大阪カジノの晴れぬ霧 銀行団、巨額融資にためらいも

大阪カジノの晴れぬ霧 銀行団、巨額融資にためらいも
金融取材メモ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB241210U3A420C2000000/

 ※ まさか、「感染症」「パンデミック」みたいなものに直撃されるとは、関係者の誰もが思わんかったろうな…。

 ※ 世の中には、そういう「リスク」も、潜んでおったわけだ…。

『日本初のカジノを含む大阪の統合型リゾート(IR)計画が4月に政府の認定を受け、2029年秋〜冬ごろの開業へ動き出した。事業費は1兆800億円と巨額で、協調融資の組成額は5500億円と空前の規模になる。融資団には20社前後の参加が期待されるが、新型コロナウイルスの流行で世界中のカジノが営業停止に追い込まれた記憶も生々しい。金融機関の目線は厳しさを増している。

国際会議場や劇場、ホテル、カジノを一体…

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『国際会議場や劇場、ホテル、カジノを一体で整備するIR。プロジェクトのゆくえを左右するのが資金調達の成否やその条件だ。ギャンブルの依存症や治安への不安など住民に忌避感も残り、資金を支える銀行にとっては難しい案件といえる。

参加行を率いるリードアレンジャーは、大阪を源流のひとつとする三菱UFJ銀行と三井住友銀行が務める。幹事行の呼びかけにどれだけの金融機関が応じるかによるが、両行で計2000億〜3000億円程度を負担する見込みだ。

りそな銀行とSBI新生銀行が参加の意向を示し、三井住友信託銀行や日本政策投資銀行も検討を進める。幹事行は地域金融機関や生命保険会社にも参加を呼びかけ、オールジャパンの様相を呈している。総額5500億円の協調融資は、新千歳空港など北海道にある7つの空港を民営化した際の融資額(約3600億円)を上回り、国内で最高額となる。

ところが参加行を想定する一覧表で、みずほ銀行の応諾額は空欄のままだ。前向きな返事はまだ届いていないという。

みずほがIRへの融資をはなから除外しているわけではない。むしろ計画が撤回された横浜では京浜急行電鉄や大成建設、電通などからなる「八社会」とカジノの運営を担う海外企業で構成する陣営に、自らを中心とする銀行団が6000億円融資する計画を温めていた。

大阪で足並みがそろわないのは、融資を巡る考えの違いを埋めきれないからだ。

三菱UFJと三井住友は事業から将来得られるキャッシュフローを返済の原資とするプロジェクトファイナンスを前提に進める。対するみずほは企業体の信用力を裏付けにした企業向け融資を推し、プロジェクトファイナンスと一線を画す。最大1000億円の融資を期待されるみずほが不参加となれば、ほかの金融機関が穴埋めすることになる。

慎重なのはみずほだけではない。IRの舞台となる夢洲は人工島で、地盤沈下や土壌汚染のリスクが残る。地盤をかさ上げしたり、土壌を入れ替えたりして想定外の費用が発生したとき、だれが費用を負担するのか。融資に際してはこうしたリスクを一つひとつ洗い出し、表面化した際の解決策を決めておく必要がある。

融資に前向きな銀行の幹部でさえ「懸念を解消できていない」と決裁できずにいる。大口の参加を期待されていた生命保険会社は要請を断った。当初の予定より応諾額を減らした銀行もある。みずほがプロジェクトファイナンスに慎重な姿勢を崩さないのも、そこに潜むリスクを見極めきれずにいるからだ。

コロナ禍で世界的にオンラインカジノの市場が急成長し、カジノが収益の約8割を稼ぐ大阪の計画を不安視する向きもある。韓国でカジノの運営に携わるセガサミーホールディングスによると、21年の来場者は前の年から57%も減った。感染症の流行で融資の前提となる収益計画が根底から揺さぶられる事態を目の当たりにし、金融機関の熱気も薄れているように映る。

(渡辺淳)

話題の金融ニュースの裏側で何が起きているのか。金融機関や金融庁を日々取材する現場記者の取材メモから読み解きます。
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