熱狂なき本命、バイデン氏出馬表明 対トランプ氏に勝算
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2503V0V20C23A4000000/
『【この記事のポイント】
・バイデン氏、24年の大統領選出馬を正式表明
・「米国の魂のため戦う」 最高齢、熱狂なく
・対トランプ氏で民主党束ねる「唯一の候補」
バイデン大統領が25日、再選をめざして2024年の次期大統領選に立候補すると正式に表明した。本命には違いないが、支持者に熱狂はない。平均寿命が約76歳の米国にあって、史上最高齢の大統領は2期目を86歳で終える未踏の領域に挑む。
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「4年前
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『「4年前に大統領選に出馬したとき、私は米国の魂のために戦うと言った。今もそうだ。我々は今後数年間により多くの自由を手に入れるか、それとも失うのかという問題に直面している」。バイデン氏は25日早朝に公開した3分ほどのビデオでこう宣言した。
年明け早々としていた出馬表明が遅れた一つの要因は、急ぐ必要がなかったからだ。
バイデン氏は22年11月、米有権者が政権に最初の審判を下す中間選挙で民主党を善戦に導き、高齢不安を理由に党内に巻き起こっていたバイデン降ろしの声を鎮めた。いまの党内に現役大統領に挑む政敵は見当たらない。
「バイデン氏が80歳でなく70歳なら悩みはしない」。民主党支持者は語る。AP通信とシカゴ大世論調査センターの4月調査からは、有権者全体の7割超がバイデン氏の再出馬を「見たくない」と感じる米世論の声が浮かぶ。
米リアル・クリア・ポリティクスの集計によると、民主党支持層でもバイデン氏の再選を支持するのは3分の1余りだ。「伴走者」のハリス副大統領と合わせても支持率が50%に届かないお寒い状況にある。
それでもバイデン氏が「本命」なのは、ニューヨーク州大陪審に起訴されたトランプ前大統領が共和党の次期大統領選候補の最右翼にいるからにほかならない。米有権者の約7割は同じく前大統領の出馬を望んでいないが、共和党内はMAGA(「米国を再び偉大に」の頭文字)と呼ばれるトランプ主義なしにはまとまらない状況にある。
同世代で保守強硬派を基盤とするトランプ氏が相手なら、バイデン氏は左派から中道派まで民主党内の各勢力を結束して戦うことのできる「唯一の候補」となり得る。極端な右傾化を嫌う無党派層の反トランプ票を取り込む皮算用も成り立つ。
党内予備選での余計な消耗を避け、資金も人手も本選に集中するバイデン陣営の選挙戦術は正しい。だがいまはロシアのウクライナ侵攻が続く「戦時」であり、米中対立が国際秩序さえ変えようとしている。80歳代の米軍最高司令官に不安を抱くなというほうが無理がある。
カリフォルニア大学サンタバーバラ校によると、バイデン氏の就任当初2年の記者会見は21回。同時期のトランプ前大統領(39回)、オバマ元大統領(46回)、ブッシュ元大統領(第43代、39回)、クリントン元大統領(83回)と比べて少ない。失言や失態を恐れて説明責任が不十分になれば、米国だけでなく世界に疑心や不安の種をまく。
「待ち望まれていた正義の高波が押し寄せ、希望と歴史が響き合う」。バイデン氏は父祖の地アイルランドの詩人ヒーニーの言葉をしばしば引用する。トランプ主義を敵視するバイデン氏にとって、民主主義を守ると訴えることが「正義」となる。そこに希望の音色を響かせることができるか。24年へ向けた選挙戦が本格化する。
(ワシントン支局長 大越匡洋)
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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説 「バイデン氏が80歳でなく70歳なら悩みはしない」という民主党支持者の声が、バイデン氏出馬表明に熱狂が伴わない理由の多くを説明している。「トランプのアメリカ」がもたらす混乱を二度と見たくない人々からすれば、24年大統領選の民主党候補はバイデン氏以外にあり得ない。だが、そのバイデン氏には高齢不安がつきまとう。「失言癖」の範ちゅうにとどまればよいが、これが「認知症」になると、事は深刻になる。米国の大統領は米軍の最高司令官であり、核のボタンを持っているからである。また、万が一、健康問題を理由に任期途中でバイデン氏が退任する場合、大統領職を引き継ぐのはハリス副大統領だが、この人への支持は低迷している。
2023年4月26日 7:54 』