日中韓ASEAN通貨融通、災害時も 気候変動・感染症に備え

日中韓ASEAN通貨融通、災害時も 気候変動・感染症に備え
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA24A7K0U3A420C2000000/

『2023年4月28日 21:01 (2023年4月28日 21:33更新)

日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)は金融危機時に通貨を融通し合う枠組みに関し、災害時にも活用できるよう調整に入った。5月2日に韓国の仁川で開く財務相・中央銀行総裁会議での合意を目指す。気候変動に伴う自然災害や感染症の流行などが生じても金融分野に飛び火しないよう備える。

アジアの金融協力の枠組み「チェンマイ・イニシアチブ」の適用対象を拡大する案は日本が事務レベルで提起した。日本はインドネシア…

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『日本はインドネシアとともに同会議の議長国を務める。

これまでは適用対象を通貨暴落による急激な資本流出など、すでに金融危機が起きた国に限ってきた。今回の提案は災害などの発生に伴う一時的な外貨不足にも対応できるようにする。運用を柔軟にし、実際に金融危機が起こる前でも適用可能となる。

災害時は緊急対応や復興のために政府の支出が膨らむ。国内対策に巨額の資金を手当てする必要に迫られれば、外貨支払いに支障をきたすおそれもある。一時的に外貨による支払いが滞りそうな場合でも通貨を融通することで、危機が拡大するのを防ぐ。

災害対応などで財政危機に陥りそうになった国が特定の国に債務を依存するのを避ける狙いもある。中国による不透明な貸し付けが念頭にある。

チェンマイ・イニシアチブは1997〜98年のアジア通貨危機をきっかけに、2000年にタイのチェンマイで開いた日中韓とASEANの財務相会議で創設に合意した。

通貨危機後に各国が外貨準備などを増やしたこともあり、これまでに実際に発動した例はない。有事に備える安全網としての意味合いが強かった。新たに災害時も対象とすることで実際に機能する枠組みとして発展させる。

参加国は対外的な債務不履行(デフォルト)に陥らないよう、他の参加国に通貨の融通を要請する。要請した国の自国通貨と、要請された国が外貨準備として持つドルなどの通貨を交換し、債務を履行する。

新興国のなかには新型コロナウイルス禍に伴う輸出や観光による外貨収入の減少などから外貨準備を減らした国がある。チェンマイ・イニシアチブの使い勝手を良くして将来起こりうる新たな感染症の流行に備える。

国際通貨基金(IMF)には今回の提案に似た仕組みとして20年4月に新設した「短期流動性枠」がある。

アジアでは近年、異常気象の影響とみられる自然災害が相次ぐ。22年にはパキスタンで数カ月にわたる豪雨が発生。国土の3分の1が水没し、被害額は400億ドルに上るとされる。バングラデシュやインド、中国なども大規模な水害が生じている。

チェンマイ・イニシアチブは創設後も危機に備えた枠組みの見直しを進めてきた。14年には資金枠を1200億ドルから2400億ドルに増やした。21年には融通できる通貨の対象に円や人民元を加えた。

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