【コラム】大胆なてこ入れ迫られる韓国のノーベル賞プロジェクト

【コラム】大胆なてこ入れ迫られる韓国のノーベル賞プロジェクト
著名な科学者に対し資金を提供してきたIBS研究団、相次いで空中分解
10年間の実験は事実上失敗、偏りのあるR&D(研究開発)予算は再分配すべき
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/05/06/2022050684718.html

※ 韓国は、まず、サイエンスの各分野(医学・生理学、物理学、化学など)での、「ノーベル賞候補」入りから、目指すべきだろう…。

※ そういう「各分野」における、「画期的な論文」を各分野から「推薦」されて、最終的に「選考」されて、「受賞」が決まる…、という仕組みになっているんだから…。

※ まず、そういう「各分野」での、推薦され得るような「候補・画期的な論文」にすら入っていないのでは、「話しになって」いない…。

※ こんな「台座」なんか、いくら準備したところで、何の効果も、ありはしない…。

※ それでも、いくらか「精神的な鼓舞」には、なったものなのか…。

『2005年にソウル大学物理学部のミン・ドンピル元教授をはじめとする科学、芸術、人文学の教授らが集い、「ランコントゥル(出会い)」という集まりをつくった。彼らは、世界一流の科学者が集まって自由に討論し、研究する「銀河都市」をつくるべきだ、と提案した。世界中の物理学者らを呼び込める加速器(超大型施設)の建設も進めるべきだと主張した。

 この構想は、当時大統領選の候補だった李明博(イ・ミョンバク)元ソウル市長に「銀河プロジェクト」という名で報告され、公約として採択された。こうして2011年11月、基礎科学研究院(IBS)が発足した。一つの研究団に年間100億ウォン(約9億6000万円)の研究費を支援し、最低10年間の研究期間も保障する、という前例のない破格のシステムだった。韓国の念願とも言えるノーベル科学賞を受賞させ、研究成果を上げる、というのが目標だった。著名な科学者たちが次々と研究団に合流した。「多くの支援を受けているため、あえてIBSに行く必要がない」と大口をたたいていたあるソウル大教授も、わずか1カ月後にはIBSに志願した。理由を尋ねたところ、「ほかの人は皆志願しているのに私だけやらないとなると、レベルが低いかのように誤解される」と答えた。

 10年以上にわたって、IBSは数多くの成果を上げてきた。30以上の研究団が毎月数多くの論文を著名な学術誌に掲載した。しかし、内部をのぞくと、IBSの奇形とも言える構造が如実に垣間見える。昨年IBSは三つの研究団に対する支援を打ち切り、今年も一部の研究団が消える。研究団が解体されれば、構成員らは皆、新しい職場を探さなければならない。10年間蓄積してきたノウハウが空中分解するわけだ。評価内容としては「団長と副団長間の協力不足」「独自性不足による競争力低下」「次期研究団長に適当な候補者不在」といった辛辣(しんらつ)な内容が盛り込まれている。今年の評価については「落第寸前だったある研究団が団長の政治力で生き残った」という言葉まで聞かれる。KAIST(韓国科学技術院)のある教授は「最初から予想されていた惨事」という。学者として最盛期を過ぎた科学界の人々が、名声を掲げて研究団長に就任したため、ノーベル賞を受賞するだけの研究成果は最初から期待し難かったのだ。

 ノーベル賞は、通常30-40代に研究した成果がその20-30年後に認められることで受賞するようになるが、IBS研究団長はその大半が50代以上である上、研究分野もそれほど画期的とは言えないとの声が多い。従来本人たちが行ってきた研究を、所属だけを変えて続けるもので、ある日突然画期的な研究成果が生まれるわけがない。内部からの雑音も絶えない。ある研究団長は、特許を流出した疑いで有罪判決を受けたほか、商品券の不法現金化、虚偽の見積書作成などで懲戒処分となった研究員もいる。IBSを代表する施設である重イオン加速器「ラオン」は、2017年の稼働が目標だったものの、工期の遅れなどが重なり、完成は27年にまでずれ込む見通しだ。この加速器に少しでも関係した人々は「触れたくもない」と口を閉じる。表面的には技術的な問題を理由にしているが、実際は内部構成員間のあつれきが絶えないため、との話も聞かれる。

 ここ10年間、IBSに投入された予算は実に1兆6849億ウォン(約1600億円)にも上る。ソウル大学の1年間の予算をはるかに上回る資金を約30の研究団につぎ込んできたものの、ノーベル賞の糸口さえも見いだせていない。ノーベル賞受賞者たちは一様に「最初からノーベル賞を取ろうと思って研究を始めたわけではない」と話す。ノーベル賞を受賞するとして、特定の科学者たちに集中して資金を与えることがどれほど無駄なことなのか、受賞者たちが口をそろえる。3000万ウォン(約290万円)、5000万ウォン(約480万円)の元手がないために進めたい研究ができない若い科学者が多い。彼らの頭の中のアイデアは、IBS団長の過去の研究成果よりも、はるかにノーベル賞に近いかもしれない。10年間の実験で成功を得られないとすれば、大胆なてこ入れもやむを得ないだろう。

パク・コンヒョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) Chosunonline.com>』

【身近な例あり】量子力学のトンネル効果をわかりやすく解説します

※ 今日は、こんなところで…。

※ 「量子力学」を、少しでも「齧ろう」とすると、やたら「ワケわからん。」数式が出てきて、「申し訳ございませんでした!」「僭越でございました!」と言って、トットと撤退することになる…。

※ まあ、こんな感じのものだ…。

※ せめて、「トンネル効果」くらいは、少しは「分かりたいものだ…。」と思っていたら、いい記事に当たったぞ。

※ 数式を使わずに、解説を試みてくれているんで、紹介しておく。

「生命科学的思考で不安と向き合う」

 ※ NHKの「視点・論点」、けっこう参考になるものもあるんで、「録画」したものを時々視てる…。

 ※ 「生命科学的思考で不安と向き合う」という回も、そういう感じで視たものの一つだ…(今日、視た)。

 ※ 放送日は、去年の6月17日、午前4:40からの放送だったようだ…。

 ※ そんな朝早く、視る人いるのか、という感じなんだが、まあ、「録画」して視てる人が殆どなんだろう…。

 ※ リチャード・ドーキンスって人の、「利己的な遺伝子」という著作で語られている、「生物は、自己の生存と種の保存のために、形作られている。」という生物観・人間観に立脚している…。

 ※ 放送中に使用している「画像」(マトリックス)が参考になったんで、NHKプラスに上がってないか探した…。

 ※ しかし、探せなかった…。

 ※ どうも、最近放送した5回くらいまでしか、出てこなかった…。

 ※ 仕方ないんで、スマホで撮影したテレビ画面を、パソコンに取り込んで、キャプチャした…。

 ※ 盛大に「モアレ」が出てるのは、そういうわけ…。

※ 上記の説に従えば、ヒトは、「生存を脅かすことに直面すると、”不安”に駆られるように、形作られている(そういう、”仕組み”が、生物としてビルトインされている)…。

 だから、「不安」になることは、決してマイナスの側面ばかりでは無い…。「生存が危険にさらされていること」を、警告してくれている「ありがたいもの」という側面もある…。

※ しかし、それに「飲み込まれてしまって」、「何も手につかなくなったり」「平常心を失ったり」しては、マズい…。

※ そうならないためには、そういう「警告回路」がビルトインされていることを、しっかり認識して、客観的に対処する必要がある…。それを、「辛事は、理をもって処す」と表現している…。

※ しかし、あらゆる事がらに対して、「理をもって処す」のは、また行き過ぎだ…。

※ 逆に、「幸事(うれしいこと、喜ばしいこと)は、情をもって処して」、心の底から喜んで、時には「感情」を解放してやる必要もある…。

※ まあ、そういう生物観・人間観に立つわけだ…。

※ 他方で、ドーキンスは、同一書の中で、上記のようにも言っている…。

※ 「完全な自由意志」が存在するのかについては、一大哲学論争があり、それこそ「不可知論」に属するようなテーマでもある…。

※ しかし、人間社会の「制度」は、ある程度の「自由意志」を肯定するものとして定められている…。ドーキンスも、そういう立場に立つものなんだろう…。

※ 秩序ある安定した世界においては、「自分が希望する世界」とのズレは、あまり生じないから、「なぜ?」とか、「どうして、そうなのか?」という「主観的命題」は、認識されにくい…。

※ しかし、その安定・秩序が崩れて、カオスな世界に放り込まれると、「自分が希望する世界」とのズレが発生し、「なぜ違うのか?」「どうして違うのか?」という疑問が発生しやすくなり、「主観的命題」も認識されやすくなってくる…。

※ だから、「カオスな世界」に放り込まれることも、「悪い側面」ばかりでは無い…。そういう、「気づきの構造」をも備えたものであることを、しっかり認識して、「事に当たれば」いいだけの話しだ…。

※ ヒトの認識における視野を、2軸で斬ると、こういうマトリックスとなる…。

※ すなわち、「空間的視野」と「時間的視野」だ…。

※ 空間的視野は、文字通り、生物が生存していく世界で、「目に見えているもの」の世界だ…。

※ しかし、ヒトにはそういう視野だけが見えているのでは無い…。

※ 「言語」を操り、「文字」を発明したから、「過去からの知識の集積」をも、利用することが可能となった…。

※ すなわち、「時間的視野」をも、手に入れた…。

※ そういうヒトの「視野」は、万人に共通ではあるが、そこには当然「差異」というものもある…。

※ 例えば、「ヒトの赤ちゃん」を考えてみよう…。

※ まだまだ、「育っていない」し、「社会的な教育・訓練」も不十分だから、その「空間的な視野」も「時間的な視野」も、ごく狭いものに限られる…。

※ しかし、それも、決して「悪いこと」では無い…。

※ 「生存し」「生き残っていく」ためには、視野を限定して、余計なことを考えず、ただただ「生き残っていく」ことに、特化することは、「生存戦略」としては、正しいこととなる…。

※ ただ、そういう「視野」の広狭は、その構造を充分認識しておく必要がある…。

※ 自分の今現在の「視野」が、どういうものなのか…。今認識している「範囲」は、「目的」にとって、最もふさわしいものなのかどうか、絶えず意識しておく必要がある…。

※ 「目的」に合わせて、自在に「視野」の範囲を、広くしたり、時には「狭く」したり、自在に操る必要がある…。

※ この人、著作物も出しているようなんで、紹介しておく…。

インターネット中継衛星OneWeb第3陣34機の打ち上げ成功

インターネット中継衛星OneWeb第3陣34機の打ち上げ成功
https://otakei.otakuma.net/archives/2020032405.html

 ※ 今日は、こんなところで…。

 ※ こっちは、ソフトバンク系列がやろうとしている、「OneWeb」というものだ…。

 ※ おそらく、競合関係にある構想が、他にもあると思われる…。

 ※ 「携帯キャリア」間の競合…、みたいなものだろう…。

SpaceXが世界中にインターネットを届けるStarlink(スターリンク)とは!?

スターリンク
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%AF

SpaceXが世界中にインターネットを届けるStarlink(スターリンク)とは!? 通信速度や市場規模まで徹底解説
https://sorabatake.jp/19526/

スペースX、通信衛星60基の打ち上げに成功、しかしブースター着地に失敗・海上で回収
http://tokyoexpress.info/2020/03/08/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9x%E3%80%81%E9%80%9A%E4%BF%A1%E8%A1%9B%E6%98%9F60%E5%9F%BA%E3%81%AE%E6%89%93%E3%81%A1%E4%B8%8A%E3%81%92%E3%81%AB%E6%88%90%E5%8A%9F%E3%80%81%E3%81%97%E3%81%8B/

※ こういう風に、地球全体を「通信衛星のメッシュ」で覆い、「地球上のどの場所でも、インターネットへの接続が可能であるようにしよう。」という「構想」だ…。

詐欺になぜだまされる 脳の構造と対策

詐欺になぜだまされる 脳の構造と対策、専門家が解説脳科学者に聞く「脳」の活性化術https://style.nikkei.com/article/DGXZQOUC10BFU0Q1A211C2000000?n_cid=TPRN0016

『誰でも年齢を重ねると記憶力が低下したり、素早い判断ができなくなってきたりするもの。脳の活動が低下しているのではないかと不安になっているときに、ちまたで横行するオレオレ詐欺や還付金詐欺などの「特殊詐欺」の話を聞くと、なぜそんなことになるの? どうしてだまされるのか信じられないと思う人も少なくないだろう。年を取って脳が老化すると、本当にだまされやすくなるのだろうか。公立諏訪東京理科大学工学部教授で脳科学者の篠原菊紀さんに聞いた。
年齢は関係ない? だまされるときの脳の仕組みとは

――今回は「だまされやすさ」について教えてください。ニュースなどで特殊詐欺の被害に遭った人のエピソードに接すると「ええっ、どうして疑わなかったの?」と思う一方、「いや、自分だってその場になればどうなるかわからない」と不安になったりもします。
年齢とともに脳の判断力も衰えてくるわけですから、やはりだまされやすくなってしまうものなのでしょうか。

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篠原さん まず、脳の特性から考えると、高齢者であることを抜きにしても、「そもそも人の脳は、複数のことを同時並行処理できない」ということが前提となります。

人を人たらしめているのは脳の「前頭前野」という部分。知覚・言語・思考など知性をつかさどる部分です。

前頭前野は、脳の別の場所に格納されている記憶や情報を意識に上げてきて、何かのミッションがあるとそのたびあれこれ検討します。この機能があるからこそ、人類はどんな状況に置かれても柔軟に適応し、あらゆる環境下で生き抜いてきました。

このように優れた働きをする前頭前野ですが、ここはコンピューターのキャッシュメモリのように必要な情報を一時的に保存して情報処理をするところ。実は、その性能には限界があるのです。

前頭前野のメモリのことを「ワーキングメモリ」と言います。訳すると、作業記憶。ちょっと前にしていた作業を記憶し、再び必要になったときに取り出すというもの。私はこれを「脳のメモ帳」と呼んでいます。このメモ帳の枚数は、年齢とは関係なく、誰もが3~4枚しか持っていません。私たちは、「あれ」「これ」「それ」くらいしか同時に処理できないのです。

ですから、いくつもの情報をどんどん入れられ、その全部が重要だ、と言われてしまうと脳のメモ帳では処理が追いつかなくなるのが当たり前です。

――ああ、特殊詐欺の加害者はその脳の仕組みをまさに利用しているわけですね。

篠原さん そう。ある人がこう言い、次に違う人から電話がかかってきてこう言い、指示される…と、情報過多にして、脳のメモ帳を使い切らせる状態を意図的に作っているのです。

詐欺の手口を考えてみてください。どれも、「大変な一大事」というインパクトの強い情報をぎゅっと詰め込みます。

・孫や息子が事故や事件を起こした。だから、示談金が大至急必要(オレオレ詐欺)
・あなたの口座が犯罪に利用されている。だからすぐにキャッシュカードを交換しないと危ない(預貯金詐欺)
・未払いの料金があるという架空の事実を口実にし、金銭を脅し取る、だまし取る(架空料金請求詐欺)

失恋をしたときだって、仕事が手につかなくなります。悲しみや後悔、その人と思い描いていた未来が失われるという喪失感。脳のメモ帳はあっという間に4枚のうち3枚が使い切られてしまう。脳の余裕がなくなってしまいます。

だから、特殊詐欺の加害者は「ストレスフルな情報や人をたくさん入れる」ことで一気に圧をかけてくる。高齢であろうとなかろうと、このテクニックのもとでやられると、人は普段通りに思考できなくなり、稚拙な判断しかできなくなります。

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『不安をあおられても、うれしいときも、だまされやすくなる

――なるほど、だます側の巧妙な手口は、脳のメモ帳の余裕をなくす手口なのですね。

一方で、脳の前頭前野は年齢とともにその働きが低下する、と前回(「人事異動は好機!ミドルも脳はアップグレードしまくり」)伺いました。高齢だからこそのだまされやすさ、というのもあるのでしょうか。

篠原さん ワーキングメモリの力は、18歳から25歳をピークに低下する傾向があります。だから高齢になるほど狙われやすい、引っかかりやすいと言えるでしょう。だます側からすると「落としやすい」ターゲットです。

ただ、高齢者一般というよりも、だます側は無数の対象に電話をかけています。おそらく、その大多数の中でも、急にストレスをかけられることに脆弱な人、ワーキングメモリの力が落ちている人が引っかかりやすいということです。

――メディアなどでは、「相手と話してしまうとだまされてしまうから、留守電にしておくことが一番」と言われています。やはり、受け答えしてしまうなかで、怪しいぞ、と我に返るのは難しいのでしょうか。

篠原さん 怪しい、と思う人のほうが多いはずですよ。でないと詐欺被害はもっと爆発的に増えているでしょう。だます側からしたら、無数の電話をかけ続けるなかで相手は、たまたま引っかかってくれた希少な人。だから、同じ人が繰り返し狙われたりするのです。

――詐欺の話で言うと、「過払い金があったのでお金が戻ります」といった還付金詐欺や、ネット上で疑似恋愛の関係を作ってお金を要求する「ロマンス詐欺」など、一見するとうれしいことと組み合わせるようなだまし方もありますよね。

篠原さん ストレスフルなことだけでなく、うれしいことも脳のメモ帳を食うのです。例えば、うつ的になりやすいイベントとして、つらい出来事だけではなく仕事の昇進などプラスの出来事でもプレッシャーになる、ということは心理学でも知られています。

――ワーキングメモリはいろんな要因で食われやすいのですね。

篠原さん その場限りのキャッシュメモリですからね。ちなみに、だまされるときだけではありません。日常的にこんなことがありませんか。人との約束が3つ、4つ重なると最初の1つがきれいに頭から飛ぶ。2階に上がったのに、「なぜ自分はここに来たんだっけ」と用事が抜ける。会話中にいいことを思いついたのに、話し出すと内容が飛んでしまう、とか…。

――ありますあります。私は料理中に調味料のメモを見ているときに横から話しかけられるとその分量をすっかり忘れてしまいます。』

『だまされにくい判断力=ワーキングメモリを鍛えるには?

――だまされにくくするためにも、また、日々の判断力の低下に歯止めをかけるためにも、何らかの工夫をしたいのですが、おすすめの脳のトレーニング法はありますか。

篠原さん 認知症の疑いがある方の認知機能を調べる際に、ワーキングメモリの働きをテストする項目があります。そのテストを紹介しましょう。

脳のメモ帳を何枚か使う感覚を感じてもらうためなのですが、これを脳科学では「ワーキングメモリの多重使用」と呼びます。

これから言葉を1つずつ出します。そのあとちょっとした知的作業をしてもらいます。
机 ユリ 氷

この3つの言葉を覚えてください。

富士の山

この言葉も覚えてください。

では、富士の山を逆から言葉にして呼んでください。

はい、では最初の3つの言葉を思い出してください。

どうですか? 意外と出てこないでしょう? これが、脳のメモ帳を複数使う、ということです。何かを覚えて、余計なことをやって、また思い出す、というもの。このような、ちょっと「面倒くさいな」という作業を脳に課している最中に前頭前野が活性化します。

――まさに記憶と作業の組み合わせ、ワーキングメモリなのですね。

篠原さん もう一つ、人と話をする、というのも脳のネットワークを広げやすくする大切な行為です。脳には「出力依存性」という特性があります。

入力しよう、覚えよう、と思ってもさほど新しい情報ネットワークは作られないのですが、出力しようとしたときに、記憶の引き出しである「海馬」がその情報を「必要なもの」と判断し、情報ネットワークを構築しやすい状況にするのです。

面白い、と思ったこと、今日あった出来事を人にしゃべってみる。伝えてみましょう。話すのはもちろんですが、文字で起こす、というのもいいですよ。

――インプットも大事だけれど、アウトプットをすれば、よりいっそう脳が活性化するのですね。今回のお話も、読者のみなさんに「こんな面白いことが書いてあった」とSNSで広めてもらいたいですね! 

◇   ◇   ◇

次回は、話題になった「スマホ脳」。生活に欠かせなくなったスマホは果たして脳の老化につながるのか、篠原さんの意見を聞く。

(ライター 柳本 操)

篠原菊紀さん

公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授。医療介護・健康工学研究部門長。専門は脳科学、応用健康科学。遊ぶ、運動する、学習するといった日常の場面における脳活動を調べている。ドーパミン神経系の特徴を利用し遊技機のもたらす快感を量的に計測したり、ギャンブル障害・ゲーム障害の実態調査や予防・ケア、脳トレーニング、AI(人工知能)研究など、ヒトの脳のメカニズムを探求する。』

送電ロスなし「超電導」実用へ JR系、脱炭素を後押し

送電ロスなし「超電導」実用へ JR系、脱炭素を後押し
【イブニングスクープ】
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC164JB0W1A211C2000000/

『送電時の損失がほぼゼロの技術「超電導送電」が実用段階に入った。JR系の研究機関がコストを大幅に減らした世界最長級の送電線を開発し、鉄道会社が採用の検討を始めた。欧州や中国でも開発が進む。送電ロスを減らしエネルギーの利用効率を高められれば地球温暖化対策につながる。

送電ロスは主に電線の電気抵抗により電気が熱に変わることで起こる。送電線を冷やして超電導状態にすると、電気抵抗がゼロになるため損失をほぼなくせる。

課題はコストだ。かつてはセ氏マイナス269度に冷やす必要があったが、マイナス196度でも超電導の状態にできる素材の開発が進み、冷却剤を高価な液体ヘリウムから、1キログラム数百円と1割以下の液体窒素に切り替えられるようになった。超電導送電線の費用の相当部分を占める冷却コストが大きく減ったため実用化が近づいた。

JR系の鉄道総合技術研究所(東京都国分寺市)は送電線を覆う形で液体窒素を流し、効率よく送電線を冷やす技術を開発。世界最長級で実用レベルの1.5キロメートルの送電線を宮崎県に設置して実証試験を始めた。鉄道に必要な電圧1500ボルト、電流数百アンペアを流せる。送電線の製造は一部を三井金属エンジニアリングに委託した。

通常の送電に比べて冷却コストはかさむが「送電線1本の距離を1キロメートル以上にできれば既存設備を活用でき、送電ロスが減るメリットが費用を上回る」(鉄道総研)。複数の鉄道会社が採用に関心を示しているという。採用されれば、鉄道の送電線で超電導送電が実用化されるのは世界で初めてとなる。

超電導送電はこのほか風力発電など再生可能エネルギー発電分野でも利用が期待されている。電力会社や通信会社などに広がる可能性がある。

超電導送電は電圧が下がりにくいため、電圧維持のための変電所を減らせるメリットもある。変電所は都市部では3キロメートルおきに設置し、維持費は1カ所で年2000万円程度とされる。鉄道総研はより長い超電導送電線の開発にも取り組んでおり、実現すればコスト競争力がより高まる。

日本エネルギー経済研究所によると国内では約4%の送電ロスが発生している。全国の鉄道会社が電車の運行に使う電力は年間約170億キロワット時。送電ロス4%は、単純計算で一般家庭約16万世帯分に相当する7億キロワット時程度になる。

送電ロス削減は海外でも課題だ。鉄道以外も含む全体でインドでは17%に達する。中国では2021年11月、国有の送電会社の国家電網が上海市に1.2キロメートルの超電導送電線を設置した。ドイツでは経済・気候保護省主導で、ミュンヘン市の地下に12キロメートルの超電導送電線を敷設する「スーパーリンク」プロジェクトが20年秋に始まった。

日本は超電導送電に使う送電線を昭和電線ホールディングスが手がけるなど素材に強みがある。JR東海のリニア中央新幹線も超電導を使っており、鉄道総研の技術基盤が生かされている。

【関連記事】
・再生エネ普及へ送電網、2兆円超の投資想定 首相が指示
・超電導で電力供給、中央線E233系電車をフル加速
・超電導とは 電気抵抗をゼロに 』

豚の心臓を人体に移植、米メリーランド大が成功

豚の心臓を人体に移植、米メリーランド大が成功
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB110ML0R10C22A1000000/

 ※ 『人体が拒絶反応を起こさないよう遺伝子操作された豚の心臓を米国人男性に移植する』…。

 ※ もう、そこまで来ているのか…。

 ※ 『ゲノム編集技術によって免疫拒絶反応が起こらないように遺伝子を編集できるようになった』ということだ…。

『米メリーランド大学は10日、人体が拒絶反応を起こさないよう遺伝子操作された豚の心臓を米国人男性に移植する手術を成功させたと発表した。豚の心臓を人間に移植するのは世界で初めて。米国では臓器の不足が深刻な問題となっており、豚の臓器の移植に期待が高まっている。

豚の心臓移植をした医師㊧と患者=米メリーランド大提供

7日に移植手術を受けたのはメリーランド州に住み重い心臓病を患う57歳の男性。手術は8時間に及んだが、体調は良好だという。手術を行った医師は「手術は成功し見た目も正常だが、あすどうなっているかはわからない」と述べ、経過を注視していく方針だ。

東京慈恵会医科大学の小林英司特任教授(移植・再生医学)は「画期的な出来事だ。心臓のような生命維持に直接関わる臓器を豚から移植し、少なくとも数日間生存できていることの医学的な意義は非常に大きい」と指摘する。

米国ではドナーが不足している。米保健資源事業局によると現在約11万人の米国人が臓器移植を待っており、毎年6千人以上の患者が移植を受ける前に命を落としている。人間と似ている臓器を持つ豚の心臓や腎臓などの移植研究が進んでいた。

小林特任教授は「今後は患者の容体を注視する必要がある。短期的には拒絶反応が起きないよう制御できるかが重要だ。長期的には、豚の臓器を移植することによって新たな感染症にかかるリスクがあるのか、そして何より患者の生活の質がどのくらい改善するのか確認しなければならない。人工心臓による治療などと比べる必要があるだろう。臓器移植を待つ患者の選択肢が増えることを期待したい」と話す。

【関連記事】
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・中国ドローン物流、医療に商機 血液や臓器も輸送
・群馬大学が3000万円調達 小児用人工心臓開発のCF

多様な観点からニュースを考える

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為末大
元陸上選手/Deportare Partners代表
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ひとこと解説

福岡伸一さんが動的平衡という言葉で生命のありようを表現されています。細胞の単位で見れば人間の身体は数年で完全に入れ替わり完全に違う存在になっていますが、総体としては以前と変わらぬ同じ個人だと私たちは認識しています。このような技術が導入されることで、パーツは入れ替わりながらそれでも一貫している私とは何かという問いが社会に投げかけられるのではないでしょうか。諸法無我(全てはつながりながら変化している)という考えを私たちは直感するようになるのかもしれません。

2022年1月11日 11:59

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高橋祥子
ジーンクエスト 代表取締役
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ひとこと解説

臓器移植の臓器不足のため他の動物からの異種間臓器移植は1980年頃から研究されていましたが、安全性をヒトで確認するのはハードルが高いです。

そんな中、昨年には世界で初めてブタ腎臓をヒトに移植成功した事例があり、脳死状態の患者に対して家族が生命維持装置を外す直前に実験に参加した例でした。

今回は、他の選択肢がなく死ぬか移植するかという選択だったため実施されたとのことで、移植3日後も順調に進んでいるとのことです。

ゲノム編集技術によって免疫拒絶反応が起こらないように遺伝子を編集できるようになったことや、今後も事例が増えて安全性が確認されるとより一般的な選択肢として普及するようになるかもしれません。

2022年1月11日 15:36

山崎大作のアバター
山崎大作
日経BP 日経メディカル 編集長
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別の視点

米国以上に日本はドナー不足です。そのため、このような研究は日本が先行してもおかしくないのですが、そうなっていません。

以前、ヒトの臓器を動物の体内で作る研究を進めている東京大学の中内啓光教授が兼務する米スタンフォード大で研究を進める理由として日本での研究の規制の厳しさを上げておられました。研究倫理をおろそかにしないことは極めて重要ですが、新しい試みだからといって規制されることがないようにしていくべきでしょう。

2022年1月11日 14:06 』

第193回 細胞の分化を「巻き戻す」技術? iPS細胞の持つ可能性

第193回 細胞の分化を「巻き戻す」技術? iPS細胞の持つ可能性
https://www.tdk.com/ja/tech-mag/knowledge/193

 ※ ips細胞、よく耳にするが、イマイチ「全体像」が分からんかった…。

 ※ いい資料に当たったんで、貼っておく…。

『 2012年10月、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥教授がノーベル医学生理学賞を受賞されることが決定しました。今月のテクの雑学では、山中教授が研究する「iPS細胞」について解説します。

生物はもともと一つの細胞だった

生物はもともと一つの細胞だった

植物や動物などの多細胞生物のからだは、多数の細胞からできています。たとえば、ヒトであれば体重1㎏あたり約1兆個、体重60㎏の成人であれば60兆個の細胞があります。細胞は、その種類によって特化した機能を持っており、つながりあって体内の組織や器官を形成しています。しかし、元をたどればこれらの細胞はたった一つの「受精卵」という1つの細胞が分裂したもので、分裂の過程でさまざまな機能を持つ細胞に分かれていきます。細胞が特定の機能を持つ細胞に変化することを「分化」といいます。

 生物の体内の細胞は、生物が生きている間は入れ替わっており、新しい細胞を供給する役割を持つのが「幹細胞」と呼ばれる細胞です。ヒトやマウスなど多くの生物では、からだの場所ごとにその場所の細胞を供給する幹細胞があります。幹細胞の種類により、作れる細胞には制限があります。たとえば、「造血幹細胞」であれば、リンパ球や赤血球、血小板、白血球などに分化することはできますが、皮膚細胞や心筋細胞などには分化できません。

幹細胞とは

 さて、すべての細胞の大元になっている受精卵には、すべての種類の細胞に分化できる可能性(全能性)を持っています。体内の幹細胞は受精卵と同じ遺伝子を持っていますから、遺伝子だけを見れば、どのような細胞に分化してもおかしくありません。しかし、実際には特定の細胞にしか分化できないのは、遺伝子に特定のたんぱく質が作用することが原因です。たんぱく質の働きによって、細胞の中で活発に働く遺伝子の組み合わせが変化して、特定の細胞にしか分化できなくなっているのです。

■ 立ちはだかった「命の重さ」

 それでは、受精卵が分裂し始めたばかりの頃の細胞であればどうでしょうか。受精卵が分裂を開始してから胎児になるまでの細胞の塊を「胚」といい、胚から取り出した幹細胞をES細胞(胚性幹細胞)といいます。1981年にマウスのES細胞が発見され、1998年にはヒトのES細胞も発見されました。

 ES細胞は、胎盤以外のすべての細胞に分化できることがわかり、受精卵のような「全能性」はありませんが、ほぼすべての細胞に分化できるということで、ES細胞は「万能細胞」と呼ばれるようになりました。万能細胞を使えば、体内のすべての器官を再生できるなど、医療に飛躍的な進歩があるのではないかと期待が膨らみました。

 しかし、ここで立ちはだかったのが「ヒトのES細胞はヒトの受精卵を壊して取り出す細胞である」という事実です。そのまま育てばヒトになる可能性があるものを壊すのは、ヒトをヒトの手で殺す研究であると考え、反対する人も大勢いました。宗教的にもカトリック教会がES細胞を宗教的に認めないと公式に声明を出すなど、大きな問題になったのです。

 また、ES細胞を使った移植・再生医療を考えるとき、想定されるもう一つの問題が、「拒絶」です。ヒトの体は自分とは違う遺伝子が体内に入ると拒絶反応を起こし、場合によっては命にかかわります。

 「それなら、受精卵や胚を使わずに、患者自身の体細胞をどのような細胞にでも分化できる状態に戻す『初期化』によって、万能幹細胞を作ればいい」というのが山中教授のアイデアでした。このアイデアは、マウスの体細胞とES細胞を電気的に融合させたときに初期化が起こったという実験結果からひらめいたものです。「ES細胞の中に細胞を初期化する何かがあるかもしれない」という思いつきから遺伝子を調べ、2006年に最終的に初期化必要4つの遺伝子を特定しました。

iPS細胞の作り方

 4つの遺伝子それぞれが、細胞の中でどのような働きをして初期化が発生するのか、その原理はまだ完全には解明されていません。しかし、ES細胞とは異なり、iPS細胞は「ヒトの胚を壊す」という生命倫理の問題を回避することができ、また移植や再生医療に応用する場合も患者自身の細胞を使うことで拒絶反応を抑えられます。また、作成の方法も、遺伝子の特定さえできてしまえば比較的簡単だったことで、一気に注目を集めることになったのです。

■ iPS細胞の応用が期待される分野

 マウスのiPS細胞の誕生から6年が経過し、現在はヒトの細胞からのiPS細胞作成、血小板や神経細胞などの細胞や、肝臓、膵臓などの特定の臓器を作る細胞、インスリン分泌器官など特定の機能を持つ体内の器官を作成することに成功するなど、大きな進展がありました。多くのベンチャー企業がiPS細胞から作成した体細胞を製品化しており、今後の成長産業として期待されています。

 では、iPS細胞はどのように役立つのでしょうか。分野としては、以下のようなものがあげられます。

○新薬の開発

 効果を調べたい薬剤をiPS細胞から作った細胞にかけることで、効果や副作用を正確に調べられます。2009年には、iPS細胞から作った心筋細胞に心臓に悪影響を与える薬剤をかけることで、不整脈と同様の波形が検出されることが確認されています。

iPS細胞から作成した心筋細胞を利用した薬剤の効果測定

 心臓への副作用は従来動物実験で検証することが難しかったため、ヒトへの臨床試験を行わなくては確認できませんでしたが、この手法を使えばもっと早い段階で、患者に負担をかけることなく調べることができます。新薬開発にかかるコストを抑えることができ、製薬会社が多くの新薬開発にチャレンジしやすくなることが期待できます。

○再生医療

 患者自身のiPS細胞から作成した器官や細胞を移植することで、失われた機能を回復する効果が期待できます。理化学研究所などにより、間もなく臨床実験が進められる予定で準備が進められているのが、年齢とともに網膜が変化して視力を失う「加齢黄斑変性症」の治療です。患者自身の皮膚細胞を初期化して作成したiPS細胞から分化させた「網膜色素上皮細胞」を網膜裏に移植し、効果と安全性を確認します。

 患者自身の細胞を使えば拒絶反応は抑えられますが、早急に移植治療が必要になるようなケースでは、必要になってから患者自身のiPS細胞を作成し、分化させていたのでは治療が間に合いません。山中教授自らが構想しているのが、「iPS細胞バンク」です。拒絶反応が起こるかどうかを決める「HLA型」という免疫の型のうち、拒絶反応を起こしにくいタイプの型を持つiPS細胞をあらかじめストックしておき、患者のHLA型に応じて適合したiPS細胞から目的の細胞を分化させることで素早く目的の細胞を入手できるようにします。HLA型は数万種類ありますが、そのうち150種類をそろえれば、日本人の9割はカバーできる見込みだということです。

○病態解明

 「細胞の初期化」は、いわば細胞の成長を巻き戻すことであり、初期化後の細胞が分化する過程を観察することで、病気がどのようなメカニズムで発病するのかを明らかにできます。どの遺伝子が作用しているのか、どのようなタンパク質が作用しているのかなどがわかれば、薬を作るヒントが得られます。

 2012年8月には、京都大学iPS細胞研究所で、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者の細胞から作成したiPS細胞から分化させた運動ニューロン(脳から骨格筋に指令を伝える神経細胞)を用いて、細胞レベルでどのような異常が発生しているのかを明らかにしました。その結果、特定のタンパクを合成するRNAの代謝に作用する化合物が、異常の改善に役立つことがわかりました。

 ALSは運動ニューロンが変性することで全身が動かなくなり、やがて死にいたる難病です。しかし、この研究で治療薬を探す手がかりが得られました。

○遺伝子治療

 遺伝性の病気を持つ患者からとったiPS細胞をもとに細胞培養する時に、病気の原因となっている遺伝子を正常なものとおきかえる「遺伝子治療」が可能になると考えられています。2011年にマウスを使った動物実験では、先天性肝疾患を持った患者のiPS細胞から肝細胞に分化させる過程で、原因の遺伝子を正常な遺伝子に置き換えて同じ肝硬変の遺伝子を持ったマウスに移植したところ、肝硬変が治ったという成果が得られています。

 遺伝子治療による長期的な影響などについてはまだ未知であり、ヒトの臨床応用にはまだ明らかにすべき課題がたくさんありますが、従来は治療が難しかった遺伝的疾患の根本的な治療につながる可能性があります。

遺伝子治療(マウスによる治療)

 さまざまな可能性があるiPS細胞ですが、臨床治療手法を確立するためには、iPS細胞そのものを効率よく作るための技術や、目的の組織に分化させるための技術、培養した組織をヒトに移植したときの影響の解明など、まだまだ課題はたくさんあります。ノーベル賞受賞の記者会見で山中教授は、「この研究ではまだ、たった一人の患者さんも救っていない」と語りました。多くの研究者や企業が有望な技術として研究に取り組むことで、これから多くの人を救える技術になるのです。

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著者プロフィール:板垣朝子(イタガキアサコ)

1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)』

科学における不正行為

科学における不正行為
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%91%E5%AD%A6%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E4%B8%8D%E6%AD%A3%E8%A1%8C%E7%82%BA

 ※ よくもまあ、ゾロゾロと「不正事件」が続いているもんだ…。

 ※ 「ネイチャー」「サイエンス」「博士」「東大」「京大」「ハーバード」「ノーベル賞」と聞くと、そこで「思考停止する」人が多いからな…。

 ※ 「思考停止」していては、「真贋」の判断も、「正・不正」の判断も下しようがない…。

 ※ 特に、「世論」が一斉に右ならえしている時は、「危ない」…。

 ※ STAP細胞のときは、酷かった…。リケジョとか、かっぽう女子とか、持て囃してな…。

 ※ テレビのワイドショーで取り上げている時は、「赤信号」が点滅中だと思っておけば、間違いない…。

『不正行為の具体例

大きく一般報道された事案や、その後の研究に大きな影響を与えた事件を中心に取り上げる。最終的に不正が認定されなかった事案を含む。

時期 事件名
関係者名 研究所
大学 事件内容 補記

1909年 ピルトダウン人事件 1909年から1912年にかけてイギリスでチャールズ・ドーソンによって旧石器時代の人骨が”発見”され、「ピルトダウン人」と名づけられたが、捏造された偽造化石の可能性が当初から疑われていた。1953年に初めて偽造と判明した。

1926年 サンバガエル捏造事件 オーストリアの遺伝学者パウル・カンメラー(英語版)は、19世紀初頭にラマルクが唱えた用不用説を証明するために、サンバガエルを水中で交尾させることで婚姻瘤の発現が見られることを発表。ところが、他の研究者の検証によって婚姻瘤がカエルの足に着色することによる捏造だったことが判明。カンメラーは自らを陥れるための陰謀だと主張したが受け入れられず、ピストル自殺した。
「ネオ・ラマルキズム」の項も参照。

1933年 長崎医大博士号贈収賄事件 長崎医科大学 長崎医科大学教授だった勝矢信司は、1926年に同大教授に赴任して暫くして博士論文の指導や添削の謝礼として指導下の学生や博士号を取得する開業医から謝礼を受け取っていたが、やがてエスカレートして刀剣の鑑定料として多額の謝礼を受け取るばかりか、調度品を贈られたり旅行などで供応行為を受けていた。1933年に勝矢への贈収賄が発覚し、勝矢の指導下で医学博士を授与された開業医が検挙。さらに勝矢ばかりか同大教授だった浅田一・赤松宗二も捜査を受け、勝矢ら三教授は辞任した(後に勝矢は免職処分となる)。 この事件の背景には長崎医大内での浅田ら東京帝大出身教授と勝矢ら京都帝大出身教授の対立があり、それが博士論文の審査にまで影響して公平性を失しているとの開業医の仮処分(結局却下)をきっかけに発覚した。事態の発覚に伴い、学生や同窓生から全教授の辞任を要求する声が挙がり、一時は教授ばかりか助教授・講師・助手全員が辞表を提出する事態に発展。文部省は勝矢と彼の実弟を含めた四教授を辞職させ、小室要学長を更迭・高山正雄を新学長に就任させた。

1974年 サマーリン事件 メモリアル・スローン・ケタリング癌研究所(英語版) ウィリアム・サマーリンが、ネズミの皮膚にマーカーペンで黒い点を複数描き、皮膚移植が成功したかのように見せかけた。

1980年 アルサブティ事件 イラクからヨルダンを経てアメリカ合衆国へ留学した医師エリアス・アルサブティは、テンプル大学に研究職のポストを得るものの成績が振るわず失職。その後、ジェファーソン医科大学へ移籍したが、そこで実験データの捏造が発覚。大学を追われいくつもの研究機関を転々とするものの、その際に無名の学術雑誌に掲載されていた論文を多数盗用し別の無名の学術雑誌に投稿することを繰り返した。そのうち60数件が実際に掲載されアルサブティの実績となってしまったものの、アルサブティの技能の拙さに不審を感じた同僚研究者の調査や元の論文著者の抗議から事態が発覚。医師免許を剥奪された[4]。 「査読」の項も参照。

1981年 スペクター事件 コーネル大学 コーネル大学の大学院生マーク・スペクター (Mark Spector) は、ガン発生のメカニズムについて新発見をしたと発表。指導教授エフレイム・ラッカー(英語版)の指導の下スペクターは次から次へと成果を挙げたものの、実験データの不自然さと追試が成功しなかったことから実験データの捏造が発覚。論文が撤回されたばかりか経歴詐称までも判明し、スペクターは退学処分となった。 福岡伸一著「世界は分けてもわからない」に概要が記されている。

1981年 クローンマウス事件 ジェネーブ大学のカール・イルメンゼー(ドイツ語版)とアメリカ・ジャクソン研究所のピーター・ホッペは、1977年にハツカネズミの体細胞から細胞核の移植によってクローン生物を生成することができると発表。これまで哺乳類では不可能といわれていたクローンが、哺乳動物でも可能ということで世界的に反響をもたらしたが、他の実験者による再現実験では成功せず、さらにイルメンゼーがデータを故意に操作していたとの内部告発もあり、1981年にイルメンゼーの一連の研究は「捏造とは断定できないものの、信頼性に重大な疑問が残る」という調査結果を発表。イルメンゼーへの研究助成は打ち切られ、その後大学の職を辞する事となった。この事件以降、一時的にクローン生物研究は世界的に下火となった。

1986年 ボルティモア事件 マサチューセッツ工科大学 免疫学者テレザ・イマニシ=カリがデータを捏造したと部下が告発したが、イマニシの属していた研究室の主宰者だったデビッド・ボルティモア(ノーベル賞受賞者)がその告発を受け入れなかった。一度は有罪とされたが、再審査においては「証拠は見つからなかった」として告発は却下された。 この事件で、真相究明が難航したことが、アメリカ合衆国の研究公正局 (ORI) の前身となった機関である科学公正局の設立のきっかけとなったとも言われることがある。

1994年 ピアース事件 イギリスの産科医師ピアース (Malcolm Pearce) が、臨床例を捏造して、それをもとに論文を作成し、自身が編集委員を務める英国産科婦人科学会誌に発表した。編集委員長を論文共著者としていたが (= gift authership)、その編集委員長が辞任した。 英国が科学者による不正行為の対策に本格的に取り組むきっかけとなったともいわれる。

1997年 ヘルマン・ブラッハ事件 フリードヘルム・ヘルマン(ドイツ語版)とマリオン・ブラッハ (Marion Brach) が、1988年から1996年の間に発表した細胞成長に関する37論文で、デジタル画像の捏造やデータ操作・偽造が行われたことが、両者の研究スタッフからの内部告発によって発覚。ヘルマンとブラッハは詐欺の容疑で起訴されたが、結局援助されていた資金を返還することで和解した。 ヘルマンとブラッハの研究はドイツ研究基金とドイツ癌研究援助基金から多額の資金援助を受けていたこともあり、5年後に発覚したベル研シェーン事件を含めてドイツ科学界に大きな影響を及ぼした。

1998年 MMRワクチン捏造論文事件(英語版) アンドリュー・ウェイクフィールドが「新三種混合ワクチンの予防接種で自閉症になる」論文が『ランセット』に掲載された。12人の子供の患者を対象に研究し、「腸疾患」と「自閉症」と「三種混合ワクチン」が関連した新しい病気「自閉症的全腸炎(autistic enterocolitis)」を発見したと報告した。この論文掲載に対して『ランセット』は激しい批判に晒された。
2004年2月に『ランセット』は、同論文の一部撤回を発表し、2010年に『ランセット』は、この論文を正式に撤回した[30][5]。 イギリス・アメリカ合衆国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドにおいて、ワクチン接種が激減、麻疹 に感染する子供が増加した。
アンドリュー・ウェイクフィールドは、イギリスの医師免許剥奪の懲戒処分を受けた。

2000年 旧石器捏造事件 藤村新一が30年ほど前から発見していた、旧石器の発見が捏造であったことが毎日新聞のスクープによって暴露された。 発覚の影響は大きく、検定済教科書において、歴史教科書の記述削除を余儀なくされた。

2002年 ベル研シェーン事件 ベル研究所 ベル研究所の科学者ヘンドリック・シェーンが作成し2000年から2001年にかけて『サイエンス』誌に掲載された論文10編および『ネイチャー』誌掲載の論文7編が、後に捏造であることが判明し、全て撤回された。 ヘンドリック・シェーンはこの一件で、ベル研究所を解雇され、コンスタンツ大学からは博士の学位を剥奪された[31]。

2002年 ヴィクトル・ニノフ バークレー研究所 1999年に最重元素(超ウラン元素)が発見されたとしていた研究の実験データが偽造されていたと判明し、論文を撤回[32]。

2005年 大阪大学医学部論文不正事件 大阪大学 2005年6月に、実験データの不適切な掲載を理由として、Nature Medicine誌の論文 (Nat Med. 2004 Nov;10(11):1208-15.) が撤回された。大阪大学は、筆頭著者の大学院生を実行犯と認定し、監督者の教員2名は停職処分にした[33]。一方、実行犯と認定された筆頭著者が関与していない別の論文 (Science. 2005 Jan 21;307(5708):426-30) も、再現性が取れなかったとして2007年10月に撤回された。

2005年 東京大学工学部のRNA研究室の事件 東京大学 遺伝子の働きを制御するリボ核酸に関する論文について、疑義が浮上。日本RNA学会が東京大学に調査を依頼した。反証として提示したABIのシークエンサーのデータが、データ作成当時はABIから販売されていなかったはずの新しいバージョンのソフトウェアを用いて作られたものであったことなどから、2006年3月に「データは偽造された可能性が高い」とされた[34]。 この不正行為から東京大学は教授と助教を懲戒解雇したが、教授は解雇は不当として東京大学と裁判で争っていた。一審・二審ともに教授側の責任を認め「解雇は妥当」と結論付けた[35]。

2005年 ES細胞論文不正事件 ソウル大学 黄禹錫(ファン・ウソク)が行っていたクローン胚ES細胞研究に疑義が発生。2006年1月に調査委員会により捏造だと断定され、論文は撤回。

黄禹錫はこの一件で、研究助成金など8億3500万ウォン(約6500万円)を騙し取ったと認定され、懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けた。
捏造が認定されたものの、NT-1株についての物質特許とES細胞の作成方法について、2011年にカナダ、2014年にアメリカで特許が成立している。なお、韓国ではNT-1株の存在が認められておらず、訴訟が続いている[36]。後の検証でES細胞の作製と世界初となるヒトの単為生殖に成功していたことは認められたが、論文が不正であり、論文に記された作成に至る経過とは関係なく偶然できた物と検証されたため、世界初の業績であるとはみなされていない[37]。

2006年 Jon Sudbø ノルウェー・ラジウム病院 口腔癌に関するJon Sudbøらの医学論文において、偽造データが使われていたことが判明[38][32][3]。

2006年 杉野明雄 大阪大学 大阪大学大学院生命機能研究科教授の杉野明雄による論文不正が発覚し、懲戒解雇された。杉野の研究室の男性助手を含む複数の共同論文著者らは、研究データを杉野に改竄され、論文を米国の生物化学専門誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー (Journal of Biological Chemistry)」誌に投稿されたと指摘していた[39]。男性助手はその後、毒物のアジ化ナトリウムを飲み自殺した[40]。 日本分子生物学会で研究不正問題に関するシンポジウムが開かれる契機となった。

2006年 松本和子 早稲田大学 研究費の大量流用が行われた。内閣府の要職も務めていた者の事件であったことから、この事件は国の研究資金の管理が厳しくなる大きな契機となった。

2007年 東北大学総長の疑惑 東北大学 東北大学の総長に対して研究不正の疑義が内外から寄せられ[41]、様々な調査が行われたが、総長が自ら辞職することはなかった。東北大学の総長は告発した教授に対して名誉毀損の訴訟を起こした。

2010年 アニリール・セルカン 東京大学
宇宙航空研究開発機構 東京大学大学院工学系研究科の助教であったアニリール・セルカンの経歴詐称、業績の捏造、剽窃が判明。学位取り消し、懲戒解雇相当の処分が下された[42]。 この事件の追及を担った11jigenは、その後5年近くに渡り多くの研究不正事件の発覚に関わった。

2010年 森直樹 琉球大学 修士論文や博士論文の発表会における学生の様子を見れば、何かが起きていることは誰でも容易に分かる状態であったと言われる[要出典]。しかし、大学はそれを放置した。

論文が投稿された学術誌から指摘を2010年3月に受け、同大学は4月に調査委を設置。38編の論文について不正があるとの調査結果が発表され、森は8月に一旦懲戒解雇処分となったが、その後の訴訟の結果、和解が成立し解雇処分は無効となった。また、内部調査では不正ではないとされていた琉球大学学長自身が共著として名を連ねていた論文が、外部調査委により不正と認定され、内部調査の在り方へ疑念が広がった[43]。

2012年 藤井善隆 東京医科歯科大学

筑波大学

東邦大学
東邦大学の准教授で日本麻酔科学会に所属する医師藤井善隆が、1991年から2011年に発表した論文212本のうち、172本にデータ捏造の不正があったとする調査結果を日本麻酔科学会の調査特別委員会が発表した。藤井は同年2月に東邦大で書いた論文に研究手続き違反があったとして、諭旨免職処分となり、同年8月には日本麻酔科学会も自主的に退会した[44]。 この事件の論文撤回数は、世界でも1位の数である。この1位という順位を、日本の研究不正が深刻である根拠とする言論もある[8][45]。

2012年 ムン・ヒュンイン 東亜大学校 韓国、釜山の東亜大学校教授のムン・ヒュンインが、科学論文を科学雑誌に投稿した際に、ムン自身が管理できるようにしていた偽名科学者のメールアドレスを、論文の査読者の連絡先として推薦し、自分自身で論文査読し、論文を受理させるという前代未聞の研究不正が発覚し、合計35報のムンの論文が撤回された[46]。

2012年 森口尚史 東京大学医学部附属病院 山中伸弥がiPS細胞でノーベル賞を受賞した直後、東京大学医学部附属病院特任研究員の森口尚史がiPS細胞を使った世界初の臨床応用として心筋移植手術を6件実施したと学会発表した。読売新聞はこのことを1面トップで大きくスクープした。しかし、少なくとも、5件が虚偽であることが発覚し、東京大学医学部附属病院から懲戒免職処分を受けた[47]。読売新聞は、報道に関わった社員を処分した。

2013年 ディオバン事件 京都府立医科大学
東京慈恵会医科大学
滋賀医科大学
千葉大学
名古屋大学 バルサルタン(商品名ディオバン)というノバルティスファーマが販売していた降圧剤についての臨床試験の論文が、京都府立医科大学・東京慈恵会医科大学・千葉大学・名古屋大学・滋賀医科大学から同時期に別々に発表された。一部の論文はディオバンが他の降圧剤に比べて脳卒中の割合等を大きく下げるというような画期的なものであった。これらの論文の恩恵を受け、ディオバンは1兆円を超える売り上げを上げた。しかしながら、由井芳樹のLancet誌における告発[48]等を契機として、5つの大学のいずれの論文にも不正があり、また、いずれの論文の作成にもノバルティスファーマの社員が関わっているという利益相反の問題が発覚した。千葉大学を除いて、論文の責任著者は引責した。千葉大学は、千葉大学から大阪大学を経て東京大学に異動していた論文の責任著者を処分するよう東大に勧告したが、東大は処分を行わなかった[49]。

2014年 STAP細胞研究不正事件 理化学研究所

ハーバード大学

東京女子医科大学
2014年1月末にSTAP研究が発表され、筆頭著者は一夜にして時代の寵児になった。しかしながら、様々な論文不正の疑義が数週間後には発覚し、騒動の末、論文は撤回された。この騒動はメディアで極めて盛んに取り上げられ[50]、理化学研究所に関連する法案の提出延期や理化学研究所のセンターが解体される事態にまで発展した。論文の調査や検証実験が行われている最中、8月5日に論文の共著者であった笹井芳樹は自殺を遂げた。
2014年 早稲田大学博士論文不正問題 早稲田大学 STAP事件を契機として、STAP細胞論文の筆頭著者を含めた早稲田大学先進理工学研究科の多数の学生の博士論文において大量の盗用剽窃が発覚した。このため早稲田大学は、先進理工学研究科280本の博士論文も調査することになった[51]。早稲田大学は、62件の学位論文を訂正したが、STAP細胞論文の筆頭著者以外の学位の取り消しは行わなかったことを発表した[52]。
2014年 東京大学分子細胞生物学研究所核内情報研究分野の論文不正 東京大学 2011年の年末から2012年の年初にかけて、Nature誌に掲載された大量訂正によって疑念を抱いたインターネット上の匿名集団が、2チャンネルの「捏造、不正論文総合スレ」に、20報以上の論文に不正が疑われるデータが掲載されていることを記載した[53][54]。この研究室は日本分子生物学会で若手を対象とした研究倫理教育を行っていた研究室であったため、学会では大きな問題になった[15]。東大の調査は3年に渡り、最終的に33報の不正行為を2014年12月26日に認定した。不正行為の認定にあたって、東大総長は自らをも処分した[55]。研究室の出身者が異動していた筑波大学や群馬大学でも関連して調査や処分が行われた。

2015年 匿名Aによる論文大量不正疑義事件 札幌医科大学・東北大学・東京慈恵会医科大学・東京大学・東京医科歯科大学・慶應義塾大学・日本大学・金沢大学・名古屋大学・京都大学・京都府立医科大学・大阪大学・大阪医科大学・近畿大学・関西医科大学・徳島大学・九州大学・杏林大学・立命館大学・広島大学・長崎国際大学・宮城県立病院機構宮城県立がんセンター・国立感染症研究所・国立病院機構京都医療センター・理化学研究所 日本全国の様々な研究機関から発表された約80本の医学系の論文において、不正な人為的加工や流用などが疑われる画像データが掲載されていることが、2013年の日本分子生物学会年会のために開設されたウェブサイト「日本の科学を考える」の「捏造問題にもっと怒りを」というトピック[56]のコメント欄に、「匿名A」を名乗る人物によって、2014年の年末から2015年の年初にかけて相次いで指摘された。2015年1月6日には同様の趣旨の匿名告発が文部科学省に対して文書で行われた。

最も多い28本の疑義が指摘された大阪大学は、責任著者が別の論文捏造事件で懲戒解雇された1本の論文を除く27本について予備調査を行い、1本については疑義を否定し、7本については不注意による誤使用と判断し、残りの19本については「データが残っていないため不正の事実が確認できず、これ以上の調査は困難」として調査を打ち切った[57]。12本の疑義が指摘された東京大学は、予備調査の結果、全ての論文について不正行為が存在する疑いはないと発表した[58]。
STAP事件よりはるかにスキャンダラスかつ重大な事件に発展する可能性も報道された[59]。

参議院議員の櫻井充は、参議院議長への質問主意書において、東京大学は調査の内容を全く明らかにしていないと指摘した。また、調査責任者は被告発者と親しい医学部の研究者が務めたという情報を明らかにした[60]。

2016年 岡山大学における論文不正問題 岡山大学 岡山大学病院に勤務する教授らが執筆者となっている、2006年発表のステロイドホルモンに関する論文について、画像の切り貼りなどの不正があったと、同大学医歯薬学総合研究科の教授2人が学内の調査委員会に告発した。この論文には当時の岡山大学長が関わっていた。調査委は実際に切り貼りがあったと確認したにもかかわらず、本来必要となるデータと照合しないまま不正なしと判断し、調査結果も公表していなかったことが、2016年1月4日付の毎日新聞の報道で発覚した[61]。告発をした2名の教授は懲戒解雇の処分をされた[62]。 文部科学省のガイドラインでは、論文に不正がなかったと判断した場合は、調査結果の公表はしないと定められており、この裏をかく形で、調査が所属機関に有利になるよう進められる、あるいは、杜撰な調査で不正が見逃されるなどしたとしても、外部からの検証が困難になる問題点が指摘されている[63]。

2016年 「Ordinary_researchers」による東京大学への論文不正疑義事件 東京大学 2016年8月末に、東京大学が医学系の論文不正の予備調査を行なっていることが報道された。2016年9月20日に、東京大学は、捏造及び改ざんの疑いがあるという匿名の申立てが2016年8月にあった6名の22報の論文について、本格的な調査を行なうことを明らかにした[64]。2017年8月3日、東京大学は、分子細胞生物学研究所の5報の論文を不正と認定し、医学部の論文については全て不正なしと一行だけ記載した文書を公開した[65]。調査報告書の全文は、大部分が黒塗りの状態で後日公開された[66]。

東京大学の池上徹は、2018年の分子生物学会のポスター発表において、分子細胞生物学研究所の助教が研究不正とはやや言い難いデータを基に処分されたことは、医学部が全て不正なしとされたことと比較すると不合理であると主張した[67]。
2016年10月12日に、参議院議員の櫻井充は、参議院議長への質問主意書において、東京大学の調査範囲と調査委員選考について質問した[60]。

2016年10月25日に、参議院議員の足立信也は、参議院の厚生労働委員会において、疑義がかけられているアディポロンの研究に関して東京大学と理化学研究所が共同して特許を申請していることを指摘し、理化学研究所の責任について質問した[68]。

2017年 東北地方太平洋沖地震及び熊本地震等の地震波データ捏造問題 大阪大学など 2017年9月27日に、土木学会のホームページに、大阪大学准教授らが2016年に米国地震学会誌Seismological Research Lettersに論文発表した熊本地震の波形データについて、重要な匿名の情報提供があり、深刻に受け止めて公的な対応を検討しているという記事が掲載された[69]。

2019年1月26日に、大阪大学准教授が東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の地震波データについても不正をしていた疑いが強いことが報じられた[70]。

2019年3月15日に大阪大学は調査結果を公表し、5報の論文に捏造や改ざんなどの不正行為が認定された[71]。調査中に准教授が死亡したため、北海道南西沖地震や阪神大震災等を扱っていた残りの論文については判定留保又は判定不能となった。

2019年 ハルデン原子炉での捏造問題 ノルウェーエネルギー技術研究所 1990年から2005年の間にハルデン原子炉で行なった核燃料試験の結果が捏造されていたことが2020年5月に発表された[72]。この捏造データは多くの国際機関にも提供されていたものであるが、捏造の詳細は何も明らかになっておらず、捏造が他の原子炉に与える影響も不明である。この捏造問題の調査が開始されたことは、日本の原子力規制委員会も2019年8月には把握している[73]。2019年1月の原子力規制委員会の記者会見では、ハルデン原子炉の廃止が突然決まったことについて海外でも危機感を持たれていることが報告されていた[74]。

2020年 コロナの女王 白鴎大学 2000年頃、国立感染症研究所ウイルス3部の研究員の論文について疑義が浮上した。2002年5月17日、国立感染症研究所所長の吉倉廣は、研究員の論文の取り下げの要求と、ワクチンの国家検定へ研究員が関与することを禁止する旨を記載した文書を発出した。研究員の配偶者も所員であったこともあり、表沙汰にはならなかった。その後研究員は白鴎大学の教授となった。2020年の新型コロナウイルスのパンデミックにおいて、国立感染症研究所のOBが陰謀によりPCR検査を制限している旨の発言をワイドショーの生放送で行ったことを受け、国立感染症研究所のOB3名が週刊文春に2000年頃の事件の情報を提供した[75]。 週刊文春の報道は安倍晋三内閣総理大臣も認識している[76]。

2020年 新型コロナウイルス感染症治療薬に関わる不正 サージスフィア社 2020年の新型コロナウイルスのパンデミック当初、ドラッグリポジショニングによる治療薬の探索が世界各地で行われた。その過程で、米国サージスフィア社などが、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、イベルメクチン等の薬剤の効果を調べた論文を2020年5月にNew England Journal of Medicine誌やLancet誌などの著名な雑誌等に掲載した。米国大統領がヒドロキシクロロキンを予防薬として飲んでいると発言したこともあり、論文は大きな注目を集め、これらの薬剤の投与が広く行われた。しかし、2020年5月末に一部の専門家からサージスフィア社に対する疑義が表明され[77]、また、2020年6月に、ガーディアン誌が、サージスフィア社がアダルトコンテンツのモデルを含む10人程度の従業員からなる小さな会社であり、データの信用性が疑わしいことを報道した[78]。これを受けて、サージスフィア社が関与した論文は撤回された[79][80][81]。

2020年 肺がんの臨床試験に関わる不正 大阪大学、国立循環器病研究センター 2015年から行われていた「非小細胞肺がん手術適応症例に対する周術期hANP(ハンプ)投与の多施設共同ランダム化第Ⅱ相比較試験(JANP study)」の根拠となる論文に不正があったことが2020年08月18日に発表された[82]。この論文の筆頭著者については、大量訂正の問題が過去に指摘されていた[83]。2021年に大量訂正された論文に捏造、改ざんが認定[84]。大量訂正は撤回回避と隠蔽の不正[85]。大量訂正の論文は撤回[85]。JANP studyは中止、10件の健康被害が確認[85]。

2020年 前年のノーベル賞受賞者への大量疑義の問題 ジョンズ・ホプキンズ大学、オックスフォード大学 2020年のノーベル賞ウィークの最中、2019年のノーベル医学生理学賞を受賞した人物らの60報以上の論文に不自然な酷似画像等があることがPubPeerで指摘された[86]。ノーベル賞の受賞対象となったScience誌の論文に対しても指摘があった。

2021年 グラフェンナノリボン不正 名古屋大学 将来の半導体の材料として期待される炭素素材「グラフェンナノリボン」の合成に関する内容に関して、科学誌ネイチャーで発表した論文が撤回された。ネイチャーの発表によると、物質の分子量を調べる「質量分析」の実験結果に不自然な点があった上、基となったデータを確認できなかった。[87]

エネルギー密度が従来LIBの約2倍となる全固体電池

エネルギー密度が従来LIBの約2倍となる全固体電池
http://blog.livedoor.jp/nappi11/archives/5296046.html

 ※ 今日は、こんなところで…。

『大阪府立大学大学院工学研究科の林晃敏教授と作田敦准教授らの研究グループは、次世代型蓄電池の全固体リチウム硫黄二次電池(全固体Li-SB:All-solid-state Li-SB)用に高エネルギー密度を持つLi2S正極の開発に成功したと2021年10月28日発表した。

001 電極内のイオンの経路と伝導体の性質と硫化リチウムの容量の関係を解明し、それを踏まえて固体電解質を用いた正極:positive electrodeを作った。理想的な負極や電解質層と組み合わせた場合、エネルギー密度が従来のリチウムイオン電池の約2倍となる全固体電池が実現可能となる。(この事は、航続距離を倍増させる可能性を秘めている)

リチウム硫黄電池の正極は、電気を起こす反応に関与する高容量の活物質である硫化リチウム、電子の経路となる炭素、リチウムイオンの経路となるイオン伝導体などで構成されている。研究グループは、さまざまな種類のイオン伝導体を硫化リチウムと組み合わせた正極を作製し、イオン伝導体の性質と硫化リチウムの容量の関係について検証した。その結果、イオン伝導体の伝導性と分解に対する耐性が硫化リチウムの容量に大きく影響することが分かった。さらに大阪府大が開発した、分解耐性が高くイオン伝導度も比較的高い固体電解質を添加して正極を作製した。これまでにない大容量を実現したことで、大きなエネルギー密度を持つ全固体リチウム硫黄二次電池の開発が期待される。参照記事 参照記事

title Liは宇宙で最も多い元素である水素、それに続くヘリウムの次に多いとされており、人間が消費する分としては十分量があるように思えるが、実は恒星内の核融合などではできにくい構造のため、宇宙誕生以来、全宇宙規模で見て希少な元素の1つであるという。実際、地球上においても、産出国はチリやアルゼンチン、ボリビアなどの南米、オーストラリアなどに限られている。環境問題の観点から世界的にガソリン車からEVへのシフトが進む今後、日本が今後も安定的にLiを確保できるかどうかは1つの課題といえるが、この方面でも日本は革新的な技術を開発、研究している。参照記事:従来の200倍の速度でリチウムを二次電池などから回収する技術を量研が開発 

16361034210001 電気自動車(EV)バッテリー市場の地図を急変している。これまで世界のバッテリー市場は韓国企業が主導する「三元系リチウムイオン電池」が標準とされてきた。しかし、最近中国メーカーが主導するリン酸鉄リチウム(LFP)電池の市場が急成長しているほか、次世代のバッテリーで発火の危険性が無いとされる「全固体電池」で米日企業が一歩リードしている。「LFPバッテリー」は中国がシェア95%を占める。焦りの色を濃くした韓国メーカーはLFPバッテリー生産の検討に入った。

「全固体電池」では日本と米国のメーカーがリードしている。1990年代からパナソニックと共同で研究を進めてきたトヨタ自動車は最も多くの特許を保有しており、最近新製品を搭載したEVを公開した。トヨタは25年に全固体電池を商用化する計画だ。ソリッドパワー、クオンタムスケープ(クアンタムスケープ)、SES(11月2日、2025年商用化めざし韓国で開発生産を公表 107Ah:アポロ)など米国のスタートアップ企業も2025-26年に全固体電池を商用化する計画を明らかにしている。参照記事

上左図の有機電解液は可燃性の有機溶剤であり、そのため従来のLIBは熱問題を抱え、電解液中に異物が混入するなどしてセパレーターを破損させ、正負極が短絡すると異常発熱を起こし fig2、発火や破裂の危険性がある。

全固体電池とは、この有機系液体電解質を無機系固体電解質にしたもので、東工大・菅野教授×トヨタ加藤博士の研究によりLi9.54Si1.74P1.44S11.7Cl0.3という材料が発見されたと報道されている。

その無機系材料は、有機電解質比2倍ものイオン伝導率を誇る超イオン伝導体で、それを使った製品は全固体セラミック電池となるらしい。参照記事 参照記事 

一方、すでにトヨタは2022年をめどに全固体電池を積むEVを国内発売する方針を固めた、というニュースを2021年7月の末に流しており、徐々に高性能な電池に切り替えていく方針の様だ。すでに上記のSESなどは、2025年に航続距離700kmのハイブリッドリチウムメタルバッテリーの商用化計画を公表している。参照記事 参照記事
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2021年10月29日、2022年半ばから世界販売を始める初の量産電気自動車(EV)である「bZ4X」の仕様を発表した。航続距離(1回の充電で走行可能な距離)は最長約500キロメートルで、先行する米テスラの「モデル3」や日産自動車の「アリア」に迫る。世界のEVメーカーの中では先頭集団に入り、テスラをはじめとする先行組を猛追する構えだ。

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電池容量は71.4キロワット時で、航続距離は460~500キロメートル前後になる。トヨタの開発担当者は「いたずらに航続距離を延ばすのではなく、長年の電動車のノウハウを生かした部分でトヨタらしさを出す」と語り、電池寿命や安全性の高い制御システムで特色を出し、電池は世界トップレベルの耐久性をうたう。経年劣化で少なくなっていく容量を10年後でも90%維持することを目標に開発し電池の電圧や温度を多重監視するシステムを採用し、発熱の兆候を検知して予防できるようにした。

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出力が最大150キロワットの「急速充電器」に対応し、30分でフル充電の80%分の電気をためることが可能だ。

外装に太陽光パネルも設置できるようにし、1年間で1800キロメートル走行する電力を生み出すことができる。

アウトドアや災害時に家電や住宅に給電することも可能にした。

トヨタは「TOYOTA bZ」シリーズとして位置づけるEVを、25年までに7車種発売する方針だ。今回はその第1弾にあたる。

日本と中国で生産するが、既存車両の製造ラインを活用し専用の拠点は設けないという。参照記事 過去ブログ:2021年11月テスラ、トヨタのEV車開発、電池に見る戦略の違い、、、

ここでは書ききれないが、電池の開発と同時に、日本ではそのための検査機器や検査技術、資源の再生や回収技術が世界に先駆けて開発されており、他国との技術の差が開くばかりだといわれ、これが資源の無さから生み出された日本の強みなのだろうが、海外企業も社運をかけて開発している。

全固体リチウムイオン 英語 意味 – 英語訳
https://tr-ex.me/%E7%BF%BB%E8%A8%B3/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA-%E8%8B%B1%E8%AA%9E/%E5%85%A8%E5%9B%BA%E4%BD%93%E3%83%AA%E3%83%81%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%B3 』

今、狙い目の「ニッチ」ロボットは、木登りスナイパーだ!

今、狙い目の「ニッチ」ロボットは、木登りスナイパーだ!
https://st2019.site/?p=17768

 ※ ちょっとスゲーこと、言っている…。

 ※ 我が国の地勢にも、適していると思われる…。

 ※ NHKの番組で、「ツキノワグマの無人撮影」に挑んでいる、ドキュメンタリー風のものを視た…。

 ※ まずは、そういう「野生動物」の学術観察畑に売り込むことが、端緒か…。

 ※ そういうことから、「市場があるのか」探ってみては…。

 ※ ロボットが、樹上に「無人撮影機」を設置する…。ある程度の「需要」は、あるように思うんだが…。

 ※ まあ、それよりも「林業補助ロボット」か…。「枝の刈り払いロボ」とか、「下草刈りロボ」とか…。従事者の高齢化は、甚だしいらしいしな…。

 ※ 現状では、人の労働をアシストする「パワースーツ」「パワー・アシストスーツ」止まりのようだが…。

 ※ まだまだ、「人間頼り」の段階だ…。ロボの実用化は、遠いな…。 

『狙撃犬ロボットが開発されたのなら、狙撃猿ロボットもあっていい筈……と思ってユーチューブで探してみたところ、「木登りロボット(tree-climbing robot)」の分野は、数年前からぜんぜん進化していないらしいことを確認して、あらためて驚いた。

 とっくに、洗練された製品が市販されているかと思ったのだが、老舗のボストンダイナミクス社も、あちこちの大学研究室も、見放してしまったのか、改良・改善のヤル気を見せていない。

 とくに、一抱え以上ある大樹の根元からよじのぼり、複雑に枝分かれした梢近くまで自力で這い進める、汎用のマシンは皆無と見えた。

 だとすれば、まさに防衛省はこの分野に注力すべきであろう。

 「狙撃犬ロボット」は、攻撃軍側が使用するのに適している。

 それに対して「狙撃猿ロボット」は、防御軍側で使用するのに適しているからだ。

 「狙撃猿ロボット」には、木の皮を使って厳重なカモフラ擬装を纏わせねばならない。
 その狙撃ロボットを、敵が浸透して来そうな樹林内に点在させておく。樹上の無人監視者・兼・狙撃兵として。

 敵はある段階でこの樹上の狙撃者に気づく。その段階で、ゲリコマによる浸透作戦は、諦められる。

 なぜなら、全部で何体が配置されているか不明の「狙撃猿」をすっかり駆除するためには、その樹林帯ぜんたいに砲爆撃を加えて、裸地になるまで樹木を吹き飛ばしてしまう以外に、方法はないからである。

 防御側では、真の「狙撃猿ロボット」の他に、狙撃猿ロボットのように見えないでもない「デコイ猿」を、あちこちの樹上にひっかけておくことができる。もちろん「デコイ猿」にも、樹皮等をかぶせて、適度に偽装してやるのである。

 敵側からでは、この「デコイ猿」と、ホンモノの「狙撃猿ロボット」の、区別などつかない。

 もし民間企業でこうした「狙撃猿ロボット」を開発しようとするなら、まずひとつ前の段階として、「烏の巣破壊ロボット」をこしらえるのが、合理的なアプローチになるだろう。
 一般市場の需要が大きいからだ。

 自律的に自然樹木によじのぼり、巣を「占拠」してしまい、玩具のエアソフトガンや、スプレー、非殺傷性のレーザー等によって営巣カラスにイヤガラセする。最後にオペレーターが下からロープを引っ張れば、しがみついている巣ごと、落下する。

 この商品をじゅうぶんに洗練させた上で、軍用の「狙撃猿ロボット」にスケールアップするのなら、きっとうまくいくだろう。』

真鍋淑郎、「世界で最もぜいたくにコンピュータを使った男」の知られざる研究半生

真鍋淑郎、「世界で最もぜいたくにコンピュータを使った男」の知られざる研究半生
真鍋淑郎 2021年ノーベル物理学賞受賞者インタビュー【中】
https://diamond.jp/articles/-/284204

 ※ はぁ…。この人、フォン・ノイマンの「孫弟子」だったんだな…。

 ※ フォン・ノイマン―ジョセフ・スマゴリンスキー―真鍋淑郎…、という「系譜」か…。

 ※ 『「コンピュータの父」ともいわれるフォン・ノイマンが、コンピュータを応用する最適な分野として気象予測を選び、プリンストン高等研究所に世界中から優秀な若手研究者を呼び集めていた。』…。

 ※ ある意味、フォン・ノイマンの「慧眼」が取らせた「ノーベル賞」という側面もあるな…。

 ※ 『大ざっぱな計算だが、40年間の滞米生活で気象研究のために使った研究費はざっと150億円。このうち約半分をスーパーコンピュータの使用料が占め、年間当り平均で2億円近くをコンピュータ代に使ってきた勘定になる。これだけ膨大な資金を、日本からやってきた一人の気象学者に注ぎ込むアメリカの研究体制――真鍋はつくづく、この国の持つ多様性というか、懐の深さを痛感せずにはいられない。』…。

 ※ 『給料も天国だった。日本の中央気象台の大卒初任給が8200円だったのに対し、米国気象局の給与は月額600ドル。当時の為替レート(1ドル=360円)で換算すると21万6000円に相当し、日本に比べてなんと26倍の高給を食んでいたことになる。』…。

 ※ 「ノーベル賞(人類の進歩と幸福に貢献したと評価できる研究に与えられる)」なんてものは、そういう中から、生まれるんだな…。

 ※ もちろん、「気候モデル」における「大気の3次元柱モデル」の計算処理と、スパコン(それも、ベクター型)の潤沢な使用が、ピッタリとマッチした(スパコンの潤沢な使用≒ノーベル賞級の研究成果の叩き出し…、というものでは無い)という側面があるのだろうが…。

 ※ 一方、「日本型研究システム」とは、『 97年9月末に赴任して以来、地球フロンティア研究システムでの研究は4年になろうとしているが、自由闊達な雰囲気とはほど遠い何かを感じざるをえない日々を過ごした。それはスマゴリンスキーのような名伯楽がいるいないという単純な理由ではなく、日本の社会システム全体にどっかりと根を下ろす『見えざる壁』ともいえる存在によるものだった。

 真鍋自身の経験に照らして、理由はいくつか挙げられる。まず、国の科学研究費配分の問題がある。日本では官僚が予算を取って、能力や業績に関係なく悪平等で研究費を配分する。大御所といわれる先生のもとには多くのカネがつき、気に入られた子分だけにカネが流れる仕組みだ。

 そこには、米国流のピア・レビューが働かない。日本では相手を批判すると面子をつぶすのではないかと恐れ、研究で最も重要な建設的批判が起こらない。お互いに批判を水際で止めて曖昧にしてしまうため、そこそこの研究成果で満足し、大きなブレークスルーにつながる芽を摘んでしまっている。』…、というようなシロモノらしい…。

 ※ まあ、「ノーベル賞級」の「頭脳」を招聘したとしても、「システム」がこれじゃあ、「ノーベル賞級の研究成果」は、生まれないだろう…。

『戦後の就職難で渡米、最高の上司と研究環境との出会いで
1~2年の滞在予定が40年に延びた

「世界で最もぜいたくにコンピュータを使った男」――地球フロンティア研究システムの真鍋淑郎・地球温暖化予測研究領域長の研究者人生を振り返るとき、これほど的を射た表現はほかに見当たらない。

 大ざっぱな計算だが、40年間の滞米生活で気象研究のために使った研究費はざっと150億円。このうち約半分をスーパーコンピュータの使用料が占め、年間当り平均で2億円近くをコンピュータ代に使ってきた勘定になる。これだけ膨大な資金を、日本からやってきた一人の気象学者に注ぎ込むアメリカの研究体制――真鍋はつくづく、この国の持つ多様性というか、懐の深さを痛感せずにはいられない。

 愛媛県新宮村に生まれた真鍋は代々医者の家系に育った。祖父も父も兄も医者という家庭環境のなかで、当然自分も医者になるものと小さいころから思い込んでいた。旧制三島中学(現県立三島高校)4年修了時に大阪市立医大に合格し、入学手続きをとって医者になるための勉強をスタートした。

 ところが、どうもこの世界が自分の性分に合わないことに気づき始めた。まず日本の医学教育が暗記中心の学問であることに幻滅を感じた。それに医者は緊急事態に対して冷静で的確な判断を求められるが、そういう状況になればなるほど平静でいられなくなる自分を意識した。

 本人の言葉を借りれば、「記憶力は悪いし手先は不器用だし、いざとなると頭にカッと血が上って何をしていいかわからなくなる性分」が、入学早々から心の内で医者への道を断念させていた。ほとんど「腰掛け状態」だった医大生活の1年後、たまたま大学が旧制から新制に切り替わる時期に当たり、この機会をとらえて自分に合った学問の分野に進路変更しようと決心した。

「とにかく自分の性格から考えて、時間を十分にかけ、じっくり問題に取り組める研究者の道が一番合っていると思った。データに基づいて自然現象の謎を解くことには子どものころから興味があり、これらの条件を満たせるのは物理学の世界ではないかと考えた」

 新制に替わった東京大学の試験に受かり、1949年春、第一期生として入学した。その際の喜びとは裏腹に、真鍋が有能な医者になることだけを楽しみにしていた父親のがっかりした顔が、脳裏に残っていまだに忘れることができないという。

 専門課程に進む際、真鍋には理論物理学に進むか、地球物理学に進むか二つの選択肢があった。東大に入学した年、湯川秀樹博士が日本人初のノーベル物理学賞に輝き、理論物理学が脚光を浴びている時期でもあった。しかし、「数学のできる優秀な人でないと理論物理学は無理」とあきらめて、地球物理学を最終的な専攻科目に選んだ。』

『大学院時代に米国気象局からスカウト

日本に職が無く「1~2年の予定」で渡米

 学部から大学院に進み、天気予報の精度を高める研究に没頭しながら博士号取得に向けたいくつかの論文をまとめた。そうした博士課程修了直前の58年初め、米国海洋大気庁(NOAA)の前身である米国気象局のジョセフ・スマゴリンスキー博士から招待状が届いた。真鍋が55年に発表した論文が彼の目にとまり、「アメリカでいっしょに仕事をする気はないか」という渡米を勧める誘いの手紙だった。

 当時の日本は、まだ敗戦の爪痕も生々しい戦後の混乱期で、大学を出てもほとんど職がないのが実情だった。まして専門が気象予測となると就職先も限られ、中央気象台(気象庁の前身)に入るか、大学に残って学者の道を歩むか、選択肢がきわめて限られていた。

 ところが、最も大きな受皿になるはずの中央気象台は、陸軍や海軍の気象部に在籍していた『残党』を抱え込み、ほかに行き場のない職員であふれ返っていた。仮に真鍋がそこに入っても、「10年後、20年後もペーペーのまま」の可能性が高く、とても就職しようという気持ちが起きなかった。

真鍋淑郎、「世界で最もぜいたくにコンピュータを使った男」の知られざる研究半生2001年9月29日号誌面

 一方、この時期のアメリカは「スプートニク・ショック」の真っただなかにあった。旧ソ連に人工衛星の打上げで先を越され、国を挙げて追いつき、追い越せと、科学技術予算が湯水のように付いた時代だった。61年にはケネディ大統領が「アメリカは今後10年以内に人類を月に送る」と宣言し、自然科学の分野は研究予算も研究レベルも黄金時代を迎えようとしていた。

 加えて、コンピュータも日進月歩の発展を遂げるスタートラインにあった。「コンピュータの父」ともいわれるフォン・ノイマンが、コンピュータを応用する最適な分野として気象予測を選び、プリンストン高等研究所に世界中から優秀な若手研究者を呼び集めていた。「今思うと研究者には夢のような時代」に、一大学院生だった真鍋にも正式にお呼びがかかったのである。

 招待状を送ってくれたスマゴリンスキーはノイマンの最も若い弟子に当たり、そのころすでに米国気象局で、数値データに基づいた長期予報の研究に携わっていた。日本で職がないことを考えると、この誘いは真鍋に魅力的なものと映り、とりあえず「1~2年のつもり」で招きに応じる決意をした。』

『背水の陣で渡ったアメリカに

理想の研究環境があった

 いざ現地に赴いてみると、そこは『天国』のようであった。日本だけでなく、ヨーロッパやインドなどからやってきた若い研究者にものびのびと研究させ、競争心を刺激し合う自由闊達な研究風土にあふれていたからだ。

 給料も天国だった。日本の中央気象台の大卒初任給が8200円だったのに対し、米国気象局の給与は月額600ドル。当時の為替レート(1ドル=360円)で換算すると21万6000円に相当し、日本に比べてなんと26倍の高給を食んでいたことになる。

 渡米した当時の心境を、真鍋は今こう振り返る。

「あの招待状は、今からみればたいへんすばらしいチャンスのように思えるが、本人の気持ちはそんな浮ついたものではなかった。むしろ日本に職がなく、背水の陣でアメリカに渡ったというのが正直なところだった。でも実際に行ってみると、外国から来た青二才の若者に好きなように研究させてくれた。多額の研究費も出て、研究一筋の毎日を送ることができた。20代後半にあの環境で研究できたことが今の自分につながっていると思う」

 コンピュータの発達と歩調を合わせるように、真鍋の気象研究は未開拓の分野を切り開いていった。気象局、そして地球流体力学研究所(GFDL)で、常に世界最高速のスーパーコンピュータを使い続け、それまでどちらかというと考古学的な学問だった気候変動の研究を、理論に基づいて数値モデル化する「大気科学」の土俵に乗せていく『先兵』の役割を果たした。

 そうした地道な研究の成果が、やがて67年の温暖化予測の先駆けとなる記念碑的な論文に結びつき、さらに69年の大気・海洋結合モデルへと発展していった。初め1~2年つもりで始めた米国生活は、研究三昧の日々が続くうちに10年、20年……と積み重なり、いつしか40年の長きに及んだわけである。

 もちろん、それは真鍋が「生涯の恩人」と仰ぐスマゴリンスキーの陰の支えがあったからこそ可能だったともいえる。GFDL初代所長で真鍋より7歳年上のこの気象学者は、今もプリンストン近郊で悠々自適の毎日を送っているが、この恩人を語る時の真鍋の表情はいつにも増して輝いて見える。

「こんな上司に仕えたら最高と思わせる典型的な人物だ。いい研究をすると徹底的にほめてくれるし、成果が上がらなくても決して『クビだ』などと批判的なことは言わない。しかも、部下に対して『雑用はしなくていい。それはオレ一人でたくさんだから、ともかく君たちは研究に没頭するように』と口癖のように言っている人だった。」

最高の上司との出会いでスピード出世

36歳で『大統領任命対象公務員』に昇格

 真鍋は渡米してから昼夜兼行で、ひたすら研究三昧の日々を送ったが、最初の8年間ほどはこれといった論文も書けず、精神的に不安定な状態が続いた。米国気象局は1年ごとの契約更新だっただけに、「今年中にほかの仕事を探して出ていくしかないかもしれない」と思い詰めた時期が何回かあったが、スマゴリンスキーは「いい研究をやっている」とほめるばかりで、叱責することは皆無といってよかった。』

『実際の研究でも、雑用のすべてを彼1人でこなしてくれた。特に真鍋らが感謝してやまなかったのは、他の研究所との争奪戦を繰り広げながら、常に最新鋭のコンピュータを導入してくれるその類い稀な力量にあった。

「数値モデルの計算に、その時々の最高速のスーパーコンピュータを使い放題使えたのは、本当に研究者冥利に尽きる喜びがあった。しかも、アメリカは専門家による相互評価(ピア・レビュー)が厳しい国だから、研究の提案書作成はたいへんな仕事だが、それも彼が一手に引き受けてくれた。GFDLで獲得した研究費の3分の1を私のグループに配分してくれて、やりたい研究が好きなだけできて、いい結果が出るとほめてくれる、こんなすばらしい上司がいますか?」

 もちろん真鍋が「成果が上がらないと居づらくなる無言の圧力があった」と述懐するように、真鍋自身の実力や努力が認められたからこそ、クビにならず研究生活を続けられたのだろう。スマゴリンスキーの軍団は、彼がトップを務めていた30年間というもの、80数人の少数精鋭主義を貫いており、そこからはずされなかった真鍋も優秀な研究者だったことは間違いあるまい。

 運も実力のうちというが、優れた上司に巡り合えた真鍋は自らの能力とも相まって、トントン拍子で出世の階段を上った。「日本人だからといって差別待遇を受けることは一度もない」まま昇級に昇級を重ね、36歳までの10年間で公務員としての職階であるガバメント・サービス・グレード(GSG)の11から16までを一気に駆け上がった。

 アメリカの公務員制度では、GSG16以上はポリティカル・アポインティ(大統領任命の対象)になる。真鍋は最速で『スーパーグレード』とも呼ばれる16に到達したわけだ。

 ビザも最初は短期就労(H1)ビザに始まり、次に一時雇用の公務員としてグリーンカード(永住権)を取得した。さらに70年代半ばには、「アメリカの市民権がないとグレードが上がらない」とのアドバイスを受け、実際に市民権を取って国籍を日本からアメリカに移してしまった。

 真鍋はスマゴリンスキーがGFDL所長を辞任したとき、後任に立候補しようとしたことがある。結果的に立候補を断念したが、それは日本人ゆえに差別待遇を受けたためではなく、「(所長の)公募に打って出ると言ったら、家族全員に反対された」からで、日本人に門戸が閉ざされているわけではなかった。』

『日本に帰って感じた

アメリカとの大きな違い

「自由闊達」という言葉がふさわしい40年間の滞米生活を総括して、真鍋はこんな感想を語る。

「スマゴリンスキーの管理能力がすばらしかったから研究所が有名になり、研究費も潤沢について好きな研究を好きなだけやれた。10年先、20年先を見据えた長期的な気候変動を研究テーマに選んだ彼の炯眼(けいがん)にも支えられ、初めのうちは数こそ少なかったが、独創性の高い論文を書くことができた。最初の10年間で数値モデルをつくり、それ以降はモデルを適用してさまざまな切り口を見つけ出していった。やはり駆け出しのころの彼の処遇のおかげで今日があり、その点は感謝しようにもし尽くせないものがある」

 こうした40年間の満ち足りた米国での研究生活と、現在の地球温暖化予測研究領域長の立場を重ね合わせながら、真鍋は「40年前の気象局の雰囲気と、地球フロンティア研究システムの今とが似ている」と、一瞬の夢から覚めたような表情でポツリとつぶやいた。ある種、草創期の張り詰めた緊張のようなものを感じるらしいが、じつはそれが似て非なるものであることを真鍋は知悉(ちしつ)している。

 97年9月末に赴任して以来、地球フロンティア研究システムでの研究は4年になろうとしているが、自由闊達な雰囲気とはほど遠い何かを感じざるをえない日々を過ごした。それはスマゴリンスキーのような名伯楽がいるいないという単純な理由ではなく、日本の社会システム全体にどっかりと根を下ろす『見えざる壁』ともいえる存在によるものだった。

 真鍋自身の経験に照らして、理由はいくつか挙げられる。まず、国の科学研究費配分の問題がある。日本では官僚が予算を取って、能力や業績に関係なく悪平等で研究費を配分する。大御所といわれる先生のもとには多くのカネがつき、気に入られた子分だけにカネが流れる仕組みだ。

 そこには、米国流のピア・レビューが働かない。日本では相手を批判すると面子をつぶすのではないかと恐れ、研究で最も重要な建設的批判が起こらない。お互いに批判を水際で止めて曖昧にしてしまうため、そこそこの研究成果で満足し、大きなブレークスルーにつながる芽を摘んでしまっている。

 真鍋にしてみれば日本の現状がなんとも歯痒くて仕方がないようだ。

「私が若い日にアメリカに渡り、自由にのびのび研究ができたような環境が日本にもできないものか。私が行ったころは、アメリカでクビになったら研究者としてのキャリアは終わり、もう食えないという背水の陣でやっていた。アメリカに渡る今のインド人や中国人の留学生のほうが背水の陣で必死にやっている。今や日本のほうが給料は高いし、無理にアメリカに行くこともないが、アメリカの環境は研究者にとって最も適したものだと思わざるをえない。その原点は、外国から来た人間を差別なく受け入れ、同じ土俵で才能の違った人間を徹底的に競わせる『多様性』の文化にあるのかもしれない」

 若き日への憧憬と現状への不満との狭間で、やはり真鍋の思いは40年の長きを過ごしたアメリカに向かうようである。(文中敬称略)
きし・のぶひと/1973年東京外国語大学卒業、読売新聞社入社。横浜支局を経て経済部に勤務、大蔵省、通商産業省、日本銀行、経団連機械、重工クラブなどを担当。91年読売新聞社を退社、知的財産権などをテーマに執筆。』

〔気候モデル入門〕

気候モデル
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%97%E5%80%99%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB

『大循環モデルの始まり

1956年にアメリカの気象学者フィリップス(Norman Phillips)は準地衡風2層傾圧モデルを用いて全球の数値計算を行った。このモデルは気象予測用の数値モデルとかなり似ているが、目的はある一定時間後の波の運動の予測ではなく、むしろ回転水槽実験のように地球上の大気循環の典型的なパターンをコンピュータによる計算で再現することだった[2]。

彼がこの数値モデルを約1か月分走らせた結果、以下の特徴が現れた[3]。

・鉛鉛直方向の位相が西に傾いた波長6000 km相当の傾圧波が東西方向に形成された。
・高層で西風が強まってジェット気流が作られた。
・地表では緯度によって東風、西風、東風のパターンが形成された。
・ハドレー循環、フェレル循環、極循環の3つのセルからなる子午面循環のパターンが現れた。
さらに彼は、数値モデルの中で発達しつつある波のエネルギー交換が、実際の大気中の傾圧過程でのエネルギー交換と定性的に一致していることを見つけた[4]。

フィリップスはイギリスの王立気象学会の大会でこの成果を示したことで、ネイピア・ショー賞の最初の受賞者となった。この結果は数値予報の根拠を強めるだけでなく、数値モデルが実際の大気状態を模した、あるいは仮想的な状態の下での地球規模の大気循環を理解するための実験手段の一つとなり得ることを示していた。この実験の成功により大気循環、引いては気候の研究に新たな手法が加わることになり、そのための数値モデルは大循環モデル(general circulation model)と呼ばれるようになった。

フォン・ノイマン(Von Neumann)とチャーニー(Jule Chaney)は、この数値モデル技術を利用するための研究組織の設立を推進した。これらを受けて数値モデルを用いた大循環の研究に関して大きく分けて3つのグループができた[5]。』

 ※ フォン・ノイマン、ここにも登場してる…。

『GFDLのモデル(全球気候モデル)

一つ目のグループは1955年に設立されたアメリカ気象局のスマゴリンスキー(Joseph Smagorinsky)を指導者とする大循環研究部(General Circulation Research Section)だった。この研究部は1959年にワシントンで大循環研究所(General Circulation Research Laboratory)となり、さらに1963年にプリンストン大学に移って地球物理学流体力学研究所(Geophysical Fluid Dynamics Laboratory: GFDL)となった[6]。

スマゴリンスキーは1959年に東京大学から真鍋淑郎を招き寄せて、彼と協力して1963年に9層大循環モデルを作って長期間積分を行った[6]。

その後、真鍋淑郎は実質的にGFDLでの大循環モデルの開発を主導し、二酸化炭素を倍増させた大循環モデルや、大気と海洋と結合させた大循環モデルを開発した。』

 ※ ここに、チョロっと今回の受賞につながった研究について、記述されてるな…。

気候モデル入門
https://www2.obirin.ac.jp/tsubota/home/pdf/EdGCM%E7%AC%AC1%E7%AB%A0.pdf

 ※ 桜美林大学発の資料だ…。「つぼた(坪田?)研究室」というところの.pdfのようだ…。

 ※ 「気候モデル学」なるものが、どういうことをやろうとしているのか、大体のところが把握できる…。

※ ここが、ポイントか…。

※ こういう風に「関数式(方程式)」が「立式」できると、後は「スパコン」なんかで、セッセと計算させることができるわけだ…。

※ 「気体の状態方程式」というのは、「高校の化学」で習った「ボイルシャルルの法則」のことか…。

※ ここも、ポイントだな…。

※ こういう風に、「大気」を「三次元の柱」と考えて、考察するわけだ…。

※ 地表面を、小さい区画にわけて「メッシュ」と捉え、そこにおける気温、水温から「エネルギー流量」を計算する…。

※ それが、「大気の3次元柱」に「伝搬していく」様子を、計算していくんだろう…。

※ 3次元柱だから、「水平方向」の伝搬と、「鉛直方向」の伝搬がある…。

※ その「大気柱」は、「風」「湿度」「雲」「気温」「高度(気圧)」といったパラメーターを持つ…。

※ 「波の合成」の理論も、使っているようだな…。「伝搬」していく様子が、「波」である場合には、そういう「理論」も必要なんだろう…。

※ 地表のメッシュを細かくすればするほど、精度は上がるが、計算が大変になる…。

※ 6539億回の計算回数とか、気が遠くなる話しだな…。

※ 「スパコン」みたいなものが無かったら、実用性は無かったであろう「学問研究」だな…。

真鍋氏「研究、ただ心から楽しんだ」

真鍋氏「研究、ただ心から楽しんだ」 米大で記者会見
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN05EDV0V01C21A0000000/

『【ニュージャージー州プリンストン=大島有美子、吉田圭織】

2021年のノーベル物理学賞を受賞することが決まった真鍋淑郎・米プリンストン大学上席研究員(90)は5日、同大で開いた記者会見で「我々は今起きている気候変動を認識し、対処する必要がある」と述べた。気候変動の根拠を科学的に示した研究が評価されたことへの喜びを語るとともに、気候変動の被害が世界で広がっていることへの危機感を表した。

会見場、万雷の拍手

プリンストン大学内のホールで開かれた記者会見には、気候変動を研究する学生らも参加し、真鍋氏をスタンディングオベーションで迎えた。「大いに驚くとともに、光栄だ」。真鍋氏は受賞が決まった気持ちをこう語った。

同氏が気候変動の研究に本格的に取り組んだのは1960年代からだ。「研究を始めたときは、気候変動の研究の重要性については思ってもいなかった。私の研究の原動力のすべては好奇心だった」と述べた。研究を「ただ心から楽しんでいた」とも振り返った。
「私にとってはノーベル平和賞」

世界が干ばつなど気候変動による災害に直面し、家を失う人も生じている現状に危機感も示した。「我々は気候変動を軽減する必要がある。だが、まず今まさに起こっている気候変動を認識し、対処する方法を見いださなければいけない」と強調。「自分がどういう行動を取るべきかも考えているところだ」と述べた。真鍋氏のジョークで湧き、和やかな雰囲気に包まれていた会場は静まりかえった。

「気候変動を理解することは難しい。だが、気候変動から生じる政治や社会の出来事を理解することはもっと難しい」とも述べた。今回の受賞決定は「私にとってはノーベル平和賞だと信じている」と気候変動が政治や社会に及ぼす影響の大きさを表現した。

「協調が不得意」会場沸かす

日本から米国籍に移った理由について、真鍋氏は「日本は互いを邪魔しないように協調する」と日本の慣習を説明した。「私は協調が得意ではなかった。(米国では)他の人が感じていることをあまり気にせずに行動できる」と述べ会場は笑いにつつまれた。米国の研究生活について「コンピューターを使いたいだけ使え、好きな研究ができた」とも振り返り、研究資金の潤沢さや資金申請の複雑さの違いなどもにじませた。

真鍋氏の祝賀会には、プリンストン大の学生や研究者らが多く訪れた(5日、米ニュージャージー州)

会見後、受賞決定を祝う祝賀会がキャンパス内で開かれた。参加したプリンストン大で氷河の動きを研究する男性研究者は「自分の気候モデルの研究が何の役に立つのかと考え、つらくなることがある。今回の受賞決定で重要性が認められたと実感できた」と喜んだ。

真鍋氏は同僚の研究員から、淑郎という名前を取って「スーキー」と呼ばれている。同氏と10年超ともに研究していたという同大のトム・デルワース上級研究員は「スーキーは、気候変動の世界のマイケル・ジョーダンだ」と述べた。米プロバスケットボール協会(NBA)の著名選手、マイケル・ジョーダンの活躍がNBAの価値を世界で高めたように「彼は気候変動の研究者の立場を引き上げた」と称賛した。真鍋氏の研究を自身が学生に教えているという。

【関連記事】
・ノーベル物理学賞に真鍋氏 温暖化予測、気候モデル開発
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『多様な観点からニュースを考える

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菅野幹雄
日本経済新聞社 ワシントン支局長・本社コメンテーター

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分析・考察 「スーキー」さんから元気をもらいました。90歳とは思えない心の若さと純粋な情熱、研究活動への喜びが映像や文面から伝わります。

「私にとってはノーベル平和賞」という言葉に重みを感じます。

真鍋さんが解き明かした「二酸化炭素と地上の気温の上昇」の関連性はいまや常識ですが、この米国では今年の初めまで、その説を堂々と否定し国際協力を台無しにした大統領が座っていました。

物理学賞としての「固定観念」を超えた授賞の決定が、人類がみずから深める気候変動という危機への警鐘として世界に鳴り響くことを願っています。

2021年10月6日 12:07いいね
15

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梶原誠
日本経済新聞社 本社コメンテーター

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ひとこと解説 「日本は互いを邪魔しないように協調する」「私は協調が得意ではなかった」。

日本企業の弱さを象徴するコメントでもあります。協調は一歩間違えれば「事なかれ主義」。

みずほフィナンシャルグループのシステム障害も、三菱電機の品質不正も、背景にはこの企業風土がありました。

この風土は人と違ったことをする「出るくい」を打ちイノベーションを妨げます。「技術あって経営なし」。世界と比べた日本株の低迷の一因でもあるのです。

2021年10月6日 11:27 』

ノーベル物理学賞に真鍋氏 温暖化予測、気候モデル開発

ノーベル物理学賞に真鍋氏 温暖化予測、気候モデル開発
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC055BF0V01C21A0000000/

『スウェーデン王立科学アカデミーは5日、2021年のノーベル物理学賞を日本出身で米国籍の真鍋淑郎・米プリンストン大学上席研究員(90)らに授与すると発表した。物理法則をもとに、大気中の二酸化炭素(CO2)濃度が気候に与える影響を明らかにした。温暖化の原因を科学的に示した真鍋氏らの研究は、現在の脱炭素をめぐる議論の発端となった。
日本生まれの自然科学分野のノーベル賞受賞は19年に化学賞を受賞した旭化成の吉野彰名誉フェローに続き25人目。物理学賞の受賞は15年の梶田隆章・東京大学卓越教授に続き12人目となった。気候研究の分野でノーベル物理学賞が授与されるのは今回が初めて。

授賞理由は「地球温暖化を確実に予測する気候モデルの開発」など。人間活動が気候に与える影響の分析手法を生み出した独マックス・プランク気象学研究所のクラウス・ハッセルマン氏と、気候などの複雑な物理現象に法則性を見いだしたイタリアのローマ・サピエンツァ大学のジョルジョ・パリージ氏と共同で受賞する。

ノーベル賞の選考委員会は真鍋氏が「大気中のCO2濃度の上昇が地表の温度上昇につながることを実証した」とした。太陽から地表面が受け取るエネルギーと宇宙に逃げていくエネルギーの差し引き「放射収支」と大気の動きとの関係を世界で初めて解明し、「気候モデルの開発の基礎となった」と評した。

真鍋氏は1958年に東京大学で博士号を取得し、米気象局(現・海洋大気局)の招きを受けて渡米した。普及し始めたコンピューターを使って気象を予測する研究に取り組んだ。

独自のモデルを用いた計算で、地表から高度数十キロメートルまで現実とそっくりの大気の温度分布を再現することに成功した。

さらに、大気中のCO2の量が2倍になると地上の気温が2.3度上がると試算し、67年に発表した。CO2が長期的な気候変動に重要な役割を果たしていることを示し、世界中で温暖化研究が進むきっかけとなった。

69年には地球規模の大気の流れを模擬するモデルに、海洋から出る熱や水蒸気などの影響を加味した「大気・海洋結合モデル」を開発した。同モデルを発展させ、CO2増の気候への影響を89年に英科学誌ネイチャーに発表した。専門家が科学的な知見から温暖化を評価する国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第1次報告書でも成果が引用された。

温暖化問題の深刻さについて選考委員会のメンバーらは5日、「世界のリーダーにメッセージが伝わっているかは分からない」と記者会見で話した。そのうえで「地球温暖化という概念は確かな科学に基づいている」と強調した。受賞が決まった真鍋氏は米東部ニュージャージー州プリンストンの自宅で記者団に「気候物理学というトピックで受賞した人は過去にいない。非常に光栄に思う」と喜びを語った。

授賞式は例年12月10日に受賞者を招いてストックホルムで開催しているが、今年は新型コロナウイルスの影響でメダルや賞状の受け渡しは受賞者が居住する国で実施する。賞金は1000万スウェーデンクローナ(約1億3000万円)を3人で分け合う。

▼大気・海洋結合モデル

空気や水の流れにより温度などが変化する様子を、大気と海洋を一体化して予測する計算モデル。上空まで含んだ地球全体を、細かく区切って計算することで、将来の各地の気象状況などを見通すことができる。大気中に含まれる二酸化炭素などの温暖化ガスによる気候への影響も調べられる。

国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が地球温暖化をシミュレーションする際に利用された。将来の水不足の問題なども指摘した。天気予報でも、1カ月を超える予報ではエルニーニョ現象やラニーニャ現象のような海洋の変動から考慮する必要があり、大気の変動と合わせた計算モデルを使っている。

まなべ・しゅくろう 1931年愛媛県生まれ。東京大学理学部卒業。58年に渡米し、米気象局に入る。米海洋大気局(NOAA)地球物理流体力学研究所上席研究員や米プリンストン大学客員教授などを歴任。97〜2001年、日本の科学技術庁(現・文部科学省)で地球温暖化予測研究領域長を務める。01年に帰米し、プリンストン大上席研究員。米ベンジャミン・フランクリン・メダルやスウェーデンのクラフォード賞など有力な国際賞を多数受賞している。

【関連記事】
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・首相「日本国民として誇り」 真鍋氏受賞に祝意
・[社説]温暖化理論へのノーベル賞は画期的だ

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竹内薫のアバター
竹内薫
サイエンスライター
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ひとこと解説

真鍋先生は、まさに地球温暖化シミュレーションの草分け的な存在です。

二酸化炭素濃度と気温の関係に先鞭をつけ、海洋の熱と水蒸気を考慮したモデルを作り、さらには、IPCCの第一次報告書に名を連ね、世界に大きな警鐘を鳴らしました。

それにしても、地球温暖化は「環境・気候」という印象が強く、真鍋先生がノーベル物理学賞を受賞されるとは考えていませんでした。ノーベル賞の選考委員会の英断だと感じました。

2021年10月5日 21:05

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竹内純子
国際環境経済研究所 理事・主席研究員
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別の視点

おめでとうございます!

気候変動分野の研究が受賞したことが嬉しいですし、既に米国籍とはいえ、日本の方だったことでさらに親しみがわきますね。

日本は気候変動で存在感薄いと言われるのですが、例えば、日本の衛星技術は森林が吸収するCO2量の測定などに大変存在感を持ってます。

気候変動交渉で存在感あるのは、中国米国インドなど大排出国ですが、技術や研究では存在感ない、と言ってしまうのは惜しい。国内で、知られてないことも結構あるんです。

2021年10月5
日 20:27』

トヨタ、次期仮想人体モデルを自動運転対応へ

トヨタ、次期仮想人体モデルを自動運転対応へ 22年中投入
窪野 薫 日経クロステック
2021.08.24
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01537/00176/

 ※ こういうものを開発、データ収集・製品に反映…、ができなければ、そのメーカーの「自動車」は、骨折・負傷しまくりの「危険極まりないもの」となる…。

 ※ さらには、「死亡事故」頻発の剣吞なもの(走る”棺桶”)となる…。

 ※ 章夫さんが、「アップルカー」みたいな発想に対して、「”覚悟”を持って、開発して欲しい。」旨の発言をしたのは、そういう意味だろう…。

 ※ この記事の話しは、シミュレーション用の「バーチャル・モデル」だ…。
  何回実験しても、「壊れること」は、無い…(コンピューター上で、シミュレーションする)。

 ※ リアルの「ダミー人形」の方は、1体5億円くらいした…、と聞いたことがある…。
 ※ それだと、データ取る毎に「実車」を1台オシャカにするわけだから、その度に「販売価格300~500万円」の実車の価格が、積み上がって行く…。

 ※ 車の開発費については、諸説が言われているが、一説には一車種あたり、平均300億円~400億円とも言われている…。

 ※ まあ、ムリも無い話しだ…。

 ※ それで、「欠陥車」とか、「リコール頻発」とかになったら、「目も当てられない」ことになる…。

『トヨタ自動車は、車両の衝突シミュレーションなどに使う仮想人体モデル「THUMS(サムス)」の次期型で自動運転対応を強化する。日経クロステックの調べで分かった。座席の背もたれを一定の角度まで倒したり、座席自体を前後回転させたりした状態を想定。これら姿勢時の事故における乗員の動きやケガの程度を予測できる新モデルを現行型に追加して、自動運転車の開発で使えるようにする。2022年中に投入する可能性が高い。

トヨタ自動車は仮想人体モデル「THUMS(サムス)」の自動運転対応を強化
(出所:トヨタ自動車の資料を基に日経クロステックが「Version 7」について加筆)
[画像のクリックで拡大表示]
THUMSでのシミュレーション例
(出所:トヨタ自動車)
[画像のクリックで拡大表示]

 THUMSは、トヨタと豊田中央研究所(愛知県長久手市)が2000年に共同開発した当時「世界初」(トヨタ)の仮想人体モデルで、人間のコンピューター断層撮影装置(CT)スキャン画像を基に生成している。自動車業界で広く普及する衝撃・構造解析ソフトウエア「LS-DYNA」上で使用可能。繰り返しの衝突試験に耐えられる頑丈なダミー人形に対して、仮想人体モデルは実際の人間に近い脆弱な特性を設定できる点が強みだ。』

『2000年に投入したTHUMSの「Version 1」は骨折までしか予測できなかったが、世代を追うごとに対象部位を増やしながら解析の信頼性を高めてきた。現行型の「Version 6」では、筋肉や内臓の精密なモデル化によって、死亡に直結するような脳傷害や内臓損傷などを高精度で予測できるという。

 現行型までのTHUMSは、性別や年齢、体形といったモデルの身体特性は選択できるものの、運転中のモデルについては座席でステアリングホイールを握るという通常の姿勢を基本としている。昨今の自動運転水準の向上を受けて車内空間で様々な姿勢で乗車できることへの期待が高まっていることから、トヨタは「Version 7」に相当する次期型で姿勢の選択肢を増やす必要があると判断した。

 乗車中の姿勢が変われば、シートベルトやエアバッグといった安全装備の乗員保護性能も変わる可能性がある。例えば、自動運転中に座席の背もたれを大きく倒して読書をしていたとき、急減速した先行車に衝突したとする。その際、乗員がどの方向に動くかによってシートベルトやエアバッグの性能が変わってくる。

 トヨタが22年中の投入を見込む次期型のTHUMSは、こうした従来の延長線上では通用しない車両や部品の開発を支援するとともに、調査検討に必要な工数を減らす効果も期待できる。

 同社は21年1月、従来ライセンス販売としてきたTHUMSの無償公開を開始。同分野を協調領域と位置付けて、利用者の増加によるデータやノウハウの効率的な収集を狙う。トヨタはこれらを生かして、次期型以降のTHUMSの開発スピードを速めたい考えだ。

 無償公開の効果は既に出ている。19年4月時点で約100社だった利用企業や研究機関が無償公開によって5倍以上に急増した。特に中国の自動車関連メーカーや大学などの利用者が増加してきたという。トヨタとしても世界最大の自動車市場といえる中国で、THUMSがどのように使われるかは興味深いはずである。』

中国論文、質でも米抜き首位

中国論文、質でも米抜き首位 自然科学8分野中の5分野
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC05A1O0V00C21A8000000/

『自然科学分野の論文の注目度の高さを示す指標で中国が初めて世界一になった。文部科学省の研究所が10日、最新の報告書を公表した。研究者による引用回数が上位10%に入る「注目論文」の数で初めて米国を抜いた。分野別でも8分野中、材料科学や化学、工学など5分野で首位に立った。学術研究競争で中国が米国に肩を並べつつあり、産業競争力の逆転も現実味を帯びてきた。

科学論文の数は国の研究開発の活発さを測る基本的な指標だ。文科省科学技術・学術政策研究所が英調査会社クラリベイトのデータを基に主要国の論文数などを3年平均で算出・分析した。中国が学術研究の量だけでなく、質の面でも実力をつけている姿が鮮明だ。

【関連記事】
・中国、科学大国世界一を視野 米国の競争力基盤揺るがす
・中国AI研究、米を逆転 論文の質・量や人材で首位

注目論文の本数を調べたところ、中国は2018年(17~19年の平均)に4万219本となり、米国の3万7124本を抜き首位になった。米国も08年に比べて3%増えたが、中国は約5.1倍と急増。シェアは中国が24.8%、米国が22.9%と、3位の英国(5.4%)を引き離した。

注目論文のうち上位1%に当たる「トップ論文」でも、中国のシェアは25%と米国の27.2%に肉薄した。文科省科学技術・学術政策研究所の担当者は今後について「中国のいまの勢いは米国を追い抜く様相を見せている」と指摘する。

注目論文の世界シェアを分野ごとにみると、材料科学で中国は48.4%と米国(14.6%)を大きく引き離した。化学が39.1%(同14.3%)、工学は37.3%(同10.9%)などと計5分野で首位となった。

米国は臨床医学(34.5%)や基礎生命科学(26.9%)で首位となった。バイオ分野で強さが目立つものの、産業競争力に直結する分野で中国が強さを示した。

全体の論文数では昨年の集計に引き続き中国が首位になり、米国を上回った。中国は35万3174本、米国が28万5717本で、その差を20年調査時の約2万本から約7万本に広げた。

一方、日本は論文の質・量ともに順位が低下し、科学技術力の足腰の弱さが浮き彫りになった。注目論文のシェアではインドに抜かれ、前年の9位から10位と初めて2ケタ台に後退した。トップ論文のシェアも9位と前年から横ばいだった。10年前と比べた減少率はともに10~15%と大きく、論文の質が相対的に下がっている。

日本の全体の論文数は6万5742本と米中の20%前後の水準にとどまった。米中のほか韓国、ドイツ、フランス、英国などは10年前と比べ増えているが、日本は横ばいにとどまる。長期化する研究力低下に歯止めをかけるのに「特効薬」はなく、衰退を食い止めるのは難しい。

科学論文の量や質を左右するのは資金力だけではない。中国が量と質をともに高めている背景には、圧倒的な研究人材の厚さと伸びがある。世界一を誇る研究者数を年々増やしている。一方、中国・米国に続いて3位の日本は横ばい水準で伸び悩む。

中国の19年時点の研究者数は210万9000人と世界首位だ。前年から13%増と高水準で伸びた。日本は68万2000人(20年時点)と中国・米国に続く3位だが、増加率は0.5%にとどまる。

研究人材の育成で日本は中国以外の国にも大きく出遅れている。文科省科学技術・学術政策研究所によると、日本で大学院の博士号を取得した人数は06年度をピークに減少傾向だ。米中や韓国、英国では15~20年前に比べて2倍超の水準で伸びている。ドイツやフランスは横ばい水準だ。

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青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授

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ひとこと解説 自然科学分野の論文の注目度の高さを示す指標で中国が初めて世界一になった。世界一になった理由として、一般には研究開発費の増加が指摘されている。なかでも大学に配分される科研費は文系、理系を問わず、潤沢である。研究者の人数が多いことも一因であるが、その多くは欧米で教育を受けた研究者であることは忘れてはならない。さらに、中国の論文を網羅した学術データベースの存在も中国の論文の引用回数の底上げに貢献した。国際競争力を目指すには、科研費の充実をはじめとした日本政府の政策支援が求められる。

2021年8月10日 19:33 (2021年8月10日 20:14更新)
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竹内薫
サイエンスライター

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分析・考察 主にアメリカと中国の科学技術力の逆転現象を扱った記事です。中国は指導部の理系色が強く、国家戦略として科学技術に力を入れています。第四次産業革命のトップに立とう、という確固たる意思が見て取れます。とはいえ、アメリカにもクリエイティブな人材と多様性という強い武器があり、今後の両者の対決がどうなるのか、予断を許しません。で、記事の趣旨とは少しはずれるとして、一つだけはっきりしているのが日本の長期低落傾向です。「日本は科学技術力の足腰の弱まりが浮き彫りになった。日本の論文は質・量ともに低下している。」残念ながら、日本の科学技術力が落ち続けているという、科学的な分析結果です(ため息)

2021年8月10日 19:12いいね
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赤川省吾
日本経済新聞社 欧州総局編集委員

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別の視点 日本が得意としてきた自然科学ですら苦戦。もともと苦手な社会科学を考慮すれば、全体的な水準はさらに厳しい状況にあるといえます。

もっとも凋落の原因は大学の研究体制だけにあるのではありません。企業の人事・採用制度を含めたガラパゴス化が苦境を招いているのではないでしょうか。例えば企業は…

1)学校歴を重んじ、学歴は「学士で十分」と認識
2)ローテーションを重んじ、専門知識を軽んじる
3)入社年次で人事管理。大学院修了のメリットが小さい

日本は社会人教育(生涯学習)でも出遅れ。年功序列・滅私奉公の気風を排し、意欲のある学生・社会人の皆さんが大学院で学べる社会にしていくことが必要だと思います。

2021年8月10日 19:20いいね
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中国、科学大国世界一を視野

中国、科学大国世界一を視野 米国の競争力基盤揺るがす
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC103PJ0Q1A810C2000000/

『中国が「科学大国世界一」の座を米国から奪おうとしている。文部科学省の研究所が10日発表した報告書では注目度の高い論文の数で初めて首位となり、研究の量だけでなく質の面でも急速に台頭していることを印象づけた。戦後の科学研究をリードしてきた米国の優位が失われつつあり、産業競争力にも影響する可能性がある。

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米中が威信を懸けて科学力を競う主戦場の一つが宇宙開発だ。5月には中国が送り込んだ無人探査機「天問1号」が火星に着陸し、習近平(シー・ジンピン)国家主席は「中国は惑星探査の分野で世界の先頭集団に入った」と胸を張った。

2019年には月の裏側へ世界で初めて無人探査機を着陸させている。「中国の技術力は米国に負けないレベルに達している」と京都大学の山敷庸亮・有人宇宙学研究センター長は指摘する。

米国は1950年代以降、科学技術の分野で世界を先導してきた。産業競争力の源泉であり軍事上の優位を支える土台でもあったが、その基盤を中国が揺るがしている。

中国の研究力向上を支えるのが積極投資と豊富な人材だ。中国の19年の研究開発費(名目額、購買力平価換算)は54.5兆円と10年間で2倍以上に増えた。首位の米国(68兆円)にはなお及ばないが、増加ペースは上回る。研究者の数も210万人と世界最多で、18年に155万人だった米国を大きく引き離す。

現在の中国の姿は戦略的な計画に基づく。胡錦濤(フー・ジンタオ)前国家主席時代の06年に始動した「国家中長期科学技術発展計画綱要」で、20年までに世界トップレベルの科学技術力を獲得する目標を掲げた。研究開発投資を拡充し、対外技術依存度の引き下げを進めてきた。

人材の獲得や育成にも中長期的に取り組み、米欧の大学などに若者を積極的に留学させた。08年に開始した「千人計画」では海外在住の優れた研究者らを積極的に呼び込んだ。国内でハイレベル人材を育てる計画も推進してきた。

当面、中国の勢いは続きそうで、ノーベル賞の受賞なども増える公算が大きい。3月には今後5年間、官民合わせた研究開発費を年平均7%以上増やす方針を示した。米スタンフォード大学の報告によると、学術誌に載る人工知能(AI)関連の論文の引用実績で中国のシェアは20年に20.7%と米国(19.8%)を初めて逆転した。

近年、米国は技術流出に警戒を強め、中国から研究者や学生を送り込むのが難しくなっている。中国は最先端の半導体などをつくる技術はまだ備えておらず、研究を産業競争力の強化につなげる段階でも壁は残る。

日本の衰退は一段と進んでいる。注目度の高い論文の数ではインドに抜かれ10位に陥落した。世界が高度人材の育成を競うなか、大学院での博士号の取得者は06年度をピークに減少傾向が続き、次世代の研究を支える人材が不足している。

米国では民主主義などの価値を共有する日本との協力を重視すべきだとの声もあるが、このままではそんな声さえ聞かれなくなる恐れがある。

(AI量子エディター 生川暁、松添亮甫)

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山崎俊彦
東京大学 大学院情報理工学系研究科 准教授

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貴重な体験談 「人材の獲得や育成にも中長期的に取り組み、米欧の大学などに若者を積極的に留学させた。08年に開始した「千人計画」では海外在住の優れた研究者らを積極的に呼び込んだ。」

これが全てを物語っている気がします。米国で名を挙げた企業や大学の研究者が中国に戻ったり中国の組織で兼任したりしているのを実際にたくさん目にします。
2021年8月11日 8:33 (2021年8月11日 9:51更新)

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