岸田首相、インド太平洋計画表明へ モディ首相とも会談
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA176JB0X10C23A3000000/
『岸田文雄首相は20日午後、インドで演説し「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の推進計画を表明する。グローバルサウスと呼ばれる途上国への政府開発援助(ODA)を増やし、質の高いインフラ投資を進めると訴える。演説前にモディ首相と会談し協力を確認する。
岸田首相は20〜21日にインドを訪れる。20日にインド政府系シンクタンクのインド世界問題評議会(ICWA)主催の会合でスピーチする。東南アジアやアフリカ諸国による港湾などのインフラ整備を後押しするのが柱だ。
インフラ整備は中国の支援を受けた国が多額の債務を抱え、中国が港湾などの使用権を得る「債務のワナ」が問題視される。首相は日本が提起してきた「質の高いインフラ投資」を訴える。
海上の安全保障を巡り監視設備や巡視艇を提供し、関連技術の習得や人材育成を支えると表明する。航行の自由の確保や法の支配に基づく国際秩序の強化を呼びかける。
政府が2022年末に導入を決めた友好国の軍への安保上の無償支援を進めると提唱する。従来は非軍事に限定するODAが柱だった。途上国が抱える安保面のニーズをくみ取り、経済・安保両面で関係を深める。
ロシアのウクライナ侵攻に触れ、分断や対立ではなく協調を導くFOIPが重要だと唱える。重視するのがインドだ。インドは23年の20カ国・地域(G20)の議長国。1月には125カ国が参加する「グローバルサウスの声サミット」をオンラインで開き、影響力を示した。
モディ首相との首脳会談では5月に広島市で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)に向けた協力を確認する。岸田首相はG7議長国としてグローバルサウスへの関与を強める方針を伝える。
両首脳は途上国が直面する食料安保や不透明な開発金融を巡る課題解決に向けてG7とG20の連携を話し合う。法の支配に基づく国際秩序の維持や東アジア情勢についても意見交換する。
脱炭素やエネルギー分野の2国間協力も議題となる見込み。日本が受注したインドでの高速鉄道整備の推進も申し合わせる。
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察
目下の国際情勢を鑑みて、インドへのODA増額についてわからないことではない。ただし、インドもASEANも同じことだが、常に利益を追っかけて動く国である。この点を忘れたら、ODAはなんの成果ももたらさない。はっきりいえば、ODAは目的ではなく、手段にすぎない。インドへのODAの増額の目的はなにか、が問われている。そして、インドが付いてくるかどうかも問題である。ODAはfree lunchであってはならない。ODAも資本効率を最大化しなければならない。そのための戦略が問われている
2023年3月20日 8:11
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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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分析・考察
インドは1月に「グローバルサウスの声サミット」を開催し、グローバルサウスへの自らの影響力をG7諸国にアピールしようとしています。特に、グローバルサウスに強い影響力を持っている習近平主席とプーチン大統領が会談するタイミングで、岸田首相がモディ首相と米国の影響力が低下しているグローバルサウスへの援助政策を協議することは戦略的な意味があります。グローバルサウスは対ロ制裁や対中輸出規制により経済的な損失を受けることに不満と懸念を持っており、その立場をインドは十分に理解しているようです。今晩21時から、BSテレ東「日経ニュースプラス9」に出演して、岸田首相の訪印等を議論します。
https://www.bs-tvtokyo.co.jp/plus9/
2023年3月20日 8:38 (2023年3月20日 8:39更新) 』