今年のアメリカの政府債務上限引き上げが、今までと違う理由
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『と、表題のタイトルにしましたが、基本的には手打ちをしないと、アメリカがテクニカル・ディフォルトではなく、本当にディフォルトして、世界経済が大混乱しますので、「経済的大量殺人者」と呼ばれたくなければ、民主党も共和党も妥協する必要があります。なので、決着するとは思っています。
今までも、「政治的な茶番」と呼ばれて、党利党略の為のショーと言われてきた、この2年に一回の行事のようなアメリカの政府の債務上限引き上げ問題ですが、今年はちょっと真剣さが違います。実際、この騒動が起きる理由というのは、まったく建設的なものではなく、近々の大統領選挙に向けて、バラ撒きをやって有権者の歓心を買いたい、その時の与党と、それを阻止して選挙を有利に進めたい、その時の野党の完全な政治ゲームなんですね。そもそも、この法律的な制限というのは、無制限に債務を膨らませて、2つの世界大戦で、世界帝国の地位から、普通の国になってしまったイギリスの失敗を見て規制されているわけです。本来、債務上限が100回以上も引き上げられる国家運営こそが問題なのですが、自分の政権の時にバラ撒きをしたいので、そこにはメスを入れないのですね。私は、アメリカの民主主義の最も醜い面だと考えています。共産国の「面子」と同じくらい本質を見失った政治ショーですね。
で、今年が一味違う理由なのですが、アメリカが歴史上有数のインフレ状態になっているからです。この状態でバラ撒きをしてしまうと、せっかく一部の経済を犠牲にして、政策金利を引き上げる事で、力技で抑え込んでいるインフレが再燃してしまうのですね。アメリカのインフレは、笑って済まされる状態は、とっくに過ぎていますので、FRBは全てを犠牲にしてインフレ退治を優先する構えです。
で、「バラ撒き」と書くと語感が悪いのですが、どんな形でも財政支出をしたらインフレの原因になるので、一応、有意義な理由が付いていても、予算を割いて、支出がある場合を、全てバラ撒きと呼ぶ事にします。例えば、CO2排出規制を進める為の補助金とか、大学生に対する奨学金の拡大とか、インフラ投資の増加とか、やる事に意味のある政策も含みます。とにくかく、インフレの厄介なところは、どんな理由でも、政府が金を市中に出したら、政策金利を引き上げて抑制しているインフレに火が付いて、今までの努力が無駄になってしまう点です。
なので、私は既に確信していますが、やがて来るアメリカ経済のリセッションをソフトランディングさせる為にも、インフレの抑制は進めなくてはならず、その為には「バラ撒き」を認めるわけにはいかないという、凄く真剣な理由があります。まぁ、たまたま、それを突き付けるのが、野党の共和党で、それを拒否するのが与党の民主党の立場になったわけですね。ただ、もともと、民主党は大きな政府で、金のバラ撒きに熱心という党としての色がありますので、役どころとしては、ピッタシです。いつもの政治ショーと一味違うのは、こうしたガチの経済的な危機が背後に控えているからです。
このブログで、いくつかの記事で、複数の視点からアメリカの経済のヤバさを説明しています。一見、経済が好調のように経済指標や株価が動いている理由も説明しています。実際、薄氷を踏む危うさで、経済が回っていて、過去にいくつもの経済動乱や戦争・紛争があったにも関わらず、アメリカ経済自体に疑問を抱いていなかった第三国が、自分たちで経済圏を構築したり、ドル覇権からの分離を試みているのは、偶然ではありません。実際、「今までを盲信しているとヤバイ」と考える、国家指導者が増えているという事です。
恐らく形としては、どこかで手打ちになると予想される今回の政府債務上限引き上げ騒動ですが、その結果によっては、アメリカのインフレが年単位で継続したり、地方銀行を中心にした末端の市民金融が修復の難しいダメージを食らう可能性があります。近年では、珍しいくらい政治ショーではなく、ガチの政策論争になるはずです。その為、両党とも、現時点での政策の開きが大きく、しかも妥協がしづらいという綱引きになっています。なので、タイムリミットのギリギリまで揉める可能性が高く、もしかしたらバイデン大統領は、日本で開催されるG7サミットにも来日できない可能性があります。』