【朝鮮日報コラム】中国「パンダ外交」の終焉
https://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2023/04/24/2023042480083.html
『米国、英国、日本、フィンランドなど…次々とパンダ返還
「習近平式の戦狼外交で『ソフトパワーの象徴』パンダを生かす場が失われた」
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▲京畿道竜仁市のエバーランドにあるパンダワールドで昨年7月20日、2回目の誕生日を迎えた赤ちゃんパンダ「福宝(フーバオ)」が、竹とニンジンで作ったケーキを食べている様子。/NEWSIS
▲京畿道竜仁市のエバーランドにあるパンダワールドで昨年7月20日、2回目の誕生日を迎えた赤ちゃんパンダ「福宝(フーバオ)」が、竹とニンジンで作ったケーキを食べている様子。/NEWSIS
中国が国の宝に挙げるジャイアントパンダが最近、ニュースにしばしば登場しています。米国や日本、英国、フィンランドなどが、中国から借りてしばらく育ててきたパンダを、相次いで返還しているという報道がなされています。
パンダはかわいくて愛らしい外見により世界各国で大いに愛されてきました。中国は、1頭当たり年に100万ドル(現在のレートで約1億3400万円。以下同じ)にもなる安くはないリース料で、なかなかの外貨収入を得てきました。しかし中国政府の立場からすると、貸し出し国と中国との間の友好を象徴する親善大使、という役割の方が大きなものでした。「パンダ外交」という言葉があります。温和かつ魅力的なイメージで中国の影響力を拡大する、ソフトパワーの象徴のような存在でした。
パンダ返還には、リース契約の満了、巨額の飼育費負担などさまざまな理由がありますが、中国の国際的イメージが以前とは違っていることが最も大きな影響を及ぼした、という分析も出ています。力を隠して時を待つ韜光養晦(とうこうようかい)路線から抜け出し、相手国を荒っぽく攻撃する「戦狼(せんろう)外交」に転換したことで、パンダがもはや中国外交の象徴としては通じなくなった、というのです。米国など西側の国々と中国の関係が、過去数年の間に大きく悪化した影響もあったでしょう。
■リース料だけで年間100万ドル
新年早々、まず英国エディンバラ動物園が、11年間飼育してきたつがいのパンダ「ヤングァン(陽光)」「ティアンティアン(甜甜)」を中国に返還する計画だと表明しました。新型コロナで観客が減り、昨年1年間で200万ポンド(約3億3300万円)の赤字を出すなど、経営状況が良くないということを理由に挙げました。このパンダは2011年末に、10年のリース契約に基づいて英国にやって来ましたが、新型コロナで契約が2年延長されたといいます。2頭は今年10月ごろ、故郷の四川省に戻るということです。
2月には日本の上野動物園で生まれたパンダの香香(シャンシャン)、岡山県のテーマパーク「アドベンチャーワールド」にいた30歳の雄パンダ「永明」と8歳の双子の姉妹「桜浜」「桃浜」が中国に帰りました。海外で生まれたパンダは中国に所有権があり、2歳になったら中国に送り返すのが原則だといいます。
フィンランドのアフタリ動物園も、飼育中のパンダ「ルミ」と「ピュリュ」を返還する準備をしているといいます。中国は2017年、習近平主席のフィンランド訪問時にパンダ保護協約を締結し、翌2018年に15年の期限で2頭のパンダをアフタリ動物園に貸し出しましたが、わずか5年で送り返すというのです。
現地欧州の報道によると、民間企業のアフタリ動物園はパンダ飼育にかかる巨額の費用を負担し難いというのが理由だといいます。2頭のパンダをリースするのにかかる費用は毎年200万ドル(約2億6800万円)に達します。加えて、1日30キロに達する新鮮なササの葉を中国・四川省から空輸しなければなりません。新型コロナで観客が減り、費用を負担できないというわけです。
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 』
『■米国は今年4頭を返還
動物園側はフィンランド政府に500万ユーロ(約7億3500万円)を支援してほしいと要請しましたが、フィンランド議会は、自国の絶滅危惧種の保護にかかる費用よりも多い金額だという理由で反対したといいます。最終的に、リース期限まで10年以上も残したまま、早期返還を進めることになったのです。
フィンランド国内には、中国がパンダの早期返還を屈辱的なこととして受け止め、両国関係が悪化するだろうとみる専門家も少なくないといいます。
米国も4月に、20年のリース期間が終わった22歳の雌パンダ「ヤーヤー」(メンフィス動物園、テネシー州)を送り返す予定です。
年末には、スミソニアン国立動物園にいるつがいのパンダ「美香(メイシャン)」「添添(ティエンティエン)」と、2頭の間に生まれた「小奇跡(シャオチージー)」の計3頭が、契約期間終了に伴って中国に戻ります。1年で4頭のパンダが戻るというのは、米中関係がそれほど良くないという意味なのでしょう。
■「最高の外交官」として活躍
中国のパンダ外交は、中華民国時代から始まりました。故・?介石総統の宋美齢夫人が日中戦争当時の1941年、米国の支援に対する感謝の表れとして1つがいのパンダを米国に寄贈したのが始まりです。1946年には英国にもパンダ1頭を贈りました。
共産党も政権樹立後、外交においてパンダを積極的に活用しました。1972年に、当時のリチャード・ニクソン大統領が中国を訪問すると、1つがいのパンダを友好の贈り物として米国に送りました。現在、世界19カ国に66頭が出掛けているといいます。韓国にも2016年、1つがいのパンダがやって来て竜仁のエバーランドで暮らしています。
専門の研究者らの分析を見ると、中国は徹底して国益と連携させてパンダを送っています。2012年にフランス政府と原発協力に同意すると、パンダ1つがいをリースしました。2011年にはスコットランドと貿易協定を結び、パンダ1つがいを送りました。
パンダが相次いで中国に戻ってくるのは、中国を取り巻く国際的状況と無関係ではないとみられます。習近平主席は「中華民族の偉大な復興」を掲げ、周辺国を圧迫する攻勢的な外交を繰り広げてきました。新型コロナによるパンデミックの責任論、ウクライナ戦争を起こしたロシアに対する支援などで、国際社会においても事実上仲間外れになっています。香港民主化弾圧、新疆ウイグル族の人権じゅうりんなども物議を醸しています。パンダに象徴される中国のソフトパワーが作動する余地が事実上消えてしまい、「パンダ外交」の時代も終焉(しゅうえん)を告げたのです。
崔有植(チェ・ユシク)東北アジア研究所長
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 』