ウクライナ停戦、新興国が仲介役に インドネシア大教授

ウクライナ停戦、新興国が仲介役に インドネシア大教授
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM141I00U3A510C2000000/

『9日から広島で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)は2023年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国のインドネシアが参加する。国際法が専門で日本外交に詳しいヒクマハント・ユワナ国立インドネシア大教授に新興・途上国の役割などを聞いた。

国立インドネシア大のヒクマハント・ユワナ教授

――世界経済におけるG7の影響力は低下しています。

「G7の衰えに議論の余地はない。これまでのように自分たちが主導してG7以外の国々の行く末を決めたいのか、G7以外の国々と協力していきたいのかが、いま問われている」

「協力とは新興国や途上国の声を聞くことを意味する。その場としてG7サミットは重要な役割を果たしうる」

――G7はウクライナ問題でグローバルサウス(南半球を中心とした新興・途上国)から協力を引きだそうとしています。

「インドネシアを含めて大半の新興国や途上国はロシア側にもウクライナ側にも立たず、ただ『戦争をやめてほしい』との立場をとっていることを理解する必要がある。食料やエネルギーなど幅広い分野で影響を受けているからだ」

「停戦という観点では、新興国が仲介役を果たしやすい。ロシアもウクライナも『降伏した』と認めたくない。第三国が調整すれば、双方に配慮できる。問題はG7がそうした権限を新興国に与えられるかどうかだ」

――G7がグローバルサウスへの関与を強めるには何が重要ですか。

「各国は経済などの分野で戦略に基づいて取り組んでおり、G7は理解し協力する必要がある」

「例えばインドネシアのジョコ大統領は10〜11日に開いたASEAN首脳会議の内容をサミットで報告するだろう。会議では多くの成果文書を発表し協力が必要な課題を明示した」

「G7がグローバルサウスの取り組みを受け入れることは地球規模の課題を解決するためにも重要だ。G7が主導すれば中国やロシアは賛同しにくい」

――グローバルサウスがG7に期待することはありますか。

「G7は伝統的に軍事分野で強い。中国と経済的な結びつきは深い一方、中国の軍事拡張をこころよく思っていない新興・途上国は少なくない。グローバルサウスはG7に中国との軍事バランスを保つ役目を果たしてほしいはずだ」

「もう1つは技術移転だ。グローバルサウスは人口が増加し、優秀な人材にあふれるが、重要な技術はまだG7にある。中国やロシアも競争力をつけているものの、G7ほどの信頼性はない。信頼できる技術を持つG7はなお有利だ」

――開催地の広島は原爆が投下された都市です。

「各国首脳に核戦争はあってはならないと改めて思い起こさせるだろう。現在の核兵器は広島で使用された原爆よりはるかに進歩していることを考えただけでもそうだ」

(聞き手はジャカルタ=地曳航也)』