いざというとき自衛隊は機能するか 安倍晋三元総理が私に語ったひと言

いざというとき自衛隊は機能するか 安倍晋三元総理が私に語ったひと言
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 ※ 『「副長。組織を作っても使いこなせるかは政治家次第だよ。その時の総理がいかに使うかだ。有事の際に君たちが全力で戦えるようにするのも政治家だ。政治家の責任は重い」』…。

 ※ そこは、ちょっと違うだろう…。

 ※ 最終的には、「国民個々人の防衛意思」にかかっている…。

 ※ ウクライナ見れば、分かるだろう…。

 ※ 国民個々人が「日本国を防衛しなくちゃ!」と思わないならば、「政治家の責任」もへったくれも有りはしない…。

 ※ 全ては、その一点に懸かっている…。

『 いま、日米の政府高官、および軍、自衛隊幹部の間で、ひそかに「台湾有事」を想定した机上演習が行われている。

中国はいつ台湾に侵攻するのか。なにがそのきっかけになるのか。攻撃の第一波はどのようなものか。上陸戦はどう展開するのか。米軍の参戦、そして日本はどのように巻き込まれていくのか。

そうした机上演習のコーディネーター、教官役を務める元陸将・山下氏が明かす想定されるもっとも現実的な「台湾有事」のシナリオ。その驚くべき結末とは――。(『完全シミュレーション台湾侵攻戦争』より)

前編記事<台湾侵攻戦争に日本は必ず巻き込まれる 考えられる3つのパターン​>

日本は「中立国」なのか

中国の台湾侵攻は国対国の戦争であるとの立場に立つのなら、日本政府は戦時国際法により中立国の義務を果たすことになる。戦時国際法とは交戦当事国とそれ以外の第三国との関係を定める国際法である。中立国は戦争に参加してはならず、また交戦当事国のいずれにも援助してはならず、平等に接する義務を負う。

義務とは次の3項である。

回避義務:中立国は直接、間接を問わず交戦当事国に援助は行わない

防止義務:中立国は自国の領域を交戦当事国に利用させない

黙認義務:中立国は交戦当事国が行う戦争遂行過程において不利益を被っても黙認する

第二次世界大戦時、永世中立国のスイスは自国領空を侵犯した航空機は連合軍、枢軸軍を問わず撃墜した。日本が台湾の艦船や航空機を攻撃することは考えられず、領空侵犯があっても最寄りの飛行場に強制着陸させることになるであろう。艦船についても、人道的な措置として寄港拒否はしない。

Photo by GettyImages

中国は、一つの中国の原則のもと、日本に逃避した艦艇や航空機は自国の国有財産であるとして返還要求すると予想される。日本政府が中国の要求を呑み、返還することは考えられない。そんなことをすればアメリカはもとより多くの諸国の強い反発を招くことになる。

日本政府が返還を拒否すれば、中国は「台湾問題は内政問題である。日本の対応は中立国の義務ではなく、中国艦艇の拿捕及び航空機の占有である」として激しく反発するだろう。

対抗措置として、尖閣諸島の確保を目指して部隊を派遣するか、日本へ避難した艦船・航空機を精密誘導兵器によって攻撃する可能性がある。

この場合、日本政府は武力攻撃事態に認定して自衛隊に防衛出動を命じ、自衛隊は直接中国軍と交戦することになる。

インド太平洋軍は、アメリカ政府の軍事介入の意思決定が迅速に行われることを前提にして台湾有事の全般作戦計画を立案し、日本との共同作戦計画を策定する。そして、台湾との共同作戦計画を策定するか、できなければ台湾軍の防衛構想を承知する必要がある。

インド太平洋軍の作戦目的は、中国の台湾占領意図を粉砕し、核戦争への拡大を抑止することである。在日米軍基地は重要な作戦基盤であり、日本の自衛隊の協力は作戦上、必要不可欠の要素となる。』

『安倍晋三総理(当時)が語ったひと言とは

書籍『完全シミュレーション台湾侵攻戦争』を通じて理解していただきたいことは、台湾有事が発生すれば日本の南西諸島及び海域は戦場となり、好むと好まざるとにかかわらず日本は必ず巻き込まれるということである。

ウクライナ戦争では、多くの建物が破壊されている

日本有事に、国民の生命と財産を守るために、いま何をしなければならないのか。防衛力を抜本的に強化し、抑止力を高めるとともに、政府は事態の推移を的確に読み取り、適切な状況判断に基づいて国民保護や防衛作戦の準備及び防衛作戦を行わなければならない。
私は陸上幕僚副長として、2013年9月に行われた自衛隊高級幹部会同の総理主催のレセプションに参加した。

安倍晋三元総理と自衛隊(写真は2018年の様子)Photo by GettyImages

その席上、自衛隊最高指揮官である安倍晋三総理(当時)に質問する機会を得た。

「総理が創設された国家安全保障局が、いざというときに日本の司令塔として役に立ちますね」

「副長。組織を作っても使いこなせるかは政治家次第だよ。その時の総理がいかに使うかだ。有事の際に君たちが全力で戦えるようにするのも政治家だ。政治家の責任は重い」

政治家の矜持について静かに語った安倍総理の顔をいまも忘れない。

一度、戦争が開始されたら多くの自衛隊員や兵士が死傷し、一般市民にも多くの犠牲者が発生する。

もちろん台湾有事が発生しないように、外交努力を最大限に行うことは論を俟たない。クラウゼヴィッツは「戦争は政治の延長線上にあり、外交が失敗すれば戦争になる」と述べている。外交にはその後ろ盾となる防衛力が必要である。抜本的に強化された防衛力を抑止力として、平和構築の外交手段として政治家は活用しなければならない。

戦争には勝者も敗者も存在せず、あるのは荒廃した国土と多くの人々の犠牲と悲しみである。

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