公明党、崩れた無敗神話 統一地方選挙で最多12人落選
自公の選挙協力にひずみ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA254WZ0V20C23A4000000/
『公明党は27日、党本部で統一地方選後初めてとなる中央幹事会を開いた。1998年の現在の公明党結成以来、最多となる12人の落選者を出した原因の検証などに着手する。党の足腰の弱体化は否めず、次期衆院選に向けた自民党との協力関係にひずみが生じている。
山口那津男代表は27日の中央幹事会の冒頭、落選者の増加に関し「克服するために次の戦いに生かしたい」と述べた。26日には高木陽介政調会長が「議席を取れなか…
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『26日には高木陽介政調会長が「議席を取れなかった地域が出たことは猛省したい」と陳謝し、連日の敗戦の弁となった。
統一選で公明が擁立したのは1555人。そのうち落選は12人で当選率は99.2%だ。他党と比較しても高い当選率にみえるが、内実は異なる。
創価学会を支持母体とする公明は選挙戦での「全員当選」を看板に掲げてきた。98年の結党以降、統一選で2けたの落選者を出したことはなかった。2003年と07年は目標通り候補者全員の当選を実現させ「無敗神話」を築いた。
それを可能にしてきたのが堅固な組織力と選挙情勢を分析する2つの力だ。独自の情報網で当選ラインを見極める技術は自民党をも上回っていたとされる。
東京の区議選の8人の落選はそのどちらもが機能しなかった例だ。4人が落選した練馬区議選の総得票数を計算すると19年は4万票を超えていた。今回の23年は1割強目減りし3万5千票弱になった。高齢化による組織力の低迷は否めない。
もうひとつが分析力だ。19年は11人を擁立し全員が当選した。今回も得票の低下が想定されたにもかかわらず同じ11人を出馬させた。
当選ラインだった2950票ほどをわずかに下回る2800票台〜2900票前半に公明の4候補がかたまり「大量落選」が発生した。仮に候補者を1人絞れば他の3人は当選していた計算となり「擁立にミスがあったのではないか」との声が党内にくすぶる。
組織内に由来する原因とは別の外部要因もある。山口氏は敗因について「新規参入の陣営が多く得票した。従来の基盤が侵食された」と言及した。念頭にあるのが元職・新人を3人当選させた日本維新の会だ。
公明は大阪を中心とする関西圏で強固な組織を誇り、「常勝関西」との異名を持つ。「西」での落選は維新の躍進による要因が大きい。
大阪市議選は都島区で新人候補が届かなかった。当選者を出した19年に比べて23年は得票数は増えたものの、自民の元職に競り負けた。定数3のうち上位当選の2人が維新だった。
組織の高齢化に維新の伸長――。内憂外患ともいえる状況に公明は次期衆院選の戦略をどう描くのか。
公明は比例票で800万票を掲げてきたが、未達成が続いている。
代わりに浮上するのが議席増という新目標だ。次期衆院選は1票の格差是正のための「10増10減」で選挙区の数がかわる。選挙区の数が増える埼玉、東京、愛知で公認候補を決めており、党内では東京で2人目となる追加公認を求める意見が根強い。
自民は不信感を募らせる。「もし先に公認を決定したらこれまでの連立で築いた信頼関係は崩れる」。選挙対策幹部は公明の動向にこう神経をとがらせる。
公明は3月、埼玉14区、愛知16区の公認者を発表した。自民も候補者擁立を探る動きがあり、自民にとっては公明が先手をとって既成事実化する動きに映った。東京の選挙区で公明がさらなる公認を決定すれば、自民の小選挙区がさらに減りかねない。
それでも公明は後にひけない。次期衆院選では大阪での維新との競合が避けられないためだ。これまで公明は大阪市議会で維新に協力する一方で、維新は公明の現職議員がいる大阪府と兵庫県の6つの衆院小選挙区に候補者を立ててこなかった。
今回の統一選で維新が大阪市議会で過半数を獲得した。維新の馬場伸幸代表は「公明との関係はリセットされて白紙だ」と踏み込んだ。
「大阪の4選挙区は議席を失うかもしれない」。公明内に広がる衝撃は岸田文雄首相による衆院解散の判断にも波及しうる。』