終わらぬ代理戦争…死者5年間で27万人 露・イランVSサウジ・トルコ、14日にも協議再開

終わらぬ代理戦争…死者5年間で27万人 露・イランVSサウジ・トルコ、14日にも協議再開
https://www.sankei.com/article/20160312-QNNDPNTGLVKVLKLVIPT7WUIFGM/

『2016/3/12 21:18

【カイロ=大内清】シリア内戦の終結に向けた和平協議が14日にもジュネーブで再開される。内戦につながった反政府デモの発生から15日で丸5年。2月下旬に発効した米露主導の停戦はおおむね維持されているが、内戦が、アサド政権を支えるロシアやイランと、反体制派を支援するサウジアラビアやトルコとの「代理戦争」の構図を持っていることも、事態を一層複雑化させている。

 協議が実際に再開されれば、停戦発効後では初。アサド政権が7日に参加を表明したのに続き、11日には態度を保留していた反体制派の代表グループ「最高交渉委員会」(HNC)も参加を決めた。反体制派の参加決定が遅れた背景には、和平協議がロシアや政権側のペースで進むことへの警戒があったとみられる。

 逆に政権側は、内戦発生後で最も優勢な立場にある。

 シリアでは2011年3月、チュニジアやエジプトで政権が崩壊した「アラブの春」に触発される形で反政府デモが発生。政権側の弾圧に対する武装蜂起が拡大し内戦に発展した。現在までに27万人以上が死亡し、400万人以上が国外へ脱出したほか、国内避難民は750万人を超す。

 反体制派は内戦当初から北部や首都ダマスカス周辺で支配地域を拡大。トルコやサウジなどに加えて米欧の支持も得て、一時は首都をうかがう勢いもみせた。』

『潮目が変わり始めたのは13年秋、政府軍の化学兵器使用疑惑を受けて武力行使を示唆していた米国が空爆を回避してからだ。政権側は、最大の懸念だった米国の介入が遠のいたことで生き残りへの自信を深めた。

 また、内戦の混乱に乗じる形でイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)が台頭したことも、政権側に追い風となった。政権が倒れた場合、地中海に面するシリアが過激派の温床化するとの懸念が現実味を増したためだ。政権側は、ISとの全面対峙(たいじ)を巧みに避け、反体制派の力をそぐ戦略も取った。

 さらに15年秋、ロシアが対IS名目で軍事介入し、政権への空爆支援に乗り出した。イランや隣国レバノンのシーア派組織ヒズボラの援軍も受ける政府軍は、北西部イドリブなどで反体制派への攻勢を強めた。

 反体制派や、その主要支援国であるサウジやトルコの危機感は小さくない。今年1月に始まった和平協議のために、サウジが音頭を取り、乱立する諸勢力の代表者を集めてHNCを組織したのはその表れだ。

 ただ、HNCには国際テロ組織アルカーイダ系の「ヌスラ戦線」に近い勢力も参加しており、停戦中もISやヌスラへの攻撃は容認する米欧とはズレもある。HNCが反体制派をまとめ上げ、協議に臨めるかはなおも不透明だ。』