ウイグル自治区トップ交代、習近平の狙いは新疆「デジタル経済と太陽光パネル」基地

ウイグル自治区トップ交代、習近平の狙いは新疆「デジタル経済と太陽光パネル」基地
https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20220103-00275457

『昨年12月25日、新疆ウイグル自治区の書記に広東省の馬興瑞省長の就任が決まった。深圳をハイテク都市にした馬興瑞の辣腕を、今度は新疆で発揮させ、アメリカから制裁を受けている分野を逆手に取っていく戦略だ。

◆馬興瑞が新疆ウイグル自治区の新書記に

 中国政府の通信社である新華社は12月25日、中共中央が「新疆ウイグル自治区の党委員会のトップに関して職務調整を行った」と発表した。それによれば、これまで新疆ウイグル自治区の書記を務めていた陳全国に代わって、馬興瑞が新しい書記になるとのこと。同日、中共中央組織部副部長が出席する形で新疆ウイグル自治区は幹部会を開催し、陳全国や馬興瑞などがスピーチを行っている。

 馬興瑞のスピーチで注目すべきは「私は習近平総書記の熱意を込めた依頼をしっかり心に留め」という言葉と、「苦労して勝ち取った新疆の安定を決して逆転させないことを誓う」および「そのために人民を中心として質の高い経済発展を促進する」という決意だ。
◆馬興瑞が持っている特殊な才能

 馬興瑞(62歳)は工学博士で教授、国際宇航(宇宙航行)科学院の院士でもあり、「若き航空元帥」という綽名さえ持っていた。そのため2007年から2013年3月まで中国航天科技集団公司の総経理を務めていただけでなく、中国有人航天工程副総指揮や中国月探査工程副総指揮(2008年11月から2013年3月)をも兼任していた。

 2013年には目まぐるしい変化があり、3月に突然、中央行政省庁の一つである「工業と信息(情報)化部」の副部長(副大臣)や国家航天局(宇宙局)局長など、行政方面への職位を与えられた。だというのに11月になると習近平は突如、馬興瑞を広東省(中国共産党委員会)副書記に任命したのだ。

 異常な人事異動だ。

 2015年から2016年までは深圳市の書記なども兼任しながら、2017年には広東省(人民政府)の省長に任命されている。途中はあまりに細かく複雑で兼任が多すぎるので省略する。

 広東省にいる間に最も注目しなければならないのは、馬興瑞は広東省の凄まじい経済発展に貢献しただけでなく、中国のシリコンバレーといわれるほどの深圳を、さらにハイテク化に向けて磨きをかけ、アメリカに脅威を与えるレベルにまで成長させたことだ。

 広東省が如何にすさまじい発展を遂げたかに関して、おもしろいYouTube「中国各省区市 歴年GDP変化」がある。1978年から2020年までの中国の省や自治区および直轄市などの各行政地区におけるGDPのランキングを追っている。最後は広東省が中国一になっていく様子をご覧いただきたい(出典は「史図書」、個人の動画投稿者が作成)。

◆「中国製造2025」発布時期と一致

 一方、2012年11月15日に中共中央総書記に就任した習近平は、翌12月に最初の視察先として深圳を選んだ。そこは父・習仲勲が「経済特区」と命名して開拓した地。鄧小平の陰謀によって16年間に及ぶ監獄・軟禁生活を強いられたあとの習仲勲の仕事への奮闘ぶりはすさまじかった(詳細は拙著『習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』)。

 その深圳で誓いを立てたかのように、習近平は北京に戻るとすぐにハイテク国家戦略「中国製造2025」に手を付け始めた(詳細は拙著『「中国製造2025」の衝撃 習近平は何を狙っているのか』)。

 思うに、おそらくこの線上で、突如、馬興瑞を広東省に派遣することを習近平は決めたのだろう。だから異動のさせ方が尋常でない。

そしてこのたびの新疆行きで、馬興瑞は「質の高い経済発展を促進する」と言っている。これはいったい何を意味しているのだろうか?

◆新疆デジタル経済の急成長

 2021年1月21日、新華網は<新疆デジタル経済は去年の10%増で、新疆GDPの26%を占める>と発表している。そこには以下のようなことが書いてある。

 ●5GやAIあるいはビッグデータなどの次世代情報技術と実体経済を融合発展させたことが奏功した。

 ●新疆では昨年(2020年)、長城(科技)集団(中国最大の国有IT企業グループ。深圳)や中科曙光(中国スーパーコンピュータ大手)が投資してウルムチ工場が稼働し、(新疆)ウルムチの情報技術イノベーション産業基地の構築を加速させた。

 ●(新疆)コルガス市の半導体チップ・パッケージング・テストプロジェクトの大規模生産が実現した。

 ●新疆ソフトウエア・パーク第1期に230企業がパーク入りした。

 ●新疆における5G基地局数はこれまでに6272カ所となり、5Gユーザー数は275万世帯に達した。新疆における産業インターネットの活用は新エネルギー、石油・天然ガス採掘、電力、設備製造など20余りの重点産業に広がり、デジタル化設計やスマート製造、ネットワーク連携などの新モデルが急速に普及している。

 ●デジタル経済大発展を推進することは、新疆の経済社会デジタル化を全面的に転換させる重要な転換点であり、エネルギーと化学、繊維と衣服、機械と設備、採掘産業などの主要産業で両者の深い統合を促進する(概略引用はここまで)。

 このように新疆ウイグル自治区は、実はデジタル経済に関して意外なほど力を注ぎ、急成長しているのである。

◆アメリカが制裁対象とした新疆の太陽光パネル企業

 それだけではない。

 2021年6月24日、アメリカ商務部は太陽光パネルの材料などを生産する新疆ウイグル自治区の企業5社について、「強制労働や監視活動など、人権侵害に関わった疑いがある」という理由で、制裁リストに入れた。これら5社は今後、アメリカ企業との取り引きができなくなる。

 中国は太陽光パネルの世界最大の生産地だが、パネルの材料の1つであるポリシ

リコンの多くが新疆ウイグル自治区で生産されていることがアメリカ議会で問題視された。つまり「新疆の太陽光パネルが廉価なのは、強制労働をさせているからだ」ということが問題になったのだ。

 世界のシリコン生産量は中国が最大で、世界の67.9%を生産している。

 工業用シリコンは、中国の中でも水資源などが豊富で水力発電が進んでいる四川省や雲南省が半分ほどを占め、20%を新疆ウイグル自治区が占めている。

 なぜなら工業用シリコンは莫大な電気量を消耗するので、埋蔵量以外に、電力供給が豊潤な地域でないとコストが高すぎて採算が合わない(雲南:数百本の川がある。四川省:長江など水資源が豊富。新疆:もともと石炭埋蔵量が多く、イリ川などを利用。加えて中国最大の石油・天然ガス中継点)。

 工業用シリコン生産過程の総コストの30~40%は電力である。

 新疆産の太陽光パネルが安価なのは電力が安価だからだ。

 新疆・四川・雲南の電気代は1kWh当たり(日本円に換算すると)「5.44円」であるのに対し広東省は「10.8円」、上海は「17.58円」だ。中国国内でも差がある。それが太陽光パネルの価格に反映している。ちなみに東京電力の業務用電力は1kWh当たり「 17円前後」だ。上海と変わらない。

 新疆では特にポリシリコン製造に特化し、太陽光パネルを大量に生産している。

となると、その太陽光パネルによる電力をポリシリコン製造に使えるので、まるで自己増殖的な生産サイクルが出来上がり、安価な太陽光パネルを生産できるのである。

 アメリカのウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「アメリカで販売されている太陽光パネルの約85%は輸入品で、その多くは中国企業が製造している」とした上で、「2035年までに電力網をカーボンフリーにしたいと考えているバイデン政権にとって、中国の太陽光パネル産業を制裁ターゲットにするのは難しいのではないか」と報道している。

 さらに業界団体や関係者は「世界で販売されている太陽光パネルの大半は、中国の技術に依存している。中国はサプライチェーンのすべての部分、特に太陽光パネルの原料となるシリコンウエハーの生産において、リーダー的存在だ」と言っていると、WSJは懸念を伝えている。つまり、中国の太陽光パネル関連企業を制裁リストに入れることによって最も困るのはアメリカではないかという疑念を呈しているのだ。

◆習近平は馬興瑞に「新疆デジタル経済と太陽光パネル基地」建設を期待

 アメリカからの制裁を受ける中、習近平は新疆ウイグル自治区を経済発展させることによってアメリカの対中非難に勝とうとしていると推測される。

 それもハイテク国家戦略「中国製造2025」に沿ったもので、深圳が「中国のシリコンバレー」と呼ばれるまでに成長したのと同じように、馬興瑞の実力を頼りに、新疆ウイグル自治区を「デジタル経済」と「太陽光パネル生産」の基地として発展させようと狙っていると思われるのである。

 そうでなくとも中国は国土面積が広く、1990年代から遠隔教育を推進させていた。雲南省にいても新疆ウイグル自治区にいても、北京や上海の大学で行っている講義をリモートで聞くことが出来るシステムを、世界銀行などの支援を得て構築していたし、時にはスタンフォード大学の講義を中国で聞くこともできるシステムさえ進めていた。

 ネット通信が発達し、特にコロナによりリモート勤務が世界的に進んだ今、中国におけるデジタル経済のニーズは増している。

 デジタル社会を可能ならしめるには、大量の電力が必要になる。

 その電力もクリーンエネルギーが奨励される中で、太陽光パネルは願ってもない手段だ。

 中国には「西気東輸」とか「西電東送」といった言葉があるが、これは西部大開発において1990年代から唱えられ、2000年前後に始まった、「西部にある石油や天然ガスなどのエネルギー源や電力を、経済発展著しい東沿海部の都市に運ぶ」という中国全土を覆ったネットワークである。これによって電力不足を補い、停電などによって生産ラインが止まるのを防いでいた。特に「西気東輸」の起点は新疆ウイグル自治区にあるタリム盆地だ。
 クリーンエネルギーが叫ばれる今、新疆ではレアアースが埋蔵しているだけでなく、太陽光パネルが生み出す、有り余る電力を、「西気東輸」や「西電東送」の考え方と同じように中国全土の電力補給に使っていこうという戦略が、このたびの新疆ウイグル自治区トップ交代の意味である。

 アメリカが新疆にある太陽光パネル企業に下した制裁は、「アメリカへの輸出を禁じる」という内容だ。習近平としては、アメリカに輸出できないというのは大きな痛手ではなく、むしろ中国国内における電力不足からくる社会不安を緩和する方向に電力を振り向けていこうというのが、馬興瑞を新疆に送った事実から見えてくる国家戦略なのである。

 国内で使うのに、「それは強制労働による電力だろう」という批難をアメリカから受ける可能性はゼロで、むしろウイグル族の人々がクリーンエネルギー生産に従事してデジタル経済を推進していくことになれば、世界からの批難が少なくなるだけでなく、新疆に経済的繁栄をもたらすので、テロなどイスラム教徒が起こす傾向にある反乱を和らげる働きをするだろうと、同時に計算している側面がある。

◆「新疆‐アフガン列車」でイスラム圏アフガンの統治能力を世界に示す

 というのも、2021年9月8日に王毅外相がアフガニスタンの外相と話し合い、「新疆―アフガニスタン専用貨物列車」の復活を提唱したのだが、11月20日には、実際に開通したと、中国共産党の機関紙「人民日報が報道した。アメリカはイスラム教圏であるアフガニスタンの統治に失敗したが、中国は同じくイスラム教を信じるウイグル族とアフガニスタンの経済を成長させることによって、中国の方がアメリカの統治能力を凌駕するというメッセージを発信したいものと位置付けることが出来る。

 習近平は米中覇権競争を、経済で絡め取って、中国の勝利に持って行こうとしているのだ。

 ただ、本来ならば2022年秋に開催される第20回党大会あたりで発表するはずの人事異動を前倒ししたのは、停電や不動産開発産業が招く社会不安を回避するだけでなく、西安政府の管理能力の欠如によるコロナ再感染を防ぐための不手際に対する中国政府への不信感を払拭する狙いもあるのではないか。

 2022年に開ける新たな幕のゆくえを見逃さないようにしたい。

 本稿は

中国問題グローバル研究所のウェブサイトからの転載である。』

原子力・天然ガスは「持続可能」 欧州委が方針

原子力・天然ガスは「持続可能」 欧州委が方針
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR0204G0S2A100C2000000/

『【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)の欧州委員会は1日、原子力と天然ガスを脱炭素に貢献するエネルギーと位置づける方針を発表した。一定の条件下なら両エネルギーを「持続可能」と分類し、マネーを呼び込みやすくする。世界の原子力政策にも影響を与える可能性がある。

「EUタクソノミー」は、どんな事業が持続可能(サステナブル)かを分類する制度だ。EUが掲げる「2050年までに域内の温暖化ガスの排出を実質ゼロにする」ことを柱とする環境関連の目標に、貢献する経済活動かどうかを示す基準と言える。

この基準に沿った事業には投資家は安心して投資できる一方、EUには民間マネーを呼び込み、排出削減目標の達成を後押しする狙いがある。欧州委は排出削減目標の達成には30年までの毎年、官民合わせて少なくとも3500億ユーロ(約46兆円)の追加投資が必要とはじく。

持続可能と分類されない事業が禁止されるわけではないが、資金集めなどで不利になる可能性が高い。EUは企業や金融機関にタクソノミーの基準を満たす事業や商品の売上高に占める割合などの情報開示を求める構えで、同制度を前提としたルール作りがすでに始まっている。環境配慮をうたっているにもかかわらず、実態は伴っていない「グリーンウオッシュ」を排除する狙いもある。

自動車の二酸化炭素(CO2)排出など気候変動関連の基準は公表済みで、一部は適用が始まった。だが原子力と天然ガスは関係者の対立から合意に至っていなかった。原子力発電は稼働中にCO2を排出しないが、有害な放射性廃棄物が出る。天然ガスは石炭に比べればクリーンだが、CO2を出すのには変わりない。

欧州委は1日の発表文で未来へのエネルギー移行を促進する手段として「天然ガスと原子力の役割がある」として、両エネルギーを持続可能と位置づける考えをにじませた。

日本経済新聞が入手した原案によると、原子力は生物多様性や水資源など環境に重大な害を及ぼさないのを条件に、2045年までに建設許可が出された発電所を持続可能と分類する方針を示した。

天然ガスは①発電1キロワット時あたりのCO2排出量が270グラム未満②CO2排出の多い石炭の代替とする③30年までに発電所の建設許可を得る――などを条件に持続可能と認める。

原子力依存度の高いフランスやフィンランドに加え、石炭への依存度が高い東欧諸国が原子力やガスをタクソノミーに含めるよう訴えていた。ポーランドは電源構成に占める石炭の割合が約7割を占め、排出減には原子力とガスが欠かせないと主張していた。

欧州委は昨年12月31日から加盟国や専門家との協議を始め、1月中にも欧州委案を公表する考えだ。その後、加盟各国との議論や欧州議会での審議を経て成立する流れだが、曲折がありそうだ。

例えば脱原発を決めたドイツやオーストリアなどが原子力を持続可能と分類することに反対しているほか、欧州議会でも緑の党を中心に根強い反発がある。欧州では環境系の非政府組織(NGO)の発言力も大きい。

EUタクソノミーは域内で事業をする企業などが対象になる。だが影響は日本を含む世界に及ぶ可能性がある。EUの基準を満たさない事業や商品はEUでは価値が下がるのは確実で、EUに売り込みにくくなるばかりか、EUの投資家からの資金を集めにくくなる。

【関連記事】

・EUタクソノミーとは 環境配慮の経済活動を認定
・欧州に原発回帰の動き 脱炭素・エネ安保で、日本は停滞 』

再生エネ普及へ送電網、2兆円超の投資想定 首相が指示

再生エネ普及へ送電網、2兆円超の投資想定 首相が指示
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA231B10T21C21A2000000/

『政府は再生可能エネルギーの普及のために次世代送電網を整備すると打ち出す。都市部の大消費地に再生エネを送る大容量の送電網をつくる。岸田文雄首相は2022年6月に初めて策定する「クリーンエネルギー戦略」で示すよう指示した。総額2兆円超の投資計画を想定する。政権をあげて取り組むと明示して民間の参入を促す。

【関連記事】北海道―本州に海底送電網構想 「洋上風力銀座」現実味

日本は大手電力会社が各地域で独占的に事業を手掛けてきた。送配電網も地域単位で地域間の電力を融通する「連系線」と呼ぶ送電網が弱い。

再生エネの主力となる洋上風力は拠点が地方に多く、発電量の変動も大きい。発電能力を増強するだけでなく消費地に大容量で送るインフラが必要だ。国境を越えた送電網を整備した欧州と比べて日本が出遅れる一因との指摘がある。

①北海道と東北・東京を結ぶ送電網の新設②九州と中国の増強③北陸と関西・中部の増強――を優先して整備する。①は30年度を目標に北海道と本州を数百キロメートルの海底送電線でつなぐ。

平日昼間に北海道から東北に送れる電力量はいま最大90万キロワット。新たに北海道から東京まで同400万キロワットの線を設ける。合わせて30年時点の北海道の洋上風力発電の目標(124万~205万キロワット)の3~4倍になる。

九州から中国は倍増の同560万キロワットにする。10~15年で整備する。

送電網を火力発電が優先的に使う規制を見直し、再生エネへの割り当てを増やす。送電方式では欧州が採用する「直流」を検討する。現行の「交流」より遠くまで無駄なく送電できる。

新規の技術や設備が必要になり、巨大市場が生まれる可能性がある。一方で国が本気で推進するか不透明なら企業は参入に二の足を踏む。

菅義偉前首相は温暖化ガス排出量の実質ゼロ目標などを表明し、再生エネをけん引した。岸田氏も夏の参院選前に「自身が指示した看板政策」として発表し、政権の公約にする。国の後押しを約束すれば企業も投資を決断しやすい。

電気事業者の関連機関の試算では投資は総額2兆円超になる。主に送配電網の利用業者が負担する。必要額は維持・運用の費用に利益分を加えて算定する。欧州と同様、コスト削減分を利益にできる制度も導入して経営努力を求めながら送電網を整える。

英独やスペインは再生エネの割合が日本の倍の4割前後に上る。欧州連合(EU)は復興基金を使って送電網に投資し、米国は電力に650億ドル(7.4兆円)を投じる。

【関連記事】
・エネ転換で製造業後押し 経産省、6月に工程表
・再生エネ活用へ火力発電抑制 経産省、供給超過時に 』

『 多様な観点からニュースを考える

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高村ゆかり
東京大学未来ビジョン研究センター 教授
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別の視点

2020年8月から、電力広域的運営推進機関(OCCTO)で、送配電網=系統をより長期的な視野をもって効率的に「プッシュ型」の系統整備を行うためのマスタープランが検討されている。

2021年5月の中間整理 https://www.occto.or.jp/iinkai/masutapuran/2021/files/masuta_chukan.pdf にもあるように、複数のシナリオ、想定を置いて検討を行い、これらの増強候補案は複数のシナリオで費用対効果が大きいとされた。

広域融通の促進は、再エネ導入拡大、CO2削減効果だけでなく、上記の費用便益分析には含まれていないが、需給逼迫時、災害時などのレジリエンスも高めることが期待できる。事業コストの精査は不可欠だが、事業と投資の経済効果を含め、長期でマクロな観点から国は明確な方針を早く示してほしい

2022年1月3日 14:45

竹内純子のアバター
竹内純子
国際環境経済研究所 理事・主席研究員
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ひとこと解説

日本は小さな系統の集合体なので送電線のボトルネック解消は重要ですし、再エネを活用する良いことのようにみえるのですが、無駄な設備投資をしそうな匂いがかなり強い。

電力広域的運用推進機関でマスタープラン検討することになっているので、その場を利用してオールジャパンで、様々なシナリオに対するシミュレーションや費用便益評価をやり、それを踏まえた投資計画であるべき。

本来、再エネは「地産地消」をうたい文句にしていたのであり、そうした動きも徐々に生まれつつある。そうした動きにこそ新しい産業の芽がある。安定供給とコスト低減を両立するかに知恵を絞ることが大切で、まずは費用便益評価に基づいた議論をすべき。

2022年1月3日 11:49 』

テスラ、米で47万台超リコール 20年世界販売に匹敵トランク開閉に不具合

テスラ、米で47万台超リコール 20年世界販売に匹敵
トランク開閉に不具合
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN3049T0Q1A231C2000000/

『【シリコンバレー=白石武志】米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は30日、電気自動車(EV)大手の米テスラが小型車「モデル3」と高級セダン「モデルS」のトランク開閉に関連する不具合に対処するため計47万台超をリコール(回収・無償修理)すると発表した。同社が一度に実施するリコールとしては過去最大で、2020年の年間世界販売台数に匹敵する規模となる。

【関連記事】
・テスラ、画面不具合で13.5万台リコール
・米当局、テスラの運転支援システムを正式調査

理由は車種によって異なる。モデル3については後方トランクの開閉によってケーブルが損傷し、運転席のディスプレーに後方カメラの画像が表示されない可能性がある。モデルSでは前方トランクの掛けがねに不具合があり、走行中にフードが警告なしに開いて運転手の視界を妨げ、衝突の危険性を高めるおそれがある。

リコール対象台数の内訳は17~20年式のモデル3が35万6309台、14~21年式のモデルSが11万9009台。NHTSAは不具合に関連する衝突や負傷、死亡事故をテスラは認識していないと説明している。

テスラはリコール実施について日本経済新聞のコメント要請に応じておらず、回収・無償修理にかかる費用などは明らかになっていない。30日の米国市場でテスラ株は取引開始直後に前日終値に比べ一時3%安をつけた。

テスラは運転席のディスプレーの不具合についてもNHTSAの指摘を受け、21年2月に約13万5000台のリコールに合意している。同社の運転支援システム「オートパイロット」についても衝突事故が相次いだことを受けて、米当局は8月に安全性を正式に調査すると表明している。

EU、貿易×環境で途上国に圧力

EU、貿易×環境で途上国に圧力 4.5億人市場が武器
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR06CRV0W1A201C2000000/

『欧州連合(EU)が貿易と環境を組み合わせて途上国に圧力をかけ始めた。約4億5千万人の巨大市場へアクセスする条件として十分な気候変動対策をとるよう迫る。世界の地球温暖化対策を推し進めるとともに、EUの国際社会での存在感を高める狙いがある。

11月半ば、EUの欧州委員会は森林破壊に関与する形で生産された大豆や木材、パーム油、コーヒーなどの輸入を停止できる規制案を公表した。

企業に製品がどこで生産されたか申告を義務付け、加盟各国が衛星写真や書類で森林破壊・劣化が起きた地域で生産されていないかを確認する。確認できなければEU側の輸入を認めないとの提案だった。

大気中の二酸化炭素を吸収する森林の減少に歯止めをかけるためで、各国に森林保護策を促す。ブラジルや東南アジアの一部が念頭にある。

ブラジルは「消費者のためにならない」と批判するが、EUではボルソナロ政権が違法伐採などに十分な対策を講じていないとの不信感がある。2021年7月までの年間森林(熱帯雨林)減少率は前年同期比22%と過去15年で最大だった。

19年6月に政治合意したEUと、ブラジルなど南米南部共同市場(メルコスル)との自由貿易協定(FTA)は、ブラジルの森林保護への対応が不十分として批准手続きは止まっている。

9月には欧州委は途上国に付与する特恵関税の改革案を公表した。より幅広い製品で関税ゼロが適用される恩恵を受けるには、途上国は従来の人権や労働に関する条約に加え、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」を批准しなければならない。条約違反の場合は関税ゼロの適用を停止する手続きも新たに設ける。

EUが立て続けに厳しい対応を打ち出した理由を探ると、通常の国家ではないEUが国際社会でどう存在感を高めるか工夫をこらした跡が透ける。それをひもとくのは2月に公表された政策文書にある。

「EUの利益を最大にする具体策をとる」。欧州委のドムブロフスキス上級副委員長(通商政策担当)は力説した。EUの貿易政策を説明する際に「開かれた」「持続可能な」という従来の修飾語に「主張する(assertive)」を加えたのだ。加盟国から移譲され、EUの裁量が大きい通商分野での権限をフル活用する戦略だ。

極め付きは7月に制度案が公表された「国境炭素税」と呼ばれる国境炭素調整措置だ。環境対策が不十分な国からの輸入品に事実上の関税をかける構想で、EU並みの環境対策を求める。

軍事力に乏しいEUにとって、他国と対峙する際の最も有効な手段は高所得の約4億5千万人の市場を抱える経済力にほかならない。基準に沿わない製品の輸入を認めなければ、域外企業は製品を輸出できなくなり、従わざるを得ない。

ましてやその名目は環境対策だ。「保護主義的」「一方的」との批判は出るものの、「地球環境を守るため」と言えば反論しにくい。だが狙いは他国に気候変動対策を促すことだけではない。

一つは域内外の競争環境を公平にすることだ。EUは高い目標を達成するために厳しい環境規制を敷いており、企業の負担が大きい。緩い規制のもとではコストは小さくなり、同じ製品をつくるのでも企業の価格競争力に差が出てしまう。

もう一つは米中に並ぶグローバルなプレーヤーに躍り出ることだ。EUは世界に先駆けて先進的な規制を導入し、世界標準にするルール形成で存在感を発揮してきた。今回はその半歩先に踏み出す。EU高官は「我々の武器は貿易だ」と明かす。

さらにEU内にはこの考え方を環境だけでなく、他分野にも広げる計画がある。例えば、EUに敵対的な行動をとれば、貿易や投資、知的財産権などを制限して事実上の制裁を加える案だ。

EUの外交政策は全会一致が原則だが、通商政策は欧州委が主導できる。加盟国からの反発も予想され、実現は容易ではない。それでも確固たる指導力を示そうと、着々と歩を進めている。

(ブリュッセル=竹内康雄)』

北南米で異常気象、カナダで氷点下51度 ブラジルで洪水

北南米で異常気象、カナダで氷点下51度 ブラジルで洪水
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN27CNE0X21C21A2000000/

『【ニューヨーク=野村優子】北南米で相次ぎ異常気象が確認されている。カナダから米北西部にかけて寒波が襲来し、カナダ北部で今季の最低気温となるマイナス51度を記録した。ブラジル北東部では大雨による洪水が発生し、少なくとも18人が死亡した。

カナダの気象情報サービス、ザ・ウェザー・ネットワークによると、北極からの寒気の影響によりカナダ北部ノースウェスト準州のラビット・ケトルで26日、マイナス51度を記録した。寒波は1週間にわたって続く見込みで、現地当局は極寒警報を発令して住民に警戒を呼び掛けている。

寒波の影響は、米北西部にも広がっている。オレゴン州は23日、気温低下や大雪の影響を踏まえて緊急事態宣言を発令した。アラスカ州やカリフォルニア州では大雪などの影響で大規模な停電が発生した。

一方、南米ブラジルでは大雨による洪水被害が広がっている。北東部バイア州の当局によると、11月から続いた大雨の影響で同州の少なくとも18人が死亡し、280人以上が負傷した。25日には2つのダムが決壊し、さらなる被害を引き起こしている。』

欧州に原発回帰の動き 脱炭素・エネ安保で

欧州に原発回帰の動き 脱炭素・エネ安保で、日本は停滞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR180F40Y1A211C2000000/

『欧州で再び原子力発電所を活用する動きが活発になっている。フランスや英国が主導する。電力の安定供給を保ちつつ気候変動対策を進める。欧州連合(EU)域外からの天然資源に依存しない、エネルギー安全保障の観点からも重視している。東日本大震災から10年を迎えた日本では原発に関する真正面の議論を避け、原発の位置づけは定まらないままだ。

EUのフォンデアライエン委員長は10月に「我々には安定的なエネルギー源である原子力が必要だ」と述べた。EUは経済活動が環境に配慮しているか判断する基準「EUタクソノミー」で原発を「グリーン電源」に位置づけるか、加盟国間で激しい議論が続く。

マクロン仏大統領は11月、国内で原発の建設を再開すると表明し、英国も大型炉の建設を進める。両国は次世代の小型炉の開発にも力を入れる。オランダは12月半ば、総額50億ユーロ(約6500億円)を投じる、原発2基の新設計画をまとめた。

原発回帰の最大の理由は気候変動対策だ。EUは2030年の排出削減目標を1990年比40%減から55%減に積み増した。原発は稼働中の二酸化炭素(CO2)の排出がほとんどない。風力や太陽光と異なり、天候に左右されない。EUは19年時点で総発電量の26%を原発が占める。

11年の日本の原発事故を受け、EUは原発の安全規制を強化してきた。17年には原発を安全に運用するには50年までに最大7700億ユーロの投資が必要との文書を作成。認可基準の擦り合わせや、原子炉の設計標準化などの対応を求めている。

ドイツは他の加盟国と一線を画し、メルケル前政権が22年末までの「脱原発」を掲げる。新政権もこの方針を堅持するものの、ロシアへの天然ガス依存やガス価格高騰で脱原発方針を延期するよう求める声もある。

日本は原発活用に向けた議論が停滞している。エネルギー基本計画では、30年度に電源に占める原発比率は20~22%を目標とする。ただ、達成には再稼働済みの10基に加えて再稼働をめざす17基を動かす必要がある。日本は長期の戦略を欠く。

9月の自民党総裁選では次世代原発の小型炉などの新増設を進めるべきだとの意見も出たが、政策の変更も含めて活用の是非の議論すら封じる流れは変わっていない。

日本では事故を受けて国民の反発も根強く、政府はより丁寧な説明が求められる。事故処理や放射性廃棄物の最終処分場も決まっていない。

日本は再生可能エネルギーの導入でも周回遅れだ。政治が責任を持って議論を主導せずに先送りを続ければ、脱炭素の取り組みは遅れるばかりだ。(ブリュッセル=竹内康雄、気候変動エディター 塙和也)

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竹内純子
国際環境経済研究所 理事・主席研究員
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ひとこと解説

メディアが報じてきた「世界は脱原発」はあまりに単純化した論調でした。

西洋諸国において原子力の新設が停滞したのは、自由化した場合、同じ発電事業なら、より楽というかリスクの少ない再エネあるいは(気候変動問題がこんなに盛り上がる前であれば)石炭の開発の方が資金がつきやすかったから。

震災前国産化率99%と言われていた日本の原子力技術はこの10年で弱体化してしまいましたが、中国は2010年以降39基が送電開始、ロシア11、韓国6、インド4(原産協会)。

再エネポテンシャルに乏しいわが国では少なくとも、脱炭素と脱原発の二兎は追えません。安全性効率性を高めてうまく使う方法を考える必要があります。

2021年12月28日 10:00

上野泰也のアバター
上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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別の視点

フランスや英国で原子力発電を推進する動きが出やすい背景には、これらの国は地震が少ないという事情もある。

日本のお隣の韓国も半島部分は地震が少ない国であり、原発積極論が出やすい。

これに対し、日本の場合、地震が多い国である上に、東日本大震災という惨禍を経験しており、国民感情として原発には一定の抵抗感があるとも言えるだろう。

気候変動対応として原発をどこまで活用するかを議論する際は、他国で積極活用の動きがあるという点にとどまらず、多面的な思考を経て国民の合意形成を図る必要がある。

2021年12月28日 7:38

福井健策のアバター
福井健策
骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士
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分析・考察

上野さんのご意見に尽きるでしょう。日本では、「欧米ではこうなっている」というだけで、あたかも「そうすべき」理由になるような倒錯がよく起きます。

が、他国の事情は参考情報として活用すべきであって、それ自体は本来何らの行動決定の理由にもなりませんね。

なお、欧州に学ぶのであれば、2030年までに32.5%ものエネルギー消費の削減目標を打ち出し、「エネルギー消費の効率化(energy efficiency)こそ、最大のエネルギー源であり競争力強化策」と明言したEUの「エネルギー効率化指令」など、もっと注目されても良いと思います。

2021年12月28日 7:56 (2021年12月28日 8:54更新)

鈴木一人のアバター
鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

欧州は一方で原発事故のリスクに対する根強い反原発の動きがあるのに対し、気候変動やエネルギー安全保障の観点から積極的に原発を推進する勢力もあり、完全に二分している。

しかし、近年、気候変動への関心が高まったことと、ロシアへの天然ガスの依存への懸念が高まったことで、原発推進勢力が優勢になりつつある。

これが最終的に積極的な原発活用という流れになるかどうかはこれから次第だが、少なくとも、原発を選択肢として議論が進んでいることは間違いない。

2021年12月28日 2:56 』

[FT]LNG船、航海途中で欧州へ進路変更 上乗せ金高額に

[FT]LNG船、航海途中で欧州へ進路変更 上乗せ金高額に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB224N50S1A221C2000000/

 ※ 『「欧州は明らかに大量のLNGを入手できるよう価格を設定しており、それだけのLNGが必要だ。これがなければ、天候次第で供給の状況が非常に深刻になりかねない。在庫水準はすでに低く、冬の終わりまでには極端に低くなっている」』…。

 ※ ということで、なりふり構っていられなくなったんだろう…。

 ※ 口では、「キレイなことを言って」いても、やってることはこういうものだ…。

 ※ 最後は、「カネに物を言わせる」ことになる…。気候変動対策、脱炭素はどうなった…。

 ※ まあ、「ワクチンかき集め」見てても、そういうものだな…。

『欧州各地でガス価格が過去最高値に急騰するなか、液化天然ガス(LNG)を積んでアジアへ向かっていた船が、大幅なプレミアム(上乗せ)を払う用意のある欧州の消費者に供給するために航海の途中で進路を変えている。

欧州は天然ガス価格の急騰を受けて、タンカーによる調達を急いでいる=ロイター

今年はおおむね、電力を生産するために発電所で使われるLNGの出荷を巡り、中国や日本、韓国のバイヤーが欧州勢より高い値段をつけて供給を確保してきた。

だが、アジア各地で貯蔵タンクが満杯になった今、大西洋海盆からアジアに向かっていた出荷先未指定のLNGが荷主によって目的地を変更され、急騰する価格と需要に便乗するために欧州へ向けられている。主要パイプラインでロシア産ガスの供給が止まると、欧州のガス価格は21日に23%高騰し、1メガワット時あたり182ユーロの最高値を付けた。

米調査会社S&Pグローバル・プラッツのキーラン・ロウLNGグローバルディレクターは「欧州のガス市場は今、節目を突破した」と話す。「LNGの輸出先となるあらゆる主要市場が欧州の主要ガス拠点を下回っている」という。

プラッツのデータによると、欧州市場とアジア市場の価格差は現在、記録に残る限り最大に達している。

欧州向けとアジア向けLNG価格が逆転

スポット(随時契約)の欧州向けLNG出荷価格は100万BTU(英国熱量単位)当たり約48.5ドルで、アジアでは同41ドルだ。プラッツによれば、10月、11月にはアジアの価格が欧州の価格を平均5ドル上回っていた。

LNGタンカーの動向を調査している調査会社ICISアナリストのアレックス・フローリー氏は、「欧州のガス・スポット価格高騰を受け、珍しい荷動きが起きている」と話す。

アジアに向かっていた米国のLNGタンカーが進路変更して欧州の港へ向かったケースもあれば、オーストラリア産のLNGが十数年ぶりに欧州へ出荷されたケースもあった。

米国のLNGタンカー「ミネルバ・チオス」は12月15日にインドの近くを東に向かい航行していたが、その後進路変更し、今ではスエズ運河に向かう航路を進んでいる。欧州への引き渡しを示唆する動きだとフローリー氏は言う。

2隻目の米国のLNGタンカーは先週、マラッカ海峡の近くで進路変更しており、3隻目は今月、積み荷のオーストラリア産LNGの大半を中国で降ろした後、残る一部を24日にスペインのバルセロナに届ける予定になっている。

フローリー氏は「オーストラリア産LNGが欧州に入荷するのは、英国とフランスに何度か届けられた2009年以来初めてだと見られている」と話す。

大量調達のための価格設定

世界最大の独立系LNG商社グンボルの創業者兼最高経営責任者(CEO)のトルビョルン・トルンクビスト氏は、今月は通常の出荷以外に15~20カーゴ(1カーゴは約7万トン)が追加で欧州に向かい、1月も同量になると予想していると説明する。

「欧州は明らかに大量のLNGを入手できるよう価格を設定しており、それだけのLNGが必要だ。これがなければ、天候次第で供給の状況が非常に深刻になりかねない。在庫水準はすでに低く、冬の終わりまでには極端に低くなっている」

ICISのフローリー氏は、南米ペルーのパンパ・メルチョリータ地区にあるLNGターミナルと長期購入契約を結んでいる英蘭石油大手ロイヤル・ダッチ・シェルが19年以来初めてペルー産LNGを英国へ出荷していると話す。10月末以降、こうしたシェルの積み荷が7カーゴ英国に到着しており、「向こう数週間」でさらに4カーゴの到着が予定されていると言う。

大陸欧州と同様、英国のガス価格も年初来およそ650%高騰しており、24社以上の国内エネルギー業者が破綻に追い込まれた。

英国の卸売価格と連動する先物契約は15%上昇し、1サーム(約29・3キロワット時に相当)あたり4.29ポンドの最高値をつけている。今月で77%の上昇で、原油換算で1バレル320ドルに相当する価格だ。ブレント原油は現在、1バレル72.41ドルで取引されている。

ガスは英国の発電量の約40%を占め、英国家庭の大半が暖房にガスを使っている。英国は供給全体の約2割をLNG運搬船による入荷に依存している。

By Tom Wilson, Neil Hume and Valentina Pop

(2021年12月22日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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[FT]米国のLNGを求める中国 エネルギー・環境は協力

[FT]米国のLNGを求める中国 エネルギー・環境は協力
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB220KP0S1A221C2000000/

『天然ガスへの需要が旺盛な中国が米国の液化天然ガス(LNG)大手と相次ぎ輸入契約を結んでいる。米中関係は緊張が高まっているが、二大国のエネルギー貿易は拡大している。
中国は今年日本を抜いて世界最大のLNG輸入国となる一方、米国は今年1〜9月の中国向けLNG輸出で豪州に次ぐ2位となった(中国・大連にあるLNG輸入施設)=ロイター

20日には米ルイジアナ州で輸出プラントを2カ所建設中の米ベンチャーグローバルLNGが、中国最大のLNG輸入企業である国営の中国海洋石油(CNOOC)と年350万トンを輸出する2つの契約で合意したと発表した。

これにより今年10月以降に米企業と中国の顧客が締結した大型契約は7件となった。一部の契約期間は数十年に及ぶ。アナリストは中国が今年日本を抜いて世界最大のLNG輸入国となると見ている。一方、米エネルギー情報局(EIA)によると、米国のLNG輸出能力は来年オーストラリアとカタールを追い越す見込みだ。

新疆ウイグル自治区でのウイグル族の迫害、香港の民主化運動の弾圧、台湾近海での軍事活動など様々な問題をめぐり米中関係は緊迫の度を増している。これに対して中国は、米国が覇権主義的な行動を取り両国間で新たな冷戦を始めようとしていると非難する。
COP26の気候変動対策で合意した米中

その半面で両国はエネルギーや気候変動問題で協力関係にあり、相次ぐLNG契約はその証しでもある。先月開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)でも、両国は予想に反して気候変動対策で合意した。また原油価格の高騰を抑えるため、各国と協調して戦略石油備蓄を放出した。

「米中関係は多くの面で最悪の状態にある」。米コロンビア大学気候変動研究大学院の院長で、オバマ政権でエネルギー担当の大統領特別補佐官を務めたジェイソン・ボードフ氏はこう述べた。「だが緊張や対立があっても、エネルギーと気候変動は協力を深められる可能性がある分野だ」

ベンチャーグローバルは11月、国営の中国石油化工(シノペック)と年400万トンのLNGを20年間供給する契約を結んだ。また同社の商社部門ユニペックとの間でも計350万トンを供給する複数の短期契約を交わしている。CNOOCとの契約の一つも期間は20年だ。

ベンチャーグローバルのマイク・セイベル最高経営責任者(CEO)は、中国が二酸化炭素(CO2)排出削減のために火力発電所の燃料を石炭からLNGに転換していることが契約の背後にあると述べた。シノペックとの契約はCOP26の前に良いメッセージを発信できるようタイミングが計られたという。

「中国は他のアジア諸国に先駆けて契約すべく素早く動いている」とセイベル氏はフィナンシャル・タイムズ(FT)に述べた。「だが我々が契約を発表している間にも他の国々は対応するだろうし、すでに動き始めている国もある。さもなければ中国がますます有利になるからだ」

「世界中で米国産LNGの需要が高まり、また最も早く手に入るのが米国産LNGという異例の事態が起きている」
ガス供給源の確保急ぐ中国企業
中国海洋石油は20日、米ベンチャーグローバルLNGと年350万トンのLNGを輸入する2件の契約を結んだ。このうち1件は期間20年に及ぶ長期契約だ=ロイター

米LNG最大手のシェニエール・エナジーは中国が成長を下支えしてくれると期待する。同社は最近、国有化学大手の中国中化集団(シノケム)などに合計で年間300万トンを供給する契約を結んだ。

「今後数十年にわたり、アジアのLNG需要が業界の成長を支える原動力になるだろう。中でも中国は最大の顧客だ」とシェニエールのアナトール・フェイギン最高商務責任者(CCO)は10月にFTに述べている。

トランプ政権下では米国による中国製品への追加関税の報復措置として中国が米国産ガスに関税を課したため、LNG契約や輸出は低調だったが、次第に回復しつつある。中国では電力不足により経済活動が停滞し、世界的にガス価格が高騰しており、中国企業はガスの供給源確保を急いでいる。

金融情報会社リフィニティブによると、今年1〜9月の中国向けLNG輸出で米国は2位だった。1位はオーストラリアだが、米国と同様に対中関係は悪化している。

「中国はLNGの半分を米国とオーストラリアから輸入している。中国政府には歯がゆい状況だろう」。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のエネルギー・地政学部門を率いるニコス・ツァフォス氏はこう指摘した。「だが開発案件があれば行かざるを得ないのだから、致し方ない」
米国は重要な燃料供給源

中国外務省が発表した11月の米中首脳電話会談の要旨によると、習近平(シー・ジンピン)国家主席はバイデン米大統領に「天然ガス分野での協力関係を強化したい」と伝えた。中国が米国を重要な燃料供給源とみている証しだ。

しかし天然ガスの米国内価格が100万BTU(英国熱量単位)あたり6ドル(約680円)を上回り2008年以来の高値を付ける中で、ガス輸出は政治的に慎重な対応が求められる問題になりつつある。

米民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は米エクソンモービルや英BPなど主要天然ガス企業11社のCEOに書簡を送り、「国内価格の高騰を抑えるため天然ガス輸出の削減、一時中止または終了を検討したことがあるか」と尋ねた。

一部のCEOはLNGを輸出すれば他国が火力発電所の燃料を石炭から天然ガスに切り替えるのを米国が支援する機会になると反論した。
不都合な現実

コロンビア大のボードフ氏は輸出削減に動けば「信頼できるエネルギー供給源」としての米国に対する信頼が低下すると述べた。また欧州各国がロシアへの天然ガス依存に懸念を抱いていることを引き合いに出し、「どちらにも政治的、地政学的側面がある」と指摘した。

米経済を化石燃料への依存から脱却させようとしているバイデン政権にとって、天然ガス貿易の活況は政治的にいたたまれない面もある。CO2排出量が石炭より少ないとはいえ、天然ガスも温暖化ガスの主要な排出源だからだ。

これは世界が依然として化石燃料に大きく依存しており、米国が石油・ガスの主要生産国であるという「非化石燃料への転換を進める際の不都合な現実」を映し出しているとCSISのツァフォス氏は指摘した。「実際、この現実が米中両国を後ろめたくさせている」

By Justin Jacobs and Derek Brower

(2021年12月21日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2021. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
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中東・アフリカ、「脱炭素」が汚染招く 石油投資が撤退

中東・アフリカ、「脱炭素」が汚染招く 石油投資が撤退
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB2302M0T21C21A1000000/

『中東やアフリカの石油産業がグリーン化に逆行する懸念が強まっている。「脱炭素」で欧米企業のダイベストメント(投資撤退)が加速し、温暖化ガス削減に必要な技術の移転が進まないためだ。多くの場合、事業を引き継ぐのは産油国の国営会社や中国、ロシアの企業。株主や国際社会の監視の目が届かず、目先の利益優先で地球環境をさらに汚してしまう恐れがある。

イラク南部の石油都市バスラ。石油の生産や精製に伴って発生するフレアガス(随伴ガス)の燃焼による煙が影を広げ、硫黄のにおいが立ちこめる。「外から来た人はひどい環境に驚くが、われわれは慣れてしまった。文句を言う相手もいない」と住民のアッバス・イブラヒムさんは言う。

バスラの環境悪化を訴えてきたイラク人研究者は「環境問題への人々の関心は低い。あっても職を失うことを恐れて声を上げられない」と語る。

欧米メジャーが手掛ける油田ではフレアガスは製品化するのが一般的だ。温暖化ガスを減らせるだけでなく、事業の付加価値を高め収益にもつながるからだ。フレアガスには有毒な硫化水素が多く含まれ環境への負荷がきわめて大きい。

世界銀行グループの国際金融公社(IFC)は6月、バスラのフレアガス削減のための期間5年、3億6000万ドル(約410億円)の融資を決めた。中国銀行やシティバンク、ドイツ銀行、三井住友フィナンシャルグループなど8つの国際金融機関が参加した。IFCはこれを「グリーン・ローン」と名付け、脱炭素ファイナンスの一環と位置づけようとしている。

しかし、湾岸の金融関係者はこうした化石燃料の関連事業に今後も民間資金が集まることには悲観的だ。「たとえ環境負荷を下げる事業でも化石燃料に関わるものは一緒くたで『悪い事業』と見なされる」と話す。年金ファンドなどの社会的責任投資を重視する組織であればなおさらだ。

欧米メジャーには「脱炭素」へ株主の圧力が強まる。英BPや米エクソンモービルはイラクの石油生産事業からの撤退を検討している。

売却資産の受け皿となる中国やロシア、中東の国営企業も環境重視を掲げる。しかし、株主や環境団体、政府からの圧力は欧米に比べずっと小さい。サウジアラビアのサウジアラムコやアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油(ADNOC)など一握りの例外をのぞき、中東の石油会社には欧米のような環境技術がない。

化石燃料ビジネスの売却は個々の企業単位ではグリーン化の成功といえるが、こうした資産を買って事業を引き継ぐ企業は環境意識が低い可能性が大きい。世界の石油ビジネスの大半を担うのは産油国の国営企業や未公開企業だ。

再生可能エネルギーや水素といった新エネに「バブル」といわれるほどマネーが殺到する一方、既存事業の環境負荷を下げるという課題は忘れられがちだ。

ボツワナのレフォコ・モアギ鉱物資源相は日本経済新聞の取材に「われわれのベースロード電源を支えるのは石炭だ。水力も原発もない。化石燃料をグリーン経済に生かせるような技術が必要だ」と語った。

米国による制裁で石油施設が老朽化するイランは自力で増産や新規開発を目指すものの、環境配慮で欧米との意識の格差は大きい。石油省の元高官は日本経済新聞の問いに対し「石油産業のグリーン化とはどういう意味か」と尋ね返したほどだ。 

10月末から英北部グラスゴーで開かれた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)では各国が、競うように「カーボンゼロ」の目標を掲げたが、エネルギー転換に向けた具体的な道筋の議論は不十分なままだ。

中東やアフリカは、干ばつや砂漠化など気候変動の打撃を真っ先に受ける地域でもある。その場しのぎの脱炭素目標や上辺ばかりの環境宣言は、問題を解決しないばかりか、事態を悪化させかねない。 

(ドバイ=岐部秀光)

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

環境問題に関する南北問題は、単に先進国の勝ち逃げといった問題だけでなく、脱炭素に向けて必要な技術移転や、脱炭素に向けた設備への投資といったことが途上国だけでは賄いきれないため、支援のないまま脱炭素と言われても、出来ることが限られている、ということもあるのだろう。

一つの普遍的な価値を、環境や条件の異なる国々で実現することは、容易ではない。

2021年12月22日 11:23

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松本裕子
日本経済新聞社 ESGエディター
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ひとこと解説

米ブラックロックは非上場企業も含めて気候変動関連の情報開示をするべきだとしています。

この記事で指摘しているような市場の監視の目が行きわたらない企業が化石燃料事業の主体になれば、気候変動対応が進まなくなるとの懸念が背景にあります。

化石燃料関連の事業が将来的に収益を生まない「座礁資産」になると言われるなか、こうした事業をどうやって終わらせるのか、誰が最後まで責任を持つのかについては、もっとしっかり議論しなければいけない点だと思います。

2021年12月22日 10:50 』

欧州発「緑のルール」 主導権なき日本に足かせ

欧州発「緑のルール」 主導権なき日本に足かせ
第4の革命・カーボンゼロ グリーンポリティクス(3)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR29EJG0Z20C21A9000000/

『「このパートナーシップは世界初の試みだ」。英グラスゴーで開かれた第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は仏独英と米国を巻き込み、南アフリカの脱石炭を支援する枠組みを宣言した。

計85億ドル(約9700億円)を投じて再生可能エネルギーを導入し、石炭火力発電所の閉鎖を前倒しする。これまで新興国に脱炭素を迫る一方だった欧州が歩み寄った。これには伏線がある。

「国境炭素調整措置(CBAM)のような貿易障壁は差別的で、重大な懸念がある」。8月下旬、中国やインドなど新興国の環境相は共同でこんな声明を出した。

環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税を課すCBAMは「国境炭素税」と呼ばれ、EUの欧州委員会が7月に制度案を公表した。規制が緩く、安いコストで作られた域外からの輸出品に対し、EUの排出量取引制度に基づく炭素価格を課して競争環境を公平に保つ狙いがある。

これを発展途上国は自由貿易を妨げ経済発展に悪影響をもたらす「緑の壁」とみた。国連貿易開発会議(UNCTAD)の分析ではCBAMの導入で先進国の歳入が増え、途上国は減る。EUは新興国支援に転じることで批判を和らげ、自らのルールを浸透させようともくろむ。

「ブリュッセル・エフェクト(効果)」――。ベルギーの首都ブリュッセルに本部を構えるEUが域内の規制を利用して、世界を有利に動かそうとする政治手法を、米コロンビア大のアヌ・ブラッドフォード教授は同名の著書でこう呼んだ。2005年に始めた排出量取引制度は、中国など多くの国や地域が導入。CBAMにつながった。

EUのグリーンポリティクス(緑の政治)は経済政策と巧妙に結びつく。19年12月にフォンデアライエン氏が欧州委員長に就任して以降、運輸、農業、金融などあらゆる分野に気候変動対策を組み入れてきた。

「環境問題が経済政策に結びついた2000年ごろから、ルールを作り世界標準にしようという発想に乏しい日本は、流れに乗り遅れた」。国際標準化機構の日本代表、多摩大学ルール形成戦略研究所の市川芳明客員教授はこう嘆く。

その象徴が自動車分野だ。EUは35年までにハイブリッド車を含む内燃機関車の新車販売を事実上禁止する計画を打ち出した。EU市場で販売を続けるために、メーカーは電気自動車(EV)へシフトせざるを得なくなった。こうした流れはEV開発に軸足を置く欧州勢に追い風となり、ハイブリッド車で覇権を握る日本勢には向かい風となる。

「ハイブリッド車が環境に良いという国際規格を日本主導で先に作るべきだった」と市川氏は指摘する。ルールに乗り遅れれば、いかに良い製品を作っても主導権を失う。グローバル競争の足かせとなり、投資マネーも引きつけられない。

世界持続的投資連合(GSIA)の調査によれば、20年の世界のESG(環境・社会・企業統治)投資額は35.3兆ドル。そのうち34%が欧州で、日本は8%だった。世界の名目国内総生産(GDP)に占める割合はそれぞれ18%と6%で、欧州に実力以上の資金が集まる。

22年春から東京証券取引所に上場する一部の企業で、気候リスク情報の開示が実質的に義務付けられる。主要国の金融当局でつくる「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の考え方が基本となり温暖化ガス排出量などを示す必要がある。これを怠ると評価は下がり資本の調達コストに跳ね返る。対応は待ったなしだ。』

ダイムラー、祖業作り直し EV専業化で雇用に痛み

ダイムラー、祖業作り直し EV専業化で雇用に痛み
ビッグBiz解剖(上)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR29EGU0Z21C21A0000000/

 ※ 『17年、従業員代表との間で29年まで独国内の従業員を解雇しないとの協定を結んだ。それを19年に社長に就任したケレニウス氏は事実上ほごにし1万人以上の人員削減を打ち出した。労働組合の強いドイツでは異例だ。』…。

 ※ そういう「荒技」まで、繰り出したんだな…。

 ※ 「EU域内では、”エンジン車”に未来は無い。」と、「見切った」わけだ…。

 ※ しかし、今年の冬は「厳冬」らしいぞ…。

 ※ EV車には、「逆風」だ…。

 ※ まあ、ダイムラーにとっては、「お金持ち」以外の層は、眼中にないんだろう…

『独ダイムラーの高級車事業会社メルセデス・ベンツが、2030年にも電気自動車(EV)専業メーカーとなる。自らが発明したエンジン車の開発に見切りを付ける。脱炭素の流れに対応するためだが、集積する部品産業には空洞化の危機が迫り、強さの基盤を失う懸念がある。工場再編や1万人を超える人員削減など、痛み覚悟で創業135年の事業の再構築を急ぐ。

ダイムラー本社がある独南部の都市シュツットガルト。その郊外に、8月に発売した高級EV「EQS」の組み立て工場がある。20年に稼働した「ファクトリー56」だ。
メルセデスの最先端工場「ファクトリー56」ではEVとガソリンの旗艦車種を混流生産=同社提供

高速通信技術「5G」の電波が飛び交い、組み立て中の車両や部品を積んだ400台を超える無人搬送車が動き回る。生産車種を柔軟に変更可能で、設備や工具が収集するデータを解析し品質を常に監視している。

ここがEV専業メーカーに変身するためのマザー工場となる。

1000万円を軽く超える旗艦車種「Sクラス」の世界唯一の工場で、5月からEQSを生産している。ガソリン車、ハイブリッド車(HV)、EVなど駆動システムが異なる車が同じラインを流れる。

生産担当取締役のヨルグ・ブルザー氏は「いつでもEQSを100%にする準備ができている」と話す。従来工場と比べ25%向上した高い生産性でEV需要の拡大に備える。他の主力工場にも同様の仕組みを展開する。

「EVファーストからEVオンリーへ」。オラ・ケレニウス社長は7月、こう宣言した。26年以降の新型車を全てEVにし、30年に販売もEVのみにすることを目指す。
カール・ベンツが1886年に発明した3輪自動車から自動車の歴史が始まった(独シュツットガルト、メルセデス・ベンツ博物館)

135年前、カール・ベンツがガソリンエンジン搭載の三輪車を特許申請し、同年ゴッドリープ・ダイムラーが四輪自動車を発明した。ダイムラーは、馬車を駆逐したエンジン車の父2人を創始者に持つ。その歴史を自ら断つ痛みは大きい。

17年、従業員代表との間で29年まで独国内の従業員を解雇しないとの協定を結んだ。それを19年に社長に就任したケレニウス氏は事実上ほごにし1万人以上の人員削減を打ち出した。労働組合の強いドイツでは異例だ。

主な人員削減の舞台がエンジン工場だ。本社近くと独ベルリンの工場で、ともに100年以上の歴史がある。それぞれ数千人規模の削減になるとみられる。前者は電池システムやモーターの拠点に、後者は生産システムなどの拠点に変わる。

エンジンを一つの柱にしてきたドイツの自動車産業ピラミッドは空洞化の危機にある。独メッツラー銀行のアナリスト、ユルゲン・ピーパー氏は「高級車市場でのドイツ車の高いシェアは完璧主義ともいえるエンジン技術のおかげだったが、(EV化で)その優位性は失われる」と指摘する。

シュツットガルト周辺に集積するエンジン関連メーカーへの影響は大きい。売上高の約半分がエンジン関連の独マーレは、電池冷却システムなどに活路を探る。だが18年以降8千人を削減した。売り上げの8割がエンジン向け部品の独エルリング・クリンガーは「世界が変わった」(広報担当者)と構造改革を急ぐ。

独Ifo経済研究所によると、30年までにドイツでエンジン関連の生産に携わる61万人のうち21万人の雇用に影響が出る可能性がある。
半導体不足のなかファクトリー56では逆に増産態勢に入った。写真の車種は高級EV「EQS」=同社提供

メルセデスは新たな強みの構築を急ぐ。出発点となるのがEQSだ。初のEV専用車台を採用し、航続距離は700キロメートル以上を確保した。価格は約11万ユーロ(約1400万円)からだ。「メルセデスらしいなめらかで力強い走りと高級感を実現できている」(モータージャーナリストの島下泰久氏)と評価は高い。

EQSではモーターや電池は外部調達だが、今後は内製化を進める。エンジンに代わる差異化の軸を、開発から生産までを自社で手掛ける垂直統合でつくり直す。

7月、モーター開発の英YASAの買収を発表した。伊フェラーリのHVでも使われる軽量・高出力モーターを高性能スポーツ車「AMG」など上位モデルに導入する。AMGは1人の職人がエンジンを組み上げてきた。技術力の象徴だ。YASAの技術やノウハウは今後、AMG以外のモデルでも生かしていく。
メルセデス・ベンツの旗艦EV「EQS」にはダッシュボード全面を覆うディスプレーを搭載=同社提供

電池もコモディティー(汎用品)と位置づけ調達を軸にしていたが、他社の協力を得て自ら工場を展開する。9月、欧州ステランティスと仏トタルエナジーズの電池合弁への33%出資を発表。世界で8つの工場を持つ計画だ。自社で先端品の小規模生産にも着手し、航続距離1000キロメートルを超える新型車を22年に発表することを目指す。

自前開発への転換は車載OS(基本ソフト)にも及ぶ。約3000人を新たに採用し、乗車体験の質の向上を狙う。24年にも投入する。

部品点数がエンジン車より格段に減るEVでは、スマートフォンのように主要部品まで外部委託する水平分業が広がる。参入障壁が下がり競争は激化する。米アップルが計画中と噂される「アップルカー」などが象徴的だ。車づくりの概念が変わるなか、ケレニウス社長は「受け身の姿勢でいるのは間違いだ」と変革への決意を示す。

【関連記事】

・アップルカーが開く世界 そして車はスマホに
・EV基幹装置で主導権争い 異業種参入、勢力図一変も
・EV化で塗り替わる業界地図 150兆円争奪戦 』

COP26、立ちはだかった中印 土壇場で文書修正

COP26、立ちはだかった中印 土壇場で文書修正
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR134J40T11C21A1000000/

『【英北部グラスゴー=竹内康雄】13日夜に閉幕した第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)。最大の焦点だった石炭火力の利用に関する合意文書の表現は「段階的廃止」から「段階的削減」に最終局面で書き換えられた。土壇場で表現を弱めざるを得なかったのは、10月31日に開幕して以降、先進国ペースで交渉が進んできたことへの新興国の強い反発があったからだ。

【関連記事】「気温1.5度内追求」COP26閉幕、石炭火力は段階的削減

もともと新興国に不満はくすぶっていた。そこで議長国の英国は12日までの予定だった会議を延長し、13日朝に合意文書の再改訂案を各国に提示した。「誰かが引っ張れば、合意は簡単に壊れてしまう」。全体会合でシャーマ議長は文書は微妙なバランスの上につくられたと説明し、合意を促した。

「満足はしていないが、妥協の精神を持ちたい」(カリブ海の島しょ国アンティグア・バーブーダ)。「完璧ではないが、受け入れられるものだ」(コスタリカ)。多くの途上国は不満をあらわにしつつ、受け入れると表明した。

ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)は「力強い文書だ」と評価し、欧州連合(EU)のティメルマンス上級副委員長が「緊急性を持って行動するよう背中を押す内容だ」と語ったのとは対照的だった。ここまでは先進国ペースで会議で進んでいたことを示す。

シャーマ議長が示した再改訂案に途上国は2つの点で不満があった。

一つは先進国から途上国への排出削減に向けた資金支援だ。先進国は2009年、20年までに年1000億ドルを支援すると約束したはずだった。その達成は22~23年にずれ込む。途上国は「約束を破った」と非難した。文書は「深い遺憾」を表明し、できるだけ早く達成するとの努力目標を示しただけだった。

もう一つは温暖化に伴う異常気象など「損失と被害」に関する対応だ。途上国は温暖化で受けた被害を相殺するため、先進国に具体的な資金支援計画をつくるよう求めていた。しかし気候変動論議のけん引役であるべき米国とEUが最後まで首を縦に振らず、新たな対話の場を設けるにとどまった。

強い政治力と資金力を持つにもかかわらず、自らに有利なように交渉を進める先進国。ボリビア代表からは「我々は炭素(カーボン)植民地主義にとらわれるのを拒否する」との声が漏れた。

それでも合意案(再改訂案)は採択されるとみられていた。会場の空気が変わったのは13日夕。中国とインドが立ちはだかった。「経済発展と貧困の撲滅を追求する途上国が、石炭を段階的に廃止するなどと約束できるだろうか」。インドのヤダフ環境相が反対論をぶち上げると、会場がざわついた。

土壇場での予期せぬ異議申し立てに会議(全体会合)は急きょ中断された。実質的に途上国の後ろ盾となっている中国もインドに同調。ケリー氏ら米中印EUの代表が別室に移動して協議に入った。数十分後に4人が出てきた後もシャーマ氏が手にノートを持ちながら最終的な文言調整に奔走した。

シャーマ氏が全体会合を再開すると、ヤダフ氏が「段階的廃止」から「段階的削減」に変更するよう逆提案。押し戻された先進国と、温暖化の影響をうけやすい島しょ国などは相次いで「最後の最後での表現変更には失望した」(マーシャル諸島)と発言したが、合意の採択自体は容認した。

最終局面で中印に譲歩したCOP26。先進国に気候変動対策の主導権は握らせないという新興国の意思表明にみえた。石炭廃止に力を注いでいた英国にとって、この変更は小さくない。「深い失望を理解する。全体の合意を守ることも重要だ」。英出身のシャーマ氏はうつむきながら語った。

【関連記事】
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森幹晴
弁護士・東京国際法律事務所 代表パートナー
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別の視点

気候変動枠組み条約の脱石炭火力は、単なる気候温暖化防止の視点だけでなく、欧米主導による脱炭素ベースの世界経済へのゲームチェンジの取り組みと捉える必要がある。

産業革命以来、化石燃料で先進国が築いてきた経済モデルを後から猛追する途上国を封じ込め、欧米が主導権を握る世界経済構造を構築する意図がある。

その中心領域がエネルギー業界と自動車産業だ。中国、インドが反対の声を上げたが、石炭火力に頼る日本が封じ込められる側に回るのは標準化競争に後手を踏むことになり、将来の世代と日本経済にとって得策でない。こうしたゲームチェンジの意図を理解し、政府、産業界を挙げて産業構造を変えていく戦略と覚悟が求められるだろう。

2021年11月15日 10:29 (2021年11月15日 10:30更新)

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高村ゆかり
東京大学未来ビジョン研究センター 教授
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ひとこと解説

赤川編集委員のコメントに賛同。

COP26の最後で石炭火力に関する文言が争点となった。合意文書の文言は「段階的廃止」から「段階的削減」に変わり、弱いものとなったとはいえ、エネルギーの選択は国の主権の問題であるとして、これまでの合意文書では「石炭火力」が言及されてこなかったことから考えると、「削減」の文言は石炭火力からのエネルギー転換の大きな潮流を感じる。
英国、イタリア作成の「石炭からクリーン電力への移行」声明は、主要経済国は遅くとも2030年代、世界で遅くとも2040年代の石炭火力廃止を盛りこむが、韓国、インドネシア、ベトナムも含む約50カ国が参加。こうした動きをしっかり見据える必要がある

2021年11月15日 5:18

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松尾博文
日本経済新聞社 編集委員・論説委員

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別の視点

欧州の失望はいかばかりでしょう。

これで石炭火力は延命したと考えるのも早計でしょう。

ただ、インドの立場で考えてみるとどうでしょうか。13億の民の代表としてCOPに臨んだ環境相はあの場であの一言を言わなければ国に不利益をもたらしたと責めを受けるでしょう。

パリ協定を維持・前進させるには、先進国が途上国に「気候正義」を押し付けるのではなく、排出削減に共に取り組み、利益も負担も分け合う環境の醸成が必要ではないでしょうか。

そうでなければ遠からずパリ協定は崩壊する、そんな気がします。

2021年11月15日 8:45 (2021年11月15日 8:50更新)

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赤川省吾
日本経済新聞社 欧州総局編集委員

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今後の展望

石炭火力の継続が容認された、と思って日本は安心すべきではありません。確かに石炭火力についての合意文書の表現は「段階的廃止」から「段階的削減」に弱められました。だからと言って欧米諸国が石炭火力の廃止を撤回するわけではありません。

日本の試練は来年のG7。議長国ドイツは温暖化対策を議題に据えるつもりです。

先日、次期首相ショルツ氏と夜半過ぎまで飲む機会がありました。長時間にわたる議論からは「環境問題を牽引しなくては」という使命感が感じられました。年内にも発足するドイツ新政権には環境政党の緑の党が与党として加わります。

G7で孤立しないためにも日本は石炭火力廃止に向かうべきだと私は考えます。

2021年11月14日 22:57 』

〔核のごみ処理の問題…。〕

 ※ 脱炭素、気候変動対策で「原発推進」はいい…。

 ※ しかし、「核のごみ(高レベル放射性廃棄物)」の問題は、どうなっているんだろう…、と思って、ちょっと調べた…。

フランスにおける
高レベル放射性廃棄物の処分について (2011年12月現在)
https://www2.rwmc.or.jp/pub/HLWKJ-201202ed-hd-FR.pdf

北欧の「最終処分」の取り組みから、日本が学ぶべきもの①
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/hokuou_saishushobun_01.html

※ この資料が、一番参考になった…。

※ いろいろ書いてあるが、ポイントはこれ…。

※ 「高レベル放射性廃棄物」の貯蔵・保管は、「ガラスで固めて」「地下にコンクリートの貯蔵施設」を建設して、「放射線対策」に気を配りながら、長期間保存・保管するしか無い…。

※ それは、みんな「分かっている話し」なんだが、問題は、その施設を「どこに、建築するのか?」だ…。

※ 処分地を選定済みで、建設が開始されたのは、「フィンランド」たった1国だ(それも、建設「開始」であって、「建設済み」ではない)…。

※ アメリカにおいても、一旦選定したものの、その後「長期にわたって中断中」という状況だ…。

※ 他国は、軒並み「調査段階前」だ…。

※ フランスは、「精密調査」中で、まだ結論が出ていないようなんで、「見切り発車」したんだろう…。

中国、核のごみ処理へ整備着々 四川省に初のガラス固化施設稼働
(2021/9/22 6:00)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/804250/

※ さすが、この国は「特別」だな…。

原発回帰を世論が後押し フランス、産業振興も

原発回帰を世論が後押し フランス、産業振興も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR100VZ0Q1A111C2000000/

『【パリ=白石透冴】フランスのマクロン大統領は9日、原子力発電所の建設を再開すると発表した。安定した電力供給を続けながら脱炭素を進めるには原発の活用が不可欠と説明した。原発に回帰した背景には、2022年の大統領選を前に原発に肯定的な世論を重要視するとともに、自国の原子力産業を支援する狙いもあるようだ。

「これがフランスの強いメッセージだ」。英国で第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開かれているなか、マクロン氏は温暖化対策の切り札として原発の建設再開を打ち出した。国内での新規着工は07年以来となる。

原発推進についてマクロン氏は演説で「ここ数週間、ガスや電力価格が高くなっている。急いで対策を取らなければいけない」と主張した。気象条件で発電量が左右される再生可能エネルギーだけでは安定的な電力の供給体制はつくれないとの考えを強調した。原発の活用で電力の安定供給と脱炭素の両方を実現できるとする立場だ。

AFP通信などによると欧州加圧水型原子炉(EPR)を最大で6基建設する計画を数週間以内に明らかにする見通し。マクロン氏は10月に発電規模の小さい原子炉「小型モジュール炉」を30年までに国内で複数導入すると表明している。11年の福島第1原発の事故などを受け、オランド前大統領が25年までに依存度を7割から5割に下げるとの目標を掲げて以来、仏は再び原発推進にかじを切る。

マクロン氏が原発推進に方針転換した背景には大統領選を前に世論を取り込みたいとの思惑が透ける。仏メディアが10月に報じた世論調査によると、原発を国の利点だと考える人は50%だった。19年の調査では34%で、原発が気候変動対策に必要だという仏政府の主張は支持を広げている。再選を狙うマクロン氏に国民の反応は重要だ。

原子力産業を支援する狙いもある。フランスが手掛けたEPR建設はフィンランドで工期が大幅に遅れて巨額の赤字を出したほか、仏北西部フラマンビル原発で07年に始めた建設計画はいまだに終わっていない。新たな原発建設で技術力や知見の向上を目指す考えだ。AFP通信によると、EPR6基をつくった場合、必要な費用は460億ユーロ(約6兆円)と見積もられる。

欧州連合(EU)は50年に温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げている。旗振り役であるフランスは目標達成で各加盟国に手本を示す必要もある。火力発電への依存度をさらに下げるためにも、仏にとっては原発の再建設以外に残った道は無いと判断したもようだ。

大陸欧州では国境を越えて互いに電気を融通し合っており、原発促進による安定的なエネルギー供給は欧州のエネルギー安全保障を守るという意味合いもある。欧州で深刻な問題となっているエネルギー価格急騰のような事態の再来を防ぐ狙いもある。

英国も原発の活用で温暖化ガス削減を進めるとの立場だ。10月、小型モジュール炉などの原発開発や技術の維持のために1億2000万ポンド(約180億円)の新基金をつくると発表した。遅くとも24年までに1基以上の新規の大規模原発の建設を決める方針も明らかにしている。

COP26の開催中というこのタイミングでの発表は、欧州各国にフランスの方針に賛同を呼びかけるという意味合いも込められている。今後、英仏の判断に追随する国が他にも欧州で出る可能性もある。

一方でドイツはこれまで脱原発を掲げており、石炭火力発電への依存度が高いとの指摘がある。9月の総選挙を経て発足する新政権が、原発についてどのような立場を取るのかに注目が集まっている。
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小山堅
日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員
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ひとこと解説

COP26でカーボンニュートラル目標追求など、脱炭素化を推進する世界の取組みが議論されている中、原子力大国の一つ、フランスが新たな動きに出た。

安定した脱炭素電源としての原子力の重要性に改めて着目し、原子力の新設再開を表明したのである。

フランスも2050年カーボンニュートラル目標を発表していたが、その道筋において原子力の重要性を再確認した格好だ。

今回の発表の背景には、欧州における最近の電力需給ひっ迫や化石燃料価格高騰の影響も考えられる。気候変動とエネルギー安全保障の双方に目配りして、再エネ一本足打法でなく、自らの強みでもある原子力を改めて推進する姿勢を示したフランスの今後の取組みが注目される。

2021年11月11日 11:36 』

日米も抜けたが「脱石炭」に署名した韓国、海外メディア「驚く」

日米も抜けたが「脱石炭」に署名した韓国、海外メディア「驚く」…韓国政府「履行の約束でない」
https://s.japanese.joins.com/JArticle/284569?servcode=200&sectcode=210

 ※ 『英グラスゴーで開催されている国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で韓国政府が4日に「グローバル脱石炭声明」に公式署名した後の説明が論議を呼んでいる。政府が「脱石炭加速化という方向性に同意したのであって、合意事項にすべて従うというわけではない」と説明すると、専門家らは「国際社会に約束しておいて履行できないこともあるというのは理解しがたい」と指摘している。』…。

 ※ 知ってた…、定期。

『英グラスゴーで開催されている国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で韓国政府が4日に「グローバル脱石炭声明」に公式署名した後の説明が論議を呼んでいる。政府が「脱石炭加速化という方向性に同意したのであって、合意事項にすべて従うというわけではない」と説明すると、専門家らは「国際社会に約束しておいて履行できないこともあるというのは理解しがたい」と指摘している。

これに先立ち韓国はCOP26で約40カ国と共に「主要経済国は遅くとも2039年までに石炭火力発電を中断する」という内容の脱石炭声明に参加した。政府代表で文勝ウク(ムン・スンウク)産業部長官が、地域単位では丘満燮(ク・マンソプ)済州道(チェジュド)道知事権限代行がそれぞれ署名した。

しかし中国・インド・オーストラリアなど世界最大の石炭消費国と2035年までに発電部門で脱石炭をするという米国、そして日本は参加しなかった。米経済専門誌フォーブスは韓国の署名について「驚く発表」とし「韓国は2030年代に石炭発電を完全に廃止する」と伝えた。

ソウル大のホン・ジョンホ環境大学院教授は「現在、韓国は新規石炭発電所7基を建設中で、このうち江原道高城(コソン)と忠清南道舒川(ソチョン)の2基は稼働を始めた」とし「新規発電所に関する具体的な代案なしに国際会議で脱石炭時期を大幅に操り上げる宣言に参加したのは一貫性がない」と指摘した。

西江大のイ・ドクファン化学科教授は「『国際声明に参加だけして合意事項は遵守しなくてもよい』という態度は国の格を落とす」とし「脱原発を推進しながら脱石炭時期を操り上げるというのは最初から不可能な約束」と話した。

現在、韓国の石炭発電比率は40.4%(2019年基準)で、米国(24%)・日本(32%)・ドイツ(30%)よりも高い。これを中断するには大規模な代替エネルギー源の確保が必須だ。

産業部の関係者は「声明には『主要経済国は2030年代までに、残りの国は2040年代までに脱石炭をする』となっている」とし「我々はすでに2050年までに石炭火力発電を廃止することにしたので(主要経済国でなく)2040年代に脱石炭をすることにしたその他の国に該当するとみている」と話した。声明で韓国を「2030年代に脱石炭をする国」と明示してはいないという釈明だ。そして「脱石炭の時期を2030年代に繰り上げることも、そのような計画もない」と明らかにした。 』

エネルギー密度が従来LIBの約2倍となる全固体電池

エネルギー密度が従来LIBの約2倍となる全固体電池
http://blog.livedoor.jp/nappi11/archives/5296046.html

 ※ 今日は、こんなところで…。

『大阪府立大学大学院工学研究科の林晃敏教授と作田敦准教授らの研究グループは、次世代型蓄電池の全固体リチウム硫黄二次電池(全固体Li-SB:All-solid-state Li-SB)用に高エネルギー密度を持つLi2S正極の開発に成功したと2021年10月28日発表した。

001 電極内のイオンの経路と伝導体の性質と硫化リチウムの容量の関係を解明し、それを踏まえて固体電解質を用いた正極:positive electrodeを作った。理想的な負極や電解質層と組み合わせた場合、エネルギー密度が従来のリチウムイオン電池の約2倍となる全固体電池が実現可能となる。(この事は、航続距離を倍増させる可能性を秘めている)

リチウム硫黄電池の正極は、電気を起こす反応に関与する高容量の活物質である硫化リチウム、電子の経路となる炭素、リチウムイオンの経路となるイオン伝導体などで構成されている。研究グループは、さまざまな種類のイオン伝導体を硫化リチウムと組み合わせた正極を作製し、イオン伝導体の性質と硫化リチウムの容量の関係について検証した。その結果、イオン伝導体の伝導性と分解に対する耐性が硫化リチウムの容量に大きく影響することが分かった。さらに大阪府大が開発した、分解耐性が高くイオン伝導度も比較的高い固体電解質を添加して正極を作製した。これまでにない大容量を実現したことで、大きなエネルギー密度を持つ全固体リチウム硫黄二次電池の開発が期待される。参照記事 参照記事

title Liは宇宙で最も多い元素である水素、それに続くヘリウムの次に多いとされており、人間が消費する分としては十分量があるように思えるが、実は恒星内の核融合などではできにくい構造のため、宇宙誕生以来、全宇宙規模で見て希少な元素の1つであるという。実際、地球上においても、産出国はチリやアルゼンチン、ボリビアなどの南米、オーストラリアなどに限られている。環境問題の観点から世界的にガソリン車からEVへのシフトが進む今後、日本が今後も安定的にLiを確保できるかどうかは1つの課題といえるが、この方面でも日本は革新的な技術を開発、研究している。参照記事:従来の200倍の速度でリチウムを二次電池などから回収する技術を量研が開発 

16361034210001 電気自動車(EV)バッテリー市場の地図を急変している。これまで世界のバッテリー市場は韓国企業が主導する「三元系リチウムイオン電池」が標準とされてきた。しかし、最近中国メーカーが主導するリン酸鉄リチウム(LFP)電池の市場が急成長しているほか、次世代のバッテリーで発火の危険性が無いとされる「全固体電池」で米日企業が一歩リードしている。「LFPバッテリー」は中国がシェア95%を占める。焦りの色を濃くした韓国メーカーはLFPバッテリー生産の検討に入った。

「全固体電池」では日本と米国のメーカーがリードしている。1990年代からパナソニックと共同で研究を進めてきたトヨタ自動車は最も多くの特許を保有しており、最近新製品を搭載したEVを公開した。トヨタは25年に全固体電池を商用化する計画だ。ソリッドパワー、クオンタムスケープ(クアンタムスケープ)、SES(11月2日、2025年商用化めざし韓国で開発生産を公表 107Ah:アポロ)など米国のスタートアップ企業も2025-26年に全固体電池を商用化する計画を明らかにしている。参照記事

上左図の有機電解液は可燃性の有機溶剤であり、そのため従来のLIBは熱問題を抱え、電解液中に異物が混入するなどしてセパレーターを破損させ、正負極が短絡すると異常発熱を起こし fig2、発火や破裂の危険性がある。

全固体電池とは、この有機系液体電解質を無機系固体電解質にしたもので、東工大・菅野教授×トヨタ加藤博士の研究によりLi9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3という材料が発見されたと報道されている。

その無機系材料は、有機電解質比2倍ものイオン伝導率を誇る超イオン伝導体で、それを使った製品は全固体セラミック電池となるらしい。参照記事 参照記事 

一方、すでにトヨタは2022年をめどに全固体電池を積むEVを国内発売する方針を固めた、というニュースを2021年7月の末に流しており、徐々に高性能な電池に切り替えていく方針の様だ。すでに上記のSESなどは、2025年に航続距離700kmのハイブリッドリチウムメタルバッテリーの商用化計画を公表している。参照記事 参照記事
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2021年10月29日、2022年半ばから世界販売を始める初の量産電気自動車(EV)である「bZ4X」の仕様を発表した。航続距離(1回の充電で走行可能な距離)は最長約500キロメートルで、先行する米テスラの「モデル3」や日産自動車の「アリア」に迫る。世界のEVメーカーの中では先頭集団に入り、テスラをはじめとする先行組を猛追する構えだ。

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電池容量は71.4キロワット時で、航続距離は460~500キロメートル前後になる。トヨタの開発担当者は「いたずらに航続距離を延ばすのではなく、長年の電動車のノウハウを生かした部分でトヨタらしさを出す」と語り、電池寿命や安全性の高い制御システムで特色を出し、電池は世界トップレベルの耐久性をうたう。経年劣化で少なくなっていく容量を10年後でも90%維持することを目標に開発し電池の電圧や温度を多重監視するシステムを採用し、発熱の兆候を検知して予防できるようにした。

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出力が最大150キロワットの「急速充電器」に対応し、30分でフル充電の80%分の電気をためることが可能だ。

外装に太陽光パネルも設置できるようにし、1年間で1800キロメートル走行する電力を生み出すことができる。

アウトドアや災害時に家電や住宅に給電することも可能にした。

トヨタは「TOYOTA bZ」シリーズとして位置づけるEVを、25年までに7車種発売する方針だ。今回はその第1弾にあたる。

日本と中国で生産するが、既存車両の製造ラインを活用し専用の拠点は設けないという。参照記事 過去ブログ:2021年11月テスラ、トヨタのEV車開発、電池に見る戦略の違い、、、

ここでは書ききれないが、電池の開発と同時に、日本ではそのための検査機器や検査技術、資源の再生や回収技術が世界に先駆けて開発されており、他国との技術の差が開くばかりだといわれ、これが資源の無さから生み出された日本の強みなのだろうが、海外企業も社運をかけて開発している。

全固体リチウムイオン 英語 意味 – 英語訳
https://tr-ex.me/%E7%BF%BB%E8%A8%B3/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA-%E8%8B%B1%E8%AA%9E/%E5%85%A8%E5%9B%BA%E4%BD%93%E3%83%AA%E3%83%81%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3 』

2021-11-1記事「‘Saved by coal’: Far from COP26, another reality in India」

2021-11-1記事「‘Saved by coal’: Far from COP26, another reality in India」
https://st2019.site/?p=17761

『インドのある貧民夫婦。国営炭鉱の「こぼれ石炭」を拾い集めては駕籠に背負い、仲買業者に売る。1日、歩いて2往復。それで、3ドルになる。夫婦で1日3ドルの稼ぎだ。

 また、改造自転車を使って、いちどに200kgの「こぼれ石炭」を運搬している男。夜の涼しいときに、16kmを輸送して仲買業者に届けると、2ドルになる。

 このようにして、インドの炭鉱近くでは、数千人がたつきをたてているのだ。

 げんざい、典型的な米国人は、典型的なインド人の12倍もの電力を消費している。
 そしてインドには、2700万人の、電力をまったく供給されていない貧民すら存在する。この人たちは、煮炊きに安価な石炭を使えるおかげで、生存できているのである。

 これから20年、インドにおいて、最も急激なエネルギー需要の増大が起きるであろう。

 世界最大の採掘企業体である「インド炭鉱」は、2024年までに年産10億トン以上にもっていく計画だ。

 インド全体で、400万人近くが、その生計を、石炭産業に関係して成り立たせている。

 製鉄だけでなく、「煉瓦」を造るのにも、石炭が熱源として燃やされなければならない。
 インド国鉄の収入は、半分が旅客輸送だが、残りの半分は、石炭輸送で成り立っている。』

Craig Rucker 記者による2021-11-2記事「COP26 Eco-Imperialism Threatens the World’s Poor」

Craig Rucker 記者による2021-11-2記事「COP26 Eco-Imperialism Threatens the World’s Poor」
https://st2019.site/?p=17761

 ※ 「気候終末論者」…。

 ※ ちょっと、注目しておいた方がいい「用語」だ…。

 ※ というのは、一神教においては、最終的には、人は「神の前で」「裁きを受ける」ことになるのだ…、という「思想(恐怖?)」が根底に横たわっているからだ…。

 ※ それは、生まれた時から、ずっと「刷り込まれている」ので、ある意味「潜在的な」「無意識下」にまで及んでいるものだと、考えられる…。

 ※ 人の精神の「奥底」にまで及ぶものであるので、そのストレスの「解消」は、非常に困難であろうと思われる…。

 ※ そして、その「解消」の試みは、現実世界において、様々な形で「噴出する」ことになる…。

 ※ 時には、「暴力的な」「ヒステリックな」形で…。

 ※ ただ、元記事の「Imperialism」は、「帝国主義」という意味で書いていると思われる…。

『気候終末論者たちは、世界の貧乏人民が窮乏のままに人生を終わることを望んでいる。
 COP-26に先立ってローマ法王とバイデンが会談した。そして、努力は世界人民の尊厳重視をベースとせねばならず、貧民のケアも進めなければならないと合意。

 しかるに現実には石炭敵視政策のおかげで世界中の燃料と食料品の需給が緊張し、貧乏人の生活を直撃しつつあるのだ。

 北半球が厳冬を迎えると予報されている。ますます燃料代は世界的に値上がりし、それに連れて食料品価格も暴騰するだろう。

 これまで化石燃料のおかげで先進諸国の経済は発展し、仕事が創出され、人々の健康状態が向上し、生活の水準が底上げされ、寿命が延びてきた。グラスゴーはこの進歩を、現在貧乏な集団に対して禁じようとする。

 国際エネルギー機関IEAが数字で警告している。化石燃料から、クリーンで持続可能なリニューアルなエネルギーへの転換を進めれば、これまでの数倍の、金属や鉱物の採掘・加工・流通が必要になる、と。

 すなわちEV車を1台作るには、ガソリン車の3倍の「銅」を消費せねばならない。地上設置式の風力発電塔は、天然ガス多段発電機(Coジェネ)にくらべて、同じメガワットあたり、9倍の原材料を投入しないとできあがらない。海上設置式の風力発電施設だと、その比率は14倍まで跳ね上がるのである。

 つまり化石燃料を掘らない代わりに、他の地下資源を今の十倍も掘り出すことになるのだ。その鉱山の近郷の自然はもちろん大破壊される。それにともない、おびただしい量の「不要物」が地上のどこかに堆積されねばならぬ。不要物は、採掘、加工、製品化後のすべての段階で爆増するから。
 人類がかつて体験したことのない規模の地表汚染が、これから進行するのである。気候終末論者が主導する偽善のおかげで。

 米国のアラスカ州やミネソタ州には、銅、コバルト、ニッケルといった、リニューアブルエネルギー産業が需要する地下資源が豊富である。グラスゴーまで押しかけてデモしている連中は、それらの採掘が環境汚染と撞着することにどう対応して行くつもりか、見ものだ。

 こうした連中の多くは、中共から北米に輸出されてくるナイキのスポーツシューズがウイグル人の強制労働の産物でないかどうかは気にしても、中共がアフリカで濫掘している地下鉱物には目をつぶる。それがクリーンエネルギー実現のためには不可欠だから。
 いやそもそもNBAは中共体制とビジネスすることに熱心なので、ウイグル人のことも本気で気にかけたりなどしてはいないのだ。』