EUが中国企業に制裁検討 対ロ輸出、兵器転用を阻止
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR08CJ70Y3A500C2000000/
『【ブリュッセル=辻隆史】欧州連合(EU)がロシアのウクライナ侵攻に関連し、中国企業への制裁を検討していることが分かった。ロシアに軍事転用が可能な製品を販売したとして、近く対象企業への制裁案を議論する。実施すれば中国との関係悪化につながるのは確実だ。
英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)が7日に報じ、その後EU関係者が記者団に制裁案の検討を認めた。EUの11回目の対ロ制裁案は、第三国を通じた制裁逃…
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『EUの11回目の対ロ制裁案は、第三国を通じた制裁逃れの阻止を狙う。
EU関係者は8日「ロシアへの輸出を禁じられている製品が、同国やその軍産複合体に渡るのを防ぐことに焦点を当てる」と述べ、新たな制裁の意義を強調した。
FTによると、今回の制裁案には複数の中国企業が含まれる。キング・パイ・テクノロジーといった電子部品を扱うメーカーなどが候補に挙がっている。シノエレクトロニクス、シグマ・テクノロジーなど香港企業も対象となる見通し。
半導体やドローン(無人機)、無線システムなどの製品は軍事への転用が可能なため、米欧はロシアに渡ることを警戒する。ロシアへの直接の輸出を取り締まっても、中国など第三国経由でロシアに輸出されてしまう問題がかねて指摘されていた。
香港のシノエレクトロニクスについては4月、米国の半導体をロシアに輸出している疑いがあると日本経済新聞と英字媒体「Nikkei Asia」が報じている。香港に近い中国・深圳市には半導体や電子部品が取引される市場がある。
キング社などは2022年に米商務省が安全保障上問題のある企業を並べた「エンティティー・リスト(EL)」に加えるなど、米国が制裁対象に指定する。EUも追随する形となる。中国に加え、イランの企業も対象になるもようだ。
EUの制裁対象になった場合、加盟国内での企業資産が凍結される可能性もある。中国企業がEUの制裁対象になるのは初めてとみられ、中国の反発は必至だ。
週内にも欧州委員会の案を加盟国で本格的に議論するが、中国との貿易を重視する国からは慎重論が出るとの見方がある。成立には加盟27カ国の全会一致での承認が必要となる。別のEU関係者は8日「協議は難航するかもしれない」と語った。
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青山瑠妙
早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
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ひとこと解説 この制裁案が成立するためには加盟27ヵ国の全会一致の承認が必要であり、成立するかは微妙である。中国が直接ロシアに武器を提供したという証拠のないことを理由にEUは中国企業への制裁を渋ってきたので、制裁案を協議することになったのは大きな政策転換と言える。ペースは遅いかもしれないが、EUは少しずつアメリカの政策に歩み寄っている。
2023年5月9日 7:11いいね
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説 制裁を課す理由はおそらくロシアへの軍事技術と武器供与を阻止することだろうが、制裁だけでそれを阻止することができない。企業は利益を追求するもので、制裁で被る不利益とロシアへの輸出で得られる利益を比べ、どっちが大きいか。しかもリストに載せられた以上、ロシアへの輸出をやめても、欧米諸国でのビジネスができない。逆に追い込まれてもっとリスキーなビジネスに手を出すかもしれない
2023年5月9日 7:14 』