上海機構、中国・ロシアは反欧米 インドは「中立」腐心

上海機構、中国・ロシアは反欧米 インドは「中立」腐心
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM051VA0V00C23A5000000/

『2023年5月5日 21:34

【ベノーリム(インド南部)=岩城聡、北京=田島如生】中国とロシアが主導する地域協力組織「上海協力機構(SCO)」の外相会合が5日、インドで閉幕した。中国外務省によると、エネルギーや金融などで協力を確認した。中ロは反欧米の姿勢を鮮明にするが、初の議長国インドは「中立」を貫こうとしている。

中国の秦剛国務委員兼外相は会合で、米国による対中半導体規制を念頭に「国際経済・貿易の秩序や市場のルールを損なう…

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『中国の秦剛国務委員兼外相は会合で、米国による対中半導体規制を念頭に「国際経済・貿易の秩序や市場のルールを損なういかなる行為にも反対する」と主張した。サプライチェーン(供給網)の安定と維持に向けた協調を呼びかけた。

ロシアのラブロフ外相は会議の途中でメディアの前に現れ、ウクライナ侵攻を巡り「今起きていることは地政学上の重要な問題だ。西側諸国が『覇権を維持し、全ての人に自分の意思を通したい』という欲求をやめなければ、国連で危機は解決されないと誰もが理解しているはずだ」と欧米を非難した。

SCOは中ロに加え、インドやパキスタン、旧ソ連の中央アジア諸国が加盟する。

初の議長を務めたインドのジャイシャンカル外相の表情は終始硬かった。「世界の人口の40%以上がSCOのメンバーであり、私たちの集団的な決定は必ずや世界に影響を与えるだろう」と述べ、中ロにも欧米にもくみしない姿勢を貫いた。

インドのモディ首相は2022年9月、ロシアのプーチン大統領に「今は戦争の時ではない」と苦言を呈し、プーチン氏は「現状が一刻も早く終わるよう全力を尽くす」と約束したとされるが、その兆しが見えずインドはいら立っているとされる。

インドは23年、20カ国・地域(G20)とSCOの両方の議長国を務める。国境紛争を巡り中国と緊張関係が続く半面、ウクライナに侵攻したロシアとの貿易拡大は欧米の批判を浴びる。外交的に綱渡りの状態にある。

インドは日米やオーストラリアとの協力枠組み「Quad(クアッド)」にも参加する。「等距離外交」を標榜するインドとしては「クアッドのなかで、インドだけがふらついている」とこれ以上、米国に思われたくないというのが本音だ。

先週、インドの首都ニューデリーで行われたSCOの国防相会議でも、議長を務めたシン印国防相は「国連憲章に基づき平和と安全を維持し、主権を尊重することが重要だ」と強調、事実上のロシア批判をしてみせた。

さらにインドを揺さぶるのは、中東で進む地政学的な再編の兆候だ。

サウジアラビアは近く、SCOの「対話パートナー」に正式になる見込み。サウジは3月、中国の仲介でイランとの外交正常化に合意した。サウジはシリアとの関係修復にも動いており、ロシアが仲介しているとされる。

サウジが中国やロシアとの関係を深めれば、中東の安全保障を危惧する米国がインドも含めSCO全体への反発を強める可能性がある。

インドの有力シンクタンクORFのサミール・パティル氏は「ウクライナ侵攻を機に、より親密になったロシアと中国がSCOに居心地の良さを感じている。しかし、インドにとっては、あくまで経済的に中央アジアと関わり続けるためのステージになるだろう」と語る。

一方、ジャイシャンカル氏とパキスタンのブット外相の間での2国間会談はなかったもようだ。パキスタン外相の12年ぶりのインド訪問は、核兵器を持つアジアのライバル同士の緊張関係に雪解けの可能性があるとの臆測を呼んでいる。

公式の場での両外相の握手はなかったものの、関係者によるによると4日夜に開かれた夕食会では握手が交わされたという。』