自民党、高揚感無き4勝 5補欠選挙は山口4区除き接戦に

自民党、高揚感無き4勝 5補欠選挙は山口4区除き接戦に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA19ARU0Z10C23A4000000/

『【この記事のポイント】
・自民、高揚感なき4勝
・山口4区以外は接戦
・早期解散論が浮上か

自民党は23日投開票の衆参5補欠選挙で4勝した。岸田文雄首相(自民党総裁)が掲げた3勝のラインを上回る結果が出たものの党内に高揚感は乏しい。無党派の支持獲得で勢いを欠いたほか、都市部での基盤づくりに課題を残した。候補者選びも混戦の一因との見方がある。

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補選は衆院千葉5区、和歌山1区、山口2区、4区と参

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『補選は衆院千葉5区、和歌山1区、山口2区、4区と参院大分選挙区で実施した。和歌山1区では日本維新の会の林佑美氏に敗れた。残りの4選挙区ではいずれも自民候補が制した。

勝利した一方で課題が残った。共同通信の出口調査によると和歌山1区で無党派層のうち6割ほどが林氏に投票した。門氏はこれまで同選挙区で和歌山県知事に転出した岸本周平氏に4連敗していた。自民内には「候補者選定に問題があった」との声が出る。

無党派層をひきつけられなかったのは和歌山だけではない。

千葉5区は自民の英利アルフィヤ氏が勝利した。出口調査では無党派層で英利氏に投じたのは2割弱だった。立憲民主党の矢崎堅太郎氏の半分だった。

次期衆院選は1票の格差を是正するための「10増10減」で都市部を中心に選挙区が増える。都市部は無党派層が多い傾向がある。自民党幹部は「千葉や大分では組織票で競り勝ったものの、盤石な基盤とは言いがたい」と話す。

茂木敏充幹事長は23日のNHK番組で「少なくとも(統一地方選の)前半戦で大阪などで苦戦を強いられた。態勢の抜本的な強化、見直しが必要だ」と述べた。

自民は2021年の衆院選で千葉5区と山口2、4区でいずれも議席を得た。首相は2月の党大会で「自民党の議席を守り抜こう」と呼びかけた。党内では現状を維持する「3勝」を勝敗ラインとすると受け取られた。議席を増やしたことで、与党内には早期の衆院解散を求める声があがる可能性がある。

日本経済新聞社の世論調査は内閣支持率が22年秋以降、相次ぐ閣僚の辞任などで低迷していた。今年3月の調査で48%と7カ月ぶりに支持が不支持を上回った。首相のウクライナ電撃訪問や日韓首脳会談の実現で持ち直した。

過去の衆院選はその前の補選の結果と一定の連動がある。自民党が大勝した05年衆院選は5カ月前の衆院宮城2区、福岡2区の補選で自民党が2戦2勝した。

補選で敗北して退陣した例もある。21年4月の衆参3つの補選・再選挙は自民が不戦敗も含めて全敗し、衆院解散・総選挙を避ける声が党内で強まった。当時の菅義偉首相は同年9月の党総裁選で不出馬を余儀なくされた。

5月に広島で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)が政治日程の節目となる。サミットが終われば夏から秋にかけて想定される自民党役員人事や内閣改造をにらんだ動きも出てくる。

首相は6月に決める経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)で将来的な子ども・子育て予算の倍増に向けた大枠を示す。防衛費増額のための増税に踏み切る時期も決断が必要になる。

いずれも財源や増税時期などを巡り党内で議論が活発になる。

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説 衆参補選で自民党が現有議席数を維持するラインである3勝を超えて4勝したことにより、岸田首相の求心力は高まる。

内閣支持率が上昇している上に、候補者を一本化した参院大分補選では野党が敗北した。
純粋に解散総選挙で勝てるタイミングを考えるなら、広島サミット終了後の通常国会終盤、6月解散が選択肢になるだろう。

しかし、補選での自民党の勝利の多くは接戦であり、和歌山での首相襲撃事件という(おそらく一時的な)「風」に助けられた面もある。

24年9月の自民党総裁選まで1年以上を残すタイミングで選挙に勝っても、その後に岸田首相にとってネガティブな何かが起きる可能性もある。秋の臨時国会での解散を、筆者は予想している。

2023年4月24日 7:37 』