の歴代政権の方針を逸脱する。台湾が中国の侵攻を受けた場合、米国が台湾を防衛する構えだとの認識も改めて示した。中国との対立に拍車がかかる。

バイデン氏は18日放送の米CBSテレビのインタビューで「米軍は台湾を守るのか」と問われて「はい、もし実際に前例のない攻撃があれば」と答えた。中国が台湾へ侵攻した場合、米国がどのような対応をするかを事前に示さない長年の政策から逸脱したとの見方が相次いだ。バイデン氏が類似の発言をするのは2021年1月の大統領就任後で4回目だ。

バイデン氏の発言について米国家安全保障会議(NSC)でインド太平洋調整官を務めるカート・キャンベル氏は19日、シンクタンクのイベントにオンラインで参加し「私たちの政策は一貫しており、変更はなく維持する」と釈明した。一方、台湾防衛に関する発言をホワイトハウスが取り下げたとの見方については「適切ではない」と断じた。

専門家が注目するのは台湾の将来に関するバイデン氏のコメントだ。同氏はCBSのインタビューで「(米国には)一つの中国政策があり、台湾は自らの独立について自身で判断する。我々は独立を促していない。台湾が決めることだ」と語った。

米国は中国本土と台湾が不可分だという中国の立場に異を唱えないが、台湾の安全保障に関与する「一つの中国」政策を掲げる。中国が武力行使で中台統一を図る事態を強く懸念するが、台湾が一方的に独立を宣言することにも反対してきた。バイデン氏の発言は中国の意向とは無関係に台湾が独立を決められると解釈できる。

米ジャーマン・マーシャル財団のボニー・グレイザー氏はツイッターで「台湾が攻撃された場合に米国が守るという発言よりも中国にとって気がかりだろう」と指摘した。中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は台湾を核心的利益と位置づける。バイデン氏が意図しなくても米国が台湾の独立を後押ししたと受け取る可能性がある。

バイデン政権は「台湾独立」を巡り、これまでも混乱してきた。米国務省は5月上旬ごろ、ホームページに掲載している米台関係の概要から「台湾の独立を支持しない」との文言を削除した。一部で米国の政策変更を意味するとの観測が出て、中国が激しく反発した。削除から1カ月程度が経過した後、国務省は文言を復活させた。

国務省の内情を知る関係者によると、文言の削除は「国務省の中位レベル」で決まった。ブリンケン国務長官は5月下旬、対中国政策について演説し「台湾の独立を支持しない」と話した。演説と米台関係の概要を一致させるべきだとして、文言を一転して戻したという。

関係者は「一つの中国政策に対する中国の信頼を低下させる可能性があり、潜在的に危険だ」と指摘した。バイデン政権は中国と激しく競争しつつも、意思疎通を目指して軍事衝突を避けると唱えるが、政権内での混乱が中国の疑心暗鬼を生んでいる面はある。

米議会上院の外交委員会が14日に可決した台湾政策法案も火種だ。台湾を国として扱う方針に近づくとみなされかねない条項を含むからだ。台湾について「主要な非北大西洋条約機構(NATO)の同盟国に指定したかのように扱う」と明記。台湾の事実上の在米大使館である「台北経済文化代表処」を「台湾代表処」に改称する交渉を始めるとした。

バイデン政権内にはいずれの条項も米台接近をアピールする「象徴的な措置」で、中国に対する抑止力を引き上げる効果が薄いとの見方がある。中国はあらゆる米台協力に反発する公算が大きいが、米政権は米中関係を悪化させてでも実施すべき軍事支援や経済協力を優先すべきだとの立場だ。

法案は民主党のロバート・メネンデス上院外交委員長が主導した。バイデン政権と上院民主党のやり取りを知る関係者は「メネンデス氏がこれらの条項をとても積極的に支持したことにかなり驚いた」と語る。6月の法案提出直後から、政権は民主党に法案を巡る懸念を何度も伝えたが、メネンデス氏は大幅な法案修正に慎重だったという。

米ハドソン研究所のパトリック・クローニン氏は「象徴的な措置」についてアジアの同盟国や友好国の理解を得られないリスクを指摘する。米国が米中対立を不必要に高めているとの見方が広がれば各国は米国と協力しにくくなる。台湾を巡る結束が緩めば、中国が台湾に軍事や経済面で圧力を強める隙を生み出しかねない。

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米国・カナダ艦船、台湾海峡を通過

米国・カナダ艦船、台湾海峡を通過 中国を抑止
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN20CX10Q2A920C2000000/

『【ニューヨーク=中村亮】米国の海軍第7艦隊は20日、米軍とカナダ軍の艦船が同日に台湾海峡を通過したと発表した。米国はカナダを交えることで台湾海峡の安定を重視する立場を強調し、台湾へ軍事的圧力を強める中国の抑止を狙った。

第7艦隊の声明によると、海軍のミサイル駆逐艦ヒギンズとカナダ海軍のフリゲート艦バンクーバーが台湾海峡を航行した。声明は「日常的な航行」と説明したうえで「米国や同盟国、パートナー国による自由で開かれたインド太平洋への関与を示す」と言及した。

米国のペロシ下院議長が8月上旬に台湾を訪れてから米海軍の艦船が台湾海峡を通過するのは、8月下旬に続いて2回目。前回は米軍が単独で実施した。他国と共同で通過すれば、台湾海峡の平和や航行の自由が重要だとするメッセージを強められる。

第7艦隊は「このような協力が安全で繁栄する地域に向けた我々のアプローチの中心にあることを示す」と唱えた。米メディアによると、米軍とカナダ軍の艦船は2021年10月にも共同で台湾海峡を航行していた。

【関連記事】米高官、台湾防衛巡る「あいまい戦略」維持

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察

中国からみると、アメリカはロシア・ウクライナ戦争に参戦しないと明言して、事実上、限定的な軍事支援に留まっているのに、なぜ台湾問題に直接かかわろうとするのか。日本人の一部の専門家は中国を追い込みすぎると、中ロ同盟ができてしまうかもしれないと指摘する。先日、開催された上海協力機構における中国の振る舞いは微妙な感じがある。要するに、ロシアとべったりくっついていない。ただし、台湾を併合したいのは習政権三期目の中心的目標であろう。習政権とアメリカ政府の本気度が試されている
2022年9月21日 7:41

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王毅外相がNYにキッシンジャーを訪ねた

 ※ 「やってる、やってる。」という感じだな…。

『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「宮崎正弘の国際情勢解題」 
     令和四年(2022)9月21日(水曜日)
        通巻第7470号 
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 王毅外相がNYにキッシンジャーを訪ねた
  米国のチャイナロビーの総本山は何を中国に語ったか?
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9月19日、ニューヨークのヘンリー・キッシンジャー元国務長官事務所を中国外相の王毅が笑顔で訪問した。
キッシンジャー・オフィスは米国のチャイナロビーの総本山だ。

王毅はキッシンジャー生誕100周年を祝し、「米中関係の確立と発展に歴史的な貢献をした、中国人民の古くからの良き友人」と持ち上げ、氏が中国に常に友好的であり、中米関係に貢献してくれた業績を高く評価した。

キッシンジャーを政治宣伝に利用し、メディアの印象を換えようとする情報作戦の一環だが、米紙は殆どがこの王毅・キッシンジャー会談を無視している。
デジタル版を覗いても、どこにも記事がないのだ。大きく報じているのは華字紙ならびに中国政府系の英悟新聞だけ、ちなみに台湾の新聞もみたが、一行も報道はない。

 王毅は「今年はニクソン元大統領の中国訪問と上海コミュニケ50周年であり、中国と米国はこのような有益な経験をちゃんと総括すべきとして、最近の米国外交が中国に敵対的姿勢をそれとなく批判した。

バイデン大統領は、米国が中国との新たな冷戦を求めないと表明しているが、中国に対して誤認識があり、王毅外相は、「バイデン政権が中国を主要なライバル、長期的な挑戦であると主張していることは問題だ」と述べた。

 また王毅は、台湾問題を「適切に管理することが最優先事項」と位置づけ、「そうしなければ、米中関係に破壊的な影響を与えることになる」との恐喝的台詞も忘れなかった。
 「『台湾独立』が横行すればするほど、台湾の平和的解決の可能性は低くなることに留意する必要がある」ともつけたした。

華字紙によれば、キッシンジャーは「米中は対立ではなく対話を継続し、『平和共存』という二国間関係を構築するべきだ」と述べたというが、おそらく中国に対して強い警告を発しているに違いない。そうした不都合な部分を割愛し、米国にはまだ強い中国の見方がいるぞと国内向け宣伝臭が強い報道ぶりだったのである。
      □☆み□☆☆□や☆□☆□ざ☆□☆□き☆□☆□   』

Reddit の偽アカウントから、ユーチューブのフェイクチャンネルへ誘導…。

Reddit の偽アカウントから、ユーチューブのフェイクチャンネルへ誘導…。
https://st2019.site/?p=20299

『Kenddrick Chan and Mariah Thornton 記者による2022-9-19記事「 China’s Changing Disinformation and Propaganda Targeting Taiwan」。

   Reddit の偽アカウントから、ユーチューブのフェイクチャンネルへ誘導する、という世論工作を、中共は台湾人向けに大々的に展開している。

 どれかの偽アカ、偽チャンネルが、アドミニストレーター(サイト管理者)によって抹消されても、どれかは生き残り、かたわら、無数の新偽サイトも絶え間なく生み出されるので、《ディスインフォメーションのチェーン》が断たれることは決してない。』

英議会 女王棺への中国弔問を拒否

英議会 女王棺への中国弔問を拒否 中国は反発
https://news.yahoo.co.jp/articles/565774b0c6ec26d6c09add9bc71212063ffd9d67

 ※ 「お断り」、されているようだな…。

『イギリス議会は中国政府の代表団に対し、エリザベス女王の棺(ひつぎ)が安置されているホールへの立ち入りを認めない方針を決めました。

 BBCなどによりますと、イギリスの下院議長はエリザベス女王の国葬に参列する中国政府の代表団に対し、女王の棺が公開安置されているウエストミンスターホールへの立ち入りを認めないということです。

 新疆ウイグル自治区の人権問題を巡り、中国政府を批判するイギリスの議員らが中国の制裁対象とされていることを受け、一部の議員から中国代表団の受け入れに懸念の声が上がっていました。

 棺が公開安置されているウエストミンスターホールは、イギリス議会の管理下にあります。

 この件に関し、中国外務省の報道官は16日の会見で「報道を把握していない」としながらも「イギリス側は主催者として、外交上の礼儀ともてなしの精神を持つのが当然だ」と反発しています。』