米中、アフリカで電力支援競争 南スーダンでダム計画

米中、アフリカで電力支援競争 南スーダンでダム計画
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODB19E7S0Z10C23A4000000/

『米中がアフリカのエネルギー資源をめぐって火花を散らしている。南スーダンでは水力発電の拡張計画をめぐり、中国企業と米国が主導する世界銀行が融資に関心を示している。中国はインフラ整備を通じてアフリカ諸国での存在感を強めており、出遅れた米国は技術や資金援助で挽回を図る。

国営電力会社によると、南スーダンは1250万人の人口のうち約1%しか電気を利用できない国だ。 水力発電により2500メガワット以上の…

この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。』

『水力発電により2500メガワット以上の電力を生み出す可能性がある。国内に電力を供給するほか、近隣諸国への電力輸出での収入も見込む。中国はこの計画に対して「一帯一路」構想を通じた資金提供を申し出た。伝統的に米国人が主導する世界銀行も関心を示している。

クシュ・バンク(南スーダン)のライアン・オグレディ氏は、米中のどちらが優位に立っても「東西からバランスよく利益を得続けるだろう」と述べた。

米シンクタンクのアトランティック・カウンシルの報告書によると、サハラ以南のアフリカのエネルギーインフラに対する中国の投資額は、2020年までの10年間で10倍の145億ドルに達した。中国企業はナイジェリアやエチオピアなど15カ国以上にエネルギーを供給する契約を結んでおり、その総容量は1万メガワット以上になる。米国はアフリカの3カ国と契約を結んでおり、総容量は1000メガワット強にとどまる。

報告書は、中国のアフリカ進出が軍事的な影響力の拡大につながり、米国にとって脅威となる可能性があると指摘している。中国が融資するアフリカ諸国にとっても、債務の持続性や環境への影響、エネルギー投資を政治的利益を得るテコとして利用される可能性など、様々な懸念が残る。

巻き返しを図る米国は、アフリカの石油・ガス埋蔵量へのアクセスを拡大しようとしている。20年、アフリカ大陸の貿易と投資を促進することを目的とした「プロスパー・アフリカ・イニシアチブ」を立ち上げた。アフリカのエネルギープロジェクトに技術支援と資金を提供する。22年には「米国・アフリカ・エネルギー・フォーラム」を立ち上げ、政府高官やエネルギー幹部が集まりエネルギーアクセスの拡大について議論した。

ただ、米中はアフリカ諸国の安全保障問題や政治的緊張に巻き込まれるリスクもある。

エチオピアでは、中国が出資するグランド・エチオピア・ルネサンス・ダムの建設が、ナイル川の水資源の分配をめぐってエジプトとの外交的対立を生んでいる。数千キロメートル南のモザンビークでは、イスラム教系武装勢力による反乱が続いている。仏トタルエナジーズ社による数十億ドル規模の液化石油ガス(LPG)事業への投資開始は何度も延期されている。

(寄稿 南スーダン・ジュバ=ロバート・ボシアガ)』