ロシア反体制派幹部ら一斉拘束

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM224HB0S1A120C2000000

『【モスクワ=共同】ロシア当局は21日、ドイツから帰国直後に逮捕された反体制派ナワリヌイ氏の陣営幹部らを「違法デモを呼び掛けた」として一斉に拘束した。同氏陣営は逮捕に抗議して23日にロシア全土で抗議行動を計画しており、恐れるプーチン政権が弾圧に乗り出したようだ。ロシアの独立系メディア「メドゥーザ」などが伝えた。

一方、ナワリヌイ氏陣営が19日に公開したプーチン大統領所有とされる豪華な「宮殿」の動画の再生回数は21日夜に5千万回を突破した。インターネット上ではプーチン氏批判が渦巻いており、ナワリヌイ氏の釈放を求めるデモがどれだけの規模になるか注目される。

ロシア警察は21日、ナワリヌイ氏陣営の女性幹部で、2019年のモスクワ市議選の不正疑惑に対する抗議行動を主導したソボリ氏、プーチン政権の不正を暴く調査チームを率いるアルブロフ氏、報道担当ヤルムイシ氏ら主要幹部らを次々と拘束した。

プーチン氏批判の急先鋒であるナワリヌイ氏は昨年8月にロシア国内で毒殺未遂に遭い、ドイツで5カ月の療養を経て、今月17日帰国した直後に逮捕された。

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プーチン体制という名の怪物 始まった危険なゲーム

プーチン体制という名の怪物 始まった危険なゲーム
 上級論説委員 坂井 光
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODK062MT0W1A100C2000000

 ※ 一つ前の記事や、こういう記事を読むと、つくづく「自由な言論の流通」、「自由な情報の流通」というものが、「統治・統制しようとする側」にとっての「鬼門」であることを感じる…。
 
 ※ しかし、そうなると、「玉石混交」となり、その「真贋を見抜く眼力」「取捨選択する力(ちから)」の強弱が決め手となってくる…。

 ※ そこへ持ってきて、その「情報流通の要石(かなめいし)」たる「プラットフォーム」自体が、独占・寡占体制になってしまって、そこを制している勢力の「意のまま…」という問題も生じている…。

 ※ いずれ、個人個人としてやれることは、せいぜいが、「真贋を見極める眼力」「背景を自分の頭で考える思考力」「全体構造を見通す洞察力」を、日々鍛錬して行くことだけだ…。

『2021年は1991年末のソ連崩壊から30年の節目にあたる。その後のロシアを10年ごとに大ざっぱに区切ると、債務不履行や通貨危機などを経験した最初の10年は喪失と混乱の時代だった。

それが、プーチン大統領が登場し権力基盤を固め始めた2001年からの10年は、大国への郷愁と自信回復の時代となった。06年に自らの故郷サンクトペテルブルクで主要8カ国首脳会議(G8サミット)を主催し、08年には旧ソ連のジ…

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・06年に自らの故郷サンクトペテルブルクで主要8カ国首脳会議(G8サミット)を主催し、08年には旧ソ連のジョージアに侵攻した。

・そして、11年から昨年までは孤立と停滞の10年だろうか。14年には隣国ウクライナ領のクリミア半島を武力で併合。国際的な経済制裁を受けたうえに、石油価格の低迷で経済成長が止まった。

・そのあいだ一貫していたのは、反体制派への弾圧と強権体質だ。ジャーナリストのポリトコフスカヤ氏、元スパイのリトビネンコ氏、元第1副首相のネムツォフ氏らが暗殺された。野党指導者ナワリヌイ氏が毒殺されかかったのは昨年のことだ。

・これらの事件の真相は不明だ。だが、治安機関の力が増し、表だった反対運動は起きにくくなっている。

・すべては「プーチン体制」温存のためだ。政界、財界、地方、治安機関……。あらゆる分野のエリート層はいずれもプーチン氏を支持することでその地位と利権を得た。つまり「体制」そのものだ。

・変化を求めないのは彼らの総意だ。守るべきはおのおのの利益であり、国益ではない。暗殺のような不可解な事件が起きるのもそのためだろうか。もはやプーチン氏の意志だけでは思い通りに動かない怪物のような存在となり、年々手に負えなくなっている。

・その怪物が24年に予定される大統領選に臨むためのゲームが21年に本格化する。ルールを決めるのはプーチン氏とその一部の側近だ。20年7月に憲法改正を決め、同年末にかけては約100もの立法措置を駆け込み的に導入した。

・プーチン氏は最長で36年までの続投が可能になり、終身免責も決まった。20年末の記者会見で「(24年の選挙に)出馬するか、しないか、まだ決めていない」と述べたが、仮に大統領でなくなっても、安心して院政を敷く選択肢をつくった。

・一連の立法措置では、警察などの建物付近での集会は禁止となり、インターネット上の中傷的な書き込みは規制対象となった。

・いわゆる外国エージェント(代理人)法では、外国から支援を受けて政治活動をする個人は当局に申告し、報告を求められる。現地の独立系メディアは、SNS(交流サイト)などで個人が情報を流す場合「支援の解釈や政治活動の範囲など運用のさじ加減でほとんどのロシア人が処罰の対象になりうる」と警告する。いずれも政権批判を封じ込めるのが狙いとみられる。

・今年9月には大統領選に次いで重要な下院選が実施される予定だ。体制側は最大限、新たな法律を活用し、24年に向けた教訓とするはずだ。

・ただ、このなりふり構わぬゲームは危険だ。国民を抑圧する代わりに、はけ口として外国との対立をあおることが予想される。米欧やウクライナなどとの火種は尽きない。日本の領土交渉も困難さを増しそうだ。

・国民の不満をやわらげることができるのは経済状況の改善だが、石油価格次第なので期待しづらい。長期的にも世界的な脱炭素化の流れが加速する一方、ロシアは石油・ガス産業以外にけん引する産業は育っていない。このままでは先細りが目に見えている。

・今後強権だけでゲームに勝ち続けられるかは不透明だ。極東ハバロフスクでは知事を解任した政権に抗議する運動が20年7月から続く。蓄積した不満への対応を誤れば、国民は牙をむきかねないことが浮き彫りとなった。

・この先の10年、ロシアはどういう時代になるのだろう――。昨年大みそか、新年を迎えるにあたりプーチン大統領は次のように国民に呼びかけた。「これからの10年にロシアが直面する課題を、我々はともに解決し続けると確信している」。怪物が生き永らえるには長い年月だ。

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坂井 光
プーチン体制という名の怪物 始まった危険なゲーム(2:00)
ロシア悩ます「不安定の弧」 周辺外交の限界あらわに(2020年11月18日)

大規模サイバー攻撃、米ロ対立の新たな火種に

大規模サイバー攻撃、米ロ対立の新たな火種に
米民主「事実上の宣戦布告」、ロシア政府「関与せず」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN193YZ0Z11C20A2000000

『【ワシントン=中村亮、モスクワ=小川知世】米政府機関などが大規模なサイバー攻撃を受けた問題を巡り、トランプ政権がロシアの関与を断定した。米議会では「戦争行為」とみなし、強力な報復措置を講じるよう求める声が出る。バイデン次期米大統領も対ロ強硬に傾きやすく、今回のサイバー攻撃が米ロ対立の新たな火種に浮上してきた。

ポンペオ米国務長官は18日、米メディアのインタビューで実行犯が第三者のソフトウエアを使って米政府内のコンピューターシステムにプログラムを埋め込み、ハッキングを試みたと指摘。「この活動を行ったのはロシア人だと非常に明確に言えると思う」と述べた。米政府高官が実行犯を公の場で名指しするのは初めて。

米CNNテレビによると米政府のサイバー対策担当者は数カ月前に政府のネットワーク内で不審な活動をつかんでいたが、攻撃対象の範囲や高度な手口を明確に把握できたのは12月に入ってからだったという。国務省や国防総省、国土安全保障省、エネルギー省といった米主要省庁が攻撃を受けた。

米マイクロソフトは米国に加え、英国やカナダ、ベルギー、イスラエルなど計8カ国の40超の政府機関や企業が攻撃対象だと明らかにした。米政府が攻撃の全容をめぐる調査を完了するには数カ月かかるとの見方がある。

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ロシア政府は関与を一貫して否定している。ペスコフ大統領報道官は14日、「関与していない」と述べ、米国が根拠なくロシアを非難していると反発した。ロシアはサイバー空間での連携を訴え、攻撃疑惑をかわそうとしてきた。プーチン大統領は9月下旬、米国にサイバー攻撃で選挙に干渉しないことを互いに保証し、衝突を避けるための協定を結ぶように提案した。ペスコフ氏は米国が提案に応じていないと非難した。

米議会は党派を超えて今回のサイバー攻撃を「戦争行為」とする見方が出ている。民主党指導部のディック・ダービン上院議員は「米国に対する事実上の宣戦布告だ」と非難。バイデン氏の最側近の一人であるクリス・クーンズ上院議員も「戦争と認定できる攻撃的行為と今回の件を区別するのはとても難しい」と指摘した。

共和党でも重鎮のミット・ロムニー上院議員はサイバー攻撃を「ロシアの爆撃機が見つかることなく我が国の全土に繰り返し飛来したようなものだ」と懸念を表明した。マルコ・ルビオ上院情報特別委員長代行も「米国は反撃する必要がある。制裁だけではない」と強調した。サイバー分野での報復攻撃などを促す発言とみられる。

議会が強く反発するのは、安全保障の危機に直結しかねない外国政府による組織的攻撃である可能性が高いためだ。ハッカー集団は米エネルギー省傘下で核兵器を管理する国家核安全保障局に加え、核兵器開発を担うサンディア国立研究所やロスアラモス国立研究所のネットワークにアクセスした可能性がある。国務省や国防総省も安保をめぐる機密情報を扱っている。

サイバー攻撃は実行犯や被害の実態が公にはわかりにくい。軍事報復を受けることなく、平時から安保情報を収集し有事の際に活用して敵を圧倒する戦略を中ロが描いていると米政府や議会は警戒を強めている。軍事作戦と非軍事作戦の境界線を曖昧にするサイバー攻撃は相手国の疑心暗鬼を生みやすく、報復の応酬につながる恐れがある。

これまでに米政府へのサイバー攻撃で最大の被害を及ぼしたとされたのは、2015年ごろの個人情報流出だ。米連邦人事管理局がサイバー攻撃を受け、政府関係者ら約2200万人の個人情報が盗まれた。実行犯との疑いが出た中国がスパイ活動に活用し機密情報を盗むとの懸念が強まったが、必ずしも安保危機に直結するものとはみられなかった。

トランプ氏は19日、ツイッターで「ハッカー攻撃について実態よりもフェイク・ニュース・メディアが過大に報じている」と主張した。トランプ氏はロシアとの関係改善を掲げており、非難を避けた形だ。AP通信によると、ホワイトハウスは18日午後にロシアを非難する声明を準備したが発表を直前で取りやめた。トランプ氏が中止を指示した可能性がある。

サイバー攻撃はバイデン氏のロシア政策を複雑にする。バイデン氏は「悪意のある攻撃を仕掛けた者には相当の代償を払わせる」と断言している。サイバー攻撃を通じたロシアによる16年の大統領選への介入を一時否定したトランプ氏に対し、バイデン氏はロシアに弱腰だと批判してきた。議会の意向も踏まえ、ロシアに厳しい対抗措置を講じざるを得ない。

一方、21年1月20日の政権発足直後にはロシアとの新戦略兵器削減条約(新START)の延長交渉がバイデン政権の外交政策で喫緊の課題になる。同条約は同2月5日に期限切れを迎え、交渉の時間は極めて少ない。バイデン氏は他国への核拡散を防止するためにも延長を訴え、軍縮分野ではロシアと協力する考えを示していた。』

[FT]コロナ禍で疲弊するロシアの地方部

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM1318N0T11C20A2000000

『シベリアの村に住むアリーナ・コソワさんの叔父が先月、急病で倒れたとき、近くの大都市オムスクから急行した救急車は、病人を搬送せず去った。仕方なく、家族が車で病院に運んだ。到着すると、病院は診療の順番を待つ患者であふれかえっており、10時間も待たされる羽目になった。それも、診療を受けられたのは同僚が裏で手を回してくれたおかげだった。

感染者が急増し、医療機関にかかる負担も大きくなっている(サンクトペテルブルクで新型コロナ患者の受け入れなどにあたる医療従事者)=AP
感染拡大で強まる政府への不満
コソワさんの叔父セルゲイ・コソフさんは、退院したら病院で受けたひどい扱いと、大混乱の様子を告発してやると親戚に息巻いていたが、結局、退院することなく亡くなった。

9つの時間帯にまたがる広大な国土を持つロシアで全国的に新型コロナウイルスの感染が急拡大していることで、18歳のブロガー、コソワさんのようなこれまで比較的無関心だったロシア人も、政府がパンデミック(世界的大流行)に対して有効な対策を取れないことに怒りを抱くようになった。

ロシアの累計感染者数は、世界で4番目に多く、6日には過去最高となる2万9093人の感染が確認された。この感染の第2波は、現感染者数の7割を占め、モスクワのように近代的な医療インフラの整っていない地方にとって特に大きな打撃となっている。

大統領府はロシアのワクチン「スプートニクV」の接種開始により、感染拡大を抑えることができるだろうと期待している。ワクチンの大規模接種は7日に、まずモスクワで教師や医師を対象に無料で始まった。その他の地域でも週内に接種が始まる予定だ。

政府の感染対策を指揮するゴリコワ副首相は先週、21万6千人の入院患者を治療するのに必要な専用病床数が確保されており、病床使用率が90%を超えているのは全国の85の地域のうち4つだけだと強調した。しかし、全国の医療従事者や一般市民は医薬品の不足や病院で治療を受けるまでに長時間待たされること、救急車が到着するのに何日もかかることなどに不満の声を上げている。

叔父を亡くしたコソワさんは、オムスク州のアレクサンドル・ブルコフ州知事を批判するラップを作った。ブルコフ氏が「故郷で人々が病院へたどり着く前に死んでいく」のを見ながら、モスクワの施設の整った病院で治療を受けていることを皮肉っている。

ブルコフ氏は、モスクワで受けた検査で最初に陽性が判明したので、対応ガイドラインに従って首都にとどまっていると発表した。しかし、オムスクの病院が対応能力の限界に近づいている中、知事の言動が批判の的になっている。

オムスク州では、病床に患者を搬送しても長く待たされることに抗議して、2人の救急隊員が新型コロナの患者を地元保健当局の庁舎に運び込む出来事が起こった。この患者たちのための病床は結局、確保されたが、この事件の後に2人の保健当局の幹部が更迭された。

コソワさんは本紙の取材に答えて、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の彼女のフォロワー150万人のうち何人かは、自分たちの経験を投稿してきたと語った。コソワさんは「医師たちは職業意識が足りず、医薬品やベッドが不足している。当局は、国民をなだめようとしているのだろうけど、ぬか喜びさせてるだけだわ」と語った。

厳しい行動制限に二の足
大統領府は不人気なロックダウン(都市封鎖)の判断を地方政府に委ねているが、地方の当局者たちは、秋に感染が急拡大し始めても、行動制限を再導入することに二の足を踏んだ。

市民や小規模ビジネスに対する政府の支援も少ない状況や、プーチン氏の言う「よく知られたロシア人の無鉄砲な態度」があることも背景に、パンデミックにうんざりしているロシア国民は外出を控えることを渋っている。

独立系世論調査機関レバダ・センターが11月に実施した調査では、社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)に関する規則を守っていると回答した人の割合は57%にとどまった。公共のイベントへの不必要な参加を控えていると答えた人は、全体の45%にすぎなかった。

厳格なロックダウンの再実施を提案する当局者もいるが、大統領府は後ろ向きだ。プーチン氏の支持率が夏に過去最低まで落ち込んだ後、ようやく回復しつつある状況でそうした措置を取れば再び急落する恐れがあるとみているためだ。政策の失敗の犠牲にされているという不満を持つ飲食店などの経営者たちも反対の声を上げる。

最も厳しい状況に直面している地域の1つが、ロシア第2の都市サンクトペテルブルクだ。市当局は病床は95%以上がすでに埋まっていると表明。7日には年末までに感染拡大の歯止めをかけられなければ、外出禁止令を出してすべての医療施設をコロナ患者の受け入れに使わざるをえなくなると警告した。

サンクトペテルブルク市当局は、新年のお祝いの時期に接客業の営業時間を制限する決定をしたが、100以上のバーやレストランの経営者がその措置を無視すると宣言した。

レストラン経営者のアレクサンダー・コノバロフ氏は「この措置は完全に不合理だ」と指摘。規制に従うことを拒否すると宣言している飲食店などの場所示す「抵抗地図」を作成した。「すべてのレストランが営業停止ということになれば、大部分は家賃の割引を受けられるので、なんとか生き残れる。(営業時間の制限より)ロックダウンの方がまだましだ」と語る。

さらに事態悪化の可能性も
モスクワの高等経済学院の疫学分野の教授であるワシリー・ウラソフ氏は、現在、新規感染者が急増しているのは、感染拡大がまだ十分に抑え込まれていない5月に行動制限を解除したことが原因だと語る。「ロックダウンは感染の急激な拡大を短期間に抑え込むのに有効だが、長期的に継続することは難しく、解除した途端に感染は再び拡大する」と指摘する。

夏までに感染拡大を十分に抑えられなかったことで、医療インフラの整っていない辺境部にもウイルスが広がっている。北極圏のすぐ南に位置する人口1千人ほどの村、ウスチ・ピネガに住むガリーナ・レートチキナさんは、地元の病院が昨年、閉鎖されてしまったため、新型コロナに感染した両親を医療の受けられる施設まで搬送してくれる救急車を見つけようとしたが、無駄だった。

レートチキナさんは「川がまだ凍っていないので、運転して行くこともできない」と嘆く。「医者を呼んでも、60キロも離れた所から来なければならないので難しい。(隣村に)医師が1人と、救急救命士が1人いるだけで、彼らは自分の村の患者でさえ診療しきれないのよ」

ウラソフ氏は、最悪の時期はこれから到来する可能性があると考えている。「ロシアでは感染の流行が完全に終息しなかった。夏にモスクワで新規感染者数が減ったとしても、感染はロシアの地方に広がり始めていた」と指摘する。「ロシアで、医療基盤を拡大できる資源を持っているのはモスクワだけだ。その他の地域にはそんな資源はない」とも語った。

By Max Seddon

(2020年12月10日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2020. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.』

ロシア悩ます「不安定の弧」 周辺外交の限界あらわに

ロシア悩ます「不安定の弧」 周辺外交の限界あらわに
上級論説委員 坂井 光
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66330800X11C20A1TCR000/

『ベラルーシでの反大統領デモ、アルメニアとアゼルバイジャンの紛争、キルギスの政変、モルドバの政治対立――。旧ソ連の国々で今夏以降、同時多発的に混乱が起きている。ロシアはこれらを「近い外国」と呼び、影響力を及ぼしてきた。それがいま「不安定の弧」となりプーチン大統領を悩ませている。

11月10日、アゼルバイジャンのアリエフ大統領とアルメニアのパシニャン首相は9月下旬から続いていた戦闘の停止で合意した。アゼル領にもかかわらず、アルメニア系が実効支配するナゴルノカラバフを奪還するためアゼルが軍を投入し、複数の拠点を占領した。合意では、アルメニアは支配地域の多くから撤収を余儀なくされ、事実上アゼルの勝利となった。

仲介役を務めたのはロシアだ。国営テレビは「歴史的な和解」などと成果を強調するが、戦闘開始以降、三たび合意は破られた。今回の合意も同国にとってもろ刃の剣だ。

まず、アルメニア国民の多くは合意に反発しており、パシニャン政権の崩壊は時間の問題だ。同時に軍事同盟を結ぶロシアへの不満がくすぶっている。次期政権が親欧米に傾かないようロシアは神経をとがらせねばならない。

合意によりロシアは2000人近い平和維持部隊を現地に駐留させる。これは停戦が破られれば戦闘に巻き込まれることを意味する。少なからぬ政治的、軍事的リスクを抱えることになる。

この地域の勢力地図にも変化が起きそうだ。アゼルの軍事作戦を支援したのは、アルメニアを挟んで西側に位置するトルコだった。イスラム大国である同国の影響力が相対的に強まるのは確実だ。

トルコは北大西洋条約機構(NATO)加盟国にもかかわらず、ロシアのミサイルシステムを導入した。その一方、両国はシリア内戦を巡って利害が対立するなど微妙な関係にある。そんなトルコにロシアはナゴルノカラバフという新たなカードを与えることになった。

他方、ロシアの兄弟国ベラルーシの情勢は不透明なままだ。「米国などは内政の緊張を故意に高めている」「ロシアとベラルーシの統合を妨害し、関係を分断しようとしている」。ロシアのショイグ国防相は10月下旬、ベラルーシで続く反大統領デモについてこう主張した。

そもそもデモは、8月に実施された大統領選の不正や、26年に及ぶ長期独裁に抗議するもので、親欧米を掲げたものではない。ロシアでも当初はルカシェンコ大統領への冷めた論調があったが、西側を攻撃する内容一色に転じた。

ロシアは西側をけん制することでベラルーシでの民主化の動きをはばむ戦略だろう。だが、頼ってきたルカシェンコ大統領の処遇をどうするかは読みとることができない。

両国は1999年、統合を目指す条約に署名した。だがエリツィン氏からプーチン氏に大統領が代わり、ロシアから事実上吸収されることを警戒したルカシェンコ氏はその後、曖昧な態度に終始してきた。これをプーチン氏が苦々しく思っているのは確かで、信頼もしていないはずだ。

立場が弱まったルカシェンコ氏を利用し、統合に向けたプロセスを前進させる選択肢はある。しかし、それが表面化すれば、ベラルーシのさらなる不安定化をもたらす可能性がある。プーチン氏は難しいかじ取りを迫られている。

それは、11月15日に大統領選があったモルドバでも似ている。親ロシア派で現職のドドン氏と親欧米派で前首相のサンドゥ氏という国を二分する対決は後者に軍配が上がった。ロシア離れが進みそうだが、ウクライナやジョージアなどのようになるのをロシアは食い止めたいところだ。

ロシアは、相次ぎ表面化する不都合な状況をうまくコントロールできなくなっている。旧ソ連の盟主でなければならないという周辺外交の限界があらわになりつつあるといえそうだ。

プーチン政権がいまだに抱く大国への郷愁と旧ソ連諸国への優越感――。それらと現実とのギャップは広がる一方だ。ソ連崩壊から来年末で30年である。』

ロシアの「勢力圏」後退 モルドバで親欧米派大統領

ロシアの「勢力圏」後退 モルドバで親欧米派大統領
米次期政権も攻勢へ トルコ・中国も浸透
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66269400W0A111C2FF1000/

『【モスクワ=石川陽平】旧ソ連地域でロシアの勢力圏の後退が鮮明になってきた。15日のモルドバ大統領選で、親欧米派候補が現職の親ロ派への勝利を確実にした。アゼルバイジャンの紛争ではトルコの影響力拡大を許し、ベラルーシでは欧米が支持する反政権デモが続く。来年1月に発足する予定のバイデン米政権による「民主化外交」の攻勢も避けられない。

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[FT]キルギス 中央アジア唯一の「民主主義国」の行方

旧ソ連西部のモルドバで15日、大統領選の決選投票があり、親欧米派のマイア・サンドゥ前首相が親ロ派のイーゴリ・ドドン現大統領に得票率で15ポイントの差をつけた。サンドゥ氏は16日未明、首都キシニョフで支持者に向けて勝利宣言をした。

サンドゥ氏は「欧州連合(EU)への接近」を掲げ、欧州からの経済支援取り付けを国民に約束していた。選挙運動では現地の米大使と連携していたとも報じられ、モルドバは今後、親欧米にかじを切る。

ロシアは1991年のソ連崩壊以降も旧ソ連地域を「裏庭」とみなし、政治や経済、文化的に強い影響下に置こうとしてきた。特に2000年に就任したプーチン大統領は「大国の復活」に向け勢力圏の維持と回復に取り組んだが、旧ソ連地域への浸透をめざす欧米などに押され、退潮に歯止めがかからない。

連合国家をつくるベラルーシでは8月、ルカシェンコ氏が6選を決めた大統領選をきっかけに、反政権の抗議運動が広がっている。反体制派幹部らは相次ぎ欧州諸国や親欧米の隣国に脱出し、欧米の支持で抗議運動を続けている。政変を阻みたいロシアは武力介入もちらつかせる。

アゼルバイジャンで再燃したアルメニアとのナゴルノカラバフ紛争は9日、ロシアの仲介で停戦に合意し、トルコが支援したアゼルバイジャンが事実上、勝利した。トルコは共同での停戦監視の要求もロシアに受け入れさせ、黒海とカスピ海の間のカフカス地域で影響力を広げた。

カフカス地域は帝政ロシアの支配下に入り、ソ連領となった。ソ連崩壊後もロシアが影響力を行使したが、今回の紛争で退潮が決定的となった。さらに「トルコが(民族的に近い)旧ソ連・中央アジアでも勢力バランスを有利に変化させる」(ロシア紙ベドモスチ)可能性が高まった。

ロシア勢力圏の後退は、04年にウクライナで親欧米派が親ロ派政権を倒した「オレンジ革命」で顕著になった。同国ではロシアの支援でいったんは親ロ派が政権に戻ったが、14年の政変で再び親欧米派が政権を奪取した。ジョージア(旧グルジア)でも04年、欧米の支援を受けたサーカシビリ政権が誕生した。

一方、中央アジア5カ国ではトルコが経済協力をてこに影響力を強め、中国も広域経済圏構想「一帯一路」で勢力を伸ばす。10月の議会選を機に政変が起きたキルギスは、対外債務の4割以上が中国向けで、政権を支えたロシアの影響力が低下していた。

プーチン大統領は11月10日、欧米によるベラルーシへの「内政干渉」を批判し、キルギスやモルドバでも「同じことが確かに起きている」と警戒をあらわにした。ただ、ロシアの地政学的後退の背景には、同国の経済力の低下と各国の欧米志向の高まりがある。

ロシアの13~19年の経済成長率は年平均で1%に届かず、周辺国に十分な援助はできない。地域統合へ「ユーラシア大国」になる方針を掲げるが、旧ソ連地域各国の国民は、強権的なロシアより、民主主義体制に魅力を感じている。

ロシアにとって新たな難題は、民主党のバイデン氏が次期大統領の座を確実にしたことだ。バイデン氏はロシアを「重大な脅威」と位置づけ、対ロ関係の改善も探ったトランプ政権を非難してきた。オバマ前政権時には副大統領として旧ソ連の民主化支援に関与しており、就任後は外交攻勢に転じるとの見方が多い。

米次期政権の外交幹部のポストも対ロ強硬派が占めそうだ。バイデン氏に近いスーザン・ライス元国連大使は「主要な敵対国」と呼ぶロシアの封じ込めを唱える。国家安全保障担当大統領補佐官にも名前が挙がるトニー・ブリンケン元米国務副長官は9月末、次期政権はウクライナやジョージアへの支援を大幅に増やすと発言した。』

中央アジア(1)—-キルギス、カザフスタン、ウズベキスタン(前半)の旅
   キルギス(アク・ベシ遺跡、プラナの塔、イシク・クル湖、ビシケク)、カザフスタン(アルマティ、タラス川古戦場)、
   ウズベキスタン前半(タシケント、ヒヴァ)、トルクメニスタンへ
http://www.nishida-s.com/main/categ2/51-central-asia-1/index.htm

モルドバ大統領選、決選投票へ 親ロシア対親欧州

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65738680S0A101C2EAF000/

『【モスクワ=小川知世】旧ソ連のモルドバで1日、大統領選(任期4年)の投票が実施された。中央選管によると、当選に必要な過半数の票を獲得した候補が出ず、現職の親ロシア派、イーゴリ・ドドン大統領(45)と親欧州派のマイア・サンドゥ前首相(48)が15日に予定する決選投票に進む見通しとなった。

開票率98%時点で得票率はドドン氏、サンドゥ氏ともに約34%だった。2016年の前回大統領選に続き、親ロシア派と親欧州派の両氏による一騎打ちとなる。サンドゥ氏が親欧州派の勢力を結集し、ドドン氏を引き離せるかが焦点となる。

選挙戦では再選で安定を訴えるドドン氏をロシアが支援するのに対し、欧州連合(EU)との統合推進を掲げる政党「行動と連帯」党首のサンドゥ氏を欧州が支持する。決選投票へロシアと欧州の水面下でのにらみ合いも激しくなりそうだ。

モルドバはウクライナとルーマニアの間に位置し、「欧州の最貧国」と呼ばれる。ウクライナと国境を接する東部の沿ドニエストル地方は親ロ派勢力が実効支配し、ロシア軍が駐留している。』

中・東欧諸国への企業進出の現状と今後の展望
https://www.google.com/url?sa=i&url=https%3A%2F%2Fwww.criser.jp%2Fdocument%2Fciac%2Fresearch%2F15%2Feu.pdf&psig=AOvVaw3_KLreAkyJVebIEo7UjBx4&ust=1604367009728000&source=images&cd=vfe&ved=0CAkQjhxqFwoTCLDr9Ybb4uwCFQAAAAAdAAAAABAV

【解説】ナワリヌイ氏の毒物反応、コリンエステラーゼ阻害薬とは?

https://www.afpbb.com/articles/-/3300980

『(2020年8月25日 17:40 発信地:ロンドン/英国)

【8月25日 AFP】ロシアの野党勢力指導者アレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏(44)の治療を行っている病院は「コリンエステラーゼ阻害薬に分類される薬物による中毒症状」が認められると発表したが、同氏に使われたとみられる毒物について専門家らは24日、化学物質のグループに属している成分で、その仲間は殺虫剤から軍用の神経ガスまで多岐にわたると述べた。

 ドイツの首都ベルリンのシャリテ病院(Charite Hospital)でナワリヌイ氏の治療に当たっている専門家らは、「独立した研究所での複数回の臨床検査」によって、同氏に「コリンエステラーゼ阻害薬に分類される物質による中毒症状」が確認されたと発表した。ナワリヌイ氏に使用されたとみられる特定物質は「いまだ不明」で、現在、毒物を特定するための臨床検査を進めているという。

 コリンエステラーゼ阻害薬は、アルツハイマー病治療薬や特定の殺虫剤にも使用される薬剤の仲間だが、最も毒性の強い化学兵器「神経ガス」の仲間でもある。

 この物質には、サリンや神経剤VX、また2018年に英イングランド南部ソールズベリー(Salisbury)でロシア人元二重スパイのセルゲイ・スクリパリ(Sergei Skripal)氏とその娘ユリア(Yulia Skripal)さんの暗殺計画に使用された神経剤ノビチョクも含まれる。同事件では、事件現場の近くに住んでいた英国人女性が後に死亡した。

■呼吸に影響する筋肉にも作用

 コリンエステラーゼ阻害薬は、神経から筋肉にメッセージを伝達する酵素の働きを阻止し、それによって筋肉は「けいれんしたような状態になる」と、英リーズ大学(University of Leeds)で環境毒性学を教えるアラステア・ハイ(Alastair Hay)教授は説明する。

「すべての筋肉が影響を受けるが、最も重要なのは呼吸に影響する筋肉だ。呼吸が阻害されると、意識不明になる可能性もある。コリンエステラーゼ阻害薬による脳への直接的な影響もある」とハイ氏は述べた。

■神経系への長期的な影響

 深刻なケースでは、窒息または心不全を起こすこともある。十分な量を投与された場合は意識不明になるだろうとハイ氏は付け加えた。

 シャリテ病院は、ナワリヌイ氏に対して解毒剤アトロピンによる治療を行っていることを明らかにしている。

 アトロピンは筋肉の収縮を担う神経伝達物質アセチルコリンを阻害することで、毒物による症状を緩和する。神経ガスはアセチルコリンをつかさどる酵素を攻撃し、アセチルコリンの過剰生産と筋肉の機能不全を引き起こす。

 シャリテ病院は、ナワリヌイ氏の予後は今のところ不明で、「特に神経系に対し」長期的に影響が出る可能性は否定できないと述べた。

 スクリパリ氏とその娘の場合は、2018年に治療の結果、一命を取り留めた。

 ロシア大統領府(クレムリン、Kremlin)を批判する勢力に対しては、過去にも毒物を用いた悪名高い攻撃が複数発生している。

 ロシア連邦保安局(FSB)の元スパイ、アレクサンドル・リトビネンコ(Alexander Litvinenko)氏は2006年、英ロンドンで放射性ポロニウムが混入されたお茶を飲み、毒殺されている。ロシア政府は、事件の有力な容疑者、アンドレイ・ルゴボイ(AndreiLugovoi)氏の英当局への身柄引き渡しを拒否。同氏は事件後に国会議員になった。(c)AFP』

〔ベラルーシ情勢〕

【地球コラム】政変前夜か、混迷のベラルーシ(2020年08月23日17時00分)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020081900672&g=int

『◇大統領選に抗議、ロシア動向焦点

 欧州連合(EU)とロシアに挟まれた旧ソ連構成国ベラルーシの情勢が、政変前夜の様相を帯びている。ソ連崩壊後、四半世紀以上にわたって強権支配を続けるルカシェンコ大統領は、米国から「欧州最後の独裁者」と呼ばれた。ロシアと同盟国でありながら統合されることは望まず、EUとも協力を模索するバランス外交を巧みに演じた。

 ところが、6選を懸けた8月9日の大統領選(任期5年)に絡み、長期政権や選挙不正に抗議する国民のかつてない規模のデモに直面。EUが制裁を決める中で、ルカシェンコ大統領はロシアに支援を仰ぎ、情勢は不透明感を増した。ロシアは6年前、旧ソ連圏でウクライナ南部クリミア半島併合に踏み切っており、その動向が焦点となる。今後、どのような展開があり得るのか。選挙を振り返った上で、シナリオを探る。(時事通信社・前モスクワ特派員 平岩貴比古)

◇ちょびひげの独裁者

 東スラブ人が住み、かつて「白ロシア」と呼ばれたベラルーシは歴史上、常に大国のはざまにあった。古くはリトアニアやポーランドが支配し、18世紀のポーランド分割でロシア領に編入。ソ連時代を経て、1991年に独立を宣言した。最も有名なベラルーシ出身者は、20世紀にフランスで活躍したユダヤ系の画家シャガールだろう。

 この国で長期政権を敷くルカシェンコ大統領とは、どういう人物なのか。54年に北部で生まれ、モギリョフ教育大を卒業した後、兵役やコルホーズ(集団農場)の責任者を経て、90年にベラルーシの最高会議(議会)の議員となった。シュシケビッチ議長(国家元首に相当)を舌鋒(ぜっぽう)鋭く批判し、ソ連崩壊後初めて実施された94年の大統領選で当選。2004年の憲法改正で3選禁止を撤廃すると、徹底した野党弾圧で国内を引き締めた。

 トレードマークは、ちょびひげ。当初、議員時代は汚職対策で手腕を発揮して人気を集めたものの、政権が長期化するにつれ、国民からは腐敗と停滞の象徴と見なされるに至った。在任期間が四半世紀以上というのは、旧ソ連構成国の大統領として最長クラスであり、ルカシェンコ大統領はロシアのプーチン大統領の「先輩」に当たる。

 欧米からは「独裁者」として入国禁止や資産凍結の制裁を受けていたが、EUは16年に政治犯釈放などを理由に解除。今年2月には、首都ミンスクでポンペオ米国務長官の訪問を受け、08年から空席だった米大使の派遣を約束されるなど、関係改善の流れにあった。こうした中、8月9日の大統領選に向け、複数の野党候補が名乗りを上げると、政権は、治安機関を使って拘束したり、中央選管を通じて出馬を却下したりと、なりふり構わぬ選挙戦を展開した。揚げ句の果てに7月末、友好国であるはずのロシアの民間軍事会社「ワグネル」所属の33人を「野党勢力と結託していた」と決め付け、ミンスク郊外などで拘束。さながら「殿、ご乱心」の混乱ぶりを見せた。

 こうした強硬な対応は、政権が今にも崩れかねないという危機感の裏返しであり、それに基づく過剰反応とも言える。背景には、国民の間で長期政権に不満が募る中、新型コロナウイルスの感染拡大に際してルカシェンコ大統領が「ウオッカやサウナが有効」「(自分は感染して)コロナを克服した」などと無責任な発言を繰り返したことも、権威失墜に追い打ちをかけたとみられる。

◇主婦の「勝利宣言」

 これに対し、野党勢力の「台風の目」となったのが、女性候補スベトラーナ・チハノフスカヤ氏だ。大統領選を目指した夫でユーチューバーのセルゲイ・チハノフスキー氏が5月に拘束され、立候補を阻まれたため、妻として、2児の母として代わりに出馬した。政権は、無名の主婦が強力な対抗馬となることはあり得ず、複数候補による選挙を演出する必要性もあることから、立候補を認めたとみられる。

 しかし、これが誤算だった。出馬の道を断たれた複数の陣営が合流し、チハノフスカヤ氏は野党勢力の統一候補に。「私は政治家ではないが、愛のために(選挙戦を戦っている)」。こう話して女性スタッフと共に全国各地を行脚し、7月30日にミンスクで開いた集会には、ソ連崩壊後最大規模とされる6万人以上を動員した。

 シンボルは、絵文字や手で表現した「ハート」「握り拳」「ピースサイン」。支持者は、ソ連国旗に似たベラルーシ国旗ではなく、ソ連誕生以前に使われた独立の象徴である白・赤・白の旗を掲げた。チハノフスカヤ氏は公約として、自身が勝利したあかつきには「半年以内に全候補が参加した形で公正な選挙をやり直す」と訴えた。

 ところが、8月9日の大統領選はふたを開けると「ルカシェンコ大統領が約80%、チハノフスカヤ氏が約10%の得票率だった」と、政権がコントロールする中央選管が発表。やはり政権寄りの出口調査結果が9日夜に発表されるや否や、選挙や集計に不正があったとして連日連夜の抗議デモが起き、警官隊と衝突して死者も出た。

 奇妙なことに、国営メディアは11日、チハノフスカヤ氏が「国民は法律を順守し、警官隊に立ち向かったり、広場にデモに出たりしないでほしい」と文書を読み上げる動画を公開。もっとも、これは政権に脅されて事前収録していたものとみられている。一時、所在不明となっていた本人は11日、隣国のEU加盟国リトアニアに逃れたことが確認された。子供2人は、身に危険が及びかねないとして選挙前に出国させていた。

 チハノフスカヤ氏は14日、白いスーツ姿で改めて動画の声明を発表し、こう勝利宣言した。「入手した選管の書類コピーによれば、自分の得票率は60~70%だった。国民の大多数も現職の勝利を信じていない。各都市で暴力を止める必要があり、政権に対話を求める。15、16日に平和的かつ大規模な集会を開いてほしい」

◇シナリオ(1)「軍事介入」

 今後、ベラルーシ情勢はどのように展開するのだろうか。事態はすぐに動きだすかもしれないし、結果的にルカシェンコ大統領が退陣すると仮定しても長期化するかもしれない。ウクライナにおいて、選挙不正疑惑が発端となった04年の「オレンジ革命」は再選挙まで1カ月かかったし、13~14年の親EU派による政変(マイダン革命)はヤヌコビッチ政権崩壊まで3カ月を要している。

 第1のシナリオとして、国際社会が懸念するのは、ロシアによる軍事介入だろう。

 ベラルーシは、EUが旧ソ連圏で進める経済協力枠組み「東方パートナーシップ」の対象6カ国の一つ。ロシアにとっては、2国間の段階的な統合を定めた「連合国家創設条約」(99年署名)の相手であり、ロシアを中心とした集団安全保障条約機構(CSTO)メンバーの軍事同盟国でもある。将来的に欧米の影響圏に引き寄せられれば、緩衝地帯としての機能が失われ、ロシアは敵視する北大西洋条約機構(NATO)と直接対峙(たいじ)することになりかねない。

 実際、旧ソ連圏でそうした事態を回避するため、ロシアが実力行使に出たのが、東方パートナーシップの対象国を相手とした、ジョージア(グルジア)紛争(08年)とウクライナ危機(14年)だった。

 ただ、仮にベラルーシに軍事介入するにしても、ロシアには内外に説明できるような「大義」がない。NATO加盟を目指したジョージア、EU接近に動いたウクライナとは異なり、ベラルーシ国民の多くが求めるのは、あくまでルカシェンコ政権の退陣だ。また、ベラルーシ国民はおおむね親ロシアで、プーチン政権が欧米の脅威とレッテル貼りできるような「外敵」が国内に存在しない。ロシアが暴動を鎮圧するとすれば、親ロシア派の国民をたたくことを意味し、意図せずしてベラルーシを欧米側に追いやってしまう可能性がある。さらには、クリミア半島併合から6年を経て関係正常化を進めていた欧米から、必ずや追加制裁を受ける。こうした展開をプーチン政権はできれば避けたい。

 折しも、ロシア極東ハバロフスクで7月から1カ月以上も反政権デモが続いており、ベラルーシで強硬手段に出れば、見せしめどころか、内外のデモに共感するロシア国民の失望と反発を招いてしまう。

 とはいえ、EUは8月14日に外相会議を開き、大半を解除していた対ベラルーシ制裁を改めて発動する方針を決めた。その加盟国リトアニアは出国したチハノフスカヤ氏を保護している。プーチン大統領は選挙後、ベラルーシ情勢が混迷を深める中、連日のようにルカシェンコ大統領と電話会談し、軍事同盟に基づく「支援」を約束している。欧米が介入を強めれば、そうした動きを「侵略」「脅威」と拡大解釈し、実力行使をちらつかせる可能性も皆無とは言えない。

◇シナリオ(2)「再選挙」

 EU側も一応、ベラルーシ問題の扱いの難しさや、緩衝地帯としての重要性は理解している。これまでせっかく制裁の解除を進め、ロシアと一定の距離を保たせることに腐心していたのに、制裁を復活させてルカシェンコ政権がロシアに駆け込めば「元のもくあみ」だ。他方で、EUが重視する民主主義の価値に鑑みれば、選挙不正や抗議デモ弾圧を看過することはできず、制裁のポーズは取らざるを得ない。米ブルームバーグ通信のコラムニストは、進むことも退くことも容易でないベラルーシ情勢について「欧州にとっての新たな悪夢」と選挙前から指摘していた。

 EU、ロシアとも積極的な行動が取りづらい中、考えられる第2のシナリオは、大統領選やり直しの可能性を視野に入れ、ルカシェンコ政権に対するベラルーシ国民の不満を除去しつつ、自らに都合のよい「新政権」を構築することだろう。

 ロシアは、13年にゲラシモフ軍参謀総長が論文の中で「ハイブリッド戦争」を提唱し、相手国で抗議デモをたき付けるといった非軍事手段を翌14年の軍事ドクトリンに盛り込んだ。「ハンガリー動乱」や「プラハの春」のような直接行動を取らないのがプーチン政権のやり方で、第1号がウクライナ危機だったことは記憶に新しい。

 チハノフスカヤ氏が8月15日から2日間、全土でデモを呼び掛けたことに対抗するかのように、ルカシェンコ大統領を支持する集会が16日に初めて行われた。ここで選挙前を上回る10万人以上を動員した野党勢力に比べると「官製デモ」のほうは見劣りしたが、それでもプーチン大統領と電話会談が連日行われる中で初開催されたことは注目すべきだろう。ルカシェンコ政権にとって危険な兆候として、選挙不正などへの抗議デモに、大票田であるはずの国営企業従業員のゼネストも重なっている。ロシアは長期戦も覚悟し、水面下で巻き返し工作を図っている可能性がある。

 追い込まれたルカシェンコ大統領は17日、国民投票で憲法を改正すれば、選挙のやり直しは可能と発言したが、実現するかは未知数だ。

 同じ旧ソ連構成国を見ると、アルメニアで18年に反政権デモの結果、長期政権が打倒されたが、デモの指導者だったパシニャン首相は親ロシア路線を維持し、プーチン大統領も問題視しなかった。翻って、ルカシェンコ政権というステータス・クオ(現状)をベラルーシ国民が望まなければ、新政権をロシアに引き込むまでのことだ。

 EUは今のところ、チハノフスカヤ氏をはじめ野党勢力に肩入れする一方、南米ベネズエラのような暫定大統領承認や亡命政権の受け入れといった積極的な行動には及び腰だ。その意味で、プーチン政権には権益死守の勝算が残っていると言える。 』

ロシア反体制派指導者が重体、毒盛られた可能性

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62857770Q0A820C2FF1000/

『【モスクワ=小川知世】ロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が20日、西シベリアのオムスクで緊急搬送され、重体となっていることが分かった。病院がタス通信などに明らかにした。同氏の報道担当者は毒物を盛られた可能性があると主張している。

ナワリヌイ氏は飛行機で西シベリアのトムスクからモスクワに移動中に体調不良を訴えた。飛行機が途中で緊急着陸し、現在は意識不明で集中治療室(ICU)にいる。報道担当者は「お茶に毒物が混ぜられたと推測している」と指摘した。同氏は空港のカフェでお茶を飲んだという。

ナワリヌイ氏はプーチン政権の不正を追及する活動で知られる。反政権デモを呼びかけて、繰り返し治安当局に拘束されていた。2019年には拘束中のモスクワの拘置所で顔が腫れるなどして入院し、ナワリヌイ氏側は毒物を盛られた疑いがあると主張していた。

ロシアでは反体制派の活動家らが中毒症状を訴える事例が過去にも起きている。18年には英国で元ロシア情報機関職員のスクリパリ氏の毒殺未遂事件が発生。英国はロシアが関与した可能性が高いと非難したが、ロシアは一貫して否定した。

ナワリヌイ氏は9月13日の統一地方選に向けて、与党「統一ロシア」の候補者の当選を阻止するため、対立候補への投票を呼びかける運動を展開している。トムスクにもこの運動の一環で訪れていた。』

重体のロシア野党指導者、ドイツで治療へ NGOが航空機手配
https://www.afpbb.com/articles/-/3300285?cx_part=top_topstory&cx_position=2


『【8月21日 AFP】ロシアの野党勢力指導者アレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏が何者かに毒を盛られたとみられ、意識不明の重体となっている問題で、ナワリヌイ氏をドイツの首都ベルリンの病院に搬送する救急輸送機が20日夜、同市を出発することになった。独NGOの代表がAFPに明らかにした。

 ナワリヌイ氏は現在、シベリア(Siberia)の病院で治療を受けている。輸送機を手配したNGOシネマ・フォー・ピース財団(Cinema for Peace Foundation)の創設者ヤカ・ビジル(Jaka Bizilj)氏によると、ナワリヌイ氏はベルリンのシャリテ大学病院(Charite University Hospital)に搬送される予定。

 同財団はこれまでもロシアの野党勢力を支援してきた。2018年には、ロシアのパンクバンド「プッシー・ライオット(Pussy Riot)」メンバーのピョートル・ベルジロフ(Pyotr Verzilov)さんが毒を盛られたとみられる事件でも、救急搬送を手配。ベルジロフさんはシャリテ大学病院での治療により容体が著しく回復し、およそ10日後に退院した。

 ロシアのドミトリー・ぺスコフ(Dmitry Peskov)大統領報道官は、ナワリヌイ氏の「早急の回復」を願うと表明。ロシア政府は必要であればナワリヌイ氏の外国への搬送を支援するとした。

 ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相とフランスのエマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領は20日に開いた共同記者会見で、ナワリヌイ氏の容体に懸念を示し、支援を申し出た。

 メルケル首相は、欧州各国首脳が事実関係について「説明を要求する」方針だと言明。「私が聞く限りでは(状況が)あまりはっきりしておらず、この毒物混入に関する状況はより明瞭にすべきだ」と述べた。(c)AFP』