核の威嚇戦略、ロシア幅広く利用 小泉悠・東大専任講師

核の威嚇戦略、ロシア幅広く利用 小泉悠・東大専任講師
核と向き合う
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA289YP0Y3A420C2000000/

『ウクライナ侵攻はロシアが温めてきた核による威嚇戦略「エスカレーション抑止」が機能してしまった。米国の戦略家は威力の小さい核爆発による威嚇を懸念していた。ロシアは核爆発を起こす以前の大規模訓練や前方展開などから始まるより幅広い核の威嚇を考えている。

侵攻が長引いてもロシアはこれまで核を使っていない。新たにベラルーシへの戦術核の配備を打ち出した。純軍事的には深い意味はないが政治的なメッセージとしては…

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『純軍事的には深い意味はないが政治的なメッセージとしては明瞭で、目に見えるかたちで信ぴょう性のある核の脅しになる。

核を使えば北大西洋条約機構(NATO)がどう対応するか分からないという抑止が働いているからロシアがこれまでのところ核を使えていない面はある。米国は潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)に低出力の核弾頭を搭載し、限定的な核使用には同程度の報復をする戦略をとる。

一方でNATOはウクライナへの戦車の供与決定さえ侵攻開始から11カ月にわたって悩んだ。ウクライナが決定的に勝利するには武器提供は不十分で、核戦争になる一定のリスクまではおかしていないといえる。

米国は同盟を結ぶ日本に対してならリスクをとって行動するだろう。私は日本独自の核武装には反対で、核共有のように日本に核弾頭を持ち込む必要もないと考えている。米国の拡大抑止の信頼性を高めた方がいい。

NATOには核戦略を共有する閣僚級の「核計画グループ(NPG)」がある。日米間は主に事務方レベルの拡大抑止協議にとどまっており、まずはこうした枠組みをつくるのはどうか。

機密情報を扱える「セキュリティー・クリアランス(適格性評価)」制度もしっかり整えないと米国は深い議論には応えない。これは核に関する新たな協議体をつくる韓国も同様に体制を問われる。』