陸上自衛隊地対艦ミサイル連隊 -米海兵隊の対艦火力のモデル-

陸上自衛隊地対艦ミサイル連隊 -米海兵隊の対艦火力のモデル-
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『 陸上自衛隊地対艦ミサイル連隊 -米海兵隊の対艦火力のモデル- (Marine Corps Gazette)
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日本列島の南西域の米海兵隊の対艦能力のあり方を、陸自の地対艦ミサイル連隊の最近の取組みを例に挙げながら論じた米海兵隊機関誌Gazetteに投稿の米海軍中尉の記事を紹介する。(軍治)

陸上自衛隊地対艦ミサイル連隊 -米海兵隊の対艦火力のモデル-

The JGSDF’s Surface-to-Ship Missile Regiment – A model for Marine Corps anti-ship fires –

Marine Corps Gazette • May 2023

by LTJG Jeong Soo Kim

キム・ジョンス(Jeong Soo Kim)米海軍中尉は、海軍工兵団将校で、現在、佐世保の艦隊活動司令部の公共事業担当補佐官を務めている。以前はシービー大隊、第5海軍移動建設大隊でハイブリッド・シービー米海兵工兵分遣隊の担当官として勤務していた。米海軍研究所主催の2021年米海兵隊エッセイ・コンテストの優勝者である。
フォース・デザイン2030の対艦戦への注目点:Force Design 2030’s Focus on Anti-Ship Warfare

フォース・デザイン2030で米海兵隊に導入される最も重要な能力の1つは、対艦ミサイル能力である。これは、米海兵隊の部隊の性格を、米海軍の海上支配力を利用するものから、能力が高まる競争者の海上戦力に対して必要な海上の致死性を付加するものへと根本的に変化させるものである。

この到達目標を達成するために、米海軍打撃ミサイル(naval strike missile :NSM)搭載の無人の統合軽戦術車両(joint light tactical vehicle)である米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(Navy-Marine Expeditionary Ship Interdiction System :NMESIS)が、この作戦コンセプト変更の目玉として歓迎されている。

米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS)が大量に実戦投入されれば、致死的で、残存可能で、リスクに見合うアセットとなる。分散して配置されることで、敵対者は身近な海域でも慎重に行動せざるを得なくなる。しかし、米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS)のように先進的でリスクに見合うシステムであっても、そのデザインと開発にはリスクが内在している。

米海兵隊は、米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS) の限界を緩和し、米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS) の開発・配備が遅れた場合に対艦火力が不足するリスクを低減するために、ヘッジを行う必要がある。効果的なヘッジは、レガシー・システムを大量に配備して 米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS) への移行を橋渡しし、その弱点を補うことである。

米海兵隊のこのリスク軽減戦略(risk-mitigation strategy)の手頃な構成要素は、敵対的な海上戦闘機から重要な水路を守るために地上配備型の対艦ミサイル(groundbased anti-ship missiles)を利用した同盟国軍に学ぶことである。陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊(Surface-to-Surface Missile Regiments :SSMR)は、比較的少ない人員で巨大な対艦火力を発揮する。

船舶や航空機に配備された対艦ミサイルと組み合わせれば、レガシーな地上配備型のミサイル発射装置(groundbased missile launchers)でも、戦力増強のために現在逼迫している海事・航空宇宙産業基盤への負担を最小限に抑えながら、ミサイルの一斉発射サイズ(salvo sizes)を大幅に増やすことができる。

さらに、レガシー・ミサイルを搭載した地対艦ミサイル(SSM)部隊を立ち上げることで、対艦戦(anti-ship warfare)の訓練を受けた米海兵隊の幹部が、米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS)プラットフォームの完全導入時に、最先端の対艦の戦術、技法、手順(tactics, techniques, and procedures:TTP)をより効果的に用いることができるようになる。
米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS)のリスクと限界:Risks and Limitations of NMESIS

米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS)プラットフォームは、米海兵隊の対艦ミサイル計画の将来を担うものであるが、補完的なミサイル・プラットフォームやそれを採用する部隊と意識的に緩和しなければならないリスクと限界を持っている。現在、米海兵隊が対艦戦(anti-ship warfare)をタスクとする主要プラットフォームは、M142 高機動ロケット砲システム(HIMARS)を搭載したロケット砲兵部隊である。

高機動ロケット砲システム(HIMARS)は優れた兵器プラットフォームだが、ストライカー旅団戦闘チームのような米陸軍の戦略的移動部隊に、空中移動型多連装ロケットシステム能力を提供するためにデザインされている。M26ロケットと陸軍戦術ミサイル・システムの地対地ミサイル(surface-to-surface missiles)を発射するが、本質的に対艦プラットフォームではなく、米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS)プラットフォームが装備化されるまでは最適な解決策ではない。

野戦砲大隊(tube artillery battalions)のロケット・ミサイル砲への転換は重要なドクトリン上の転換であるが、人民解放軍海軍(PLA-N)が太平洋に展開するわが国の海軍部隊に対して量的にも質的にも同等であるという事実を大きく変えるものではない。米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS)対艦プラットフォームはまだ試験・評価中で、戦力構造への配備・統合が進んでいないため、キャッチアップしているのは米国の同盟海上部隊である。

米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS)の導入が2023年と楽観的に計画されており、その本格的な配備は数年先となるため、存在する重大かつ持続的な対艦能力のギャップを埋めるために、十分な量の対艦プラットフォームを迅速に配備する必要がある。現在の米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS)のデザインは、ステルス、隠蔽、そして敵艦にステルス性のミサイル(stealthy missile)を発射する奇襲の要素に依存している。

比較的小規模な統合軽戦術車両(joint light tactical vehicle)基地では、米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS)プラットフォームあたり2発の海軍打撃ミサイル(NSM)ミサイルが限界であり、8発の発射台(launcher battery)でも16発のミサイルの同時斉射が限界となる。高度な海軍打撃ミサイル(NSM)を無防備な敵艦に向けて発射するというステルスに特化したこの戦術は致命的ではあるが、固有のデザイン上の欠陥がある。

最初の「奇襲(surprise)」一斉射撃は有効かもしれないが、高度な対空システムとよく訓練された乗組員であれば、フリゲート級の海上戦闘艦であっても後続の攻撃を防御することが可能であろう。理想的な戦術は、できるだけ少ないミサイルで敵艦を倒すことであるが、対艦ミサイルの飽和攻撃で敵の防空システムを圧倒する能力は絶対に必要であり、米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS)はそのためのデザインがなされていない任務である。

レガシー・ミサイル・システムはステルス性に欠けるが、米海軍指揮官が敵対する海軍タスク部隊(naval task force)に対して飽和攻撃を仕掛けることができるため、米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS)プラットフォームを補完することができる。
陸上自衛隊地対地ミサイル連隊:JGSDF’s Surface-to-Surface Missile Regiment

冷戦時代、日本の安全保障上の最大のリスクは、ソ連海軍の太平洋への進出であった。しかも、冷戦時代の日本は、ソ連太平洋艦隊に対抗するための大規模で高性能な艦隊を配備できる経済力をまだ持っていなかった。

そこで、北海道に対艦ミサイル連隊を配備し、本州を経由して太平洋に出ようとするソ連海軍の艦艇を威嚇することになった。西太平洋で中国軍と対峙する米海軍の前線部隊と同様に、日本はより優れた海軍部隊の軍事行動(breakout)を防ぐ必要があり、この問題を解決するために地上配備型の対艦ミサイル(groundbased anti-ship missiles)に目をつけた。

3個中隊の対艦ミサイル連隊の主な装備(図:著者作成)

この任務を遂行するタスクを担う主要な部隊が地対艦ミサイル連隊(SSMR)である。米国のハープーン・ミサイルとほぼ同等の88式地対地ミサイルを発射するために主に装備された大隊規模の部隊である。連隊は、6発のミサイルを搭載した4基の発射台と再装填車からなる3〜4基の発射台で構成されている。

本部中隊は、敵艦のおおよその位置を発見できるレーダー車と、発射部隊に情報を伝達できる無線中継部隊で構成されている。88式ミサイルには追尾レーダーが搭載されており、外部からのターゲティング・データに依存することなく海上ターゲットを探索し、誘導することができる。

戦術的に展開する場合、発射中隊(launching batteries)は海岸線から離れた隠れた射撃場から展開され、海岸線には小型レーダー車だけが哨所(picket)を形成する。

発射後、各中隊(batteries)は代替の隠れた補給地点に移動し、再装填を受けることができる。それぞれの中隊本部(battery headquarters)は、連隊の地表レーダー車や海上自衛隊の哨戒機からセンサー・データを受信できる火力指示センター車(fire direction center vehicle)1台で構成されている。データ・リンクは国内だが、火力解決のための質の高いデータを供給するわけではない。データは単に敵艦の大まかな範囲を知らせるだけで、88式ミサイルに搭載されたセンサーが終末誘導を実行する。

地対艦ミサイル連隊(SSMR)は海軍のターゲットに対して使用され、敵艦からの探知から射撃中隊(firing batteries)を保護する。(図:著者作成)
重要なチョークポイントに配置される:Stationed at Vital Chokepoints

陸上自衛隊には、合計5個の地対艦ミサイル連隊(SSMR)が配備されている。そのうち3個(第1、第2、第3)は北海道に配備され、北部方面隊第1特科団(1st Artillery Brigade)に所属している。これらの部隊は、冷戦時代、日本にとって最大の脅威は、北海道周辺でのソ連海軍の軍事行動(breakout)とサハリン諸島への侵攻であったという歴史を持つ。

本州の北半分に位置する八戸には、1つの(第4)地対艦ミサイル連隊(SSMR)が配備されている。本州と北海道を隔てる津軽海峡(50マイル)の防衛・防御をタスクとする。この海域は、最近、中露の海軍タスク部隊(naval task force)が太平洋上で演習するために航行したことでも話題になった。

連隊の中で最後にして最も強固なのが、南九州の熊本に駐屯する第5地対艦ミサイル連隊(SSMR)である。本土には4つの中隊(batteries)が、琉球列島の離島には地理的に独立した3つの中隊(batteries)が駐留している。2021年に宮古島に1個、2022年には石垣島に1個、沖縄と台湾の間に位置する戦略的な場所に1個の中隊(battery)を設置する予定である。

これらの地対艦ミサイル連隊(SSMR)、特に第5地対艦ミサイル連隊(SSMR)の配備は、敵対者に戦術的な難問を突きつけるものである。これらのミサイル連隊は、自衛隊が船舶や航空機の整備状況に左右されることなく、重要な海上交通の要衝に致死性の火力を持続的に投射し、あらゆる海軍の侵入に対して常に警戒することを可能にする。
レガシー・ミサイルは命取り:Legacy Missiles are Deadly

先日、ウクライナの対艦ミサイル砲により、ロシアの巡洋艦モスクワ(Cruiser Moskva)とスネーク島への補給に派遣された貨物船が沈没したことで、地上から発射されるレガシー対艦ミサイルでも有効であることが示された。

報告書によれば、巡洋艦モスクワ(Cruiser Moskva)に発射されたミサイルはわずか2発で、巡洋艦モスクワ(Cruiser Moskva)のような防御力の高い巡洋艦を沈めるために必要だと一般的に考えられている飽和攻撃(saturation strike)には程遠いものである。ウクライナ軍の戦術的な偉業もさることながら、陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊(SSMR) は、多くの発射装置を備えているため、海軍のターゲットに対してはるかに大きな損害を与えることができる。

3個の地対艦ミサイル連隊(SSMR)は連隊レベルで最大72発のミサイルを発射する能力を持ち、琉球列島に配備された独立した中隊(batteries)は最大24~36発のミサイル一斉射撃(missile salvos)を発射することができる。88式ミサイルはAGM-84ハープーンと同世代のもので、現在は長距離対艦ミサイルや海軍打撃ミサイル(NSM)に移行しているが、それでも最先端の対空戦艦以外には極めて致死性で、高度な対空防衛システムを打ち破る上で重要な戦術的役割を果たすことになる。

88 式やハープーンなどの従来の対艦ミサイルがステルスでも超音速でもないとはいえ、敵艦に誘導できる以上、敵対者はミサイルや対抗策を消費して迎撃・破壊しなければならない。例えば、対艦ミサイルがいかに亜音速でステルス性がないとしても、8セルのRAM型短距離ミサイル・ランチャーと近接兵器システム(close-in weapon system)を備えた56型コルベット艦は、12発または24発のミサイルの一斉射撃から物理的に防御できない。

複数の発射台、中隊(batteries)、連隊が連携して発射すれば、レガシー・ミサイルを搭載した部隊は、より堅牢な54A型フリゲート艦(空対空ミサイルと近接兵器システムの32個の垂直発射システムセルで武装していたとしても)をも圧倒することができる。52D型と54A型の主力海上戦闘艦からなる全海上行動集団(full surface action group)でさえ、96発のミサイルを同時に発射する4つの中隊(batteries)による連隊規模の一斉射撃から防御するのは困難であろう。

仮に人民解放軍海軍(PLA-N)の先進的な海上行動集団(surface action group)がこのような攻撃からうまく防御できたとしても、最初の攻撃で艦隊の防御ミサイル弾倉が枯渇することは避けられない。第一列島線に配備された地上配備型レガシー・ミサイル中隊(batteries)は、実質的にブルント層(blunting layer)※を形成し、敵対者の艦隊の盾とするミサイル(shield missiles)の弾倉を削り取っていく。

※ブルント層とは、2018年の米国防戦略文書で触れられている「Global Operating Model」の中の4つの層の一つで、敵対者の攻撃を遅らせたり、劣化させたり、拒否したりする層を言う。

防衛ミサイルを枯渇させた人民解放軍海軍(PLA-N)海軍タスク部隊(naval task force)は、新鮮なミサイルの弾倉で武装した第一列島の外側に潜む戦術機、海上行動、空母打撃群に対して著しく脆弱になるであろう。有能な人民解放軍海軍(PLA-N)提督なら、弾倉が枯渇した状態で海軍の軍事行動(breakout)を試みることを拒否し、海軍の軍事行動(breakout)を試みないだろうし、それを試みる無能な人民解放軍海軍(PLA-N)提督は、その戦術的失策のために大きな代償を払うだろう。

したがって、地上配備型のレガシー・ミサイル・システムであっても、第一列島線の内側では人民解放軍海軍(PLA-N)に一分の隙もない戦いを強い、第一列島線の外側では米軍と同盟した部隊が支配することができるようになる。

レガシー対艦ミサイル・システムを活用するもう一つの効果的な戦術は、囮(decoys)の役割を果たし、よりステルス性が高く高価なミサイル・システムが協調攻撃で隠れることができるようにすることである。米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS)のような軽量で無人なプラットフォームは無人島に、より伝統的な地対艦ミサイル連隊(SSMR)のようなバッテリーや連隊はより確立された駐屯地に配備することができる。

レガシー・ミサイルの大規模な攻撃というベールに包まれた海軍打撃ミサイル(NSM)の発射は、これらの最新ミサイルの残存性と致死性を高め、より高価でステルス性の高いミサイル(more expensive and stealthy missile)の迎撃から高度な電子戦や対空ミサイルのリソースを逸らす可能性があるだけだ。

現在配備されている 88 型、12 型ミサイルの射程距離(200km)が 人民解放軍海軍(PLA-N) のそれ(4~500km)に劣るのは事実である。しかし、だからといって、陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊(SSMR)が戦術的に陳腐化するわけではない。200kmの射程であれば、琉球列島周辺に集結する海軍タスク部隊(naval task force)を抑止するための堅い防御殻を形成することができる。

紛争時には、琉球諸島の守備隊からの射程が200kmと比較的短くても、最も殺傷力の高い海軍タスク部隊(naval task force)以外には、人民解放軍海軍(PLA-N)が東シナ海の20%近くを占領できないようにすることができる。さらに重要なことは、レガシーな地上配備型の88式ミサイルでさえ、射程が200kmと比較的短いため、東シナ海に沿った潜在的な脱出経路を致命的な対艦ミサイルでカバーすることができることである。
新型ミサイルの登場で、より致死性の高いサイトへ:Emerging Missiles Will Make These Sites Even More Lethal

これらの島嶼部ミサイル基地と最新のミサイルおよび追加の防衛能力を組み合わせることは、海上戦闘におけるゲーム・チェンジャーとなる可能性がある。陸上自衛隊は現在、2025年までに12式ミサイル(改良型)を導入する構えで、対艦ミサイルの射程を900kmに向上させ、琉球駐屯地から東シナ海全域に射程を拡大させる。

この開発により、第一列島線内は実質的にミサイルのデッド・マンズ・ゾーン(dead man’s zone)となり、人民解放軍海軍(PLA-N)の艦船が母港から領海外に出た瞬間に、致命的な対艦ミサイルの攻撃を受ける危険性がある。

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200kmの射程は、東シナ海からの主要な侵入経路を遮断することができる。(図:著者作成)

ただし、これらの島嶼ミサイル基地は、従来の海軍艦隊のアセットと同じ戦略的移動、機動性、柔軟性を有していない。しかし、地上配備型の対艦ミサイル(groundbased anti-ship missiles)は、海軍の「鉄槌と鉄床(hammer and anvil)」※作戦を促進するのに役立ち、従来の海軍の航空、潜水艦、海上戦闘機の要素が鉄槌(hammer)として決定的な打撃力を提供する一方で、鈍い金床(anvil)力になることができる。

※鉄床戦術(かなとこせんじゅつ、英語: Hammer and Anvil tactic、鎚と鉄床戦術とも)とは、複数兵科を使った戦術の一つ。(引用:https://ejje.weblio.jp/content/hammer+and+anvil)
陸上自衛隊地対艦ミサイル連隊(SSMR)をモデルとした米海兵隊部隊の実行可能性:Viability of Marine Corps Units Modeled after the JGSDF SSMR

陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊(SSMR)は、米海兵隊が海に向かって火力を投射する地上部隊を確立し、展開するためにさらに改良を加えることができる優れたモデルを提供する。米海兵隊はそれを認識しているようで、2021年12月、米第3騎兵遠征部隊(III MEF)の高機動ロケット砲システム(HIMARS)部隊が、演習「レゾリュート・ドラゴン(RESOLUTE DRAGON)」の一環として、八戸に拠点を置く第4地対艦ミサイル連隊(SSMR)と訓練を行い、戦術、技法、手順(TTP)の交換をした。

演習は戦術、技法、手順(TTP)を交換する絶好の機会であるが、特に米海兵隊が船舶殺傷(ship-killing business)に参入する際には、陸上自衛隊の対艦ミサイル・コミュニティとより恒久的な関係を構築しなければならない。

対艦ミサイル部隊のもう一つの優位性は、他の伝統的な米海兵隊作戦部隊と比較して、比較的軽い人員配置(light personnel footprint)であることである。

琉球列島に駐留する6個の発射装置の独立中隊(batteries)は60人足らずの人員で、有機レーダーと無線中継能力を持つ3個中隊の連隊(3-battery regiment)は250~300人のフル・メンバーで戦う(第4地対艦ミサイル連隊(SSMR)の幹部はフル・メンバーの数を公表せず、自分の部隊が通常配置されている人員数で公表した)。

米海兵隊が地対艦ミサイル連隊(SSMR)の1990年代の組織をそのままコピーしたとしても、3個以上の地対艦ミサイル連隊(SSMR)(200基以上のミサイル・チューブを配備)が、従来の900人以上の歩兵大隊1個分の人員レベルで配置できる。1990年代から今日にかけての自動化における大幅な改善を考慮すると、米海兵隊の地対艦ミサイル連隊(SSMR)はより少ない人員で同じ数のミサイルを配備できる可能性がある。

米海兵隊が致死性の海上火力を追加する一方で、最終兵力要件がマイナスになっている時代において、従来の歩兵大隊1個分の人件費で200以上の対艦ミサイル発射管を配備できる陸上自衛隊の部隊構成を無視することはできない。

最後に、米国防総省(DOD)と防衛産業の間では、このような部隊が配備される前に実行されなければならない研究、開発、統合が比較的少なくなっていることである。米国防総省(DOD)が老舗のハープーンから次世代の対艦ミサイルに移行する際、大量に備蓄されているハープーン・ミサイルを艦載機や空中戦から陸上戦に移行させることができる。

現在の米軍には配備されていないが、台湾へのハープーン沿岸防衛システム100台の対外有償軍事援助(FMS)やウクライナへの軍事援助に見られるように、こうした車両搭載型対艦ミサイル・システムは、国内の防衛企業が海外で使用するために製造するものである。さらに、ハープーンを車載型ランチャーに一体化したのは台湾が初めてではなく、デンマーク海軍はソ連海軍の侵攻からデンマーク海峡を守るために車載型ハープーン・ランチャーに依存している。

簡単に言えば、このようなハープーン・ベースのランチャーを実戦投入するための投資は、対外有償軍事援助(FMS)の要件を満たすためにすでに実施されており、米海兵隊は、大規模で既存の兵器備蓄を利用して、米海兵隊の地対艦ミサイル連隊(SSMR)を迅速に実戦投入することができる。
米海兵隊地対艦ミサイル連隊(SSMR)の配備に向けた課題:Challenges Ahead for Deploying Marine Corps SSMR

大量の弾薬備蓄と地上配備型ミサイルの製造に関する既存のノウハウは、米海兵隊が地対艦ミサイル連隊(SSMR)を配備するために行うべき重要な足掻きがないことを意味しない。軍事組織の中で全く新しい能力を立ち上げることは、米海兵隊員に装備や兵器を割り当てて式典を開くような単純なことではない。

若い米海兵隊員と経験のある米海兵隊員、そして指導者のための訓練パイプラインは、何十年も地上対艦作戦を実施してきた他の米国防総省(DOD)や外国の軍事組織の支援を得て、おそらく確立されなければならない。そして、部隊は互いに連携して訓練する必要がある。

米海兵隊の地対艦ミサイル連隊(SSMR)が米海軍の海上作戦や空母打撃群、米海軍、米空軍の戦術機、さらには米陸軍のマルチドメイン・タスク部隊(Multi-Domain Task Forces)と連携して攻撃する能力を実証し、リハーサルするための複合演習(composite exercises)を実施しなければならない。

第303独立対艦ミサイル中隊の設立。41名のフルメンバーで中隊(battery)を運用することに注目。(写真:著者提供)

米海兵隊の地対艦ミサイル連隊(SSMR)が習得すべき技能は、圧倒的な調整されたミサイルの一斉射撃(missile salvos)だけではない。そのような部隊は、敵対者のキル・チェーンを断ち切ることができるシュート・アンド・スクート戦術※、説得力のある囮(decoys)の展開、さらには後続の攻撃を可能にする弾薬の備蓄など、防衛に関する技術を習得する必要があるのである。

※シュート・アンド・スクート(fire-and-displace、fire-and-move)とは、砲兵の戦術の一つで、標的を撃った後、反撃の砲撃から逃れるために発射地点から直ちに離れることである。

地対艦ミサイル連隊(SSMR)の配備は最終の到達目標であってはならない。むしろ、米海兵隊における船舶殺傷事業(ship-killing enterprise)の確立というパズルの一片に過ぎないのである。先進的な米海軍戦闘艦の撃沈は、複数の支援システムが互いに連携して初めて成功することを、指導者は忘れてはならない。

また、作戦面でも、第一列島線の内側で持続的な対艦火力を確保することは、米海兵部隊指揮官に誤った安心感を与え、自己満足に陥り、この地域での大規模な統合海上展開の減少につながる恐れがある。

これらの強力な、しかし不動な地上ミサイル部隊は、地上、航空、地下の複雑なプラットフォームの網によって適切に支援されていない場合、海軍の包囲に対して脆弱である。西太平洋にこれらの部隊を配備することは、他の場所にコミットメントを移すための松葉杖であってはならない。

結局のところ、このような地上対艦プラットフォームは、人民解放軍(PLA)と比較して量的にも質的にも劣る前方展開の海上戦力を強化するための手段なのである。

米海軍は、地上配備型の対艦ミサイル(groundbased anti-ship missiles)部隊の固有の弱点を支援し、強化することに一歩を踏み出さなければならない。作戦上固定化したミサイル中隊(missile batteries)を配備する際の重大な懸念は、敵対者がこれらの部隊を探知し、ターゲットとすることが容易であることである。対艦ミサイルを基盤とする遠征前進基地(EAB)は、探知とターゲティングに対してより脆弱であるが、その作戦上の静的な性質は、部隊自体の組織ではなく、戦場によって大きく左右されるものである。

衛星画像の進歩と普及により、艦船や航空機の殺傷兵器を搭載した部隊があらゆる探知方法から隠れることは不可能になった。例えば、民間衛星会社は、ウクライナにおける戦術車両の位置と損失に関する戦場の最新情報を、機密扱いのないインターネットに毎日定期的に提供している。

中国のような軍事大国が採用する高度な衛星は、商業衛星と同等かそれ以上の情報を提供できることは間違いない。

地上からの対艦火力だけでは、監視や発見に対して本質的に脆弱であると述べるのは妥当である。しかし、陸上自衛隊が琉球諸島で行ったように、対艦火力を対空・電子戦部隊と一体化することで、その弱点を緩和することができる。

対空ミサイル中隊(anti-air missile batteries)は、無人機や戦術機、哨戒機が対艦ミサイル中隊(anti-ship missile batteries)に接近してターゲティングするのを防ぐことができるため、敵対者はこうしたターゲティング情報を提供するために高価な衛星偵察アセットを消費せざるを得なくなる。

電子戦部隊は、敵対者の指揮・統制ノードにターゲティング・データが到達するのを防ぎ、すでに地対艦ミサイル連隊(SSMR)に向かっている弾薬にソフト・キル能力を提供することもできる。複数の相互支援能力を一体化するというこのコンセプトは、米海兵隊の作戦の中核をなす諸兵種連合作戦と何ら変わるところはない。結局のところ、由緒ある米海兵隊の歩兵隊でさえも、諸兵種連合作戦を可能にする支援部隊の集まり(constellation)がなければ効果がないのである。

最後に、地上対艦火力は、パートナー国の軍隊が何十年にもわたって実施し、磨いてきた任務である。米軍がシニア・パートナーである典型的な国際軍事関係にもかかわらず、効果的な対艦火力能力を確立するために必要な関係では、米海兵隊はジュニア・パートナーであることを理解する必要がある。将来の対艦火力の指導者は、陸上自衛隊や対艦火力を展開する他のパートナー国が主催する基礎コースと上級コースの両方に参加するために派遣されるべきである。
結論:Conclusion

米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS) プラットフォームへの投資と部隊再編の間に、米海兵隊は西太平洋に重要な海上攻撃能力をもたらすことに真剣に取り組んでいる。しかし、高機動ロケット砲システム(HIMARS)から米海軍・米海兵隊遠征艦船阻止システム(NMESIS)に直接移行する現在の経路には、軽減しなければならない多くの脆弱性と課題が存在する。

陸上自衛隊は数十年にわたり地上配備型の対艦ミサイル(groundbased anti-ship missiles)の配備に成功しており、米海兵隊が迅速に学習して西太平洋の海上火力に貢献することを可能にすることができる。

陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊(SSMR)をモデルにしたハープーン搭載の対艦ミサイル部隊を立ち上げれば、西太平洋で大量の対艦火力を追加することができる。海上、潜水艦、航空プラットフォームと組み合わせることで、これらの部隊は、海上構成部隊指揮官(maritime component commander)が米海軍の脅威を抑止し、必要に応じて撃沈するために利用できる、持続的で弾力性のある戦闘プラットフォームとなる。

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用兵思想、米陸軍動向、自衛隊 』