4月米消費者物価、4.9%上昇 10カ月連続で伸び鈍化
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『【ニューヨーク=斉藤雄太】米労働省が10日発表した4月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比の上昇率が4.9%だった。市場予想の5.0%を下回り、10カ月連続でインフレは鈍った。ただサービス分野を中心に物価はなお高く、米連邦準備理事会(FRB)は高止まりを警戒する。
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4月の上昇率は2021年4月以来2年ぶりの低水準だった。22年6月の9.1%をピークに伸びが鈍化している。
ロシアのウクライナ侵攻で22年前半に原油価格が高騰した反動が出ており、前年同月比でみたガソリン価格は下がりやすくなっている。4月は12.2%低下した。食品価格の上昇率も縮小傾向にある。
物価高の一因だった供給制約は解消している。
輸送運賃や主要国製造業の受注残・在庫といった調査項目をもとにニューヨーク連銀が算出する「グローバル・サプライチェーン圧力指数」は4月時点でおよそ14年半ぶりの低水準になった。
エネルギーと食品を除くコア指数の前年同月比の上昇率は5.5%だった。市場予想と同水準だった。コア指数の伸びは23年1月以降、一進一退が続く。
物価の高止まりを招く要因はなお多い。4月は中古車が前月比で上昇に転じた。一部のモノの価格は需要の強さを背景に下げ止まりの兆しがみえる。
アトランタ連銀が算出する「賃金トラッカー」(3カ月移動平均)は昨夏をピークに前年比の伸びが鈍化していたが、23年3月にかけて6%台半ばに再加速した。4月の米失業率は3.4%とおよそ半世紀ぶりの低水準になった。根強い人手不足と賃上げ圧力が幅広いサービス価格を押し上げる構図が続く。
10日の米市場ではCPIの総合指数の伸び鈍化に反応し、米金利に低下圧力がかかった。ドルが売られ、対ドルの円相場は一時1ドル=134円台前半とCPI発表直前より1円ほど円高・ドル安が進んだ。FRBの早期の利下げ転換期待が再び高まった。
FRBは3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で10会合連続の利上げを決める一方、声明文の修正で利上げを打ち止めにする可能性を示唆した。
累計5%の大幅利上げで家計や企業の資金調達コストは上がり、米地銀の連続破綻で銀行による融資の絞り込みが進む可能性も高まった。経済・物価の先行きを慎重に見極める構えだ。
ただFRB高官の間では物価が2%目標に近づくまでは時間がかかり、そう簡単に金融引き締めの手綱を緩めることはできないという見方も強い。
ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は9日「我々は利上げを終えたとは言っていない」と述べた。年内の利下げ転換にも否定的な考えを示した。サービス分野を中心に「まだ需要が供給に対して非常に強い」とみるためだ。
FRBが引き締めの長期化を迫られれば、最終的に景気の急速な冷え込みを招くリスクが高まる。
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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説
今回の米消費者物価指数は、ほぼ市場予想通りの結果。5月に追加利上げに動いたFRBが、6月は利上げをせず様子見に移行するという、市場の大方が想定しているシナリオを裏打ちする結果と受け止められる。総合の前年同月比は10か月連続で伸びが鈍化。+5%を下回って+4.9%になり、1ケタ台前半まで下がってきた。一方、コアの前年同月比は+5.5%。プラス幅を前月からわずかに縮小したものの、下げ渋りの印象が強い。足元の市場は年後半に0.25%ポイント幅の利下げ3回を織り込んでいるものの、パウエルFRB議長は年内の利下げには否定的である。筆者は、過去の事例も勘案しつつ、最初の利下げは24年にずれ込むとみている。
2023年5月11日 7:59 』