中国、キューバのスパイ拠点巡る米紙報道「承知せず」

中国、キューバのスパイ拠点巡る米紙報道「承知せず」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM09A0D0Z00C23A6000000/

 ※ 今日は、こんな所で…。

『【北京=田島如生】中国外務省は9日、中国が米国を標的としたスパイ拠点の設置を巡りカリブ海の社会主義国キューバと密約を結んだとの米紙報道を否定した。汪文斌副報道局長は記者会見で事実関係を問われ「そのような状況は承知…

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『汪文斌副報道局長は記者会見で事実関係を問われ「そのような状況は承知していない」と述べた。

汪氏は「噂や中傷を広めるのは米国の常とう手段であり、他国への理不尽な内政干渉は米国の専売特許だ」と強調した。米国に対し、キューバへの経済制裁を解除して同国との関係を改善するよう主張した。』

新設原発、中国・ロシア製が7割 技術輸出で外交手段に

新設原発、中国・ロシア製が7割 技術輸出で外交手段に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2643R0W3A120C2000000/

『原子力発電所でロシアと中国が存在感を高めている。世界で建設・計画中の原発のうち約7割が中ロ製だ。技術輸出を外交に活用し、発言力を強めている。日米欧では東京電力ホールディングスの福島第1原発の事故を契機に新設計画が見直され、関連産業は停滞する。エネルギー安全保障の重要性が増すなか、巻き返し策が求められる。

世界のエネルギー政策を研究する海外電力調査会によると、チェルノブイリ原発事故を受けて安全対策…

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『世界のエネルギー政策を研究する海外電力調査会によると、チェルノブイリ原発事故を受けて安全対策が強化された「第3世代」の原発で、建設・計画中のものは1月時点で110基ある。中国製が46基と最も多く、ロシア製が30基で続く。全体の69%を中ロが占め、存在感が際立つ。

目立つのは自国外で建設する「原発輸出」だ。建設・計画中の110基のうち、自国以外で手掛ける案件は33基ある。最も多いのがロシアによる19基で、ウクライナ侵攻で欧米の反発が強まる中でも、原発では世界に強い影響力を保っている。

原発でロシアとトルコが接近

4月、トルコで建設中のアックユ原発で開かれた燃料搬入の式典に、ロシアのプーチン大統領もオンラインで参加した。ロシア国営原子力企業のロスアトムが手掛けるトルコ初の原発で23年中の稼働を予定する。西側諸国が懸念する両国の結びつきの深さを象徴する。
ロスアトムは5月にはエジプトで、同国初の原発としてエルダバ発電所3号機を本格着工した。ロシアは原発外交で自陣営に取り込む狙いがある。中央アジアや東欧などでも原発輸出で影響力を行使しようとしている。

ハンガリーのオルバン首相は今月、ロスアトム幹部と会談し、同社が南部で計画する原発の新設について議論した。

同国政府は欧州連合(EU)が、ロスアトムに制裁を科すことに反対している。原発などの関係の深さが、外交にも表れている。

ノルウェー国際問題研究所のカペル・スレッキ教授は英科学誌ネイチャー・エネルギー(電子版)で、「多くの新興国はロシアを肯定的に捉えている」と指摘した。ロシアが使用済み核燃料の受け入れを認めている点も新興国に魅力的に映る。

中国はパキスタンに資金援助

中国はパキスタンへの関与を深めている。パキスタン原子力規制庁は5月、カラチ原子力発電所の3号機の運転許可を出した。中国国有の原発大手、中国核工業集団などが設計した「華竜1号」で商業運転に移行する。

華竜1号は出力100万キロワット級で、米仏の加圧水型軽水炉(PWR)をベースに開発した。中国はパキスタンに資金援助し、カラチ2号機も建設するなど深く関わる。

アルゼンチンに建設する計画もある。米国がアルゼンチンに計画中止を求めたが、同国のフェルナンデス大統領は押し切り建設を決定。中国メディアの取材に「米国は中国脅威論をあおるが、そのような考えにくみしたことはない」と述べた。

海外電力調査会の黒田雄二上席研究員は「中国は華竜1号を新興国に売り込んでおり、輸出が増えるのは確実だ」と分析する。エネルギー安全保障のカギを握る原発で中ロの優位性が高まれば、国際政治の場での発言力もさらに強くなる。

日米欧は次世代原発で巻き返し

中ロに対し日米欧が巻き返し策として期待を寄せるのが、「第4世代」の原発とされる小型モジュール炉(SMR)だ。

SMRは出力が30万キロワット以下と小さい。事故の際、燃料を冷やしやすく安全性が高いとされる。米ゼネラル・エレクトリック(GE)と日立製作所の合弁会社の米GE日立ニュークリア・エナジーや、米ニュースケール・パワーが20年代後半の稼働を目指している。

ニュースケール・パワーのSMR(写真はイメージ)

ニュースケール・パワーはルーマニアにSMRの設置計画があり、バイデン米大統領も「画期的な米国の技術の開発促進を支援する」と後押しする。米政府はタイやフィリピンなどにも売り込み、原発で中ロの膨張に歯止めをかけようと動く。

日本はJパワーの大間原発(青森県)など8基の新設計画がある。福島第1原発事故で安全性の基準が強化されたことを受けて審査が停滞してきたが、電力の逼迫を受けて政策を転換。岸田文雄首相は安全性を高めた「次世代革新炉」による建て替えなども指示した。

日本の原発の競争力は落ちている。資源エネルギー庁によると、10年には1314億円だった原発関連の輸出総額は20年に214億円まで激減した。原発新設に慎重だった米欧の多くも同じような状況に陥っている。

資源エネ庁の担当者は「技術者の退職などで日米欧のサプライチェーンは劣化し、技術面でも中ロに負ける場面が増えている」と指摘する。

濃縮ウランが急所に
原発の燃料も課題だ。天然ウランを処理する際の「濃縮」の工程が急所となっている。濃縮できる工場は限られ、濃縮ウランではロシアは世界でシェア首位を持つ。

4月、米国と英国、フランス、カナダ、日本は「核燃料同盟」を結成した。西側諸国の原発からロシア製の燃料を締め出すのが狙いだが、実現するのは容易ではない。

(GXエディター 外山尚之)』

台湾外交部長、6月中旬に欧州訪問へ ロイター報道

台湾外交部長、6月中旬に欧州訪問へ ロイター報道
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM098U50Z00C23A6000000/

『【台北=龍元秀明】台湾の呉釗燮・外交部長(外相)が6月中旬、チェコや欧州連合(EU)本部のあるベルギー・ブリュッセルを訪問する計画が明らかになった。ロイター通信が8日、関係者の話として「来週」訪問する予定だと報じた。

チェコで14日に開かれる安全保障関連の会議に同国のパベル大統領とともに出席し、講演する見通し。台湾の外交トップが外交関係のない欧州の国の首脳とイベントで同席すれば、極めて異例となる。

台湾の外交部(外務省)は報道について「コメントしない」としている。

呉氏の訪欧は2021年10月にチェコやスロバキア、ベルギーのブリュッセルを訪れて以来となる。その際はチェコで上院議長と会談した。19年6月にはデンマークで開催された民主フォーラムに出席した。

チェコは欧州諸国の中で台湾への支持が強く、3月には下院議長が率いる訪問団が訪台した。パベル氏は対中強硬姿勢で知られ、大統領就任前の1月に台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と異例の電話協議を実施した。』

パレスチナ議長が訪中へ 習近平氏、中東への関与拡大

パレスチナ議長が訪中へ 習近平氏、中東への関与拡大
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0993U0Z00C23A6000000/

『【北京=田島如生】中国外務省は9日、パレスチナ自治政府のアッバス議長が13〜16日の日程で中国を訪問すると発表した。習近平(シー・ジンピン)国家主席と会談し、イスラエルとの緊張緩和について話し合う。中国は中東地域への関与を拡大する。

中国外務省の汪文斌副報道局長は記者会見で「パレスチナ問題は中東問題の核心だ」と指摘。「中国は国際社会と協力し、問題の早期、包括的、公正かつ永続的な解決を促進するため…

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『「中国は国際社会と協力し、問題の早期、包括的、公正かつ永続的な解決を促進するため不断の努力を続ける」と述べた。

中国は中東地域で存在感を強めている。3月、7年にわたって断交状態にあったサウジアラビアとイランの外交正常化を仲介した。パレスチナ問題を巡っては、秦剛国務委員兼外相が4月にイスラエルとパレスチナの外相とそれぞれ電話し、双方の和平促進に貢献する意向を伝えた。

2022年も習氏は12月にサウジを訪れ、エネルギーや通信技術を含む戦略的包括協定を結んだ。原油の輸入をさらに増やす考えも表明した。

こうした状況に米国は焦りを強める。ブリンケン米国務長官は今月6日にサウジを訪問し、実力者ムハンマド皇太子らと会談した。米国務省によると両者は中東の安全保障やエネルギー分野での協力拡大を話し合った。』

中国、南ア首脳電話会談 ウクライナ巡り協議

中国、南ア首脳電話会談 ウクライナ巡り協議
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB100O00Q3A610C2000000/

『【北京=共同】中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は9日、南アフリカのラマポーザ大統領と電話会談し、ウクライナ情勢を巡り協議した。ラマポーザ氏は、南アフリカを含むアフリカ諸国の首脳らがロシア、ウクライナを訪問するとし「衝突の早期終結を推し進める」と述べた。中国国営中央テレビが報じた。

習氏は「ウクライナ危機に関する中国の立場は一貫している」と強調。「危機解決に向け有利な条件が積み上げられるよう期待する」と述べた。

アフリカ首脳らは16日にウクライナの首都キーウ(キエフ)でゼレンスキー大統領と、17日にロシアのサンクトペテルブルクでプーチン大統領と会談する見通し。』

米、追加支援2925億円 ウクライナ防空能力を強化

米、追加支援2925億円 ウクライナ防空能力を強化
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB100IY0Q3A610C2000000/

『【ワシントン=共同】米国防総省は9日、ロシアの侵攻を受けるウクライナに対する21億ドル(約2925億円)規模の新たな軍事支援を発表した。防空能力の強化を目指し、地対空ミサイルシステム「パトリオット」の弾薬や、地対空ミサイル「ホーク」などを追加提供する。

ロシアに対するウクライナの反転攻勢が本格化する中、国防総省は今回の支援について、ウクライナの短期的な防衛能力だけでなく「自国の領土を守り、ロシアを長期的に抑止するための能力確保につながる」としている。』

東南アジアの王朝史

東南アジアの王朝史
http://myasia.world.coocan.jp/OhtyoShi.htm

『(1) はじめに

 東南アジアには、アンコールワット、バガン、ボロブドール、アユタヤ、スコータイ、チャンパなど多数の遺跡がある。これらの遺跡を造った王朝の栄枯盛衰について考察する。 

(2) 海のシルクロードによる東南アジアでの国家形成

 紀元前後になると、インド人の航海者たちは、地中海地方の国が買い上げてくれる黄金、香料などを得るために、モンスーンを利用して東南アジアの群島部(現在のインドネシア、マレーシア)に来航していた。

 一方、中国人商人は、絹や黄金を持って、東南アジアを経て南インドに向かい、帰りには宝石やガラス製品を持ち帰った。

 このため、南インド、ベンガル湾、マラッカ海峡、インドシナ半島の湾岸に沿って海のシルクロードが完成していた。

<8世紀から9世紀頃の東南アジア>

 インド、東南アジア及び中国を結ぶ海上交易ルート(海のシルクロード)の途中に位置する現在のベトナム南部に、各地の港湾都市の連合体のようなチャンパ(2世紀末~17世紀)が興った。

 7世紀頃になると、東南アジアに来航したインド人航海者たちは、帰航のため又は中国に向かうためのモンスーンの時期が到来するまで、東南アジアに滞在する必要があった。
このため、居住用の設備、食料、物品の入手や、自分たちを警護してもらう目的で、現地の首長たちと結びついた。

 そのうち、富や武力などの支配力に抜きんでた首長が現れ、ついに、インドネシアのジャワ島にシャイレーンドラ朝(750年~832年)が成立した。

 シャイレーンドラ朝はジャワ島に大乗仏教の遺跡であるボロブドゥールを建造した。

 また、7世紀頃になると、帆船(ダウ)が大型化したため、インド人航行者は中国の絹織物などを求めて、マラッカ海峡を通過し、中国に向かうようになった。

 このため、マラッカ海峡の周辺のところどころに、モンスーン待ち、物産の集積、真水の補給などの要求を満たす機能を備えた都市国家が誕生した。

 このようにして、インドネシアのスマトラ島に、海のシルクロードの中継基地としての役割を担うシュリヴィジャヤ王国(7世紀半ば~9世紀)が登場した。

 なお、シャイレーンドラ朝とシュリヴィジャヤとの関係については、同一の国家であるか異なる国家であるかよく分からない。

(3) 中国南部からインドシナ半島にかけての民族の大移動

 7世紀頃から、中国の南部の人口が増加したため、中国南部に住んでいた、クメール人、ヴィエトナム人、ビルマ人、タイ系諸族の人々が、民族毎に時代を異にしながら南下した。

前アンコール朝(~802年)

 クメール人は、チャンパサック地方(現在のラオス南部でワット・プー遺跡の近く)に国家を建てたが、統一と分裂が繰り返された。
 
ピュー人国家(~832年)

 ビルマ人は、多数の村落を造り、村毎に精霊信仰「ナッ」を祀っていた。多数の村落をまとめ上げた王は、ポッパ山にナッ信仰の総本山を建てたが、832年頃に消滅した。

<11世紀頃の東南アジア>

(4) 群島部の衰退

 中国において勢力を誇っていた随・唐帝国が907年に滅び、中国が分裂すると、海のシルクロードを航行する船が減少したため、港湾都市国家は衰え始めた。

 そこに、926年ムラピ火山が大噴火を起こしたので、ジャワ島にあったシュリヴィジャヤ王国は完全に崩壊した。また、ボロブドールも19世紀まで火山灰の下に眠る。

(5) 半島部の繁栄

ヴィエトナム(李朝)
(1009年~1225年)

 中国南部から南下してきたヴィエトナム人は、中国の影響下で国家を存続させていたが、李朝は中国から独立した安定王朝を築いた。

バガン朝(1044年~1299年)

 9世紀前半にピュー人国家が忽然と消滅した後、ビルマ族による最初の統一国家であるバガン朝が興った。

 バガン朝は、王都バガンにおいて極めて多数のパゴダ(仏塔)と寺院を建てた。

アンコール朝の勃興及び隆盛
(802年~1432年)

 ジャヤバルマン2世は、802年に群雄割拠状態の国内を統一してシェムリアップ近郊のアンコールに王朝を興した。

 アンコール朝の歴代の王は、勢力範囲をインドシナ半島(現在のカンボジア、タイ及びラオス南部)に拡げると共に、アンコール・ワットやアンコール・トムなどの寺院を次々に建設した。

<13世紀頃の東南アジア>

(6) 半島部における栄枯盛衰

 アンコール朝の衰退

 アンコール朝は、雨期にメコン川を流れてくる多量の水をトンレサップ湖及び巨大な貯水池に貯えると共に、灌漑用水路網を完成させたため、この周辺では1年に3回も田植えができたので繁栄した。

 灌漑とは、泥土を含む水が土壌を再生させる働きであるが、シェムリアップ近傍は高低差が少ないため、多量の沈殿物が貯水池や灌漑用水路に堆積してしまう。

 このため、堆積された沈殿物を取り除く保守作業が必要になるが、年月の経過と共に多量の沈殿物が堆積し、ついに貯水池や灌漑用水路の保守作業ができなくなって、アンコール朝は衰退していく。

スコータイ朝
(1220年~1438年)

 アンコール朝の勢力が衰えると、現在のタイ国領内では、タイ系民族がスコータイを占拠して、タイ人最初の国家であるスコータイ朝を興した。

<14世紀頃の東南アジア>

(7) 半島部における大変動
 13世紀後半になると、中国の元朝(モンゴル)がインドシナ半島に対して数回にわたって軍事行動を起こした。

 ヴィエトナムは持ちこたえたが、多数のパゴダや寺院の建設により財政が疲弊していたバゴン朝は滅ぼされてしまった。

 アユタヤ朝
(1351年~1767年)

 現在のタイ国領内では、元軍の攻撃を受けたスコータイ朝が衰退し、代わりにアユタヤ朝が興った。

 アユタヤ朝は、チャオプラヤー川など河川の交通の要衝に建国されたため、貿易を通じて繁栄し、1432年には、ついにアンコール王朝を壊滅させた。』

企業がカーボンニュートラルに向けて動き出す(インドネシア)

企業がカーボンニュートラルに向けて動き出す(インドネシア)
政府は2060年の炭素中立目標
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2022/10c858161a5ccefb.html

 ※ しかし、「電力構成」は、こんなものだぞ…。

 ※ 「電気の缶詰め」と言われている「アルミの精錬」は、もの凄く電力を必要とする…。

 ※ じゃんじゃん「アルミ精錬」行って、じゃじゃん石炭燃やすのか…。

 ※ 二酸化炭素は、排出しまくりとなる…。

『2022年7月15日

脱炭素化は世界的な流れだ。インドネシアも、2030年までに国際支援なしで29%、国際支援ありで41%、温室効果ガスを削減する目標を打ち出している。さらに、2021年7月には「低炭素および気候レジリエンスに向けたインドネシア長期戦略2050PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(22.89MB)」を発表。2060年までにカーボンニュートラル(炭素中立)を達成すると表明した。しかし、インドネシアでは、今後の経済成長に伴い、エネルギー需要の増大が見込まれる。また、エネルギー供給源でも、石炭・天然ガスをはじめとする化石燃料への依存度が引き続き高い。その達成には多くの課題が存在する。

こうした中、脱炭素化に向け、企業による具体的な取り組みが進められるようになっている。例えば、ジャカルタ・ジャパン・クラブ(JJC、日系企業の商工会議所)は2022年4月、「カーボンニュートラル・タスクフォース」を設置した。炭素中立実現に向け日系企業の貢献を支援するのが、その狙いだ(JJCウェブサイト参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます )。インドネシアの地場企業にも、炭素中立目標を掲げるなど、脱炭素化に向け様々な取り組みが見られる。

本稿では、脱炭素に向けた動き始めたインドネシアの国営・民間企業の動きに焦点をあてる。あわせて、ネットゼロ目標や脱炭素化に向けた取り組み、日系を含む他企業との連携案件などについて概説する。

国営企業が2060年までのネットゼロを宣言

インドネシアでは、主な国有企業が2060年を目標年として炭素中立達成目標を公表している。エネルギーセクターで大きな役割を占める電力会社プルサハアン・リストリック・ネガラ(PT Perusahaan Listrik Negara、PLN)や石油・ガス会社プルタミナ(PT Pertamina)だけではない。運輸セクターのクレタ・アピ・インドネシア(PT Kereta Api Indonesia:鉄道)、工業セクターのププック・インドネシア(PT Pupuk Indonesia:肥料製造)、セメン・インドネシア(PT Semen Indonesia:セメント製造)、農林セクターのプルクブナン・ヌサンタラIII(PT Perkebunan Nusantara III:農業)、プルサハアン・ウムム・クフタナン・ネガラ(Perusahaan Umum Kehutanan Negara:林業)なども含まれる。それらは、インドネシア政府が2021年に示した目標と軌を一にする。ただし、その達成に向けては、多くの課題が存在する。

具体的な取り組み事例として、PLN(国営電力会社)は、2060年までの炭素中立目標の達成に向けて、化石燃料発電所の段階的廃止、再生可能エネルギー(再エネ)の導入を進めている。さらに、自動車の電動化に向けて、グラブやGoToグループといったオンライン配車・物流サービス大手とバッテリー交換設備の整備などで連携。電気自動車(EV)の家庭充電に対して、約24%の夜間割引を提供するなどの取り組みも進める。 さらに、インドネシア・バッテリー・コーポレーション(IBC、注)と協力。再エネ導入拡大に伴う電力供給安定化のため、(1)2022年内に5メガワット(MW)の二次電池電力貯蔵システムを設置することや、(2)PLNが保有するすべての発電所に同様の設備を導入すること、を予定している。また、国営石油プルタミナ、国営肥料製造ププック・インドネシアとの間で、グリーン水素・アンモニアの製造や再エネ供給に関して、協力を開始している。

しかし、インドネシアの電力供給は化石燃料への依存度が高いのが実態だ。国際エネルギー機関(IEA)の統計によると、2020年のインドネシアの発電電力量に占める石炭の比率は62.8%、石油2.5%、天然ガス17.6%。対して、水力、地熱、バイオマスなどの再エネは、17.1%にとどまっている(図参照)。

図:インドネシアの電源構成

2020年のインドネシアの発電電力量における石炭の比率は62.8%、石油が2.5%、天然ガスが17.6%と、化石燃料の占める割合が高く、水力発電、地熱発電、バイオマス発電などの再生可能エネルギーは、残り17.1%にとどまっている。

出所:IEA統計からジェトロ作成

このような背景事情から、今後、電力セクターの脱炭素化を進めていくことが必要だ。しかし、PLNが2021年10月に公開した電力供給計画(RUPTL Dissemination Presentation 2021-2030(インドネシア語)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます) (2.9MB))では、2030年時点でも石炭火力発電の比率が59.4%を占めると記されている。経済成長に伴って引き続き電力需要が増大していくインドネシアで、脱炭素化の達成は容易でなさそうだ(表1参照)。

表1:PLN電力供給計画(Electricity Supply Business Plan 2021-2030)のポイント
電力販売量の増加 2021-2025年 2021-2030年
5.20% 4.90%
エネルギーミックス(低炭素シナリオ) 項目 2025年 2030年
再生可能エネルギー 23.0% 24.8%
ガス 15.6% 15.4%
石炭 61.0% 59.4%
石油 0.4% 0.4%

出所:PLN公開資料よりジェトロ作成
民間企業には、2030年達成を宣言する企業も

一方で、民間企業の中には、2030年までの炭素中立達成を表明する企業もある。2030年と言えば、政府目標より30年も早い。

具体的な取り組みとして、例えばGoToグループ(オンライン配車、物流サービス・eコマース大手)は、電動バイク導入等の取り組みを進めている。2030年までに、自社が保有する全ての車両を電動化する計画という。同社は、すでにゴゴロ(台湾)製の電動スクーターを試験的に投入済だ。さらに、電動二輪車の導入台数を5,000台程度まで拡大する方針を示している。また、TBSエネルギ・ウタマ(炭鉱会社)との間で、合弁会社を設立し、電動二輪車の開発を進めている。

グラブも、電動バイクを段階的に数千台規模で導入する予定だ。電動バイクは、スムート・モーター・インドネシアから調達する。同社は、2022年末までに、電動バイクを含めた電動車の使用台数を1万 4,000 台にする計画を示している。

このほかにも複数のインドネシア企業が、脱炭素化に取り組んでいる。現在公表されている取り組みについてまとめたのが、添付資料PDFファイル(763KB) だ。

これらの企業の目標は野心的だ。もっとも、実効的なのかどうかについては、疑問が残る。例えば、インドネシアで電動車の普及は進んでいない。2021年のデータで、自動車全体の販売台数に占める電動車の割合は0.35%にとどまっている(2022年1月24日付ビジネス短信参照)。さらに、仮に自動車電動化が進んだとして、前述のとおり電力供給が引き続き石炭火力発電などの化石燃料に大きく依存している。そうしてみると、オンライン配車や物流サービス事業者の2030年時点でのカーボンニュートラル実現するためには、これまで以上の取り組みの強化が求められるのではないか。

日本も連携して取り組む

脱炭素化に向けて取り組むインドネシア企業には、日系をはじめとして外国企業などとの連携を進めているケースも散見される。特に、火力発電所でのアンモニア混焼、水素燃料、二酸化炭素回収貯留(CCS)、EVなど、先端的な技術をめぐり取り組み強化を目指している。こうした例としては、(1)IHIと提携するPLN(火力発電所で、アンモニア・バイオマスを利用するための技術を検証)や、(2)日揮ホールディングス、大阪ガス、INPEXと共同調査を行うプルタミナ(パームオイル搾油工程で生じる廃液から、バイオメタンを活用)などが挙げられる(表2参照)。日本企業との連携例も複数みられる。企業にとって、脱炭素分野が新たな事業機会になっていると受けとめられる。

表2:脱炭素化に向けた地場・海外企業の連携事例 企業名 パートナー 連携内容
プルサハアン・リストリック・ネガラ(PT Perusahaan Listrik Negara(PLN)) IHI PLN子会社の発電会社プンバンキタン・ジャワ・バリ(PJB)との間で、火力発電所でのアンモニアやバイオマスの混焼や将来的な専焼に向けた技術検証を実施するための基本合意書を締結。PJB所有の グレシック(Gresik)火力発電所などの既設ボイラを対象として、各種技術検討などを実施予定。その際には、アンモニアなどのカーボンニュートラル燃料の混焼、将来的な専焼の実施を想定する。
日本貿易保険(NEXI) インドネシアの電力分野脱炭素化に向け、取り組みに関する協力覚書を締結。インドネシアにで現実的にエネルギー・トランジションを実現させる上で、関連する PLN 向けファイナンス支援などを実施予定。
フランス開発庁 ジャワ・バリ両島では初の風力発電所(容量 200 MW)を建設する計画を公表。
プルタミナ(PT Pertamina) 日揮ホールディングス、大阪ガス、INPEX パームオイルの搾油工程で生じる廃液由来のバイオメタン活用に向けた共同調査に関して、契約を締結。スマトラ島とカリマンタン島で製造したバイオメタンをジャワ島などのインドネシア国内需要家に供給することを想定し、実現可能性を調査予定。
兼松 プルタミナの運送トラックの燃費改善による脱炭素化と物流効率改善への支援実証を実施。
三菱商事 グリーン水素およびグリーンアンモニアのバリューチェーン構築や、二酸化炭素回収利用貯留(CCUS)技術で協力する旨公表。
三井物産 CCUSの事業化を目指した共同調査を開始。
丸紅 パルプ製造事業で発生するバイオマス由来排出ガスからのCO2回収・貯蔵事業や、排出権の創出、バイオマス燃料の製造事業など、幅広い脱炭素事業の共同開発を実施。
SKE&S(韓国) CCS技術に関する協力。
インディカ・エナジー(PT Indika Energy) 台湾鴻海精密工業、ゴゴロ(台湾) インドネシア・バッテリー・コーポレーション(IBC)などと、EV関連産業のエコシステム構築に向けて覚書を締結。

出所:各社プレスリリースなどからジェトロ作成
今後の追加的な政策に期待

これまで述べたとおり、インドネシアでは、エネルギー関連の国有企業を中心として、企業レベルで対策が進み始めている。一方、現在公表されている取り組みだけでは、カーボンニュートラル達成の実現は容易でない。今後は、脱炭素化に向け様々な政策が導入されることが予想される。

例えば、インドネシア政府は炭素税を導入。まずは2022年から2024年まで、石炭火力発電所に限定して適用すると定めた(2022年4月6日付ビジネス短信参照)。この措置は、当初2022年4月の導入を予定していた。もっともその実施は、現時点で延期されている。いずれにせよ、2025年からは、段階的に炭素取引が完全実施(対象セクターが拡大)される予定だ(その際には、経済状況や関連セクター・関係者の準備状況、炭素税がもたらす影響が考慮されるとみられる)。また政府は2021年、石炭火力発電セクターが自主的に、パイロットプロジェクトとして排出権取引を実施した。

政策・企業の取り組みが進むなか、インドネシアは脱炭素化に向けて大きく転換し始めた。日系企業にとっては、ビジネスチャンスになる期待も高まる。一方で当地では、日本以外の各国政府・企業による取り組みも進んでいる。日本企業はインドネシアで存在感を示せるのか。いまや、その岐路に立たされている。

注:
IBCも国有企業。車載用電池製造を手掛けることでも知られている(2022年3月25日付地域分析レポート「EV車両・電池のサプライチェーン拠点化を目指す」参照)。

執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所 次長
松田 明恭(まつだ あきひさ)
2005年、経済産業省入省。日EU経済連携協定(EPA)交渉、英国のEU離脱に当たっての日系企業支援、ASEAN各国とのエネルギー協力(AETI)などを担当。2021年から現職。

執筆者紹介
ジェトロ・ジャカルタ事務所
スサンティ・ラハユ
2015年からジェトロ・ジャカルタ事務所で勤務。インドネシア経済概況および政策動向調査、人材関連業務などを担当。 』

ボーキサイトの輸出禁止 国内加工推進で―インドネシア

ボーキサイトの輸出禁止 国内加工推進で―インドネシア
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023061000164&g=int

『【ジャカルタ時事】インドネシア政府は10日から、アルミニウムの原料となるボーキサイトの輸出を禁止した。同政府は国内で鉱物を加工して付加価値を高めた上で輸出し、外貨収入を増やす政策を推進しており、ジョコ大統領が昨年12月、ボーキサイトの輸出を禁止すると発表していた。 』

環境活動家 グレタさん高校卒業 卒業の日も議会の前で抗議活動

環境活動家 グレタさん高校卒業 卒業の日も議会の前で抗議活動
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230610/k10014095621000.html

『スウェーデンの環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんが9日、高校を卒業しました。
毎週金曜日は、学校を休んで気候変動対策の必要性を訴える活動を続けてきたグレタさんは、卒業の日も抗議活動を行い、「気候危機は悪化の一途をたどっている」と訴えました。

スウェーデンの環境活動家であるグレタ・トゥーンベリさんは、15歳だった2018年から、毎週金曜日は学校を休んで、気候変動対策の必要性を訴える活動を続けてきました。
グレタさんは9日の金曜日、高校の卒業を迎え、この日も首都ストックホルムの議会の前で抗議活動を行いました。

「最後の学校ストライキ」として活動を行ったグレタさんは、スウェーデンで卒業する学生がかぶる帽子を身につけ、ほかの参加者とともに「気候の正義を、今こそ」などと、シュプレヒコールをあげました。

“気候危機は悪化の一途 声をあげるのは私たちの義務”

グレタさんは、「戦いは始まったばかりで、毎週金曜日の抗議は続ける。気候危機は悪化の一途をたどっていて、声をあげるのは私たちの義務だ」などと述べ、卒業後も気候変動対策の必要性を訴える活動を続けるということです。

また、グレタさんはウクライナ南部でのダムの決壊について、ツイッターに「この環境破壊は、ことばを失う残虐行為だ」と投稿していて、9日のインタビューでも、「とても恐ろしいことで、ロシアはみずからの行動と犯罪に責任を負う必要がある」と非難しています。』

英、ロシア機接近で緊急発進 バルト海上空

英、ロシア機接近で緊急発進 バルト海上空
https://nordot.app/1040060906610196619?c=302675738515047521

『【ロンドン共同】英国防省は9日、ロシア機がバルト海上空で北大西洋条約機構(NATO)加盟国の領空に接近し、英空軍が主力戦闘機タイフーンを2回にわたって緊急発進(スクランブル)させたと発表した。領空侵犯はなかった。

 8日にロシア空軍のスホイ27戦闘機と電子偵察機が接近。9日には爆撃機ツポレフ22Mや輸送機などが飛行していた。

© 一般社団法人共同通信社 』

ゼレンスキー氏が国際環境団体へ露の環境破壊訴える

北の国から猫と二人で想う事 livedoor版:ゼレンスキー氏が国際環境団体へ露の環境破壊訴える
https://nappi11.livedoor.blog/archives/5440650.html

『ヴォロディミル・ゼレンスキー大統領President Volodymyr Zelenskyyは国際環境団体の代表に演説し、ロシアによるカホフカ水力発電所Kakhovka HPP(HPP:Hydroelectric Power Plant )の破壊とウクライナ南部の洪水の影響をウクライナが克服できるよう支援するよう呼び掛けた。

「このロシアの環境破壊犯罪は、ここ数十年でヨーロッパ最大のものであるが、どうやらロシアの占領者は、その結果をさらに悪化させることを決定したようだ。」と述べた。図の赤丸は、ウクライナ側住民避難地区。
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領土の占領地域では、約12の集落が浸水しており、避難はまったく行われていない。人々は2日間、水の中に閉じ込められ、飲み水も食事も治療も受けずに屋上に留まっている。死者と負傷者の数はまだ分かっていない。記録映像 

文字通り毎時間、私たちはこの災害によってロシアが引き起こした被害についてますます詳細を確立しています。 30以上の集落で生活が破壊されている。多くの町や村の何十万人もの人々にとって、飲料水へのアクセスが大きく妨げられています。

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ダムの破壊により、燃料貯蔵所、化学薬品を保管する倉庫、肥料を保管する倉庫、および少なくとも2つの「炭疽菌埋葬地」を含む動物埋葬地(いずれも一時占領地域内)が浸水した。彼らに今何が起こったのかはわかりません。集中下水システムがなかった場所では、下水はすでに水の中にあり、あらゆるものを覆っています…
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このロシアのテロ行為によって破壊されたり、絶滅の危機に瀕した生態系の数はすでに数千に上る。 5万ヘクタール以上の森林が浸水し、少なくとも半分が死ぬだろう。何万羽もの鳥と少なくとも2万羽の野生動物が死の危険にさらされています。明らかに、カホフカ貯水池は何百万もの生き物の巨大な墓地と化しています。」

ゼレンスキー大統領は、状況は「極めて困難」であり、これは自然災害や気候危機の現れではなく、「この災害はプーチン大統領とその命令によるものだ」と強調した。大統領は、ロシアはこの大惨事に直接の関与があると説明した。英文記事 、、、

洪水で流された地雷も、今後の新たな問題として浮上している。過去ブログ:2023年6月対露国際協調に踏み込めないフランスの幼稚さ:
2023年6月9日:

ウクライナ南部ヘルソン州のダム決壊による洪水で、ロシアが占領する町、ノバカホウカで8日までに少なくとも5人が死亡した。

親ロシア派の当局者の話としてロシア国営タス通信が伝えた。ノバカホウカはダムから約4.8キロ離れた場所に位置する。タス通信によると、ロシアが任命したノバカホウカの首長ウラジーミル・レオンティエフ氏は「牛を放牧していた7人のうち5人が溺れたとの報告があった」「現在、残る2人の救助活動にあたっている」とロシアのテレビに語った。参照記事』

ダム決壊で、東岸ロシア占領地で被害甚大

北の国から猫と二人で想う事 livedoor版:ダム決壊で、東岸ロシア占領地で被害甚大
https://nappi11.livedoor.blog/archives/5440494.html

『ウクライナ南部ヘルソン州Kherson Oblastのロシア占領下オレシュキ Oleshky市(ドニエプル川左岸:東岸)にて、カホウカダム Kakhovka dam決壊による洪水で住民3名が死亡したと報告された。リシチュク市長Mayor of Oleshky, Yevhen Ryshchukが公共放送局(ススピーリネ)に伝えた。

同氏はまた、オレシュキの家屋は屋根の下あたりまで水位があがっており、通りの水位は3メートルに達しているとしつつ、同時にロシア占領政権は住民の避難を行っておらず、また自発的に町を去ることも認めていないと伝えた。

同氏は、オレシュキ共同体(オレシュキ市と隣接12村)はロシアによる占領が始まるまで約4万人が暮らしていたが、占領が始まると人口は約20%となる約8000人まで減っていた指摘した。

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リシチュク氏は、「私たちのところですでに1名が亡くなっている。現在病院でさらに2名だ。私は、死者はもっと多くなると思っている。多くの寝たきりの人は足が不自由だ。足が不自由な人がどうやって屋根に登れるというのだ」と伝えた。同氏はまた、ロシア軍人は夜遅くになってから住民の屋根からの避難を始めたとし、人々は病院に集まっていると伝えた。参照記事 

screenshot(14)、、右図で、青い丸が西岸ウクライナ支配地域の洪水被災地、住民避難地域を示している。ロシア占領地東岸の赤い丸が現在洪水被災地。

左図では、洪水発生前と発生後6月7日の川幅の変化を衛星写真で比較している。カホウカダム Kakhovka dam下流の、東岸(左岸、南側:ロシア占領地)が広範囲に水害を受けているが、これは東岸が西岸(右岸、北側)より低地で、湿地帯や運河の多いことが原因で、ここで陣地を抱えていた多くのロシア部隊が被災し流されたと報告されているが、詳細は不明。

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ダムの破壊により、約130キロ上流にあるザポリージャ原子力発電所の状況に対する懸念が高まっている。この貯水池は発電所に冷却水を提供しており、同発電所もロシアの管理下にあるが、現在、貯水池は急速に空になっている。しかし、国際原子力機関(IAEA)は、発電所を冷却するための代替の水FireShot Webpage Screenshot #847 – ‘Ukraine dam源があると述べている。

ヘルソン市khersonの南部は広範囲に水害の影響を受けているが、多くの住民はロシアの攻撃を避けて避難済みと言われていた。 英文記事 映像記事:『ロシア・プーチン氏に遠心力/反転攻勢を有利に“シェーピング作戦”とは』  過去ブログ:2023年6月予測されていたカホフカ水力発電所のダム破壊 ウクライナ: 』

どうもロシアの極東地方で、ウクライナ人の工作員が活躍しているような感じだ。

どうもロシアの極東地方で、ウクライナ人の工作員が活躍しているような感じだ。
https://st2019.site/?p=21204

『Paul Goble 記者による2023-6-8記事「Moscow Alarmed by Kyiv’s Interest in Russian Far East?and With Good Reason」。

   どうもロシアの極東地方で、ウクライナ人の工作員が活躍しているような感じだ。
 6月7日のタス通信は、ウラジオストックで一人の男が破壊活動の咎で起訴され、終身刑になりそうだと報じているのだが、姓名を記していない。これは、容疑者がウクライナ人であることを暗示している。

 ソ連時代に、極東まで流されたウクライナ人の集団が存在し、彼らは今もロシアには同化をしていないという。

 ※そうか、やっと《デューク東郷》の前半生も掴めそうじゃないか。

 この集団が反モスクワなのは当然として、密かに、極東の少数民族と共闘している可能性もある。

 ※ソ連のウラルより東の土地には、ポーランド人集団も散在していた。帝政時代からだ。彼らもロシアには決して同化せず、いつかモスクワを転覆させてやろうと念じている。
 ウクライナ人がたくさん暮らしているのは、極東の南の地域だという。

 1922年10月25日に赤軍がウラジオストックに入城したとき、まっさきに逮捕したのは、白衛軍の将校ではなく、200人ほどの、ウクライナ人運動家たちであったという。』

露軍の空挺隊員だったパヴェル・フィラティエフ。彼は144ページの、批判的な従軍回想記を2022-8にSNS上に公開。

露軍の空挺隊員だったパヴェル・フィラティエフ。彼は144ページの、批判的な従軍回想記を2022-8にSNS上に公開。
https://st2019.site/?p=21204

『Jennifer H. Svan 記者による2023-6-9記事「Expert Air Force translators post diary of dissident Russian paratrooper’s Ukraine ordeal」。

    露軍の空挺隊員だったパヴェル・フィラティエフ。彼は144ページの、批判的な従軍回想記を2022-8にSNS上に公開。すぐそれは消されたが、米空軍はコピーをとっており、2022-12に全編を英訳した。米空軍大学校内にはロシア語を教えるセクションがある。その教官がロシア語ネイフィヴなので、作業が早かった。

 寒い夜、寝袋なしで部隊は放置された。錆びたボロ小銃、サイズの合わない戦闘服と軍靴。レーションはすぐなくなり、上級部隊に連絡しようにも居所が分からない。

 露軍上層の戦略は単純だった。俺たち露兵の死体の山でウクライナを溺れさせればいいというものだった。

 フィラティエフは、乗せられたトラックが2-24に国境を越えるまで、任務がウクライナ侵略だとは知らされなかった。

 トラックに乗った仲間たちは皆、信じていた。すごい作戦計画に従っているのだと。
 だが、そんなご立派な計画など、立てられてはいなかったと、すぐに分かった。

 フィラティエフは眼の病気になったことから病院へ後送されて助かった。

 今、多くの外国語はAI翻訳機で簡単に英語に変えられるが、言語は生き物なので、最新の言い回しの意味をAIはぜんぜん理解していない。依然として、人間の翻訳者が時間をかけて作業する価値があるのである。

 たとえば「スターレイ」は大尉のこと。「コムバット」は大隊長のこと。いずれも最新のロシア軍営内のジャーゴンなので、辞書には出ていない。

 ソ連時代の重機関銃のことは「ユチョス」と俗称する。機械に直訳させると「岩石」としかならず、意味が通じなくなる。

 「罵りの表現」も1万種類以上あるので、ロシア語上級コースでは、それも教えなくてはいけない。

 フィラティエフは今、フランス国内に政治亡命者として暮らしている。』

豪州空軍がこれから退役させる古いF/A-18を40機強、ウクライナ軍に引き渡せるんじゃないか…。

豪州空軍がこれから退役させる古いF/A-18を40機強、ウクライナ軍に引き渡せるんじゃないか…。
https://st2019.site/?p=21201

『Alius Noreika 記者による2023-6-8記事「Australia could provide F/A-18 for Ukraine. Which are actually better than F-16」。

   豪州空軍がこれから退役させる古いF/A-18を40機強、ウクライナ軍に引き渡せるんじゃないかというので、両国ならびに米国の三者間で相談が始まっているという。

 米政府はこの「再輸出」について許可を与えるつもりだという。
 供与には、ロシア領空内へは飛ばさないという条件がつけられるだろうという。』

ダム決壊時に爆発の振動 地震研究機関―米偵察衛星は熱検知

ダム決壊時に爆発の振動 地震研究機関―米偵察衛星は熱検知
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023061000170&g=int

『ノルウェーの地震研究機関「NORSAR」は9日、ウクライナ南部ヘルソン州のカホフカ水力発電所のダムが6日に決壊した際に「爆発」の振動を感知したと発表した。AFP通信が報じた。

ダム決壊で住民6000人超避難 600平方キロ水没―ゼレンスキー氏、国際支援訴え・ウクライナ

 爆発は現地時間午前2時54分に起き、揺れは「マグニチュード1~2程度」。約620キロ離れたルーマニア北部でも振動が確認され、担当者は「小さな爆発ではない」と強調した。

 同機関は爆発の原因には触れていないが、これまでの損傷で決壊したのではないという見解に立っている。決壊を巡っては、ウクライナ、ロシア双方が相手側の仕業だと非難している。

 ロイター通信によると、米偵察衛星もダム決壊直前に爆発を検知していたと米当局者が9日、メディアに明らかにした。赤外線センサーが大きな爆発による熱を捉えたという。』

ダム破壊の下手人については、発破特有の「地震波」が記録されている。

ダム破壊の下手人については、発破特有の「地震波」が記録されている。
https://st2019.site/?p=21204

『ダム破壊の下手人については、発破特有の「地震波」が記録されている。宇軍が砲撃で壊したとするモスクワの宣伝はさいしょから破綻している。』

生き残るために、騙すために:陸上戦におけるデコイ (warontherocks.com)

生き残るために、騙すために:陸上戦におけるデコイ (warontherocks.com)
https://milterm.com/archives/3252

『陸上戦におけるデコイに関する記事を紹介する。科学・技術の進展によってデコイにも変化が必要になっている状況が興味深い。(軍治)

生き残るために、騙すために:陸上戦におけるデコイ

TO SURVIVE, DECEIVE: DECOYS IN LAND WARFARE

RÉMY HÉMEZ

APRIL 22, 2021

編集部注:この記事は、Défense & Sécurité Internationale(DSI)に掲載されたフランス語の論文から抜粋したものである。

多くの本や新聞で見られるモノクロ写真は、ノルマンディ上陸(D-Day)侵攻に不可欠な欺瞞(deception)を説明するために、4人の男性がバラックと思われる場所の近くで30トンのシャーマン戦車を運んでいる様子である。この有名な画像は奇妙である。もちろん、この写真に写っているのは膨張式の戦車(inflatable tank)で、1944年のノルマンディー上陸作戦にまつわる膨大かつ複雑な欺瞞作戦(deception operation)に使われたデコイである。

シャーマンM4戦車を模した膨張式の戦車(inflatable tank)で、フォーティテュード作戦の一環としてドイツ軍の航空偵察任務を欺くために作られたもの。写真:IWM

陸上戦術的デコイ(Land tactical decoys)とは、敵の観測者を欺くことを意図した装甲車、架橋能力、砲弾、レーダーなどの替え玉装備(dummy equipment)や施設(建物、橋、滑走路)である。古来より戦い(warfare)において標準的に使用されてきた。

数え切れないほどの例の中で、比較的現代的なデコイとしては、アメリカ南北戦争のクエーカー砲(大砲を模した丸太)、1918年9月のメギドの戦い(Battle of Megiddo)でイギリスが使用した木と毛布でできた「馬(horses)」、1942年のバートラム作戦(Operation Bertram)のために女王陛下の土木工兵が作った8,400台の替え玉車両(dummy vehicles)や各種装置などである。最近では、1990年と1991年のイラク、1999年のコソボのセルビア人、シリアとイラクの自称イスラム国、イエメンのフーシ派、2020年のナゴルノ・カラバフのアルメニア人とアゼルバイジャン人が使用した敵機を欺くさまざまなデコイがある。

木と毛布でできた「馬(horses)」

当然のことながら、欧米諸国の主要な潜在的敵対者(adversaries)は、自国の軍隊にデコイの居場所を確保している: 例えば、中国は装備も充実しており、作戦行動においてデコイを重要な位置づけに置いているように見える。また、北朝鮮は自国の装備を保護するためにデコイを集中的に使用し、戦い(warfare)で広範に使用する計画であると伝えられている。

ロシアは、長年の軍事ドクトリンである「マスチロフカ(maskirovka)(欺瞞(deception))」に忠実であり、モスクワ地方のナカビノ付近に専門の部隊(独立迷彩第45連隊)を置くほど、デコイに気を配っている。

しかし、西側諸国の軍隊は、デコイ作戦を取りやめたように見える。その主な理由は、あまりにも長い間、「作戦上の快適さ(operational comfort)」、特に海外介入時の明白な航空優位の恩恵を受けてきたからである。

2014年と2015年のクリミアとドンバスでの紛争が示したように、西側の軍隊が、欺瞞(deception)とデコイを常用するだけでなく、より重要なことに、敵を観察し検出する手段も持っている、洗練された同等またはほぼ同等の敵対者(peer or near-peer adversaries)との衝突に備えることを真剣に考えるなら、それは変えなければならない。

対等な脅威に対抗するフランス軍の能力回復に尽力するフランス陸軍参謀長ティエリー・ブルカール元帥の言葉を借りれば、「あまりにも長い間、我々は策略の利用を軽視してきた。それは、敵を欺くことを組織的に試みなければならない中隊の戦術的機動に始まり、部隊にデコイ手段を装備させることに続く」。と述べている。とはいえ、欺瞞の価値(value of deception)が広く認められている一方で、それを地上で運用することは困難であることが判明している。

課題は、「致命的な可視化(fatal visibility)」の時代に突入したことである。検出手段はますます強力になっている。例えば、ハイパースペクトル・レーダー(hyperspectral radars)は、地表に見えるものだけでなく、土壌やガス、スペクトル異常などの物質の性質や分類を検出することができるようになった。レーダー画像のドメインでは、干渉計(interferometry)を使用することで、車両の通過などの活動を検出することができる。

さらに、センサーには人工知能(AI)を搭載することができる。実際、より多くのセンサー搭載機器が大量のデータを生成するようになると、人工知能(AI)はこれらの情報を体系的にラベル付けし、処理し、分析するための効率的なツールとなり得る。

信号システム、レーダー、測位手段、アクティブプロテクションシステムなどの使用により、軍事部隊の電磁的占有面積がますます大きくなり、遠隔攻撃手段(浮遊弾を含む)が民主化されていることも相まって、デコイの使用はより複雑かつ不可欠になっている。装備品の隠蔽や偽装が難しくなった今、デコイの重要性はさらに増している。

指揮官は、さまざまな目的を追求しながら、敵の注意を引くために作戦の中でデコイを使用する。まず、陸軍は、主に航空脅威(ドローン、飛行機、ヘリコプター)や間接砲火に直面して、施設、部隊、または設備の生存率を高めるためにデコイを使用できる。

これは、デコイが代替のターゲット(alternative targets)を提供することで、敵対者(adversary)が実際のターゲット(real targets)を攻撃する機会を減少させることができるためである。また、弾薬は高価であり、貯蔵量も少ないことから、相手に弾薬を消費させるという大きな効果がある。

第二に、デコイは、兵器、部隊、装備の数や位置について、敵対者(adversary)、特に航空偵察の目を欺くために使用することができる。

例えば、あるセクターで威嚇したり行動を起こさせないようにする、実際より多く見えるようにする、接触線(contact line)上の装備や軍人を入れ替え、実際には再配置しているにもかかわらず実際の部隊がまだそこにいるように見せる。偽の部隊を作って一方向に脅威を与え、主たる行動(main action)から敵の注意をそらす。敵の火力を引き付けて敵対者(adversaries)に自分の位置を明らかにさせ、火力にさらさせる。敵の進行を遅らせたり、敵を特定の方向に誘導したりするために、人工の障害物を設置する(デコイの即席爆発装置、地雷など)といった効果が考えられる。

デコイは、欺瞞作戦(deception operations)において最も有効な手段の一つである。1980年代末に行われた米陸軍の研究では、1970年代末に開発された旅団レベルまでの諸兵科連合戦(combined warfare)シミュレーションが可能なプログラム「Janus」を用いて、2個装甲中隊(計28両)のソ連戦車連隊に対する戦闘をシミュレートしている。

その結果、デコイを装備した部隊は効率が良く、デコイに対する敵の反応により、相手を発見する能力が28パーセント向上したことが分かった。友軍の戦車損失は18.3パーセント少なく、敵戦車の撃破数は4.5パーセント多かった。

これは、戦車の前にデコイを配置した場合に特に顕著で、戦車の後方や戦車の間にデコイを配置した場合はそれほどでもなかった。また、この研究では、実戦車1台につき1個以上のデコイを配置しても良い結果は得られず、戦車1台に4個のデコイを配置すると、欺瞞(deception)の試みが敵により明らかになるため、逆効果になる可能性があると結論付けている。

デコイを効果的に使うには、いくつかの基本的なルールに従わなければならない。まず、この方程式に忠実であるべきである。デコイは、それがシミュレートする機器よりも安価で、敵対者(adversary)がそれを検知または破壊するために要する時間と労力よりも少ない材料と設置に要する時間と労力でなければならない。したがって、デコイは何よりも価値の高い、しばしば移動性の低いターゲット(司令部、地対空砲台、架橋装置など)をシミュレートしなければならない。

第二に、敵に本物だと思わせるためには、デコイは明らかに実際的でなければならない。デコイは模擬対象物のように見えるだけでは十分ではない。レーダーや他のセンサーから見て、模擬装備と同じようなマルチスペクトラム・シグネチャを持つ、その物体のように「見える(look)」必要がある。また、精度を高めるために、デコイが実機と同じように爆発したり燃えたりすることが望まれる。そのため、射撃や爆発のシミュレーターを追加することが有効である。

最後に、デコイは忠実に再現されたものだけでは不十分である。欺瞞(deception)は「大規模な映画作品(a large-scale movie production)」であるため、その環境も実際的でなければならない。手がかりがデコイの存在を裏切らないようにするためには、考慮すべき要因(factors)がたくさんある。例えば、デコイの偽装は、効果がありすぎず、存在しないわけでもないという意味で、もっともらしいものでなければならない。

デコイを配置する場所は現実的でなければならず、特にドクトリンに適合していることが重要である。また、最低限の人間の存在を確保することも重要である(電池交換など、デコイのメンテナンスにも有効である)。照明や発煙、あるいはエンジン音などを流す音響装置など、さまざまな工夫をすることで、シミュレーションの信憑性をさらに高めることができる。

デコイの信頼性の問題だけでなく、凡庸なデコイを配備したり、「場面」を設定しなかったりすることが、さらなるリスクを生むという事実を見失ってはいけない。欺瞞(deception)を察知した敵対者(adversary)は、実際のターゲット(real target)を見つけるために、より大きな取組みをする傾向がある。

しかし、このリスクを超えて、デコイの使用は通常、作戦の成功に寄与する: 敵がデコイの存在を疑わなければ、欺くことができる。敵対者(adversary)が敵が誘き寄せる(decoying)の能力を知っていれば、牽制のために時間を浪費することになる。

デコイは、例えば、視覚のみの装置や部隊によるDIYのような基本的なものから、精巧なものまである。その設計の戦術的妥当性は、特に部隊が利用できる時間と装備、そして何よりも敵が利用できるセンサーに依存する。

実際、探知手段の進化を考えると、より多くのマルチスペクトルデコイ、例えば戦闘車両の替え玉(dummies)で、実際の車両の外観だけでなく、熱、レーダー、電磁波、音響シグネチャもシミュレートする必要が明らかに高まっている。

現在、Fibrotex社(イスラエル)、Rusbal社(ロシア)、Saab社(スウェーデン)、Tempestini社(イタリア)、Lubawa社(ポーランド)、Inflatech社(チェコ・ロシア)など、複数の企業がこの種の製品を提供している。これらのデコイは、視覚的な外観(最も効果的なものは100メートル先までリアルに見える)と、熱信号(抵抗器や導電性布を組み込むなど)、赤外線信号、あるいはレーダー信号を組み合わせている。

2Dや3D、インフレータブル、木製や金属製のパネルなど、さまざまな種類がある。デコイは頻繁に分解できる。重量や大きさも様々である。例えば、インフラテックのインフレータブルSA-17は58キロ(128ポンド)、T-80は37キロ(81.6ポンド)である。

デコイは、通常、輸送にはトラックが必要であるが、オーストラリアのGaardTech社が製造した金属製戦車10両は、分解して海上コンテナに収めることができる。また、ベラルーシのMinotor-Service社のT-72のように、トレーラーをベースにしたモデルもあり、重量3.5トン、20分で展開することができる。マルチスペクトラムのデコイの価格は大きく異なるが、手頃な価格である。

主戦闘戦車(main battle tank)のシミュレーションには、30,000ユーロから150,000ユーロ(36,000ドルから180,000ドル)の費用がかかる。結局、これは現代の戦車の値段に比べれば控えめなものだ。2001年、Cours des Comptesは、フランスのルクレール戦車の総単価を1590万ユーロ(1910万ドル)と推定している。

将来のデコイに関連する技術動向は、大きく4つに分けることができる。第一に、電子戦(electronic warfare)能力の発達と普及に伴い、デコイの電磁シグネチャが不可欠となる。弾薬発射型の電子戦システム(Munition-launched electronic warfare systems)も選択肢の一つで、例えば、サイレント・インパクト(Silent Impact)は、155ミリ砲弾を飛行中の「サイバー電磁攻撃(cyber-electromagnetic attack)」ペイロードの運搬機構として使用し、パラシュートで長時間上空にとどまり、着陸後は地上にとどまることができる。

このペイロードは、レーダーや兵器システム、通信を模倣したデコイとしても使用できる。現在のところ、最も効果的な欺瞞的行動方針(deceptive courses of action)の1つは、敵が本物の司令部を特定しターゲットにする能力を制限するために、司令部の指揮ネットワークを再現することだろう。2030年か2040年までには、司令部や車両の電磁シグネチャを再現できる、空中投下可能なデコイが一般的になるかもしれない。

また、陸上デコイ(land decoys)は、従来は固定式でしたが、移動式にして遠隔操作できるようにすることもできる。メリットはたくさんある。ロボットのデコイは、作戦における実機と同じ速度で移動させることが容易であるため、攻撃的な行動方針(courses of action)でより容易に使用できる(デコイの使用を作戦の速度に合わせることは、これまでの課題であった)。

また、その運動性によって、より現実性が強化される。特定のシグネチャを再現し、タブレットを使って最大20km離れた場所から遠隔操作するターゲットは、GaardTech社製などすでに存在している。少し手を加えれば、相手を欺くために戦闘に利用することも可能である。

3つ目の構造化技術トレンドは、長期的には、人工知能(AI)の貢献により、ロボットによるデコイ編成(robotic decoy formations)が特定の部隊の動きを再現することができるようになることである。すでにGaardTechのタブレットでは、訓練で複数のターゲットをまとめて動かすことが可能になっている。

将来的には、機甲部隊にロボットを搭載し、移動の途中でロボットを別のルートにセットして、攻撃先を誤魔化すことも可能である。一般論として、デコイと戦闘ロボットの境界はますます曖昧になると思われる。なぜなら、ロボットのデコイ(robotic decoys)は、敵対者(adversary)を混乱させ、攻撃するためのものだからである。

第4の技術トレンドは、部隊を模倣するにしても、相手のセンサーや攻撃手段(地上・航空システム、監視ネットワーク、迎撃担当オペレーターなど)を飽和させるにしても、戦術的デコイ(tactical decoy)として空中ドローンが果たすべき役割(特に群れでの使用)がますます重要になるということである。

例えば、1機以上のドローンが輸送ヘリコプターや攻撃ヘリコプターの電磁波やレーダーのシグネチャを再現し、偵察やヘリボーン作戦(heliborne operation)のような偽りの姿(false appearance)を作り上げることができる。レーダー反射板を搭載したドローンが戦場や後方を巡回することで、複数の誤警報を発生させ、特に敵対者(adversary)の共通作戦運用図(common operational picture)を混乱させることができる。

さらに、デコイの技術として有望だが成熟していないものとして、ホログラフィー(holography)を挙げることができる。ボリューム感のある3Dホログラムや、音を出して「触れる(touched)」ことができるタイプの科学研究が大きく進んでいる。長期的には、ホログラフィー(holography)を使えば、説得力のある視覚的なデコイ(visual decoys)を作ることができる。しかし、そのためにはまず持ち運びができるようになり、十分な大きさのディスプレイと適切な解像度を持つ必要がある。

最後に、欺くための代替・補完オプションとして、車両や施設の視覚、熱、レーダー、電磁波シグネチャを変更し、敵対者(adversaries)が他のものと混同するようにすることも可能である。これは、バートラム作戦(Operation Bertram)で採用された722台の「サンシールド(sunshields)」のモデルである。木製のフレームとキャンバスでできた天蓋で、戦車(クルセイダー(Crusader)、バレンタイン(Valentine)、グラント(Grant)、スチュアート(Stuart)、シャーマン戦車(Sherman tanks))を、より脅威的でない3トン・トラックへと視覚的に変えることができる。

台湾軍が歩兵戦闘車をクレーンに改造して都市環境に溶け込ませる実験をしたのもこの方法である(ただし、軍用車を民間車に偽装するのは背信行為(perfidy)と言える)。このように、ある種の車両に改造キットを装着し、デコイに変身させることも考えられる。

探知・防御システムの発達により、デコイの利用が見直されている。実際、近年では生存率を高めるために、潜在的な侵略の影響を遠くから無力化または偏向させることによって回避する能動的な保護システムに注目が集まっている。この種の装備は、レーダー、敵レーダーのパッシブ・リスニング、レーザーとミサイル発射という3つの主要なタイプの検出器を使用する。

これらのシステムは、本当に短時間で脅威を検出し、分類し、場合によっては傍受ポイントを計算し(「ハードキル」システムの場合)、対抗策を講じる必要があるため、これらのアクティブ防護システム(active protection systems)には大規模な自動化が求められる。このような検知と保護の自動化は、新たな可能性をもたらす。

視覚的なデコイ(visual decoys)と発射シミュレーター(レンジ・ファインダー、レーザー照射器、あるいはスモーキー・ミサイル(smokey missile))を組み合わせることで、アクティブ防護システム(active protection system)を自動または半自動で反応させることができる。実際に車両に射撃しなくても、このデコイの型式(type of decoy)によって混乱が生じ、自己防衛システムに対する信頼が失われることになる。

ほとんどの先進的な軍隊で計画されている協働戦闘(collaborative combat)の登場により、その影響はさらに大きくなる可能性がある。フランス陸軍の場合、スコーピオン・プログラム(Scorpion program)の第2段階が完了すると、協調戦闘のコンセプトは、新しい情報システムが装甲戦闘車両(ジャガー(Jaguar)、サーバル(Serval)、グリフォン(Griffon)、ルクレール戦車の近代化版(modernized version of the Leclerc tank))、航空支援部隊、砲兵中隊(artillery batteries)を一つの集中情報共有ネットワークで結び、車両、ロボット、ドローン間で警報、ターゲッティング情報(targeting information)、その他のデータを自動的に配信するようになることを意味している。

到達目標は、相互支援機能の最適化である。このコンセプトの一部は、自動検知(automatic detection)と自動反応(automatic reactions)に基づいている: 侵略(aggression)を検知した車両は、その情報を自動的にその地域に存在する他の車両に送信する必要がある。その結果、他の車両は自動的にターゲットに探知と射撃システムを向けることができる。

到達目標は、「反射時間(reflex time)」で集団的な反応を得ることである。もし、デコイによって部隊全体の反応が半自動化されてしまうと、部隊は身動きがとれなくなり、混乱する可能性があり、間接火力に翻弄されることになりかねない。

一般に、自動処理(例えば、探知、あるいは自動識別、センサーの融合など)の導入により、現実的な多重帯域のデコイ(multi-band decoys)がさらに有用になる。これらのデコイは、アルゴリズムが期待するすべての信号を提供し、人間のオペレーターが持つかもしれない疑念の余地はないだろう。

ロボットによるマルチスペクトルデコイ編成(multispectral decoy formations)のトレンドは、明日の戦い(warfare)におけるデコイの関連性(decoys’ relevance)をさらに強化し、新たな戦術的展望を提供する。

したがって、デコイの調達とこの分野のイノベーション(innovation)の監視は優先されるべきものである。そのため、兵器開発プログラムごとに、兵器開発にかかる総コストの最大1%を、対応するデコイの作成と取得に投資することを約束するのがよいかもしれない。

そして、陸軍はこれらのデコイの使用を推進し、欺瞞(deception)を説明し、デコイの使用を奨励するドクトリンを作成し、演習時にデコイを配備することが必要である。最後に、特に、あまり一般的でないデコイ(橋、地対空装置など)を集め、その中心的役割を果たす専門部隊を創設するのがよいだろう。

このステップを踏むことで、欧米の軍隊は、奇襲をかけ、欺き、生き残るための技法の数々に、不可欠なツールを追加することができる。

Rémy Hémezはフランス陸軍の将校で、元フランス国際関係研究所(IFRI)研究員(2015年から2017年)である。表明された見解は彼自身のものである。

カテゴリー
EMS(電子戦)、人工知能[AI](Autonomy)、技術動向、米陸軍動向 』

「2つのインド」と日本 グローバルサウス両雄の打算

「2つのインド」と日本 グローバルサウス両雄の打算
風見鶏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM024RT0S3A600C2000000/

『先の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)はアジアの新興・途上国で「両雄」と目されるインドとインドネシアの首脳も参加した。中国という共通の脅威をにらんで協調する両国は同じ地域大国として緊張もはらむ。そこには日本の役割を見いだす余地がある。

5月下旬、インドがパキスタンと領有権を争うカシミール地方で開いた20カ国・地域(G20)観光作業部会は象徴的な会議だった。

G20メンバーでありながらサウジア…

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『G20メンバーでありながらサウジアラビアやトルコは政府代表を派遣しなかった。理由は「同じイスラム教国のパキスタンに配慮したから」だとされる。

世界最大のムスリム人口を誇るインドネシアが代表を派遣したのはなぜか。「インドには恩がある」。インドネシアの外交当局者は理由をこう説明する。

インドネシアが議長を務めた22年のG20サミットはウクライナ侵攻を巡る対立で合意形成が困難を極めた。閣僚級の会議でまとめられなかった共同文書を首脳間で採択できたのはインドの協力のおかげだった。

シンガポールのシンクタンク、ISEASユソフ・イシャク研究所が2月に発表した東南アジア諸国連合(ASEAN)各国への世論調査はインドとインドネシアの接近を裏付けた。

「米中対立下で第三のパートナーに選ぶべき国・地域はどこか」との問いにインドネシアは9.9%がインドと答えた。6つの選択肢のなかで22年の最下位から3位へ順位を上げた。

両国の交流は古い。インドネシアは「インドの島々」を意味する。有史以来、インド由来のヒンズー教の王国が興亡を繰り返した。ともに植民地支配を経て、独立後は米ソ冷戦下で「非同盟運動」を主導した。

21世紀の国際政治にインドとインドネシアが与える影響はより大きい。アジアの民主主義国で人口は1、2位につけ、米金融大手ゴールドマン・サックスは国内総生産(GDP)でも50年に中国、米国に次ぎ3位、4位になると予測する。

両国が近づく背景には中国をにらんだ打算がある。ともに中国が最大の輸入相手国でありながら、国境紛争や海洋資源を巡る対立も抱える。中国との経済関係を考慮すると米国へ傾斜するのは得策ではない。同じような立場からお互いをパートナーとみなす。

この関係は将来も続くのか。アジアの国際政治に詳しい大庭三枝神奈川大教授は「似た志向を持つ地域大国は競合関係を内包している」と指摘する。両国は南半球を中心とする新興・途上国の総称「グローバルサウス」の代表格だ。ともにリーダーを狙えば、両雄並び立たずの状態に陥る。

橋渡し役に浮上するのは日本だ。経済協力開発機構(OECD)によると直近の両国への政府開発援助(ODA)拠出額は2位のドイツを抑えてトップ。外務省の世論調査で両国とも9割以上が「日本は信頼できる」と答えており、米欧より近い関係にある。

日本が中国抑止を念頭に提唱した「自由で開かれたインド太平洋」の概念を両国とも受け入れている。インドとは米国、オーストラリアとともに「クアッド」の枠組みでも協力する。

自衛隊と海上保安庁は東シナ海で衝突を避けながら中国と対峙してきた経験がある。大庭氏は「対中国の海洋安全保障で両国が協力を強めるときに日本が果たせる役割がある」とみる。

「2つのインド」の緊密さは日本が双方と関与を深めるうえでも好機だ。旧宗主国への複雑な感情が交じるアジアは米欧が入り込みにくい。そこで新たな3カ国の枠組みを主導して地域の安定に貢献するのは日本の責務であり、日本にしかできないことでもある。(ジャカルタ=地曳航也)』