タイ総選挙、2野党が過半数を確保 連立交渉へ

タイ総選挙、2野党が過半数を確保 連立交渉へ
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『【バンコク=井上航介】タイで14日に実施された下院総選挙は、同日に即日開票され、民主化を訴える野党2党の議席が過半数を占める公算となった。2014年に軍事クーデターが起きたタイでは19年の民政移管後も国軍の影響下にある親軍勢力が政権を握る。今後は連立交渉によって民主的な政権が誕生するかが焦点となる。

開票率97%時点の選挙管理委員会の集計によると、民主派野党「前進党」がわずかにリードし、タクシン元首相派の野党「タイ貢献党」が続く。小選挙区(400議席、残りの100議席は比例代表)だけで2野党は220議席を超えたもようだ。

連立与党の中核を占める親軍派「国民国家の力党」(39議席)やプラユット首相を支持する「タイ団結国家建設党」(23議席)は劣勢に立った。

今後の各党による多数派工作は前進党と貢献党を軸に展開される見通しだ。前進党のピタ党首は14日記者会見を開き「政権獲得に向けて協力可能な野党に交渉を呼びかける」と述べた。

もっとも、野党による政権交代が実現するかは不透明な情勢だ。選挙後の首相指名選挙は下院議員500人と、軍政下で国軍が任命した上院議員250人の合同投票で実施される。上院議員は国軍の意向に従う公算で、親軍派に有利な仕組みだ。

野党が首相を選出するには下院票だけで376議席が必要になる。親軍派は126議席あれば現政権の維持が可能で、他の連立与党の議席を加えれば最低ラインは超える。

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高橋徹
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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分析・考察

タイ総選挙(下院選)の開票作業はきょう(15日)のお昼ごろには完了するとみられています。野党第2党の「前進党」が躍進し、親軍与党のみならずタクシン派のタイ貢献党を抑えて比較第1党となる勢いです。若年層の支持が高く、軍の政治関与を終わらせたい声の受け皿になったとみられます。ただし、昨日も書きましたが、今後の首相指名選挙は非民選の上院も加えて行うため、下院選の結果だけで政権の行方ははっきりしません。現時点で第3党になりそうで、親軍派と反軍派、タクシン派と反対派のいずれとも組む姿勢を見せている「タイの誇り党」がキャスティングボートを握りそうです。
2023年5月15日 7:18』