米国、サウジ・インドとインフラ構想 中東で反攻狙う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN08C7K0Y3A500C2000000/
『【ワシントン=坂口幸裕】米政府が中東で大規模なインフラ整備の構想をサウジアラビアやインド、アラブ首長国連邦(UAE)と協議していることがわかった。米ニュースサイトのアクシオスが6日報じた。中東で影響力を強める中国に対抗し、米国が地域に関与する姿勢を示す狙いがある。
米ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は7日、サウジ西部のジッダで同国の実力者ムハンマド皇太子や、安全保障を担当…
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『米ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は7日、サウジ西部のジッダで同国の実力者ムハンマド皇太子や、安全保障を担当するインド、UAEの高官と会談した。米政府は声明で「インドや世界とつながり、安全で豊かな中東地域を築く共通ビジョンを進める」と記した。
アクシオスによると、4カ国の協議では中東の湾岸諸国を鉄道網で結び、中東とインドを航路でつなぐ計画が議題になった。2021年に設けた中東のインフラ計画を話し合う米国、インド、イスラエル、UAEの4カ国による枠組み(I2U2)で構想が浮上し、サウジも協議に加わった。
サリバン氏は4日の講演で、I2U2について「基本的な考え方は南アジアと中東、米国を経済技術や外交を発展させる方法で結ぶことだ」と指摘。「すでに多くのプロジェクトが進行中で、数カ月の間に新たなステップを踏み出す」と語っていた。
米シンクタンク米国平和研究所はI2U2を巡り、インド太平洋地域で中国を抑止する日米豪印の枠組み「Quad(クアッド)」になぞらえる。中東版「クアッド」と位置づけ、民間協力を含む水、エネルギー、輸送、宇宙、健康、食糧安保の重要6分野の課題に取り組む。22年7月には初の首脳会合も開いた。
インフラ支援は米政府が描く中東戦略の一環になる。イランを共通の脅威と定め、パレスチナ問題で対立してきたイスラエルとアラブ諸国の連携を志向する。
22年7月にはサウジが基準を満たすすべての民間航空機に領空の飛行を容認した。それまで原則認めていなかったイスラエル機を含み、イスラエルとアラブ諸国の関係強化をめざす米国の方針に沿った措置だった。バイデン氏は「この決定はより統合し、安全で安定した中東地域への道を開く」と評価した。
ただ、サウジとイランの外交正常化によって、地域でイランを孤立させ、イスラエルとサウジが国交を結ぶ思惑の想定が狂った。バイデン氏とイスラエルのネタニヤフ首相とのすきま風もささやかれ、イラン包囲網を築く足かせになる。
米国の影響力低下も懸念材料になる。3月のサウジとイランの関係正常化は中国が主導し、米国は交渉から外された。サウジと中国は中国の広域経済圏構想「一帯一路」で協力を深め、脱石油依存を目指すサウジの経済構造改革「ビジョン2030」でも連携する。
中国は石油消費の7割を輸入に頼る。経済成長の維持にはエネルギーの安定確保が条件で、サウジは重要な輸入相手国になる。世界有数の原油輸出国であるサウジは安定した輸出先の確保と自国産業の育成を重視し、互いにもたれ合う構図が成り立つ。
一方、米国にとって中東の価値は下がった事情もある。シェール革命でエネルギーの自立を実現し、かつて原油を依存していたサウジの優先度は低くなった。人権問題を重視するバイデン政権はサウジに厳しい目を向け、両国関係はぎくしゃくしたまま。中東で足場を築き直すのは容易でない。』