「アイス事件」怒り続ける中国、BMW不買運動も…抗議のため自ら買った大量のアイス配る来場者

「アイス事件」怒り続ける中国、BMW不買運動も…抗議のため自ら買った大量のアイス配る来場者
https://news.yahoo.co.jp/articles/38a512c392aad0ee5ecf58db35f8c23d7f81456a?page=1

『【北京=山下福太郎】中国の上海モーターショーで起きた独BMWによるアイスクリーム配布を巡る騒動で、中国国内では一部で不買も呼びかけられた。自社の車を巨大市場にアピールする好機だった世界最大級の自動車展は、BMWへの強い批判を招く場に一変した。

【写真】頭から黒い布をかぶせられ、警備員に連行される女性。BMWを批判する動画中継をしていた

不買呼びかけ 車に落書き

BMWのブース前でアイスを配る男性(中央)に殺到する来場者(21日)=山下福太郎撮影

 中国紙は「アイス事件」として一連の騒動や余波を大きく報じている。ショーの会場で取材する官製メディアの記者は「国民はみんな怒っている」と本紙に述べた。

 中国でBMWは、同じ独自動車大手のベンツ、アウディの頭文字を取った「BBA」と称される独高級車の代表格だ。BMW車に乗ることが成功者の証しと言われていた。

 同社のブース前では連日、抗議の意思を示すために自ら買った大量のアイスを配る来場者の姿が見られる。出展する中国企業もアイスの無料配布を始め、主催者が「禁止」を通達する事態となった。

 江蘇省のある企業は21日、BMW車を保有する社員向けに「1か月以内に売却する誓約書を書いてください。応じない従業員は解雇します」との通知を出した。代わりに2万元(約40万円)の補助金を出し、国産の最高級車「紅旗」を購入するようにも求めている。事実上の不買運動の強制ともいえ、中国メディアによると労働契約法に違反する疑いがある。

 23日には、ボンネットに「ドイツへ帰れ」と落書きされたBMW車の写真がSNSに投稿されるなど、ショーが閉幕する今月27日までの沈静化は難しい状況だ。

 BMW側の対応も後手に回り、火に油を注ぐ形となった。20日、公式SNS上に「社内管理の不足とスタッフの怠慢が原因」との謝罪コメントを掲載した。だが、不十分との声が強まると、翌日には3倍の分量で経緯の詳しい説明や再度の謝罪に追い込まれた。

 20日には、ブース前でBMWを批判する動画中継をしていた中国人女性が連行された。同社側が依頼し、当局も騒動の拡大を抑えるために応じたとみられる。しかし、十数人の警備員が頭から黒い布を強引にかぶせて連れ去る様子がSNSで拡散して反発を招いた。』

『業績への影響が懸念され、騒動後に欧州市場でBMWの株価は3%超下落した。時価総額では21億ユーロ(約3100億円)に相当し、一部の中国メディアは「市場価値がとけた分で、5億個のアイスが購入できたはず」と皮肉まじりに報じた。

 中国は、生産と販売の両面で世界最大の自動車大国となる。BMWも21年の世界販売252万台のうち、中国が85万台と3分の1を占め、ドイツを含めた欧州に並ぶ最重要市場と位置づけてきた。ショー開幕日の18日、ツィプセ会長は「BMWの心は中国にある」と会場で演説し、投資を拡大する方針を示したばかりだった。

 今回の騒動は、中国共産党の意向で近年強まる愛国主義の矛先が、わずかなきっかけで外資企業に向かうリスクを改めて浮き彫りにした。
外資の投資に影響も

 一連の騒動により、BMWの本拠となるドイツをはじめ、外資による対中投資への影響が避けられそうにない。

 今年の上海モーターショーには、電気自動車(EV)最大手の米テスラが出展を見送った。前回開催となる2年前、自社の展示車に来場者の女性が上り、安全性を強く批判し、同調する世論が中国国内に広がったことが影響した。中国メディアの記者は「今後、同様の動きが拡大する可能性がある」と話す。

 ドイツにとって中国は最大の貿易相手だ。昨年11月にはショルツ首相がコロナ禍以降、先進7か国(G7)首脳として初めて訪中し、習近平国家主席と会談した。BMWの経営トップも同行していた。

 進出する独企業も投資に積極的で、昨年12月に公表されたアンケート調査(回答586社)では、今後の中国事業は「増加」が77%、「縮小」が23%だった。

 中国経済は、3年弱続いた「ゼロコロナ」政策の深刻な後遺症に直面している。3月の全国人民代表大会(全人代=国会)では、経済政策の柱の一つに外資の投資拡大が打ち出された。

 反面、経済安全保障を巡る対立の激化で、欧米に対する国民世論は先鋭化し、弱腰の対応と判断されれば矛先が党や政府に向かう可能性がある。共産党機関紙傘下の環球時報は23日、外国メディアを引用する形で「特定ブランドに対する批判がエスカレートすれば、『友より敵』になってしまう」と冷静な対応を呼びかけた。

 ◆上海モーターショー=上海市で今月18~27日に開催し、1000社超が出展する。BMWの騒動は、小型車ブランド「MINI」のブースで発生。中国人女性が19日にお土産のアイスを求めた際、中国人の女性スタッフは「終了した」と断ったのに、直後に来た外国人男性には渡す動画がSNSなどで拡散し、中国人差別との批判が広まった。』


『中島恵
中島恵
3時間前

ジャーナリスト
報告

記事中にある「今回の騒動は、中国共産党の意向で近年強まる愛国主義の矛先が、わずかなきっかけで外資企業に向かうリスクを改めて浮き彫りにした」という一文が、非常に的を得ていると感じます。 

外資企業にとって、中国リスクは、ありとあらゆるところに転がっています。現地トップや幹部がいくら注意していても、現場のスタッフの対応によって、いつ何が起こるかわからない。中国ビジネスに取り組む日系企業にとっても他人事ではない、難しい問題だと感じます。』