歴史的な寒波によりヨーロッパ各地で農産物に回復不能のカタストロフ的被害

歴史的な寒波によりヨーロッパ各地で農産物に回復不能のカタストロフ的被害。フランスではワイン用の作物のほとんどが失われ、スロベニアでは過去100年で4月として最低の気温を記録
投稿日:2021年4月14日
https://indeep.jp/catastrophic-damage-to-agricultural-products-across-europe-due-to-historic-cold/

『21世紀にも20世紀にも経験したことのない欧州の被害
先週書きました記事「4月に入り過去最大の感染確認数を記録する国が続出…」の冒頭で、ヨーロッパが「過去の歴史にないような 4月の寒波に見舞われる可能性がある」ことにふれました。

通常なら北極の上空を循環している極めて冷たい大気が、気圧の異常な配置により一気にヨーロッパに流れることによるものです。

その後、予測されていた寒波がヨーロッパにやってきたのですけれど、その気温の低さは桁外れであり、ヨーロッパ各地で、農産品や果樹などが徹底的に破壊されたことが報じられていました。

4月8日 イタリア・パラゼッタで凍結したリンゴの木を見つめる生産者

Piero Cruciatti AFP

国や地域によっては、過去数十年、あるいは過去 100年などで経験したことのない春の寒波であり、しかも「第二弾がこれから来る」のです。

これらの寒波は、今年のヨーロッパの食糧生産の状況に大きく関わるものとなりそうで、この数年少しずつ破壊され続けている世界の食糧の問題とも直結する話にもなりそうです。

今回はそのヨーロッパの寒波について取り上げます。

いろいろな国が被害を受けていると思われますが、フランスは特に大きな被害を受けたようです。ワイン用のブドウが地域的に「最大 90%が霜により破壊された」ことが報じられています。

以下は、4月11日のユーロニュースの報道です。

「歴史的な」厳寒の攻撃がフランスのワインメーカーの収穫を破壊した
‘Historic’ bout of frost decimates French winemakers’ harvest
euronews.com 2021/04/11

凍結からブドウ畑を守るためにワラに火をつける生産者。4月7日 フランス・トゥレーヌ

フランスの果物生産者たちとワインメーカーは、今年の収穫の大部分が今週の凍結で失われたと警告している。

フランス農業組合連盟(FNSEA)は以下のように強調した。

「今回の凍結で、ビート、アブラナ、オオムギ、ブドウの木、果樹などの被害を免れた地域はフランスにはありません。生産者たちに対してのあらゆる種類の支援を緊急に活性化する必要があります」

この週を通して、フランス中の生産者たちはたいまつとロウソクで畑で火を燃やすことによって、凍結から収穫を救おうとしたが、その努力は報われなかった。

ドロームとアルデーシュの南東部では、4月7日の夜に気温が -8°Cまで下がった。その前の週は、ヨーロッパは温暖な気温に恵まれていたため、たった 10日間で、この地域の気温は 33℃低下した。

地元のワインメーカーと果物生産者たちは、収穫量の約 90%を失ったとフランス農業組合連盟に報告した。

ローヌワインで知られるフランス南部のローヌのワイン生産者協会の会長であるフィリップ・ペラトン氏は、「今年は、過去 40年間で最低の収穫になるはずだ」と述べる。

ペラトン氏は、この地域の約 68,000ヘクタールのブドウ畑のうちの約「 80パーセントから 90パーセント」が凍結で失われたと推定している。

ペラトン氏は、昨年以来の、ブレグジット、アメリカの関税の問題、COVID-19 パンデミックなど、最近フランスのブドウとワインの生産者たちが対処しなければならなかった複数の問題を強調し、そのすべてが販売と輸出に圧力をかけていた。

ワインで著名な地域のひとつであるブルゴーニュには、28,841ヘクタールのブドウ畑があるが、「少なくとも 50パーセント以上の被害を受けた」と、地域の代表者は述べる。

この地域の権威あるシャブリの原産地も荒廃した。シャブリの原産地防衛連盟事務所のフレデリック・ゲグエン氏は、「 80から 90パーセント被害を受けた」と推定している。そして、ゲグエン氏は以下のように懸念している。

「今後回復する見込みのない農場があるのではないかと心配しています」

ブルゴーニュの南部も -8°Cの気温を記録した。

フランス南西部のボルドー地域のワインメーカーも警鐘を鳴らしている。

ボルドーワイン貿易評議会によると、凍結はボルドーのブドウ園の広大な地域を「激しく襲い」、気温が -5°Cを下回ることもあり、111,000ヘクタールのブドウ畑すべてに影響を及ぼした。これは、フランスのブドウ園の 15%に相当する。

ドルドーニュでは、有名なモンバジャックを含むベルジュラックとデュラスのブドウ園があるが、「被害を免れた生産者は一人もいない」と、地元のワイン連盟の会長であるエリック・チャドゥーン氏は述べる。「被害の程度はさまざまだが、芽の 5%から 100%が被害を受けている」と付け加えた。

フランスでは、他の果実も影響を受けており、リンゴとナシのフランス全国協会の会長は、寒波により「今年は桃、ネクタリン、アプリコットが店舗の棚に並ぶことはほとんどないだろう」と述べた。

フランス農業相は、この遅い時期の凍結の例外的な影響を受けた生産者たちに政府は「必要な支援を提供するために完全に動員されている」と述べている。

ここまでです。

「 2021年産のフランス産ワインというものは、ほぼ存在しない」ことが確定的になったようです。

被害を受けた生産者に対して、フランス政府からの補償はなされるようですが、補償はともかく「生産品自体がない」ということになり、ブドウをはじめとするフランス産の果樹全般が今年は流通する見込みはなさそうです。

フランスは、ワインの著名な生産国であるので、このような報道がなされていましたが、実際には「このような凍結と寒波がヨーロッパの広範囲を襲った」ということが問題であり、4月はさまざまな農作物の植え付けなども始まった時期であり、その被害はヨーロッパ全体に広がっているとみられます。

たとえば、他のヨーロッパでも以下のような状態となっていました。

ベルギーでは、ブリュッセルを含む多くの都市の住民が本物の猛吹雪を目撃した。ベルギーの一部の地域では、20cm以上の雪が振った。

バルカン半島もまた 「4月の真冬」を経験した。西ヨーロッパを襲った北極圏の大気は、さらに南東に広がり、ブルガリアとルーマニアの山々での 4月9日の夜、気温は -17°Cにまで下がった。 (iceagenow.info)

スロベニアでは、4月として、過去 100年で最も低い気温が記録されました。

4月7日、スロベニアの多くの地域は、過去 100年で最も寒い 4月の朝を向かえた。公式の気象観測所の記録で、最低気温は -20.6°Cに達し、観測史上で 4月で最も低い気温記録を樹立した。中央および西ヨーロッパの他の地域でも多数の極寒の記録があり、深い凍結と朝の霜は破壊的なものだった。

スロベニアでは、同日、レッジェ市にある気象観測所で -26.1°Cの気温が記録されたが、この観測所は非公式の気象観測であるため、公式な記録にはならない。

過去のスロベニアの公式の最低気温の記録は、1956年4月9日に標高約1350 m にあるポクルジュカで記録された -20.4°Cだった。 (severe-weather.eu)

以下は、そのスロベニアのノバ・バスという場所で -20.6℃が記録された時の、ヨーロッパの気温分布ですが、スペイン、ポルトガルやギリシャなどを除けば、ヨーロッパの全域とも言える地域が、極大の寒波にさらされていたことがわかります。

2021年4月7日のヨーロッパの最低気温の分布

severe-weather.eu

フランスの壊滅的な農産物の被害からですと、他のヨーロッパ諸国も、地域的には壊滅的な被害となっている場所もあると見られます。

しかも、「次の同じような寒波が今、ヨーロッパにやってきている」のです。

ヨーロッパの主要な気象メディア「シビア・ウェザー・ヨーロッパ」は、4月12日の記事で、またも前回の同じような地域に同じような凍結と寒波が襲う事を報じています。

長い記事ですので、その一部をご紹介します。

原文タイトルの最初に「 Oh no (オーノー)」という文字が含まれる記事でした。』

米北東部で大雪、4人死亡 交通事故相次ぐ

『【ニューヨーク時事】米北東部は16日から17日にかけて大雪に見舞われ、米メディアによると、交通事故などで4人が死亡した。新型コロナウイルス感染が再拡大する中、自宅で過ごす人が多いが、当局は外出を控えるよう住民に呼び掛けた。
 ニューヨーク州ビンガムトンやペンシルベニア州の一部で100センチを超える積雪を観測。ペンシルベニア州では車両数十台が絡む衝突事故が発生し、2人が死亡したほか、別の交通事故で運転手1人が死亡した。さらに除雪車にはねられて1人死亡した。
 ニューヨーク市のセントラルパークでは約25センチの積雪を観測し、昨冬の総積雪量である約12センチを上回った。デブラシオ・ニューヨーク市長は「過去24時間の積雪量は(記録的な大雪だった)2016年1月以来だ」と語った。
 17日午前の時点でニューヨーク、ニュージャージー、コネティカットの3州の計1万戸近くで停電も発生。フライト欠航など交通にも影響が出た。』

NCEP GFS 500hPa 気温 北半球
https://weather.time-j.net/Gfs/TemperaturePoler/500

週間寒気予想
http://www.ystenki.jp/kanki.html

※ どうも、一番「寒い」極(北半球の場合は、北極)から、「寒気(冷たい大気)」が、ウネウネと、高緯度地域に、さらには、その周辺地域(ヨーロッパ、北米、シベリア、日本列島など)に降りて来て、そこの「住民たち」が右往左往する…、という話しのようだ…。

※ そういう「冷たい大気の運動」には、「偏西風」なんかが関係しているんだろう…。そういえば、「お天気お姉さん」が、「偏西風の蛇行」と言っているのを、聞いたことがある…。

梅雨明けず、台風ゼロの7月 インド洋の異変影響か

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62172330R30C20A7CC1000/

『記録的豪雨をもたらした梅雨前線の影響が長引き、関東甲信では13年ぶりに7月中に梅雨が明けなかった。台風の発生も観測史上初めてゼロとなり、同月の東日本と西日本で日照時間は戦後最短の見通し。インド洋の海面水温の高さが異例の7月の原因とみられ、地球温暖化の影響も指摘される。

東京都心は31日も雲が多く、すっきりしない空模様だった。関東甲信の梅雨明けが8月に持ち越しとなったのは2007年以来。同月4日までに梅雨明けしなければ観測史上最も遅い記録を更新する。近畿地方は31日、梅雨明けが発表されたが、平年より10日遅れ、過去3番目に遅かった。

今年は長梅雨に加え、日照時間の少なさも特徴だ。気象庁の過去20年間の観測データをもとに、東京都心の梅雨期間中の日照時間を比較したところ、今年は30日までで1日当たり2.3時間と最も少なかった。

関東甲信の平年の梅雨入りは6月8日、梅雨明けは7月21日で、この期間の東京都心の日照時間の平年値を計算すると、1日当たり4.0時間となる。今年はその半分ほどしかなく、梅雨の晴れ間がいかに少なかったかがうかがえる。30日までの暫定値で、1946年の統計開始以降、東日本と西日本の7月の日照時間としては最も短くなった。

農業への影響は深刻だ。都内のある農協では例年なら6月下旬から出荷を始めるブルーベリーが色づかず、出荷ができないという。いちじくや梨も一部は割れたり落ちたりして農家が廃棄している。秋に収穫するキャベツや白菜は、種をまく前に畑を耕す作業が長梅雨で開始できず、農協の担当者は「今年は出荷時期が遅れるかもしれない」と気をもむ。

今年は6月の台風2号を最後に、7月は台風が発生しなかった。東京大の中村尚教授は「台風の『ゆりかご』になるフィリピン近海の低圧部の活動が弱いため発生が少なくなっている」と分析する。

例年、フィリピン近海では上空に「モンスーントラフ」と呼ばれる気圧の低い部分が形成され、その南北で異なる風向きによって低気圧性の渦ができ、台風のもとになる。しかし、今年はインド洋の海面水温が平年に比べて高く、ここで発生した上昇気流が偏西風を弱め、渦ができにくくなっているという。

こうした異変は日本の長梅雨にも影響する。海面水温が高いインド洋で上昇気流が起きて対流活動が活発になると、隣接するフィリピン近海では逆に対流活動が弱まり、本来は夏に向けて北に勢力を伸ばす太平洋高気圧が南西に張り出す要因になる。その結果、梅雨前線を北に押し上げられず、日本の上空に長くとどまらせているとみられる。

インド洋の西側では19年冬から海面水温が高い「ダイポールモード現象」が起きていた。筑波大の釜江陽一助教は同現象が徐々に弱まり、西側の暖かい海水が東側に広がってインド洋全体の水温が高くなっていると分析。さらに「地球温暖化もインド洋の高温に関わっている」として、長期的な気候変動の影響を指摘する。

気象庁によると、太平洋高気圧は徐々に北への張り出しも強めている。同庁担当者は「週末から来週初めにかけて、東海より東でも梅雨明けするところが出てくるのではないか」と話している。』

居座り続ける梅雨前線 インド洋の異変が引き金

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61744980Q0A720C2EA1000/

『鹿児島県の奄美地方が20日、1951年の統計開始以来、最も遅く梅雨明けした。ただ本州などの梅雨明けはまだ見通せない。九州を中心とした豪雨や全国的な日照不足は、異例の長さで停滞する梅雨前線と水蒸気の流入が原因だ。インド洋で起きた「異変」が太平洋高気圧の北上を阻み、夏の訪れを遅らせている。』
『気象庁によると、特に雨がひどかった7月1~10日までの総雨量は20万8308ミリで、過去38年間で最多。1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨の回数も82回と過去の記録を大きく上回った。

日照時間も短い。西日本から東北にかけて平年の半分を下回り、農作物への影響も出ている。

梅雨前線が停滞し、そこに大量の水蒸気が流れ込んだ結果だ。いずれもインド洋付近の海面水温の上昇に起因するという見方が強まっている。

東京大学の中村尚教授によると、インド洋の海面水温が高いと上昇気流が起きて対流活動が強くなる。上昇気流は隣接するフィリピン近海の上空に流れて下降し、結果的に、この付近の上昇気流と打ち消しあって対流活動が弱まる。

本来、北上するはずの太平洋高気圧は、対流活動が弱まったフィリピン近海上空である南西側に張り出して北上せず、「梅雨前線を北に押し上げられずに停滞した」(中村教授)。

短時間の豪雨の回数が増えた原因もわかってきた。上空に流れ込んだ水蒸気量を分析した名古屋大学の坪木和久教授は、「大気の川」と呼ぶ巨大な水蒸気の流れができていたことを突き止めた。

この流れの幅は約500キロメートルにもなり、10日間以上停滞する梅雨前線に毎秒50万~60万トンの水蒸気をもたらした。水蒸気は雨を降らす積乱雲を作り出す。「(水蒸気の総量は)西日本豪雨の3倍以上だ」(坪木教授)

梅雨前線はまだしばらく停滞する見込みで、厳重な警戒が必要だ。』

※ 前線は、停滞し、大陸にもかかり続ける…。

※ 雨雲の発達も、ご覧の通りだ…。

※ 水蒸気の状況も、ご覧の通りだ…。

※ 大洪水、土砂災害が起きるのも、宜(むべ)なるかなだ…。