台湾有事「日本が決定的な抑止力」 元米大統領副補佐官

台湾有事「日本が決定的な抑止力」 元米大統領副補佐官
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB030KB0T00C23A5000000/

『米国のトランプ前政権で対中政策の実務を取り仕切ったマット・ポッティンジャー元大統領副補佐官が日本経済新聞の取材に応じ、台湾有事を巡り「日本の戦略が決定的な抑止力になる」と指摘した。日本が東アジアの安全保障で役割を拡大することで中国を阻止できると強調した。

中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は台湾統一の野心を隠さず、台湾の周辺海域は緊張が高まっている。ポッティンジャー氏は「中国に支配されたアジ…

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『ポッティンジャー氏は「中国に支配されたアジアは日本にとって居心地の良い場所ではない」と指摘。台湾に対する攻撃は「日本の主権に対する重大な脅威」とし、中国の「軍事的な冒険」を阻止するのが日本の使命と述べた。

米国は韓国やフィリピンとも軍事協力の強化を急ぐが「経済力や防衛能力を考えると日本の果たす役割は最も大きい」とも指摘した。

すでにバイデン米大統領は再三にわたり、中国が台湾を攻撃した場合、米国は台湾を防衛するとする趣旨の発言をしている。ポッティンジャー氏は「中国政府は台湾有事への米国の関与は避けられないと認識済みで、実際に東アジアで抑止力を発揮できるかは日本の今後の方針が鍵を握る」と分析する。

日本は2022年末、防衛関連費を国内総生産(GDP)比で2%に倍増させ、陸海空の自衛隊と米軍との調整を担う「常設統合司令部」を創設するなど新たな安全保障戦略を打ち出している。ポッティンジャー氏は「岸田文雄首相の取ったステップを称賛する」としつつ、「時間がない。同戦略を迅速に実行に移す必要がある」と提言した。

対中強硬派として知られるポッティンジャー氏は、中国政府の政策の意図を読み取るには習氏の国内向けのメッセージを読み解くべきだと強調する。

一例に挙げたのが13年1月、習氏が国家主席に就任する直前の党幹部向けの演説だ。習氏はこの演説で「資本主義は必然的に終焉(しゅうえん)し、社会主義は必然的に勝利する」と強調したが、この内容は「海外には隠されていた」(ポッティンジャー氏)。

ポッティンジャー氏が中国語でのみ公開された同演説の原稿を初めて目にしたのはトランプ氏の側近としてホワイトハウスにいた19年。米中が貿易問題で激しい交渉を繰り広げていた頃で、この演説をもって「習氏の世界観や統治の目標がはっきり理解できるようになった」と明かした。

「中国政府は習氏の言葉を隠し、穏やかな内容に変換してから対外発信しようと努めている」と分析する。習氏の本質は国内向けの発信にあり、「習氏が自身の言葉で語った内容を読み解いてこそ、中国政府の次の動きを予測し、理解できる」と訴えた。

ポッティンジャー氏は1990年代後半から欧米メディアの記者として中国に駐在。イラクやアフガニスタンでの従軍を経て、17年に米国家安全保障会議(NSC)のアジア上級部長、19年に国家安全保障を担当する大統領副補佐官となった。現在は米スタンフォード大学フーバー研究所に所属する。』