日銀、国債補完供給の品貸料引き上げ 空売り抑え取引円滑化狙う

日銀、国債補完供給の品貸料引き上げ 空売り抑え取引円滑化狙う
https://jp.reuters.com/article/boj-10-year-idJPKBN2UQ0JW

 ※ 今日は、こんな所で…。

 ※ 直接には、コレが「引き金」だろう…。

 ※ まあ、「天下の日銀様」に逆らって、無事でいられるヘッジファンドは、いないと思うが…。

 ※ そもそも、「他国の通貨」に「空売り」仕掛けて、儲けようとか、「フテー話し」だ…。

 ※ 返り討ちにあって、「いい気味」だ…。

 ※ 全く、同情する気には、ならんな…。

 ※ ちょっと説明を、加えておく…。

 ※ 日本国債の「空売り」を仕掛けようにも、かたっぱしから「日銀様」が「買い上げて」しまわれるんで、「市場に」「タマ」自体が出回らない状況になっている…。

 ※ そこで、「編み出した」のが、「賃貸料」を支払って、「国債の入札」に参加している「国内の金融機関勢」から、「借りる」という手法だ…。

 ※ 「借りて」「空売り(先行き、売りポジションを取る)」するというわけだな…。
 ※ しかーし、「日銀様」が「お怒り」になられて、その「借りる際の賃料」を引き上げることにするという「お達し」を、発令されたのじゃー…。

 ※ それで、空売りのコストが、「利益」に見合わなくなって、投げ売り・撤退するヘッジファンドが続出し、「がん首並べて」討ち取られ―…。

 ※ 大体、そーゆー話し…。

『2023年2月16日5:30 午後Updated 3ヶ月前

[東京 16日 ロイター] – 日銀は16日、10年物国債のカレント3銘柄のうち、レポ市場で長期にわたり需給が逼迫する懸念がある銘柄を対象に、国債補完供給における最低品貸料を引き上げると発表した。日銀は国債補完供給が本来の制度趣旨から外れて利用が膨らみ、空売り圧力が高まっていることを懸念。国債補完供給の使い勝手を悪くすることで空売り圧力を抑え、円滑な市場取引の確保を目指す。

2月16日、日銀は10年物国債のカレント3銘柄のうち、レポ市場で長期にわたり需給が逼迫する懸念がある銘柄を対象に、国債補完供給について最低品貸料を見直すと発表した。写真は2013年2月、都内で撮影(2023年 ロイター/Shohei Miyano)

最低品貸料を従来の0.25%から原則として1.0%に引き上げる。2月27日以降のオペに適用する。同措置を講じる銘柄については、特に必要と認める場合、銘柄別の売却上限額を「日銀の保有残高の100%」から引き下げる。売却上限額を引き下げた銘柄については、原則として午後の国債補完供給のオファーを行わない。

また、これらの措置を講じる銘柄については、国債市場における利回り水準が0.5%に達しないと見込まれる場合には、連続指し値オペの対象としないことがあり得るとした。

<日銀、国債補完供給の利用で「大規模な空売り」懸念>

国債補完供給は本来、市場の流動性を確保する観点から国債を一時的かつ補完的に供給するものだが、日銀の国債買い入れで流動性が落ちる中、足元では10年物カレント銘柄の一部で利用が膨らんでいた。16日の国債補完供給オペでは、カレント銘柄の367回債で1兆2553億円、368回債で8082億円の利用があった。

大和総研・金融調査部の中村文香研究員は「国債補完供給オペが使いやすいために国債の空売りがしやすくなり、そうすると金利上昇圧力が高まって日銀がまた買い入れなければならないという悪循環に陥っていた」と指摘。今回の最低品貸料の引き上げはこうした悪循環を断つことを狙ったものだと話す。

日銀は「国債補完供給を長期にわたって継続的に利用することを前提とした大規模な空売りが見受けられている」と指摘。「こうした空売りの買い手となった市場参加者が連続指し値オペに応札することで、一部の対象銘柄についてSCレポ市場(特定銘柄取引)における需給が長期にわたり著しく引き締まる懸念が生じる状況となっている」とした。

その上で、今回の一連の措置を通じ「国債補完供給の趣旨に即した利用を促すことで市場取引の円滑を確保し、金融市場調節のいっそうの円滑化を図る」とコメントした。

野村証券のチーフ金利ストラテジスト、中島武信氏は最低品貸料の引き上げについて「日銀から国債補完供給で国債を借りてショートするのを難しくするだろう」と指摘。連続指し値オペはカレント3銘柄を対象としているため、現在、日銀は0.5%以下の銘柄も買わなければならないが「その必要がなくなれば、流動性も向上すると期待される」との見方を示している。

もっとも、引き上げ後の最低品貸料は、制度の「悪用」防止と流動性維持のバランスを保つ観点から微妙な判断になった可能性がある。大和総研の中村氏は原則1.0%の最低品貸料について「様子を見ながら変更する可能性もある」と話す。

(伊賀大記、和田崇彦 編集:石田仁志)』

日本という特殊な条件を考えずに仕掛けた海外ヘッジファンドの空売り全滅

日本という特殊な条件を考えずに仕掛けた海外ヘッジファンドの空売り全滅
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/31486082.html

『最後の抵抗を示していた日本国債に空売りを仕掛けていた海外ヘッジファンドが、ほぼ壊滅した模様です。損を確定して、市場から撤退を始めましたね。他人事ながら、以前の日銀砲が発動した時のように、多数の投資家の皆様の命が失われる事が無いように願っています。仕掛けた事の結果は、必ず引き受けさせられますので、投資で敗れた時の末路は悲惨です。

海外のヘッジファンドの日本国債空売りの根拠になっていたのは、次のような理屈です。日本の高い財政赤字と巨額の国債残高、および長期的なデフレ圧力により、日本国債の価格が下落し、金利が上昇するとの見方です。日本政府が国債の利払い負担に耐えられなくなり、インフレが加速し、日本円が大幅に下落すると予測していました。この理屈は、間違っていないし、大抵の国には当てはまります。しかし、その国の財政というのは、一律ではありません。日本には、日本固有の状況がありました。

それは、日本の国債の殆どを買い占めていたのは、他ならぬ日銀だったという事です。余りにも利率が低い為に、外国には人気が無く、投資の対象とは見なされていませんでした。なので、通貨発行権を持つ日銀が、買い取っていたわけです。それを、「一般的な」国家財政の理屈で、いつか限界を迎えると踏んで、空売りを仕掛けていたのが、海外のヘッジファンド勢です。通常、国の発行した国債は、アメリカ国債のように、外国の投資家もバリバリ買います。注意しないといけないのは、国債の金利が高い国ほど、財政破綻してディフォルトする可能性が高いという事です。ヨーロッパだと、イタリアとかギリシャとかですね。この前、破綻したクレディスイスなんかは、苦しい経営を支える為に、この辺りの金利の高い国債を、ガンガンと買っていました。

空売りを仕掛けるには、まず、その時のレートで日本国債を借りてくる必要があります。そして、約定日に、その時のレートで買い戻す義務があります。その時に日本国債の価格が下落していれば、利益になり、上昇していれば損になります。ところが、日本の国債価格は、日銀にガッチリと管理され続けた上に、殆どを発行元の日銀が買い占めていたので、約定日になっても買い戻す為の日本国債がどこにも無いという、極めて異例の状態が発生しました。既に、日本の銀行や生保が所有していた日本国債は、殆ど手数利用を払って借りてきていたので、買戻しができない状態です。それゆえ、罰金を支払って、手打ちにするか、日銀に高い金利を払って(直接ではない。間に証券会社が挟まるが、便宜的にこういう表現にしました)買い戻すしかなくなり、殆どの場合市場で損失を出した上に、高い金利を支払って退場という悲惨な結末を迎えています。

債権の場合、株式と違って、大量保有した場合に、それを公示する義務が無いので、具体的に誰が、どれだけ損をしたかは不明ですし、厳密に言うと、実際に大損があったかどうかも、ヘッジファンド側の発表が無い限り不明なのですが、諸所の状況を見ると、まず間違い無いはずです。日銀の国債の保有比率が高い事は、度々批判の的になってきました。市場の健全性から見ると、まったく「ごもっとも」であり、実に不健全な状態であった事は確かです。しかし、事、海外ヘッジファンドの日本国債の空売り攻撃に関しては、鉄壁の防波堤として機能しました。理由は、国債を発行するのも、金利を設定して貸し出すのも、胴元が日銀だからです。つまり、好きにコントロールできます。こんな賭場で、勝てる博徒は存在しません。無理に張り込めば、スッテンテンにされて退場するしか道がありません。

海外ヘッジファンドの読みは、大方の国家に対しては、有効なものですが、日本の特殊事情に関して言えば、間違いだったのです。まぁ、その特殊事情も、決して自慢できるようなものでは無いのですが、他に類例が無い為、とても「一般的」な考えで、市場に介入してしまったのが運の尽きです。今回も、討ち死に状態で、日銀の前に敗退した事になります。

ちなみに、この考え方も、1つの見解に過ぎず、全てのデータが公開されていない以上、予測の域を出ない事は、申し添えておきます。特に債権は、「判った気になる」のが一番危険です。世界の市場において、最大の規模を誇るのは、為替でも株式でもなく、債権市場なのですから、簡単な言葉で全てが説明できるわけでも、理解できるわけでもありません。そのことは、くれぐれも、ご理解下さい。』

【中国ウオッチ】元閣僚級らがまたも急死 習政権3期目も反腐敗厳しく

【中国ウオッチ】元閣僚級らがまたも急死 習政権3期目も反腐敗厳しく
https://www.jiji.com/jc/v8?id=2023-04-28-chinawatch

『2023年04月28日13時00分

中国で元閣僚級高官と次官級の現職幹部が同じ日に急死した。いずれも「不幸な他界」とされているが、実際には汚職捜査の対象になったことを苦にして自殺したとみられる。習近平国家主席(共産党総書記)が続投を目指していた昨年春から夏にかけて高官の自殺が相次いだが、習政権が3期目に入ってからも「反腐敗闘争」を口実とする党内の粛清は続いているようだ。(時事通信解説委員 西村哲也)

後任の李強首相と明暗

 上海市に隣接し、南京市を省都とする江蘇省は、域内総生産(GDP)が広東省に次ぐ全国2位で、これまで多くの中央指導者を輩出してきた。そのトップである省党委員会書記(閣僚級)を2010~16年に務めた羅志軍氏が4月1日、病気のため「不幸にも他界した」という訃報が翌2日に伝えられた。

 また、西南地方に位置する重慶市両江新区党工作委の張鴻星書記(次官級)も1日、「不幸にも他界した」ことが2日公表された。

 訃報に「死去」でなく、「不幸な他界」を使うのは自殺で、反腐敗を主導する党規律検査委の標的になったことを察知して自ら命を絶ったケースが多い。

 羅氏は江蘇省党委書記として李強氏(現首相)の前任者だったが、それ以上出世できずに第一線を退いて最後は自殺。李氏は習主席の側近として政権ナンバー2に昇進と極端に明暗が分かれた。

 羅氏は、胡錦濤前国家主席や李克強前首相、李源潮元国家副主席と同じく共産主義青年団(共青団)の元幹部。江蘇省党委書記だった李源潮氏の部下として重用されたが、習政権になると、共青団派は徐々に衰え、羅氏は同省を離れた後、全国人民代表大会(全人代=国会)や人民政治協商会議(政協)の名誉職を歴任した。李源潮氏は失脚説が何度も流れ、17年に早期引退。19年には羅氏の元秘書が服毒自殺していた。

 羅氏については、反腐敗闘争で打倒された江沢民元国家主席派の大幹部、周永康氏(元党中央政法委書記)や薄熙来氏(元重慶市党委書記)の権力奪取計画に関わっていたとのうわさもあった。共青団派にせよ、周元書記らのグループにせよ、習氏の政敵であることに変わりはない。

 一方、習氏がかつて勤務した浙江省の人脈に連なる李強氏は、江蘇省から上海市党委書記(党政治局員)に転じて、中央指導部入り。同市で習路線のゼロコロナ政策を断行した「功績」により、昨秋の第20回党大会と今春の全人代で党政治局常務委員・首相に大抜てきされた。

執念深く非主流派排除

 重慶市の張氏は、昨年まで副省長(副知事に相当)などの要職を歴任した江西省での反腐敗に引っかかったようだ。張氏は江西省時代に撫州市党委書記を務めたが、その前任だった肖毅氏は21年、反腐敗で失脚。一部の中国メディアから、元江西省党委書記、政協副主席で江派の有力幹部だった蘇栄氏(14年失脚)との関係を指摘された。同省では近年、その他にも多くの高官が同様に粛清されている。

 蘇氏の問題から芋づる式に肖氏、張氏らを摘発したとすると、9年にわたって江西省の江派人脈を調べていることになる。

 改革・開放の最先進地区として知られる深圳市(広東省)でも、4月7日に元局長級幹部が「転落死」した。地元メディアによると、死亡したのは同市政府の副秘書長だった盛斌氏。20日になって、ようやく訃報が伝えられた。盛氏は14年に早期引退していた。

 盛氏の上司だった陳応春氏(元深圳市副市長)も16年に転落死している。陳氏は、江元主席の腹心で同市トップ(市党委書記)だった黄麗満氏に近かった。黄氏も一時、失脚説が流れたが、江氏がかばったのか、結局、無傷だった。

 なお、盛氏が転落死したマンションは、日本企業駐在員など外国人居住者が多い深圳市南山区に位置する。1戸当たりの価格は日本円で3億~6億円である。

 これらの事例から、権力独占を追求する習派がいかに執念深く非主流派を排除しているのかが分かる。習氏は総書記・国家主席として異例の3期目入りを果たしたが、4期目もしくは終身制を実現するため、反腐敗闘争による党内の粛清を継続していくとみられる。
(2023年4月28日掲載)』

強制労働で「利益得るな」 ウイグル巡り独VWに抗議―株主総会

強制労働で「利益得るな」 ウイグル巡り独VWに抗議―株主総会
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023051100217&g=int

『【ベルリン時事】10日に開かれたドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の株主総会で、中国・新疆ウイグル自治区での強制労働問題を巡る抗議活動により、議事が一時中断するなどの混乱が起きた。独メディアが伝えた。抗議に加わった在外ウイグル人組織「世界ウイグル会議」は「VWがウイグル人虐殺から利益を得ないよう直ちに行動を求める」と訴えた。

中国警察、新疆で携帯電話監視 コーラン保存も危険視か―人権団体

 経済紙ハンデルスブラットによると、会場内や周辺に環境活動家を含む複数の抗議団体が集結。経営側の説明中にケーキを投げ付けたり、「ウイグル人の強制労働をやめろ」と書かれた幕を掲げたりして、会場から排除される人もいた。

 VWは、中国企業との合弁会社が操業する新疆ウイグル自治区のウルムチ工場では、2月時点で41人のウイグル人が雇用され、人権侵害などの問題は見られなかったと説明。一方、世界ウイグル会議は、同工場の複数の取引先が中国政府による強制労働に関与したと主張している。 』

ロシア飛び地の名称変更 否定的感情を喚起―ポーランド

ロシア飛び地の名称変更 否定的感情を喚起―ポーランド
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023051100634&g=int

『【ワルシャワAFP時事】ポーランドとリトアニアに挟まれたロシアの飛び地カリーニングラードについて、ポーランド政府は従来のロシア語名で呼ぶのをやめ、母国語に基づき「クルレビエツ」へ変更することを決めた。ブダ開発・技術相が10日の声明で明らかにし、「われわれはポーランドにおけるロシア化を望まない」と強調した。

リトアニア、対ロ警戒消えず NATOの「アキレスけん」―不安広がる国境の町

 新名称は公式文書や地図で使用される。これに対し、ロシアのペスコフ大統領報道官は「敵対的な行動だ」と反発した。
 カリーニングラードは1946年、ソ連が自国の革命家カリーニンにちなんで名付けた。ブダ氏は、カリーニンはソ連のポーランド侵攻で多数の将兵らが虐殺された40年の「カチンの森事件」に関与した犯罪者だと指摘。ポーランドでは「否定的感情を呼び起こす」と指摘した。 』

リトアニア=ポーランド国境
https://wordpress.com/posts/http476386114.com?s=%E5%9B%9E%E5%BB%8A

『※ NATOの防衛線の「アキレス腱」と言われているポイントだ…。

※ 「スヴァウキ・ギャップ」と呼ばれ、関係者間においては「知らぬ者とて無い」有名ポイントらしい…。

※ 地図を見れば分かるが、ロシア・ベラルーシ連合軍で侵攻された場合、「防衛する」のは、「困難しごく」だ…。

※ それで、「戦術核」使う他ない…、などという話しも登場するわけだ…。』

ミェンズィモジェ(※ ラテン語で「海洋間の」という意味のインテルマリウム(羅: Intermarium)という名前でも呼ばれている。 )
https://wordpress.com/posts/http476386114.com?s=%E5%9B%9E%E5%BB%8A

日本の安保関連三文書後の多国間協力のあり方

日本の安保関連三文書後の多国間協力のあり方
https://www.spf.org/iina/articles/nagashima_15.html

『日本の安保関連三文書後の多国間協力のあり方
− 新領域、先進技術協力、サプライチェーンをめぐる欧州諸国とのパートナーシップ強化を考える −

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日本の安保関連三文書後の多国間協力のあり方
− 新領域、先進技術協力、サプライチェーンをめぐる欧州諸国とのパートナーシップ強化を考える −
サイバー・軍事・地政学 外交・防衛協力

一般社団法人 日本宇宙安全保障研究所 理事
長島 純
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 2022年12月16日、日本政府は、新たな国家安全保障戦略、国家防衛戦略及び防衛力整備計画の3つの文書の閣議決定を行った。それは、日本が、ロシアによるウクライナ侵攻に象徴される武力による一方的な現状変更の試み、北朝鮮や中国による核・ミサイル能力の強化など、歴史的な安全保障環境の転換点を迎えて、より具体的で実践的な安全保障体制の強化を決意したことを意味する。そして、同日行われた記者会見において、岸田総理は、新たに強化すべき能力として、宇宙・サイバー・電磁波等の新たな領域(新領域)への対応能力、経空脅威に対する反撃能力、中国の脅威を意識した南西地域の防衛能力に言及した[1]。本稿においては、それらの新たな防衛能力の実現を加速化するための方策として、これまで日米同盟に比して後れを取ってきたと見られる多国間協力をいかに進化させてゆくのか、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけとして安全保障面での一体性をより高める欧州とのパートナーシップを例として考察する。

新領域への対応:ハイブリッド脅威に対するパートナーシップの構築

 2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻において、米国および北大西洋条約機構(NATO)をはじめとした西側諸国は、ウクライナ向け包括的支援パッケージ(the Comprehensive Assistance Package for Ukraine)に象徴されるパートナーシップに基づく直接、間接の軍事的な技術支援を通じて、その攻撃の影響を緩和することに成功した。それは、対ハイブリッド(複合混成型)作戦[2]に資するサイバー防御や商用衛星画像の提供など、新領域に係る多国間協力が、ロシアによるハイブリッド攻撃の影響を弱めることに寄与したことに他ならない。今後、東アジアにおいても、中国による台湾併合の試みなどの事態に連動して、第三国へのハイブリッド攻撃が予想される中で、日本は、それら攻撃による軍事、民生双方への影響を局限すべく、日米同盟に基づく二国間の協力態勢に加えて[3]、パートナーシップに基づく多国間の連携、協力を重視した対応が求められることになろう。

 日本をグローバル・パートナー(Global Partner)と位置づける北大西洋条約機構(NATO)は、2014年以降、サイバー空間や宇宙空間を軍事的な作戦領域と定義し、そこでの重大な攻撃が北大西洋条約の集団安全保障条項(第5条)を発動する要件になり得ると合意している。また、非軍事的な領域も含めた欧州の安全保障への取組を強化する欧州連合(EU)においても、サイバー攻撃や偽情報などを欧州の安定に対する実存的な脅威として捉える中で、ハイブリッド脅威に関わる独立した中核的研究機関(Center of Excellence : COE)を設立するなど、欧州として一体となった防衛態勢の整備を進めている[4]。日本も、2022年2月に策定された防衛力整備計画において、新領域における対処能力を強化することを明らかにしており、更に、横断的な対処態勢を構築しつつある欧州諸国との実践的なパートナーシップを強化する基盤は整っている。

反撃能力の基盤:経空脅威の抑止と対処に求められる先進技術協力

 敵の射程圏外からミサイルを発射する「スタンド・オフ防衛能力」は反撃能力の一つであり、その能力は統合防空ミサイル防衛(Integrated Air and Missile Defense : IAMD)の重要な構成要素に他ならない。現在、IAMDが対処すべき経空脅威においては、①ミサイルの長射程化、②複数個別誘導再突入体(MIRV)・機動再突入体(MaRV)化された弾頭、③迎撃することが難しい変則的な飛翔軌道、これらに加えて運用面での④発射形態(固定式発射台、輸送起立発射機(TEL)、潜水艦)の多様化による奇襲攻撃、⑤同時発射能力による飽和攻撃の多用など、急速な進化を遂げ、多様性を増しつつある。

 これらの脅威の変化を受けて、日本でも、発射される前段階としての、いわゆる「発射の左側(Left of Launch)」[5]における脅威の破壊、または無力化の重要性が強く意識されるようになった。その実現に向けて、攻撃目標の設定(ターゲティング)に係る包括的なインテリジェンス能力の向上や、組織的な反撃のための指揮統制(C2)システムの整備が喫緊の課題となっている。更に、その整備は一朝一夕には実現できないものの、地上における弾道ミサイル等の状況を可視化するための画像認識、リモートセンシング技術、更には、その脅威分析を速やかに実施するための人工知能(AI)、量子計算、自律機能などの新興・破壊的技術(Emerging and Disruptive Technologies : EDTs)のIAMDシステムへの実装化を、可及的速やかに推し進める必要がある。

 また、地上発射型のイージス・アショア−を中核としたBMD体制を有するNATOも、このような経空脅威の急速な進化に対して、弾道ミサイル等が発射された後の「発射の右側(Right of Launch)」における迎撃対処の難しさに直面しつつあり、新たなIAMDの構築に向かうことになろう。近年の技術革新の急速な進展による軍事技術と民生技術のボーダレス化の中で、軍事技術にも応用し得る先進的なデュアルユース技術を基盤とするEDTsは、進化を続ける経空脅威を抑止、対処するための重要な鍵を握ることになる。それは、日本が、EDTs に係る協力、連携体制の構築を通じて、脅威を共有する欧州諸国とのパートナーシップをより一層前進させる必然的な理由となろう。

南西防衛能力の強化:パートナー国との軍事サプライチェーンの強化

 今回のロシアによるウクライナ侵攻の教訓として、武力衝突が長期化する中において、継戦能力の確保が大きな課題となっている。事実、欧米では、ウクライナへの戦車や大砲のような正面装備品の供与に係る政治判断以上に、戦場における弾薬やミサイルの大規模な消耗によって引き起こされる兵站備蓄の減少は、支援国における深刻な国防上の問題を引き起こした。これは、第二次大戦以降、国家間の戦争を経験することのなかった西側の防衛産業が物理的な製造能力の限界を露呈しただけでなく、ミサイルなどの弾薬等にも半導体などの技術集約型の部品が組み込まれる流れの中で、近代的な装備品の生産、補給における脆弱性が浮き彫りになったことを意味する。そして、NATOは、この状況に対して、加盟国が弾薬やミサイルの共通化や標準化を促進することに加えて、加盟国間のサプライチェーンを調整することで、それらの余剰備蓄や増産分を同盟内で融通し合うシステムの構築の検討を始めている[6]。これは、有事の際に、西側諸国内における弾薬、整備、補給、物品等のサプライチェーンを安全に確保し、有志国間での相互補完性を確保するための欧州の知恵とも言える。

 日本も、南西地域や島嶼部において、武力による現状変更を図る事態が生起し、それが長期化することとなった場合に、後方補給や作戦支援の点で万全の態勢が構築されているとは言えない状況にある。その場合、NATOが検討する後方支援上の新たな取り組みを参考にして、豪州、ニュージーランド(NZ)、韓国などのパートナー諸国と共に、弾薬や装備品の共通化を推進し、有事を想定したサプライチェーンの強靭化を図るような柔軟な発想が求められることになろう。また、今後の欧州との安全保障協力の機会が増加することを念頭に、事前に、半導体や弾薬など軍事面での相互運用性を向上すべく、欧州諸国とのサプライチェーンを整備しておくことが望まれるところでもある。

 但し、日本におけるサプライチェーン再構築に係る戦略的な取り組みは、日本の防衛のために必要不可欠で緊急性を要する重要課題であることから、民間防衛産業の責任によって行われることは避けるべきであり、政府が、政治、外交、経済的側面から、パートナー諸国の防衛産業コミュニティとの協力基盤を主導的に整備することで実現されるべきであろう。

おわりに

 2023年1月のストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)事務総長の訪日時には、新領域における協力の進化と共に、新たな協力文書である国別適合パートナーシップ計画(ITPP)の策定に向けた進展が確認されるなど、日本とNATOの戦略的かつ実践的な関係強化が確認された[7]。既に、2022年に改訂された「戦略概念(Strategic Concept)」[8]において、NATOは、①抑止力と防衛力の更なる強化、②明確な脅威としてのロシアに加え、野心的な中国への警戒、③新領域等におけるパートナー国や機関との関係強化を同盟の重点項目として挙げており、それらは、今回、安保関連三文書に示された日本の安全保障政策の方向性と軌を一にしていると考える。その背景には、2022年6月、岸田総理がNATO首脳会合に参加し、豪州、NZ、韓国と共にアジア太平洋パートナー(AP4)として、日本が欧州における安全保障上のプレゼンスを高めた成果があり、欧州側の期待の大きさも伺うことができる[9]。日本としては、グローバルな安全保障態勢の構築を念頭に、安保関連三文書に示された数々の課題を克服すべく、日米同盟に加えて、欧州諸国とのパートナシップを新たな軸とする安全保障態勢を戦略的に推進してゆくことが求められている。

(2023/3/8)

脚注

1 首相官邸「岸田内閣総理大臣記者会見」2022年12月16日。
2 対象国の情勢を不安定化し、その社会システムを脆弱化させた上で、軍事作戦を、短期間かつ低コストで終わらせることを目的とする、サイバー攻撃、欺瞞、妨害行為、偽情報の流布等の非軍事的攻撃と物理的な軍事攻撃を組み合わせた戦い方を指す。
3 同盟国である米国は、国防戦略の中核をなす統合抑止において、シームレスに(境目なく)統合された戦闘領域での戦いを重視するとしており、2011年以降、新領域における日本との協調的な協力の必要性を確認している。外務省「日米安全保障協議委員会(日米「2+2」)」2011年6月21日。
4 Hybrid CoE , “ Hybrid CoE – The European Centre of Excellence for Countering Hybrid Threats, ” March 21,2022.
5 ミサイル攻撃の流れを発射から弾着までを時系列に並べた場合、発射される前の段階は、時系列上、発射時期の左に位置づけられることから、「発射の左側」と呼ばれる。
6 NATO, “NATO Secretary General in Ramstein: we must urgently step up support for Ukraine,” January 2023.
7 NATO, “Joint Statement: Issued on the occasion of the meeting between H.E. Mr Jens Stoltenberg, NATO Secretary General and H.E. Mr Kishida Fumio, Prime Minister of Japan,” January 31, 2023.
8 NATO, ” STRATEGIC CONCEPT – NATO,” June 29, 2022.
9 外務省「NATOアジア太平洋パートナー(AP4)首脳会合」2022年6月29日。 』

NATO事務総長「東京拠点新設」表明 日韓豪と連携

NATO事務総長「東京拠点新設」表明 日韓豪と連携
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR10EG60Q3A510C2000000/

『【ブリュッセル=辻隆史】北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は10日の米CNNのインタビューで、東京に連絡事務所を新設するために日本政府と協議していると明らかにした。中国への対応を念頭に、インド太平洋地域への関与を強める考えを示した。

日本とNATOは2024年中の事務所設置に向けて調整している。ストルテンベルグ氏は「日本はNATOにとって非常に緊密で重要なパートナーだ」と述べ…

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『ストルテンベルグ氏は「日本はNATOにとって非常に緊密で重要なパートナーだ」と述べた。

日本に加え、韓国、オーストラリア、ニュージーランドとの連携を広げる重要性を改めて強調した。東京の事務所をその足がかりとする。

NATOは中国を「体制上の挑戦」と位置づける。NATO幹部は中国が近年、インターネット上のサイバー攻撃や偽情報の拡散に深く関わっていると危機感を強めている。地理的な制約のないサイバー攻撃などは、欧州を中心に部隊を展開する軍事同盟にも重大なリスクとなるとみる。

ストルテンベルグ氏は「安全保障はもはや地域的ではなくグローバルな問題だ」と訴えた。NATOは日本などの非加盟国と新たな協力計画をつくる作業を進めている。サイバーや偽情報、宇宙といった安全保障の新領域で具体的な協調策を練る。

同氏はウクライナ侵攻を続けるロシアと中国の協力関係にも警戒感をあらわにした。「ウクライナで何が起こるかは、中国が例えば台湾に関してめぐらせている算段に実際に重要だ」とも指摘した。ロシアが勝利した場合は、中国が台湾に対してより強硬な対応にでかねないと分析した。

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・日本とNATO、対中国で定例協議 東京に連絡事務所

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益尾知佐子のアバター
益尾知佐子
九州大学大学院比較社会文化研究院 教授
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分析・考察 ロシア=ウクライナ戦争を経ての変化です。中ロ両国は戦争開始前から反米で合致してはいたのですが、今年3月の共同声明でさらに踏み込み、他国の主権や安全保障を守らないのはNATOだ、と「ルールに基づく秩序」を掲げる勢力への対抗姿勢を明確にしました(ウクライナに侵攻しているのはロシアなのに)。
今、世界は明らかに流動期に入り、どの国も新秩序の中で不利にならないよう競争しているわけですが、だんだんと新秩序の構造が定まってきたようです。シンプルに言えば、それは2つの中心(自由主義先進国と中ロ)を持つ楕円型になるのでしょう。アジアとヨーロッパの安全保障は、この構造の中で一体性を強めています。
2023年5月11日 9:02 (2023年5月11日 9:03更新)
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渡部恒雄のアバター
渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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ひとこと解説 NATOと日本を筆頭とするアジア太平洋のパートナー国との安全保障協力は、これまでも着実に進展してきました。サイバー空間や偽情報、そして宇宙などの新領域での安全保障の脅威が深刻化してきたこと、さらには先進技術とサプライチェーン協力など、地理的には遠い両者が協力すべき分野が拡大してきたことが背景にあります。それに加えて、ロシアと中国という地政学的なライバルの連携の動きが、NATOが東京に拠点を構え、インド太平洋のパートナーとの連携の緊密化を図る後押ししたと思われます。航空自衛官としてベルギー防衛駐在官(兼NATO連絡官)を歴任した長島純さんの以下の論考が参考になると思います。
https://www.spf.org/iina/articles/nagashima_15.html
2023年5月11日 8:06 』

シリアにおける米国の軍事介入と部隊駐留の変遷(2011~2021年)

シリアにおける米国の軍事介入と部隊駐留の変遷(2011~2021年)
https://cmeps-j.net/cmeps-j-reports/cmeps-j_report_65

『CMEPS-J Report No. 65(2022年9月1日作成)

青山 弘之(東京外国語大学・教授)

*本稿は『国際情勢』第92号(2022年3月、pp. 97-119)所収論文を再録したものです。
目次

1 軍事介入への消極姿勢(2011~2014年)
2 「穏健な反体制派」支援(2015年1月~10月)
3 新シリア軍:55キロ地帯の確保(2016年3月~2017年10月)
4 PYD支援とユーフラテス川以東地域への派兵(2014年10月~2019年10月)
5 トランプ大統領の撤退決定(およびその撤回)に伴う再展開(2019年10月~2020年末)
6 頻発する米軍への攻撃(2021年)
7 基地概要一覧(資料)

参考文献

米国のジョー・バイデン政権は2021年8月31日、20年間にわたってアフガニスタンに派遣していた部隊の撤退完了を宣言した。また同年12月9日には、米国防総省報道官が約2,500人からなる部隊のイラクにおける駐留を維持しつつ、同国での戦闘任務を終了したと発表した。これに対し、シリア駐留部隊をめぐっては、今のところ撤退や規模縮小に向けた動きは見られない。

本論は、シリア内戦発生以降の米国のシリアへの軍事介入と部隊駐留の経緯と変遷を、公開情報をもとに明らかにする。

1 軍事介入への消極姿勢(2011~2014年)

米国は、2011年3月に「アラブの春」がシリアに波及すると、人道に基づいてシリア政府による抗議デモ弾圧を厳しく非難し、その正統性を否定、退陣を迫った。バラク・オバマ政権は、西欧諸国、アラブ湾岸諸国、トルコとともにシリアに経済制裁を科し、政府の弱体化を狙うとともに、反体制活動家や政治組織、さらには武装集団を支援した。中央情報局(CIA)は2013年初め頃から、英国、フランス、ヨルダン、サウジアラビアの軍・諜報機関とともに「軍事作戦司令部」(Military Operations Command:通称MOC)を創設し、ヨルダン国内で反体制派に極秘軍事教練を行う一方、国内(ダルアー県、イドリブ県、アレッポ県)で活動する南部軍、イッザ軍、ナスル軍、ヌールッディーン・ザンキー運動といった武装集団を後援した[1]。

だが、イラクからの部隊撤退(2011年2月)を敢行したばかりのオバマ政権は、シリア政府を瓦解させるような直接的な軍事行動に訴えることはなかった。反体制派は、「保護する責任」を根拠とした欧州連合(EU)によるリビアへの軍事介入に倣って、シリアでも軍事力を行使し、体制転換を行うよう訴えたものの、米国がこれに応じることはなかった。

米国の軍事介入への消極姿勢は、2013年8月にダマスカス郊外県グータ地方で化学兵器攻撃疑惑事件が発生した時の対応にも示されていた。米国は、英国、フランスとともに、シリアへの軍事介入を画策したが、その目的は、体制打倒や民主化ではなく、化学兵器使用への懲罰に矮小化された。しかも、シリア政府がロシアの後押しのもと、化学兵器の保有(使用ではない)を認め、化学兵器禁止条約(CWC)に加盟すると、米国は攻撃そのものを中止した。
2 「穏健な反体制派」支援(2015年1月~10月)

イスラーム国の台頭は、米国の消極姿勢に変化をもたらした。2014年6月に、シリアとイラクで支配地を拡大したイスラーム国がカリフ制の樹立を宣言すると、米国は同年8月に有志連合(正式名は「生来の決意」作戦合同任務部隊(CJTF-OIR(Combined Joint Task Force – Operation Inherent Resolve))を結成し、「テロとの戦い」を主導した。

米国の軍事介入は当初は航空作戦に限定され、地上での戦闘は「協力部隊」(partner forces)が担った。イラクでは、イラク軍・治安部隊、ペシュメルガ(イラク・クルディスタン地域政府傘下の民兵)が有志連合の航空支援を受けた。一方、2014年9月に爆撃が開始されたシリアでは、頼ることができる有力な武装勢力は存在しなかった。同地では、シリア軍がロシアやイランとともに「テロとの戦い」を推し進めていたが、シリア政府の正統性を否定する米国がこれらと連携できるはずもなかった。国内で活動する反体制武装集団も、その多くがシャームの民のヌスラ戦線(現在のシャーム解放機構)をはじめとするアル=カーイダ系組織、さらにはイスラーム国との合従連衡を躊躇しなかったため、共闘することはできなかった。

事態に対処するため、米国は「協力部隊」の育成をめざした。これは「穏健な反体制派」(moderate opposition)支援というかたちをとった。「穏健な反体制派」とは、「自由」や「尊厳」を掲げて体制打倒と「シリア革命」の成就をめざし、欧米諸国に親和的な武装集団(そして活動家、政治組織)を指していた。アル=カーイダ系組織を含むイスラーム過激派が反体制派を主導するなか、「穏健な反体制派」は実体を欠いていたが、米国は、イスラーム国が台頭するなかで、この言葉を「テロとの戦い」における「協力部隊」という意味で用い、実際に支援を行っていった。

だが、その前途は多難だった。米国防総省は2015年1月、3年間で「穏健な反体制派」15,000人をトルコなどの周辺国で教練すると発表し、5億米ドルの予算を確保した。しかし、教練の対象となる志願者の人選は延々として進まず、しかも米軍のスクリーニングを通過した教練生の多くが、途中でリタイアし、逃亡した。シリア軍と戦闘しない旨を誓約するよう米国に迫られ、教練を拒否した者もいた。教練プログラムを修了したシリア人の正確な数は公表されなかったが、国防総省報道官が6月に述べたところによると、100~200人に過ぎなかった。

それだけではなかった。教練後に部隊として編成された「穏健な反体制派」は、イスラーム国と対峙する以前に幾多の困難に直面した。彼らは「第30歩兵師団」を名のり、2015年7月に一次隊がトルコからシリア北西部(アレッポ県アアザーズ市一帯)の反体制派支配地に入った。だが、有志連合が航空支援の一環として同地を爆撃すると、ヌスラ戦線はその報復として第30歩兵師団を襲撃、司令官らを拉致し、武器弾薬を奪った。また、9月下旬にシリア入りした二次隊も、入国直後に身の安全を確保するという理由で、ヌスラ戦線に武器弾薬を譲渡し、メンバーは逃亡した。こうした事態を前に、国防総省は10月、教練プログラムが「重大な欠陥」を有していたと認め、廃止を決定した。

3 新シリア軍:55キロ地帯の確保(2016年3月~2017年10月)

だが、米国はほどなくヨルダンで「穏健な反体制派」への教練を再開し、2015年11月、「新シリア軍」の名で新たな武装組織を編成、2016年3月にイラクとヨルダンとの国境に近いシリア南東部に派遣した。新シリア軍は、ヌスラ戦線やシャーム自由人イスラーム運動といったアル=カーイダ系組織と共闘関係にあったアサーラ・ワ・タンミヤ戦線、殉教者アフマド・アブドゥー軍団といった集団からなっていた(青山[2016])。

シリア南東部では、2015年3月22日にイスラーム国がタンフ国境通行所をシリア政府から奪取していた。新シリア軍は、有志連合とともにヨルダンからシリア領内に進攻し、2016年3月5日にこれを制圧した。制圧されたタンフ国境通行所には、米軍が基地を設置し、部隊を常駐させた。その数は200人とされた(Mitchell[2019])。米軍はまた、タンフ国境通行所の北東に位置するザクフ地区にも前哨地を設置した(al-Ḥāmid[2017])。さらに、2016年5月には、英軍が同地に技術者など約50人からなる部隊を派遣した(Aljazeera.net[2016])。

なお、新シリア軍は2016年8月にアサーラ・ワ・タンミヤ戦線が支援国との「方針の違い」を理由に組織を離反したことで瓦解した。だが、その後も、殉教者アフマド・アブドゥー軍団や、革命特殊任務軍、カルヤタイン殉教者、東部獅子軍といった組織がタンフ国境通行所の基地を利用し、同地のキャンプで米英軍の教練を受けた(Tasnim News Agency[2016])。

タンフ国境通行所一帯は、2017年半ばにシリア軍と「イランの民兵」が進攻を試みたが、米軍がその車列や拠点に爆撃を加えて阻止した。「イランの民兵」とは、シーア派宗徒とその居住地や聖地を防衛するとして、イランの支援を受けてシリアに集結し、シリア・ロシア両軍と共闘した外国人(非シリア人)民兵の総称である。イラン・イスラーム革命防衛隊、その精鋭部隊であるゴドス軍団、レバノンのヒズブッラー、イラクの人民動員隊、アフガニスタン人民兵組織のファーティミーユーン旅団、パキスタン人民兵組織のザイナビーユーン旅団などがこれに含まれる[2]。

ヨルダン国境は2017年10月までにおおむねシリア政府が支配を回復するところとなった。だが、米国は、タンフ国境通行所から半径55キロの地域が、領空でのロシアとの偶発的衝突を回避するために2015年10月に両国が設置に合意した「非紛争地帯」(de-confliction zone)に含まれると主張、占領を続けた。タンフ国境通行所、ルクバーン・キャンプを含むこの地域は以降、「55キロ地帯」(55km zone)と呼ばれるようになった。

4 PYD支援とユーフラテス川以東地域への派兵(2014年10月~2019年10月)

「非紛争地帯」はそもそも米国とロシアがイスラーム国に対するそれぞれの「テロとの戦い」の作戦実行地域を画定するために設置された。その境界となったがユーフラテス川であり、ロシアは、シリア政府、イランとともにその西岸で、有志連合は東岸(いわゆるジャズィーラ地方)でイスラーム国の掃討を進めた。

「55キロ地帯」を確保するにあたって、米国は新シリア軍、そしてその後継組織を育成することに成功した。これに対して、ユーフラテス川以東地域においては、反体制派ではなく、トルコが「分離主義テロリスト」(ayrılıkçılar teröristler)とみなすクルド民族主義組織の民主統一党(Partiya Yekîtiya Demokrat、PYD)を支援し、「協力部隊」としていった。

PYDは、武力による体制転換をめざす反体制派と一線を画し、政治プロセスを通じた体制転換をめざす一方、反体制派、とりわけイスラーム過激派と鋭く対立していた。シリア内戦が混迷を深めるなかで、シリア政府がトルコ国境地帯から軍・治安部隊を戦略的に撤退させたると、PYDは武装部隊の人民防衛隊(Yekîneyên Parastina Gel、YPG)を展開させ、同地を実効支配し、2014年1月に暫定自治政体の西クルディスタン移行期民政局(通称ロジャヴァ)を設立した。そして、その支配地に勢力を拡大しようとしたイスラーム国だけでなく、反体制派とも激しく対立した。なお、ロジャヴァは2018年9月に恒久自治政体の北・東シリア自治局に発展解消し、現在に至っている。

PYD(YPG)とイスラーム国の対立は当初は後者が優勢だった。ロジャヴァの支配地を侵食していったイスラーム国は2014年9月、その拠点都市の一つであるアレッポ県のアイン・アラブ(コバネ)市を包囲した。これを受けて米国は10月にYPGへの支援を開始した(Markaz Harmūn li-Dirāsāt al-Muʻāṣira[2018:10])。コバネ包囲戦と呼ばれる戦闘は、米国の支援もあいまって、2015年1月にYPGの勝利で終わった。

2015年10月、米国の肝入りで、YPGを主体とする武装連合体のシリア民主軍が結成されると、米国の支援は拡大した。兵站支援に加えて、同月に米軍は特殊部隊の非戦闘員(技術者)50人を派遣した[3]。これがシリアにおける米軍部隊駐留の始まりとなった。

米国は駐留規模を拡大し、2016年末までには10カ所に基地を設置、特殊部隊の軍事教練技術者、顧問、爆発物処理班、兵士ら約500人を駐留させるにいたった。10カ所とは以下の通りである(Alalam[2016]、ʻAssāf[2016]、al-Ḥāmid[2017]、Markaz Harmūn li-Dirāsāt al-Muʻāṣira[2018:9-14, 17]、Tasnim News Agency[2016]、地図1)。

        ハサカ県(5カ所):ジャブサ油田、シャッダーディー市、タッル・バイダル村、マブルーカ村、ルマイラーン空港。
        アレッポ県(3カ所):アイン・アラブ(コバネ)市、ミシュターヌール丘、ラファージュ・セメント工場。
        ラッカ県(2カ所):第93旅団基地、タッル・アブヤド市。

地図1 2016年後半の米軍基地

(出所)筆者作成。

2017年から2018年にかけてシリア民主軍がイスラーム国との戦いで支配地を拡大すると、米軍は駐留規模をさらに拡大した。兵力は2017年3月までには900人強、シリア民主軍がラッカ市を包囲した2017年6月までには1,000人以上に増大、2018年には米軍兵士約2,000人、海兵隊員約850人、レンジャー部隊約250人が以下の32カ所の基地、前哨地、監視ポストに展開するに至った(Sputnik News Arabic[2017]、al-Ḥāmid[2017]、Markaz Harmūn li-Dirāsāt al-Muʻāṣira[2018:9]、Sham[2017]、Temizer, Tok and Koparan[2018]、Turkpress[2018]、Zontur and Aliyev[2019]、地図2)。

        ハサカ県(11カ所):サバーフ・ハイル村、ジャムアーヤ村、シャーラト・タッル・ムーサー村、タッル・アルカム村、タッル・シャーイル村、タッル・タムル町、タッル・ヒンズィール村、ハイムー村、ハサカ市グワイラーン地区、フール町、ルーバールヤー空港。
        アレッポ県(5カ所):サブト村、アイン・ダーダート村、アウシャリーヤ村、サイーディーヤ村、アスィーリーヤ村。
        ラッカ県(4カ所):ジャズラ村、タッル・サマン村、タブカ市、ラッカ市。
        ダイル・ザウル県(2カ所):ウマル油田、ハジーン市近郊。

地図2 2018年末の米軍基地

(出所)筆者作成。

5 トランプ大統領の撤退決定(およびその撤回)に伴う再展開(2019年10月~2020年末)

イスラーム国に対する「テロとの戦い」が2017年末までにほぼ決着すると、ドナルド・トランプ大統領はシリアからの部隊撤退の意思を示すようになった。そして、2018年12月と2019年10月の2度にわたって米軍の撤退を決定、2度にわたってこれを撤回した。

1度目の撤退決定は、2018年12月19日に政権内の反対意見を押し切るかたちで行われた[4]。だが、この決定は、撤退の日程や部隊の撤退先をめぐる調整が進められる過程で、徐々に語気が薄められていった。そして2019年2月22日、トランプ大統領が「方針は覆していない(中略)。だが、我々は、北大西洋条約機構(NATO)の部隊であれ何であれ、他国の部隊とともに小規模な部隊を残すことはできる」(The New York Times[2019a])と発言したことで、事実上撤回された。そのため、米軍部隊の駐留状況に変化は生じなかった。

これに対して、2度目の撤退決定とその撤回は、大きな変化をもたらした。トランプ大統領は2019年10月6日、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領との電話会談で、シリア北東部でのトルコの軍事作戦に異義を唱えつつも、ホワイト・ハウスが言うところの「隣接地域」(immediate area)から駐留部隊を撤退させることに同意した。これを受けて、米軍は撤退を開始する一方、トルコ軍は10月9日に「平和の泉」作戦を発動し、ラッカ県タッル・アブヤド市一帯とハサカ県ラアス・アイン市一帯に侵攻し、これを占領した。

米軍が「平和の泉」作戦発動に先立って撤退したのは以下21の基地である(Jumayda[2020]、Jusūr li-l-Dirāsāt[2020]、Maṭar[2021]、RT Arabic[2019]、地図3)。

        ハサカ県(7カ所):ジャブサ油田、ジャムアーヤ村、タッル・アルカム村、シャーラト・タッル・ムーサー村、タッル・タムル町、タッル・ヒンズィール村、マブルーカ村。
        アレッポ県(8カ所):アイン・アラブ(コバネ)市、アイン・ダーダート村、アウシャリーヤ村、アスィーリーヤ村、サイーディーヤ村、サブト村、ミシュターヌール丘、ラファージュ・セメント工場。
        ラッカ県(6カ所):ジャズラ村、第93旅団基地、タッル・アブヤド市、タッル・サマン村、タブカ市、ラッカ市。

地図3 2019年11月の米軍基地

(出所)筆者作成。

このうち、ジャブサ油田、タッル・タムル町、ラファージュ・セメント工場、ジャズラ村、ラッカ市は、米軍撤退後はシリア民主軍が駐留した。

しかし、撤退は部分的なものにとどまった。国防総省の匿名高官は2019年10月14日、約150人の兵士を残留させることを決定したと明かした(The New York Times[2019b])。また10月21日、トランプ大統領は「一定数の米軍部隊を、これまでとはまったく異なった場所、ヨルダンやイスラエルの国境近くに展開させることになる(中略)。また、別の部隊も駐留させ、石油の防衛にあたる」(The White House[2019])との新たな方針を示した。

これに従い、米軍は2019年11月から2020年2月にかけて以下14カ所に新たな基地を設置した(Anadolu Ajansı[2020]、Zontur and Aliyev[2019]、Jusūr li-l-Dirāsāt[2020]、地図4)。

        ハサカ県(6カ所):カスラク村、カフターニーヤ市、ジャブサ油田、タッル・ブラーク町近郊の油田地帯、ハッラーブ・ジール村、ライフ・ストーン複合施設。
        ダイル・ザウル県(7カ所):(下)カムシャ油田、ジャフラ油田、スーサ村、タナク油田、バーグーズ村、ルワイシド村、CONOCOガス田。
        ラッカ県(1カ所):ジャズラ村。

地図4 2021年の米軍基地

(出所)筆者作成。

これにより、米軍基地は27カ所(ハサカ県15カ所、ダイル・ザウル県9カ所、ラッカ県1カ所、ヒムス県2カ所)となった[5]。シリアに残留・再展開した米軍部隊の規模は定かではない。マーク・エスパー国防長官は2019年12月4日、600人が駐留していると発表した 。だが、米国務省シリア問題担当特使を務めてきたジェームズ・ジェフリーは2020年11月12日、トランプ政権に対してシリア駐留部隊の数を実際よりも少なく報告していたと暴露した(Williams[2020]、Zontur and Aliyev[2019])。実際には、900~1,500人(Jumayda[2020])、あるいは3,000人(Maṭar[2021])が展開していると見られている。
6 頻発する米軍への攻撃(2021年)

バイデン政権が発足すると、駐留米軍を狙った攻撃がたびたび報告されるようになった。これを誘発したのは、米軍の「イランの民兵」に対する爆撃だった。

バイデン政権は2021年2月25日(現地時間26日)、イラク国内での米軍施設が攻撃を受けたことへの対抗措置として、「イランの民兵」がダイル・ザウル県南東部に設置した「イマーム・アリー基地」に対して、政権発足後初となる爆撃を行い、人民動員隊(ヒズブッラー大隊、サイイド・シュハダー大隊)のメンバー20人以上を殺害した。また4月28日未明から29日には、有志連合(ないしはイスラエル軍)所属と思われる無人航空機(ドローン)がイラク国境に近いダイル・ザウル県南東部のスィヤール村(ブーカマール市北西)を爆撃し、ファーティミーユーン旅団の司令官らを殺害した。さらに、6月27日深夜から28日未明にかけて、米軍の戦闘機複数機がダイル・ザウル県南東部(およびイラク領内)の「イランの民兵」の拠点やイラン・イスラーム革命防衛隊のドローン発着用基地に対して爆撃を実施し、人民動員隊9人を殺害、武器弾圧庫1棟、軍事拠点1カ所を破壊した(青山[2021a]、青山[2021b]、青山[2021c])。

こうした爆撃に報復するかたちで、2021年には以下のような攻撃(そして攻撃と思われる事案)が繰り返された。

        3月23日:CONOCOガス田の米軍基地に対して何者かが攻撃を行い、ガス田近くに迫撃砲弾1発が着弾した(al-Marṣad al-Sūrī li-Ḥuqūq al-Insān[2021a]、SANA[2021a])。
        4月20日:ウマル油田近くで、兵站物資を輸送する有志連合とシリア民主軍の車列の通過に合わせて、道路に仕掛けられていた爆弾が爆発した(al-Marṣad al-Sūrī li-Ḥuqūq al-Insān[2021b])。
        6月28日:前日深夜から同時未明にかけてのシリア、イラク領内の爆撃への報復として、ウマル油田の米軍基地に砲弾8発あまりが撃ち込まれ、車輌複数台が炎上するなど物的被害が出た。攻撃はマヤーディーン市近郊に設置されているイラク人民動員隊所属のアブー・ファドル・アッバース旅団の拠点から発射されたとされた。この砲撃を受けて、ウマル油田の労働者住宅地区に展開する有志連合の部隊が、マヤーディーン市にある「イランの民兵」の拠点に対して砲撃を行った。また、シュハイル村に展開するシリア民主軍が、ユーフラテス川西岸のバクラス村にあるシリア軍の拠点複数カ所に向けて砲撃を行った(青山[2021c]、al-Marṣad al-Sūrī li-Ḥuqūq al-Insān[2021c]、SANA[2021b])。
        7月4日:ウマル油田の米軍基地が何者かの砲撃を受け、迫撃砲弾2発が着弾した。「イランの民兵」の関与が疑われた(青山[2021d]、ANHA[2021]、al-Marṣad al-Sūrī li-Ḥuqūq al-Insān[2021e])。
        7月7日:ウマル油田の米軍基地が所属不明のドローンの攻撃を受け、複数の煙柱が立ち上がった(青山[2021d]、al-Marṣad al-Sūrī li-Ḥuqūq al-Insān[2021f]、SANA[2021c])。
        8月31日:CONOCOガス田の米軍基地に迫撃砲弾複数が着弾した。砲弾はシリア政府の支配下にあるフシャーム町から発射され、着弾地点から炎が上がるのが目撃された(al-Durār al-Shāmīya[2021]、al-Marṣad al-Sūrī li-Ḥuqūq al-Insān[2021g]、SANA[2021d])。
        9月9日:シャッダーディー市の米軍基地一帯に迫撃砲弾2発が撃ち込まれた(al-Marṣad al-Sūrī li-Ḥuqūq al-Insān[2021h])。
        10月20日:タンフ国境通行所の米軍基地が所属不明のドローンの攻撃を受け、基地内の食堂施設、モスク、食糧庫が狙われた(青山[2021e]、Griffin,and Singma[2021]、SANA[2021e])。攻撃は「イランの民兵」によるものと考えられた(AP, October 26, 2021、Fox News, October 26, 2021、Fars, October 22, 2021、’Ahd, October 22, 2021)。
        10月31日: CONOCOガス田の米軍基地がロケット弾攻撃を受け、基地内の施設で4回の爆発音が確認された(Tasnim News Agency[2021])。
        11月18~19日:タンフ国境通行所の米軍基地が所属不明のドローンの攻撃を受け、基地内の食堂施設、食糧庫が狙われた。攻撃は「イランの民兵」によるものと考えられた(Arabi21[2021])。
        11月23日:ハッラーブ・ジール村の航空基地に向かって何者かがロケット弾5発を発射した。これに関して、国防総省報道官は攻撃の事実を否定した(SANA[2021f]、TACC[2021])。
        11月24日:タンフ国境通行所の基地に駐留する米軍部隊が基地西方に向かって長距離ミサイル4発を発射した。標的、着弾地点は不明(al-Marṣad al-Sūrī li-Ḥuqūq al-Insān[2021i])。
        12月1日:ルーバールヤー空港に兵站物資を移送中の米軍の車列が、ティグリス川河畔のスィーマルカー国境通行所近くの街道を通過するのに合わせて、仕掛けられていた爆弾が爆発し、車輌2輌が炎上した(SANA[2021g])。
        12月4日:CONOCOガス田一帯に迫撃砲弾4発が撃ち込まれ、複数の米軍兵士が負傷した。砲弾は政府支配地から発射され、基地周辺の地雷原に着弾した(al-Marṣad al-Sūrī li-Ḥuqūq al-Insān[2021j])。
        12月5日:タンフ国境通行所の基地内で複数回の爆発が発生した。これに関して、有志連合報道官は爆発が不発弾の撤去によるものだと説明した(SANA[2021h]、RT Arabic[2021])。
        12月13日:ウマル油田の米軍基地に迫撃砲弾複数発が着弾し、4回の爆発が発生した(Sputnik News Arabic[2021])。
        12月16日:55キロ地帯に所属不明のドローン2機が飛来し、米軍が同地帯奥地まで進入し、敵意を示した1機を撃破した(Fox News[2021])。
        12月21日:55キロ地帯で4回の爆発が発生した。爆発の際、米軍ヘリコプター複数機が上空を飛来しており、地雷の爆発、米軍の演習での爆発、あるいは基地に対する何らかの攻撃の可能性があると考えられた(al-Marṣad al-Sūrī li-Ḥuqūq al-Insān[2021k])。
        12月31日:CONOCOガス田に政府支配地から発射された迫撃砲弾2発が着弾した。これに対して、有志連合は迫撃砲弾が発射された政府支配地に向けて砲弾複数発を撃ち込み応戦した(al-Marṣad al-Sūrī li-Ḥuqūq al-Insān[2021l])。

米軍のシリア駐留は、イスラーム国に対する「テロとの戦い」を根拠として開始され、後に「石油の防衛」が強調されるようになった。シリアの石油は、南東部の油田地帯を掌握していたイスラーム国にとっての主要な資金源だった。それゆえ、油田地帯への駐留は、イスラーム国の再台頭を阻止することが目的とされた。だが、2021年以降の米軍による「イランの民兵」への度重なる爆撃と、その報復として行われる「イランの民兵」による米軍基地や車列への攻撃は、こうした米軍駐留の根拠が、イスラーム国から、イラン、そして「イランの民兵」の勢力伸長阻止にシフトしていることを示している。
7 基地概要一覧(資料)

以下は2015年10月以降に米軍がハサカ県、アレッポ県、ラッカ県、ダイル・ザウル県、ヒムス県に設置(一部は再展開、撤退)した基地の一覧(50音順)である(Alalam[2016]、Anadolu Ajansı[2018b]、ʻAssāf[2016]、Dellal[2019]、al-Ḥāmid[2017]、Jumayda[2020]、Jusūr li-l-Dirāsāt[2020]、Markaz Harmūn li-Dirāsāt al-Muʻāṣira[2018:9-14, 17]、Maṭar[2021]、RT Arabic[2019]、Sham[2017]、Sputnik News[2017]、Tasnim News Agency[2016]、Temizer, Tok and Koparan[2018]、Tok, Mistoand Temizer[2017]、Turkpress[2018]、Zakariyā[2018])。
ハサカ県

    カスラク村:2019年11月以降に設置。旧地元ラジオ局ビルを転用。タッル・バイダル村の基地の連携拠点。
    カフターニーヤ市:2019年11月以降に設置。
    サバーフ・ハイル村:2017年半ば頃までに設置。サバーフ・ハイル村近郊の穀物サイロを転用。ヘリポート、捕捉したイスラーム国メンバーを収容するための拘置所が併設されている。米軍兵士約50人が駐留。シリア民主軍の教練を主たる任務とする。
    シャッダーディー市:2016年半ば頃までに設置。ジャブサ油田の前哨地と合わせて米軍特殊部隊約150人から350人が駐留。ヘリポート、捕捉したイスラーム国メンバーを収容するための拘置所が併設されているほか、2017年にはドローンが離着陸可能な空港が増設された。
    ジャブサ油田:2016年半ば頃までに設置。シャッダーディー市の前哨地。移動式の居住施設、プレハブ住宅からなる。米軍兵士(特殊部隊)が駐留。2019年10月に撤退、その後はシリア民主軍が駐留し、11月以降、米軍も再駐留した。
    ジャムアーヤ村:2018年半ば頃までに設置。カーミシュリー市東の入口に位置する。2019年10月に撤退。
    シャーラト・タッル・ムーサー村:2018年半ば頃までに設置された国境監視ポスト。2019年10月に撤退。
    タッル・アルカム村:2018年半ば頃までに設置された国境監視ポスト。2019年10月に撤退。
    タッル・シャーイル村:2018年半ば頃までに設置。
    タッル・タムル町:2017年半ば頃までに設置。2019年10月に撤退、その後はシリア民主軍が駐留した。
    タッル・バイダル村:2016年半ば頃までに設置。米軍兵士約200人(うち特殊部隊約100人)、フランス軍約70人が駐留。ヘリポートとロジャヴァ/北・東シリア自治局の非軍事組織(警察治安部隊、消防隊など)の教練キャンプが併設されている。
    タッル・ヒンズィール村:2018年半ば頃までに設置された国境監視ポスト。2019年10月に撤退。
    タッル・ブラーク町:2019年11月以降に設置。近郊の油田地帯に基地が設置されている。
    ハイムー村:2018年半ば頃までに設置。カーミシュリー市西の入口に位置する。2019年10月の再展開後に増強され、米軍兵士約350人が駐留。シリア民主軍緊急対応部隊(Hevalno Asayîşe Rojava、HAT)の教練キャンプが併設されている。
    ハサカ市グワイラーン地区:2018年半ば頃までに設置。隣接するスポーツ・シティには米軍兵士約150人が駐留。またグワイラーン地区の工業高校をイスラーム国メンバーを収容するための拘置所(通称グワイラーン刑務所)として転用している。
    ハッラーブ・ジール村:2019年11月以降に設置。
    フール町:2018年半ば頃までに設置。
    マブルーカ村:2016年半ば頃までに設置。移動式の居住施設、物資の貯蔵施設からなる。米軍特殊部隊45人が駐留。2019年10月に撤退。
    ライフ・ストーン複合施設:2019年11月以降に設置。バースィル・ダムの近くに位置するタッル・バイダル村基地の連携拠点。ヘリポートが併設され、ヘリコプター8機が配備されている。米軍兵士約50人が駐留。
    ルーバールヤー空港:2017年半ば頃までに設置。通称「ルマイラーン2」。ルーバールヤー村近郊の農業用空港を転用。ヘリポートを併設。2019年10月の最展開後に増強され、ドローン離着陸用の空港を完備、米空軍空挺隊など約150人が駐留するようになった。
    ルマイラーン空港:2015年10月に米軍が最初に建設した基地。ルマイラーン町近郊の農業用空港(アブー・ハジャル空港)を基地として転用。アサーイシュ(ロジャヴァ/北・東シリア自治局の治安部隊)が空港周辺の住民を強制退去させ敷地を確保した。米軍兵士約200人(その一部は近年に米国籍を取得したシリア人)が駐留、そのほとんどがアラビア語を解す。作戦司令室、ヘリポート、イラクやトルコでの逮捕者を収容する拘置所が併設されている。基地は継続的に拡張され、滑走路も全長1400メートルに延長、貨物機の離着陸が可能となった。ラファージュ・セメント工場から部隊が撤退した2019年10月以降は、駐留米軍最大の拠点となり、兵士約500人が駐留するようになった。

アレッポ県

    アイン・アラブ(コバネ)市:2016年半ば頃までに設置。米軍兵士・技術者300人以上に加えて、フランス軍とドイツ軍部隊が駐留。最大規模の基地で、住居区画のほか、C-130、C-17などの輸送機が離着陸可能な滑走路および関連施設、ヘリポート、シリア民主軍の教練キャンプが併設。2019年10月に撤退。
    アイン・ダーダート村:2017年半ば頃までに設置。米軍(特殊部隊)が駐留。シリア北部の「ユーフラテスの盾」地域との境界地帯、サジュール川沿いでの偵察を主な任務とした。2019年10月に撤退。
    アウシャリーヤ村:2017年半ば頃までに設置。米軍(海兵隊特殊部隊)が駐留、サジュール川沿いでの偵察を主な任務とした。2019年10月に撤退。
    アスィーリーヤ村:2018年半ば頃までに設置。2019年10月に撤退。
    サイーディーヤ村:2018年半ば頃までに設置。2019年10月に撤退。
    サブト村:2017年半ば頃までに設置。ミシュターヌール丘と同じくM4高速道路スィッリーン交差点の北に位置。米軍(空挺部隊)とフランス軍部隊が駐留し、アイン・イーサー市一帯に展開するPYDへの武器弾薬の供給、イスラーム国の無線・電話傍受、有志連合司令部との通信を主な任務とした。2019年10月に撤退。
    ミシュターヌール丘:2016年半ば頃までに設置。M4高速道路スィッリーン交差点の北に位置する。面積はラファージュ・セメント工場の基地と同程度。敷地80%は地元の農民から買収(拡張時には1ドゥーナムあたり5000米ドルで買収)、残りの敷地はPYDが無償提供した。米軍(特殊部隊)、フランス軍の特殊部隊が駐留。当初の任務は不明で、ジャラビーヤ基地から日帰りで訪れる米軍技術者5人が基地の運営を監督していたが、その後滑走路を建設・整備し、最新鋭の輸送機40機や戦闘爆撃機を配備した。2019年10月に撤退。
    ラファージュ・セメント工場:2016年3月に設置。ハッラーブ・ウシュク村およびジャラビーヤ村の近郊に位置する。ジャラビーヤ基地とも呼ばれた。面積は35平方キロ。工場の施設の一部を基地として転用。PYDが基地建設に必要な土地の70%を無償で提供、残りの30%は農地1ドゥーナム(当時の地価は100米ドル)を3,000米ドルで買収して地敷地を確保した。ヘリポート、シリア民主軍戦闘員の教練キャンプが併設され、当初は米軍兵士・技術者約45人が駐留、その後300人以上に増員され、駐留米軍最大の拠点となった。また、フランス軍兵士も駐留した。M4高速道路沿線、ティシュリーン・ダム、ユーフラテス川河畔、マンビジュ市一帯、アイン・アラブ市一帯、ラッカ市一帯の監視が主要な任務。2019年10月に撤退、その後はシリア民主軍が駐留した。

ラッカ県

    ジャズラ村:2018年半ば頃までに設置。2019年10月に撤退、その後はシリア民主軍が駐留したが、11月以降再駐留した。
    第93旅団基地:2016年半ば頃までに設置。アイン・イーサー市南西に位置し、アイン・イーサー基地とも呼ばれた。米軍兵士100~200人、フランス軍特殊部隊75人が駐留。PYDの拠点への兵站支援を主な任務とした。2019年10月に撤退。
    タッル・アブヤド市:2016年半ば頃までに設置。シリア政府関連施設を転用。米軍兵士・技術者約200人が駐留。2018年半ばに国境に監視ポストが設置された。2019年10月に撤退。
    タッル・サマン村:2017年末頃までに設置。イスラーム国の有線・無線通信の傍受、有志連合司令部との通信を主な任務とした。2019年10月に撤退。
    タブカ市:2017年11月頃に設置。ヘリポートが併設。米軍兵士60人強、フランス軍、カナダ軍、オーストリア軍の兵士それぞれ10人強ずつ駐留。2019年10月に撤退。
    ラッカ市:2017年11月頃に設置。米軍兵士に加えて、フランス軍兵士30人も駐留。2019年10月に撤退。米軍撤退後はシリア民主軍が駐留。

ダイル・ザウル県

    ウマル油田:2018年半ば頃までに設置。シュハイル村南東に位置するダイル・ザウル県内最大の基地。ヘリポートが併設され、ヘリコプター12機が配備。兵員数は不明。
    カムシャ油田:2019年11月以降に設置。ハジーン市の北方に位置する。
    スーサ村:2019年11月以降に設置。
    ジャフラ油田:2019年11月以降に設置。フシャーム町の東方に位置する。
    タナク油田:2019年11月以降に設置。ハジーン市の東方に位置する。ヘリポートが併設し、ヘリコプター4機が配備。米軍兵士約50人が駐留。
    (下)バーグーズ村:2019年11月以降に設置。米軍兵士約25人が駐留。
    ハジーン市近郊:2018年半ば頃までに設置。
    ルワイシド村:2019年11月以降に設置。村内の国立病院を基地として転用。M2ブラッドレー歩兵戦闘車配備。
    CONOCOガス田:2019年11月以降に設置。フシャーム町の東方に位置する。米軍兵士約50人が駐留。

ヒムス県

    ザクフ地区:タンフ国境通行所の北東に設置されている前哨地。
    タンフ国境通行所:2015年3月に設置。米軍兵士約200人と英軍兵士約50人が駐留。殉教者アフマド・アブドゥー軍団、革命特殊任務軍などの拠点、これらの組織ための教練キャンプが併設されている。

[1] MOCはトランプ政権がその廃止を決定する2017年8月まで活動を続けた(Barret[2017])。
[2] 「イランの民兵」は「シーア派民兵」と称されることもあるが、いずれも反体制派、欧米諸国、アラブ湾岸諸国、トルコによる蔑称である。シリア政府側においては、「同盟部隊」、あるいは「同盟者部隊」と呼ばれている。
[3] 米国は2015年10月末にはシリア領内に特殊部隊を展開させていることを認めた(Markaz Harmūn li-Dirāsāt al-Muʻāṣira[2018:11])。
[4] この決定を受けて、ルマイラーン空港から車輌10輌、地雷処理を専門とする工兵師団、兵士150人が撤退したとの報告がなされた(al-Marṣad al-Sūrī li-Ḥuqūq al-Insān[2019])。
[5] なお、Jusūr li-l-Dirāsāt[2021]は、米軍基地が2021年1月の時点で33カ所(内訳はハサカ県19、ダイル・ザウル県10、ラッカ県2、ダマスカス郊外県(ヒムス県の誤り)2件)あるとし、地図で場所を示した。だが、この地図にはそれぞれの基地が設置されている地名は記されていない。
参考文献

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――― [2021e]「シリアで暴力の連鎖が再発か?:ダマスカスでテロ、シリア軍とトルコ軍の攻撃激化、米軍基地にドローン攻撃」Yahoo! Japanニュース(個人)、10月21日(https://news.yahoo.co.jp/byline/aoyamahiroyuki/20211021-00264184).
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――― [2021a]“Tazāmunan maʻa Iḥtifālāt “al-Taḥāluf al-Duwalī” wa “QSD” ḍimna Qāʻida ʻAskarīya .. Qadhīfa Madfaʻīya Majhūla Tasquṭ qurba Qāʻida Amrīkīya bi-Rīf Dayr al-Zawr,” March 23 (https://www.syriahr.com/%d8%aa%d8%b2%d8%a7%d9%85%d9%86%d9%8b%d8%a7-%d9%85%d8%b9-%d8%a7%d8%ad%d8%aa%d9%81%d8%a7%d9%84%d8%a7%d8%aa-%d8%a7%d9%84%d8%aa%d8%ad%d8%a7%d9%84%d9%81-%d8%a7%d9%84%d8%af%d9%88%d9%84%d9%8a-%d9%88/429953/).
――― [2021b]“Tazāmunan maʻa Murūr Ratl li-“al-Taḥāluf al-Duwalī” .. Infijār ʻAbūwa Nāsifa qurba Ḥaql Nafṭī fī Dayr al-Zawr,” April 20 (https://www.syriahr.com/%d8%aa%d8%b2%d8%a7%d9%85%d9%86%d9%8b%d8%a7-%d9%85%d8%b9-%d9%85%d8%b1%d9%88%d8%b1-%d8%b1%d8%aa%d9%84-%d9%84%d9%80%d8%a7%d9%84%d8%aa%d8%ad%d8%a7%d9%84%d9%81-%d8%a7%d9%84%d8%af%d9%88%d9%84%d9%8a/434043/).
――― [2021c]“Tazāmunan maʻa Taḥlīq Ṭāʼirāt “al-Taḥāluf al-Duwalī” .. Madfaʻīya-hā Taqṣif Madīna al-Mayādīn .. wa “QSD” Tuʻazziz Qūwāt-hā ʻalā Ṭūl Nahr al-Furāt wa Tastahdif Mawāqiʻ Qūwāt al-Niẓām,” Jun 28 (https://www.syriahr.com/%d8%aa%d8%b2%d8%a7%d9%85%d9%86%d9%8b%d8%a7-%d9%85%d8%b9-%d8%aa%d8%ad%d9%84%d9%8a%d9%82-%d8%b7%d8%a7%d8%a6%d8%b1%d8%a7%d8%aa-%d8%a7%d9%84%d8%aa%d8%ad%d8%a7%d9%84%d9%81-%d8%a7%d9%84%d8%af%d9%88%d9%84/441233/).
――― [2021d]“Irtifāʻ Ḥaṣīla al-Qutlā fī al-Istihdāf al-Jawwī al-Amīrikī qurba al-Ḥudūd al-Sūrīya – al-ʻIrāqīya ilā 9 min Mīlīshiyā “al-Ḥashd al-Shaʻbī”,” June 29, (https://www.syriahr.com/%d8%a7%d8%b1%d8%aa%d9%81%d8%a7%d8%b9-%d8%ad%d8%b5%d9%8a%d9%84%d8%a9-%d8%a7%d9%84%d9%82%d8%aa%d9%84%d9%89-%d9%81%d9%8a-%d8%a7%d9%84%d8%a7%d8%b3%d8%aa%d9%87%d8%af%d8%a7%d9%81-%d8%a7%d9%84%d8%ac%d9%88/441258/).
――― [2021e]“Infijārāt Tadwī fī Akbar Qāʻida ʻAskarīya li-Qūwāt “al-Taḥāluf al-Duwalī” fī Sūrīya”, July 7 (https://www.syriahr.com/%d8%a7%d9%86%d9%81%d8%ac%d8%a7%d8%b1%d8%a7%d8%aa-%d8%aa%d8%af%d9%88%d9%8a-%d9%81%d9%8a-%d8%a3%d9%83%d8%a8%d8%b1-%d9%82%d8%a7%d8%b9%d8%af%d8%a9-%d8%b9%d8%b3%d9%83%d8%b1%d9%8a%d8%a9-%d9%84%d9%82%d9%88/441871/).
――― [2021f]“Baʻda al-Hujūm al-Jawwī ʻalā Akbar Qāʻida la-hum fī Sūrīya .. al-Taḥāluf wa QSD Yudāhimūn Ākhir Minṭaqa muqābila Manāṭiq al-Nufūdh al-Īrānī Sharq al-Furāt,” July 7 (https://www.syriahr.com/%d8%a8%d8%b9%d8%af-%d8%a7%d9%84%d9%87%d8%ac%d9%88%d9%85-%d8%a7%d9%84%d8%ac%d9%88%d9%8a-%d8%b9%d9%84%d9%89-%d8%a3%d9%83%d8%a8%d8%b1-%d9%82%d8%a7%d8%b9%d8%af%d8%a9-%d9%84%d9%87%d9%85-%d9%81%d9%8a-%d8%b3/442017/).
――― [2021g]“Qadhāʼif Ṣārūkhīya Tastahdif Muḥīṭ al-Qāʻida al-Amrīkīya fī Ḥaql Ghāz “CONOCO” bi-Rīf Dayr al-Zawr,2 August 31 (https://www.syriahr.com/%d9%82%d8%b0%d8%a7%d8%a6%d9%81-%d8%b5%d8%a7%d8%b1%d9%88%d8%ae%d9%8a%d8%a9-%d8%aa%d8%b3%d8%aa%d9%87%d8%af%d9%81-%d9%85%d8%ad%d9%8a%d8%b7-%d8%a7%d9%84%d9%82%d8%a7%d8%b9%d8%af%d8%a9-%d8%a7%d9%84%d8%a3/445983/).
――― [2021h] “al-Qāfila al-Thāniya fī Aylūl .. “al-Taḥāluf al-Duwalī” Yastaqdim 30 Shāḥina ilā al-Qawāʻid al-ʻAskarīya fī Shamāl wa Sharq Sūrīya,” September 9 (https://www.syriahr.com/%d8%a7%d9%84%d9%82%d8%a7%d9%81%d9%84%d8%a9-%d8%a7%d9%84%d8%ab%d8%a7%d9%86%d9%8a%d8%a9-%d9%81%d9%8a-%d8%a3%d9%8a%d9%84%d9%88%d9%84-%d8%a7%d9%84%d8%aa%d8%ad%d8%a7%d9%84%d9%81-%d8%a7%d9%84%d8%af/446817/).
――― [2021i] “Tazāmunan maʻa Taḥlīq Ṭayarān al-Taḥāluf al-Duwalī fī al-Ajwāʼ .. al-Qūwāt al-Amrīkīya al-Mutamarkiza fī Qāʻida al-Tanf Tuṭliq Arbaʻa Ṣawārīkh Baʻīda al-Mudā bi-Ittijāh al-Gharb min al-Qāʻida,” November 24 (https://www.syriahr.com/%d8%aa%d8%b2%d8%a7%d9%85%d9%86%d9%8b%d8%a7-%d9%85%d8%b9-%d8%aa%d8%ad%d9%84%d9%8a%d9%82-%d8%b7%d9%8a%d8%b1%d8%a7%d9%86-%d8%a7%d9%84%d8%aa%d8%ad%d8%a7%d9%84%d9%81-%d8%a7%d9%84%d8%af%d9%88%d9%84%d9%8a/458200/).
――― [2021j] “4 Qadhāʼif Tastahdif Ḥaql Alghām fī Muḥīṭ Qāʻida li-“al-Taḥāluf al-Duwalī” fī Ḥaql “CONOCO” bi-Rīf Dayr al-Zawr,” December 4 (https://www.syriahr.com/4-%d9%82%d8%b0%d8%a7%d8%a6%d9%81-%d8%aa%d8%b3%d8%aa%d9%87%d8%af%d9%81-%d8%ad%d9%82%d9%84-%d8%a3%d9%84%d8%ba%d8%a7%d9%85-%d9%81%d9%8a-%d9%85%d8%ad%d9%8a%d8%b7-%d9%82%d8%a7%d8%b9%d8%af%d8%a9-%d9%84/459386/).
――― [2021k]“Infijārāt Tadwī fī Minṭaqa Tawājud Qāʻida “al-Tanf” al-Tābiʻa li-“al-Taḥāluf al-Duwalī” fī al-Bādiya al-Sūrīya,” December 21 (https://www.syriahr.com/%d8%a7%d9%86%d9%81%d8%ac%d8%a7%d8%b1%d8%a7%d8%aa-%d8%aa%d8%af%d9%88%d9%8a-%d9%81%d9%8a-%d9%85%d9%86%d8%b7%d9%82%d8%a9-%d8%aa%d9%88%d8%a7%d8%ac%d8%af-%d9%82%d8%a7%d8%b9%d8%af%d8%a9-%d8%a7%d9%84%d8%aa/461507/).
――― [2021l]“Infijārāt Tadwī Qurba Qāʻida ʻAskarīya li-“al-Taḥāluf al-Duwalī” fī Rīf Dayr al-Zawr .. wa al-Madfaʻīya Tarudd ʻalā Maṣādir al-Nīrān,” December 31 (https://www.syriahr.com/%d8%a7%d9%86%d9%81%d8%ac%d8%a7%d8%b1%d8%a7%d8%aa-%d8%aa%d8%af%d9%88%d9%8a-%d9%82%d8%b1%d8%a8-%d9%82%d8%a7%d8%b9%d8%af%d8%a9-%d8%b9%d8%b3%d9%83%d8%b1%d9%8a%d8%a9-%d9%84%d9%80%d8%a7%d9%84%d8%aa%d8%ad-2/464661/).
Maṭar, ʻAlī[2021]“al-Qawāʻid al-Amrīkīya fī Sūriyā .. Kharīṭa al-Intishār wa Ahammīya al-Muwājaha,” Alkhanadeq.com, July 17 (https://alkhanadeq.com/post.php?id=955).
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――― [2019b]“How the U.S. Military Will Carry out a Hasty, Risky Withdrawal from Syria,” October 15 (https://www.nytimes.com/2019/10/15/world/middleeast/turkey-syria-kurds-troops.html).
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――― [2021] “Nafā Masʼūl fī al-Taḥāluf al-Duwalī An Takūn Qāʻida al-Tanf al-Amrīkīya Janūbī Sūriyā Qad Taʻarraḍat li-Ayy Hujūm al-Yawm al-Aḥad,” December 5 (https://arabic.rt.com/middle_east/1301196-%D8%A7%D9%84%D8%AA%D8%AD%D8%A7%D9%84%D9%81-%D8%A7%D9%84%D8%AF%D9%88%D9%84%D9%8A-%D9%8A%D9%86%D9%81%D9%8A-%D9%84%D9%80-rt-%D8%AA%D8%B9%D8%B1%D8%B6-%D9%82%D8%A7%D8%B9%D8%AF%D8%A9-%D8%A7%D9%84%D8%AA%D9%86%D9%81-%D9%81%D9%8A-%D8%B3%D9%88%D8%B1%D9%8A%D8%A7-%D9%84%D8%A3%D9%8A-%D9%87%D8%AC%D9%88%D9%85/).
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――― [2021]“Qaṣf Ṣārūkhī ʻalā Qāʻida li-l-Jaysh al-Amrīkī fī Akbar Ḥuqūl al-Nafṭ al-Sūrīya,” December 13 (https://arabic.sputniknews.com/20211213/%D9%82%D8%B5%D9%81-%D8%B5%D8%A7%D8%B1%D9%88%D8%AE%D9%8A-%D8%B9%D9%84%D9%89-%D9%82%D8%A7%D8%B9%D8%AF%D8%A9-%D9%84%D9%84%D8%AC%D9%8A%D8%B4-%D8%A7%D9%84%D8%A3%D9%85%D8%B1%D9%8A%D9%83%D9%8A-%D9%81%D9%8A-%D8%A3%D9%83%D8%A8%D8%B1-%D8%AD%D9%82%D9%88%D9%84-%D8%A7%D9%84%D9%86%D9%81%D8%B7-%D8%A7%D9%84%D8%B3%D9%88%D8%B1%D9%8A%D8%A9-1053897779.html).
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シリア:最近の軍事情勢

№80 シリア:最近の軍事情勢
https://www.meij.or.jp/kawara/2019_080.html

『2019年5月以来、政府軍がロシア軍の支援を受けつつハマ県北部・イドリブ県南西部で進撃している。一方、トルコはシリア北部一帯に「安全地帯」の設置を主張している。これを受けて、トルコ軍やその配下の武装勢力と、クルド民族主義勢力との緊張も高まった。

図:2019年8月15日時点のシリアの軍事情勢(筆者作成)

凡例

オレンジ:クルド勢力

青:「反体制派」(実質的には「シャーム解放機構」と改称した「ヌスラ戦線」や、「宗教擁護者機構」などのイスラーム過激派)

黒:「イスラーム国」

緑:シリア政府

赤:トルコ軍

赤点線内:アメリカ軍

1.イスラーム過激派を主力とする「反体制派」が占拠する地域は、イドリブ県とその周辺のみとなった。政府軍が「反体制派」の占拠地域を西、南から攻撃しているが、政府軍の兵力不足などもあり進撃のテンポは遅い。現在は政府軍がイドリブ県南西方面で「シャーム解放機構」の防衛線を突破し、ダマスカス・アレッポ街道の要衝であるハーン・シャイフーンを伺う情勢となっている。

2.トルコが「安全地帯」の設置を主張し、同国とアメリカとの間に合同指令室を設けることで合意した。これを受け、トルコが占領しているシリア領内でトルコ軍とその配下の武装勢力と、クルド民族主義勢力との交戦が発生している。

3.アメリカ政府は、2019年3月末にシリア領内における「イスラーム国」の占拠地域を解消したと発表した。これに対し、「イスラーム国」は自派が健在であると主張し、ダイル・ザウル県、ハサカ県、ラッカ県、ホムス県でクルド民族主義勢力やシリア政府軍を度々襲撃している。

評価

 イドリブ県周辺での戦闘を担う「反体制派」は、シリアにおけるアル=カーイダである「シャーム解放機構」、「宗教擁護者機構」、及び国際的なイスラーム過激派である「トルキスタン・イスラーム党」が主力である。イスラーム過激派諸派は、2018年9月にロシアとトルコとの間に成立した「停戦合意」を合意成立当初から拒絶している。また、合意で定められた「緊張緩和地帯」からの重火器などの撤去と、アレッポとダマスカス、ラタキアを結ぶ幹線道路の再開は実現していない。以上に鑑みれば、イドリブ県の周辺で戦闘が発生することや、政府軍が同県などを武力で制圧しようとすることは必然的な流れと言える。戦闘に伴う民間人の被害についての情報発信も相次いでいるが、アメリカの政府要人からは本件についてアメリカに期待すべきではないとの見解が出ており、被害を強調して国際的な干渉を惹起しようとする「反体制派」の広報戦術は効果を上げていない。

 「イスラーム国」は、シリア領内における占拠地域がほとんどなくなった後も、組織が存続し健在であると主張し、襲撃を続けている。8月10日ごろからは「消耗攻勢」と称して世界各地での戦果発表を増やしている。また、シリアについても11日にアメリカやクルド民族主義勢力への攻撃続行を唱える動画を発表した。ただし、「イスラーム国」の戦果発表の件数は、全般的にみると最盛期の1割程度に減少している上、戦果もほとんどが局地的な襲撃・爆破・暗殺にとどまっており、被害も戦果の社会的反響も大きくない。「イスラーム国」については、根絶や攻撃を「ゼロにする」ことは困難であろうが、同派の政治的影響力は着実に低下している。「イスラーム国」の広報に過剰反応することなく、「イスラーム国」への資源の供給や同派の影響力を低下させる対策を徹底させることが必要である。

(主席研究員 髙岡 豊) 』

終わらぬ代理戦争…死者5年間で27万人 露・イランVSサウジ・トルコ、14日にも協議再開

終わらぬ代理戦争…死者5年間で27万人 露・イランVSサウジ・トルコ、14日にも協議再開
https://www.sankei.com/article/20160312-QNNDPNTGLVKVLKLVIPT7WUIFGM/

『2016/3/12 21:18

【カイロ=大内清】シリア内戦の終結に向けた和平協議が14日にもジュネーブで再開される。内戦につながった反政府デモの発生から15日で丸5年。2月下旬に発効した米露主導の停戦はおおむね維持されているが、内戦が、アサド政権を支えるロシアやイランと、反体制派を支援するサウジアラビアやトルコとの「代理戦争」の構図を持っていることも、事態を一層複雑化させている。

 協議が実際に再開されれば、停戦発効後では初。アサド政権が7日に参加を表明したのに続き、11日には態度を保留していた反体制派の代表グループ「最高交渉委員会」(HNC)も参加を決めた。反体制派の参加決定が遅れた背景には、和平協議がロシアや政権側のペースで進むことへの警戒があったとみられる。

 逆に政権側は、内戦発生後で最も優勢な立場にある。

 シリアでは2011年3月、チュニジアやエジプトで政権が崩壊した「アラブの春」に触発される形で反政府デモが発生。政権側の弾圧に対する武装蜂起が拡大し内戦に発展した。現在までに27万人以上が死亡し、400万人以上が国外へ脱出したほか、国内避難民は750万人を超す。

 反体制派は内戦当初から北部や首都ダマスカス周辺で支配地域を拡大。トルコやサウジなどに加えて米欧の支持も得て、一時は首都をうかがう勢いもみせた。』

『潮目が変わり始めたのは13年秋、政府軍の化学兵器使用疑惑を受けて武力行使を示唆していた米国が空爆を回避してからだ。政権側は、最大の懸念だった米国の介入が遠のいたことで生き残りへの自信を深めた。

 また、内戦の混乱に乗じる形でイスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)が台頭したことも、政権側に追い風となった。政権が倒れた場合、地中海に面するシリアが過激派の温床化するとの懸念が現実味を増したためだ。政権側は、ISとの全面対峙(たいじ)を巧みに避け、反体制派の力をそぐ戦略も取った。

 さらに15年秋、ロシアが対IS名目で軍事介入し、政権への空爆支援に乗り出した。イランや隣国レバノンのシーア派組織ヒズボラの援軍も受ける政府軍は、北西部イドリブなどで反体制派への攻勢を強めた。

 反体制派や、その主要支援国であるサウジやトルコの危機感は小さくない。今年1月に始まった和平協議のために、サウジが音頭を取り、乱立する諸勢力の代表者を集めてHNCを組織したのはその表れだ。

 ただ、HNCには国際テロ組織アルカーイダ系の「ヌスラ戦線」に近い勢力も参加しており、停戦中もISやヌスラへの攻撃は容認する米欧とはズレもある。HNCが反体制派をまとめ上げ、協議に臨めるかはなおも不透明だ。』

トルコ・シリア外相、内戦後初の会談 ロシアなどと

トルコ・シリア外相、内戦後初の会談 ロシアなどと
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR10DJP0Q3A510C2000000/

『【イスタンブール=木寺もも子】ロシア、トルコ、シリア、イランの4カ国は10日、モスクワで外相会合を開いた。トルコとシリア外相の会談は2011年に始まったシリア内戦を巡って外交関係が断絶してから初めて。ロシア側の声明によると、両国の関係修復に向けた「基礎的で率直な協議」を開いた。

トルコはシリアの反体制派を支援し、アサド政権と敵対してきた。ただ、近年は国内で360万人に上るシリア難民の帰還を求める声が高まっている。エルドアン大統領が苦戦する大統領選・議会選を14日に控え、難民の帰還につながる関係改善の兆しを有権者にアピールする狙いがある。

シリア国営通信によると、シリアのメクダド外相は関係改善に意欲をみせた。一方で、トルコやトルコが支援する反体制派によるシリア北部の占領が終了しなければいけないと指摘した。

ロシアとイランはアサド政権を支援しており、トルコとシリア両外相の対話の場となる外相会合を仲立ちした。』

ECB総裁「銀行監督を徹底」 AT1債まず株主が損失負担

ECB総裁「銀行監督を徹底」 AT1債まず株主が損失負担
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR099BL0Z00C23A5000000/

『【ロンドン=南毅郎、大西康平】欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は「可能な限りきめ細かく、徹底した銀行監督を実施する必要がある」と述べ、利上げ継続の前提となる金融システムの安定に取り組む方針を強調した。クレディ・スイス・グループ救済で問題になったAT1債(永久劣後債)は「まず株主が損失を負担する」と語り、無価値にしたスイス当局の対応との違いを明確にした。

「最初の教訓は『バーゼル3』の枠組みを…

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『「最初の教訓は『バーゼル3』の枠組みを徹底的に適用しなければならないことだ」――。ラガルド氏は2008年のリーマン危機後に定めた国際的な資本規制(バーゼル3)と銀行監督の両輪を機能させることが重要だとして、足元の金融不安への対応で単純な規制強化論とは距離をおいた。

ラガルド氏は金融不安の教訓は①バーゼル3の適用②規制対象行の拡大③銀行監督の徹底④ノンバンクの監視強化――だと即答した。欧州を含む主要地域で取り組み、不安払拭へ協調を呼びかけた。

これまでラガルド氏は監督権限を持つユーロ圏の銀行は「強固だ」と訴えてきた。3月には米シリコンバレーバンクの経営破綻に続き、金融大手クレディ・スイス・グループの救済買収が決まった。5月も米地銀ファースト・リパブリック・バンクが経営破綻したが、いずれも米国とスイスが震源地で、現時点でユーロ圏には波及していない。

欧州域内にも変調のリスクは潜む。ラガルド総裁が「創設以来、最も速いスピードでの利上げ」と話す通り、ECBは2022年7月から今月4日の理事会まで、7会合連続で利上げを実施。主要政策金利は3.75%と米金融危機が起きた08年以来の水準に到達し、金融引き締めの効果を見極める重要な時期に入った。

金利上昇が預金と貸出金の利ざやの改善を通じて銀行の収益に寄与してきた半面、債券の含み損や不良債権に備える引当金が膨らみかねない構図は米国に通じる。クレディ・スイスなどの経営不安では、預金流出という古くて新しい問題への対処も課題として浮かび上がった。

ラガルド氏が「きめ細かい銀行監督」の必要性に言及したのは、金融システムの安定がインフレ退治に向けた継続利上げの前提になるためだ。厳しい規制の枠外にある投資ファンドなどのノンバンクをめぐっても「金融安定理事会(FSB)とバーゼル銀行監督委員会は注視すべきだ」と対応を呼びかけた。

世界の金融資産に占めるノンバンクの規模は21年時点で239兆ドル(約3.2京円)とおよそ半分にのぼる。FSBも金融当局にリスク監視の強化を求めており、資金流出など不測の事態を念頭に対応を急ぐ。

クレディ・スイスの救済買収で無価値になったAT1債の取り扱いについては、スイス当局の対応と一線を画す姿勢を鮮明にした。スイス当局はクレディ・スイスが発行した160億スイスフラン(約2.4兆円)規模のAT1債の全額毀損を決め、AT1債の投資家が株主以上に損失を被る異例の対応を取った。

ラガルド氏はユーロ圏の銀行で経営不安が起きた場合には「まず株主が負担するのが順序だ」と明言した。欧州連合(EU)で適用されるルールで「変更の余地はない」とも語り、銀行の破綻処理で株式による損失吸収を優先する考えを強調した。明快なメッセージには、市場の動揺をおさえたいとの意向がにじむ。

AT1債は銀行の財務が悪化した場合に投資家が損失を引き受ける。国際的な金融規制で自己資本として算入できるため欧州勢を中心に発行が進んできた。英バークレイズによると、欧州銀行全体の発行残高は22年時点で約1800億ユーロ(約26兆円)。利回りが1%上昇すると借り換えコストの増加で税引き前利益は0.8%押し下げられるという。

金融不安が高まった3月のECB理事会では一部メンバーから利上げ見送りを求める意見も出た。インフレ率や経済環境、考え方が異なる20カ国のユーロ圏の金融政策を担うECB理事会での合意形成は容易ではない。ラガルド氏は「私のおかげと思いたいが」と冗談を交えながら「ほとんどすべてのケースで、私たちは十分なコンセンサスを形成できたと思う」と政策運営に自信を示した。

ECBは過去の利上げ局面でも危機と重なり、前回の11年当時には欧州債務不安の高まりから一転して利下げを迫られた経緯がある。理事会内では「過去の教訓が思い出される」と急激な利上げには慎重論もある。

ウクライナ危機が長引くなか、インフレの抑制と金融システムの安定をいかに両立するか。ECBが発足してから前例のない試練の克服は「独裁的な中央銀行総裁ではない」というラガルド氏の政策手腕にかかっている。

Christine Lagarde
パリ出身で弁護士の経歴を持つ。仏経済・財政・産業相、国際通貨基金(IMF)専務理事などを歴任。2019年11月から現職。』

ロシア、欧州通常戦力条約を破棄へ 兵器の保有上限規定

ロシア、欧州通常戦力条約を破棄へ 兵器の保有上限規定
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR10CJ90Q3A510C2000000/

『ロシアのプーチン大統領は10日、欧州での通常兵力の削減に向けた欧州通常戦力(CFE)条約を破棄する方針を決めた。リャプコフ外務次官が審議担当に任命され、近く連邦議会で条約破棄を提案する方針だ。ウクライナ侵攻の長期化に伴う欧米との対立激化が影響しているとみられる。…

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『CFE条約は北大西洋条約機構(NATO)と旧ソ連構成国などが参加していたワルシャワ条約機構加盟国との間で欧州に配備可能な通常兵器の上限を定めた条約で、1990年に調印された。ソ連崩壊後、ロシアは2007年にNATO拡大の動きに反発して同条約の履行を停止していた。』

スリランカ、債務再編で透明性確保 日本など共同声明

スリランカ、債務再編で透明性確保 日本など共同声明
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA105R60Q3A510C2000000/

『日本などが議長を務めるスリランカの債権国会合は9日、共同声明をまとめた。スリランカが透明性のある公平な債務再編に取り組むことを確認した。最大の債権国でオブザーバーとして出席した中国には正式な参加を要請した。

日米欧など先進国で構成する「パリクラブ(主要債権国会議)」が公表した。

デフォルト(債務不履行)に陥っているスリランカは債務再編を要請した。同国は3…

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『同国は3月に債権国にあてた書簡で、債務再編に当たって債権国に対する透明性や同等性を確保し、会合外での独自の2国間交渉は控えると説明していた。

中国が今後、債権国会合で具体的な協議に応じるかが焦点になる。

共同声明によると、9日の会合にはインドやフランスなど17カ国が正式に加わった。債権をもたない国や中国、サウジアラビア、イランはオブザーバーとして出席した。』

バイデン大統領、G7サミット「オンライン出席の可能性」

バイデン大統領、G7サミット「オンライン出席の可能性」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN110JX0R10C23A5000000/

『【ワシントン=坂口幸裕】バイデン米大統領は10日、米政府債務の上限引き上げを巡る協議が難航すれば19〜21日に広島で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)にオンラインで出席する可能性があると表明した。日本を訪れず、米国で野党・共和党と交渉を続ける事態も選択肢だとの認識を示した。

バイデン氏は10日、記者団にG7サミットについて、共和との交渉次第で「行かないでオンラインで参加しなければならなくなる…

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『バイデン氏は10日、記者団にG7サミットについて、共和との交渉次第で「行かないでオンラインで参加しなければならなくなる可能性もある」と述べた。

米財務省は6月1日にも資金繰りが行き詰まり、デフォルト(債務不履行)に陥ると警鐘を鳴らす。財政改善に向けた歳出削減策を協議したい共和の主張をバイデン政権が拒む構図で膠着している。バイデン氏は9日に続き、12日も共和のマッカーシー下院議長と話し合う。

ホワイトハウスのジャンピエール大統領報道官は10日、記者団に「デフォルトの阻止は大統領にとって最も重要であり、米国経済は常に最優先事項だ」と説明した。「デフォルトに陥らないようにするのは憲法上の義務だ。大統領はそれを望んでいる」と訴えた。

バイデン氏は9日にも「解決するまで、ここにとどまるだろう」と発言し、G7サミットでの来日を見送る可能性を示唆した。2013年にも債務上限問題などを理由に当時のオバマ大統領がアジア歴訪やアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を欠席した例がある。

【関連記事】

・バイデン氏、デフォルトなら「世界が混乱」 共和を批判
・米債務上限、協議平行線 米大統領はサミット欠席も示唆
・米債務上限、議会通さず引き上げ案 バイデン氏「考慮」 』

殺人疑いで逮捕の中学校教諭 FX投資などで数百万円の借金か

殺人疑いで逮捕の中学校教諭 FX投資などで数百万円の借金か
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230511/k10014063231000.html

 ※ 子煩悩ないい人、明朗闊達ないい先生…。

 ※ しかし、「一皮剥けば」、こういうものだ…。

 ※ 「人の本性」なんてものは、知れたモンじゃない…。

『東京 江戸川区の住宅で住人の60代の男性を刃物で殺害したとして、近くの中学校の教諭が殺人の疑いで逮捕された事件で、教諭が、FX投資などで数百万円の借金を抱えていたとみられることが捜査関係者への取材で分かりました。教諭は盗みの目的で住宅に侵入した疑いがあり、警視庁は借金との関わりなど、動機について捜査する方針です。

ことし2月、江戸川区一之江の住宅で住人の山岸正文さん(63)が血を流して倒れているのが見つかり、警視庁は10日、江戸川区立の中学校教諭、尾本幸祐容疑者(36)が山岸さんの顔や首などを刃物で切りつけるなどして殺害したとして殺人の疑いで逮捕しました。
調べに対し、当初は容疑を否認していましたが、その後、黙秘しているということです。
これまでの調べで、山岸さんは外出先からの帰宅直後に殺害されたとみられることが分かっていて、警視庁は盗みの目的で住宅に侵入し、帰宅した山岸さんと鉢合わせた疑いもあるとみて捜査しています。

その後の調べで、尾本容疑者が事件当時、FX投資やギャンブルなどで数百万円の借金を抱えていたとみられることが捜査関係者への取材で分かりました。

警視庁は10日、自宅を捜索し携帯電話などを押収したということで、今後、分析を進めるなどして借金との関わりなど動機について捜査する方針です。』

合衆国法典

合衆国法典
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E6%B3%95%E5%85%B8

 ※ なるほど、8章が「8: 外国人及び国籍 (Aliens and Nationality)」、42章が「42: 公衆衛生及び社会福祉 ( The Public Health and Welfare)」とあるな…。

 ※ あくまでも、連邦議会の議決を要せず、「行政府(≒大統領)」に権限を授与する根拠法典なんだろう…。

 ※ 新型コロナが猛威を振るっていた時期は、「42章公衆衛生」優先で外国からの移入を大きく制限できる根拠になっていたが、その必要性が減少してきたんで、通常モードの「8章」の適用体制に移行した…、という話しのようだな…。

 ※ 『米国の制定法 (Statute) は、法令速報、会期別法令集、主題別法令集の3パターンで出版されるが、合衆国法典は、合衆国政府印刷局 (U.S. Government Printing Office) が発行する連邦法律についての公式の主題別法令集である。

最初に合衆国法典が発行されたのは1926年であるが、1874年に1873年12月1日までの法律を収録した第1回改訂版、1878年に第2回改訂版が発行され、全てのパブリック・ロー(”public law”。特定の個人や団体、地域のみを対象としない法律)と効力のある連邦法律を74編に分類・配列して発行された公式主題別判例集の「Revised Statutes」を整理改良したものである。

合衆国法典に注釈を付けた非公式の主題別法令集がWEST社やLawyers Coop社ら民間業者から発行されているが、こちらは司法長官の意見、行政規則、各種2次資料、立法史についてのリファレンスが付けられていて便利であることから、一般の法学学習者や法曹が利用している。

一般に合衆国法典は、法律そのものではなく、法律の一応の証拠としての価値しかないとされており、厳密には会期別法令集(”United States Statues at Large”)を参照しなければならないとされている。』という辺りも、オレ的には興味深い…。

 ※ なにしろ、「アングロサクソンの法体系」なんで、判例法(不文法)・慣習法中心の法体系だ…。

 ※ そういう中から、「パブリック・ロー(”public law”。特定の個人や団体、地域のみを対象としない法律)と効力のある連邦法律」を拾い集めて、検索し易くしたものなんだろう…。

 ※ 「一般に合衆国法典は、法律そのものではなく、法律の一応の証拠としての価値しかないとされており、厳密には会期別法令集(”United States Statues at Large”)を参照しなければならないとされている。」と、ワザワザ断っているしな…。

 ※ 「アングロサクソンの法体系」では、「成文法」よりも、「慣習法」「判例法」の方が優位であることがよくある…。

 ※ なんでもかんでも「法典」に書かれている…、というわけじゃ無いんだ…。

『出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ウィキペディア 合衆国法典へのリンクを貼るためのテンプレートに付いてはTemplate:合衆国法典を参照
アメリカ合衆国法典
Code of Laws of the United States of America Great Seal of the U.S.
National coat of arms
編集者 Office of the Law Revision Counsel
出版社 合衆国政府印刷局
OCLC 2368380
文章 アメリカ合衆国法典
Code of Laws of the United States of America – Wikisource
合衆国法典
著者 Office of the Law Revision Counsel
言語 英語
形態 法典、米国連邦政府による著作物
公式サイト http://uscode.house.gov/
コード OCLC 2368380
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合衆国法典(がっしゅうこくほうてん、United States Code, U.S.C.)は、アメリカ合衆国の連邦法律のうち一般的かつ恒久的なものを主題別に集めた公式法令集。

概要

米国の制定法 (Statute) は、法令速報、会期別法令集、主題別法令集の3パターンで出版されるが、合衆国法典は、合衆国政府印刷局 (U.S. Government Printing Office) が発行する連邦法律についての公式の主題別法令集である。

最初に合衆国法典が発行されたのは1926年であるが、1874年に1873年12月1日までの法律を収録した第1回改訂版、1878年に第2回改訂版が発行され、全てのパブリック・ロー(”public law”。特定の個人や団体、地域のみを対象としない法律)と効力のある連邦法律を74編に分類・配列して発行された公式主題別判例集の「Revised Statutes」を整理改良したものである。

合衆国法典に注釈を付けた非公式の主題別法令集がWEST社やLawyers Coop社ら民間業者から発行されているが、こちらは司法長官の意見、行政規則、各種2次資料、立法史についてのリファレンスが付けられていて便利であることから、一般の法学学習者や法曹が利用している。

一般に合衆国法典は、法律そのものではなく、法律の一応の証拠としての価値しかないとされており、厳密には会期別法令集(”United States Statues at Large”)を参照しなければならないとされている。

このような不便を解消するため、合衆国法典そのものを法律とすることが推進されている。これは”positive law codification”[注 1][1]と呼ばれており、現在27[2]の編がこれに該当している[3]。

法典の構成

合衆国法典は連邦議会で成立した連邦法律を主題別に分類し、検索を容易にしたものである。個々の法律はまず分野別に分類される。この分類は編 (title) と呼ばれ、1から番号が付されている。たとえば、倒産に関する法律は第11編に、著作権に関する法律は第17編に、公衆衛生と社会福祉に関する法律は第42編に分類される。第34編「海軍」は第10編「軍隊」に統合されたため、現在用いられていない。複数の分野に当たる法律は、複数の編に重複して分類されることがある。

編の下に章 (chapter) や条 (section) がある。個々の法律を合衆国法典で表す場合、通常「X編 U.S.C. Y条」の形式をとる。例えば、障害を持つアメリカ人法第1条は第42編(公衆衛生と社会福祉)第126章(障害者機会均等)第12101条に収録されているので「合衆国法典第42編第12101条 42 U.S.C. § 12101」、同法第401条は第47編(電信)第5章(有線・無線通信)第225条に収録されているので「合衆国法典第47編第225条 47 U.S.C. § 225」と表される。

編 (title)
1: 総則 (General Provisions)
2: 議会 (The Congress)
3: 大統領 (The President)
4: 旗・紋章、ワシントンDC、州 (Flag and Seal, Seat of Government, and the States)
5: 政府組織及び職員 (Government Organization and Employees)
6: 保証証券 (Surety Bonds), 国内治安 (Domestic Security):保証証券編については、1947年廃止。
7: 農業 (Agriculture)
8: 外国人及び国籍 (Aliens and Nationality)
9: 仲裁 (Arbitration)
10: 軍隊 (Armed Forces)
11: 破産 (Bankruptcy)
12: 銀行及び銀行業 (Banks and Banking)
13: 国勢調査 (Census)
14: 沿岸警備隊 (Coast Guard)
15: 商業及び貿易 (Commerce and Trade)
16: 保全 (Conservation)
17: 著作権 (Copyrights)
18: 犯罪及び刑事手続き (Crimes and Criminal Procedure)
19: 関税 (Customs Duties)
20: 教育 (Education)
21: 食品及び薬品 (Food and Drugs)
22: 国外関係及び通商 (Foreign Relations and Intercourse)
23: ハイウェイ (Highways)
24: 病院及び精神病院 (Hospitals and Asylums)
25: インディアン (Indians)
26: 内国歳入 (Internal Revenue Code)
27: 酒類 (Intoxicating Liquors)
28: 司法及び司法手続き (Judiciary and Judicial Procedure)
29: 労務 (Labor)
30: 鉱物資源及び鉱業 (Mineral Lands and Mining)
31: 資金及び財政 (Money and Finance)
32: 州兵 (National Guard)
33: 可航水域 (Navigation and Navigable Waters)
34: 海軍 (Navy):1956年廃止。10編に統合
35: 特許 (Patents)
36: 愛国的団体及び式典 (Patriotic Societies and Observances)
37: 武官組織の給与及び手当 (Pay and Allowances of the Uniformed Services)
38: 退役軍人給付 (Veterans’ Benefits)
39: 郵便 (Postal Service)
40: 国有建築・資産・作品 (Public Buildings, Properties, and Works)
41: 公共契約 (Public Contracts)
42: 公衆衛生及び社会福祉 ( The Public Health and Welfare)
43: 公有地 (Public Lands)
44: 政府刊行物及び公文書 (Public Printing and Documents)
45: 鉄道 (Railroads)
46: 船舶 (Shipping)
47: 電信 (Telecommunications)
48: 領土及び島嶼領域 (Territories and Insular Possessions)
49: 交通 (Transportation)
50: 戦争及び国防 (War and National Defense)
51: 国家及び商業宇宙計画 (National and Commercial Space Programs)
52: 投票及び選挙 (Voting and Elections

)
54: 国立公園サービス及び関連計画 (National Park Service and Related Programs) 』

〔「英米法」というものの話し…。〕(再掲)
https://http476386114.com/2022/11/30/%e3%80%94%e3%80%8c%e8%8b%b1%e7%b1%b3%e6%b3%95%e3%80%8d%e3%81%a8%e3%81%84%e3%81%86%e3%82%82%e3%81%ae%e3%81%ae%e8%a9%b1%e3%81%97%e3%80%82%e3%80%95%ef%bc%88%e5%86%8d%e6%8e%b2%ef%bc%89/

バイデン米政権、不法入国者減少のための措置を公表

バイデン米政権、不法入国者減少のための措置を公表
(米国、メキシコ、キューバ、ニカラグア、ハイチ)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/01/5b6c5573db18cd2a.html

『2023年01月06日

米国のジョー・バイデン大統領は1月5日、メキシコと接する国境からの移民の不法な入国が増加していることを受けて、その減少に向けた措置を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。また、国境警備を管轄する国土安全保障省(DHS)は同日、措置の詳細を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

税関・国境警備局(CBP)の統計によると、不法な入国に対する取り締まり件数は新型コロナウイルスの感染拡大で減少した2020年度(2019年10月~2020年9月)を除いて年々、増加傾向にある。特にバイデン政権が発足して以降、件数は急増しており、2021年度が約196万件、2022年度は約277万件で、そのほとんどがメキシコと接する国境からとなっている。これに対して、共和党は、バイデン政権が移民に開放的な姿勢を示しているためにこの様な事態を招いたと厳しく批判している。

移民は2022年11月に実施された中間選挙で、有権者が重視する政治課題の1つに挙げられており(2022年8月4日記事参照)、政権としても何らかの成果が必要となっている。2022年11月にCBP長官を務めていたクリス・マグナス氏が辞任に追い込まれたのは、不法な入国件数の急増に対処できていないことを理由とした事実上の更迭とされている(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版2022年11月12日)。

バイデン大統領は記者会見で、政権としては発足当初に包括的な移民制度改革法案を公表しており(2021年1月21日記事参照)、それが成立していないのは共和党が拒否したからだと指摘した。法案が成立するまでは、政権として手元にある手段を講じていくとし、トランプ前政権時に発動された「タイトル42」(注1)も利用しつつ、秩序立った安全かつ人道的な対応を行っていくとした。DHSのプレスリリースによると、「タイトル42」はいずれ終了させるとしつつ、主に次の4つの措置を講じていくとしている。

キューバ、ハイチ、ニカラグアからの入国者に対して、新たな臨時入国許可制度を設ける。これは、ベネズエラ、ウクライナからの入国者向けに設けて成功した制度をモデルとする。

CBPが公開する入国手続き用アプリ「CBO One」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを通じて、非米国市民が米国への入国通関所での面談予約を取得できるメカニズムを提供する。

「タイトル42」が適用できない入国者に対して、「タイトル8」(注2)の執行を強化する。これには亡命申請処理のためのリソース増強なども含む。

補完的措置として、DHSと司法省は近く、米国またはパートナー国で利用可能な新たな、および既存の合法的な手続きの利用を奨励し、亡命申請ができない者に一定の条件を設ける規則案を公表する。

バイデン大統領は2023年1月8日に、メキシコとの国境に接するテキサス州のエルパソを訪問し、国境警備の現状を視察するとともに、近隣の関係者と面会して必要な措置などについて意見を聴取するとしている。その上で、共和党に対して行動を働きかけていくとした。

(注1)合衆国法典(USC)第42章に規定されており、行政府に対して、外国からの入国者を経由した感染症防止のために移民の入国を制限する権限を与えている。トランプ政権時の2020年3月に新型コロナウイルスの感染拡大を理由に発動され、亡命申請者を米国内に滞在させず即時に本国へ強制送還する根拠となった。

(注2)USC第8章に規定されており、行政府に対して、許可なく米国に入国した者および米国滞在の法的根拠を確立できない者を国外退去させることに加え、将来的な移民手続きも禁じるなどの権限を与えている。

(磯部真一)

(米国、メキシコ、キューバ、ニカラグア、ハイチ)

ビジネス短信 5b6c5573db18cd2a
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米政府、不法越境者の再入国を制限 12日から移民新規制

米政府、不法越境者の再入国を制限 12日から移民新規制
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN091BM0Z00C23A5000000/

『【シウダフアレス(メキシコ北部)=清水孝輔】米政府は12日、不法移民対策の新規制を導入する。不法入国者には難民申請の資格を認めず、再入国を最低5年間禁止する。新型コロナウイルス対策という名目で導入した即時送還措置「タイトル42」の失効に合わせ、厳しい規制を設けて不法越境の抑制を狙う。

トランプ前大統領は2020年、コロナ対策という名目でタイトル42を導入した。コロナの緊急事態宣言が終了するのに伴…

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『コロナの緊急事態宣言が終了するのに伴い、米東部時間11日23時59分にタイトル42が失効する。タイトル42の終了後は「タイトル8」と呼ぶ通常の移民対策を適用する。移民はスマートフォンのアプリを通じて難民申請を届け出る必要がある。

米政府は難民申請の条件を厳しくする。移民が米国をめざす過程でメキシコなど他の国を通過した場合、経由国でも難民申請を出したことを示すように求める。難民申請が認められない場合、メキシコや母国への送還措置を受け、米国には最低でも5年間再入国できなくなる。禁止期間に再び米国への越境を試みて拘束されると、罪に問われる可能性がある。

メキシコ北部の国境都市シウダフアレスの移民保護施設で責任者を務めるフアン・フィエロ氏は「多くの移民は新規制を理解していない。米国に入国しやすくなるという誤情報が拡散している」と指摘する。マヨルカス国土安全保障長官は10日、記者会見で「タイトル8の適用は不法移民にとってより厳しい結果を意味する」と強調した。

バイデン米大統領は9日、メキシコのロペスオブラドール大統領と移民対策について電話協議した。メキシコはタイトル42で送還対象となる自国以外の中南米出身者を部分的に受け入れてきた。メキシコはタイトル42の失効後も、南米ベネズエラやカリブ海のキューバなど一部の国の出身者を受け入れる見通しだ。

移民問題は24年の米大統領選で大きな争点の1つになっている。米共和党はバイデン政権の移民対策が不十分だと批判してきた。大統領選への再選出馬を表明したバイデン氏は移民に対して厳しい措置をとることで、共和党からの批判をかわす狙いがある。

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