陸上自衛隊 ヘリ事故 機体を海中から引き揚げ

陸上自衛隊 ヘリ事故 機体を海中から引き揚げ
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230502/k10014055671000.html

 ※ これで、「事故原因」が解明できるかな…。

 ※ 今日は、こんな所で…。

『2023年5月2日 13時48分

陸上自衛隊のヘリコプターが沖縄県の宮古島の周辺で消息を絶った事故で、2日昼前、民間の作業船が機体を海中から引き揚げました。

先月6日、隊員10人が乗った陸上自衛隊のヘリコプターが宮古島の周辺で消息を絶った事故では、水深106メートルの海底で損壊した機体の一部が見つかり、これまでに6人の死亡が確認されています。

民間の作業船2隻による機体の回収作業は2日朝から始まり、午前11時45分ごろ、機体を海中から引き揚げました。

機体は大型のネットに包まれていて、甲板にのせられました。

引き揚げられた機体は原形をとどめないほどバラバラに壊れていて、中には燃料タンクとみられるものなどが確認できました。

一方、午後も無人探査機を海中におろしていて、機体の一部が残っていないかなどカメラで確認しているものとみられます。

陸上自衛隊は今後、ヘリコプターからフライトレコーダーを回収して解析を行い、事故原因の究明を進めることにしています。

また、陸上自衛隊は、まだ見つかっていないほかの隊員の捜索を続けています。
今回の引き揚げ方法は
防衛省関係者によりますと、ネットは機体をつり上げるために海底に敷かれ、その後、機体をワイヤーでつり上げネットの上に乗せ、ネットで包み込むようにしてクレーンで引き上げることになっています。』

JPモルガン、ファースト・リパブリック銀行を買収。

JPモルガン、ファースト・リパブリック銀行を買収。
http://blog.livedoor.jp/goldentail/archives/31425775.html

『 いやー、なかなか黒いところに買収されましたねぇ。3月から続いているアメリカの銀行の破産ですが、ほぼ破産が確定していたファースト・リパブリック銀行を、JPモルガンが106億ドルで買収するようです。もちろん、銀行が抱えている負債や資産を引き取るのと込みで、この買収金額です。

何かシンクロニティを感じてしまうのですが、丁度今、「バーナード・マドフ詐欺事件」のYoutube動画を編集していて、JPモルガンは、詐欺のシステムを、恐らくは故意に見逃して口座を利用させていて、罰金は食らったものの、誰も罰せられていないという、ウォール街と政治のパイプを最大限に活かした責任逃れをしている部分を編集していたところです。まぁ、あそこの4大証券会社は、叩けば埃で息ができないくらい、不法行為をやりまくりなんですよね。そして、罰金は払うけど、刑事罰は受けないんですよ。そういう決まりらしいです。なので、犯罪が再発します。国が金融危機でディフォルトした後、徹底的に関係者の責任を追求して、見事に立ち直ったアイスランドとは、金融規律面では雲泥の差です。

ファースト・リパブリック銀行は、顧客の預金流失が止まらなくて、破産が噂されていました。一時期は、メガバンクが巨額の貸付を発表して、資本面での心配が無くなったかに見えました。しかし、この銀行の顧客は富裕層が多く、スイスのクレディスイスと同じく、ウェルネス事業が得意な業態だったのですね。なので、口座に預金している額が、政府が補償する25万ドル程度では、全然足らない資産持ちが多くて、破綻した時に財産を失うので、ガンガン預金の引き出しが続いていたようです。株価も70%も下落していて、ほぼクズ株状態でした。

この銀行が破綻しそうになった原因も、先に処理されたシリコンバレー銀行と同じです。急激に政策金利が上がった為、資産運用として所有していた債権の価値が下がり、かつ、預金の流出で資産が減ったので、含み損を決済して現金を作る必要に駆られた為、潜在的な負債が表面化したのです。ただ、ここの場合、主業務がウェルネス事業なので、シリコンバレー銀行ほど、債権に依存していなかったので、傷は比較的浅いほうです。ただ、富裕層というのは、資産の運用には、一般人よりも敏感ですから、「危ない」と噂が立つと、容赦なく資金を移動させるのですね。それで、経営が破綻した模様です。

この引き出された資金は、今は高金利なアメリカ短期国債の購入に流れています。その為、アメリカの短期国債のチャートが、異常な動きを見せています。ニューヨークダウなどの株価指数と、逆相関になるのが通常なのですが、最近では無関係に単独でチャートが動いています。つまり、他所から、今まで市場に無かった資金が流入してきたという事です。このように、経済というのは、シームレスにつながっています。どこかで異変が起きたら、波紋が広がるように、他に影響が出るのです。

影響と言えば、アップルの始める銀行が、4%以上の高金利で話題を呼んでいますが、それが可能なのも、今のアメリカの政策金利が、最大4.75%もあるからです。ですから、残念ながら、アメリカ以外では、この高金利は、絶対に適用されません。逆ザヤになっちゃいますからね。逆に言うと、インフレが収まると、FRBは確実に金利を下げてくるでしょうから、恐らく2年も、アップル銀行の高金利は続きません。これは、断言できます。慌てて資金を移動させるようなものではないです。

経済はリレーションを見ていると、実に面白いし、飽きないですよ。その過程で、洒落にならない悲喜劇を引き起こすので、ドラマにもなりますし。今、編集している「マドフ詐欺事件」も、ドラマの塊です。逃れられない選択を迫られるので、人生の縮図と言えますね。その辺りの情け容赦なさは、投資というものの怖さを思い知らされます。』

ミャンマーと露の接近を恐れるASEAN

ミャンマーと露の接近を恐れるASEAN:東京の郊外より・・・:SSブログ
https://holyland.blog.ss-blog.jp/2023-04-17

『昨年ミャンマー軍事政権トップが訪露2回
露と原子力技術協力覚書を締結し小型原子炉建設へ
「第2の北朝鮮」の悪夢にASEANが直面

Myanmar Russia.jpg防衛研究所の3月23日付NIDSコメンタリーが、庄司智孝アジア・アフリカ研究室長による「ASEANにとってのミャンマー問題 -安全保障の視点から」との論考を掲載し、約2年前の軍事クーデターから混迷の度が一層深まり、同国が内戦の様相を呈する中で、ASEANが懸念するのはミャンマーに対するロシアの影響力拡大であると指摘し、露とミャンマーの急速な接近の様子を紹介しています

論考は「露とミャンマーの急速な接近」に触れる前段階として、50年以上という超長期にわたる軍政、国軍が政治的影響力を保ったままのスーチーや僧侶の政治活動による民主化、そしてクーデターによる軍政の復活という、極めて特異な経緯をたどる同国の歴史を振り返り、またASEANとして同国の変化にどのように対応してきたかを概観し、中国との関係についても言及した上で、ロシアとの関係をASEANの大きな関心事だと紹介しています

Shyouzi NIDS.jpg筆者の庄司室長は「2023年のASEAN議長国インドネシアは、ミャンマー問題の解決に強い意気込みを示し、新たな特使派遣の準備を進めている。ASEANの選択肢は限られているが、ミャンマーの国内情勢、ウクライナ等国際情勢、そして議長国のイニシアチブによるASEANの取り組みが絡み合いながら、ミャンマー情勢は動いていくであろうが、その動向は決して楽観できないのが現状」と論考を結んでいるところです

ミャンマーとは歴史的につながりの深い日本ですが、小説「ビルマの竪琴」を知る人も少なくなり、現在のミャンマー情勢についてフォローしている方はごく少数だとも思いますので、これを契機にまんぐーすの勉強も兼ね、同論考のミャンマーとロシアとの関係を中心に、中国との関係部分にも触れながらご紹介しておきます。

まず中国との関係について
Myanmar ASEAN4.jpg
●ASEANは、域外主要国によるミャンマーそして東南アジア地域への影響力拡大を従来から懸念しており、1990年代にミャンマーのASEAN加盟(1997年加盟)を推進したインドネシアは、冷戦終結から1990年代にかけて南シナ海に進出を始めた中国が、ミャンマーを通じて東南アジア地域に影響力を拡大することを警戒したため、ミャンマーをASEANに取り込むことによって中国の浸透を統御しようとした。

●ただしその後、ASEANと中国の関係は経済を媒介としてきわめて密接なものになった。南シナ海における緊張は続いているが、今やASEAN全体に対する中国の影響が強力なため、ミャンマーが目立たないだけである。ちなみに、クーデター後のミャンマー軍事政権を中国は黙認し、2国間での協力を続けており、この姿勢はASEANの方針とは反している。

ASEANがもっとも今懸念する露との関係

Myanmar Russia3.jpg
●軍事政権トップのミン・アウン・フライン軍司令官の指導で近代化を目指すミャンマー国軍は、ここ10年程ロシアからの兵器調達を強化してきた。特に戦闘機と攻撃ヘリコプターをロシアからの調達に頼り、これら装備品は現在では反体制派への攻撃に用いられている。

●2016年に両国間の軍事協力協定が結ばれてからは、6,000人ものミャンマー国軍士官がロシアで教育訓練を受けた。国軍のロシア重視の姿勢には、中国への過度の依存を避け、対外関係でバランスをとる思惑があった。

Myanmar military2.jpg

●ウクライナ侵攻で欧米との対立を深めるロシアは、東南アジア地域における足掛かりとしてのミャンマーを一層重視し、ロシアは2022年7月と9月の2回にわたってフライン軍司令官をロシアに招き、軍政との関係を強化している。ミャンマー軍政側も露のウクライナ侵攻支持を公式に表明し、露産石油輸入の意向を示した。ASEANは、ロシアと欧米の対立が、ミャンマーを通じて東南アジアに浸透し、地域不安定化につながることを危惧している。

●ミャンマーは、2022年7月にフライン軍司令官が訪ロして両国間の原子力技術協力覚書を締結した。ミャンマーはロシアの協力を得て小規模原子炉建設を計画しているが、これが核兵器開発につながるのではと懸念されている。ミャンマーが「東南アジアの北朝鮮」になることは、ASEANが長年追求してきた東南アジアの非核地帯化の破綻であり、地域安全保障への悪影響は計り知れない。

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Myanmar ASEAN2.jpg

「クーデター」とか「軍事政権」との言葉を聞くと、欧米諸国や日本のメディアは強い拒否反応を示しますが、今となっては手遅れながら、もう少し冷静に現地の実態を踏まえ、特にミャンマーやタイの場合はもう少し柔軟に対応しておけば良かったのではないかと思います

フィリピンのドゥテルテ前大統領の麻薬組織への強権発動に関してもそうで、「人権」を錦の御旗に打ち立てて米国がフィリピンを強く非難していなければ、対中国のための米比関係は4~5年早く強化できたのではないかと思います

参考文献として、故岡崎久彦氏がタイ駐在大使時代に、タイを専門とする大使館員たちと執筆された「クーデターの政治学―政治の天才の国タイ」(中公新書)を推薦させていただきます

ミャンマー関連の過去記事

「中国から潜水艦導入」→https://holylandtokyo.com/2022/01/06/2581/
「米国の海洋演習AUMX開始」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-09-03
「ミャンマーは大丈夫か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2016-12-04
「自衛隊トップが訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-28
「スーチー女史は英国スパイ?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-13-1
「印とミャンマーと日本」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-29
「魅力と課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-29-1

応援お願いします!ブログ「東京の郊外より」支援の会
https://community.camp-fire.jp/projects/view/258997

ブログサポーターご紹介ページ
https://holylandtokyo.com/2020/04/15/727/

タグ:ミャンマー NIDSコメンタリー 防衛研究所 庄司智孝 ロシア 中国 ASEAN クーデターの政治学 』

クリミアの露軍貯油施設へドローン攻撃と反攻作戦

北の国から猫と二人で想う事 livedoor版:クリミアの露軍貯油施設へドローン攻撃と反攻作戦
https://nappi11.livedoor.blog/archives/5430108.html

『2014年からロシアに占領されているウクライナ南部クリミア半島のセヴァストーポリ Sevastopolにて、現地2023年4月29日朝、火災が発生した。自爆型無人機が着弾した可能性がある。ここはロシア軍黒海黒海艦隊の主要な軍港で、これまでもウクライナ軍は幾度も攻撃を行っている。記録映像 2023年3月22日のドローン攻撃記録映像 oil tankFu3OBVtX0AE5lwG

同地の「首長」を名乗るラズヴォジャエフMikhail Razvozhayev, the so-called “governor of Sevastopol”氏は、「コザチャ・ブフタ小地区のマンハナリ兄弟地区Manganari Brothers Street in Kozacha Bayの貯油施設が燃えている。暫定情報では、無人機着弾により爆発したという」と書き込んだ。

同氏はまた、炎上範囲は約1000平方メートルだと伝えた。犠牲者情報は確認中だという。

その他、テレグラム・チャンネル「クリミアの風」は、セヴァストーポリ占領政権は同地区の住民の避難を行わないと伝えた。参照記事 、、

ウクライナ軍が近々予定している反攻作戦の前哨戦かと思われる。

一方、ロシア軍とウクライナ軍が集結したウクライナ東部からは、2022年侵略開始からすぐに多くの民間人が退避した。過去ブログ:2023年4月NATO事務総長の中国への期待感は0と反攻作戦:screenshot(47)

米欧州軍のカボリ司令官は4月26日、ロシア軍と戦っているウクライナ軍は反攻するのに「好位置にいる」と米下院軍事委員会で述べた。

また、ロシアの地上部隊はウクライナとの戦争で多くの犠牲者を出したにもかかわらず、「紛争開始時よりも」規模が大きくなっているとも指摘し、同氏によると、ロシア空軍が失った軍機は80機のみで、「1000機の戦闘機と戦闘爆撃機を持っている」という。
「そのため、ロシア軍はそうした通常の戦力の全てをまだ使っておFireShot Webpage Screenshot #487 – ‘Ukrainska Pravり、戦力を組み合わせている」と語った。参照記事 、、、

別なウクライナのロシアの損失は、2023年4月29日集計で、死傷者~190040+580の他は左図の様なのだが、、参照記事 』

黒土が泥濘化すると、西側のAFVでも立ち往生する。

黒土が泥濘化すると、西側のAFVでも立ち往生する。
https://st2019.site/?p=21102

『Michael Schwirtz 記者による2023-5-1記事「Ukraine Wants to Push Forward. Not So Fast, Says Its Black Soupy Mud」。

    最前線を2週間取材したNYT特派員のリポート。
 黒土が泥濘化すると、西側のAFVでも立ち往生する。ドイツから貰った新品の155ミリSPである「Panzerhaubitze 2000」も、スタックして牽引脱出が必要だった。

 今年の春雨は例年より多雨だそうである。おかげで地面が乾くのが遅れている。』

戦争のプロパガンダは、それに接した者に嘘を信じさせる必要はない。

戦争のプロパガンダは、それに接した者に嘘を信じさせる必要はない。
https://st2019.site/?p=21102

『2023-5-1記事「How a Russian drone hit the Gepard, and why they hid the true result (Video)」。

    戦争のプロパガンダは、それに接した者に嘘を信じさせる必要はない。それに接した者が、真実と嘘の区別はどうもできそうもないと印象してくれれば、プロパガンダとして大成功なのだ。

 ウクライナ戦線で、捜索レーダーを回してない状態の「ゲパルト」がランセットから奇襲されれたとする画像。まず、スチル写真が公表された。

 ここが憶測を呼んでいる。露軍は無人機を攻撃任務に繰り出すときは同時に上空から別な偵察ドローンが動画撮影している。なぜそのムービーを最初からUpしないのか。じつはゲパルトのレーダーにほとんど損傷を与えていないという自認があるからじゃないか。
 「ウクライナ人なんかに高額な兵器を与えても、ぜんぶ無駄にされるだけですよ」と西側人をして印象させることが、ロシア側プロパガンダの大目的である。』

サンクトペテルスブルグ市が属するレニングラード軍管区の森林地帯で、高圧送電鉄塔の基部が爆破され、1基が倒壊。

サンクトペテルスブルグ市が属するレニングラード軍管区の森林地帯で、高圧送電鉄塔の基部が爆破され、1基が倒壊。
https://st2019.site/?p=21102

『2023-5-1記事「Power lines pole blown up in the Leningrad region of the Russian Federation」。

    サンクトペテルスブルグ市が属するレニングラード軍管区の森林地帯で、高圧送電鉄塔の基部が爆破され、1基が倒壊。
 もう1基にも仕掛けられていたが、そちらの爆発物は不発状態で発見され、工兵隊が雷管を除去した。

 送電路は自動的に迂回路に切り替わったと当局は発表。

 しかし、あるSNS投稿によれば、深夜の1時に、レニングラード発電所から給電されているすべての世帯で停電が起きたという。』

ブリヤンスクで鉄道のレールが爆破され、石油タンク列車が脱線し、火災が発生した。月曜朝の事件。

ブリヤンスクで鉄道のレールが爆破され、石油タンク列車が脱線し、火災が発生した。月曜朝の事件。
https://st2019.site/?p=21102

『2023-5-1記事「A freight train derailed in Russia」。

   ブリヤンスクで鉄道のレールが爆破され、石油タンク列車が脱線し、火災が発生した。月曜朝の事件。

 この貨物列車は60両編成で、石油の他に、建設資材を輸送していた。
 「ラッシュカ~ウネチャ」線の、136kmマーク地点だという。

 モスクワ時刻で、10時17分だった。すなわち、0717GMT。』

露軍は日曜日に、兵站系幕僚の最上位者だった、ミハイル・ミジンツェフ上級大将を左遷した。

露軍は日曜日に、兵站系幕僚の最上位者だった、ミハイル・ミジンツェフ上級大将を左遷した。
https://st2019.site/?p=21102

『AFPの2023-5-1記事「Russian Army Replaces Top Logistics Commander」。

    露軍は日曜日に、兵站系幕僚の最上位者だった、ミハイル・ミジンツェフ上級大将を左遷した。

 この将軍、2022のマリウポリ市攻囲中の非人道犯罪に責任があるとも指弾されている人物である。

 後任は、アレクセイ・クヅメンコフだと発表された。

 プー之介が昨年9月に追加動員を発令したと同時にミジンツェフが国防副大臣に起用されていた。ロシアでは、国防副大臣が、全露軍の兵站を統監するのである。

 更迭の噂は先週からあった。

 ※真の責任者は、プリゴジンが非難する如く、ショイグなのだが、ショイグは責任を転嫁できる部下には事欠きはしない。

 ※Lizzie Collingham 氏著『The Taste of War』(2012ペンギン版)にこんな記述がある。

――独ソ戦初盤で動員された16歳のウクライナ兵。軍靴がなく、ボロ切れを巻いて代用する必要があった(p.320)。露軍内にはなぜかウォッカとタバコだけは常にあった。そして露軍の兵站将校は1942当時から、物資の横流しをしていた(p.321)。

がんらい、鉄道と馬車しかない輸送力に、アメリカが莫大なトラックを援助してくれたので、ソ連の車両工業は、戦車の製造だけに集中できたのである(p.336)。

アメリカからの食糧援助がなかったら、うたがいもなく、はるかに多数のソ連市民が餓死していた。

米国から送った対ソの援助品のうち、食糧は、重量比で14%もあった。

戦後、アメリカに亡命した露人旋盤工の証言。ソ連兵は末端までよく承知していましたよ。靴から軍服から罐詰から何から何まで、米国の物資が援助されたおかげで勝つことができたのだと。それなしでは勝利は無かったと。ソ連兵よりも悪い栄養で戦争したのは日本兵だけである――。

この本は再読する価値が高い。今次ウクライナ戦争に関して、いちじるしく示唆的なのだ。ヒトラーには、公刊されなかった《第二の書》があった。ドイツ語スクールのプー之介はそれを読んだのかと疑われる。』

米陸軍モデリング・アンド・シミュレーション (Army Science Board)

米陸軍モデリング・アンド・シミュレーション (Army Science Board)
https://milterm.com/archives/3182

『2023年5月1日 / 最終更新日時 : 2023年5月1日

米陸軍の新たな作戦コンセプトであるマルチドメイン作戦について、米陸軍内の様々な部署でその実効性を高めるための取組みがなされていることはすでに紹介したとおりである。

ここで紹介するのは、マルチドメイン作戦についてモデリング・アンド・シミュレーション(M&S)の視点から見た時に、必要なことは何なのかを調査研究した米陸軍科学委員会の報告書の冒頭部分(EXECUTIVE SUMMARY)である。マルチドメイン作戦が求められたのは正に既存のドメインでのキネティックな戦いから、サイバースペースや宇宙のドメイン、そして電磁スペクトラムを含めたノン・キネティックな戦いを含む中での勝利が望まれるからである。米陸軍が使用しているM&Sの機能は、消耗戦を主体とするキネティックな戦いをモデル化したものであり、人間の認知(cognition)や行動(behavior)を含むノン・キネティックな戦いにも対応できるM&Sの機能が必要とされるとの調査結果をまとめている。人の募集や育成にも言及した報告書である。(軍治)

米陸軍モデリング・アンド・シミュレーション(M&S)

最終報告書 2021年2月

米陸軍科学委員会

2020年米会計年度

Army Modeling and Simulation (M&S)

Final Report February 2021

Army Science Board

Fiscal Year 2020 Study
エグゼクティブ・サマリー:EXECUTIVE SUMMARY

本報告書は、米陸軍長官(SECARMY)が主催した「米陸軍のモデリングとシミュレーション(M&S)」に関する米陸軍科学委員会(ASB)の調査結果をまとめたものである。この研究の目標は、「戦略的意思決定、取得、訓練、および試験・評価(T&E)を支援する米陸軍のM&S能力を評価すること」であり、委託事項(Terms of Reference:TOR)と一致している。

具体的には、米陸軍のM&S能力のニーズ、これらのニーズを満たすための現在の米陸軍M&S能力のギャップ、ギャップを埋めるために活用できる米陸軍外部の最先端(SoTA)能力、M&Sニーズを満たすための米陸軍の組織と人材(才能)管理の方法などを決定することが研究チームのタスクであった。

研究の背景と動機:Study Background and Motivation

米陸軍長官(SECARMY)がこの研究を依頼したのは、将来の作戦環境(OE)と、その環境下で競争し勝利するための米陸軍の作戦コンセプトであるマルチドメイン作戦(MDO)が、過去20年間の紛争を定義するものとは大きく異なるためである。

これまでの紛争では、統合部隊は非同盟の敵対者に対して、すべてのドメイン(陸・空・海・宇宙・サイバー/電子戦(EW))で優位に立つことができた。対等な競争者との将来の紛争では、統合部隊は紛争のすべての局面において、より複雑で致命的な作戦環境(OE)において、すべてのドメインで争うことになる。

米陸軍は、より致死性のキネティック・システムと、宇宙、サイバー、電子戦(EW)、自律性(autonomy)、人工知能(AI)、情報戦など、ますます効果的なさまざまなノン・キネティック能力に直面することになる。これらのノン・キネティックな手段の多くは、紛争の競争の段階で、敵対者がすでに大きな効果を上げて採用している。

さらに、世界的な都市化の傾向から、米陸軍が密集した都市部の複雑な地形で交戦する可能性が高まっており、非戦闘員の集団行動に影響を与えることが求められている。

このような複雑性の増大により、強固なM&S能力が必要となる。米陸軍の上級指導者は、過去 20 年間、重要な戦略および作戦の決定を行うために経験と直感に頼ってきたが、生来の人間的要素の根拠となるパラダイムが大きく変化すると、その有効性は失われる。あるシステム・アナリストの言葉を借りれば、「複雑なシステムは直感的な解決策を拒む(complex systems defy intuitive solutions)」のである。

この将来の複雑な作戦環境(OE)に対応するため、米陸軍はマルチドメイン作戦(MDO)を作戦コンセプトとして公布し、異種統合システム間の前例のないレベルのシステム・オブ・システムズ(System-of-Systems :SoS)相互依存を要求している。マルチドメイン作戦(MDO)コンセプトの潜在的価値を十分に引き出すためには、直感的でない革新的な作戦コンセプト(concepts of operations :CONOPS)と戦術・技法・手順(tactics, techniques, and procedures :TTP)が必要となる。

仮説に基づく実験を補完するものとして、M&Sはマルチドメイン作戦(MDO)のシステム・オブ・システムズ(SoS)アーキテクチャを定義し、革新的な作戦コンセプト(CONOPS)と戦術・技法・手順(TTP)を開発するために不可欠である。シミュレーションに基づく分析と実験がなければ、マルチドメイン作戦(MDO)のシステム・オブ・システムズ(SoS)アーキテクチャは断片的な方法で進化し、作戦コンセプトの全能力を発揮することはできない。

米陸軍は、31のシステムをほぼ同時に開発する野心的な近代化計画を持っている。最高の財政環境であっても、このような野心的な計画のための資源を維持することは困難である。

さらに、当面の国防予算は圧迫され、米国防総省(DoD)の将来防衛事業計画(FYDP)の中で競合する要求をめぐる争いを悪化させることになる。米陸軍は、あらゆる種類のM&Sツールを活用した信頼できる戦闘効果分析を提示する効果的なアドボカシー・キャンペーン(advocacy campaign)※を含め、近代化プログラムについて確固たる主張を行う必要がある。

※ 支持を得るためのキャンペーン

米陸軍は20~30年前に現在のM&S評価ツールを開発したが、それらは冷戦時代の視点を反映している。米陸軍が将来の戦争の現実をモデル化するためにM&S能力を活性化しない場合、以下のような結果を招くだろう。

(1) 準備不足で、マルチドメイン作戦(MDO)を適切に定義できず、統合全ドメイン作戦(JADO)における明確でない役割に追いやられる。
(2) 適切なM&Sによる開発が不十分なため、近代化システムが潜在的に失敗する。

これらの結果を実現する可能性があるため、米陸軍のM&S能力を活性化させるための行動が必要であり、この研究の動機となった。

米陸軍のM&Sの組織・リーダシップ・ガバナンス:Army M&S Organization, Leadership, and Governance

米陸軍では6つのコミュニティがM&Sを使用しており、その用途は以下のように様々である。

- 分析(Analysis)- 代替案分析(AOA)、能力に基づく評価(CBA)、近代化プログラムの優先順位付け、部隊デザイン、コンセプト開発、作戦コンセプト(CONOPS)/戦術・技法・手順(TTP)評価など、さまざまな戦略および取得前の決定を支援する。

- 取得(Acquisition)- 事業化プログラム(programs of record)の要件定義、システム・エンジニアリングと一体化、デザイン開発、検証と妥当性確認(V&V)を支援する。

- 実験と試験・評価(T&E)(Experimentation and Test & Evaluation (T&E))- 実験・試験デザイン、期待される結果の予測、結果の検証と妥当性確認(V&V)、限られた試験条件からより広範な条件への外挿のためにM&Sを使用する。

- 訓練(Training)- ライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)シミュレーションを使用して、部隊にシステムの使用方法を訓練し、ミッション・コマンド(mission command)の熟練度を高める。

- インテリジェンス(Intelligence)-M&Sにレッド・フォース・アセスメント(Red force assessments)を提供する。

米陸軍参謀本部参謀次長室(DCS)、G-8(事業担当)の下にある米陸軍モデリング・シミュレーション室(AMSO)と将官運営委員会(GOSC)は、これらのコミュニティ間の一体化を調整する。これらは厳密には調整機関である。

コミュニティ間のデータやモデルの水平統合(horizontal integration)を指示する権限も、米陸軍のM&S能力のニーズを満たすための首尾一貫したトップダウンのビジョンと製品改善計画を定義し、資金を提供する権限もない。コミュニティ間の一体化は、各コミュニティ内の有志の連合によって達成されるが、これは厳密に人間関係に基づくものであり、したがって刹那的である。その結果、コミュニティは基本的に組織のサイロとして運営され、連携してデータやツールを共有するインセンティブや強制機能はほとんどない。

さらに、20年以上前に米陸軍副次官室(オペレーションズ・リサーチ)が解散して以来、米陸軍には、米陸軍のM&Sニーズを確実に満たし、M&S製品または分析結果の品質を検証する責任、権限、および説明責任を持つ、単一の専任の上級(上級管理職(Senior Executive Service :SES)または将官(General Officer:GO)レベル)指導者ポジションがない。一方、米空軍と米海軍は、最近になって上級管理職(SES)レベルの指導的地位を確立した。

米陸軍には、オペレーションズ・リサーチ/システム分析(ORSA)アナリスト(FA49※)、シミュレーション運用担当官(SOO)(FA57)、および民間人のカウンターパート(1515など)を含む、熟練した熱心なM&S実務家の将校がいる。しかし、ここ数年、これらの実務者の数は徐々に減少しており、FA49のアナリストは55%の減少を経験している。FA57の人員は、全認可人員315名のうち、わずか250名しか配置されていない。

※ FAとはfunctional areaの略で、機能別の特技分野のこと、FA49はオペレーションズ・リサーチなどの分析分野、FA57はシミュレーションの運用担当者の分野

同様に、229人の空席があるにもかかわらず、公認の民間人(1515人)アナリストの数は増えていない。問題の一部は、産業界や他のユーザーとの資源の競争と、軍人が中隊の指揮経験(company command)の後にFA49/57のポジションに就く動機付けとなるキャリアパスがないことにある。その結果、上級指導者はM&Sに触れる機会が少なく、情報に基づいた意思決定を行う上でのM&Sと分析の価値に対する理解が不足している。

M&Sの専門知識を持つ人材(才能)を民間企業や他の政府機関と効果的に競争させるためには、例えば、M&S関連分野の学部生を積極的に採用している米空軍のように、米陸軍も積極的に人材を確保する必要がある。人材(才能)を獲得したら、米陸軍はスキルを高めるための強固な訓練と開発プログラムを確立しなければならない。例えば、FA57では8週間のシミュレーション・オペレーション・コースしか必要ない。FA57の将校には、M&S関連分野の上級学位取得の要件はない。
米陸軍のM&Sの技法能力のニーズ:Army M&S Technical capability Needs

米陸軍は、マルチドメイン作戦(MDO)作戦環境(OE)における自軍の戦闘効果を信頼できる形でモデル化できるようにしなければならない。そのためには、以下のような、現在の米陸軍や統合部隊のモデルやシミュレーションではうまく表現できないM&S能力が必要である。

- システム・オブ・システムズ(SoS)の相互作用(SoS Interactions) - マルチドメイン作戦(MDO)の実施には、米陸軍システムおよび異種統合システム間のインターフェイス、相互作用、および相互依存の前例のないレベルが必要になる。これらの相互作用のモデリングは、将来のマルチドメイン作戦(MDO)シナリオにおける米陸軍の戦闘効果(combat effectiveness:CE)を評価する上で不可欠となる。米陸軍のM&Sは、敵対者の行動や反撃によりシステム間の接続性が低下した場合の有効性測定(MOE)への影響も考慮する必要がある。システム・オブ・システムズ(SoS)アーキテクチャの定義は、有効性測定(MOE)と任務目標(mission objectives)を達成するために、戦場における統合エンティティ間の情報交換要件を規定するものである。米陸軍/統合M&Sは、複数のシナリオと能力(現在と将来、友軍と敵対者)において最良のレベルの有効性を提供するベースライン・アーキテクチャを選択するために、代替システム・オブ・システムズ(SoS)アーキテクチャを評価する能力がなければならない。ベースライン・システム・オブ・システムズ(SoS)アーキテクチャは、米陸軍近代化プログラムのインターフェース仕様と情報交換要件を開発するために必要である。

このような評価を行うためには、統合システムを適切なレベルの忠実度とセキュリティ分類でモデル化する必要があり、そのためには、米陸軍、米空軍、米海軍、米海兵隊のモデルを使用可能なセキュリティレベルで統合できる分散シミュレーションのフレームワーク/環境が必要である。

- ノン・キネティックな効果(Non-Kinetic Effects) - ノン・キネティックな現象やシステムは、宇宙、通信、ミッション・コマンド(Mission command)、サイバー、電子戦(EW)、自律性/人工知能(AI)、人間と機械の相互作用、情報作戦(IO)など、紛争においてますます重要となっている。

このようなノン・キネティックシステムや現象の多くには、エンジニアリングレベルの高忠実度モデルが存在するが、それらをコンストラクティブの戦闘効果(CE)モデルに直接組み込むことは技術的に困難であることが分かっている。

例えば、宇宙、サイバー、電子戦(EW)のM&Sや分析は分類されており、それらをより高いレベルの戦闘効果(CE)モデルに組み込むには、シミュレーション全体を最高レベルの分類で実行する必要がある。

あるいは、モデルを単独で実行し、その効果を表すアルゴリズムやパラメトリック関係をより低いセキュリティレベルで開発し、部隊対抗(Force-on-force :FoF)戦闘効果(CE)モデルに入力できるようにする必要がある。

複数の独立した変数の関数としてのノン・キネティックの現象のパラメトリック・モデリングは、困難で時間のかかるプロセスであり、エンジニアリング・モデルに組み込まれた人工知能(AI)によって支援される必要がある。

- 人間の認知と行動(Human Cognition and Behavior) -

マルチドメイン作戦(MDO)の重要な信条であるコンバージェンス(convergence)は、すべてのドメイン、電磁(EM)スペクトラム、および情報環境における能力を迅速かつ継続的に一体化することを含む。

その狙いは、クロスドメインのシナジーと複数の攻撃形態によって効果を最適化することである。将来のマルチドメイン作戦(MDO)コンバージェンス(convergence)では、ドメインや各軍種を超えて、すべての部隊階層で絶妙に同期した指揮・統制(C2)が必要となる。米陸軍と米国防総省(DoD)は、人間の認知と行動が指揮の決定の速度と質に与える影響など、統合全ドメイン指揮・統制(JADC2)のモデリングを改善する必要がある。人工知能(AI)による意思決定支援の有無にかかわらず、人間の次元の発見的モデルを開発するために、米陸軍は、バーチャル・ヒューマン・イン・ザ・ループ(virtual human-in-the-loop)内および人工知能(AI)ソフトウェア・イン・ザ・ループ(software-in-the-loop)内のモードで動作するライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)シミュレーション能力を必要とする。

- シミュレーションが可能にする実験(Simulation Enabled Experimentation) -

米陸軍は、(a)マルチドメイン作戦(MDO)をコンセプトからドクトリンに進展させ、(b)マルチドメイン作戦(MDO)システム・オブ・システムズ(SoS)アーキテクチャを開発するために、統合構成内のシステムで実験を実行しなければならない。米陸軍は、実戦演習の高いコストを軽減し、シナリオ、条件、および赤/青のシステム能力の全範囲にわたって動作するフィールド実験の限られた能力を緩和するために、実戦実験を補完し、補強するためにM&Sを使用する予定である。分散型ライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)シミュレーション環境は、M&Sツールを改良し検証するために使用される実験結果を提供する。統合部隊の評価のために、ライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)環境は、様々なレベルの忠実度と分類で、あらゆる統合システムの「プラグ・アンド・プレイ(plug and play)」モデルで簡単に実験を構成する能力を持つべきである。

- データ管理(Data Management) –

キネティック、ノン・キネティック、ブルー・システム(Blue systems)/レッド・システム(Red systems)のあらゆるドメインにおける認定データの利用可能性と一貫性は、共通のデータ標準、より厳格なノン・キネティックな効果データベース、認定された現在および将来の脅威データに対する必要性を促進する。統合データ標準(Joint data standards)は、各軍種間で共通のデータと構成可能なモデルを共有するために重要である。米陸軍および他の軍は、ノン・キネティックな効果のための統合部隊需効果マニュアル(JMEM)のような厳格に認証されたデータベースを開発すべきである。M&Sの用途のための現在の脅威および対抗脅威データは、セキュリティ分類によって制限されている。将来の戦場の統合M&Sには、米国防インテリジェンス局(DIA)から使用可能な分類で認証された脅威データ、将来のシステムのための権威ある、認証された、一貫した脅威データを開発するための手段、および有効な脅威データによるマルチドメイン作戦(MDO)シナリオが必要である。

米陸軍のニーズを満たすために役立つ外部の技法能力:External Technical capabilities to Help Satisfy Army Needs

米陸軍M&Sコミュニティは、これらの能力ニーズの一部を満たすために熱心に取り組んでいる。しかし、資源の制約の中でタイムリーな進歩を遂げるには限界がある。幸いなことに、米陸軍以外では、多くの重要なニーズ分野で注目すべき進展があり、米陸軍はその取組みを補うために活用することができるはずである。

- マルチドメイン・フェデレートM&Sフレームワーク(Multi-domain federated M&S frameworks) -

産業界、国防省国防高等研究計画局(DARPA)、および他の軍種はすべて、複数のアプリケーションのためのフェデレート、マルチドメイン、マルチセキュリティ・コンストラクティブまたはライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)シミュレーションの開発または使用に取り組んでいる。これには、コンセプト開発、作戦コンセプト(CONOPS)/戦術・技法・手順(TTPs)評価、シミュレーションが可能にする実験(Simulation Enabled Experimentation)、訓練などが含まれる。防衛産業の元請契約者(prime contractors)は、過去20年間、軍事契約顧客のニーズを支援するため、あるいは将来の顧客ニーズを理解するために、ライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)システム・オブ・システムズ(SoS)統合ラボ(例えば、「仮想戦センター(virtual warfare centers)」)を使用してきた。

また、米空軍と米海軍は、「プラグ・アンド・プレイ(plug & play)」の連携モジュールを可能にする分散型フレームワークを持つとされるシミュレーション・統合・モデリングのための先進的なフレームワーク(Advanced Framework for Simulation, Integration, and Modeling :AFSIM)などの連携型M&Sツールの開発を進めている。さらに、国防省国防高等研究計画局(DARPA)のAssault Breaker IIプログラムでは、クロスドメイン、軍種横断的な用兵構成の分析を支援する高度なM&S環境を開発している。

- ノン・キネティックな現象のための高忠実度エンジニアリングM&Sツール(High-fidelity engineering M&S tools for non-kinetic phenomena) -

多くの専門企業が、通信ネットワーク、サイバー、電子戦(EW)などのノン・キネティックな現象のモデリングと評価に使用するための高忠実度エンジニアリングレベルのM&Sツールを開発している。これらは、コンストラクティブ・シミュレーションやハードウェア/ソフトウェアのイン・ザ・ループ・エミュレーション、あるいは製品の試験・評価(T&E)や検証と妥当性確認(V&V)に使用するスタンドアロン・ツールであることが多い。米陸軍は、戦闘能力開発コマンド(CCDC)のラボやデータ分析センター(DAC)にこれらのツールをいくつか保有しているが、より高度な戦闘効果モデルとの垂直統合(vertical integration)をもっとうまく行うことができる。

- 人間の認知と行動のM&Sと研究/分析(Human cognitive and behavior M&S and research/analysis) –

学会、連邦政府系研究開発センター(FFRDC)、および産業界では、人間の認知と行動のモデリングに関する研究開発が定期的に行われている。これらのプロジェクトのいくつかは、統合全ドメイン指揮・統制(JADC2)の構成における指揮の決定の速度と質に関する人間の次元を評価するためのバーチャル・シミュレーション(virtual simulations)能力を開発するための健全な基礎を提供することができる。さらに、自律的なターゲット認識(target recognition)や意思決定支援などのアプリケーションに使用できる人工知能(AI)/機械学習(ML)アルゴリズムに関する膨大な量の研究が行われている。バーチャル・シミュレーション(virtual simulations)能力では、人工知能(AI)/機械学習(ML)意思決定支援ソフトウェアをループ内に挿入し、オペレーターがループ内にいる状態で、人工知能(AI)が支援する人間の意思決定パフォーマンスの有効性を判断することができるはずである。

-デジタル・エンジニアリング(DE)/モデルベース・システム・エンジニアリング(MBSE)(Digital Engineering (DE)/Model-Based Systems Engineering (MBSE))- デジタル・エンジニアリング(DE)/モデルベース・システム・エンジニアリング(MBSE)の価値は、いくつかの事業化プログラム(programs of record)で証明されており、大規模で複雑なプログラムにおいて、防衛の元請契約者(prime contractors)やトップクラスの下請け契約者(subcontractors)によって日常的に使用されている。その価値は、主に、取得ライフサイクル全体にわたって、複数の分析、デザイン、開発、生産、および維持管理アプリケーションを水平統合(horizontal integration)するための単一の権威あるデータベースを提供することにある。

- 画期的なインフラ能力(Groundbreaking infrastructure capabilities) -

過去10年間に、M&S能力を大幅に向上させることができる、いくつかの画期的な技術が出現した。クラウド・ベース環境、GPUの飛躍的な性能向上、超並列コンピューティング、量子コンピュータなどがその例である。

米陸軍のM&Sの組織的管理能力と人材(才能)管理能力のニーズ:Army M&S Organizational and Talent Management Capability Needs

米陸軍は、マルチドメイン作戦(MDO)と統合全ドメイン指揮・統制(JADC2)の複雑なモデルを作成するために必要な専門知識を持つ、M&Sに精通した適切な人材(才能)を募集、雇用、開発、および保持しなければならない。

米陸軍が明日から人材(才能)プールを構築するプログラムを開始したとしても、M&Sのニーズを満たすのに十分なSTEM※専門家を確保することはできない。この状況を是正し始めるために、米陸軍は以下を一方的に採用することができる。

※ STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字

- 米陸軍士官学校(USMA)と予備役将校訓練課程(ROTC)の士官候補生のSTEM専攻を増やすことを義務付ける。米陸軍士官学校(USMA)は士官候補生にSTEM専攻の枠を設けておらず、法律で定められた理学士号を授与しているにもかかわらず、米陸軍士官学校(USMA)で最も普及している専攻は歴史学である。米海軍は、士官団のSTEMへの依存度が高く、米海軍士官学校ではSTEM専攻の米海軍士官候補生(midshipmen)ミに65%の枠を設けることを義務付けている。

- 対象とする分野で高い能力を持つ卒業生を輩出していることで知られる大学STEM学部と提携する。以前は、米陸軍は下級将校(主に大尉/少佐)を選抜して1~3年間大学院に通わせ、卒業後は米陸軍士官学校(USMA)やペンタゴン、あるいは他の主要な取得プロジェクトに配属するようにしていた。

- 軍人がSTEM分野の大学院学位を取得するためのキャリアパスを強化する。米陸軍は、米陸軍が後援する主要な高等研究所(Centers of Excellence)において、下級将校が大学院教育(MSおよびPhDレベル)を受ける機会を提供することにより、STEMを軍種の文化に再注入(reinfuse)できる。また、より高い学歴を持つ専門家の数を増やすことは、米陸軍が新しく高度な技術を購入する「賢い買い手(smart buyer)」となり、近代化活動の決定においてより良い戦略的パートナーとなることにつながる。

- 個人が適切なセキュリティ・クリアランスを有している(またはその資格を有している)ことを確認する。

- 人口動態の変化を考慮し、採用活動を拡大する。STEM分野への女性やマイノリティの参加を拡大するためのイニシアチブが存在し、そのうちのいくつかは全米科学財団(NSF)の支援を受けており、これらの資金提供プログラムは高い技能を持つ人材を送り出している。例えば、コンピュータ・情報科学・工学部門(CISE)は、STEM分野の学生を育成するために、大学やカレッジに資金を提供している。
勧告:Recommendations

研究チームの調査結果と勧告は、報告書本文のトピックごとに示されている。要約すると、研究チームは米陸軍に以下の行動をとることを推奨している。

M&Sの開発:M&S Development

- 米陸軍将来コマンド(AFC)- 将来の統合マルチドメイン作戦(MDO)戦場における米陸軍システムの戦闘効果をモデル化し評価するためのフェデレートM&Sツールのひと揃え(suite)を可能にする要件を開発するための横断的なM&S機能的横断チーム(CFT)を確立し、資源を提供すること。

- 米陸軍参謀本部(G8計画担当)、米陸軍将来コマンド(AFC)、ASA(ALT):

・ 国防省国防高等研究計画局(DARPA)と提携し、統合マルチドメイン作戦(MDO)Simulationの新たな進化を利用する。

・ 近代的な分析的M&S能力と統合マルチドメイン作戦(MDO)の作戦環境をモデル化するシステム・オブ・システムズ統合研究所(SoSIL)を提供するために、十分な資金を投入した俊敏な取得プログラムを確立し、資源を提供することである。
人材(才能)管理:Talent Management

- 米陸軍参謀本部(G1人事担当):

- 民間人: コンピュータ・プログラミングやシステム・エンジニアリングを含むM&S関連分野の大学院学位を取得する機会を民間人に増やす。

- 将校

・ FA57将校の大学院進学率を上げる

・ FA49/FA57将校が作戦部隊に関連することを促進する。
資源:Resources

- 米陸軍長官(SECARMY)

- ネットワーク・コンバージェンス(network convergence)と米空軍によって提供されるものと同等の資源で始まるノン・キネティックな欠陥を修正する適切な米陸軍のモデルと分散統合ライブ・バーチャル・コンストラクティブ(LVC)シミュレーション・フレームワーク内でマルチドメイン作戦(MDO)作戦をモデル化する能力を開発する。

- 米陸軍のM&Sアプリケーションとコミュニティ全体でマルチドメイン作戦(MDO)の科学・技術(S&T)進歩を可能にするため、集中的な米陸軍モデル改善計画(AMIP)を作成し管理する。

ガバナンスと組織:Governance & Organization

- 米陸軍長官(SECARMY)

事務局に専任の上級将校を任命する。

・M&S分野の専門家

・ 米陸軍のM&Sを主導し、M&Sに関する米陸軍参謀総長(CSA)と米陸軍長官(SECARMY)のシニア・アドバイザーを唯一の責務とする者。

・ 現在の縦割り行政(stovepipes)の上位に位置する

・ 米陸軍の能力を向上させるための優先順位を指導し、実施する権限と資源を有する。

・ 米陸軍の主要な分析の品質管理を行う。

・ 陸軍全体のM&Sの意思決定の中心となる者

カテゴリー
技術動向、米陸軍動向、防衛装備の動向

ハイブリッド戦 』

ロシア航空宇宙軍とロシア海軍黒海艦隊はウクライナへの巡航ミサイル攻撃を実施した

ロシア航空宇宙軍とロシア海軍黒海艦隊はウクライナへの巡航ミサイル攻撃を実施した | ロシア海軍情報供給部
http://rybachii.blog84.fc2.com/blog-entry-8112.html

『 2023/05/01 21:11.28 カテゴリ:ウクライナ特殊軍事作戦におけるロシア海軍(2023年)

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『ズヴェズダーテレビ』より
2023年5月1日13時55分配信
【ロシア国防省:ロシア連邦軍は未明にウクライナの防衛産業企業体の施設へ集団ミサイル打撃を与えた】

本日未明、ロシア軍はウクライナの防衛産業企業体の施設へ集団ミサイル打撃を与えた。
ロシア連邦国防省は発表した。

ロシア国防当局が明らかにしたように、打撃は空中発射及び海上発射の高精度長距離兵器により与えられた。

打撃の目的は達成され、全ての指定施設の撃破に成功したとロシア連邦国防省は付け加えた。

ミサイル打撃の結果、ウクライナ戦闘員の為の弾薬、兵器、軍用車両の生産に従事していた企業の作業には混乱が生じた。

未明にウクライナのメディアは、ドニエプロペトロフスク州のパヴログラードで爆発音が鳴ったと報じた。

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数時間後、ウクライナの全ての地域で空中警報が発令された。

ロシア連邦軍が「ウクライナ特殊軍事作戦」を開始した2022年2月24日、ロシア航空宇宙軍の航空機とロシア海軍黒海艦隊の巡航ミサイル「カリブル」搭載艦は、ウクライナに対する大規模な巡航ミサイル攻撃を行ないました。
[ロシア海軍黒海艦隊はウクライナ特殊軍事作戦で巡航ミサイル「カリブル」を発射した]
初日には、少なくとも30基の「カリブル」が発射されたようです。
『WION』より

2022年3月5日4時23分配信
【ロシアのウクライナ攻撃:巡航ミサイル「カリブル」はシリアの戦場でテストされた】

現在、黒海に居る「カリブル」搭載艦は10隻です。
[ロシア海軍黒海艦隊は4隻の巡航ミサイル「カリブル」搭載水上艦を黒海へ展開している]
フリゲート「アドミラル・エッセン」、「アドミラル・マカロフ」
小型ロケット艦「グライヴォロン」、「ヴイシニー・ヴォロチョーク」、「イングシェチア」
潜水艦「ロストフ・ナ・ドヌー」、「ヴェリキー・ノヴゴロド」、「スタールイ・オスコル」、「コルピノ」
(この他、未だ正式に就役していない小型ロケット艦「ツィクロン」)
フリゲートと小型ロケット艦は8基、潜水艦は4基の「カリブル」を搭載しています。

なお、ロシア国防省の公式発表では「海上発射長距離高精度兵器」という呼称が使われる事が多いのですが、これは「カリブル」を指しています。

2月25日深夜~2月26日未明にも航空宇宙軍の航空機及び黒海艦隊の艦は、ウクライナに対する大規模な巡航ミサイル攻撃を行ないました。
[ロシア海軍黒海艦隊は夜間にウクライナへ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

同じ2月26日、航空宇宙軍の航空機及び黒海艦隊の艦により、もう一度大規模な巡航ミサイル攻撃がウクライナに対して行なわれました。
[2022年2月26日にロシア海軍黒海艦隊はウクライナ特殊軍事作戦で巡航ミサイル「カリブル」による攻撃を行なった]

3月1日、航空宇宙軍の航空機及び黒海艦隊の艦は、ウクライナに対する大規模な巡航ミサイル攻撃を行ないました。
[ロシア海軍黒海艦隊はウクライナへ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

3月20日には、カスピ小艦隊の「カリブル」搭載艦が「ウクライナ特殊軍事作戦」において初めてウクライナへの大規模なミサイル攻撃を行ないました。
[ロシア海軍カスピ小艦隊はウクライナ特殊軍事作戦において初めてカスピ海から巡航ミサイル「カリブル」をウクライナのムィコラーイウ州へ発射した]

同じ3月20日、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦は、ウクライナ北西部のネージン車両修理工場への大規模なミサイル攻撃を行ないました。
[ロシア海軍黒海艦隊は『ウクライナ特殊軍事作戦』において黒海からウクライナのネージン修理工場へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

3月22日、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦は、ドネツクとルガンスクのウクライナ軍施設への大規模なミサイル攻撃を行ないました。
[ロシア海軍黒海艦隊は『ウクライナ特殊軍事作戦』において黒海からドネツクとルガンスクのウクライナ軍施設へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

3月22日夕方、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦は、ウクライナ西部のリヴネ市北西のオルツィヴのウクライナ軍兵器庫へのミサイル攻撃を行ないました。
[ロシア海軍黒海艦隊は『ウクライナ特殊軍事作戦』において黒海からリヴネ近郊のウクライナ軍兵器庫へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

3月24日夜、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦は、キエフ州のカルィーニウカの燃料貯蔵所へのミサイル攻撃を行ないました。
[ロシア海軍黒海艦隊は『ウクライナ特殊軍事作戦』において黒海からキエフ州カルィーニウカのウクライナ軍燃料貯蔵所へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

3月25日、黒海艦隊の小型ロケット艦(「ブヤン-M」小型ロケット艦)は、ジトームィル州のヴェリキー・コロフンツィ地域の弾薬兵器庫へ「カリブル」を発射しました。
[ロシア海軍黒海艦隊のブヤン-M小型ロケット艦は『ウクライナ特殊軍事作戦』において黒海からジトームィル州のウクライナ軍兵器庫へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

3月27日、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦は、キエフ近郊のプレセツクのミサイル倉庫へ「カリブル」を発射しました。
[ロシア海軍黒海艦隊のブヤン-M小型ロケット艦は『ウクライナ特殊軍事作戦』において黒海からキエフ近郊のプレセツクのウクライナ軍ミサイル倉庫へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

3月28日、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦は、ジトームィル州のウショムールとヴェセロフカの大型弾薬庫へ「カリブル」を発射しました。
[ロシア海軍黒海艦隊は『ウクライナ特殊軍事作戦』において黒海からジトームィル州のウクライナ軍弾薬庫へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

4月2日、航空宇宙軍の航空機及び黒海艦隊の「カリブル」搭載艦は、クレメンチュグ石油精製工場の貯蔵庫へ巡航ミサイルを発射しました。
[ロシア海軍黒海艦隊は『ウクライナ特殊軍事作戦』においてクレメンチュグ石油精製工場の貯蔵庫へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

4月3日、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦及び航空宇宙軍の航空機は、オデッサ市の石油精製工場と燃料貯蔵所へ巡航ミサイルを発射しました。
[ロシア海軍黒海艦隊は『ウクライナ特殊軍事作戦』においてオデッサの石油精製工場と燃料貯蔵所へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

4月4日夜、黒海艦隊の小型ロケット艦は、オチャコフ市付近のウクライナ軍特殊部隊訓練センターへ巡航ミサイルを発射しました。
[ロシア海軍黒海艦隊は『ウクライナ特殊軍事作戦』においてオチャコフのウクライナ軍特殊部隊訓練センターへ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]
[ロシア海軍黒海艦隊の小型ロケット艦はウクライナへ7基の巡航ミサイル「カリブル」を一斉発射した]

4月7日未明、ロシア航空宇宙軍の航空機と黒海艦隊のフリゲート(おそらくは「アドミラル・エッセン」)は、ウクライナ軍の4ヶ所の燃料貯蔵所へ巡航ミサイルを発射しました。
[ロシア海軍黒海艦隊のフリゲート(アドミラル・エッセン)は黒海からウクライナ軍の燃料貯蔵所へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

4月10日未明、黒海艦隊のフリゲートは、ドニプロペトロウシク州のズヴォネツィキへ巡航ミサイル「カリブル」を発射しました。
[ロシア海軍黒海艦隊のフリゲートは黒海からドニプロペトロウシク州へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

同日、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦は、ドニプロペトロウシク州のドニプロ市南方の地対空ミサイルS-300が入っていた格納庫を巡航ミサイル「カリブル」で破壊しました。
このS-300は、ヨーロッパの国(おそらくは以前に供給を表明したスロバキア)からウクライナへ供給されたもののようです。
[ロシア海軍黒海艦隊はドニプロ市郊外においてヨーロッパから供給されたS-300地対空ミサイルを巡航ミサイル「カリブル」で破壊した]

4月12日未明、ロシア航空宇宙軍の航空機と黒海艦隊の小型ロケット艦は、スタロコスチャンチニフ飛行場とハウルリフカの弾薬庫へ巡航ミサイルを発射しました。
[ロシア海軍黒海艦隊の小型ロケット艦はウクライナ軍の弾薬庫へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

4月13日未明、ロシア航空宇宙軍の航空機と黒海艦隊の小型ロケット艦は、サドヴォイ及びチュドニフのウクライナ軍兵器庫へ巡航ミサイルを発射しました。
黒海艦隊の小型ロケット艦が攻撃したのは、おそらくサドヴォイの方でしょう。
[ロシア海軍黒海艦隊の小型ロケット艦はウクライナ軍の兵器倉庫へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

4月15日には黒海艦隊の艦がキエフ州へ「カリブル」を発射し、対空ミサイルや対艦ミサイルなどを生産しているジュリャンスク機械製造工場の生産設備を破壊しました。
『イズベスチヤ』より
2022年4月15日10時33分配信
【ロシア連邦軍はキエフ郊外の軍施設へ「カリブル」で打撃を与えた】

4月22日には黒海艦隊のフリゲートがメリオラチヴネ(ドニプロペトロウシク州)へ4基のカリブルを発射し、ウクライナ軍の大隊を撃破しました。
テレビ局『ズヴェズダー』より
2022年4月22日11時35分配信
【咆哮と炎:黒海艦隊のフリゲート艦上からミサイル「カリブル」がウクライナの軍事施設へ発射された】

4月27日には黒海艦隊のフリゲートがザポリージャのアルミニウムコンビナートへカリブルを発射し、そこに在った外国製兵器を破壊しました。
テレビ局『ズヴェズダー』より
2022年4月27日11時34分配信
【目標へ向かって:ウクライナ特殊作戦中の「カリブル」発射の映像】

4月29日には黒海艦隊の潜水艦がファスチフ(キエフ州)、クラスノシルカとポロンネ(オデッサ州)へカリブルを発射し、鉄道変電施設を破壊しました。
テレビ局『ズヴェズダー』より
2022年4月29日11時51分配信
【黒海艦隊の潜水艦からの「カリブル」発射の公開映像】

5月4日には黒海艦隊の潜水艦がウクライナの軍事インフラへ2基の「カリブル」を発射しました。
テレビ局『ズヴェズダー』より
2022年5月4日12時34分配信
【水面下からの攻撃:ウクライナの軍事インフラへの黒海艦隊潜水艦の「カリブル」発射映像】

5月8日にはリヴィウ州へカリブルを発射し、鉄道変電施設を破壊しました。
テレビ局『ズヴェズダー』より
2022年5月8日20時52分配信
【機会は残さない:どのようにロシア軍はウクライナの軍事インフラ及び西側の兵器を破壊したのか】

5月13日にはクレメンチュグへカリブルを発射し、石油精製施設を破壊しました。
テレビ局『ズヴェズダー』より
2022年5月13日10時55分配信
【ロシア連邦国防省はクレメンチュグのウクライナ石油精製工場の生産力を破壊したと発表した】

5月17日には黒海艦隊のフリゲートがチェルニーヒウ州とスームィ州へカリブルを発射し、ウクライナ軍訓練センターを破壊しました。
テレビ局『ズヴェズダー』より
2022年5月17日12時53分配信
【一斉射撃:ウクライナ軍事インフラへの黒海艦隊フリゲートの「カリブル」発射の映像】

5月21日には黒海艦隊のフリゲートがジトーミル州の鉄道駅へカリブルを発射し、ヨーロッパ諸国から供与された各種兵器を破壊しました。
テレビ局『ズヴェズダー』より
2022年5月21日13時20分配信
【敵の目標へ:黒海艦隊フリゲートからの「カリブル」発射の映像】

5月23日には黒海艦隊の潜水艦がジトーミル州のマリン鉄道駅へ4基のカリブルを発射し、ウクライナ軍第10山岳強襲旅団の車両を破壊しました。
テレビ局『ズヴェズダー』より
2022年5月23日11時35分配信
【車両の破壊:ロシアの海上発射高精度ミサイル発射の映像】

5月25日には黒海艦隊のフリゲートがザポリージャへ3基のカリブルを発射し、モトールシーチの生産工場を破壊しました。
テレビ局『ズヴェズダー』より
2022年5月25日14時24分配信
【ウクライナ軍事インフラへの「カリブル」の夜間発射の公開映像】

6月12日には黒海艦隊のフリゲートがテルノーピリ州へ4基のカリブルを発射し、兵器倉庫を破壊しました。
テレビ局『ズヴェズダー』より
2022年6月12日12時55分
【4つの高精度打撃:黒海艦隊のフリゲート艦上からのミサイル「カリブル」発射の映像】

6月14日にはチェルニゴフ州のウクライナ軍弾薬庫へ「カリブル」を発射しました。
テレビ局『ズヴェズダー』より
2022年6月14日11時28分配信
【ロシア国防省はチェルニゴフ近辺のウクライナ軍弾薬庫を「カリブル」で破壊したと発表した】

6月15日には黒海艦隊のフリゲートがリヴィウ州へ4基のカリブルを発射し、ヨーロッパ諸国から供与された兵器用の弾薬倉庫を破壊しました。
テレビ局『ズヴェズダー』より
2022年6月15日14時15分配信
【ウクライナの目標への命中:黒海艦隊フリゲートからのミサイル「カリブル」発射の映像】

6月19日昼には黒海艦隊のフリゲートがドニプロペトロウシク州へカリブルを発射し、ウクライナ軍指揮所を破壊しました。
同日夜には黒海艦隊のフリゲートがムィコラーイウ市へカリブルを発射し、ヨーロッパ諸国から供与されたM777 155mm榴弾砲や戦闘装甲車両を破壊しました。
テレビ局『ズヴェズダー』より
2022年6月19日15時11分配信
【黒海艦隊のフリゲート乗組員はウクライナ軍の施設へ4基のミサイル「カリブル」を発射した】

6月26日、ロシア航空宇宙軍の航空機と黒海艦隊の「カリブル」搭載艦は、チェルニーヒウ州、ジトーミル州、リヴィウ州のウクライナ軍訓練センターを攻撃しました。
公表された動画を見る限り、少なくとも7基の「カリブル」が夜間に発射されています。
[ロシア海軍黒海艦隊はウクライナ軍の訓練センターへ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

7月8日、黒海艦隊のフリゲートはオデッサ州リマンへ海上発射高精度兵器(「カリブル」)を発射し、ウクライナ軍の地対艦ミサイル「ハープーン」発射機2基を破壊しました。
この「ハープーン」はイギリスが供給したものです。
[ロシア海軍黒海艦隊は巡航ミサイル「カリブル」でオデッサ州のウクライナ軍地対艦ミサイル「ハープーン」発射機を破壊した]

7月11日未明、黒海艦隊のフリゲートはドニプロペトロフスク州のラドゥシュノエへ「カリブル」を発射し、アメリカから供給された兵器の弾薬の保管倉庫を破壊しました。
[ロシア海軍黒海艦隊の巡航ミサイル「カリブル」はウクライナでアメリカから供給された兵器の弾薬保管庫を破壊した]

7月13日、黒海艦隊のフリゲートはザポリージャ市の高電圧機器工場付近でウクライナ軍第45砲兵旅団の多連装ロケット砲を破壊しました。
[ロシア海軍黒海艦隊の巡航ミサイル「カリブル」はザポリージャでウクライナ軍第45砲兵旅団の多連装ロケット砲を破壊した]

7月14日にはウクライナ空軍司令部が在るヴィーンヌィツャの将校集会所へ「カリブル」が発射され、建物は破壊されました。
ロシア国防省の動画を見る限り、「ブヤン-M」小型ロケット艦が3基の「カリブル」を発射しています。
「カリブル」が命中した時、この集会所ではウクライナ空軍司令部の代表と外国の代表団の兵器供給に関する会議が行なわれていました。
[ロシア海軍黒海艦隊の巡航ミサイル「カリブル」はウクライナ空軍と外国との兵器供給会議中のヴィーンヌィツャの将校集会所を破壊した]

7月20日にはオデッサ州のダチュノエへ長距離海上発射高精度兵器(「カリブル」)を発射し、ウクライナ軍第35海軍歩兵旅団の将兵200名以上を殺傷し、10両以上の車両を破壊しました。
[ロシア海軍黒海艦隊はオデッサ州のウクライナ軍第35海軍歩兵旅団の駐屯地へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

7月23日には「ブヤン-M」小型ロケット艦がオデッサ市へ「カリブル」を発射しました。
(動画では4基の「カリブル」が発射されている)
[ロシア海軍黒海艦隊はオデッサ市へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

同日、ロシア航空宇宙軍の航空機と共にキロヴォグラードのカナトヴォ飛行場へ「カリブル」を発射しました。
(航空宇宙軍のKh-22が5基、カリブルが8基)
[ロシア海軍黒海艦隊はキロヴォグラードのカナトヴォ飛行場へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

7月24日夜にフメリニツキー州のボグダノフツィへ「カリブル」を発射し、多連装ロケット砲HIMARSとM777榴弾砲の弾薬の貯蔵基地を破壊しました。
(動画では夜間に少なくとも3基の「カリブル」が発射されている)
[ロシア海軍黒海艦隊はフメリニツキー州のボグダノフツィへ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

7月28日、黒海艦隊のカリブル搭載艦は、ロシア航空宇宙軍の航空機及び戦術弾道ミサイル「イスカンデル」部隊と共にキエフ州のリュテズとチェルニゴフスク州のゴンチャロフスコエ(両方ともキエフ市の北方)へのミサイル攻撃を行ないました。
(合計で約20基のミサイルを発射、この内「カリブル」は6基)
黒海艦隊が攻撃したのは、ウクライナ軍第30機械化旅団が居たリュテズのようです。
[ロシア海軍黒海艦隊はキエフ州のウクライナ軍第30機械化旅団の駐留地へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

8月8日、黒海艦隊のフリゲートは、チェルカッシィ州のウマニへ「カリブル」を発射し、多連装ロケット砲HIMARSとM777榴弾砲の弾薬倉庫を破壊しました。
[ロシア海軍黒海艦隊のフリゲートは巡航ミサイル「カリブル」でチェルカッシィ州のウマニの弾薬倉庫を破壊した]

8月13日、黒海艦隊のカリブル搭載艦は、地上発射高精度ミサイル(「イスカンデル」?)と共にハリコフ州南部のガヴリロフカ駅付近を攻撃しました。
[ロシア海軍黒海艦隊はハリコフ州南部のガヴリロフカへ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

8月21日、黒海艦隊のフリゲートはオデッサ州のマイオルスコエへ「カリブル」を発射し、多連装ロケット砲HIMARSの弾薬倉庫と、それを護っていた西側の対空火器(ゲパルト?)を破壊しました。
[ロシア海軍黒海艦隊のフリゲートはオデッサ州のHIMARS弾薬倉庫を巡航ミサイル「カリブル」で破壊した]

その後、暫く「カリブル」による攻撃は無く、8月末になると西側では、ロシア軍は「カリブル」を使い果たしたという見方まで出てきましたが、9月6日、黒海艦隊のカリブル搭載艦(動画を見る限りフリゲート)は、ドニプロペトロウシク州のカルピウカへ「カリブル」を発射し、大型燃料貯蔵庫を破壊しました。
[ロシア海軍黒海艦隊はドニプロペトロウシク州のカルピウカの大型燃料貯蔵庫を巡航ミサイル「カリブル」で破壊した]

ロシア国防省による公式発表は有りませんが、9月11日夕方にハリコフ州の火力発電所が「カリブル」による攻撃を受け、ウクライナの一部で大規模な停電が発生しました。
[ロシア海軍黒海艦隊はハリコフ州の火力発電所へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

9月14日夜、クリヴィー・リフ近郊のカラチュノフスコエ貯水池のダムが「カリブル」による攻撃を受け、この近辺のインフレツィ川の水位が急激に上昇しました。
ウクライナ側は、この地域の川の水位の上昇によりへルソン方面のウクライナ軍部隊の渡河を妨害する為にダムを攻撃したと見ています。
[ロシア海軍黒海艦隊は巡航ミサイル「カリブル」でクリヴィー・リフのダムを破壊した]

それから暫く「カリブル」の攻撃は有りませんでしたが、ロシアは黒海へ常時2-3隻の「カリブル」搭載艦を展開させており、ウクライナ軍南方作戦司令部は、10月10日朝の時点で黒海に6隻の「カリブル」搭載艦(水上艦4隻、潜水艦2隻、合計でミサイル40基)が展開していると発表しました。
『Fokus』より
2022年10月10日9時44分配信
【ウクライナを狙う40基の「カリブル」:黒海でミサイル搭載艦の数が増加-南方作戦司令部】

10月10日午前、ウクライナ側(クリヴィー・リフ市当局)によると、クリヴィー・リフへ14基の「カリブル」が発射されました。
つまり、少なくとも2隻の「カリブル」搭載艦がミサイルを発射した事になりますが、ロシア国防省が公表した動画を見る限り、その内の1隻はフリゲートのようです。
[ロシア海軍黒海艦隊はクリヴィー・リフへ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]
この他、ロシア軍はウクライナ全土を巡航ミサイルや無人機で攻撃しました。

翌10月11日、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦は、10基の「カリブル」をウクライナへ発射しました。
同時にカスピ小艦隊の「カリブル」搭載艦も10基以上の「カリブル」をウクライナへ発射しました。
(カスピ小艦隊には4隻の「カリブル」搭載艦が居る)
前日と同様、「カリブル」だけではなく、ロシア航空宇宙軍の空中発射巡航ミサイルや無人機などによる空爆も同時に行なわれました。
[ロシア海軍黒海艦隊とカスピ小艦隊はウクライナへ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

10月14日、黒海艦隊のフリゲートは、ウクライナ西部のリヴォフ(リヴィウ)州のブロドゥイへ少なくとも5基の「カリブル」を発射し、同地に在る兵器庫を破壊しました。
[ロシア海軍黒海艦隊のフリゲートはリヴィウ州のブロドゥイの兵器庫を巡航ミサイル「カリブル」で破壊した]

10月17日、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦はウクライナ領内へ「カリブル」を発射しました。
カスピ小艦隊の「カリブル」搭載艦もウクライナ領内へ16基程度の「カリブル」を発射しました。
同時にロシア航空宇宙軍の航空機もウクライナ領内へ巡航ミサイルを発射しました。
[ロシア海軍黒海艦隊とカスピ小艦隊はウクライナの軍事指揮施設とエネルギー施設へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

10月18日朝、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦(動画を見る限り「ブヤン-M」小型ロケット艦)とロシア航空宇宙軍の航空機は、ウクライナ各地の軍事指揮施設と発電施設、兵器庫へ巡航ミサイルを発射しました。
[ロシア海軍黒海艦隊とロシア航空宇宙軍はウクライナの軍事指揮施設と発電施設、兵器庫へ巡航ミサイルを発射した]

10月19日朝、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦(動画を見る限りフリゲート)とロシア航空宇宙軍の航空機は、ウクライナ各地の軍事指揮施設と発電施設へ巡航ミサイルを発射しました。
ロシア国防省は具体的な攻撃場所を明らかにしていませんが、ウクライナ側の報道によると、少なくとも首都キエフには巡航ミサイル(「カリブル」或いは航空機発射のKh-101)が着弾しています。
[ロシア海軍黒海艦隊とロシア航空宇宙軍はウクライナ(キエフ)の軍事指揮施設と発電施設へ巡航ミサイルを発射した]

その後もロシア航空宇宙軍の航空機はウクライナ各地への巡航ミサイル攻撃を続けましたが、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦による攻撃は10月20日と21日には行なわれませんでした。

ロシア海軍は関わっていませんが、10月21日の航空機発射巡航ミサイルによる攻撃では、ハリコフ(ハルキウ)市のコムナール工場の対艦ミサイル「ネプトゥン」の組立作業を行なっていた作業場も破壊されました。
これらのミサイルはコムナール工場で組み立てられた後、ザポリージャの「モトール・シーチ」工場へ送って弾頭を装備する予定でしたが、今回の攻撃で全て破壊されたようです。
『Eadaily.com』より
2022年10月21日9時44分配信
【ハリコフでの爆発-対艦ミサイル「ネプトゥン」の作業場は破壊された】

10月22日、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦とロシア航空宇宙軍の航空機によるウクライナへの巡航ミサイル攻撃が行なわれました。
黒海艦隊は16基の「カリブル」を発射しました(つまり水上艦2隻から)。
[ロシア海軍黒海艦隊とロシア航空宇宙軍はウクライナへ巡航ミサイルを発射した]

その後もロシア航空宇宙軍航空機によるウクライナへの巡航ミサイル攻撃は続けられました。

10月31日朝、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦(ロシア国防省の動画では「ブヤン-M」小型ロケット艦)とロシア航空宇宙軍の航空機は、キーウ、ハルキウ、ポルタヴァ、ザポリージャ、ヴィーヌンツァ、オデーサ各州へ巡航ミサイル攻撃を行ないました。
(合計で40基以上の巡航ミサイルを発射)
[ロシア海軍黒海艦隊とロシア航空宇宙軍はウクライナ各地へ巡航ミサイルを発射した]

11月15日、ロシア航空宇宙軍航空機と黒海艦隊の「カリブル」搭載艦(ロシア国防省の動画によるとフリゲート)は、ウクライナ全土(チェルニーヒウ州、ザカルパッチャ州とロシアが自国編入を宣言した4州以外の全州)へ合計90基以上の巡航ミサイルを発射しました。
(この内「カリブル」は20基程度、他は空中発射巡航ミサイルKh-101とKh-555)
[ロシア海軍黒海艦隊とロシア航空宇宙軍はウクライナ全土への大規模な巡航ミサイル攻撃を実施した]

11月17日、ロシア航空宇宙軍航空機と黒海艦隊の「カリブル」搭載艦(ロシア国防省の動画によると小型ロケット艦)はウクライナ各地へ巡航ミサイルを発射しました。
更に陸軍も弾道ミサイル「イスカンデル」(陸上発射長距離高精度兵器)を発射しました。
今回の主要攻撃目標は、ウクライナのミサイル製造工場だったようです。
[ロシア海軍黒海艦隊とロシア航空宇宙軍はウクライナの兵器製造施設などを巡航ミサイルで攻撃した]

11月23日、ロシア航空宇宙軍の戦略爆撃機と黒海艦隊の「カリブル」搭載艦(ロシア国防省の動画によるとフリゲート)、そして更に陸軍の弾道ミサイル「イスカンデル」は、ウクライナ各地(リヴォフ州、フメリニツキー州、ヴィニーツァ州、キエフ州、ポルタワ州、ドニエプル州、スミイ州、クレメンチュグ市、クリヴォイ・ログ州、オデッサ州、ニコラエフ州)への大規模ミサイル攻撃を行ないました。
[ロシア海軍とロシア航空宇宙軍とロシア陸軍はウクライナへの大規模ミサイル攻撃を実施した(2022年11月23日)]

ロシア国防省は、キエフ市内の被害はウクライナ軍の対空ミサイルの落下によるものだと言っていますが、確かに、ウクライナ軍のNASAMS(空対空ミサイルAIM-120 AMRAAMの地上発射型)がキエフの住宅地へ落下しています。
【TC Yildiz氏の2022年11月24日9時14分のツイート】

その後、暫くロシア軍による大規模ミサイル攻撃は無く、西側ではまたもロシアのミサイルが枯渇したなどと言われていましたが、12月5日、ロシア航空宇宙軍の戦略爆撃機と黒海艦隊の「カリブル」搭載艦(国防省の動画ではフリゲート)は、ウクライナのほぼ全域への大規模なミサイル攻撃を実施しました。
(第一波で巡航ミサイル約150基、第二波で約100基)
[ロシア海軍とロシア航空宇宙軍はウクライナへの大規模ミサイル攻撃を実施した(2022年12月5日)]

12月16日、ロシア航空宇宙軍の戦略爆撃機と黒海艦隊の「カリブル」搭載艦(ロシア国防省の動画では「ブヤン-M」小型ロケット艦)は、ウクライナ各地(ドニエプロペトロフスク州、キロヴォグラード州、ハリコフ市、コロステン市、ジトーミル州、ポルタワ州など)への大規模ミサイル攻撃を行ないました。
[ロシア航空宇宙軍及びロシア海軍、ウクライナへの大規模ミサイル攻撃を実施(2022年12月16日)]

12月29日、ロシア航空宇宙軍と黒海艦隊の「カリブル」搭載艦(ロシア国防省の動画では「ブヤン-M」小型ロケット艦)は、ウクライナ全土へ巡航ミサイル120基以上を発射しました。
[ロシア連邦軍(ロシア海軍とロシア航空宇宙軍)はウクライナ各地へ巡航ミサイルを発射した(2022年12月29日)]

2023年1月14日、ロシア連邦軍は、ウクライナ全土(ハリコフ、リヴォフ、オデッサ、イワノ-フランコフスク、キエフ、ザポリージャ、ヴィニツァ州)へ巡航ミサイルを発射しました。
ロシア国防省は「ミサイル打撃」としか言っていませんが、航空宇宙軍の爆撃機のみならず、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦数隻も参加しました。
[ロシア連邦軍(ロシア海軍とロシア航空宇宙軍)はウクライナ各地へ巡航ミサイルを発射した(2023年1月14日)]

1月26日、ロシア航空宇宙軍と黒海艦隊の「カリブル」搭載艦(ロシア国防省の動画では11356フリゲート)は、ウクライナ各地へ巡航ミサイルを発射しました。
[ロシア連邦軍(ロシア海軍とロシア航空宇宙軍)、ウクライナへ巡航ミサイルを発射(2023年1月26日)]

2月10日、ロシア航空宇宙軍の爆撃機と黒海艦隊の「カリブル」搭載艦(ロシア国防省の動画では11356フリゲート)は、ウクライナ各地へ巡航ミサイル(28基の「カリブル」を含む71基の巡航ミサイル)を発射しました。
この他、陸軍の弾道ミサイル「イスカンデル」(ロシア国防省発表では「陸上発射長距離高精度兵器」と言われている)、そして無人機による攻撃も行なわれました。
この攻撃により、ウクライナのリヴォフ、ジトーミル、ザポリージャ、イワノ-フランコフスク、フメリニツキー、ヴィニツァ、ハリコフ、キエフ、オデッサ、ドニエプロペトロフスク(クリヴォイ・ログ)で爆発が報告され、電力インフラに被害を受けました。
[ロシア連邦軍(ロシア海軍とロシア航空宇宙軍、ロシア陸軍)、高精度兵器(巡航ミサイル/弾道ミサイル)によりウクライナ各地を攻撃(2023年2月10日)]

2月16日、ロシア航空宇宙軍の爆撃機と黒海艦隊の「カリブル」搭載艦(ロシア国防省の動画では11356フリゲート)は、ウクライナ各地へ巡航ミサイルを発射しました。
この攻撃により、ウクライナのオデッサ、ポルタワ(クレメンチュグ)、ドニエプロペトロフスク、ニコラエフ、キロヴォグラード、スムイ、チェルカッシィ、クラマトルスクで爆発が報告され、電力インフラに被害を受けました。
[ロシア連邦軍(ロシア海軍とロシア航空宇宙軍)、巡航ミサイルによりウクライナ各地を攻撃(2023年2月16日)]

2月19日、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦(ロシア国防省の動画では「ブヤン-M」小型ロケット艦)は、ウクライナ西部のフメリニツキー市のウクライナ軍第383無人機連隊の基地と、その近辺の砲弾倉庫へ巡航ミサイルを発射しました。
[ロシア海軍黒海艦隊は巡航ミサイル「カリブル」でフメリニツキーのウクライナ軍無人機連隊基地と砲弾倉庫を攻撃した]

3月9日、ロシア航空宇宙軍の爆撃機と黒海艦隊の「カリブル」搭載艦は、ウクライナ各地へ巡航ミサイルを発射しました。
この攻撃により、キエフ、ハリコフ、キロヴォグラード、ドニエプロペトロフスク、リヴォフ、オデッサ、チェルカッシィ、ロヴノで爆発が報告され、電力インフラや鉄道などが被害を受けました。
[ロシア連邦軍(ロシア海軍とロシア航空宇宙軍)、巡航ミサイルによりウクライナ各地を攻撃(2023年3月9日)]

2023年4月27日未明、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦は、ウクライナ軍駐屯所へ「カリブル」を発射しました。
[ロシア海軍黒海艦隊はウクライナ軍の駐屯所へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した]

4月28日夕方、黒海艦隊の「カリブル」搭載艦(ロシア国防省の動画ではブヤン-M小型ロケット艦)は、へルソン付近のウクライナ軍部隊の司令部へ巡航ミサイルを発射しました。
[ロシア海軍黒海艦隊は巡航ミサイル「カリブル」でへルソン方面のウクライナ軍部隊司令部を攻撃した]

5月1日未明、ロシア航空宇宙軍の爆撃機と黒海艦隊の「カリブル」搭載艦は、ウクライナ各地へ巡航ミサイルを発射しました。

ウクライナのキエフ市とキエフ州、スムイ州、ドニエプロペトロフスク州のパヴログラードなどで爆発が起こったので、これらの地域へミサイルが着弾したようです。
『タス通信』より
2023年5月1日9時33分配信
【キエフ及びウクライナの他の都市で爆発が起こった】

4月30日深夜~5月1日未明の時点で黒海には「カリブル」搭載潜水艦2隻が居たので、これらの艦がミサイルを発射したようです。
『UNIAN』より
2023年4月30日23時43分配信
【ロシアはミサイル搭載艦を海上へ出し、一斉発射数は8基のミサイル】
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    ロシア海軍黒海艦隊はセヴァストーポリ外部泊地でウクライナ軍の無人機を撃墜した
    ロシア航空宇宙軍とロシア海軍黒海艦隊はウクライナへの巡航ミサイル攻撃を実施した
    ロシア海軍黒海艦隊は巡航ミサイル「カリブル」でへルソン方面のウクライナ軍部隊司令部を攻撃した
    セヴァストーポリ市郊外の燃料タンクは無人機の攻撃により炎上した
    ロシア海軍黒海艦隊はウクライナ軍の駐屯所へ巡航ミサイル「カリブル」を発射した 』

ウクライナ軍の反攻作戦、互いに演じる役も台本の内容も分かっている戦い

ウクライナ軍の反攻作戦、互いに演じる役も台本の内容も分かっている戦い
https://grandfleet.info/european-region/ukrainian-armys-counteroffensive-operation-a-battle-where-both-roles-and-script-contents-are-known/

『英国のTimes紙は29日「ウクライナもロシアも選択の余地がなく、ウクライナは支援国の期待に応えるため夏までに大攻勢を、ロシアは西側を喜ばせるような勝利を否定しなければならず、互いに演じる役があり台本の内容も分かっている」と指摘した。

参考:Ukraine isn’t ready for its big offensive, but it has no choice
これまでウクライナ人は我々を驚かせてきたが、現在は作戦の選択肢がかなり少なくロシア人もそれを知っている

英国のTimes紙は29日「ウクライナは大攻勢に出る準備が出来ていないが選択の余地がない。西側諸国の供給を上回るスピードで弾薬を消費しているにも関わらず、春か夏までに大攻勢を開始するしかないが、幸いなことにロシアも新しいアイデアが尽きている。大攻勢の結果がどうなるにせよ戦いが長引くことで最大の利益を得るのは中国だ」と指摘しており、この興味深い主張の内容を要約すると以下の通りなる。

出典:管理人作成

ウクライナは待望の反攻作戦について「スポーツ観戦と同じように扱わないで欲しい」と訴えていたものの、ソーシャルメディア上の「Armchair Warrior(軍隊での勤務経験や戦闘経験がない人々が快適な場所で戦争や戦闘を論じることを指す蔑称)」は熱心に作戦の内容や結果を議論し、レズニコフ国防相も「ほぼ準備が整っているため神の意志、天候、指揮官の決断があれば直ぐ実行に移す」と、ゼレンスキー大統領も「必ず反攻作戦は実施され我々の土地を解放できると信じている」と期待値を煽っている。

ウクライナ軍と行動を共にしている英国人将校も「ウクライナ人達は反攻作戦で大きな成果を上げることに自信満々だ」とTimes紙に明かしているが、クレバ外相のみ加熱する反攻作戦への期待値を下げるため「今回の反攻がロシアとの決戦だと認識しないで欲しい。決定的な戦いとは占領下にある土地の完全解放に繋がるものを指す」と訴え、これは漏洩した機密文書の中で発覚した米国の評価に近い。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

米諜報機関は「ウクライナはヘルソン州とクリミアが接続される部分を目指し南下するだろう。塹壕・防衛陣地・障害物・地雷が張り巡らされたザポリージャ州の前線を突破しなければならず、訓練された兵士や弾薬の供給面でも持続性に欠けるため、ささやかな領土の奪還しかもたらさない可能性がある」と警告、一部の議員に提供された機密資料の中でも「ハルキウやヘルソンほどの成功は見込めない」と指摘している。

この様な意見の相違は戦術と戦略の違いを反映している可能性が高く、これまでウクライナ軍は創造的なアイデアや工夫でロシア軍を出し抜き、西側諸国は反攻作戦に必要な装備の98%を引き渡したと述べているが、反攻部隊の頭上を保護する防空システムが欠けているため空からの攻撃に脆弱で、半年にも満たない訓練期間で2,000輌近い新装備を使いこなせるのか、急造の諸兵科連合作戦を実行できるのか、そもそもウクライナ軍の指揮官が西側の装備システムと戦術に適応できるのか誰にも分からない。

出典:PRESIDENT OF UKRAINE

ゼレンスキー大統領は言葉巧みに西側諸国から支持を取り付けきたが、ワシントンが言うところの「投資対効果」を示さなければならない時期に差し掛かっており、Times紙は「準備が完全に整うまで反攻作戦の実施を見送ることは不可能で、現実的にウクライナは春か夏までに大規模な反攻を仕掛ける以外の選択肢がない」と指摘、米国の国防当局者も「これまでウクライナ人は我々を驚かせてきたが、現在は作戦の選択肢がかなり少なくロシア人もそれを知っている」と述べている。

2,000輌近い戦車や装甲車輌をウクライナ軍に提供するということは、これだけの装備を運用するためスペアパーツや弾薬も供給しなければ意味がなく、HIMARSが使用するGMLRS弾、榴弾砲や自走砲が使用する155mm砲弾、パトリオットやNASAMSで使用する迎撃弾等の年間生産量を考慮すれば、反攻作戦の攻勢限界がどの程度なのかを(ロシアが)推し量るのは容易だろう。

出典:Kremlin.ru/CC BY 4.0

逆にロシアも供給量を越える砲弾を消耗し続けており、特別軍事作戦の攻勢規模が積極的になればなるほど人的損失が増加し、これを補うためプーチン大統領は「動員の再実施」か「徴兵した兵士の投入」を迫られ、9月に地方選挙、来年の3月に大統領選挙が控えているため「不人気な政治的決断」を下したくないないため、ロシアも攻勢を局地的に留めて防御を固めるという戦略しか選択肢がない。

さらに中国は戦争が長引けば長引くほど、ロシア経済へのダメージが大きくなればなるほど「より大きな影響力」が手に入ると考えており、Times紙もロシア人政治アナリストの発言を引用して「まだ習近平はプーチンが望む武器・弾薬の供給や政治的支援を約束しておらず、何も約束しないことが影響力の最大=中国の国益に繋がると考えているのは確実だ」と指摘し、以下のように記事を締め括っている。

出典:Генеральний штаб ЗСУ

“ウクライナもロシアも戦術的な自由度は高いが戦略的には限界があり、ウクライナは支援国の期待に応えるため夏までに大攻勢を、ロシアは西側を喜ばせるような勝利を否定しなければならず、互いに演じる役があり台本の内容も分かっている。それぞれが与えられた配役を上手く演じ、不測の事態も即興の演技で切り抜けられるかが問題だ”

ウクライナ軍には水陸両用作戦を実行するだけの装備も能力もないため敵の意表を突く=奇襲要素を反攻作戦に盛り込むのは困難で、限られた装備と弾薬の範囲で行われる反攻作戦は「大きなリターンが期待できる地域」で実施される可能性が高く、これをロシアも承知しているため「配役も台本も決まっている戦い」と言う表現は言い得て妙だ。

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※アイキャッチ画像の出典:Генеральний штаб ЗСУ
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投稿者: 航空万能論GF管理人 欧州関連 コメント: 39 』

スマホ決済不正利用 パソコンにメールアドレス1億件保存か

スマホ決済不正利用 パソコンにメールアドレス1億件保存か
https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20230501/1000092038.html

 ※ オレの体験談を、一つ…。

 ※ 税金関係で、「国税庁」のHP(ホンモノ)にアクセスして、「国税の計算」フォームを利用した。税金の額が、どれくらいになるのか、ちょっと計算したかったからだ…。

 ※ そしたら、来るわ来るわ…。「詐欺メール」が一日平均5~8通くらい送信されて来た…。

 ※ 大体似たような文面で、国税庁名義で、「税金が未納になっています。つきましては、○○までアクセスして、必要事項をご記入ください。」てな感じのものだ…。

 ※ たぶん、そのフォームの「ソフト開発」を請け負った会社の、下請け・孫請けの
会社が、「経費を、安く上げる」ため、どこぞの「怪しげな会社」に頼んだんだろう…。
 ※ そして、そこから「情報、ダダ漏れ」になるか、「バックドア」でも仕掛けられたんだろう…。…。

 ※ しばらくして、「国税庁」のHPを覗いてみると、小さく、「国税庁の名前を騙る詐欺メールが出回っているようですので、ご注意ください。」という「お知らせ」が、載っていた…。

 ※ おせーよ…。

 ※ 全く、「計算フォーム」利用しただけで、詐欺メール攻撃に見舞われるとか、油断も隙もあったモンじゃない…。

 ※ 今の世の中、そういうものだ…。

『スマートフォンの決済サービスの不正利用事件で、神奈川県警察本部が逮捕した中国人グループのパソコンを調べたところ、290万件のIDやパスワードのほか、1億件にのぼるメールアドレスが保存されていたことが分かりました。
押収品からこれだけの数の情報が確認されるのは極めて異例で、警察は指示役とみられる会社役員を再逮捕して情報の分析や入手ルートの捜査を進めています。

中国人グループによるスマートフォンの決済サービスの不正利用事件で、神奈川県警察本部はグループの指示役とみられ都内に住む中国籍の会社役員、胡奥博容疑者(30)を他人のアカウントに不正ログインした不正アクセス禁止法違反の疑いで1日再逮捕しました。

調べに対し、容疑を否認しているということです。
警察によりますと胡容疑者の自宅から押収した3台のパソコンを調べた結果、国内で利用されている決済サービスのものを含む290万件のIDやパスワードのほか、1万7000件のクレジットカードの情報が保存されていたことがわかりました。
さらに、1億件にのぼるメールアドレスも保存されていたということです。
パソコンには、フィッシング詐欺を行うためのプログラムも保存されていて、警察はフィッシング詐欺のメールを大量に送りつけ、パスワードなどを盗んでいた疑いがあるとみています。

押収品からこれだけの数のメールアドレスやIDなどの情報が確認されるのは極めて異例で、警察は引き続き、保存されていた情報の分析や入手ルートについて捜査を進めることにしています。

【事件の構図】

スマートフォンの決済サービスへの不正ログイン事件で、神奈川県警はこれまでに中国人の男女あわせて11人を検挙しました。
これまでにわかっている事件の構図です。
指示役とみられる胡容疑者は入手したIDやパスワードを使って他人のアカウントに不正にログインし、決済に使うバーコードを入手。
そのバーコードの画像を、実行役をとりまとめるメンバーにSNSで送っていたとみられています。
その後、バーコードは「買い子」に渡り、買い子はバーコードを使ってコンビニなどで加熱式たばこを購入していました。
加熱式たばこは、中国に輸出したうえで転売していたとみられます。

【“フィッシング詐欺“どう見破れば?】

大量のIDやパスワードが流出した一つのルートと考えられるのが、「フィッシング詐欺」です。

近年、急増し、手口も巧妙になっています。
情報セキュリティー会社「サウスプルーム」の社長、篠田律さんが自分に届いたメールをもとに最近の巧妙な手口と注意点を説明してくれました。
大手フリマアプリを名乗ったメール。
3000円分のポイントを受け取れるキャンペーンでメールに記載されたURLをクリックするよう書かれています。
キャンペーンの対象期間や対象条件なども書かれていて、一見、本物のように見えます。
しかし、これは偽物の「フィッシングメール」で、内容を信じてURLをクリックすると本物そっくりの偽サイトに誘導され、IDとパスワードを入力してしまうと、情報が盗まれるのです。

このような巧妙なメールにだまされないために、篠田さんがポイントとして指摘したのは、送信元のメールアドレスを確認すること、公式サイトやアプリからログインすることです。
【ポイント1送信元のメールアドレスを確認する】

篠田さんのもとに送られてきたフィッシングメールは、@より右側のドメインと呼ばれる部分の末尾が「.cn」となっています。

「.cn」は、中国でよく使われているドメインで、篠田さんが調べた結果、中国のサーバーから送られていたということです。

ただ、日本国内で多く使われている「.jp」を使うフィッシングメールや、サービスを提供している事業者の名称に似たアドレスからのメールも増えているといいます。
篠田さんは、アドレスが正規のものかどうか確認するほか、事業者に電話で問い合わせたり、事業者の公式ホームページなどで正しい情報を確認したりして欲しいとしています。
【ポイント2公式サイトやアプリからログインを】

また、フィッシングメールのなかにはついクリックしてしまいそうな、本物そっくりの偽のログイン画面も存在します。

篠田さんは自分が利用している国内事業者のサービスを名乗るメールが届いた場合でも、記載されたURLをすぐにクリックすることは避け公式のサイトやアプリから必ずログインしてほしいと呼びかけています。

篠田さんは「メールアドレスは流出していることがあるので、重要な内容のメールが届いたとしても、必ず電話で事業者に確認してほしい。また、企業側も犯罪に悪用されかねない顧客の情報がサイバー空間で売られていることを理解し、情報の収集と対応を進めていく必要がある」と話しています。

【“フィッシング詐欺”5年で50倍近くに】

クレジット会社など民間の事業者などで作るフィッシング対策協議会によりますと、フィッシング詐欺に関する報告件数は2018年はおよそ2万件、2019年がおよそ5万5千件、2020年にはおよそ22万件、2021年にはおよそ52万件、去年1年間はおよそ96万件と5年間で50倍近くに増えています。

フィッシング詐欺の増加にともないクレジットカードの不正利用も急増していて、日本クレジット協会の調査ではおととし1年間の被害額は330億円余りにのぼっています。
最近では、宅配便の不在通知を装ったり、国税局をかたったりするなど手口が多様かつ巧妙になっていて、協議会はサイトにログインを促すメールやショートメッセージが届いた場合、記載されているURLをクリックしないよう、注意を呼びかけています。

フィッシングのほかに犯行グループがIDやパスワード、メールアドレスを入手した可能性があるのがインターネット上の闇市場=ブラックマーケットです。

都内にある情報セキュリティー会社、「サウスプルーム」の篠田律社長は利用者のIDやパスワード、それにメールアドレスなど、多くの情報が闇市場=ブラックマーケットで、売買されていると指摘します。

篠田さんの会社と海外の会社の協力を得て実際にブラックマーケットでの取り引き状況を調べました。
調査グループが発見したブラックマーケットの一つは秘匿性の高いSNS上でやりとりされていて、日本で使われている複数の決済サービスの名前が記されていました。
そして、「数十万件単位で日本で使われているメールアドレスを販売します」などという投稿がありました。

メールアドレスからその人がふだん利用している決済サービスを調べられるプログラムも売買されていることがわかりました。

さらに、ブラックマーケットでは利用者のIDやパスワードだとする情報、運転免許証の写真や携帯電話の番号だとする情報を販売しているケースもありました。
篠田さんによりますと、IDやパスワードはメールアドレスに比べて高い値段で取り引きされているということです。

篠田社長は「一度に数百万件や数千万件の情報の取り引きが行われているケースもある。最近でもウイルスに感染して流出したと考えられる1000万件のログイン情報を販売するという投稿が確認されている」と闇市場での取り引きの実態を話しています。』

Z世代狙う投資詐欺 「FIRE」「億り人」が売り文句

Z世代狙う投資詐欺 「FIRE」「億り人」が売り文句
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB203UM0Q3A420C2000000/

 ※ こういう風に、「手を変え品を変え」、騙しにかかってくるわけだ…。

 ※ ともかく、「分不相応に」、「欲の皮のつっぱった人間」は、イチコロだ…。

 ※ しかも、そういう人間に限って、「不勉強」と来てるんで、「カモへの道」一直線だ…。

『20〜30代をターゲットにした悪質な投資詐欺が相次いでいる。特に狙われやすいのが、Z世代と呼ばれる1990年代半ば以降に生まれた若年層。インターネットでSNS(交流サイト)に親しみ、将来への資産形成を本格的に考え始める世代だ。生活不安や投資への関心に巧妙につけ込み、暗号資産(仮想通貨)や外国為替証拠金(FX)取引を装って勧誘されるケースも目立つ。最近の詐欺手口を理解し、だまされないための対策をお…

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『最近の詐欺手口を理解し、だまされないための対策をおさえておこう。

【関連記事】

・投資詐欺にだまされない 「必ず」「元本保証」は疑う
・出資金や配当は現金手渡し 投資詐欺、200億円集金か
・マルチ商法「モノなし」拡大 仮想通貨など、20代標的

借金促し出資のケースも

「この仮想通貨は必ず値上がりする」「物価高で生活が苦しくなるから今のうちに投資を」。東京都内の男性会社員Aさん(20代)は2022年秋、SNSで知り合った人物にこんな勧誘を受けた。その人物は仮想通貨のトレーダーを自称し、SNSに高級車やブランド腕時計などを投稿し金満ぶりをアピール。仕事にも慣れ資産運用を考えていたAさんは、促されるまま資金の一部を消費者金融から借りて計100万円を出資したが、相手と連絡が取れなくなったという。

こうした若年層を狙った投資詐欺が後を絶たない。警察庁によると、投資詐欺など利殖勧誘で全国の警察が22年に受理した相談件数(2584件)のうち、20〜30代が30.6%を占めた。17年はこの年代が16.6%で、60代以上が49.7%に達していた。インターネットを悪用した手口が広がったことで、被害の中心が若年層に移りつつある。立正大学の小宮信夫教授(犯罪学)は「投資詐欺と聞くと高齢者のイメージがいまだ強いが、SNSで知らない人との交流に抵抗が少ない若者こそ被害に遭いやすい」と警鐘を鳴らす。

FX取引を名目にした被害も目立つ。注意したいのが「自動売買ソフト」を入り口にした手口や、投資家向けアプリを悪用して金銭をだまし取る手口だ。FX取引は証拠金を取引業者に差し入れて外貨に投資する。証拠金の最大25倍の金額まで取引することが可能なため損失も大きくなりやすく、初心者には本来難しい投資だ。

詐欺グループは「プログラムが自動で売買する」「何もせずにもうかる」などとソフト購入を促し、海外口座に証拠金を送金させる。画面上では利益が出るが、お金は引き出せないといった具合だ。

最近では実際に投資家が利用するFXアプリを悪用する手口も明らかになった。海外口座を開設させたうえでアプリと連携、架空の運用益を示して被害が膨らんだケースもあったという。国民生活センターに21年度に寄せられたFX取引関連の相談件数は前年度比9割増。為替相場が大きく変動する局面が増え、FX取引で稼げるという安易なイメージを打ち出しやすくなったとみられる。

周囲巻き込む「モノなしマルチ」

株式や仮想通貨など投資対象を問わず、高利回りを約束する「ファンド」にも要注意だ。なかには「月利8%」「月利15%」をうたって勧誘する例がある。これらは出資者から募った資金を実際には運用せず、後から出資した人の資金を配当と装って支払うタイプの詐欺が多い。いわゆる「ポンジ・スキーム」という手口で、初期は配当としてお金が出るため信じ込みやすい。

特に気を付けたいのが、こうした詐欺では友人や同僚から誘われるケースが相次いでいること。契約者に対して「1人誘うごとに配当が増える」などと持ちかけ、結果的に被害が広がるパターンだ。「モノなしマルチ商法」と呼ばれ、勧誘する側は加害意識が乏しいまま周囲を巻き込む例が少なくない。物価高など生活不安をあおるほか、投資で稼いで早期リタイアする「FIRE」を売り文句にする手口も目立つ。投資詐欺に詳しい杉山雅浩弁護士は「厳しい経済情勢で派手な成功例を目にすると、異常な利回りでも知人の紹介を信じてしまう」と指摘する。

では投資詐欺に遭わないためにはどうすればいいか。手口の理解とともに、投資の基本や被害者側の心理状態を知っておきたい。まず、投資に「絶対」はないことを強く意識しよう。投資にはリスクが伴い金融商品は元本割れのおそれがある。したがって「必ずもうかる」「元本保証」といった勧誘をうのみにするのは禁物だ。

ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「金融知識が乏しい若年層は投資リターンの水準感をおさえてほしい」と話す。例えば代表的な世界株指数の年率リターンは90〜22年で平均7%だ。月利8%なら12カ月の単純計算(単利)でも年利96%、月利15%なら年利180%に上る。「月利◎%などと高金利をうたう商品は詐欺の可能性が高い」(深野氏)。

また金融商品の取り扱いには金融商品取引業の登録が必要だ。暗号資産交換業者も登録が義務付けられており、いずれも金融庁のホームページに掲載されている。勧誘を受けたら登録業者かどうか確認しよう。

仮想通貨やFX取引といった価格変動が大きい投資では、SNSなどで「億り人」や「FIRE」に関する体験談が多い。当初は自分には難しいと考えていても、「成功例ばかりを探すうちにそれが当たり前だと思い込み、自身も一獲千金ができるという心理状態に陥る」(小宮教授)。詐欺グループはそうした意識を巧妙に突いてだましてくる。

少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)など若年層から利用できる投資手段は増えている。こうした制度を活用し、資産形成は長期で取り組みたい。

被害防止、親世代が気配りも

後を絶たない投資詐欺。被害に遭うと「だまし取られたお金の回復は極めて難しい」(杉山弁護士)のが現実だ。犯人が捕まるとは限らないうえ、逮捕されても刑事裁判で判決が出るまで時間がかかり、被害財産が既に散逸しているケースが多いからだ。だからこそ普段から詐欺を防ぐ対策が重要になる。

近年は投資で高収入を得るためのノウハウを教えるなどと称して情報商材や投資セミナーにSNSで勧誘する例も目立ち、これらを入り口に投資詐欺に引き込まれるパターンが少なくない。不審な勧誘を受けたら、公的な窓口に相談するのも手だ。警察の相談専用電話「#9110」や、消費生活センターなどにつながる消費者ホットライン「188」で相談できる。
少しでも怪しいと感じたら、被害に遭う前に早めに相談したい。

新生活が始まる春は新しい同僚や友人と出会う季節でもある。親しくなった人に勧誘されても、人間関係と投資は切り離して冷静に判断するのが大切だ。若年層が投資商品のマルチ商法に巻き込まれると、多額の借金をしたり本人が加害者になったりする。親世代ら周囲が気を配ることも意識したい。小宮教授は「大型連休で家族が集まったタイミングなどに、資産形成について話し合ってみるのもいい」と話している。
(阿部真也)』

大阪カジノの晴れぬ霧 銀行団、巨額融資にためらいも

大阪カジノの晴れぬ霧 銀行団、巨額融資にためらいも
金融取材メモ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB241210U3A420C2000000/

 ※ まさか、「感染症」「パンデミック」みたいなものに直撃されるとは、関係者の誰もが思わんかったろうな…。

 ※ 世の中には、そういう「リスク」も、潜んでおったわけだ…。

『日本初のカジノを含む大阪の統合型リゾート(IR)計画が4月に政府の認定を受け、2029年秋〜冬ごろの開業へ動き出した。事業費は1兆800億円と巨額で、協調融資の組成額は5500億円と空前の規模になる。融資団には20社前後の参加が期待されるが、新型コロナウイルスの流行で世界中のカジノが営業停止に追い込まれた記憶も生々しい。金融機関の目線は厳しさを増している。

国際会議場や劇場、ホテル、カジノを一体…

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『国際会議場や劇場、ホテル、カジノを一体で整備するIR。プロジェクトのゆくえを左右するのが資金調達の成否やその条件だ。ギャンブルの依存症や治安への不安など住民に忌避感も残り、資金を支える銀行にとっては難しい案件といえる。

参加行を率いるリードアレンジャーは、大阪を源流のひとつとする三菱UFJ銀行と三井住友銀行が務める。幹事行の呼びかけにどれだけの金融機関が応じるかによるが、両行で計2000億〜3000億円程度を負担する見込みだ。

りそな銀行とSBI新生銀行が参加の意向を示し、三井住友信託銀行や日本政策投資銀行も検討を進める。幹事行は地域金融機関や生命保険会社にも参加を呼びかけ、オールジャパンの様相を呈している。総額5500億円の協調融資は、新千歳空港など北海道にある7つの空港を民営化した際の融資額(約3600億円)を上回り、国内で最高額となる。

ところが参加行を想定する一覧表で、みずほ銀行の応諾額は空欄のままだ。前向きな返事はまだ届いていないという。

みずほがIRへの融資をはなから除外しているわけではない。むしろ計画が撤回された横浜では京浜急行電鉄や大成建設、電通などからなる「八社会」とカジノの運営を担う海外企業で構成する陣営に、自らを中心とする銀行団が6000億円融資する計画を温めていた。

大阪で足並みがそろわないのは、融資を巡る考えの違いを埋めきれないからだ。

三菱UFJと三井住友は事業から将来得られるキャッシュフローを返済の原資とするプロジェクトファイナンスを前提に進める。対するみずほは企業体の信用力を裏付けにした企業向け融資を推し、プロジェクトファイナンスと一線を画す。最大1000億円の融資を期待されるみずほが不参加となれば、ほかの金融機関が穴埋めすることになる。

慎重なのはみずほだけではない。IRの舞台となる夢洲は人工島で、地盤沈下や土壌汚染のリスクが残る。地盤をかさ上げしたり、土壌を入れ替えたりして想定外の費用が発生したとき、だれが費用を負担するのか。融資に際してはこうしたリスクを一つひとつ洗い出し、表面化した際の解決策を決めておく必要がある。

融資に前向きな銀行の幹部でさえ「懸念を解消できていない」と決裁できずにいる。大口の参加を期待されていた生命保険会社は要請を断った。当初の予定より応諾額を減らした銀行もある。みずほがプロジェクトファイナンスに慎重な姿勢を崩さないのも、そこに潜むリスクを見極めきれずにいるからだ。

コロナ禍で世界的にオンラインカジノの市場が急成長し、カジノが収益の約8割を稼ぐ大阪の計画を不安視する向きもある。韓国でカジノの運営に携わるセガサミーホールディングスによると、21年の来場者は前の年から57%も減った。感染症の流行で融資の前提となる収益計画が根底から揺さぶられる事態を目の当たりにし、金融機関の熱気も薄れているように映る。

(渡辺淳)

話題の金融ニュースの裏側で何が起きているのか。金融機関や金融庁を日々取材する現場記者の取材メモから読み解きます。
【関連記事】

・大阪IR7つの「宿題」 開業に向け、求められる解答
・大阪IR、モデルはシンガポール カジノ「依存」に懸念 』

激戦地でロシア兵2万人死亡、半数がワグネル 米政府

激戦地でロシア兵2万人死亡、半数がワグネル 米政府
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN01BOC0R00C23A5000000/

『【ワシントン=坂口幸裕】米政府高官は1日、ロシアが侵攻するウクライナ東部ドネツク州の最激戦地バフムト周辺で2022年12月以降に2万人以上のロシア人が死亡したとの推計を示した。その半数がロシアの民間軍事会社「ワグネル」の雇い兵だと明らかにした。

ロシア軍は猛攻をかけているバフムトの陥落に至っていない。米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は1日、記者団に「バフムトでの大規模な攻勢は…

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『記者団に「バフムトでの大規模な攻勢は失敗した。ロシアは高い代償を伴った」と述べた。

2万人の死者を含む死傷者は計10万人ほどに達し、軍事品の在庫を使い果たしたとも指摘。ワグネルはロシアの刑務所から採用して戦地に派遣しており、犠牲者の多くは元囚人だったとの認識を示した。

カービー氏は「十分な戦闘訓練や指導などがないまま、戦地に送り込まれた」と話した。ウクライナ側の死傷者については言及を避けた。

ロシア軍を支えるワグネルの部隊はバフムト攻撃の主力部隊になっている。創始者エフゲニー・プリゴジン氏は4月29日公表のインタビューで「弾薬が補給されなければ、恐らく部隊を撤退することになる」と語った。

米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は22年11月、同年2月のウクライナ侵攻開始から11月までに10万人超の死傷者を出したとの見方を示している。

【関連記事】

・ウクライナ反攻準備、戦車230台到着 ロシアは防衛強化
・ロシア軍事会社ワグネル「バフムト撤退も」  弾薬不足で 』

岸田文雄首相、7〜8日に韓国訪問表明 尹大統領と会談へ

岸田文雄首相、7〜8日に韓国訪問表明 尹大統領と会談へ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0157Y0R00C23A5000000/

『【アクラ=塩崎健太郎】岸田文雄首相は1日(日本時間2日午前)、7〜8日に韓国を訪問すると表明した。訪問先のガーナの首都アクラで記者団の質問に答えた。尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と会談する。首脳間の相互訪問「シャトル外交」の再開と位置づける。

首相は「諸般の事情が許せば7から8日の日程で韓国を訪問する方向で調整中だ」と語った。「日韓関係の加速や激変する国際情勢について腹を割った意見交換をする良い機会になると期待している」と強調した。

日本の首相が韓国を訪れるのは当時の安倍晋三首相が2018年2月に平昌(ピョンチャン)冬季五輪の開会式に出席して以来5年ぶりとなる。シャトル外交での訪韓は11年10月の野田佳彦首相を最後に途絶えていた。

両首脳は23年3月に東京で開いた首脳会談でシャトル外交の再開で合意していた。今回の首相の訪韓で経済、安全保障の両面での協力方針を確認する。

尹氏は4月26日にワシントンでバイデン米大統領と会談した。核兵器を含む米国の戦力による「拡大抑止」の強化を盛り込んだ「ワシントン宣言」を発表した。日韓首脳はこの内容も踏まえて日韓、日米韓の連携を話し合う。

経済関係では日本が輸出優遇措置の対象となる「グループA(旧ホワイト国)」に韓国を再指定すると発表したばかりだ。半導体などのサプライチェーン(供給網)を安定させる方策など経済安保での連携策を議論する。

首相は5月19日から広島で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)の拡大会合に尹氏を招待している。これにあわせて日米韓首脳会談も予定する。

2カ月ほどの短期間のうち日韓首脳があわせて3度お互いの国を訪問する。

日韓関係は文在寅(ムン・ジェイン)政権下、国交正常化以降で最悪といわれる状況に陥った。15年の慰安婦問題の日韓合意を事実上破棄し、18年に元徴用工問題で韓国最高裁が日本企業に賠償を求める判決を出して悪化した。

尹政権が22年5月に発足し、関係改善の動きが出ている。韓国側は23年1月に元徴用工問題を巡り、韓国の財団が賠償金を肩代わりする解決案を提示した。

一方で韓国内には日本側の明確な謝罪がないという批判も出ている。今回の首脳会談でも韓国の解決策の履行状況を確認したうえで日本の対応が議題にのぼる可能性がある。

【関連記事】

・日米韓首脳会談、G7に合わせ開催へ 北朝鮮抑止を協議
・逆風下の韓国政権が待ち望む岸田首相の「言葉」

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OMC、FRC破綻でも利上げの公算 「最後の1回」か

FOMC、FRC破綻でも利上げの公算 「最後の1回」か
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN01BBX0R00C23A5000000/

『米連邦準備理事会(FRB)が物価と金融安定のはざまで難しい決断を迫られている。米地銀ファースト・リパブリック・バンク(FRC)の破綻直後となる2〜3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、インフレ抑制を重視し0.25%の追加利上げに動くと市場は見込む。ただ金融不安が信用収縮を招けば「引き締めすぎ」になるリスクも高まった。パウエル議長の今後の政策方針に市場の関心は集中する。

「FRBは政策金利を…

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『「FRBは政策金利を0.25%引き上げたうえで、追加の利上げを一時停止するシグナルを発するとみている」。米債券運用大手ピムコのティファニー・ワイルディング氏は1日のメモでこう予想した。金利先物市場も1日夕時点で9割が0.25%の利上げ実施を見込む一方、6月会合でさらに利上げするとの予想は3割以下にとどまる。2022年3月に始めた継続利上げは「今回で打ち止め」が市場のメインシナリオだ。

これはFOMC参加者の想定とも一致する。現在の政策金利の水準は4.75〜5%。あと1回の利上げで、3月時点で参加者が見込んでいた利上げの到達点の5.1%(中央値)に達する。

3月10日のシリコンバレーバンク(SVB)の破綻後に強まった米国の金融システム不安は、5月1日により資産規模の大きい銀行だったFRCの破綻に発展した。急速な金利上昇で預金が他の高利回り金融商品に流れる一方、債券や貸出債権など保有する資産の価値が損なわれたことがこれらの銀行の経営悪化につながった。

それでも「最後の1回」の利上げが見込まれているのは、金融システムがまだ危機的な状況までには至っていないとの見方が多いからだ。FRCは破綻と同時に米銀最大手JPモルガン・チェースが買収を決め、預金や資産をほぼ丸ごと引き継いだ。1日の米株式相場は銀行破綻のショックで大きく崩れることもなかった。

FRBは金融システム不安への対処と物価の抑制という目的に応じて政策手段を使い分ける考えを重ねて示してきた。金融の安定ではSVB破綻後に新たな緊急融資枠を設け、銀行への「最後の貸し手」機能を強化した。こうした取り組みは銀行の資金繰りを助ける効果を発揮している。

他方でインフレとの戦いはまだ続いている。

FRBが重視する個人消費支出(PCE)物価指数はエネルギーと食品を除いたベースで3月も前年同月比で4.6%上昇した。鈍化ペースは緩やかで物価目標の2%を大幅に上回ったままだ。人手不足が賃金を押し上げる構図も続く。「金融政策はさらに引き締める必要がある」。ウォラー理事が14日の講演でこう話すなど、インフレ抑制のため追加利上げを求める声はFOMC内で多かった。

もっとも、金融不安が危機に発展するのを回避できるかはなお予断を許さない。1日の米市場では地銀のなかで預金の流出が相対的に大きかったパックウェスト・バンコープの株価が前週末比で10%超下げた。弱っている地銀を狙い撃ちするような市場の圧力は続く。

預金流出に身構える銀行が融資を絞り、信用収縮が景気に下押し圧力をかけるという見方もFOMC参加者や市場参加者は広く共有する。これは利上げによって家計や企業の借り入れコストを増やし、需要を冷やすのと同じような物価抑制効果を生む。問題は、そのスピードや影響の深刻さが利上げ以上に読みづらい点だ。FRCの破綻で、FOMC参加者の金融不安や信用収縮の先行きに対する認識がどう変わるかが焦点になる。

市場はFOMC終了後の声明文やパウエル議長の記者会見で、今後の政策金利の軌道がどう示されるかを注視する。

前回会合後に公表した声明文は今後の利上げについて複数回を意味する「継続的な」との表現を削った一方、政策金利はまだ「十分に引き締め的」ではないとの認識を維持した。今回を最後に利上げを止めるなら、この表現に変更が加わる公算が大きい。

将来の利下げ転換時期をめぐっては、FRBと市場の溝は深い。市場では年内に複数回の利下げ実施が織り込まれている一方、パウエル議長は物価の高止まりを懸念して早期の利下げには慎重な姿勢を貫いている。

記者会見では地銀破綻の連鎖を防げなかったFRBの監督責任も問われそうだ。FRBは4月28日、SVB破綻の経緯を検証した報告書を公表した。とりまとめ役のバー金融監督担当副議長は監督の失敗を認めたものの、その背景にはトランプ前政権時代の規制緩和があったと説明。規制再強化の方針を示している。物価と金融の安定をどう両立するのか、難局でのパウエル議長のメッセージに市場は耳を澄ませる。

(ワシントン=高見浩輔、ニューヨーク=斉藤雄太)

【関連記事】

・米地銀FRC破綻、JPモルガンが買収 過去2番目の規模
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・FRB、SVB破綻で検証報告 金融監督「十分機能せず」』

米FRC破綻、預金流出が当局想定上回る 預金保険に不安

米FRC破綻、預金流出が当局想定上回る 預金保険に不安
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN013C80R00C23A5000000/

『【この記事のポイント】
・大手行の300億ドル支援不発、預金流出止まらず
・「預金全額保護」も特例措置の持続性を不安視
・2カ月で3行破綻、金融当局の監督不備問われる

【ニューヨーク=斉藤雄太】米地銀ファースト・リパブリック・バンク(FRC)が1日に経営破綻した。シリコンバレーバンク(SVB)破綻後に米金融当局は預金の全額保護を打ち出したが、顧客から預金保険制度の限界を見抜かれて預金の流出を止めきれなか…

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『経営に不安を抱える地銀から大手行などへの資金流出圧力は根強く、銀行不安を鎮静化できずにいる。

3月のSVB破綻後、預金保険の対象外となる大口預金比率の高さや金利上昇で含み損を抱えた資産の大きさへの警戒感から、FRCは急速な預金の流出と株価急落に見舞われた。SVBより資産規模の大きいFRCも立て続けに破綻すれば、米国の金融システム不安は一段と制御が難しくなりかねない状況だった。

そうした危機意識からJPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカなど米大手11行が講じたのが計300億ドル(約4兆円)の預金をFRCに預ける措置だ。民間主導の救済を望んでいた当局の意向を踏まえ、JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)らが中心になって3月16日にまとめ上げた。

預金は当初、4カ月間は置く計画だった。その間にFRCが財務の立て直しなど抜本的な再建策に取り組む段取りを描いていた。だが、4月24日夕発表のFRCの2023年1〜3月期決算で預金の急減ぶりや高金利の公的機関からの借入金急増が明らかになると、市場の不安が再燃。もともと落ち込んでいた株価は決算後さらに8割近く下がり、破綻への道を突き進んでいった。

当局や支援した大手行にとって誤算だったのが預金の流出だろう。FRCからは1〜3月だけで4割超の預金が抜け落ちた。大手行からの300億ドルの預金がなければ、落ち込みはもっと大きかった。

預金急減の大きな要因は、破綻時に1口座あたり25万ドルまで保護する米銀の預金保護システムの対象を超える大口預金が多かったからだ。

FRCの預金保険対象外の預金比率は22年末で7割近かった。米当局はSVBと同時期に破綻したシグネチャー・バンクの顧客に対して預金を全額保護する特例措置を取った。他の銀行でも顧客が慌てて預金を引き出さないように落ち着かせるための措置だったが、FRCでは預金流出が膨らんだ。

背景には預金保険基金が潤沢とは言えない現状がある。米連邦預金保険公社(FDIC)はSVBとシグネチャー銀の2行の処理に伴い、預金保険基金に計225億ドルの負担が発生すると見積もる。最終的にJPモルガンが買い手になったFRCの破綻処理では130億ドルの負担を見込む。

22年末時点の同基金の残高は1282億ドルだった。基金の減少を穴埋めするため、FDICは加盟する銀行の払う保険料について、大手行を中心に引き上げる構えだ。それでも銀行破綻が止まらなければ、預金保険基金も底をつきかねず、「全額保護」がいつまでも適用されるとは限らない。

米銀全体の預金は18兆ドル規模で、25万ドルまでの保護対象の預金だけで約10兆ドルある。基金の残高は保護対象の預金の1.3%弱にすぎない。「銀行の破綻が続けば預金保護の資金を基金でまかなえなくなる。FRCでも預金保険の先行きを不安視する預金者もいたとみられる」と野村総合研究所の木内登英氏はみる。

JPモルガンの3月末時点の預金残高が22年末から2%増えたのも中堅・中小行の預金保護への不安が一因とみられる。

イエレン米財務長官は3月21日、預金の全額保護をSVB以外にも適用する可能性があると表明した。対象は「より小さな金融機関」と限定。FRCはSVBより規模は大きい。預金流出を抑えると同時に、預金保護が「見えない政府保証」になるモラルハザードも避ける狙いだが、救済基準のブレとみなされ、預金流出を招いた面もある。

米連邦準備理事会(FRB)は4月28日に公表したSVB破綻の経緯を検証した報告書で、同行の抱える企業統治(ガバナンス)や流動性、金利リスクへの評価や警鐘が不十分だったと認めた。FRCでも預金流出や金利上昇による資産の劣化が致命傷になり、当局が脆弱性を事前にどれだけ把握し改善を求めていたかが論点になる。

1日の米株式市場ではJPモルガンの株価が一時、前週末比で4%上昇した。終値は2%高だった。同社はFRC買収が業績押し上げにつながると説明、損失リスクを抑えた契約になったことから買いを集めた。ただ地銀株の動向を映す上場投資信託(ETF)「SPDR S&P地銀株ETF」は3%近く下げた。金融不安が収束するかは不透明だ。

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野崎浩成
東洋大学 国際学部教授
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ひとこと解説 記事中で指摘されていた「(モラルハザードを防ぐため)イエレン財務長官が預金全額保護対象はSVB以下の規模」とした点が、急激な預金流出の主因だと思います。日本のケースでは、1995年から10年もの歳月をかけて預金全額保護の政策を段階的に解除(いわゆる「ペイオフ凍結解除」)していきました。アメリカにおいては、市場原理を歪める政府介入を必要最小限に留めて(預金者、銀行双方の)モラルハザードを排除する発想が根底にあるため、SVB破綻で英断と思われた預金全額保護の効果を希薄化してしまいました。預金者の心理を見誤った感があります。
2023年5月2日 7:03いいね
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木村恭子
日本経済新聞社 編集委員
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ひとこと解説 FRCは米カリフォルニア州サンフランシスコが本拠地の商業銀行・信託会社で、富裕層向けのサービスを提供しています。資産規模は2022年末時点で全米14位(23年4月13日時点の総資産は2291億ドル=約31兆5000億円)。対して、買収した側のJPモルガン・チェースは、機関投資家向け事業を「J.P.モルガン」ブランドで、中小企業、個人向け事業を「チェース」ブランドで展開し、総資産は3兆ドル超と400兆円を超し、全米1位、世界でもトップ5に入っています。
SF在住の友人は「ひと安心」と話しますが、米金融大手モルガン・スタンレーが大規模な人員削減を検討しているとのニュースもあり先行きは不透明です。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN020BA0S3A500C2000000/ 』