量子コンピュータって何?今はどこまで開発が進んでいる?話題を総まとめ

量子コンピュータって何?今はどこまで開発が進んでいる?話題を総まとめ
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 ※ 今日は、こんな所で…。

『 森山 和道 2023年3月20日 06:16

量子的な重ね合わせを用いる「量子コンピュータ」

 量子コンピュータとは、量子力学の原理に基づいて設計されたコンピュータだ。従来のコンピュータは「0か1か」の「ビット」で情報を処理している。具体的にはトランジスタのオン・オフのスイッチを使って0と1を表現している。それに対し、量子コンピュータの計算単位は「量子ビット(qubit、キュビット)と呼ばれ、0でもあり1でもある確率的な「重ね合わせ」を利用する。この重ね合わせに対し、うまく干渉するなど制御することで計算をさせ、その結果を観測することで計算結果を得るのが量子コンピュータである。

 しばしば勘違いされているが、量子コンピュータを使えばどんな計算でも高速化されるわけではない。将来、Webブラウジングをしたり、エディタを使ったりしているPCが量子コンピュータに置き換わるようなことはない。

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 だが一部の問題に対しては、非常に高速に解決できるのではないかと期待されている。素因数分解や最適な巡回問題などは従来のコンピュータでは現実的な時間で解くことが難しい。しかし0と1、また0と1との組み合わせを量子力学的な「重ね合わせ」で表現できる量子ビットを使うことで、一部の問題を高速で解決できる可能性があると考えられており、一部については実際のアルゴリズム(計算手順)も提案されている。あくまで高速化できるのは、量子コンピュータ特有のアルゴリズム、計算ステップの短縮法が考案されているものに限られる。

 既にIBMなどから、一部の量子コンピュータは商用として販売されている。またクラウドサービスとして提供され始めている。古典的コンピュータで途中まで計算を進め、必要な計算処理を量子コンピュータに投げると、計算結果が戻ってくる仕組みだ。

 ただし、基本的には量子コンピュータはまだ研究開発段階にあり、大学や研究機関が実験のために用いている。また、アルゴリズムや素材、工学的な研究も進められている。将来は従来型コンピュータと組み合わせて用いることで、さまざまな課題に対して新しい解決策を提供する可能性がある。
Sycamore

 古典的なコンピュータを量子コンピュータが計算速度で超えることを「量子超越」という。グーグルは2019年に量子超越を達成したと発表した。スパコンを使って1万年かかる問題を53量子ビットのコンピュータを使うことで200秒で解いたとするものだ。ただしこれには反論も多かった。

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量子ビットの物理的実装はいろいろ

 量子コンピュータを実際に実現するためには、人工的な量子系である量子ビットを具体的に何でどのように構成するかによって、いくつかの種類がある。超電導、イオントラップ、原子、光などだ。それぞれ一長一短がある。
超電導方式

 一番有名な量子コンピュータはIBMのものだろう。IBMは超電導方式である。代表的な量子現象でもある超電導のために絶対零度、つまり-273.15℃に限りなく近い、極低温を維持する必要がある。

IBMのゲート型商用量子コンピュータ
プロセッサは最下部にある。下半分がおおよそ10mK〜20mK程度に冷却されている

 量子コンピュータと聞いて多くの人が思い浮かべる、あの上からぶら下げられた缶のような外見のほとんどの部分は、断熱するための魔法瓶のようなものと冷凍機で、量子ビットを構成する超電導回路そのものは内部の一番下の部分に置かれている。

最下部の量子チップ

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 電子は超電導体では「クーパー対」と呼ばれる特殊な状態になるが、超電導体で絶縁体を挟んで接合させた素子(ジョセフソン接合)ではトンネル効果のみによって電荷が運ばれるようになる。この回路に対してマイクロ波を照射してコントロールすることで量子ビットを制御し、「重ね合わせ」を使って計算を行なわせる仕組みとなっている。
IBMの433量子ビットプロセッサ「Quantum Osprey」

 この方式の利点は、量子ビットが集積化できるところだ。量子ビットが多ければ多いほど、複雑な状態を表現できる。IBMは既に433量子ビットプロセッサ「Quantum Osprey」を2022年11月に発表している。今後も集積化を続ける見込みだ。課題はノイズに弱いこと、低温を維持するため冷凍機が必要であり装置全体が大きくなってしまうことだ。

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 なおIBMは2023年に133量子ビットの「Helon」チップを発表する予定だ。「Helon」は量子ビット数では下がっているが、モジュール化されていてほかのチップと組み合わせて使うことができるという。このような新たな使い方は技術トレンドとしては興味深い。分散化されて接続されることで、大規模化するのかもしれない。

 なおGoogleの親会社のアルファベットからスピンオフしたベンチャーのSandboxAQも量子通信技術の研究を進めている。同社は量子コンピュータ実用化によって従来の暗号が解かれてしまう「Y2Q(Year Two Questionnaire)問題」を受けて、ポスト量子暗号技術に注力していると言われている。

光量子方式

 一方、日本の東大の古澤明教授と武田俊太郎氏らが研究している光を使う方式の量子コンピュータは、常温で動作する。光子はもともと量子であり、偏光(光の振動方向)を使うことで0と1の情報を載せることができる。この光パルスを多数、ミラーやフィルターなどの光学部品を載せた光回路上で走らせて計算を行なう。

 研究では「量子テレポーテーション回路」を使ってさまざまな規模および種類の量子もつれを作ることに成功している。常温・大気中で用いることができ、通信とも相性が良いのではないかと言われている。

核磁気共鳴方式

卓上量子コンピュータGemini-mini

 最近、スイッチサイエンスが輸入販売して話題になった、中国・SpinQによる卓上の量子コンピュータ「Gemini-mini」はNMR(Nuclear Magnetic Resonance、核磁気共鳴)を用いた方式である。もともとは原子核に磁場を与えて電磁波を照射し、その時の状態を観測することで化合物の構造を推定する手法だが、これを量子ビットとして用いる。

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 大型化は難しいが、SpinQは2量子ビット、3量子ビットの卓上量子コンピュータとして商品化し、販売した。あくまで量子コンピューティング教育向けの教材だが、既に完売しているようだ。こちらについては輸入販売しているスイッチサイエンスの高須正和氏自身による記事や、金沢大学 秋田純一教授のnoteが興味深い。

組み合わせ最適化問題に使われる「量子アニーリング」

 「量子コンピュータ」と呼ばれるものには、量子素子を組み合わせる「ゲート型(量子回路型)」のほか「アニーリング型」がある。「アニーリング」とは金属の「焼きなまし」を意味する言葉で、材料をゆっくり冷却する過程で、内部の状態が落ち着いていくことを指す。それと同じような過程を量子で行なうことで、エネルギー最小の状態を探索するような計算を高速で行なえるのではないかというアイデアだ。

 東工大の西森秀稔教授らが考案し、カナダのD-Wave Systemsが、超電導集積回路からなる量子アニーリングのハードウェアを開発したあたりから急激に注目された。

D-Wave Systemsの「2000Q」

 アニーリングは、従業員のシフト計画の最適化、工場の注文量予測、「巡回サラリーマン問題」と呼ばれるような大規模な組み合わせ最適化問題を解くために用いられている。スタートアップもあり、株式会社グルーヴノーツや、blueqat(ブルーキャット)株式会社などが量子アニーリングを使った事業に取り組んでいる。またアニーリングを疑似的に再現して最適解を探索する「疑似量子アニーリング」と呼ばれる方式も大手企業などで研究開発されている。

 なお西森教授自身は、量子コンピュータは決して従来型(ノイマン型)コンピュータにとって代わるものではなく、古典コンピュータでは時間がかかる特定の問題に使われるものであり、それぞれが役割を担って、共存し続けるだろうと強調している。また既存のコンピュータだけではなく、量子ゲート方式とアニーリングの融合が実用面では重要だと語っていた。

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量子コンピュータが得意な問題は、「量子」の問題

 量子コンピュータはどのような問題に使われるのだろうか。一番注目されているのは薬剤の開発や、触媒開発、新材料の開発等である。量子コンピュータがもっとも適しているのは、量子の問題を扱うことだ。古典的な問題は古典的コンピュータで解いたほうがいい。そのため、量子力学的な要素なしでは考えられない分野の計算に用いるのが最適なのだ。分子・原子の量子的なふるまいを計算する必要がある量子化学計算はもっとも期待されている領域だ。

 富士通とも連携して量子コンピュータに関するさまざまな研究を進めている理化学研究所の量子コンピュータ研究センター(RQC)では、太陽光発電の性能向上に応用できる狙った物性の自動設計手法を開発したと2023年3月に発表している。なお理研RQC-FUJITSU連携センターでは、2023年4月に64量子ビットの量子コンピュータ提供を始める予定だ。
目的とする物性から、それを実現するモデルを構築する逆問題における新手法

 内閣府が2021年11月付でまとめた資料には、機械学習や量子化学計算などさまざまなアプリケーションがまとめられている。

課題は「エラー訂正」

 自然界の物理法則を利用する量子コンピュータの課題は、量子ビットが壊れやすいことである。これは「デコヒーレンス」と呼ばれる。

 量子ビットは重ね合わせのまま計算を行なう。現在のコンピュータは計算の途中ステップで「エラー訂正」を行なう。だが量子コンピュータの場合は、重ね合わせのまま計算操作を続けてないといけないので、途中で介入できず、そのままではエラー訂正できない。
 現在の量子コンピュータのシステムは「NISQ(Noisy Intermediate-Scale Quantum Computer、ノイズのある中規模量子コンピュータ)」と呼ばれており、量子演算回数には限界があって、大規模化は難しい。この課題を克服するために、NISQ上でも使えるアルゴリズム開発が進められている。つまり、エラーが起こることを前提として使おうという考え方だ。

 だが大量の計算ステップを繰り返す必要のある計算問題では、特にエラー訂正が必要だ。NISQではやはり難しいという話もある。例えばNTTでは、量子ビットを冗長に符号化する量子誤り訂正符号と、量子ビット数のオーバヘッドなしに正しい計算結果を予測する量子誤り抑制(ノイズ補償)手法の2つのアプローチで、この課題に取り組んでいる。

NTTの誤り耐性量子計算とそのソフトウェア基盤の概念図

 また慶應義塾大学は2022年4月に極低温環境で、実用的な規模の量子コンピュータを制御するのに必要な水準の消費電力、実装規模、速度、誤り訂正の性能などを満たしつつ、単一の論理量子ビットのみならず、相互作用する複数の論理量子ビットを復号する量子誤り訂正アルゴリズムを世界で初めて開発したと発表している。

慶應義塾大学が提唱するエラー訂正

量子コンピュータというアイデアの歴史

 なお量子コンピュータはもともとは「熱を発生しないコンピュータは可能なのか」という思索から始まった。これは、エントロピーと情報、物理から見た情報処理、計算とは何なのかという話とイコールだ。

 このあたりの歴史、あるいは計算の本質的なところに興味がある方には、多くの先端研究者たちに直接インタビューしている雑誌「日経サイエンス」編集長の古田彩氏が慶應義塾大学で行った講演動画があるので、そちらをご覧いただくことをおすすめしたい。

 10年以上前の動画で、かつ1時間半の長尺だが、熱力学から見た「計算」とは何かという本質的な話から量子コンピュータに至るまでの道のりを、丁寧に、分かりやすく解説してくれている。量子コンピュータの話が出てくるのは真ん中を超えたあたりだ。

 古田氏は最後に、量子コンピュータの日常的アプリケーションが出れば、とっつきにくい量子力学も身近に感じられるのではないかと語っている。
ネットで研究室見学も可能

 国内外で注目が集まる量子コンピュータについては、まず何よりも人材が必要ということで、産学連携でさまざまな教育プログラムも走っている。いまのご時世らしくYoutubeにも多くの教材がアップロードされ、公開されている。

 若手研究者たちによる量子技術教育(QEd)プログラムでは、実験室の様子を研究者自らが紹介してくれている動画もあるので、興味がある方は、それだけでも見てみることをおすすめする。 』

量子コンピューターに革新 ノーベル賞技術の先駆者挑む

量子コンピューターに革新 ノーベル賞技術の先駆者挑む
編集委員 吉川和輝
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD316GJ0R31C22A0000000/

『今年のノーベル物理学賞は欧米の量子情報科学の研究者3人に授与される。その1人、アントン・ツァイリンガー博士(オーストリア)の業績は、光の粒(光子)の状態を離れた場所に移す「量子テレポーテーション」の実験に成功したことだ。この分野で世界的な成果をあげてきたのが古沢明東京大学教授。今、量子テレポーテーションを駆使した独自方式の光量子コンピューターの開発にまい進し、他の量子マシンの斜め上を行く「スーパー量子コンピューター」を目指す。

量子テレポーテーションの研究でノーベル物理学賞を受賞するアントン・ツァイリンガー氏(10月、ウィーン)=ロイター

「テレポーテーション」というとSFに登場する「瞬間移動」を連想する。電子や光子といったミクロなものを扱う量子力学の世界では「量子もつれ」という状態にある2つの粒子は、観測するまで状態が定まっていないが、一方を観測すると同時にもう一方の状態が確定する。離れた場所にある光子が量子もつれを起こしていることを示し、量子力学の正しさを実証したのが1997年のツァイリンガー氏の実験だった。

完全な量子テレポーテーションに成功

ツァイリンガー氏の実験が、転送後の測定操作が必要な「条件付き」の量子テレポーテーションだったのに対し、古沢氏は米国留学中の98年に「条件なし」の量子テレポーテーションに世界で初めて成功。2013年には量子コンピューターで扱う情報の基本単位である「量子ビット」を完全な形でテレポーテーションした。

古沢氏が量子ビットの完全な量子テレポーテーションを達成した2013年当時の東京大学の実験装置。こうした複雑な装置を大幅にコンパクト化する技術にメドをつけている=東京大学提供

ツァイリンガー氏の成果が今の量子暗号技術などにつながっているのに対し、古沢氏による完全な形での量子テレポーテーションは量子コンピューターの基本技術になっているとされる。ツァイリンガー氏の受賞で、古沢氏はノーベル賞を惜しくも逃したという見方も出たが、古沢氏は10月末開いた記者会見でこれを否定してみせた。
ノーベル賞で関心高く

今回の授賞は「条件付きの量子テレポーテーションに限定されたものだった」(古沢氏)というのが理由だ。授賞理由も古沢氏らの研究には言及しておらず、ノーベル委員会は古沢氏の研究を「別個の業績」とみなしている可能性がある。古沢氏は「これまでノーベル賞を意識したことはなかったが、むしろ(次の)受賞が近づいてきたようだ」と述べた。
ノーベル物理学賞を(スクリーン左から)アラン・アスペ、ジョン・クラウザー、アントン・ツァイリンガーの3氏に授与すると発表した記者会見=10月4日、ストックホルム=スウェーデン通信提供・AP

古沢氏は自らが切り開いた量子テレポーテーションを駆使して新方式の光量子コンピューターをつくろうとしている。2021年からは理化学研究所・量子コンピュータ研究センターの副センター長を兼任。中村泰信センター長が取り組む超電導型・量子コンピューターなどと並んで研究開発を進める。実機完成の目標は2030年だ。

量子コンピューターの開発は、量子ビット実装の違いによって米IBMなども採用する「超電導」、欧米のスタートアップが主導する「イオントラップ」、大森賢治・分子科学研究所教授らが手掛ける「冷却原子」など複数の技術候補がひしめいている。

古沢氏の光量子コンピューターがこれらと異なるのは、超電導回路などを用いる「静止した」量子ビットではなく、飛んでくる光パルスを測定し、その結果に基づいて量子もつれ状態にある次の光パルスに操作を加える「測定誘起型」と呼ばれる技術を使っていることだ。

ゲームチェンジ狙う

この方式だと量子ビットを常温で、しかも桁違いの規模で扱える。10月の記者会見で古沢氏は「量子ビットを100億近くの規模で使える技術を手にした」と説明した。今回NTTと共同で「量子光」と呼ばれる微細で特殊な光の波形を自在に作り出せる光源技術を開発。これを使うことで扱える量子ビットの数を増やせるという。

他方式での量子ビットの数は、超電導型で100を超えた程度。この規模では計算の誤り(エラー)が避けられないため、各方式とも今後より多くの量子ビットを実装することで誤り訂正ができるようにしようとしている。
理化学研究所(埼玉県和光市)に新設された研究室で実験装置を説明する古沢明氏

そのため超電導型の実用機で100万量子ビット程度必要とされる。急には実現できないため当面は「NISQ(ノイズのある中規模の量子コンピューター)」と呼ばれる誤り耐性のない量子コンピューターを、通常のコンピューターとハイブリッドで使う時代が続くとされる。これに対して古沢氏は「誤り耐性を持つマシンを最初から目指す」とし、この世界でのゲームチェンジを構想する。

古沢氏は記者会見で、光量子コンピューターでもあらゆるタイプの演算を実行できるメドがたっていることも明らかにし、実機開発への道具立てが整いつつあることを印象付けた。

古沢氏らの光量子コンピューターは、コンピューターの開発史上ユニークな位置を占める可能性がある。今のコンピューターや他の量子コンピューターと異なり、コンピューターチップや量子ビットの集積化を進める必要がないためだ。

「光コンピューター」実現へ膨らむ期待

情報処理を電気信号ではなく光によって行う「光コンピューター」が実現するとの期待も膨らむ。光コンピューターはチップの動作周波数を上げられるなどの期待から1980年代に盛んに研究されたがいまだに実用化していない。古沢氏によると「光を使うアナログコンピューターでは、実用的な誤り訂正の方法がなかったため開発が行き詰まった」という。それが量子技術を使って実現するシナリオが見えてきた。

古沢氏が描く万能型の超高速コンピューターの構想は「良いことずくめ」に聞こえなくもない。当面の課題である誤り訂正の実証など開発実績を積み上げていくことで、「ノーベル賞が近付いた」という自身の言葉は現実味を帯びてくる。

Nikkei Views
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富士通、国産量子計算機を初の実用化へ 理研と共同

富士通、国産量子計算機を初の実用化へ 理研と共同
【イブニングスクープ】
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC122B90S2A810C2000000/

 ※ 『量子コンピューターは計算の基本単位となる「量子ビット」の数が進化の目安で、富士通が23年度に開発する計算機は64量子ビットにのぼる。グーグルが量子超越を達成した際の53量子ビットを上回る。IBMが21年に開発した127量子ビットなどに次ぎ、現状では世界でも競争力の高い性能になる。富士通は26年度以降に1000量子ビット超も実現する見通しだ。』、と言っているんで、「量子ゲート方式(汎用的なもの)」なんだろう…。


『富士通は理化学研究所と共同で次世代の高速計算機である量子コンピューターの実用化に向け、2023年度に企業への提供を始める。金融市場の予測、新素材や薬の開発への活用を見込む。米グーグルなど海外勢が開発を主導しており、幅広い分野の計算ができる汎用型を国内企業が手掛けるのは初めてになる。産業競争力や安全保障を左右する次世代技術開発の起爆剤になる可能性がある。

富士通は21年4月に埼玉県和光市に理研との連携センターを設置し、約20人の研究者が参加して量子コンピューターを開発してきた。23年度に実機をつくり、企業に公開して研究に生かしてもらう。

量子コンピューターはスーパーコンピューターに比べて計算速度が飛躍的に速い。素材開発などに革新をもたらす可能性を秘めており、化学や製薬、自動車、金融など幅広い産業の競争力を左右する見通しだ。富士通は4月から富士フイルムと材料設計に関する共同研究を始めた。連携先を広げ、協力して将来の活用に向けた知見を蓄える。

国内では21年に米IBMが自社開発の量子コンピューターを川崎市に設置した事例があるものの、海外勢に比べ日本としての開発は遅れていた。富士通は理研から技術やノウハウの提供を受けて日本企業として初の実機をつくる。グーグルやIBMと同様、極低温に冷やして電気抵抗をなくす「超電導」の回路で計算する方式を採用する。

量子コンピューターの製造には高度な技術が必要だ。世界の開発競争はこれまで米テック企業が主導してきた。グーグルは19年にスパコンで1万年かかる問題を約3分で解き「量子超越」と呼ぶ成果をあげた。近年は中国勢の技術も向上し、新興企業の台頭も目立つ。

一方で現在の量子コンピューターは開発途上で、解ける問題は限られる。計算に伴うエラーの克服も難題だ。グーグルは創薬や新型電池の開発などへの応用を視野に29年の実用化を目指すが、今後の開発の壁は高い。最終的に誰が勝者になるかは見通せず、強みを持つ超電導の制御技術などを生かせば日本勢にも巻き返しの余地はある。

量子コンピューターは計算の基本単位となる「量子ビット」の数が進化の目安で、富士通が23年度に開発する計算機は64量子ビットにのぼる。グーグルが量子超越を達成した際の53量子ビットを上回る。IBMが21年に開発した127量子ビットなどに次ぎ、現状では世界でも競争力の高い性能になる。富士通は26年度以降に1000量子ビット超も実現する見通しだ。

量子コンピューターはスパコンで何億年もかかる計算を数分や数時間で実行する可能性を秘める。ボストン・コンサルティング・グループは40年ごろに新素材の開発などで最大8500億ドル(約110兆円)の経済効果を生むと予測している。

(AI量子エディター 生川暁、山田彩未)
イブニングスクープ
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浅川直輝
日経BP 「日経コンピュータ」編集長
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ひとこと解説

理研は量子コンピュータ研究センター(RQC)の中村泰信センター長を中心にゲート型量子コンピューターの開発を進めており、2022年度中に64量子ビット機を稼働させる予定です。国内外の研究者などにもオンラインで公開する考えとのこと。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01158/061500037/

一方、富士通と理研は2021年4月に連携センターを設置し、1000量子ビット級の超電導量子コンピューターおよびソフトウエアの共同開発を進めています。富士通は量子の発想をデジタル回路に生かした「デジタルアニーラ」で顧客企業とPoC(概念実証)を進めており、富士通が産業界のニーズを吸い上げる形で理研の量子コンピューターの用途開拓に乗り出す可能性があります。
2022年8月22日 19:16

竹内薫のアバター
竹内薫
サイエンスライター
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分析・考察

「量子コンピューターはスパコンで何億年もかかる計算を数分や数時間で実行する可能性を秘める。ボストン・コンサルティング・グループは40年ごろに新素材の開発などで最大8500億ドル(約110兆円)の経済効果を生むと予測している」。そんなに大きな経済規模になるのですか。たしかに、アルゴリズムが発見されていて、計算できるものは限られていますが、今後、新たなアルゴリズムも発見されるでしょうし、われわれには想像もつかないような超計算社会が出現するのだと思います。これまで、アメリカや中国に開発面で遅れを取ってきたイメージがありますが、日本の頭脳を結集して、巻き返しの第一弾となるでしょうか。期待が大きいです。
2022年8月22日 18:40』

「量子コンピュータ」は今解けない無数の社会課題を解決するための手段だ

量子コンピュータの発展史(リンク集) – とね日記
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/91fa592173ea1b2a6e53ae0c84323751

 ※ 量子コンピュータで、「計算が速くなる」という話しのイメージ図…。

 ※ 現行のコンピュータで、3bitの計算を行おうとすると、「8回の操作(演算)」が必要となる。

 ※ それに対して、量子コンピュータでは、「3quantumbit」あれば、その「8個の状態」を「1個で」表現(保持)できるから、「1回の操作(演算)」で処理できるはず…。

 ※ まあ、イメージ的には、そういう話しのようだ…。

「量子コンピュータ」は今解けない無数の社会課題を解決するための手段だ:研究開発:日立
https://www.hitachi.co.jp/rd/sc/story/qc/index.html

 ※ 今回の収穫は、コレ…。

 ※ 「近似値が低くて解けていない問題」という領域がある…。

 ※ 別に、「汎用量子コンピュータ」が開発できていなくても、そういう問題に対して「十分な近似値」を叩き出すことができれば、それで「人の生活を、より良いものにする」には十分…、という話し…。

量子コンピューターに第3の方式急浮上 日本も先頭集団

量子コンピューターに第3の方式急浮上 日本も先頭集団
編集委員 吉川和輝
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD16BMC0W2A810C2000000/

『量子コンピューターの開発競争の舞台で「第3の方式」が急浮上している。極低温に冷やした原子を使う「冷却原子型」と呼ばれる技術だ。他の方式とは異なり、日本の研究グループが世界の先頭集団を走る。政府の研究開発プロジェクトでの比重も近年増しており、量子コンピューター実用化に向けた日本の開発戦略のカギを握りそうだ。

独自の技術、世界が注目

愛知県岡崎市にある自然科学研究機構分子科学研究所の大森賢治教授の研究室。実験装置のモニター画面に縦横に規則正しく並んだ粒粒が光って見える。極低温に冷やして動きを止めた金属原子(ルビジウム)一個一個を真空容器の中で浮遊させた様子が映し出されている。

冷却原子型量子コンピューターでは、このように並んだ原子一個一個を、量子計算を担う「量子ビット」に使う。研究グループはこの実験装置で400量子ビットを実現。これは既存の量子コンピューターで実装されている量子ビット数を大きく上回る。大森教授は「1~2年後には1000量子ビットまで容易に増やせる。原理的には1万量子ビットまで拡大できる」と語る。

米ハーバードなど激しい競争

冷却原子を量子ビットに使うアイデアはかねてあったが、2016年に「光ピンセット」というレーザー技術を使って、原子を真空中で自在に動かして好きな場所に配置することに米国やフランスの研究グループが相次いで成功。実用的な量子コンピューターをつくれる見通しが開かれた。以来、米国のハーバード大学や、コールドクォンタ社、仏パスカル社などが実用化に向け激しい競争を展開している。

その中で大森教授のグループは、きわめて短い時間でパルス発光する超高速レーザーで冷却原子を操作するという独自技術で世界の注目を集めている。量子ビットの集積規模でもライバルの研究グループを引き離している。8月9日には量子コンピューティングの演算素子である「量子ビットゲート」を超高速で実行することに成功したと発表した。

量子ビットゲートを超高速実行

成功したのは、2個の量子ビットの間で「量子もつれ」という現象を発生させて実行する2量子ビットゲートのうち「制御Zゲート」と呼ばれる代表的なもの。光ピンセットでマイクロメートル間隔に並べた冷却ルビジウム原子に超高速レーザーを照射して6.5ナノ(ナノは10億分の1)秒という短い時間で動作させた。2量子ビットゲートの動作速度では米グーグルが20年に達成した15ナノ秒を大幅に更新した。

この動作速度は、冷却原子の操作で問題になるレーザー照射などに伴うノイズ(雑音)の時間スケールより2桁以上速いため、「ノイズの影響をほぼ無視することができるようになる」(大森氏)という。量子コンピューター開発の課題であるノイズによる計算エラーを抑制する技術が大きく進展する。

「超電導」、「イオントラップ」は商用機段階

量子コンピューターで現在実用化に近いのが「超電導型」と「イオントラップ型」の2つだ。超電導型は超低温に冷却して電気抵抗をゼロにした電子回路のチップで量子ビットを実現する。米IBMはこれまでに127量子ビットの超電導型の商用機を開発。22年内に433量子ビット、23年には1000量子ビットを超えるマシンを投入する予定だ。

一方、イオントラップ型は磁場によって空中に浮かせたイオン(電荷を帯びた原子)で量子ビットをつくる。米国のハネウェル社、イオンQ社、オーストリアのAQT社などが取り組み、クラウドサービスで利用できる商用機も登場している。

イオントラップ型は量子ビットを浮遊した状態で扱う点で冷却原子型と似ている。量子計算を行う際の「量子重ね合わせ」という状態の持続時間も、冷却原子型と同様非常に長いという利点がある。ただ量子ビットの数を大幅に増やすのは冷却原子型と比べ難しいとされる。

世界の開発レース、日本が「番狂わせ」も

日本では理化学研究所が超電導型で国産初の量子コンピューターを今年度に開発する予定だが、IBMなど先行グループに水をあけられている。イオントラップ型の研究開発も国内では低調だ。こうしたことから政府も、世界の開発レースに「番狂わせ」を起こすかもしれない冷却原子型への期待を強めているようだ。

量子関連の主な政府プロジェクトは18年度に始まった文部科学省の「光・量子飛躍フラッグシッププログラム(Q-LEAP)」と、20年度からの内閣府の「ムーンショット型研究開発制度」の2つがある。このうちQ-LEAPでは冷却原子型の研究予算が21年度から実質的に積み増されたほか、ムーンショットでは今年度、冷却原子型のプロジェクトが追加された。
両プロジェクトでリーダーを務める大森教授の研究グループは米コールドクォンタ社との協力関係を強化するなど実用化に向けた研究を加速する。「量子ビットの数を増やしていくのはもちろん、超高速レーザーの精度向上や装置の小型化に取り組み、実用化レースを勝ち抜きたい」(大森氏)としている。

Nikkei Views https://www.nikkei.com/opinion/nikkei-views/?n_cid=DSREA_nikkeiviews 

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Nikkei Views https://www.nikkei.com/opinion/nikkei-views/?n_cid=DSREA_nikkeiviews 』

量子コンピュータはなぜ速いのか?

量子コンピュータはなぜ速いのか?
https://www.mki.co.jp/knowledge/column101.html#:~:text=%E9%87%8F%E5%AD%90%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%81%AF%E3%80%81%E9%87%8F%E5%AD%90%E3%81%8C%E6%8C%81%E3%81%A4%E6%80%A7%E8%B3%AA%E3%80%8C%E9%87%8D%E3%81%AD%E5%90%88%E3%82%8F%E3%81%9B%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%80%8C%E9%87%8F%E5%AD%90%E3%82%82%E3%81%A4%E3%82%8C%E3%80%8D%E3%82%92%E5%88%A9%E7%94%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E9%AB%98%E9%80%9F%E8%A8%88%E7%AE%97%E3%81%AE%E5%AE%9F%E7%8F%BE%E3%82%92%E7%9B%AE%E6%8C%87%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82%20%E9%87%8F%E5%AD%90%E3%81%AE%E3%80%8C%E9%87%8D%E3%81%AD%E5%90%88%E3%82%8F%E3%81%9B%E3%80%8D%E3%81%AF%E3%80%81%EF%BC%91%E3%81%A4%E3%81%AE%E9%87%8F%E5%AD%90%E3%83%93%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A7%E3%80%8C0%E3%80%8D%E3%81%A8%E3%80%8C1%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%82%92%E5%90%8C%E6%99%82%E3%81%AB%E8%A1%A8%E7%8F%BE%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%82%8B%E6%80%A7%E8%B3%AA%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82,%E3%81%93%E3%82%8C%E3%82%92%E5%88%A9%E7%94%A8%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%A8%E9%99%90%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%83%93%E3%83%83%E3%83%88%E3%81%A7%20%E5%A4%A7%E9%87%8F%E3%81%AE%E3%83%91%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%83%85%E5%A0%B1%E3%82%92%E5%90%8C%E6%99%82%E3%81%AB%E8%A1%A8%E7%8F%BE%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%80%81%EF%BC%91%E5%9B%9E%E3%81%AE%E8%A8%88%E7%AE%97%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%97%E3%81%A7%E5%90%8C%E6%99%82%E3%81%AB%E5%87%A6%E7%90%86%E3%81%99%E3%82%8B%20%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

 ※ 「量子コンピュータ」については、分かりたいと思っている…。

 ※ それで、ボチボチ文献読んだり、資料収集したりはしている…。

 ※ しかし、どうも、「今一つ」なぜ「演算速度」が速くなるのかが、理解できないでいる…。

 ※ 今回、なんとなく「イメージが掴めそうな」画像に当たったんで、途中段階ではあるが、貼っておくことにする…。

※ 最後の説明だと、「2量子(クァンタム)bit」だと、「00」「01」「10」「11」の「4パターン」を表現(保持)していることになるから、それの「量子(クァンタム)bitとしての演算」は、「00」「01」「10」「11」の「4パターン」を順次別々に取り扱って「演算」するよりも、「一気に取り扱う(演算する)こと」ができて、「速い」と言っているようでもあるんだが…。

※ そういう理解で、いいんだろうか…。

中国新興、量子コンピューターを開発

https://www.nikkei.com/article/DGXZQODZ22BE50S1A120C2000000

『量子コンピューティングを手がける中国の「本源量子計算科技(Origin Quantum)」がシリーズAで資金調達を行った。主な出資者は政府系ファンドで、中国互聯網投資基金(CHINA INTERNET INVESTMENT FUND)がリードインベスター、国新基金(China Reform Fund)、建銀国際(CCB International)などがコ・インベスター。調達した資金は量子コンピュ…

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調達した資金は量子コンピューターや量子コンピューターチップなどの製品や、量子計測・制御などのコア技術を研究する資金に充てられる。本源量子は過去にもエンジェルラウンドで中科創星(CASSTAR)などから出資を受けている。

量子プロセッサーなども自社で開発した(本源量子計算科技提供)
本源量子は2017年に設立され、中国科学院量子情報重点実験室を母体とし、中国の量子計算分野のトップ研究者である郭光燦氏、郭国平氏が研究を主導している。研究開発チームのコアメンバーはいずれも中国科学院のコンピューターおよび物理分野の博士で、従業員全体に占める研究開発人員の割合は75%だ。1990年代生まれの若手を主体とし、本社を安徽省合肥市に構え、四川省成都市や広東省深セン市にも支社を置く。

同社は量子コンピューター、量子チップ、量子計測・制御、量子計算ソフトウエア、量子計算クラウドを幅広く手がけ、フルスタックの量子計算技術を開発することを目標としている。米Google、IBM、Rigetti Computingをライバルと見据える。

昨年は初の量子コンピューター「本源悟源」の開発に成功した。自主開発した6ビットの量子プロセッサー「夸父(KF C6-130)」を実装、超電導ソリューションを採用したもので、IBMが2017年に発表した製品をベンチマークとしている。チップ、計測・制御、ソフトウエア、クラウド、制御システムに至るまで独自に開発したものだ。現在は24ビットの量子コンピューターがデバッグ段階に入っており、旧正月(2月中旬)前後にもローンチされる予定で、今年末から来年初めにかけては64ビットの量子コンピューターをローンチする予定だという。

量子コンピューター「本源悟源」を開発した(本源量子計算科技提供)

現在の進展度合いからすると、本源量子は超電導技術では約3年分IBMから後れを取り、半導体技術では約2年分インテルから後れをとっている状況だ。

チップに関しては、第一世代の2ビット量子プロセッサー「玄微(XW B2-100)」や前出の夸父(KF C6-130)などを含む10種以上を発表済み。昨年11月には中国科学技術大学との共同研究チームが新しい半導体量子チップのアーキテクチャーの模索において重要な進展を果たした。

製品の商用化に関しては、昨年9月にローンチした本源悟源のクラウドプラットフォームを利用する企業がすでに100社を超えているうえ、量子コンピューター本体とソフトウエア、ハードウエアの販売契約もすでに多数結ばれている。

・「36Kr ジャパン」のサイトはこちら(https://36kr.jp/

・中国語原文はこちら(https://36kr.com/p/1052838030495369

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東芝がヘッジファンドになる日 「量子」で越境挑む 証券部 山下晃

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52473390S9A121C1I00000/

 ※『東芝が超高速で売買を繰り返すヘッジファンドの登録を検討している。量子技術や独自のアルゴリズムを使って、外国為替の裁定取引で利益を狙う超高速マシンを開発した。新技術は金融機関に売り込むだけではない。自ら高速取引業者となり、自己資金で試験運用を始める計画だ。金融とテクノロジーの垣根が取り払われるなか、東芝の超高速マシンはどこまで通用するか。既存の金融機関も強い関心を寄せている。』
『メーカーが技術力をテコに金融分野に進出するのは今に始まった訳ではない。新日本製鉄(現日本製鉄)は、高炉の制御技術に使う高度なデリバティブ(金融派生商品)をもとにコンサルティング機能を強化。金融機関向けのリスク管理などに提供してきた。技術者そのものも金融業界に数多く流れた。米航空宇宙局(NASA)の「ロケットサイエンティスト」が米ソ冷戦の終結と共にウォール街に移り、デリバティブなどの商品開発をけん引したのはよく知られている。』そーなのか…。知らんかった…。