日本郵政、郵便局の統廃合検討 増田社長「整理が必要」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA110UZ0R10C23A5000000/

『日本郵政の増田寛也社長は日本経済新聞のインタビューで、約2万4000カ所ある郵便局に関し2040年ごろをめどに「整理が必要になる」と述べた。郵便物や人口が減る中で、全国一律での提供が求められる郵便などの「ユニバーサルサービス」のあり方を模索する。
NIKKEI Financial にインタビューの詳細を掲載
日本郵政増田社長「できることはどんどんやる」
https://financial.nikkei.com/article/DGXZQOUA077DQ0X00C23A4000000?s=1…
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『日本郵政は郵政民営化で07年に発足した。国内の郵便局はその際から250ほどしか減っていない。郵便物などの取扱数はインターネットの広がりなどで、ピーク時の01年度の267億通から22年度は185億通と3割減った。
日本郵便の業績も低迷する。連結営業利益はピークの19年3月期に比べ、22年3月期は19%減り、1482億円になった。
郵政民営化法は日本郵政に対し、郵便や金融について郵便局を窓口とし全国一律・同水準のユニバーサルサービスの提供を義務付けている。
地方を中心に郵便局の減少に慎重な政治圧力もあり、日本郵政は本格的な統廃合の可能性に言及してこなかった。
増田氏は抜本的な統廃合を検討する意向を示した。「銀座など都心では賃料などのコストがかなり高いところがある。地方だけでなく都心も整理しなければならない」と語った。
統廃合の時期は「40年が一つのタイミングになる」と述べ、30年代後半から本格検討が必要との認識を示した。「ユニバーサルサービスの水準は維持した上で、新たな形でサービス改善を実感してもらう」と強調した。
コンビニエンスストアのように郵便局での物販を強化したり、自動運転やドローンなどのデジタル化で物流業務の効率を高めたりすることを想定する。店舗や銀行が少ない地域で郵便局がなくなると反発が出る可能性もある。増田氏は「政府や自治体、地域代表の政治家が議論して考えていく必要がある」と提起した。
見直し表明の背景にあるのは日本郵政グループの収益構造のいびつさだ。日本郵政の22年3月期の連結経常利益9914億円の85%はゆうちょ銀行とかんぽ生命保険によるものだ。
金融2社は日本郵便に対し、預貯金や保険販売などの業務委託費を払うほか、郵便のネットワーク維持を名目とした「交付金」を負担している。22年3月期のこれらの支払いは8000億円を超えた。
日本郵政はかんぽ商品の不適切な販売の問題などを受け、増田氏のもとで再建中だ。これまでのところ大胆なコスト削減や、新たな成長の柱の確立はできていない。
海外では物流・郵政の民営化が着実に進む例もある。独ドイツポストは民営化を経て、2000年に株式を上場した。02年には世界的な物流大手のDHLインターナショナルを完全子会社化するなどM&A(合併・買収)をテコに成長している。
日本郵政も26年3月期までの中期経営計画に戦略的なIT(情報技術)に4300億円程度、不動産に5000億円程度を投資すると盛り込んだ。M&Aなどにも最大1兆円程度を投じる方針だ。増田氏は「成長に向けては自前主義ではない」と明言し、業種を超えた提携や出資に意欲を示す。
郵政民営化から10月で16年になる。ユニバーサルサービスの一つの固定電話がかつて事業の主体だったNTTはインターネットのネットワークなどに軸足を移してきた。郵政と同様に金融で稼ぐ収益を実業に回してきた各地の農協も統廃合が進む。競争環境の変化や、人口減少を見据えた改革が日本郵政にも必要になっている。
増田氏は聖域となっていた分野の改革に着手すると踏み込んだ。実現すれば大きな転換となる。中長期の課題となるだけに改革を着実に進めるしかけも重要になる。
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