EU、外交・安保「全会一致」見直し論 独仏など提起

EU、外交・安保「全会一致」見直し論 独仏など提起
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR050360V00C23A5000000/

『【ブリュッセル=辻隆史、ウィーン=田中孝幸】欧州連合(EU)の外交・安全保障政策の決定方法をめぐり、見直し論が浮上した。フランスやドイツなど9カ国が4日、現在の全会一致のルールを改め、「特定多数決」と呼ばれる仕組みを導入する案を提起した。迅速な意思決定をめざすが、小国の意見の軽視につながるおそれもある。議論は難航しそうだ。
9カ国は同日、全会一致ルールの見直しを求めて連携する有志国グループを結成…

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『9カ国は同日、全会一致ルールの見直しを求めて連携する有志国グループを結成したとの声明を公表した。仏独に加えてイタリア、スペイン、ベルギー、オランダ、フィンランド、ルクセンブルク、スロベニアが名を連ねた。

「目的は、EUの外交政策の意思決定の有効性と迅速性を高めることだ」。声明ではロシアのウクライナ侵攻を引き合いに出し、こう強調した。

EUの意思決定の仕組みは複雑だ。加盟国政府がメンバーとなって法律などを協議するEU理事会の決定方式には全会一致のほか、人口が多い国が多い票数を持つ特定多数決(QMV)などがある。

QMVはEU加盟27カ国の55%以上、かつその人口がEU人口の65%以上であることを満たす二重多数決の仕組みをとる。QMVを採用する政策分野もあるが、EUは外交・安保政策に関しては全会一致ルールを採用してきた。

全会一致の見直し機運が出てきたのは、一部の小国の反対を受けて全体のコンセンサス(同意)づくりに時間がかかるケースが増えているためだ。ハンガリーが念頭にある。

EUとハンガリーは、同国での司法の独立性の侵害など「法の支配」をめぐる問題で対立する。「ポピュリスト」と称される同国のオルバン首相は、加盟国なのにもかかわらずEUを積極的に批判する。EUの対ロ制裁や財政支援に反対姿勢を示し、そのたびに他の加盟国は妥協などの調整を迫られた。

ロシアや中国とどう接するかが外交・安保の焦点となるなか、有志国は全会一致でいちいち方針の擦り合わせをしていては米国などに出遅れるといった危機感を持つ。

ただ現行の仕組みはEU条約をもとにつくられたもので、改革には高いハードルがある。声明では「条約に規定されている条項を基礎に、実用的な方法で意思決定方法を改善する」と主張するにとどめた。賛同する他の国の参加を歓迎したほか、議論の内容は加盟国と共有するとした。

ハンガリーなどが反発するのは必至だ。EUは自由や民主主義といった価値観を共有する国々が、大国・小国を問わず集い共通の政策の実現をめざすのが理念だ。意見が衝突しても、合意に向けて首脳や閣僚など様々なレベルで緊密に議論する。

特に見解が割れやすい外交・安保で大国の主張ばかりが通ることになれば、EUの求心力の低下に拍車をかける可能性もある。

「(EUの)理事会で午前3時半までする議論は時には少し疲れることもあるが、やる価値はある。それは民主主義と多様性の付加価値だ」。オーストリアのネハンマー首相はすぐさま反応し、コンセンサスの重要性を訴えた。』