日本という特殊な条件を考えずに仕掛けた海外ヘッジファンドの空売り全滅
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/31486082.html
『最後の抵抗を示していた日本国債に空売りを仕掛けていた海外ヘッジファンドが、ほぼ壊滅した模様です。損を確定して、市場から撤退を始めましたね。他人事ながら、以前の日銀砲が発動した時のように、多数の投資家の皆様の命が失われる事が無いように願っています。仕掛けた事の結果は、必ず引き受けさせられますので、投資で敗れた時の末路は悲惨です。
海外のヘッジファンドの日本国債空売りの根拠になっていたのは、次のような理屈です。日本の高い財政赤字と巨額の国債残高、および長期的なデフレ圧力により、日本国債の価格が下落し、金利が上昇するとの見方です。日本政府が国債の利払い負担に耐えられなくなり、インフレが加速し、日本円が大幅に下落すると予測していました。この理屈は、間違っていないし、大抵の国には当てはまります。しかし、その国の財政というのは、一律ではありません。日本には、日本固有の状況がありました。
それは、日本の国債の殆どを買い占めていたのは、他ならぬ日銀だったという事です。余りにも利率が低い為に、外国には人気が無く、投資の対象とは見なされていませんでした。なので、通貨発行権を持つ日銀が、買い取っていたわけです。それを、「一般的な」国家財政の理屈で、いつか限界を迎えると踏んで、空売りを仕掛けていたのが、海外のヘッジファンド勢です。通常、国の発行した国債は、アメリカ国債のように、外国の投資家もバリバリ買います。注意しないといけないのは、国債の金利が高い国ほど、財政破綻してディフォルトする可能性が高いという事です。ヨーロッパだと、イタリアとかギリシャとかですね。この前、破綻したクレディスイスなんかは、苦しい経営を支える為に、この辺りの金利の高い国債を、ガンガンと買っていました。
空売りを仕掛けるには、まず、その時のレートで日本国債を借りてくる必要があります。そして、約定日に、その時のレートで買い戻す義務があります。その時に日本国債の価格が下落していれば、利益になり、上昇していれば損になります。ところが、日本の国債価格は、日銀にガッチリと管理され続けた上に、殆どを発行元の日銀が買い占めていたので、約定日になっても買い戻す為の日本国債がどこにも無いという、極めて異例の状態が発生しました。既に、日本の銀行や生保が所有していた日本国債は、殆ど手数利用を払って借りてきていたので、買戻しができない状態です。それゆえ、罰金を支払って、手打ちにするか、日銀に高い金利を払って(直接ではない。間に証券会社が挟まるが、便宜的にこういう表現にしました)買い戻すしかなくなり、殆どの場合市場で損失を出した上に、高い金利を支払って退場という悲惨な結末を迎えています。
債権の場合、株式と違って、大量保有した場合に、それを公示する義務が無いので、具体的に誰が、どれだけ損をしたかは不明ですし、厳密に言うと、実際に大損があったかどうかも、ヘッジファンド側の発表が無い限り不明なのですが、諸所の状況を見ると、まず間違い無いはずです。日銀の国債の保有比率が高い事は、度々批判の的になってきました。市場の健全性から見ると、まったく「ごもっとも」であり、実に不健全な状態であった事は確かです。しかし、事、海外ヘッジファンドの日本国債の空売り攻撃に関しては、鉄壁の防波堤として機能しました。理由は、国債を発行するのも、金利を設定して貸し出すのも、胴元が日銀だからです。つまり、好きにコントロールできます。こんな賭場で、勝てる博徒は存在しません。無理に張り込めば、スッテンテンにされて退場するしか道がありません。
海外ヘッジファンドの読みは、大方の国家に対しては、有効なものですが、日本の特殊事情に関して言えば、間違いだったのです。まぁ、その特殊事情も、決して自慢できるようなものでは無いのですが、他に類例が無い為、とても「一般的」な考えで、市場に介入してしまったのが運の尽きです。今回も、討ち死に状態で、日銀の前に敗退した事になります。
ちなみに、この考え方も、1つの見解に過ぎず、全てのデータが公開されていない以上、予測の域を出ない事は、申し添えておきます。特に債権は、「判った気になる」のが一番危険です。世界の市場において、最大の規模を誇るのは、為替でも株式でもなく、債権市場なのですから、簡単な言葉で全てが説明できるわけでも、理解できるわけでもありません。そのことは、くれぐれも、ご理解下さい。』